JP2006500068A - ヒト脳卒中の罹患性遺伝子;治療法 - Google Patents

ヒト脳卒中の罹患性遺伝子;治療法 Download PDF

Info

Publication number
JP2006500068A
JP2006500068A JP2004540173A JP2004540173A JP2006500068A JP 2006500068 A JP2006500068 A JP 2006500068A JP 2004540173 A JP2004540173 A JP 2004540173A JP 2004540173 A JP2004540173 A JP 2004540173A JP 2006500068 A JP2006500068 A JP 2006500068A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
stroke
pde4d
nucleic acid
gene
haplotype
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2004540173A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2006500068A5 (ja
Inventor
グレタースドッター,ソルベイグ
レイニスドッター,シグリダー,ティーエイチ.
ソーレイフソン,グドマー
グルシャー,ジェフリー,アール.
Original Assignee
デコード ジェネティクス イーエッチエフ.
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Priority claimed from US10/255,120 external-priority patent/US20040091865A1/en
Priority claimed from US10/419,723 external-priority patent/US20040014099A1/en
Application filed by デコード ジェネティクス イーエッチエフ. filed Critical デコード ジェネティクス イーエッチエフ.
Priority claimed from PCT/US2003/029906 external-priority patent/WO2004028341A2/en
Publication of JP2006500068A publication Critical patent/JP2006500068A/ja
Publication of JP2006500068A5 publication Critical patent/JP2006500068A5/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12QMEASURING OR TESTING PROCESSES INVOLVING ENZYMES, NUCLEIC ACIDS OR MICROORGANISMS; COMPOSITIONS OR TEST PAPERS THEREFOR; PROCESSES OF PREPARING SUCH COMPOSITIONS; CONDITION-RESPONSIVE CONTROL IN MICROBIOLOGICAL OR ENZYMOLOGICAL PROCESSES
    • C12Q1/00Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions
    • C12Q1/68Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions involving nucleic acids
    • C12Q1/6876Nucleic acid products used in the analysis of nucleic acids, e.g. primers or probes
    • C12Q1/6883Nucleic acid products used in the analysis of nucleic acids, e.g. primers or probes for diseases caused by alterations of genetic material
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12QMEASURING OR TESTING PROCESSES INVOLVING ENZYMES, NUCLEIC ACIDS OR MICROORGANISMS; COMPOSITIONS OR TEST PAPERS THEREFOR; PROCESSES OF PREPARING SUCH COMPOSITIONS; CONDITION-RESPONSIVE CONTROL IN MICROBIOLOGICAL OR ENZYMOLOGICAL PROCESSES
    • C12Q2600/00Oligonucleotides characterized by their use
    • C12Q2600/156Polymorphic or mutational markers
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12QMEASURING OR TESTING PROCESSES INVOLVING ENZYMES, NUCLEIC ACIDS OR MICROORGANISMS; COMPOSITIONS OR TEST PAPERS THEREFOR; PROCESSES OF PREPARING SUCH COMPOSITIONS; CONDITION-RESPONSIVE CONTROL IN MICROBIOLOGICAL OR ENZYMOLOGICAL PROCESSES
    • C12Q2600/00Oligonucleotides characterized by their use
    • C12Q2600/172Haplotypes

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Wood Science & Technology (AREA)
  • Analytical Chemistry (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Pathology (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)

Abstract

脳卒中におけるヒトPDE4D遺伝子が開示される。PDE4D遺伝子内の多型を用いる脳卒中の臨床的経過の予測および治療がまた開示される。

Description

発明の詳細な説明
関連出願
本願は、米国特許出願第09/811,352号(2001年3月19日出願)の一部継続出願である米国特許出願第10/067,514号(2002年2月4日出願)の一部継続出願である米国特許出願第10/255,120号(2002年9月25日出願)の一部継続出願である米国特許第10/419,723号(2003年4月18日出願)の一部継続出願である米国特許出願第10/650,120号(2003年8月27日出願)の継続出願であって、同特許出願に基づく優先権を主張する。前記特許出願の教示する内容は全て参照により本明細書に組み込まれる。
発明の背景
脳卒中(stroke)は一般的な重大疾患である。米国では毎年600,000人を超える人々が脳卒中を起こし、160,000人を超える人々が脳卒中関連の原因によって死亡している(Sacco,R.L.ら,Stroke 28,1507-17(1997))。西洋諸国では、脳卒中は重度障害の主原因であり、死因の第3位である(Bonita,R.,Lancet 339,342-4(1992))。40歳に達する人の生涯リスクは10%を超える。
脳卒中の臨床表現型は複雑であるが、虚血性脳卒中(80〜90%を占める)と出血性脳卒中(10〜20%)とに大別される(Caplan,L.R. Caplan's Stroke: A Clinical Approach, 1-556(Butterworth-Heinemann,2000))。虚血性脳卒中はさらに、通常は内頚動脈および総頚動脈のアテローム動脈硬化性関与による大血管閉塞性疾患(ここでは頚動脈性脳卒中という)と、脳内の小さい終動脈の非アテローム動脈硬化性狭窄化であると考えられる小血管閉塞性疾患と、通常は心房細動または虚血性(アテローム動脈硬化性)心疾患を背景として心臓から生じた血餅によって起こる心原性脳卒中とに細分される(Adams,H.P.,Jr.ら,Stroke 24,35-41(1993))。したがって脳卒中は1つの疾患ではなく、発病機序の相違を反映した異種起源の障害群であると思われる(Alberts,M.J. Genetics of Cerebrovascular Disease, 386(Futura Publishing Company,Inc.,ニューヨーク, 1999); Hassan,A.およびMarkus,H.S. Brain 123, 1784-812(2000))。しかし、あらゆる型の脳卒中が、高血圧、糖尿病、高脂血症および喫煙などの共通するリスク因子を持っている(Sacco,R.L.ら,Stroke 28,1507-17(1997);Leys,D.ら,J.Neurol. 249,507-17(2002))。脳卒中の家族歴も独立リスク因子であることから、環境因子と相互作用しうる遺伝因子の存在が示唆される(Hassan,A.およびMarkus,H.S. Brain 123,1784-812(2000);Brass,L.M.およびAlberts,M.J. Baillieres Clin.Neurol. 4,221-45(1995))。
一般的な型の脳卒中の遺伝的決定因子はまだほとんどわかっていない。珍しいメンデル型脳卒中を引き起こす特定遺伝子中の突然変異には、例えばCADASIL(皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体優性大脳動脈症)におけるNotch3遺伝子(Tournier-Lasserve,E.ら,Nat.Genet. 3,256-9(1993);Joutel,A.ら,Nature 383,707-10(1996))、アイスランド型の遺伝性アミロイド性脳出血におけるCystatin C(Palsdottir,A.ら,Lancet 2,603-4(1988))、オランダ型の遺伝性脳出血におけるAPP(Levy,E.ら,Science 248,1124-6(1990))、および遺伝性海綿状血管腫を持つ患者におけるKRIT1遺伝子(Gunel,M.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92,6620-4(1995);Sahoo,T.ら,Hum.Mol.Genet. 8,2325-33(1999))などの例がある。これら珍しい型の脳卒中はいずれもアテローム動脈硬化という背景を持たずに発生するので、これらに対応する遺伝子は、アテローム動脈硬化と共に発生することがほとんどである一般的な型の脳卒中では、何も役割を果たしていないと思われる。
脳卒中を予防するための戦略を開発することは、医療保障制度にとって極めて重要である。脳卒中がいったん起こってしまうと、その脳卒中に冒された血管が供給される脳の重要な部分で、不可逆的な細胞死が起こる。残念ながら、死んだニューロンを生き返らせたり、幹細胞集団から補充したりすることはできない。したがって、第一に、脳卒中が起こらないようにする必要がある。本発明者らは既に、脳卒中リスクを高める臨床的リスク因子をいくつか知っているが(上記)、脳卒中リスクをより正確に明らかにするために、脳卒中に関与する遺伝因子を明らかにするという医学的必要は、まだ満たされていない。さらに、素因対立遺伝子が一般集団中でよく見られるものであり、その存在に基づいて行われる疾患予測の特異性が低い場合には、その疾患状態の素因について意味のある予測を行うには、保護的遺伝子座などの更なる遺伝子座が必要になる。また、最初の脳卒中を予防するための治療剤、または以前に脳卒中もしくは一過性脳虚血脳卒中を起こしたことのある個体における新たな脳卒中を予防するための治療剤も、大いに必要とされている。
発明の概要
アイスランド人集団の染色体5q12に、虚血性脳卒中に対する罹患性を付与する遺伝子座がマップされ、虚血性脳卒中のリスクに寄与する5q12の遺伝子として、ホスホジエステラーゼ4D(PDE4D)の同定が報告された。この遺伝子座を詳細にファインマッピングし、脳卒中との関連について調べた。最も興味を引くのは、ハプロタイプを3つの異なる群、すなわち野生型群、リスクのある(at-risk)群および保護(protective)群に分類できるということである。また、複数のPDE4Dイソ型の著しい調節不全が、脳卒中患者に観察された。特に虚血性脳卒中の2つの主要サブタイプ、すなわち頚動脈性脳卒中と心原性脳卒中には、最も強い関連がPDE4D内にあった。本発明者らは、最も一般的な型の虚血性脳卒中のうちの2つである心原性脳卒中と頚動脈性脳卒中のリスクを2倍以上増加させるPDE4D中の変異を発見した。本発明者らは、PDE4Dには、mRNAレベルおよびタンパク質レベルで、少なくとも9個のイソ型が存在することを明らかにした。これらのイソ型の基礎は、触媒ドメインを規定するエキソンの共通集合と、長鎖型の場合には、調節ドメイン中の共通コアを規定するエキソンの集合に、選択的にスプライシングされる選択的5'エキソンの使用である。PDE4D遺伝子は脳卒中の病理発生過程に関与する。PDE4D遺伝子は、虚血性脳卒中の基礎をなす主要病理過程であるアテローム動脈硬化を介して関与するのかもしれない。本発明者らの結果は、アテローム動脈硬化が、血管系内でのcAMP濃度の調節不全に起因するcAMP疾患であることを示している。
一側面として、本発明は、脳卒中への素因を診断する方法に関する。個体における脳卒中への素因を診断する方法には、PDE4Dにおける多型の存在を検出すること、ならびにPDE4DポリペプチドまたはPDE4Dイソ型の発現の変化を検出すること、例えばPDE4Dポリペプチドの異なるスプライシングバリアントの存在または相対的発現などを検出することが含まれる。例えば、あるスプライス変異体の比を脳卒中素因の診断マーカーとして使用することができるだろう。また、PDE4D遺伝子中の突然変異によって生成しうる異常スプライス型(すなわち、普通は発現されないが、一次転写産物から異常スプライス型を生成させるDNA配列突然変異によって生成するもの)を検出することもできる。例えば、イントロン内の一塩基置換によって新しいスプライス部位が生じ、それがスプライス受容部位またはスプライス供与部位として不適切に使用されることにより、切断型PDE4Dタンパク質をもたらす早期停止コドンを持つ可能性のある異常メッセージが生成するかもしれない。発現の変化は量的変化、質的変化または量的変化と質的変化の両方であることができる。本発明の方法により、発症時または発症前に脳卒中を正確に診断することが可能になり、結果として、脳卒中の衰弱作用を軽減しまたは最小限に抑えることができる。また、本発明の方法では、限定されないが、例えば高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙歴、脳卒中、TIA、MIもしくはPAODの既往、または脳卒中関連遺伝子バリアントの保因者などといった他のリスク因子が存在する場合でさえ脳卒中の発症から保護されている個体も診断される。1つの態様において、個体中のPDE4Dイソ型レベルを対照レベルと比較決定することによって、脳卒中への素因または脳卒中への罹患性を評価することができ、イソ型発現の相違は、脳卒中への素因または罹患性を示す。好ましくは、PDE4D7および/またはPDE4D9の発現レベルを評価する。
さらに本発明は、1つ以上のPDE4DポリペプチドまたはPDE4Eイソ型の活性または発現または転写を変化させる(例えば増強または阻害する)薬剤を同定するためのアッセイに関する。そのようなアッセイでは、1つ以上のPDE4Dイソ型の、他のイソ型に対する相対発現を、mRNAレベルまたはポリペプチドレベルで変化させる薬剤を同定することもできる。例えば、PDE4Dポリペプチドまたはその断片もしくは誘導体を含有する細胞、細胞画分または溶液を試験対象薬剤と接触させて、PDE4Dポリペプチドの発現レベルまたは活性レベルを評価することができる。もう一つの選択肢として、PDE4D遺伝子の一部もしくは全部をレポーター遺伝子と共に、またはレポーター遺伝子を伴わずに含んでいる細胞、またはPDE4D遺伝子の一部もしくは全部をレポーター遺伝子と共に、またはレポーター遺伝子を伴わずに持っている人工DNA構築物を含んでいる細胞を使って、選択的5プライムエキソンの上流に存在する多くの選択的PDE4Dプロモーターの1つ以上における転写に直接影響を及ぼすか、または一次転写産物から1つ以上のmRNAイソ型へのスプライシング効率に直接影響を及ぼしうる薬剤を同定することができる。1つより多いPDE4Dポリペプチドの活性または発現(または対応するレポーター遺伝子活性)を同時に評価することができる(例えば上記の細胞、細胞画分、または溶液は、1つより多いタイプのPDE4Dポリペプチド、例えば異なるスプライシングバリアントなどを含有することができ、それら異なるポリペプチドまたはスプライシングmRNA変異体のレベルを評価することができる)。
PDE4D mRNAまたはPDE4Dポリペプチドの発現または活性を増強または阻害する薬剤も、本発明に包含される。同様に、PDE4D遺伝子、PDE4D mRNAおよび/またはPDE4Dポリペプチドを含有する細胞を、またはPDE4D遺伝子、PDE4D mRNAおよび/またはPDE4Dポリペプチドを、PDE4D mRNAまたはPDE4D ポリペプチドの発現または活性を増強または阻害する薬剤と接触させることによって、PDE4D mRNAまたはPDE4Dポリペプチドの発現または活性を変化させる(増強または阻害する)方法も、本発明に包含される。さらなる態様において、本発明の薬剤を使用することにより、イソ型mRNAおよび/またはイソ型タンパク質のレベルを、対照レベルと比較して変化させることもできる。
また、本発明は、本発明の核酸、本発明のポリペプチド、および/またはPDE4Dポリペプチドの活性を変化させる薬剤を含む医薬組成物に関する。さらに本発明は、例えば本発明の核酸、本発明のポリペプチド、PDE4Dポリペプチドの活性を変化させる薬剤、または前記核酸、ポリペプチドおよび/またはPDE4Dポリペプチドの活性を変化させる薬剤を含む組成物などのPDE4D治療剤を投与することによって、脳卒中を処置する方法に関する。
さらに本発明は、調節されたイソ型レベルが健常個体のレベルとよく似たものになるように、PDE4D mRNAイソ型および/またはPDE4Dポリペプチドイソ型のレベルを対照レベルと比較して調節することにより、脳卒中の発生を予防する必要がある個体において脳卒中の発生を予防する方法に関する。mRNAレベルおよび/またはポリペプチドレベルでのイソ型発現は、本発明の薬剤および医薬組成物を使用すること、遺伝子改変を行うこと、イソ型の比および/またはそれらの絶対的発現量を変化させることによって、調節することができる。1つの態様において、イソ型PDE4D7および/またはPDE4D9を調節することができる。
さらに本発明は、個体における脳卒中への罹患性を診断する方法を提供する。この方法は、ホスホジエステラーゼ4D遺伝子におけるリスクのあるハプロタイプの一つ(脳卒中への罹患性が高い個体には一般集団中にそれが存在する頻度よりも高い頻度で存在するもの)に関してスクリーニングすることを含み、リスクのあるハプロタイプの存在は脳卒中への罹患性を示す。「リスクのあるハプロタイプ」は、脳卒中と高い相関関係を示す、PDE4D遺伝子上の、本明細書に記載のハプロタイプの1つまたは組合せを包含するものとする。1つの態様において、リスクのあるハプロタイプは、配列番号1の核酸位置142780における少なくとも1つの一塩基多型の存在と、マイクロサテライトマーカーAC00881181-1の対立遺伝子0の存在とを特徴とする。さらなる態様において、リスクのあるハプロタイプ2は、配列番号1の核酸位置142780、135112、132562、131865、129361、129360、125304、123426、123312、120628、118914、111781、111252、109301、107849、105225、104552、102977、100795、99035、88614、88456、83119、82244、80127、78552における少なくとも1つの一塩基多型およびマイクロサテライトマーカーの存在と、マイクロサテライトマーカーAC0088181-1の対立遺伝子0の存在とを特徴とする。
さらに他の態様において、リスクのあるハプロタイプ3は、配列番号1の核酸位置138806、131865、129361、120628、91470における少なくとも1つの多型の存在を特徴とする。
また、個体の脳卒中への罹患性を診断する方法であって、ホスホジエステラーゼ4D遺伝子におけるリスクのあるハプロタイプ(脳卒中への罹患性が高い個体(罹患個体)には、健常個体(対照)にそれが存在する頻度よりも高い頻度で存在するもの)に関してスクリーニングすることを含み、PDE4D内またはPDE4Dの近傍におけるリスクのあるハプロタイプの存在に関するスクリーニングが、本明細書に記載するハプロタイプの少なくとも1つまたは脳卒中罹患性と有意に相関する方法を記載する。相関関係の簡単な検定の一例として、2×2分割表でのフィッシャーの直接確率検定が挙げられる。ある染色体のコホートに対して、両方のハプロタイプを含む染色体数、一方のハプロタイプを含むが他方のハプロタイプを含まない染色体数、およびどちらのハプロタイプも含まない染色体数から、2×2分割表を構築する。
保護的(protective)ハプロタイプは、脳卒中のリスクが低下しているという保護的特徴または特性を示す、PDE4D遺伝子上の、本明細書に記載のハプロタイプの1つまたは組合せを包含するものとする。特定の遺伝マーカーの組合せ(ハプロタイプ)が、対照には、患者よりも、予想以上の高頻度で存在する。保護的対立遺伝子または保護的ハプロタイプを持つ個体は、一般集団と比較して、脳卒中を起こす可能性が約30%低い。1つの態様において、保護的ハプロタイプは、配列番号1のヌクレオチド位置142780に対立遺伝子Aなどの少なくとも1つの一塩基多型が存在することを特徴とする。リスクのあるハプロタイプまたは保護的ハプロタイプを含む多型の存在は、電気泳動解析、制限断片長多型解析、蛍光エネルギー移動検出、速度論的(kinetic)PCR、対立遺伝子特異的PCR、配列解析、ハイブリダイゼーション解析または他の既知の技術によって、決定することができる。
個体の脳卒中への罹患性を診断するためのキットも開示する。このキットは、リスクのあるハプロタイプおよび/または保護的ハプロタイプを含むPDE4Dの一領域を核酸増幅するためのプライマーを含む。
本発明の第1の主たる適用例には、脳卒中を発症するリスクが高い人々の予測が含まれる。脳卒中に寄与する遺伝因子を明らかにする診断検査を、既知の臨床的リスク因子と一緒に、または既知の臨床的リスク因子とは独立して使用することにより、一般集団に対して、個体のリスクを明らかにすることができる。脳卒中のリスクにさらされている個体を同定する手段の向上は、現在の臨床的リスク因子(高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、肥満、およびC反応性タンパク質レベルまたは他の炎症マーカーの増加に反映される炎症成分など)のより積極的な管理を含む予防法および処置法の向上につながるはずである。医師は、生活様式を調整し禁煙するように特定の患者を説得する一助として、遺伝的リスクに関する情報を使用することができる。本発明は、個体の脳卒中のリスクを倍増させる遺伝成分を明らかにする手段を提供する。また、個体を脳卒中から保護する遺伝成分を明らかにする手段も記述する。
本発明の第2の主たる適用例は、脳卒中に関与する律速経路の特異的同定である。多くの人々が、頚動脈のアテローム斑において過剰発現または過少発現される遺伝子を発見しようと試みてきたが、正常血管と比較して患部血管に認められる変化の大部分は、単に、アテローム動脈硬化および脳卒中素因の基礎をなす過程に対する反応であって、基礎をなす原因ではない。対照と比較して脳卒中患者には有意によく見いだされる遺伝的変異を持つ疾患遺伝子は、脳卒中の病理発生過程において、特異的に実証された原因段階に相当する。すなわち、ある遺伝子が原因遺伝子であるか、それとも単にその疾患過程に反応する遺伝子に過ぎないかに関する不確定性が排除される。疾患遺伝子がコードするタンパク質は、脳卒中素因の生物学的過程に関与する律速分子経路を明らかにする。そのような脳卒中遺伝子がコードするタンパク質またはその分子経路におけるその相互作用タンパク質は、低分子、タンパク質、抗体、または核酸療法によって選択的に調整されうる薬物標的になりうる。そのような特異的情報は、大いに必要とされている。なぜなら脳卒中の予防と処置は、医学的に大いに必要とされながらもその必要はまだ満たされておらず、毎年50万人を超える米国人に発症しているからである。脳卒中に対して保護的な遺伝子を決定することも有用である。保護的遺伝子がコードするタンパク質と、それが一構成要素となっている生物学的経路は、低分子、タンパク質、抗体または核酸療法によって選択的に調整されるもう一つの標的になりうる。
本発明の第3の適用例は、特定の薬物(PDE4Dまたはその経路に作用しない薬物でもよい)に対する個体の応答を予測するためのその使用である。一般に、患者達が同じ薬物に等しく応答しないことは、周知の現象である。与えられた薬物に対する薬物応答の相違の多くは、一定の遺伝子とそれに対応する経路における個体間の遺伝子の相違およびタンパク質の相違に基づくと考えられる。本発明は、PDE4D経路と、それが脳卒中リスクに関与する1つのキー分子経路として発現される細胞中のcAMPレベルに対するその作用とを明らかにする。現在または将来の治療剤のなかには、この経路に直接的または間接的に影響を及ぼす能力を持ち、その結果、PDE4D経路の遺伝的変異によって一部が決定される脳卒中リスクを持つ患者には有効であるものがあるだろう。他方、PDE4D遺伝子またはPDE4D経路にリスクのある変異を持たない患者では、同じ薬物の有効性が低いか、または同じ薬剤が無効であるだろう。したがって、PDE4D変異またはPDE4Dハプロタイプは、与えられた個体における薬物応答を予測し治療剤の選択を誘導するための薬理ゲノミクス診断手段として使用することができる。
本発明は、少なくとも2つの主要な方法: 1)脳卒中のリスクが一般集団よりも高い患者であって、脳卒中を予防する努力として担当医師がより積極的に管理することのできる患者を明らかにする手段を提供する方法; 2)脳卒中が起こる前にそれを予防するために使用するか、または既に脳卒中または一過性脳虚血脳卒中を起こしたことが個体における2回目の脳卒中を予防するために使用することができる治療剤を、スクリーニングおよび開発するために使用することのできる薬物標的を明らかにする方法、で、まだ満たされていない医学的必要を満たすのを助けるものである。
本発明の上述のおよび他の目的、特徴および利点は、添付の図面に図解するように、本発明の特定の態様に関する以下のより具体的な説明から、明らかになるだろう。
発明の詳細な説明
一般的な型の脳卒中における罹患性遺伝子のゲノム全体の探索を用い、最初の主要脳卒中遺伝子座STRK1が、5q12にマップした。虚血性脳卒中、一過性脳虚血脳卒中(TIA)および出血性脳卒中を持つ患者を含む、大まかではあるが厳格な表現型の定義を使用した。より高密度のマーカー(1cMごとに1個のマーカー)を加えた後のロッドスコアは、マーカーD5S2080で4.40(P=3.9×10-6)であった。出血性脳卒中患者を除くとロッドスコアは4.9に増加したことから、この遺伝子座にある遺伝子は主として虚血性脳卒中にとって重要であることが示唆される。脳卒中罹患性遺伝子を保持する最も有望な領域を、LODスコアの低下が1であることによって定義されるD5S1473からD5S398までの6cM未満(約3.8Mb)のセグメントに絞り込んだ(以下、これを「1LOD区間」という)。
