JP2007050869A - 可変ピッチプロペラ - Google Patents
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Abstract
【課題】 従来の可変ピッチプロペラの構造の複雑さや重量増加の問題を解決し、ホビー用無線操縦飛行機や超軽量飛行機等に適した可変ピッチプロペラを実現する。
【解決手段】 ピッチ変更軸はブレードの空力合成力の圧力中心O点よりもwの距離だけ前縁側に位置し、ブレード130に羽根角を減少させる空力的モーメントを働かせる。回動抑制部140はシリンダ141内のコイルスプリング150の働きにより羽根角の減少量に応じて増加する機械的モーメントをブレード130に与える。巡航飛行時(a)では小さな空力的モーメントMacに対して小さな機械的モーメントMmcで釣り合い、大きな羽根角βcとなる。上昇飛行時(b)では大きな空力的モーメントMahに対して大きな機械的モーメントMmhで釣り合い、小さな羽根角βhとなる。
【選択図】図2
【解決手段】 ピッチ変更軸はブレードの空力合成力の圧力中心O点よりもwの距離だけ前縁側に位置し、ブレード130に羽根角を減少させる空力的モーメントを働かせる。回動抑制部140はシリンダ141内のコイルスプリング150の働きにより羽根角の減少量に応じて増加する機械的モーメントをブレード130に与える。巡航飛行時(a)では小さな空力的モーメントMacに対して小さな機械的モーメントMmcで釣り合い、大きな羽根角βcとなる。上昇飛行時(b)では大きな空力的モーメントMahに対して大きな機械的モーメントMmhで釣り合い、小さな羽根角βhとなる。
【選択図】図2
Description
本発明は飛行機の可変ピッチプロペラに関する。
プロペラ飛行機においては原動機の動力を効率良く推力に変換するために可変ピッチプロペラが用いられている。可変ピッチプロペラは離陸、上昇、巡航といった飛行状態によって異なる速度に応じてプロペラ回転面に対するブレードの角度即ち羽根角を変化させ、プロペラ効率や原動機の効率を良好な状態に保つ。主な方式としてはプロペラの負荷トルクが増加して回転速度が低下した時はブレードの羽根角を小さくして負荷トルクを下げ、逆に負荷トルクが減少して回転速度が増加した時は羽根角を大きくして負荷トルクを上げ、原動機の回転速度が負荷によって大きく変わることを抑制する。このような制御を自動的に行う可変ピッチプロペラは定速プロペラとも呼ばれている。可変ピッチプロペラでは飛行速度に応じてブレードの空気流に対する迎え角を良好な状態に保つことができ、空力特性上の効率を良くすることができる。また、自動車や航空機に広く用いられているレシプロエンジンは、回転速度によらずトルクがほぼ一定の特性であるため、このような制御を行なわない固定ピッチプロペラではエンジンの過回転やノッキングといった現象が発生しやすい。そのような理由から、定速プロペラは一部の小型機や超軽量飛行機を除き、ほとんどのレシプロエンジンのプロペラ機に採用されている。
さて、ホビー用の無線操縦飛行機の動力としては近年、静粛性や保守の手軽さから直流モータが主流になりつつある。直流モータを動力源とするプロペラ機においてもプロペラブレードの羽根角を推進速度の変化に応じて最適な角度に変化させた方がプロペラの空力特性の点で高効率となることはエンジン機の場合と同様であるが、直流モータのトルク対回転速度の特性はレシプロエンジンとは大きく異なる。直流モータは一定の直流電圧を加えた状態では無負荷時で最大回転速度となり、負荷トルクの増加に伴って回転速度は直線的に減少し、回転が停止した状態で最大トルクとなるという特性を有している。そのため、前進速度が変化してプロペラの負荷が増減しても、特別な操作をすることなくトルクがそれに追随するため、過回転やノッキングといったレシプロエンジンに発生するような障害は起こり得ない。そのような理由もあって、電動の無線操縦飛行機においては可変ピッチプロペラの必要性は重視されてこなかった。
しかしながら、コアレスモータやブラシレスモータ等の高性能な小型モータや、リチウムポリマ電池といった軽量かつ高容量の二次電池が出現するに至って、電動の無線操縦飛行機の性能は曲技飛行もやりこなすことが可能な水準に達しつつある。曲技飛行においては大きな上昇性能を必要とし、プロペラに要求される最大推力は機体総重量にも匹敵する。このような性能を固定ピッチのプロペラで満たそうとすると、プロペラブレードの空力特性が悪化して駆動効率が著しく低下するため、電池の消耗を大きくし飛行可能時間が短縮される。また、直流モータには過大な電力消費が要求され、最悪の場合は直流モータの焼損を招く。
このような点から電動の無線操縦飛行機においても可変ピッチプロペラの必要性が高まっているが、従来の可変ピッチプロペラはブレードの羽根角を変化させるための回動機構や遠心力に感応して羽根角を一定に保つための機構など複雑な機構が要求される。また、多くの部分に金属材料を用いるため重量増や製造コスト増を招く。更には、手軽に楽しむことを目的とするホビー用の無線操縦飛行機においては地上への衝突頻度も高く、精密な機構の搭載は損傷の可能性も増大させる。この他、従来の可変ピッチプロペラは定速回転を基本としているため、回転速度の制御の自由度の高い直流モータには必ずしも適した制御方法とは言えない。
遠心力に感応する従来の可変ピッチプロペラに対して、ブレードに相対する空気流の効果によって自動的にピッチを変える方式も提案されている(特許文献1)。この方式ではブレードの先端に、相対風向きの変化により支軸周りモーメントを発生させる風向き翼部を設け、ブレードに働く遠心力や空気力など低ピッチ側に移行するモーメントに対して逆方向に働くモーメントを与え、相対風に対する迎え角が常に一定となるようにしたものである。この方式では飛行速度やプロペラ回転速度に関わりなく、ブレードの揚抗比を常に一定にすることができ、ブレード自体は高い効率で推進力を得ることができる。しかし、ブレード先端に備えられる風向き翼部は推進力に何ら貢献することは無く、この部分には必然的に抗力が生ずることとなる。この抗力はプロペラ回転軸から最も外側に働くため、負荷トルクも著しく増加する。従って、全体としてのプロペラ効率は従来の可変ピッチプロペラよりも下がってしまうことが考えられる。更に、後述するようにプロペラの迎え角は巡航時は高効率となるようブレードの揚抗比が最大となる角度が適しているが、上昇時など高推力が必要な場合は、ブレードの揚抗比よりもブレードの揚力係数を増加させた方が良い場合もある。従ってこの方式は、飛行機の運動性能を重視する場合には適当な方法とは言えない。
