JP2008008347A - マイクロバルブ - Google Patents

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Abstract

【課題】極めてシンプルな構造で、微細化・集積化が容易に可能で、高い耐久性を有し、高圧で粘度の高い流体または弁の出入口間における圧力差が大きくても弁が損傷することなく、安定かつ確実に弁の開閉動作が行われるマイクロバルブを提供する。
【解決手段】微小球2が第1の位置に移動したときに、流路A,B内を流れる非磁性流体の流量は、微小球2が第2の位置に移動したときに、流路A,B内を流れる非磁性流体の流量よりも少ないので、極めてシンプルな構造で、微細化・集積化が容易に可能で、高い耐久性を有し、高圧で粘度の高い流体または微小球2の出入口間における圧力差が大きくても弁が損傷することなく、安定かつ確実に弁の開閉動作が行われるマイクロバルブを提供することができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、微量の液体や気体などの流体の流れを遮断するマイクロバルブに係るものであり、例えば微量又は粘度の高い高圧の油などの流体を確実に調整できるマイクロバルブに関するものであり、また強磁性体材料を含有しない様々な微粒子を含む流体が流れる流路を切り替えることで微粒子の搬送経路を選択できる機能を有するマイクロバルブに関するものである。
近年、微量な流体を制御するニーズが高まり、特に化学やバイオ分野においては微小流路の内部に微量な液体を流すことで分析を可能にするために、微細加工技術を用いて作製される微小流路やマイクロバルブなどの研究が試みられている。ここで、微小流路を遮断し流路を通過する流量を制御するために、従来いくつかの方法が提案されている。一例として、
(1)静電力を用いてシリコンゴム製のダイアフラム部を平らな面に押し当てて液体を遮断するもの(例えば、特許文献1参照)、
(2)空気やガスの膨張によってメンブレンを変形させて、マイクロチップ中の微小流路を遮断するもの(例えば、特許文献2参照)、
(3)微小流路にゲートとなる部材を挿入することにより微小流路を流れる流体を遮断することが可能なスライドゲートを用いるもの(例えば、非特許文献3参照)、のような種々のアクチュエータを組み合わせてマイクロチップに設置されるマイクロバルブが提案されている。
特開2004−176802号公報 特開2004−358635号公報 Albert P.Pisanoらによる、「Low−Leakage Micro Gate Valve」、Transducers‘03、Berkley USA、2003年6月11日、pp,143−146
上記のごとく微細加工技術を用いて作製された従来のバルブにおいて、特許文献1に記載された静電気による動作形態では、静電気力でバルブを動作させる方式であるために、対向電極の間隔を広く取れないことから十分な流路断面が確保されず、流体を搬送するときの圧力抵抗が大きくなることや、バルブ部分を弾性支持する支持部における耐久性を確保する必要があるという問題点があった。また、特許文献2や非特許文献1の技術では、流体の進行方向に対して垂直方向に動作するバルブ弁をもち流路の断面を確保することができるが、急激な高圧が加わると、特許文献2の技術においては、空圧などを用いて弾性変形により流量を調整するメンブレンが流路へ吸着することや弁が損傷する恐れがある不都合な点があげられ、非特許文献1の技術においては、スライドゲートによって流路を閉じるときに急に高い圧力差が生じる場合に弁を動作させる場合、弁の接点位置での摩擦力を上回る余分な力を必要とするという不都合な点があげられる。
以上のような理由からこれらのバルブにおいては、燃料や潤滑剤として使用する粘度の高い高圧の油などの流体を流入した流路中で弁を開閉する用途には不向きであるといえる。さらに、上記にあげるような遮断弁をもつ構造体を従来よりも微小化して基板内部や微小な領域に埋め込む場合には、プロセス工程が多く構造が複雑であるために、ミクロンオーダーでの微細な構造設計およびシステムの小型化を進める上で、製造、生産コストや効率なども含めて不利な点が多い。
そこで本発明は、以上にあげた従来の不都合な点からなる課題を解決するものであり、極めてシンプルな構造で、微細化・集積化が容易に可能で、高い耐久性を有し、高圧で粘度の高い流体または弁の出入口間における圧力差が大きくても弁が損傷することなく、安定かつ確実に弁の開閉動作が行われ、流路の開閉を行えるマイクロバルブを提供することを目的とする。
本発明のマイクロバルブは、
非磁性流体の流路を形成した筐体と、
