JP2007187647A - 物質固定化担体、及び物質の固定化方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】フッ素化合物同士の親和力によって所望の物質が担体に固定化されている物質固定化担体等を提供する。
【解決手段】担体の表面に所望の物質が固定化された物質固定化担体であって、前記担体の表面の一部又は全部はフッ素化合物からなり、前記物質にはフッ素化合物タグが結合しており、該フッ素化合物タグが担体表面に結合していることを特徴とする物質固定化担体が提供される。フッ素化合物タグはスペーサーを介して物質に結合していてもよい。物質が蛋白質の場合には、所望の蛋白質と分子シャペロンとの融合蛋白質が固定化されていてもよい。フッ素化合物タグを介して所望の物質を担体に固定化する物質の固定化方法も提供される。フッ素化合物タグに所望の物質を結合させる方法として、カルボン酸チオエステル基と1級アミノ基を有するチオール基との縮合反応や、化学架橋反応を利用することができる。
【選択図】図4
【解決手段】担体の表面に所望の物質が固定化された物質固定化担体であって、前記担体の表面の一部又は全部はフッ素化合物からなり、前記物質にはフッ素化合物タグが結合しており、該フッ素化合物タグが担体表面に結合していることを特徴とする物質固定化担体が提供される。フッ素化合物タグはスペーサーを介して物質に結合していてもよい。物質が蛋白質の場合には、所望の蛋白質と分子シャペロンとの融合蛋白質が固定化されていてもよい。フッ素化合物タグを介して所望の物質を担体に固定化する物質の固定化方法も提供される。フッ素化合物タグに所望の物質を結合させる方法として、カルボン酸チオエステル基と1級アミノ基を有するチオール基との縮合反応や、化学架橋反応を利用することができる。
【選択図】図4
Description
本発明は、物質固定化担体及び物質の固定化方法に関し、さらに詳細には、フッ素化合物同士の親和力によって所望の物質が担体に固定化されている物質固定化担体、及び、フッ素化合物同士の親和力を利用して所望の物質を担体に固定化する物質の固定化方法に関する。
ヒトゲノムの解読が完了し、ヒトの遺伝子の機能解析が急速に進められている。その解析を支えるツールの一つにDNAチップ(DNAマイクロアレイ)がある。DNAチップは、プローブとしてのDNAが基板等の担体(支持体)に固定化されたものであり、担体上のDNAと解析対象の分子(アナライト)との相互作用等を網羅的に解析する目的に使用される。現在、DNAチップは基礎研究のみならず、遺伝子診断等にも利用され始めている。
DNAチップ以外にも、プローブとなる種々の物質が担体に固定化されたチップが開発されている。例えば、「蛋白質チップ」(「プロテインチップ」ともいう)は、プローブとしての蛋白質が担体に固定化されたものであり、担体上の蛋白質とアナライトとの相互作用等を解析する目的に使用される。蛋白質チップによれば、例えば、蛋白質−蛋白質相互作用、蛋白質−低分子薬剤相互作用、蛋白質−リガンド相互作用、抗原−抗体反応等の種々の相互作用の解析を行なうことができる。蛋白質チップによれば、DNAチップでは解析が不可能な生体内での蛋白質の量的又は質的な変化を解析することができる。蛋白質チップは、臨床診断や創薬研究等に大きな威力を発揮すると期待されている。
その他のプローブとなる物質としては、糖鎖が挙げられる。すなわち、プローブとしての糖鎖が担体に固定化された「糖鎖チップ」が開発されている(非特許文献1〜5)。糖鎖チップは、糖鎖とアナライトとの相互作用等の解析や、細菌やウイルスの検出等を目的として使用されている。さらに、低分子化合物が担体に固定化されたチップも開発されている(非特許文献6〜9)。このチップは、蛋白質の内在性リガンドの探索やアゴニスト、アンタゴニストのスクリーニング等に使用されている。以上のようなプローブが固定化されたチップを総称して「バイオチップ」と呼ぶ。
しかし、DNAチップ以外のバイオチップには、実用化に際してなお課題が存在する。例えば、核酸同士の結合様式は水素結合に限定されているのに対し、蛋白質と他の物質との結合様式は多様である。これは、蛋白質と他の物質との結合の強さが多様であることを示す。したがって、蛋白質チップにおいては、プローブとなる蛋白質とアナライトとの結合の強さが多様であり、DNAチップと比較してアナライトとの相互作用の解析が難しいことがある。また、蛋白質には、その立体構造が壊れて変性や失活するおそれが常にある。例えば、担体に固定化されただけで変性や失活する蛋白質も多い。これは、例えば、担体と蛋白質の疎水性部分とが予期しない相互作用を起こすことにより起こる。さらに、蛋白質は核酸のように増幅することができないので、微量の蛋白質を検出する技術が別途必要となる。さらに、プローブとしての蛋白質が基板等の担体に固定化される際に、その蛋白質の配向性が制御されずに固定化されている例が多い。この場合には、担体に固定化された蛋白質上のアナライトと相互作用する部位が表面に十分露出せず、うまくアナライトと相互作用できなくなる。その結果、解析結果が大きくばらつくことがある。
このような蛋白質チップが有する課題を解決するために、種々の改良技術が提案されている。例えば、ヒスチジンタグとニッケル、ビオチンとアビジン等の相互作用を利用した物質の固定化方法が提案されている(非特許文献10,11)。また、基板と蛋白質との相互作用の影響を軽減するため、ポリエチレングリコール等のスペーサーを介して、蛋白質を基板に固定化する方法が提案されている(非特許文献12)。この方法の利点の1つは、ポリエチレングリコールのスペーサーがあるため、基板と固定化された蛋白質との予期しない相互作用が起こりにくいことである。別の利点は、スペーサーのポリエチレングリコールにより蛋白質のまわりが親水性の環境となり、蛋白質が変性しにくいことである。さらに別の利点は、ビオチンを介して基板に蛋白質を固定化するので、蛋白質の配向性を制御しやすいことである。
ワング D(Wang D)ら,ネイチャー・バイオテクノロジー(Nature Biotechnology),2002年,第20巻,p.275−281 フクイ S(Fukui S)ら,ネイチャー・バイオテクノロジー(Nature Biotechnology),2002年,第20巻,p.1011−1017 ファジオ F(Fazio F)ら,ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティ(Journal of American Chemical Society),2002年,p.14397−14402 ハウスマン BT(Houseman BT)ら,ケミストリー・アンド・バイオロジー(Chemistry & Biology),2002年,第9巻,p.443−454 パーク S(Park S),アンゲバンテ・ヘミー・インターナショナル・エディション(Angewandte Chemie International Edition),2002年,第41巻, p.3180−3182 ウイルソン SR(Wilson SR)とクザルニック AW(Czarnik AW)著,「コンビナトリアル・ケミストリー」(Combinatorial Chemistry),1997年,ジョン・ウィレイ・アンド・サンズ・インク(John Wiley & Sons, Inc.)発行 テレット NK(Terrett NK)著,「コンビナトリアル・ケミストリー」(Combinatorial Chemistry),1998年,オックスフォード・ユニバーシティ・プレス(Oxford University Press)発行 ユング G(Jung G,)「コンビナトリアル・ケミストリー」(Combinatorial Chemistry),1996,ウィレイ−VCH(Wiley-VCH)発行 フェニリ H(Fenniri H),「コンビナトリアル・ケミストリー」(Combinatorial Chemistry),2000年,オックスフォード・ユニバーシティ・プレス(Oxford University Press)発行 キャッチャー A(Chacher A),ジャーナル・オブ・クロマトグラフィー(Journal of Chromatography),1987年,第411巻,p.177−184 ホワイトサイズ GM(Whitesides GM)ら,アナリティカル・ケミストリー.(Analytical Chemistry),1996年,第68巻,p.90−497 ルイズ−テイラー LA(Ruiz-Taylor LA),プロシーディングズ・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・ザ・U.S.A(Proceedings of National Academy of Sciences of the U.S.A.),2001年,第98巻,p.852−857
ワング D(Wang D)ら,ネイチャー・バイオテクノロジー(Nature Biotechnology),2002年,第20巻,p.275−281 フクイ S(Fukui S)ら,ネイチャー・バイオテクノロジー(Nature Biotechnology),2002年,第20巻,p.1011−1017 ファジオ F(Fazio F)ら,ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティ(Journal of American Chemical Society),2002年,p.14397−14402 ハウスマン BT(Houseman BT)ら,ケミストリー・アンド・バイオロジー(Chemistry & Biology),2002年,第9巻,p.443−454 パーク S(Park S),アンゲバンテ・ヘミー・インターナショナル・エディション(Angewandte Chemie International Edition),2002年,第41巻, p.3180−3182 ウイルソン SR(Wilson SR)とクザルニック AW(Czarnik AW)著,「コンビナトリアル・ケミストリー」(Combinatorial Chemistry),1997年,ジョン・ウィレイ・アンド・サンズ・インク(John Wiley & Sons, Inc.)発行 テレット NK(Terrett NK)著,「コンビナトリアル・ケミストリー」(Combinatorial Chemistry),1998年,オックスフォード・ユニバーシティ・プレス(Oxford University Press)発行 ユング G(Jung G,)「コンビナトリアル・ケミストリー」(Combinatorial Chemistry),1996,ウィレイ−VCH(Wiley-VCH)発行 フェニリ H(Fenniri H),「コンビナトリアル・ケミストリー」(Combinatorial Chemistry),2000年,オックスフォード・ユニバーシティ・プレス(Oxford University Press)発行 キャッチャー A(Chacher A),ジャーナル・オブ・クロマトグラフィー(Journal of Chromatography),1987年,第411巻,p.177−184 ホワイトサイズ GM(Whitesides GM)ら,アナリティカル・ケミストリー.(Analytical Chemistry),1996年,第68巻,p.90−497 ルイズ−テイラー LA(Ruiz-Taylor LA),プロシーディングズ・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・ザ・U.S.A(Proceedings of National Academy of Sciences of the U.S.A.),2001年,第98巻,p.852−857
しかし、ヒスチジンタグとニッケル、ビオチンとアビジン等の相互作用を利用する物質の固定化方法においては、担体と固定化された蛋白質との予期しない相互作用によって、固定化された蛋白質が変性することがある。さらに、アナライトと共存している夾雑蛋白質やアナライト自身が担体に非特異的に吸着し、アナライトの解析が妨害されることもある。これらの問題点を改善するために、上記したようなポリリジンがグラフトされたポリエチレングリコールポリマーを利用する物質の固定化方法も提案されている。しかし、この方法は、プローブとなる蛋白質を固定化する操作が煩雑である。
また、低分子化合物を固定化したチップにおいても、アナライトに共存している夾雑蛋白質が担体に非特異的に吸着することがある。そして、夾雑蛋白質が非特異的に担体に吸着することを防ぐために、担体に対してブロッキングが行なわれている。すなわち、血清アルブミンやカゼイン等を用いて担体表面をコーティングし、夾雑蛋白質の非特異的な吸着が防がれている。しかし、ブロッキングを行なっても夾雑蛋白質の非特異的吸着を完全に防ぐことは難しい。さらに、ブロッキングを行なう場合には、担体に固定化される物質やアナライトの種類に応じて適するブロッキング剤を選択する必要があり、煩雑である。またブロッキング剤のロット差が解析の結果に影響することもある。以上より、プローブとなる物質とアナライトとの相互作用等の解析をより正確かつ簡便に行なえる物質固定化担体、及び夾雑物質やアナライト自身が非特異的に吸着する割合がきわめて低く、かつ簡便な操作で所望の物質を担体に固定化できる物質の固定化方法が求められている。
