JP2007023914A - ホールスラスタシミュレータ - Google Patents

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Abstract

【課題】実機のホールスラスタと同様の過渡的部分を模擬できるホールスラスタシミュレータを提供すること。
【解決手段】電流値が制御できる電流モード電子負荷50と、抵抗値が制御できるアノード抵抗モード電子負荷51とを並列に備えるアノード疑似負荷8と、抵抗値が制御できるキーパ抵抗モード電子負荷52と、キーパ抵抗モード電子負荷52よりもインピーダンスが高い高抵抗負荷53とを並列に備えるキーパ擬似負荷9と、抵抗値を制御できるヒータ抵抗モード電子負荷54を備えるホローカソードヒータ擬似負荷10とを備える。
【選択図】図1

Description

この発明はホールスラスタをシミュレートするホールスラスタシミュレータに関するものである。
従来、ホールスラスタをシミュレートするホールスラスタシミュレータは抵抗のみで構成されていた。(例えば、非特許文献1参照)
栗木恭一・荒川義博偏 電気推進ロケット入門 東京大学出版 2003年5月28日 P141-155
従来のホールスラスタシミュレータでは、抵抗のみで構成されていたため、実機のホールスラスタの様な過渡的な部分を模擬することができなかった。
この発明に関わるホールスラスタシミュレータは、実機のホールスラスタと同様の過渡的部分を模擬できるホールスラスタシミュレータを提供することを目的とする。
本発明に関わるホールスラスタシミュレータは、電流値が制御できる電流モード電子負荷と、抵抗値が制御できるアノード抵抗モード電子負荷とを並列に備えるアノード疑似負荷と、抵抗値が制御できるキーパ抵抗モード電子負荷と、前記キーパ抵抗モード電子負荷よりもインピーダンスが高い高抵抗負荷とを並列に備えるキーパ擬似負荷と、抵抗値を制御できるヒータ抵抗モード電子負荷を備えるホローカソードヒータ擬似負荷と、を備えるものである。
この発明によれば、実機のホールスラスタと同様の過渡的部分を模擬できるホールスラスタシミュレータを提供できる。
実施の形態1.
図1から図4の発明の実施の形態1におけるホールスラスタシミュレータを示す。図1において、衛星システムの電源装置1は、ホールスラスタ用電源装置7と接続されている。ホールスラスタ用電源装置7は、ホールスラスタシミュレータ14に接続されている。
ホールスラスタ用電源7は、アノード電源2、キーパ電源3、ホローカソードヒータ電源4、内部電磁石電源5、外部電磁石電源6を備えている。
アノード電源2、キーパ電源3、ホローカソードヒータ電源4は、それぞれ図示しないホールスラスタのアノード、キーパに、ホローカソードヒータに電源を供給するものである。また、内部電磁石電源5は内部電磁石に、外部電磁石電源6は外部電磁石に電源を供給するものである。なお、内部電磁石電源5と外部電磁石6とは共通電源でも良い。
ホールスラスタシミュレータ14は、アノード擬似負荷8、キーパ擬似負荷9、ホローカソードヒータ擬似負荷10、内部電磁石擬似負荷11、外部電磁石擬似負荷12及び、過渡現象制御部13を備えている。
アノード擬似負荷8は、アノード電源2と接続される。アノード擬似負荷8は、電流モード電子負荷50とアノード抵抗モード電子負荷51とを並列に備えている。電流モード電子負荷50は、アノード電源2の電圧を監視し、イオンプラズマが生成可能となる電圧になった時に急峻に電流を流す電流源である。また、アノード抵抗モード電子負荷51は、通常の電子負荷である。
キーパ擬似負荷9は、キーパ電源3と接続される。キーパ擬似負荷9は、キーパ抵抗モード電子負荷52と高抵抗負荷53とを並列に備えている。高抵抗負荷53は、キーパ抵抗モード電子負荷52よりもインピーダンスが高い。イオンプラズマが生成前の状態は、高抵抗負荷53により模擬される。つまり、高抵負荷のインピーダンスは、一般的に数百kΩから数MΩである。イオンプラズマ生成が発生する瞬間は、キーパ抵抗モード電子負荷52によりある所定の数式によって示されるインピーダンスとなる。
