JP2007075058A - 新規なカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体、及びそれを含有してなる抗酸化組成物 - Google Patents

新規なカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体、及びそれを含有してなる抗酸化組成物 Download PDF

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浩良 川上
Shoichiro Asayama
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Abstract

【課題】
本発明は、カチオン性の金属ポルフィリン錯体に十分な血中濃度を長時間にわたって維持させ、さらに生成するHの消去活性を付加させて、従来使用されてきた抗酸化剤の生体利用能を著しく向上させた新規な複合体、及びそれを用いた抗酸化剤を提供する。
【解決手段】
本発明は、親水性ポリマーが結合したカタラーゼと、カチオン性金属ポルフィリン錯体となるカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体、それを含有してなる抗酸化組成物、及びそれを含有してなる医薬組成物に関する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、新規で、かつ抗酸化組成物の有効成分として有用なカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体に関する。より詳細には、本発明は、親水性ポリマーが結合したカタラーゼと、カチオン性金属ポルフィリン錯体となるカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体、それを含有してなる抗酸化組成物、及びそれを含有してなる医薬組成物に関する。
好気性生物は酸素を取り込み、代謝系に利用して高エネルギーを得ている。この作用は細胞のミトコンドリアにより行われているが、ミトコンドリアが消費する酸素の0.4〜4%はエネルギーの産生に利用されるのではなく、活性酸素種になると言われている。この酸素の一部は、スーパーオキシド(O)や、過酸化水素(H)、ペルオキシ亜硝酸イオン(ONOO)、そしてヒドロキシラジカル(・OH)などの非常に反応性の高い活性酸素種(ROS)に変化する。これらのROSは、生体防御や細胞内シグナル伝達などに利用されており、生体内において重要な役割を担っているが、その一方では、高い反応性によりDNAや脂質等の生体分子を酸化変性させ、様々な細胞障害を誘発させる原因となることが知られている。このように生体内における活性酸素種(ROS)は、生体機能における「両刃の刃」となっており、通常は、役割を終えたROSは、生体に存在するROSを消去する抗酸化物質により速やかに還元消去される。しかしながら、過剰に生成したROSが生体恒常性を損なうとき、ROSは臓器レベルの障害を誘発し、動脈硬化・腎不全などの重篤な疾患を惹起する。
生命活動の維持に必要不可欠である酸素は、大気中で安定に存在しうる基底状態にある三重項酸素である。生体は、酸素代謝の過程でより反応性に富み、生体の酸化変性を惹起する酸素種を生成する。これを活性酸素種(ROS)と呼び、このROSは生体内でさまざまな酸化還元反応に関与している。これらの活性酸素種(ROS)のなかのスーパーオキシド(O)、過酸化水素(H)、及びヒドロキシラジカル(・OH)の生成の概要を反応式で示せば、次のようになる。
→ O → H → HO・ → H
スーパーオキシド(O)は、通常の酸素分子に1個の電子が取り込まれた分子であり、ラジカルとアニオンの両方の性質を有している。生体内では、虚血や炎症などの様々な刺激により通常の酸素分子から生成される。この分子は、各種の活性酸素種(ROS)の中で最初に生成される分子であり、結合解離エネルギーが低く、比較的不安定な分子である。しかし、この分子は反応性が比較的低く、細胞膜透過性も低いため、この分子自体が脂質などの生体物質を直接酸化することはほとんど無いとされており、この分子自体による生体毒性はないものとされている。
スーパーオキシド(O)は、生体内で生成された一酸化窒素(NO)と反応してペルオキシ亜硝酸イオン(ONOO)を生成するほかに、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)により過酸化水素(H)に変換される。また、スーパーオキシド(O)は、生成した過酸化水素(H)と共に次式、
+ H → HO・ + OH + O
で表されるハーバー・ワイス反応によりヒドロキシラジカル(・OH)を生成する。
過酸化水素(H)は、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)によりスーパーオキシド(O)から生成される活性酸素種(ROS)の1種であり、細胞増殖作用や情報伝達シグナルとしての機能を有し、様々な生理作用に関与している物質である。過酸化水素(H)は、細胞膜透過性が高く、活性酸素種(ROS)のなかでは比較的安定な物質で、それ自体の酸化力はそれほど大きくない。しかし、鉄や銅などの遷移金属イオンと反応して、極めて毒性の高いヒドロキシラジカル(・OH)を生成する。この反応は、次式、
n+ + H → HO・ + OH + M(n+1)+
(式中、Mn+はFe2+又はCuを示し、M(n+1)+はFe3+又はCu2+をそれぞれ示す。)
で表されるフェントン反応として知られているものである。また、過酸化水素(H)は、前記したハーバー・ワイス反応によりヒドロキシラジカル(・OH)を生成する。
ヒドロキシラジカル(・OH)は、活性酸素種(ROS)のなかで最も反応性の高い物質であり、活性酸素種(ROS)による細胞障害の主要な分子種であるとされている。水素引き抜き反応、付加反応、電子移動などの各種の化学反応を、10〜1010−1−1で行い、生体物質と無差別的に反応することが知られている。反応性が無差別的であることからも、ヒドロキシラジカル(・OH)を特異的に消去する抗酸化物質は存在していない。ヒドロキシラジカル(・OH)の大部分は前記したフェントン反応により過酸化水素(H)から生成されるとされている。
このように活性酸素種(ROS)のなかでも過酸化水素(H)は生理活性物質として有用な物質であり、これを消去することはできないが、反面極めて毒性の高いヒドロキシラジカル(・OH)を生成する物質でもある。したがって、活性酸素種(ROS)による生理活性を維持し、その細胞障害作用を低下させるためには、過酸化水素(H)からのヒドロキシラジカル(・OH)の生成を抑制して、過酸化水素(H)を速やかに水に還元することが重要となる。生体内において、過酸化水素(H)を水に還元する経路としては、グルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)と還元型グルタチオン(GSH)による還元と、カタラーゼ(Catalase)による還元が知られている。
カタラーゼ(Catalase)は、あらゆる生物に存在している酵素であり、Oの不均化反応になどにより生成した過酸化水素(H)を水と酸素に分解する酵素である。
ヘムカタラーゼは鉄プロトポルフィリンを活性中心に持つヘムタンパクである。ヘムカタラーゼの分子量は24kDaであり、4つのサブユニットを有し、その活性発現には四量体であることが必須となる。また、分子形は鞍のようになっており、基本的には球体がくびれた形となっている。また、ペルオキシソームに局在してその触媒能を発揮している。
また、各種ROSの生成開始物質であり、かつ大量に生成されるスーパーオキシド(O)を消去するために、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)の活性を亢進することも必要であると考えられてきた。
このために、SODやカタラーゼの活性を亢進させて活性酸素種(ROS)による細胞障害を低減させる方法が多数試みられてきている。例えば、アマニンの極性溶媒による抽出物を含有して成るカタラーゼ産生促進剤(特許文献1及び2参照)、ナス科、スイカズラ科、ショウガ科、又はアオイ科の植物のエッセンスからなるカタラーゼ活性化剤(特許文献3参照)、メハジキ、カンゾウ、エゾウコギ、ジオウおよびロクジョウの中から一種または二種以上選ばれる抽出物を含有するスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)やカタラーゼなどの活性酸素消去酵素の活性促進剤(特許文献4参照)、黒霊芝、霊芝(赤芝)、紫芝、マゴジャクシなどのマンネンタケ属に属するキノコおよびトリュフの中から一種または二種以上選ばれる抽出物を含有するスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)やカタラーゼなどの活性酸素消去酵素の活性促進剤(特許文献5参照)、ヨウサイ、ゴソウキンリュウ(五爪金竜)、コウショ(紅薯)などのIpomoea属に属する植物からの抽出物からなるラジカル消去剤及びカタラーゼ合成促進剤(特許文献6参照)などが報告されている。
また、本発明者らは、O消去活性(SOD活性)を有する人工SODモデル化合物の開発を進めてきた。特に、低分子であり置換基による多様な機能性の発現が行えるO消去酵素SODモデル化合物のカチオン性の金属ポルフィリン錯体(Metal−Porphyrin)に注目し、優れたSOD活性と抗酸化効果を報告してきた(特許文献7参照)。
特開2001−114636号公報 特開2001−122733号公報 特開2001−139420号公報 特開2002−29992号公報 特開2002−173441号公報 特開2004−250344号公報 特開2000−247978号公報
本発明者らは、優れたSOD活性と抗酸化効果を有するカチオン性の金属ポルフィリン錯体を開発してきたが、これを用いてインビボ(in vivo)での評価実験を行った結果、二つの問題点が明らかとなった。一つは、Hに由来する生体毒である。これは、カチオン性の金属ポルフィリン錯体によるOの不均化反応の際に生成するH自身、又は生成したHより派生するROS、特に生体毒性が強いと言われるヒドロキシラジカル(・OH)による生体毒が原因であると考えられる。また、もう一つの問題は、低分子に由来する短い血中滞留時間である。低分子であるカチオン性の金属ポルフィリン錯体を用いた場合には、長時間に渡り血中でのO分子種の消去効果を維持することは困難であった。
本発明は、カチオン性の金属ポルフィリン錯体に十分な血中濃度を長時間にわたって維持させ、さらに生成するHの消去活性を付加させて、従来使用されてきた抗酸化剤の生体利用能を著しく向上させた新規な複合体、及びそれを用いた抗酸化剤を提供することを目的としている。