特開平6−56092 相対風でピッチ角の変わるプロペラ
従来の可変ピッチプロペラの構造の複雑さや重量増を余儀なくされるという問題を解決し、ホビー用無線操縦飛行機や超軽量飛行機等に適した可変ピッチプロペラを実現する。
本発明における可変ピッチプロペラは飛行機の推進に用いられるプロペラであって、複数枚のブレードと、ブレードに働く空力合成力の圧力中心よりもブレードの前縁側に位置するピッチ変更軸と、複数枚のブレードの各々をピッチ変更軸を中心に回動可能な状態で連結するハブ部と、ピッチ変更軸を中心として、空力合成力によって生ずる空力的モーメントに対向し、かつブレードの羽根角の減少に伴って増加する機械的モーメントをブレードに与える回動抑制手段を具備する。そして、ブレードの羽根角が、少なくとも該プロペラの推力と前進速度と回転速度に基づく所定の羽根角となることを特徴とする。本発明の可変ピッチプロペラはその一つの態様において、直流モータを回転の動力源とするものであって、プロペラの回転時における直流モータのトルクが、その時の直流モータ端子電圧に対応する直流モータの拘束トルクの10〜50パーセントの範囲となるよう羽根角の減少特性が設定される。また、本発明の可変ピッチプロペラはその一つの態様において、回動抑制手段はハブ部を兼ね備えた開き管状の弾性体であって、この開き管状の弾性体の一部がピッチ変更軸に沿ってブレード内に挿入される。そして、開き管状の弾性体の先端部がブレードに固定される。更に、本発明の可変ピッチプロペラはその一つの態様において、ブレード部とハブ部は、推進方向とは逆側の面が開放された開曲面状の成形体より成り、回動抑制手段として少なくともハブ部乃至ブレードの基部に捻れ弾性変形可能な部分を有する。
本発明の可変ピッチプロペラのピッチ変更機構は、ハブ部に備えられた回動部と機械的モーメントをブレードに与える回動抑制手段のみであるために軽量で簡素な構造であり、壊れにくく、かつ低価格の可変ピッチプロペラが実現できる。また、飛行状態と直流モータの特性に見合った羽根角に自動的に変化するため、巡航速度飛行から急上昇飛行まで効率的な動作特性が得られ、搭載電池の消耗を低減し、より長時間の飛行が可能となる。
一般的に、飛行機が揚抗比を保ったまま一定の前進速度Vかつ一定の上昇角λで上昇するという条件下でのプロペラに要求される推力Tと前進速度Vは次のように表される。
T=[Wcosλ/(L/D)]+Wsinλ 式1
V=Vc・(cosλ)1/2 式2
ここで、Wは機体重量、L/Dは機体の揚抗比、Vcはλ=0における前進速度即ち巡航速度である。これら2つの式で表される推力Tと前進速度Vがプロペラに要求される基本特性となる。
第3図はプロペラ回転中心からrの位置にあるブレードの翼素に働く力の成分と速度の成分を、回転するプロペラの外周上に固定した仮想観測点から回転中心方向を見たとした場合のベクトル図を示す。図の上方を機体の進行方向としている。Vは機体の前進速度であり、2πrNはrの位置での回転速度、Vrは両者の合成速度を示す。Vrと2πrNの成す角φを前進角と呼ぶ。これらには以下の関係がある。
Vr2=V2+(2πrN)2 式3
φ=arctan(V/2πrN) 式4
ブレードは空気に対してVrの方向に進む。ブレードにはその方向に対して適度な迎え角αが与えられる。前進角φに迎え角αを加えたものが羽根角βである。回転速度はrに比例するので前進角φは回転中心に近づくにつれて大きくなる。rによらず迎え角αを適度な値に保つため、一般にはプロペラの羽根角β=φ+αは回転中心に近づくにつれて大きくなるように設計されているが、以降の説明では簡略化のため、このベクトル図をブレード上の空力合成力の圧力中心の位置O点で代表したものと見なす。即ち、力のベクトルはブレード全体にわたって合成されたものとする。更に便宜上、力の大きさはブレードの翅数倍されたものとする。プロペラの回転によって生ずるブレードの揚力をLbとすると、Lbの向きはVrに直交し、その大きさは、
Lb=C1・ρ・B・S・Vr2/2 式5
となる。ここで、C1はブレードの揚力係数、ρは空気密度、Bはブレードの翅数、Sはブレード1翅分の面積である。C1・ρ・B・S/2を便宜上Gとおく。抗力ベクトルDbの大きさは、Lbをブレードの揚抗比Lb/Dbで割った値となり、その向きはVrと反対方向となる。LbとDbの合成力をR、RとLbの成す角度をγとすれば、1/tanγがブレードの揚抗比となる。推力Tは合成力Rの機体前進方向の成分であり、第3図から、
T=Rcos(γ+φ)=Lb・cos(γ+φ)/cosγ 式6
となる。ここで、
Lb=G・Vr2 式7
G=C1・ρ・B・S/2 式8
である。また、式7を式6に代入して、
T=G・Vr2・cos(γ+φ)/cosγ 式9。
合成力Rの回転方向成分をqとすると、q・rがプロペラの回転のために要求されるトルクQとなる。そして第3図より推力TとトルクQの関係は、
T=Q/[r・tan(γ+φ)] 式10。
一般的な可変ピッチプロペラの場合、ピッチ変更軸は概ね空力合成力の圧力中心の位置O点付近を通るよう設計される。これはピッチ変更軸が空力合成力の圧力中心からずれた点にあると余分な捻れモーメントがブレードに加わり、遠心力によるピッチ制御等に悪影響を与えてしまう恐れがあるためである。本発明の可変ピッチプロペラではこれに反して、ピッチ変更軸P点を空力合成力の圧力中心の位置O点よりも距離をwだけ前縁側に位置させ、積極的に空力的モーメントをブレードに与える。ブレードの揚力Lbのブレード翼弦線30に直交する成分はLb・cosαであるので、空力的モーメントMaは
Ma=Lb・cosα・w=G・Vr2・cosα・w 式11。
T=[Wcosλ/(L/D)]+Wsinλ 式1
V=Vc・(cosλ)1/2 式2
ここで、Wは機体重量、L/Dは機体の揚抗比、Vcはλ=0における前進速度即ち巡航速度である。これら2つの式で表される推力Tと前進速度Vがプロペラに要求される基本特性となる。
第3図はプロペラ回転中心からrの位置にあるブレードの翼素に働く力の成分と速度の成分を、回転するプロペラの外周上に固定した仮想観測点から回転中心方向を見たとした場合のベクトル図を示す。図の上方を機体の進行方向としている。Vは機体の前進速度であり、2πrNはrの位置での回転速度、Vrは両者の合成速度を示す。Vrと2πrNの成す角φを前進角と呼ぶ。これらには以下の関係がある。