ホローカソードヒータ擬似負荷10は、ホローカソードヒータ電源4と接続される。ホローカソードヒータ擬似負荷10は、ヒータ抵抗モード電子負荷54を備える。ヒータ抵抗モード電子負荷54は、ある所定の数式によって示される範囲の時間変化で、徐々に擬似負荷のインピーダンスが増大するように動作する。
内部電磁石擬似負荷11は、内部電磁石電源5と接続される。また、外部電磁石擬似負荷12は、外部電磁石電源6と接続される。
アノード擬似負荷8と、キーパ擬似負荷9と、ホローカソードヒータ擬似負荷10とは、過渡現象制御部13により制御される。つまり、過渡現象制御部13は、電流モード電子負荷51、アノード抵抗モード電子負荷51、キーパ抵抗モード電子負荷52、ヒータ抵抗モード電子負荷53のON/OFFを制御する。また、過渡現象制御部13は、電流モード電子負荷50の電流値を制御すると共に、前記各抵抗モード電子負荷のインピーダンスを制御する。詳細を図2から図4にて説明する。
図2にアノード擬似負荷8の特性を示した図である。アノード擬似負荷8は、過渡現象制御部13からアノード過渡電流制御信号を受けて、アノード擬似負荷8がある任意の電圧になった時に、急峻に電流を流す電流モード電子負荷50により、アノードのイオンプラズマ生成時を模擬する。
図2(1)は電流モード電子負荷50の電流シーケンス100と、抵抗モード電子負荷51の抵抗シーケンス101とのON/OFFを示したである。電流シーケンス100はt1でONし、t2でOFFする。t1はアノードにおいてイオンプラズマが発生した時刻を示している。この時刻は実機ホールスラスタのアノード電圧の測定データから求められる数値である。
また、抵抗シーケンス100は、t3でONする。t2とt3の間の時間は、電流モード電子負荷50と、抵抗モード電子負荷51とが同時にONしている時間である。なお、t2及びt3の時刻は、ホールスラスタ用電源装置7の電源出力特性によっても変化するため、ホールスラスタ用電源装置7と実機ホールスラスタの測定データから求められる近似値を指定すると擬似動作特性をもっともよく示す。
図2(2)は、電流モード電子負荷50の電流変化を示すものである。t1からt2の間電流モード電子負荷50は電流源として電流を供給する。
アノード擬似負荷8は、実機のホールスラスタのイオンプラズマが生成可能となった瞬間のt1で、電流モード電子負荷50はONとなり電流を供給する。その後t2でアノード抵抗モード電子負荷51がONする。t3で電流モード電子負荷50はOFFとなり、定常状態となる。この定常状態は、ホールスラスタが安定的にイオンプラズマを生成している状態を模擬している。
つまり、アノード擬似負荷8の前記動作により、アノード電源2は実際のホールスラスタのアノード負荷と同様の過渡状態を得ることができる。
図3は、キーパ擬似負荷9のインピーダンス特性を示す図である。キーパ擬似負荷9は、イオンプラズマの生成前は、高抵抗負荷を示す。また、イオンプラズマが発生する瞬間は、過渡現象制御部13からのキーパ電流制御信号によりキーパ抵抗モード電子負荷52を過渡変化させる。キーパ抵抗モード電子負荷52の過渡変化は、別段に示す数式により示される。
図3における時刻t1は、高抵抗負荷53による高負荷インピーダンスから、キーパ抵抗モード電子負荷52が主体となる切り替え時間を示している。つまり、キーパ抵抗モード電子負荷52がONする時間を示し、任意の時刻でキーパ抵抗モード電子負荷52をONに切り替えることが可能である。また、逆に任意の時間でのキーパ抵抗モード電子負荷52をOFFに切り替えることも可能である。これにより、キーパ電源3から見たインピーダンスは、図3に示すように1MΩから20Ωに切り替わる。
図4は、ホローカソードヒータ擬似負荷10のインピーダンス特性を示す図である。ホローカソードヒータ擬似負荷10は、ホローカソードヒータ電源4の電圧を監視し、過渡現象制御部13からヒータ電流制御信号によりヒータ抵抗モード電子負荷54を過渡変化させる。ヒータ抵抗モード電子負荷54の過渡変化は、別段に示す数式により示される。これにより、ホローカソードヒータ電源4からみたインピーダンスは、図4に示すように変化する。
