JP2007181432A - エクジステロイド−22−リン酸化酵素とその遺伝子 - Google Patents

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Abstract

【課題】エクジステロイドの22位をリン酸化する新規酵素とその遺伝子を提供すること、及び、当該酵素を用いてエクジステロイドのリン酸抱合体を簡易かつ安価に製造する方法等を提供すること。
【解決手段】カイコの蛹の卵巣から、カラムクロマトグラフィーを用いてエクジステロイド-22-リン酸化酵素を単離精製するとともに、当該酵素を用いて実際にエクジステロイドをリン酸化し、エクジステロイド-22-リン酸を合成できることを明らかにした。さらに、当該酵素をコードする遺伝子配列(cDNAの塩基配列)とタンパク質の全アミノ酸配列を決定した。本発明の酵素は、エクジソン等の脱皮ホルモンを不活性化することによって害虫防除に利用したり、本発明の酵素を用いて種々の有用なエクジステロイドリン酸抱合体を製造し、得られたリン酸抱合体を研究用試薬として利用するほか、医薬品および化粧品の開発等に利用することができる。
【選択図】図3A

Description

本発明は、エクジステロイドの22位をリン酸化する酵素である、エクジステロイド-22-リン酸化酵素とその遺伝子に関する。本発明は、たとえば、脱皮ホルモンであるエクジステロイドの22位をリン酸化し、脱皮ホルモンを不活性化することによって害虫防除に利用したり、あるいはまた、有用なエクジステロイドのリン酸抱合体を簡易かつ安価に製造する方法を提供することによって、当該物質を用いた医薬品および化粧品の開発等に利用することができる。
昆虫をはじめとする節足動物の脱皮や、胚の発生や分化は、脱皮ホルモンによって調節されている。脱皮ホルモンはエクジステロイドと呼ばれる化合物に属している。エクジステロイドは節足動物ばかりでなく植物にも検出されており、あわせて300種類以上が知られている。現在、エクジステロイドは少なくとも以下の4つの方面で利用されている。
(1)1つは、昆虫に脱皮ホルモンを投与して、個体の脱皮ホルモン量を上げることにより、脱皮を早めたり、同調させるなどの発育調節に利用するものである。また、ホルモン活性の強いエクジステロイドやステロイド骨格を持たないより安定で強力な脱皮ホルモン類縁体が開発され、それらの化合物が脱皮周期を撹乱することを利用した害虫防除法(生物農薬)が既に製薬会社によって実用化されている。(ダウ・ケミカル日本(株)の「ロムダン」「ファルコン」「Mach II」、三共(株)・日本化薬(株)の「マトリック」など。)
(2)2つ目として、ホルモン受容体遺伝子、脱皮ホルモン応答配列、及び誘導遺伝子を組み込んだ培養細胞系に脱皮ホルモンを添加して細胞内の脱皮ホルモン濃度を高めることにより、目的遺伝子産物の発現を誘導させる系に利用されている。この系はInvitrogen社によりキットとして既に商品化されている。
(3)3つ目は、上記(1)(2)とは逆に、脱皮ホルモンの代謝系の酵素を用いて脱皮ホルモン量を下げ、又は脱皮ホルモンを不活性化する方法である。この方法により昆虫等の成長を抑制して後述のように害虫防除に利用したり、培養細胞系での目的遺伝子産物の発現の抑制に利用する。脱皮ホルモンを不活性化する酵素として、これまでバキュロウイルス由来のエクジステロイドUDPG-グルコシルトランスフェラーゼ(下記の特許文献1)、エクジソン3α-酸化酵素(特許文献2)、エクジステロイド22位酸化酵素(特許文献3)が報告されている。もっとも、これらの酵素はまだ実用化されていない。
(4)4つ目は、エクジステロイド類を医薬品や化粧品等の原料またはリード化合物として利用するものである。たとえば、エクジソン、20-ヒドロキシエクジソン、ポナステロンA、イノコステロンなど種々のエクジステロイド類及びその配糖体やアセチル体などが発毛促進作用や美肌作用を持つことが報告されている。下記の特許文献4〜6には、エクジステロイド類を乾癬の予防や治療、又は発毛促進に利用したり、化粧料の組成物として利用することができる旨開示されている。
特開平11−123079号公報 特表2000−502074号公報 特開2002−238583号公報 特開平9−2955号公報 特開2000−264820号公報 特表2003−514839号公報
上記(3)で述べたように、脱皮ホルモンの不活性化技術は、昆虫等の成長抑制や誘導遺伝子を組み込んだ培養細胞における目的遺伝子産物の発現誘導の抑制などへの応用が可能である。さらに、昆虫の成長発育を抑制阻害することは、新たな生物的害虫防除法として有用である。この点について説明すると、昨今の農業において、害虫防除は言うまでもなく不可欠の技術になっている。害虫防除法としては現在、化学合成薬剤が主流であるが、化学合成薬剤の残留による環境汚染や連続的使用による薬剤耐性が大きな問題となっている。そこで近年、新たな害虫防除法として生物的防除法がクローズアップされてきている。このような生物的害虫防除法の一つとして、昆虫の胚の発生や幼虫の成長(脱皮)を支配するホルモンとして知られている脱皮ホルモンを酵素を用いて不活性化することにより(たとえば、脱皮ホルモンを不活性化する酵素の遺伝子を昆虫に導入することにより)、昆虫の成長を抑制する方法が提案されている(特許文献2、3)。
