添付図面を参照しながら、本発明の特定の例示としての実施形態の下記の説明を読めば、本発明をよりよく理解することができるだろう。
添付図面は、本発明の通常の実施形態だけを示すもので、それ故、本発明の範囲を制限するものと解釈すべきではない。何故なら、本発明は他の同様に効果的な実施形態にも適用することができるからである。可能な限り、全図面を通して同じ要素には同じ参照番号が付けてある。
以降の説明においては、使用するいくつかの用語は同じものを意味する。「ユーザ」という用語は、「移動体」、「移動局」および「移動ユーザ」という用語の代わりに使用することができる。「基地局」という用語も、「基地」という用語の変わりに使用することができる。これらの使用は、如何なる意味でも制限のためのものではない。
本発明は、各UWB無線リンク用のシンボル(ビット)当たりのパルス数の動的適応を含む。各リンクは、他のユーザ・リンクから個々に変えることができるので、各リンクに対する適応を差別化することができる。動的に差別化したリンク適応UWBは、異なるユーザ間でその適用について制限を受けないし、適応はそれぞれの場合に所望のデータ・レートを割り当てる各ユーザに対して個々に行うことができる。この特徴により異なるユーザに対するサービスの品質を差別化することができる。
図1は、通常の無線通信ネットワーク100の簡略システム図である。無線通信ネットワーク100は、基地局102と通信する多数の移動局101を含む。移動局101および基地局102は、無線ネットワークでの通信を容易にする無線トランシーバを含む。図1には示してないが、ネットワーク100は固定または移動ユーザを処理することができ、より大きなネットワークを形成するために、他のこのようなネットワークと相互接続することができることをよく理解することができるだろう。本発明の目的のためには、図1における簡略されたネットワークに対処できれば十分である。
ネットワーク100内の移動局にとって基地局に近接するということは重要なことである。図1は、ゾーンAおよびゾーンBで示す数個の同心円ゾーンを示す。ゾーンAは、2つの移動ユーザを含み、基地局に最も近いこれらの領域を含む。同心円の間のエリアとして示すゾーンBは、基地局からより遠くに位置する2つの他の移動ユーザを含む。基地局からさらに遠くのゾーンBの外側に2つの他の移動ユーザが位置する。移動ユーザが基地局からさらに離れると、その通信はさらに減衰し、さらにフェージングを起こし、さらにノイズにより劣化する。これについては、以下にさらに詳細に説明する。
本発明は、チャネル状態の変化を検出した場合に、各移動局に対して個々に、ビット当たりのパルス数Nsを変えるための動的適応技術を含む。それ故、少なくとも技術的観点からいって、UWBインパルス無線通信についての詳細を理解することが重要である。そのために、変調スキームについて以下に簡単に説明する。UWB通信の基本IR変調は従来技術において十分に確立されている。例えば、上記のScholtz の論文、およびFullerton に付与された米国特許第5,677,927号、Richardsに付与された米国特許第6,671,310号、Cowle に付与された米国特許第6,717,992号、米国特許出願US2004/0258133号公報、および下記の技術文献、すなわち、通信に関するIEEE会報、48巻、4号、679〜691ページ(2000年4月)掲載のMoe Zin 他の「無線多元接続通信のための超広帯域タイム・ホッピング拡散スペクトル・インパルス無線(Ultra-Wide Bandwidth Time-Hopping Spread Spectrum Impulse Radio for Wireless Multiple-Access Communications )」およびIEEE通信レター、2巻、2号、36〜38ページ(1998年2月)掲載のMoe Zin 他の「インパルス無線:その動作(Impulse Radio: How It Works )」を参照されたい。
UWBは、低電力送信が経路損失に打ち勝つことができる無線ローカル・エリア・ネットワーク(WLAN:wireless local area network )、および無線個人エリア・ネットワーク(WPAN:wireless personal area network)用の物理層としてだけ提案されてきた。これらの短距離通信(SRC:short range communication )システムは、主として通達範囲エリアが狭いために、他の中距離セルラー無線システムよりも少ない数のユーザ向けのものである。以下にさらに詳細に説明するように、UWBシステム用の動的リンク適応の本発明は、SRC環境に対して非常に適したものになる。何故なら、低負荷システムの平均データ・レートを有意に速くすることができるからである。
図2および図3は、無線システムで使用するためのインパルス無線変調技術の簡略ブロック図である。パルス位置データ変調(PPM:pulse-position data modulation)による通常のタイム・ホッピング多元接続超広帯域フォーマットは次式により表される。
ここで、w
tr(t)はパルス持続時間T
pの送信機クロックの時間ゼロで名目的にスタートする送信パルス形を表し、T
fは、パルス反復時間(またはフレーム持続時間)を表し、c
(k) jは長さN
pの周期的な疑似雑音(PN:pseudonoise )シーケンスを含むベクトルのj番目の要素である。タイム・ホッピング符号は、c
(k) j・T
cの追加の時間シフトを導入する範囲[0,N
h]内の整数であり、d
(k) iは移動局kのデータ情報を運ぶ2値シーケンスのi番目の要素であり、δは情報による時間シフトである。表記
は、関数の引数である実数x以下の最大の整数を返送するフロア関数である。N
sはビット当たりのパルス数である。
上付きの(k)で示す数量は送信機に依存する値を示す。それ故、k番目の送信機(移動局)が送信する信号は、異なる時間にシフトしている多数のパルス形からなる。この場合、j番目のパルス形は、時間
からスタートする。この信号モデルのデータ・レートは、次式により表される。
