JP2007525449A - リゾホスファチジン酸アナログおよび新生内膜形成の阻害方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は概して、血管生物学の分野に関する。より詳細に述べると、本発明は、新生内膜形成およびアテローム発生におけるリゾホスファチジン酸およびPPARg(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ)の役割に関する。
アテローム性動脈硬化症は、米国における主な死因であり、開発途上国においては全死亡数の過半数の原因となっている。新生内膜形成は、アテローム硬化性斑(atherosclerotic plaque)発生の最初の工程である。血小板活性化および血栓形成、内皮細胞活性化および損傷、炎症細胞浸潤、ならびに血管平滑筋細胞の活性化、遊走、表現型の調整および増殖を含む、いくつかの細胞機構が、新生内膜形成に関与している。新生内膜の増殖は、最終的には新生内膜斑形成、脂質蓄積および石灰化につながる。炎症を起こしたアテローム斑(atheromatous plaque)は、心臓麻痺および発作を直接引き起こす急性血栓性(thrombembolic)事象の引き金となる。
リゾホスファチジン酸(LPA)は、内皮分化遺伝子ファミリーによりコードされたGタンパク質共役型細胞膜受容体LPA1、LPA2、およびLPA3を介して作用する増殖因子様リン脂質メディエーターである。リゾホスファチジン酸により誘発された細胞反応は、増殖、遊走、脱分化および抗アポトーシス作用を含み、これらの反応は全て新生内膜形成に関与している。リゾホスファチジン酸の生成は、血小板活性化と結び付けられており、二つの酵素的段階に関与している。第一に、活性化された血小板は、ホスホリパーゼA1およびA2酵素を放出し、これらの酵素は、血漿および膜のリン脂質を加水分解し、リゾリン脂質を形成する。引き続き、新規に(de novo)生成されたリゾリン脂質は、リン酸頭部基の切断によりリゾホスファチジン酸を生成するリゾホスホリパーゼDの基質となる。この代謝経路により生成されたリゾホスファチジン酸は、18:2および20:4の多不飽和脂肪酸アシル型で濃縮される。
最近ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体-g(PPARγ)は、リゾホスファチジン酸の細胞内受容体であることが報告された。ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)は、核受容体スーパーファミリーの転写因子である。ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ファミリーは、以下の3種のイソ型からなる:PPARα、PPARδ、およびPPARγ。ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体リガンドの結合は、9-cis-レチノイン酸の受容体であるレチノイン酸X受容体(RXR)の活性化およびヘテロ二量体化につながる。PPAR/RXRヘテロ二量体は、反応性遺伝子の上流に位置した特異的ペルオキシソーム増殖因子反応エレメント(PPRE)に結合する。これら3種のイソ型は同じスーパーファミリーに属するが、それらの生物学的作用は異なる。
血行力学的に障害がある部位での血小板の局所的活性化は、血小板活性化につながり、かつ血小板で運ばれたメディエーターを放出することが提唱されている。活性化された血小板は、リゾホスファチジン酸生合成に関連した酵素活性を放出する。局所的に生成されたリゾホスファチジン酸は、E-セレクチンおよびVCAMを含む接着分子の発現を活性化し、これは次に血小板接着の増大につながる。リゾホスファチジン酸も血小板を活性化するので、この正のフィードバック機構は、より多くの血小板を動員し、更には不飽和脂肪酸種において濃縮されたリゾホスファチジン酸の生成を刺激する可能性が高い。
本明細書において開示された実験は、マウスおよびラットにおいてPPARγのリゾホスファチジン酸(LPA)が誘導した活性化は、新生内膜形成の主な原因となるかどうかを調べた。雄のSprague-DawleyラットまたはC57B6マウスの外頚動脈にカニューレ挿管し、元の総頸動脈および内頚動脈をクリップ止めした。LPAまたは溶媒を、30〜60分間かけてこの血管に注入した。循環を回復し、動物を、術後7〜56日間生存させ、その後処理した血管の組織を評価した。