ところで、本発明者は以前、エクジステロイドの22位の水酸基がリン酸化されると脱皮ホルモン活性が著しく低下すること、逆に22位が脱リン酸化されると脱皮ホルモン活性が回復することを見出した(図1参照)。即ち、昆虫の脱皮ホルモンであるエクジソンや20-ヒドロキシエクジソンには遊離型とリン酸抱合型があり、前者は生理的に活性であり後者は不活性であること、また、リン酸化と脱リン酸化反応は可逆的であり、昆虫の発育期には脱リン酸化酵素が作動して活性型脱皮ホルモンを増強させる一方、発育停止期にはリン酸化酵素が作動して脱皮ホルモンを不活性化していることを明らかにした。さらに、上記脱リン酸化酵素を精製すると共にその酵素遺伝子をクローニングし、新規遺伝子として遺伝子バンクへ登録した(accession no.AB107356)。
しかし、エクジステロイドの22位の水酸基をリン酸化することによって、脱皮ホルモンを不活性化するエクジステロイド-22-リン酸化酵素については未だ単離、同定されていない。そこで、本発明の第1の課題は、エクジステロイドの22位をリン酸化する新規酵素エクジステロイド-22-リン酸化酵素と、その遺伝子を提供することである。
上記(4)で述べたように、これまでに幾つかの種類のエクジステロイドが医療上又は美容上有用な生理活性を示し、医薬品や化粧品等の有効成分として利用できることが報告されている。また、現在まで植物由来と動物由来を合わせて約300種のエクジステロイドが知られており、エクジステロイドのリン酸抱合体(リン酸型エクジステロイド)の中には産業上有用な活性、作用を示す化合物が少なからず含まれていると考えられる。しかし、エクジステロイドのリン酸抱合体は天然においてごく微量にしか存在せず、従来の化学合成の工程も複雑で収率が悪く、量が不十分であったため、リン酸抱合体の十分な解析が困難であった。そこで、本発明の第2の課題は、エクジステロイド-22-リン酸化酵素を用いてエクジステロイドの22位をリン酸化することにより、エクジステロイドのリン酸抱合体(エクジステロイド-22-リン酸)を簡易かつ安価に製造する方法を提供することである。さらに本発明の第3の課題は、当該酵素を用いて脱皮ホルモンを不活性化する方法、当該酵素遺伝子を用いた害虫防除剤、当該酵素に対する抗体、および当該酵素の発現を特異的に抑制するRNAi剤を提供することである。
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、カイコの蛹の卵巣からエクジステロイド-22-リン酸化酵素を単離精製することに成功すると共に、当該酵素を用いて実際にエクジステロイドをリン酸化し、エクジステロイド-22-リン酸を合成できることを明らかにした。さらに、当該酵素タンパク質のアミノ酸配列並びに当該酵素をコードする遺伝子配列を決定し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、産業上有用な発明として、下記A)〜N)の発明を含むものである。
A) エクジステロイドの22位をリン酸化する酵素。
本発明の酵素は、図1に示すように、エクジソン等のエクジステロイドの22位のリン酸化反応を触媒する。「エクジステロイド」は、エクジソンとその類縁物質の総称であり、昆虫類や甲殻類等の節足動物が生産・分泌する脱皮ホルモンのほか、植物エクジステロイドおよび化学合成されたものも含まれる。たとえば、エクジソン(ecdysone)、20-ヒドロキシエクジソン(20-hydroxyecdysone)のほか、ポナステロンA(ponasterone A)、イノコステロン(inokosterone)、3-デヒドロ-20-ヒドロキシエクジソン(3-dehydro-20-hydroxyecdysone)、20,26-ジヒドロキシエクジソン(20,26-dihydroxyecdysone)などを挙げることができる。本発明の酵素は、全種類のエクジステロイドを基質とする必要は勿論なく、少なくともいずれか1種類のエクジステロイドを基質とするものであればよい。
B) エクジソンおよび20-ヒドロキシエクジソンを基質に含み、これらエクジステロイドの22位をリン酸化する、上記A)記載の酵素。
後述するように、本発明者が精製した酵素は、エクジソンおよび20-ヒドロキシエクジソンのいずれをも基質とし、これらのエクジステロイドをリン酸化することによって、それぞれエクジソン-22-リン酸、20-ヒドロキシエクジソン-22-リン酸を合成することが確認された。
C) 節足動物から精製される、上記A)記載の酵素。
節足動物には、昆虫類、甲殻類などが含まれる。本発明の酵素は、後述のようにカイコにおいてその存在が確認されている。また、サバクバッタ、トノサマバッタ、タバコスズメガなどの農業害虫にエクジステロイドリン酸抱合体が大量に検出されているので、これらの昆虫から本発明の酵素の精製が可能と考えられる。
D) カイコ(Bombyx mori (domestic silkworm))から精製される、上記C)記載の酵素。
後述するように、カイコの蛹の卵巣から、エクジソンおよび20-ヒドロキシエクジソンの22位をリン酸化する、エクジステロイド-22-リン酸化酵素の精製が可能である。卵巣以外の器官・組織、たとえば卵などから精製を行ってもよい。
E) 以下の(a)又は(b)に示されるタンパク質である、上記A)記載の酵素。
(a)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、エクジステロイドの22位をリン酸化する酵素活性を有するタンパク質。
