JP2007248394A - 非破壊検査方法及びその装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】シリンダ等の円筒体の内面における欠陥を短時間で検査でき、これによって、インライン全数検査を可能にする非破壊検査装置を提供する。
【解決手段】シリンダ200の内面における欠陥を非破壊で検査する非破壊検査装置100であって、シリンダ200の内部に挿入される円錐型全方位鏡101と、シリンダ200の内面にパルス状の熱負荷を与えるキセノンチューブ102と、熱負荷が与えられた直後におけるシリンダ200の内面の温度分布を、円錐型全方位鏡101を介して赤外線サーモグラフィで計測するための赤外線カメラ103と、赤外線カメラ103で計測された温度分布を解析して欠陥を特定する解析装置104とを備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、非破壊検査方法に関し、特に、シリンダ等の円筒体の内面における欠陥を非破壊で検査する方法に関する。
エンジンのシリンダ部における鋳造不良による内部欠陥は、鋳造後の切削加工時の内部欠陥の表面化による歩留り不良、あるいはエンジンの長期間使用時の摩耗による内部欠陥の表面化とこれによる破損など、様々な問題を引き起こすため、その検出法の確立が急務となっている。
従来、配管やシリンダの内面における欠陥を検出する非破壊検査法として、超音波法によるものがある(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1記載の技術は、配管内に挿入した超音波探触子で配管の欠陥部を検査する配管検査装置であり、接触側表面に軟質弾性材を固定してある超音波探触子と、軟質弾性材が管内面に密着する状態と管内面から離間する状態とに切り換わるように超音波探触子を軟質弾性材とともに管径方向に駆動移動させる駆動部と、超音波探触子を管内面に沿って変位させる変位手段とを備える。このような構成によって、小径の配管でも管内面の所望箇所において配管の欠陥部を検査することができるというものである。
特開2003−270216号公報
しかしながら、上記従来の技術は、欠陥検出には有効であるが、検査に時間がかかりすぎるため、インライン全数検査に組み込むことはできないという問題がある。
そこで、本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、シリンダ等の円筒体の内面における欠陥を短時間で検査でき、これによって、インライン全数検査を可能にする非破壊検査方法及びその装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係る非破壊検査方法は、シリンダ円筒内部に熱負荷を与えた後のシリンダ円筒内部の表面温度を赤外線カメラを用いて計測し、その時系列温度変化より、シリンダ内部の欠陥を検出することを特徴とする。
その一例として、パルス赤外線法を用いてシリンダの内面における欠陥を検査する。ここで、パルス赤外線法とは、被測定物にパルス状の熱負荷を与えた直後の温度分布を赤外線サーモグラフィにより計測することで欠陥を検出する手法である。また、欠陥とは、構造上の欠陥であり、表面に露出されたものに限られず、構造体の内部に存在する内部欠陥も含まれる。
従来、フラッシュランプの照射による加熱と赤外線サーモグラフィによる計測が可能な条件でのみ適用されている。すなわち、シリンダ内筒のような場所には適用不可能とされている。
本発明では、これを可能にするため、360度視野での撮像が可能な円錐型全方位鏡とキセノンチューブをシリンダに挿入することで、シリンダ筒内面をパルス加熱した直後の温度分布を円錐型全方位鏡を介して赤外線サーモグラフィで計測する。つまり、熱負荷を与え、加熱時、およびその後の自然冷却時における試験片表面の温度変化を計測し、計測された温度の時系列データをフーリエ解析することによって、欠陥を検出する。
本発明に係る非破壊検査方法等によれば、シリンダの内面における欠陥を短時間で検査でき、これによって、インライン全数検査が可能となる。
さらに、インライン全数検査によって、製品を精密加工する前段階で内部欠陥を検出できるため、欠陥をもつ製品を精密加工してしまうという無駄な工程を省くことができる。
よって、シリンダや配管等の円筒体のインライン鋳造検査装置として、製品の品質向上に貢献でき、本発明の実用価値は極めて大きい。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
