JP2007061672A - マイクロ流体デバイスおよびこれを用いたタンパク質結晶化装置 - Google Patents

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修三 平原
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Abstract

【課題】X線解析用の試料として使用可能な品質と大きさのタンパク質結晶を、少量のタンパク質溶液を用いて、高い結晶化成功率と短い結晶成長時間で生成するマイクロ流体デバイスおよびタンパク質結晶化装置を提供する。
【解決手段】過飽和タンパク質溶液31と沈殿剤溶液32を、マイクロ流路の周囲に電極17を備えたマイクロ流体デバイスへ導入し、交流電界を、ある特定の周波数を単独で、あるいは異なる複数の周波数を重畳して印加しながらタンパク質を結晶化する。
【選択図】図7

Description

本発明の技術分野は、タンパク質構造を解析するためのX線回折に適したタンパク質結晶生成と、タンパク質結晶化条件の網羅的探索(スクリーニング)を行う技術に係わり、特に、マイクロ流路内でタンパク質の過飽和溶液からタンパク質結晶を生成するマイクロ流体デバイスおよびこれを用いたタンパク質結晶化装置に関する。
バイオ研究においてはヒトゲノムの完全解読が終了し、今後はゲノム情報から作られる様々なタンパク質の機能や構造を解明しなければならない段階に入った。タンパク質構造の解析には、結晶化したタンパク質のX線回折像から推定する手法が最も多く使われている。しかし従来のタンパク質の結晶化方法は結晶化の成功率が低く、タンパク質の違いに応じて結晶化を促進するための沈殿剤の種類や沈殿剤溶液濃度、タンパク質溶液濃度、環境条件などを数多く試験しなければならず、結晶化条件のスクリーニングに長い時間と手間がかかっていた。
従来から用いられている結晶化方法にはハンギングドロップ法、シッティングドロップ法などの気液界面で生じる濃度勾配を利用する蒸気拡散法が最も多く使われており、その他にも試料溶液と混ざらない液体内で結晶化させるバッチ法、ゲル内で結晶化させるゲル法などがある。しかし上記のいずれの方法も、結果を見るには2、3ヶ月の時間が掛かり、結晶化に成功する確率も非常に低い。それだけでなく容器壁への付着や沈降、対流などが、溶液供給の偏りや歪による雑晶化を招き、特に蒸気拡散法では気液界面にタンパク質の酸化物を生成するなど、品質の良い結晶の生成が難しいという問題がある。
結晶化速度が遅いという課題を改善するために、特許文献1に開示された方法が提案されている。この方法は、突堤部分を有する半導体で形成したチャンバー内にタンパク質溶液を満たし、直流電界を印加した突堤部分にタンパク質分子を静電気力で集積させて、結晶生成速度を向上させている。しかしこの方法は、接触している固体面で強い歪を生じるために生成結晶の品質が劣る欠点があり、付着面から結晶を剥がす際に損傷を受けやすいなどの課題がある。
また特許文献2に開示されている自由界面拡散法は、使用する試料の量が少なく、対流(結晶品質低下の要因)が生じないというマイクロ流路の特徴を活かした方法である。この方法では、マイクロ流路を遮断するゲートが設けられたマイクロ流体デバイスが用いられ、ゲートを境にして一方からタンパク質溶液を、もう一方から沈殿剤溶液を導入した後に一斉にゲートを開放し、自由界面から2つの液体が拡散しながら混合する過程での結晶核生成を探索する。この方法により2、3日でスクリーニング結果が得られ、結晶化の成功率も2倍程度向上することが報告されている。しかしマイクロ流路内では、生成した結晶核の取り出しや移動が難しく、100μm以下というマイクロ流路の断面サイズに制限されて大きな結晶が作れないという課題がある。
WO 2001/86037(PCT/JP01/03782) WO 2004/094020(PCT/US2004/012071) K. V. I. S. Kaler and T. B. Jones: "Dielectrophoretic spectra of single cells determined by feedback−controlled levitation", Biophysical Journal, vol.57, pp.173−182 (1990). J. Barthel, K. Bachhuber, R. Buchner, and H. Hetzenauer, "Dielectric Spectra of Some Common Solvents in the Microwave Region. Water and Lower Alcohols", Chemical Physics Letters, vol.165, no.4, pp.369−373 (1990). N. Miura, N. Asaka, N. Shinyashiki, and S. Mashimo:"Microwave Dielectric Study on Bound Water of Globule Protein in Aqueous Solution", Biopolymers, vol.34, Issue 3, pp.357−364 (1994).