上記「タンパク質」は、付加的なポリペプチドを含むものであってもよい。このようなポリペプチドが付加される例としては、HisやMyc、flag等によってエピトープ標識されるような場合が挙げられる。
また、上記「1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加された」とは、部位特異的突然変異誘発法等の公知の変異タンパク質作製法により欠失、置換及び/又は付加できる程度の数のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されることを意味する。このように、上記(b)のタンパク質は、換言すれば、上記(a)のタンパク質の変異タンパク質であり、ここにいう「変異」は、主として公知の変異タンパク質作製法により人為的に導入された変異を意味するが、天然に存在する同様の変異タンパク質を単離精製したものであってもよい。(当該タンパク質は、カイコ以外の節足動物や植物などから単離精製したものであってもよい。)
F) 上記E)記載のタンパク質をコードする遺伝子。
たとえば配列表の配列番号1に示される塩基配列からなる遺伝子を挙げることができる。本発明の「遺伝子」としてはcDNAが好ましいが、特に限定されるものではなく、RNAであってもゲノムDNAであってもよい。また、本発明の「遺伝子」は、当該酵素タンパク質をコードする配列以外に、非翻訳領域(UTR)の配列や制限酵素認識配列、さらにプロモーター配列、ベクター配列などの配列を含むものであってもよい。
G) 以下の(a)又は(b)に示されるDNAである、上記F)記載の遺伝子。
(a)配列番号1に示される塩基配列のうち、32〜1192番目の塩基配列を有するDNA。
(b)配列番号1に示される塩基配列のうち、32〜1192番目の塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列からなり、かつ、エクジステロイドの22位をリン酸化する酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA。
H) 上記A)〜E)のいずれかに記載の酵素を用いてエクジステロイドの22位をリン酸化することにより、エクジステロイドのリン酸抱合体を製造する方法。
I) 上記H)記載の方法により、エクジソン-22-リン酸を製造する方法。
J) 上記H)記載の方法により、20-ヒドロキシエクジソン-22-リン酸を製造する方法。
K) 上記A)〜E)のいずれかに記載の酵素を用いて、脱皮ホルモンであるエクジステロイドの22位をリン酸化することにより、脱皮ホルモンを不活性化する方法。
L) 上記F)記載の遺伝子を害虫の細胞で発現するよう構築された組換え発現ベクターからなる害虫防除剤。
「組換え発現ベクター」は、ウイルスベクター、プラスミド、ファージ、又はコスミドなどを使用することができ、特に制限されるものではないが、昆虫細胞でのタンパク質発現に適したベクターを選択することが望ましい。また、昆虫細胞内で機能するプロモーターには様々なものが存在するので、標的細胞等に応じたプロモーターを選択し、本発明の遺伝子配列の上流に配置すればよい。たとえば、カイコ由来の酵素の遺伝子配列(cDNAの塩基配列)については配列表の配列番号1に示され、この配列情報に基づいて本発明の遺伝子配列が挿入された組換え発現ベクターを調製することができる。
M) 上記E)記載のタンパク質に対する抗体。
本発明の「抗体」は、エクジステロイド-22-リン酸化酵素を特異的に検出するものであって、検出対象となる酵素タンパク質、またはその部分ペプチドを抗原として、公知の方法によりポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体として得られる抗体であり、研究用試薬として利用できる。
N) 上記E)記載のタンパク質の発現を特異的に抑制するために細胞内に導入されるRNAi剤。
RNAi剤は、siRNA(short interference RNA:「short interfering RNA」「small interfering RNA」等とも呼ばれる。)であってもよいし、RNAi発現ベクター(「siRNA発現ベクター」等とも呼ばれる。)であってもよい。siRNAおよびRNAi発現ベクターは、抑制対象となるエクジステロイド-22-リン酸化酵素の遺伝子配列をもとに公知の方法にしたがって設計することができる(たとえばAmbion TechNotes 9(1): 3-5 (2002)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99(8): 5515-5520 (2002)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99(9) : 6047-6052 (2002)、Nature Biotechnology 20 : 505-508 (2002)など参照)。また、RNAi発現ベクターは、(1)1本のRNAで適当な長さのヘアピン構造をもつdsRNAを対象細胞内で発現させるように設計されたもの、(2)センス鎖、アンチセンス鎖それぞれを対象細胞内で発現させ、会合させるように設計されたもの、のいずれであってもよい。細胞へのRNAiの導入は、常法にしたがって行うことができるが(たとえばNature 411:494-498 (2001)、Science 296:550-553 (2002)など参照)、本発明以降に新たに開発された方法を使用するものであってもよい。