被計測物に対して熱負荷を与えたとき、表面から内部に向かう熱の移動が生じる。減肉やはく離などの欠陥を有する被計測物の場合、欠陥による断熱効果により熱拡散が妨げられる。その結果、欠陥の直上部では局所的に表面温度が上昇し、表面に温度変化領域が現れる。この温度変化領域の分布は、欠陥の位置、寸法および形状を反映している。また表面温度の時系列応答には欠陥深さの影響が現れる。
そこで、本実施の形態における非破壊検査装置は、キセノンフラッシュランプを使い、試験片にパルス状の熱負荷を与え、加熱時、およびその後の自然冷却時における、試験片表面の温度変化を計測することを特徴とする。
図1は、本実施の形態における非破壊検査装置100の構成を示すブロック図である。ここでは、検査の対象となるシリンダ200(図示の便宜上、中心軸に沿う面で切断された半円筒体)も併せて図示されている。
この非破壊検査装置100は、シリンダ等の円筒体の内面における欠陥を非破壊で検査する装置であって、円錐型全方位鏡101、キセノンチューブ102、赤外線カメラ103及び解析装置104を備える。
キセノンチューブ102は、円筒体の内面にパルス状の熱負荷を与える熱負荷付与手段の一例であり、シリンダ200の中心軸上に固定され、赤外線カメラ103と接続され、赤外線カメラ103のフラッシュランプとして機能する。
円錐型全方位鏡101は、シリンダ200の内面から放射される赤外線をシリンダ200の開放端側に置かれた赤外線カメラ103の方向に反射させる全方位鏡であり、その中心軸がシリンダ200の中心軸と一致するようにシリンダ内部(シリンダの底など)に固定されている。この円錐型全方位鏡101の円錐面は、赤外線を効率よく反射させるために、ゴールドコートされているのが好ましい。
赤外線カメラ103は、熱負荷が与えられた直後におけるシリンダ200内面の温度分布を、円錐型全方位鏡101を介して赤外線サーモグラフィで計測する温度分布計測手段の一例であり、例えば、320×240画素を有し、100Hzのフレームレートで撮像可能な赤外線カメラである。
解析装置104は、赤外線カメラ103で計測された温度分布を解析して欠陥を特定する解析手段の一例であり、図2に示されるように、通信インターフェース(I/F)110、制御部111、赤外線画像記憶部113及び表示部114を備えるパーソナルコンピュータ等である。
通信I/F110は、赤外線カメラ103と接続され、制御部111からの指示の下で赤外線カメラ103に対して撮像を指示したり、赤外線カメラ103で得られる赤外線画像の時系列データを取得したりする通信インターフェースである。制御部111は、各構成要素110、113及び114を制御するCPU等であり、赤外線画像の時系列データに対してフーリエ解析等の演算を実行する演算部112を有する。赤外線画像記憶部113は、赤外線カメラ103から送られてくる赤外線画像の時系列データ等を保存するハードディスク等である。表示部114は、演算部112で得られたフーリエ解析の結果等を表示するディスプレイ等である。
図3は、以上のように構成された本実施の形態における非破壊検査装置100の動作を示すフローチャートである。いま、図1に示されるように、検査の対象となるシリンダ200内に円錐型全方位鏡101とキセノンチューブ102が挿入されセットされているとする。
まず、シリンダ200内面にパルス状熱負荷を与える(ステップS120)。具体的には、解析装置104の制御部111から発せられた指示が通信I/F110を経て赤外線カメラ103に送られ、赤外線カメラ103がフラッシュランプとしてのキセノンチューブ102を発光させる。
続いて、シリンダ200内面の温度分布(赤外線画像)の時系列データを取得する(ステップS121)。具体的には、赤外線カメラ103は、円錐型全方位鏡101を介してシリンダ200の内面を360度方向に渡って撮像することを、一定のフレームレートで繰り返す。
次に、取得された赤外線画像の時系列データをフーリエ解析する(ステップS122)。具体的には、解析装置104の制御部111の制御の下で、赤外線カメラ103に蓄積された赤外線画像の時系列データが、通信I/F110及び制御部111を介して、赤外線画像記憶部113に格納される。そして、演算部112は、(1)赤外線画像記憶部113に格納された全ての赤外線画像に対して、各画素が示す色を温度に換算することによって、温度分布の時系列データを生成し、(2)生成した温度分布の時系列データに対して、各画素(又は、画像を区分した小領域)ごとに、後述するフーリエ係数を算出することで、フーリエ係数の2次元分布を生成する。
最後に、生成されたフーリエ係数の分布を表示する(ステップS123)。具体的には、制御部111は、演算部112で得られたフーリエ係数の2次元分布を、フーリエ係数の値を濃淡値に変換することで、グレースケールの分布図として、表示部114に表示する。