時間シフトの各成分については、以下にさらに詳細に説明し、また図2に示す。時間シフトの成分は、時間ベース201(図3の時間ベース301)により形成される一様なパルス・トレーン間隔、タイム・ホッピング符号遅延202が形成する疑似ランダム・タイム・ホッピング(図3の場合には、このことは、ユーザ・セレクタ302、タイム・ホッピング符号発生器303、および符号遅延304により行われる)、また、PPM203によるパルス位置変調(PPM:pulse position modulation )を含むデータ変調(図3の場合には、このことは、データ・ビット・ソース305、Nsソース307、フロア関数要素306、およびパルス位置変調器308により行われる)である。時間シフトが終了した場合には、式(1)で示す送信パルス・シーケンスを生成するために、超広帯域システム用のモノサイクル・パルス形がUWBパルス発生器204(図3の場合には、UWBパルス発生器309)により生成される。
時間ベース201(301)は、Tf秒の間隔を有するモノサイクル・パルスからなる、Σ∞ j=−∞w(t−jTf)の形の間隔が一様なパルス・トレーンを生成する。このフレーム時間またはパルス反復時間Tfは、使用できるクロック・ソースの安定性の程度により、パルス幅より遥かに長くてもよい。このパルス・トレーンは低い使用率を有する。これらの信号は一様な間隔のパルスを有する多元接続環境で発生するので、これらの信号は、場合によっては、2つ以上の信号からの多数のパルスが同じ時間的瞬間に受信される壊滅的衝突による影響を受けやすい。これらの衝突には、疑似ランダム・タイム・ホッピングを使用することにより対処することができる。
図1の多元接続環境での壊滅的衝突が起こらないようにするために、各移動局またはリンク(整数kで示す)には、タイム・ホッピング符号と呼ばれる異なるパルス・シフト・パターンc(k) jが割り当てられる。各符号要素c(k) jは、範囲0≦c(k) j<Nhの整数である。タイム・ホッピング符号は、周期Npの周期的な疑似ランダム符号であるので、すべての整数iおよびjに対して、c(k) j=c(k) j+iNpとなる。それ故、タイム・ホッピング符号が、パルス・トレーン内の各パルスに追加の時間シフトを供給することを理解することができるだろう。この場合、j番目のパルスは、c(k) j・Tc秒の追加シフトを起こす。符号によるこれらの追加時間シフトは、0とNhTcとの間の個々の時間である。
ユーザ・セレクタ302が、移動局が使用中のリンクの指標kを決定する。タイム・ホッピング符号発生器303は、移動局が使用するタイム・ホッピング符号を生成する。符号遅延304(または図2の場合には、タイム・ホッピング符号遅延202)は、下記の形のパルス・シーケンスを生成するためにこの情報を使用する。
この波形は、周期T
p=N
pT
fの周期的なものである。何故なら、タイム・ホッピング符号が周期N
pの周期的なものであるからである。この符号は、実際には、パワー・スペクトル密度を、間隔が一様なパルス・トレーンのライン・スペクトル密度(1/T
f間隔)からより狭いライン間隔を有するスペクトル密度(1/T
p間隔)に低減する効果を有する。
NhTc≦Tfであると仮定すると、この比率はその上でタイム・ホッピングすることができるフレーム時間の一部を定義する。通常、あるトランシーバの動作およびリセットをする時間的余裕を与えるために、NhTc/Tfは必ず1未満であると仮定する。NhTcをあまり小さく選択すると、壊滅的衝突が起こる虞れが依然として残る場合がある。しかし、NhTcが十分大きく、タイム・ホッピング符号をうまく設計すれば、多元接続干渉をガウス・ランダム・プロセスと見なすことができる。
ユーザ・データ情報ストリームの内容をベースとするパルス位置変調は、式(1)に示すように、パルス・シーケンスに追加の時間的シフトを供給する。図2においては、PPM203がパルス位置変調を行う。図3はその詳細図である。図3においては、j番目の移動局(ユーザ)に対するユーザ・データ・ソース305、Nsソース307、フロア関数要素306、およびパルス位置変調器308は、全パルス位置変調を行うために協動する。Nsソース307は、UWB IRシステムのビット当たりのパルス数Nsの値を格納する。フロア関数要素306は、ユーザ指標jおよびビット当たりのパルス数Nsの比率に対してフロア関数を実行する。
ビット・ソース305からのユーザのデータ・シーケンスである、移動局kのd(k) iは、通常、ある形で情報を運ぶ2値シンボル・ストリームである。この形の通信システムがオーバサンプリングされる。すなわち、Nsパルスがビット当たり送信され、各Nsタイム・ホッピングの後で変調データ・ビットが変化する。この変調技術の場合には、データ・ビットが0である場合、パルス上で追加の時間的シフトは変調されないが、ユーザのデータ・ビットが1である場合には、δの時間的シフトがパルスに追加される。データ変調により、疑似ランダム・タイム・ホッピング変調のパワー・スペクトル密度がさらに平滑になる。この変調フォーマットの場合、1つのビットはTs=NsTfの持続時間を有する。固定フレーム(パルス反復)時間Tfの場合には、2値シンボル・レートまたはデータ・レートRsが、式(2)に示す所与の2値シンボル(ビット)により変調されるモノサイクル・パルスの数Nsを決定する。
UWBパルス発生器204およびUWBパルス発生器309は、変調したデータ・シーケンスを、UWB IRモノサイクルに通常関連するパルス形に変換する。これらのモノサイクル・パルスは、各移動局により基地局に同報通信される。
基地局においては、受信信号は、図1に示すように、関連する移動局が同報通信した信号を合成したものである。Nuユーザが多元接続システムで能動状態にある場合、受信機のアンテナの出力のところの合成受信信号のモデルは、次式により表される。
ここで、A
kは移動局から基地局受信機までの伝搬経路上での移動局kの信号の減衰を表し、S
(k) rec(t)は、ユーザkからの受信信号を表し、τ
kは、ユーザkの移動局(送信機)のところのクロックと時間的非同期とも呼ばれる基地局(受信機)との間の潜在的時間差を表す確率変数であり、波形n(t)は加算的白色ガウス雑音(AWGN:additive white Gaussian noise )を表す。能動ユーザN
uの数および信号振幅A
kは、データ・シンボル間隔中一定であると仮定する。
アンテナ/伝搬システムは、その出力のところで送信モノサイクルwtr(t)の形をw(t)になるように修正し、一定の減衰および遅延を導入する。後に続く理論セクションにおいては、チャネル・モデルは多重経路および分散効果を無視するものと仮定する。
必要な信号を抽出するための最適プロセッサは、干渉信号の形についてのすべての受信機または基地局の知識を使用する複雑な構造である。しかし、ユーザの数が多く、完全な複数のユーザの情報が入手できない場合には、他のユーザからの干渉信号の総合的影響をガウス・ランダム・プロセスとして近似するのが妥当である。上記のScholtz のIEEE MILCOM論文に記載され、引用により本明細書に組み込むものとする基本的UWB受信機は、干渉についてのガウスの仮定に依存している。AWGNの2値変調インパルス信号の1つのビットに対する最適受信機は、次式の場合、d(l) 0=0であることを決定する相関受信機である。
