JP2007031812A - 有機単分子膜成膜装置及び該方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 本発明は、真空中で蒸着原料を蒸発させ基板に被着させて有機単分子膜を成膜する有機単分子膜成膜装置及び該方法を提供する。
【解決手段】 本発明の係る、真空引きされる真空チャンバ11内に蒸着原料Aを収容し、蒸着原料Aを加熱源17により加熱して蒸発させ、真空チャンバ11内に保持した基板B上に蒸発した蒸着原料Aによる有機単分子膜を成膜する有機単分子膜成膜装置1は、基板Bを冷却する冷却源12と、基板Bにおける有機単分子膜を形成すべき領域Cから蒸発源としての坩堝16の開口部16−1を見た場合に、蒸着中、蒸発源が見えないように隠す遮蔽板15とを備えることを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】 本発明の係る、真空引きされる真空チャンバ11内に蒸着原料Aを収容し、蒸着原料Aを加熱源17により加熱して蒸発させ、真空チャンバ11内に保持した基板B上に蒸発した蒸着原料Aによる有機単分子膜を成膜する有機単分子膜成膜装置1は、基板Bを冷却する冷却源12と、基板Bにおける有機単分子膜を形成すべき領域Cから蒸発源としての坩堝16の開口部16−1を見た場合に、蒸着中、蒸発源が見えないように隠す遮蔽板15とを備えることを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
本発明は、真空中で蒸着原料を蒸発させ基板に被着させて有機単分子膜を成膜する有機単分子膜成膜装置及び有機単分子膜成膜方法に関する。
近年、有機薄膜を利用した電子デバイスの研究、開発が鋭意為されている。有機薄膜として鎖状低分子の有機単分子膜を利用する場合、その作製方法は、自己組織化法とLB(Langmuir-Blodgett)法とが主に知られている。この自己組織化法は、例えば真空蒸着法によって金Auの薄膜を形成した基板を、硫黄原子Sを含む有機分子を溶かした溶液に浸す方法である。これによって硫黄原子が金の薄膜表面に化学結合し、自己組織化単分子膜(Self-Assembled Monolayer、SAM)が金の薄膜表面上に形成される(例えば、非特許文献1及び非特許文献2)。また、LB法は、疎水性の部分と親水性の部分とを有する有機分子を水面上に展開及び圧縮することによって水面上に単分子膜(L膜)を形成し、水面に基板を通過させることによって水面上の単分子膜を基板表面に移し取る方法である(例えば、非特許文献3及び非特許文献4)。
Abraham Ulman,"Formation and Structure of Self-Assembled Monolayers",Chem Rev.Vol.96,(1996),pp1533-1554 Ralph G.Nuzzo and David L.Allara,"Adsorption of Bifunctional Organic Disulfides on Gold Surfaces",Journal of the American Chemical Society,Vol.105,(1983),pp4481-4483 Irving Langmuir,"The Constitution and Fundamental Properties of Solids and Liquids.II.Liquids.",Journal of the American Chemical Society,Vol.39,(1917),pp1848-1906 Katharine B. Blodgett,"Films Built by Depositing Successive Monomolecular Layers on a Solid Surface",Journal of the American Chemical Society,Vol.57,(1935),pp1007-1022