前記筐体内において、前記流路を塞ぐ位置と開放する位置との間で移動可能に配置された磁性体の微小球と、
前記微小球を駆動する磁力発生手段と、を有する
ことを特徴とする。
本発明のマイクロバルブは、非磁性流体の流路を形成した筐体と、前記筐体内において、前記流路を塞ぐ位置と開放する位置との間で移動可能に配置された磁性体の微小球と、前記微小球を駆動する磁力発生手段と、を有するので、極めてシンプルな構造で、微細化・集積化が容易に可能で、高い耐久性を有し、高圧で粘度の高い流体の出入口間における圧力差が大きくても微小球が損傷することなく、安定かつ確実に微小球の移動が行われ、流路の開閉を行えるマイクロバルブを提供することができる。
特に、非磁性流体である気体や液体などを導入する微小断面の流路、流路の途中に連結されて流路の開閉または流量の調整を行う弁として機能する微小球を内蔵する収容部を形成した筐体と、外部磁場の印加によって収容部内を移動する強磁性体材料を含有した微小球と、外部磁場を用いて微小球を同一または個別に動作できる磁力発生手段の他に、流体の流入口と流出口、流路の蓋部材、流路に取り付けられる各種圧力や温度測定に要するセンサなどの周辺部を含むと好ましい。
更に、本発明に係るマイクロバルブに用いる筐体に、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を利用して流路や微小球の収容部を作製する場合、ガラスやシリコン基板、PDMS(poly−dimethylsiloxane)、セラミック材料を筐体の素材として、その表面に微小な溝を作製し、更に微小溝よりも大きな断面をもつ収容部を作製した後に、流路を通過できない程度の微小球を収容部に配置して、蓋部材とハウジングの貼り合わせを行うことで筐体を形成し、最後に磁力発生手段を取り付けることで簡単に構造の製作が可能であり、微細化、複数多段化、高い耐圧構造を極めて安価に実現できる上に、種々の材料を用いた設計が可能であるため耐薬品性にも優れた幅広い材料設計ができる。
また、本発明に係るマイクロバルブにおいては、微小球を用いた簡素な構成であって弾性支持部が存在しないために耐久信頼性が高く、磁力により微小球を移動するだけで開閉動作が可能であり、微小球の移動による遮断メカニズムにより流路と微小球の間の摩擦力が低減されるため、圧力差が大きくても安定した流路の開閉を円滑に行うことが可能である。なお、微小球に限らず微小円筒(これらを総称して微小体という)であっても良い。
更に、本発明によれば、以下の利点がある。
(1)弁として作用する微小体が移動の際に生じる摩擦力を低減できるため、高粘度・高圧力の流体搬送が可能である。
(2)弾性支持部をもたない単純な構造であるために微細化、集積化が容易であり、生産コストも低い。
(3)流路に対して垂直方向に微小体を移動する場合は、流路に沿った面内における微小体が占有する面積を少なくすることができるために、複数の収容部を設計し集積化する場合は有利な構造である。
(4)磁力発生手段は、ハウジングや蓋部材とは完全に分離して取付け交換が可能な構造にできる。収容部内で流路を開閉する微小体を個別もしくは、同時に移動させることも可能である。
(5)構造が単純であるために、高い耐薬品性を持たせるなどの幅広い材料設計が可能である。
次に、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態にかかるマイクロバルブの側面断面図である。図2は、図1の構成をII-II線で切断して矢印方向に見た図である。
図1において、ブロック状のハウジング1は、平面である上面1aの中央に開口した袋穴状の収容部1bと、上面1aにおいて左右の両端から中央に向かって延在し収容部1bに連通した断面U字状もしくは凹状の流路溝1cとを有している。ハウジング1の素材としては、ガラス基板、シリコン基板、PDMS(poly-dimethylsiloxane)、セラミック基板などを用いることができる。ガラス基板上に流路溝1cを作製する場合は、ガラス基板上に光硬化樹脂または熱硬化樹脂、レジスト類や、ポリミドなどをスピンコートすることによって膜を形成して、露光、現像、エッチングなどを経て微小流路を作製する。そのほかにも、基板本体のウェットエッチング、RIEによるドライエッチングなどを用いて流路をエッチングするための各種加工手法を用いて作製してもよい。
収容部1bは、上面1aに対して面内方向や垂直方向に微小球2の変位を制限する形状をとってもよいし、任意の方向に微小球2を移動させる構成としてもよい。