上記RNAi剤は研究用試薬として利用できるが、昆虫内で脱皮ホルモンの活性調節を担っている酵素の発現を特異的に抑制するため、害虫への導入により脱皮ホルモンの活性調節を害し、脱皮周期を撹乱して害虫の成育を阻害する作用が期待でき、害虫防除剤(生物農薬)としても利用できる可能性がある。
本発明の酵素は、エクジステロイドの22位をリン酸化する活性を有するため、産業上種々の分野に利用できる。たとえば、脱皮ホルモンであるエクジソン等のエクジステロイドを本発明の酵素を用いてリン酸化し、脱皮ホルモンを不活性化する方法を害虫防除に利用することができる。また、本発明の酵素を用いて種々の有用なエクジステロイドリン酸抱合体を、従来の複雑な化学合成によることなく、簡易かつ安価に製造することができる。得られたリン酸抱合体は、研究用試薬として利用できるほか、医薬品および化粧品の原料等に利用することができる。
以下、本発明の好ましい態様について説明する。なお、本明細書および図面において、塩基・アミノ酸等を略号で表記する場合、その表記はIUPAC-IUB Commission on Biochemical Nomenclature による略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものである。また、アミノ酸に関し光学異性体があり得る場合、特に明示しなければL体を表すものとする。
[1]カイコからのエクジステロイド-22-リン酸化酵素の精製
本発明者は、カイコ(Bombyx mori (domestic silkworm))の蛹の卵巣から、概略以下のカラムクロマトグラフィーによる6段階の精製プロセスにより、本発明のエクジステロイド-22-リン酸化酵素を単離精製した。なお、各カラムクロマトグラフィーによる分離、精製工程の詳細については、後述の実施例で説明する。
まず、カイコの成熟卵巣を、タンパク質分解酵素阻害剤を含む緩衝液で破砕後、遠心して得た上清から、(1)Blue Sepharose FFカラム(26 x 75 mm、Amersham Bioscience社)を用いたアフィニティークロマトグラフィー(図2(A))、(2)Chelating Sepharose FFカラム(26 x 75 mm、Amersham Bioscience社))を用いた金属キレートクロマトグラフィー(同図(B))、(3)Sephacryl S-200 HRカラム(26 x 600 mm、Amersham Bioscience社)を用いたゲルろ過クロマトグラフィー(同図(C))、(4)Mono Q HR 5/5カラム(5 x 50 mm、Amersham Bioscience社)を用いた陰イオン交換クロマトグラフィー(同図(D))、(5)CHT-Iカラム(7 x 52 mm、Bio-Rad社)を用いたヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー(同図(E))、(6)Mono Q HR 5/5カラム(5 x 50 mm、Amersham Bioscience社)を用いた陰イオン交換クロマトグラフィー(同図(F))を順次行い、これら(1)〜(6)の6つの工程によりエクジステロイド-22-リン酸化酵素を精製した。
上記各工程で得られた画分(フラクション)について、エクジソンを基質とした22位のリン酸化(図中「E22P」)を指標に各画分の酵素活性を測定し、次工程で細分画すべき酵素画分を選定した。酵素活性の測定法は、以下のとおりである。
1.各画分(必要に応じて濃縮してある)の0.1mLを、反応液の最終濃度が40mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)、0.1% BSA、2mM ATP、740 Bq [3H]エクジソン、10mM MgCl2になるように加える。
2.反応液を35℃で30分間インキュベートした後、0.4mlのメタノールを加えて反応を停止させる。
3.10,000gで10分間(4℃)遠心し、上清を回収する。
4.上清を蒸発乾固した後、1mLの蒸留水に溶解し、C18カートリッジとシリカゲルカートリッジを順次通して[3H]エクジソン22-リン酸画分を回収する。
5.[3H]エクジソン22-リン酸画分の放射活性を液体シンチレーションカウンターで測定し、酵素活性(pmol/min/mg proteinまたは pmol/min/fraction)に換算する。
上記(1)〜(6)の6つの工程により最終的に得られた酵素の純度を、逆相高速液体クロマトグラフィーとSDS-ポリアクリルアミド電気泳動により検定した。その結果、図2(G)(H)に示すように、いずれの検定法でも単一タンパク質として精製されていることが確認できた。また、SDS-ポリアクリルアミド電気泳動の結果から、酵素の分子量は約42キロドルトンと推定された。
さらに、上記6つの工程により精製された酵素を用いて、エクジソンおよび20-ヒドロキシエクジソンから各々の22-リン酸抱合体を合成することができるかどうか検討した。その結果、図4に示すように、当該酵素はエクジソン(E)および20-ヒドロキシエクジソン(20E)のいずれをも基質としてリン酸化し、それぞれエクジソン-22-リン酸(E22P)、20-ヒドロキシエクジソン-22-リン酸(20E22P)を合成することがわかり、精製された酵素はエクジステロイド-22-リン酸化酵素であることが確認できた。また、この酵素の基質エクジソンに対するKm値(基質と酵素の親和性を示す値)は8.5μMであった。
