JP2007298110A - もみ切り式自己穿孔ねじ及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】板材を構造材等の基材に締結するためのもみ切り式の自己穿孔ねじにおいて、十字穴等の係合穴の潰れを招来することなくせん断強度をアップさせる。
【解決手段】自己穿孔ねじは、先端部を先窄まり部3と成した軸1と、軸1の基端に一体に設けた頭部2とを備えており、軸1にはねじ山4,5が形成されており、頭部2にはドライバビットが嵌まる十字穴6が形成されている。ねじは、炭素鋼又はクロム・モリブデン鋼の線材を素材としており、焼き入れしてから焼き戻すことによって硬度をHv250〜400に調整している。硬さと靱性とのバランスが取れており、せん断に対する高い抵抗を保持しつつ、大きなトルクが掛かってもねじ込み作業に際して十字穴6が潰れることはない。
【選択図】図1
【解決手段】自己穿孔ねじは、先端部を先窄まり部3と成した軸1と、軸1の基端に一体に設けた頭部2とを備えており、軸1にはねじ山4,5が形成されており、頭部2にはドライバビットが嵌まる十字穴6が形成されている。ねじは、炭素鋼又はクロム・モリブデン鋼の線材を素材としており、焼き入れしてから焼き戻すことによって硬度をHv250〜400に調整している。硬さと靱性とのバランスが取れており、せん断に対する高い抵抗を保持しつつ、大きなトルクが掛かってもねじ込み作業に際して十字穴6が潰れることはない。
【選択図】図1
Description
本願発明は、先端部を尖らせているもみ切り式自己穿孔ねじ及びその製造方法に関するものである。
下穴加工なしで各種ワークを基材に締結できる自己穿孔ねじとして、例えば木ねじに代表されるように、先端を尖らせることにより、部材の組織への食い込みを利用して部材に軸を進入させていくもみ切り式のものがある。このもみ切り式の自己穿孔ねじは、木製や薄鋼板製の基材に各種のワークを締結することに多用されている。
もみ切り式の自己穿孔ねじは、炭素鋼やステンレス鋼のような各種の鉄系素材で製造されており、一般には熱処理は施されておらず、防錆を目的としてメッキ等の表面処理を施しているに過ぎない。これは、もみ切り式の自己穿孔ねじは元々、木製部材のような軟質材に使用されているからに他ならない。他方、ドリルねじ及びタッピンねじのように比較的厚い鋼製部材へのワークの締結に使用されるねじの場合は、高い切削機能が必要であることから焼き入れによって硬度を高くしている(例えば特許文献1,2)。
特開平9−317733号公報
特開2004−3548号公報
もみ切り式の自己穿孔ねじは、木造住宅のような建物において板材を構造材に締結することに多用されているが、例えば、地震によって板材と構造材とを相対的に滑らせる強い力が働いた場合や、壁用の板材に大きな重量の棚類を設けた場合など、ねじに強いせん断力が作用することがある。勿論、建物以外の分野でもねじにせん断力が働くことは多々ある。
ねじに限らず金属材料のせん断強度を高めるには靱性を高くすればよい。従って、ねじを熱処理せずに防錆等の表面処理だけ施して使用することは、せん断力を確保するという点では合理的であると言える。しかし、熱処理を施さないとねじは素材の硬度のままであるため(厳密には、多少の加工硬化はある)、ワークや基材への食い込みが悪く、また、高いねじ込みトルクが生じると抵抗に負けて十字穴のような係合穴がドライバビットで潰されてしまうことがある問題がある。
特に、ワークや基材が合板のような緻密な素材からなっている場合や薄鋼板製である場合はねじ込みトルクが高くなるため、これらの問題が顕著に現われる。従って、ねじの食い込み(切れ味)の善し悪しや係合穴の潰れの有無は、作業能率や施工の品質に大きな影響を与える重要な要素になっている。