本発明者らは、優れたSOD活性と抗酸化効果を有する活性酸素種(ROS)による細胞障害を低減させるを開発してきたが、これをさらに発展させて、当該カチオン性金属ポルフィリン錯体によるOの不均化反応の際に生成するH自身を同時に消去することができ、かつ低分子である当該カチオン性金属ポルフィリン錯体の生体中での長時間に渡る血中濃度を維持できるようにすることを検討してきた。生成したHを消去するためには、グルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)と還元型グルタチオン(GSH)による還元や、カタラーゼ(Catalase)による還元が知られている。また、新たな人工触媒を開発することも考えられた。しかし、Hを消去する酵素や触媒と、優れたSOD活性と抗酸化効果を有するカチオン性金属ポルフィリン錯体を単に組み合わせて使用するだけでは、両者の作用点が物理的に離れてしまうことも考えられるし、また両者の活性を同時に維持してゆくことも困難であり、活性酸素種(ROS)による細胞障害を低減させるという目的を十分に達成することはできないと考えられた。
そこで、本発明者らは、カチオン性金属ポルフィリン錯体とHを消去する酵素や触媒との複合体について検討した。その結果、当該カチオン性金属ポルフィリン錯体とカタラーゼとは、強度に凝集して複合体を形成することがわかった。しかし、この複合体は溶解性が悪く実用的なものではなかった。そこで、本発明者らは、さらに検討してきたところ、カタラーゼを親水性ポリマーで修飾して、この修飾カタラーゼとカチオン性金属ポルフィリン錯体との複合体の形成を試みたところ分散安定性に富むカタラーゼとカチオン性金属ポルフィリン錯体との複合体の形成を確認することができ、本発明に至った。
即ち、本発明は、親水性ポリマーが結合したカタラーゼと、次の一般式(1)
Figure 2007075058
(式中、Mは錯体を形成するための金属原子を示し、Ar、Ar、Ar、及び、Arはそれぞれ独立して置換基を有してもよい炭素環式又は複素環式芳香族基を示し、Ar、Ar、Ar、及び、Arの少なくとも1個はカチオン性の基を有する芳香族基である。)
で表されるカチオン性金属ポルフィリン錯体となるカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体に関する。
また、本発明は、親水性ポリマーが結合したカタラーゼと、前記の一般式(1)で表されるカチオン性金属ポルフィリン錯体となるカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体を含有してなる抗酸化組成物に関する。
さらに、本発明は、親水性ポリマーが結合したカタラーゼと、前記の一般式(1)で表されるカチオン性金属ポルフィリン錯体となるカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体を含有してなる医薬組成物、より詳細には、親水性ポリマーが結合したカタラーゼと、前記の一般式(1)で表されるカチオン性金属ポルフィリン錯体となるカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体、及び製薬上許容される担体を含有してなる医薬組成物に関する。
本発明のカチオン性金属ポルフィリン錯体は、ポルフィン骨格に4個の芳香族基を有するものであり、かつ、4個の芳香族基のうちの少なくとも1個にカチオン性の基を有していることを特徴とするものである。
4個の芳香族基は、それぞれ独立して、炭素環式のものであっても複素環式のものであってもよく、単環式のものでも多環式のものでも縮合環式のものであってもよい。芳香族基としては、炭素環式のものとしては例えば、炭素数6〜36、好ましくは6〜20の単環式、多環式、又は縮合環式の炭素環式芳香族基が挙げられ、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環などから誘導される基が挙げられる。複素環式のものとしては、1個又は2個以上の窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を有する5〜10員の単環式、多環式、又は縮合環式の複素環から誘導される基であり、例えば、ピリジン環、ピリミジン環、アゾール環などから誘導される基である。好ましい芳香族基としては、フェニル基や4−ピリジル基などが挙げられる。
芳香族基が有するカチオン性の基としては、炭素数1〜10、好ましくは1〜5程度の直鎖状又は分岐状のアルキル基などによりカチオン化されたアンモニウム基やスルホニウム基などが挙げられるが、第四級アンモニウム基が好ましい。これらのカチオン性の基は芳香族基に直接結合していてもよいが、炭素数1〜10、好ましくは1〜5程度の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を介して結合していてもよい。また、本発明のカチオン性の基は芳香族基の置換基として有していてもよいが、芳香族基の異種原子、好ましくは窒素原子が炭素数1〜10、好ましくは1〜5程度の直鎖状又は分岐状のアルキル基などによりカチオン化されたものであってもよい。このような芳香族基としては、N−アルキルピリジニウム基などが挙げられる。
カチオン性の基を有する芳香族基としては、例えば、4−N,N,N−トリメチルアミノフェニル基、4−N,N,N−トリエチルアミノフェニル基などの4−N,N,N−トリ低級アルキルアミノフェニル基、N−メチル−4−ピリジル基、N−エチル−4−ピリジル基などのN−低級アルキル−4−ピリジル基などが挙げられる。また、これらのカチオン性の基を有する芳香族基が、フェニル基やナフチル基などの炭素環式芳香族基に直接又はアルキレン基やアミド基やエステル基などを介して結合した基となっていてもよい。
これらの芳香族基は、SOD活性に悪影響を与えない置換基をさらに有していてもよい。芳香族基におけるこのような置換基としては、炭素数1〜10、好ましくは1〜6の直鎖又は分枝状の低級アルキル基、アミノ基、前記した低級アルキル基で置換されているアミノ基、前記した低級アルキル基からなる低級アルコキシ基などが挙げられる。
本発明の前記した一般式(1)のAr、Ar、Ar、及び、Arの少なくとも1個はカチオン性の基を有する芳香族基であるが、好ましくはこれらの芳香族基のうちの2個以上がカチオン性の基を有するものである。
本発明の前記した一般式(1)で表されるカチオン性金属ポルフィリン錯体のポルフィリン環部分のものとしては、Ar、Ar、Ar、及び、Arの全てが、N−メチル−4−ピリジル基などのN−低級アルキル−4−ピリジル基、又は、4−N,N,N−トリメチルアミノフェニル基などの4−N,N,N−トリ低級アルキルアミノフェニル基である化合物、Ar、Ar、及び、ArがN−メチル−4−ピリジル基などのN−低級アルキル−4−ピリジル基、又は、4−N,N,N−トリメチルアミノフェニル基などの4−N,N,N−トリ低級アルキルアミノフェニル基であり、Arがフェニル基である化合物、Ar、及び、ArがN−メチル−4−ピリジル基などのN−低級アルキル−4−ピリジル基、又は、4−N,N,N−トリメチルアミノフェニル基などの4−N,N,N−トリ低級アルキルアミノフェニル基であり、Ar、及び、Arがフェニル基である化合物、Ar、及び、ArがN−メチル−4−ピリジル基などのN−低級アルキル−4−ピリジル基、又は、4−N,N,N−トリメチルアミノフェニル基などの4−N,N,N−トリ低級アルキルアミノフェニル基であり、Ar及びArがフェニル基である化合物などが挙げられる。
本発明の前記一般式(1)における中心金属Mとしては、SOD活性を示すものであれば特に制限はないが、好ましい金属としては遷移金属が挙げられ、なかでもマンガン原子、ニッケル原子、鉄原子、銅原子、コバルト原子、又は亜鉛原子などが挙げられるが、SOD活性の点からはマンガン原子が特に好ましい。
本発明の前記した一般式(1)で表されるカチオン性金属ポルフィリン錯体は、公知の方法に従って製造することができる。例えば、ピロールと芳香族アルデヒドとを反応させてポリフィリン環部分を製造し、これをハロゲン化低級アルキルや低級アルキルトシレートなどのアルキル化剤でカチオン化し、次いで金属又は金属化合物、例えば金属ハロゲン化物などを用いて金属錯体とする方法により製造することができる。
本発明のカチオン性金属ポルフィリン錯体の、より詳細な製造方法については、前記した特許文献7(特開2000−247978号公報)を参照されたい。特許文献7(特開2000−247978号公報)の記載を参照して、全て本明細書に取り込む。
本発明の好ましいカチオン性金属ポルフィリン錯体としては;
一般式(1)のAr、Ar、Ar、及び、Arが、N−メチル−4−ピリジル基であるカチオン性金属ポルフィリン錯体(Met−M4PyP、又はMet−TMPyPと略記する(式中、Metは金属元素を示す。以下同じ。));
一般式(1)のAr、Ar、Ar、及び、Arが、N−メチル−3−ピリジル基であるカチオン性金属ポルフィリン錯体(Met−M3PyPと略記する);
一般式(1)のAr、Ar、Ar、及び、Arが、N−メチル−2−ピリジル基であるカチオン性金属ポルフィリン錯体(Met−M2PyPと略記する);
一般式(1)のAr、Ar、Ar、及び、Arが、N−エチル−4−ピリジル基であるカチオン性金属ポルフィリン錯体(Met−E4PyPと略記する);
一般式(1)のAr、Ar、Ar、及び、Arが、N−エチル−3−ピリジル基であるカチオン性金属ポルフィリン錯体(Met−E3PyPと略記する);
一般式(1)のAr、Ar、Ar、及び、Arが、N−エチル−2−ピリジル基であるカチオン性金属ポルフィリン錯体(Met−E2PyPと略記する);
一般式(1)のAr、Ar、Ar、及び、Arが、N−アミノエチル−4−ピリジル基であるカチオン性金属ポルフィリン錯体(Met−AE4PyPと略記する);
一般式(1)のAr、Ar、Ar、及び、Arが、N−アミノエチル−3−ピリジル基であるカチオン性金属ポルフィリン錯体(Met−AE3PyPと略記する);
一般式(1)のAr、Ar、Ar、及び、Arが、N−アミノエチル−2−ピリジル基であるカチオン性金属ポルフィリン錯体(Met−AE2PyPと略記する);
一般式(1)のAr、Ar、Ar、及び、Arが、N−アミノプロピル−4−ピリジル基であるカチオン性金属ポルフィリン錯体(Met−AP4PyPと略記する);
一般式(1)のAr、Ar、Ar、及び、Arが、N−アミノプロピル−3−ピリジル基であるカチオン性金属ポルフィリン錯体(Met−AP3PyPと略記する);
一般式(1)のAr、Ar、Ar、及び、Arが、N−アミノプロピル−2−ピリジル基であるカチオン性金属ポルフィリン錯体(Met−AP2PyPと略記する);
一般式(1)のAr、及びArが、N−メチル−4−ピリジル基であり、Ar、及びArがフェニル基であるカチオン性金属ポルフィリン錯体(Met−cis−M4PyP、又はMet−TMPyDPPと略記する。)
一般式(1)のAr、及びArが、N−メチル−3−ピリジル基であり、Ar、及びArがフェニル基であるカチオン性金属ポルフィリン錯体(Met−cis−M3PyPと略記する。)
一般式(1)のAr、及びArが、N−メチル−2−ピリジル基であり、Ar、及びArがフェニル基であるカチオン性金属ポルフィリン錯体(Met−cis−M2PyPと略記する。)
一般式(1)のAr、及びArが、N−メチル−4−ピリジル基であり、Ar、及びArがフェニル基であるカチオン性金属ポルフィリン錯体(Met−trans−M4PyPと略記する。)
一般式(1)のAr、及びArが、N−メチル−3−ピリジル基であり、Ar、及びArがフェニル基であるカチオン性金属ポルフィリン錯体(Met−trans−M3PyPと略記する。)
