JP2006510379A - アテローム硬化性プラーク病変の治療剤を同定するための方法ならびに組成物 - Google Patents

アテローム硬化性プラーク病変の治療剤を同定するための方法ならびに組成物 Download PDF

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Abstract

本発明は、アテローム硬化性プラークの成長、糜爛、破裂または安定性を低減および監視するための治療剤を同定する方法に関し、この方法は、ステアロイルCoAデサチュラーゼ、ホスファチジン酸ホスフェートおよびホスホイノシチド特異的ホスホリパーゼ−B1の中から選択されるタンパク質をコードする少なくとも2つの遺伝子の差示的発現を、アルドース・レダクターゼおよびアルデヒド・レダクターゼ、スフィンゴミエリナーゼ、酸性セラミダーゼ、セラミド・グルコシル・トランスフェラーゼ、スフィンゴシン・ホスフェート・リアーゼ、チモシンβ4、アルデヒド・デヒドロゲナーゼ、ATPアーゼCa++結合タンパク質ならびにCD163を含む群において選択されるタンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子の差示的発現の分析と最終的に関連付けて分析することを含む。

Description

本発明は、細胞生物学および薬理学に関する。本発明は、概して、泡沫細胞における脂質に富んだ小胞の蓄積を低減するための化合物を同定するための方法および組成物の分野に関する。本発明はまた、脂質が蓄積された細胞の集簇が病因事象であるヒト疾患において有用な治療剤を同定するための方法および組成物に関する。このヒト疾患には、アテローム硬化症、肝脂肪症および肥満症が含まれる。本発明はより具体的には、動脈プラークの成長、糜爛および破裂を調節または低減し得る新たな化合物を選択または同定するための新たな方法を記載する。本発明はまた、アテローム硬化性プラークの成長、糜爛、破裂または安定性を監視(モニタリング)するための方法および組成物、ならびに動脈プラークの成長、糜爛および破裂に関するアテローム硬化症病変の治療のためにヒトにおいて有用な治療剤を同定するための方法および組成物に関する。
本発明は、以前には相関が認められておらずアテローム硬化症の進行の間にも一緒に関連付けられることのなかった複数の遺伝子、より具体的には3つの遺伝子が、アテローム硬化性プラークの進行の間には同遺伝子の正常な発現と比較して差示的に発現され、アテローム硬化症との直接の関連が知られていない新たな遺伝子セットおよびアテローム硬化症と関連付けられている一連の参照遺伝子と同時に発現するという知見に基づく。これら3つの遺伝子は、ステアロイルCoAデサチュラーゼ(SCD)、ホスファチジン酸ホスファターゼ(PAP、EC 3.1.3.4)およびホスホイノシチド特異的ホスホリパーゼ−B1(PI−PLC、EC 3.1.4.11)をコードする。これら3つの酵素は、細胞内脂質小胞を形成するジアシルグリセリド粒子の産生および蓄積に関与する。これらの酵素はともに、新たな治療経路を同定するものであり、脂質小胞の形成を低減し得る化合物の同定およびアテローム硬化症になり易い血管部位におけるプラーク発生の制御のための新たな方法にとって標的遺伝子および/またはマーカー遺伝子としての特性を示す。
アテローム硬化症は、工業国における心血管疾患および死亡の最も重要な原因である(非特許文献1)。冠アテローム硬化症は、米国における年間500,000を超える死亡の原因であり、非常に多数の他の臨床的合併症の原因である。
アテローム硬化症は、血管の損傷に応答する防御機構として通常機能する、複雑でアンバランスな細胞および分子の反応の結果である。しかし、病的状況においては、この機構は、内皮機能不全、動脈内膜における細胞の変化ならびに脂質および泡沫細胞を含む動脈プラークの連続的な形成および成長を引き起こす。
プラークの成長および糜爛ならびに血栓症を引き起こすプラークの破裂を制御する機構は未知であり、この領域における薬物については満たされていないニーズが存在する。この過程は複数の機構が相矛盾する結果であるようである。この相矛盾する機構には例えば、脂質の沈着および除去、細胞の生存および死亡、細胞の接着および細胞外マトリクスの分解と運動性が含まれる。
アテローム硬化症は、内皮の損傷および機能不全によって特定の部位で開始される。酸化リポタンパク質(oxLDL)ならびに他の酸化因子および細胞傷害性因子の産生はおそらく、血管損傷を引き起こす初期事象である。これらの因子は、内皮細胞およびマクロファージにおいて生存機構およびアポトーシス促進機構の両方を刺激することが示されて
いる。これらの初期反応は、高脂血症、異常脂質血症、高血圧、糖尿病およびずり応力の変化の際に生じる。
内皮の機能不全は慢性炎症を引き起こし、その結果単球およびマクロファージを連続的に動員する。この現象は正常な状況においては有益であるが、病的になって動脈プラークの不安定化に寄与することもある。この過程は、感染の際の単球の動員と比較すると遅い反応であるが、一生持続し得る。活性化された内皮細胞および単球は、変性LDLを結合してこれを取り込むCD36またはLOX1のようなスカベンジャー・レセプターを発現する。この反応は、泡沫細胞の形成、動脈プラークの不安定化を引き起こし、急性血栓症を生じるプラークの破裂を引き起こす。
内皮機能不全の存在ならびに脂質沈着および泡沫細胞集簇の永久化は、その危険がある患者における血管病変の最も重大な結果である。特に、oxLDLの量はアテローム硬化症の重要な要因である。
上記要因は、コレステロール合成に関与してLDLの蓄積およびoxLDLの毒性効果を低下させる酵素の活性を調節することによって制御され得る。HMG−CoAレダクターゼを制御する阻害剤は、この概念を実証し支持する。これらの阻害剤は、アテローム硬化症を治療するために首尾よく使用されてきた。しかし、応答性の患者はわずか35%であることが示されており、また潜在的な副作用が観察されて個々の投薬量が非常に重要なパラメータであろうことが示唆された。
これらの酵素経路を対象とする多数の薬物は、アテローム硬化症の原因を治療することを意図するものである。しかし、プラークの成長および安定性を制御することによってアテローム硬化症の結果を治療し得る薬物についてのニーズが存在する。
動脈プラークの発生は複雑であり、複数の機能を有する多数の遺伝子の発現を必要とする。これらの遺伝子はプラークの発生過程に直接的または間接的に関与しうるとともに、血管細胞以外の組織においても発現され得る。標的としての特徴を示すためには、その遺伝子がアテローム硬化症の病態に直接的に関与していなければならない。
ロス・アール(Ross R. )1993年、ネイチャー誌(Nature)、第362巻、p.801−809
本発明の目的は、アテローム硬化性プラーク病変の治療剤を同定するための方法ならびに組成物を提供することである。
本発明は、ステアロイルCoAデサチュラーゼ、ホスファチジン酸ホスファターゼおよびホスホイノシチド特異的ホスホリパーゼC−B1が細胞内脂質小胞を形成するジアシルグリセリド粒子の産生および蓄積に関与する3つの酵素であり、冠アテローム硬化性プラークの進行および成長の間に同時発現および同時調節されるという知見に基づく。これら3つのタンパク質は、アルドース・レダクターゼ、アルデヒド・レダクターゼ、スフィンゴミエリナーゼ、酸性セラミダーゼ、セラミド・グルコシル・トランスフェラーゼ、スフィンゴシン・ホスフェート・リアーゼ、チモシンβ4、アルデヒド・デヒドロゲナーゼ、ATPアーゼCa++結合タンパク質およびCD163をコードする一組の基準遺伝子と共に差示的に発現される。この一組の基準遺伝子は、初期アテローム硬化性プラークではin vivoでRNAレベルおよびタンパク質レベルの両方でアップ・レギュレートされ、ヒトのアテローム硬化症の進行に直接関与することが知られている参照遺伝子と同時
発現される。
本発明は、泡沫細胞中の脂質小胞の蓄積を低減し得る分子を同定するための新たな方法および組成物を提供する。これらの分子は、アテローム硬化性プラークの成長、糜爛、破裂または安定性を低減または監視するために使用され得る。
本発明の方法は、脂質小胞が蓄積された細胞の形成を監視するために、ステアロイルCoAデサチュラーゼ、ホスファチジン酸ホスファターゼおよびホスホイノシチド特異的ホスホリパーゼC−B1をコードする3つの遺伝子のうち少なくとも2つの発現に関する分析を含む。該方法は、これらの遺伝子のうち少なくとも2つの差示的な発現の分析に基づくものである。特定の実施形態によれば、これら3つの遺伝子は、アルドース・レダクターゼおよびアルデヒド・レダクターゼ、スフィンゴミエリナーゼ、酸性セラミダーゼ、セラミド・グルコシル・トランスフェラーゼ、スフィンゴシン・ホスフェート・リアーゼ、チモシンβ4、アルデヒド・デヒドロゲナーゼ、ATPアーゼCa++結合タンパク質ならびにCD163をコードする基準遺伝子の中から選択される遺伝子のうち少なくとも1つと関連付けて研究され得る。
本発明は、細胞内脂質小胞の形成を調節する化合物をスクリーニングまたは同定する方法を提供し、この方法は、
(1)ステアロイルCoAデサチュラーゼ、ホスファチジン酸ホスファターゼおよびホスホイノシチド特異的ホスホリパーゼC−B1の中の少なくとも2つの遺伝子を発現する細胞を、1つまたは複数の候補化合物と接触させる工程と、
(2)前記細胞における細胞内脂質小胞の形成を測定する工程と、
(3)ステアロイルCoAデサチュラーゼ、ホスファチジン酸ホスファターゼおよびホスホイノシチド特異的ホスホリパーゼC−B1の中から選択される酵素のうち1つの少なくとも1つの基質の存在下で形成された脂質小胞の量を比較して、細胞内小胞の形成、サイズまたは安定性および泡沫細胞の発生を低減する化合物を選択または同定する工程と
を含む。
本発明はまた、被験体の生物学的サンプルにおけるアテローム硬化症またはアテローム硬化性プラークの進行に関連する心血管障害の診断方法を提供し、この方法は、ステアロイルCoAデサチュラーゼ、ホスファチジン酸ホスファターゼおよびホスホイノシチド特異的ホスホリパーゼC−B1の差示的発現の同時分析を含む。この方法は、アルドース・レダクターゼおよびアルデヒド・レダクターゼ、スフィンゴミエリナーゼ、酸性セラミダーゼ、セラミド・グルコシル・トランスフェラーゼ、スフィンゴシン・ホスフェート・リアーゼ、チモシンβ4、アルデヒド・デヒドロゲナーゼ、ATPアーゼCa++結合タンパク質ならびにCD163の中から選択されるタンパク質をコードする少なくとももう1つの遺伝子の差示的発現の分析からさらになり得る。
本発明は、泡沫細胞の集簇を予防または低減するために有用な化合物を同定するための方法および組成物に関する。これらの化合物は、動脈プラークの成長、糜爛および破裂に関連するアテローム硬化性病変の治療のために使用され得る。これらの化合物は、特定の細胞における脂質小胞の蓄積が病因事象を示すヒト疾患の治療のためにも使用され得る。このヒト疾患には、肝脂肪症および肥満症が含まれるがこれらに限定されない。本発明の方法は、脂質小胞形成の検出ならびにステアロイルCoAデサチュラーゼ、ホスファチジン酸ホスファターゼおよびホスホイノシチド特異的ホスホリパーゼC−B1の同時分析を含む。これら3つの酵素は、細胞内ジアシルグリセリド粒子の産生および蓄積に関与して、細胞内脂質小胞を形成する。この遺伝子セットは、試験化合物の存在下で、アルドース・レダクターゼおよびアルデヒド・レダクターゼ、スフィンゴミエリナーゼ、酸性セラミダーゼ、セラミド・グルコシル・トランスフェラーゼ、スフィンゴシン・ホスフェート・
リアーゼ、チモシンβ4、アルデヒド・デヒドロゲナーゼ、ATPアーゼCa++結合タンパク質ならびにCD163の中から選択されるタンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子の差示的発現と関連することもあればしないこともある。
このような化合物は、アテローム硬化性プラークの進行または退縮を監視するため、ならびに大量のLDLおよびoxLDLが存在する場合に血管の病変部位でのマクロファージ泡沫細胞の集簇を阻害するために有用である。したがって、本発明は、ステアロイルCoAデサチュラーゼ、ホスファチジン酸ホスファターゼおよびホスホイノシチド特異的ホスホリパーゼC−B1の中の少なくとも2つのタンパク質が、アルドース・レダクターゼおよびアルデヒド・レダクターゼ、スフィンゴミエリナーゼ、酸性セラミダーゼ、セラミド・グルコシル・トランスフェラーゼ、スフィンゴシン・ホスフェート・リアーゼ、チモシンβ4、アルデヒド・デヒドロゲナーゼ、ATPアーゼCa++結合タンパク質ならびにCD163の中から選択されるタンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子と同時に、または該少なくとも1つの遺伝子とは別に発現するのを調節する化合物、あるいは前記少なくとも2つのタンパク質の活性を調節する化合物の、アテローム硬化症またはアテローム硬化性プラークに関連する心血管障害を予防および/または治療するために有用な医薬組成物の調製のための使用に関する。
本発明は、本明細書中で以後「新たな遺伝子」と呼ばれる、脂質小胞の蓄積に関与する3つの遺伝子のセットを提供する。該遺伝子は、線維性−脂肪性動脈プラークの進行の間にマクロファージ泡沫細胞において同時にアップ・レギュレートされる。本発明はまた、本明細書中で以後基準遺伝子とも呼ばれる一組の他の遺伝子を提供する。該基準遺伝子も同じように、高脂血症条件下で、マクロファージ泡沫細胞を含む初期および進行したアテローム硬化性プラークにおいて、同遺伝子の正常な発現と比較して差示的に発現される。これら2組の遺伝子群は、アテローム硬化症になり易い血管部位でのプラークの発生を制御または低下するための新たな経路を同定し、かつ該プラークの発生を制御または低下するための標的遺伝子および/またはマーカー遺伝子としての特性を示す。
本発明は、アテローム硬化性プラークの進行および糜爛ならびにそれらの臨床的合併症を制御または低減するための方法および組成物を提供する。本発明は、ステアロイルCoAデサチュラーゼ、ホスファチジン酸ホスファターゼおよびホスホイノシチド特異的ホスホリパーゼ−B1が、線維性−脂肪性動脈プラークにおける泡沫細胞の集簇の間に同時調節されるという知見に基づく。これら3つの酵素は、ジアシルグリセリド粒子の産生および蓄積に関与して、細胞内脂質小胞を形成する。本発明はまた、この3つの遺伝子群が、アルドース・レダクターゼおよびアルデヒド・レダクターゼ、スフィンゴミエリナーゼ、酸性セラミダーゼ、セラミド・グルコシル・トランスフェラーゼ、スフィンゴシン・ホスフェート・リアーゼ、チモシンβ4、アルデヒド・デヒドロゲナーゼ、ATPアーゼCa++結合タンパク質ならびにCD163をコードする一組の基準遺伝子(基準遺伝子のセット)、ならびにヒト・アテローム硬化症の進行に直接関与することが知られている一連の参照遺伝子と同時調節されるという知見に基づく。