本発明者らは、ここに、STRK1遺伝子座に位置する脳卒中罹患性遺伝子のポジショナルクローニングについて記述する。この領域を詳細にファインマッピングして、脳卒中との関連について調べた。この1LOD区間に見いだされた最も強い関連は、サイクリックヌクレオチドホスホジエステラーゼの大きなスーパーファミリーの一メンバーであるホスホジエステラーゼ4D遺伝子(PDE4D)内にあった。PDE4Dに観察された最も強いシグナルは、虚血性脳卒中の2つの主要サブタイプ、すなわち頚動脈性脳卒中と心原性脳卒中に対するものだった。PDE4Dイソ型の相対発現量は、脳卒中と相関し、脳卒中に関連するPDE4D内の遺伝的変異とも相関した。本発明者らの結果は、脳卒中の基礎をなす主要な病理過程であるアテローム動脈硬化を介した脳卒中の病理発生過程に、この遺伝子が関与することを示唆している。
本発明者らの結果は、PDE4D遺伝子中の遺伝的変異が、虚血性脳卒中に関連していることも示している。PDE4Dの直接的関与は、連鎖とハプロタイプ関連の両方によって、強く裏付けられる。PDE4D遺伝子内の複数のマーカーおよびハプロタイプが、脳卒中との強い関連を示す。ハプロタイプは、野生型群、リスクのある群および保護群という3つの異なる群に分類することができる。本発明者らは、まず最初に、マイクロサテライトマーカーを使って関連を同定し、そのマイクロサテライトデータを、より高密度な一組のSNPで補足することにより、それをさらに裏付けた。最も強い関連は、2つの虚血性サブタイプ、すなわち頚動脈性脳卒中と心原性脳卒中に対するものだった。この遺伝子は、小血管閉塞性疾患(アテローム動脈硬化とは無関係と考えられている型の脳卒中)には関連を示さない。ハプロタイプ解析により、最も重要なハプロタイプは、PDE4D遺伝子の第1エキソンを覆う260kbの領域にわたっていることがわかる。このハプロタイプは、頚動脈性脳卒中および心原性脳卒中に、2.3の相対リスクで有意に関連し、頚動脈性/心原性脳卒中患者の約47%が、このハプロタイプを少なくとも1コピーは持っている。このハプロタイプは脳卒中全般に対して1.8の相対リスクを持つ。このハプロタイプは、PDE4D7イソ型にユニークな5'エキソンとこのイソ型の推定プロモーター領域に広がっていることから、その機能的変異は転写調節に関与している可能性が示唆される。この仮説は、疾患関連ハプロタイプとPDE4D7メッセージのレベルとの間に有意な相関関係があることを示す本発明者らのPDE4D発現解析によっても裏付けられる。
このPDE4Dハプロタイプに関して見いだされた最も強い関連は、虚血性脳卒中の2つの主要サブタイプ、すなわち頚動脈性脳卒中と心原性脳卒中に対するものであったことから、アテローム動脈硬化の血管生物学にこの遺伝子が果たす役割が示唆される。虚血性脳卒中には複数の病因があるが、アテローム動脈硬化は依然として最も重要な病因である。アテローム動脈硬化は、大動脈内での脂質、線維成分および細胞成分の蓄積を特徴とする慢性進行性疾患である。これらの病巣は、血流を妨げるほど大きく成長する場合があり、さらに重要なことに、その表面が断裂して、血管を閉塞する局所血栓をもたらし、脳卒中または心筋梗塞を引き起こす場合もある。2つの虚血性サブタイプ、頚動脈性脳卒中と心原性脳卒中の主要な病理過程は、アテローム動脈硬化である。第1に、これは、頚動脈性脳卒中につながる内頚動脈および総頚動脈の狭窄性および閉塞性病変の主原因である。第2に、脳に塞栓を排出する心臓血栓は、最も一般的には、冠動脈疾患を背景として、例えば急性心筋梗塞または虚血性心筋症に続いて、そして/または虚血性心室の低いコンプライアンス(拡張機能不全/硬直)に基づく心房細動に起因して起こる。心房細動は、脳卒中を起こしやすい年齢群では弁膜症、甲状腺機能亢進症および高血圧などの他の疾患を背景にして起こることもあるが、虚血性心疾患は依然として最も重要な原因の一つである。脳内の小穿通動脈の閉塞に起因する虚血性脳卒中(小血管閉塞性疾患またはラクナ梗塞)は局所的内皮増殖に起因すると一般に考えられている。なぜなら、アテローム動脈硬化はもっと大きい動脈でしか起こらないからである。PDE4Dは小血管脳卒中との関連を示さないが、これはアテローム動脈硬化におけるその役割と合致している。要約すると、アテローム動脈硬化は、全脳卒中の大部分、特にPDE4D遺伝子との最も強い関連を示す2つのサブ表現型である頚動脈性脳卒中と心原性脳卒中の原因になる。
代表的標的集団
脳卒中のリスクにさられている個体は、少なくとも1つのリスク因子、例えば脳卒中もしくはTIAの既往、1つ以上の脳卒中リスク遺伝子におけるリスクのあるハプロタイプ、PDE4D遺伝子に関するリスクのあるハプロタイプ、PDE4D遺伝子における多型、PDE4Dイソ型発現の調節不全、糖尿病、高血圧、高コレステロール血症、lp(a)値の上昇、肥満、過去または現在の喫煙、炎症マーカー(例えばC反応性タンパク質(CRP)、血清アミロイドA、フィブリノゲン、組織壊死因子α、可溶性血管細胞接着因子(sVCAM)、可溶性血管間接着分子(soluble intervascular adhesion molecule:sICAM)、E-セレクチン、マトリックスメタロプロテアーゼ1型、マトリックスメタロプロテアーゼ2型、マトリックスメタロプロテアーゼ3型、およびマトリックスメタロプロテアーゼ9型)の上昇、LDLコレステロールの増加および/またはHDLコレステロールの減少、および/または少なくとも1回の心筋梗塞の既往、併発しているMI、急性冠症候群、安定狭心症、アテローム動脈硬化、頚動脈狭窄、末梢血管閉塞性疾患などを持っている個体、または冠動脈血流を回復するための処置(例えば血管形成術、ステント、冠動脈バイパス移植)を必要としている個体である。
保護的ハプロタイプを持つ個体は、脳卒中を起こしにくい個体である。本発明の他の態様では、脳卒中のリスクにさらされている個体は、その多型の存在が脳卒中への罹患性を示すような多型をPDE4D遺伝子中に持つ個体である。保護的ハプロタイプを持ち、脳卒中を起こしにくい個体は、その多型の存在が脳卒中からの保護を示すような多型をPDE4D遺伝子中に持つ(例えば配列番号1のヌクレオチド位置142780にA対立遺伝子を持つ)個体である。ここで使用する「遺伝子」という用語は、ポリペプチドをコードする核酸の配列だけでなく、プロモーター領域、転写促進エレメント、スプライス供与/受容部位、スプライスエンハンサー配列、スプライスサイレンサー配列および他のスプラインシング調節因子、ならびに他の非転写核酸エレメントも指す。代表的な多型には、下記表11に記載するものがある。
本発明の1つの態様では、脳卒中(特に虚血性脳卒中、ただしこれに限らない)のリスクにさらされている個体は、本明細書に記載するようにPDE4Dにリスクのあるハプロタイプを持つ個体である。虚血性脳卒中の2つの主要なサブタイプ、すなわち頚動脈性脳卒中および心原性脳卒中のリスクの増加は、PDE4D7の5'UTRにあるSNP5PDM361194、SNP5PDM368135、SNP5PDM370640、SNP5PDM379372およびSNP5PDM408531を含むリスクのあるハプロタイプに関するスクリーニングによって評価することができる。ここに報告する結果は、PDE4Dがアテローム動脈硬化による脳卒中の病理発生過程に関与することを示している。頚動脈性脳卒中および心原性脳卒中の主要な病理過程はアテローム動脈硬化である。したがって、アテローム動脈硬化、末梢動脈閉塞性疾患または心筋梗塞のリスクにさらされている個体も、本発明の教示する内容の恩恵を受けることができる。
リスクのあるハプロタイプおよび保護的ハプロタイプの評価
本明細書に記載する「ハプロタイプ」は、例えば表1、2C、4Aおよび4Bに記載するような遺伝マーカー(対立遺伝子)の組合せを指す。ある態様では、ハプロタイプは1つ以上の対立遺伝子、2つ以上の対立遺伝子、3つ以上の対立遺伝子、4つ以上の対立遺伝子、または5つ以上の対立遺伝子を含むことができる。これらの遺伝マーカーはPDE4Dと関連する「多型部位」における特定の「対立遺伝子」である。ある集団(自然集団または合成集団、例えば合成分子のライブラリー)中で2つ以上の配列が可能であるようなヌクレオチド位置を、ここでは「多型部位」という。多型部位が一塩基長である場合、その部位を一塩基多型(「SNP」)という。例えば、ある特定の染色体位置において、ある集団の一メンバーがアデニンを持ち、その集団の別のメンバーが同じ位置にチミンを持つとすると、この位置は多型部位であり、より具体的には、その多型部位はSNPである。多型部位には、置換、挿入または欠失に基づく配列の相違を見込むことができる。ある多型部位に関する配列の各バージョンを、ここではその多型部位の「対立遺伝子」という。したがって、上記の例では、そのSNPに、アデニン対立遺伝子とチミン対立遺伝子の両方が見込まれる。
典型的には、ある特定の配列に関して、基準配列を参照する。基準と相違する対立遺伝子を「変異」対立遺伝子という。例えば、基準PDE4D配列を、ここでは配列番号1に記載する。ここで使用する「変異PDE4D」という用語は、配列番号1とは異なる点を持つが、その他の点では実質的に類似している配列を指す。ここに記載するハプロタイプを構成している遺伝マーカーはPDE4D変異体である。
また、ポリペプチド、例えばPDE4Dポリペプチドに影響を及ぼす変化を含む変異体もある。基準ヌクレオチド配列と比較した場合、これらの配列差は、フレームシフトを引き起こす1ヌクレオチドの挿入もしくは欠失、または2ヌクレオチド以上の挿入もしくは欠失;コードされているアミノ酸の変化をもたらす少なくとも1ヌクレオチドの変化;早期停止コドンの生成をもたらす少なくとも1ヌクレオチドの変化;当該ヌクレオチドがコードする1個以上のアミノ酸の欠失をもたらす数ヌクレオチドの欠失;不均等な組換えまたは遺伝子変換などによって起こる1〜数個のヌクレオチドの挿入で、読み枠のコード配列の中断を引き起こすもの;配列の全部または一部の重複;転位;または上に詳述したヌクレオチド配列の再配列を含みうる。そのような配列変化はPDE4D核酸によってコードされるポリペプチドを変化させる。例えば、核酸配列中の変化がフレームシフトを引き起こす場合、そのフレームシフトは、コードされているアミノ酸の変化をもたらす場合があり、そして/または切断型ポリペプチドの生成を引き起こす早期停止コドンの生成をもたらす場合がある。あるいは、脳卒中または脳卒中への罹患性と関連する多型は、1個以上のヌクレオチドの同義変化(すなわちアミノ酸配列の変化をもたらさない変化)である場合もある。そのような多型は、例えば、スプライス部位を変化させたり、mRNAの安定性または輸送に影響を及ぼしたり、ポリペプチドの転写または翻訳に他の影響を及ぼしたりしうる。基準ヌクレオチド配列がコードするポリペプチドは、特定の基準アミノ酸配列を持つ「基準」ポリペプチドであり、変異対立遺伝子がコードするポリペプチドは、変異アミノ酸配列を持つ「変異」ポリペプチドと呼ばれる。
ハプロタイプは、遺伝マーカー(例えば多型部位における特定の対立遺伝子)の組合せである。ここに記載するハプロタイプ、例えば表3、表4Aおよび4Bに示すようなマーカーを持つものは、脳卒中を持つ個体では、脳卒中を持たない個体よりも高頻度に見いだされる。したがって、これらのハプロタイプは、個体における脳卒中または脳卒中への罹患性の検出に関して予測的価値を持っている。ここに記載するハプロタイプは、さまざまな遺伝マーカーの組合せ(例えばSNPおよびマイクロサテライト)である。したがって、ハプロタイプの検出は、多型部位における配列を検出するための、当技術分野で既知の方法(例えば上述の方法)によって行うことができる。
本明細書に記載する特定の方法では、脳卒中のリスクにさらされている個体は、その個体の中にリスクのあるハプロタイプが同定される個体である。1つの態様において、リスクのあるハプロタイプは、有意な脳卒中のリスクを付与するものである。1つの態様において、ハプロタイプに関する有意性は、オッズ比によって測定される。さらなる態様では、有意性はパーセンテージによって測定される。1つの態様において、有意なリスクは、少なくとも約1.2のオッズ比(1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8および1.9を含むが、これらに限らない)として測定される。さらなる態様では、少なくとも1.2のオッズ比を有意とする。さらなる態様では、少なくとも約1.5のオッズ比を有意とする。さらなる態様では、リスクの有意な増加を、少なくとも約1.7とする。さらなる態様では、リスクの有意な増加は、少なくとも約20%(約25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%および98%を含むが、これらに限らない)である。さらなる態様では、リスクの有意な増加は、少なくとも約50%である。ただし、リスクが医学的に重要であるかどうかの識別は、例えば問題の疾患、ハプロタイプ、そして多くの場合、環境因子を含む、さまざまな因子にも依存しうると理解される。
PDE4D遺伝子中の(またはPDE4D遺伝子の一部を含む)リスクのあるハプロタイプは、脳卒中のリスクにさらされている個体(罹患個体)に、健常な個体(対照)にそれが存在する頻度よりも高い頻度で存在し、そのハプロタイプの存在が脳卒中または脳卒中への罹患性を示すものである。PDE4D遺伝子中の(またはPDE4D遺伝子の一部を含む)保護的ハプロタイプは、そのハプロタイプが脳卒中への罹患を防いでいる個体には、脳卒中を持つ個体にそれが存在する頻度よりも、高い頻度で存在するものである。このハプロタイプの存在は、上述のように、脳卒中からの保護または脳卒中への罹患性からの保護を示す。
SNPおよび/またはマイクロサテライトマーカーの存在に関する遺伝子型判定を行うための標準的技術、例えば蛍光に基づく技術(Chenら,Genome Res. 9,492(1999))、PCR、LCR、ネステッドPCRおよび他の核酸増幅技術などを使用することができる。1つの態様において、本方法は、PDE4D遺伝子またはその一部におけるSNPおよび/またはマイクロサテライトの存在または頻度を、個体で評価することを含み、健常対照個体と比較して過剰なまたは高頻度なSNPおよび/またはマイクロサテライトは、その個体が脳卒中を持っているか、または脳卒中に罹患しやいことを示す。スクリーニングツールとして使用することができるハプロタイプを形成することが可能なSNPおよびマーカーについては、例えば表1、表2C、表2D、表3、表4Aおよび4B(下記)を参照されたい。これらのマーカーおよびSNPは、リスクのあるハプロタイプ中に同定することができる。例えば、あるリスクのあるハプロタイプは、例えば表2C、表4Bおよび4Bに記載するようなマイクロサテライトマーカーおよび/またはSNPを含むことができる。このハプロタイプの存在は、脳卒中または脳卒中への罹患性を示し、したがって、ここに記載する処置方法の標的集団に含まれる個体を示す。
ハプロタイプ解析では、まず、LODスコアを使って候補罹患性遺伝子座を明らかにする必要がある。次に、明らかにされた領域を、マーカー間の平均間隔が100kb未満であるマイクロサテライトマーカーを使って、超ファインマッピングする。公共データベースに見いだされ、この領域内にマップされている使用可能なマイクロサテライトマーカーは、全て使用することができる。加えて、ヒトゲノムのdeCODE genetics配列アセンブリ中に同定されるマイクロサテライトマーカーも使用することができる。患者群および対照群におけるハプロタイプの頻度は、期待値最大化アルゴリズムを使って推定することができる(Dempster A.ら,1977,J.R.Stat.Soc.B,39:1-389)。欠けている遺伝子型と相の不確定性とを処理することができるこのアルゴリズムの実行を、使用することができる。帰無仮説では、患者と対照とが同じ頻度を持つと仮定する。尤度法を使って、本明細書に記載のマーカーを含みうるリスクのあるハプロタイプの候補が患者では対照よりも高い頻度を持つことが許される対立仮説を、他のハプロタイプの頻度の比が両群で同じであると仮定して、検定する。尤度を両仮説の下で個別に最大化し、対応する1df尤度比統計を使って統計的有意性を評価する。
1ロッド区間中のリスクのあるハプロタイプまたは保護的ハプロタイプを探すには、例えば、それらのマーカーが実用的な領域にまたがっているならば、遺伝子型判定したマーカーの考えうる全ての組合せについて、その関連を調べる。患者と対照を合わせた群は、元の患者群および対照群と同じサイズを持つ二組に、無作為に分割することができる。次に、ハプロタイプ解析を繰り返し、記録された最も有意なp値を決定する。この無作為化法を例えば100回以上繰り返して、p-値の実験的分布を構築することができる。
1つの態様において、リスクのあるハプロタイプは、配列番号1の核酸位置1425923、1415979、1414804、1371388、1307403および1257206における一塩基多型の1つまたは組合せによって表される多型が存在することを特徴とする。さらなる態様において、脳卒中への罹患性を診断する方法は、配列番号1の核酸位置263539、252772、189780、175259、171240、136550および120628における一塩基多型の1つまたは組合せによって表されるリスクのあるハプロタイプの存在を決定することを含みうる。さらなる態様では、リスクのあるハプロタイプは、以下のSNPによって特徴づけられる:SNP5PDM361194、SNP5PDM368135、SNP5PDM370640、SNP5PDM379372、およびSNP5PDM408531。1つの態様において、保護的ハプロタイプは、配列番号1の位置142780にSNP45のA対立遺伝子を含む。このハプロタイプは、虚血性脳卒中の2つの主要サブタイプ、すなわち頚動脈性脳卒中と心原性脳卒中への罹患性を評価する際に、とりわけ有用である。さらなる態様では、マイクロサテライトマーカーAC008818-1を使ってリスクのある対立遺伝子の存在を明らかにすることによって、リスクのあるハプロタイプ、特に頚動脈性脳卒中および心原性脳卒中のリスクのあるハプロタイプが特徴づけられる。
核酸治療剤
別の態様において、本発明の核酸、本発明の核酸に相補的な核酸、もしくはそのような核酸の一部(例えば後述のオリゴヌクレオチド)、またはPDE4Dポリペプチドをコードする核酸は、ある核酸のmRNAおよび/またはゲノムDNAに特異的にハイブリダイズする核酸(例えばオリゴヌクレオチド)を投与するかその場で生成させる「アンチセンス」療法に使用することができる。mRNAおよび/またはDNAに特異的にハイブリダイズするアンチセンス核酸は、そのmRNAおよび/またはDNAがコードするポリペプチドの発現を、例えば翻訳および/または転写を阻害することによって阻害する。アンチセンス核酸の結合は、通常の塩基対相補性によるものであるか、または、例えばDNA二重鎖に結合する場合であれば、二重らせんの主溝における特異的相互作用によるものであることができる。
アンチセンス構築物は、例えば上述したような発現プラスミドとして、送達することができる。プラスミドが細胞内で転写されると、PDE4DポリペプチドをコードするmRNAおよび/またはDNAの一部に相補的なRNAが生成する。もう一つの選択肢として、アンチセンス構築物は、エクスビボで作製され、細胞中に導入されるオリゴヌクレオチドプローブであることもできる。これは、mRNAおよび/またはゲノムDNAとハイブリダイズすることによって発現を阻害する。1つの態様において、前記オリゴヌクレオチドプローブは、内在性ヌクレアーゼ(例えばエキソヌクレアーゼおよび/またはエンドヌクレアーゼ)に対して耐性であるためにインビボで安定な、修飾オリゴヌクレオチドプローブである。アンチセンスオリゴヌクレオチドとして使用される典型的な核酸分子は、DNAのホスホルアミダデート、ホスホチオエートおよびメチルホスホネート類似体である(米国特許第5,176,996号、第5,264,564号および第5,256,775号も参照されたい)。また、アンチセンス療法に有用なオリゴマーを構築するための一般的アプローチは、例えばVan der Krolら(Biotechniques 6:958-976(1988))やSteinら(Cancer Res. 48:2659-2668(1988))によっても記述されている。アンチセンスDNAについては、翻訳開始部位に由来するオリゴデオキシリボヌクレオチドが好ましい。
アンチセンス療法を行うには、ポリペプチドをコードするmRNAに相補的なオリゴヌクレオチド(mRNA、cDNAまたはDNA)を設計する。このアンチセンスオリゴヌクレオチドは、mRNA転写産物に結合し、翻訳を妨げる。絶対的な相補性は、好ましいものの、必要ではない。本明細書にいう、あるRNAの一部に「相補的な」配列とは、ある配列が、そのRNAとハイブリダイズして安定な二重鎖を形成することができるように、十分な相補性を持つことを示す。したがって、二本鎖アンチセンス核酸の場合は、二重DNAの一本の鎖を試験するか、三重鎖の形成をアッセイすることができる。ハイブリダイズ能力は、上に詳述したように、アンチセンス核酸の相補性の程度と長さの両方に依存するだろう。一般に、ハイブリダイズする核酸が長いほど、RNA中により多くの塩基ミスマッチが含まれていても、安定な二重鎖(場合によっては三重鎖)を形成することができる。当業者は、標準的な方法を使って、許容できるミスマッチの程度を確かめることができる。
アンチセンス療法で使用されるオリゴヌクレオチドは、一本鎖もしくは二本鎖のDNA、RNA、またはそれらのキメラ混合物もしくは誘導体もしくは修飾体であることができる。オリゴヌクレオチドは、例えばその分子の安定性、ハイブリダイゼーションなどを向上させるために、塩基部分、糖部分またはリン酸主鎖に修飾を行うことができる。オリゴヌクレオチドは他の付属基、例えばペプチド(例えばインビボで宿主受容体をターゲティングするため)、または細胞膜(例えばLetsingerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:6553-6556(1989);Lemaitreら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:648-652(1987);PCT国際公開第WO88/09810参照)もしくは血液脳関門(例えばPCT国際公開第WO89/10134参照)を横切る輸送を促進する薬剤、またはハイブリダイゼーション誘発型切断剤(例えばKrolら,BioTechniques 6:958-976(1988)参照)、またはインターカレート剤(例えばZon,Pharm.Res. 5:539-549(1988)参照)などを含むことができる。この目的を達成するために、オリゴヌクレオチドを別の分子(例えばペプチド、ハイブリダイゼーション誘発型架橋剤、輸送剤、ハイブリダイゼーション誘発型切断剤など)に結合することができる。
アンチセンス分子は、インビボでPDE4Dポリペプチドを発現させる細胞に送達される。細胞へのアンチセンスDNAまたはアンチセンスRNAの送達には、数多くの方法を使用することができる。例えばアンチセンス分子は組織部位に直接注射することができる。また、所望の細胞を標的とするように設計された修飾アンチセンス分子(例えば標的細胞表面上に発現する受容体または抗原を特異的に結合するペプチドまたは抗体に連結されたアンチセンス)を全身投与することもできる。あるいは、別の態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドが強力なプロモーター(例えばpol IIIまたはpol II)の制御下に置かれている組換えDNA構築物を利用する。そのような構築物使って患者内の標的細胞をトランスフェクトすると、十分な量の一本鎖RNAの転写が起こり、それが内在性転写産物と相補的塩基対を形成することにより、当該mRNAの翻訳を妨げるだろう。例えば、ベクターは、それが細胞によって取り込まれ、アンチセンスRNAの転写を指示するように、インビボに導入することができる。そのようなベクターは、それが転写されて所望のアンチセンスRNAを産生することができる限り、エピソームのままであっても、染色体に組み込まれてもよい。そのようなベクターは、当技術分野では標準的な上述の組換えDNA技術の方法によって構築することができる。例えばプラスミド、コスミド、YACまたはウイルスベクターを使って、組織部位に直接導入することができる組換えDNA構築物を作製することができる。あるいは、所望の組織に選択的に感染するウイルスベクターを使用することもでき、その場合は別の経路によって(例えば全身的に)投与を行うことができる。
本発明の別の態様では、小さな二本鎖干渉RNA(RNA干渉(RNAi)を使用することができる。RNAiは、二本鎖RNAが導入され、標的となったmRNAの触媒的分解によって、配列特異的な遺伝子サイレンシングが起こるという、翻訳後プロセスである。例えばElbashir, S.M.ら,Nature 411:494-498(2001);Lee,N.S.,Nature Biotech. 19:500-505(2002);Lee,S-K.ら,Nature Medicine 8(7):681-686(2002)を参照されたい(これらの文献が教示する内容は全て、参照により本明細書に組み込まれるものとする)。
遺伝子産物の内因的発現は、標的相同組換えを使って当該遺伝子またはそのプロモーターを不活化または「ノックアウト」することによって、減少させることができる(例えばSmithiesら,Nature 317:230-234(1985);ThomasおよびCapecchi,Cell 51:503-512(1987);Thompsonら,Cell 5:313-321(1989)参照)。例えば、内在遺伝子(当該遺伝子のコード領域または調節領域)に相同なDNAが隣接している改変された非機能的遺伝子(または完全に無関係なDNA配列)を、選択可能マーカーおよび/または陰性選択可能マーカーと共に、またはそれらのマーカーを伴わずに使用して、インビボで当該遺伝子を発現させる細胞をトランスフェクトする。標的相同組換えによって上記DNA構築物が挿入されることにより、当該遺伝子の不活化が起こる。組換えDNA構築物は、上述のように適当なベクターを使って、インビボの必要部位に直接投与するか、またはターゲティングすることができる。あるいは、同様の方法を使って、非改変遺伝子の発現を増加させることもできる。すなわち標的相同組換えを使って、機能的な非改変遺伝子もしくはその相補鎖またはその一部を含むDNA構築物を、上述のように、細胞内の遺伝子の代わりに挿入することができる。さらなる態様において、標的相同組換えを使って、細胞中に存在するものとは異なるポリペプチド変異体をコードする核酸を含むDNA構築物を挿入することもできる。
あるいは、遺伝子産物の内因的発現は、調節領域(すなわちプロモーターおよび/またはエンハンサー)に相補的なジオキシリボヌクレオチド配列をターゲティングして、体内の標的細胞における当該遺伝子の転写を妨げる三重らせん構造を形成させることによって、減少させることもできる(概要については、Helene,C.,Anticancer Drug Des.,6(6):569-84(1991);Helene,C.ら,Ann.N.Y.Acad.Sci. 660:27-36(1992);Maher,L.J.,Bioassays 14(12):807-15(1992)を参照されたい)。同様に、本明細書に記載するアンチセンス構築物は、ある遺伝子産物の正常な生物学的活性を拮抗することにより、組織(例えば組織分化)の操作に、インビボでも、エクスビボ組織培養でも、使用することができる。さらに、アンチセンス技術(例えばアンチセンス分子のマイクロインジェクション、またはある核酸RNAまたは核酸配列に関してアンチセンスであるような転写物をもたらすプラスミドによるトランスフェクション)を使って、PDE4D経路の1つ以上のメンバーが疾患関連状態の発生に果たす役割を調べることもできる。そのような技術は細胞培養で利用することができるが、トランスジェニック動物の作出でも使用することができる。
本明細書に記載される治療剤は、上述の組成物に入れて、または単独で送達することができる。それらは全身投与するか、特定の組織にターゲティングすることができる。治療剤は、例えば、化学合成、組換え生産、インビボ生産(例えばMeadeらの米国特許第4,873,316号などのトランスジェニック動物)などを含むさまざまな手段によって製造し、本明細書に記載するような標準的手段を使って単離することができる。また、上記の処置方法の任意の組合せ(例えば、非改変ポリペプチドの投与と、改変mRNAを標的とするアンチセンス療法との組合せや、第1スプライシングバリアントの投与と、第2スプライシングバリアントを標的とするアンチセンス療法との組合せなど)も使用することができる。
さらに本発明は、脳卒中、TIA、MI、および/またはアテローム動脈硬化を例えば本明細書に記載の方法を使って処置するための医薬品の製造を目的とする、本明細書に記載の前記治療剤の使用に関する。
処置の経過の監視