本発明において使用した略号は以下である:1AGP、1-オクタデセニル-グリセロリン酸;3AGP、3-O-オクタデセニル-グリセロリン酸;Acox、アシル-CoAオキシダーゼ;アルキル-GP、アルキルエーテルグリセロリン酸;AZ-PC、1-O-ヘキサデシル-2-アザレオイル-ホスファチジルコリン;CCA、総頸動脈;cPA、2,3-環状ホスファチジル酸;DGPP、ジオクチルグリセロールピロリン酸;EGF、表皮増殖因子;GPCR、Gタンパク質共役型受容体;hCAD、高分子(heavy)カルデスモン;IGF、インスリン様増殖因子;LDL、低密度リポタンパク質;LPA、リゾホスファチジン酸;moxLDL、最小に酸化されたLDL;nLDL、未変性のLDL;PAF、血小板活性化因子;PDGF、血小板由来増殖因子;PPAR、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体;PPRE、PPAR応答性エレメント;PTX、百日咳毒素;Rluc、ウミシイタケルシフェラーゼ;Rosi、ロシグリタゾン;S1P、スフィンゴシン1-リン酸;SOV-PC、ステアロイル-オキソバレリルホスファチジルコリン;TZD、チアゾリジンジオン;VEGF、血管上皮増殖因子;VSMC、血管平滑筋細胞;XY4、1,1-ジフルオロデオキシ-(2R)-パルミトイル-sn-グリセロ-3-リン酸;XY8、1-パルミトイル-(2R)-フルオロデオキシ-sn-グリセロ-3-リン酸。
材料および試薬
リゾホスファチジン酸(LPA)およびスフィンゴシン-1-リン酸(S1P)は、Avanti Polar Lipidsから得た。GW9662は、Tocris Cookson Inc.から得た。Rosiは、ARC Inc.から得た。アルキル-グリセロリン酸(アルキル-GP)の立体異性体LPA 18:2、18:3、20:0、20:4、1,1-ジフルオロデオキシ-(2R)-パルミトイル-sn-グリセロ-3-リン酸(XY4)を含むフッ素化されたリゾホスファチジン酸アナログ、その位置異性体1-パルミトイル-(2R)-フルオロデオキシ-sn-グリセロ-3-リン酸(XY8;図1)、および1-O-ヘキサデシル-2-アザレ-オリ-ホスファチジルコリン(AZ-PC)(図1)は、既報(Davies et al., 2001;Yokoyama et al., 2002;Xu and Prestwich, 2002)のように合成し、かつEchelon Biosciences Inc.から提供された。ステアロイル-オキソバレリルホスファチジルコリン(SOV-PC)(図1)は、Dr. Judy Berliner(University of California, Los Angeles, ロスアンジェルス, CA)から得た。
ラットにおける新生内膜形成の誘導
被験化合物の局所適用は、最近Yoshidaら(2003)により開発されかつ特徴付けられたモデルを用い行った。簡単に述べると、麻酔をかけた成体雄Sprague-Dawleyラット(250〜300g)の右頸動脈を、手術により露出した。総頸動脈の尾側起源を、血管クリップを用いて結紮し、その後分岐部上の内頸動脈を露出しかつ結紮した。外頸動脈を露出し、かつポリエチレン製カテーテルを決して総頸動脈には到達しないように挿管し、これにより血管への機械的損傷を避けた。総頸動脈を閉塞しているクリップを、一時的に開放し、血管を生理食塩水500mlの逆行注射によりすすぎ、残留している血液を除去した。この血管を再度クリップ止めし、処理液100mlを注射した。60分間インキュベーションした後、カニューレを抜管し、外頸動脈を結紮し、血流を回復させた。動物を回復させ、7〜56日後に、10%緩衝したホルムアルデヒド(pH7.4)の心臓内還流により屠殺した。頚静脈弓(jugular arch)から分岐部までの総頸動脈を切除し、パラフィン中に包埋し、かつ組織学的分析のために処理した。厚さ5mm切片を切断し、ヘマトキシリンおよびエオシンまたはマッソン三色染料で染色した。内膜の中膜に対する比は、画像解析システム(Scion Image CMS-800)を用い定量した。
酸化的に修飾された低密度リポタンパク質の血管再建に対する作用