本発明は、細胞内脂質小胞の形成を調節する化合物をスクリーニングまたは同定する方法を提供し、この方法は、(1)ステアロイルCoAデサチュラーゼ、ホスファチジン酸ホスファターゼおよびホスホイノシチド特異的ホスホリパーゼC−B1の中の少なくとも2つの遺伝子を発現する細胞を、アルドース・レダクターゼおよびアルデヒド・レダクターゼ、スフィンゴミエリナーゼ、酸性セラミダーゼ、セラミド・グルコシル・トランスフェラーゼ、スフィンゴシン・ホスフェート・リアーゼ、チモシンβ4、アルデヒド・デヒドロゲナーゼ、ATPアーゼCa++結合タンパク質ならびにCD163をコードする基準遺伝子の中から選択されるタンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子と、個別に
接触させる、または接触させない工程と、(2)1つまたはいくつかの候補化合物の存在下で小胞の形成を測定する工程と、(3)1つまたはいくつかの化合物ならびにステアロイルCoAデサチュラーゼ、ホスファチジン酸ホスファターゼおよびホスホイノシチド特異的ホスホリパーゼC−B1の中から選択された酵素のうち1つの少なくとも1つの基質の存在下で形成された脂質小胞の量を比較して、細胞内小胞の形成、サイズまたは安定性を低減する化合物を選択または同定する工程とを含む。
本発明は、プラークの進行または退縮を監視するため、ならびに大量のLDLおよびoxLDLが存在する場合に血管の病変部位でのマクロファージ泡沫細胞の集簇を阻害するための方法および組成物に関する。この方法は、ステアロイルCoAデサチュラーゼ、ホスファチジン酸ホスファターゼおよびホスホイノシチド特異的ホスホリパーゼ−B1の中から選択されるタンパク質をコードする新たな遺伝子のうち少なくとも2つの差示的発現を、アルドース・レダクターゼおよびアルデヒド・レダクターゼ、スフィンゴミエリナーゼ、酸性セラミダーゼ、セラミド・グルコシル・トランスフェラーゼ、スフィンゴシン・ホスフェート・リアーゼ、チモシンβ4、アルデヒド・デヒドロゲナーゼ、ATPアーゼCa++結合タンパク質ならびにCD163の中のタンパク質をコードする少なくとも1つの基準遺伝子と関連付けて、または関連付けずに分析することを含む。
前記分析は、ヒトの細胞もしくは動物の細胞、組織切片または動物モデルにおいて実施される。
アテローム硬化症の予後的および診断的な評価のための方法を以下に述べるが、この方法には、アテローム硬化症になりやすい素因を示す被験体の同定およびアテローム硬化性プラークの画像化が含まれる。本発明は、被験体の生物学的サンプルにおけるアテローム硬化症またはアテローム硬化性プラークに関連する心血管障害の診断方法を提供し、この方法は、ステアロイルCoAデサチュラーゼ、ホスファチジン酸ホスフェートおよびホスホイノシチド特異的ホスホリパーゼ−B1の中から選択されるタンパク質をコードする少なくとも2つの遺伝子の差示的発現を、アルドース・レダクターゼおよびアルデヒド・レダクターゼ、スフィンゴミエリナーゼ、酸性セラミダーゼ、セラミド・グルコシル・トランスフェラーゼ、スフィンゴシン・ホスフェート・リアーゼ、チモシンβ4、アルデヒド・デヒドロゲナーゼ、ATPアーゼCa++結合タンパク質ならびにCD163の中の1つのタンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子と関連付けて、または関連付けずに分析することを含む。
前記分析は、ヒトまたは動物の細胞または組織切片において実施される。
別の実施形態によれば、本発明の方法は、
固体表面上のアレイ状の複数の異なるリガンドを提供する工程であって、前記異なるリガンドは、ステアロイルCoAデサチュラーゼ、ホスファチジン酸ホスフェートおよびホスホイノシチド特異的ホスホリパーゼ−B1の中から選択されるタンパク質をコードする少なくとも2つの遺伝子の異なる部分に対して相補的であり、アルドース・レダクターゼおよびアルデヒド・レダクターゼ、スフィンゴミエリナーゼ、酸性セラミダーゼ、セラミド・グルコシル・トランスフェラーゼ、スフィンゴシン・ホスフェート・リアーゼ、チモシンβ4、アルデヒド・デヒドロゲナーゼ、ATPアーゼCa++結合タンパク質ならびにCD163の中の1つのタンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子または同タンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子の異なるセグメントに相補的である遺伝子を伴う、あるいは伴わないことを特徴とする工程と、
前記リガンドとその標的との相互作用を可能にする条件下で、リガンドの標的を含む可能性があるサンプル溶液をリガンドのアレイに適用する工程と、
該アレイの異なるリガンドと標的との相互作用を測定する工程と
を含む。
好ましい実施形態において、リガンドは核酸プローブでありかつサンプルは標的核酸を含み、核酸標的とプローブとのハイブリダイゼーションが測定される。有利には、この核酸プローブはオリゴヌクレオチドである。
本発明のさらなる実施形態は、固体表面上に1平方センチメートル当たり2〜約200のオリゴヌクレオチドを個別の位置に局在化させてなるアレイを提供する。
サンプルは、例えばアテローム硬化性プラークを発症している患者由来である。
本発明の方法は、高脂血症条件下かつ高レベルの血中グルコースおよびインスリンの非存在下で、初期および進行期のマクロファージを含むアテローム硬化性プラークにおける、ステアロイルCoAデサチュラーゼ、ホスファチジン酸ホスフェートおよびホスホイノシチド特異的ホスホリパーゼ−B1の中で選択されるタンパク質をコードする少なくとも2つの遺伝子の差示的発現を、アルドース・レダクターゼおよびアルデヒド・レダクターゼ、スフィンゴミエリナーゼ、酸性セラミダーゼ、セラミド・グルコシル・トランスフェラーゼ、スフィンゴシン・ホスフェート・リアーゼ、チモシンβ4、アルデヒド・デヒドロゲナーゼ、ATPアーゼCa++結合タンパク質ならびにCD163の中の1つのタンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子と関連付けて、または関連付けずに測定すること、ならびに前記測定を前記タンパク質の正常な発現と比較することを含む。
この新たな3つの遺伝子および基準遺伝子のセットは、哺乳動物およびヒトにおけるアテローム硬化性プラークの進行の間に差示的に発現されることが知られている参照遺伝子と同時発現される。本発明によれば、これらの参照遺伝子は、プラークの進行の程度をプロファイリングするために、前記の基準遺伝子セットおよび3つの遺伝子のセットと組み合わせて利用される。
参照遺伝子とは、ヒト・アテローム硬化性プラークにおいて発現されることがすでに記載されている一組の遺伝子(遺伝子のセット)をいう。基準遺伝子とは、アルドース・レダクターゼおよびアルデヒド・レダクターゼ、スフィンゴミエリナーゼ、酸性セラミダーゼ、セラミド・グルコシル・トランスフェラーゼ、スフィンゴシン・ホスフェート・リアーゼ、チモシンβ4、アルデヒド・デヒドロゲナーゼ、ATPアーゼCa++結合タンパク質ならびにCD163をコードする遺伝子をいう。新たな遺伝子のセットとは、線維性−脂肪性プラークの進行に関与することがこれまで報告されていなかったステアロイルCoAデサチュラーゼ、ホスファチジン酸ホスフェートおよびホスホイノシチド特異的ホスホリパーゼ−B1をいう。この新たな遺伝子セットと基準遺伝子および参照遺伝子との関連は、アテローム硬化症の標的分子についての典型的な特徴を規定する。既知の標的遺伝子の各々について、変化の倍数の平均を評価する。新たな遺伝子および基準遺伝子は、アテローム硬化性プラークの発生に関連を有し、上記参照遺伝子セットを参照して特徴付けられてこれらの参照遺伝子と類似の発現パターンを示し、冠状動脈中の同じ位置に位置する非アテローム硬化症の血管内皮由来または刺激を受けていない血中単球由来の遺伝子と比較した場合に、顕著かつ統計的に有意に差示的に誘導された。
アテローム硬化性プラークに代表的な参照遺伝子のセットには、:CD68、CD36(両方ともマクロファージ系統のマーカーである)などの膜結合遺伝子;内皮細胞のマーカーであるPECAM1;TLR4、HSP60およびHSP70、ガレクチン3ならびにIL1−Rのような炎症応答のマーカー;HIF−1およびパラオキサナーゼ(Paraoxanase )3を含む酸化ストレスのマーカー、NADHデヒドロゲナーゼのような代謝マーカー;LDL−RおよびVLDL−Rのようなリポタンパク質レセプター、が含まれるがこれらに限定されない。
アテローム硬化症の病変部位での泡沫細胞中の脂質小胞の蓄積に関する上記タンパク質
の活性を制御し得る薬剤を検出するための方法についても以下に述べる。
したがって、本発明は、アテローム硬化症またはアテローム硬化性プラークに関連する心血管障害の治療のために有用な化合物をスクリーニングする方法に関し、この方法は、試験化合物の存在下で、ステアロイルCoAデサチュラーゼ、ホスファチジン酸ホスフェートおよびホスホイノシチド特異的ホスホリパーゼ−B1の中から選択されるタンパク質をコードする少なくとも2つの遺伝子の差示的発現の分析を、アルドース・レダクターゼおよびアルデヒド・レダクターゼ、スフィンゴミエリナーゼ、酸性セラミダーゼ、セラミド・グルコシル・トランスフェラーゼ、スフィンゴシン・ホスフェート・リアーゼ、チモシンβ4、アルデヒド・デヒドロゲナーゼ、ATPアーゼCa++結合タンパク質ならびにCD163の中の1つのタンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子と関連付けて、または関連付けずに実施し、泡沫細胞中の脂質小胞の定量と関連付けることを含む。ステアロイルCoAデサチュラーゼ、
前記分析はヒトの細胞もしくは動物の細胞、組織切片または動物モデルにおいて実施される。前記分析はまた、高スループットの方法のために固体支持体上で実施され得る。このような実施形態において、本発明は:
固体表面上のアレイ状の複数の異なるリガンドを提供する工程であって、前記異なるリガンドは、ステアロイルCoAデサチュラーゼ、ホスファチジン酸ホスフェートおよびホスホイノシチド特異的ホスホリパーゼ−B1の中から選択される少なくとも2つのタンパク質のすべてまたは一部から構成されており、アルドース・レダクターゼおよびアルデヒド・レダクターゼ、スフィンゴミエリナーゼ、酸性セラミダーゼ、セラミド・グルコシル・トランスフェラーゼ、スフィンゴシン・ホスフェート・リアーゼ、チモシンβ4、アルデヒド・デヒドロゲナーゼ、ATPアーゼCa++結合タンパク質ならびにCD163の中の少なくとも1つのタンパク質を伴う、または伴わないことを特徴とする工程と、
試験化合物を含む溶液をリガンドのアレイに適用する工程と、
このアレイの異なるリガンドと試験化合物との相互作用(例えば結合)を測定する工程と
を含む。
この試験化合物は、タンパク質または低分子量の分子であり得る。
本発明の上記の方法に従う分析は、mRNAレベルまたはタンパク質レベルで実施され得る。
本発明に従う、アテローム硬化症またはアテローム硬化性プラークに関連する心血管障害の治療のために有用な化合物をスクリーニングする方法は、
試験化合物の存在下で、ステアロイルCoAデサチュラーゼ、ホスファチジン酸ホスフェートおよびホスホイノシチド特異的ホスホリパーゼ−B1の中から選択される少なくとも2つのタンパク質についてのアッセイを、アルドース・レダクターゼおよびアルデヒド・レダクターゼ、スフィンゴミエリナーゼ、酸性セラミダーゼ、セラミド・グルコシル・トランスフェラーゼ、スフィンゴシン・ホスフェート・リアーゼ、チモシンβ4、アルデヒド・デヒドロゲナーゼ、ATPアーゼCa++結合タンパク質ならびにCD163の中の少なくとも1つのタンパク質と関連付けて、または関連付けずに実施する工程と、
前記アッセイを試験化合物と接触させる工程と、
前記アッセイにおける前記タンパク質に対する試験化合物の作用を測定する工程と
を含む。
これら新たな3つの遺伝子は、高コレステロール血症により誘導されたアテローム硬化性プラークを有する患者を治療するための新たな方法もまた同定する。したがって、本発明は、ステアロイルCoAデサチュラーゼ、ホスファチジン酸ホスフェートおよびホスホイノシチド特異的ホスホリパーゼ−B1の中から選択されるタンパク質をコードする少なくとも2つの遺伝子の発現を、アルドース・レダクターゼおよびアルデヒド・レダクター
ゼ、スフィンゴミエリナーゼ、酸性セラミダーゼ、セラミド・グルコシル・トランスフェラーゼ、スフィンゴシン・ホスフェート・リアーゼ、チモシンβ4、アルデヒド・デヒドロゲナーゼ、ATPアーゼCa++結合タンパク質ならびにCD163の中の1つのタンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子を伴って、または伴わずに調節する化合物、あるいは前記少なくとも2つのタンパク質の活性を調節する化合物の、アテローム硬化症またはアテローム硬化性プラークに関連する心血管障害を予防および/または治療するために有用な医薬組成物を調製するための使用に関する。
1)アテローム硬化性プラークにおける少なくとも2つの本発明のタンパク質の同定およびプラークの進行の間の差示的発現
差示的発現とは、アテローム硬化性病変を含む血管組織または高コレステロール血症のようなアテローム発生を促進する状況における血中を循環する細胞を使用した、少なくとも2つの本発明のタンパク質、mRNAおよびタンパク質発現における定量的差異および定性的差異の両方をいう。遺伝子は、正常な血管壁とアテローム硬化性プラーク、またはアテローム発生性の血中細胞と正常細胞とを比較すると活性化されたりダウン・レギュレートされたりする可能性がある。アテローム発生性の血中細胞と正常細胞との比較には、例えば、アテロームを発生しやすい条件下の血中単球と正常な単球との比較が含まれ得る。差示的発現は、RT−PCR、ノザン分析、DNAマイクロアレイおよびDNAチップ、差示的発現ライブラリー、免疫組織化学法、2次元電気泳動ならびに質量分析を含む差示的技術を介して検出され得る。差示的発現とはまた、アテローム硬化症における動脈プラークの発生を監視するために有用であり得る予測ツールまたは診断ツールの一部として使用され得る発現をいう。
少なくとも2つの本発明のタンパク質が標的遺伝子として使用され得る。これは、動脈プラークの安定性を調節および軽減するように遺伝子の発現または活性のレベルを調節し得る様式でアテローム硬化症に関与する差示的発現をいう。本方法は、以下に記載するような種々の実験例に適用され得る。
(泡沫細胞):少なくとも2つの本発明のタンパク質の差示的遺伝子発現またはタンパク質の活性を用いて、アテローム硬化性プラークの発生を模倣する状況下で、マクロファージの成熟および泡沫細胞の形成の際に同時調節される二次的な標的としての遺伝子を定量的または定性的に検出することができる。これには例えば、リポタンパク質および修飾リポタンパク質、または高脂血症血清由来の成分の存在が含まれ得るがこれらに限定されない。少なくとも1つの本発明のタンパク質の差示的発現を用いて、ex vivoモデルを検証することが可能である。泡沫細胞の定義は、脂質小胞を蓄積し得る細胞、例えば、肝細胞、脂肪細胞および平滑筋細胞にまで拡張可能であり、これらに限定されない。