以上の背景技術で述べたように、従来からのタンパク質の結晶生成方法では、網羅的なパラメータ探索を行っても結晶化に成功する確率が低く、結晶が得られてもX線回折で構造解析が可能な品質ではないことも多く、これらの結果を知るまでに長い時間がかかるという課題がある。特に、マイクロ流路内で結晶化させる自由界面拡散法では、生成した結晶核の移動や取り出しが難しく、マイクロ流路幅以上の大きな結晶は造れないという課題がある。
本発明は、流路の周囲に電極を備えたマイクロ流体デバイスを用い、流路内へ過飽和タンパク質溶液を導入し、流路の周囲に備えた電極から交流電界を印加しながらタンパク質を結晶化する。そのときに印加する交流電界として、ある特定の周波数を単独で、あるいは異なる複数の周波数を重畳して印加することにより、上記、課題を解決あるいは改善するものである。
本発明によるマイクロ流体デバイスとタンパク質結晶化装置では、流路の周囲の電極から作用する誘電泳動力により、生成した結晶核を液体中に浮遊させた状態で捕獲、保持ができるため、流路壁への結晶の沈降や付着を防止するだけでなく、流れを利用して周囲の溶液だけを入れ換えることや破損させずに結晶を運搬すること、さらには取り出すことが可能になる。
また本発明による交流電界の印加は、結晶核やタンパク質分子の誘電配向(電界配向)、タンパク質分子の回転、タンパク質分子を囲む水和水の解離、振動励起による発熱などの作用を、周波数帯を分けて個別に、あるいは組み合わせて利用できる。これにより、結晶化成功率や生成結晶品質の向上と結晶成長時間の短縮化が実現する。
また本発明は、従来のタンパク質結晶化パラメータであるタンパク質溶液濃度、沈殿剤溶液濃度、沈殿剤の種類などに、印加交流電界の強度と周波数という、設定や変更が容易で自動化にも適した新規のパラメータを追加する。したがって、今まで結晶化が困難だった試料に対して、新たなパラメータを提供することができる。
以下に述べるように本発明により、使用するタンパク質溶液の少量化だけでなく、X線解析用の試料として使うことが可能な品質と大きさのタンパク質結晶を、高い結晶化成功率と短い結晶成長時間で生成するマイクロ流体デバイスおよびタンパク質結晶化装置を実現する。
まず、本発明の原理の理解に必要な、誘電泳動力について説明する。非特許文献1によれば、誘電泳動力(F)は、粒子(複素誘電率ε)が分散された流体中(複素誘電率ε)に電界勾配が存在する場合に発生し、電界の極性(電気力線の向き)には関係なく粒子に作用する引力(あるいは斥力)であり
F=2πrε0ε・Re[CM(ω)]・grad|E| … 式1
ε:真空の誘電率、r:粒子の半径、ε:流体の比誘電率、E:電界ベクトル
と表される。式1から、誘電泳動力(F)は粒子半径rの3乗(または体積)と、クラジウス−モソッティ係数CM(ω)={(ε−ε)/(ε+2ε)}の実数部であるRe[CM(ω)]と、電界の2乗の勾配である∇|E| の3つの項の積に比例することが分かる。
一般には、誘電泳動力を発生するために電極へ印加する電圧として、周波数が約50Hzから50MHzの間の交流が使用される。この周波数範囲の交流電圧を用いると、粒子が帯電している場合に作用する電気泳動力を時間平均の効果によりキャンセルすることができる。また、電極が直に流体に接触している場合に生じる(電気分解などの)電極反応を抑制することができる。
流体を20°Cの水とすれば比誘電率は約78であり、通常の生体物質では多くても比誘電率は10以下であるから、水中ではほとんどの物質に、電極から反発する力(斥力)である負の誘電泳動力(CM(ω)<0)が働く。したがって、流路の周囲に設置した複数の電極から誘電泳動力を作用させると、水をベースとする流体内の粒子は電極からの反発力に押されて流路の中心付近へ移動し、電界の形状によっては一定位置にトラップされる。
しかし、式1に示したように体積に相当するrに比例する項があるために、試料のサイズが小さくなるにつれて誘電泳動力は急激に小さくなる。200nm以下のサイズになると、熱運動(ブラウン運動)に負けて集束の効果が小さくなり、15nm以下(ほとんどのタンパク質が含まれる)となると、ほとんど誘電泳動力の効果が見られなくなる。