ここで、v(t)=w(t)−w(t−δ)は、1つのパルスを相互に関連づけるために使用するテンプレート信号である。
式(5)の決定手順を使用する場合のエラーPeの確率は次式により表される。
当該技術分野では、いくつかの仮定を使用した場合、式(6)で使用する信号対雑音比(SNR:signal-to-noise ratio )の式が次式により表されることは周知である。
ここで、m
pは、1つの受信パルスがテンプレート信号と相互に関連づけられ、次式の他の変数で定義される場合の相関器出力である。
ここで、間隔τ
iはデータ・ビットを表す波形を含んでおり、受信ビット、w
bit(t)の理想的波形は次式により表される。
v
bit(t)は、1つのビットを相互に関連づけるためのテンプレートである、v
bit(t)=w
bit(t)−w
bit(t−δ)。このシステム・モデルにより、これらのシステム・パラメータに基づいて以下の節で動的適応送信方法および装置について説明する。上記データ・レート、エラー確率およびSNR間の関係を、この一意の適応送信技術の性能を評価するために以下に使用する。この改善したシステムについては、図4〜図6を参照しながら説明する。
適応送信は、無線通信システムの効率を改善する潜在的可能性を有する。UWB IR無線通信用の以下に説明する適応送信技術は、UWB IR受信機が、複数のパルスを送信情報の各ビットを回収するために統合する変調でのオーバサンプリングに依存する。下記の動的適応は、UWB IR受信機がユーザ情報のビットを回収するために統合を行うパルスの最適な数は、パルス速度、ビット速度、妨害レベル(jamming level )および範囲を含む多数の変数に依存するという事実を使用する。この適応スキームの性能評価については、範囲および複数のユーザの干渉により制限されるシステムのところで以下に説明する。時変送信チャネルの性能を最大にする適応戦略の最適化についても説明する。
図4は、送信チャネルの変化をベースとする動的適応を使用する本発明の原理による図1の無線システムで通信を行うUWB IR送信機および受信機の簡略ブロック図である。図4のシステムは、動的UWB(DUWB:dynamic UWB )送信機410、動的UWB(DUWB)受信機420、および送信チャネル430を含む。実際には、送信機410は、図1の基地局(または移動局)の送信機部分に対応し、一方、受信機420は、図1の移動局(または基地局)の受信機部分に対応する。
チャネル430は無線チャネルである。信号は基地局および移動局のところのアンテナ装置(図示せず)を介して受信される。図4の送信チャネルを横切る実線は、信号がどこでどのように使用されるのかをよりはっきり示すためのものである。各基地サイトおよび移動サイトは、送受信用のアンテナ装置を使用し、UWBは信号プロトコルに従うので、当業者であれば、フィードバック・チャネル431および同期チャネル433は、無線チャネルを通して送信される多元接続UWB IRストリームに埋め込まれている論理または仮想チャネルであることを理解することができるだろう。
ビット当たりのパルス数Nsがすべてのユーザに対して同じであり、全システムに対して一定の定数である従来の多元接続UWB IRシステムとは対照的に、図4〜図6に示し説明する本発明は、システムが推定する変化するチャネル状態に基づいて各ユーザに対するNsの最適な値を決定する。ユーザ・データに適用される時間ダイバーシティは、あるパルスから他のパルスのように頻繁に変化するチャネルの変動を抑え、BERの統計的低減を行うが、多元接続UWBチャネルは、外部干渉、シャドウイング、移動性およびユーザの数の変化によるゆっくりとした変動の影響を受ける。それ故、Nsの固定値は、常に最適というわけではなく、そのためチャネル容量および処理能力のようなシステム・リソースを無駄に消費する。本発明を使用すれば、これを追加のシステム処理能力を達成するチャネルのよりすぐれた最適な使用に変換することができる。
本発明のある態様によれば、送信信号、(s(t))は、図5および図6の動的適応技術により計算したビット当たりのパルスの最適の数Nopt sにより変調される。この適応技術は、Nopt sを適応するためにチャネル状態情報を使用する。チャネル状態情報(CSI:channel state information )は、受信機で、送信されたパルス当たりの平均信号対雑音比(SNR)として推定することができる。次に、この情報は、Nopt sの新しい値を生成するために適応アルゴリズム要素上を通過する。適応アルゴリズム要素は、CSI推定器と共に配置することもできるし、または送信サイトに設置することもできる。後者の場合、CSI情報は、フィードバック・チャネルを通して送信機に送信される。フィードバック・チャネルは、規則正しいUWBストリームの論理チャネルである。Nopt sの値が更新された場合、更新された値は、同期チャネル、UWBストリームに埋め込まれている論理チャネルにより、対応する送信機または受信機により共有され、そのためNopt sの更新した値を使用する通信を、中断なしで移動局と基地局との間で継続することができる。
この装置の場合、Nopt sの値が、個々にまた他のユーザから独立して各ユーザに対して動的ベースで適応され、更新される場合があることが考えられる。変動に応じて、一般的にチャネル状態の遅い変動である各ユーザに対するビット当たりのパルス数Nopt sの値を動的に変えることにより、その個々のチャネル上の容量の各ユーザの使用を最適化することができ、それにより任意の適用されるビット誤り率要件に適合しながら、可能な最大データ・レートを入手することができる。
図4の実施形態の場合には、DUWB送信機410は、データ・バッファ411と、適応変調器413と、適応アルゴリズム要素412とを含む。データ・バッファ411は、受信機に送信するユーザ・データ情報を処理する。データ・バッファ411は、すでに説明したように、UWB IR変調のために適応変調器413へユーザ・データを供給する。適応変調器413は、バッファ411からユーザ・データを受信し、要素412からこの特定のユーザのビット当たりのパルス数Nopt sの更新した値を受信する。変調器413は、式(1)に示すように、ユーザkに対する送信信号s(k)(t)を生成するために、Nopt sの値によりデータを変調する。この信号は、送信アンテナ装置(図示せず)により無線多元接続UWBチャネル432を通して送信される。変調器413は、また、同期チャネル433を介して受信機に、ユーザkのNsの新しい値Nopt sを送信する。要素412は、フィードバック・チャネル431、UWBストリーム内のもう1つの論理チャネルを介して、受信機から推定チャネル状態情報ξ rを受信する。これらの論理チャネルは多くの異なる方法で実現することができる。例えば、CSI情報またはNopt s情報は、ユーザ・データ送信のオーバヘッドまたはペイロード部分で組み立てることができる。