(内皮機能不全):内皮細胞の単層を用いて、少なくとも2つの本発明のタンパク質の差示的な発現および活性と相関し、かつアテローム硬化症を模倣する状況下で標的の特徴を有し得る遺伝子発現またはタンパク質活性を監視することが可能である。例えば、アテローム硬化症の部位では、内皮細胞は生存エフェクターならびにアポトーシス促進因子の発現を活性化および刺激する。内皮細胞はまた、接着分子の発現も活性化する。少なくとも2つの本発明のタンパク質の差示的発現を用いて、これらの遺伝子の発現の監視、および血管損傷を促す条件下での細胞ベースのスクリーニング・モデルにおけるex vivoのアテローム硬化症表現型の検証が可能である。これには、HUVECおよびBAEC、ならびに内皮細胞の表現型を示す樹立細胞株が含まれ得る。培養した単層を、特殊な装置によるずり応力の変動に曝露してもよい。
(mRNAの検出):差示的に発現されたタンパク質および関連遺伝子を検出するために、当該分野における慣用的なプロトコルを使用して、組織切片、細胞抽出物または生検
からmRNAを単離および増幅することができる。RNAサンプル内の転写物は、特異的プローブ配列を含むDNAチップ技術または遺伝子の差示的発現を監視するために特別に設計された特異的オリゴヌクレオチドを使用したRT PCRのようなハイブリダイゼーション技術を利用することによって検出され得る。次いで発現は、定量的RT−PCRまたはノザン・ブロット分析を含む慣用的な技術を用いて確認され得る。
(タンパク質の検出):少なくとも2つの本発明のタンパク質の存在を、慣用的な免疫組織化学法によってアテローム硬化症の組織中で検出することが可能である。同タンパク質を、ELISAアッセイにより、または2次元ゲル電気泳動装置におけるタンパク質の単離の後に質量分析技術を利用して検出してもよい。ツー・ハイブリッド・システムもまた、動脈プラークの発生および泡沫細胞の形成の間に該タンパク質のうち少なくとも1つと関連し得る細胞内タンパク質を検出するために使用され得る。
2)アテローム硬化性プラークの成長および糜爛の際に少なくとも2つの本発明のタンパク質の差示的発現を制御するためのインヒビター
成長している動脈プラーク中のタンパク質群のうち少なくとも1つのタンパク質の発現および活性を制御する薬剤の同定のために使用され得る方法は複数ある。
(細胞を用いるアッセイ):本発明のタンパク質またはそのmRNAを用いて、脂質小胞の形成を誘導してアテローム硬化性プラークの発生を再現する条件においてマクロファージまたは樹立細胞株を用いたスクリーニング・アッセイを使用して、泡沫細胞の形成を調節する分子実体を同定することが可能である。これには、THP1細胞(ATCC番号TIB−202)、U937細胞(ATTCC番号CRL1593)が含まれ得るがこれらに限定されない。単球/マクロファージのみならず肝細胞、脂肪細胞および平滑筋細胞もまた、慣用的なプロトコルを使用して単離可能であり、oxLDLまたは任意の修飾リポタンパク質、および高脂血症血清由来の成分(これらに限定されない)によって刺激され得る。これらの分子のいずれか1つを、内皮機能不全からの保護作用を有しうる薬剤の同定のためのスクリーニング・アッセイに使用することもできる。内皮細胞の供給源はHUVECでもBAECでもよいがこれらに限定されない。
これらの細胞ベースのアッセイは、小胞の蓄積およびアテローム硬化症関連遺伝子の発現と関連付けて少なくとも2つのタンパク質の差示的発現またはmRNAの発現を使用して、アテローム硬化症細胞としての表現型を決定してもよいし、新規の関連遺伝子を検出するために使用してもよい。
これらの細胞ベースのアッセイはまた、ステアロイルCoAデサチュラーゼ、ホスファチジン酸ホスフェートおよびホスホイノシチド特異的ホスホリパーゼ−B1の中から選択される2つのタンパク質をコードする少なくとも2つの遺伝子の発現を、アルドース・レダクターゼおよびアルデヒド・レダクターゼ、スフィンゴミエリナーゼ、酸性セラミダーゼ、セラミド・グルコシル・トランスフェラーゼ、スフィンゴシン・ホスフェート・リアーゼ、チモシンβ4、アルデヒド・デヒドロゲナーゼ、ATPアーゼCa++結合タンパク質ならびにCD163の中の少なくとも1つのタンパク質および/または対応するタンパク質と関連して、または関連を伴わずに制御することが可能であり、かつアテローム硬化症病変の成長および不安定性を制限し得る化合物についてスクリーニングするために使用され得る。したがって、小胞の検出および上記遺伝子の差示的発現を使用した細胞ベースのアッセイは、動脈プラークの成長および破裂ならびに脂肪症および肥満症を治療する際に有効であり得る薬物、医薬、治療法および診療行為を同定するために使用され得る。
(動物を用いる系):動物を用いる(動物ベースの)系には、遺伝的に改変された動物または改変されていない動物が含まれ得る。組換え動物モデルには、LDLレセプター、
ApoEおよびApoB欠損マウス、ApoR欠損ブタが含まれ得るがこれらに限定されない。非組換え動物モデルには、ウサギ、ラット、マウスおよびブタが含まれ得る。これらの動物モデルにおける少なくとも2つの本発明のタンパク質の発現は、アテローム硬化症性脂肪症および肥満疾患についての表現型の決定および株選択のために使用され得る。
本明細書中以下に示される実施例は、初期アテローム硬化症病変における以下のタンパク質のうち少なくとも2つを発現するブタの作製、表現型の特徴付けおよび有用性を実証する。これらの動物における差示的発現は、薬物候補のスクリーニング、検証および最適化のために使用され得る。
3)少なくとも1つの本発明のタンパク質および他の細胞性成分の相互作用を妨害する化合物についてのアッセイ
差示的に発現されるタンパク質は、アテローム硬化症の組織内の1つまたは複数の細胞内化合物とin vivoで相互作用し得る。これらの化合物には、細胞内のタンパク質、リン脂質、脂肪酸および低分子が含まれ得る。これらの相互作用を妨害し得る薬剤は、小胞形成、泡沫細胞形成ならびにプラークの成長および安定性を調節する際に有用であり得る。アテローム硬化症病変の発生を模倣する状況下、またはアテローム硬化性プラークと非アテローム硬化症の血管壁由来の血管細胞とに由来する状況下で、少なくとも1つのタンパク質と細胞内化合物との相互作用を可能にする任意のアッセイ・システムが便利である。あるいは、上に引用したタンパク質の中から選択される少なくとも2つのタンパク質を組み合わせて含むアレイを使用して、前記タンパク質の少なくとも1つと相互作用し得る分子についてスクリーニングすることが可能である。したがって、タンパク質アレイが便利である。複合体の形成および阻害は、蛍光標識を使用して定量的または定性的に検出され得る。この反応は、固相アッセイでも液相中でも実施され得る。抗体は、液相または固相のいずれかにおいてシグナル増幅剤として使用され得る。
4)臨床試験の際の効果のモニタリング
少なくとも2つの本発明のタンパク質の差示的発現を検出するツールを使用してアテローム硬化性プラークの成長および不安定性を治療するための薬物候補の効果をモニタリングすることは、臨床試験において適用され得る。例えば、差示的発現を用いて、免疫組織化学法またはin situハイブリダイゼーションによりヒト組織切片における薬物の有効性を研究することが可能である。発現を、プラークの画像化と関連付けても関連付けなくてもよく、プラークの危険がある患者を監視するために使用してもよい。
5)アテローム硬化症における潜在的な治療活性を有する抗体
動脈病変において少なくとも2つの本発明のタンパク質の差示的発現を調節し、アテローム硬化性プラーク中の同タンパク質の細胞活性を妨害し得る抗体は、プラークの成長および安定性を制御するために使用され得る。このような抗体には、ポリクローナル抗体、マウスおよびヒトのモノクローナル抗体、単鎖抗体、Fabフラグメントならびにキメラ抗体が含まれる。
6)アテローム硬化性プラークの画像化
本発明において示されるように、本発明の新たな遺伝子のうち少なくとも2つが、血管壁のアテローム硬化症病変を発症し易い部位においてアップ・レギュレートされる。したがって、これらのタンパク質の差示的発現は、虚血の部位での動脈プラークの成長、糜爛および安定性を非侵襲的に画像化するために使用され得る。本明細書中以下の実施例で記載されるように、ステアロイルCoAデサチュラーゼ、ホスファチジン酸ホスフェートおよびホスホイノシチド特異的ホスホリパーゼ−B1は、アルドース・レダクターゼおよびアルデヒド・レダクターゼ、スフィンゴミエリナーゼ、酸性セラミダーゼ、セラミド・グルコシル・トランスフェラーゼ、スフィンゴシン・ホスフェート・リアーゼ、チモシンβ
4、アルデヒド・デヒドロゲナーゼ、ATPアーゼCa++結合タンパク質ならびにCD163の中の少なくとも1つのタンパク質と関連して、または関連を伴わずにプラーク中でアップ・レギュレートされ、プラーク内の内皮細胞または泡沫細胞を標識するために使用され得る。このことは、プラークの発生および/または退縮を監視するため、ならびに適切な治療戦略を開発するための優れたツールを構成し得る。
非侵襲性の画像化は、放射性同位体で標識されたモノクローナル抗体またはステアロイルCoAデサチュラーゼの構造パラメータに基づいて設計され得る特異的リガンドを含む種々のマーカーを用いて実施され得る。
[実施例]
以下の実施例は、本発明を例示するために提供されるものであり、本発明を限定するものではない。
[動物モデルおよびサンプルの調製]
アテローム硬化性プラークの進行の間の差示的遺伝子発現の分析を種々の動物モデルに適用して、アテローム硬化症病変の成長および糜爛に関与する標的を構成しうる同時調節される経路を検出することが可能である。これらの動物は、ステアロイルCoAデサチュラーゼ、ホスファチジン酸ホスファターゼおよびホスホイノシチド特異的ホスホリパーゼ−B1の中から選択されるタンパク質のうち少なくとも2つの差示的発現を、動脈プラークのレベルで、アルドース・レダクターゼおよびアルデヒド・レダクターゼ、スフィンゴミエリナーゼ、酸性セラミダーゼ、セラミド・グルコシル・トランスフェラーゼ、スフィンゴシン・ホスフェート・リアーゼ、チモシンβ4、アルデヒド・デヒドロゲナーゼ、ATPアーゼCa++結合タンパク質ならびにCD163の中の少なくとも1つのタンパク質と関連してまたは関連を伴わずに調節し得る分子の、スクリーニングまたは確認のために使用され得る。動物を用いる系には、遺伝的に改変されていない動物および遺伝的に改変された動物、例えば、ブタ、マウス、ラット、ウサギ、ApoE欠損マウス、ApoB欠損マウスおよびApoR変異ブタなどが含まれ得るがこれらに限定されない。
本発明において、ミニブタ・モデルを使用して、コレステロールに富んだ食餌を使用した給餌条件下で、アテローム硬化性プラークの発生の間の遺伝子の差示的発現を監視した。
これらのミニブタを、Gottinger種ミニブタおよびYucatan種ミニブタ(チャールズリバー・ラボラトリーズ社(Charles-River laboratories))を交雑することによって得た。該ミニブタを、12時間/12時間の明/暗サイクルで50±2%の湿度で温度制御(20±1℃)した部屋に収容した。本研究は、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health )によって刊行された「実験動物の取り扱いと使用に関する指針(Guide for the Care and Use of Laboratory Animals)」(NIH発行番号85−23、1996改訂)に従った。これらの動物についてのすべての実験手順は、「動物の取り扱いと動物実験に関する企業内諮問委員会(Institutional Animal Care and Research Advisory Committee )」によって認可されたプロトコルに従って実施した。
1000gの1日量中に4%のコレステロール、14%の牛脂および1%のブタ胆汁抽出物を含む食餌を上記動物に給餌することによってアテローム硬化症を誘導した。水は自由摂取とした。牛脂の脂肪酸組成を、以下の表1にまとめる。
Figure 2006510379
1)心臓カテーテル法
屠殺する直前に、これらの動物に1mLのアザペロンIM(Stresnil(登録商標)40mg/mL、ヤンセンファーマシューティカ社(Janssen Pharmaceutica ))を与えて鎮静させ、7mg/kgのケタミンIM(Imalgene(登録商標)100mg/mL、ヤンセン社(Janssen))を予め投薬した。これらの動物をインキュベートして、30%酸素および70%室内空気の混合物で人工的に呼吸させた(Mark 7A Bird呼吸器)。動脈血液ガスを一定間隔でチェックし、人工呼吸を調整して正常な血液ガス値を維持した。麻酔を、3mg・kg−1・時間−1の速度でのペントバルビタールナトリウム(Nembutal(登録商標)60mg/mL、シグニファイ社(Signify ))の連続的な静脈内注入によって維持した。左頚動脈の外科的隔離およびカニューレ挿入によって動脈にアクセスした。次いでこれらの動物に、200IU/kgのヘパリンおよび1mg/kg(IV)の2%リドカイン(Xylocaine(登録商標)20mg/mL、アストラ社(Astra ))を与えてから冠状動脈を操作した。
2)LAD切片
簡潔に述べると、大動脈根を介して冷NaCl 0.9%でLADを灌流し、注意深く解剖して7μmの切片へと切断した。
遺伝子発現研究のために、LADをOCT中に包埋し、切片化するまで液体窒素中で急速凍結した。組織学的分析および免疫組織学的分析のために、LADを、パラフィン包埋するまでメタノール70%中の包埋カセットに移した。
3)組織形態学的分析および免疫組織化学的分析
近位LADの7μm切片をヘマトキシリン−エオシンで染色して、病変サイズを評価した。切片の形態学的分析を、Leica Quantimet 600画像分析システム(ライカ社(Leica )[ベルギー国ブリュッセル所在])を使用して実施した。外側弾性板領域(EEL)、内側弾性板領域(IEL)、内側領域、内膜領域および内腔領域を測定する。病変中の総脂質沈着を、オイル・レッドO染色を使用して決定した。病変中のコラーゲンの総量を、ピクロシリウス・レッド(picrosirius red )染色した切片上で通常の光で見て決定した。三重螺旋コラーゲンを、偏光させた光で見て同じ切片で測定した。エラスチン含量を、フェルホフス(Verhoeffs )染色した切片上で、冠病変の自己蛍光を測定することによって測定した。アテローム硬化症病変を、Stary分類を使用して、初期病変およびより進行した病変へと分類した。
脂質およびマクロファージを含む初期および進行したプラークを示す動脈横断面の例を図1および図2に示す。
4)血清中脂質およびグルコースの測定
末梢静脈血を耳静脈から採取した。総コレステロール、HLDコレステロールおよびト
リグリセリドのレベルを、酵素的方法(ベーリンガーマンハイム社(Boehringer Mannheim )[フランス国所在])によって測定した。LDLコレステロール・レベルを、Friedewaldの式を用いて計算した。血漿中酸化LDL(ox−LDL)を、mAb−4E6を用いた競合ELISAにより測定した。このモノクローナル抗体は、apoB−100のリジン残基のアルデヒド残基による置換の結果として生成されるLDLのapoB−100部分中の立体構造エピトープに対する抗体である。C50値(すなわち、ELISA中の抗体結合の50%阻害を得るために必要とされる濃度)は、天然のLDLについては25mg/dLであり、1分子のapoB−100当たり少なくとも60個のリジンがアルデヒド置換された酸化LDLについては0.025mg/dLである。