また本発明は、1つまたは複数のPDE4Dイソ型のRNAレベルもしくはタンパク質レベルでの発現(例えば相対的発現または絶対的発現)またはその酵素活性の調節に対する、処置の有効性を監視する方法に関する。末梢血またはそれに由来する細胞の試料中のPDE4DメッセージまたはPDE4Dタンパク質もしくはPDE4D酵素活性を測定することができる。発現レベルまたは活性レベルの評価は、PDE4D治療剤による処置前および処置中に行うことができる。
例えば、本発明の1つの態様では、標的集団の一メンバーである個体を、末梢血全般中の、または特定の細胞亜画分もしくは細胞亜画分の組合せ中の、cAMPレベルまたはPDE4D酵素活性またはPDE4Dタンパク質もしくはmRNAイソ型の絶対レベルおよび/または相対レベルを調べることにより、PDE4D阻害剤による処置に対する応答に関して評価する。また、最初の脳卒中または後続の脳卒中を予防または処置するための医薬剤に関する臨床試験の検出力と効率を増加させる目的で、脳卒中またはTIAの高いリスクにさらされている個体を同定するために、PDE4D遺伝子内またはその近傍(100〜200kb以内)のハプロタイプまたは突然変異などの変異を使用することもできる。非cAMPまたは非PDE4D経路が関与する脳卒中リスクを持つ可能性が高い患者を臨床試験において排除または再分化することにより、他の経路が関与している患者を濃縮して、臨床試験の検出力および感度を高めるために、上記のハプロタイプまたは他の変異を用いることができる。そのような変異は、個体に合わせた医薬剤の選択を誘導するための薬理ゲノミクス(pharmacogenomic)試験として使用することができる。
本発明の核酸
核酸、部分および変異体
ヌクレオチド位置は全て配列番号1での位置である。ここに記載する核酸、ポリペプチドおよび抗体は、脳卒中への罹患性を診断する方法に使用することができると共に、脳卒中への罹患性の診断に役立つキットにも使用することができる。また本発明は、ヒトPDE4D核酸を含む単離された核酸分子に関する。本明細書で使用する「PDE4D核酸」という用語は、PDE4Dポリペプチドをコードする単離された核酸分子を指す。本発明のPDE4D核酸分子はRNA、例えばmRNAであるか、またはDNA、例えばcDNAおよびゲノムDNAであり得る。DNA分子は二本鎖であるか、一本鎖であることができ、一本鎖のRNAまたはDNAは、コード鎖もしくはセンス鎖または非コード鎖もしくはアンチセンス鎖であることができる。核酸分子は、遺伝子または核酸のコード配列の全部または一部を含むことができ、さらに付加的な非コード配列、例えばイントロンおよび非コード3'および5'配列(例えば調節配列、ならびにプロモーター、転写促進エレメント、スプライス供与/受容部位などを含む)なども含むことができる。例えば、PDE4D核酸は、配列番号1の核酸(要すれば、表11および12に示す少なくとも1つの多型を含んでもよい)、その相補鎖、またはPDE4Dポリペプチドをコードするそのような単離された核酸分子(例えばcDNAまたは核酸)の一部もしくは断片を含み得る。
また、マーカー配列、例えばポリペプチドの単離または精製を助けるポリペプチドをコードする配列などに、本発明の核酸分子を融合することもできる。そのような配列には、例えば、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)融合タンパク質をコードするものや、インフルエンザ由来のヘマグルチニンA(HA)ポリペプチドマーカーをコードするものなどがあるが、これらに限るわけではない。
ここでいう「単離された」核酸分子とは、(例えばゲノム配列の場合のように)当該遺伝子またはヌクレオチド配列に通常は隣接している核酸から分離されているもの、および/または(例えばRNAライブラリーの場合のように)他の転写配列から完全にまたは部分的に精製されたものである。例えば、本発明の単離された核酸は、それが本来存在している複雑な細胞環境、または組換え技術によって製造される場合には培養培地、または化学合成される場合には化学前駆体または他の化学薬品に関して、実質的に単離されていることができる。単離された物質が、組成物(例えば他の物質を含有する粗抽出物)、緩衝系または試薬混合物の一部を形成する場合もあるだろう。また、例えばPAGEまたはHPLCなどのカラムクロマトグラフィーによる決定で基本的に均一になるまで、物質を精製する場合もある。好ましくは、単離された核酸分子は、存在する全高分子種の(モルベースで)少なくとも約50、80または90%を示す。ゲノムDNAの場合、「単離された」という用語は、当該ゲノムDNAが本来関係している染色体から分離されている核酸分子を指すこともできる。例えば単離された核酸分子は、その核酸が由来する細胞のゲノムDNA中でその核酸分子に隣接している約5kb、4kb、3kb、2kb、1kb、0.5kbまたは0.1kb未満のヌクレオチドを含むことができる。
核酸分子は他のコード配列または調節配列に融合することができ、それでもなお単離されているとみなすことができる。したがってベクターに含まれている組換えDNAは、本明細書で使用する「単離された」という用語の定義に含まれる。また、単離された核酸分子には、異種宿主細胞中の組換えDNA分子や、溶液中の部分精製されたまたは実質的に精製されたDNA分子も含まれる。「単離された」核酸分子には、本発明のDNA分子のインビボおよびインビトロRNA転写産物も包含される。単離された核酸分子またはヌクレオチド配列には、化学的にまたは組換え手段によって合成された核酸分子またはヌクレオチド配列を含めることもできる。したがって、ベクターに含まれる組換えDNAは、本明細書にいう「単離された」という用語の定義に包含される。また、単離されたヌクレオチド配列には、異種生物中の組換えDNA分子や、溶液中の部分的に精製されたまたは実質的に精製されたDNA分子も含まれる。本発明のDNA分子のインビボおよびインビトロRNA転写物も、「単離された」ヌクレオチド配列に包含される。そのような単離されたヌクレオチド配列は、コードされているポリペプチドの製造に役立ち、(例えば他の哺乳動物種から)相同配列を単離するためのプローブとして役立ち、遺伝子マッピング(例えば染色体とのインサイチューハイブリダイゼーションによるもの)に役立ち、または組織(例えばヒト組織)における遺伝子の発現をノーザンブロット解析などによって検出する際に役立つ。
また本発明は、自然界には必ずしもみいだされないが、PDE4Dポリペプチド(例えば配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、10、12または14のアミノ酸配列を持つポリペプチド)もしくはPDE4Dポリペプチドの他のスプライシングバリアントまたはその多型変異体をコードしている変異核酸分子に関する。したがって、例えば、自然界に存在するヌクレオチド配列とは異なる配列を含むが、遺伝コードの縮重により、本発明のPDE4DポリペプチドをコードしているDNA分子も、本発明の対象である。本発明は、PDE4Dポリペプチドの一部(断片)をコードしているヌクレオチド配列、またはPDE4Dポリペプチドの類似体もしくは誘導体などの変異ポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列も包含する。そのような変異体は、対立遺伝子変異または一塩基多型の場合のように、自然界に存在する場合もあるし、例えば種々の突然変異原および突然変異誘発法によって誘発されるもののように、自然界には存在しない場合もある。意図する変異には、例えば、保存的または非保存的アミノ酸変化(付加および欠失を含む)をもたらしうる1つ以上のヌクレオチドの付加、欠失および置換が含まれる。ヌクレオチド(および/または結果として生じるアミノ酸)の変化は、サイレントまたは保存的であること、すなわち、PDE4Dポリペプチドの特徴または活性を変化させないことが好ましい。ある実施形態では、ヌクレオチド配列は、1つ以上の多型マイクロサテライトマーカーを含む断片である。もう一つの実施形態では、ヌクレオチド配列は、PDE4D遺伝子中の一塩基多型を1つ以上含む断片である。
本発明の核酸分子の他の改変として、例えば標識化、メチル化、ヌクレオチド間修飾、例えば非荷電結合(例:メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホアミデート、カルボメート)、荷電結合(例:ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート)、ペンダント部分(例:ポリペプチド)、インターカレート剤(例:アクリジン、ソラレン)、キレート剤、アルキル化剤、および修飾結合(例:α-アノマー核酸)などを挙げることができる。指定した配列に水素結合および他の化学的相互作用によって結合することができるという点で核酸分子を真似た合成分子も含まれる。そのような分子には、例えば、分子の主鎖中のリン酸結合の代わりにペプチド結合を使用するものなどが含まれる。
また本発明は、高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件下(例えば選択的ハイブリダイゼーションのための条件下)で、本明細書に記載するヌクレオチド配列にハイブリダイズする核酸分子(例えば、本明細書に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズし、任意に、そのポリペプチドの活性を持つ核酸分子)に関する。1つの実施形態として、本発明は、高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件下(例えば選択的ハイブリダイゼーションのための条件下)で、配列番号1(任意に、表11および12に示す少なくとも1つの多型を含んでもよい)またはその相補鎖から選択されるヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列にハイブリダイズする本明細書に記載の変異体を包含する。もう1つの実施形態として、本発明は、高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件下(例えば選択的ハイブリダイゼーションのための条件下)で、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、10、12もしくは14またはその多型変異体から選択されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列にハイブリダイズする本明細書に記載の変異体を包含する。もう1つの実施形態として、高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする変異体のタンパク質産物は、PDE4D活性を持つ。
そのような核酸分子は、(例えば高ストリンジェンシー条件での)特異的ハイブリダイゼーションによって、検出および/または単離することができる。本明細書にいう「特異的ハイブリダイゼーション」は、(例えば第1の核酸が、第2の核酸に対して、ハイブリダイゼーションを行おうとしている試料中の他のどの核酸に対してよりも高い類似性を持つ場合などに)第1の核酸が第2の核酸以外の核酸にはハイブリダイズしないような形で、第2の核酸にハイブリダイズするという第1の核酸の能力を指す。ハイブリダイゼーションの「ストリンジェンシー条件」とは、特定の核酸と第2の核酸(第1の核酸は第2の核酸に対して完全に(すなわち100%)相補的であってもよいし、第1の核酸と第2の核酸とは完全ではないある程度の(例えば70%、75%、85%、95%の)相補性を持っていてもよい)とのハイブリダイゼーションを可能にするインキュベーション条件および洗浄条件(例えば温度および緩衝液濃度などの条件)を指す技術用語である。例えば、完全に相補的な核酸とそれよりも相補性の低い核酸とを識別する一定の高ストリンジェンシー条件を使用することができる。核酸ハイブリダイゼーションの「高ストリンジェンシー条件」「中ストリンジェンシー条件」および「低ストリンジェンシー条件」は、「Current Protocols in Molecular Biology」の2.10.1〜2.10.16頁および6.3.1〜6.3.6頁に説明されている。(Ausubel,F.M.ら「Current Protocols in Molecular Biology」John Wiley & Sons,(1998),この文献が教示する内容は全て参照により本明細書に組み込まれる)。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを決定する正確な条件は、イオン強度(例えば0.2×SSC、0.1×SSC)、温度(例えば室温、42℃、68℃)およびホルムアミドなどの不安定化剤またはSDSなどの変性剤の濃度だけでなく、例えば核酸配列の長さ、塩基組成、ハイブリダイズする配列間のミスマッチ率、他の非同一配列内にその配列のサブセットが存在する頻度などの因子にも依存する。したがって、2つの核酸分子間の一致度または類似度を同じような程度に保ちながら、これらのパラメーターの1つ以上を変化させることにより、等価な条件を決定することができる。典型的には、互いに少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%または少なくとも約95%以上一致している配列が互いにハイブリダイズしたままであるような条件を使用する。ハイブリダイゼーション条件を、ハイブリダイゼーションが起こらないようなストリンジェンシー条件からハイブリダイゼーションが初めて観察されるレベルにまで変化させることにより、与えられた配列が試料中の最も類似する配列と(例えば選択的に)ハイブリダイズできるような条件を決定することができる。
例示的な条件は、Krause,M.H.およびS.A.Aaronson,Methods in Enzymology,200:546-556(1991)に記載されている。また、Ausubelら「Current Protocols in Molecular Biology」John Wiley & Sons,(1998)にも、中または低ストリンジェンシー条件のための洗浄条件の決定が説明されている。洗浄は、通常は、ハイブリッドの相補性の最低レベルが決定されるように条件が設定されるステップである。一般的には、相同ハイブリダイゼーションだけが起こる最も低い温度から出発して、(SSC濃度を一定に保ったまま)最終洗浄温度を1℃下げるごとに、ハイブリダイズする配列間の最大ミスマッチ度は1%増加しうる。一般的に、SSCの濃度を二倍にするとTmは約17℃上昇する。これらの指針を使用することにより、求めているミスマッチの程度に依存して、高、中または低ストリンジェンシーの洗浄温度を実験的に決定することができる。
例えば、低ストリンジェンシー洗浄は、0.2×SSC/0.1%SDSを含有する溶液中、室温で10分間の洗浄からなることができ、中ストリンジェンシー洗浄は、0.2×SSC/0.1%SDSを含有する前もって温めておいた溶液(42℃)中、42℃で15分間の洗浄からなることができ、高ストリンジェンシー洗浄は、0.1×SSC/0.1%SDSを含有する前もって温めておいた溶液(68℃)中、68℃で15分間の洗浄からなることができる。さらに、当技術分野では知られているように、所望の結果を得るために、洗浄を繰り返して、または逐次的に行うこともできる。当技術分野では知られているように、標的核酸分子と使用するプライマーまたはプローブの間の一致度または類似度を同じような程度に保ちながら、一例として挙げたパラメーターの1つ以上を変化させることによって、等価な条件を決定することができる。
2つのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の相同率または一致率は、それらの配列を最適な比較が得られるように整列する(例えば最適なアラインメントを得るために第1配列の配列中にギャップを挿入することができる)ことによって、決定することができる。次に、対応する位置のヌクレオチドまたはアミノ酸を比較する。2つの配列間で一致率は、それらの配列が共有している一致位置の数の関数である(すなわち一致率(%)=(一致位置の数)/(位置の総数)×100)。一方の配列中のある位置が、他方の配列中の対応する位置と同じヌクレオチド残基またはアミノ酸残基で占められている場合、その分子はその位置で相同である。本明細書にいう核酸またはアミノ酸の「相同性」とは、核酸またはアミノ酸の「一致」と等価である。ある実施形態では、比較のために整列する配列の長さは、基準配列の長さの少なくとも30%、例えば少なくとも40%であり、ある実施形態では、少なくとも60%であり、別の実施形態では、少なくとも70%、80%、90%または95%である。2つの配列の実際の比較は、周知の方法によって、例えば数学的アルゴリズムを使って行うことができる。そのような数学的アルゴリズムの一例は、Karlinら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-5877(1993)である。そのようなアルゴリズムは、Altschulら,Nucleic Acids Res. 25:389-3402(1997)に記載のNBLASTおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。BLASTおよびGapped BLASTプログラムを利用する場合は、各プログラム(例えばNBLAST)のデフォルトパラメータを使用することができる。1つの実施形態として、配列比較用パラメータはscore=100、wordlength=12に設定するか、変更(例えばW=5またはW=20)することができる。
配列の比較に利用される数学的アルゴリズムのもう一つの例は、MyersおよびMiller,CABIOS(1989)のアルゴリズムである。そのようなアルゴリズムは、GCG配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。アミノ酸配列の比較にALIGNプログラムを利用する場合は、PAM120重み残基テーブル、gap length penalty=12、およびgap penalty=4を使用することができる。その他の配列解析用アルゴリズムは当技術分野で知られており、例えばTorellisおよびRobotti(1994)Comput.Appl.Biosci.,10:3-5に記載のADVANCEおよびADAMや、PearsonおよびLipman(1988)PNAS,85:2444-8に記載のFASTAなどがある。
もう一つの実施形態として、2つのアミノ酸配列間の一致率は、GCGソフトウェアパッケージ(Accelrys,英国ケンブリッジ)中のGAPプログラムを使用し、Blossom 63行列またはPAM250行列、gap weight=12、10、8、6または4、およびlength weight=2、3、または4を使って得ることもできる。さらにもう一つの実施形態として、2つの核酸配列間の一致率は、GCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムを使用し、gap weight=50、およびlength weight=3を使って得ることもできる。
本発明は、著しくストリンジェントな条件下で、配列番号1(任意に、表11および12に示す少なくとも1つの多型を含んでもよい)およびその相補鎖から選択されるヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列にハイブリダイズする断片または一部を含有する単離された核酸分子も提供する。また本発明は、高度にストリンジェントな条件下で、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、10、12もしくは14またはその多型変異体から選択されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列にハイブリダイズする断片または一部を含有する単離された核酸分子も提供する。本発明の核酸断片は、少なくとも約15ヌクレオチド長、好ましくは少なくとも約18、20、23または25ヌクレオチド長であり、30、40、50、100、200ヌクレオチド長以上であることができる。本明細書に記載の抗原ポリペプチドをコードする長い断片、例えば30ヌクレオチド長以上の断片は、例えば後述する抗体の産生などに、とりわけ有用である。
プローブおよびプライマー
関連する一側面として、本発明の核酸断片はプローブまたはプライマーとして、本明細書に記載するようなアッセイに使用することができる。「プローブ」または「プライマー」は、核酸分子の相補鎖に塩基特異的な様式でハイブリダイズするオリゴヌクレオチドである。「塩基特異的な様式」とは、2つの配列が、そのプライマーまたはプローブがハイブリダイズするのに十分なヌクレオチド相補性を持たなければならないことを意味する。したがって、プライマー配列またはプローブ配列はテンプレートの配列に完全に相補的である必要はない。塩基置換がハイブリダイゼーションを阻害しない限り、プライマーまたはプローブには非相補的な塩基または修飾塩基が散在していてもよい。核酸テンプレートは、プライマーまたはプローブがさまざまな相補性を持つ「非特異的プライミング配列」または「非特異的配列」も含みうる。そのようなプローブおよびプライマーには、Nielsenら,Science,254,1497-1500(1991)に記載されているポリペプチド核酸も包含される。
プローブまたはプライマーは、本発明の核酸(例えば配列番号1の連続する核酸配列もしくは配列番号1の相補鎖、または配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、10、12もしくは14のアミノ酸配列またはその多型変異体をコードする核酸配列)の少なくとも約15個、例えば約20〜25個、また特定の実施形態では、約40、50または75個の連続するヌクレオチドにハイブリダイズする核酸領域を含む。ある実施形態では、プローブまたはプライマーは100個以下のヌクレオチドを含み、ある実施形態では、6〜50個のヌクレオチド、例えば12〜30個のヌクレオチドを含む。他の実施形態では、プローブまたはプライマーは、連続する核酸配列または連続するヌクレオチド配列の相補鎖と少なくとも70%同一、例えば少なくとも80%同一であり、ある実施形態では90%同一であり、他の実施形態では少なくとも95%同一であり、あるいは連続する核酸配列または連続するヌクレオチド配列の相補鎖と選択的にハイブリダイズすることさえ可能である。プローブまたはプライマーは、多くの場合、ラベル、例えば放射性同位体、蛍光化合物、酵素または酵素補因子などをさらに含む。
本明細書に記載するような本発明の核酸分子は、標準的な分子生物学技術と、本明細書に記載の配列情報とを使って、同定し単離することができる。例えば核酸分子は、配列番号1(任意に、表11および12に示す少なくとも1つの多型を含んでもよい)に記載の配列および/またはその相補鎖の1つ以上に基づいて設計された合成オリゴヌクレオチドプライマー、または本明細書に記載のアミノ酸配列の1つ以上をコードする配列に基づくヌクレオチドに基づいて設計された合成オリゴヌクレオチドプライマーを使って、ポリメラーゼ連鎖反応により、増幅し単離することができる。概要については「PCR Technology:Principles and Applications for DNA Amplification」(H.A.Erlich編,Freeman Press,ニューヨーク州ニューヨーク,1992)、「PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications」(Innisら編,Academic Press,カリフォルニア州サンディエゴ,1990)、Mattilaら,Nucleic Acids Res.,19:4967(1991)、Eckertら,PGR Methods and Applications,1:17(1991)、「PCR」(McPhersonら編,IRL Press,オクスフォード)、および米国特許第4,683,202号を参照されたい。適当なベクターにクローニングされ、DNA配列解析によって特徴づけられたcDNA、mRNAまたはゲノムDNAをテンプレートとして使用することにより、核酸分子を増幅することができる。
他の好適な増幅法には、リガーゼ連鎖反応(LCR)(WuおよびWallace,Genomics,4:560(1989)参照)、Landegrenら,Science,241:1077(1988))、転写増幅法(transcription amplification)(Kwohら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86:1173(1989))、および自立配列複製(Guatelliら,Proc.Nat.Acad.Sci.USA,87:1874(1990))および核酸ベース配列増幅などがある。最後に挙げた2つの増幅方法では等温転写に基づく等温反応が行われ、増幅産物として一本鎖RNA(ssRNA)と二本鎖DNA(dsDNA)の両方がそれぞれ約30または100対1の割合で生成する。
増幅されたDNAは(例えば放射性ラベルまたは他のレポーター分子などで)標識し、zap express、ZIPLOXまたは他の適切なベクター中の、ヒト細胞、mRNA由来のcDNAライブラリーをスクリーニングするためのプローブとして使用することができる。対応するクローンを単離し、インビボ切り出し後にDNAを取得し、クローニングされたインサートを当技術分野で認められている方法によって一方向または両方向に配列決定することにより、適切な分子量を持つポリペプチドをコードする正しい読み枠を同定することができる。例えば、本発明の核酸分子のヌクレオチド配列の直接分析は、市販されている周知の方法を使って行うことができる。例えば、Sambrookら「Molecular Cloning,A Laboratory Manual」(第2版,CSHP,ニューヨーク,1989)、Zyskindら「Recombinaht DNA Laboratory Manual」(Acad.Press,1988)を参照されたい。これらの方法または類似の方法を使って、ポリペプチドおよびポリペプチドをコードするDNAを単離し、配列決定し、さらに特徴づけることができる。
本発明のアンチセンス核酸分子は、配列番号1および/または配列番号1の相補鎖および/または配列番号1もしくは配列番号1の相補鎖の一部および/または配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、10、12および/または14のアミノ酸配列をコードする配列もしくは配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、10、12および/または14の一部をコードする配列(これらはいずれも、任意に、表11および12に示す少なくとも1つの多型を含んでもよい)を使って設計し、当技術分野で知られている手法により、化学合成および酵素連結反応を使って構築することができる。例えば、アンチセンス核酸分子(例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド)は、天然ヌクレオチドを使って、または当該分子の生物学的安定性が増大するように設計されるか、当該アンチセンス核酸とセンス核酸との間の二重鎖の物理的安定性が増大するように設計された種々の修飾ヌクレオチド(例えばホスホロチオエート誘導体およびアクリジン置換ヌクレオチドを使用することができる)を使って、化学合成することができる。あるいは、アンチセンス核酸分子は、核酸分子がアンチセンス方向にサブクローニングされている発現ベクター(すなわち、挿入された核酸分子から転写されるRNAは、興味の対象である標的核酸に対してアンチセンス方向になる)を使って、生物学的に製造することもできる。