未変性の低密度リポタンパク質(nLDL)は、血中のリン脂質およびコレステロールの輸送体である。タバコの煙への曝露などのストレスによる、未変性の低密度リポタンパク質の酸化的修飾は、新規脂質メディエーターの生成を生じる。このプロセスは、得られる最小に酸化されたLDL(moxLDL)を高度のアテローム発生性とする。
アテローム発生性の最小に酸化された低密度リポタンパク質におけるリゾホスファチジン酸レベル
低密度リポタンパク質の最小の酸化は、リゾホスファチジン酸様生物学的活性を生じる。リゾホスファチジン酸は、心臓血管系の細胞に、血小板凝集の刺激、マクロファージおよび内皮細胞の活性化、ならびに血管平滑筋細胞の脱分化および増殖を含む多くの作用を誘発する。これらのリゾホスファチジン酸が誘発した細胞作用の多くは、新生内膜病巣の発生に関連している。従ってLDLの酸化的修飾は、アテローム発生性の最小に酸化されたLDLにおけるリゾホスファチジン酸レベルを増加させると仮定される。
リゾホスファチジン酸のラットにおける新生内膜形成に対する役割
LDLの軽度の酸化は、プロトロンビン性およびプロアテローム発生性の最小に酸化されたLDLを生じる。リゾホスファチジン酸Gタンパク質共役型受容体アンタゴニストは、最小に酸化されたLDLにより誘発された血小板凝集を止め、このことはリゾホスファチジン酸は、最小に酸化されたLDLの血栓形成作用において本質的役割を果たすことを示している。最小に酸化されたLDLの新生内膜誘導能に対するリゾホスファチジン酸の貢献を定義するために、ラット頸動脈モデルにおいて新生内膜形成に対する様々なアルキルエーテルグリセロリン酸(アルキル-GP)およびアシル-LPA種の作用を決定した(図3C)。1-0-オクタデセニル-グリセロリン酸(1AGP;天然の立体異性体)は高度に有効であったのに対し、3-O-オクタデシルグリセロリン酸(3AGP;非天然の立体異性体)は、新生内膜の誘発においてやや有効であった。アルキル-GPのエーテル結合は、ホスホリパーゼAによる切断に対し抵抗性がある。結果的に、アルキル-GP由来の脂肪族アルコールの代謝転換は無視することができ、このことはA型の細胞内ホスホリパーゼは、アルキル-GPの生体活性代謝産物の生成に関係がないことを示唆している。2,3-環状ホスファチジン酸(cPA;18:1)は、環状リン酸塩を含む内因性不飽和アシル-LPAアナログであるが、これは不活性であった。アルキル-GPとは異なり、cPA18:1は、ホスホリパーゼAの基質である。
リゾホスファチジン酸で誘導された新生内膜形成におけるGタンパク質共役型受容体の役割
ラット頸動脈におけるリゾホスファチジン酸特異的Gタンパク質共役型細胞膜受容体の発現は、Wangら(2002)により先に説明されたRT-PCRにより試験した。高分子カルデスモンmRNAを定量するために、Sequence Detection System Model 7700(Applied Biosystems)装置を用い、リアルタイムSYBR Green PCR法を適用することにより、定量的PCRを行った。ラットの高分子カルデスモンおよびGAPDH(参照対照mRNA)特異的プライマーを、Primer Express Software(Applied Biosystems)により設計し、ならびにフォワードプライマーおよびリバースプライマーは以下であった:高分子カルデスモンについて、
;GAPDHについて、
。増幅反応は、SYBR Green PCR Master Mix(Applied Biosystems)により、製造業者のプロトコールに従い行った。mRNA存在量の計算は、先に説明されたCt値を元にした(Wang et al., 2002)。高分子カルデスモンmRNAの発現レベルは、GAPDH mRNAに対し標準化した。各PCR反応を少なくとも3回行い、結果を平均±SEMとして表した。mRNA発現の統計学的比較は、ANOVAにより評価し、かつP<0.05を統計学的に有意とみなした。
リゾホスファチジン酸で誘導された新生内膜形成におけるペルオキシソーム増殖因子活性化受容体-gの役割