次に、これも本発明の原理説明に必要な、水の誘電損失について述べる。図1に示したグラフは非特許文献2に掲載された水の誘電損失(実線)と比誘電率(点線)のスペクトルであり、誘電損失は周波数20GHzにピークを持ち、バンド幅の広い吸収特性を持つことが示されている。この特性はγ分散と呼ばれ、γ分散周波数を境に水の比誘電率が低周波側における78程度から高周波側における4.5程度にまで低下する。また、交流電界内でγ分散により水が発熱する性質は、電子レンジなどの調理器として利用されている。
非特許文献3には、タンパク質水溶液の誘電損失が報告されている。その中の一例として、タンパク質ミオグロビン(分子量17.8KDa)の5%(重量%)水溶液に対する誘電損失(実線)のスペクトル測定値を、図2に示す。この測定結果によれば、6MHz付近に大きな吸収ピーク(図2の矢印A)が観測されるが、このピークの周波数はタンパク質分子の大きさに依存して移動することからタンパク質自身の回転であると推定されている。また同じデータの解析として、水和水分子のγ分散周波数は100MHz(点線)となることと、水和する水分子の数はタンパク質分子の表面積に相関があることが示されている。
従来からのタンパク質の結晶生成技術や結晶化研究においては、結晶化プロセス内に交流電界を作用させる考えは無かった。我々は、以下に指摘するとおり、これらの交流電界の作用が、タンパク質水溶液からタンパク質結晶を生成する際に重要な役割を果たすことを発見した。
まず第1に、誘電泳動力であるが、この作用は粒子の径の3乗に比例する力であり、タンパク質分子に対しては力が余りに小さすぎる。しかし、タンパク質水溶液から結晶核が生成され、その大きさが200nm程度となると、充分に大きな力となる。つまり結晶核生成プロセスに続く結晶成長プロセスにおいては、結晶を浮遊状態のまま特定の位置に集中、あるいは捕捉することが可能になる。
第2に、タンパク質分子どうしが近づく、あるいはタンパク質分子が結晶表面に吸着する過程において、タンパク質に水和した水分子は障壁となるため、水和水を解離するエネルギーが必要である。したがって水和水の振動だけを励起する周波数(図2の矢印B)の交流印加は、結晶核生成プロセス、結晶成長プロセスのいずれの段階に対しても結晶化の推進力として作用する。
第3に、溶液中に浮遊するタンパク質分子の移動は拡散現象であり、その推進力は濃度勾配であるため、タンパク質分子が活発に動くほど結晶表面に到達する時間は早くなる。また、結晶表面に吸着したタンパク質分子は、表面拡散のランダムウォークで活発に動くほど結晶成長の最前線であるキンク位置へ到達する可能性が高くなる。したがってタンパク質分子の回転を誘起する周波数(図2の矢印A)の交流印加は、結晶成長プロセスに対して推進力として作用する。
第4に、タンパク質分子は水溶液内で熱エネルギーにより活発に動き回る状態(ブラウン運動)ではあるが、それでも回転周波数よりも充分に低い周波数の交流電界を印加されると、誘電分極により電気力線に沿って整列(電界配向)する機会や時間が確率的に増加する。多数の結晶核が局所的に集中した状態でも同様に、交流電界を印加されると結晶核が整列する確率が増大し、雑晶化、アモルファス化には至らずに一体化し、単結晶として成長する。つまり充分に低い周波数の交流電界の印加は、タンパク質分子および結晶核のエントロピーを減少する方向に作用し、結晶化を推進する効果がある。
そして第5に、タンパク質水溶液にタンパク質分子が回転する周波数、あるいはタンパク質分子に束縛された水和水を振動させる周波数の、強い交流電界を印加すると、誘電損失に相当する発熱が生じる。しかしマイクロ流体では、流体内の温度はほとんど周囲温度に一致するという特徴があるので、マイクロ流路内の強い交流電界は局所的に僅かな温度勾配あるいは短時間の小さな昇温ストレスなどの作用を与える。したがって強い交流電界の印加は、従来の結晶化方法では観測できなかった未知の効果を発現する可能性もある。
以上の原理に基づき考案された本発明によるタンパク質結晶化装置の全体図を図3に、その中心となる本発明によるマイクロ流体デバイス10の平面図を図4に示して、その構成と動作について説明する。