一般に、本発明の単離された核酸配列は、サザンゲル上で分子量マーカーとして使用することができ、また関連遺伝子の位置をマップするために標識された染色体マーカーとして使用することができる。本核酸配列は、患者の内在DNA配列と比較して、遺伝障害(例えば脳卒中に関する素因または脳卒中への罹患性)を同定するためにも使用することができる。また本核酸配列は、関連DNA配列をハイブリダイズして発見するために、または試料中の既知配列を差し引くために、プローブとして使用することもできる。さらに本核酸配列は、遺伝子指紋法用のプライマーを得るために使用することができ、DNA免疫化技術を使って抗ポリペプチド抗体を産生させるために使用することができ、抗DNA抗体を産生させるためまたは免疫応答を誘発するための抗原として使用することができる。本明細書に記載するヌクレオチド配列の一部または断片(および対応する完全な遺伝子配列)は、ポリヌクレオチド試薬として、数多くの方法で使用することができる。例えばこれらの配列は、(i)各遺伝子を染色体上にマップし、よって、遺伝疾患に関連する遺伝子領域の位置を特定するために、(ii)微量な生物学的試料から個体を同定するために(組織タイピング)、(iii)生物学的試料の法医学的同定を助けるために、使用することができる。また、本発明のヌクレオチド配列は、分析用、特性解析用または治療用の組換えポリペプチドを同定し発現させるために使用したり、対応するポリペプチドを構成的に発現させる組織、組織分化中に発現させる組織、または疾患状態で発現させる組織のマーカーとして使用したりすることもできる。また本核酸配列は、本明細書に記載するスクリーニングおよび/または診断アッセイに試薬として使用することができ、本明細書に記載するスクリーニングおよび/または診断アッセイ用のキットの成分として含めることもできる。
ベクター
本発明のもう一つの側面は、配列番号1(任意に、表11および12に示す少なくとも1つの多型を含んでもよい)およびその相補鎖(またはその一部)からなる群より選択される核酸分子を含有する核酸構築物に関する。本発明のさらにもう一つの側面は、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、10、12もしくは14のアミノ酸配列またはその多型変異体をコードする核酸分子を含有する核酸構築物に関する。これらの構築物は、本発明の配列がセンス方向またはアンチセンス方法に挿入されているベクター(例えば発現ベクター)を含む。本明細書で使用する「ベクター」という用語は、そこに連結されている別の核酸を輸送する能力を持つ核酸分子を指す。ベクターの一タイプは「プラスミド」であり、これは、その中に追加DNAセグメントを連結することができる環状二本鎖DNAループを指す。もう一つのタイプのベクターとして、ウイルスベクターがあり、この場合は、追加DNAセグメントをウイルスゲノム中に連結することができる。ある種のベクターは、それらを導入した宿主細胞中で自律的に複製する能力を持つ(例えば細菌複製起点を持つ細菌ベクターおよびエピソーム哺乳類ベクター)。他のベクター(例えば非エピソーム哺乳類ベクター)は、宿主細胞に導入されると、宿主細胞のゲノムに組み込まれ、その結果、宿主ゲノムと一緒に複製される。さらに、ある種のベクター(発現ベクター)は、それらが作動可能に連結されている遺伝子の発現を指示することができる。一般に、組換えDNA技術に役立つ発現ベクターは、多くの場合、プラスミドの形をとっている。しかし本発明には、等価な機能を果たすウイルスベクター(例えば複製欠損性レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)などの他の形態の発現ベクターも包含されるものとする。
本発明の好ましい組換え発現ベクターは、宿主細胞における核酸分子の発現に適した形で、本発明の核酸分子を含む。これは、組換え発現ベクターが、発現に使用される宿主細胞に基づいて選択される1つ以上の調節配列を含み、それが発現させようとする核酸配列に作動可能に連結されていることを意味する。組換え発現ベクター内で、「作動可能にまたは作動的に連結されている」とは、関心の対象であるヌクレオチド配列が、(例えばインビトロ転写/翻訳系において、またはベクターが宿主細胞内に導入された時にその宿主細胞内で)そのヌクレオチド配列の発現を可能にするような形で、調節配列に連結されていることを意味するものとする。「調節配列」という用語は、プロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御要素(例えばポリアデニル化シグナル)を包含するものとする。そのような調節配列は、例えば、Goeddel「Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185」Academic Press,カリフォルニア州サンディエゴ(1990)などに記載されている。調節配列には、多くの宿主細胞タイプ中でヌクレオチド配列の構成的発現を指示するものや、一定の宿主細胞内でのみヌクレオチド配列の発現を指示するもの(例えば組織特異的調節配列)が含まれる。発現ベクターの設計が、形質転換しようとする宿主細胞の選択および所望するポリペプチドの発現レベルなどといった因子に依存しうることは、当業者には理解されるだろう。本発明の発現ベクターを宿主細胞中に導入することにより、本明細書に記載の核酸分子がコードするポリペプチド(融合ポリペプチドを含む)を生産することができる。
本発明の組換え発現ベクターは、原核細胞または真核細胞(例えば大腸菌などの細菌細胞、昆虫細胞(バキュロウイルス発現ベクターを使用)、酵母細胞または哺乳類細胞)中で本発明のポリペプチドを発現させるために設計することができる。好適な宿主細胞は、上記Goeddelの文献で、さらに議論されている。あるいは、例えばT7プロモーター調節配列とT7ポリメラーゼを使うなどして、組換え発現ベクターをインビトロで転写し、翻訳することもできる。
本発明のもう一つの側面は、本発明の組換え発現ベクターが導入されている宿主細胞に関する。「宿主細胞」および「組換え宿主細胞」という用語は、本明細書では可換的に使用される。このような用語は、特定の対象細胞を指すだけでなく、その細胞の子孫または潜在的子孫細胞も指すと理解される。後続の世代では突然変異または環境の影響によって一定の修飾が起こりうるので、それら子孫は実際には親細胞とは同一でないかもしれないが、それでもなお本明細書で使用するこの用語の範囲に包含される。
宿主細胞は任意の原核細胞または真核細胞でありうる。例えば、本発明の核酸分子は細菌細胞(例:大腸菌)、昆虫細胞、酵母または哺乳類細胞(チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)またはCOS細胞など)中で発現させることができる。他の好適な宿主細胞は当業者に知られている。
ベクターDNAは、従来の形質転換技術またはトランスフェクション技術によって原核細胞または真核細胞中に導入することができる。本明細書で使用する「形質転換」および「トランスフェクション」という用語は、宿主細胞中に外来核酸分子(例えばDNA)を導入するための、当技術分野で認識されている種々の技術、例えばリン酸カルシウムもしくは塩化カルシウム共沈殿法、DEAE-デキストランによるトランスフェクション、リポフェクションまたはエレクトロポレーションなどを指すものとする。宿主細胞を形質転換またはトランスフェクトするための好適な方法は、Sambrookらの著書(前掲)および他の実験マニュアルに見いだすことができる。
哺乳類細胞の安定トランスフェクションの場合、使用する発現ベクターとトランスフェクション技術によって、わずかな割合の細胞しか外来DNAをそのゲノム中に組み込まない場合があることが知られている。これらの組込み体を同定し選択するために、一般的には、選択可能マーカー(例えば抗生物質耐性)をコードする遺伝子が、目的の遺伝子と共に宿主細胞に導入される。好ましい選択可能マーカーには、G418、ハイグロマイシンおよびメトトレキセートなどの薬物に対する耐性を付与するものがある。選択可能マーカーをコードする核酸分子は、本発明の核酸分子と同じベクターに載せて宿主細胞中に導入するか、別個のベクターに載せて導入することができる。導入された核酸分子で安定にトランスフェクトされた細胞は、薬物選択によって同定することができる(例えば、選択可能マーカー遺伝子を組み込んでいる細胞が生き残るのに対して、他の細胞は死滅する)。
本発明の宿主細胞、例えば培養原核宿主細胞または培養真核宿主細胞を使って、本発明のポリペプチドを生産(すなわち発現)することができる。したがって本発明はさらに、本発明の宿主細胞を使ってポリペプチドを生産する方法を提供する。1つの実施形態として、本方法は、本発明の宿主細胞(本発明のポリペプチドをコードする組換え発現ベクターが導入されているもの)を、適当な培地中で、前記ポリペプチドが生産されるように培養することを含む。もう一つの実施形態として、本方法は、さらに、培地または宿主細胞から前記ポリペプチドを単離することを含む。
本発明の宿主細胞は、非ヒトトランスジェニック動物の作出にも使用することができる。例えば、1つの実施形態として、本発明の宿主細胞は、本発明の核酸分子(例えば外来PDE4D遺伝子またはPDE4Dポリペプチドをコードする外来核酸)が導入されている受精卵母細胞または胚性幹細胞である。次に、そのような宿主細胞を使って、外来ヌクレオチド配列がゲノム中に導入されている非ヒトトランスジェニック動物または内在ヌクレオチド配列が改変されている相同組換え動物を作出することができる。そのような動物は、そのヌクレオチド配列およびその配列がコードするポリペプチドの機能および/または活性を研究するのに役立ち、それらの活性の調節因子を同定し、そして/または評価するのに役立つ。本明細書にいう「トランスジェニック動物」は、その動物の細胞の1つ以上が導入遺伝子を含んでいる非ヒト動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはラットまたはマウスなどの齧歯類動物である。トランスジェニック動物の他の例として、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ヤギ、ニワトリおよび両生類が挙げられる。導入遺伝子とは、トランスジェニック動物が発生する元となる細胞のゲノム中に組み込まれ、成熟した動物のゲノムにも保たれることにより、トランスジェニック動物の1つ以上の細胞タイプまたは組織中で、コードされている遺伝子産物の発現を指示する外来DNAである。本明細書にいう「相同組換え動物」とは、ある内在遺伝子が、その内在遺伝子と、その動物の細胞(例えばその動物の胚細胞)にその動物の発生前に導入された外来DNA分子との相同組換えによって改変されている、非ヒト動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはマウスである。
胚操作およびマイクロインジェクションによってトランスジェニック動物、特にマウスなどの動物を作出する方法は、すでに当技術分野では一般的な技術になっており、例えば米国特許第4,736,866号および第4,870,009号、米国特許第4,873,191号ならびにHogan「Manipulating the Mouse Embryo」(Cold Spring Harbor Laboratory Press,ニューヨーク州コールドスプリングハーバー,1986)などに記載されている。相同組換えベクターおよび相同組換え動物を構築する方法は、Bradley(1991),Current Opinion in Bio/Technology,2:823-829、ならびにPCT公開番号WO90/11354、WO91/01140、WO92/0968およびWO93/04169に、詳しく記載されている。本明細書に記載する非ヒトトランスジェニック動物のクローンを、Wilmutら(1997)Nature,385:810-813ならびにPCT公開番号WO97/07668およびWO97/07669に記載の方法に従って作出することもできる。
本発明のポリペプチド
本発明は、PDE4Dがコードする単離されたポリペプチド(「PDE4Dポリペプチド」)ならびにその断片および変異体と、本明細書に記載するヌクレオチド配列(例えば他のスプラインシング変異体)がコードするポリペプチドに関する。「ポリペプチド」という用語はアミノ酸のポリマーを指し、特定の長さ指すわけではないので、ペプチド、オリゴペプチドおよびタンパク質は、ポリペプチドの定義に包含される。あるポリペプチドが、それを組換え細胞および非組換え細胞から単離した場合に細胞物質を実質的に含まないか、またはそれを化学合成した場合に化学前駆体または他の化学薬品を含まないならば、本明細書においては、そのポリペプチドを「単離された」または「精製された」という。しかし、あるポリペプチドを、細胞内で通常は付随していない別のポリペプチドと(例えば「融合タンパク質」として)結合させることもでき、その場合も、そのタンパク質は依然として「単離された」または「精製された」という。
本発明のポリペプチドは均一状態に精製することができる。しかし、本ポリペプチドが均一にまで精製されていない調製物も有用であると考えられる。重要な特徴は、その調製物が、かなりの量の他の成分が存在しても、当該ポリペプチドの所望の機能を発揮できるということである。したがって本発明はさまざまな純度を包含する。1つの実施形態として、「細胞物質を実質的に含まない」という表現は、(乾燥重量で)約30%未満の他のタンパク質(すなわち夾雑タンパク質)、約20%未満の他のタンパク質、約10%未満の他のタンパク質、または約5%未満の他のタンパク質を含むポリペプチの調製物を包含する。
あるポリペプチドが組換え生産される場合、そのポリペプチドは培養培地も実質的に含まないことができる。すなわち、培養培地はポリペプチド調製物の体積の約20%未満、約10%未満、または約5%未満を占める。「化学前駆体または他の化学薬品を実質的に含まない」という表現は、その合成に関与する化学前駆体または他の化学薬品から分離されたポリペプチドの調製物を包含する。1つの実施形態として、「化学前駆体または他の化学薬品を実質的に含まない」という表現は、(乾燥重量で)約30%未満の化学前駆体または他の化学薬品、約20%未満の化学前駆体または他の化学薬品、約10%未満の化学前駆体または他の化学薬品、または約5%未満の化学前駆体または他の化学薬品を含むポリペプチドの調製物を包含する。
1つの実施形態として、本発明のポリペプチドは、配列番号1(任意に表11および12に示す少なくとも1つの多型を含んでもよい)ならびにその相補鎖および一部からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む核酸分子によってコードされるアミノ酸配列、例えば配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、10、12または14もしくはその一部またはその多型変異体を含む。しかし、本発明のポリペプチドは、断片および配列変異体も包含する。変異体には、ある生物の同じ遺伝子座によってコードされる実質的に相同なポリペプチド(すなわち対立遺伝子変異体)ならびに他のスプライシングバリアントが包含される。変異体には、ある生物の他の遺伝子座に由来するポリペプチドであるが、配列番号1(任意に表11および12に示す少なくとも1つの多型を含んでもよい)ならびにその相補鎖および一部から選択されるヌクレオチド配列を含む核酸分子によってコードされるポリペプチドに対して実質的な相同性を持つポリペプチド、または配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、10、12もしくは14またはその多型変異体をコードするヌクレオチド配列からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む核酸分子によってコードされるポリペプチドに対して実質的な相同性を持つポリペプチドも包含される。変異体には、これらのポリペプチドに対して実質的に相同または同一であるが、別の生物に由来するポリペプチド(すなわちオルソログ)も包含される。変異体には、化学合成によって製造された、これらのポリペプチドに実質的に相同または同一なポリペプチドも包含される。変異体には、組換え法によって生産された、これらのポリペプチドに実質的に相同または同一なポリペプチドも包含される。
本明細書中で使用される場合、2つのポリペプチド(またはそれらポリペプチドの一領域)のアミノ酸配列が少なくとも45〜55%、ある実施形態では少なくとも約70〜75%、別の実施形態では少なくとも約80〜85%、さらに他の実施形態では約90%以上相同または同一である場合に、それらは実質的に相同または同一であるという。本発明の実質的に相同なアミノ酸配列は、上に詳述したストリンジェントな条件下で、配列番号1(任意に表11および12に示す少なくとも1つの多型を含んでもよい)またはその一部にハイブリダイズする核酸分子によってコードされるか、上に詳述したストリンジェントな条件下で、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、10、12または14またはその多型変異体をコードする核酸配列にハイブリダイズする核酸分子によってコードされるだろう。
本発明は、同一性は低いが、充分な類似性を持つので、本発明の核酸分子がコードするポリペプチドが発揮する機能と同じ機能を1つ以上発揮するポリペプチドも包含する。類似性は保存的アミノ酸置換によって決まる。そのような置換は、ポリペプチド中の与えられたアミノ酸を類似する特徴を持つ別のアミノ酸で置き換える置換である。保存的置換はおそらく表現型上サイレントだろう。典型的には、脂肪族アミノ酸Ala、Val、LeuおよびIle間で相互に行われる置換、ヒドロキシル残基SerおよびThrの交換、酸性残基AspおよびGluの交換、アミド残基AsnおよびGln間の置換、塩基性残基LysおよびArgの交換、ならびに芳香族残基PheおよびTyr間で行われる置換が、保存的置換と考えられる。どのアミノ酸変化が表現型上サイレントである可能性が高いかに関する指針は、Bowieら,Science 247:1306-1310(1990)に記載されている。
変異ポリペプチドは、1つ以上の置換、欠失、挿入、逆位、融合および切断またはそれらの任意の組合せによって、アミノ酸配列が異なりうる。さらに変異ポリペプチドは完全に機能的である場合もあるし、1つ以上の活性について機能を失っている場合もある。完全に機能的な変異体は、通例、保存的変異または重要でない残基の変異または重要でない領域中の変異だけを含んでいる。機能的変異体は、機能を変化させないか重要でない機能の変化しかもたらさない類似アミノ酸の置換も含みうる。あるいは、そのような置換は、機能に対してある程度、良い影響または悪い影響を及ぼしうる。非機能的変異体は通例、1つ以上の非保存的アミノ酸置換、欠失、挿入、逆位、もしくは切断、または重要な残基または重要な領域での置換、挿入、逆位または欠失を含む。
機能に必須であるアミノ酸を、この分野で知られている方法によって、例えば、部位特異的変異誘発法またはアラニン走査変異誘発法(Cunningham他、Science、244:1081〜1085(1989))などによって同定することができる。後者の手法では、1個のアラニン変異が分子内のすべての残基において導入される。得られる変異型分子は、その後、インビトロでの生物学的活性について、またはインビトロ増殖活性について調べられる。ポリペプチド活性のために非常に重要である部位もまた、結晶化、核磁気共鳴または光親和性標識化などの構造分析によって明らかにすることができる(Smith他、J. Mol. Biol.、224:899〜904(1992);de Vos他、Science、255:306〜312(1992))。
本発明ではまた、本発明のポリペプチドのポリペプチドフラグメントが包含される。フラグメントは、表11および表12に示される少なくとも1つの多型を場合により含み得る、配列番号1を含む核酸分子によりコードされるポリペプチド、またはその一部およびその相補体(例えば、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号12もしくは配列番号14または他のスプライシングバリアント)に由来し得る。しかしながら、本発明は、本明細書中に記載されるポリペプチドのバリアントのフラグメントを包含する。本発明で使用される場合、フラグメントは、少なくとも6個の連続したアミノ酸を含む。有用なフラグメントには、ポリペプチドの生物学的活性の1つ以上を保持するフラグメント、ならびに、ポリペプチド特異的な抗体を生じさせるための免疫原として使用することができるフラグメントが含まれる。
生物学的に活性なフラグメント(例えば、長さが6アミノ酸、9アミノ酸、12アミノ酸、15アミノ酸、16アミノ酸、20アミノ酸、30アミノ酸、35アミノ酸、36アミノ酸、37アミノ酸、38アミノ酸、39アミノ酸、40アミノ酸、50アミノ酸、100アミノ酸またはそれ以上のアミノ酸であるペプチド)は、広く知られている方法を使用するポリペプチド配列の分析によって同定されているドメイン、セグメントまたはモチーフ(例えば、シグナルペプチド、細胞外ドメイン、1つ以上の膜貫通セグメントもしくはループ、リガンド結合領域、ジンクフィンガードメイン、DNA結合ドメイン、アシル化部位、グリコシル化部位またはリン酸化部位)を含むことができる。
フラグメントは不連続であり得る(他のアミノ酸またはポリペプチドに融合されていない)か、または、より大きいポリペプチドの内部に存在し得る。さらに、数個のフラグメントが1つのより大きいポリペプチドの中に含まれ得る。1つの実施形態において、宿主における発現のために設計されたフラグメントは、ポリペプチドフラグメントのアミノ末端に融合された異種のプレポリペプチド領域およびプロポリペプチド領域、および、フラグメントのカルボキシル末端に融合されたさらなる領域を有することができる。
従って、本発明はキメラポリペプチドまたは融合ポリペプチドを提供する。これらは、本発明のポリペプチドを、ポリペプチドに対して実質的に相同的でないアミノ酸配列を有する異種のタンパク質またはポリペプチドに作動可能に連結されて含む。「作動可能に連結されて」は、ポリペプチドおよび異種のタンパク質が読み枠を一致させて融合されていることを示す。異種のタンパク質はポリペプチドのN末端またはC末端に融合させることができる。1つの実施形態において、融合ポリペプチドはポリペプチド自体の機能に影響を及ぼさない。例えば、融合ポリペプチドは、ポリペプチド配列がGST配列のC末端に融合されているGST-融合ポリペプチドであり得る。他のタイプの融合ポリペプチドには、酵素の融合ポリペプチド、例えば、β−ガラクトシダーゼ融合体、酵母ツーハイブリッドGAL融合体、ポリHis融合体およびIg融合体が含まれるが、これらに限定されない。そのような融合ポリペプチド(特に、ポリHis融合体)は組換えポリペプチドの精製を容易にすることができる。いくつかの宿主細胞(例えば、哺乳動物宿主細胞など)では、ポリペプチドの発現および/または分泌を、異種のシグナル配列を使用することによって増大させることができる。従って、別の実施形態において、融合ポリペプチドは異種のシグナル配列をそのN末端において含有する。
欧州特許出願公開EP-A-O464 533には、免疫グロブリンの定常領域の様々な部分を含む融合タンパク質が開示される。Fcが治療および診断において有用であり、従って、例えば、改善された薬物動態学的性質をもたらす(欧州特許出願公開EP-A0232 262)。薬物発見においては、例えば、様々なヒトタンパク質が、アンタゴニストを同定するためのハイスループットスクリーニングアッセイのためにFc部分と融合されている。Bennett他、Journal of Molecular Recognition、8:52〜58(1995)、および、Johanson他、The Journal of Bilogical Chemistry、270、16:9459〜9471(1995)。従って、本発明はまた、本発明のポリペプチドと、様々なサブクラスの免疫グロブリン(IgG、IgM、IgA、IgE)の重鎖または軽鎖の定常領域の様々な部分とを含有する可溶性の融合ポリペプチドを包含する。
キメラポリペプチドまたは融合ポリペプチドを標準的な組換えDNA技術によって製造することができる。例えば、種々のポリペプチド配列をコードするDNAフラグメントが、従来の技術に従って、読み枠を一致させて連結される。別の実施形態において、融合遺伝子を、自動化されたDNA合成機を含む従来の技術によって合成することができる。あるいは、核酸フラグメントのPCR増幅を、キメラな核酸配列を作製するために後でアニーリングおよび再増幅され得る2つの連続した核酸フラグメントの間で相補的な突出部を生じさせるアンカープライマーを使用して行うことができる(Ausubel他、Current Protocols in Molecular Biology(1992)を参照のこと)。さらに、融合成分(例えば、GSTタンパク質)を既にコードする多くの発現ベクターが市販されている。本発明のポリペプチドをコードする核酸分子は、融合成分がポリペプチドに対して読み枠を一致させて連結されるようにそのような発現ベクターにクローン化することができる。
単離されたポリペプチドは、それを生来的に発現する細胞から精製することができ、または、それを発現させるために変化させられている細胞から精製することができ(組換え)、または、知られているタンパク質合成法を使用して合成することができる。1つの実施形態において、ポリペプチドは組換えDNA技術によって製造される。例えば、ポリペプチドをコードする核酸分子が発現ベクターにクローン化され、発現ベクターが宿主細胞に導入され、ポリペプチドが宿主細胞において発現させられる。その後、ポリペプチドは、標準的なタンパク質精製技術を使用する適切な精製スキームによって細胞から単離することができる。
一般に、本発明のポリペプチドは、この分野で認知されている方法を使用して、SDS-PAGEゲルでの分子量マーカーまたは分子ふるいゲルろ過カラムでの分子量マーカーとして使用することができる。本発明のポリペプチドは、抗体を惹起させるために、または、免疫応答を誘発するために使用することができる。ポリペプチドはまた、ポリペプチドが結合する生物学的流体中のポリペプチドまたは分子(例えば、受容体またはリガンド)のレベルを定量的に決定するためのアッセイにおいて、試薬として、例えば、標識された試薬として使用することができる。ポリペプチドはまた、対応するポリペプチドが、構成的に、または組織分化時に、または病的状態において、そのいずれかで優先的に発現する細胞または組織に対するマーカーとして使用することができる。ポリペプチドは、例えば、相互作用トラップアッセイなどにおいて対応する結合因子(例えば、受容体またはリガンド)を単離するために、また、結合相互作用するペプチドまたは小分子のアンタゴニストまたはアゴニストについてスクリーニングするために使用することができる。
本発明の抗体
遺伝子産物の1つの形態と特異的に結合するが、遺伝子産物のそれ以外の形態には結合しないポリクローナル抗体および/またはモノクローナル抗体もまた提供される。1つ以上の多型部位を含有する変化型遺伝子産物または基準型遺伝子産物のいずれかの一部分と結合する抗体もまた提供される。本発明は、例えば、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号12もしくは配列番号14によりコードされるアミノ酸配列またはその一部を有するか、あるいは、表11および表12に示される少なくとも1つの多型を任意に有し得る配列番号1の全体または一部分を含む核酸分子によりコードされるアミノ酸配列(例えば、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号12もしくは配列番号14または別のスプライシングバリアントもしくはその一部)を有する本発明のポリペプチドおよびポリペプチドフラグメントに対する抗体を提供する。本明細書中で使用される用語「抗体」は免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち、抗原と特異的に結合する抗原結合部位を含有する分子を示す。本発明のポリペプチドに特異的に結合する分子は、そのようなポリペプチドまたはそのフラグメントに結合するが、そのポリペプチドを生来的に含有するサンプル(例えば、生物学的サンプル)における他の分子とは実質的に結合しない分子である。免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分の例には、抗体をペプシンなどの酵素で処理することによって作製することができるF(ab)フラグメントおよびF(ab')2フラグメントが含まれる。本発明は、本発明のポリペプチドに結合するポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を提供する。本明細書中で使用される用語「モノクローナル抗体」または用語「モノクローナル抗体組成物」は、本発明のポリペプチドの特定のエピトープと免疫反応することができる抗原結合部位の1つの化学種のみを含有する抗体分子の集団を示す。従って、モノクローナル抗体組成物は、典型的には、モノクローナル抗体が免疫反応する本発明の特定のポリペプチドについて1つだけの結合親和性を示す。