以上のように、アノード擬似負荷8、キーパ擬似負荷9、ホローカソードヒータ擬似負荷10を備えることにより、実機のホールスラスタと同様の過渡的部分を模擬できるホールスラスタシミュレータを提供できる。
キーパ抵抗モード電子負荷52の過渡変化を示す数式について、以下で述べる。キーパ抵抗モード電子負荷52で模擬する導電率をg、キーパ陰極のアーク放電電位差をVp、キーパ電源3のキーパ電流をIとすると、単位時間当たりの伝導率変化は式(1)となる。なお、アーク放電電位差Vpは実機のホールスラスタから実測することができる。
Figure 2007023914
実験データを検証した結果、単位時間値の伝導率変化は式(2)で示すことができる。ここで、α1、α2、βは定数であり、実機のホールスラスタの実測データから得ることができる。
Figure 2007023914
式(2)の右辺第1項は、放電開始時の電流の急激な立ち上がりを表す項であり、電子衝突による急激な電子増倍を考えている。具体的には電子衝突によるイオン化周波数である。これは電圧に強く依存するような関数であり、一例として電圧の6乗で示した。
第2項はアークのエネルギーバランスに基づく項であり、アーク放電が定常的に維持されているときに有効となる項である。従って、放電の開始時ではなく、アーク放電が安定に維持されているときの、電流と電圧の関係を与える項である。一般にアーク放電では、電流を大きくすると電圧が小さくなる、という負抵抗性の特性を示すが、この特性はこの第2項によって表現可能である。
第3項は拡散による電子損失を表す項である。すなわち電圧が非常に強いとき、右辺第1項が支配的となり絶縁破壊が生じる。放電開始によって電圧が低くなると右辺第2項が支配的となり、アークの安定な維持を表現する。さらに電圧が低くなるとアークが維持できなくなり、放電が消滅していくが、この様子が右辺第3項によって表現できる。
次に式(1)のα1、α2、βの算出方法を述べる。アーク放電が安定に維持されているとき、式(1)の左辺はゼロとなる。これを変形すると、式(3)が得られる。実機のホールスラスタで測定したアーク放電電位差をVp及びキーパ電源3のキーパ電流をIを代入することで、α1、α2、βを算出することができる。
Figure 2007023914
以上のように、キーパ抵抗モード電子負荷52の過渡変化を示す式(2)で示すことができる。これにより、過渡現象制御部13は、キーパ擬似負荷9のキーパ抵抗モード電子負荷52を式(2)に基づき制御する。
ヒータ抵抗モード電子負荷54の過渡変化を示す数式について、以下で述べる。
ホローカソードの放電は陰極からの熱電子の量に非常に強く依存しており、熱電子の量は陰極の温度に依存している。従って、ホローカソードヒータ擬似負荷10のヒータ抵抗モード電子負荷54の過渡変化を数式で示すためには、ホローカソードの陰極温度のモデルが必要である。
ホローカソードヒータに電流を流すとジュール熱によってヒータ部の温度が上昇する。するとヒータの抵抗が高くなる。一方で熱は熱伝導や輻射によって損失するので、ヒータの温度変化は式(4)で表される。
Figure 2007023914
式(4)において、右辺第1項はジュール熱による加熱、第2項は熱拡散、第3項は輻射熱を表す。なお、式(4)においてθは温度、θ0は周囲温度、ρは密度、sは比熱、kは熱伝導率、Pをヒータへの単位時間あたりの入熱、Vfをヒータ線の体積、Sfをヒータ及び陰極などが光を放出する実効的な面積である。また、σはステファン・ボルツマン係数である。
式(4)は空間微分の項を含むなど、以降のモデル化には複雑であるので、温度勾配が一定であると仮定すれば、式(5)のような時間微分のみの常微分方程式に書き換えることができる。なお、式(5)において、αh、βh、γhは測定結果から求まる定数である。
Figure 2007023914
ここで、ホローカソードヒータ温度をTcとし、初期温度をT0とすると、式(5)は、式(6)に変形できる。
Figure 2007023914