Vr2=V2+(2πrN)2 式3
φ=arctan(V/2πrN) 式4
ブレードは空気に対してVrの方向に進む。ブレードにはその方向に対して適度な迎え角αが与えられる。前進角φに迎え角αを加えたものが羽根角βである。回転速度はrに比例するので前進角φは回転中心に近づくにつれて大きくなる。rによらず迎え角αを適度な値に保つため、一般にはプロペラの羽根角β=φ+αは回転中心に近づくにつれて大きくなるように設計されているが、以降の説明では簡略化のため、このベクトル図をブレード上の空力合成力の圧力中心の位置O点で代表したものと見なす。即ち、力のベクトルはブレード全体にわたって合成されたものとする。更に便宜上、力の大きさはブレードの翅数倍されたものとする。プロペラの回転によって生ずるブレードの揚力をLbとすると、Lbの向きはVrに直交し、その大きさは、
Lb=C1・ρ・B・S・Vr2/2 式5
となる。ここで、C1はブレードの揚力係数、ρは空気密度、Bはブレードの翅数、Sはブレード1翅分の面積である。C1・ρ・B・S/2を便宜上Gとおく。抗力ベクトルDbの大きさは、Lbをブレードの揚抗比Lb/Dbで割った値となり、その向きはVrと反対方向となる。LbとDbの合成力をR、RとLbの成す角度をγとすれば、1/tanγがブレードの揚抗比となる。推力Tは合成力Rの機体前進方向の成分であり、第3図から、
T=Rcos(γ+φ)=Lb・cos(γ+φ)/cosγ 式6
となる。ここで、
Lb=G・Vr2 式7
G=C1・ρ・B・S/2 式8
である。また、式7を式6に代入して、
T=G・Vr2・cos(γ+φ)/cosγ 式9。
合成力Rの回転方向成分をqとすると、q・rがプロペラの回転のために要求されるトルクQとなる。そして第3図より推力TとトルクQの関係は、
T=Q/[r・tan(γ+φ)] 式10。
一般的な可変ピッチプロペラの場合、ピッチ変更軸は概ね空力合成力の圧力中心の位置O点付近を通るよう設計される。これはピッチ変更軸が空力合成力の圧力中心からずれた点にあると余分な捻れモーメントがブレードに加わり、遠心力によるピッチ制御等に悪影響を与えてしまう恐れがあるためである。本発明の可変ピッチプロペラではこれに反して、ピッチ変更軸P点を空力合成力の圧力中心の位置O点よりも距離をwだけ前縁側に位置させ、積極的に空力的モーメントをブレードに与える。ブレードの揚力Lbのブレード翼弦線30に直交する成分はLb・cosαであるので、空力的モーメントMaは
Ma=Lb・cosα・w=G・Vr2・cosα・w 式11。
次に直流モータの一般的な特性について、第4図を用いて説明する。第4図の特性曲線はモーター端子電圧Eを一定にした状態におけるトルクQに対する回転速度N、電流I、出力P、効率ηの関係を示している。Qに対する回転速度Nの関係はN−Q曲線40で表される。無負荷状態では、モータ端子電圧Eで定まる最大回転速度Nmaxとなり、負荷トルクの増加と共に回転速度は直線的に低下し、あるトルクに達すると回転速度はゼロとなる。この時のトルクQLを拘束トルクと呼ぶ。N−Q曲線の勾配Aは直流モータの仕様によって定まる固有の値であり、異なる端子電圧におけるN−Q曲線の場合も勾配Aは不変である。また、端子電圧にほぼ比例して無負荷時の最大回転速度も高くなるため、モータ端子電圧の高いN−Q曲線ほど上方に位置する。従って、モータ端子電圧Eを定めた場合、トルクQが決まれば回転速度Nは一義的に決まることになる。そこで、ζ≡Q/QLというパラメータを定義するとトルクQと回転速度Nの関係は、
Q=ζ・N/[A・(1−ζ)] 式12
と表すことができる。ζはN−Q曲線上の動作点の位置を表す指標であり、ζが0に近づくほど高回転・低トルクの動作となり、ζが1に近づくほど低回転・高トルクの動作となる。式12を式10に代入して、
T=ζ・N/[A・(1−ζ)・r・tan(γ+φ)] 式13。
出力はトルクと回転速度の積で表され、図中のP−Q曲線41となる。最大出力はこの曲線のピークの位置となる。N−Q曲線40が直線の場合はζ=0.5、即ち拘束トルクの50パーセントのトルクを発生する動作点P2で得られる。電流Iは図中のI−Q曲線42であらわされるように無負荷電流I0を基点に直線的に増加する。端子電圧Eが一定の条件なので消費電力E・Iは電流Iと同様、トルクの増加に比例する。効率は消費電力に対する出力の比で表わされ図中のη−Q曲線43となる。最大効率となる位置は直流モータの無負荷回転時の電流値I0によって若干異なる。第4図の例では概ねζ=0.2、即ち拘束トルクの20パーセントのトルクを発生する動作点P1で得られる。概して、ζが0.1以下となる動作点やζが0.5を越えるような動作点では出力も効率も共に低下する。そのため、ζは概ね0.1〜0.5の範囲となるような動作点で直流モータを動作させるのが望ましいと言える。
Q=ζ・N/[A・(1−ζ)] 式12
と表すことができる。ζはN−Q曲線上の動作点の位置を表す指標であり、ζが0に近づくほど高回転・低トルクの動作となり、ζが1に近づくほど低回転・高トルクの動作となる。式12を式10に代入して、
T=ζ・N/[A・(1−ζ)・r・tan(γ+φ)] 式13。
出力はトルクと回転速度の積で表され、図中のP−Q曲線41となる。最大出力はこの曲線のピークの位置となる。N−Q曲線40が直線の場合はζ=0.5、即ち拘束トルクの50パーセントのトルクを発生する動作点P2で得られる。電流Iは図中のI−Q曲線42であらわされるように無負荷電流I0を基点に直線的に増加する。端子電圧Eが一定の条件なので消費電力E・Iは電流Iと同様、トルクの増加に比例する。効率は消費電力に対する出力の比で表わされ図中のη−Q曲線43となる。最大効率となる位置は直流モータの無負荷回転時の電流値I0によって若干異なる。第4図の例では概ねζ=0.2、即ち拘束トルクの20パーセントのトルクを発生する動作点P1で得られる。概して、ζが0.1以下となる動作点やζが0.5を越えるような動作点では出力も効率も共に低下する。そのため、ζは概ね0.1〜0.5の範囲となるような動作点で直流モータを動作させるのが望ましいと言える。
尚、一般に小型直流モータは低トルク高回転の傾向があり、ギアによってある程度回転速度を落としてトルクを増加させることが多い。ギア比をKとおくと、回転速度は1/K倍に、またトルクはK倍となるが、このような場合、第4図の回転速度の数値を1/K倍、トルクの数値をK倍と補正することで、プロペラ回転軸における特性と見なすことができる。また、ギアを介在しない場合のN−Q曲線の勾配をaとすれば、ギア比Kの場合のN−Q曲線の勾配は