本発明のマイクロ流体デバイス10における流入口の1つである沈殿剤溶液流入ウェル13には、チューブを介して沈殿剤溶液供給ポンプ25が接続され、沈殿剤溶液供給ポンプ25から沈殿剤溶液32が供給される。マイクロ流体デバイス10の流出ウェル19にはチューブを介して混合液回収ポンプ26が接続されている。
マイクロ流体デバイス10の内部は、ピペットによる点滴で試料を注入するタンパク質過飽和溶液注入ウェル12と、前述の沈殿剤溶液流入ウェル13の2つの流入口がある。プロセス制御装置24からの指令によりプロセスがスタートすると、流入したタンパク質過飽和溶液と沈殿剤溶液の2つの液体は、途中から合流、混合されてマイクロ流路11の終端である流出ウェル19の方向へ流れる。このときのタンパク質過飽和溶液と沈殿剤溶液の混合比は、おおよそ沈殿剤溶液供給ポンプ25からの圧力(正圧)と、混合液回収ポンプ26からの吸引力(負圧)の差で決まり、また流れの速度は2つのポンプの圧力差とマイクロ流路の粘性抗力で決まる。
2つの液体は合流し、上流側電極群17に囲まれた試料液混合流路14を流れる間に混合し、もし結晶化に適した条件であれば結晶核34が生成される。生成した結晶核34は下流側電極群18との境界に存在する結晶核トラップ領域15でトラップ、あるいは観察状況やプログラムされたプロセスタイミングに応じてリリースされ、下流側電極群18に囲まれた結晶核運搬流路16を流れ、流出ウェル19へと向かう。
試料液混合流路14と結晶核トラップ領域15の状況は、顕微鏡21を通してイメージセンサーで電気信号に変換され、画像解析装置23にて結晶核の有無や大きさの画像認識、さらには位置、時間などの各種条件とともにデータとして蓄積される。プロセス制御装置24は、画像解析装置23からの情報による状況判断も加えながら、プログラミングされたプロセスを運行し、沈殿剤溶液供給ポンプ25や混合液回収ポンプ26、交流電源20を制御する。
交流電源20は、本発明の重要な働きを担う部分である上流側電極群17や下流側電極群18へ交流電圧を供給するもので、各種の交流周波数の発生、発生した交流の合成、そして電極へ電圧を供給するための電力増幅の機能を有し、そのシークエンスはプロセス制御装置24により制御される。
交流電源20から出力される交流の周波数は、図2で示したタンパク質ミオグロビンの誘電損失特性を例にして、水和水の励起周波数を100MHz、タンパク質分子の回転周波数を8MHzとし、さらに本実施例では誘電泳動用として水和水励起やタンパク質分子回転への影響が無い500KHzを使用する。これら3つの周波数のうち、誘電泳動用の周波数については、位相が180°異なる2相の交流出力が必要となる。本実施例の中ではこれを、図6(a)に示したようにゼロ相とπ相として区別する。さらに図6(b)には、500KHzの誘電泳動用周波数のゼロ相にタンパク質分子回転用周波数である8MHzを重畳した場合の、交流電源出力波形を示す。
図7は、上で述べた交流電源20の電圧出力を上流側電極群17に印加しながら、試料液混合流路14で結晶核を生成する過程を示した図である。図7には示されていない上流側で2つの流路から流入したタンパク質過飽和溶液31と沈殿剤溶液32は、合流した後、界面を形成する2相流になって流れる。流れの速度は非常に遅く設定されていて、2相流はゆっくりと流れながら、界面から徐々にお互いの領域内へ拡散し、混合が進行する。
2つの溶液の混合比は、前述したとおり、沈殿剤溶液供給ポンプ25と混合液回収ポンプ26の2つのポンプで制御できる。この機能を利用して、結晶化条件スクリーニング用に、時間と共に徐々に混合比が変化するプロセスがプログラミングされている。したがって流れの方向の相対位置あるいは一定の場所を通過する時間は、混合液33の混合比に対応する。もし結晶化に適した条件が設定されていた場合には、適切な混合比となる流れ内の位置で結晶核が生成される。
結晶化条件のスクリーニングは、印加する交流に重畳された3つの周波数のうち、水和水励起周波数(100MHz)とタンパク質分子回転周波数(8MHz)の2つの周波数の振幅値をパラメータにして行う。これらのパラメータは時間的にも変更が自由にできるので、数多くの流路をアレイ状に並べたデバイスを用いなくても、時間的にパラメータをシフトさせるスクリーニングを行うことが可能である。また、誘電泳動用も含めた全周波数をパラメータとして、さらには振幅値と周波数を共にパラメータとしてスクリーニングを行うことも可能である。