リゾホスファチジン酸は最近、その細胞膜受容体に加え、アテローム発生に長く関連付けられてきた核転写因子ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体-g(PPARg)のアゴニストであることが示された。チアゾリジンジオン(TZD)ファミリーの合成薬Rosi、酸化されたリン脂質、脂肪酸、エイコサノイド、および酸化されたLDLを含む多くの化合物が、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体を活性化する。PPARgは、マクロファージ/単球、血管平滑筋細胞、内皮細胞において検出され、かつアテローム性動脈硬化巣および高血圧患者の血管壁において高度に発現されている。PPARgは、RT-PCRにより正常ラット頸動脈組織において検出された(図5C)。これが理由で、PPARgの特異的不可逆的アンタゴニストであるGW9662は、濃度5mMで先に30分間適用し、2.5mMリゾホスファチジン酸20:4と同時に適用した。GW9662は、リゾホスファチジン酸20:4により誘発された新生内膜形成を完全に止め、このことはPPARg活性化が、リゾホスファチジン酸で誘導された病巣発生の発達に必要であることを示している(図6B)。
ラット頸動脈におけるペルオキシソーム増殖因子活性化受容体-gの発現
PPARgタンパク質の発現は、リゾホスファチジン酸または最小に酸化されたLDLに曝露したラット頸動脈において試験した。PPARg抗原の免疫組織学的染色は、LPA 20:0(図7A)または未変性のLDL(データは示さず)で処理した動物由来の動脈においてごくわずかな染色された核を示した。対照的に、強度のPPARg免疫反応性が、 LPA 20:4(図7B)または最小に酸化されたLDL(データは示さず)処理群からの新生内膜病巣の頸動脈において観察され、これはアテローム性動脈硬化巣において先に報告されたものと非常に類似していた。
リゾホスファチジン酸で誘導された新生内膜形成に対する血清因子の作用
血漿中には0.1mM LPAが存在し、かつ現在チアゾリジンジオン(TZD)は糖尿病治療に使用されるが、今までのところ患者における血管合併症の増加は報告されていない。この明らかな矛盾を解明するために、本発明者らは、血漿因子は、Rosiおよび/またはリゾホスファチジン酸の新生内膜誘導作用を減弱させるかどうかを試験した。この仮説は、血漿中の希釈されたリゾホスファチジン酸および高濃度のアルブミンは、生物学的反応の減退を示すことを記している先の報告を基にしている。ヘパリン処理した同系の血漿または血清を、Rosiおよびリゾホスファチジン酸20:4送達の溶剤として、血清アルブミン(10mM)と比較した。10mMアルブミンと複合したRosiまたはリゾホスファチジン酸20:4を受け取った動物のみが、新生内膜病巣を発生したのに対し、血漿または血清中で送達されたこれらの化合物を受け取った動物は、有意な新生内膜形成を示さなかった(図7F)。血漿も血清も単独では、新生内膜を誘導する作用を有さなかった(図7F)。これらの結果は、血漿および血清因子は、新生内膜の形成を減弱させ、かつ内因性リゾホスファチジン酸の広範な作用の緩和に役立ち、かつRosiの作用を抑制することを示唆している。血清中のLPA存在は、LPA Gタンパク質共役型受容体(GPCR)が媒介する生物学的反応を容易に活性化する。従って、血清および血清により送達されたLPAの活性の欠如は、リゾホスファチジン酸GPCR対PPARgのリガンド認識の重要な差異を指摘している。更に、アルキル-GPの二重層貫通(transbilayer)型移動は、高濃度(2%)のアルブミンにより阻止されるのに対し、先に説明されたアッセイにおいて使用されたものに類似している低アルブミン濃度(0.05%)では、実質的移動が残ることが報告されている。
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体-gアゴニストによる血管平滑筋細胞の表現型調整
不飽和リゾホスファチジン酸種は、培養された血管平滑筋細胞(VSMC)の表現型調整を誘導したことが報告されている。新生内膜反応およびPPARgは、不飽和リゾホスファチジン酸について同様の選択性を示すので、PPARgの活性化は、その表現型の脱分化において役割を果たすということが本明細書において仮定されている。この仮説は、IGF-1が高レベルの高分子カルデスモン(hCAD)mRNA発現により示されるような、血管平滑筋細胞の分化された紡錘体型を維持する培養システムにおいて試験された。2ng/ml IGF-1の存在下で2日間確立された血管平滑筋細胞を、1mMのRosi、LPA 20:4、またはLPA 20:0のいずれかに、200nM GW9662の存在または非存在下で、3日間曝露した。