A=a/K2 式14
となる。直流モータの種類によってはN−Q曲線が、トルクが拘束トルクに近づくにつれて回転速度の低下の割合が増大する特性を持つものもある。このような特性の場合、直線性の良い部分の勾配でN−Q曲線を近似し、前述の条件を適用することができる。本発明の対象とする直流モータは、電源として直流電源を用いるものであり、界磁に永久磁石を用いる永久磁石型であっても電磁石を用いる電磁石界磁型であってもよい。また、ブラシレスDCモータは、モータ自体は交流モータであるが、電源として直流電源が用いられ、また特性も直流モータとほとんど違いが無いため、本発明の対象とする直流モータに含まれる。
A=a/K2 式14
となる。直流モータの種類によってはN−Q曲線が、トルクが拘束トルクに近づくにつれて回転速度の低下の割合が増大する特性を持つものもある。このような特性の場合、直線性の良い部分の勾配でN−Q曲線を近似し、前述の条件を適用することができる。本発明の対象とする直流モータは、電源として直流電源を用いるものであり、界磁に永久磁石を用いる永久磁石型であっても電磁石を用いる電磁石界磁型であってもよい。また、ブラシレスDCモータは、モータ自体は交流モータであるが、電源として直流電源が用いられ、また特性も直流モータとほとんど違いが無いため、本発明の対象とする直流モータに含まれる。
次に巡航時と上昇時の2つの飛行状態について、本発明のプロペラの羽根角設定法について述べる。巡航時における各パラメータの値をT=Tc、V=Vc、Vr=Vrc、N=Nc、ζ=ζc、φ=φc、α=αc、β=βc、γ=γc、G=Gc、C1=C1cと記す。また、上昇時における各パラメータの値をT=Th、V=Vh、Vr=Vrh、N=Nh、ζ=ζh、φ=φh、α=αh、β=βh、γ=γh、G=Gh、C1=C1hと記す。
まず、巡航速度Vcでの飛行に必要な推力Tcは、式1においてλ=0として、
Tc=W/(L/D) 式15
となる。推力とプロペラ回転速度Ncの関係は、式13より
Tc1=ζc・Nc/[A・(1−ζc)・r・tan(γc+φc)]
式16
φc=arctan[Vc/(2・π・r・Nc)] 式17
となる。ブレードの形状を決まれば、その空力特性から最もプロペラ効率が良くなるような迎え角αcを設定することができ、同時にγcの値も定まる。そして式16からTc1=Tcとなるように回転速度Ncの数値を定めることができる。定められた回転速度Ncで、式15で表される推力Tcを得るためには、式9の条件から、
Gc=Tc・cosγ/[Vrc2・cos(γc+φc)]式18
Vrc2=Vc2+(2・π・r・Nc)2 式19
となるGcを得ることが必要である。定義によりGc=C1c・ρ・B・S/2であるが、ブレードの形状を相似形とするならば、翅数Bや面積Sを変えてもγcと迎え角αcの関係は変化しないことが空気力学から言えるので、翅数Bと面積Sを調整すれば所望のGcを得ることができる。以上の数値が求まれば、巡航速度飛行時の羽根角βcとブレードの空力的モーメントMacは以下のように表される。
βc=φc+αc 式20
Mac=Gc・Vrc2・cosαc・w 式21
まず、巡航速度Vcでの飛行に必要な推力Tcは、式1においてλ=0として、
Tc=W/(L/D) 式15
となる。推力とプロペラ回転速度Ncの関係は、式13より
Tc1=ζc・Nc/[A・(1−ζc)・r・tan(γc+φc)]
式16
φc=arctan[Vc/(2・π・r・Nc)] 式17
となる。ブレードの形状を決まれば、その空力特性から最もプロペラ効率が良くなるような迎え角αcを設定することができ、同時にγcの値も定まる。そして式16からTc1=Tcとなるように回転速度Ncの数値を定めることができる。定められた回転速度Ncで、式15で表される推力Tcを得るためには、式9の条件から、
Gc=Tc・cosγ/[Vrc2・cos(γc+φc)]式18
Vrc2=Vc2+(2・π・r・Nc)2 式19
となるGcを得ることが必要である。定義によりGc=C1c・ρ・B・S/2であるが、ブレードの形状を相似形とするならば、翅数Bや面積Sを変えてもγcと迎え角αcの関係は変化しないことが空気力学から言えるので、翅数Bと面積Sを調整すれば所望のGcを得ることができる。以上の数値が求まれば、巡航速度飛行時の羽根角βcとブレードの空力的モーメントMacは以下のように表される。
βc=φc+αc 式20
Mac=Gc・Vrc2・cosαc・w 式21
次に上昇飛行時の条件設定について述べる。上昇飛行に必要な推力と速度は、式1並びに式2においてλ=λhとして、
Th=(D/L)・W・cosλh+W・sinλh 式22
Vh=Vc・(cosλh)1/2 式23
となる。推力とプロペラ回転速度の関係は、式9及び式13より、
Th1=ζh・Nh/[A・(1−ζh)・r・tan(γh+φh)]
式24
Th2=Gh・Vrh2・cos(γh+φh)/cosγ 式25。
ここで、
Vrh2=Vh2+(2πrNh)2 式26
φh=arctan[Vh/(2・π・r・Nh)] 式27
Gh=C1h・ρ・B・S/2 式28
である。ζhは目標とする飛行特性に合わせ、概ね0.1〜0.5の間の数値を選択する。ブレードの迎え角αhを調整すればブレードの揚力係数C1hが変わり、Ghを所望の値にすることができる。更に、揚抗比を決めるγhはブレードの空力特性により迎え角αhに依存する。これらの関係はブレードの空力特性を測定することによって得られる。従って、式24、式25のいずれも回転速度と迎え角のみによって定まり、Th1=Th2=Thとなるような回転速度Nhと迎え角αhを定めることが可能となる。具体的には電子計算機を利用して回転速度と迎え角の数値の組み合わせによる計算を多数例試行し、Th1とTh2が目標とするThに最も近くなるものを算出すれば良い。以上の数値が求まれば、上昇飛行時の羽根角βhとブレードの空力的モーメントMahは以下のように表される。
βh=φh+αh 式29
Mah=Gh・Vrh2・cosαh・w 式30
Th=(D/L)・W・cosλh+W・sinλh 式22
Vh=Vc・(cosλh)1/2 式23
となる。推力とプロペラ回転速度の関係は、式9及び式13より、
Th1=ζh・Nh/[A・(1−ζh)・r・tan(γh+φh)]