ポリクローナル抗体は、好適な対象を所望の免疫原(例えば、本発明のポリペプチドまたはそのフラグメント)で免疫化することによって、上記で記載されたように調製することができる。免疫化された対象における抗体力価を、標準的な技術によって、例えば、固定化されたポリペプチドを使用する酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)などを用いて経時的にモニターすることができる。所望される場合、ポリペプチドに対する抗体分子を哺乳動物から(例えば、血液から)単離し、IgG画分を得るためのプロテインAクロマトグラフィーなどの広く知られている技術によってさらに精製することができる。免疫化後の適切な時間で、例えば、抗体力価が最高になったとき、抗体産生細胞を、KohlerおよびMilstein((1975)、Nature、256:495〜497)により初めて記載されたハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor他(1983)、Immunol. Today、4:72)、EBV-ハイブリドーマ技術(Cole他(1985)、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R. Liss, Inc.、77頁〜96頁)、またはトリオーマ技術などの標準的な技術によってモノクローナル抗体を調製するために対象から得ることができ、また、使用することができる。ハイブリドーマを作製するための技術は広く知られている(一般的には、Current Protocols in Immunology((1994) Coligan他(編)、John Wiley & Sons, Inc.、New York、NY)を参照のこと)。簡単に記載すると、不死性の細胞株(典型的にはミエローマ)が、上記で記載されたように免疫原で免疫化された哺乳動物に由来するリンパ球(典型的には、脾細胞)に融合され、得られるハイブリドーマ細胞の培養上清が、本発明のポリペプチドと結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを同定するためにスクリーニングされる。
リンパ球および不死化細胞株を融合するために使用される多くの広く知られているプロトコルはどれも、本発明のポリペプチドに対するモノクローナル抗体を作製する目的のために適用することができる(例えば、Current Protocols in Immunology(上掲);Galfre他(1977)、Nature、266:55052;R.H. Kenneth、Monoclonal Antibodies: A New Dimension In Biological Analyses、Plenum Publishing Corp.、New York、New York (1980);Lerner (1981)、Yale J. Biol. Med.、54:387〜402を参照のこと)。そのうえ、当業者は、同様に有用であるそのような方法の多くの変法が存在することを理解する。
モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを調製することの代替法として、組換えコンビナトリアル免疫グロブリンライブラリー(例えば、抗体ファージディスプレーライブラリー)を本発明のポリペプチドでスクリーニングし、それにより、ポリペプチドと結合する免疫グロブリンライブラリーメンバーを単離することによって、本発明のポリペプチドに対するモノクローナル抗体を同定および単離することができる。ファージディスプレーライブラリーの作製およびスクリーニングのためのキットが市販されている(例えば、Pharmacia社の組換えファージ抗体システム、カタログNo. 27-9400-01;Stratagene社のSurfZAP(商標)ファージディスプレーキット、カタログNo. 240612)。また、抗体ディスプレーライブラリーの作製およびスクリーニングにおいて使用される特に好都合な方法および試薬の例が、例えば、米国特許第5,223,409号、PCT国際特許出願公開WO92/18619;PCT国際特許出願公開WO91/17271;PCT国際特許出願公開WO92/20791;PCT国際特許出願公開WO92/15679;PCT国際特許出願公開WO93/01288;PCT国際特許出願公開WO92/01047;PCT国際特許出願公開WO92/09690;PCT国際特許出願公開WO90/02809;Fuchs他(1991)、Bio/Technology、9:1370〜1372;Hay他(1992)、Hum. Antibod. Hybridomas、3:81〜85;Huse他(1989)、Science、246:1275〜1281;Griffiths他(1993)、EMBO J.、12:725〜734に見出され得る。
また、ヒト部分および非ヒト部分の両方を含み、標準的な組換えDNA技術を使用して作製することができる組換え抗体(例えば、キメラなヒト化モノクローナル抗体など)は本発明の範囲内である。そのようなキメラなヒト化モノクローナル抗体は、この分野で知られている組換えDNA技術によって製造することができる。
一般に、本発明の抗体(例えば、モノクローナル抗体)は、アフィニティークロマトグラフィーまたは免疫沈殿などの標準的な技術によって本発明のポリペプチドを単離するために使用することができる。ポリペプチド特異的な抗体は、細胞からの天然ポリペプチドの精製、および、宿主細胞において発現させられた組換え産生ポリペプチドの精製を容易にすることができる。そのうえ、本発明のポリペプチドに対して特異的な抗体は、そのポリペプチドの存在量および発現パターンを評価するために、(例えば、細胞溶解物、細胞上清または組織サンプルにおける)そのポリペプチドを検出するために使用することができる。抗体は、例えば、臨床試験手順の一部として組織におけるタンパク質レベルをモニターして、例えば、施された処置療法の効力を明らかにするために診断的に使用することができる。抗体を検出可能な物質に結合することにより、検出を容易にすることができる。検出可能な物質の例には、様々な酵素、補欠分子団、蛍光物質、発光物質、生物発光物質および放射性物質が含まれる。好適な酵素の例には、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼまたはアセチルコリンエステラーゼが含まれる。好適な補欠分子団の例には、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが含まれる。好適な蛍光物質の例には、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアナート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリトリンが含まれる。発光物質の例には、ルミノールが含まれる。生物発光物質の例には、ルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびエクオリンが含まれる。好適な放射性物質の例には、125I、131I、35Sまたは3Hが含まれる。
診断アッセイ
本明細書中に記載される核酸、プローブ、プライマー、ポリペプチドおよび抗体は、脳卒中の診断方法、または、脳卒中に対する罹患性の診断方法、または、脳卒中遺伝子(例えば、PDE4Dなど)に関連する疾患もしくは状態に対する罹患性の診断方法において、ならびに、脳卒中の診断、または、脳卒中に対する罹患性の診断、または、PDE4Dに関連する疾患もしくは状態に対する罹患性の診断のために有用なキットにおいて使用することができる。1つの実施形態において、脳卒中の診断、または、脳卒中に対する罹患性の診断、または、PDE4Dに関連する疾患もしくは状態に対する罹患性の診断のために有用なキットは、本発明において同定されるSNPの1つ以上を含有する本明細書中に記載されるようなプライマーを含む。同時に、PDE4D/cAMP経路に関連する脳卒中リスクの明確化は、PDE4D経路およびcAMP経路に作用する薬学的薬剤によって最も良く処置される個体のサブグループを明確にするために有用であり、かつ新規である(逆の場合も同じである)。
本発明の1つの実施形態において、脳卒中または脳卒中に対する罹患性の診断(あるいは、PDE4Dに関連する疾患もしくは状態の診断、または、PDE4Dに関連する疾患もしくは状態に対する罹患性の診断)は、本明細書中に記載されるようなPDE4D核酸における多型を検出することによってなされる。多型は、PDE4D核酸における変化、例えば、フレームシフトの変化を生じさせる単一ヌクレオチドの挿入または欠失、あるいは、1より多いヌクレオチドの挿入または欠失;コードされるアミノ酸の変化を生じさせる少なくとも1つのヌクレオチドの変化;早期停止コドンの生成をもたらす少なくとも1つのヌクレオチドの変化;そのヌクレオチドによりコードされる1つ以上のアミノ酸の欠失をもたらす数ヌクレオチドの欠失;遺伝子または核酸のコード配列の中断をもたらす不均等な組換えまたは遺伝子変換などによる1つまたは数個のヌクレオチドの挿入;遺伝子もしくは核酸の全体または一部分の重複;遺伝子もしくは核酸の全体または一部分の転位;あるいは、遺伝子もしくは核酸の全体または一部分の再配置などであり得る。1より多いそのような変化が1つの遺伝子または核酸に存在し得る。そのような配列変化は、PDE4D核酸によりコードされるポリペプチドにおける変化を生じさせる。例えば、変化がフレームシフト変化である場合、そのフレームシフトは、コードされるアミノ酸の変化を生じさせ得、かつ/または、早期停止コドンの生成を生じさせ得、これにより、短縮型ポリペプチドの生成を生じさせる。あるいは、PDE4D核酸に関連する疾患もしく状態に関連する多型、または、PDE4D核酸に関連する疾患もしくは状態に対する罹患性に関連する多型は、1つ以上のヌクレオチドにおける同義的変化(すなわち、PDE4D核酸によりコードされるポリペプチドにおける変化をもたらさない変化)であり得る。診断適用の場合、機能的な多型との連鎖不平衡にある、疾患リスクの予測のために有益な多型が存在し得る。そのような多型はスプライシンング部位を変化させ得るか、または、mRNAの安定性もしくは輸送に影響を及ぼし得るか、または、そうでなければ、核酸の転写もしくは翻訳に影響を及ぼし得る。上記に記載された変化のいずれかを有するPDE4D核酸は、「変化した核酸」として本明細書中では示される。
脳卒中または脳卒中に対する罹患性を診断する第1の方法では、ハイブリダイゼーション法(例えば、サザン分析、ノーザン分析またはインサイチュハイブリダイゼーションなど)を使用することができる(1999年以降のすべての増刊を含むCurrent Protocols in Molecular Biology(Ausubel, F.ら(編)、John Wiley & Sons)を参照のこと)。例えば、ゲノムDNA、RNAまたはcDNAの、試験対象から得られた生物学的サンプル(「試験サンプル」)が、PDE4D核酸に関連する疾患もしくは状態に対する罹患性を有する個体、または、PDE4D核酸に関連する疾患もしくは状態に対する罹患性に対して敏感である個体、または、DE4D核酸に関連する疾患もしくは状態に対する罹患性に対する素因を有する個体、または、PDE4D核酸に関連する疾患もしくは状態に対する罹患性に関する欠陥を有することが疑われる個体(「試験個体」)から得られる。個体は、成体、子または胎児であり得る。試験サンプルは、ゲノムDNAを含有する任意の提供源から得ることができ、例えば、血液サンプル、羊水のサンプル、脳脊髄液のサンプル、または、皮膚、筋肉、口内粘膜もしくは結膜粘膜、胎盤、胃腸管もしくは他の器官から得られる組織サンプルなどから得ることができる。胎児の細胞または組織に由来するDNAの試験サンプルを、適切な方法によって、例えば、羊水穿刺または絨毛生検などによって得ることがことができる。DNAサンプル、RNAサンプルまたはcDNAサンプルは、その後、脳卒中核酸における多型が存在するかどうかを決定するために、かつ/または、PDE4Dによりコードされるスプライシングバリアントが存在するかどうかを決定するために調べられる。多型またはスプライシングバリアントの存在が、ゲノムDNA、RNAまたはcDNAにおける核酸が核酸プローブにハイブリダイゼーションすることによって示され得る。本明細書中で使用される「核酸プローブ」はDNAプローブまたはRNAプローブであり得る;核酸プローブは、PDE4D核酸において少なくとも1つの多型を含有し得るか、または、PDE4D核酸の特定のスプライシングバリアントをコードする核酸を含有する。プローブは、上記された核酸分子のいずれかであり得る(例えば、核酸、フラグメント、核酸を含有するベクター、プローブまたはプライマーなど)。
脳卒中に対する罹患性を診断するために、ハイブリダイゼーションサンプルが、PDE4Dを含有する試験サンプルを少なくとも1つの核酸プローブと接触させることによって形成される。mRNAまたはゲノムDNAを検出するための好ましいプローブは、本明細書中に記載されるmRNA配列またはゲノムDNA配列にハイブリダイゼーションすることができる標識された核酸プローブである。核酸プローブは、例えば、全長の核酸分子またはその一部分であり、例えば、適切なmRNAまたはゲノムDNAに対してストリンジェントな条件のもとで特異的にハイブリダイズするために十分な、長さが少なくとも15、30、50、100、250または500ヌクレオチドのオリゴヌクレオチドなどであり得る。例えば、核酸プローブは、表11および表12に示される少なくとも1つの多型を任意に含み得る配列番号1の全体もしくは一部、またはその相補体、またはその一部であり得るか、あるいは、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、10、12もしくは14の一部をコードする核酸であり得る。本発明の診断アッセイにおいて使用される他の好適なプローブが上記に記載される(例えば、「本発明の核酸」の見出しのもとで議論されたプローブおよびプライマーを参照のこと)。
ハイブリダイゼーションサンプルは、PDE4Dに対する核酸プローブの特異的なハイブリダイゼーションを可能にするために十分な条件のもとで維持される。本明細書中で使用される「特異的なハイブリダイゼーション」は、(例えば、ミスマッチを伴わない)正確なハイブリダイゼーションを示す。特異的なハイブリダイゼーションは、例えば、上記されたように、高ストリンジェンシーの条件または中程度のストリンジェンシーの条件のもとで達成することができる。特に好ましい実施形態において、特異的なハイブリダイゼーションのためのハイブリダイゼーション条件は高ストリンジェンシーである。
特異的なハイブリダイゼーションは、存在する場合には、標準的な方法を使用して検出される。特異的なハイブリダイゼーションが核酸プローブと試験サンプル中のPDE4Dとの間で生じる場合、PDE4Dは、核酸プローブに存在する多型を有するか、またはスプライシングバリアントである。1より多い核酸プローブを方法において同時に使用することもできる。1つの実施形態において、核酸プローブの少なくとも1つの特異的なハイブリダイゼーションはPDE4Dにおける多型を示すか、または、PDE4Dをコードする特定のスプライシングバリアントの存在を示し、従って、脳卒中に対する罹患性についての診断となる。
ノーザン分析(Current Protocols in Molecular Biology(Ausubel, F.ら(編)、John Wiley & Sons、上掲)を参照のこと)では、上記されたハイブリダイゼーション法が、脳卒中に対する罹患性に関連する多型または特定のスプライシングバリアントの存在を同定するために使用される。ノーザン分析の場合、RNAの試験サンプルが、適切な手段によって個体から得られる。個体から得られたRNAに対する、上記されたような核酸プローブの特異的なハイブリダイゼーションは、PDE4Dにおける多型を示すか、またはPDE4Dによりコードされる特定のスプライシングバリアントの存在を示し、従って、脳卒中に対する罹患性についての診断となる。
核酸プローブの代表的な使用例については、例えば、米国特許第5,288,611号および同第4,851,330号を参照のこと。
あるいは、ペプチド核酸(PNA)プローブを、上記で記載されたハイブリダイゼーション法において、核酸プローブの代わりに使用することができる。PNAは、ペプチド様の無機骨格、例えば、N-(2-アミノエチル)グリシンユニットなどを有するDNA模倣体であり、有機塩基(A、G、C、TまたはU)がメチレンカルボニルリンカーを介してグリシンの窒素に結合する(例えば、Nielsen, P.E.ら、Bioconjugate Chemistry、1994、5、American Chemical Society、1頁(1994)を参照のこと)。PNAプローブは、脳卒中に対する罹患性に関連する多型を有する遺伝子に特異的にハイブリダイズするように設計することができる。PDE4Dに対するPNAプローブのハイブリダイゼーションは、脳卒中に対する罹患性についての診断となる。
本発明の別の方法では、遺伝子における変異または多型が制限部位の創出または除去をもたらすならば、制限消化による変異分析を、変異型遺伝子、または、多型を含有する遺伝子を検出するために使用することができる。制限部位が天然には創出されない場合、多型に依存し、かつ遺伝子型決定を可能にするPCRによって創出することができる。ゲノムDNAを含有する試験サンプルが個体から得られる。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、転写媒介増幅(TMA)およびリガーゼ媒介増幅(LMA)(これらに限定されない)を含む核酸増幅法を、PDE4Dを増幅するために使用することができる。関連DNAフラグメントの消化パターンにより、PDE4Dにおける変異または多型の存在または非存在が示され、従って、脳卒中に対するこの罹患性の存在または非存在が示される。RFLP分析が記載のように行われる(Current Protocols in Molecular Biology(上掲)を参照のこと)。リバースドットブロット技術(線状のアレイまたはストリップ)を使用して目的とする配列を検出することに基づく増幅技術を使用することができ、これは、例えば、米国特許第5,468,613号に記載される。
配列分析もまた、PDE4Dにおける特定の多型を検出するために使用することができる。DNAまたはRNAの試験サンプルが試験個体から得られる。PCRまたは他の適切な方法を、遺伝子および/または所望される場合にはその隣接配列を増幅するために使用することができる。PDE4D、または遺伝子のフラグメント、またはcDNA、またはcDNAのフラグメント、またはmRNA、またはmRNAのフラグメントの配列が、標準的な方法を使用して決定される。遺伝子、遺伝子フラグメント、cDNA、cDNAフラグメント、mRNA、またはmRNAフラグメントの配列は、遺伝子、cDNA(例えば、表11および表12に示される少なくとも1つの多型を任意に含み得る配列番号1、または、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、10、12もしくは14をコードする核酸配列、またはそのフラグメント)、またはmRNAの既知の核酸配列と適切に比較される。1つの実施形態において、PDE4Dにおける多型の少なくとも1つの存在により、個体が脳卒中に対する罹患性を有することが示される。
対立遺伝子特異的なオリゴヌクレオチドもまた、対立遺伝子特異的なオリゴヌクレオチド(ASO)プローブとの増幅オリゴヌクレオチドのドットブロットハイブリダイゼーションの使用によって、PDE4Dにおける多型の存在を検出するために使用することができる(例えば、Saiki, R.ら(1986)、Nature (London)、324:163〜166を参照のこと)。「対立遺伝子特異的なオリゴヌクレオチド」(これはまた、「対立遺伝子特異的なオリゴヌクレオチドプローブ」として本明細書中では示される)は、PDE4Dに特異的にハイブリダイズし、かつ、脳卒中に対する罹患性に関連する多型を含有する約10〜50塩基対(好ましくは約15塩基対〜30塩基対)のオリゴヌクレオチドである。PDE4Dにおける特定の多型に対して特異的である対立遺伝子特異的なオリゴヌクレオチドプローブを、標準的な方法(Current Protocols in Molecular Biology(上掲)を参照のこと)を使用して調製することができる。脳卒中に対する罹患性に関連する遺伝子内の多型を同定するために、DNAの試験サンプルが個体から得られる。PCRを、PDE4Dの全体またはフラグメントならびにその隣接配列を増幅するために使用することができる。増幅されたPDE4D(または遺伝子のフラグメント)を含有するDNAを、標準的な方法(Current Protocols in Molecular Biology(上掲)を参照のこと)を使用してドットブロットし、ブロットをオリゴヌクレオチドプローブと接触させる。増幅されたPDE4Dに対するプローブの特異的なハイブリダイゼーションの存在を次いで検出する。個体から得られたDNAに対する対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブの特異的なハイブリダイゼーションは、PDE4Dにおける多型を示し、従って、脳卒中に対する罹患性を示す。
本発明はさらに、一塩基多型を含む核酸の基準もしくはバリアント対立遺伝子またはその相補体にハイブリダイズする対立遺伝子特異的なオリゴヌクレオチドを提供する。これらのオリゴヌクレオチドはプローブまたはプライマーであり得る。
対立遺伝子特異的なプライマーは、多型と重なる標的DNA上の部位にハイブリダイズし、プライマーが完全な相補性を示す対立遺伝子形態の増幅を開始させるだけである。Gibbs、Nucleic Acid Res.17、2427〜2448 (1989)を参照のこと。このプライマーは、離れた部位でハイブリダイズする第2のプライマーと一緒に使用される。増幅は2つのプライマーから進行し、特定の対立遺伝子形態が存在することを示す検出可能な生成物をもたらす。コントロールは、通常、第2のプライマー対を用いて行われ、その一方が一塩基のミスマッチを多型部位において示し、そのもう一方が、離れた部位に対して完全な相補性を示す。一塩基のミスマッチにより、増幅が妨げられ、検出可能な生成物が形成されない。この方法は、ミスマッチが、多型に関してアラインメントされたオリゴヌクレオチドの最も3'側の位置に含まれるときに最も良く機能する。これは、この位置が、プライマーからの伸張に対して最も不安定化するからである(例えば、国際特許出願公開第93/22456号を参照のこと)。
そのようなアナログをロックされた(locked)核酸(LNA)として付加することにより、プライマーおよびプローブのサイズを8塩基にまで小さくすることができる。LNAは二環DNAアナログの新規なクラスであり、フラノース環における2'位および4'位がO-メチレン基を介して連結され(オキシ-LNA)、S-メチレン基を介して連結され(チオ-LNA)、またはアミノメチレン基を介して連結されている(アミノ-LNA)。これらのLNAバリアントのすべてに共通するものは、DNAアナログについて報告された明らかに最も大きい、相補的な核酸に対する親和性である。例えば、個々のすべてのオキシ-LNAノナマーは、相補的なDNAまたはRNAとの複合体になったとき、それぞれ、64℃および74℃の融解温度を有し、対応するDNAノナマーに対するDNAおよびRNAの両方についての28℃とは対照的であることが示されている。Tmにおける実質的な上昇はまた、LNAモノマーが標準的なDNAモノマーまたはRNAモノマーとの組合せで使用されたときにも得られる。プライマーおよびプローブの場合、LNAモノマーがどこに(例えば、3'末端、5'末端または中央部に)含まれるかに依存して、Tmはかなり増大し得る。
別の実施形態において、個体から得られた標的核酸配列セグメントに対して相補的であるオリゴヌクレオチドプローブのアレイを、PDE4Dにおける多型を同定するために使用することができる。例えば、1つの実施形態において、オリゴヌクレオチドの線状アレイを使用することができる。オリゴヌクレオチドアレイは、典型的には、異なる既知の位置において基体の表面に結合されている複数の異なるオリゴヌクレオチドプローブを含む。これらのオリゴヌクレオチドアレイは、「Genechips.TM.」としてもまた記載されるが、この分野では、例えば、米国特許第5,143,854号ならびにPCT国際特許出願公開第90/15070号および第92/10092号において一般的に記載されている。これらのアレイは、一般には、機械的な合成方法を使用して、または、フォトリソグラフィー法および固相オリゴヌクレオチド合成法の組合せを伴う光誘導合成法を使用して製造することができる。Fodorら、Science、251:767〜777(1991);Pirrungら、米国特許第5,143,854号(PCT国際特許出願公開第90/15070号もまた参照のこと);ならびに、Fodorら、PCT国際特許出願公開第92/10092号および米国特許第5,424,186号を参照のこと(これらのそれぞれの開示のすべてが参照により本明細書中に組み込まれる)。機械的な合成方法を使用したこれらのアレイを合成するための技術が、例えば、米国特許第5,384,261号に記載される(その開示のすべては参照により本明細書中に組み込まれる)。別の実施形態において、線状のアレイまたはマイクロアレイを利用することができる。
オリゴヌクレオチドアレイが調製されると、目的とする核酸がアレイとハイブリダイズされ、多型について走査される。ハイブリダイゼーションおよび走査は一般には、本明細書中に記載される方法、そしてまた、例えば、PCT国際特許出願公開第92/10092号および第95/11995号ならびに米国特許第5,424,186号(これらの開示のすべてが参照により本明細書中に組み込まれる)に記載される方法によって行われる。簡単に記載すると、1つ以上の以前に同定された多型マーカーを含む標的核酸配列が、周知の増幅技術(例えば、PCR)によって増幅される。典型的には、これには、多型の上流側および下流側の両方で標的配列の2つの鎖に対して相補的であるプライマー配列の使用が伴う。非対称PCR技術もまた使用することができる。その後、増幅された標的(これは一般には標識を取り込んでいる)は適切な条件のもとでアレイとハイブリダイズされる。アレイのハイブリダイゼーションおよび洗浄が完了した後、アレイは、標的配列がハイブリダイズしているアレイ上の位置を決定するために走査される。走査から得られたハイブリダイゼーションデータは、典型的には、アレイ上の位置の関数としての蛍光強度の形態である。
1つの検出ブロックに関して、例えば、1つの多型を検出するために主として記載されるが、アレイは複数の検出ブロックを含むことができ、従って、複数の特定の多型を分析することができる。代わりの配置において、検出ブロックは、1つのアレイにおいて、または複数の別個のアレイにおいてグループ化することができ、その結果、様々な最適な条件がアレイに対する標的のハイブリダイゼーション時に使用され得ることが一般には理解される。例えば、しばしば、A-Tリッチセグメントに含まれる多型とは別に、ゲノム配列のG-Cリッチ領域に含まれるそのような多型の検出をもたらすことが望ましい。これにより、それぞれの状況についてハイブリダイゼーション条件の別々の最適化が可能になる。
多型を検出するためにオリゴヌクレオチドアレイを使用することのさらなる記載が、例えば、米国特許第5,858,659号および第5,837,832号に見出され得る(それらの開示のすべてが参照により本明細書中に組み込まれる)。
核酸分析の他の方法を、PDE4Dにおける多型、または、PDE4Dによりコードされるスプライシングバリアントを検出するために使用することができる。代表的な方法には、例えば、直接的な手作業による配列決定(ChurchおよびGilbert (1988)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:1991〜1995;Sanger, F.ら(1977) Proc. Natl. Acad. Sci. USA、74:5463〜5467;Beavisら、米国特許第5,288,644号);自動化された蛍光配列決定;一本鎖高次構造多型アッセイ(SSCP);クランプド(clamped)変性ゲル電気泳動(CDGE);変性勾配ゲル電気泳動(DGGE)(Sheffield, V.C.ら(19891) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:232〜236);移動度シフト分析(Orita, M.ら(1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:2766〜2770)、制限酵素分析(Flavellら(1978) Cell 15:25;Geeverら(1981)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:5081);ヘテロ二重鎖分析;化学的ミスマッチ切断(CMC)(Cottonら(1985)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:4397〜4401);RNase保護アッセイ(Myers, R.M.ら(1985) Science、230:1242);ヌクレオチドミスマッチを認識するポリペプチド(大腸菌mutSタンパク質など)の使用が含まれる。