C反応性タンパク質(CRP)の血漿レベルを、3mg/lの検出限界で、免疫比濁アッセイ(ロッシュ社(Roche ))を用いて測定した。
図3は、このブタ・モデルの種々のパラメータを示し、この動物モデルが、高血糖症および高トリグリセリド血症(hypertriglycerimia)が存在しない真の高コレステロール血症のモデルであることを示す。
5)単球の単離
血液を4%クエン酸ナトリウム中に採取し、3120g(4500rpm)で10分間遠心分離し、20℃で10分間、HBSS中で2回洗浄した。白血球の単離を、フィコール−Histopaque(登録商標)Gradient(1.119)を用いて供給業者(シグマ社(Sigma ))の説明に従って実施し、単球をCD14磁性マイクロビーズ(ミルテニー社(Miltenyi))を使用して単離した。細胞を2回洗浄し、trizol(登録商標)試薬で溶解させ、−80℃で保存した。
6)プラーク抽出およびmRNA増幅
生理学的に関連を有しかつプラークの進行との関連を有するためには、差示的遺伝子発現が、アテローム硬化性プラークの成長の間に動員される細胞のレベルで定量的に検出されなければならない。これは、顕微解剖技術を用いて監視され得る。本発明において以下の方法を使用した。
(レーザー捕捉顕微解剖法(LCM)):LADをクリオスタット中で8μmに切片化し、ポリリジン被覆したガラス・スライド上に載せた(スライド1枚当たり2つの切片)。次いで、これらのスライドを−80℃で保存した。
病変の表現型決定のために、20枚のスライドにつき1枚をオイル・レッドOによって染色した(スライドを、ORO溶液(72mgのORO、24mlのイソプロパノール、16mlのRNaseを含まない水)中に、解凍する直前に10分間浸し、2つの水浴中でリンスした)。次に続くスライドを、トルイジン・ブルーによって染色した(スライドを、75%EtOH中に、解凍する直前に4秒間浸し、トルイジン・ブルー(PBS中に0.1%w/vで溶解した)溶液の浴中で8秒間染色し、RNaseを含まない水中でリンスし、75%エタノール中で30秒間脱水した)。
顕微解剖前に、凍結切片を75%エタノール中で30秒間固定し、OCTを除去するためにRNaseを含まない水中でリンスし、75%、95%および100%のエタノール中で30秒間脱水し、引き続きキシレン中で3分間脱水した。一旦風乾し、これらの組織を、製造業者(アークチュラスエンジニアリング社(Arcturus Engineering)[米国カリフォルニア州マウンテンビュー所在])のプロトコルに従ってCapsure HS LCMキャップを使用したPixCell(登録商標)II LCMシステムによってレーザー捕捉顕微解剖した。
典型的なプラーク捕捉実験を図4に示す。
(RNA抽出):全RNAを、製造業者の推奨に従ってRNeasy(登録商標)Mini Kit(キアゲン社(Qiagen))を用いて、血中単球または1つのLAD切片全体に由来するレーザー捕捉細胞のいずれかから抽出した。
単球由来の全RNAを、Trizol(登録商標)溶液(インビトロゲン社(Invitrogen))およびPLGI−Heavy Phase Lockゲル(商品名:エッペンドルフ社(Eppendorf ))を使用して抽出した。
光学密度を、使い捨てキュベットを使用してバイオフォトメータ(エッペンドルフ社)を用いて各サンプルについて測定した。
単球由来および1つのLAD切片全体由来のtRNA調製物の品質を、Agilent
2100 Bianalyzerを製造業者のプロトコルに従って使用して真核生物の全RNAナノ・アッセイを用いて可視化した。
図5は、レーザー捕捉の品質およびRNA抽出物の品質を例示する。
(cDNA合成):顕微解剖した細胞由来の全精製RNAまたは500ng〜5μgの単球tRNAを、10μlの最終体積中1μlの10ml dNTP混合物および1μlの20mM T7−(dT)24プライマーと混合し、65℃で5分間インキュベートし、氷上で冷却した。次に、4μlの5×First−strand reaction Buffer(商品名)、2μlの0.1M DTTおよび1μlのRNaseOUT(商標)組換えRnase阻害剤(40U/μl)を添加し、2分間42℃に配置し、200UのSuperscript(商標)II RNaseHRT(インビトロゲン社)を添加し、この反応物を1時間42℃に維持した。次に、30μlの5×second strand reaction buffer(商品名)、10mM dNTP混合物(3μl)、4μl DNAポリメラーゼI(10U/μl)、1μlの大腸菌DNAリガーゼ(10U/μl)、1μlのRNase H(2U/μl)および91μlのRNaseを含まない水を添加し、この反応混合物を16℃で2時間インキュベートし、その後、2μlのT4 DNAポリメラーゼ(5U/μl)の添加後に16℃で10分間インキュベートした。この反応を、10μlのEDTA(0.5M)を添加することによって停止させた。次に、cDNAを、PLGI−light Phase Lockゲルを使用してフェノール−クロロホルム−イソアミルアルコールを用いて抽出し、5μgのグリコーゲンの存在下でNHOAcおよびエタノールを用いて沈殿させた。
(T7 RNAポリメラーゼ増幅(aRNA)):MEGAscript(商標)T7キット(アンビオン社(Ambion))を使用した:8μlの二本鎖cDNA、2μlのAmbion転写緩衝液、各2μlの150mMのATP、CTP、GTPおよびUTP、ならびに2μlのAmbion T7 Enzyme混合物を混合し、37℃で6時間インキュベートした。次に、PLGI−Heavy Phase Lockゲルを使用してフェノール−クロロホルム−イソアミルアルコールを用いてaRNAを抽出し、RNeasy Mini Kitを使用して清浄化した。体積をspeed vac(登録商標)で減少させた。
(第2回のaRNA増幅):まず、第1回の増幅由来のaRNAを、250ngのランダム・ヘキサマーおよび1μlの10mM dNTP混合物と混合し、65℃で5分間インキュベートし、次いで氷上で冷却した。次に、4μlの5×First−strand
reaction Buffer、2μlの0.1M DTTおよび1μlのRNaseOUT組換えRnase阻害剤(40U/μl)を添加した。この反応を室温で平衡化させ、その後200UのSuperscript II RNaseHRT(インビトロゲン社)を添加し、次いでこの反応物を最初に室温で10分間インキュベートし、次い
で42℃で50分間インキュベートした。次いで、1μlのRNase Hを添加し、この反応物を37℃で20分間インキュベートし、その後この反応物を2分間95℃に加熱して氷上で冷却した。第二鎖cDNA合成のために、2μlの20μM T7−(dT)24プライマーを添加し、この混合物を70℃で5分間インキュベートし、42℃で10分間インキュベートした。次に、30μlの5×second strand reaction buffer、10mM dNTP混合物(3μl)、4μlの大腸菌DNAポリメラーゼI(10U/μl)、1μlのRNase H(2U/μl)および89μlのRNaseを含まない水を添加し、この反応混合物を16℃で2時間インキュベートした。次いで、2μlのT4 DNAポリメラーゼ(5U/μl)を添加し、この反応物を16℃でさらに10分間インキュベートし、その後10μlの0.5M EDTAの添加によって停止させた。二本鎖cDNAを、PLGI−light Phase Lockゲルを使用してフェノール−クロロホルム−イソアミルアルコールを用いて抽出してタンパク質を除去し、5μgのグリコーゲンの存在下でNHOAcおよびエタノールを用いて沈殿させた。次いで、このcDNAを8μlのRNAseを含まない水中に再懸濁し、インキュベーションが37℃で3時間だけ持続することを除いて上記のように第2回のT7 in vitro転写のために使用した。
aRNAのフェノール−クロロホルム−イソアミルアルコールおよびRNeasy Mini Kitで清浄化した後、光学密度を測定し、aRNAの濃度およびサイズ分布を、Agilent 2100バイオアナライザを(製造業者のプロトコルに従って)使用して、mRNAスメア・ナノ・アッセイを用いて分析した。
第2回の増幅の後に、このaRNAサンプルを品質について試験した。これには、RNAのサイズ分布および相対的な量の保存を含めた。図5は、これらの品質制御について示す。aRNAの相対量を、低い、中程度および高い活性の遺伝子マーカーを使用して確認した。
[差示的発現]
あるサンプル中の遺伝子の差示的発現は、伝統的なノザン・ブロット法、RT−PCRおよびディファレンシャル・ディスプレイを含む種々の技術を用いて監視され得る。しかし、本発明の方法およびアッセイは、アレイ技術およびDNAチップ技術を用いて最も有効に設計される。
溶液ベースの形式および固体支持体ベースの形式を含む任意のハイブリダイゼーション形式が使用され得る。本実施例において、固体支持体上でのDNAプローブの高密度アレイには、以下のプロトコルが好ましかった。
1)ブタの共通参照試料の調製
ブタの共通参照試料を作製した。心臓、脳、肺、肝臓、腎臓、脾臓、胸腺および大動脈を含む8つの対照ブタ器官からQiagen RNeasy(キアゲン社(Qiagen))を用いて全RNAを抽出した。各器官由来の全RNAを、顕微解剖したサンプルについて前に示したように増幅した。最後に、ブタの共通参照試料を、8つの対照ブタ器官のaRNA(第1回および第2回)の等モル濃度混合物によって作製した。
2)DNAチップ分析のためのブタcDNA標識サンプルの調製
アジレント(Agilent )のプロトコル(Agilent Direct−Label cDNA Synthesis Kit Protocol、アジレント社[米国カリフォルニア州パロアルト所在])に従って、蛍光標識したcDNAを調製して精製した。1回の逆転写反応当たり、4μgのブタaRNAおよび2.5μgのランダム・ヘキサマー
(インビトロゲン社)を使用した。Cy3−dCTPおよびCy−5 dCTP(エヌイーエヌパーキンエルマー社(NEN Perkin Elmer))を、逆転写の際にcDNA中に取り込ませた。QIAquick(登録商標)PCR Purification Kit(キアゲン社)で精製するために、緩衝液PEで3回洗浄した。対合したcDNAを、ロータリー・デシケータ中で減圧下に乾燥させた。
3)ハイブリダイゼーション混合物の調製およびハイブリダイゼーション
Agilent Human cDNA Microarray(商品名、アジレント社[米国カリフォルニア州パロアルト所在])を、供給元アジレント社の指示に少し変更を加えたものに従ってハイブリダイズさせた。シアニン3−/シアニン5標識したcDNAサンプルを、5.96μlのヌクレアーゼを含まない水中に再懸濁し、1サンプル当たり以下の混合物、すなわち
1.26μlのDeposition Control Target(商品名、sp300オペロン、キアゲン社)
2.28のCot−1 DNA(インビトロゲン社)
9.5μlの2×Deposition Hybridization Buffer(商品名)
を添加した。
cDNAを変性させるために2分間98℃でインキュベートし、10,000g(13000rpm)で5分間遠心分離した後、ペレットを除外するために、19μlのハイブリダイゼーション混合物に対して16μlを新たな琥珀色のチューブ中に移した。最終的に12μlを、サイエニオン社(Scienion)のハイブリダイゼーション・チャンバ内で60℃の水浴中で17時間にわたって24/30mmのカバーガラス(コーニング社(Corning ))下でマイクロアレイに適用した。
各ブタ標識サンプルを標識したブタの共通参照試料と合せ、色素を交換して組み合せたcy3/cy5サンプルを、同じスライド上の2つのアレイに対してハイブリダイズさせた。
洗浄1を30分間で2回実施し、洗浄2を12分間で2回実施したこと以外は、洗浄は供給者アジレント社によって推奨されるように実施した。最後に、スライドを室温にて400gで10分間遠心分離することによって乾燥させた。
スライドを、アジレント社のスキャナ(Agilent G2565AA Microarray Scanner System)を用いて5ミクロンの解像度でスキャンした。シグナルの抽出を、Feature Extractionバージョン5(商品名、Agilent G2566AA Feature Extraction Software;アジレント社[米国カリフォルニア州パロアルト所在])を用いて実施した。出力ファイルは、XMLファイルおよびTextファイルならびに視覚的に得た結果とした。構成パラメータは、以下の:
一般的な構成においては、「Spot finder」、「PolyOutlierFlagger」および「CookieCutter」を選択、
Find Spots構成においては、70ミクロンの「Dev Limit」で「Autofind corners」を選択、
CookieCutter構成においては、FeatureおよびBackgroundについて1.42の「Reject based on IQR」を選択、
PolyOutlierFlagger構成においては、デフォルト・パラメータで「Non−Uniformity Outlier Flagging」および「Population Outlier Flagging」を選択
とした。
4)遺伝子発現分析
遺伝子発現パターンを各サンプルについて個々に決定した。典型的な実験においては、3匹の対照ブタおよび4匹の食餌供給したブタのサンプルを、食餌の6週間後、9週間後、12週間後および24週間後に、ブタの共通参照試料の特徴と比較して分析した。対照サンプルは、非食餌ブタ由来の活性化されていない血中単球または非食餌ブタ由来のレーザーで捕捉した内皮細胞のいずれかとした。図6は典型的な発現の特徴を示し、本明細書中以下の表2は、アテローム硬化性プラークにおいて再現性をもってアップ・レギュレートされた遺伝子のセットを示す。
陽性の遺伝子と命名されるこれらの遺伝子は、本明細書中以下の表2に列挙される基準遺伝子のセットと同時発現された。本明細書中以下の表2は、アテローム硬化性プラークの進行の間にアップ・レギュレートされることがこれまで報告されておらず、動脈プラークにおいてアップ・レギュレートされることが知られている参照遺伝子と同時発現される基準遺伝子および新規遺伝子の組合せを示している。この遺伝子セットは、アテローム硬化症についての新規の遺伝子特徴を示し、病態プロセスの間に正に調節される種々の代謝経路を同定し、アテローム硬化性プラークが発生し得る血管病変のレベルでの発現の大幅な変化の一因となる。
Figure 2006510379
[アテローム硬化性プラークの進行と関連する新規遺伝子]
(A)遺伝子発現データのPCA分析