一般式(1)のAr、及びArが、N−メチル−2−ピリジル基であり、Ar、及びArがフェニル基であるカチオン性金属ポルフィリン錯体(Met−trans−M2PyPと略記する。)
一般式(1)のAr、Ar、及びArが、N−メチル−4−ピリジル基であり、Arがフェニル基であるカチオン性金属ポルフィリン錯体(Met−M4PyPP、又はMet−TMPyMPPと略記する。);
一般式(1)のAr、Ar、及びArが、N−メチル−3−ピリジル基であり、Arがフェニル基であるカチオン性金属ポルフィリン錯体(Met−M3PyPPと略記する。);
一般式(1)のAr、Ar、及びArが、N−メチル−2−ピリジル基であり、Arがフェニル基であるカチオン性金属ポルフィリン錯体(Met−M2PyPPと略記する。);
一般式(1)のArがN−メチル−4−ピリジル基であり、Ar、Ar、及びArがフェニル基であるカチオン性金属ポルフィリン錯体(Met−M4PyPPと略記する。);
一般式(1)のArがN−メチル−3−ピリジル基であり、Ar、Ar、及びArがフェニル基であるカチオン性金属ポルフィリン錯体(Met−M3PyPPと略記する。);
一般式(1)のArがN−メチル−2−ピリジル基であり、Ar、Ar、及びArがフェニル基であるカチオン性金属ポルフィリン錯体(Met−M2PyPPと略記する。);
一般式(1)のAr、及びArが、N−メチル−4−ピリジル基であり、Ar、及びArが水素原子であるカチオン性金属ポルフィリン錯体(Met−cis−M4PyPと略記する。)
一般式(1)のAr、及びArが、N−メチル−3−ピリジル基であり、Ar、及びArが水素s原子であるカチオン性金属ポルフィリン錯体(Met−cis−M3PyPと略記する。)
一般式(1)のAr、及びArが、N−メチル−2−ピリジル基であり、Ar、及びArが水素原子であるカチオン性金属ポルフィリン錯体(Met−cis−M2PyPと略記する。)
一般式(1)のAr、及びArが、N−メチル−4−ピリジル基であり、Ar、及びArが水素原子であるカチオン性金属ポルフィリン錯体(Met−trans−M4PyPと略記する。)
一般式(1)のAr、及びArが、N−メチル−3−ピリジル基であり、Ar、及びArが水素原子であるカチオン性金属ポルフィリン錯体(Met−trans−M3PyPと略記する。)
一般式(1)のAr、及びArが、N−メチル−2−ピリジル基であり、Ar、及びArが水素原子であるカチオン性金属ポルフィリン錯体(Met−trans−M2PyPと略記する。)
一般式(1)のArがN−メチル−4−ピリジル基であり、Ar、Ar、及びArが水素原子であるカチオン性金属ポルフィリン錯体(Met−M4PyPと略記する。);
一般式(1)のArがN−メチル−3−ピリジル基であり、Ar、Ar、及びArが水素原子であるカチオン性金属ポルフィリン錯体(Met−M3PyPと略記する。);
一般式(1)のArがN−メチル−2−ピリジル基であり、Ar、Ar、及びArが水素原子であるカチオン性金属ポルフィリン錯体(Met−M2PyPと略記する。);
一般式(1)のAr、Ar、Ar、及び、Arが、2−(N−メチル−4−ピリジル−カルボニルアミノ)−フェニル基であるカチオン性金属ポルフィリン錯体;
一般式(1)のAr、Ar、Ar、及び、Arが、2−(N−メチル−3−ピリジル−カルボニルアミノ)−フェニル基であるカチオン性金属ポルフィリン錯体;
などが挙げられる。
また、さらに具体的には、
一般式(1)のAr、Ar、Ar、及び、Arが、N−メチル−4−ピリジル基であるマンガン錯体(以下、MnTMPyPと略記する。);
一般式(1)のAr、Ar、Ar、及び、Arが、N−メチル−4−ピリジル基である鉄錯体(以下、FeTMPyPと略記する。);
一般式(1)のAr、Ar、Ar、及び、Arが、N−メチル−4−ピリジル基である銅錯体。(以下、CuTMPyPと略記する。):
一般式(1)のAr、Ar、Ar、及び、Arが、4−N,N,N−トリメチルアミノフェニル基であるマンガン錯体(以下、MnTMAPと略記する。);
一般式(1)のAr、Ar、Ar、及び、Arが、4−N,N,N−トリメチルアミノフェニル基である鉄錯体(以下、FeTMAPと略記する。);
一般式(1)のAr、Ar、Ar、及び、Arが、4−N,N,N−トリメチルアミノフェニル基である銅錯体。(以下、CuTMAPと略記する。):
一般式(1)のAr、Ar、及びArが、N−メチル−4−ピリジル基であり、Arがフェニル基であるマンガン錯体(以下、MnTMPyMPPと略記する。);
一般式(1)のAr、Ar、及びArが、N−メチル−4−ピリジル基であり、Arがフェニル基である鉄錯体(以下、FeTMPyMPPと略記する。);
一般式(1)のAr、Ar、及びArが、N−メチル−4−ピリジル基であり、Arがフェニル基である銅錯体(以下、CuTMPyMPPと略記する。):
一般式(1)のAr、及びArが、N−メチル−4−ピリジル基であり、Ar、及びArがフェニル基であるマンガン錯体(以下、MnTMPyDPPと略記する。);
一般式(1)のAr、及びArが、N−メチル−4−ピリジル基であり、Ar、及びArがフェニル基である鉄錯体(以下、FeTMPyDPPと略記する。);
一般式(1)のAr、及びArが、N−メチル−4−ピリジル基であり、Ar、及びArがフェニル基である銅錯体(以下、CuTMPyDPPと略記する。);
などが挙げられる。
さらに好ましいカチオン性金属ポルフィリン錯体としては、次式
Figure 2007075058
で表されるN−アルキル化ピリジル基を有するマンガン錯体が挙げられる。より具体的には、前記したN−メチル−4−ピリジル基を有するMnTMPyPが挙げられる。
本発明のカタラーゼとしては、生体内又は細胞内においてHを水に還元する能力を有するものであれば特に制限はなく、ヒトなどの動物由来のものであってもよいし、細菌などの微生物由来のものであって、また組替え体であってもよい。好ましいカタラーゼとしては、ヒト由来のカタラーゼが挙げられる。ヒト由来のカタラーゼは天然のものであっても、遺伝子組替え技術により宿主細胞から産生されたものであってもよい。ヒト由来のカタラーゼは、鉄プロトポルフィンを活性中心に持つヘムタンパク質で、その分子量は約22万〜24万であり、4個のサブユニットからなり、1サブユニット当たり1分子のヘムを含有している。そのpKaは約5.6〜5.8であり、生理条件下では負に帯電している。
本発明におけるカタラーゼに結合する親水性ポリマーとしては、親水性であって、本発明のカチオン性金属ポルフィリン錯体と複合体を形成できる能力、例えばカチオン性金属ポルフィリン錯体のカチオン性基に電気的な親和性を有する負に帯電又は電子過剰な部分を有するポリマーであればよい。このようなポリマーとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール、親水性のポリアクリル酸エステル、多糖類やオリゴ糖などが挙げられる。また、このようなポリマーに負の電荷を与えるためにスクシニル化やマレイル化を行ってもよい。好ましい親水性ポリマーとしては、ポリエチレングリコールが挙げられる。ポリエチレングリコールとしては、医薬品添加剤として使用されるグレードのものが好ましく、分子量としては300〜50000、好ましくは1000〜20000、より好ましくは1000〜8000のものが挙げられる。好ましいポリエチレングリコールの例としては、PEG1500、PEG2000、PEG4000,PEG6000などが挙げられる。
親水性ポリマーとカタラーゼを結合させる方法としては特に制限はないが、カタラーゼ中のアミノ基(リジンのアミノ基のアミノ基など)をジカルボン酸のような2官能性の化合物でアミド化などの方法により結合した後、ポリエチレングリコールを他の官能基、例えばカルボキシル基とエステル化などにより結合させてもよい。また、末端にカルボキシル基を有するポリエチレングリコールを活性エステル化法などにより直接カタラーゼのアミノ基と結合させてもよい。好ましい結合方法のひとつとして、次式
Figure 2007075058
で示されるメトキシポリエチレングリコール−N−サクシンイミジル(mPEG−SPA)によるカップリング法が挙げられる。
このような親水性ポリマーで修飾されるカタラーゼのアミノ基の割合としては、特に制限はないが、モル修飾率((修飾されたアミノ基のモル)/(カタラーゼ中の修飾可能な全アミノ基のモル)の百分率)が高くなればカタラーゼの活性が低下してくるし、修飾率は低いと親水性を十分に確保することが困難となるので、これらの点を考慮して使用目的に応じて適宜調整することができる。
本発明者らによる予備実験においては、カタラーゼのアミノ基をアセチル基で修飾したカタラーゼ(Ac Catalase 1、及びAc Catalase 2)の場合の修飾率とカタラーゼの活性との関係は、次の表1のようになっているわかっている。
Figure 2007075058
この表1の結果からもわかるように、カタラーゼは50%の修飾率においても約81%の活性が維持されており、アミノ基の修飾に対しては比較的安定な酵素である。
本発明の親水性ポリマーが結合したカタラーゼとしては、前記した親水性ポリマーによりカタラーゼのアミノ基の約5〜90モル%、好ましくは約5〜60モル%、より好ましくは5〜50モル%が修飾されたものが挙げられる。
なお、カタラーゼのアミノ基の修飾率は、カタラーゼの残存する遊離のアミノ基をTNBS(2,4,6-Trinitrobenzene sulfonic acid)による定量法(TNBS法)により測定することにより決定することができる。
このようにして調製された本発明の「親水性ポリマーが結合したカタラーゼ」は、必要により各種の方法により精製することができる。精製法としては、高速液体クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどの公知の各種の方法を採用することができる。好ましい精製方法としては、親水性ビニルポリマー、架橋デキストラン(Sephadex, Sephacryl)、架橋ポリアクリルアミド(Bio-GelP)、架橋アガロース(Sepharose)、多孔性セルロースなどを担体としたゲルろ過クロマトグラフィーが挙げられる。
本発明のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体を製造する方法としては、溶媒中で親水性ポリマーが結合したカタラーゼと、前記した一般式(1)で表される本発明のカチオン性金属ポルフィリン錯体とを混合して攪拌することにより製造することができる。
この方法を、カチオン性金属ポルフィリン錯体として前記したN−メチル−4−ピリジル基を有するMnTMPyPを例とし、親水性ポリマーとしてポリエチレングリコール(PEG)を例として、模式的に図1に示す。図1において丸く表示されているのがカタラーゼを示しており、その丸く表示されているところから黒太線で表示されているものがポリエチレングリコール(PEG)を示している。この図1に示されているように、低分子のカチオン性金属ポルフィリン錯体(図1では十字型で示されている。)が、巨大タンパク質のカタラーゼ又はPEGの近辺に吸着されたように結合して複合体を形成する。そして、本発明のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体は、図1に示されているように複合体の周囲に親水性の親水性ポリマーの鎖が突出している。このために、本発明の複合体は親水性を保持することができ、血液などの水溶性の媒質中での分散性や安定性に優れている。