本発明者らは、フッ素化合物同士が特異的な親和性を有することに着目し、フッ素化合物からなる表面を有する基板(担体)に、フッ素化合物タグを介して所望の物質が固定化された基板を作製した。そして、この物質固定化基板(物質固定化担体)によれば、当該物質とアナライトとの相互作用等の解析をより正確かつ簡便に行なえることを見出した。さらに、当該フッ素化合物同士の親和力を利用する物質の固定化方法により、種々の用途に用いられる物質固定化担体を提供できることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
請求項1に記載の発明は、担体の表面に所望の物質が固定化された物質固定化担体であって、前記担体の表面の一部又は全部はフッ素化合物からなり、前記物質にはフッ素化合物タグが結合しており、該フッ素化合物タグが担体表面のフッ素化合物からなる部分に結合していることを特徴とする物質固定化担体である。
本発明の物質固定化担体は、その表面の一部又は全部はフッ素化合物からなる担体と、フッ素化合物タグと、物質とからなる。そして、該フッ素化合物タグは、担体表面のフッ素化合物との間の親和力によって担体表面に結合している。その結果、該フッ素化合物タグを介して前記物質が担体表面に固定化されている。一般に、フッ素化合物にはフッ素化合物以外の物質が吸着しにくい性質があるので、担体表面がフッ素化合物からなる本発明の物質固定化担体においては、夾雑物質の非特異的吸着がきわめて少ない。よって、本発明の物質固定化担体においては、担体表面における所望の物質の純度(例えば、プローブ純度)が高い。その結果、例えば、本発明の物質固定化担体を該物質とアナライトとの相互作用等の解析に用いると、当該相互作用等を正確かつ高感度に解析することができる。さらに、この場合にはアナライトやアナライトに共存する夾雑物質の担体表面への非特異的吸着もきわめて少ないため、ブロッキング操作が不要となり、該物質とアナライトとの相互作用等を簡便に解析することができる。またさらに、この場合には特定の溶媒を用いることによって固定化した物質を容易に剥がすことができ、担体を再利用することができる。
また、本発明の物質固定化担体においては、担体表面における所望の物質の純度が高いので、上記した解析以外の目的に使用する場合にも好都合である。
また、本発明の物質固定化担体においては、担体表面における所望の物質の純度が高いので、上記した解析以外の目的に使用する場合にも好都合である。
ここでいう「担体」とは、所望の物質が固定化される際の土台となるものを指す。そして、表面の一部または全部がフッ素化合物からなる固体は、全て本発明における担体になり得る。本発明における担体は「支持体」と換言することができる。
ここで「フッ素化合物タグ」とは、パーフルオロアルキル基又はフルオロアルキル基を有する化合物又は置換基を意味するものとする。換言すれば、「フッ素化合物タグ」は、一般に「フルオラス・タグ」、「フルオラス保護基」、又は「フルオラス置換基」と呼ばれているものと同義である。なお、パーフルオロアルキル基とは、アルキル基の全ての水素原子がフッ素原子に置換したものである。また、フルオロアルキル基とは、アルキル基の一部の水素原子がフッ素原子に置換したものである。
請求項2に記載の発明は、前記担体は、基板であることを特徴とする請求項1に記載の物質固定化担体である。
かかる構成により、物質とアナライトとの相互作用等をより簡便に解析することができる。
請求項3に記載の発明は、前記担体は、フッ素樹脂からなる担体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の物質固定化担体である。
本発明の物質固定化担体においては、担体そのものがフッ素樹脂からなるので、担体を容易に調製することができる。すなわち、本発明の物質固定化担体は製造が容易である。
請求項4に記載の発明は、前記フッ素樹脂は、テトラフロロエチレン樹脂、パーフロロアルコキシ樹脂、及びフッ化エチレンプロピレン樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種のフッ素樹脂であることを特徴とする請求項3に記載の物質固定化担体である。
かかる構成により、担体をより容易に調製することができる。
請求項5に記載の発明は、前記フッ素化合物タグは、スペーサーを介して前記物質に結合していることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の物質固定化担体である。
本発明の物質固定化担体においては、フッ素化合物タグがスペーサーを介して前記物質に結合している。すなわち、本発明の物質固定化担体においては、該物質が担体表面からスペーサーの長さ分に相当する距離をおいて固定化されている。したがって、本発明の物質固定化担体においては、固定化された物質に対する担体からの作用の影響が少なく、物質と担体との予期しない相互作用が起こりにくい。その結果、本発明の物質固定化担体によれば、例えば、該物質とアナライトとの相互作用等をより正確に解析することができる。
請求項6に記載の発明は、前記物質は、蛋白質又はペプチドであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の物質固定化担体である。
かかる構成により、配向性が制御された蛋白質又はペプチドが固定化された物質固定化担体が提供される。すなわち、本発明の物質固定化担体によれば、例えば、該蛋白質又はペプチドとアナライトとの相互作用等をより正確に解析することができる。
請求項7に記載の発明は、前記蛋白質は、所望の蛋白質と分子シャペロンとの融合蛋白質であることを特徴とする請求項6に記載の物質固定化担体である。
本発明の物質固定化担体においては、所望の蛋白質と分子シャペロンとの融合蛋白質が固定化されている。当該融合蛋白質においては、所望の蛋白質が分子シャペロンの作用によってより確実に正しい立体構造を保持することができる。したがって、本発明の物質固定化担体によれば、例えば、該蛋白質とアナライトとの相互作用等をより正確に解析することができる。
請求項8に記載の発明は、前記分子シャペロンは、シャペロニンであることを特徴とする請求項7に記載の物質固定化担体である。
かかる構成により、担体に固定化された所望の蛋白質がシャペロニンの作用によってより確実に正しい立体構造を保持することができる。なお、「所望の蛋白質とシャペロニンとの融合蛋白質」とは、所望の蛋白質とシャペロニンサブユニットとの融合蛋白質、又は所望の蛋白質とシャペロニンサブユニット連結体との融合蛋白質をいうものとする。さらに、「シャペロニンサブユニット連結体」とは、複数のシャペロニンサブユニットがペプチド結合を介して直列に連結された蛋白質をいう。またさらに、シャペロニンサブユニットの数がN個であるシャペロニンサブユニット連結体を「シャペロニンサブユニットN回連結体」と呼ぶこととする。
請求項9に記載の発明は、前記分子シャペロンは、ペプチジル−プロリル シス−トランス イソメラーゼであることを特徴とする請求項7に記載の物質固定化担体である。
かかる構成により、担体に固定化された所望の蛋白質がペプチジル−プロリル シス−トランス イソメラーゼ(Peptidyl−prolyl cis−trans isomerase。以下、「PPIase」と称する。)の作用によってより確実に正しい立体構造を保持することができる。
請求項10に記載の発明は、前記物質は、糖又は糖鎖であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の物質固定化担体である。
本発明の物質固定化担体によれば、例えば、該糖又は糖鎖とアナライトとの相互作用等を正確かつ簡便に解析することができる。
請求項11に記載の発明は、前記物質は、分子量2000以下の低分子化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の物質固定化担体である。
本発明の物質固定化担体によれば、例えば、ブロッキングを行なうことなく該低分子化合物とアナライトとの相互作用等を解析することができる。
請求項12に記載の発明は、担体の表面に所望の物質を固定化する物質の固定化方法であって、表面の一部又は全部がフッ素化合物からなる担体の表面に所望の物質とフッ素化合物タグとの結合物を接触させ、該フッ素化合物タグを担体表面のフッ素化合物からなる部分に結合させることを特徴とする物質の固定化方法である。
本発明は物質の固定化方法にかかり、その表面の一部又は全部はフッ素化合物からなる担体表面に、フッ素化合物タグを介して所望の物質を固定化するものである。本発明の物質の固定化方法においては、所望の物質とフッ素化合物タグとの結合物を、該担体の表面に接触させる。このとき、該フッ素化合物タグと担体表面のフッ素化合物との間の親和力によって、該フッ素化合物タグが担体表面に結合する。その結果、所望の物質がフッ素化合物タグを介して担体表面に結合される。本発明の物質の固定化方法によれば、フッ素化合物同士の親和力を利用して物質を固定化するので、所望の物質以外の夾雑物質が固定化される割合がきわめて低い。その結果、担体表面における所望の物質の純度(例えば、プローブ純度)がきわめて高い物質固定化担体を作製することができる。さらに、本発明の物質の固定化方法では、担体表面に該結合物を接触させるだけで所望の物質を固定化できるので、操作が簡便である。
前記担体が基板である構成が推奨される(請求項13)。
請求項14に記載の発明は、前記担体は、フッ素樹脂からなる担体であることを特徴とする請求項12又は13に記載の物質の固定化方法である。
また、請求項15に記載の発明は、前記フッ素樹脂は、テトラフロロエチレン樹脂、パーフロロアルコキシ樹脂、及びフッ化エチレンプロピレン樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種のフッ素樹脂であることを特徴とする請求項14に記載の物質の固定化方法である。
かかる構成により、所望の物質をより容易に担体に固定化することができる。
請求項16に記載の発明は、前記結合物は、所望の物質とフッ素化合物タグとがスペーサーを介して結合したものであることを特徴とする請求項12〜15のいずれかに記載の物質の固定化方法である。
本発明の物質の固定化方法においては、フッ素化合物タグがスペーサーを介して前記物質に結合してなる結合物を、担体表面に接触させる。本発明の物質の固定化方法によれば、所望の物質を担体表面から距離をおいて固定化することができる。その結果、固定化された物質に対する担体からの作用の影響が少なく、物質と担体との予期しない相互作用が起こりにくい物質固定化担体を作製することができる。
請求項17に記載の発明は、化学架橋反応によって前記結合物を調製することを特徴とする請求項12〜16のいずれかに記載の物質の固定化方法である。
かかる構成により、所望の物質とフッ素化合物タグとの結合物をより簡便に調製することができる。
請求項18に記載の発明は、前記物質はカルボン酸チオエステル基を有し、前記フッ素化合物タグは1級アミノ基を有するチオール基を有し、該カルボン酸チオエステル基と該チオール基との縮合反応によって前記結合物を調製することを特徴とする請求項12〜16のいずれかに記載の物質の固定化方法である。
また、請求項19に記載の発明は、前記物質は1級アミノ基を有するチオール基を有し、前記フッ素化合物タグはカルボン酸チオエステル基を有し、該チオール基と該カルボン酸チオエステル基との縮合反応によって前記結合物を調製することを特徴とする請求項12〜16のいずれかに記載の物質の固定化方法である。
本発明の物質の固定化方法においては、1級アミノ基を有するチオール基とカルボン酸チオエステル基との縮合反応を利用して、所望の物質をフッ素化合物タグとの結合物を調製する。本縮合反応は中性かつ室温条件下で行なうことができるので、本発明の物質の固定化方法では、所望の物質が強酸性、強アルカリ性、高温等の厳しい条件下に曝されることがない。したがって、固定化の過程で所望の物質が分解、変性、失活等するおそれがない。
請求項20に記載の発明は、前記物質は蛋白質又はペプチドであり、前記チオール基は該蛋白質又はペプチドのN末端のシステイン残基であることを特徴とする請求項19に記載の物質の固定化方法である。
かかる構成により、固定化の過程で蛋白質又はペプチドが分解、変性、失活等するおそれがない。
本発明の物質固定化担体においては、担体表面における所望の物質の純度が高い。そのため、本発明の物質固定化担体によれば、例えば、固定化された所望の物質とアナライトとの相互作用等をより正確、高感度かつ簡便に解析することができる。