DUWB受信機420は、データ出力バッファ423と、適応復調器421と、チャネル状態情報(CSI)推定器421とを含む。受信機420が受信した信号および受信機420から送信された信号は、UWB通信のためにアンテナ装置(図示せず)により処理される。式(4)に示す受信したUWB信号、r(t)は、復調器421および推定器422に結合される。適応復調器421は、受信信号からユーザ・データを回収し、そのデータを出力データ・バッファ423に送る。変調器421も、復調ルーチンを適応させ、Nopt sの更新した値により変調した以降のユーザ・データを回収するために、同期チャネル433を介してNopt sの更新した値を受信する。データ・バッファ423は、受信機が出力するユーザ・データを処理するオプションとしての要素である。明らかに、データ出力は、復調器421の出力から直接処理することができる。受信信号は、チャネル状態を判断するためにCSI推定器422により使用される。チャネル条件または状態の推定は、当業者にとって周知のものであるのでここでは説明しない。チャネル状態の推定は、平均値または瞬間値の形でパルス当たりの信号対雑音比(SNR)を表す信号を生成するものと予想される。平均SNRは好ましいものである。何故なら、本発明はゆっくりと変化するチャネル条件を目的としているからである。CSI推定器422は、フィードバック・チャネル431を介して送信機へそのチャネル状態推定信号ξ tを送信する。すでに説明したように、フィードバックおよび同期用の論理チャネルは、例えば、ユーザ・データ送信のXシンボルのオーバヘッド部分またはペイロード部分により、多くの異なる方法で実現することができる。CSI情報および更新したビット当たりパルス情報は、正規の方法で、ユーザ・データ内で、または情報の一方または両方の部分がデータ・ストリームで運ばれるトリガ・ビット信号の特種な信号フォーマットにより送信することができる。
推定器422は、適応アルゴリズム要素412と同じ装置内に配置することもできる。例えば、両方の要素が基地局内に位置している場合には、チャネル状態情報は、Nopt sの新しい値を決定するために、直接適応要素に送られる。決定されると、その新しい値を移動局に送信することができ、次に移動局は、Nopt sの新しい値を使用する通信がスタートする場合に、同期チャネルを通して基地局に単に通知する。
適応アルゴリズム要素412は、受信したチャネル状態情報ξ rに応じてNopt sの新しい値を決定する。この決定は、図5および図6に示すいくつかの方法により行うことができる。各方法の結果は、ユーザkおよびユーザkと通信している基地局のために関連する変調器および復調器が使用するために、ビット当たりのパルスの更新した最適値Nopt sを出力する。理論を動機とするこれらの方法については、方法の説明と共に以下の節で説明する。
この説明の最初の部分で、シンボル毎に統合したパルス数Nsと結果としてのエラーの確率Peとの間の関係について説明した。より詳細に説明すると、Nsは、式(7)に示すようにSNRに影響し、一方、SNRは式(6)に示すようにBERを決定することが分かった。これらの式によれば、NsがSNRに影響を与える唯一のパラメータである場合には、ビット当たりのパルス数Nsを増大すればエラーの確率を小さくすることができる。BER要件を満たすNsの最小値は、最適値である。何故なら、この最小値は式(4)の最大データ・レートを達成するからである。
チャネル条件は静的なものではない。チャネル条件はSNRのように時間と共に変化する。何故なら、SNRは、シンボル当たりどれだけ多くのパルスが送信されたかについてNsに依存するばかりでなく、本来時間と共に変化するユーザ数、妨害レベルおよび範囲のような他の要因にも依存するからである。それ故、これらの他の要因の時間的変動により、Nsの静的な固定値が最適でない場合がでてくる。それ故、任意のチャネル条件に対する特定のBERを維持するために、これらの他の要因の変動を補償するNsのある値が存在する。このような値は最適と呼ぶことができる。Nsの値がいわゆる最適値より低いと、BERが受け入れられないものになり、一方、Nsが最適値より高いと、BERが必要なBERを潜在的に超える虞れがある。このこと自体は有害ではないが、このことはあるリソースが無駄に使用されていることを示している場合がある。
すべてのリソースを利用するために、本発明の原理による適応は、最適になるように決定されるビット当たりのパルス数Nopt sをベースとしている。それ故、このような適応を使用すれば、変化するチャネル条件に応じてUWB IR信号の変調を動的に変えることができる。
NsまたはNopt sを適応パラメータと見なした場合、変調モードをNsの各値に対して定義することができる。Nsが低いモードは、スペクトルの点でより効率的であり、ユーザはより高いデータ・レートを達成することができる。何故なら、同じ量の情報を式(4)に示すようにより少ないパルスで送信することができるからである。逆に、Nsが高いモードの場合には、エラーの確率を小さくするためにシンボル当たりより多くのパルスを送信することによりデータ・レートが低くなる。Nsが高い変調モードは、Nsが低い変調モードよりも堅固である。何故なら、Nsが高ければ同じBERを維持するのにより低いSNRですむからである。それ故、Nsを変化することにより、SNRに対する強度および変調モードのスペクトル効率を変化させることができる。
本発明の原理によれば、UWBシステムは、ユーザと基地局との間の各リンクまたはチャネルを、最適値Nopt sに対してシンボル当たりのパルス数Nsを動的に変えることにより、チャネル条件に適応させるという方法で動作する。このようにして、所与のチャネル条件に対する最適な変調モード、すなわち、現在のチャネル状態に対して最善のスペクトル効率を達成する変調モードをいつでも使用することができるために処理能力が向上する。