Abraham Ulman,"Formation and Structure of Self-Assembled Monolayers",Chem Rev.Vol.96,(1996),pp1533-1554 Ralph G.Nuzzo and David L.Allara,"Adsorption of Bifunctional Organic Disulfides on Gold Surfaces",Journal of the American Chemical Society,Vol.105,(1983),pp4481-4483 Irving Langmuir,"The Constitution and Fundamental Properties of Solids and Liquids.II.Liquids.",Journal of the American Chemical Society,Vol.39,(1917),pp1848-1906 Katharine B. Blodgett,"Films Built by Depositing Successive Monomolecular Layers on a Solid Surface",Journal of the American Chemical Society,Vol.57,(1935),pp1007-1022
ところで、このような自己組織化法やLB法の有機単分子の成膜方法は、ウェットプロセスである一方、電子デバイスの製造工程は、真空下で行われることが多い。このため、成膜後に膜の乾燥工程が必要であり、また、成膜後に次の工程に移る際に大気中に膜を晒すことになるため膜を損傷したり汚染したりする危険が伴う。そのため、有機単分子を真空下で成膜する方法が要請されている。
本発明は、上記事情に鑑みて為された発明であり、真空中で蒸着原料を蒸発させ基板に被着させて有機単分子膜を成膜する有機単分子膜成膜装置及び有機単分子膜成膜方法を提供することを目的とする。
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。即ち、本発明の一態様に係る、真空引きされる成膜室内に蒸着原料を収容し、前記蒸着原料を加熱手段により加熱して蒸発させ、前記成膜室内に保持した基板上に前記蒸発した蒸着原料による有機単分子膜を成膜する有機単分子膜成膜装置は、前記基板を冷却する冷却源と、前記基板における前記有機単分子膜を形成すべき領域から蒸発源を見た場合に、蒸着中、前記蒸発源が見えないように隠す遮蔽部材とを備えることを特徴とする。
そして、上述の有機単分子膜成膜装置において、前記蒸着原料は、フッ化ビニリデンオリゴマーであることが好ましい。
ここで、本明細書において、フッ化ビニリデンオリゴマー(以下、「VDFオリゴマー」と略記する。)とは、CF3−(CH2CF2)n−CH3及びこの末端のCH3基若しくはCF3基の一方をハロゲン原子で置換した物質の総称である。nは、所定範囲(例えば12≦n≦29)の自然数である。
そして、本発明の他の一態様に係る有機単分子膜成膜方法は、冷却した基板上に、有機単分子膜の蒸着原料を真空中において、前記基板における前記有機単分子膜を形成すべき領域から蒸発源を見た場合に、蒸着中、前記蒸発源が見えないように隠す遮蔽部材を介して蒸着することを特徴とする。
このような構成の有機単分子膜成膜装置及び該方法によれば、真空中において基板上に有機単分子膜を成膜することができる。そして、このような構成の有機単分子膜成膜装置及び該方法は、真空下で有機単分子膜を成膜することができるので、有機単分子膜を備える電子デバイスを真空下で一貫して製造することができる。
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
(実施形態の構成)
図1は、有機単分子膜成膜装置の構成を示す縦断面図である。図1において、有機単分子膜成膜装置1は、真空チャンバ11と、冷却源12と、基板ホルダ13と、膜厚計14と、遮蔽板15と、坩堝16と、加熱源17と、真空ポンプ18とを備えて構成される。
(実施形態の構成)
図1は、有機単分子膜成膜装置の構成を示す縦断面図である。図1において、有機単分子膜成膜装置1は、真空チャンバ11と、冷却源12と、基板ホルダ13と、膜厚計14と、遮蔽板15と、坩堝16と、加熱源17と、真空ポンプ18とを備えて構成される。