本発明のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体を製造する方法における溶媒としては、水が好ましいがこれに限定されるものではなく、含水アルコールなどの有機溶媒との混合溶媒などを使用することもできる。溶媒としては水が好ましいが、PBS(リン酸バッファー)や塩酸トリスバッファーなどの緩衝溶液として使用する方が好ましい。pHは4〜8、好ましくは5〜8の範囲が挙げられる。反応温度としては、室温以下が好ましく、より好ましくは0℃〜15℃、又は0℃〜10℃程度が挙げられる。反応時間は特に制限はないが、通常は5時間〜40時間、又は10時間〜30時間の範囲で適宜選択することができる。
反応は光を遮断して行うのが好ましく、通常は遮光下で行うのが好ましい。
また、反応終了後は、透析などにより精製することができる。また、ゲルろ過クロマトグラフィー(GFC)などにより、カタラーゼとカチオン性金属ポルフィリン錯体とが解離していないことを確認することができる。
カタラーゼに対するカチオン性金属ポルフィリン錯体の量も1モル以上であれば特に制限は無く、カタラーゼの有する結合サイト全てに結合させることができる。図1に模式的に示されているように、カタラーゼ1個に対して2個以上のカチオン性金属ポルフィリン錯体が結合するも可能であることから、本発明者らは、カタラーゼとカチオン性金属ポルフィリン錯体との結合サイトについて、カチオン性金属ポルフィリン錯体として前記したN−メチル−4−ピリジル基を有するMnTMPyPを例として予備実験を行った。その結果、未修飾のカタラーゼは2個のMnTMPyPとの結合サイトを有していることが判明した。さらに、ポリエチレングリコール(PEG)で修飾したカタラーゼ(PEG−Cat)について同様な結合実験を行った。
即ち、精製した分子量5,000のPEG−カタラーゼとMnTMPyPとを混合して攪拌した。反応終了後、ゲルろ過クロマトグラフィー(GFC)により精製を行い、各分画を回収してUV/visスペクトルを観察した。その結果を図2に示す。図2の縦軸は吸光度を示し、横軸は波長(nm)を示す。図2の上段の実線は高分子量の画分を示し、中段の破線はより低分子量の画分を示し、下段の点線は低分子量の画分を示す。この結果、高分子量の画分からはアミノ酸の芳香族環由来の280nmの吸収と、カタラーゼの活性中心ヘム鉄由来の405nmの吸収、及びMnTMPyPのソーレー帯由来の462nmの極大吸収が観測された。また、低分子量の画分からはMnTMPyPのソーレー帯由来の462nmの極大吸収のみが観測された(図2参照)。このことから、高分子量の画分にはPEG−カタラーゼとMnTMPyPが結合している複合体であることが示さた。即ち、本発明のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体の生成が確認された。また、各UV/visスペクトルの吸光度より濃度を算出し、カタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体におけるカタラーゼとカチオン性金属ポルフィリン錯体との大まかな結合比を算出した。その結果、PEG−カタラーゼ:MnTMPyP=約1:2であることがわかった。
また、別途、未修飾カタラーゼ及びPEG修飾カタラーゼとMnTMPyPとの、それぞれの結合定数と結合サイト数を、スッキャチャード(Scatchard)プロットと結合曲線を用いて解析した。具体的には、スッキャチャード(Scatchard)プロットのr値の漸近から一分子あたりの結合サイトを、そして直線近似の傾きKから結合定数を求めた。
その結果、未修飾カタラーゼの結合サイトが一分子あたり2個程度であり、結合定数が約5×10−1であることがわかった。また、PEG修飾カタラーゼの結合サイトが一分子あたり1〜2個程度であり、結合定数が約5×10−1であることがわかった。この実験において、未修飾カタラーゼとPEG修飾カタラーゼのいずれについても、非結合薬物濃度の上昇とともに、結合薬物濃度が収束する様子が見られた(データは示していない。)。
以上のことから、未修飾カタラーゼの結合サイトが2個であるのに対し、PEG修飾カタラーゼでは1〜2個であった。これは、PEG修飾に伴い結合サイトの一部が消失したためであると考えられる。さらに、PEG修飾カタラーゼの結合定数が、未修飾カタラーゼと同程度であったことは、PEGなどの親水性ポリマーによる修飾が、カタラーゼとMnTMPyPの相互作用に大きな影響を与えないためと考えられる。即ち、本発明の方法によるカタラーゼの修飾は、カタラーゼとMnTMPyPとの複合体の形成の際の相互作用には大きな影響を与えることなく、形成された複合体の親水性を増加させることがわかった。
また、PEGの修飾率を上昇させていくに従い、MnTMPyPが結合しにくい状況が生じてくる。これは、PEG相互による排除効果と結合サイトの消失に由来するものと考えられる。これらのことから、PEGなどによるカタラーゼの修飾は、カタラーゼとカチオン性金属ポルフィリン錯体との複合体の形成応力に影響を与えない程度の低い修飾率(例えば、10mol%程度)が好ましいと考えられた。
以上のように、親水性ポリマーで修飾されたカタラーゼを用いた本発明のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体は、未修飾のカタラーゼと同様な複合体を形成することができ、かつ親水性であり水溶媒中において極めて優れた分散性と安定性を有していることが確認された。
そこで、このようにして形成された本発明のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体が、目的するSOD活性と同時に、Hを水に還元する能力を有しているかどうかを検討した。この実験では、本発明のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体の例示として、分子量5,000のPEGで修飾したPEG−カタラーゼとMnTMPyPとからなる複合体(以下、PEG−Cat−MnTMPyPという。)を使用した。
SOD活性の測定は、O消去を測定する方法により間接法と直接法に分類される。間接測定法としては、チトクロームC(Cytochrome c)法や化学発光法、そしてESR法などがある。チトクロームC(Cytochrome c)法は、キサンチン−キサンチンオキシダーゼ系をOの発生源とし、生成したOをから電子を奪うチトクロームC(Cytochrome c)の作用との競争反応を測定する方法である。チトクロームC(Cytochrome c)は、酸化型チトクロームC(Cytochrome c)(極大吸収:540nm)と還元型チトクロームC(Cytochrome c)(極大吸収:550nm)が有る。Oの存在により酸化型チトクロームC(Cytochrome c)(極大吸収:540nm)が作用して、550nmに極大吸収を有する還元型チトクロームC(Cytochrome c)へ還元される。この系内に測定対象物を添加すると、Oの消費について競争が起こり、その結果、酸化型チトクロームC(Cytochrome c)(極大吸収:540nm)による還元は阻害されることになり、その阻害率を求める方法である。
SOD活性の直接測定法としては、ストップトフロー法やパルスラジオリシス法などがあり、いずれも高感度である。ストップトフロー法は、Oが存在しているセル内へ被検物質を混合することにより、セル内のOの減少をOの吸収波長である245nmの減衰として直接観測する方法である。本発明のPEG−Cat−MnTMPyPの濃度が0μM、0.1μM、0.25μM、0.5μM、1.0μM、1.5μM、2.0μM、2.5μM、及び3.0μMのサンプルをそれぞれ調製し、SOD活性を測定した結果を図3に示す。図3の縦軸は速度定数(/秒)を示し、横軸は濃度(μM)を示す。この結果、本発明のPEG−Cat−MnTMPyPのSOD活性の速度定数(kSOD)は、9.15×10−1−1であることがわかった。
カタラーゼ活性の測定法は、UVを用いたAebiの方法(Hugo Aebi, (1984) Methods in enzymology, Vol. 105, 121-126)に準じて行った。この方法は、調製したサンプルをセル内に注入した後、セルにHを注入し、Hの減少をHの吸収波長である240nmの減衰として直接観測するものである。本発明のPEG−Cat−MnTMPyPの濃度が0nM、2.5nM、5.0nM、7.5nM、10nM、25nM、50nM、及び100nMのサンプルをそれぞれ調製し、カタラーゼ活性を測定した結果を図4に示す。図4の縦軸は速度定数(/秒)を示し、横軸は濃度(nM)を示す。この結果、本発明のPEG−Cat−MnTMPyPのカタラーゼ活性の速度定数(kCatalase)は、1.46×10−1−1であることがわかった。
また、同じ方法により、MnTMPyP錯体単体のSOD活性の速度定数(kSOD)、及び未修飾のカタラーゼ単体のカタラーゼ活性の速度定数(kCatalase)を測定した。その結果、MnTMPyP錯体単体のSOD活性の速度定数(kSOD)は、9.48×10−1−1であり、未修飾のカタラーゼ単体のカタラーゼ活性の速度定数(kCatalase)は、14.6×10−1−1であった。なお、これらの値は、36.5℃で測定したものである。これらの結果をまとめて次の表2に示す。
Figure 2007075058
これらの結果により、本発明のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体は、それぞれの触媒活性が極めてよく維持されていることが明らかとなった。即ち、本発明のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体は、元のカチオン性金属ポルフィリン錯体のSOD活性を96.4%維持しており、また元の未修飾のカタラーゼ活性を97.2%も維持していることが明らかになった。また、本発明のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体のそれぞれの反応速度定数は、各々の基質(O、及びH)の自己不均化速度定数を上回っており、速度論的に有意な活性を有することも明らかとなった。さらに、当該複合体におけるSOD活性とカタラーゼ活性の比、kSOD:kCatalaseは、約1:1.5であり、Hの消去速度が優勢となることが示された。このことは、速やかなるHの消去を達成できることを意味し、生体内におけるHの毒性を有意に減少することができることを意味している。
これらのことは、本発明のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体は、修飾され、かつ複合体化されたにもかかわらず、それぞれの活性サイトを活性なまま維持することができていることを意味していると考えられ、しかも水溶液中における分散性及び安定性に優れた実用的な抗酸化剤であることが示された。本発明のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体は、優れたSOD活性とカタラーゼ活性とを同時に有しており、生体内における毒性の高い活性酸素種であるO及びHを速やかに水に還元することができ、この点においても、本発明のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体が、優れた実用的な抗酸化剤であることが示された。