次に、本実施の形態における非破壊検査装置100による非破壊検査の実験例を説明する。
発明者らは、測定対象のシリンダと同じSS400材(最大引張力400N/mm2のStandard Steel)で作られた平板に、内部欠陥を模擬した平底穴の欠陥を導入した試験片を製作し、欠陥検出実験を行った。キセノンフラッシュランプを用いて試験片にパルス熱負荷を加え、加熱後の表面温度分布を赤外線カメラを用いて計測した。
図4は、実験に使用した試験片の一つである平板試験片の形状を示す図である。図4(a)は、平板試験片の正面図、及び、平板試験片に形成された、欠陥を模した平底穴を通る面で切断したときの断面図であり、図4(b)は、それら平底穴の深さを示す表である(寸法の単位はmm)。本図に示されるように、この平板試験片には、直径が5mmで、深さの異なる8個の平底穴A〜Hが形成されている。
図5は、実験に使用した試験片の他の一つである模擬シリンダ試験片(平底穴の欠陥を導入したシリンダを半分に切った模擬シリンダ試験片)の形状を示す図である。図5(a)は、模擬シリンダ試験片の正面図、側面図、及び、模擬シリンダ試験片に形成された、欠陥を模した平底穴を通る面で切断したときの断面図であり、図5(b)は、それら平底穴の深さを示す表である。本図に示されるように、模擬シリンダ試験片には、深さの異なる3種類の穴α〜γが形成されている。なお、この模擬シリンダ試験片については、平底穴の直径が4mmと6mmの2種類について実験を行った。
本実験では、試験片表面で計測された温度の時系列データをフーリエ級数展開した際の高次のフーリエ係数(具体的には、以下のフーリエ係数a1)に注目した。フーリエ係数a1は次式により求められる。
Figure 2007248394
ただし、pix+qiは、時系列データを構成する各フレーム間の温度f(x)を直線近似した式であり、Tは全フレーム数である。
図6は、図4に示される平板試験片の全領域に対して得られた係数a1の分布である。本図において、深さ1〜3mmの平底穴A〜Cが検出されていることから分かるように、実際のインライン検査での検出目標である欠陥直径5(mm)、欠陥深さ3(mm)の欠陥が検出されている。
図7は、図5に示される模擬シリンダ試験片の全領域に対して得られた係数a1の分布である。図7(a)は、直径4mmの平底穴が形成された模擬シリンダ試験片の分布であり、図7(b)は、直径6mmの平底穴が形成された模擬シリンダ試験片の分布である。本図において、深さ1〜3mmの平底穴α〜γが検出されていることから分かるように、平板試験片の場合と同様に、実際のインライン検査での検出目標である寸法および深さの欠陥が検出されている。
以上のように、パルス加熱を用いた赤外線サーモグラフィによるシリンダ内部欠陥の検出のための予備実験によって、以下のことが判明した。つまり、平板試験片及びシリンダを模擬した試験片にパルス状の熱負荷を与えた時の時系列温度変動曲線をフーリエ級数展開した結果、フーリエ係数a1の分布を用いて、実際のインライン検査での検出目標である欠陥直径5(mm)、欠陥深さ3(mm)の欠陥を検出できることが判明した。
以上、本発明に係る非破壊検査方法及びその装置について、実施の形態及び実験例に基づいて説明したが、本発明は、これらの例に限定されるものではない。
たとえば、本実施の形態では、熱負荷付与手段として、キセノンチューブ102が使用されたが、本発明は、このような熱負荷付与手段に限定されるものではなく、ハロゲン発光管等の他の発光源であってもよい。
また、パルス状熱負荷を与えて温度分布の時系列データを取得することを1回だけでなく、複数回繰り返し、得られたデータを平均化することで、より精密な温度分布データを取得してもよい。
さらに、本実施の形態における「パルス加熱」は、本発明に必要な加熱方法のひとつであり、本発明は、「パルス加熱」に限ったものではない。キセノンフラッシュやハロゲンランプ等による「アクティブ加熱」であればよい。つまり、本発明における「加熱」には、パルス加熱だけでなく、通常の加熱や連続加熱も含まれる。
また、本実施の形態では、計測された温度の時系列データをフーリエ級数展開した際の高次のフーリエ係数として、cosに関する係数a1が使用されたが、本発明は、これに限られず、sinに関する係数b1であってもよい。さらに、1次のフーリエ係数にも限られない。
また、実施の形態で得られたフーリエ係数の分布に対して、輪郭抽出やエッジ検出等の画像処理を施すことで、内部欠陥の位置と形状を抽出する後処理機能を解析装置104に付加してもよい。