ステップ501〜507は、受信した推定チャネル状態情報(CSI)、ξに応じて、ビット当たりの最適なパルス数Nopt sのための新しい値を決定するための例示としての1つの方法を示す。本発明の場合には、供給したチャネル状態情報は、実際のSNRまたは平均SNRのようなUWBパルス当たりの信号対雑音比(SNR)の基準であると見なされる。ステップ504〜507は、システムが動作する前にオフラインで計算されてもよいものである。
ステップ501において、チャネル状態情報(CSI)が、受信信号から周知の技術により入手される。これらの信号から、UWB信号のパルス当たりのSNRを推定することができる。推定値ξは、瞬間的な測定値であってもよいし、または平均測定値であってもよいが、平均測定値であることが好ましい。すでに説明したように、推定値は、遠隔局のところで決定することもできるし、遠隔局から受信することもできるし、または同じ局で決定することもできる。ξの形をしているCSIは、ステップ502に供給される。
ステップ502において、所与のチャネル状態情報に対するNsの最適値が近似される。近似を行うために、ステップ502において、ステップ507から追加の変数、すなわちSNRoptを受信する。ステップ502において、以下の計算が行われる。
次に、制御がオプションとしてのステップ503に渡される。そうでない場合には、N
opt sの近似した値が変調器に出力され、遠隔局に送られる。この近似については、すぐこの後で詳細に説明する。
オプションとしたステップ503において、Nopt sの値は、必要に応じて、変調器により処理されるNsの可能な値の数を低減するために量子化が行われる。例えば、システムを5,10,15,20等のNsの値で動作するように設計することができる。この場合、Nsに対するステップ502が出力する値が17である場合には、量子化器は、実際の値が17であっても、特定の量子化器構成に基づいて、値を15または20として出力する。量子化器ステップの大きさおよび、実際には、量子化器ステップを使用するか否かの決定は、システムの複雑さおよび精度に影響を与える問題である。最も複雑で精度の高い方法では、このステップで量子化の使用を避ける場合がほとんどである。
ステップ504〜507において、SNRoptの値が決定される。この方法のこの説明をさらに進める前に、この方法のこの部分で使用する技術の基礎である理論および実際を理解することが重要である。
この節においては、単位時間に正確に転送することができるデータの量である、処理能力を最大にする最適な変調モードを生成するための方法について説明する。SNRとして通常測定される所与のリンク品質の場合、シンボル当たりNsのパルスにより達成される処理能力Sは、次式により表すことができる。
ここで、BLERは(N
sによって指定される)所与の変調スキームに対するリンク品質の関数としてのブロック誤り率であり、この場合、少なくとも1つのビット・エラーが発生した場合には、ブロックはエラーを含んでいるとみなされ、R
sは式(4)において定義されたデータ・レートである。適応送信のタスクは、式(8)による処理能力Sを最大にする、シンボル当たりの最適なパルス数N
opt sを常に選択することとして、形式的に表すことができる。
BLERは、ブロックの少なくとも1つのビットがエラーを起こしている確率である。これは、明らかに、BLER=(1−Pc)で表すように、すべてのビットを正確に受信する確率の補数である。さらに、すべてのビットを正確に受信する確率は、Pc=(1−BER)Lによるビット誤り率(BER)に関連する。この場合、Lはブロック当たりのビット数である(L=Tr/(TfNs)であり、この場合、Trは単位時間でのブロック持続時間である)。式(8)に代入することにより、次式が得られる。
処理能力に対するこの式は、SNRを含んでいないので、さらに修正しなければならない。
次式に示すように、BERは、式(6)のシンボル当たりのSNRに関連し、一方、シンボル当たりのSNRは、パルス当たりのSNRおよびシンボル当たりのパルス数Nsの積に等しい。
この事実により、次式で表される処理能力の最終式が必然的に得られる。
式(12)が示す処理能力Sは、図10の表面にグラフで示す2つの変数N
sおよびξのスカラー関数である。図10を見れば、本発明の原理によるUWB通信システムの適応送信の利点を容易に理解することができるだろう。N
sの値が静的であり、N
sの値がSNRに動的に適応しない標準UWBシステムの場合には、達成できる処理能力は予め選択したN
sの固定値に対応する表面の値に制限される。それ故、SNRが静的UWBシステムで変化すると、SNR軸に沿って移動することができるだけで、その場合、処理能力は向上しない。同じ高さに留まる代わりに、図10の表面上を上方に移動することによってだけ処理能力を向上することができる。DUWBを動的に適応させることにより、システムは処理能力を向上させることができる。
次のステップでは、式(12)の処理能力Sの式を使用して、適応にとって必要不可欠な、パルス当たりの所与のSNRに対して送信されるべきシンボル当たりの最適なパルス数Nopt s(ξ)を見出す。Nopt s(ξ)を解析的に見出す方法では、次式を構成する。
Q関数の偏微分による式(13)から得られるN
opt s(ξ)の正確な式は、従順な関数(amenable function )ではない。そのため、S(N
s,ξ)のグラフ表示の観察に基づいて、N
opt s(ξ)の優れた近似値を見出すために、別の方法を検討する必要がある。この場合も、図10から任意のパルス当たりの所与のSNR ξに対して、処理能力面の「縁部」のところで最大の処理能力が達成されることが分かる。それ故、最大の全処理能力を入手するための方法は、いつでもSの「縁部」に沿って移動する。実際には、N
opt s(ξ)を知ることができ、三次元曲線S
opt(N
opt s(ξ),ξ)を描くことができれば、この曲線は表面Sの「縁部」に完全に適合することが予想される。この議論から、N
opt s(ξ)に対する式を見出すことは、その三次元図形がSの「縁部」に適合する曲線を見出すのと同じであると考えるのが妥当である。この曲線を見出すために、本発明のシステムによる最適な適応の結果として、BERは一定であると仮定する。この仮定が正しいものであるならば、式(6)により、シンボル当たりのSNRも一定に維持されることになる。このような条件の下で、N
opt s(ξ)に対する式は、式(11)を見れば分かるように、次式のようになる。
ここで、SNR
optは未知の定数である。図10は、また、表面Sと、4つのSNR
opt値、すなわち15,19,34および30に対する仮定から得られる4つのSNR
opt(N