さらに、本発明のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体の生体を用いたときの活性を検討するために、まずインビトロ(in vitro)での抗酸化作用の評価を行った。
そこで、本発明のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体を用いて、伊藤らの方法(Ito, Y., et al., Hepatology., (1992); Jul; 16 (1):247-54.)に準じて、細胞培地にヒポキサンチン−キサンチンオキシダーゼ(HX−XO)を添加してOを発生させ、これによる細胞死の抑制を評価した。
本発明のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体の例示として、分子量5,000のPEGで修飾したPEG−カタラーゼとMnTMPyPとからなる複合体(以下、PEG−Cat−MnTMPyPという。)を使用し、細胞としてヒト肝癌由来細胞HepG2を用い、アラマーブルーで染色した後の吸光度により細胞生存率を算出した。結果を図5に示す。図5の縦軸は生存率(%)を示し、横軸は試料の濃度(Log M)を示す。図5中の黒丸印(●)はMnTMPyP錯体を単体で用いた場合を示し、黒三角印(▲)は、PEG修飾カタラーゼを単体で用いた場合を示し、黒四角印(■)は本発明のPEG−Cat−MnTMPyPを用いた場合をそれぞれ示す。
この結果、本発明のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体は、単体のMnTMPyP及びPEG修飾カタラーゼのいずれの生存率も上回っていた。また、本発明のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体及びか単体では濃度依存的に生存率の向上が見られたが、MnTMPyP錯体の単体では濃度依存的な生存率上昇が見られなく、むしろ生存率が減少する傾向にあった。
をHに還元する能力だけを有するカチオン性金属ポルフィリン錯体では、その濃度に関係無く生存率が低く、HをHOに還元するカタラーゼ系の能力を有する系が濃度依存的に生存率を上昇させていた。このことは、生体内における細胞障害の主要因が、Oではなく、Hによるものであることが示され、Oの自己不均化により生成したHが、細胞毒の要因となっていると考えられる。Hより生成するヒドロキシラジカル(・OH)が細胞に重篤な影響を与えていると考えられ、特に、MnTMPyPを単独で投与した場合には、OからHへの還元が促進されたために生存率が減少したと考えられる。同時に、この結果はOの還元により生じたHの消去の必要性を明らかにしている。
そして、本発明のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体のほうが、PEG修飾カタラーゼよりも、生存率を上回っていたということは、カタラーゼ活性単独ではなく、SOD活性とカタラーゼ活性を同時に有している本発明のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体が、生体内で生じたHだけでなく、同時に速やかなるOとHの還元消去を達成したためと考えられる。このOの積極消去は、Hを大量生成するが、同時にOから派生する他の活性酸素種(ROS)の生成を抑制すると考えられる。このことから、本発明のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体は、Hの消去活性を有することにより、初めてOの積極的な消去が生体内で極めて有効な手段となり得ることを示すものであり、Hの還元消去能を獲得したことにより、細胞を有意に保護したと考えられる。
本発明のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体は、親水性ポリマーで修飾されており、水溶液中における分散性及び安定性に優れていたが、これを生体内において確認するために、生体内における血中滞留性についてさらに検討した。このために、ラットへ本発明のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体を投与し、一定時間毎に血液を回収し、血液中の本発明のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体の存在量を金属の原子吸光法により測定することにより評価した。具体的には、本発明のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体の例示として、分子量5,000のPEGで修飾したPEG−カタラーゼとMnTMPyPとからなる複合体(以下、PEG−Cat−MnTMPyPという。)を用いて、2μMのPEG−Cat−MnTMPyPを、体重1kg当たり1mLの量をラットに投与し、投与後、15分、30分、1時間、3時間、6時間、及び24時間後に尾静脈より採血を行い、マンガンの濃度を原子吸光法により測定した。同様に、MnTMPyP錯体を単独で、またPEG修飾カタラーゼを単独で、それぞれ投与した結果を測定した。結果を次の表3に示す。
Figure 2007075058
また、MnTMPyP錯体及びPEG−Cat−MnTMPyPの血中濃度の変化を視覚化するため、投与後15分後の吸光度を100%とした経時的変化をグラフにして図6に示す。図6の縦軸は血中残存率(%)を示し、横軸は投与後15分後からの経過時間(時間)を示す。図6の黒三角印(▲)は本発明のPEG−Cat−MnTMPyPの場合を示し、黒菱形印(◆)はMnTMPyP錯体単独の場合を示す。
この結果、低分子のMnTMPyP錯体は急激に血中濃度が減少するのに対し、本発明のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体の減少は、極めて緩慢であることが明らかとなった。これより、本発明のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体は、長時間の血中滞留性が達成されたことが示された。これは、本発明のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体のSOD活性を有するMnTMPyPが生体内でも結合していたことも示している。
PEG修飾カタラーゼのようなPEG修飾タンパク質は、PEGが構成する親水性の水バリアにより抗原抗体反応、タンパク質分解酵素、腎排泄経路を回避できるため、血中での安定性に富み、長時間の血中滞留性が達成されたことが示された。同様に親水性ポリマーによる修飾が行われている本発明のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体も、長時間にわたり血中に存在したと考えられる。一方、カチオン性金属ポルフィリン錯体は、強い正電荷を持つため、負に帯電している血管内皮細胞と非選択的に強く結合する。さらに、低分子量であるため、腎の糸球体ろ過により尿中へと速やかに排泄されてしまう。このため、血中滞留が短かったと考えられる。
これらのことから、本発明のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体は、血中においてもカタラーゼとカチオン性金属ポルフィリン錯体が強く結合した状態を維持しており、しかも親水性ポリマーによる修飾により、PEG修飾カタラーゼと同等又はそれ以上の長時間にわたる血中濃度の維持も可能であることが確認された。
次に、本発明のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体による生体内における抗酸化能発現と疾患軽減について検討した。具体的には、本発明のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体の例示として、分子量5,000のPEGで修飾したPEG−カタラーゼとMnTMPyPとからなる複合体(以下、PEG−Cat−MnTMPyPという。)を用いて、虚血再灌流によるラットの肝臓の虚血再灌流障害(肝IR/I)を本発明の抗酸化剤を投与することで、その生体内還元能と疾患軽減を評価した。
イアンらは虚血再灌流障害について、再灌流後の非常に初期に生成されるOが虚血再灌流障害の原因であると述べている(Ian N. Hines, Brian J. Day, et al., Am. J. Physiol Gastrointest Liver Physiol, 284: G536-G545, 2003.)。また、再灌流後の6時間を急性期、再灌流から6〜24時間後を亜急性期と分類しており、急性期には、クッファー細胞の活性化に伴う活性酸素種(ROS)の生成が主であり、発生した活性酸素種(ROS)がTNF−α等を誘導し、虚血再灌流障害を仲介すると報告している。そして、亜急性期には、虚血再灌流障害は白血球に依存する報告している。虚血時間に伴うROS障害因子の変化が見受けられることからも、虚血再灌流障害の原因を単純なO発生系には集約できず、各種のROS等のクロストークによる複雑な機構が作用しているものと考えられている。
まず、ラットに2μMのPEG−Cat−MnTMPyP、2μMのPEG修飾カタラーゼ、及び0.5mg/mLのMnTMPyPのそれぞれを0.5mL門脈より投与した。投与後、肝臓の70%部位を虚血状態とし、75分後に再度それぞれの薬剤を0.5m投与し後、再灌流を行った。再灌流後、6時間後、及び24時間後に頸静脈より採血し、血中の肝障害マーカー(GOT、GPT、LDH)を測定した。また、再灌流6時間後に、スピンプローブとしてニトロキシドラジカルであるCarbamoyl-PROXYLを用いたESRの測定を行って、生体内のラジカルの状態を測定した。
生体内(in vivo)の300MHzのESR測定の結果をグラフにして図7に示す。図7の縦軸はシグナル強度k(mm/分)を示し、横軸は左側から開腹処置だけをした場合(sham)、虚血再灌流を行ったが薬剤を投与しなかったコントロールの場合(IR(−))、虚血再灌流を行って薬剤を投与した場合(IR(+))をそれぞれ示す。各々の場合のシグナル強度は、平均値±標準偏差(n=5)で示されており、図7中の*印は、p<0.05で有意差があったことを示している。
この結果、虚血再灌流(IR)を行うことで、生体の還元能が著しく低下してくることが確認された(図7のIR(−)参照)。これは、虚血再灌流に伴って大量に発生したROSにより、生体由来の抗酸化物質が消費されたことによるものと考えられる。それに対して、本発明のPEG−Cat−MnTMPyPを投与することで、無投与と比較して有意に生体の還元能が上昇したことが示された(図7のIR(+)参照)。さらに、この結果、通常の状態と同程度までに回復していることも明らかにされた。これは、投与した本発明のPEG−Cat−MnTMPyPが生体内でその抗酸化機能を有意に発揮して、虚血再灌流による生体由来の抗酸化物質の消費を抑制することができたためであると考えられる。