冷却源12は、有機単分子膜を形成するための基板Bを所定温度に冷却する装置である。冷却源12は、例えば、本実施形態では、例えば液体窒素や液体ヘリウム等の冷却物質を貯留する貯留槽12−1と、貯留槽12−1に一方端で密接され貯留槽12−1の熱を伝導する例えば円柱棒状の熱伝導部材12−2と、貯留槽12−1と密接する一方端に対する熱伝導部材12−2の他方端の部分における外周に密接するように巻かれた、熱伝導部材12−2を加熱する電熱線ヒータ12−3と、貯留槽12−1、熱伝導部材12−2及び電熱線ヒータ12−3を収容する冷却源筐体12−4とを備える。熱伝導部材12−2は、貯留槽12−1と密接する一方端に対する他方端が冷却源筐体12−4外に露出するように、冷却源筐体12−4に固定され、これに伴って電熱線ヒータ12−3の一部も冷却源筐体12−4外に露出している。真空チャンバ11の外部から電熱線ヒータ12−3に電力が供給されることにより電熱線ヒータ12−3が加熱し、熱伝導部材12−2が加熱される。冷却源筐体12−4は、この熱伝導部材12−2の他方端がチャンバ11内部に配置されるように、そして、真空ポンプ18によってチャンバ11内部を真空状態とした場合に真空状態を維持するように、チャンバ11の上部でチャンバ11に固定されている。
基板ホルダ13は、基板Bを支持し、保持する支持部材であり、公知の適当な支持機構により冷却源12が基板Bを冷却することができるように基板Bを支持する。例えば、本実施形態では、冷却源12の熱伝導部材12−2の他方端に例えばネジ止め等によって密接する平板状の固定板13−1と、熱伝導部材12−2の他方端と密接する面に対向する固定板13−1の面に配設された一対の爪部材13−2、13−2とを備える。この一対の爪部材13−2、13−2は、固定板13−1の面に例えばねじ止めや溶接等によって付け設けられる着設部13−2a、13−2aと、基板Bを押圧する押圧部13−2c、13−2cと、着設部13−2a、13−2aと押圧部13−2c、13−2cとを連結する連結部13−2b、13−2bとから成る縦断面略Z字状の例えばステンレス鋼等の金属製の部材であり、各爪部材13−2、13−2は、各押圧部13−2c、13−2cが互いに向き合うように着設部13−1a、13−1aで固定板13−1の面に付け設けられる。
押圧部13−2c、13−2cを固定板13−1の面から離れる方向に引き、図1に示すように、固定板13−1の面と押圧部13−2c、13−2cとの間に基板Bで挟み込むと、金属の弾性に起因する連結部13−2b、13−2bの弾性力によって押圧部13−2c、13−2cが固定板13−1の面へ向かう方向に付勢され、基板Bは、固定板13−1の面と接した状態で、より好ましくは密着状態で支持され、保持される。
冷却物質を貯留槽12−1に投入すると、冷却物質の熱が熱伝導部材12−2を伝導し、固定板13−1を介して及び/又は固定板13−1と爪部材13−2とを介して基板Bに伝わり、基板Bが所定温度に冷却される。ここで、この所定温度が、液体窒素によって冷却される温度や液体ヘリウムによって冷却される温度よりも高い温度である場合には、基板Bは、上記電熱線ヒータ12−3で熱伝導部材12−2を加熱することによって所定温度に調整される。
膜厚計14は、基板Bに成膜される有機単分子膜の蒸着レート(蒸着速度)を観測する装置である。膜厚計14は、例えば、本実施形態では、水晶振動子の表面に物質が付着すると共振周波数がシフトする現象を利用した水晶振動子膜厚計である。蒸着レートは、単位時間当たりの成長膜厚である。
坩堝16は、遮蔽板15を介して基板ホルダ13と対向する位置に配置され、有機単分子膜の蒸着原料Aを貯留する例えば石英ガラス製の槽である。加熱源17は、坩堝16内の有機単分子膜の蒸着原料Aを加熱して蒸着流を発生させる装置である。加熱源17は、例えば、本実施形態では、坩堝16を填め入れ込むことができるように形成された凹部を有する例えば銅製の坩堝固定部材17−1と、坩堝固定部材17−1の両側面に取り付けられる平板状のセラミックヒータ17−2、17−2と、セラミックヒータ17−2、17−2を坩堝固定部材17−1に固定する例えば銅製の止め板17−3、17−3とを備える装置である。止め板17−3、17−3をセラミックヒータ17−2、17−2を介して例えばネジで坩堝固定部材17−1に固定することによって、セラミックヒータ17−2、17−2は、坩堝固定部材17−1と止め板17−3、17−3とで狭持され、坩堝固定部材17−1に密接するように取り付けられる。坩堝16は、その開口部Dが基板ホルダ13(基板B)の方向に向くように坩堝固定部材17−1の凹部に隙間なく接するように填め入れ込まれる。真空チャンバ11の外部からセラミックヒータ17−2、17−2に電力が供給されることによりセラミックヒータ17−2、17−2が加熱し、坩堝16は、坩堝固定部材17−1を介して所定温度に加熱される。これによって、有機単分子膜の蒸着原料Aは、加熱され、蒸着流が発生する。