opt s)曲線の重畳を示す。その観察から、実際に生成した曲線のグループが必要に応じてSの「縁部」に適合する傾向があることを理解することができる。この結果は、仮定が上記近似に有効であることを確認している。何故なら、曲線SNR
opt(N
opt s)をSの縁部に適合させるSNR
optの値を見出すことができるからである。図10の曲線を生成するために使用するパラメータT
rおよびT
fを特に選択するために、SNR
opt=19の場合に、最善の適合が行われると判断することができる。それ故、この例示としてのシステムで使用する特定の構成(T
r,T
f)に対して送信するパルスの最適な数N
sは、次式により近似することができると結論するのが妥当である。
要約すると、この方法は、適応N
opt s(ξ)に対するキー機能を評価するための簡単な方法を提供する。式(15)で使用するSNR
optの値は、持続時間変数T
rおよびT
fの異なるパラメータの選択に対して異なるものであってもよい。しかし、SNR
optは、同じ手順、すなわち、これらのパラメータによりS表面を決定し、SNR
optの異なる値に対する曲線を重畳し、表面に最もよく適合するSNR
optの値を選択する手順により見出さなければならない。この手順を行うことにより、シンボル当たりの最適なパルス数N
sへの優れた近似を任意のチャネル状態に対して確実に使用することができる。
上記方法を使用することにより、ステップ504において、選択した組の値TrおよびTfに対する式(12)によるシステムの処理能力が計算される。Trはブロックの持続時間であり、移動局Tfはフレームの持続時間であることを思い出されたい。Nsおよびξは、この計算中、値の広い範囲において変化する。ほとんどのシステムのNsの実際の範囲は、1〜約500であるが、2000のようなさらに高い最大値が、センサ・ネットワークのような低いデータ・レート用途に対して考えられる。ξに対する実際の範囲は0.001〜約0.1であるが、さらに高い最大範囲も考えられる。この場合、ξは10以上程度である。
ステップ505において、Nopt s(ξ)の値は、以下の関数によりステップ504において計算した処理能力の値のグループにより決定される。
「arg」関数は、N
sのすべての値を通して最大処理能力を返送した特定のN
s(ξ)を供給する。
ステップ506において、Nsの最適値が式(14)により近似される。次に、ステップ502においてシステムが使用するシステム値が次式により決定される。
上式の場合、被積分関数は累積エラーの2乗に対応する。積分は、最小値から最大値までξの値の広い範囲において行われる。「Min」関数は、SNR
optのすべての可能な値上の積分関数の最小値を決定する。すでに説明したように、「arg」関数は、Min関数により見出された最小値になるSNR
optの値を返送する。SNR
optのこの後者の値はステップ507において後で使用するために出力され、格納される。この値は、ステップ502において、N
opt s(
ξ)の計算の際に使用される。
図6は、Nopt s(ξ)を決定するためのこの方法に対する代替の方法を示す。ステップ601および602は、ξの形のチャネル状態情報(CSI)が入手された場合にリアルタイムで行われ、必要に応じて、量子化される。ステップ603〜605は、通常、変調器へのNsのすべての更新の遅延を避けるために、(リアルタイムでなく)オフラインで行われる。
ステップ601において、CSIが入手され、そこからパルス当たりのBER ξが推定される。オプションとしてのステップとしてのステップ601は、また、ξの値を量子化する可能性を含む。ξは実数であってもよいので、量子化は、単に四捨五入演算を含むこともできるし、単にξの整数部の返送を含むこともできる。この方法の精度に重大な影響を与えることなく、ξの可能な値を制限するためにさらなる量子化を実行することができる。ステップ605からのルックアップ・テーブル内の記憶容量は有限なので、ルックアップ・テーブルに含まれているのと同じ数の値だけを有するように、ξの値を量子化することができる。
ステップ602において、テーブルを参照するために、ξの値、チャネル状態情報がステップ601から受信され、入力値として使用される。ステップ605において格納したテーブルは、ある範囲のNopt s(ξ)の値およびξの関連する値を含む。参照によりNopt s(ξ)の値が検索された場合には、ステップ602において出力され、適応変調器および復調器に送られる。
ステップ603において、ステップ504で使用した方法と類似の方法でシステム値の全範囲に対して処理能力値のグループが計算される。上記方法の場合、ステップ603において、システム・パラメータの選択した一組の値TrおよびTfについてのシステムの処理能力が式(12)により計算される。この場合も、Trがブロックの持続時間であり、一方、Tfはフレームの持続時間であることを思い出されたい。Nsとξは、この計算の際に値の広い範囲で変化する。すでに説明したように、ほとんどのシステムの場合Nsの実際の範囲は、1〜約500であるが、2000のようなさらに高い最大値が、センサ・ネットワークのような低いデータ・レート用途に対して考えられる。すでに説明したように、ξに対する実際の範囲は0.001〜約0.1であるが、さらに高い最大範囲も考えられる。この場合、ξは10以上程度である。
ステップ505に類似のステップ604において、Nopt s(ξ)の値が、以下の関数によりステップ603において計算した処理能力の値のグループにより決定される。
「arg」関数は、N
sのすべての値を通して最大処理能力を返送した特定のN
s(ξ)を供給する。この動作は、ξのすべての可能な値に対して行われる。次に、一対の値(N
opt s,ξ)がルックアップ・テーブル内に格納される。
ξの値がステップ602においてテーブル・ルックアップ動作に入力されると、N
opt s(
ξ)の値がルックアップ動作により出力される。
チャネル状態情報に応じて、Nsの更新した値を決定するために、図5および図6に示す方法の間で多数のトレードオフ(trade-off )が行われる。これらのトレードオフは、計算の速度および複雑さ、使用できる記憶装置、および結果の正確さおよび精度を含む。
以下の節においては、従来の多元接続、タイム・ホッピングUWB IRシステムに追加した本発明の動的リンク適応技術の利得の評価結果について説明する。この評価は、Nsの適応が、実際に期待した量の容量の増加をもたらすか否かを示す。この評価は、また、本発明のDUWB技術を導入することにより、従来のUWBシステムを強化することができる条件を示す。