この点について、硬度と靱性とを両立させる手段として、特許文献1,2に記載されているように、浸炭焼き入れ法により、表面のみの硬度を高くして芯部は素材の硬度のままに保持することが考えられる。しかし、本願出願人会社において実験したところ、必ずしも高いせん断力を確保することはできなかった。その理由は、表層は硬いためにクラックが入り易く、このクラックをきっかけとして芯部まで破断が進行しやすいためと推測される。
本願発明は、このような現状を改善すべく成されたものである。
本願発明は、もみ切り式の自己穿孔ねじとその製法とを含んでいる。請求項1の発明はねじに係るもので、軸とその基端に設けた頭部とを備えており、前記軸のうち頭部と反対側の先端部は最先端を尖らせた先窄まり部となっており、前記軸に、先窄まり部から始まるねじ山を形成している一方、前記頭部にはドライバ工具が嵌まる係合部を形成しているもみ切り式自己穿孔ねじにおいて、炭素鋼又はクロム鋼若しくはクロム・モリブデン鋼よりなる線材を素材としており、頭部とねじ山と先窄まり部とを加工してから焼き入れして更に焼き戻すという熱処理を施すことにより、芯部と表面とを含む全体の硬度がHv250〜400に調整されていることを特徴としている。
なお、本願発明において線材は棒材も含む概念で使用している。硬度はHv250〜350程度がより好適であり、更に好ましくはHv300程度である。
請求項2の発明は、請求項1において、前記軸には、前記先窄まり部から始まる複数条のねじ山が形成されている。
製法の発明は、炭素鋼又はクロム鋼若しくはクロム・モリブデン鋼よりなる線材を素材として、冷間での圧造及び転造によって前記a〜dの構成を有する中間製品を製造し、次いで、前記中間製品を焼き入れすることで全体をHv400以上の硬度と成し、次いで焼き戻すことにより、芯部と表面とを含む全体の硬度をHv250〜400の範囲に調整することを特徴としている。
本願発明によると、硬度と靱性とのバランスが取れて、ワークや基材への食い込みの良さ(切れ味の良さ)や十字穴等の係合部の潰れを防止しつつ、高い破断強度(主としてせん断強度)を得ることができた。その理由は次のとおりと解される。
すなわち、炭素鋼及びクロム・モリブデン鋼の素材の硬度はHv250より低いのが通常であるが、焼き入れによる硬度アップにより、部材への食い込み性能がアップすると共に、十字穴等の係合部がドライバビットによって潰れることを防止でき、かつ、ねじの表層も芯部も全体にわたって同じ硬度であることと硬度が高すぎずに靱性を保持していることとが相まって、高い破断強度を確保できると考えられる。
また、ヘッダーによる頭部の加工や転造ダイスによるねじ山の加工に際してねじに残留応力が生じたりひずみが生じたりすることがあり、表層だけを硬化すると残留応力やひずみが残ったままになって破断しやすくなると推測されるが、本願発明では焼き入れ・焼き戻しという熱処理によって残留応力やひずみが除去されるため組織が均一化しており、このことも、靱性アップに貢献していると推測される。
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図2では第1実施形態を示している。
(1).ねじの形態
まず、図1に基づいて第1実施形態に係るねじの形態を説明する。(A)は正面図、(B)は平面図、(C)は使用状態を示す図である。
まず、図1に基づいて第1実施形態に係るねじの形態を説明する。(A)は正面図、(B)は平面図、(C)は使用状態を示す図である。
ねじは軸1とその基端に設けた頭部2とを備えている。軸1の先端部は最先端を尖らせた先窄まり部3になっており、かつ、軸1には、先窄まり部3から始まる2条のねじ山4,5が形成されており、一方のねじ山4の先端を先窄まり部3の最先端に位置させることにより、部材への食い込みのきっかけを作るもみきり部4aと成している。ねじ山4は首下近くまで延びているが、ねじ山4の終端と頭部2との間にねじ無し部を設けることも可能である。2条のねじ山4は同じ高さに設定されているが、例えば2対1程度の比率で高さを変えることも可能である。