式24
Th2=Gh・Vrh2・cos(γh+φh)/cosγ 式25。
ここで、
Vrh2=Vh2+(2πrNh)2 式26
φh=arctan[Vh/(2・π・r・Nh)] 式27
Gh=C1h・ρ・B・S/2 式28
である。ζhは目標とする飛行特性に合わせ、概ね0.1〜0.5の間の数値を選択する。ブレードの迎え角αhを調整すればブレードの揚力係数C1hが変わり、Ghを所望の値にすることができる。更に、揚抗比を決めるγhはブレードの空力特性により迎え角αhに依存する。これらの関係はブレードの空力特性を測定することによって得られる。従って、式24、式25のいずれも回転速度と迎え角のみによって定まり、Th1=Th2=Thとなるような回転速度Nhと迎え角αhを定めることが可能となる。具体的には電子計算機を利用して回転速度と迎え角の数値の組み合わせによる計算を多数例試行し、Th1とTh2が目標とするThに最も近くなるものを算出すれば良い。以上の数値が求まれば、上昇飛行時の羽根角βhとブレードの空力的モーメントMahは以下のように表される。
βh=φh+αh 式29
Mah=Gh・Vrh2・cosαh・w 式30
回動抑制手段に要求される機械的モーメントの特性としては、羽根角βcにおいては空力的モーメントMacに等しい機械的モーメントMmc、羽根角βhにおいては空力的モーメントMahに等しい機械的モーメントMmhをブレードに与えるものとなる。これら2つの条件を結ぶ滑らかな羽根角−機械的モーメント特性を設定すれば、巡航速度飛行から上昇飛行に至る間の飛行状態においても、ほぼ良好な羽根角を得ることができる。
尚、実際にはブレードの質量と回転速度に比例した遠心力が羽根角を減少させる方向に働く。そのため遠心力による効果が無視できない場合には、前述の空力的モーメントに遠心力によるモーメントを加えて機械的モーメントを対応付けることが必要である。以下の実施例においては、遠心力による効果は無視している。
尚、実際にはブレードの質量と回転速度に比例した遠心力が羽根角を減少させる方向に働く。そのため遠心力による効果が無視できない場合には、前述の空力的モーメントに遠心力によるモーメントを加えて機械的モーメントを対応付けることが必要である。以下の実施例においては、遠心力による効果は無視している。
本発明の可変ピッチプロペラの第1の実施例を第1図に示す。この実施例は2翅のプロペラの例であり、構造が判りやすいように回転軸の左側のブレード部は省略され、回転軸110およびシリンダ141は分離された状態で描かれている。図の上方をプロペラの進行方向、即ち前方とする。図示されていない動力部の出力を伝える回転軸110には、中間部にハブ120を固定するためのネジ部111が形成され、それよりも前方側は少なくともネジの谷の深さだけ直径が細くなる。前方先端部にはピストン143を固定するためのネジ部112が形成されている。ハブ120は中心に回転軸110を通して固定するネジ穴121を有し、両側にブレード130を回動可能な状態で連結するためのシャフト122が設けられている。ブレード130のシャンク部132にはシャフト122が挿入される軸受け部(図示せず)が設けられている。軸受け部はシャフト122が滑らかに回動するよう、ベアリング等で構成するのが望ましい。シャフト122がその軸受け部に挿入された後、ブレード基部に穿たれた長穴131より、シャフト122の先端部に穿たれたピン通し穴123にロックピン137を差し込む。これによって、ブレード130がハブ120から遠心力によって離脱するのを防止する。長穴131は、ロックピン137がブレード130の必要とする回動を妨げない長さに設定される。シャンク132の後縁側にはヒンジベース133が設けられ、リンク136の一方の端が連結軸134によって回動可能な状態で連結される。回動抑制部140はシリンダ141、ベース146、ピストン143、コイルスプリング150を主構成要素とする。ベース146の後面には、ブレード130のヒンジベース133に対置して2ヶ所のヒンジベース148が設けられ、リンク136の他方の端が連結軸135によって回動可能な状態で連結される。回転軸110はベース146中央の通し穴147とコイルスプリング150を貫いた後、先端のネジ部112がピストン143の中央のネジ穴145にねじ込まれる。シリンダ141はベース146にボルト151によって接合される。このプロペラの羽根角の変化の様子を第2図に示す。第2図は第1の実施例のブレード基部から回転中心方向を見た図であり、シリンダ141の左側は内部構造を表している。図の左側(a)は巡航時の状態を示し、右側(b)は上昇時の状態を示す。ブレードに働く空力的モーメントが増加するにつれてブレード130のヒンジベース133が前方に傾いていくので、リンク136がシリンダ141を前方に押し出す。その結果、ピストン143はシリンダ141内で相対的に後方側に移動しコイルスプリング150を圧縮する。この圧縮長ΔLに比例した力ΔFがヒンジベース133の連結軸134に加わる。連結軸134はピッチ変更軸100からxの距離だけ隔てられているので、連結軸134に加わる力はブレードに機械的モーメントを与え、空力的モーメントと釣り合うことになる。連結軸134からピッチ変更軸100へおろした垂線が、空力中心を含むブレードの翼素の翼弦線と平行に設定されている場合、それぞれの状態における機械的モーメントMmc、Mmhと空力的モーメントMac、Mahの関係は
Mmc=Fc・x・cosβc=Mac 式31
Mmh=Fh・x・cosβh=Mah 式32
となる。Mac、Mahはそれぞれ式21、式30によって求まる。コイルスプリング150に働く力の増加量ΔF=Fh−Fc、圧縮長ΔL=x(sinβc−sinβh)から、コイルスプリング150に要求されるバネ定数は次式によって求めることができる。
κ=ΔF/ΔL 式33
飛行機に急な姿勢変化がおこると、プロペラの左右あるいは上下に推力差が生じ、ブレードに振動が発生することが知られている。ピストン143はこれを緩和する機能も備えている。ピストン143の移動に伴ってシリンダ141内の空気が小穴144から出入りするが、この穴径を適度に小さくすることでピストン143の動きをプロペラ回転周期のように速い周期の変化に対しては鈍く、緩やかな変化には正確に追従するという特性を持たせることができる。ピストン内部を空気の替わりに潤滑油のような液体で満たせば更に効果的である。
Mmc=Fc・x・cosβc=Mac 式31