RosiおよびLPA 20:4に曝露したこれらの血管平滑筋細胞は、線維芽細胞様の平坦な形態を生じた(図8EおよびG)のに対し、リゾホスファチジン酸20:0に曝露した培養物(図8C)は、IGF-1処理した対照(図8A)において認められる紡錘体様の分化した形態を維持した。GW9662処理は、LPA 20:4およびRosiのこの作用を逆行した(図8FおよびH)。定量的RT-PCRを用い、hCAD mRNA発現は全ての処理により減少したが、LPA 20:4およびRosiに曝露された血管平滑筋細胞において最も顕著である(図8I)ことがわかった。GW処理は、hCAD mRNA発現の有意な増加を引き起こした。これらの結果は、PPARgは、血管平滑筋細胞の表現型調整において必須の役割を果たすという仮説を裏付けている。
リゾホスファチジン酸アナログ、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体-gアゴニストおよびアンタゴニストのスクリーニング
以下の3種のアッセイを用いることができる:1)先に説明された(McIntyre et al., 2003)、[32P]-LPAに対する精製した組換えPPARγへの競合的結合;2)ペルオキシソーム増殖因子応答性エレメントによる、アシル-CoAオキシダーゼ-ルシフェラーゼリポーター遺伝子の、PPARγにより媒介される活性化(McIntyre et al., 2003);および3)先に説明したラットにおける新生内膜誘導。
(図2)A〜Cは、最小に酸化された低密度リポタンパク質(moxLDL)処理が、ラット頸動脈において新生内膜形成を誘導することを示している。これらの図は、5mg LDLタンパク質/mlによる1時間処理後、2週間で、未変性の低密度リポタンパク質(nLDL)(A)またはmoxLDL(B)で処理した動物から得たマッソン三色染色したパラフィン包埋した切片の代表図である。バーは500mm。内膜対中膜の比は、C(n=5)に定量化した。
(図3)A〜Bは、安定したアイソトープ希釈したエレクトロスプレーイオン化マススペクトルを用いる、未変性の低密度リポタンパク質(nLDL)および最小に酸化された低密度リポタンパク質(moxLDL)において定量された5種の最も豊富なアシル-リゾホスファチジン酸種(LPA)(A)およびアルキル-GP種(B)を示している。未変性の低密度リポタンパク質と最小に酸化された低密度リポタンパク質の間の総アシル-リゾホスファチジン酸含量の差異がない点は、最小に酸化された低密度リポタンパク質(n=4)におけるアルキル-GPレベルの6倍の増加とは際だって対照的である。図2および3において示された実験において使用した未変性の低密度リポタンパク質のバッチにおいて、アルキル-GP濃度は0.1mMであり、かつ不飽和リゾホスファチジン酸+アルキル-GPの総濃度は0.5mMであるのに対し、最小に酸化された低密度リポタンパク質においてこれらの濃度は各々0.7および0.9mMであった。
Cは、様々なアシル-リゾホスファチジン酸種(10mM)およびアルキル-GP種(AGP)(10mM)の新生内膜病巣誘導の構造-活性の関係を示している。唯一の選択のLPA種の作用は、1AGPについて3AGPよりも好ましい立体選択性であったので、これは新生内膜を誘発した。LPA 18:0およびcPA 18:1は、検出可能な新生内膜を誘起しなかった。
(図4)Aは、ラット頸動脈の、リゾホスファチジン酸20:0ではなく2.5mM LPA 20:4への1時間の曝露が、新生内膜の進行性増殖を誘発し、これは処理後最大8週間継続したことを示している。定量的形態学的分析のために、各5匹の動物群を使用した。
Bは、リゾホスファチジン酸18:1で誘発した新生内膜反応に関する用量-反応曲線を示している。内膜対中膜の比の平均(±SE)は、処理後2週間の動物5匹の群について決定した。
(図5)Aは、ラット頸動脈組織におけるリゾホスファチジン酸(LPA)特異的Gタンパク質共役型細胞膜受容体のRT-PCRを示している。LPA1、LPA4、およびS1P1は、全頸動脈組織から抽出したRNAにおいて検出した。
Bは、ポリペプチド増殖因子および非リゾホスファチジン酸Gタンパク質共役型受容体リガンド、フッ素化されたリゾホスファチジン酸アナログの新生内膜形成に対する作用を示している。10mMリゾホスファチジン酸18:1、XY4、およびその位置異性体XY8により処理した動物は新生内膜形成を示したが、EGF(50ng/ml)、VEGF(10ng/ml)、PDGF-BB(10ng/ml)、またはリゾホスファチジン酸18:0(10mM)で処理した動物は示さなかった。5匹の動物群を、これらの化合物で処理した。