ホローカソードヒータ温度Tcが決まれば、ホローカソードヒータの透過インピーダンスZhはTcの関数として示すことができる。例えば、ホローカソードヒータが金属材料と仮定すれば、1次または2次関数として示すことができ、また半導体材料と仮定すれば金属材料とは異なる関数で示すことができる。つまり、ZhはTcを用いて式(7)の様に示すことができる。
Figure 2007023914
以上のように、ヒータ抵抗モード電子負荷54の過渡変化を示す式(7)で示すことができる。これにより、過渡現象制御部13は、ホローカソードヒータ擬似負荷10のヒータ抵抗モード電子負荷54を式(7)に基づき制御する。なお、式(7)のTcは、式(6)により求めることができる。
本発明に関わるホールスラスタシミュレータは、電流値が制御できる電流モード電子負荷と、抵抗値が制御できるアノード抵抗モード電子負荷とを並列に備えるアノード疑似負荷と、抵抗値が制御できるキーパ抵抗モード電子負荷と、前記キーパ抵抗モード電子負荷よりもインピーダンスが高い高抵抗負荷とを並列に備えるキーパ擬似負荷と、抵抗値を制御できるヒータ抵抗モード電子負荷を備えるホローカソードヒータ擬似負荷と、を備えるものであり、実機のホールスラスタと同様の過渡的部分を模擬できる。
このように、本発明によれば実機のホールスラスタと同様の過渡的部分を模擬できるホールスラスタシミュレータを提供できる。
本発明の実施の形態1を示す図である。 アノード擬似負荷8の特性を示す図である。 キーパ擬似負荷9のインピーダンス特性を示す図である。 ホローカソードヒータ擬似負荷10のインピーダンス特性を示す図である
符号の説明
1 衛星システムの電源装置、2 アノード電源、3 キーパ電源、4 ホローカソードヒータ電源部、5 内部電磁石電源、6 外部電磁石電源、7 ホールスラスタ用電源装置、8 アノード擬似負荷、9 キーパ擬似負荷、10 ホローカソードヒータ擬似負荷、11 内部電磁石擬似負荷、12 外部電磁石擬似負荷、13 過渡現象制御部、14 ホールスラスタシミュレータ、50 電流モード電子負荷、51 アノード抵抗モード電子負荷、52 キーパ抵抗モード電子負荷、53 高抵抗負荷、54 ヒータ抵抗モード電子負荷、100 電流シーケンス、101 抵抗シーケンス。

Claims (5)

  1. 電流値が制御できる電流モード電子負荷と、抵抗値が制御できるアノード抵抗モード電子負荷とを並列に備えるアノード疑似負荷と、
    抵抗値が制御できるキーパ抵抗モード電子負荷と、前記キーパ抵抗モード電子負荷よりもインピーダンスが高い高抵抗負荷とを並列に備えるキーパ擬似負荷と、
    抵抗値を制御できるヒータ抵抗モード電子負荷を備えるホローカソードヒータ擬似負荷と、を備えるホールスラスタシミュレータ。
  2. 電磁石の負荷を模擬する内部電磁石擬似負荷と、外部電磁石擬似負荷と、を備える請求項1に記載のホールスラスタシミュレータ。
  3. 前記アノード抵抗モード電子負荷と、前記キーパ抵抗モード電子負荷と、前記ヒータ抵抗モード電子負荷と、のインピーダンスを制御する過渡現象制御部とを備える請求項1または請求項2に記載のホールスラスタシミュレータ。
  4. 前記キーパ抵抗モード電子負荷の導電率をgとすると、伝導率gの時間変化dg/dtは、測定データから求まる定数をα1、α2、β、キーパ陰極のアーク放電電位差をVpとすると数8である請求項1から請求項3のいずれかに記載のホールスラスタシミュレータ。
    Figure 2007023914
  5. 前記ヒータ抵抗モード電子負荷のインピーダンスZhは、ホローカソードヒータ温度Tc、初期温度T0、測定データから求まる定数αh、βh、γhとした場合数9で算出されるホローカソードヒータ温度Tcを用いて数10である請求項1から請求項3のいずれかに記載のホールスラスタシミュレータ。
    Figure 2007023914
    Figure 2007023914
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