Mmh=Fh・x・cosβh=Mah 式32
となる。Mac、Mahはそれぞれ式21、式30によって求まる。コイルスプリング150に働く力の増加量ΔF=Fh−Fc、圧縮長ΔL=x(sinβc−sinβh)から、コイルスプリング150に要求されるバネ定数は次式によって求めることができる。
κ=ΔF/ΔL 式33
飛行機に急な姿勢変化がおこると、プロペラの左右あるいは上下に推力差が生じ、ブレードに振動が発生することが知られている。ピストン143はこれを緩和する機能も備えている。ピストン143の移動に伴ってシリンダ141内の空気が小穴144から出入りするが、この穴径を適度に小さくすることでピストン143の動きをプロペラ回転周期のように速い周期の変化に対しては鈍く、緩やかな変化には正確に追従するという特性を持たせることができる。ピストン内部を空気の替わりに潤滑油のような液体で満たせば更に効果的である。
本実施例を重量W=250g、巡航速度Vc=5[m/s]、機体の揚抗比10の飛行機に応用することを想定し、λ=0[deg]即ち巡航時と、λ=45[deg]の急上昇時の2つの飛行状態について、前述の過程に従って設計した結果を第5図と第6図に示す。第5図は回転速度−トルク特性である。図中のP50は巡航時のモータ動作点であり、ζ=0.2としている。またP51、P52、P53は急上昇時の動作点であり、それぞれζ=0.2、0.3、0.4としている。54、55、56は、これらの動作点の近傍を通るN−Q特性曲線である。破線51、52、53は、P50とP51、P52、P53をそれぞれ結んだものであり、巡航時から急上昇時に至る中間の動作点の軌跡を推測したものである。第6図は羽根角−空力モーメント特性である。図中のP60、P61、P62、P63には第5図のモータ動作点P50、P51、P52、P53が対応する。また、61、62、63は各動作点に対応した羽根角−空力モーメント特性である。第5図において、動作点P52と動作点P53はほぼ同じN−Q特性曲線55付近に位置している。このことから、両者は上昇飛行時のモータ端子電圧はほぼ同じであるが、ζの小さい動作点P52の方がより効率的な駆動ができることが分かる。動作点P51は動作点P52よりもζが小さいので更に効率的にはなると考えられるが、モータ端子電圧Eがより高いN−Q特性曲線56上に位置している。モータを駆動する電池電圧がE2であったとすると、動作点P51での駆動は実現できないことになるので、最大出力の条件としてはζ=0.3の動作点P52が適当と言える。この条件に対応する羽根角−空力モーメント特性は第6図中の62で示される特性曲線となる。第5図のP54はλ=90[deg]の場合であり、機首を真上に向けて空中停止をするような状態、即ちホバリングに対応する動作点である。このような特性は曲技機や垂直離着陸機に要求される。空中停止状態では飛行機の位置エネルギの増加が無いので、急上昇飛行よりも加えるべきエネルギーは小さくなり、動作点P54は動作点P51よりも低いモータ端子電圧となることが分かる。この動作点P54は第6図中ではP64に対応し、P60の点とP64を結ぶような羽根角−空力モーメント特性64はホバリング効率が良い特性と言える。
羽根角−空力モーメント特性曲線62に適合する機械的モーメント特性の例を第7図に示す。この特性曲線70は第6図の特性曲線62を羽根角の軸線まで延長し、その交点βSを基点に左右反転した形状である。特性曲線70上の点P70とP71は、第6図のP60とP62に対応している。横軸の回動角θは、θ=βS−βの関係となり、機械的モーメントMm(θ)は空力モーメントMa(βS−θ)に等しい。これらの関係と式33、式34、式35を用いて、必要とするコイルスプリング150のバネ定数を求めることができる。尚、特性曲線70は必ずしもθ=0を起点とする直線で無くとも良い。例えば一点鎖線71のようにP70のモーメントMmcよりも小さなモーメントでθを一定とすることもできる。このようにすると、地上で機体を移動させる時のように低速・低推力でプロペラを回転させる際、ブレードの羽根角が過大になることを防止することができる。また、前述した機体姿勢変化に伴うブレードの振動は、高出力時において、より大きな影響をもたらすことが想定されるが、一点鎖線72のようにP72のモーメントMmhよりも大きなモーメントでθを一定にさせることにより、ブレードを安定させることができる。このような特性は第1図の長穴131の長さを、ブレード130の回動角がP70に対応するθcからP71に対応するθhの範囲内となるよう設定することで得られる。
第8図は本発明における回動抑制手段として、開き円管状の弾性体を用いた場合の実施例である。本実施例は2翅のプロペラであるが、左側のブレードは省略され、また、その他の部品同士は分解された状態で描かれている。ハブ82は両側が先細りの開き円管状の弾性体であり、スリットの部分が後方側となる。ハブ82は回動抑制手段としての役割も担う。構造力学的に開き円管状の弾性体の捻り剛性は断面の半径に比例し、素材の肉厚の3乗に比例する。そのため、断面の半径や素材の肉厚を調整することによって所望の機械的モーメント特性を得ることが可能である。ハブ82の中央には回転軸81を通す丸穴83が、また両端にはブレード80を連結するピン通し穴84が穿たれている。回転軸81は丸穴83に通された後、プロペラ固定金具85のネジ穴にねじ込まれてハブ82と連結される。ブレード80の基部には軸受け穴86が設けられ、その先はハブ82の腕部を通す空洞87が設けられている。ハブ82の先端は空洞87の先端部に嵌合し、ロックピン88がブレード80上のピン通し穴89とハブ82のピン通し穴84を貫いて固定される。軸受け穴86はハブ82上で滑らかに回動するよう、ボールベアリング等で構成するのが望ましい。また、無用な摩擦を生じさせないため、空洞87には先端の嵌合部以外はハブ82と接触しないよう隙間を設けてある。軸受け穴86並びに空洞87の中心軸はピッチ変更軸800であり、ブレード80の空力合成力の圧力中心O点からwの距離隔てられている。捻れモーメントによってハブ82が捻れる様子を第9図に示す。この図はプロペラ後方側から見た図であり、(a)は捻れモーメントの無い状態、(b)は捻れモーメントを与えた状態を示す。捻れモーメントを受けるとはスリットの縁部91、92の中央点A、Bは互いに反対方向にずれ、A’、B’の位置に移動する。このずれはハブの全長にわたってほぼ均一であるため、ブレードの回動に応じて滑らかに変化する捻りモーメントを与えることができる。開き円管状の弾性体は中心軸を中心とした捻れ剛性に対して、それに直交する方向の曲げ剛性は非常に大きい。そのため、ハブ82はブレード80を空力中心に近い位置で支持することができ、ブレード基部の軸受け穴86の曲げ応力を大幅に減らすことができる。、