本発明の1つの実施形態において、PDE4Dに関連する疾患または状態(例えば、脳卒中)の診断、あるいは、PDE4Dに関連する疾患または状態(例えば、脳卒中)に対する罹患性の診断もまた、定量的PCR(速度論的熱サイクリング)による発現分析によって行うことができる。TaqMan(登録商標)またはLightcycler(登録商標)を利用するこの技術は、多型の同定、および、患者がホモ接合性またはへテロ接合性であるかどうかの同定を可能にするために使用することができる。この技術は、PDE4D核酸によりコードされるポリペプチド、またはPDE4D核酸によりコードされるスプライシングバリアントの発現または組成における変化の存在を評価することができる。さらに、そのようなバリアントの発現を、物理的または機能的に異なるとして定量することができる。
本発明の別の実施形態において、脳卒中に対する罹患性の診断はまた、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウエスタンブロット、免疫沈降および免疫蛍光を含む様々な方法によって、PDE4Dポリペプチドの発現および/または組成を調べることにより行うことができる。個体から得られた試験サンプルが、PDE4Dによりコードされるポリペプチドの発現における変化および/または組成における変化の存在について、あるいは、PDE4Dによりコードされる特定のバリアント(例えば、イソ型)の存在について評価される。PDE4Dによりコードされるポリペプチドの発現における変化は、例えば、量的なポリペプチド発現(例えば、産生されたポリペプチドの量)における変化であり得る。PDE4Dによりコードされるポリペプチドの組成における変化は、質的なポリペプチド発現(例えば、変異PDE4Dポリペプチドの発現、または異なるスプライシングバリアントもしくはイソ型の発現)における変化である。1つの実施形態において、そのようなPDE4Dによりコードされる特定のスプライシングバリアント、またはスプライシングバリアントの特定のパターンを検出することは、PDE4Dに関連する疾患または状態、あるいは、PDE4Dに関連する疾患または状態に対する罹患性の診断になる。
両方のそのような変化(量的および質的)もまた存在し得る。ポリペプチドの発現または組成における「変化」は、本明細書中で使用される場合、コントロールサンプルにおけるPDE4Dによるポリペプチドの発現または組成と比較して、試験サンプルにおける発現または組成の変化を示す。コントロールサンプルは、試験サンプルに対応する(すなわち、同じタイプの細胞に由来する)サンプルで、脳卒中により冒されていない個体に由来するサンプルである。コントロールサンプルと比較して、試験サンプルにおけるポリペプチドの発現または組成における変化は、脳卒中に対する罹患性を示している。同様に、コントロールサンプルと比較して、試験サンプルにおける1つ以上の異なるスプライシングバリアントまたはイソ型の存在、あるいは、試験サンプルにおける著しく異なる量の種々のスプライシングバリアントの存在は、脳卒中に対する罹患性を示している。PDE4Dによりコードされるポリペプチドの発現または組成を調べる様々な手段を使用することができ、これらには、分光法、比色法、電気泳動法、等電点フォーカシング、および免疫アッセイ(例えば、Davidら、米国特許第4,376,110号)、例えば、免疫ブロッティング(Current Protocols in Molecular Biology(特に第10章)もまた参照のこと)などが含まれる。例えば、1つの実施形態において、(例えば、上記されたように)ポリペプチドに結合することができる抗体、好ましくは、検出可能な標識を有する抗体を使用することができる。抗体はポリクローナルであり得るか、または、より好ましくはモノクローナルであり得る。完全な抗体またはそのフラグメント(例えば、FabまたはF(ab')2)を使用することができる。用語「標識された」は、プローブまたは抗体に関する場合、検出可能な物質をプローブまたは抗体に結合(すなわち、物理的に連結)することによってプローブまたは抗体を直接的に標識すること、ならびに、直接的に標識されている別の試薬との反応性によってプローブまたは抗体を間接的に標識することを包含することが意図される。間接的に標識することの例には、蛍光標識された二次抗体を使用する一次抗体の検出、および、蛍光標識されたストレプトアビジンを用いて検出することができるようにDNAプローブをビオチンで末端標識することが含まれる。
ウエスタンブロッティング分析は、変異PDE4Dによりコードされるポリペプチドに特異的に結合する上記されたような抗体を使用するか、または、非変異遺伝子によりコードされるポリペプチドに特異的に結合する抗体を使用するか、または、PDE4Dによりコードされる特定のスプライシングバリアントに特異的に結合する抗体を使用し、特定のスプライシングバリアントまたはイソ型の試験サンプルにおける存在、あるいは、多型PDE4Dまたは変異PDE4Dによりコードされるポリペプチドの試験サンプルにおける存在、あるいは、特定のスプライシングバリアントまたはイソ型の試験サンプルにおける非存在、あるいは、非多型遺伝子または非変異遺伝子によりコードされるポリペプチドの試験サンプルにおける非存在を同定するために使用することができる。多型遺伝子または変異遺伝子によりコードされるポリペプチドの存在、あるいは、非多型遺伝子または非変異遺伝子によりコードされるポリペプチドの非存在は、PDE4D遺伝子によりコードされる特定のスプライシングバリアントの存在(または非存在)のように、脳卒中に対する罹患性についての診断となる。
この方法の1つの実施形態において、試験サンプル中のPDE4Dによりコードされるポリペプチドのレベルまたは量が、コントロールサンプル中のPDE4Dによりコードされるポリペプチドのレベルまたは量と比較される。コントロールサンプル中のポリペプチドのレベルまたは量よりも大きく、または低く、差が統計学的に有意であるような試験サンプル中のポリペプチドのレベルまたは量は、PDE4Dによりコードされるポリペプチドの発現における変化を示しており、脳卒中に対する罹患性についての診断となる。あるいは、試験サンプル中のPDE4Dによりコードされるポリペプチドの組成が、コントロールサンプル中のPDE4Dによりコードされるポリペプチドの組成(例えば、種々のスプライシングバリアントの存在)と比較される。コントロールサンプル中のポリペプチドの組成と比較して、試験サンプル中のポリペプチドの組成における差異は、脳卒中に対する罹患性についての診断となる。別の実施形態において、ポリペプチドのレベルまたは量および組成の両方を、試験サンプルおよびコントロールサンプルにおいて評価することができる。コントロールサンプルと比較して、試験サンプル中のポリペプチドの量またはレベルにおける差異;コントロールサンプルと比較して、試験サンプル中の組成における差異;あるいは、量またはレベルにおける差異と、組成における差異との両方は、脳卒中に対する罹患性を示している。
別の実施形態において、多型PDE4Dまたは変異PDE4Dによりコードされるポリペプチドのスプライシングバリアントまたはイソ型の評価を行うことができる。この評価は、(例えば、ポリペプチド自体を調べることによって)直接的に、または、(例えば、mRNAプロファイリングなどにより、ポリペプチドをコードするmRNAを調べることによって)間接的に行うことができる。例えば、本明細書中に記載されるようなプローブまたはプライマーは、標準的な方法を使用して、どのスプライシングバリアントまたはイソ型がPDE4D mRNAによってコードされているかを決定するために使用することができる。
脳卒中または脳卒中のリスクに関連する特定のスプライシングバリアントまたはイソ型の試験サンプルにおける存在、あるいは、脳卒中または脳卒中のリスクに関連しない特定のスプライシングバリアントまたはイソ型の試験サンプルにおける非存在は、PDE4D遺伝子に関連する疾患または状態、あるいは、PDE4D遺伝子に関連する疾患または状態に対する罹患性についての診断となる。同様に、脳卒中または脳卒中のリスクに関連する特定のスプライシングバリアントまたはイソ型の試験サンプルにおける非存在、あるいは、脳卒中または脳卒中のリスクに関連しない特定のスプライシングバリアントまたはイソ型の試験サンプルにおける存在は、PDE4D遺伝子に関連する疾患または状態の非存在、あるいは、PDE4D遺伝子に関連する疾患または状態に対する罹患性の非存在についての診断となる。
別の実施形態において、イソ型のPDE4D7およびPDE4D9ならびにそれらの組合せの示差的な発現を評価し、コントロールの個体と比較することができる。これらのイソ型の低下した発現は、脳卒中(特に、頸動脈脳卒中および/または心臓性脳卒中)に対する罹患性を示している。
本発明はさらに、PDE4Dにおけるリスクのあるハプロタイプを同定することによって、個体における脳卒中に対する罹患性を診断および同定するための方法に関する。1つの実施形態において、リスクのあるハプロタイプは、ハプロタイプの存在が脳卒中のリスクを著しく増大させるハプロタイプである。リスクが著しいかどうかを同定することは、特定の疾患、ハプロタイプ、そしてしばしば環境的要因を含む様々な要因に依存し得ることを理解しなければならないが、有意性をオッズ比または百分率によって測定することができる。さらなる実施形態において、有意性は百分率によって測定される。1つの実施形態において、有意なリスクが、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8および1.9(これらに限定されない)を含む少なくとも約1.2のオッズ比として測定される。さらなる実施形態において、少なくとも1.2のオッズ比が有意である。さらなる実施形態において、少なくとも約1.5のオッズ比が有意である。さらなる実施形態において、リスクの有意な増大は少なくとも約1.7が有意である。さらなる実施形態において、リスクの有意な増大は少なくとも約20%であり、これには、約25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%および98%が含まれるが、これらに限定されない。さらなる実施形態において、リスクの有意な増大は少なくとも約50%である。しかしながら、リスクが医学的に有意であるかどうかを同定することはまた、特定の疾患、ハプロタイプ、そしてしばしば、環境的要因を含む様々な要因に依存し得ることが理解される。
本発明はまた、個体における脳卒中または脳卒中に対する罹患性を診断する方法に関する。この方法は、健康な個体(コントロール)におけるその存在頻度と比較して、脳卒中に対して罹患性の個体(罹患者)においてより頻繁に存在するPDE4D核酸におけるリスクのあるハプロタイプについてスクリーニングすることを含み、ここで、ハプロタイプの存在により、脳卒中または脳卒中に対する罹患性が示される。脳卒中に関連するSNPおよび/またはマイクロサテライトマーカーの存在について遺伝子型を決定するための様々な標準的な技術を使用することができ、例えば、蛍光に基づく技術(Chenら、Genome Res. 9、492 (1999)、PCR、LCR、ネステッドPCR、および、核酸増幅のための他の技術などを使用することができる。1つの実施形態において、この方法は、脳卒中に関連するPDE4D核酸におけるSNPおよび/またはマイクロサテライトの存在または頻度を個体において評価することを含み、ここで、健康なコントロール個体と比較して、SNPおよび/またはマイクロサテライトの過度の頻度またはより大きい頻度により、個体が脳卒中を有するか、または、脳卒中に対して罹患性があることが示される。
スクリーニングツールとして使用することができるハプロタイプを含むSNPおよびマーカーについては、表2C、表3、表4Aおよび表4Bを参照のこと。また、以前から知られているSNPおよび新規なマイクロサテライトマーカーならびにそれらの対応体の配列ID参照番号を示す表5、表6、表11および表12も参照のこと。これらのリストから得られるSNPおよびマーカーはリスクのあるハプロタイプを表しており、脳卒中に対する罹患性を決定するための診断試験を設計するために使用することができる。
診断方法において有用なキット(例えば、試薬キット)は、本明細書中に記載された方法のいずれかにおいて有用な構成成分を含み、例えば、本明細書中に記載されるようなハイブリダイゼーションプローブまたはプライマー(例えば、標識されたプローブまたはプライマー)、標識された分子を検出するための試薬、制限酵素(例えば、RFLP分析に対して)、対立遺伝子特異的なオリゴヌクレオチド、変化したPDE4Dポリペプチドもしくは変化していない(天然の)PDE4Dポリペプチドに結合する抗体、PDE4Dを含む核酸を増幅するための手段、または、PDE4Dの核酸配列を分析するための手段、または、PDE4Dポリペプチドのアミノ酸配列を分析するための手段などが含まれる。1つの実施形態において、脳卒中に対する罹患性を診断するためのキットは、脳卒中に対する罹患性のある個体においてより頻繁に存在するリスクのあるハプロタイプを含むPDE4D遺伝子内の領域を核酸増幅するためのプライマーを含むことができる。プライマーは、脳卒中を示すSNPに隣接する核酸の部分を使用して設計することができる。特に好ましい実施形態において、プライマーは、表8Aおよび表8Bに示される、脳卒中についてリスクのあるハプロタイプに関連するPDE4D遺伝子の領域を増幅するために設計される。本発明の別の実施形態において、脳卒中に対する罹患性を診断するためのキットはさらに、表5および表6に示され、かつ/または、配列番号85〜102から生じた、脳卒中についてリスクのあるハプロタイプに関連するPDE4D遺伝子の領域にハイブリダイズさせるために設計されたプローブを含むことができる。
スクリーニングアッセイおよびそれにより同定される因子
本発明は、本発明の核酸によりコードされるポリペプチドの存在を同定するためだけでなく、本発明の核酸にハイブリダイズするヌクレオチドの存在を同定するための方法(これはまた、本明細書中では「スクリーニングアッセイ」として示される)を提供する。1つの実施形態において、サンプルにおける目的とする核酸分子(例えば、本発明の核酸との著しい相同性を有する核酸)の存在(または非存在)を、サンプルを、本発明の核酸を含む核酸(例えば、表11および表12に示される少なくとも1つの多型を任意に含み得る配列番号1の配列を有する核酸、または、その相補体、または、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、10、12もしくは14の配列を有するアミノ酸をコードする核酸、または、そのような核酸のフラグメントもしくはバリアント)と、上記のようなストリンジェントな条件のもとで接触させ、その後、ハイブリダイゼーションの存在(または非存在)についてサンプルを評価することによって評価することができる。別の実施形態において、高ストリンジェンシーの条件が、選択的なハイブリダイゼーションのために適切な条件である。別の実施形態において、目的とする核酸分子を含有するサンプルが、目的とする核酸分子(例えば、PDE4D核酸)の一部分に対して少なくとも部分的に相補的である隣接ヌクレオチド配列を含有する核酸(例えば、上記されたようなプライマーまたはプローブ)と接触させられ、接触されたサンプルが、ハイブリダイゼーションの存在または非存在について評価される。別の実施形態において、隣接ヌクレオチド配列を含有する核酸は、目的とする核酸分子の一部分に対して完全に相補的である。
これらの実施形態のいずれかにおいて、目的とする核酸の全体または一部分を、ハイブリダイゼーションを行う前に増幅に供することができる。
別の実施形態において、サンプルを、目的とするポリペプチドに特異的にハイブリダイズする抗体(例えば、上記される抗体などの抗体)と接触させ、その後、目的とするポリペプチドに対する抗体の結合の存在(または非存在)についてサンプルを評価することによって、サンプルにおける目的とするポリペプチド(例えば、本発明のポリペプチドまたはそのフラグメントもしくはバリアントなど)の存在(または非存在)を評価することができる。
別の実施形態において、本発明は、本明細書中に記載されるポリペプチドの活性を変化(例えば、増大または低下)させるか、あるいは、そうでなければ、本明細書中におけるポリペプチドと相互作用する因子(例えば、融合タンパク質、ポリペプチド、ペプチド模倣体、プロッドラッグ、受容体、結合因子、抗体、小分子もしくは他の薬物、またはリボザイム)を同定するための方法を提供する。例えば、そのような因子は、本明細書中に記載されるポリペプチドに結合する因子(例えば、PDE4D結合因子);例えば、本発明のポリペプチドの活性に対する刺激作用または阻害作用を有する因子;あるいは、PDE4D結合因子と相互作用する本発明のポリペプチドの能力を変化(例えば、増強または阻害)させる因子(例えば、受容体または他の結合因子);あるいは、PDE4Dポリペプチドの翻訳後プロセシングを変化させる因子(例えば、タンパク質分解的プロセシングを変化させて、ポリペプチドを、ポリペプチドが通常の場合に合成される場所から細胞における別の場所(例えば、細胞表面など)に向かわせる因子;より多くのポリペプチドが細胞から放出されるようにタンパク質分解的プロセシングを変化させる因子などであり得る。
1つの実施形態において、本発明は、本明細書中に記載されるポリペプチド(またはその生物学的に活性な部分)に結合するか、またはその活性を調節する候補因子または試験因子をスクリーニングするためのアッセイ、ならびに、このアッセイにより同定され得る因子を提供する。試験因子は、生物学的ライブラリー;空間的にアドレス指定可能な並行固相ライブラリーまたは溶液相ライブラリー;解析を必要とする合成ライブラリー法;「1ビーズ1化合物」ライブラリー法;および、アフィニティークロマトグラフィー選択を使用する合成ライブラリー法を含む、この分野で公知であるコンビナトリアルライブラリー法における数多くの方法のいずれかを使用して得ることができる。生物学的ライブラリー法はポリペプチドライブラリーに限定され、一方、他の4つの方法は、ポリペプチドライブラリー、非ペプチドオリゴマーライブラリー、または化合物の小分子ライブラリーに対して適用することができる(Lam, K.S.(1997)、Anticancer Drug Des.、12:145)。
1つの実施形態において、PDE4Dポリペプチドの活性を変化させる因子を同定するために、(上記されたように)PDE4Dポリペプチド(例えば、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、10、12もしくは14、またはPDE4Dによりコードされる別のスプライシングバリアント)またはそのフラグメントもしくは誘導体を含有または発現する細胞、細胞溶解物または溶液を、試験される因子と接触させることができる;あるいは、ポリペプチドを、試験される因子と直接的に接触させることができる。PDE4D活性のレベル(量)が評価され(例えば、PDE4D活性のレベル(量)が直接的または間接的のいずれかで測定され)、コントロールにおける活性のレベル(すなわち、試験される因子の非存在下でのPDE4Dポリペプチドまたはその活性なフラグメントもしくは誘導体の活性のレベル)と比較される。因子の存在下での活性のレベルが、統計学的に有意である量により、因子の非存在下での活性のレベルと異なる場合、その因子は、PDE4Dポリペプチドの活性を変化させる因子である。コントロールのレベルに対してPDE4D活性のレベルの増大は、因子が、PDE4D活性を増強させる因子であること(PDE4D活性のアゴニストであること)を示す。同様に、コントロールのレベルに対してPDE4D活性のレベルの低下は、因子がPDE4D活性を阻害させる因子であること(PDE4D活性のアンタゴニストであること)を示す。別の実施形態において、試験される因子の存在下でのPDE4Dポリペプチドまたはその誘導体もしくはフラグメントの活性のレベルが、以前に明らかにされているコントロールレベルと比較される。統計学的に有意である量によりコントロールレベルとは異なる、因子の存在下での活性のレベルは、その因子がPDE4D活性を変化させることを示している。
本発明はまた、PDE4D遺伝子の発現を変化させる因子(例えば、アンチセンス核酸、融合タンパク質、ポリペプチド、ペプチド模倣体、プロドラッグ、受容体、結合因子、抗体、小分子もしくは他の薬物、またはリボザイム)で、遺伝子の発現(例えば、転写または翻訳)を変化(例えば、増大または低下)させる因子、あるいは、そうでない場合には、本明細書中に記載される核酸と相互作用する因子を同定するためのアッセイ、ならびに、このアッセイにより同定され得る因子に関する。例えば、PDE4Dポリペプチドをコードする核酸(例えば、PDE4D遺伝子)を含有する溶液を、試験される因子と接触させることができる。溶液は、例えば、核酸を含有する細胞、または核酸を含有する細胞溶解物を含むことができる;あるいは、溶液は、核酸の転写/翻訳のために必要なエレメントを含む別の溶液であり得る。溶液に懸濁されていない細胞もまた、所望される場合には用いることができる。PDE4D発現のレベルおよび/またはパターン(例えば、mRNAまたは発現したタンパク質のレベルおよび/またはパターン、例えば、種々のスプライシングバリアントのレベルおよび/またはパターンなど)が評価され、コントロールにおける発現のレベルおよび/またはパターン(すなわち、試験される因子の非存在下でのPDE4D発現のレベルおよび/またはパターン)と比較される。因子の存在下でのレベルおよび/またはパターンが、統計学的に有意である量によりまたは様式で、因子の非存在下でのレベルおよび/またはパターンと異なる場合、その因子は、PDE4Dの発現を変化させる因子である。PDE4Dの発現の増強は、その因子がPDE4D活性のアゴニストであることを示す。同様に、PDE4D発現の阻害は、その因子がPDE4D活性のアンタゴニストであることを示す。別の実施形態において、試験される因子の存在下でのPDE4Dポリペプチド(例えば、種々のスプライシングバリアント)のレベルおよび/またはパターンが、以前に明らかにされているコントロールのレベルおよび/またはパターンと比較される。統計学的に有意である量によりまたは様式でコントロールのレベルおよび/またはパターンとは異なる、因子の存在下でのレベルおよび/またはパターンは、その因子がPDE4D発現を変化させることを示している。1つの実施形態において、イソ型のPDE4D7および/またはPDE4D9の発現レベルを変化させることができる因子を、好ましくは、発現レベルを補完して、健康な個体の比率を近似するために評価することができる。
本発明の別の実施形態において、PDE4D遺伝子の発現を変化させる因子、または、そうでない場合には、本明細書中に記載される核酸と相互作用する因子を、レポーター遺伝子に作動可能に連結されたPDE4D遺伝子のプロモーター領域をコードする核酸を含有する細胞、細胞溶解物または溶液を使用して同定することができる。試験される因子との接触の後、レポーター遺伝子の発現レベル(例えば、mRNAまたは発現したタンパク質のレベル)が評価され、コントロールにおける発現レベル(すなわち、試験される因子の非存在下でのレポーター遺伝子の発現レベル)と比較される。因子の存在下でのレベルが、統計学的に有意である量によりまたは様式で、因子の非存在下でのレベルと異なる場合、その因子は、PDE4D遺伝子のプロモーターに作動可能に連結されている遺伝子の発現を変化させるその能力によって示されるように、PDE4Dの発現を変化させる因子である。レポーターの発現の増強は、その因子がPDE4D活性のアゴニストであることを示す。同様に、レポーターの発現の阻害は、その因子がPDE4D活性のアンタゴニストであることを示す。別の実施形態において、試験される因子の存在下でのレポーターの発現レベルが、以前に明らかにされているコントロールレベルと比較される。統計学的に有意である量によりまたは様式でコントロールレベルとは異なる、因子の存在下でのレベルは、その因子がPDE4D発現を変化させることを示している。
PDE4Dによりコードされる種々のスプライシングバリアントの量を変化させる因子(例えば、第1のスプライシングバリアントの活性を増強し、かつ第2のスプライシングバリアントの活性を阻害する因子)、ならびに、第1のスプライシングバリアントの活性のアゴニストであり、かつ第2のスプライシングバリアントの活性のアンタゴニストである因子を、上記されたこれらの方法を使用して容易に同定することができる。
本発明の他の実施形態において、アッセイを、PDE4D結合因子に関連して、ポリペプチドの活性に対する試験因子の影響を評価するために使用することができる。例えば、PDE4Dと相互作用する化合物(これは、本明細書中では、受容体などの、PDE4Dと相互作用するポリペプチドまたは他の分子であり得る「PDE4D結合因子」として示される)を発現する細胞が試験因子の存在下でPDE4Dと接触させられ、PDE4DとPDE4D結合因子との間での相互作用を変化させる試験因子の能力が決定される。あるいは、PDE4D結合因子を含有する細胞溶解物または溶液を使用することができる。PDE4DまたはPDE4D結合因子に結合する因子は、PDE4DがPDE4D結合因子に結合するか、またはPDE4D結合因子と会合するか、またはそうでない場合にはPDE4D結合因子と相互作用する能力を妨害または増強することによって相互作用を変化させることができる。PDE4DまたはPDE4D結合因子に結合する試験因子の能力を決定することは、例えば、ポリペプチドに対する試験因子の結合が、直接的または間接的のいずれかであっても、125I、35S、14Cまたは3Hで標識されたことを検出することによって測定され得るように、また、放射性同位体が、放射線放射を直接的に計数することによって、またはシンチレーション計数することによって検出され得るように、試験因子を放射性同位体または酵素標識と結合することにより達成することができる。あるいは、試験因子は、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼまたはルシフェラーゼで酵素的に標識することができ、酵素標識を、適切な基質の生成物への変換を測定することによって検出することができる。また、相互作用物のいずれをも標識することなく、ポリペプチドと相互作用する試験因子の能力を測定することも本発明の範囲内である。例えば、微量生理学装置を使用して、試験因子、PDE4DまたはPDE4D結合因子のいずれかを標識することなく、試験因子とPDE4DまたはPDE4D結合因子との相互作用を検出することができる。McConnell, H.M.他(1992)、Science、257:1906〜1912。本明細書中で使用される場合、「微量生理学装置」(例えば、CytosensorTM)は、細胞がその環境を酸性化する速度を、光アドレス指定可能な電位差センサー(LAPS)を使用して測定する分析装置である。この酸性化速度の変化を、リガンドとポリペプチドとの間における相互作用の指標として使用することができる。既知のPDE4D結合パートナーの議論については実施例の節を参照のこと。従って、これらの受容体を、脳卒中を処置する際に使用されるPDE4D受容体アゴニストである化合物について、または、脳卒中を研究するためのPDE4D受容体アンタゴニストである化合物についてスクリーニングするために使用することができる。本明細書中に提供される連鎖データは、初めて、脳卒中に対するそのような関連を提供する。薬物を、PDE4D受容体の活性化を調節するために設計することができ、そのような薬物は、次いで、下流側の遺伝子(例えば、Cbfa1など)のシグナル伝達経路および転写事象を調節するために使用することができる。