上記方法により精製された酵素の特性について、解析の結果、更に以下の知見が得られた。
1.酵素は可溶性画分に局在する(ミトコンドリアや小胞体には検出されない)。
2.酵素はATPをリン酸供与体としている(GTP, CTP, UTPはリン酸供与体とはなり得ない)。
3.反応液のMg2+濃度が10mMのとき、酵素活性が最大となる。
4.Ca2+は酵素活性を抑制する(IC50=1mM)。
5.最適pHは7.5。
6.最適温度は37℃。
7.分子量はゲルろ過で35-40キロドルトン、SDS-PAGEで42キロドルトンと推定された。
以上のように、カイコから本発明のエクジステロイド-22-リン酸化酵素を精製することができるが、精製方法は上記方法および後述の実施例記載の方法に制限されるものではない。たとえば精製の際のクロマトグラフィーの順番については上記順番に限定されず、適宜変更してもよい。
[2]エクジステロイド-22-リン酸化酵素遺伝子のクローニング
エクジステロイド-22-リン酸化酵素遺伝子をクローニングするため、精製した酵素をリジルエンドペプチターゼ等で部分分解し、得られたいくつかの断片のアミノ酸配列をアミノ酸シークエンサーによって決定した。次に、得られた部分アミノ酸配列をもとにプライマーを設計し、カイコ卵巣から抽出したmRNAを鋳型にしてRT-PCRを行った。さらに、カイコの成熟卵巣または産卵後まもない卵を用いてcDNAライブラリーを作製し、先にRT-PCRで得たエクジステロイド-22-リン酸化酵素遺伝子の部分配列をすべて順序正しく含むクローンを検索した。
配列表の配列番号1には、上記方法によって決定されたカイコ由来エクジステロイド-22-リン酸化酵素のcDNAの塩基配列が、そのオープンリーディングフレーム(ORF)領域によってコードされるアミノ酸配列と共に示される。また、この遺伝子によってコードされる全386個のアミノ酸からなるカイコ由来エクジステロイド-22-リン酸化酵素のアミノ酸配列が、配列番号2に示される。これらの遺伝子・タンパク質は本発明者によってはじめてクローニングされた新規遺伝子・新規タンパク質である。
図3A・Bにも、エクジステロイド-22-リン酸化酵素のcDNAの塩基配列とアミノ酸配列が示される。図中、下線を付したアミノ酸配列は、アミノ酸シークエンサーによって決定した配列であり、枠囲みした塩基配列はそれぞれ、開始コドン(ATG)、終止コドン(TGA)、ポリアデニル化シグナル(AATAAA)である。
なお本発明の遺伝子には、(1)配列番号1に示される塩基配列のうち、ORF領域である32〜1192番目の塩基配列を有する酵素遺伝子のみならず、(2)配列番号1に示される塩基配列のうち、32〜1192番目の塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列からなり、かつ、エクジステロイドの22位をリン酸化する酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子も含まれる。
上記ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーションは、たとえばMolecular Cloning: Cold Spring Harbor Laboratory Press、Current Protocols in Molecular Biology; Wiley Interscienceに記載の方法によって行うことができ、具体的には以下の方法が例示される。
cDNAライブラリー等のDNA分子を膜に転写し、これと標識したプローブとをハイブリダイゼーションバッファー中でハイブリダイズさせる。ハイブリダイゼーションバッファーの組成は、たとえば0.1重量%SDS、5重量%デキストラン硫酸、1/20容のブロッキング試薬、および2〜7×SSCからなる。ブロッキング試薬としては、たとえば100×Denhardt's solution、2%(重量/容量)Bovine serum albumin、2%(重量/容量)ポリビニルピロリドンを5培濃度で調製したものを1/20に希釈して使用する。
ハイブリダイゼーションの温度は、40〜80℃、より好ましくは50〜70℃、更に好ましくは55〜65℃の範囲であり、数時間から一晩のインキュベーションを行った後、洗浄バッファーで洗浄する。洗浄の温度は、好ましくは室温、またはハイブリダイゼーション時の温度である。洗浄バッファーの組成は、好ましくは0.1〜6×SSC+0.1重量%SDS溶液であり、SSCの濃度を変えながら洗浄バッファーで数回膜を洗浄する。その後、プローブがハイブリダイズしたDNA分子を、プローブに付された標識を利用して検出する。