同一断面形状の開き円管の場合、先端部における捻り角に対する捻りモーメントの大きさは、その全長に比例する。このことを利用して、機械的モーメント特性を選択可能とした可変ピッチプロペラも実現できる。第8図において、ハブ82上にプロペラ中心からの位置が異なる複数のピン通し穴801を設け、ブレード80上の対応する位置に複数のピン通し穴802を設ける。ロックピン88をプロペラ中心側に近い穴に通すと、捻り角に対する捻りモーメントの比率が増大し、回動角−機械的モーメントの特性曲線の勾配を大きくすることができる。
同一断面形状の開き円管の場合、先端部における捻り角に対する捻りモーメントの大きさは、その全長に比例する。このことを利用して、機械的モーメント特性を選択可能とした可変ピッチプロペラも実現できる。第8図において、ハブ82上にプロペラ中心からの位置が異なる複数のピン通し穴801を設け、ブレード80上の対応する位置に複数のピン通し穴802を設ける。ロックピン88をプロペラ中心側に近い穴に通すと、捻り角に対する捻りモーメントの比率が増大し、回動角−機械的モーメントの特性曲線の勾配を大きくすることができる。
次に本実施例を多翅のプロペラに応用する場合について述べる。第10図は3翅のプロペラに応用したもので、ハブ中央部分を後面側から見た斜視図である。ブレードやその連結方法は第8図と同様である。スリットの縁部1001、1002、1003には、ブレードの回動に伴う捻れ変形によって生ずるずれの方向を矢印で示している。隣り合うブレードの前縁側のスリットの縁部と後縁側のスリットの縁部が滑らかにつながっているため、捻れ変形によって生ずる縁部のずれは大きく阻害されることが無く、滑らかな機械的モーメントの発生が可能となる。第11図は4翅のプロペラに応用した場合のハブ中央部分を後面側から見た斜視図である。ブレードやその連結方法は第8図と同様である。ハブ中央部は2翅の場合と異なり、2つのピッチ変更軸が直交し、後面のスリットの縁部は中央部で分断されてしまう。ハブ部の前方への曲げモーメントは中央部で最も大きくなるため、十分な曲げ剛性が必要となる。第12図の実施例では中央部を横断するように4本の補強材1101、1102、1103、1104がスリットの縁部に連結されている。補強材1101、1102、1103、1104は中央部に段差が設けられ、互いに直交する補強材同士が接触しないようにされている。これによって、同一のピッチ変更軸に沿うスリット縁部のずれが直交するスリット縁部のずれに影響されることは少なくなり、所望の回動抑制特性を得ることが可能となる。以上の実施例では回動抑制手段として開き円管状の弾性体を例に述べたが、断面形状は必ずしも円弧状で無くとも良く、楕円状や多角形状の開き管であっても本発明の効果は発揮できるものである。
本発明の可変ピッチプロペラのブレード部とハブ部を、推進方向とは逆側、即ち後面側が開放された開曲面状の成形体によって構成した2翅のプロペラの実施例を第12図に示す。図は前方から見たものであり、その下側に図の左方から見た各部の断面が示されている。ブレード部1203の基部から中央部にかけてシャンク部1201が形成されている。この部分は捻れ弾性変形が可能なように、開き管状、望ましくは開き円管状の形状となっている。捻れ弾性変形の中心軸はピッチ変更軸1202であり、ブレード部1203の空力合成力の圧力中心O点からwの距離隔てられている。シャンク部1201はブレードを回動させると共に、その弾性により回動抑制手段としてブレードの羽根角の減少に伴って増加する機械的モーメントをブレード部に与える。前述の実施例と同様、回動に伴ってシャンク部1201のスリット縁部にはピッチ変更軸1202に沿ったずれが生ずるが、本実施例ではシャンク部とブレード部が連続した構造であるため、そのずれがブレード部1203に及んでブレード面に無用な撓みをもたらしてしまう恐れがある。これを軽減する2つの例を第13図と第14図に示す。両図共、プロペラ中心からブレード基部までの構造を示し、上方はブレード後縁側から前縁方向を見た図、下方はプロペラ後面側から前面方向を見た図である。第13図はシャンク部1201とブレード部1203との境界にキャンバ面側から見て凹部1204を設けたものである。破線に示されるように、シャンク部1201のスリット後縁に生ずるずれは、凹部1204がブレード先端方向に押し込まれる形で吸収されブレード部1203には至らない。第14図はスリット幅を後方に徐々に拡大させた部分1205を設けたものである。図中の矢印で示されるように、同一曲率半径の開き円管ではスリット幅が大きいほど縁部のずれは小さくなるので、シャンク部1201のスリット後縁に生ずるずれがブレード部1203へ与える影響は小さくなる。
本発明のプロペラではピッチ変更軸の位置する前縁部に、推力の働く方向に撓まないよう剛性が必要である。第15図は前縁補強部1206を備えた実施例であり、ブレードの前縁において、素材を後方に折り曲げて前縁部を二重にした構造である。このような構造では、剛性の必要な部分のみ素材を厚くすることができるので、全体的に軽量なものが実現できる。
以上は2翅のプロペラの実施例であるが、ハブ部を第10図や第11図と同様な構造にすることで、3翅や4翅のプロペラを実現することも可能である。本実施例ではプロペラ全体を1枚の板材で構成することができ、素材が鋼鉄やステンレス、アルミニウムなどの金属の場合はプレス加工、PETやポリカーボネート等の熱可塑性プラスチックの場合は真空成形等の熱成形、CFRP等の繊維強化プラスチックの場合は真空注型等のような大量生産に向いた低コストの製造方法を取ることができる。3翅以上のプロペラの場合は材料取りや金型の簡略化の面から、ブレード部とハブ部を別々に成形した後、ボルト締め、融着、接着等の手法によって連結することも可能である。
以上の実施例はホビー用の無線操縦飛行機を想定しているが、本発明の適用分野はこれに限られるものではない。直流モータを動力源とするものであれば、有人飛行機を含むより大型の飛行機においても本発明の可変ピッチプロペラは適用可能である。また、本発明の可変ピッチプロペラは動力源が直流モータの場合に最も効果があると言えるが、レシプロエンジンに応用した場合においても上昇時のような低速高推力の場合には羽根角が減少するため、固定ピッチプロペラに較べて動力源の負担を軽減し、飛行機の動力性能を向上させる効果がある。