本発明の別の実施形態において、アッセイを、本明細書中に記載されるように、1つ以上のPDE4Dポリペプチドと相互作用するポリペプチドを同定するために使用することができる。例えば、酵母ツーハイブリッドシステム、例えば、FieldsおよびSong(Fields, S.およびSong, O.、Nature、340:245〜246 (1989))により記載されるシステムなどを、1つ以上のPDE4Dポリペプチドと相互作用するポリペプチドを同定するために使用することができる。そのような酵母ツーハイブリッドシステムでは、ベクターが、2つの機能的なドメイン(DNA結合ドメインおよび転写活性化ドメイン)を有する転写因子の柔軟性に基づいて構築される。これら2つのドメインが分離され、しかし、互いに相互作用する2つの異なるタンパク質に融合された場合、転写活性化を達成することができ、また、特異的なマーカー(例えば、HisおよびAdeなどの栄養マーカー、またはlacZなどの発色マーカー)の転写を、相互作用および転写活性化の存在を同定するために使用することができる。例えば、本発明の方法では、DNA結合ドメインと、そしてまた、PDE4Dポリペプチド、スプライシングバリアント、またはそのフラグメントもしくは誘導体とをコードする核酸を含む第1のベクターが使用され、転写活性化ドメインと、そしてまた、PDE4Dポリペプチド、スプライシングバリアント、またはそのフラグメントもしくは誘導体と潜在的に相互作用し得るポリペプチド(例えば、PDE4Dポリペプチド結合因子または受容体)とをコードする核酸を含む第2のベクターが使用される。第1のベクターおよび第2のベクターを含有する酵母を適切な条件(例えば、Clontechから得られるMatchmakerTMSystemなどにおいて使用される接合条件)のもとでインキュベーションすることにより、目的とするマーカーを発現するコロニーの同定が可能になる。このようなコロニーは、PDE4Dポリペプチドまたはそのフラグメントもしくは誘導体と相互作用するポリペプチドを同定するために調べることができる。そのようなポリペプチドは、上記されたように、PDE4Dポリペプチドの発現の活性を変化させる因子として有用であり得る。
本発明の上記アッセイ方法の1より多い実施形態において、ポリペプチドの一方または両方の複合体化形態をその非複合体化形態から分離することを容易にするために、ならびに、アッセイの自動化に対応するために、PDE4D、PDE4D結合因子、またはアッセイの他の成分のいずれかを固体支持体上に固定化することが望ましいかもしれない。試験因子の存在下および非存在下における、ポリペプチドに対する試験因子の結合、または、ポリペプチドと結合因子との相互作用を、反応物を含有するために好適な任意の容器において達成することができる。そのような容器の例には、マイクロタイタープレート、試験管および微量遠心分離チューブが含まれる。1つの実施形態において、PDE4DまたはPDE4D結合因子がマトリックスまたは他の固体支持体に結合することを可能にするドメインを加える融合タンパク質(例えば、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ融合タンパク質)が提供され得る。
別の実施形態において、本発明の核酸分子の発現の調節因子が、PDE4Dをコードする核酸を含有する細胞、細胞溶解物または溶液が試験因子と接触させられ、細胞、細胞溶解物または溶液における適切なmRNAまたはポリペプチド(例えば、スプライシングバリアント)の発現が測定される方法で同定される。試験因子の存在下での適切なmRNAまたはポリペプチドの発現レベルが、試験因子の非存在下でのmRNAまたはポリペプチドの発現レベルと比較される。次いで、試験因子を、この比較に基づいて発現の調節因子として同定することができる。例えば、mRNAまたはポリペプチドの発現が、試験因子の存在下において、その非存在下よりも大きい(統計学的に著しく大きい)場合、試験因子は、mRNAまたはポリペプチドの発現の刺激因子またはエンハンサーとして同定される。あるいは、mRNAまたはポリペプチドの発現が、試験因子の存在下において、その非存在下よりも低い(統計学的に著しく低い)場合、試験因子は、mRNAまたはポリペプチドの発現の阻害因子として同定される。細胞におけるmRNA発現またはポリペプチド発現のレベルは、mRNAまたはポリペプチドを検出するための本明細書中に記載される方法によって測定することができる。
本発明はさらに、上記されたスクリーニングアッセイによって同定される新規な因子に関する。従って、本明細書中に記載されるように同定された因子を適切な動物モデルにおいてさらに使用することは本発明の範囲内である。例えば、本明細書中に記載されるように同定された因子(例えば、調節性因子、アンチセンス核酸分子、特異的な抗体、またはポリペプチド結合因子である試験因子)は、そのような因子による処置の効力、毒性または副作用を明らかにするために動物モデルにおいて使用することができる。あるいは、本明細書中に記載されるように同定された因子は、そのような因子の作用機構を明らかにするために動物モデルにおいて使用することができる。さらには、本発明は、本明細書中に記載されるような処置のための、上記のスクリーニングアッセイにより同定される新規な因子の使用に関する。また、本明細書中に記載されるように同定された因子は、ポリペプチドまたは遺伝子を、本明細書中に記載されるように同定された因子と接触させること(あるいは、ポリペプチドまたは遺伝子を含む細胞を接触させること)によって、PDE4Dによりコードされるポリペプチドの活性を変化させるために、または、PDE4Dの発現を変化させるために使用することができる。
医薬組成物
本発明はまた、本明細書中に記載される因子(特に、本明細書中に記載されるポリペプチドをコードするヌクレオチド)を含む医薬組成物;本明細書中に記載されるポリペプチド(例えば、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、10、12または14の1つ以上)を含む医薬組成物;および/または、PDE4Dによりコードされる他のスプライシングバリアント;および/または、本明細書中に記載されるようにPDE4D遺伝子発現もしくはPDE4Dポリペプチド活性を変化(例えば、増強または阻害)させる因子を含む医薬組成物に関する。例えば、ポリペプチド、タンパク質(例えば、PDE4D受容体)、PDE4D遺伝子発現を変化させる因子、または、PDE4D結合因子もしくは結合パートナー、そのフラグメント、融合タンパク質もしくはプロドラッグ、または、本発明のヌクレオチドを含むヌクレオチド構築物もしくは核酸構築物(ベクター)、または、PDE4Dポリペプチド活性を変化させる因子を、医薬組成物を調製するために、生理学的に許容され得るキャリアまたは賦形剤とともに配合することができる。キャリアおよび組成物は無菌であり得る。配合は投与様式に適するべきである。
好適な医薬的に許容され得るキャリアには、水、塩溶液(例えば、NaCl)、生理食塩水、緩衝化生理食塩水、アルコール、グリセロール、エタノール、アラビアゴム、植物油、ベンジルアルコール類、ポリエチレングリコール、ゼラチン、炭水化物(例えば、ラクトース、アミロースまたはデンプン、デキストロースなど)、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、香油、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなど、ならびにそれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。医薬調製物は、所望される場合、活性な因子(薬剤)との有害な反応をもたらさない補助剤、例えば、滑剤、保存剤、安定化剤、湿潤化剤、乳化剤、浸透圧に影響を及ぼす塩、緩衝剤、着色剤、風味剤および/または芳香物質などと混合することができる。
組成物はまた、所望される場合、微量の湿潤化剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝化剤を含有することができる。組成物は、液体溶液、懸濁液、エマルジョン、錠剤、ピル、カプセル、持続放出製剤または粉末であり得る。組成物は、従来の結合剤およびキャリア(例えば、トリグリセリドなど)を用いて座薬として配合することができる。経口製剤は、標準的なキャリア、例えば、医薬規格のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ナトリウムサッカリン、セルロース、炭酸マグネシウムなどを含むことができる。
これらの組成物を導入する方法には、皮内、筋肉内、腹腔内、眼内、静脈内、皮下、局所的、経口的および鼻孔内が含まれるが、これらに限定されない。他の適切な導入方法にはまた、(下記において記載されるような)遺伝子治療、再充填可能なデバイスまたは生分解性デバイス、粒子加速デバイス(「遺伝子銃」)、および徐放性ポリマーデバイスが含まれ得る。本発明の医薬組成物はまた、他の因子との併用療法の一部として投与することができる。
組成物は、ヒトへの投与のために適合化された医薬組成物として、日常的な手法に従って配合することができる。例えば、静脈内投与用の組成物は、典型的には、無菌の等張性水性緩衝液における溶液である。必要な場合、組成物はまた、可溶化剤、および、注射部位における痛みを和らげるための局所麻酔剤を含むことができる。一般に、成分は個別に供給され得るか、または、単位投薬形態に一緒に混合されて、例えば、活性な薬剤の量を示す密閉容器(例えば、アンプルまたは小袋など)における乾燥した凍結乾燥粉末または無水の濃縮物として供給され得る。組成物が注入によって投与されることになる場合、組成物は、無菌の医薬規格の水、生理食塩水またはデキストロース/水を含有する注入ボトルで分配され得る。組成物が注射によって投与される場合、成分が投与前に混合され得るように、無菌の注射用水または生理的食塩水のアンプルが提供され得る。
局所適用の場合、非噴霧性の形態、すなわち、局所適用と適合し得るキャリアを含み、かつ、好ましくは水よりも大きい動的粘度を有する粘性から半固体または固体を用いることができる。好適な製剤には、限定されないが、溶液、懸濁液、エマルジョン、クリーム、軟膏、粉末、浣腸剤、ローション、ゾル、リニメント剤、膏薬、エアロゾルなどが含まれ、これらは、所望される場合、補助剤(例えば、保存剤、安定化剤、湿潤化剤、緩衝剤、または、浸透圧に影響を及ぼす塩等)を用いて殺菌されるか、または、そのような補助剤と混合される。因子は化粧用製剤に配合することができる。局所適用の場合、有効成分が、好ましくは固体または液体の不活性なキャリア物質との組合せで、圧力ボトルに、または、加圧された揮発性の通常の場合にはガス状の噴射剤(例えば、圧縮空気)との混合で詰められる噴霧可能なエアロゾル調製物もまた好適である。
本明細書中に記載される薬剤は中性形態または塩形態として配合することができる。医薬的に許容され得る塩には、フリーのアミノ基により形成される塩、例えば、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来する塩など、および、フリーのカルボキシル基により形成される塩、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来する塩などが含まれる。
薬剤は治療効果量で投与される。特定の障害または状態を処置することにおいて治療効果的である薬剤の量は、障害または状態の性質に依存するが、標準的な臨床技術によって決定することができる。また、インビトロまたはインビボでのアッセイを、場合により、最適な投薬量範囲を特定することを助けるために用いることができる。配合において用いられる正確な用量はまた、投与経路および脳卒中の症状の重篤度に依存し、医師の判断およびそれぞれの患者状況に従って決定されなければならない。効果的な用量は、インビトロまたは動物モデルでの試験系から得られる用量応答曲線から推定することができる。
本発明はまた、本発明の医薬組成物の成分の1つまたは複数が充填された1つまたは複数の容器を含む医薬用のパックまたはキットを提供する。場合により、そのような容器には、医薬品または生物学的製剤の製造、使用または販売を規制する政府当局により定められた形式での通知が伴い得る。この場合、そのような通知は、ヒトへの投与について、製造、使用または販売の当局による承認を反映する。パックまたはキットには、投与様式、(例えば、別個、連続的または同時での)薬物投与シーケンスなどに関する情報を表示するラベルが張られ得る。パックまたはキットはまた、治療を受けることを患者に忘れさせないための手段を含むことができる。パックまたはキットは併用療法の1回の単位投薬量であり得るか、または、複数の単位投薬量であり得る。特に、薬剤は別個であり得るか、または、任意の組合せで一緒に混合され、1つのバイアルもしくは錠剤に存在させることができる。ブリスターパックまたは他の分配手段でまとめられた薬剤が好ましい。本発明の目的のために、単位投薬量は、各薬剤の個々の薬力学に依存し、かつ、標準的な時間経過においてFDA承認の投薬量で投与される投薬量を意味することが意図される。
治療方法
本発明は、PDE4D治療剤を使用して、脳卒中(特に虚血性(頸動脈脳卒中および心臓性脳卒中)およびTIA)またはそのような脳卒中に対する罹患性について、例えば、本明細書中に記載される標的集団における個体などについて(予防的および/または治療的に)処置する方法を包含する。「PDE4D治療剤」は、本明細書中に記載されるように、PDE4Dポリペプチド(酵素活性)および/またはPDE4D遺伝子発現を変化(例えば、増強または阻害)させる薬剤(例えば、PDE4DアゴニストまたはPDE4Dアンタゴニスト)である。PDE4D治療剤は、様々な手段によって、例えば、さらなるPDE4Dポリペプチドを提供することによって、または、PDE4D遺伝子の転写もしくは翻訳をアップレギュレーションすることによって、または、PDE4Dポリペプチドの翻訳後プロセシングを変化させることによって、または、PDE4Dスプライシング変異体の転写を変化させることによって、または、(例えば、PDE4Dポリペプチドに結合することにより)PDE4Dポリペプチド活性を妨害することによって、または、PDE4D遺伝子の転写もしくは翻訳をダウンレギュレーションすることによって、PDE4Dポリペプチド活性またはPDE4D核酸発現を変化させることができる。
特に、本発明は、(例えば、本明細書中に記載される個体などの、リスク集団における個体について)脳卒中または脳卒中に対する罹患性について処置する方法、ならびに、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化、急性冠状動脈症候群(例えば、不安定狭心症、非ST上昇心筋梗塞(NSTEMI)またはST上昇心筋梗塞(STEMI))について、また、二次的な心筋梗塞のリスクを低下させるために、また、アテローム性動脈硬化について、また、例えば、動脈(例えば、冠状動脈)および末梢動脈閉塞疾患における血流を回復するための処置(例えば、血管形成術、ステント、冠状動脈バイパス移植術)を必要としている患者などについて処置する方法に関する。
代表的なPDE4D治療剤には、下記のものが含まれる:
本明細書中に記載される核酸またはそのフラグメントもしくは誘導体、特に、本明細書中に記載されるポリペプチドをコードするヌクレオチド、および、そのような核酸(例えば、遺伝子、cDNAおよび/またはmRNA、二本鎖の干渉性RNA、PDE4Dポリペプチドまたはその活性なフラグメントもしくは誘導体をコードする核酸、あるいはオリゴヌクレオチド;例えば、表11および表12に示される少なくとも1つの多型を場合により含み得る配列番号1、あるいは、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号12もしくは配列番号14、またはそのフラグメントもしくは誘導体)を含むベクター、アンチセンス核酸、または小さい二本鎖の干渉性RNA;
本明細書中に記載されるポリペプチド(例えば、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号12もしくは配列番号14、および/または、PDE4Dによりコードされる他のスプライシングバリアント、またはそのフラグメントもしくは誘導体);
他のポリペプチド(例えば、PDE4D受容体);PDE4D結合因子;ペプチドミメティクス;その融合タンパク質またはプロドラッグ;抗体(例えば、上記で記載されたように、変異型PDE4Dポリペプチドに対する抗体、または、非変異PDE4Dポリペプチドに対する抗体、または、PDE4Dによりコードされる特定のスプライシングバリアントに対する抗体);リボザイム;他の小分子;
ならびに、PDE4D遺伝子発現またはPDE4Dポリペプチド活性を変化(例えば、阻害または中和)させる他の因子、あるいは、PDE4Dスプライシングバリアントの転写を調節する他の因子(例えば、どのスプライシングバリアントが発現するかに影響を及ぼす因子、または、発現する各スプライシングバリアントの量に影響を及ぼす因子)。
1つ以上のPDE4D治療剤を、所望される場合には同時に使用することができる。
核酸であるPDE4D治療剤は脳卒中の処置において使用される。本明細書中で使用される用語「処置」は、疾患に関連する症状を改善することだけでなく、疾患の発症を防止または遅延させること、そしてまた、疾患の症状の重篤度または頻度を軽減すること、疾患または状態の別の症状発現の発生を防止または遅延させること、ならびに/あるいは、疾患または状態の症状の重篤度または頻度を軽減することを示す。アテローム性動脈硬化の場合には、「処置」はまた、プラークの発達を最小限に抑えること、または、プラークの発達を逆転させることを示す。治療は、個体におけるPDE4Dポリペプチドの活性を変化(例えば、阻害もしくは増強)し、置換し、または補充するために設計される。例えば、PDE4D治療剤は、PDE4D遺伝子またはPDE4Dの特定のスプライシングバリアントの発現または利用性をアップレギュレーションまたは増大させるために、あるいは、逆に、PDE4D遺伝子またはPDE4Dの特定のスプライシングバリアントの発現または利用性をダウンレギュレーションまたは低下させるために投与することができる。生来的なPDE4Dの遺伝子発現または利用性あるいは特定のスプライシングバリアントの発現または利用性をアップレギュレーションまたは増大させることにより、欠陥遺伝子または別のスプライシングバリアントの発現または活性を妨げることができ、あるいは、欠陥遺伝子または別のスプライシングバリアントの発現または活性を補償することができる。生来的なPDE4Dの遺伝子発現または利用性あるいは特定のスプライシングバリアントの発現または利用性をダウンレギュレーションまたは低下させることにより、欠陥遺伝子または特定のスプライシングバリアントの発現または活性を最小限に抑えることができ、それにより、欠陥遺伝子または特定のスプライシングバリアントの影響を最小限に抑えることができる。
PDE4D治療剤は、治療効果的な量(すなわち、例えば、疾患に関連する症状を改善することによって、疾患の発症を防止もしくは遅延させることによって、かつ/または、同様に疾患の症状の重篤度もしくは頻度を軽減することなどによって、疾患を処置するために十分である量)で投与される。特定の個体の障害または状態を処置することにおいて治療効果的である量は、疾患の症状および重篤度に依存するが、標準的な臨床技術によって決定することができる。また、インビトロまたはインビボでのアッセイを、最適な投薬量範囲を特定することを助けるために場合により用いることができる。配合において用いられる正確な用量はまた、投与経路、および疾患または障害の重篤度に依存し、医師の判断およびそれぞれの患者状況に従って決定されなければならない。効果的な用量は、インビトロまたは動物モデルでの試験系から得られる用量応答曲線から推定することができる。
1つの実施形態において、本発明の核酸(例えば、PDE4Dポリペプチドをコードする核酸、例えば、表11および表12に示される少なくとも1つの多型を場合により含み得る配列番号1など;あるいは、PDE4Dポリペプチド、またはそのスプライシングバリアント、誘導体もしくはフラグメントをコードする別の核酸、例えば、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号12もしくは配列番号14をコードする核酸)を、単独で、または、上記で記載されたような医薬組成物で使用することができる。例えば、PDE4D、またはPDE4DポリペプチドをコードするcDNAを、単独で、または、ベクターに含まれてのいずれかであっても、細胞が天然型PDE4Dポリペプチドを産生するように、(インビトロまたはインビボのいずれかであっても)細胞内に導入することができる。必要な場合には、遺伝子、またはcDNA、または、遺伝子もしくはcDNAを含むベクターで形質転換されている細胞を、疾患に冒されている個体に導入(または再導入)することができる。従って、事実上、天然型PDE4Dの発現および活性を有しない細胞、あるいは、変異PDE4Dの発現および活性を有する細胞、あるいは、疾患に関連するPDE4Dスプライシングバリアントの発現を有する細胞を、PDE4DポリペプチドまたはPDE4Dポリペプチドの活性なフラグメント(または、PDE4Dポリペプチドの異なるバリアント)を発現させるために操作することができる。別の実施形態において、PDE4Dポリペプチドまたはその活性なフラグメントもしくは誘導体をコードする核酸を、ウイルスベクターなどの発現ベクターに導入することができ、そして、ベクターを動物における適切な細胞に導入することができる。ウイルス転移システムおよび非ウイルス転移システムを含む他の遺伝子転移システムを使用することができる。あるいは、非ウイルス遺伝子転移法、例えば、リン酸カルシウム共沈殿、機械的な技術(例えば、マイクロインジェクション)、リポソームによる膜融合媒介移入、または直接的なDNA取り込みなどもまた使用することができる。
あるいは、本発明の別の実施形態において、本発明の核酸、本発明の核酸に対して相補的な核酸、またはそのような核酸の一部(例えば、下記において記載されるようなオリゴヌクレオチド)を、PDE4DのmRNAおよび/またはゲノムDNAに特異的にハイブリダイゼーションする核酸(例えば、オリゴヌクレオチド)が投与されるか、またはインサイチュで生じる「アンチセンス」治療において使用することができる。mRNAおよび/またはDNAに特異的にハイブリダイゼーションするアンチセンス核酸は、例えば、翻訳および/または転写を阻害することによって、PDE4Dポリペプチドの発現を阻害する。アンチセンス核酸の結合は、従来的な塩基対相補性によるか、または、例えば、DNA二重鎖に結合する場合には、二重らせんの主溝における特異的な相互作用によるものであり得る。
本発明のアンチセンス構築物は、例えば、上記で記載されたような発現プラスミドとして送達することができる。プラスミドが細胞において転写されたとき、プラスミドは、PDE4DポリペプチドをコードするmRNAおよび/またはDNAの一部分に対して相補的であるRNAを産生する。あるいは、アンチセンス構築物は、エクスビボで作製され、細胞に導入されるオリゴヌクレオチドプローブであり得る。その場合、オリゴヌクレオチドプローブは、PDE4DのmRNAおよび/またはゲノムDNAとハイブリダイゼーションすることによって発現を阻害する。1つの実施形態において、オリゴヌクレオチドプローブは、内因性のヌクレアーゼ(例えば、エキソヌクレアーゼおよび/またはエンドヌクレアーゼ)に対して抵抗性であり、それによりオリゴヌクレオチドプローブをインビボにおいて安定にする修飾されたオリゴヌクレオチドである。アンチセンスオリゴヌクレオチドとして使用される例示的な核酸分子は、DNAのホスホルアミダートアナログ、ホスホチオアートアナログおよびメチルホスホナートアナログである(米国特許第5,176,996号、同第5,264,564号および同第5,256,775号もまた参照のこと)。また、アンチセンス治療において有用なオリゴマーを構築することに対する一般的な方法もまた、例えば、Van der Krol他((1988) Biotechniques、6:958〜976)およびStein他((1988) Cancer Res、48:2659〜2668)により記載される。アンチセンスDNAに関しては、翻訳開始部位(例えば、PDE4D配列の-10領域と+10領域との間)に由来するオリゴデオキシリボヌクレオチドが好ましい。
アンチセンス治療を行うために、PDE4DをコードするmRNAに対して相補的であるオリゴヌクレオチド(mRNA、cDNAまたはDNA)が設計される。このようなアンチセンスオリゴヌクレオチドはPDE4DのmRNA転写物に結合し、翻訳を妨げる。絶対的な相補性は要求されないが、好ましい。RNAの一部分に対して「相補的」である配列は、本明細書中で示される場合、配列が、RNAとハイブリダイゼーションし、これにより、安定な二重鎖を形成することができるために十分な相補性を有することを示す。二本鎖アンチセンス核酸の場合、従って、二重鎖DNAの1つだけの鎖を調べることができ、または、三重鎖の形成をアッセイすることができる。ハイブリダイゼーションする能力は、上記で詳しく記載されたように、相補性の程度およびアンチセンス核酸の長さの両方に依存する。一般に、ハイブリダイゼーションする核酸は長いほど、核酸は、RNAとのより多くのミスマッチを含有することができ、かつ、安定な二重鎖(または、場合により、三重鎖)を依然として形成することができる。当業者は、標準的な手法を使用することによって、ミスマッチの許容度を確認することができる。
アンチセンス治療において使用されるオリゴヌクレオチドは、DNA、RNA、または、それらのキメラ混合物もしくは誘導体もしくは改変体(一本鎖もしくは二本鎖)であり得る。オリゴヌクレオチドは、塩基成分、糖成分またはリン酸骨格において、例えば、分子の安定性、ハイブリダイゼーションなどを改善するために改変することができる。オリゴヌクレオチドは、(例えば、宿主細胞の受容体をインビボで標的化するために)ペプチドなどの他の付属基、または、細胞膜を超える輸送を容易にする因子(例えば、Letsinger他(1989)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、86:6553〜6556;Lemaitre他(1987)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、84:648〜652;PCT国際特許出願公開WO88/09810を参照のこと)、または、血液脳関門を超える輸送を容易にする因子(例えば、PCT国際特許出願公開WO89/10134を参照のこと)、または、ハイブリダイゼーションにより開始される切断因子(例えば、Krol他(1988)、BioTechniques、6:958〜976を参照のこと)、またはインターカレーション剤(例えば、Zon (1988)、Pharm. Res.、5:539〜549を参照のこと)を含むことができる。この目的のために、オリゴヌクレオチドを別の分子(例えば、ペプチド、ハイブリダイゼーションにより開始される架橋剤、輸送因子、ハイブリダイゼーションにより開始される切断因子)にコンジュゲート化することができる。
アンチセンス分子は、PDE4Dをインビボで発現する細胞に送達される。数多くの方法を、アンチセンスDNAまたはアンチセンスRNAを細胞に送達するために使用することができる。例えば、アンチセンス分子を組織部位に直接的に注入することができ、または、所望の細胞を標的化するために設計された改変アンチセンス分子(例えば、標的細胞表面に発現した受容体または抗原と特異的に結合するペプチドまたは抗体に連結されたアンチセンス)を全身投与することができる。あるいは、別の実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドが強力なプロモーター(例えば、polIIIまたはpolII)の制御下に置かれている組換えDNA構築物が利用される。患者における標的細胞をトランスフェクションするためのそのような構築物の使用は、内因性のPDE4D転写物との相補的な塩基対を形成し、それによりPDE4DのmRNAの翻訳を妨げる十分な量の一本鎖RNAの転写を生じさせる。例えば、ベクターを、ベクターが細胞によって取り込まれ、アンチセンスRNAの転写を行わせるように、インビボで導入することができる。そのようなベクターは、所望されるアンチセンスRNAを産生するために転写され得る限り、エピソームに留まり得るか、または、染色体に組み込まれ得る。そのようなベクターは、この分野で標準的な、また、上記に記載される組換えDNA技術法によって構築することができる。例えば、プラスミド、コスミド、YACまたはウイルスベクターを、組織部位に直接的に導入され得る組換えDNA構築物を調製するために使用することができる。あるいは、所望の組織に選択的に感染するウイルスベクターを使用することができ、そのような場合、投与は別の経路(例えば、全身投与)によって達成され得る。