結晶核運搬流路16で、運良く結晶核が生成されると、印加交流電圧に重畳された3つの周波数のうち、誘電泳動用の周波数(500KHz)成分による誘電泳動力が、上流側電極群17から結晶核に作用する。結晶核は、流路周囲の4方向からの反発力に押され、力がバランスする流路断面の中央位置まで移動して保持され、ゆっくりした流れと共に進み、結晶核トラップ領域15へ運ばれる。
結晶核トラップ領域15では、図8(a)と図8(b)に示すように上流側電極群17と下流側電極群18で生ずる8方向からの反発力を受け、中央位置にトラップされる。この状態で、次の3つプロセスを選択することができる。(1)そのままトラップを解き、結晶核運搬流路16へ移動させる。(2)トラップしたまま流れを止め、同じ液体内で(マイクロサイズの大きさになるまで)成長させる。(3)トラップしたまま周囲の液体だけを入れ換える。周囲の液体の入れ換えは、例えば、結晶成長に適した低めの過飽和濃度の溶液に、あるいは逆に、短時間成長を目指して高めの過飽和濃度の溶液に、さらには骸晶などの低品質結晶が生成したときには周囲部分を削ぎ落とすために低濃度溶液に入れ換えることも可能である。
結晶核トラップ領域15から結晶核をリリースするには、一定時間の間、周囲を囲む8つの電極に印加する電圧を低下させ、流れから受ける粘性抗力よりも誘電泳動力が弱くなる電圧値にすれば良い。図9(a)は、トラップから抜け、結晶核運搬流路16を流れとともに移動する結晶核を示す。結晶核運搬流路16では、試料液混合流路14と同様、流路を囲む4電極で構成される下流側電極群18からの誘電泳動力(反発力)が作用し、結晶核34は図9(b)に示したように、流路断面のほぼ中央の位置を維持しながら流れる。ただし、結晶核運搬流路16を流れる間だけ流れを速くする場合には、結晶核の沈降や壁への接近は起こらないので、下流側電極群18への電圧印加をしなくても構わない。
流出ウェルは、100μm程度の流路幅に比べて、一般にはかなり大きく作られているので、流出ウェル19まで運び出すことができた結晶核は、スポイトなどにより容易に取り出すことができる。一旦、結晶核ができれば、それを種にした結晶成長は比較的易しいプロセスとなる。したがって、別に用意した容器へ結晶核を移動して、X線回折像による構造解析に必要とされる200μmから2mmの大きさまで、結晶成長させることができる。あるいは、流出ウェル19の中で結晶成長を行うことも可能である。後者の方法であれば、X線装置へ設置する凍結試料を作るプロセスまで含めた、オールインワンのタンパク質結晶化装置も実現できる。
以上のようにして、運良く生成された結晶核を、マイクロ流路壁への付着や接触による損傷なしに取り出せるマイクロ流体デバイスが実現し、これを用いたタンパク質結晶化装置により、タンパク質結晶核生成の成功率向上と結晶成長時間の短縮、生成結晶品質の向上を実現することができる。
(変形例)
本発明の実施例では、送液を2つのポンプと大気圧に通じる開放ウェルで行ったが、送液は落差で行っても良い。落差を使う場合にはポンプで注意しなければならない振動などの問題を回避することができる。
本発明の実施例では、流入ウェルの数をタンパク質過飽和溶液注入ウェル12と沈殿剤溶液流入ウェル13の2つとしたが、3つあるいはそれ以上であっても構わない。例えば3つ目の流入ウェルとして、バッファ液の流入口を新たに設置すれば、結晶化条件スクリーニングのパラメータとしての濃度調整の自由度が増大する。
また本発明の実施例では、上流側電極群17と下流側電極群18の2つの電極群としたが、本発明の意図によれば、電極群の数や配置について制限を設けるものでは無い。例えば、生成結晶核を流れに逆らって静止させる必要がなければ、1つの電極群だけでも壁への付着や接触の回避は可能であり、また、2種類以上の周波数の重畳も可能である。
また本発明の実施例では、イメージセンサー22や画像解析装置23、プロセス制御装置24などを用いて自動化が可能な構成としたが、人手による観測、判断、制御を行うシステムであっても構わない。結晶化が非常に難しいタンパク質の場合には、その方が微妙な設定や確実な実験ができる場合もある。