本発明の物質の固定化方法によれば、担体表面における所望の物質の純度が高い物質固定化担体を作製することができる。また、本発明の物質の固定化方法によれば、より効率的に所望の物質を担体表面に固定化することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、詳しく説明する。
本発明の物質固定化担体は、表面の一部又は全部がフッ素化合物からなる担体に、フッ素化合物タグを介して所望の物質が固定化されたものである。すなわち、該物質にはフッ素化合物タグが結合しており、該フッ素化合物タグと担体表面のフッ素化合物との間の親和力によって該フッ素化合物タグが担体表面に結合している。
担体の形状としては特に限定はなく、例えば、平板状(基板など)、球状(ビーズなど)、糸状などが挙げられる。さらに、後に詳述する人工器官・人工臓器のような一定の面積を有する複雑な形状の担体が挙げられる。
担体の表面を構成するフッ素化合物としては特に限定はないが、パーフルオロアルキル基又はフルオロアルキル基を有し、これらの官能基が表面に露出されているものが好ましい。
「フッ素化合物タグ」とは、パーフルオロアルキル基又はフルオロアルキル基を有する化合物又は置換基を意味する。換言すれば、「フッ素化合物タグ」は、一般に「フルオラス・タグ」、「フルオラス保護基」、又は「フルオラス置換基」と呼ばれているものと同義である。本発明の物質固定化担体においては、各種のフルオラス保護基がフッ素化合物タグとしてそのまま使用可能である。なお、フルオラス保護基(フッ素化合物タグ)導入用の化合物が試薬としてすでに市販されている。例えば、ビスフルオラス・チェイン・タイプ・プロピオン酸(Bisfluorous chain type propionic acid、C25H15F34NO3、以下「Bfp−OH」と称する。)、2−[2−(パーフルオロアルキル)イソプロポキシカルボニルオキシイミノ]−2−フェニルアセトニトリル、4−(パーフルオロアルキル)ベンジルアルコール、パーフルオロアルキルチオール等がフルオラス保護基導入用の試薬として市販されており、本発明の物質固定化担体におけるフッ素化合物タグとして使用できる。また一般に、フッ素化合物同士の親和力は、該フッ素化合物におけるフッ素原子の含量が大きいほど強い。よって、本発明の物質固定化担体においてもフッ素化合物タグはフッ素原子の含量が大きい方が好ましく、フッ素化合物タグ中のパーフルオロアルキル基又はフルオロアルキル基の炭素原子において、フッ素原子が結合している炭素原子を3個以上含むことが好ましい。
好ましい実施形態では、担体そのものがフッ素樹脂からなる。本実施形態におけるフッ素樹脂の好ましい例としては、テトラフロロエチレン樹脂(ポリテトラフルオロエチレンとも言う。以下、「PTFE」と称する。)、パーフロロアルコキシ樹脂(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、又はパーフルオロアルコキシアルカンとも言う。以下、「PFA」と称する。)、及びフッ化エチレンプロピレン樹脂(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体とも言う。以下、「FEP」と称する。)が挙げられる。その他のフッ素樹脂、例えば、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)等のフッ素樹脂も使用可能である。これらのフッ素樹脂は、テフロン(登録商標)、ポリフロン(登録商標)、ネオフロン(登録商標)、フルオン(登録商標)、アフロン(登録商標)等の商品名で販売されている。なお、これらのフッ素樹脂については、1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
フッ素樹脂以外の素材からなる担体を採用する場合は、例えば、表面にフッ素化合物を塗布した担体を用いることができる。その他の例としては、担体として基板を採用する場合に、表面にフッ素樹脂からなる薄板を貼り合わせた基板を用いることができる。
好ましい実施形態では、フッ素化合物タグがスペーサーを介して物質に結合している。スペーサーの例としては、ポリエチレングリコール、ポリペプチド、その他各種のポリマーからなるスペーサーが挙げられる。本実施形態では、スペーサーの種類、長さ、分子量等を調節することにより、固定化される物質と担体表面との距離を調整することができる。さらに、固定化される物質の周囲の環境(例えば、親水的環境)を整えることが可能となる。これにより、例えば、固定化された物質とアナライトとの相互作用等の解析をより正確かつ効率的に行なうことができる。
固定化される物質に対して特異的な親和性を有する物質をスペーサーとして用いることもできる。例えば、固定化される物質が抗体である場合には、プロテインAやプロテインGがスペーサーとして使用できる。例えば、まずプロテインA又はプロテインGが結合したフッ素化合物タグを調製する。次いで、該プロテインA又はプロテインGに抗体を結合させる。これにより、プロテインA又はプロテインG(スペーサー)を介して抗体(物質)が結合したフッ素化合物タグが調製される。同様にして、ZZタグをスペーサーとし、物質として抗体が担体に固定化された物質固定化担体も作製できる。なお、ZZタグは、プロテインAが有するIgG結合領域の2つが互いに結合されたペプチドである。
好ましい実施形態では、蛋白質又はペプチドが担体に固定化されている。すなわち、本実施形態の物質固定化担体は、蛋白質チップとして使用することができる。
この好ましい実施形態においては、所望の蛋白質が分子シャペロンと融合されていてもよい。換言すれば、所望の蛋白質と分子シャペロンとの融合蛋白質が担体に固定化されていてもよい。一般に、単独では正しい立体構造を保持することが難しい蛋白質やペプチドであっても、分子シャペロンとの融合蛋白質として発現させることにより、正しい立体構造を保持できることが多く見出されている。よって、本実施形態においては、所望の物質が単独では正しい立体構造を保持することが難しい蛋白質やペプチドであっても、正しい立体構造を保持した状態で担体に固定化されている。本実施形態で採用される分子シャペロンとしては特に限定はなく、蛋白質の折り畳みを助ける作用を有するものであれば、すべて適用可能である。
好ましい実施形態では、分子シャペロンがシャペロニンである。換言すれば、所望の蛋白質とシャペロニンサブユニットとの融合蛋白質、又は所望の蛋白質とシャペロニンサブユニット連結体との融合蛋白質が、担体に固定化されている。
シャペロニンは、約60kDaのサブユニット(シャペロニンサブユニット)が1〜約20個程度集まった複合体である。シャペロニンは、細胞に熱ショックなどのストレスを与えることにより誘導されるヒートショック蛋白質の一種としても知られている。シャペロニンは、バクテリア(例えば、大腸菌など)、古細菌(例えば、Thermococcus sp.、Pyrococcus horikoshii、Aeropyrum pernixなど)及び真核生物(例えば、酵母、マウス、ヒトなど)等の全ての生物に存在し、蛋白質の折り畳み支援や変性防御の機能を有している。
複数のシャペロニンサブユニットがペプチド結合を介して直列に連結された蛋白質であるシャペロニンサブユニット連結体も、天然のシャペロニンと同様に複合体を形成することが知られている。この際、2〜約10個のシャペロニンサブユニットは、天然のシャペロニンと同様にリング状(以下、「シャペロニンリング」ともいう。)あるいは直線状の構造をとることが知られている。なお、「シャペロニンサブユニット連結体」という用語に対比して、他のシャペロニンサブユニットとはペプチド結合を介して連結されていないシャペロニンサブユニットを「単独のシャペロニンサブユニット」と呼ぶこととする。
好ましい他の実施形態では、分子シャペロンがPPIaseである。換言すれば、所望の蛋白質とPPIaseとの融合蛋白質が担体に固定化されている。
PPIaseは、細胞内でフォールディング途上のターゲット蛋白質中のアミノ酸のうち、プロリン残基のN末端側ペプチド結合のシストランス異性化反応を触媒する活性(PPIase活性)を有する分子シャペロンである。PPIaseはその阻害剤に対する感受性から、FK506 Binding Protein型(FKBP型)、シクロフィリン型、及びパーブリン型の3種類に分類されている。FKBP型PPIaseは、免疫抑制剤の1つであるFK506により活性が阻害されるPPIase及びそのホモログである。シクロフィリン型PPIaseは、別の免疫抑制剤であるシクロスポリンに対して感受性を持つPPIase及びそのホモログである。一方、パーブリン型PPIaseは、いずれの免疫抑制剤に対しても感受性を示さず、ジュグロン(juglone)によりその活性が阻害される。この3種類のPPIaseは、アミノ酸一次配列上の相同性はほとんどない。
本実施形態におけるPPIaseとしては特に限定されず、上記の3種類のPPIaseのうち、いずれのタイプのPPIaseであってもよい。FKBP型PPIaseの例としては、古細菌由来FKBP型PPIase、トリガーファクタータイプPPIase(Huang,Protein Sci.,第9巻、p.1254,2000年)、FkpAタイプPPIase(Arie,Mol.Microbiol.,第39巻,p.199,2001年)、及び、FKBP52タイプPPIase(Bose,Science,第274巻,p.1715,1996年)が挙げられる。シクロフィリンタイプPPIaseの例としては、CyP40タイプPPIaseが挙げられる(Pirkl,J.Mol.Biol.,第308巻,p.795,2001年)。パーブリンタイプPPIaseの例としては、SurAタイプPPIase(Behrens,EMBO J.,p.第20巻,p.285,2001年)が挙げられる。なお、本実施形態においては、これらのPPIaseとアミノ酸配列がきわめて似ておりかつ同様の作用を有する実質的に同一の蛋白質や、これらのPPIaseの一部分を含みかつ同様の作用を有する蛋白質も、所望の蛋白質やペプチドと融合されるPPIaseとして採用できる。
なお、古細菌由来FKBP型PPIaseの機能については、興味深いことに、PPIase活性だけでなく、蛋白質の不可逆的凝集を抑制すると同時に、変性蛋白質のリフォールディングを促進させる分子シャペロン活性を有することが見出されている(Furutani,Biochemistry,第39巻,p.453,2000年;Ideno,Eur.J.Biochem.,第267巻,p.3139,2000年;Ideno,Biochem.J.,第357巻,p.465,2001年;Ideno,Appl.Env.Microbiol.,第68巻,p.464,2002年)。分子シャペロン活性は、本来、分子シャペロンの1つとして知られるシャペロニンやDnaK/DnaJ/GrpE系の蛋白質折り畳みシステムに見いだされた活性である。これらは、細胞内で合成されたポリペプチドが正しい形に折り畳まれるよう、サポートする機能を果たしている。その際、ATPなどの高エネルギー物質の加水分解を必要とする。一方、古細菌由来FKBP型PPIaseは、その分子シャペロン活性を発揮する際、上記高エネルギー物質の加水分解反応を必要としない点でその性質が異なる。古細菌由来FKBP型PPIaseは、分子シャペロン活性を有しないPPIaseに比べて、融合される所望の蛋白質をより正しく折り畳むことができる。したがって、古細菌由来FKBP型PPIaseは、本実施形態の融合蛋白質に含まれるPPIaseとして、特に好適である。
他の実施形態では、所望の物質として糖又は糖鎖が担体の表面に固定化されている。すなわち、本実施形態の物質固定化担体は、例えば、糖チップ又は糖鎖チップとして使用することができる。さらに他の実施形態では、所望の物質として分子量2000以下の低分子化合物が担体の表面に固定化されている。すなわち、本実施形態の物質固定化担体は、例えば、蛋白質の内在性リガンドの探索やアゴニスト、アンタゴニストのスクリーニング等に使用することができる。
上記した主な実施形態の物質固定化担体の構造について、図面を参照しながら説明する。第1の例は、担体、フッ素化合物タグ、及び物質の最小限の構成からなる物質固定化担体である。図1は、本発明の物質固定化担体の第1の例の構造を表す模式図である。すなわち、図1に示される物質固定化担体1は、担体2と、フッ素化合物タグ3と、物質5とからなる。物質5にはフッ素化合物タグ3が結合している。一方、担体2の表面6はフッ素化合物からなり、フッ素化合物同士の親和力によってフッ素化合物タグ3がフッ素化合物からなる表面6に結合している。その結果、物質5がフッ素化合物タグ3を介して担体2に固定化されている。なお、図1は模式図であり、担体2、フッ素化合物タグ3、及び物質5の大きさは実際とは異なる。