図7は、動脈プラークの進行の間に統計学的にアップ・レギュレートおよびダウン・レギュレートされた1200個の遺伝子を用いた24匹の異なるブタの因子分析を示す。統計学的分析を実施して、k最近傍法(k=10)とその後のWelch近似(比率の閾値なし)を用いた両側スチューデント検定(1%)を用いて欠けている値を評価した。この方法により、異なるブタ間で有意に調節解除された遺伝子の同定が可能となった。PCA法を使用して、24×1200の行列を24×1の行列へと変形した。この分析は、食餌ミニブタが3つの別個の群に分類され得ることを明らかに示している。群1、2および3はまた、異なる表現型の特性(例えば、プラーク中に存在する脂質の量およびプラークの
サイズ)と関連し得る。これらの異なる群の遺伝子発現分析は、ステアロイルCoAデサチュラーゼ、ホスファチジン酸ホスファターゼおよびホスホイノシチド特異的ホスホリパーゼC−B1の発現の増大とプラークの進行との関連性を明らかに示している(表3)。
本明細書中以下の表3は、マクロファージに富んだ血管病変におけるステアロイルCoAデサチュラーゼ、ホスファチジン酸ホスファターゼおよびホスホイノシチド特異的ホスホリパーゼC−B1の遺伝子発現が、対照の単球における該遺伝子の発現と比較して増大した倍数を示す。
Figure 2006510379
(B)新たな一連の遺伝子
1)ステアロイルCoAデサチュラーゼ
ステアロイルCoAデサチュラーゼは、活性化された内皮細胞およびマクロファージを含む初期病変において、アテローム硬化症の進行に関与することが知られている遺伝子と一緒に細胞レベルで差示的に発現される。
ステアロイルCoAデサチュラーゼがプラークの成長および不安定性に影響を与え得る正確な機構は未知である。
ステアロイルCoAデサチュラーゼは、ステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)によって調節される遺伝子ファミリーのメンバーである。該遺伝子ファミリーには、アセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC)、脂肪酸シンターゼ(FAS)、グリセロール3−ホスフェート・アセチルトランスフェラーゼ(GPAT)ならびにΔ6デサチュラーゼおよびΔ5デサチュラーゼが含まれる。
ステアロイルCoAデサチュラーゼは、モノ飽和脂肪酸の生合成における律速酵素である。この酵素は、脂肪細胞において見出される膜リン脂質およびトリアシルグリセロール貯蔵物の主要な構成成分であるパルミチン酸(16:0)およびステアリン酸(18:0)からの、パルミトレイン酸(Δ9、16:1)およびオレイン酸(Δ9、18:1)の形成を触媒する(カツリ・アール(Kasturi R )およびジョシ・ブイ・シー(Joshi V.C.)、1982年、JBC、第257巻、p.12224−12230;ンタンビ・ジェイ・エム(Ntambi J.M. )、1995年、Prog.Lipid Res.、第34巻、p.139−150)。
ステアロイルCoAデサチュラーゼは、脂肪生成および脂肪細胞の分化において役割を果たすことが示されている。遺伝子発現は、肝臓組織および脂肪組織において上昇し、トリグリセリドおよび脂肪酸の血清レベルを制御することが示されている(ジョンズ・ビー・エイチら(Jones B.H. et al)1996年、Am J.Physiol.、第272巻
、E44−E49ページ;パン・ディー・エイら(Pan D.A. et al)1994年、J.Nutr.第124巻、p.1555−1565)。
肝細胞のトリアシルグリセロール代謝および脂肪細胞の分化におけるステアロイルCoAデサチュラーゼの役割は充分報告されている。転写のアップ・レギュレーションは、食餌要因、金属、ペルオキシソーム増殖因子、ホルモン(例えばインスリン)および代謝物(例えばグルコース)によって誘導される(パーク・イー・アイら(Park E.I., et al)、1997年、J.Nutr.第127巻、p.566−573;/カシミール・ディー・エイ(Casimir D.A.)およびンタンビ・ジェイ・エム(Ntambi, J.M.)、1996年、J.B.C.、第271巻、p.29847−29853;/ンタンビ・ジェイ・エムら(Ntambi J.M. et al )1996年、Biochem.Biophys.Res.Com.第220巻、p.990−995)。ダウン・レギュレーションは、ポリ不飽和脂肪酸の存在下および脂肪組織の分化の間に観察される。したがって、ステアロイルCoAデサチュラーゼは、肥満症の治療のための標的としての特徴を示す。マウス・モデルにおける遺伝子の破壊により、この酵素がコレステロールエステル、トリグリセリドおよびワックスエステルの生合成において直接的な役割を果たすことが明らかになった。ステアロイルCoAデサチュラーゼ欠損動物は、肝臓のコレステロールおよびトリグリセリドが欠損している。これらのマウスは正常マウスよりも痩せており、脂質代謝の異常を示す(ミヤザキ・エムら(Miyazaki M et al)、2001年、J.Nutr.第131巻、p.2260−2268;ンタンビ・ジェイ・エムら(Ntambi,J.M. et al )、2002年、PNAS、第99巻、p.11482−11486)。
本発明は、肝臓組織および脂肪細胞組織の他に、初期アテローム硬化性プラークを構成する組織において、アテローム硬化症の発症に関連する高脂血症状態においてステアロイルCoAデサチュラーゼが差示的に発現され、既知のホスファチジン酸ホスファターゼおよびホスホイノシチド特異的ホスホリパーゼC−B1と同時発現されるという予想外の知見に基づく。総合すると、これら3つの酵素が存在するということから、脂質小胞の蓄積における重要な段階としてジアシルグリセロールの合成が特定される。これらのタンパク質はまた、損傷を受けた同じ組織のアテローム硬化症関連遺伝子とも関連する。このことにより、アテローム硬化症における診断上の活性および治療上の活性の両方を有する薬剤の同定のために有用な標的経路の同定が可能である。
アテローム硬化性プラークの成長の間にステアロイルCoAデサチュラーゼ遺伝子の転写レベルのアップ・レギュレーションを制御する機構は未知である。樹立細胞株を使用して、ステアロイルCoAデサチュラーゼの発現が、脂肪細胞の分化の際にPPARγアゴニスト(例えばチアゾリジンジオン)によって負に調節されることが示された(キム・ワイ−シーら(Kim Y-C et al )、2000年、J.Lipid Res.第41巻、p.1310−1316)。これは、動脈プラークにおけるマクロファージの分化および泡沫細胞形成の際のアテローム硬化症関連遺伝子の発現に対するPPARγアゴニストの既知の効果とは対称的である。したがって、ステアロイルCoAデサチュラーゼは、肝臓細胞、血管細胞および脂肪細胞において異なる効果を有する可能性があり、アテローム硬化性プラークの発生および安定性において特異的な役割を発揮するかもしれない。
アテローム硬化症病変におけるこの予想外のアップ・レギュレーションに基づいて、本発明は、診断目的および予測目的のためにステアロイルCoAデサチュラーゼの差示的発現を監視する方法、ならびに、プラークのサイズ、プラークの糜爛を特異的に低下させ、かつプラークを安定化するために、ホスファチジン酸ホスファターゼおよびホスホイノシチド特異的ホスホリパーゼC−B1と関連してステアロイルCoAデサチュラーゼの活性を増大または低下させ得る化合物を同定する方法を提供する。
2)ホスファチジン酸ホスファターゼおよびホスホイノシチド特異的ホスホリパーゼC
どちらの酵素もジアシルグリセロール(DAG)の産生に関与している。ホスファチジン酸ホスファターゼは、リゾホスファチジン酸およびホスファチジン酸からのDAGの合成に関与する。ホスホイノシチド特異的ホスホリパーゼCは、ホスファチジルイノシトールの特異的加水分解によってDAGの産生に関与する。このことは、ステアロイルCoAデサチュラーゼの高発現と共に、大量のステアロイル−ジアシルグリセロールがマクロファージ泡沫細胞において産生されるという観察を初めて明らかに証明する。これは、泡沫細胞におけるジアシルグリセロールのこのような蓄積および脂質小胞の同時形成を防止し得る産物の同定のための新たな標的経路を同定する。
(C)プラークの進行に関連する新たな基準遺伝子
1)アルデヒド・レダクターゼ:アルド・ケト・レダクターゼ・ファミリー1メンバーB1:AKR1B1(EC 1.1.1.21);アルド・ケト・レダクターゼ・ファミリー1メンバーA1:AKR1A1(EC 1.1.1.2)
AKR1A1およびAKR1B1は、多数の同族のNADPH依存的なモノマーのオキシドレダクターゼ(例えば、アルドース・レダクターゼ、キシロース・レダクターゼ、プロスタグランジンFレダクターゼおよびその他多数)を含むアルド・ケトース・レダクターゼ・スーパー・ファミリーのメンバーである(ジェズ・ジェイ・エムら(Jez J.M. et al)1997年、Biochemical Pharmacology、第54巻、p.639−647)。これらの酵素は非常に近縁のモノマー・タンパク質であるが、異なる基質特異性を示す。AKR1B1は、低いKmのアルドース・レダクターゼ酵素であり、ポリオール経路に関与する。この酵素は、アルドース(例えば、グルコースおよびガラクトース)の、対応するそのポリオール(例えば、ソルビトールおよびガラクチトール)への還元を制御する。
この酵素は、血液中のグルコースのレベルを制御し、糖尿病およびその高血糖症合併症(例えば、神経症、網膜症、腎症および微小脈管障害)を治療するための薬理学的標的の特徴を示す(マイラリ・ビー・ジェイ(Mylari B,J)、US 20020143017)。
アテローム硬化症の発症およびより具体的にはプラークの進行におけるその正確な機能は、全体的に未知である。
AKR1A1は高いKmのアルドース・レダクターゼである。上昇した血中グルコース・レベルでは、ポリオール経路を通るグルコースの顕著な流れが、神経、網膜、水晶体および腎臓のような組織において誘導される。したがって、ポリオール経路の活性化は、糖尿病合併症を誘導するとみなされる。アルドース・レダクターゼ阻害剤は、これらの合併症を予防または低減するために使用される。しかし、これらの阻害剤は、血中グルコースの制御が不完全であることが実証されており、その有益な効果は満足には程遠い。経口的に活性なアルドース・レダクターゼ阻害剤の2つの主要なクラスが報告されており、ソルビニルおよびトルレスタットは、各ファミリーの最も代表的なメンバーである。これら2つの製品のin vivo活性は非常に異なるが、該活性のうちいくつかは、糖尿病患者においてグルコース産生を制御するために使用した場合、肝臓の合併症および過敏症反応を引き起こすことが示されている(コンスタンチノ・エルら(Costantino L, et al )1997年、Exp.Opin.Ther.Pat.第7巻、p.843−851)。これらの理由のために、上記レダクターゼに対するよりよい薬理学的特性を有する新たな分子についての探索は活発な分野である。
ポリオール経路に関与することに加えて、AKR1A1およびAKR1B1は、異なる基質特異性を有するアルデヒド・レダクターゼ活性を示す。両方の酵素がグリセロ脂質経路に関与し、脂質由来のアルデヒドの還元を触媒してグリセロールを生成する。グリセロ
ールは、グリセロール3ホスフェートの産生を介したジアシルグリセロールおよびトリアシルグリセロールの生合成およびグリセロ脂質の代謝に関与する。したがって、アテローム硬化性プラークの発生の間のマクロファージにおけるAKR1A1アルデヒド・レダクターゼ活性および/またはAKR1B1アルデヒド・レダクターゼ活性の活性化は、プラークのレベルでのジアシルグリセロールの過剰発現および泡沫細胞の集簇の原因であり得る。
血中の低密度リポタンパク質(LDL)の酸化およびスカベンジャー・レセプターを介したマクロファージによるLDLの取り込みは、血管壁中の脂質積載マクロファージの動員および集簇を促進してプラークの発生に先立つ脂肪線条を引き起こす主要な反応である。アテローム硬化症の間にこれらの泡沫細胞において生じる脂質の過酸化は、他の血管細胞に対して毒性または有糸分裂促進性を示し得るとともにプラークの進行の原因となり得る、高濃度の下流産物を生成する。これらの下流産物の中でも、アルデヒドは脂質の過酸化の最終産物であり、アテローム硬化症の病態に関与し得る種々の生体分子との高い反応性を示す。例えば、不飽和アルデヒドは酸化LDLにおいて特に豊富なポリ不飽和脂肪酸(例えば、リノレン酸およびリノール酸)の酸化に由来する(モリサキ・エヌら(Morisaki N. et al )、1985年、J.Lip.Res.第26巻、p.930−939)。
したがって、泡沫細胞における大量の活性なグリセロールならびにジアシルグリセリルおよびトリアシルグリセリルの産生と蓄積の原因であることに加えて、アルデヒド・レダクターゼ活性の活性化は、アテローム硬化症の進行を活性化し得る細胞内または分泌型の活性な下流産物を生成し得る。これらのアルデヒドがアテローム硬化性プラークの成長、安定性または退縮を調節する正確な機構は全体的に未知である。ポリオール経路以外の反応が、AKR1ファミリーによって活性化されるのかもしれない。
AKR1A1およびAKR1B1は異なる基質特異性を有する。さらに、主な差異は、アルデヒド・レダクターゼおよびアルドース・レダクターゼの機能および組織特異的な発現にある(オコナー・ティーら(O'Connor T et al)、1999年、Biochem J.第343巻、p.487−504)。例えば、灌流により誘導された虚血は心臓においてアルドース・ケト・レダクターゼ活性に影響を与えるがアルデヒド・レダクターゼ活性には影響を与えないということが最近示された。特異的アルドース・ケト・レダクターゼ阻害剤は心保護的であった。虚血心臓におけるアルドース・レダクターゼ活性の活性化は、同酵素の発現の増大に起因するのではなく、内因性因子による酵素の活性化に起因するものであった(ホワン・ワイ・シー(Hwang, Y.C. )、2001年12月、FASEB J.、第10巻、p.1096)。したがって、アルドース・レダクターゼ活性およびアルデヒド・レダクターゼ活性は、明らかに異なる組織特異的な機能を示し、明らかに異なる経路に関与する。AKR1A1は、脂肪族アルデヒド、芳香族アルデヒドおよび生体アミンのNADH依存的な還元を優先的に触媒する。AKR1B1もまたアルデヒド・レダクターゼ活性を示すが、この酵素は、アルドペントース、アルドヘキソースのNADH依存的な還元をより良好に触媒する。したがって、両方の酵素が脂質由来のアルデヒドの還元を触媒するが、AKR1A1は、アルデヒド基質に対してより好適な酵素であるようである。分子ドッキングおよびデータベース・スクリーニングを使用して、AKR1A1のアルデヒド・レダクターゼ活性と比較してアルドース・レダクターゼAKR1B1に対してより特異性の高い新たな一連の阻害剤が設計され得ることが最近示されたが、このことは、逆の戦略が可能であり得ることを示唆している(ラステリ・ジーら(Rastelli G. et
al )2002年、Bioorganic & Medicinal Chemistry 第10巻、p.1437−1450)。
本発明は、これらの酵素が、高コレステロール血症条件下ならびに高レベルの血中グルコースおよびインスリンの非存在下での初期および進行したアテローム硬化性プラークに