また、本発明の遺伝子は、本発明の酵素を特異的に検出する後述の抗体により発現ライブラリーをスクリーニングして得られ、かつ、エクジステロイドの22位をリン酸化する酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA、であってもよい。たとえば、cDNAを発現するようにλファージベクターなどに連結させたものをパッケージングし、大腸菌に感染させて寒天上にまくことでプラークを形成させる。適当な大きさになったプラーク(たとえば37℃8時間培養)にニトロセルロース膜又はナイロン膜を被せてcDNAからの翻訳産物を膜に結合させ、これらを通常のウエスタン解析類似の方法で抗体処理することにより前記酵素と類似のアミノ酸配列を有するタンパク質を発現するクローンを見出すことができる。抗体処理は典型的には1次抗体として抗酵素抗体、2次抗体としてペルオキシダーゼやアルカリフォスファターゼで標識した抗1次抗体(たとえば、1次抗体がウサギ由来であれば抗ウサギIgG抗体)を用いるが、抗酵素抗体を標識して用いてもよい。これらのスクリーニングにより候補プラークが得られればそのcDNA断片をプローブとして当業者に周知の方法により全長のcDNAクローンを得ることができる。このとき、市販のcDNA5’末端クローニングキットを用いてもよい。このようにして得られたクローンを細胞に導入して酵素活性をアッセイすることにより、エクジステロイドの22位をリン酸化する酵素活性を有するタンパク質の遺伝子を得ることができる。
本発明の酵素は、エクジステロイドの22位のリン酸化反応を触媒するため、本発明の酵素を用いて、エクジソンの22位をリン酸化したエクジソン-22-リン酸、及び20-ヒドロキシエクジソンの22位をリン酸化した20-ヒドロキシエクジソン-22-リン酸、といった種々の有用なエクジステロイドリン酸抱合体を試験管内で大量に製造することができる。製造方法は、後述の実施例に示す合成法と同様の条件で行ってもよいが、異なる方法であっても勿論よい。たとえば、反応液はリン酸緩衝液、基質、リン酸供与体であるATPのほか、MgCl2やDTT等を含む組成とし、これに本発明の酵素を加えて基質のリン酸化反応を進行させる。反応温度、反応時間は、後述の実施例では35℃、30分に設定したが、反応温度、反応時間等も適宜最適化するとよい。
前述のように、昆虫の脱皮ホルモンであるエクジソンや20-ヒドロキシエクジソンには遊離型とリン酸抱合型があり、前者は生理的に活性である一方、後者は不活性である(後述の実施例4参照:20-ヒドロキシエクジソンの22-リン酸抱合体は、遊離型に比べてエクジステロイド受容体に対する親和性が著しく低く、ホルモン活性をほとんど持たない)。そこで、脱皮ホルモンであるエクジソン等のエクジステロイドを本発明の酵素を用いてリン酸化し、脱皮ホルモンを不活性化する方法を害虫防除に利用することができる。具体的には、組換え発現ベクターを用いて本発明の遺伝子を害虫の細胞に導入し、本発明の酵素を外来性に過剰発現させることによって害虫において脱皮ホルモンのリン酸化を促進させ、これによりホルモン活性を低下させ害虫を死滅させる方法が挙げられる。そのほか、粒子等に包んでタンパク質を目的細胞内に導入する既存の方法を用いて、本発明の酵素を害虫の細胞に導入してもよい。
本発明の酵素は今回本発明者によってはじめて同定されたが、脱皮ホルモンのリン酸化を介してホルモンの活性調節を担っており、昆虫等におけるホルモンの活性調節機構を研究する上で極めて重要な分子である。本発明のエクジステロイド-22-リン酸化酵素を特異的に検出する抗体、および、本発明のエクジステロイド-22-リン酸化酵素の発現を特異的に抑制するRNAi剤は、その研究用試薬として有用である。
本発明の抗体は、たとえば配列番号2に示されるエクジステロイド-22-リン酸化酵素の全長タンパク質、またはそのエピトープ領域をもとに合成したペプチドを抗原としてウサギ等を免疫し、公知の方法によりポリクローナル抗体として得ることができる。エピトープ領域はKite & Doolittleの方法等により親水性の領域を予測すること等により推定することができる。勿論、公知の方法によりモノクローナル抗体を作製してもよい。公知の方法としては、たとえば、Harlowらの「Antibodies : A laboratory manual (Cold Spring Harbor Laboratory、New York(1988))」、岩崎らの「単クローン抗体 ハイブリドーマとELISA、講談社(1991)」に記載の方法が挙げられる。
本発明のRNAi剤は、前述のように、siRNAであってもよいし、RNAi発現ベクターであってもよい。また、RNAi剤は、必ずしもエクジステロイド-22-リン酸化酵素の発現を完全に抑制する必要はなく、細胞内の当該酵素の発現量を実質的に低下させるものであればよい。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
〔実施例1:カイコの蛹の卵巣からのエクジステロイド-22-リン酸化酵素の精製〕
カイコの成熟卵巣をPMSF、Pepstatin、Leupeptinなどのタンパク質分解酵素阻害剤を含む10mM Hepes-HaOH緩衝液(pH 7.5)で破砕し、150,000gで60分間遠心して得た上清を用いて、以下の(1)〜(6)に示す6工程により酵素を精製した。それぞれの工程で得られたフラクションは、エクジステロイドの一種であるエクジソンを基質として22位のリン酸化を指標にして前記方法により酵素活性を測定した。
(1)アフィニティークロマトグラフィー:酵素の粗抽出液(150,000g上清)を10mM Hepes-NaOH緩衝液(pH 7.5)で平衡化したBlue Sepharose FFカラム(26 x 75 mm、Amersham Bioscience社)に添加し、2M KClを含む10mM Hepes-NaOH緩衝液(pH 7.5)にて酵素を溶出させた(図2(A))。