遮蔽板15は、基板Bにおける有機単分子膜を形成すべき領域Cから蒸発源と成る坩堝16の開口部Dを見た場合に、蒸着中、坩堝16の開口部Dが見えないように隠す遮蔽部材である。遮蔽板15は、基板Bに有機単分子膜を成膜する際に有機単分子膜を汚染しない材質であれば、どのような材料でも良い。遮蔽板15は、本実施形態では、例えばステンレス鋼で形成される。また、遮蔽板15は、基板Bにおける有機単分子膜を形成すべき領域Cから坩堝16の開口部Dを見た場合に坩堝16の開口部Dが見えないように隠していれば、平面視にてどのような形状でも良い。さらに、この条件を満たせば、板状でなくても良く、縦断面扇形の錐体や半球体でも縦断面円形の球体でも良い。
真空チャンバ11は、冷却源12の熱伝導部材12−2の他方端がその内部に配置されるように冷却源12が配され、基板ホルダ13、膜厚計14、遮蔽板15、坩堝16及び加熱源17を収容する筐体であり、真空ポンプ18によって内部を真空状態とした場合に真空状態を維持する。真空ポンプ18は、排気して真空チャンバ11内を減圧し、真空チャンバ11内を所定気圧の真空状態(所定の真空度)とする装置である。真空ポンプは、例えば、所定気圧の真空状態とするために、粗引きするためのロータリポンプ及び高真空に引くためのターボ分子ポンプ等を備えて構成される。
次に、本実施形態の動作について説明する。
(実施形態の動作)
有機単分子膜を形成するための基板Bを用意し、基板Bを基板ホルダ13で支持する。基板Bは、成膜する有機単分子に応じて、樹脂や金属(合金を含む)等の様々な材料を用いることができる。また、この有機単分子膜を形成するための蒸着原料Aを坩堝16に投入して貯留する。そして、真空チャンバ11を気密し、真空チャンバ11内が所定気圧の真空状態となるまで、真空ポンプ18を動作させる。真空チャンバ11内の気体が排気され、真空チャンバ11内が所定気圧の真空状態となると、真空チャンバ11内が成膜室となり、有機単分子膜の成膜が開始可能となる。
(実施形態の動作)
有機単分子膜を形成するための基板Bを用意し、基板Bを基板ホルダ13で支持する。基板Bは、成膜する有機単分子に応じて、樹脂や金属(合金を含む)等の様々な材料を用いることができる。また、この有機単分子膜を形成するための蒸着原料Aを坩堝16に投入して貯留する。そして、真空チャンバ11を気密し、真空チャンバ11内が所定気圧の真空状態となるまで、真空ポンプ18を動作させる。真空チャンバ11内の気体が排気され、真空チャンバ11内が所定気圧の真空状態となると、真空チャンバ11内が成膜室となり、有機単分子膜の成膜が開始可能となる。
真空チャンバ11内が所定気圧の真空状態となった後に、冷却源12によって基板Bを所定温度に冷却する。そして、加熱源17によって坩堝16を加熱する。なお、遮蔽板15は、略室温である。坩堝16が加熱されると、貯留されている蒸着原料Aは、加熱され、昇華温度に達すると蒸発し、蒸発源(蒸着源)としての坩堝16の開口部Dから飛び出す。
従来の真空蒸着法では、基板への蒸着を禁止するシャッタが在るが、このシャッタは、蒸着を開始すると開けられ、蒸着中は開けた状態が維持される。このため、従来の真空蒸着法では、蒸発して飛び出した蒸着原料は、直接的に基板に到達し、基板上に薄膜を形成する。
一方、本発明に係る有機単分子膜成膜方法では、注目すべきは、蒸着流の発生している蒸着中でも、坩堝16と基板Bとの間に遮蔽板15が在ることである。そして、基板Bが冷却されていることである。詳細な理由は、今後の研究を待つ必要があるが、本発明者らは、次のような現象が生じているものと推察している。即ち、蒸発して飛び出した蒸着原料Aの有機単分子は、遮蔽板15を回り込んで、遮蔽板15より温度の低い基板Bを選択し、基板Bの表面に到達した有機単分子は、基板Bとの相互作用により吸着して分子鎖が基板Bに略垂直な向きに配向した有機単分子膜を形成する。
蒸着レートは、膜厚計14によってモニタされ、所定値となるように加熱源17の温度が調整される。膜厚計14によって基板Bに有機単分子膜が形成されたと判断すると、有機単分子膜の成膜を終了し、加熱源17の加熱を停止し、そして、冷却源12の冷却を停止する。
成膜の終了後、真空チャンバ11内を真空に保持した状態で基板Bを自然に昇温させ、基板Bの温度が略室温に達した後に、有機単分子膜を成膜した基板Bを真空チャンバ11から取り出す。
このように有機単分子膜成膜装置1を用いることによって、真空中において、基板Bに有機単分子膜を成膜することができる。