また本発明の実施例では、1チップ上に1ラインの結晶化流路しか設けていない例を示したが、もちろん複数の流路が並列アレイ状に並ぶチップであっても良い。
以上述べたように、本発明によるマイクロ流体デバイスおよびこれを用いたタンパク質結晶化装置は、タンパク質の過飽和溶液試料から最適な結晶化条件を網羅的に探索する用途、さらにはX線回折像からタンパク質の構造を解析するために使用するタンパク質結晶を生成する用途に適している。
本発明の原理に関わる水の誘電損失スペクトル図 本発明の原理に関わるタンパク質水溶液の誘電損失スペクトル図 本発明によるタンパク質結晶化装置の全体図 本発明によるマイクロ流体デバイスの平面図 マイクロ流路と電極の配置を示す立体図 電極に印加する交流電圧の波形図 上流側流路での結晶核生成を説明する図 タンパク質結晶核のトラップ状態を説明する図 下流側流路での結晶核運搬を説明する図
符号の説明
10 マイクロ流体デバイス
11 マイクロ流路
12 タンパク質過飽和溶液注入ウェル
13 沈殿剤溶液流入ウェル
14 試料液混合流路
15 結晶核トラップ領域
16 結晶核運搬流路
17 上流側電極群
18 下流側電極群
19 流出ウェル
20 交流電源
21 顕微鏡
22 イメージセンサー
23 画像解析装置
24 プロセス制御装置
25 沈殿剤溶液供給ポンプ
26 混合液回収ポンプ
31 タンパク質過飽和溶液
32 沈殿剤溶液
33 混合液
34 結晶核
35 回収混合液

Claims (4)

  1. タンパク質の過飽和溶液をマイクロ流路に導入してタンパク質の結晶化を行うマイクロ流体デバイスであって、前記マイクロ流路の断面を囲む複数の電極を備え、前記電極に交流電圧を印加することを特徴とするマイクロ流体デバイス
  2. 請求項1における電極に印加する交流電圧は、1MHz以下である第1の周波数と、1MHzより高く30MHz以下である第2の周波数と、30MHzより高く1GHz以下である第3の周波数の、3つの周波数の2つ以上を重畳して印加することを特徴とするタンパク質結晶化装置
  3. 請求項1のマイクロ流体デバイスを用いたタンパク質結晶化装置であって、生成したタンパク質結晶を、前記交流電圧を印加した電極から作用する誘電泳動力により浮遊状態で保持し、流路内の流体と共に移動させることを特徴とするタンパク質結晶化装置
  4. 請求項1のマイクロ流体デバイスを用いたタンパク質結晶化装置であって、生成したタンパク質結晶を、前記交流電圧を印加した電極から作用する誘電泳動力により浮遊状態で保持し、流路内の流体だけを入れ換えることを特徴とするタンパク質結晶化装置
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WO2014064260A1 (en) * 2012-10-25 2014-05-01 Wmcs Technologies Limited Improvement in crystallisation and crystal growth
US8945303B2 (en) 2009-03-03 2015-02-03 Institute Of National Colleges Of Technology, Japan Device for crystallizing biopolymer, cell of solution for crystallizing biopolymer, method for controlling alignment of biopolymer, method for crystallizing biopolymer and biopolymer crystal
CN106345543A (zh) * 2016-09-13 2017-01-25 哈尔滨工业大学 一种基于固定电势的感应电荷电渗的微混合芯片

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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