第2の例は、スペーサーを介して物質が担体に固定化されている物質固定化担体である。図2は、本発明の物質固定化担体の第2の例の構造を表す模式図である。すなわち、図2に示される物質固定化担体11は、担体2と、フッ素化合物タグ3と、スペーサー7と、物質5とからなる。そして、物質5がスペーサー7を介してフッ素化合物タグ3に結合している。一方、フッ素化合物同士の親和力によってフッ素化合物タグ3がフッ素化合物からなる表面6に結合している。その結果、物質5がスペーサー7とフッ素化合物タグ3とを介して担体2に固定化されている。なお、図2は模式図であり、担体2、フッ素化合物タグ3、物質5、及びスペーサー7の大きさは実際とは異なる。
第3の例は、所望の物質が蛋白質であり、該蛋白質と分子シャペロンとの融合蛋白質が担体に固定化されている物質固定化担体である。図3は、本発明の物質固定化担体の第3の例の構造を表す模式図である。この例は、さらに、フッ素化合物タグが分子シャペロンに結合している場合と、フッ素化合物タグが所望の蛋白質に結合している場合とに分けられる。前者の例を図3(a)に、後者の例を図3(b)に示す。
図3(a)に示される物質固定化担体21は、担体2と、フッ素化合物タグ3と、融合蛋白質10とからなる。さらに、融合蛋白質10は蛋白質(物質)15と分子シャペロン8とからなり、分子シャペロン8がフッ素化合物タグ3に結合している。一方、フッ素化合物同士の親和力によってフッ素化合物タグ3がフッ素化合物からなる表面6に結合している。その結果、融合蛋白質10がフッ素化合物タグ3を介して担体2に固定化されている。換言すれば、蛋白質15が分子シャペロン8とフッ素化合物タグ3とを介して担体2に固定化されている。この例の場合は、分子シャペロン8がスペーサーの役目も兼ねることができる。
一方、図3(b)に示される物質固定化担体31は、融合蛋白質20が蛋白質15と分子シャペロン8とからなり、蛋白質15がフッ素化合物タグ3に結合している。一方、フッ素化合物同士の親和力によってフッ素化合物タグ3がフッ素化合物からなる表面6に結合している。その結果、蛋白質15がフッ素化合物タグ3を介して担体2に固定化されており、かつ蛋白質15に分子シャペロン8が結合されている。なお、図3(a)の物質固定化担体21、図3(b)の物質固定化担体31のいずれにおいても、分子シャペロン8の作用によって蛋白質15が正しい立体構造をより容易に保持することができる。なお、図3(a)、図3(b)はいずれも模式図であり、担体2、フッ素化合物タグ3、蛋白質15、及び分子シャペロン8の大きさは実際とは異なる。
以下、本発明の物質固定化担体の具体的な用途の例を担体の種類とともに説明する。当該用途は、分析や解析を目的とする用途と、それ以外の用途に大きく2つに分けられる。分析や解析を目的とする用途の1つの例は、基板等を担体として用い、固定化された物質とアナライトとの相互作用等を網羅的に分析する用途、すなわちバイオチップとしての用途である。具体的には、プローブとなる物質が基板等の表面にフッ素化合物タグを介して配列および固定化された物質固定化担体が、当該物質とアナライトとの相互作用等を網羅的に解析できるバイオチップとして使用できる。プローブとなる物質の例としては、上記したように、蛋白質又はペプチド、糖又は糖鎖、分子量2000以下の低分子化合物等が挙げられる。
分析や解析を目的とする用途の他の例としては、免疫測定法への応用が挙げられる。すなわち、ビーズ、マイクロチューブ、マイクロタイタープレート等の担体表面にフッ素化合物タグを介して所望の抗体又は抗原が固定化された(被覆された)物質固定化担体が、免疫測定法に使用できる。この際、担体として、フッ素樹脂からなるビーズや、表面がフッ素樹脂で被覆されたマイクロチューブ等を使用することができる。
分析や解析を目的とする用途のさらに他の例としては、ラテックス凝集法への応用が挙げられる。具体的には、フッ素樹脂からなるラテックス(担体)の表面にフッ素化合物タグを介して所望の抗体又は抗原が固定化された(被覆された)物質固定化担体が、ラテックス凝集法に使用できる。
分析や解析以外の用途としては、人工器官や人工臓器への応用が挙げられる。例えば、多孔性PTFEからなる人工血管(担体)の内壁にヘパリン等の抗血液凝固物質がフッ素化合物タグを介して固定化され、内壁の全体が当該抗血液凝固物質で被覆された人工血管(物質固定化担体)が挙げられる。この人工血管によれば、血栓の生成が高度に抑えられる。
人工骨への応用も可能である。例えば、人工骨においては、他の骨との接合部分には生体親和性を付与せず、その他の部分(主に側面)には生体親和性を付与したい場合がある。そこで、フッ素含有ヒドロキシアパタイトからなる人工骨(担体)の側面のみにフッ素化合物タグを介してコラーゲン等の生体親和性物質が固定化された(被覆された)人工骨(物質固定化担体)が、前記目的に使用できる。その他、フッ素含有ヒドロキシアパタイトからなる義歯、フッ素樹脂からなる人工臓器、フッ素樹脂を含有するコンタクトレンズ等も、本発明における担体となりうる。
その他の用途としては、細胞培養技術への応用が挙げられる。例えば、フッ素樹脂等からなる培養容器(担体)の表面に、細胞分化誘導物質等がフッ素化合物タグを介して固定化された(被覆された)培養容器(物質固定化担体)が、細胞培養に使用できる。すなわち、そのような培養容器を用いることにより、細胞に対して所望の分化誘導を行うことができ、特に再生医療分野等に有用である。
本発明の物質の固定化方法は、表面の一部又は全部がフッ素化合物からなる担体表面に所望の物質とフッ素化合物タグとの結合物を接触させ、該フッ素化合物タグを担体表面に結合させるものである。その結果、フッ素化合物タグを介して所望の物質が担体表面に固定化される。
本発明の物質の固定化方法では、所望の物質とフッ素化合物タグとの結合物を使用する。該結合物は、所望の物質とフッ素化合物タグとを直接的に結合させたものでもよいし、スペーサーを介して所望の物質とフッ素化合物タグとを間接的に結合させたものでもよい。該結合物を調製する方法としては特に限定はないが、好ましい実施形態では、化学架橋反応を利用する。化学架橋反応としては特に限定はないが、例えば、N−ヒドロキシスクシンイミドとカルボジイミドによる、カルボキシル基とアミノ基との結合反応が挙げられる。すなわち、所望の物質とフッ素化合物タグのどちらか一方にカルボキシル基、他方にアミノ基を導入しておき、該物質と該フッ素化合物タグとをN−ヒドロキシスクシンイミドとカルボジイミドの作用による縮合反応により結合させる。スペーサーを用いる場合には、例えば、所望の物質とフッ素化合物タグのいずれか一方にスペーサーをあらかじめ結合させておく。そして、該スペーサーにカルボキシル基又はアミノ基を導入し、同様の縮合反応を行えばよい。使用可能な他の化学架橋反応としては、二価性試薬架橋剤を用いた結合反応が挙げられる。具体的には、マレイミド基とN−ヒドロキシスクシンイミド活性エステルを分子の両端に持ち、アミノ基にはN−ヒドロキシスクシンイミド活性エステルが反応し、チオール基にはマレイミド基が選択的に反応するような試薬を用いた結合反応が挙げられる。
他の好ましい実施形態では、カルボン酸チオエステル基と1級アミノ基を有するチオール基との縮合反応を利用して、所望の物質とフッ素化合物タグとの結合物を調製する。本縮合反応は、ネイティブケミカルライゲーション(Native Chemical Ligation)と呼ばれる反応と同一の反応機構を有する反応である。
ネイティブケミカルライゲーションは、元来は、C末端にチオエステル基を有するポリペプチドと、N末端がシステイン残基であるポリペプチドとが、中性かつ室温条件下で結合する反応として報告されたものである(Dawson et al., Science, 266, 117-119 (1994); Tam et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92, 12485-12489 (1995))。すなわち、該カルボン酸チオエステル基と該N末端システイン残基とが位置特異的に反応し、アミド結合(ペプチド結合)を形成する。ネイティブケミカルライゲーションによれば、末端が保護されていないペプチド同士を結合させることができる。このように、元来のネイティブケミカルライゲーションはペプチド同士が結合する反応であるが、この反応機構はペプチド同士以外でも起こる。すなわち、カルボン酸チオエステルを有する化合物と、N末端システイン残基と同じ構造のチオール基を有する化合物との間でも、元来のネイティブケミカルライゲーションと同様に、両化合物間にアミド結合が形成される。このようなペプチド以外の化合物同士をネイティブケミカルライゲーションと同一の反応機構で結合する反応を含めて「広義のネイティブケミカルライゲーション」と呼ぶこととする。なお、「N末端システイン残基と同じ構造のチオール基」は、「1級アミノ基を有するチオール基」や「N末端システイン残基と同様のアミノ基とチオール基とを有する官能基」等と換言することができる。
そして本実施形態においては、所望の物質とフッ素化合物タグとの結合物を調製する際に、カルボン酸チオエステル基と1級アミノ基を有するチオール基との縮合反応を利用する。これは、換言すれば、広義のネイティブケミカルライゲーションを利用して所望の物質とフッ素化合物タグとの結合物を調製するということである。本実施形態においては、中性かつ室温というマイルドな条件下で所望の物質とフッ素化合物タグとの結合物を調製することができるので、所望の物質が分解、変性、失活等することがない。よって、本実施形態の物質の固定化方法は、蛋白質を担体に固定化する際に特に有用である。なお、本実施形態においては、固定化される物質にカルボン酸チオエステル基を導入し、フッ素化合物タグに1級アミノ基を有するチオール基を導入してもよいし、固定化される物質に1級アミノ基を有するチオール基を導入し、フッ素化合物タグにカルボン酸チオエステル基を導入してもよい。スペーサーを用いる場合には、例えば、所望の物質とフッ素化合物タグのいずれか一方にスペーサーをあらかじめ結合させておく。そして、該スペーサーにカルボン酸チオエステル基又は1級アミノ基を有するチオール基を導入すればよい。
所望の物質が蛋白質の場合で、該蛋白質のC末端にカルボン酸チオエステル基を簡便に導入する方法の一つとして、インテインの自己切断作用を利用する方法が挙げられる。インテインは真核動物、古細菌、真正細菌のすべてで見つかっているプロテインスプライシングを行なう蛋白質である。該プロテインスプライシングにより、ペプチド結合の切断と再結合が自己触媒的に行なわれる。このうちの切断作用(自己切断作用)を利用して、所望の蛋白質のC末端にカルボン酸チオエステル基を導入することができる。具体的には、まず、インテインのN末端側に所望の蛋白質が結合した融合蛋白質を作製する。この際、インテインと所望の蛋白質との間にシステイン残基を導入しておく。次に、該融合蛋白質にメルカプトエタンスルホン酸ナトリウム(MESNA)等のチオール化合物を接触させ、インテインの自己切断作用を惹起する。すると、所望の蛋白質とシステイン残基との間のペプチド結合が切断され、同時に該蛋白質のC末端がチオエステル化される。このようにして、所望の蛋白質のC末端にカルボン酸チオエステル基を導入することができる。なお、インテインの自己切断作用等の詳細については国際公開2004/096860号パンフレットに記載されている。さらに、インテインを利用したカルボン酸チオエステル基を導入する方法の詳細については、アイモト S.「カレント・オーガニック・ケミストリー(Current Organic Chemistry)」,2001年,第5巻,p45−87に記載されている。
本発明の物質の固定化方法においても、PTFE、PFA、FEP等のフッ素樹脂からなる担体を用いることができる。また、フッ素化合物の分離・精製用に市販されているパーフルオロアルキル基やフルオロアルキル基が結合した樹脂担体(例えば、国産化学社のFluoroFlashSPEカートリッジ、FluoroFlashHPLCカラム等)を、そのまま担体として用いることもできる。ただし、当該樹脂担体を採用した場合は、固定化された物質とアナライトとの相互作用等を解析する目的には不適である。
本発明の物質の固定化方法は、蛋白質若しくはペプチド、糖若しくは糖鎖、又は分子量2000以下の低分子化合物を担体に固定化する際に用いることができる。もちろん、所望の蛋白質と分子シャペロンとの融合タンパク質を固定化する際にも用いることができる。さらに、所望の蛋白質と分子シャペロンとの融合蛋白質を固定化するのではなく、該融合蛋白質から切り出した所望の蛋白質を固定化してもよい。
以下に実施例を掲げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
本実施例では、フッ素樹脂基板(担体)の表面にフルオラス・タグ(フッ素化合物タグ)を介してフルオレセイン(分子量2000以下の低分子化合物)が固定化された基板(物質固定化担体)を作製した。
(1)フルオレセインとフルオラス・タグとの結合物の調製