Cは、正常な頸動脈組織のPPARa、PPARd、およびPPARg転写産物で検出したRT-PCR解析を示している。
(図6A)百日咳毒(PTX)およびジオクチルグリセロールピロリン酸(DGPP)、リゾホスファチジン酸Gタンパク質共役型受容体シグナル伝達のインヒビターは、リゾホスファチジン酸20:4により誘導された新生内膜形成を部分的に減弱させたのに対し、PPARg特異的アンタゴニストGW9662はこの作用を完全に止めたことを示している。
(図6B)Rosi、1-O-ヘキサデシル-2-アザレ-オリ-ホスファチジルコリン(AZ-PC)、最小に酸化されたLDL、およびリゾホスファチジン酸の不飽和アシル型は全て、新生内膜形成を誘導し、これはGW9662により完全に止められたことを示している。対照的に、ステアロイル-オキソバレリルホスファチジルコリン(SOV-PC)、PPARg選択性アゴニストは、2週間後の新生内膜の発生の刺激において無効であった。
(図6C)PPARgおよびPPRE-Acox-Rlucリポーター遺伝子でトランスフェクションされたCV1細胞を用いるインビトロアッセイは、インビボにおける新生内膜アッセイにおける同じセットのリガンドについて認められるような異なるリゾホスファチジン酸種に曝露した場合に、同じ構造-活性の関係を示したことを示す(図3C参照)。
(図6D)PPARgアンタゴニストGW9662(10mM)は止めたのに対し、PTX(100ng/ml、2時間)およびDGPP(10mM、2時間)の前処理およびリゾホスファチジン酸との同時適用は、リゾホスファチジン酸20:4-誘導したPPRE-Acox-Rlucリポーター遺伝子発現をインビトロにおいて阻害したことを示す。溶剤は、PBS中に1%DMSOおよび10mM BSAを含有し、Rosi(10mM)、リゾホスファチジン酸20:0(10mM)、またはリゾホスファチジン酸20:0(10mM)は、20時間適用した。ルシフェラーゼおよびb-ガラクトシダーゼ活性(平均±SEM)は、細胞溶解液中で測定した(n=4)。
(図6E〜F)インビトロにおけるPPRE-Acox-Rlucリポーター遺伝子発現のLPA 20:4およびRosiにより誘導した活性化の用量-反応相関を示している。*P>0.05および**P>0.01、溶剤対照についての有意差。
(図7A〜D)ラット頸動脈におけるPPARgの免疫組織学的染色を示している。わずか数個の核が、2.5mM LPA 20:0による処理後4週間の頸動脈のPPARg免疫反応性を示している(A)。対照的に、LPA 20:4により誘発された多層の新生内膜は、高レベルのPPARg免疫反応性を発現している(B)。LPA 20:4処理した頸動脈における新生内膜内のPPARgの活性化は、PPARgのそれに重複する分布におけるCD36の強力な発現により示された(D)。CD36に関する免疫反応性は、LPA 20:0処理した動物においてほとんどみられなかった(C)。抗PPARgおよび抗CD36は、Santa Cruz Biotechnology, Inc.から得た。バーは250mm。
(図7E)CV-1細胞におけるRosi、LPA、およびAGPによるCD36(-273)-RlucおよびCD36(-261)-Rlucリポーター遺伝子の刺激を示している。RosiおよびLPA 20:4は、bp-273と-261の間にPPREを含むCD36(-273)-Rlucの有意な刺激を誘発するが、LPA 20:0(全て10mM)は誘発しなかった。いずれの化合物も、CD36(-261)-Rlucの刺激を引き起こさなかった。1AGPは、3AGPと比べ、Rlucリポーターのより高い刺激を示した。
(図7F)血漿および血清因子は、ラット頸動脈において、Rosiおよびリゾホスファチジン酸20:4により誘導した新生内膜病巣形成を阻害することを示している。Rosi(10mM)およびリゾホスファチジン酸20:4(2.5mM)は、BSA複合体として送達した場合、処理後2週間で、新生内膜形成を誘発した。対照的に、この化合物がラット血漿または血清中を送達される場合、新生内膜形成は検出されなかった(n=5)。
(図7G〜H)アルブミン(0.04%〜4%、G)またはラット血清(1〜20%、H)は、PPRE-Acox-Rlucリポーター遺伝子のリゾホスファチジン酸およびRosiにより誘導した活性化を、濃度-依存的様式で阻害したことを示している。