また、ESRでの減衰速度定数(k)と細胞内SOD様活性(SSA)との関係が比例関係にあることから、この両者の相関をグラフ化した。結果を図8に示す。図8の縦軸は細胞内SOD様活性(SSA)を示し、横軸はESRでの減衰速度定数(k)(mm/分)を示す。この結果、両者の相関が弱いが認められ(R=0.5221)、本発明のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体が生体由来の抗酸化物質の消費を抑制したことが示された。
また、再灌流の24時間後に頸静脈より採血した血中の肝障害マーカー(GOT、及びGPT)を測定した結果を図9にグラフで示す。図9の(A)はGOTの結果を示し、(B)はGPTの結果を示す。それぞれの縦軸は血中濃度(IU/L)を示し、横軸は左側から、薬剤無投与群の場合(IR(−))、本発明のPEG−Cat−MnTMPyP投与群の場合(IR(+))、MnTMPyP錯体投与群の場合(IR(+))、及びPEG修飾カタラーゼ投与群の場合(IR(+))をそれぞれ示す。各々の場合の血中濃度(IU/L)は、平均値±標準偏差(n=4)で示されており、図9中の*印は、p<0.05で有意差があったことを示している。
この結果、虚血再灌流を行うことで、有意にGOT、及びGPTの血中濃度が高値となった。これに対して、本発明のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体を投与することで、無投与群(IR(−))と比較して24時間後の時点でのGOT及びGPTの血中濃度は有意な差があった。しかし、MnTMPyP錯体の単独投与では、GOT及びGPTの血中濃度を下げることはできなかったが、PEG修飾カタラーゼの単独投与では、GPTの血中濃度だけは低下させることができた。これは、PEG修飾カタラーゼはGPTに関しては作用を示すものと考えられる。一方、本発明のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体は、GOT及びGPTに対して、これを有意に減じることができることが確認された。
さらに、再灌流の6時間後r〜24時間後の変化について解析を行った結果を図10に示す。図10の(A)はGOTの結果を示し、(B)はGPTの結果を示す。それぞれの縦軸は血中濃度(IU/L)を示し、横軸は左側から、6時間後の場合、24時間後の場合をそれぞれ示す。各時間における白抜き(左側)は薬剤無投与群の場合を示し、黒塗り(右側)は本発明のPEG−Cat−MnTMPyP投与群の場合をそれぞれ示す。各々の場合の血中濃度(IU/L)は、平均値±標準偏差(n=4)で示されており、図10中の*印は、p<0.05で有意差があったことを示している。
この結果、再灌流の6時間後r〜24時間後にかけて、無投与群(白抜き)では、GOT及びGPTのいずれもが上昇していた。これに対して、本発明のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体投与群では、無投与と比較して24時間後の時点でのGOT及びGPTで有意な差があった。さらに、再灌流の6時間後〜24時間後において、無投与群と比較してGOT及びGPTの上昇が有意に抑制されていた。これより、本発明のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体が、肝障害を抑制していることが明らかとなった。特に、再灌流の24時間後において有効であったことは、本発明のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体の血中滞留の長時間化により長期に渡った抗酸化効果の維持によるものと考えられる。これは、前記してきた本発明のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体の血中滞留延長と強く合致している。
このように、本発明のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体は、修飾され、かつ複合体化されたにもかかわらず、それぞれの活性サイトを活性なまま維持することができており、生体外だけでなく生体内においても優れたSOD活性とカタラーゼ活性とを同時に有しており、生体内における毒性の高い活性酸素種であるO及びHを速やかに水に還元することができ、優れた実用的な抗酸化剤との作用有している。さらに、本発明のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体は、親水性ポリマーで修飾されており、水溶液中における優れた分散性及び安定性を有し、血中においてもカタラーゼとカチオン性金属ポルフィリン錯体が強く結合した状態を維持ままであり、PEG修飾カタラーゼと同等又はそれ以上の長時間にわたる血中濃度を維持することもでき、長時間にわたる抗酸化作用を示すことができる。
このために、本発明のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体を、抗酸化組成物の有効成分として使用することができる。本発明の抗酸化組成物は、有効成分として本発明のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体を含有し、必要に応じて抗酸化作用を阻害することなく、かつ生体に対して有害でない各種の担体とを含有することができる。例えば、水、好ましくはリン酸バッファー、ホウ酸バッファー、塩酸トリスバッファーなどの緩衝水溶液を担体とした本発明のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体を含有する抗酸化組成物とすることができる。
本発明の抗酸化組成物は、疾患の予防や治療を目的とした医薬組成物として使用されるだけでなく、ストレスなどの解消のための健康志向型の保健組成物として、また化粧品組成物として使用することもできる。
また、本発明のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体は、抗酸化作用を有し、活性酸素種(ROS)の関与する各種疾患、例えば、脳虚血、心筋虚血、アルツハイマー症、パーキンソン症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、口腔内炎症、糖尿病、胃潰瘍、肝疾患、大腸炎、皮膚疾患、リウマチ、動脈硬化症などの予防や治療のために使用されるだけでなく、活性酸素種(ROS)の関与による制ガン剤や老化防止剤などとしても使用される。
本発明の医薬組成物としては、本発明のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体、及び製薬上許容される担体とからなる医薬組成物である。
ここで製薬上許容される担体としては、賦形剤、希釈剤、増量剤、崩壊剤、安定剤、保存剤、緩衝剤、乳化剤、芳香剤、着色剤、甘味剤、粘稠剤、矯味剤、溶解補助剤あるいはその他の医薬品用の添加剤等が挙げられる。そのような担体の一つ以上を用いることにより、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、注射剤、液剤、カプセル剤、トロー剤、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤あるいはシロップ剤等の形態の医薬組成物を調製することができる。これらの医薬組成物は、経口あるいは非経口的に投与することができるが、非経口投与が好ましい。好ましい非経口投与としては、静脈内投与、筋肉内投与、経粘膜投与などが挙げられる。非経口投与のためのその他の形態としては、一つまたはそれ以上の活性物質を含み、常法により処方される外用液剤、腸溶内投与のための坐剤およびペッサリーなどが含まれる。
投与量は、患者の年齢、性別、体重及び症状、治療効果、投与方法、処理時間、あるいは当該医薬組成物に含有される活性成分の種類などにより異なるが、通常成人一人当たり、一回につき10μg〜1000mg、又は10μg〜500mgの範囲で投与することが好ましい。しかしながら、投与量は種々の条件により変動するため、上記投与量より少ない量で十分な場合もあり、また上記の範囲を越える投与量が必要な場合もある。
例えば、注射剤は、処置を必要とするヒト患者に対し、1回の投与において1kg体重あたり、1μg〜10mg、好ましくは10μg〜10mgの割合で、1日あたり1回〜数回投与することができる。投与の形態としては、静脈内注射、皮下注射、皮内注射、筋肉内注射あるいは腹腔内注射のような医療上適当な投与形態が例示できる。好ましくは静脈内注射である。また、注射剤は、場合により、非水性の希釈剤(例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、エタノールのようなアルコール類など)、懸濁剤あるいは乳濁剤として調製することもできる。そのような注射剤の無菌化は、バクテリア保留フィルターを通す濾過滅菌、殺菌剤の配合または照射により行うことができる。注射剤は、用時調製の形態として製造することができる。即ち、凍結乾燥法などによって無菌の固体組成物とし、使用前に無菌の注射用蒸留水または他の溶媒に溶解して使用することができる。
本発明は、生体外だけでなく生体内においても優れたSOD活性とカタラーゼ活性とを同時に有しており、生体内における毒性の高い活性酸素種であるO及びHを速やかに水に還元することができ、優れた実用的な抗酸化剤との作用を有し、しかも、親水性ポリマーで修飾されており、水溶液中における優れた分散性及び安定性を有し、血中においてもカタラーゼとカチオン性金属ポルフィリン錯体が強く結合した状態を維持ままであり、PEG修飾カタラーゼと同等又はそれ以上の長時間にわたる血中濃度を維持することもでき、長時間にわたる抗酸化作用を示すことができるカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体を提供するものである。
本発明のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体は、修飾され、かつ複合体化されたにもかかわらず、それぞれの活性サイトを活性なまま維持することができていることができるという極めてユニークな性質を有するものである。
さらに、本発明のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体は、親水性ポリマーが結合した、親水性ポリマーで修飾されたカタラーゼと、カチオン性金属ポルフィリン錯体とを溶媒中で混合して、攪拌するだけで容易に製造することができるにもかかわらず、血中においてもカタラーゼとカチオン性金属ポルフィリン錯体が強く結合した状態を維持しており、しかも親水性ポリマーによる修飾により、水溶液中での分散性や安定性にも優れている。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
カチオン性金属ポルフィリン錯体の製造
特許文献7(特開2000−247978号公報)に記載の方法に準じて以下のとおり製造した。
(1)ポリフリン環の合成
三つロフラスコにあらかじめNaS0で脱水しておいたプロピオン酸300mlを入れ、窒素下、110℃でベンズアルデヒド7.5ml(0.0707もl)、ピリジン−4−アルデヒド12.5ml(0.1165mol)を入れ、撹拌、遮光した。