エチレンジアミン(和光純薬社)をN,N’−ジメチルホルムアミド(N,N’−dimethylformamide,DMF,ナカライテスク社)に溶解し、1Mのエチレンジアミン溶液を調製した。一方、N−ヒドロキシスクシンイミド−フルオレセイン(NHS−フルオレセイン、ピアス社)をDMFに溶解し、0.1MのNHS−フルオレセイン溶液を調製した。調製したNHS−フルオレセイン溶液のエチレンジアミン0.2当量相当分を、調製したエチレンジアミン溶液に滴下しながら攪拌し、一晩反応させた。反応液を、COSMOSIL 5C18−AR−IIカラム(ナカライテスク社)を用いた逆相HPLCに供した。溶出は、0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)を含む水と、0.1%TFAを含むアセトニトリルとのグラジエントにて行った。黄色に着色したピークフラクションのうち、ニンヒドリン反応で陽性を示したフラクションを回収した。回収したフラクションを乾固させた。
エチレンジアミン(和光純薬社)をN,N’−ジメチルホルムアミド(N,N’−dimethylformamide,DMF,ナカライテスク社)に溶解し、1Mのエチレンジアミン溶液を調製した。一方、N−ヒドロキシスクシンイミド−フルオレセイン(NHS−フルオレセイン、ピアス社)をDMFに溶解し、0.1MのNHS−フルオレセイン溶液を調製した。調製したNHS−フルオレセイン溶液のエチレンジアミン0.2当量相当分を、調製したエチレンジアミン溶液に滴下しながら攪拌し、一晩反応させた。反応液を、COSMOSIL 5C18−AR−IIカラム(ナカライテスク社)を用いた逆相HPLCに供した。溶出は、0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)を含む水と、0.1%TFAを含むアセトニトリルとのグラジエントにて行った。黄色に着色したピークフラクションのうち、ニンヒドリン反応で陽性を示したフラクションを回収した。回収したフラクションを乾固させた。
フルオラス・タグ導入用試薬Bfp−OH(国産化学社)をDMFに溶解し、0.05MのBfp−OH溶液を調製した。1.2当量のN−ヒドロキシスクシンイミドと1.2当量の水溶性カルボジイミド(1-Ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)-carbodiimide hydrochloride、渡辺化学社)とを、調製したBfp−OH溶液に固体のまま添加し、攪拌しながら室温で3時間反応させた。この反応液の0.01mmol分を乾固させたフラクション0.01mmol分に加えた。さらに、0.03mmolのDIPEA(N,N'-diisopropylethylamine、渡辺化学社)を添加し、攪拌しながら室温で2時間反応させた。この反応液をCOSMOSIL 5C18−AR−IIカラムを用いた逆相HPLCに供した。溶出は、0.1%TFAを含む水と、0.1%TFAを含むメタノールとのグラジエントにて行った。黄色に着色したフラクションを回収した。回収したフラクションを、エレクトロスプレーイオン化マススペクトロメトリー(Electrospray Ionization Mass Spectrometry、以下「ESI−MS」と称する。)に供したところ、分子量が1424.0のピークが得られた。これにより、フルオレセインにBfp基が導入され、フルオレセインとフルオラス・タグとの結合物が調製された。
(2)フルオラス・タグを介したフルオレセインの基板への固定化
(1)で得られたフルオレセインとフルオラス・タグとの結合物を乾固させ、メタノールに再溶解した。この溶液2μLをFEPからなるフッ素樹脂基板(ネオフロンFEP、ダイキン社)にスポットし、乾燥させた。乾燥後、基板表面をPBSで3回洗浄し、基板表面の状態を目視で観察した。対照として、フルオレセインのみのメタノール溶液を同様にしてスポットした(比較例1)。対照では、PBSによる洗浄は1回とした。図4に基板表面の状態を示す。図4(a)は本実施例で作製した基板の表面の写真であり、図4(b)は比較例1の基板の表面の写真である。なお、図4の写真には画像処理が施されており、黄色の部分が強調されている。図4(a)に示されるように、本実施例で作製された基板では、スポット部分が黄色を呈した。これは、フルオレセインとフルオラス・タグとの結合物がPBSに洗い流されることなく、フルオレセインがフルオラス・タグを介して基板表面に固定化されていることを示していた。一方、図4(b)に示されるように、比較例1の基板では、フルオレセインが固定化されずに洗浄溶液中に分散し、基板の全体が黄色を呈した。以上より、フッ素樹脂基板の表面に、フルオラス・タグを介してフルオレセインを固定化することができた。
(1)で得られたフルオレセインとフルオラス・タグとの結合物を乾固させ、メタノールに再溶解した。この溶液2μLをFEPからなるフッ素樹脂基板(ネオフロンFEP、ダイキン社)にスポットし、乾燥させた。乾燥後、基板表面をPBSで3回洗浄し、基板表面の状態を目視で観察した。対照として、フルオレセインのみのメタノール溶液を同様にしてスポットした(比較例1)。対照では、PBSによる洗浄は1回とした。図4に基板表面の状態を示す。図4(a)は本実施例で作製した基板の表面の写真であり、図4(b)は比較例1の基板の表面の写真である。なお、図4の写真には画像処理が施されており、黄色の部分が強調されている。図4(a)に示されるように、本実施例で作製された基板では、スポット部分が黄色を呈した。これは、フルオレセインとフルオラス・タグとの結合物がPBSに洗い流されることなく、フルオレセインがフルオラス・タグを介して基板表面に固定化されていることを示していた。一方、図4(b)に示されるように、比較例1の基板では、フルオレセインが固定化されずに洗浄溶液中に分散し、基板の全体が黄色を呈した。以上より、フッ素樹脂基板の表面に、フルオラス・タグを介してフルオレセインを固定化することができた。
本実施例では、リンカー(スペーサー)を有するフルオラス・タグ(フッ素化合物タグ)を用い、緑色蛍光蛋白質(Green Fluorescent Protein。以下「GFP」と称する。)(蛋白質)がフルオラス・タグとリンカーを介して固定化された基板(物質固定化担体)を作製した。リンカーには、カルボン酸チオエステル基が導入されたリンカーを使用した。
(1)リンカーとフルオラス・タグとの結合及びチオエステル化
50mgのFmoc−Ala−Alko−PEG−Resin(100−200メッシュ、渡辺化学社)を25%ピペリジン(ナカライテスク社)/N−メチル−ピロリドン(NMP、ナカライテスク社)で処理してFmoc基を外し、Ala−Alko−PEG−Resinを調製した。このAla−Alko−PEG−ResinをNMPで洗浄した。一方、Fmoc基で保護されたアミノ基を有するPEGリンカーとして、O-(N-Fmoc-2-aminoethyl)-O'-(2-carboxyethyl)undecaethyleneglycol(novachem社)を選択した。NMPに、当該PEGリンカーが0.06mmol、1−ヒドロキシルベンゾトリアゾール(HOBt、渡辺化学社)が0.06mmol、及びジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、国産化学社)が0.065mmolとなるように溶解した。この溶解液を洗浄したAla−Alko−PEG−Resinに加え、一晩反応させた。これにより、当該PEGリンカーがAla−Alko−PEG−ResinのAla(アラニン残基)に結合し、Fmoc−PEGリンカー−Ala−Alko−PEG−Resinが生成した。
50mgのFmoc−Ala−Alko−PEG−Resin(100−200メッシュ、渡辺化学社)を25%ピペリジン(ナカライテスク社)/N−メチル−ピロリドン(NMP、ナカライテスク社)で処理してFmoc基を外し、Ala−Alko−PEG−Resinを調製した。このAla−Alko−PEG−ResinをNMPで洗浄した。一方、Fmoc基で保護されたアミノ基を有するPEGリンカーとして、O-(N-Fmoc-2-aminoethyl)-O'-(2-carboxyethyl)undecaethyleneglycol(novachem社)を選択した。NMPに、当該PEGリンカーが0.06mmol、1−ヒドロキシルベンゾトリアゾール(HOBt、渡辺化学社)が0.06mmol、及びジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、国産化学社)が0.065mmolとなるように溶解した。この溶解液を洗浄したAla−Alko−PEG−Resinに加え、一晩反応させた。これにより、当該PEGリンカーがAla−Alko−PEG−ResinのAla(アラニン残基)に結合し、Fmoc−PEGリンカー−Ala−Alko−PEG−Resinが生成した。
Fmoc−PEGリンカー−Ala−Alko−PEG−Resinを25%ピペリジン/NMPで処理してFmoc基を外し、PEGリンカー−Ala−Alko−PEG−Resinを調製した。このPEGリンカー−Ala−Alko−PEG−ResinをNMPで洗浄した。一方、NMPに、フルオラス・タグ導入用試薬Bfp−OHが0.06mmol、HOBtが0.06mmol、及びDCCが0.065mmolとなるように溶解した。この溶解液を洗浄したPEGリンカー−Ala−Alko−PEG−Resinに加え、一晩反応させた。これにより、PEGリンカーにBfp基が結合し、Bfp−PEGリンカー−Ala−Alko−PEG−Resinが生成した。当該ResinをDMFとNMPとで交互に洗浄し、次いでメタノールで洗浄し、未反応のBfp−OHを除去した。当該Resinをデシケータ内にて陰圧下で乾燥させた。
洗浄及び乾燥させたBpf−PEGリンカー−Ala−Alko−PEG−Resinを5%水/95%TFAで2時間処理し、Bfp−PEGリンカー−Alaを生成させた。この反応液を、試料前処理用ODSカラム(TOYOPAK ODS M、東ソー社)に通し、溶出液を回収した。溶出液を凍結乾燥させた後、メタノールに再溶解させた。この溶解液を水−メタノール系の逆相HPLCに供し、フラクションを回収した。このフラクションをESI−MSに供したところ、分子量が1694のピークが得られた。これにより、このフラクションにリンカーとフルオラス・タグ(Bfp基)との結合物(Bpf−PEGリンカー−Ala)が含まれていることが確認された。
得られたフラクションを乾燥させた後、DMFに再溶解した。この溶解液に、メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム(ナカライテスク社)、HOBt、及び水溶性カルボジイミド・塩酸塩(WSCI・HCl、渡辺化学社)を加え、Alaのカルボキシル基をチオエステル化した。この反応液を水−メタノール系の逆相HPLCに供し、フラクションを回収した。このフラクションをESI−MSに供したところ、分子量が1818のピークが得られた。これにより、このフラクションにAlaのカルボキシル基がチオエステル化されているBfp−PEGリンカー−Alaが含まれていることが確認された。以上より、カルボン酸チオエステル基を有するリンカー(チオエステル化リンカー)とフルオラス・タグとの結合物が調製された。
(3)PPIaseとの融合蛋白質を発現するためのベクターの構築
超好熱性古細菌であるThermococcus sp. KS−1株(JCM No.11816)からゲノムDNAを調製した。このゲノムDNAを鋳型とし、配列番号1と2に示されるオリゴヌクレオチドをプライマー対として用いてPCRを行い、配列番号3に示されるPPIase遺伝子(TPPIase遺伝子)を含むDNA断片を増幅した。一方、配列番号4に示されるオリゴヌクレオチドと、それに相補的な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを合成し、これらをアニーリングさせて2本鎖DNA断片を得た。該増幅DNA断片をNcoIとSpeIで処理した。さらに、該2本鎖DNA断片をSpeIとEcoRIで処理した。制限酵素で処理されたこれらのDNA断片を、あらかじめNcoIとEcoRIで処理されたpET21dプラスミド(Novagen社)のNcoI−EcoRIサイトに導入し、pET TPPIaseを構築した。図5にpET TPPIaseの主要部の構成を模式的に示す。すなわち、pET TPPIaseはT7プロモーターを有し、さらにその下流に、TPPIase遺伝子、SpeIサイト、BamHIサイト、及びNotIサイトを有する。そして、pET TPPIaseのBamHI−NotIサイトに所望の蛋白質をコードする遺伝子を挿入することにより、所望の蛋白質とTPPIaseとの融合蛋白質を発現させることができる。