より詳細に説明すると、短距離、低電力、多重ユーザ通信に対するDUWBの特徴を観察し、評価してきた。この節においては、2つの理想的なシナリオについて説明する。最初に、多重ユーザ・インターフェースにより制限されているシステムについて説明し、次に距離により制限されているシステムについて説明する。この評価の目的は、これら2つの条件で別々にDUWBの性能の正確な反映を供給することである。この結果から、DUWBを使用することによりUWBシステムの効率が有意に強化される条件を決定することができる。
動的UWB IRシステムを含む従来のUWB IRシステムの性能を比較するために、システムの性能の優れた表示であるユーザ毎の平均データ・レートを考慮する。何故なら、平均データ・レートは、単位時間内にシステムを通してユーザが転送することができるビットの予想数を示すからである。平均データ・レート、R sは下式により表すことができる。
多重ユーザ・インターフェースで制限されているシステムの場合には、最大データ・レートは、同じシステムの他のユーザに対して生じた干渉により制限される。多重ユーザ環境においては、例えば、会議センタ内の一室のようなある位置は、UWBによりカバーされている。ユーザはこの場所にランダムに出入りし、ユーザはそれぞれランダムな時間その場所に留まる。ユーザが室内にいる間、UWBシステムは、各ユーザにデータ・サービスを行い、ユーザはマップ、スケジュールおよび論文のような会議に関連する情報をダウンロードすることができる。実際には、この部屋は会議のための情報センタとしての働きをする。
簡単のため、ユーザの出入りに対してポアソン・トラヒック・モデルが仮定される。このことは、ユーザがある到着速度λでシステムに入り、平均1/μである指数的に分配した時間の間システム内に留まることを意味する。また、システムはいつでも最小データ・レートを超えるデータ・レートを供給するものと仮定する。そのため同時に能動状態にあるユーザNには限りがある。Nの値は提供された負荷および必要な損失確率で決まる。このサービス・モデルは、その確率の分布が次式で表されるM/M/c/c待ち行列システムと同じものである。
であり、ρ=μ/λは提供された負荷である。損失確率が非常に低い場合には、ρはシステムのユーザのほぼ平均数である。このシステムのユーザ当たりの平均データ・レート
R sは次式で表される。
ここで、mはUWBまたはDUWBであるモードを示し、N
uはシステムのユーザの数を示し、Nはシステムによりサポートされるユーザの最大数を示し、R
Sm(N
u)は、モードmの間にシステムで能動状態にあるユーザの数の関数としてのデータ・レートを示し、p
m(N
u)はmモード中のシステムにN
uユーザが入る確率を示す。
UWBおよびDUWBモード両方の場合、RSm(Nu)は、式(6)および(7)から導出可能な特性関数
に深く関係する。この関数は、ユーザの間に生じた多重ユーザ干渉がBERを指定の値より小さくするように、Nuユーザが同時に動作することができるデータ・レートを確立する。図7は、異なるBER要件に対するこの特性関数を示す。図7は、ビット誤り率が10
−6(曲線708)、10
−5(曲線706)、10
−4(曲線704)および10
−3(曲線702)の場合のユーザの数の関数としてのデータ・レートを示す。
従来のUWBの場合には、各ユーザは同じデータ・レートで動作する。システムの能動状態のユーザの数とは無関係に、システムは、いつでも、最悪の場合、すなわち能動状態のユーザの数が許容最大数である場合、あるBERを保証するデータ・レートを提供する。それ故、次式のようになる。
本発明のDUWBの場合には、依然として必要なBERを達成しながら、ユーザの現在数に対して許容された最大値にデータ・レートR
sがいつでも適応するものと仮定する。データ・レートは、ユーザ数が変化した場合だけ変化する。従って、次式のようになる。
ユーザの分布p
m(N
u)が両方のモードに対して同じであることを考慮した場合、ユーザ当たりの平均データ・レートは、図8に示すように従来の各UWBシステムおよび多重ユーザ干渉により制限されているDUWBシステムに対するトラヒック負荷の関数として計算することができる。図8は、ポアソン・ローディング速度の場合の異なるユーザ負荷に対する各システムの平均データ・レートを示す。各システムに対するBERは10
−5に維持した。曲線802は、従来のUWBシステムの性能を示し、一方、曲線804は、本発明の原理により動作しているDUWBシステムの性能を示す。
図8の場合には、DUWBシステムの動的リンク適応により、ユーザの負荷とは無関係に従来のUWBシステムよりも平均データ・レートが速くなっていることに留意されたい。例えば、ユーザの平均数が4である場合、従来のUWBの場合の平均データ・レートは17Mbpsになる。一方、DUWBシステムで動的リンク適応を行うと、同じトラヒック負荷の場合、平均データ・レートは35Mbpsになる。さらに、ユーザ当たりの平均データ・レートの利得が低い負荷(<10)の場合に最高であり、10〜100の負荷の場合かなり高く、100を超える負荷の場合には無視できる程度のものであることに注目することも重要である。負荷が小さい場合には、DUWBシステムで動的リンク適応を使用すると、平均データ・レートの最高100%の利得を達成することができる。これらの結果は、低いトラヒック負荷システムに対して、DUWBシステムに動的リンク適応を導入することが適していることを示している。システムの負荷が低減すると、本発明の原理による動的リンク適応から利用できる利得が増大する。
この節においては、距離により制限を受けているシステムの平均データ・レートを増大するために、潜在的動的UWBを調査する。このようなシステムの場合、最高データ・レートは送信機と受信機との間の経路損失により制限される。そのため内部干渉および外部干渉は考慮に入れない。すでに強調したように、従来のUWBシステム、すなわち非適応システム設計の場合には、すべてのユーザのデータ・レートは同じである。この同じ「選択した」データ・レートは、最悪の場合使用できる最大データ・レートである。距離により制限されているシステムの場合には、最悪の場合はユーザが最も遠い場所にいる場合である。それ故、送信機に非常に近い場所にいるユーザは、使用できる場合でも、より高いデータ・レートで動作することができない。何故なら、システム設計が、各ユーザが有効範囲エリア内の最も遠いユーザに与えられる同じデータ・レートを使用するように要求するからである。一方、本発明の原理による動的に適応しているUWBシステムは、有効範囲エリア内すべての場所のすべての各ユーザに使用することができる最大データ・レートを供給することができる。異なる場所にいるユーザは、異なるデータ・レートを使用することができる。何故なら、使用することができるデータ・レートは、一様に分配されていないからである。データ・レートは、距離(基地局からユーザまでの距離)に反比例する。