また、本実施の形態では、精度改善のためにフーリエ解析を使ったが、本発明は、必ずしもこのような解析を必要とするものではない。温度分布を表す赤外線画像だけでも欠陥検出は可能である。つまり、得られた赤外線画像を表示し、表示された赤外線画像に対して人間が欠陥を判断してもよいし、赤外線画像に対して各種画像処理を施して解析を行ってもよい。
また、円錐型全方位鏡101の円錐面に対する処理としは、赤外線をよく反射する特性があればゴールドコートに限ったものではない。
また、本実施の形態では、円錐型全方位鏡101は、円筒体内部に固定されていたが、円筒体の内部を移動(スキャン)させてもよい。円錐型全方位鏡101を移動させながら赤外線カメラ103による撮像を繰り返すことで、円筒体の長さに拘わらず、円筒体の内壁の全領域わたる非破壊検査が可能となる。
また、円錐型全方位鏡101とキセノンチューブ102との組み合わせを複数組(例えば、4セット)準備することで、例えば、4気筒エンジンのシリンダに対するインライン検査システムを構築することもできる。
さらに、本発明に係る非破壊検査を製品の検査工程におけるスクリーニングとして位置づけ、このスクリーングをパスした製品だけに対して超音波によるより精密な検査を行うことで、効率的で、かつ、高品質な非破壊検査工程を構築することもできる。
本発明に係る非破壊検査方法は、円筒体の内面における欠陥を非破壊で検査する方法として、例えば、シリンダや配管等の鋳造欠陥検査システムとして、特に、インライン検査装置として、利用することができる。
本発明に係る非破壊検査装置の構成を示すブロック図 非破壊検査装置が備える解析装置の詳細な構成を示すブロック図 非破壊検査装置の動作を示すフローチャート 平板試験片の形状を示す図 模擬シリンダ試験片の形状を示す図 図4の平板試験片に対して得られたフーリエ係数の分布図 図5の模擬シリンダ試験片に対して得られたフーリエ係数の分布図
符号の説明
100 非破壊検査装置
101 円錐型全方位鏡
102 キセノンチューブ
103 赤外線カメラ
104 解析装置
110 通信I/F
111 制御部
112 演算部
113 赤外線画像記憶部
114 表示部

Claims (8)

  1. 円筒体の内面における欠陥を非破壊で検査する方法であって、
    前記円筒体の内面に熱負荷を与える熱負荷付与ステップと、
    熱負荷が与えられた直後における前記内面の温度分布を、円錐型全方位鏡を介して赤外線サーモグラフィで計測する温度分布計測ステップと、
    計測された温度分布を解析して欠陥を特定する解析ステップと
    を含むことを特徴とする非破壊検査方法。
  2. 前記温度分布計測ステップでは、熱負荷が与えられた前記内面の温度分布の時系列温度変化を計測し、
    前記解析ステップでは、計測された前記時系列温度変化をフーリエ解析することで、前記欠陥を特定する
    ことを特徴とする請求項1記載の非破壊検査方法。
  3. 前記解析ステップでは、前記時系列温度変化を示す時系列データをフーリエ級数展開することで、高次のフーリエ係数を算出し、算出した高次のフーリエ係数の分布に基づいて、前記欠陥を特定する
    ことを特徴とする請求項2記載の非破壊検査方法。
  4. 前記熱負荷付与ステップでは、前記円筒体の内面にパルス状の熱負荷を与える
    ことを特徴とする請求項1記載の非破壊検査方法。
  5. 前記温度分布計測ステップでは、円錐面がゴールドコートされた前記円錐型全方位鏡を前記円筒体に挿入しておき、前記円筒体の内面から放射されて前記円錐面で反射する赤外線を前記赤外線サーモグラフィで検出することで、前記温度分布を計測する
    ことを特徴とする請求項1記載の非破壊検査方法。
  6. 円筒体の内面における欠陥を非破壊で検査する装置であって、
    前記円筒体の内部に挿入される円錐型全方位鏡と、
    前記円筒体の内面に熱負荷を与える熱負荷付与手段と、
    熱負荷が与えられた直後における前記内面の温度分布を、前記円錐型全方位鏡を介して赤外線サーモグラフィで計測する温度分布計測手段と、
    計測された温度分布を解析して欠陥を特定する解析手段と
    を備えることを特徴とする非破壊検査装置。
  7. 前記温度分布計測手段は、熱負荷が与えられた前記内面の温度分布の時系列温度変化を計測し、
    前記解析手段は、計測された前記時系列温度変化をフーリエ解析することで、前記欠陥を特定する
    ことを特徴とする請求項6記載の非破壊検査装置。
  8. 前記円筒体は、エンジンのシリンダである
    ことを特徴とする請求項7記載の非破壊検査装置。
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