ハウジング1の収容部1bは内径D1の円筒状であり、その内部には、外径D2(<D1)である微小球2が、流路溝1cの延在方向に交差する方向に移動可能に配置されている(図2参照)。微小球2は、流路溝1cを通過できない径をもち、強磁性体を含有するものを選択する。これは、微小球2を外部磁場印加によって変位動作させるためである。従って、微小球2としては強磁性材料を含む鉄球などを用いてもよいし、表面を保護するために各種メッキ、蒸着や表面処理加工などを行ってよい。
図1において、ブロック状のハウジング1の上面1aに密着するようにして、板状の蓋部材3が取り付けられている。蓋部材3により流路溝1cの上部が覆われることで、非磁性流体の入口側流路A及び出口側流路Bが形成されると共に、収容部1bも同時に遮蔽されるため、収容部1bは、流路A、Bを介してのみ外部と連通することとなる。ハウジング1と蓋部材3とで筐体を構成する。
蓋部材3は、ハウジング1に対して、接着剤、フッ酸を用いた接合、陽極接合、機械的な固定などをもちいて貼り合わせを行い、流路溝1cを外気から孤立させる機能を有するが、高圧流体を流す必要がなければ特に取り付けをする必要はない。また、必要であれば蓋部材3においても、ハウジング1と同様のプロセスを行い流路や収容部を設けることができる。
図1において、蓋部材3の上面には、収容部1bに対向して電磁石4が取り付けられている。電磁石4が磁力発生手段を構成するが、コイル、永久磁石などを用いて作製することができる。その他に、図示しないセンサーや、流路の導入口、導出口などが取り付けられている。
本実施の形態の動作について説明する。図1,2において、入口側流路Aは非磁性流体の貯蔵部(不図示)に接続され、出口側流路Bは、非磁性流体を供給すべき箇所(不図示)に接続されているものとする。ここで、外部の電源(不図示)から電磁石4には電力を供給しない状態では、図1(a)に示すように、微小球2は収容部1b内で自重により図1で下方に向かい、収容部1bの底面に接触する。即ち微小球2は出口側流路Bを開放する位置になる。このとき、入口側流路A及び出口側流路Bは、微小球2により塞がれることがなく、比較的大きな流量で非磁性流体が入口側流路Aから出口側流路Bに流れることとなる。
ここで、電磁石4に電力を供給すると、電磁石4に磁気が発生し、それにより図1(b)に示すように、微小球2は収容部1b内で重力に抗して磁力により電磁石4(図1で上方)に向かって吸引され、蓋部材3の下面に接触する。即ち微小球2は出口側流路Bを塞ぐ位置になる。このとき、入口側流路A及び出口側流路Bの間に微小球2が位置するようになるが、微小球2の外径D2は収容部1bの内径D1より小さいので、微小球2と収容部1bとの間には微小なスキマが存在する。従って、図1(a)に示す状態よりも出口側流路Bを通過する非磁性流体の流量は少なくなる。
このように収容部1b内の微小球2は、外部磁場の印加によって流路A,Bを開閉することができるので、微小球2の移動形態に応じて電磁石4をハウジング1や蓋部材3の面の任意の位置に固定することができる。
以上のように、本実施の形態のマイクロバルブは、簡単に作製される極めて簡単な構造であることにより、微細化、複数多段化、高い耐圧構造を極めて安価に実現できる上に、種々の材料で設計可能であるため耐薬品性にも優れている。また、幅広い材料設計が可能であり、微小球2を用いた簡単な形状で弾性支持部が存在しないために耐久信頼性が高く、外部磁場により微小球2を移動するだけで開閉動作が可能であり、微小球2の移動による遮断メカニズムにより流路A,Bと微小球2の間の摩擦力が低減されるため、圧力差が大きくても潤滑に安定した流路A、Bの開閉を円滑に行うことが可能である。
図3は、第2の実施の形態にかかるマイクロバルブを示す図1と同様な側面断面図であるが、同様な構成については説明を省略する。ハウジング1は、平面である上面1aの中央に開口した袋穴状の4つの収容部1bと、上面1aにおいて左右の両端から中央に向かって延在し4つの収容部1bと直列に連通する流路溝1cとを有している。各収容部1b内には、図1,2に示す例と同様に強磁性体である微小球2が配置されている。
図3において、ブロック状のハウジング1の上面1aに密着するようにして、板状の蓋部材3が取り付けられている。蓋部材3により流路溝1cの上部が覆われることで、非磁性流体の流路A,B,C,D,Eが形成されると共に、4つの収容部1bも同時に遮蔽されるため、内側の2つの収容部1bは、流路B,C、Eにより隣接する収容部1b、1bのみに連通し、両端側の2つの収容部1bは、流路A,Eにより外部と連通し且つ流路B、Dにより隣接する収容部1bに連通している。