おいて転写レベルでアップ・レギュレートされるということを初めて実証する。このことは、これらの酵素がマクロファージ依存的な脂質代謝における特定の関与を有し得ることを示唆する。
したがって本発明は、脂質依存的なアルデヒド由来の下流産物の産生を予防または制御するための、上記レダクターゼ活性を特異的に低減する新たな産物を発見するため、アテローム硬化性プラークにおけるアルデヒド・レダクターゼ活性またはアルドース・レダクターゼ活性の、同酵素の正常な発現に対する差示的発現を使用する化合物および方法に関する。
具体的には、本発明は、血中のトリアシルグリセロールおよびグルコースのレベルを増大させずにアテローム硬化症の患者を治療する方法、従って高血糖症を伴わずにアテローム硬化症の治療が可能で、ソルビトールを低下させかつ高血糖症の治療のために通常使用される薬物の潜在的な代謝副作用を回避する方法を同定する。本発明は、特異的アルデヒド・レダクターゼ阻害剤を含む医薬組成物、ならびに該組成物を用いて高コレステロール血症条件下の哺乳動物における泡沫細胞の集簇、アテローム硬化性プラークの進行および不安定性を治療または予防する方法に関する。
2)アルデヒド・デヒドロゲナーゼ、ALDH1(EC 1.2.1.3)
アルデヒド・デヒドロゲナーゼは、アルコール・デヒドロゲナーゼ(ADH 103700)の次に主要なアルコール代謝の酵素の1つである。このタンパク質は、20を超える異なるアイソフォームを包含するALDH I、II、IIIおよびIVを含むNAD依存的アルデヒド・デヒドロゲナーゼ・ファミリーに属する。
ALDHの触媒的役割は周知である。ALDHはエステルの加水分解を触媒し、アルデヒドを酸へと酸化する酵素である。この酵素は、とりわけ脂肪酸経路、胆汁酸生合成、グリセロ脂質代謝、トリプトファン代謝を含む種々の代謝経路に関与することが見出されている。
ALDH1の不活性な優性突然変異型が、アジア人集団において1979年に報告されている(ゴエデら(Goedde et al)、Hum Genet.第51巻、p.331−334)。これらの個体における酵素活性の喪失は、点突然変異の結果であった(ヨシダら(Yoshida et al )、1984年、Proc.Natl.Ac.Sci.USA 第81巻、p.258−261)。充分興味深いことに、この不活性突然変異体は代謝異常をまったく示さなかった。したがってこの分子は、患者においてその活性を制御する小分子を設計するための優れた標的であるようである。
長期にわたって、この酵素は、アルコール過敏症の患者の治療のため、ならびにアルコール中毒およびアルコール乱用の治療のための標的とみなされていた。本発明は、アテローム硬化性プラークにおけるこの酵素の陽性の差示的発現について初めて記載する。
アテローム硬化症の発症におけるALDH1の役割は全体的に未知である。
ALDH1は、細胞質ゾルに存在し、アセトアルデヒドについて高いKmを示し、グリセルアルデヒドの解毒において主要な役割を割当てられている。この酵素は、2つの別個の触媒活性を有し、エステラーゼ活性およびデヒドロゲナーゼ活性の両方を示す(ダンカン・アール・ジェイ(Duncan R J);1983年、Biochem.J.第230巻、p.261−267ならびにトゥ・ジーシー(Tu GC )およびワイナー・エイチ(Weiner H. )1988年、J.Biol.Chem.、第263巻、p.1218−1222)。エステラーゼ活性およびデヒドロゲナーゼ活性の特異的インヒビターの存在が実証されている(アブリオラ(Abriola )およびピエトルスコ(Pietruszko)、1992年、J.P
rotein Chem.、第11巻、p.59−70)。血中のアセトアルデヒドの蓄積は、エタノールが摂取されると観察され、心拍数および心臓拍出量の顕著な増大ならびに血管抵抗の減少を伴う。これらの変化は、ALDH1活性を阻害することによって逆転された(クパリら(Kupari et al)1983年、Alcohol Clin Exp Res、第7巻、p.283−288)。
あるいは、ALDH1は脂肪酸代謝経路にも関与し、脂肪酸からアルデヒド誘導体を生成することが報告されている。したがって、成長中のアテローム硬化性プラークにおけるALDH1の存在が、細胞傷害性アルデヒド誘導体の産生および蓄積の原因である可能性がある。
3)チモシンβ4
チモシンβ4は、分子量1kDa〜15kDaの範囲の高度に保存された極性ポリペプチドを含んでなるチモシン・スーパー・ファミリーのメンバーであり、元来胸腺ホルモンであると考えられている。1990年に、チモシンβ4は、細胞内Gアクチン捕捉ペプチドとして同定された(セイファー・ディー(Safer D.)およびゴラ・ブイ・ティー(Golla V.T.)、1990年、PNAS、第87巻、p.2536−2540)。
チモシンβ4は、Tリンパ球の分化に対して影響を有し(ロウ・ティー・エル・ケーら(Low,T.L.K. et al)、1981年、PNAS、第78巻、p.1162−1166)、マクロファージの遊走を阻害する(ウェラー・エフ・イーら(Weller F.E., et al)、1988年、J.Biol.Resp.Modif.第7巻、p.91−96)ことが報告されている。より最近、チモシンβ4は、内皮細胞の接着および伸張を刺激し、基底膜を分解し得るマトリックス・メタロプロテイナーゼの産生を増大させることが示されている(グラント・ディー・エスら(Grant D.S. et al)、1995年、J.Cell Sci.第108巻、p.3685−3694、マリンダ・ケー・エムら(Malinda K.M. et al)1997年、FASEB J.第11巻、p.474−481)。チモシンβ4スルホキシドは単球によって産生され得ること、抗炎症物質として作用しうることが最終的に示された(ヤング・ジェイ・オーら(Young J.O. et al)、1999年、Nat.Med.第5巻、p.1424−1427)。
チモシンβ4が細胞の遊走および伸張に影響を与える正確な機構は1991年に確認された(セイファー・ディーら(Safer D.,et al)J.B.C.第266巻、p.4029−4032)。この分子は、Gアクチンと共にI:I複合体を形成し、Gアクチンの重合を阻害し、チモシン・ファミリーの他のメンバーと特異性を共有する。白血球でのin vivo実験は、チモシンβ4が実際に主要なGアクチン捕捉分子であることを示している(カッシメリス・エル(Cassimeris L. ))、1992年、J.Cell Biol.第119巻、p.1261−1270)。樹立細胞株において該分子を過剰発現させることにより、細胞はより充分に伸張し、より強固に接着する。この観察は、チモシンβ4が抗アポトーシス・メディエータとしても作用し得ることを示唆した(ニウ・エムら(Niu,M., et al )、2000年、Cell Adhes.Commun.第7巻、p.311−320)。
アテローム硬化性プラークの発生におけるチモシンβ4の役割は全体的に未知である。この疾患の進行における同分子の機能的関与は複合的であり得る。
これらに限定されなるものではないが、種々の可能性について以下に記載する。
第1に、アクチン細胞骨格の構築を妨害する薬剤(サイトカラシンB、ミオシン軽鎖ホスファターゼ、ミオシン軽鎖キナーゼ・インヒビターおよびシンバスタチンを含む)が、内皮細胞の一酸化窒素シンターゼ(eNOS)をアップ・レギュレートすることが最近示
されている(リャオ・ジェイ・ケイ(Li ao J.K. )、米国特許第6,423,751号
)。eNOS活性はアテローム発生過程の主要な要素であることが十分確証されている(オドリスコル・ジーら(O'Driscoll G. et al )、Circulation、第95巻、p.1126−1131)。内皮細胞由来のNOは、LDLの酸化的修飾および単球の接着を含むアテローム発生促進性の要素を阻害する(コックス・ディー・エイ(Cox D.A.)およびコーエン・エム・エル(Cohen M.L.)、1996年、Pharm.Rev.、第48巻、p.3−19;ツァ・ピー・エスら(Tsa P.S. et al)、1994年、Circulation、第89巻、p.2176−2182)。
したがって、Gアクチンの重合のレギュレータとして、チモシンβ4はeNOSのアップ・レギュレーションに関与し得るとともに、アテローム硬化症抵抗性または促進性のいずれかの分子として機能し得る。
第2に、生存および細胞死の機構は両方とも、酸化LDLおよび他のストレス因子による内皮細胞の刺激の際に誘導される。動物モデルまたは細胞培養物におけるin vitroおよびin vivoの研究により、内皮細胞のアポトーシスが、アテローム硬化症が発生し易く、さらにはアテローム硬化症病変が発生し易い部位で開始され、アポトーシスおよび細胞死と相関することが実際に示されている(アイスナー・エムら(Isner, M et al)、1995年、Circulation、第91巻、p.270−2711;クレーズ・シーら(Claise C, et al )、1999年、Atherosclerosis、第147巻、p.95−104;ディメラー・ジェイら(Dimmeler J, et al )、1997年、Circulation、第95巻、p.1760−1763)。アポトーシスの下流のエフェクター(例えば、p38 MAPキナーゼ、p53およびカスパーゼ)は、oxLDLおよびストレス因子への曝露の際に誘導される(ジン・キューら(Jing Q et al)、1999年、Circ.Res.、第84巻、p.831−839;ナポリ・シーら(Napoli C et al)、2000年、Faseb J.、第14巻、p.1996−2007;シウウー・チャン・エムディーら(Xiuwu Zhang MD et al)、2001年、Circulation、第104巻、p.2762−2771)。同時に、oxLDLは、Znフィンガー転写因子ATF3およびインテグリン結合キナーゼの発現を刺激し得る(ナワ・ティーら(Nawa T et al)、Atherosclerosis、2002年、第161巻、p.281−291;カワウチ・ジェイら(Kawauchi J et al)、JBC、2002年、印刷中)。いずれのタンパク質もアテローム硬化症病変において発現され、死細胞の存在と相関し、p38、p53およびカスパーゼのアポトーシス活性を調節することが示されている。したがって、アテローム硬化症の開始は、アポトーシスと生存との間の相対立する不均衡の結果であって、血管損傷を引き起こすものであるのかもしれない。p38活性およびアポトーシス機構の他のエフェクターの抑制は、oxLDLにより誘導された損傷から内皮を保護するためのフィード・バック機構を構成する可能性がある。したがって、生存とアポトーシスとの間のバランスを制御する機構を描出することは、新たな治療手段および新たな製品の発見のための効果の高いアプローチであり得る。内皮細胞の生存は、細胞外マトリックスとの接触によって維持される。接着の非存在下では、内皮細胞は迅速にアポトーシス(アノイキス(anoikis)と呼ばれる現象)に至る。インテグリン媒介性のシグナルは、内皮細胞の完全性を維持し、ストレスに対する感受性を低下させるために必要である。接着は、局所的なプラーク形成、ILKの活性化を含み、アテローム発生に抵抗性の状態を維持する際におそらく必須である。Gアクチンの重合−脱重合は、細胞の伸張および増殖を制御する主要な反応である。したがって、チモシンβ4は、血管の病変部位での内皮細胞のより完全かつ強力な伸張および接着を刺激し得る。したがって、チモシンβ4は生存エフェクターとして作用することが可能であり、内皮細胞のアポトーシスおよび細胞死を防止する。
第3に、増殖因子(例えば肝細胞増殖因子(HGF))は、ヒト臍帯静脈内皮細胞にお
いてチモシンβ4の発現をアップ・レギュレートし得ることが示されている(オウ・アイら(Oh,I, et al )Biochem.、Biophys.、Res.Commun.2002年、16、第296巻第2号、p.401)。HGFは、アテローム硬化症の部位で単球の侵襲性を刺激することができ、アテローム硬化性プラークにおいて発現されることが示されている(バイルマン・エム(Beilmann M. )2000年、Blood、第95巻、p.3664−3669)。したがって、チモシンβ4は、アテローム硬化症の部位における単球マクロファージおよびリンパ球の接着および遊走に関与することによって、プラークの成長および不安定性に寄与し得る。
まとめると、本発明は、初期および進行したアテローム硬化症病変におけるチモシンβ4の差示的発現について初めて記載する。チモシンβ4は、抗アテローム硬化症の標的としてのその開発が考慮され得る。したがって本発明は、チモシンβ4活性を制御することによるアテローム硬化症およびその臨床的合併症の治療のための方法および組成物を含む。本発明は、アテローム硬化性プラークの進行、糜爛および退縮の制御を含む。
4)スフィンゴミエリナーゼ(EC 3.1.4.12)、酸性セラミダーゼ(EC 3.5.1.23)、スフィンゴシン・ホスフェート・リアーゼ(EC 4.1.2.27)、UDP−グルコース・セラミド・グルコシル・トランスフェラーゼ(EC 2.4.1.80)
スフィンゴミエリナーゼ、酸性セラミダーゼ、UDP−グルコース・セラミド・グルコシル・トランスフェラーゼおよびスフィンゴシン・ホスフェート・リアーゼはすべて、セラミド代謝およびスフィンゴ脂質代謝の重要な酵素である。本発明は、これらの酵素がアテローム硬化性プラークの進行の際に転写レベルでアップ・レギュレートされることを示す。アテローム硬化症の過程におけるセラミド経路およびスフィンゴ脂質経路の役割は全体的に未知である。
酵素スフィンゴミエリナーゼは、セラミドおよびリン酸コリンへのスフィンゴミエリンの加水分解を触媒する。ミトコンドリア、リソソーム、細胞質ゾルおよび分泌された酵素へと分離され得る種々のスフィンゴミエリナーゼが同定されている。種々の機能及び反対の機能がスフィンゴミエリナーゼのものと見なされている。リソソームから膜へのコレステロールの移動における役割が見出されている(レベンサルら(Leventhal et al )2001年、J.Biol.Chem.第276巻、p.44976−44983)。酸化LDLが取り込まれると、リソソームのスフィンゴミエリナーゼが阻害され、樹立細胞株における非エステル化コレステロールの蓄積が引き起こされる(マオールら(Maor et al)、1995年、ATVB、第15巻、p.1378−1387)。その一方で、細胞外スフィンゴミエリナーゼは、リポタンパク質を強力なアテローム発生性の凝集型LDLへと変換する(マラスら(Marathe et al )、2000年、ATVB、第20巻、p.2607−2613)。
あるいは、セラミド誘導体およびスフィンゴ脂質誘導体の産生および蓄積は、プラークの進行の間に異なる結果を有し得る。セラミドは、アポトーシスおよび細胞増殖の重要なメッセンジャーであり(マティアス・エスら(Mathias S. et al)、1988年、Biochem J.第335巻、p.465−480)、アテローム硬化症で死亡した患者におけるプラークの死後サンプルにおいて高レベルのセラミドが報告されている(シセル・エス・エルら(Schissel S L et al)、1996年、J.Clin.Invest.第98巻、p.1455−1464)。