超好熱性古細菌であるThermococcus sp. KS−1株(JCM No.11816)からゲノムDNAを調製した。このゲノムDNAを鋳型とし、配列番号1と2に示されるオリゴヌクレオチドをプライマー対として用いてPCRを行い、配列番号3に示されるPPIase遺伝子(TPPIase遺伝子)を含むDNA断片を増幅した。一方、配列番号4に示されるオリゴヌクレオチドと、それに相補的な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを合成し、これらをアニーリングさせて2本鎖DNA断片を得た。該増幅DNA断片をNcoIとSpeIで処理した。さらに、該2本鎖DNA断片をSpeIとEcoRIで処理した。制限酵素で処理されたこれらのDNA断片を、あらかじめNcoIとEcoRIで処理されたpET21dプラスミド(Novagen社)のNcoI−EcoRIサイトに導入し、pET TPPIaseを構築した。図5にpET TPPIaseの主要部の構成を模式的に示す。すなわち、pET TPPIaseはT7プロモーターを有し、さらにその下流に、TPPIase遺伝子、SpeIサイト、BamHIサイト、及びNotIサイトを有する。そして、pET TPPIaseのBamHI−NotIサイトに所望の蛋白質をコードする遺伝子を挿入することにより、所望の蛋白質とTPPIaseとの融合蛋白質を発現させることができる。
pIVEX2.3−GFP WT(ロシュ・ダイアグノスティックス社)を鋳型とし、配列番号5と6に示されるオリゴヌクレオチドをプライマー対として用いてPCRを行い、配列番号7に示されるGFP遺伝子を含むDNA断片を増幅した。プライマーに由来して、この増幅DNA断片の5’末端にはBamHIサイト、プロテアーゼFXaの認識配列、及びシステインに対応するコドン(TGC)が導入され、3'末端にはHisタグをコードする塩基配列、終止コドン、及びNotIサイトが導入された。この増幅DNA断片をBamHIとNotIで処理し、あらかじめ同じ制限酵素で処理された発現ベクターpET TPPIaseに組み込んだ。これにより、GFPとTPPIaseとの融合蛋白質を発現するベクターpET TPPIase・FXa・Cys・GFP・6Hが構築された。
(4)GFPとTPPIaseとの融合蛋白質の調製
(3)で得られた発現ベクターpET TPPIase・FXa・Cys・GFP・6Hを大腸菌BL21(DE3)株に導入し、カルベニシリン(100μg/mL)を含む2×Y.T.培地(16g/L バクトトリプトン、10g/L 酵母エキス、5g/L NaCl)で、25℃で24時間培養した。培養終了後、菌体を回収した。回収した菌体を、プロテアーゼインヒビターカクテル(ナカライテスク社)及び0.2mM EDTAを含む50mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.0)に懸濁し、超音波処理を行って菌体を破砕した。菌体破砕液を遠心処理し、上清を得た。得られた上清をHiTrap Chelatingカラム(アマシャムバイオサイエンス社)に供し、融合蛋白質を含むフラクションを回収した。
(3)で得られた発現ベクターpET TPPIase・FXa・Cys・GFP・6Hを大腸菌BL21(DE3)株に導入し、カルベニシリン(100μg/mL)を含む2×Y.T.培地(16g/L バクトトリプトン、10g/L 酵母エキス、5g/L NaCl)で、25℃で24時間培養した。培養終了後、菌体を回収した。回収した菌体を、プロテアーゼインヒビターカクテル(ナカライテスク社)及び0.2mM EDTAを含む50mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.0)に懸濁し、超音波処理を行って菌体を破砕した。菌体破砕液を遠心処理し、上清を得た。得られた上清をHiTrap Chelatingカラム(アマシャムバイオサイエンス社)に供し、融合蛋白質を含むフラクションを回収した。
(5)融合蛋白質からのGFPの切り出し
(4)で回収したフラクションを、100mM NaClを含む20mM トリス−塩酸緩衝液(pH8.0)に対する透析に供した。透析内液を回収し、CaCl2を最終濃度が2mMになるように添加した。さらに、FXa(New England Biolabs社)を添加し、融合蛋白質内のFXa認識配列の部分を切断した。これにより、N末端にシステイン残基を有し、C末端側にHisタグを有するGFP(以下、「Cys・GFP・6H」と称する。)を得た。
(4)で回収したフラクションを、100mM NaClを含む20mM トリス−塩酸緩衝液(pH8.0)に対する透析に供した。透析内液を回収し、CaCl2を最終濃度が2mMになるように添加した。さらに、FXa(New England Biolabs社)を添加し、融合蛋白質内のFXa認識配列の部分を切断した。これにより、N末端にシステイン残基を有し、C末端側にHisタグを有するGFP(以下、「Cys・GFP・6H」と称する。)を得た。
(6)チオエステル化リンカー−フルオラス・タグ結合物と蛋白質との結合
(1)で調製されたチオエステル化リンカーとフルオラス・タグとの結合物を、0.1M ナトリウムリン酸緩衝液(pH7.0)に溶解し、フルオラス・タグ溶液を調製した。一方、(5)で得られたCys・GFP・6Hを含むフラクションを、0.1M ナトリウムリン酸緩衝液(pH7.0)に対する透析に供した。透析内液を回収し、調製したフルオラス・タグの溶液を添加し、室温で1時間反応させた。添加量は、100μg/mL(3.7μM)の蛋白質に対し、約15倍のモル濃度のフルオラス・タグ溶液を等量とした。これにより、カルボン酸チオエステル基を有するリンカーに結合したフルオラス・タグに、Cys・GFP・6Hを結合させた。
(1)で調製されたチオエステル化リンカーとフルオラス・タグとの結合物を、0.1M ナトリウムリン酸緩衝液(pH7.0)に溶解し、フルオラス・タグ溶液を調製した。一方、(5)で得られたCys・GFP・6Hを含むフラクションを、0.1M ナトリウムリン酸緩衝液(pH7.0)に対する透析に供した。透析内液を回収し、調製したフルオラス・タグの溶液を添加し、室温で1時間反応させた。添加量は、100μg/mL(3.7μM)の蛋白質に対し、約15倍のモル濃度のフルオラス・タグ溶液を等量とした。これにより、カルボン酸チオエステル基を有するリンカーに結合したフルオラス・タグに、Cys・GFP・6Hを結合させた。
(7)基板への固定化
反応終了後、反応液をFEPからなるフッ素樹脂基板(ネオフロンFEP、ダイキン社)の表面にスポットした。30分経過後、基板表面をPBSで2回洗浄した。基板表面にUVを照射して、GFPが発する蛍光の有無を目視で観察した。対照として、フルオラス・タグ溶液の代わりに0.1M ナトリウムリン酸緩衝液(pH7.0)のみを用いて、同様の操作を行った(比較例2)。図6に基板表面の状態を示す。図6(a)は、本実施例及び比較例2の基板の表面の写真、図6(b)は各スポットの位置を表す模式図である。図6(b)のa及びbは本実施例のスポット位置、c及びdは比較例のスポット位置を表す。図6(a)に示されるように、a及びbの位置にはGFP由来の蛍光が観察され、白く光っていた。これは、Cys・GFP・6HがPBSに洗い流されることなく、リンカーとフルオラス・タグとを介して基板表面に固定化されていることを示していた。一方、c及びdの位置にはGFP由来の蛍光が観察されなかった。これは、Cys・GFP・6HがPBSに洗い流されたことを示していた。
反応終了後、反応液をFEPからなるフッ素樹脂基板(ネオフロンFEP、ダイキン社)の表面にスポットした。30分経過後、基板表面をPBSで2回洗浄した。基板表面にUVを照射して、GFPが発する蛍光の有無を目視で観察した。対照として、フルオラス・タグ溶液の代わりに0.1M ナトリウムリン酸緩衝液(pH7.0)のみを用いて、同様の操作を行った(比較例2)。図6に基板表面の状態を示す。図6(a)は、本実施例及び比較例2の基板の表面の写真、図6(b)は各スポットの位置を表す模式図である。図6(b)のa及びbは本実施例のスポット位置、c及びdは比較例のスポット位置を表す。図6(a)に示されるように、a及びbの位置にはGFP由来の蛍光が観察され、白く光っていた。これは、Cys・GFP・6HがPBSに洗い流されることなく、リンカーとフルオラス・タグとを介して基板表面に固定化されていることを示していた。一方、c及びdの位置にはGFP由来の蛍光が観察されなかった。これは、Cys・GFP・6HがPBSに洗い流されたことを示していた。
本実施例では、フッ素樹脂基板を用いることで、蛋白質の非特異的吸着を防ぐことができることを示した。
実施例2で得られた組換え蛋白質Cys・GFP・6Hを0.1M ナトリウムリン酸緩衝液(pH7.0)に対して透析した後、1000、100、10、1、0.1、及び、0μg/mLに濃度調整した。FEPからなるフッ素樹脂基板(ネオフロンFEP、ダイキン社)の表面に、各濃度の溶液を10μLスポットした。基板表面を乾燥させた後、PBSで3回洗浄し、以下の手順でELISAを行った。
まず、ブロックエース(大日本製薬社)をPBSで3倍希釈し、ブロッキング液を調製した。1次抗体液として、マウス抗Hisモノクローナル抗体(アマシャムバイオサイエンス社)をブロッキング液で1000倍希釈したものを調製した。2次抗体液として、ヤギ抗マウスIgG(H+L)−HRPコンジュゲート(バイオラッド社)をブロッキング液で1000倍希釈したものを調製した。洗浄液として、0.1%Tween20を含むPBSを調製した。
基板上の各スポット部分にブロッキング液を20μLずつ滴下し、25℃で1時間静置し、ブロッキングを行なった。ブロッキング液を除去し、各スポット部分を洗浄液で洗浄した。次に、各スポット部分に1次抗体液を10μLずつ滴下し、25℃で1時間静置した。1次抗体液を除去し、各スポット部分を洗浄液で洗浄した。次に、各スポット部分に2次抗体液を10μLずつ滴下し、25℃で1時間静置した。2次抗体液を除去し、各スポット部分を洗浄液で洗浄した。次に、各スポット部分にHRPの基質となる発色試薬(TMB Microwell 1 Component Peroxidase Substrate、BioFX Laboratories社)を10μLずつ滴下し、青色の発色の有無を観察した。対照として、フッ素樹脂基板の代わりにポリスチレン製の96穴ELISAプレート(SUMILON、H−type、住友ベークライト社)を用い、同様の操作を行った(比較例3)。ただし、比較例3においては、蛋白質は50μLずつ、ブロッキング液は100μLずつ、1次抗体液は100μLずつ、2次抗体は100μLずつを用いた。結果を図7に示す。図7(a)は本実施例のELISAの結果を表す写真であり、図7(b)は比較例3のELISAの結果を表す写真である。図7(a)に示されるように、フッ素樹脂基板を用いた本実施例ではいずれの濃度においても青色の発色は観察されず、Cys・GFP・6Hが吸着していないことが示された。一方、ポリスチレン製のプレートを用いた比較例3では、濃度に比例した強度の青色の発色が観察され、Cys・GFP・6Hがプレートに吸着していた。以上より、フッ素樹脂基板を用いることで、蛋白質の非特異的吸着を抑えることができた。
なお、本実施例ではブロッキングを行なったが、ブロッキングを行なわなくても同様の結果を得ることができる。
本実施例では、固定化されたフルオレセインをフッ素樹脂基板から除去できることを示した。
実施例1で作製した、フルオラス・タグを介して基板表面にフルオレセインが固定化された物質固定化基板を、(a)メタノール、(b)20%エチレングリコール水溶液、(c)10%エチレングリコール水溶液、(d)グリセロール、又は(e)0.1%Tween20を含むPBS、で洗浄してみた。結果を図8に示す。図8は実施例1で作製した物質固定化基板を各種の溶媒で洗浄した結果を表す写真である。なお、図8の写真には画像処理が施されており、黄色の部分が強調されている。すなわち、(a)、(b)に示されるように、メタノール又は20%エチレングリコール水溶液で洗浄した場合は、固定化されていたフルオレセインが剥がれてフルオレセインが洗浄溶液中に分散し、基板の全体が黄色を呈した。一方、(c)〜(e)に示されるように、10%エチレングリコール水溶液、グリセロール、又は0.1%Tween20を含むPBSで洗浄した場合は、固定化されていたフルオレセインが剥がれることはなく、スポット部分が黄色を呈した。以上より、実施例1で作製したフルオレセインが固定化された基板においては、特定の溶媒を用いることでフルオレセインを剥がせることが示された。
本実施例では、モデル蛋白質としてGFPを採用し、フッ素樹脂基板(担体)の表面にフルオラス・タグ(フッ素化合物タグ)を介してGFP(蛋白質)が固定化された基板(物質固定化担体)を作製した。さらに、当該GFP固定化基板(物質固定化担体)を用いることで、高感度の分析(ELISA)が行えることを示した。