(2)金属キレートクロマトグラフィー:上記工程(1)で得られた酵素画分を2M KClを含む10mM Hepes-NaOH (pH 7.5)で平衡化したChelating Sepharose FFカラム(26 x 75 mm、Amersham Bioscience社)に添加し、100mM Histidineを含む10mM Hepes-NaOH緩衝液(pH7.5)にて酵素を溶出させた(図2(B))。
(3)ゲルろ過クロマトグラフィー:上記工程(2)で得られた酵素画分を150mM NaClを含む10mM Hepes-NaOH (pH 7.5)で平衡化したSephacryl S-200 HRカラム(26 x 600 mm、Amersham Bioscience社)に添加し、同じ緩衝液にて酵素を溶出させた(図2(C))。分子量マーカー(図中「1」は g-globulin (150キロドルトン);「2」はbovine serum albumin (68キロドルトン);「3」はovalbumin (45キロドルトン);「4」は cytochrome c (12キロドルトン))の溶出位置から、酵素の分子量は35-40キロドルトンと推定された。
(4)陰イオン交換クロマトグラフィー:上記工程(3)で得られた酵素画分を10mM Hepes-NaOH緩衝液(pH 7.5)で平衡化したMono Q HR 5/5カラム(5 x 50 mm、Amersham Bioscience社)に添加し、緩衝液中のNaCl濃度を15分間に0から80mMに直線的に上昇させることにより、酵素を溶出させた(図2(D))。
(5)ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー:上記工程(4)で得られた酵素画分を10mM Hepes-NaOH緩衝液(pH 7.5)で平衡化したCHT-Iカラム(7 x 52 mm、Bio-Rad社)に添加し、200mMリン酸カリウム緩衝液(pH 7.5)の濃度を60分間に0から135mMに上昇させることにより、酵素を溶出させた(図2(E))、
(6)陰イオン交換クロマトグラフィー:上記工程(5)で得られた酵素画分を、5mM Tris-HCl緩衝液(pH 7.5)で平衡化したMono Q HR 5/5カラム(5 x 50 mm、Amersham Bioscience社)に添加し、緩衝液中のNaCl濃度を40分間に0から90mMに直線的に上昇させることにより、酵素を溶出させた(図2(F))。
最終的に得られた酵素(図2(F))の純度を逆相高速液体クロマトグラフィー(図2(G))とSDS-ポリアクリルアミド電気泳動(図2(H))により検定した。純度検定の方法は以下のとおりである。(1)逆相高速液体クロマトグラフィー: 0.05%トリフルオロ酢酸を含む20%アセトニトリル溶液で平衡化したCapsell Pack C18カラム(2 x 250 mm、Shiseido社)に添加し、その後アセトニトリル濃度を30分間に20から80%に直線的に上昇させて、タンパク質を溶出させた(図2(G))。(2)SDS-ポリアクリルアミド電気泳動:Laemmli (1970年)の方法により、10%アクリルアミドゲルにてタンパク質を泳動し、CBB染色によりタンパク質を検出した。その結果、いずれの検定法でも単一タンパク質として精製されていることが確認できた。また、分子量マーカー(myosin (200キロドルトン)、phosphorylase B (97.4キロドルトン)、ovalbumin (45 キロドルトン)、carbonic anhydrase (31 キロドルトン)、trypsin inhibitor (21.5 キロドルトン))の位置と比較して、酵素の分子量は約42キロドルトンと推定された。
〔実施例2:エクジステロイド-22-リン酸化酵素遺伝子のクローニング〕
実施例1で精製した酵素をリジルエンドペプチターゼで、さらに必要に応じてトリプシンで部分分解して、得られたいくつかの断片のアミノ酸配列をアミノ酸シークエンサーによって決定した。次に、得られた部分アミノ酸配列をもとにプライマーを設計し、カイコ卵巣から抽出したmRNAを鋳型にしてRT-PCRを行った。さらに、カイコの成熟卵巣または産卵後まもない卵を用いてcDNAライブラリーを作製し、先にRT-PCRで得たエクジステロイド-22-リン酸化酵素遺伝子の部分配列をすべて順序正しく含むクローンを検索した。図3A・Bには、エクジステロイド-22-リン酸化酵素のcDNAの塩基配列とアミノ酸配列が示される。
〔実施例3:エクジソン-22-リン酸と20-ヒドロキシエクジソン-22-リン酸の酵素による合成〕
実施例1で精製した酵素を用いて、エクジソンおよび20-ヒドロキシエクジソンからそれぞれの22-リン酸抱合体が合成されるかどうかを検討した。反応液の組成は、40mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)、100μMエクジソン又は20-ヒドロキシエクジソン、2mM ATP、10mM MgCl2である。反応液を35℃で30分間インキュベートした後、メタノールを加えて反応を停止させ、遠心した上清(エクジステロイド画分)を高速液体クロマトグラフィーにて分析した。高速液体クロマトグラフィーでは、Wakosil 5C18 (4.6 x 250 mm、Wako Pure Chem. Indus.社)を使用し、最初は、20mMリン酸カリウム緩衝液(pH 5.6)でカラムを平衡化し、後に、緩衝液中のメタノール濃度を60分間に0から70%に直線的に上昇させた。その結果、図4に示すように、エクジソンはエクジソン22-リン酸に、20-ヒドロキシエクジソンは20-ヒドロキシエクジソン-22-リン酸に変換していた。この結果から、実施例1で精製された酵素は22位の水酸基を特異的にリン酸化することが示された。