したがって、転写レベルでのセラミド経路の活性化は、アテローム硬化症の部位におけるマクロファージおよび泡沫細胞の集簇に対して直接的な結果を有し得る。したがって、セラミドの蓄積は、プラークの不安定性および糜爛についての危険性の高い要因を構成し
得る。
あるいは、セラミド・グリコシル・トランスフェラーゼは、グルコシルセラミドの形成を触媒する。次いで、グルコシルセラミドの過剰な産生は、ガングリオシドまたはグロボシドのようなセカンド・メッセンジャーの過剰な蓄積の原因であり得る。
したがって、本発明は、アテローム硬化性プラークの進行を制御するための潜在的な標的経路としてスフィンゴミエリナーゼ/セラミド/セラミド・グルコシル・トランスフェラーゼを同定する。
5)CD163
CD163は、スカベンジャー・レセプター・ファミリーの誘導性のメンバーである(ラウ・エスケイら(Law SK et al)1993年、Eur.J.Immunol.第23巻、p.2320−2325)。このレセプターは、グルココルチコイドおよびインターロイキン10によってCD14陽性マクロファージにおいて誘導され、この誘導は、高レベルのRNAおよびタンパク質に少なくとも一部起因する(国際特許公開公報第20010041177号)。
アテローム硬化症の過程におけるCD163の潜在的な役割は全体的に未知である。
[泡沫細胞モデルにおける遺伝子発現]
一連の初代細胞株または樹立細胞株を使用して、アテローム硬化性プラークの進行に直接関与する遺伝子の差示的発現と関連して、脂質小胞の形成を監視することが可能である。細胞はすべて、脂肪酸、リポタンパク質、修飾リポタンパク質(酸化されたアセチル化リポタンパク質を含む)、トリグリセリド、カイロミクロンを取り込む能力およびアテローム硬化性プラーク関連の泡沫細胞に特徴的な小胞を示す能力を有しているべきである。これには、HEP G2、U937、KG1およびTHP1、HUVEC、平滑筋細胞ならびに脂肪細胞の細胞株が含まれるがこれらに限定されない。本実施例においては、THP1細胞を例として使用し、プラークにおける泡沫細胞の形成を模倣可能で、かつ小胞の蓄積ならびに新規遺伝子および基準遺伝子によってコードされるタンパク質のうち少なくとも2つの発現の制御を介して泡沫細胞の形成を阻害または制御し得る分子の大規模スクリーニングのために使用可能な発現系を作製した。
1)細胞培養
ヨーロピアン・コレクション・オブ・セル・カルチャーズ(European Collection of Cell Cultures)(ECACC、英国ウィルシャー所在)由来のTHP−1細胞株を、泡沫細胞の分化および増殖を模倣する細胞モデルを作製するために選択した。典型的には、2つの異なる培養条件がこれらの細胞の産生について例示し得る。該細胞(5×10個/ml)は、RPMI−1640、10%FBS、100単位/mlのペニシリンおよび100μg/mlのストレプトマイシン、200mM L−グルタミン(バイオウィタカー社(Biowhittaker)、ベルギー国ヴェルヴィエ所在)において、37℃の5%COのインキュベータ中で維持および増殖され得る。この培地に、酸化リポタンパク質または特定の脂肪酸のいずれかが補充され得る。培地は2〜3日毎に置換した。
2)リポタンパク質の単離および修飾
ヒトLDLを、2段階のKBr勾配超遠心分離を使用して新鮮な血漿から単離した(レジェら(Leger et al )Free Rad Res.2002年、第36巻、p.127−142)。LDLを、NaCl 150mM、リン酸ナトリウム10mM、DTPA 10μM(pH7.4)に対して24時間透析した。銅による酸化LDLを、0.2mg
/mlのLDLを5μM CuSOと共に37℃で16時間インキュベートすることによって滅菌条件下で調製した。このインキュベーションの最後に、BHT(最終40μM)およびDTPA(最終100μM)の添加によって酸化を停止させた。oxLDLを、NaCl 150mMおよびリン酸ナトリウム10mM(pH7.4)に対して24時間大規模に透析した。すべての調製物を、0.4μmのフィルタを通して濾過した。
LDLおよびoxLDLを、ApoB、総タンパク質、総コレステロールおよびビタミンEの濃度、共役ジエンの出現(234nmにおけるOD)を測定し、脂肪酸およびオキシステロール組成を決定することによって詳細に特徴付けた(表4を参照のこと)。
Figure 2006510379
最後に、リポタンパク質についても、電気泳動の移動度によって特徴付けた。
シアニン3スクシンイミジル・エステル(アマシャム・ファルマシア・バイオテック社(Amersham Pharmacia Biotech))を用いたoxLDLの標識を、記載されるように調製した(スタントンら(Stanton et al.)JBC、1992年、第267巻、p.22446−22451)。標識処理の最後に、Cy3−oxLDLを大規模に透析し、標識効率を548nmでの吸光度を測定することによって評価した。
3)脂肪酸の調製
脂肪酸は、スペクター・エイ・エイ(Spector AA)およびホーク・ジェイ・シー(Hoak
JC )(1969年、Anal.Biochem、第32巻、p.297−302)に従って調製可能である。簡潔に述べると、100μmolの脂肪酸(12:0、16:0、18:0および20:0)は、400mgのCelite(登録商標、シグマ社(Sigma ))を含む7.5mlのヘキサン中に溶解され得る。次いで、連続的な磁気攪拌によって窒素下で溶媒を蒸発させる。次いで、脂肪酸により被覆された粒子を、無血清培地中で脂肪酸を含まないアルブミンと、窒素下に室温で1時間混合する。遠心分離後、アルブミンに結合した脂肪酸を含む上清を保存する。
4)脂肪酸またはoxLDL存在下での泡沫細胞形成およびRNAの抽出
脂肪酸存在下での小胞形成を、以下のように誘導した。簡潔に述べると、10−7Mのホルボール12−ミリステート−13−アセテート(シグマ社)を添加した培地中で、37℃、5%COで24時間、THP1の分化を誘導した。分化したTHP−1を、200μMの脂肪酸−BSA複合体と共に、または脂肪酸−BSA複合体を含めずに、37℃、5%COで24時間インキュベートした。洗浄およびパラホルムアルデヒド固定の後に、細胞をナイル・レッド(1μg/ml)およびヘキスト33342(10μg/ml)の溶液で室温にて10分間染色した。洗浄後、ナイル・レッドおよびヘキスト33342で染色した細胞について、MetaMorph(登録商標)ソフトウェア(ユニバーサル・イメージング社(Universal Imaging ))の制御下にありCCDカメラに連結された蛍光顕微鏡を使用して自動的に画像を取り込んだ。画像分析の後に、結果を、細胞数当たりのナイル・レッド強度の合計として示した。
酸化LDLの存在下で分化および泡沫細胞の形成を誘導するために、以下の手順を使用した。簡潔に述べると、6ウェル・プレート中に2×10個/ウェルの細胞を、10−7Mのホルボール12−ミリステート−13−アセテート(シグマ社)を添加したRPMI 1640、5%FBS中で、37℃、5%COで24時間プレート培養した。細胞を、1mlの予め暖めた培地で洗浄し、37℃、5%COで24時間にわたって2mlの予め暖めた培地中に維持して、ホルボール12−ミリステート−13−アセテート特異的な活性化を低下させた。分化したTHP−1を、RPMI 1640、5%FBS培地中の低密度リポタンパク質(10μg/mlおよび100μg/mlの天然LDLおよびoxLDL)またはリポタンパク質緩衝剤と共に6時間インキュベートした。
各刺激の時点の最後に、細胞を2mlのPBS(pH7.4)で1回洗浄し、Trizol(登録商標)で溶解させた。RNA抽出を製造業者の指示に従って実施した。
品質の制御を、泡沫細胞の形成および細胞の生存率について平行して実施した。簡潔に述べると、細胞を2%パラホルムアルデヒドで室温にて15分間固定し、HOで2回洗浄し、オイル・レッドO溶液で染色して細胞内脂質を可視化した。細胞を、マイヤーヘマトキシリンで室温にて10分間対比染色し、その後HOで4回洗浄した。泡沫細胞形成の画像を、カラーCCDカメラに連結された顕微鏡および分析ソフトウェアを使用して取り込んだ。最終的に、各刺激の時点について、細胞の生存率は、トリパン・ブルー排除法で95%を上回った。
図8および9は、脂質小胞で蓄積した泡沫細胞の形成に至るoxLDLおよび脂肪酸の取り込みを示す。図9中の泡沫細胞の形成は、ステアロイルCoAデサチュラーゼの特異的基質であるステアリン酸(18:0)の存在下で得た。
5)小胞蓄積の阻害
分化を誘導するために、96ウェル・プレート中8.5×10個/ウェルの細胞を、10−7Mのホルボール12−ミリステート−13−アセテート(シグマ社)を添加した培養培地中で、37℃、5%COで24時間プレート培養した。細胞を、200μlの予め暖めた培地で洗浄した。PMAにより分化したTHP−1細胞を、特異的インヒビターの存在下または非存在下で、Cy3標識したoxLDL(30μg/ml)と共にインキュベートした。図10に示す例では、A23187を試験化合物として使用した。細胞をPBSで2回洗浄し、核を2.5μMのSyto23で室温にて20分間対比染色した。PBSでの2回の洗浄後、Cy3‐oxLDLの取り込みの画像を、CCDカメラに連結された蛍光顕微鏡を使用して取り込んだ。各画像を分析し、QFluoro(商品名)ソフトウェア(ライカ社(Leica ))を使用して定量した。類似の結果がステアリン酸の存在下で得られる。
6)RNAおよびcDNAの調製
10個の細胞を、製造業者の指示に従って1mlのTrizol(登録商標、インビトロゲン社(Invitrogen))で抽出する。RNAを、RNaseもDNAseも含まない20μlのHO中に再懸濁する。cDNAを、以前に記載されたように(チェビラードら(Chevillard et coll)1996年)調製した。簡潔に述べると、1μgのRNAを、ランダム・ヘキサマー(PdN6、ロッシュ・ディアグノスティクス社(Roche Diagnostics ))を使用して逆転写し、1/100eのcDNAを各PCR反応(最終体積50μl)において使用した。SYBR(登録商標)Green PCR試薬またはTaqman(登録商標)Core試薬(アプライド・バイオシステムズ社(Applied Biosystems)[フランス国所在])を使用して、ABI PRISM(登録商標)7000配列検出装置でPCRを実施し、専用ソフトウェアで分析した。PCRサイクルは、amperase(登録商標)UNGを用いた50℃で2分間の初期ステップおよび95℃で10分間の最初の変性ステップと、その後の(95℃で10秒間の変性および60℃で1分間のアニーリング−伸長)×40サイクルとで構成されるものとした。プライマーのダイマー形成を最小限に抑えて最良の増幅収率に到達するために、MgCl濃度を各プライマー・セットについて最適化した。各増幅について、優位な蛍光シグナルが最初に検出されるサイクルを示すCt値を測定した。所定のサンプルにおいて、各遺伝子について得られたシグナルを、ハウスキーピング遺伝子(βアクチンまたはGAPDHまたはβ2ミクログロブリン)について得られたシグナルに対して正規化することによって、RNAの初期濃度および品質におけるあらゆる変動を考慮した。最後に、高レベルで標的遺伝子を発現し、各RT−PCR反応と同時に処理した対照サンプルから調製したRNAの連続希釈物から得られた較正曲線を参照して、遺伝子発現の相対的定量を実施した。結果について、対応する標準曲線がPCR産物の指数関数的増大に対して完全に線形であり、かつサンプルの発現レベルが標準曲線について得られたレベルと同じ範囲内であるかどうかを検討した。
RNAの品質制御および濃度測定を、バイオアナライザ2100装置(アジレント社(Agilent )[フランス国所在])を用いて実施した。RNAラダー6000(商品名、アンビオン社(Ambion)[英国所在])を、定量のための参照として使用する。全RNAを、RNA nano labchip kit(商品名、アジレント社[フランス国所在])を用いて分析する。全RNAについて、28/18Sの比が最小1であれば受容可能とみなす。
7)PCRプライマーの設計
PCRプライマーおよびtaqman(登録商標)プローブを、primer express(登録商標)2.0ソフトウェア(アプライド・バイオシステム社)を利用して設計した。ゲノム配列が既知である場合は、プライマーをエキソン結合部にまたがって選択した。プライマーの特異性を、GenbankのFASTAソフトウェアを用いたアラインメントおよび2%アガロース・ゲル電気泳動による増幅PCR産物のチェックを経て確認した。
チェビラード・エス(Chevillard, S.);プイラート・ピー(Pouillart, P. );ベルジョード・シー(Beldjord, C.)、アセレイン・ビー(Asselain, B.)、ベウゼボック・ピー(Beuzeboc, P.);マク゛タ゛レナト・エイチ(Magdalenat, H. );ビエル・ピー(Vielh, P. )(1996年)の「乳がんの新補助化学療法に対する応答性の予測マーカーとしての、多剤耐性表現型およびS期画分の測定の逐次評価(Sequential assesment of multidrug resistance phenotype and measurement of S-phase fraction as preditictive
markers of breast cancer response to neoadjuvant chemotherapy)」(Cancer、第77巻、p.292−300)。
対照条件下および4%コレステロールの富栄養食餌条件下のブタの左前下行枝(LAD)冠大動脈根の断面図。切片A〜Fは、6週目、9週目および12週目の進行したアテローム硬化性プラークの代表例である(A、C、E、×10;B、D、F、×40)。脂質を、オイル・レッドOで染色し(AおよびB)、細胞をトルイジン・ブルーで標識した(C、D、E、F)。 ブタの左前下行枝冠大動脈根における初期線維性−脂肪性プラークの詳細を示し、脂質小胞が蓄積したマクロファージ泡沫細胞の集簇を示す図。 6週間(6WD)、9週間(9WD)および12週間(12WD)にわたって4%コレステロールの食餌を給餌された高脂血症のブタの血漿リポタンパク質のプロファイルを示す図。データは、10匹のブタについての平均値を示す。 高コレステロール血症のブタ由来の、初期の進行プラークのレーザー顕微解剖切片およびRNA抽出物を示す図。A:LADの切片;B:顕微解剖切片;C:RNA抽出物および18S画分と28S画分との比が大きい高品質の分析結果。 プラークのレーザー顕微解剖切片由来のmRNAの増幅を示す図。(パネルA)アンチセンスRNAを2回のin vitro転写によって増幅した。増幅率は約80000であった。(パネルB)RNAの中間サイズは約1400ヌクレオチドであった。(パネルC)活性が低い、中程度および高い遺伝子のRT−PCR増幅を使用して、この増幅反応の直線性を概算した。 12000個の異なる遺伝子プローブを含むヒトDNAチップ上の典型的な発現の代表例を示す図。 線維性−脂肪性プラークの進行の間にアップ・レギュレートまたはダウン・レギュレートされることが見出された1200個の遺伝子のセットを用いた、対照ブタおよび食餌ブタを含む24匹の異なるブタの因子分析を示す図。この分析は、3群の動物を明らかに同定している。これらの群は、プラークの進行およびプラーク中の脂質含量を特徴付ける表現型特性によって分類され得る。 脂質小胞の蓄積を示す、泡沫細胞の表現型を有する原型の樹立細胞株を示す図。マクロファージの樹立細胞を、標識した酸化LDLの存在下で培養した。(control:対照) 分化したマクロファージ樹立細胞株における脂質小胞の誘導を示す図。小胞の形成は、200μMのアルブミン結合型ステアリン酸の存在下でこの細胞株を培養することによって得られる。 タンパク質のうち少なくとも1つのステアロイルCoAデサチュラーゼ阻害剤に対する特異的阻害剤を使用した、典型的な泡沫細胞における小胞蓄積の阻害を示す図。