頭部2の頂面には、ドライバビットが嵌まる係合部の一例として十字穴6が形成されている。また、本実施形態では、頭部2は縦断面視で外向き凹状のプロフィールを有するラッパ形に形成されている。このラッパ形の頭部2を有するねじは、主として、(C)に示すように、石膏ボード7を枠材8に締結することに使用されている。枠材8は薄鋼板で断面略C字状に形成される場合もある。
頭部2の形態は用途によって設定したらよい。例えば、合板のような木製板材を構造材に締結する場合は、頭部2は台錐状の皿頭となすのが好適であり、かつ、斜面にフレキと呼ばれる切刃を複数条形成することも可能である。金具類を締結する場合は、頭部2は鍋頭と成すことも可能であり、更に、六角頭のような多角形頭と成すことも可能である。ドライバビットが嵌まる係合部としては、六角穴等の他の形状の係合穴を設けてもよい。
(2).製造工程・作用
ねじは炭素鋼又はクロム・モリブデン鋼を素材として製造されており、図2に示す工程を経て製造される。すなわち、まず、炭素鋼又はクロム鋼若しくはクロム・モリブデン鋼から成る線材を用意し、この線材を間欠的に繰り出しつつ端部にヘッダーを使用した冷間鍛造によって頭部を加工し、次いで、丸ダイスや平ダイスのようなダイスを使用した転造によってねじ山4,5と先窄まり部3とを同時に加工し、これにより、ねじとしての外観が完成した中間品を得る。なお、線材の切断は、頭部の加工と同時に行うことも前に行うことも後に行うことも可能である。
ねじは炭素鋼又はクロム・モリブデン鋼を素材として製造されており、図2に示す工程を経て製造される。すなわち、まず、炭素鋼又はクロム鋼若しくはクロム・モリブデン鋼から成る線材を用意し、この線材を間欠的に繰り出しつつ端部にヘッダーを使用した冷間鍛造によって頭部を加工し、次いで、丸ダイスや平ダイスのようなダイスを使用した転造によってねじ山4,5と先窄まり部3とを同時に加工し、これにより、ねじとしての外観が完成した中間品を得る。なお、線材の切断は、頭部の加工と同時に行うことも前に行うことも後に行うことも可能である。
そして、中間品を焼き入れして硬度をHv400以上に高め、次いで、焼き戻しによって硬度をHv250〜400に低下させる。焼き入れには、例えば、電気炉等の炉で加熱してから油に浸漬して急冷する油焼き入れ法を採用できるが、ねじの芯まで焼き入れできる方法なら他の方法も採用できる。焼き入れに際しての加熱温度は例えば870℃が好ましく、また、焼き戻しは、例えば170℃で1.5時間程度かけて行うのが好ましい。なお、焼き戻しを行ってのち、必要に応じてメッキや焼き付け塗装のような表面処理が行われる。
ねじを使用して石膏ボード7のようなワークを枠材8のような基材に締結した後に、何らかの理由により、図1(C)に白抜き矢印で示すようにワークと基材とを相対的に滑らせるような大きな荷重が作用し、このため、ねじの軸1にせん断力が働くことがある。そして、本願発明では、発明の効果の欄で述べたように、ワークや基材への食い込み性能のアップと十字穴6の潰れ防止とを図りつつ、高いせん断強度を得ることができた。特に、硬度をHv300程度に調整しておくと、十字穴6の潰れを確実に防止しつつせん断強度を確保できて好適であった。
なお、ワーク及び基材が石膏ボードや木材のような軟質材であるため、ワークと基材との相対的な滑り作用が生じると、図1(C)に符号Oを付した線で示すように、ねじの軸1はワーク及び基材を潰し変形させながら曲がっていき、荷重が許容限度を超えると破断する。従って、厳密に見ると、ねじの軸1にはせん断力のみでなく曲げ力と引っ張り力も作用している。
(3).第2実施形態
図4では本願発明を適用できるねじの他の形態を示している。すなわちこの実施形態では、2条のねじ山4,5のうち一方のねじ山5は首下近くまで延ばして他方のねじ山5は軸1の中途部まで延ばすことにより、軸1に2条ねじ部10と1条ねじ部11とを形成し、更に、2条ねじ部10の箇所では一方のねじ山4の高さを他方のねじ山5の高さよりも低くし、更に、2条ねじ部10の谷径を1条ねじ部11の谷径よりも小径に設定している。