〔実施例4:エクジステロイド受容体に対する20-ヒドロキシエクジソン-22-リン酸の結合能の検討〕
脱皮ホルモンが生体内で生理作用を発揮するには、まず細胞内のエクジステロイド受容体に結合する必要がある。そこで、酵母と大腸菌の系で合成したエクジステロイド受容体(BmEcR/BmUSP)を用いて、既に報告された方法(Sobek L, et al., Insect Biochem Mol Biol (1993) 23: 125-129、及び Mao H, et al., Gen Comp Endocrinol (1995) 99: 340-348)に従って、20-ヒドロキシエクジソンとその22-リン酸抱合体である20-ヒドロキシエクジソン-22-リン酸のエクジステロイド受容体に対する親和性(結合能)を比較した。その結果、下記の表1に示すように、20-ヒドロキシエクジソン-22-リン酸は、遊離型である20-ヒドロキシエクジソンに比べて受容体に対する親和性が著しく低かった。この結果は、22位がリン酸化されたエクジステロイドはホルモン活性をほとんど持たないことを示している。
Figure 2007181432
以上のように、本発明は、エクジステロイド-22-リン酸化酵素とその遺伝子に関するものであり、前述したとおり、本発明の酵素を用いて脱皮ホルモンを不活性化する方法を害虫防除に利用したり、本発明の酵素を用いて種々の有用なエクジステロイドリン酸抱合体を製造し、得られたリン酸抱合体を研究用試薬として利用するほか、医薬品および化粧品の開発等に利用することができる。
リン酸化反応および脱リン酸化反応によるエクジソンとエクジソン-22-リン酸との間の相互変換を説明する図である。 (A)〜(H)は、カイコの蛹の卵巣からのエクジステロイド-22-リン酸化酵素の精製プロセス、および当該プロセスにより酵素が精製されたことを説明する図である。 エクジステロイド-22-リン酸化酵素の遺伝子配列(cDNAの塩基配列)とアミノ酸配列を示す図である。 図3Aに続き、エクジステロイド-22-リン酸化酵素の遺伝子配列(cDNAの塩基配列)とアミノ酸配列を示す図である。 エクジソン-22-リン酸と20-ヒドロキシエクジソン-22-リン酸が酵素により合成されたことを説明する図である。図中、「E」はエクジソン(保持時間44.4分)、「E22P」はエクジソン-22-リン酸(保持時間30.4分)、「20E」は20-ヒドロキシエクジソン(保持時間38.0分)、「20E22P」は20-ヒドロキシエクジソン-22-リン酸(保持時間24.8分)、をそれぞれ示す。

Claims (14)

  1. エクジステロイドの22位をリン酸化する酵素。
  2. エクジソンおよび20-ヒドロキシエクジソンを基質に含み、これらエクジステロイドの22位をリン酸化する、請求項1記載の酵素。
  3. 節足動物から精製される、請求項1記載の酵素。
  4. カイコから精製される、請求項3記載の酵素。
  5. 以下の(a)又は(b)に示されるタンパク質である、請求項1記載の酵素。
    (a)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (b)配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、エクジステロイドの22位をリン酸化する酵素活性を有するタンパク質。
  6. 請求項5記載のタンパク質をコードする遺伝子。
  7. 以下の(a)又は(b)に示されるDNAである、請求項6記載の遺伝子。
    (a)配列番号1に示される塩基配列のうち、32〜1192番目の塩基配列を有するDNA。
    (b)配列番号1に示される塩基配列のうち、32〜1192番目の塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列からなり、かつ、エクジステロイドの22位をリン酸化する酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA。
  8. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の酵素を用いてエクジステロイドの22位をリン酸化することにより、エクジステロイドのリン酸抱合体を製造する方法。
  9. 請求項8記載の方法により、エクジソン-22-リン酸を製造する方法。
  10. 請求項8記載の方法により、20-ヒドロキシエクジソン-22-リン酸を製造する方法。
  11. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の酵素を用いて、脱皮ホルモンであるエクジステロイドの22位をリン酸化することにより、脱皮ホルモンを不活性化する方法。
  12. 請求項6記載の遺伝子を害虫の細胞で発現するよう構築された組換え発現ベクターからなる害虫防除剤。
  13. 請求項5記載のタンパク質に対する抗体。
  14. 請求項5記載のタンパク質の発現を特異的に抑制するために細胞内に導入されるRNAi剤。


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