Claims (21)

  1. アテローム硬化性プラークの成長、糜爛、破裂または安定性を低減および監視するための治療剤を同定するための方法であって、ステアロイルCoAデサチュラーゼ、ホスファチジン酸ホスフェートおよびホスホイノシチド特異的ホスホリパーゼ−B1の中から選択されるタンパク質をコードする少なくとも2つの遺伝子の差示的発現を分析し、アルドース・レダクターゼおよびアルデヒド・レダクターゼ、スフィンゴミエリナーゼ、酸性セラミダーゼ、セラミド・グルコシル・トランスフェラーゼ、スフィンゴシン・ホスフェート・リアーゼ、チモシンβ4、アルデヒド・デヒドロゲナーゼ、ATPアーゼCa++結合タンパク質ならびにCD163を含む群から選択されるタンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子の差示的発現の分析と最終的に関連付けることからなる方法。
  2. 前記分析がヒトの細胞もしくは動物の細胞、組織切片または動物モデルにおいて実施される、請求項1に記載の方法。
  3. 被験体の生物学的サンプルにおけるアテローム硬化症またはアテローム硬化性プラークに関連する心血管障害の診断方法であって、ステアロイルCoAデサチュラーゼ、ホスファチジン酸ホスフェートおよびホスホイノシチド特異的ホスホリパーゼ−B1の中から選択されるタンパク質をコードする少なくとも2つの遺伝子の差示的発現を分析し、アルドース・レダクターゼおよびアルデヒド・レダクターゼ、スフィンゴミエリナーゼ、酸性セラミダーゼ、セラミド・グルコシル・トランスフェラーゼ、スフィンゴシン・ホスフェート・リアーゼ、チモシンβ4、アルデヒド・デヒドロゲナーゼ、ATPアーゼCa++結合タンパク質ならびにCD163 ステアロイルCoAデサチュラーゼ、アルドース・レダクターゼおよびアルデヒド・レダクターゼ、スフィンゴミエリナーゼ、酸性セラミダーゼ、セラミド・グルコシル・トランスフェラーゼ、スフィンゴシン・ホスフェート・リアーゼ、チモシンβ4、アルデヒド・デヒドロゲナーゼ、ATPアーゼCa++結合タンパク質ならびにCD163からなる群から選択されるタンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子の差示的発現の分析と最終的に関連付けることからなる方法。
  4. 前記分析がヒトの細胞または組織切片において実施される、請求項3に記載の方法。
  5. 前記分析がmRNAレベルまたはタンパク質レベルで実施される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 以下の工程:
    固体表面上のアレイ状の複数の異なるリガンドを提供する工程であって、該異なるリガンドは、ステアロイルCoAデサチュラーゼ、ホスファチジン酸ホスフェートおよびホスホイノシチド特異的ホスホリパーゼ−B1の中から選択されるタンパク質をコードする少なくとも2つの遺伝子の異なるセグメントに相補的であり、かつ最終的にはアルドース・レダクターゼおよびアルデヒド・レダクターゼ、スフィンゴミエリナーゼ、酸性セラミダーゼ、セラミド・グルコシル・トランスフェラーゼ、スフィンゴシン・ホスフェート・リアーゼ、チモシンβ4、アルデヒド・デヒドロゲナーゼ、ATPアーゼCa++結合タンパク質ならびにCD163 ステアロイルCoAデサチュラーゼ、アルドース・レダクターゼおよびアルデヒド・レダクターゼ、スフィンゴミエリナーゼ、酸性セラミダーゼ、セラミド・グルコシル・トランスフェラーゼ、スフィンゴシン・ホスフェート・リアーゼ、チモシンβ4、アルデヒド・デヒドロゲナーゼ、ATPアーゼCa++結合タンパク質ならびにCD163からなる群中のタンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子の異なるセグメントに相補的であるか、または前記タンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子の異なるセグメントに相補的であることを特徴とする工程と、
    該リガンドおよびその標的の相互作用を可能にする条件下で、該リガンドの標的を含む
    可能性があるサンプル溶液を該リガンドのアレイに適用する工程と、
    該アレイの異なるリガンドと標的との相互作用を測定する工程と
    からなる請求項1または3に記載の方法。
  7. 前記リガンドは核酸プローブであり、かつ前記サンプルは標的核酸を含み、該核酸プローブと該標的核酸とのハイブリダイゼーションが測定される、請求項6に記載の方法。
  8. 前記核酸プローブがオリゴヌクレオチドである、請求項7に記載の方法。
  9. 前記アレイが、前記固体表面上に1平方センチメートル当たり2〜約200個のオリゴヌクレオチドを個別の位置に局在化させてなる、請求項8に記載の方法。
  10. 前記サンプルがアテローム硬化性プラークを発症している患者由来である、請求項6〜9のいずれか1項に記載の方法。
  11. アテローム硬化症またはアテローム硬化性プラークに関連する心血管障害の治療のために有用な化合物をスクリーニングする方法であって、試験化合物の存在下で、ステアロイルCoAデサチュラーゼ、ホスファチジン酸ホスフェートおよびホスホイノシチド特異的ホスホリパーゼ−B1の中で選択されるタンパク質をコードする少なくとも2つの遺伝子の差示的発現を分析し、アルドース・レダクターゼおよびアルデヒド・レダクターゼ、スフィンゴミエリナーゼ、酸性セラミダーゼ、セラミド・グルコシル・トランスフェラーゼ、スフィンゴシン・ホスフェート・リアーゼ、チモシンβ4、アルデヒド・デヒドロゲナーゼ、ATPアーゼCa++結合タンパク質ならびにCD163 ステアロイルCoAデサチュラーゼ、アルドース・レダクターゼおよびアルデヒド・レダクターゼ、スフィンゴミエリナーゼ、酸性セラミダーゼ、セラミド・グルコシル・トランスフェラーゼ、スフィンゴシン・ホスフェート・リアーゼ、チモシンβ4、アルデヒド・デヒドロゲナーゼ、ATPアーゼCa++結合タンパク質ならびにCD163の中のタンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子の差示的発現の分析と最終的に関連付けることからなる方法。
  12. 前記分析がヒトの細胞もしくは動物の細胞、組織切片または動物モデルにおいて実施される、請求項11に記載の方法。
  13. 前記分析がmRNAレベルまたはタンパク質レベルで実施される、請求項11および12のいずれか1項に記載の方法。
  14. 前記分析が固体支持体上で実施される、請求項13に記載の方法。
  15. 以下の工程:
    固体表面上のアレイ状の複数の異なるリガンドを提供する工程であって、前記異なるリガンドは、ステアロイルCoAデサチュラーゼ、ホスファチジン酸ホスフェートおよびホスホイノシチド特異的ホスホリパーゼ−B1の中から選択されるタンパク質をコードする少なくとも2つの遺伝子の全体または一部から構成され、かつアルドース・レダクターゼおよびアルデヒド・レダクターゼ、スフィンゴミエリナーゼ、酸性セラミダーゼ、セラミド・グルコシル・トランスフェラーゼ、スフィンゴシン・ホスフェート・リアーゼ、チモシンβ4、アルデヒド・デヒドロゲナーゼ、ATPアーゼCa++結合タンパク質ならびにCD163 ステアロイルCoAデサチュラーゼ、アルドース・レダクターゼおよびアルデヒド・レダクターゼ、スフィンゴミエリナーゼ、酸性セラミダーゼ、セラミド・グルコシル・トランスフェラーゼ、スフィンゴシン・ホスフェート・リアーゼ、チモシンβ4、アルデヒド・デヒドロゲナーゼ、ATPアーゼCa++結合タンパク質ならびにCD163の中のタンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子の全体または一部から最終的
    に構成されることを特徴とする工程と、
    試験化合物を含む溶液を該リガンドのアレイに適用する工程と、
    該アレイの異なるリガンドと該試験化合物との相互作用、例えば結合を測定する工程とからなる請求項11に記載の方法。
  16. 前記試験化合物が、タンパク質または低分子量の分子である、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
  17. 以下の工程:
    ステアロイルCoAデサチュラーゼ、ホスファチジン酸ホスフェートおよびホスホイノシチド特異的ホスホリパーゼ−B1の中から選択される少なくとも2つのタンパク質についてのアッセイであって、アルドース・レダクターゼおよびアルデヒド・レダクターゼ、スフィンゴミエリナーゼ、酸性セラミダーゼ、セラミド・グルコシル・トランスフェラーゼ、スフィンゴシン・ホスフェート・リアーゼ、チモシンβ4、アルデヒド・デヒドロゲナーゼ、ATPアーゼCa++結合タンパク質ならびにCD163 ステアロイルCoAデサチュラーゼ、アルドース・レダクターゼおよびアルデヒド・レダクターゼ、スフィンゴミエリナーゼ、酸性セラミダーゼ、セラミド・グルコシル・トランスフェラーゼ、スフィンゴシン・ホスフェート・リアーゼ、チモシンβ4、アルデヒド・デヒドロゲナーゼ、ATPアーゼCa++結合タンパク質ならびにCD163の中の少なくとも1つのタンパク質と最終的に関連するアッセイを提供する工程と、
    前記アッセイを試験化合物と接触させる工程と、
    アッセイ中の前記タンパク質に対する試験化合物の作用を測定する工程と
    からなる、請求項11〜13のいずれか1項に記載の、アテローム硬化症またはアテローム硬化性プラークに関連する心血管障害の治療のために有用な化合物をスクリーニングする方法。
  18. 前記分析が、高脂血症条件下であって高レベルの血中グルコースおよびインスリンを伴わない条件下で、ステアロイルCoAデサチュラーゼ、ホスファチジン酸ホスフェートおよびホスホイノシチド特異的ホスホリパーゼ−B1の中から選択されるタンパク質をコードする少なくとも2つの遺伝子の差示的発現を測定し、アルドース・レダクターゼおよびアルデヒド・レダクターゼ、スフィンゴミエリナーゼ、酸性セラミダーゼ、セラミド・グルコシル・トランスフェラーゼ、スフィンゴシン・ホスフェート・リアーゼ、チモシンβ4、アルデヒド・デヒドロゲナーゼ、ATPアーゼCa++結合タンパク質ならびにCD163 ステアロイルCoAデサチュラーゼ、アルドース・レダクターゼおよびアルデヒド・レダクターゼ、スフィンゴミエリナーゼ、酸性セラミダーゼ、セラミド・グルコシル・トランスフェラーゼ、スフィンゴシン・ホスフェート・リアーゼ、チモシンβ4、アルデヒド・デヒドロゲナーゼ、ATPアーゼCa++結合タンパク質ならびにCD163の中のタンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子の差示的発現の測定と最終的に関連付け、かつ前記測定を、マクロファージを含む初期および進行したアテローム硬化性プラーク中の前記タンパク質の正常な発現と比較することからなる、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
  19. 前記分析が、ステアロイルCoAデサチュラーゼ、ホスファチジン酸ホスフェートおよびホスホイノシチド特異的ホスホリパーゼ−B1の中から選択されるタンパク質をコードする少なくとも2つの遺伝子の差示的発現を測定し、アルドース・レダクターゼおよびアルデヒド・レダクターゼ、スフィンゴミエリナーゼ、酸性セラミダーゼ、セラミド・グルコシル・トランスフェラーゼ、スフィンゴシン・ホスフェート・リアーゼ、チモシンβ4、アルデヒド・デヒドロゲナーゼ、ATPアーゼCa++結合タンパク質ならびにCD163 ステアロイルCoAデサチュラーゼ、アルドース・レダクターゼおよびアルデヒド・レダクターゼ、スフィンゴミエリナーゼ、酸性セラミダーゼ、セラミド・グルコシル・
    トランスフェラーゼ、スフィンゴシン・ホスフェート・リアーゼ、チモシンβ4、アルデヒド・デヒドロゲナーゼ、ATPアーゼCa++結合タンパク質ならびにCD163の中のタンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子の差示的発現の測定と最終的に関連付け、かつ前記測定を、アテローム硬化性プラークに代表的な参照遺伝子の発現と比較することからなる、請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
  20. 前記参照遺伝子が、いずれもマクロファージ系統のマーカーであるCD68、CD36のような膜結合遺伝子;内皮細胞のマーカーであるPECAM 1;TLR4、HSP60およびHSP70、ガレクチン3ならびにIL1−Rのような炎症応答のマーカー;HIF−1およびパラオキサナーゼ3を含む酸化ストレスのマーカー、NADHデヒドロゲナーゼのような代謝マーカー;LDL−RおよびVLDL−Rのようなリポタンパク質レセプターを含む、請求項19に記載の方法。
  21. ステアロイルCoAデサチュラーゼ、ホスファチジン酸ホスフェートおよびホスホイノシチド特異的ホスホリパーゼ−B1の中から選択されるタンパク質をコードする少なくとも2つの遺伝子の発現を調節し、かつ最終的にはアルドース・レダクターゼおよびアルデヒド・レダクターゼ、スフィンゴミエリナーゼ、酸性セラミダーゼ、セラミド・グルコシル・トランスフェラーゼ、スフィンゴシン・ホスフェート・リアーゼ、チモシンβ4、アルデヒド・デヒドロゲナーゼ、ATPアーゼCa++結合タンパク質ならびにCD163
    ステアロイルCoAデサチュラーゼ、アルドース・レダクターゼおよびアルデヒド・レダクターゼ、スフィンゴミエリナーゼ、酸性セラミダーゼ、セラミド・グルコシル・トランスフェラーゼ、スフィンゴシン・ホスフェート・リアーゼ、チモシンβ4、アルデヒド・デヒドロゲナーゼ、ATPアーゼCa++結合タンパク質ならびにCD163の中のタンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子の発現を調節する、あるいは該少なくとも1つのタンパク質の活性を調節する化合物の、アテローム硬化症またはアテローム硬化性プラークに関連する心血管障害を予防および/または治療するために有用な医薬組成物の調製のための使用。
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