図4では本願発明を適用できるねじの他の形態を示している。すなわちこの実施形態では、2条のねじ山4,5のうち一方のねじ山5は首下近くまで延ばして他方のねじ山5は軸1の中途部まで延ばすことにより、軸1に2条ねじ部10と1条ねじ部11とを形成し、更に、2条ねじ部10の箇所では一方のねじ山4の高さを他方のねじ山5の高さよりも低くし、更に、2条ねじ部10の谷径を1条ねじ部11の谷径よりも小径に設定している。
この実施形態では、1条ねじ部11の外径をD1、2条ねじ部10における一方のねじ山4の外径をD2、2条ねじ部4における他方のねじ山5の外径をD3とすると、D1>D2>D3の関係になっている。いうまでもないが、本願発明では、ねじ山の条数や断面形状、軸の形状などは用途に応じて任意に設定することができる。
1 軸
2 頭部
3 先窄まり部
4,5 ねじ山
6 係合部の一例としての十字穴
7 ワークの一例としての石膏ボード
8 基材の一例としての枠材
2 頭部
3 先窄まり部
4,5 ねじ山
6 係合部の一例としての十字穴
7 ワークの一例としての石膏ボード
8 基材の一例としての枠材
Claims (3)
- 軸とその基端に設けた頭部とを備えており、前記軸のうち頭部と反対側の先端部は最先端を尖らせた先窄まり部となっており、前記軸に、先窄まり部から始まるねじ山を形成している一方、前記頭部にはドライバ工具が嵌まる係合部を形成しているもみ切り式自己穿孔ねじであって、
炭素鋼又はクロム鋼若しくはクロム・モリブデン鋼よりなる線材を素材としており、頭部とねじ山と先窄まり部とを加工してから焼き入れして更に焼き戻すという熱処理を施すことにより、芯部と表面とを含む全体の硬度がHv250〜400に調整されている、
もみ切り式自己穿孔ねじ。 - 前記軸には、前記先窄まり部から始まる複数状のねじ山が形成されている、
請求項1に記載したもみ切り式自己穿孔ねじ。 - a:軸とその基端に設けた頭部とを備えている、
b:前記軸のうち頭部と反対側の先端部は最先端を尖らせた先窄まり部となっている、
c:前記軸には、先窄まり部から始まるねじ山が形成されている、
d:前記頭部にはドライバ工具が嵌まる係合部を形成している、
という構成のもみ切り式自己穿孔ねじの製造方法であって、
炭素鋼又はクロム鋼若しくはクロム・モリブデン鋼よりなる線材を素材として、圧造及び転造によって前記a〜dの構成を有する中間製品を製造し、次いで、前記中間製品を焼き入れすることで全体をHv400以上の硬度と成し、次いで焼き戻すことにより、芯部と表面とを含む全体の硬度をHv250〜400の範囲に調整する、
という工程を経ることを特徴とする、
もみ切り式自己穿孔ねじの製造方法。
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JP2006126495A JP2007298110A (ja) | 2006-04-28 | 2006-04-28 | もみ切り式自己穿孔ねじ及びその製造方法 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2010216638A (ja) * | 2009-03-19 | 2010-09-30 | Suzuki Neji Seisakusho:Kk | 緩み防止用の多条ねじ |
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2006
- 2006-04-28 JP JP2006126495A patent/JP2007298110A/ja active Pending
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