フルオラス・タグ導入用試薬Bfp−OH(国産化学社)をDMFに溶解し、0.05MのBfp−OH溶液を調製した。1.2当量のN−ヒドロキシスクシンイミドと1.2当量の水溶性カルボジイミド(1-Ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)-carbodiimide hydrochloride、渡辺化学社)とを、調製したBfp−OH溶液に固体のまま添加し、攪拌しながら室温で1時間反応させた。この溶液を「溶液A」とした。一方、対照用としてBfp−OHを添加せずに同様の操作を行った。この溶液を「溶液B」とした。
実施例2で得られた組換え蛋白質Cys・GFP・6Hを0.1M ナトリウムリン酸緩衝液(pH7.0)に対して透析した後、10μg/mL(溶液C1)、1μg/mL(溶液C2)、0.1μg/mL(溶液C3)、0.01μg/mL(溶液C4)、1ng/mL(溶液C5)、0.1ng/mL(溶液C6)、0.01ng/mL(溶液C7)、1pg/mL(溶液C8)、及び0pg/mL(溶液C9)の各濃度の溶液を調製した。なお、溶液C9は0.1M ナトリウムリン酸緩衝液(pH7.0)そのものである。
FEPからなるフッ素樹脂基板(ネオフロンFEP、ダイキン社)の表面に、溶液Aを1μLずつ9箇所×1列にスポットした。各スポット部分ごとに、溶液C1〜C9を10μLさらにスポットした。基板表面を乾燥させた後、PBSで3回洗浄し、以下の手順でELISAを行った。
ブロックエース(大日本製薬社)をPBSで3倍希釈し、ブロッキング液を調製した。1次抗体液として、マウス抗Hisモノクローナル抗体(アマシャムバイオサイエンス社)をブロッキング液で100倍希釈したものを調製した。2次抗体液として、ヤギ抗マウスIgG(H+L)モノクローナル抗体−HRPコンジュゲート(バイオラッド社)をブロッキング液で500倍希釈したものを調製した。洗浄液として、0.1%Tween20を含むPBSを調製した。
PBSで洗浄した基板上の各スポット部分にブロッキング液を20μLずつ滴下し、25℃で1時間静置し、ブロッキングを行なった。ブロッキング液を除去し、各スポット部分を洗浄液で洗浄した。次に、各スポット部分に1次抗体液を10μLずつ滴下し、25℃で1時間静置した。1次抗体液を除去し、各スポット部分を洗浄液で洗浄した。次に、各スポット部分に2次抗体液を10μLずつ滴下し、25℃で1時間静置した。2次抗体液を除去し、各スポット部分を洗浄液で洗浄した。次に、各スポット部分にHRPの基質となる発色試薬(TMB Microwell 1 Component Peroxidase Substrate、BioFX Laboratories社)を10μLずつ滴下し、青色の発色の有無と強度を観察した。
対照として、溶液Aの代わりに溶液Bを用いて、同様のELISAを行った(比較例5)。
対照として、溶液Aの代わりに溶液Bを用いて、同様のELISAを行った(比較例5)。
結果を図9に示す。図9(a)は本実施例で作製した基板を用いたELISAの結果を表す写真であり、図9(b)は比較例5のELISAの結果を表す写真である。図9(a)に示されるように、本実施例で作製した基板(溶液Aを使用)を用いた場合には、Cys・GFP・6Hの濃度に比例した強度の青色の発色が観察された。一方、図9(b)に示されるように、比較例5の基板(溶液Bを使用)では、いずれの濃度においても青色の発色は観察されなかった。以上より、フッ素樹脂基板の表面に、フルオラスタグを介してCys・GFP・6Hを固定化することができ(GFP固定化基板)、かつ当該GFP固定化基板を用いることにより、ELISAによるCys・GFP・6Hの定性および定量が可能であった。
なお、本実施例ではブロッキングを行なったが、ブロッキングを行なわなくても同様の結果を得ることができる。
なお、本実施例ではブロッキングを行なったが、ブロッキングを行なわなくても同様の結果を得ることができる。
本実施例では、モデル蛋白質として大腸菌由来シャペロニン(GroEL)サブユニット連結体とヒトエンドセリンレセプタータイプA(ETAR)とFLAGペプチドとの融合蛋白質を採用し、フッ素樹脂基板(担体)の表面にフルオラス・タグ(フッ素化合物タグ)を介して当該融合蛋白質(蛋白質)が固定化された基板(物質固定化担体)を作製した。さらに、当該融合蛋白質固定化基板(物質固定化担体)を用いることで、高感度の分析(ELISA)が行えることを示した。
(1)変異型GroELサブユニット7回連結体とヒトエンドセリンレセプタータイプAとFLAGペプチドとの融合蛋白質(SRII)7・ETAR・FLAGの発現系構築
大腸菌K12株ゲノムDNAを鋳型とし、プライマーGro−F1(配列番号8)とプライマーGro−R1(配列番号9)をプライマー対としてPCRを行い、大腸菌シャペロニンGroELサブユニット遺伝子を含むDNA断片を増幅した。このGroELサブユニット遺伝子中のDraIIIサイトからBamHIサイトまでの部分(1328〜1487番)を同制限酵素で切り出した後、配列番号10で表される塩基配列からなる2本鎖DNAを代わりに組み込み、GroELサブユニットの452番目のアルギニン(R)をグルタミン酸(E)に、461番目のグルタミン酸(E)をアラニン(A)に、463番目のセリン(S)をアラニン(A)に、及び464番目のバリン(V)をアラニン(A)に置換する変異を導入した。これにより、シングルリングを形成する変異型GroEL(以下、「SRII」と称する。)のサブユニット(SRIIサブユニット)をコードする遺伝子(配列番号11。以下、「SRIIサブユニット遺伝子」と称する。)が得られた。
大腸菌K12株ゲノムDNAを鋳型とし、プライマーGro−F1(配列番号8)とプライマーGro−R1(配列番号9)をプライマー対としてPCRを行い、大腸菌シャペロニンGroELサブユニット遺伝子を含むDNA断片を増幅した。このGroELサブユニット遺伝子中のDraIIIサイトからBamHIサイトまでの部分(1328〜1487番)を同制限酵素で切り出した後、配列番号10で表される塩基配列からなる2本鎖DNAを代わりに組み込み、GroELサブユニットの452番目のアルギニン(R)をグルタミン酸(E)に、461番目のグルタミン酸(E)をアラニン(A)に、463番目のセリン(S)をアラニン(A)に、及び464番目のバリン(V)をアラニン(A)に置換する変異を導入した。これにより、シングルリングを形成する変異型GroEL(以下、「SRII」と称する。)のサブユニット(SRIIサブユニット)をコードする遺伝子(配列番号11。以下、「SRIIサブユニット遺伝子」と称する。)が得られた。
さらに、trcプロモーターを有し、SRIIサブユニット遺伝子が一方向に7回連結した遺伝子(SRIIサブユニット7回連結体遺伝子)が挿入された発現ベクターpT(SRII)7を構築した。なお、SRIIサブユニット7回連結体遺伝子の下流には、目的蛋白質をコードする遺伝子を挿入するためのサイトとして、BglIIサイト及びXhoIサイトを設けた。pT(SRII)7のXhoIサイトの下流に、翻訳されてFLAGペプチド(配列番号12)となる遺伝子を導入し、pT(SRII)7・FLAGを構築した。図10にpT(SRII)7・FLAGの主要部の構成を模式的に示す。すなわち、pT(SRII)7・FLAGはtrcプロモーターを有し、さらにその下流に、NcoIサイト、SRIIサブユニット7回連結体遺伝子、XbaIサイト、BglIIサイト、XhoIサイト、FLAGペプチド遺伝子、終止コドン、及びHindIIIサイトを有する。そして、pT(SRII)7・FLAGのBglII−XhoIサイトに所望の蛋白質をコードする遺伝子を挿入することにより、SRIIサブユニット7回連結体(SRII)7と所望の蛋白質とFLAGペプチドとの融合蛋白質を発現させることができる。なお、天然型GroELが2層リング構造体を形成するのに対し、変異型GroELであるSRIIは1層リング(シングルリング)構造体を形成する。そして、SRIIサブユニット7回連結体も1層リング構造体を形成する。
PCR法にてヒトエンドセリンレセプタータイプA(ETAR)遺伝子(配列番号13)を増幅し、pT(SRII)7・FLAGのBglII−XhoIサイトに組み込んだ。これにより、SRIIサブユニット7回連結体(SRII)7とETARとFLAGペプチドとの融合蛋白質(SRII)7・ETAR・FLAGを発現する発現ベクターpT(SRII)7・ETAR・FLAGを構築した。図11にpT(SRII)7・ETAR・FLAGの主要部の構成を模式的に示す。
(2)(SRII)7・ETAR・FLAGの調製
(1)で得られた発現ベクターpT(SRII)7・ETAR・FLAGを大腸菌BL21(DE3)株に導入し、カルベニシリン(100μg/mL)を含む2XY.T.培地にて、30℃で24時間培養した。培養終了後、菌体を回収した。回収した菌体を、50mM ナトリウム燐酸緩衝液 pH7・0に懸濁し、プロテアーゼインヒビターカクテル(ナカライテスク製)存在下、超音波処理にて菌体を破砕後、遠心により菌体破砕液上清を得た。得られた菌体破砕液上清を抗FLAGペプチド抗体担持カラムに供し、SRIIサブユニット7回連結体とETARとFLAGペプチドとの融合蛋白質(SRII)7・ETAR・FLAGを精製した。
(1)で得られた発現ベクターpT(SRII)7・ETAR・FLAGを大腸菌BL21(DE3)株に導入し、カルベニシリン(100μg/mL)を含む2XY.T.培地にて、30℃で24時間培養した。培養終了後、菌体を回収した。回収した菌体を、50mM ナトリウム燐酸緩衝液 pH7・0に懸濁し、プロテアーゼインヒビターカクテル(ナカライテスク製)存在下、超音波処理にて菌体を破砕後、遠心により菌体破砕液上清を得た。得られた菌体破砕液上清を抗FLAGペプチド抗体担持カラムに供し、SRIIサブユニット7回連結体とETARとFLAGペプチドとの融合蛋白質(SRII)7・ETAR・FLAGを精製した。
(3)(SRII)7・ETAR・FLAG固定化基板の作製とそれを用いたELISA
実施例5と同様にして、Bfp−OHとN−ヒドロキシスクシンイミドと水溶性カルボジイミドを反応させて「溶液A」を調製した。また、対照用としてBfp−OHを添加せずに同様の操作を行って「溶液B」を調製した。
実施例5と同様にして、Bfp−OHとN−ヒドロキシスクシンイミドと水溶性カルボジイミドを反応させて「溶液A」を調製した。また、対照用としてBfp−OHを添加せずに同様の操作を行って「溶液B」を調製した。
(2)で得られた(SRII)7・ETAR・FLAGを0.1M ナトリウムリン酸緩衝液(pH7.0)に対して透析した後、1μg/mL(溶液D1)、0.1μg/mL(溶液D2)、0.01μg/mL(溶液D3)、1ng/mL(溶液D4)、0.1ng/mL(溶液D5)、0.01ng/mL(溶液D6)、1pg/mL(溶液D7)、及び0pg/mL(溶液D8)の各濃度の溶液を調製した。なお、溶液D8は0.1M ナトリウムリン酸緩衝液(pH7.0)そのものである。
FEPからなるフッ素樹脂基板(ネオフロンFEP、ダイキン社)の表面に、溶液Aを1μLずつ8箇所×1列にスポットした。各スポット部分ごとに、溶液D1〜D9を10μLさらにスポットした。基板表面を乾燥させた後、PBSで3回洗浄した。その後、1次抗体としてマウス抗FLAGペプチドモノクローナル抗体(シグマ社)を用いる以外は全て実施例5と同様にしてELISAを行い、各スポットにおける青色の発色の有無と強度を観察した。
対照として、溶液Aの代わりに溶液Bを用いて、同様のELISAを行った(比較例6)。
対照として、溶液Aの代わりに溶液Bを用いて、同様のELISAを行った(比較例6)。
結果を図12に示す。図9(a)は本実施例で作製した基板を用いたELISAの結果を表す写真であり、図9(b)は比較例6のELISAの結果を表す写真である。図12(a)に示されるように、本実施例で作製した基板(溶液Aを使用)を用いた場合には、(SRII)7・ETAR・FLAGの濃度に比例した強度の青色の発色が観察された。一方、図9(b)に示されるように、比較例6の基板(溶液Bを使用)では、いずれの濃度においても青色の発色は観察されなかった。以上より、フッ素樹脂基板の表面に、フルオラスタグを介して(SRII)7・ETAR・FLAGを固定化することができ((SRII)7・ETAR・FLAG固定化基板)、かつ当該(SRII)7・ETAR・FLAG固定化基板を用いることにより、ELISAによる(SRII)7・ETAR・FLAGの定性および定量が可能であった。
なお、本実施例ではブロッキングを行なったが、ブロッキングを行なわなくても同様の結果を得ることができる。
なお、本実施例ではブロッキングを行なったが、ブロッキングを行なわなくても同様の結果を得ることができる。
本実施例で作製した(SRII)7・ETAR・FLAG固定化基板は、例えば、レセプターバインディングアッセイにも用いることができる。すなわち、当該基板に被験物質を接触させ、ETARに結合するリガンドの検索等を行うことができる。