次いで、ピロール12.5ml(0.1863mol)をゆっくり滴下した。2時間反応させた後、溶媒を留去した。アンモニア水で中和し、また溶媒を留去した。100℃で減圧乾燥を行った。メタノールで洗浄濾過し、残査を減圧乾燥した。フラッシュカラム(固定相:シリカゲル、展開溶媒:塩化メチレン100%→メタノール5%/塩化メチレン95%)でポルフィリン(TPP、MPyTPP、DPyDPP、TPyMPP、TPyP)を分離精製した。収率は約2%だった。
(2)ポルフィリンのメチル化(メソ位のピリジル基のN原子の四級化)
三つ口フラスコにエタノール10%(3ml)/クロロホルム90%(27ml)の溶媒を入れ、各ポルフィリン(MPyTPPの場合0.077g(1.3×10−4Mol)、DPyDPPの場合0.235g(3.8×10−4mol)、TPyMPPの場合0.251g(3.9×10−4mol))を加えた。
メチル化するN原子の数の約4倍モル量のp−トルエンスルホン酸メチル(MPyTPPに対しては0.120ml(6.4×10−4mol)、DPyDPPに対しては0.57ml(3.1×10−3mol)、TPyMPPに対しては0.88ml(4.7×10−3mol))を加え、35℃、窒素下で遮光して終夜反応させた。溶媒を留去後、減圧乾燥を行いMMPyTPP(MPyTPPをメチル化したもの)、DPyDPP(DPyPPP をメチル化したもの)、TMPyMPP(TPyMPPをメチル化したもの)を得た。
TMPyMPPはこの後徴量のメタノールに溶かしてジエチルエーテル中で再沈させ、濾過後残渣を回収した。DMPyPPPの方は非常に難溶なので、この過程は行わなかった。十分に減圧乾燥を行った。またMMPyTPPは水に不溶であったので、ここでは使用することができなかった。各メチル化の確認はNMRで行った。収率は約45%だった。
H−NMR[270MHz、DMSO−d]: δ
DMPyDPP 9.48(8H、2,6−ピリジル)
9.20(8H、ピロール−β)
9.00(8H、3,5−ピリジル)
4.73(12H、N−メチル)
−3.10(2H、内部ピロール)
TMPyMPP 9.71−7.30(46H)
4.96(9H、N−メチル)
−2.74(2H、内部ピロール)
TMPyP 9.44−7.07(40H)
4.71(6H、N−メチル)
−2.90(2H、内部ピロール)
(3)ポルフィリンへの金属(Fe)導入
三つロフラスコにコハク酸緩衝液(pH4.O5)を150ml入れ、80℃、窒素下で、各ポルフィリン(DMPyDPPの場合は0.257g(2.7×10−4mol)、TMPyMPPの場合は0.207g(1.8×10−4mol))を加え、塩化鉄(FeCl)4水和物をポルフィリンの約10倍モル量(DMPyDPPに対して0.425g(2.1×10−3mol)、TMPyMPPに対して0.382g(1.9×10−3mol))入れ、1時間ごとにUV−Visスペクトルを測定し、ピークのシフト、吸光度から金属導入が確認できるまで反応させた。溶媒を留去後、カラム(固定相:イオン交換樹脂HP20、展開溶媒:水→水10%/メタノール90%)で遊離した鉄を分離し、溶媒を留去後減圧乾燥を行いFeDMPyDPP、FeTMPyMPPを得た。収率は約70%だった。
MnTMPyPの製造
500mlの三口フラスコにプロピオン酸250mLを取り、ジムロート冷却器を付け窒素雰囲気下で100℃に加熱、撹拌した。温度が一定になった後、4−ピリジンカルボアルデヒドを加えた。そこへあらかじめ蒸留しておいたピロールを少量づつ滴下して加えた。滴下終了後、バス温度110℃で、1時間還流させ、環化縮合反応を行った。
反応終了後、室温まで放冷後、溶媒を減圧で留去した。残渣にアンモニア水を少しずつ加えて中和した。中和後、浴槽式超音波処理によりフラスコ内のタール状のものを剥がし回収し、吸引ろ過した。THFにて不純物を溶解させ、吸引ろ過し、残渣を回収し、紫色粉末状のポルフィリンを得た。
300mlの三口フラスコに得られたポルフィリン0.2gを入れ、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)80mlに溶解させ、100℃に加熱撹拌した。p−トルエンスルホン酸メチル10mlを加え、120℃、窒素雰囲気下で8〜20時間反応させた。
UV−Vis測定によりメチル化の反応を追跡した。反応終了後、反応混合物を室温まで放冷させ、減圧で濃縮した。次いで、残渣に水/ジクロロメタンを加えて、水相を分離した。分離した水相にヘキサフルオロリン酸アンモニウム(NHPF)の過剰量を少量ずつ加え1時間撹拌した後、約2時間程度冷やし静置して、ポルフィリン錯体を水に難溶にして沈殿させた。沈殿物をろ過して回収し、乾燥した。
得られた沈殿物を少量のアセトンに溶解して、テトラエチルアンモニウムクロリド(TEAC)のアセトン飽和溶液を少量ずつ加え、1時間撹拌後、約2時間程度冷やし静置し、ポルフィリンを沈殿させた。沈殿物をろ過して、乾燥した。得られた沈殿物をメタノールで処理して、紫色粉末状のメチル化ポルフィリンを得た。
得られたメチル化したポルフィリン0.2gをメタノールに溶解し、窒素雰囲気下80℃に加熱した。これに、酢酸マンガン(II)4水和物を0.24g加え(ポルフィリンに対し20〜40倍量)反応させた。UVスペクトルで経時変化を追跡し、ソーレー帯のシフト、吸光度の変化が観られなくなった段階で反応を停止した。反応終了後、反応混合物を室温まで放冷した後、溶媒を減圧で留去し、次いで反応溶液と同量の水に溶解させ、ヘキサフルオロリン酸アンモニウム(NHPF)の過剰量を少量ずつ加え1時間撹拌した後、約2時間程度冷やし静置した。沈殿をろ過して、乾燥した。
得られた沈殿物を少量のアセトンに溶解し、これにテトラエチルアンモニウムクロリド(TEAC)のアセトン飽和溶液を少量ずつ加え、ポルフィリン錯体を沈殿させた。沈殿をろ過し、乾燥した。得られた沈殿物をメタノールで処理して紫色粉末状の目的のマンガンポルフィリン錯体を得た。
PEG修飾−カタラーゼの製造
カタラーゼ溶液(43,000単位)を50mMをpH9.1ホウ酸緩衝溶液中に希釈溶解した。翌日、上清を回収し0.22μフィルターでろ過した。次いで、UV/vis分光光度計を用いて(ε=3.24×10 波長405nm)、10−5Mのカタラーゼホウ酸緩衝溶液を調製した。調製後、分子量5,000のPEGを用いた分子量約5000のPEGの活性エステルmPEG−SPA(Methoxypolyethylene glycolyl N-succinimidyl propionate)(日本油脂製)(2mg/ml)を添加し、4℃で遮光下で終夜攪拌して反応させた。
反応終了後、反応混合物をゲルろ過クロマトグラフィー(担体:親水性ビニルポリマー(TOYOPEARL HW−55F(TOSOH社製))、溶出液:50mMリン酸緩衝溶液(pH7.4))で精製した。溶出された画分を、UV/vis分光光度計を使用して、カタラーゼのアミノ酸残基芳香族環の吸収波長(280nm)とヘム鉄極大吸収波長(405nm)を指標にして分離した。目的のPEG修飾−カタラーゼを含有する画分であることを、ゲルろ過クロマトグラフィーにより、分子量の増大、及び、未反応mPEG−SPAの除去を確認した。
検出:示差屈折率、移動相:0.1M NaNO、カラム:Shodex OHpak SB-804 HQ
得られた目的の画分を4℃で遮光下で保存した。
PEG−Cat−MnTMPyPの製造
実施例2で得られたPEG修飾−カタラーゼのPBS溶液(10−5〜10−6M)5mLを調製した。次いで、この溶液に、実施例2で得られたマンガンポルフィリン錯体(MnTMPyP)の水溶液(0.5mg/mL)1mLを添加した。添加後、速やかに攪拌し、4℃で遮光下で24時間攪拌した。
反応終了後、反応混合物をゲルろ過クロマトグラフィー(担体:親水性ビニルポリマー(TOYOPEARL HW−55F(TOSOH社製))、溶出液:リン酸緩衝溶液(pH7.4))で精製した。溶出された画分を、UV/vis分光光度計を使用して、カタラーゼのアミノ酸残基芳香族環の吸収波長(280nm)とヘム鉄極大吸収波長(405nm)、及びマンガンポルフィリン錯体(MnTMPyP)の極大吸収波長(462nm)を指標にして分離した。上記三つの極大吸収を有するフラクションを回収した。同時に、UV/visスペクトルよりPEG修飾−カタラーゼとマンガンポルフィリン錯体(MnTMPyP)とが結合した複合体の形成を確認した。また、ヘム鉄極大吸収波長(405nm)とマンガンポルフィリン錯体(MnTMPyP)の極大吸収波長(462nm)の吸光度比より、生成物の複合体組成比を決定した。
なお、各画分の吸光度を図2に示す。
精製したカタラーゼ−マンガンポルフィリン錯体(MnTMPyP)複合体を含有する画分を、4℃で遮光下で保存した。
の消去活性(SOD活性)の評価
実施例4で製造したPEG−Cat−MnTMPyPの50mMのHEPES緩衝溶液(pH8.1)を調製した。具体的には、UV/vis分光光度計を用いて462nmの吸収波長よりMnTMPyP換算濃度で、0、0.1、0.25、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、及び3.0μMのサンプルをそれぞれ調製した。
の発生源として、KOのDMSO飽和溶液を用いた。Applied Photophysics SX−18MVストップトフロー装置を用いてサンプルを溶解したHEPES緩衝溶液(pH=8.1)とKOのDMSO飽和溶液の二液の混合を行い、36℃におけるOの吸光度減衰を245nmで追跡した。吸光度減衰を基に偽一次反応として解析を行い、反応速度定数を得た。
この結果をグラフ化して図3に示す。
の消去活性(カタラーゼ活性)の評価
実施例4で製造したPEG−Cat−MnTMPyPの50mMのリン酸緩衝溶液(pH7.4)を調製した。具体的には、UV/vis分光光度計を用いてカタラーゼの405nm吸収波長より、0、2.5、5.0、7.5、10、25、50、及び100nMのサンプルをそれぞれ調製した。次いで、約30mMのHを調製した。具体的には、30%Hの0.4mLをリン酸緩衝溶液で100mLに希釈し、約30mMとした。各溶液調製後、サンプル溶液2mLをセル中で37℃で10分間インキュベートした。インキュベート後、H溶液を1mL添加し、速やかにHの吸収波長240nmの吸光度減少を追跡した。
この結果をグラフ化して図4に示す。
細胞系での抗酸化作用の評価
ヒト肝癌由来細胞HepG2を、抗生物質、NaHNO、10%FBS含有Eagle MEM中で培養(37℃、5%CO)した。
培養後、HepG2の細胞懸濁液を調製し、96ウエルのプレートに1×10細胞/ウエルで播種し、終夜インキュベートした。インキュベート後、あらかじめ調製した1×10−4〜5×10−2μMの実施例4で製造したPEG−Cat−MnTMPyPのPBS溶液を添加した。次いで、Hypoxanthine(0.5mM)とXanthine oxidase(100mU/mL)のPBS溶液を添加し、Oに暴露し細胞障害を構築した。ここで、4時間インキュベートした。インキュベート後、培地を除去し、PBSで洗浄を一回ずつ行い、再度培地を注入した。次いで、アラマーブルーを添加し6時間インキュベートした。インキュベート後、吸光度により細胞生存率を算出した。