(図8)A〜Iは、PPARgアゴニストは、インビトロにおけるVSMCの表現型調整および脱分化を誘起することを示している。2ng/ml IGF-1の存在下で確立されたVSMC培養物(A)は、リゾホスファチジン酸20:0(C)、リゾホスファチジン酸20:4(E)、およびRosi(G)の各1mMで3日間処理した。LPA 20:4およびRosi処理は、VSMCの形態の突出した変化につながる。これらの培養物の200nM GW9662による30分間の前処理は、IGF-1-(B)およびLPA 20:0処理した培養物(D)の紡錘体様形態に影響を及ぼさなかった。対照的に、LPA 20:4(F)およびRosi(H)により処理された培養物において、GW9662は、平坦な形態を紡錘体様形状に転換させた。較正バー=100mm。高分子カルデスモン(hCAD)mRNAの発現は、Rosiおよびリゾホスファチジン酸(I、白色バー)で処理したVSMCにおいて、IGF処理した対照培養物と比較して、5日目まで有意に減少した。PPARgアンタゴニストは、定量的RT-PCRにより測定された豊富なhCAD mRNAの有意な増加を引き起こしたので、この傾向は、200nM GW9662(I、黒色バー)で前処理した培養物において逆転した(P>0.01、ANOVA)。
(図9)PPARγリガンドスクリーニングのリード構造を示している (R=炭化水素鎖)。
Claims (18)
- 対象における新生内膜形成を阻害する方法であり、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)を介したシグナル伝達を阻害する化合物を、該対象に投与する工程を含む方法。
- 化合物が、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γアンタゴニストである、請求項1記載の方法。
- 化合物がGW9662である、請求項1記載の方法。
- GW9662が、対象の体重の約0.01mg/kg〜約500mg/kgの用量で投与される、請求項3記載の方法。
- 化合物が、リゾホスファチジン酸(LPA)のアナログであり、該アナログは、PPARγに結合するが活性化しない、請求項1記載の方法。
- LPAアナログが、1個もしくは2個の不飽和炭素鎖または1個もしくは2個の飽和炭素鎖またはそれらの組合せを含む、請求項5記載の方法。
- アナログが、ジアシルグリセロールピロリン酸、セリンリン酸、脂肪族アルコールリン酸、アルキルエーテルグリセロリン酸、およびモノアシルグリセロール二リン酸からなる群より選択される、請求項6記載の方法。
- アナログが、対象の体重の約0.01mg/kg〜約500mg/kgの用量で投与される、請求項5記載の方法。
- 対象が、動物またはヒトである、請求項1記載の方法。
- 対象におけるアテローム性動脈硬化症を予防または治療する方法であり、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)を介したシグナル伝達を阻害する化合物を該対象へ投与する工程を含む、方法。
- 化合物が、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γアンタゴニストである、請求項10記載の方法。
- 化合物がGW9662である、請求項10記載の方法。
- GW9662が、対象の体重の約0.01mg/kg〜約500mg/kgの用量で投与される、請求項12記載の方法。
- 化合物が、リゾホスファチジン酸(LPA)のアナログであり、該LPAアナログは、PPARγに結合するが活性化しない、請求項10記載の方法。
- LPAアナログが、1個もしくは2個の不飽和炭素鎖または1個もしくは2個の飽和炭素鎖またはそれらの組合せを含む、請求項14記載の方法。
- アナログが、ジアシルグリセロールピロリン酸、セリンリン酸、脂肪族アルコールリン酸、アルキルエーテルグリセロリン酸、およびモノアシルグリセロール二リン酸からなる群より選択される、請求項15記載の方法。
- アナログが、対象の体重の約0.01mg/kg〜約500mg/kgの用量で投与される、請求項14記載の方法。
- 対象が動物またはヒトである、請求項10記載の方法。
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