本発明の可変ピッチプロペラの第1の実施例を示す斜視図である。
第1の実施例の動作を表す図である。
本発明の可変ピッチプロペラに作用する力を表す図である。
直流モータの特性を表す図である。
第1の実施例のトルクと回転速度の関係を示す図である。
第1の実施例の羽根角と空力的モーメントの関係を示す図である。
第1の実施例の回動角と機械的モーメントの関係を示す図である。
本発明の可変ピッチプロペラの第2の実施例を示す図である。
第2の実施例の動作を表す図である。
第2の実施例の応用例を表す図である。
第2の実施例の他の応用例を表す図である。
本発明の可変ピッチプロペラの第3の実施例を示す図である。
第3の実施例のシャンク部を表す図である。
第3の実施例のシャンク部を表す図である。
第3の実施例の他の形態を示す図である。
100…ピッチ変更軸 147…通し穴
110…回転軸 148…ヒンジベース
111、112…ネジ部 150…コイルスプリング
120…ハブ 30…翼弦線
121…ネジ穴 40…N−Q曲線
122…シャフト 41…P−Q曲線
123…ピン通し穴 42…I−Q曲線
130…ブレード 43…η−Q曲線
131…長穴 P50〜P54…モータ動作点
132…シャンク部 51〜P53…モータ動作点の軌跡
133…ヒンジベース 54〜56…N−Q特性曲線
134、135…連結軸 61〜64…羽根角−空力モーメン
136…リンク ト特性曲線
137…ロックピン 70…機械的モーメント特性曲線
140…回動抑制部 80…ブレード
141…シリンダ 82…ハブ
143…ピストン 81…回転軸
144…小穴 83…丸穴
145…ネジ穴 84、801…ピン通し穴
146…ベース 85…プロペラ固定金具
86…軸受け穴 T、Tc、Th…推力
87…空洞 Lb…ブレード揚力
88…ロックピン Db…ブレード抗力
89、802…ピン通し穴 R…LbとDbの合成力
800…ピッチ変更軸 q…Rの回転方向成分
91、92…スリットの縁部 Nmax…最大回転速度
A、B、A’、B’…中央点 QL…拘束トルク
1001〜1003…スリット縁部
1101〜1104…補強材
1201…シャンク部
1202…ピッチ変更軸
1203…ブレード部
1204…凹部
1205…スリット幅拡大部分
1206…前縁補強部
O…空力合成力の圧力中心点
w…ピッチ変更軸と空力合成力の圧
力中心点の距離
Mac、Mah…空力的モーメント
Mmc、Mmh…機械的モーメント
V…機体前進速度
2πrN…回転速度
Vr…合成速度
α…ブレード迎え角
β…羽根角
φ…前進角
θ…回動角
110…回転軸 148…ヒンジベース
111、112…ネジ部 150…コイルスプリング
120…ハブ 30…翼弦線
121…ネジ穴 40…N−Q曲線
122…シャフト 41…P−Q曲線
123…ピン通し穴 42…I−Q曲線
130…ブレード 43…η−Q曲線
131…長穴 P50〜P54…モータ動作点
132…シャンク部 51〜P53…モータ動作点の軌跡
133…ヒンジベース 54〜56…N−Q特性曲線
134、135…連結軸 61〜64…羽根角−空力モーメン
136…リンク ト特性曲線
137…ロックピン 70…機械的モーメント特性曲線
140…回動抑制部 80…ブレード
141…シリンダ 82…ハブ
143…ピストン 81…回転軸
144…小穴 83…丸穴
145…ネジ穴 84、801…ピン通し穴
146…ベース 85…プロペラ固定金具
86…軸受け穴 T、Tc、Th…推力
87…空洞 Lb…ブレード揚力
88…ロックピン Db…ブレード抗力
89、802…ピン通し穴 R…LbとDbの合成力
800…ピッチ変更軸 q…Rの回転方向成分
91、92…スリットの縁部 Nmax…最大回転速度
A、B、A’、B’…中央点 QL…拘束トルク
1001〜1003…スリット縁部
1101〜1104…補強材
1201…シャンク部
1202…ピッチ変更軸
1203…ブレード部
1204…凹部
1205…スリット幅拡大部分
1206…前縁補強部
O…空力合成力の圧力中心点
w…ピッチ変更軸と空力合成力の圧
力中心点の距離
Mac、Mah…空力的モーメント
Mmc、Mmh…機械的モーメント
V…機体前進速度
2πrN…回転速度
Vr…合成速度
α…ブレード迎え角
β…羽根角
φ…前進角
θ…回動角
Claims (4)
- 飛行機の推進に用いられるプロペラであって、該プロペラは、複数枚のブレードと、前記ブレードに働く空力合成力の圧力中心よりも前記ブレードの前縁側に位置するピッチ変更軸と、前記複数枚のブレードの各々を前記ピッチ変更軸を中心に回動可能な状態で連結するハブ部と、前記ピッチ変更軸を中心として、前記空力合成力によって生ずる空力的モーメントに対向し、かつ前記ブレードの羽根角の減少に伴って増加する機械的モーメントを前記ブレードに与える回動抑制手段を具備し、前記ブレードの羽根角が、少なくとも該プロペラの推力と前進速度と回転速度に基づく所定の羽根角となることを特徴とする可変ピッチプロペラ。
- 請求項1記載の可変ピッチプロペラにおいて、該プロペラは直流モータを回転の動力源とするものであって、該プロペラの回転時における前記直流モータのトルクが、前記回転時における前記直流モータの端子電圧に対応する前記直流モータの拘束トルクの10〜50パーセントの範囲となるよう前記羽根角の減少特性が設定されていることを特徴とする請求項1記載の可変ピッチプロペラ。
- 前記回動抑制手段は前記ハブ部を兼ね備えた開き管状の弾性体であって、前記開き管状の弾性体の一部が前記ピッチ変更軸に沿って前記ブレード内に挿入され、前記開き円管状の弾性体の先端部において前記ブレードに固定されるものであることを特徴とする請求項1記載の可変ピッチプロペラ。
- 前記ブレードと前記ハブ部は、推進方向とは逆側の面が開放された開曲面状の成形体より成り、前記回動抑制手段として少なくとも前記ハブ部乃至前記ブレードの基部に捻れ弾性変形可能な形状を有することを特徴とする請求項1記載の可変ピッチプロペラ。
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2005
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