本実施例では、モデル蛋白質としてSRIIサブユニット連結体とZZタグとFLAGペプチドとの融合蛋白質を採用し、フッ素樹脂基板(担体)の表面にフルオラス・タグ(フッ素化合物タグ)を介して当該融合蛋白質(蛋白質)が固定化された基板(物質固定化担体)を作製した。さらに、当該融合蛋白質固定化基板(物質固定化担体)を用いることで、高感度の分析(ELISA)が行えることを示した。
(1)SRIIサブユニット7回連結体とZZタグとFLAGペプチドとの融合蛋白質(SRII)7・ZZ・FLAGの発現系構築
pEZZ 18 Protein A Gene Fusion Vector(アマシャムバイオサイエンス社)を鋳型としてPCRを行い、ZZタグ遺伝子(配列番号14)をクローニングした。実施例6で構築したpT(SRII)7・FLAGのXbaI−BglIIサイトに、クローニングしたZZタグ遺伝子を両端にXbaIサイトとBglIIサイトを設けた状態で組み込み、SRIIサブユニット7回連結体(SRII)7とZZタグとFLAGペプチドとの融合蛋白質(SRII)7・ZZ・FLAGを発現する発現ベクターpT(SRII)7・ZZ・FLAGを構築した。図13にpT(SRII)7・ZZ・FLAGの主要部の構成を模式的に示す。
pEZZ 18 Protein A Gene Fusion Vector(アマシャムバイオサイエンス社)を鋳型としてPCRを行い、ZZタグ遺伝子(配列番号14)をクローニングした。実施例6で構築したpT(SRII)7・FLAGのXbaI−BglIIサイトに、クローニングしたZZタグ遺伝子を両端にXbaIサイトとBglIIサイトを設けた状態で組み込み、SRIIサブユニット7回連結体(SRII)7とZZタグとFLAGペプチドとの融合蛋白質(SRII)7・ZZ・FLAGを発現する発現ベクターpT(SRII)7・ZZ・FLAGを構築した。図13にpT(SRII)7・ZZ・FLAGの主要部の構成を模式的に示す。
(2)(SRII)7・ZZ・FLAGの調製
得られたpT(SRII)7・ZZ・FLAGについて、実施例6と同様にして、大腸菌への導入、大腸菌の培養、菌体破砕液上清調製、抗FLAGペプチド抗体担持カラムでの精製を行い、SRIIサブユニット7回連結体とZZタグとFLAGペプチドとの融合蛋白質(SRII)7・ZZ・FLAGを精製した。
得られたpT(SRII)7・ZZ・FLAGについて、実施例6と同様にして、大腸菌への導入、大腸菌の培養、菌体破砕液上清調製、抗FLAGペプチド抗体担持カラムでの精製を行い、SRIIサブユニット7回連結体とZZタグとFLAGペプチドとの融合蛋白質(SRII)7・ZZ・FLAGを精製した。
(3)(SRII)7・ZZ・FLAG固定化基板の作製とそれを用いたELISA
実施例5,6と同様にして、Bfp−OHとN−ヒドロキシスクシンイミドと水溶性カルボジイミドを反応させて「溶液A」を調製した。また、対照用としてBfp−OHを添加せずに同様の操作を行って「溶液B」を調製した。
実施例5,6と同様にして、Bfp−OHとN−ヒドロキシスクシンイミドと水溶性カルボジイミドを反応させて「溶液A」を調製した。また、対照用としてBfp−OHを添加せずに同様の操作を行って「溶液B」を調製した。
(2)で得られた(SRII)7・ZZ・FLAGを0.1M ナトリウムリン酸緩衝液(pH7.0)に対して透析した後、100μg/mL(溶液E1)、10μg/mL(溶液E2)、1μg/mL(溶液E3)、0.1μg/mL(溶液E4)、0.01μg/mL(溶液E5)、1ng/mL(溶液E6)、0.1ng/mL(溶液E7)、0.01ng/mL(溶液E8)、1pg/mL(溶液E9)、及び0pg/mL(溶液E10)の各濃度の溶液を調製した。なお、溶液E10は0.1M ナトリウムリン酸緩衝液(pH7.0)そのものである。
FEPからなるフッ素樹脂基板(ネオフロンFEP、ダイキン社)の表面に、溶液Aを1μLずつ10箇所×5列にスポットした。各列の各スポット部分ごとに、溶液E1〜E9を10μLさらにスポットした。基板表面を乾燥させた後、PBSで3回洗浄し、以下の手順でELISAを行った。
ブロックエースをPBSで3倍希釈し、ブロッキング液を調製した。抗体液として、マウス抗フルオレセインモノクローナル抗体−HRPコンジュゲート(ケミコン社)をブロッキング液で1000倍希釈(抗体濃度:1μg/mL)、100倍希釈(抗体濃度:10μg/mL)、20倍希釈(抗体濃度:50μg/mL)、及び10倍希釈(抗体濃度:100μg/mL)したものを調製した。さらに、ブロッキング液そのもの(抗体濃度:0μg/mL)も調製した。洗浄液として、0.1%Tween20を含むPBSを調製した。
基板上の各スポット部分にブロッキング液を20μLずつ滴下し、25℃で1時間静置し、ブロッキングを行なった。ブロッキング液を除去し、各スポット部分を洗浄液で洗浄した。次に、各スポット部分に各濃度の抗体液を重ならないように10μLずつ滴下し、25℃で1時間静置した。各抗体液を除去し、各スポット部分を洗浄液で洗浄した。次に、各スポット部分にHRPの基質となる発色試薬(TMB Microwell 1 Component Peroxidase Substrate、BioFX Laboratories社)を10μLずつ滴下し、青色の発色の有無と強度を観察した。
対照として、溶液Aの代わりに溶液Bを用いて、同様のELISAを行った(比較例7)。
対照として、溶液Aの代わりに溶液Bを用いて、同様のELISAを行った(比較例7)。
結果を図14に示す。図14(a)は本実施例で作製した基板を用いたELISAの結果を表す写真であり、図14(b)は比較例7のELISAの結果を表す写真である。図14(a)に示されるように、本実施例で作製した基板(溶液Aを使用)を用いた場合には、抗体液の希釈率が100倍以下(抗体濃度が10μg/mL以上)の条件で、(SRII)7・ZZ・FLAGの濃度に比例した強度の青色の発色が観察された。一方、図14(b)に示されるように、比較例7の基板(溶液Bを使用)では、いずれの濃度においても青色の発色は観察されなかった。以上より、フッ素樹脂基板の表面に、フルオラスタグを介して(SRII)7・ZZ・FLAGを固定化することができ((SRII)7・ZZ・FLAG固定化基板)、かつ当該(SRII)7・ZZ・FLAG固定化基板を用いることにより、ELISAによる(SRII)7・ZZ・FLAGの定性および定量が可能であった。
なお、本実施例ではブロッキングを行なったが、ブロッキングを行なわなくても同様の結果を得ることができる。
なお、本実施例ではブロッキングを行なったが、ブロッキングを行なわなくても同様の結果を得ることができる。
本実施例で作製した(SRII)7・ZZ・FLAG固定化基板は、例えば、イムノアッセイの系を構築するのに用いることができる。すなわち、(SRII)7・ZZ・FLAG固定化基板のZZタグ部分に所望の抗原に対する抗体を結合させることにより、当該抗原の定性および定量が可能なイムノアッセイの系が構築できる。
1 物質固定化担体
2 基板
3 フッ素化合物タグ
5 物質
6 表面
7 スペーサー
8 分子シャペロン
10 融合蛋白質
11 物質固定化担体
15 蛋白質(物質)
20 融合蛋白質
21 物質固定化担体
31 物質固定化担体
2 基板
3 フッ素化合物タグ
5 物質
6 表面
7 スペーサー
8 分子シャペロン
10 融合蛋白質
11 物質固定化担体
15 蛋白質(物質)
20 融合蛋白質
21 物質固定化担体
31 物質固定化担体
Claims (20)
- 担体の表面に所望の物質が固定化された物質固定化担体であって、前記担体の表面の一部又は全部はフッ素化合物からなり、前記物質にはフッ素化合物タグが結合しており、該フッ素化合物タグが担体表面のフッ素化合物からなる部分に結合していることを特徴とする物質固定化担体。
- 前記担体は、基板であることを特徴とする請求項1に記載の物質固定化担体。
- 前記担体は、フッ素樹脂からなる担体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の物質固定化担体。
- 前記フッ素樹脂は、テトラフロロエチレン樹脂、パーフロロアルコキシ樹脂、及びフッ化エチレンプロピレン樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種のフッ素樹脂であることを特徴とする請求項3に記載の物質固定化担体。
- 前記フッ素化合物タグは、スペーサーを介して前記物質に結合していることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の物質固定化担体。
- 前記物質は、蛋白質又はペプチドであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の物質固定化担体。
- 前記蛋白質は、所望の蛋白質と分子シャペロンとの融合蛋白質であることを特徴とする請求項6に記載の物質固定化担体。
- 前記分子シャペロンは、シャペロニンであることを特徴とする請求項7に記載の物質固定化担体。
- 前記分子シャペロンは、ペプチジル−プロリル シス−トランス イソメラーゼであることを特徴とする請求項7に記載の物質固定化担体。
- 前記物質は、糖又は糖鎖であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の物質固定化担体。
- 前記物質は、分子量2000以下の低分子化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の物質固定化担体。
- 担体の表面に所望の物質を固定化する物質の固定化方法であって、表面の一部又は全部がフッ素化合物からなる担体の表面に所望の物質とフッ素化合物タグとの結合物を接触させ、該フッ素化合物タグを担体表面のフッ素化合物からなる部分に結合させることを特徴とする物質の固定化方法。
- 前記担体は、基板であることを特徴とする請求項12に記載の物質の固定化方法。
- 前記担体は、フッ素樹脂からなる担体であることを特徴とする請求項12又は13に記載の物質の固定化方法。
- 前記フッ素樹脂は、テトラフロロエチレン樹脂、パーフロロアルコキシ樹脂、及びフッ化エチレンプロピレン樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種のフッ素樹脂であることを特徴とする請求項14に記載の物質の固定化方法。
- 前記結合物は、所望の物質とフッ素化合物タグとがスペーサーを介して結合したものであることを特徴とする請求項12〜15のいずれかに記載の物質の固定化方法。
- 化学架橋反応によって前記結合物を調製することを特徴とする請求項12〜16のいずれかに記載の物質の固定化方法。
- 前記物質はカルボン酸チオエステル基を有し、前記フッ素化合物タグは1級アミノ基を有するチオール基を有し、該カルボン酸チオエステル基と該チオール基との縮合反応によって前記結合物を調製することを特徴とする請求項12〜16のいずれかに記載の物質の固定化方法。
- 前記物質は1級アミノ基を有するチオール基を有し、前記フッ素化合物タグはカルボン酸チオエステル基を有し、該チオール基と該カルボン酸チオエステル基との縮合反応によって前記結合物を調製することを特徴とする請求項12〜16のいずれかに記載の物質の固定化方法。
- 前記物質は蛋白質又はペプチドであり、前記チオール基は該蛋白質又はペプチドのN末端のシステイン残基であることを特徴とする請求項19に記載の物質の固定化方法。
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JP2006270957A JP2007187647A (ja) | 2005-12-16 | 2006-10-02 | 物質固定化担体、及び物質の固定化方法 |
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JP2015211665A (ja) * | 2014-01-29 | 2015-11-26 | ダイキン工業株式会社 | 温度応答性基材、その製造方法及びその評価方法 |
-
2006
- 2006-10-02 JP JP2006270957A patent/JP2007187647A/ja active Pending
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US10689615B2 (en) | 2014-01-29 | 2020-06-23 | Daikin Industries, Ltd. | Temperature-responsive base material, method for producing same, and method for evaluating same |
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