次に、一実施例として、この有機単分子膜成膜装置1を用いてシリコン基板上にフッ化ビニリデン単分子膜(以下、「VDF単分子膜」と略記する。)を成膜する場合について説明する。
(実施例)
まず、111面のシリコン基板B’を用意し、シリコン基板B’を基板ホルダ13で支持し、保持する。シリコン基板B’の表面は、通常、数nmの自然酸化膜が形成されているが、そのまま用いた。
(実施例)
まず、111面のシリコン基板B’を用意し、シリコン基板B’を基板ホルダ13で支持し、保持する。シリコン基板B’の表面は、通常、数nmの自然酸化膜が形成されているが、そのまま用いた。
次に、このVDF単分子膜を形成するための蒸着原料A’として例えば12量体のVDFオリゴマーを坩堝16に投入して貯留する。図2は、12量体のフッ化ビニリデンオリゴマーの分子構造を示す模式図である。本実施例に用いたVDFオリゴマーは、図2に示すように、CF3−(CH2CF2)12−I、即ち、12量体(重合数nが12)であって末端のCH3をハロゲン原子の一つであるヨウ素原子Iで置換したものである。VDFオリゴマーは、水素原子とフッ素原子との電気陰性度の差により、分子内に電子分布の偏りが生じ、分子鎖の方向と略直行する方向に自発分極による電気双極子が生じる。図2に示すように、分子鎖の方向に水素原子とフッ素原子とが交互に配置された分子構造を有する場合、電気双極子は、同一方向に揃うことになり、強誘電性を示す。なお、図2の最小間隔の左斜め線模様の○は水素原子Hを示し、次に中間間隔の左斜め線模様の○は炭素原子Cを示し、最大間隔の左斜め線模様の○はヨウ素原子Iを示し、そして、右斜め線模様の○はフッ素原子Fを示す。
次に、真空チャンバ11を気密し、真空チャンバ11内が約1×10−5Paの真空状態となるまで、真空ポンプ18を動作させる。
真空チャンバ11内が約1×10−5Paの真空状態となった後に、液体ヘリウムを冷却源12の貯留槽12−1に投入すると共に電熱線ヒータ12−3で温度調節を行うことによって、冷却源12でシリコン基板B’を−150℃(123K)に維持する。そして、加熱源17によって坩堝16を加熱する。なお、遮蔽板15は、略室温である。坩堝16が加熱されると、貯留されているVDFオリゴマーは、加熱され、昇華温度に達すると蒸発し、蒸発源としての坩堝16の開口部Dから飛び出す。ここで、膜厚計14によって蒸着レートをモニタし、蒸着レートが1.0nm/分となるようにVDFオリゴマーの昇華温度を勘案して120〜150℃の範囲で加熱源17の温度を調整した。
そして、膜厚計14によってシリコン基板B’に有機単分子膜が形成されたと判断すると、VDF単分子膜の成膜を終了し、加熱源17の加熱を停止し、そして、液体ヘリウムの供給停止や自然蒸発等により、冷却源12の冷却を停止する。
VDF単分子膜の成膜の終了後、真空チャンバ11内を真空に保持した状態でシリコン基板B’を自然に昇温させ、シリコン基板B’の温度が略室温に達した後に、VDF単分子膜を成膜したシリコン基板B’を真空チャンバ11から取り出した。
このように有機単分子膜成膜装置1を用いて111面のシリコン基板B’上に成膜した膜がVDF単分子膜であることを検証するために、X線反射率測定及び原子間力顕微鏡観察を行った。そして、シリコン基板B’上に成膜したVDF単分子膜の結晶構造を調べるため、単分子膜面内X線回折測定を行った。
図3は、X線反射率測定の結果を示す図である。図3の横軸は度[deg]単位で表す回折角2θであり、その縦軸はX線反射率である。X線反射率測定は、膜面に対し角度θでX線を入射させ、入射方向と対向する位置であって膜面に対し角度θの位置でその反射X線を測定した。X線反射率測定は、被測定面が深さ方向に均質である場合には入射するX線が全反射する臨界の角度(臨界角)を過ぎると一様に低下するが、被測定面が深さ方向に均質ではなく界面が存在すると該界面で反射したX線が干渉し、干渉縞が現れるようになる。図3に示すX線反射率測定の結果から、シリコン基板B’上には、膜面から深さ方向(膜厚方向)に、膜厚が約0.31nm、平均密度が約3.69g/cm3の層と、膜厚が約2.87nm、平均密度が約0.93g/cm3の層とが形成されていることが分かる。
図4は、原子間力顕微鏡による測定結果を示す図である。図4(A)は、表面形状像であり、図4(B)は、図(A)の白線におけるラインプロファイルである。図4(B)の横軸はnm単位で表す測定方向の距離を示し、その縦軸はnm単位で表す基板からの高さ(膜厚)を示す。図4(B)に示す原子間力顕微鏡による測定結果から、シリコン基板B’上には、約3.2nmの膜が形成されていることが分かる。