同様な実験を、PEG修飾カタラーゼ、及びMnTMPyPについてそれぞれ行った。 これらの結果をグラフ化して図5に示す。
血中滞留時間の評価
2μMの実施例4で製造したPEG−Cat−MnTMPyP、2μMのPEG修飾カタラーゼ、及び0.5mg/mLのMnTMPyPのPBS溶液を調製した。
ラットは、約6月齢の体重500−600gのものを使用した。ラットへの作業時には、ジエチルエーテルの吸引により適時麻酔をかけた。また、特に断りのない限り、採血には27Gの針を用い、ヘパリンで抗凝固処理した。まず始めに、対照として、尾静脈より0.5〜1mL程度の採血を行った。ついで、各薬物を1mL/kg体重(kgw)投与した。そして、投与から15分、30分、1時間、3時間、6時間、24時間後に尾静脈より0.5〜1mL程度の採血を行った。血液サンプルは、エッペンドルフチューブ内に取り、4℃で、3000rpm、10分間で遠心分離を行った。得られた血清は、セラムチューブ内に分取し、凍結保存した。
次いで、凍結した血清を37℃恒温槽にて溶解した。溶解後、血清を200μLサンプル管に分取し、さらに0.1MのHNOを等量添加して、原子吸光測定装置にセットし、測定を行った。標準溶液として、0.1MのHNOを用いて、100μg/LのMn溶液を用いた。
結果を、図6に示す。
ラットの肝虚血再灌流障害モデルによる抗酸化作用の評価
2μMの実施例4で製造したPEG−Cat−MnTMPyP、2μMのPEG修飾カタラーゼ、0.5mg/mLのMnTMPyPを調製した。溶媒はすべてPBSを用いた。
ラットは、約6週齢の体重約200gのものを使用した。術開始前に、ネンブタールを腹腔内注射し、麻酔をかけた(1mL/kgw)。ラットが昏睡状態になったところで開腹し、調製した薬剤0.5mLを門脈より投与した。投与後、門脈、肝動脈、胆管をクランプし、肝臓の70%部位を虚血状態とした。75分間虚血を行った後、再開腹し、門脈より再度薬剤を0.5mL投与した。投与後、クランプを外して再灌流を行った。再灌流から6時間後、24時間後に頸静脈より採血を行った。また、再灌流から6時間後にESRの測定を行った。
ESRの測定は、300MHzのESR装置を用いて、ネンブタールで麻酔をしたラットの尾静脈に、Carbamoyl−PROXYL(270mM、pH 7.4、1μL/gw)を投与した。投与後、生体計測用セルにラットを固定し、肝臓がレゾネーターの中心に位置するようにESR装置に挿入した。投与1分後から測定を開始し、20秒おきに10分間断続的にESRスペクトルを測定した。
評価は、Carbamoyl−PROXYLの三本スペクトルの第一シグナル強度を計測し、これの減衰速度を観測することで行った。
ESRの測定結果を図7及び8に示す。
また、再灌流から6時間後は頸静脈から、再灌流から24時間後は大動脈から血液をヘパリン採血し、遠心(4℃, 3000rpm, 10min)により血清分離後、血液中肝障害マーカー(GOT、及びGPT)を測定した。
結果を図9及び10に示す。
本発明は、細胞毒性を有する活性酸素種(ROS)の消去作用を有する新規なカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体を提供するものであり、本発明のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体は、抗酸化作用を有し、医薬品や保健薬などの抗酸化組成物の有効成分として、活性酸素種(ROS)が関与する各種の疾患の治療や予防だけでなく、老化防止などにも有用であり、産業上の利用性可能性を有している。
図1は、本発明のカチオン性金属ポルフィリン錯体として前記したN−メチル−4−ピリジル基を有するMnTMPyPを例とし、また親水性ポリマーとしてポリエチレングリコール(PEG)を例として、本発明のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体を製造する反応式を模式的に示したものである。 図2は、本発明のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体のゲルろ過クロマトグラフィー(GFC)による各画分のUV/visスペクトルの結果を示すチャートである。図2の縦軸は吸光度を示し、横軸は波長(nm)を示す。図2の上段の実線は高分子量の画分を示し、中段の破線はより低分子量の画分を示し、下段の点線は低分子量の画分を示す。 図3は、本発明のPEG−Cat−MnTMPyPのSOD活性をストップトフロー法で測定したときの結果示すグラフである。図3の縦軸は速度定数(/秒)を示し、横軸は濃度(μM)を示す。 図4は、本発明のPEG−Cat−MnTMPyPのカタラーゼ活性をHのUV吸光法で測定したときの結果示すグラフである。図4の縦軸は速度定数(/秒)を示し、横軸は濃度(nM)を示す。 図5は、本発明のPEG−Cat−MnTMPyPの抗酸化活性をヒト肝癌由来細胞HepG2を用いた生体外試験で試験した結果を示すグラフである。図5の縦軸は生存率(%)を示し、横軸は試料の濃度(Log M)を示す。図5中の黒丸印(●)はMnTMPyP錯体を単体で用いた場合を示し、黒三角印(▲)は、PEG修飾カタラーゼを単体で用いた場合を示し、黒四角印(■)は本発明のPEG−Cat−MnTMPyPを用いた場合をそれぞれ示す。 図6は、本発明のPEG−Cat−MnTMPyP及びMnTMPyP錯体の単体をそれぞれラットに投与したときの、それぞれの血中濃度の変化を、投与後15分後の吸光度を100%とした経時的変化をグラフにして示したものである。図6の縦軸は血中残存率(%)を示し、横軸は投与後15分後からの経過時間(時間)を示す。図6の黒三角印(▲)は本発明のPEG−Cat−MnTMPyPの場合を示し、黒菱形印(◆)はMnTMPyP錯体単独の場合を示す。 図7は、ラットの虚血再灌流障害における本発明のPEG−Cat−MnTMPyPの有効性を、生体内(in vivo)の300MHzのESR測定により行った結果をグラフで示したものである。図7の縦軸はシグナル強度k(mm/分)を示し、横軸は左側から開腹処置だけをした場合(sham)、虚血再灌流を行ったが薬剤を投与しなかったコントロールの場合(IR(−))、虚血再灌流を行って薬剤を投与した場合(IR(+))をそれぞれ示す。各々の場合のシグナル強度は、平均値±標準偏差(n=5)で示されており、図6中の*印は、p<0.05で有意差があったことを示している。 図8は、本発明のPEG−Cat−MnTMPyPを用いて、ラットの虚血再灌流障害を300MHzのESR測定により行ったときの、ESRでの減衰速度定数(k)と細胞内SOD様活性(SSA)との相関をグラフ化して示したものである。図8の縦軸は細胞内SOD様活性(SSA)を示し、横軸はESRでの減衰速度定数(k)(mm/分)を示す。両者の相関は、R=0.5221であった。 図9は、本発明のPEG−Cat−MnTMPyPを用いて、ラットの虚血再灌流障害に対する作用を評価するために、再灌流から24時間後に採血した血中のGOT及びGPTの濃度を測定した結果を示すグラフである。図9の(A)はGOTの結果を示し、(B)はGPTの結果を示す。それぞれの縦軸は血中濃度(IU/L)を示し、横軸は左側から、薬剤無投与群の場合(IR(−))、本発明のPEG−Cat−MnTMPyP投与群の場合(IR(+))、MnTMPyP錯体投与群の場合(IR(+))、及びPEG修飾カタラーゼ投与群の場合(IR(+))をそれぞれ示す。各々の場合の血中濃度(IU/L)は、平均値±標準偏差(n=4)で示されており、図9中の*印は、p<0.05で有意差があったことを示している。 図10は、本発明のPEG−Cat−MnTMPyPを用いて、ラットの虚血再灌流障害に対する作用を評価するために、再灌流から6時間後及び24時間後に採血した血中のGOT及びGPTの濃度を測定した結果を示すグラフである。図10の(A)はGOTの結果を示し、(B)はGPTの結果を示す。それぞれの縦軸は血中濃度(IU/L)を示し、横軸は左側から、6時間後の場合、24時間後の場合をそれぞれ示す。各時間における白抜き(左側)は薬剤無投与群の場合を示し、黒塗り(右側)は本発明のPEG−Cat−MnTMPyP投与群の場合をそれぞれ示す。各々の場合の血中濃度(IU/L)は、平均値±標準偏差(n=4)で示されており、図10中の*印は、p<0.05で有意差があったことを示している。

Claims (10)

  1. 親水性ポリマーが結合したカタラーゼと、次の一般式(1)
    Figure 2007075058
    (式中、Mは錯体を形成するための金属原子を示し、Ar、Ar、Ar、及び、Arはそれぞれ独立して置換基を有してもよい炭素環式又は複素環式芳香族基を示し、Ar、Ar、Ar、及び、Arの少なくとも1個はカチオン性の基を有する芳香族基である。)
    で表されるカチオン性金属ポルフィリン錯体となるカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体。
  2. カチオン性金属ポルフィリン錯体の一般式(1)におけるMが、鉄原子、銅原子又はマンガン原子であるカチオン性金属ポルフィリン錯体である請求項1に記載のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体。
  3. カチオン性金属ポルフィリン錯体の一般式(1)におけるAr、Ar、Ar、及び、Arの少なくともひとつが、N−低級アルキル−4−ピリジル基であるカチオン性金属ポルフィリン錯体である請求項1又は2に記載のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体。
  4. N−低級アルキル−4−ピリジル基が、N−メチル−4−ピリジル基である請求項3に記載のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体。
  5. カチオン性金属ポルフィリン錯体の一般式(1)におけるAr、Ar、Ar、及び、Arの少なくともひとつが、4−N,N,N−トリ低級アルキルアミノフェニル基であるカチオン性金属ポルフィリン錯体である請求項1又は2に記載のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体。
  6. 4−N,N,N−トリ低級アルキルアミノフェニル基が、4−N,N,N−トリメチルアミノフェニル基である請求項5に記載のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体。
  7. 親水性ポリマーが、ポリエチレングリコールである請求項1〜6のいずれかに記載のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体。
  8. カタラーゼが、ヒト由来のカタラーゼである請求項1〜7のいずれかに記載のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体を含有してなる抗酸化組成物。
  10. 請求項1〜8のいずれかに記載のカタラーゼ金属ポルフィリン錯体複合体を含有してなる医薬組成物。

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