図3において、蓋部材3の上面には、各収容部1bに対向して電磁石4が取り付けられており、また蓋部材3の下面には、収容部1bの一部を構成する溝3aが形成されている。電磁石4が磁力発生手段を構成するが、本実施の形態では、各電磁石4は独立して磁力を発生可能となっている。
本実施の形態の動作について説明する。図3において、入口側流路Aは非磁性流体の貯蔵部(不図示)に接続され、出口側流路Eは、非磁性流体を供給すべき箇所(不図示)に接続されているものとする。ここで、外部の電源(不図示)から全ての電磁石4には電力を供給しない状態では、各微小球2は収容部1b内で自重により図3で下方に向かって移動し、収容部1bの底面に接触する(流路を開放する位置になる)。このとき、流路A〜Eは、いずれの微小球2により塞がれることがなく、比較的大きな流量で非磁性流体が入口側流路Aから出口側流路Eに流れることとなる。
ここで、外部の電源から全ての電磁石4に電力を供給すると、全ての電磁石4から磁気が発生し、それにより各微小球2は収容部1b内で重力に抗して磁力により電磁石4(図3で上方)に向かって吸引され、蓋部材3の下面に接触する(流路を塞ぐ位置になる)。このとき、入口側流路A及び出口側流路Eの間に全ての微小球2が位置するようになるため、流路抵抗が増大し、非磁性流体の入口側流路Aから出口側流路Eへの流れが抑制される。
図4は、第3の実施の形態にかかるマイクロバルブの上面図であるが、蓋部材は取り外して示している。本実施の形態においては、図1,2の実施の形態に対して、ハウジング1に5個の収容部1bを形成しており、また入口側流路Aは入口が1つで中で分岐して5つの収容部1bに連通し、更に各収容部1bからそれぞれ出口側流路B〜Fがハウジング1の外部まで延在するように、計5本形成されている。また、各微小球2に対向して、ハウジング1の下面及び蓋部材3の上面に、電磁石(不図示)をそれぞれ取り付けている。それ以外の構成については、上述した実施の形態と同様であるため説明を省略する。
本実施の形態の動作について説明する。図4において、入口側流路Aは非磁性流体の貯蔵部(不図示)に接続され、出口側流路B〜Fは、非磁性流体を供給すべき箇所(不図示)に接続されているものとする。本実施の形態によれば、各電磁石への電力の供給状態を調整することで、蓋部材の下面に接触する微小球2を任意に設定できる。例えば図4において、紙面垂直方向上方に移動した微小球2をハッチングで示し、紙面垂直方向下方に移動した微小球2を白抜きで示しているように、出口側流路B、D、Fは微小球2によりふさぎ、出口側流路C、Eは開放している。これにより、必要な箇所にのみ非磁性流体を供給することができる。このように、一つの入口側流路Aから侵入した非磁性流体を、出口側流路B〜Fの選択を行うことによって、流体の流れに乗って搬送される微粒子などの振り分けを行うマイクロバルブとして機能させることができる。
以上述べたように、本実施の形態によれば、外部磁場を用いて微小球の移動により流路の開閉を行うことが可能であるために、簡単な構造で、耐圧力性に優れたバルブを実現できることから、粘度の高い油の輸送や、高圧の流れを用いた流体の搬送にも使用できる。また、簡単な構造であるために、微小化や集積化に極めて優れた構造であり、特に直列に配置することによってバルブとしての開閉機能を向上できる。さらに外部磁場を制御して複数チャネルを組み合わせて流路の開閉を行うことで、流体中に流した磁性体以外の様々な微粒子の搬送、例えば細胞やDNAなどの生体物質を通過しても細胞が破壊されることがなく、効率的な搬送経路の選択を行うことも可能である。以上のように、微小球の集積化と配置設計によって多機能な応用の実現や生産コストの削減を図ることができる。
以上、本発明を実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良が可能であることはもちろんである。
本実施の形態にかかるマイクロバルブの側面断面図である。 図1の構成をII-II線で切断して矢印方向に見た図である。 第2の実施の形態にかかるマイクロバルブを示す図1と同様な側面断面図である。 第3の実施の形態にかかるマイクロバルブの上面図である。
符号の説明
1 ハウジング
1a 上面
1b 収容部
1c 流路溝
2 微小球
3 蓋部材
3a 溝
3b 流路溝
4 電磁石
A,B,C,D,E、F 流路

Claims (1)

  1. 非磁性流体の流路を形成した筐体と、
    前記筐体内において、前記流路を塞ぐ位置と開放する位置との間で移動可能に配置された磁性体の微小球と、
    前記微小球を駆動する磁力発生手段と、を有することを特徴とするマイクロバルブ。
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