距離の変動は下記のようにモデル化される。1人のユーザが、図1の例示としての円Bにより示すような円である半径Rの円の形をしているUWBシステムの有効範囲エリア内を移動している。ユーザは、位置および時間の長さがまちまちになるように、各位置にある特定の長さの時間留まる。次に、このシステムを基地局から距離dのところにいるユーザの確率分布関数(pdf:probability distribution function )により特徴づけることができる。このシステムの比較の場合、セル半径Rおよび有効範囲エリア内のユーザの分布の影響を関連づけることも重要である。セル半径Rの影響を知るために、セル半径Rの関数としてUWBシステムおよびDUWBシステムそれぞれに対して平均データ・レートを計算する。すべての場合、平均データ・レートは次式により計算する。
ここで、mはUWBシステムまたはDUWBシステムのモードであり、dは送信機と受信機との間の距離であり、Dは最大距離であり、R
Sm(d)は距離の関数としてのデータ・レートであり、p
m(d)はユーザが距離dのところにいる確率である。
半径Rの円形有効範囲エリアの場合には、pm(d)の3つの異なる分布が考えられる:すなわち、一様な分布、距離についての線形な分布、およびpm(d)がd2(二次)に比例する分布。距離RSm(d)の関数としてのデータ・レートは、リンク割当て方程式(link budget equation)により入手することができる。
図9は、直上の式により、半径Rの有効範囲エリア内をランダムに移動する1人のユーザについて入手した平均データ・レート
および経路損失指数nを示す。図9は、両方のシステムに対して有効範囲エリア半径の関数として達成した平均データ・レートを示す。曲線902(n=2.4)および906(n=2)は、従来のUWBシステムの性能を示す。曲線904(n=2.4、二次)、曲線908(n=2.4、線形)、および曲線910(n=2.4、一様)は、本発明の原理によるDUWBシステムのための動的リンク適応の性能を示す。
図9から、任意の有効範囲エリア半径Rの場合、ユーザ毎の平均データ・レートの点でDUWBシステムの性能が、従来のUWBシステムの性能より優れていると推定することができる。例えば、半径R=10mの円形エリア内においては、1人のユーザは、従来のUWBシステムで60Mbpsの平均データ・レートを達成することができ、一方、同じユーザは、その位置分布が二次である場合、DUWBシステムを使用することにより、200Mbpsの平均データ・レートを達成することができる。同じシナリオの場合には、DUWBシステムのユーザは、それぞれ線形および一様な位置分布の場合に600Mbpsおよび2Gbpsの平均データ・レートを達成することができる。これらの極端に高いデータ・レートは、データ・レートへの唯一の制限が通信範囲、すなわち経路損失であるこの分析の場合の例示としてのものであることを理解されたい。しかし、この分析は、送信機と受信機との間の距離にその送信パラメータを適応することができるシステムにおいて、ユーザに供給される平均データ・レートを劇的に増大するために、その制限されたリソースをどのように使用することができるのかについての有用な比較および予見を与えてくれる。
また、図9に示すように、位置分布が一様な分布や線形な分布の場合には、各ユーザはより高い平均データ・レートを入手することができる。これは、一様な分布の場合、送信機(基地局)が位置する円形の有効範囲エリアの中心にユーザの位置が集中するからである。線形な分布の場合には、一様な分布の場合よりユーザの位置がさらに拡がる。それ故、各ユーザの平均データ・レートが低くなる。距離ではなく面積についての線形な分布と解釈可能な二次分布は、セルラー・システムの最も普通のユーザ分布モデルである。図9は、また、本発明のDUWBシステムの動的リンク適応により達成した改善のレベルを示すために、経路損失指数がn=2である従来のUWBシステムのために入手した各ユーザの平均データ・レートを示す。この分析から、位置についての線形な分布の場合、経路損失指数n=2.4であるDUWBシステムの各ユーザの平均データ・レートは、経路損失指数がn=2である場合には、従来のUWBシステムで入手する各ユーザの平均データ・レートより高いと結論することができる。
この節においては、一方は多重ユーザ干渉により制限され、他方は距離により制限されている2つの理想的シナリオでのDUWBシステムの利点を分析した。各シナリオの場合、DUWBシステムの性能は、非適応の従来のUWBシステムの性能より有意に優れている。正確なチャネル状態推定を使用することにより、またチャネル状態情報に基づいて各ユーザに対してNsの値を個々に最適化することにより、DUWBシステムの性能が、SNRと各ユーザのデータ・レートの間で折り合い(trading )をとることにより、真の動作環境において従来のUWBシステムの性能より優れたものになることが予想される。チャネル品質が劣化した場合、DUWBシステムのユーザは、所望のBERを達成するために自分のデータ・レートを低減することができる。チャネル品質がよい場合には、ユーザは自分のデータ・レートを増大するために、BERの余分な部分を再度使用することができる。
シンボル当たりのパルス数を使用するUWB無線リンクの動的適応は比較的簡単なものである。適応のために供給するモードの数は非常に多く、そのためチャネル予測に完全に一致する正確な適応が確実に行われる。DUWBは異なるユーザ間でその使用が制限されないし、それぞれの場合に所望のデータ・レートを割り当てる各ユーザに対して個々に適応を行うことができる。この特徴により、異なるユーザに対してサービスの品質を変えることができる。
今まで本発明の実施形態について説明してきたが、本発明の基本的範囲から逸脱することなしに、本発明の他のまた別の実施形態を実行することができる。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲に記載してある。
なお、国際出願の英文明細書中にJISコードで表記できない箇所があったため、本翻訳文では代替表記を使用した、具体的には、本翻訳文において、下線をつけた表現した文字ξ,Rは、国際出願の英文明細書では以下のように表現されていたものである。