これらのことから、シリコン基板B’上に成膜された膜モデルとして図6(A)の右側に示すモデルが考えられる。ここで、CF3−(CH2CF2)12−の分子鎖の長さが約2.87nmであり、ヨウ素原子Iの大きさが約0.31nmである。図6は、シリコン基板上に成膜した膜の様子を示す模式図である。図6(A)は、膜の断面模式図であり、図6(B)は、膜の表面模式図である。以上より、シリコン基板B’上には、図6(A)の左側に示すように、VDFオリゴマーの分子鎖がシリコン基板B’に略垂直な向きに配向したVDF単分子膜が成膜されていると判断される。
一方、図5は、単分子膜面内X線回折測定の結果を示す図である。図5の横軸は度[deg]単位で表す薄膜面内回折角2θχであり、その縦軸は強度である。なお、図5中の200等の数値は、結晶方位を示す。単分子膜面内X線回折測定は、膜面に対し角度0.23[deg]でX線を入射させ、膜面と平行方向に回折したX線の回折角を測定した。
図5に示す単分子膜面内X線回折測定の結果から約20.5゜の付近に大きなピークが存在し、約36゜の付近に僅かなピークが存在することが分かる。VDF単分子膜は、強誘電体構造ではない場合には、約18゜の付近にもピークが存在するが、図5の単分子膜面内X線回折測定の結果には、このピークが認められない。このため、図6(B)に示すように、シリコン基板B’上に成膜されたVDF単分子膜は、双極子が略一定方向に略揃った強誘電構造を形成していると判断される。なお、図6(B)における白線の矩形は、結晶構造の一単位を示す。
以上から、有機単分子膜成膜装置1を用いることによって、真空中において、シリコン基板B’に強誘電性のVDF単分子膜が成膜されることが分かる。
1 有機単分子膜成膜装置
11 真空チャンバ
12 冷却源
13 基板ホルダ
14 膜厚計
15 遮蔽板
16 坩堝
17 加熱源
18 真空ポンプ
A、A’ 蒸着原料
B、B’ 基板
C 領域
D 開口部
11 真空チャンバ
12 冷却源
13 基板ホルダ
14 膜厚計
15 遮蔽板
16 坩堝
17 加熱源
18 真空ポンプ
A、A’ 蒸着原料
B、B’ 基板
C 領域
D 開口部
Claims (3)
- 真空引きされる成膜室内に蒸着原料を収容し、前記蒸着原料を加熱手段により加熱して蒸発させ、前記成膜室内に保持した基板上に前記蒸発した蒸着原料による有機単分子膜を成膜する有機単分子膜成膜装置において、
前記基板を冷却する冷却源と、
前記基板における前記有機単分子膜を形成すべき領域から蒸発源を見た場合に、蒸着中、前記蒸発源が見えないように隠す遮蔽部材とを備えること
を特徴とする有機単分子膜成膜装置。 - 前記蒸着原料は、フッ化ビニリデンオリゴマーであること
を特徴とする請求項1に記載の有機単分子膜成膜装置。 - 冷却した基板上に、有機単分子膜の蒸着原料を真空中において、前記基板における前記有機単分子膜を形成すべき領域から蒸発源を見た場合に、蒸着中、前記蒸発源が見えないように隠す遮蔽部材を介して蒸着すること
を特徴とする有機単分子膜成膜方法。
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008238470A (ja) * | 2007-03-26 | 2008-10-09 | Daikin Ind Ltd | 強誘電性の積層体とその製造方法 |
JP2008240025A (ja) * | 2007-03-26 | 2008-10-09 | Kyoto Univ | 薄膜形成装置、薄膜形成方法、分極反転可能化方法、強誘電特性測定方法、薄膜、およびキャパシタ構造 |
KR101116293B1 (ko) * | 2008-12-22 | 2012-03-14 | 한국전자통신연구원 | 증발법을 이용한 자기 조립 단분자막 제조 방법 및 장치 |
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2005
- 2005-07-29 JP JP2005220458A patent/JP4590560B2/ja active Active
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JP4590560B2 (ja) | 2010-12-01 |
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