標的タンパク質の活性のRNA阻害剤を投与することによってPDE4D発現を調節する方法もまた可能である。用語「RNA阻害剤」は、RNA干渉によって標的タンパク質の発現を封じる阻害性RNAを示す(McManus, M.T.およびSharp, P.A.、2002、Nat. Rev. Genet.、3:737〜47;Hannon, G.J.、2002、Nature、418:244〜51;Paddison, P.J.およびHannon, G.J.、2002、Cancer Cell、2:17〜23)。RNA干渉は、C. elegansからヒトまで進化を通して保存されており、細胞をRNAウイルスによる侵入から保護する際に機能することが考えられている。細胞にdsRNAウイルスが感染すると、dsRNAは、Dicerと名付けられたRNaseIII型の酵素による切断のために認識および標的化される。Dicer酵素は、RNAを、2つの対形成していないヌクレオチドをそれぞれの鎖の3'末端に有する完全に対形成したリボヌクレオチドの19ヌクレオチドから構成される21ヌクレオチドの短い二重鎖(これは短い干渉性RNAまたはsiRNAと名付けられている)に「さいの目に切る」。これらの短い二重鎖は、RISCと呼ばれる多タンパク質複合体と会合し、この複合体を、siRNAに対する配列類似性を有するmRNA転写物に向かわせる。結果として、RISC複合体に存在するヌクレアーゼがmRNA転写物を切断し、それにより、遺伝子産物の発現を阻害する。ウイルス感染の場合、この機構はウイルス転写物の破壊をもたらし、従って、ウイルス合成を妨げる。siRNAは二本鎖であるので、いずれかの鎖が、RISCと会合し、配列類似性を有する転写物のサイレンシングを行わせる潜在的能力を有する。
最近、遺伝子サイレンシングが、細胞にDicer切断の生成物を模倣したsiRNAを提示することによって誘導され得ることが明らかにされた(Elbashir, S.M.他、2001、Nature、411:494〜8;Elbashir, S.M.他、2001、Genes Dev.、15:188〜200)。合成されたsiRNA二重鎖は、RISCと会合し、mRNA転写物のサイレンシングを行わせる能力を維持しており、従って、研究者に哺乳動物細胞における遺伝子サイレンシングのための強力なツールを提供する。遺伝子サイレンシングのためにdsRNAを導入するためのさらに別の方法はshRNA(短いヘアピンRNA)である(Paddison, P.J.他、2002、Genes Dev.、16:948〜58;Brummelkamp, T.R.他、2002、Science、296:550〜3;Sui, G.他、2002、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、99:5515〜20)。この場合、所望のsiRNA配列が、ヘアピン構造を形成するために介在ループ配列に関して逆向き反復を有する「shRNA」遺伝子を含むプラスミド(またはウイルス)から発現される。ヘアピンを含有して得られるshRNA転写物は続いて、Dicerによってプロセシングされ、サイレンシングのためのsiRNAをもたらす。プラスミドに基づくshRNAを細胞において安定に発現させることができ、これにより、長期間にわたる遺伝子サイレンシングが、細胞において、または動物においてさえも可能になる(McCaffrey, A.P.他、2002、Nature、418:38〜9;Xia, H.他、2002、Nat. Biotech.、20:1006〜10;Lewis, D.L.他、2002、Nat. Genetics、32:107〜8;Rubinson, D.A.他、2003、Nat. Genetics、33:401〜6;Tiscornia, G.他(2003)、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、100:1844〜8)。RNA干渉は、マウスを劇症肝炎から保護するために治療的に成功して使用されている(Song, E.他、2003、Nat. Medicine、9:347〜51)。
内因性のPDE4D発現はまた、標的化された相同的組換えを使用してPDE4Dまたはそのプロモーターを不活性化または「ノックアウト」することによって低下させることができる(例えば、Smithies他(1985)、Nature、317:230〜234;Thomas & Capecchi (1987)、Cell、51:503〜512;Thompson他(1989)、Cell、5:313〜321を参照のこと)。例えば、内因性PDE4D(PDE4Dのコード領域または調節領域のいずれか)に対して相同的なDNAが隣接する変異型の非機能的なPFE4D(または完全に無関係なDNA配列)を、PDE4Dをインビボで発現する細胞をトランスフェクションするために、選択マーカーおよび/または負の選択マーカーとともに、またはそのようなマーカーを用いることなく使用することができる。標的化された相同的組換えによるDNA構築物の挿入により、PDE4Dの不活性化がもたらされる。組換えDNA構築物は、上記で記載されたように、適切なベクターを使用して、要求される部位に対してインビボで直接的に投与または標的化され得る。あるいは、非変異PDE4Dの発現を、類似する方法を使用して増大させることができる。例えば、標的化された相同的組換えを、上記で記載されたように、細胞において変異PDE4Dの代わりに、非変異型の機能的なPDE4D(例えば、表11および表12に示される少なくとも1つの多型を場合により含み得る配列番号1を有する遺伝子)またはその一部を含むDNA構築物を挿入するために使用することができる。別の実施形態において、標的化された相同的組換えを、細胞に存在するバリアントとは異なるPDE4Dポリペプチドバリアントをコードする核酸を含むDNA構築物を挿入するために使用することができる。
あるいは、内因性のPDE4D発現を、体内の標的細胞におけるPDE4Dの転写を妨げる三重らせん構造を形成させるために、PDE4Dの調節領域(すなわち、PDE4Dのプロモーターおよび/またはエンハンサー)に対して相補的なデオキシリボヌクレオチド配列を標的化することによって低下させることができる(一般的には、Helene, C. (1991)、Anticancer Drug Des.、6(6):569〜84;Helene, C.他(1992)、Ann. N.Y. Acad. Sci.、660:27〜36;Maher, L.J. (1992)、Bioassays、14(12):807〜15を参照のこと)。同様に、本明細書中に記載されるアンチセンス構築物は、1つのPDE4Dタンパク質の正常な生物学的活性を中和することによって、インビボ組織培養およびエクスビボ組織培養の両方での組織の操作(例えば、組織分化)において使用することができる。さらに、アンチセンス技術(例えば、アンチセンス分子のマイクロインジェクション、またはその転写物がPDE4DのmRNA配列または遺伝子配列に関してアンチセンスであるプラスミドを用いたトランスフェクション)を、成体組織におけるPDE4Dの正常な細胞機能だけでなく、発達事象におけるPDE4Dの役割を調べるために使用することができる。そのような技術は細胞培養において利用することができ、しかし、遺伝子組換え動物の作製においてもまた使用することができる。
本発明のさらに別の実施形態において、本明細書中に記載されるような他のPDE4D治療剤もまた、脳卒中の処置または防止において使用することができる。治療剤は、上記で記載されたように、組成物で送達することができ、または、単独で送達することができる。治療剤は全身投与することができ、または、特定の組織に対して標的化することができる。治療剤は、例えば、化学合成、組換え製造、インビボ製造(例えば、遺伝子組換え動物、例えば、米国特許第4,873,316号(Meade他)など)を含む様々な手段によって製造することができ、また、本明細書中に記載される手段などの標準的な手段を使用して単離することができる。
上記の処置方法のいずれかの組合せ(例えば、非変異PDE4Dポリペプチドを、変異PDE4DのmRNAを標的化するアンチセンス治療と一緒に投与すること;PDE4Dによりコードされる第1のスプライシングバリアントを、PDE4Dによりコードされる第2のスプライシングバリアントを標的化するアンチセンス治療と一緒に投与すること)もまた使用することができる。
本発明は下記の非限定的な実施例によってさらに記載される。本明細書中に引用されているすべての刊行物の教示は、その全体が参照により本明細書中に援用される。
実施例1:PDE4Dの変動およびハプロタイプが脳卒中のリスクを増大させる
アイスランドの脳卒中患者および表現型特徴付け
1993年から1997年に診断された2543例のアイスランドの脳卒中患者を含む集団ベースのリストは、アイスランドの2つの大きい病院およびアイスランド心臓協会(Icelandic Heart Association)由来であった(この研究は、Icelandic Data Protection Commission of Icelandおよびthe National Bioethics Committeeによって承認された)。出血性脳卒中を有する患者は全ての患者の6%に相当した(アミロイド症を伴うアイスランド型の遺伝性脳出血を有する患者およびクモ膜下出血を有する患者は除外した)。虚血性脳卒中は、総患者の67%そしてTIAは27%を占めた。この研究における脳卒中のサブタイプの分布は他の白色人種集団で報告された分布と同様である(Mohr,J.P.ら、Neurology,28:754〜762(1978);L.R.Caplan,Stroke,A Clinical Approach(Butterworth−Heinemann,Stoneham,MA,編 3,(1993))。
約2000名の生存患者のリストを本発明者らのコンピューター化した系統学的データベースで実行した。deCODE遺伝学で確立された包括的な系統学データベースを用いて、系図において患者をクラスター化した。各々のバージョンのコンピューター化された系統学的データベースを、研究室にいく前にData Protection Commission of Icelandによって可逆的に暗号化した(Gulcher,J.Rら、Eur.J.Hum.Genet.8:739(2000))。このデータベースは、暗号化された個人の識別子を有する患者リストを入力として用い、かつ再帰アルゴリズムを用いて、アイスランド全体をカバーする所定の数の世代背景内の入力リスト上の任意のメンバーに関連するデータベース中の全ての祖先を見出す(Gulcher,J.R.,およびStefansson,K.,Clin.Chem.Lab.Med.36:523(1998))。次いでクラスター関数によって、入力リストの任意の2人以上のメンバーに共通である祖先を検索する。2例以上の生存患者を有する179の家族を研究のために選択し、ここでは6回の減数分裂(6回の減数分裂はまたいとこの関係にある)に関する総数476例の患者を用いた。インフォームドコンセントをそのDNAサンプルを連鎖スキャンに用いた全ての患者および親類から得た。影響された対の間の平均解離は4.8回の減数分裂である。この研究のために選択された患者のうち73%が虚血性脳卒中を、23%がTIAを、そして4%が出血性脳卒中を有した。
選択された家系では、出血性脳卒中患者は虚血性脳卒中およびTIAの患者に分類され、出血性脳卒中の優勢または虚血性脳卒中のサブタイプの優勢が目立つ家系はなかった。虚血性脳卒中の患者は、脳卒中のTOAST(Trial of Org 10172 in Acute Stroke Treatment)サブ分類システム(Adams,H.P.,Jr.ら、Stroke,24:34〜41(1993))によって再分類した。このシステムは、5つのカテゴリーを含む:(1)大動脈アテローム性動脈硬化症、(2)心塞栓症、(3)小動脈閉塞(ラクネ、小梗塞(lacune))、(4)他の確認された病因の脳卒中、および(5)未決定の病因の脳卒中。この診断は、臨床的特徴および補助的な診断研究からのデータに基づく。大動脈のアテローム性動脈硬化症を有すると確認された患者は、脳の皮質性機能不全の臨床的所見および脳画像の所見を有し、そして有意な(>70%)狭窄(これは、50%の狭窄をカットオフにするTOASTにおいて用いるよりも厳密な規準である)または主な脳動脈もしくは枝状皮質動脈の閉塞のいずれかを有した。心臓の塞栓症の潜在的な原因を排除した。このカテゴリーの心臓塞栓症は、塞栓について少なくとも1つの心臓性の原因を有する患者を含み、そして血栓および塞栓の潜在的な大動脈の原因は排除された。小動脈閉塞を有する患者は、伝統的な臨床的小梗塞症状の1つを有し、脳の皮質的機能不全の証拠はなかった。同側の頭蓋外動脈における70%を超える塞栓および狭窄の潜在的な心臓性の原因を排除した。他の決定された病因の急性の脳卒中のカテゴリーは、珍しい脳卒中の原因を有する患者および2つ以上の潜在的な脳卒中の原因を有する患者を含んだ。脳卒中の原因が広範な評価にかかわらず決定できない場合、患者を未決定の病因という脳卒中カテゴリーに入れた。図1は、出血性脳卒中を含むいくつかの脳卒中サブタイプによって各々が影響された2つの系図を示す。広範に規定された表現型が、明らかに脳卒中において遺伝される。
ゲノムワイドスキャン(genome−wide scan)
約1000のマイクロサテライトマーカーのフレームワークマッピングを用いて、ゲノムワイドスキャンを行なった。約1000の蛍光標識したプライマーを用いてDNAサンプルを遺伝子型決定した。500のカスタムメイドのマーカーと組み合わせたABI Linkage Marker(v2)スクリーニングセットおよびABI Linkage Marker(v2)インターカレートセットに一部基づくマイクロサテライトスクリーニングセットを開発した。全てのマーカーを4×多重化PCR反応において、信頼性、スコア付けの容易さおよび効率性について広範に試験した。フレームワークマーカーセットでは、マーカーの間の平均間隔は約4cMであって、10cMを超えるギャップはなかった。マーカー位置は、第8染色体での3つのマーカー推定インバージョン以外は、Marshfieldマップから得た(Jonsdottir,G.M.ら、Am.J.Hum.Genet.,67(補遺2):332(2000);Yu,Aら、Am.J.Hum.Genet.67(補遺2):10(2000)。PCR増幅を設定して、行い、各々のマーカーについて同様のプロトコールを用いてPerkin Elmer/Applied Biosystems 877 Integrated Catalyst Thermocyclersにプールした。用いた反応容積は5μlであって、各々のPCR反応に関してゲノムDNA 20ngを2pmolの各々のプライマー、0.25U AMPLITAQ GOLD(DNAポリメラーゼ;Roche Molecular Systemsの商標)、0.2mM dNTPおよび2.5mM MgCl2(緩衝液は製造業者によって供給された)の存在下で増幅した。用いたPCR条件は、95℃で10分間、次いで94℃15秒、55℃30秒、および72℃1分の37サイクルであった。PCR産物に内部サイズ標準を補充して、プールを分けて、v3.0 GENESCAN(ピーク呼び出しソフトウェア(peak calling software);Applied Biosystemsの商標)を用いてApplied Biosystemsモデル377 Sequencerで検出した。TRUEALLELE(対立遺伝子同定のためのコンピュータープログラム;Cybergenetics,Inc.の商標)プログラムを用いて対立遺伝子を自動的に呼び出して、そしてプログラムDECODE−GT(TRUEALLELEプログラムの下流で働くコンピューター編集プログラム;deCODE geneticsの商標)を用いて質に従って分画して、呼び出された遺伝子型を編集した(Palsson,Bら、Genome Res.9:1002(1999))。少なくとも180例のアイスランドのコントロールを遺伝子型特定して、対立遺伝子頻度を得た。
全部で476例の患者および438例の親類を遺伝子型特定した。データを解析して、マルチポイントの計算に基づいてロッドスコアを計算するALLEGRO(マルチポイント連結解析についてのコンピュータープログラム;deCODE geneticsの商標)プログラムにおいて実行されたアフェクテッドオンリーアレルシェアリング法(affected−only allele−sharing method)(任意の特定の遺伝モデルを特定しない)を適用することによって統計学的有意差を決定した。本発明者らのベースライン連鎖解析は、Spairsスコアリング関数(Kruglyak,Lら、Am.J:Hum.Genet.,58:1347(1996))、指数関数的アレルシエアリングモデル(exponential allele−sharing model)(Kong,A.およびCox,N.J.,Am.J.Hum.Genet.,61:1179(1997))、および対数スケール上で、各々の影響する対の等しい重み付けと各々の家族の等しい重み付けとの間で中間である、家族重み付けスキームを用いる。この解析では、本発明者らは、「未知(unknown)」であるとして影響されない遺伝子型特定された個体の全てを扱う。本明細書における全ての連鎖解析は、プログラムALLEGRO(deCODE genetics)によるマルチポイント算出を用いて行なった(Gudbjartsson,D.Fら、Nat.Genet.25:12(2000))。
フレームワークマッピングを用いるゲノムスキャンのためのアレルシェアリングロッドスコアによって、1.0を上回るロッドスコアが得られた3つの領域が示された。これらの領域のうちの2つが染色体5qにある。最初のピークは、2.00のロッドスコアを有する約69cMにある。第二のピークは1.14のロッドスコアを有する99cMにある。第三の領域は、第14q染色体上に1.24のロッドスコアを有して55cMにある。
5q遺伝子座の連鎖のための情報は、両方のピークにまたがった45cMのセグメントにわたるさらなる45のマーカーを遺伝子型特定することによって増大された。本明細書において用いた情報は、Nicolae(D.L.Nicolae,Thesis,University of Chicago(1999))によって規定されて、失われている情報の画分の古典的な測度に対して漸近的に等価であることが実証されている(Dempster,A.Pら、J.R.Statist.Soc.B,39:1(1977))。第二のピークでのロッドスコアは、約1.05までわずかに低下したが、最初のピークでこのロッドスコアは3.39に増大した。しかし、本発明者らの結果の精密な検査によって、Marshfieldの遺伝子マッピングは解像度が欠けるだけでなく(多くのマーカーは、同じマップ位置に割り当てられた)、その順序でいくつかの誤差が存在し得ることが示唆された。結果として、本発明者らの材料を用いて評価した領域の遺伝子長さは、報告されているよりも有意に大きかった。ALLEGRO(deCODE genetics)プログラムを修正することによって、本発明者らは、EMアルゴリズムを本発明者らのデータに適用してマーカーの間の遺伝的な距離を評価した。本発明者らは、この領域の遺伝子長さの本発明者らによる評価はMarshfieldマッピングに与えられるよりも実質的に長かったことを見出した。これによって、マーカーの順序による問題が示される。なぜなら、一般的には、不正確なマーカーの順序によってみかけの重複の数の増大がもたらされ、そしてみかけの遺伝子長さが増大するからである。
物理的および遺伝子マッピング
マーカーの順序およびマーカー間距離は、マーカーD5S474とD5S2046との間の20cMの領域にわたって高密度の物理的および遺伝子マッピングを構築することによって改善された。高密度STSを用いるBACメンブレンの同時ハイブリダイゼーションおよびFingerprinting Contigデータベースからのデータの組み合わせを用いて、RPCI−11ライブラリーからのBACの大きいコンティグを構築した。また112を超える他の多数の核家族を補充した脳卒中の家系を用いる高解像度の遺伝子マッピングによって、連鎖マーカーの順序を確認した。高解像度の遺伝子マッピングを用いて、物理的マッピングによって見出されたコンティグを順に固定してそこに配置し、そして正確に整理されたマーカーの正確なマーカー間距離を得た。112例のアイスランドの核家族(2〜7の兄弟姉妹を含む、その親との同胞群)からのデータを、脳卒中の系図内で利用可能な核家族と一緒に解析した。遺伝子マッピングの目的で、112の核家族だけで588の減数分裂を得て、マッピングのために利用可能な減数分裂の総数は2000を超えた。対照的に、Marshfield遺伝子マッピングは182の減数分裂に基づいて構築された。本発明者らの家系内の多数の減数分裂の事象によって、マーカーを0.5〜1.0cMの解像度にマッピングする能力が得られる。この情報と物理的マッピングを合わせて、マーカーの高度に信頼できる順序およびこの20cMの領域内のマーカー間距離が得られた。遺伝子マッピングおよび物理的なマッピングに共通の連鎖マーカーを用いて、物理的にマッピングされたコンティグの4つを順に固定して配置した。遺伝子的および物理的なマッピングを統合することによって30個の多形性のマーカーの最も可能性の高い順序が誘導された。
同時発生的なプライマーハイブリダイゼーションとデータマイニングとを組み合わせる方法によってBACコンティグを生成した。12×範囲で約200,000個のクローンを含むRPCI−11ヒト男性BACライブラリーセグメント1および2(Pieter de Jong,Children's Hospital Oakland Research Institute)を、BioGridロボット(Biorobotics Ltd.,Cambridge,UK)を用い、23cm×23cmメンブレンに6×6ダブルオフセットパターンを用いてグリッド化した。最初に、Weizmann Institute Unified Databaseにおけるその位置に従って目的の領域においてマーカーを用いてハイブリダイゼーションを行なった。プライマー配列を解析して、公知のリピートのE.coliおよびベクター配列の内容に従って破棄した(この解析は、deCODE geneticsで開発されたソフトウェアを用いて行なった)。平均130kbずつ隔てられた領域において150のマーカー(30は、連鎖に用いた多形性マーカーであって、そして120はSTSから生成された)を用いた。この選択されたマーカーを用いて、2つの32P標識プローブを生成したが、そのうちFはプールされたフォワードプライマーを含み、そしてRはプールされたリバースプライマーを含んでいた。deCODE geneticsで開発されたインフォーマティクスツールによって得られたオートラジオグラムのデジタル化された画像から自動的に陽性のシグナルの読み取りを行なった。両方のハイブリダイゼーションにおける同時発生的シグナルを陽性のクローンとして選択した。1セットの重複クローンを、ハイブリダイゼーションおよびBACフィンガープリントウォーキングの組み合わせによってアセンブルした。陽性クローンのフィンガープリントを、Sanger Centerで開発されたFPCデータベースを用いて解析した。3e−12のカットオフで予備構築したFPCコンティグからおよび配列データマイニングからのデータを、ハイブリダイゼーションの結果と統合した。データマイニングおよびハイブリダイゼーションによって検出された領域のBACをMultiprobe IIexロボット(Packard,Meriden,CT)を用いて再配列させた。小さいメンブレン(8cm×12cm)を、6×6のダブルオフセットパターンにグリッド化して、個々に目的のマーカーとハイブリダイズさせた。マクロを含むExcelファイルにトレンスペアレンシーを用いて陽性のパターンを移してBAC対マーカーの関連を得た。ハイブリダイゼーション、フィンガープリントおよび配列データを組み合わせることによって視覚的なマッピングを作成した。ギャップに近いBAC末端配列から新規なマーカーを生成した。数回のハイブリダイゼーション後、陽性のBACを、約20Mbにまたがる7つのコンティグにアセンブルした。連結に用いた多形性マーカーのうち30個をこのコンティグのうちの4つに割り当てた。コンティグの長さおよびこれらに割り当てられたマーカーの間の距離の評価は、FPCプログラムに基づいた。
本発明者らの30の連鎖マーカーのうち27個は、UCSC、UC Santa Cruz(UCSC)ドラフトアセンブリからの2000年10月リリースにおける3つのコンティグにマッピングした。このコンティグ内のマーカー順序は、2つのマーカーを除けば本発明者らの順序と一致する。UCSCアセンブリは改善されているが、いくつかのコンティグは不正確な順序、配向またはコンティグアセンブリを有する。本発明者らは、高い解像度の遺伝子マッピングおよびおそらくは集中的なハイブリダイゼーション実験が配列アセンブリの精度を確認するのに依然として必要であると考える。さらに高い解像度の遺伝子マッピングによって、連鎖解析にも重要であるマーカー間遺伝子距離のさらに良好な評価が得られる(Halpern,J.および Whittermore,A.S.,Hum.Hered.49:194(1999);Daw,E.Wら、Genet.Epidemiol.19:366(2000))。
連鎖解析のための統計学的方法
この解析ではマルチポイントのアフェクテッドオンリーアレルシェアリング法を用いて連鎖の証拠を評価した。LOD−スコアおよびノンパラメトリック連鎖(NPL)スコアの両方の全ての結果は、プログラムAllegro(Gudbjartssonら、Nat.Genet.25:12−3,2000)を用いて得られた。本発明者らのベースラインの連鎖解析は、以前に記載されるように(Gretarsdottirら、Am J Hom Genet,70:593〜603,2002)、Spairsスコアリング関数(Whittemore,A.S.,Halpern,J.(1994),Biometrics 50:118〜27;Kruglyak Lら(1996),Am J Hum Genet 58:1347〜63)、指数関数的アレルシェアリングモデル(Kong,A.およびCox,N.J.(1997),Am J Hum Genet 61:1179〜88)および対数スケールで各々の影響する対の等しい重み付けと各々の家族の等しい重み付けとの間で中間である、家族重み付け(family weighting)スキームを用いる。本発明者らが用いる情報測度は、Allegroプログラム出力の一部であり、そして情報の値は、これらのマーカー遺伝子型が完全に同一の場合、ゼロに等しく、そしてこれらの遺伝子型が、影響された親類の間で適切に正確な量のアレルシェアリング(対立遺伝子共有)を決定する場合、1に等しい(Gretarsdottirら、Am.J Hom.Genet,70:593〜603,(2002))。本発明者らは、P値を2つの異なる方法で計算して、有意な結果が無いことをここに報告する。最初のP値を、大標本理論に基づいて計算した;Z1rの分布=√(2[loge(10)LOD])は、連鎖なしのヌル仮説下で標準の正常な変数に近づく(Kong,A.およびCox,N.J.(1997),Am J Hum Genet 61:1179〜88)。観察されたLODスコアとその完全なデータサンプリング分布とをヌル仮説下で比較することによって第二のP値を算出した(Gudbjartssonら、Nat.Genet.25:12〜3,2000)。この場合のように、データが2〜3家系よりも多くから構成される場合、これらの2つのP値は極めて同様になる傾向である。
最終連鎖の結果および局在化
deCODEマーカー順序を用いる高密度マーカーからの遺伝子型を含む連鎖解析によって、マーカーD5S2080で染色体5q12上で、4.40(P=3.9×10−6)のロッドスコアが得られた。報告されたP値は、deCODEで開発されて過去3年間にわたって世界的に標準の連鎖プログラムとなっているALLEGRO(deCODE genetics)プログラムの出力の一部である(Gudbjartssonら、Nat.Genet.25:12〜3,2000)。本発明者らは、これを200を超える世界中の学術的機関に無料で配布しており、これは広く用いられている。この遺伝子座はSTRK1と命名されている。これらの特別なマーカーの追加によって、ロッドの1ドロップによって規定されるように、この領域をD5S1474からD5S398の6cM未満のセグメントへ絞り込むことが可能になった。
この脳卒中に対して罹患性の遺伝子座の寄与をさらに検討するために、ある範囲のパラメトリックモデルをこのデータに適合させた。しかし、全ての解析は、個々が影響されたかまたは未知の疾患状態を有するとして分類されたという意味で、依然としてアフェクテッドオンリー(affected only)であった。ドミナントモデルを用いて4.08のロッドスコアを得たが、ここでは罹患性遺伝子の対立遺伝子頻度を、5%であると仮定して、変更のキャリアは、非キャリアの7倍のリスクを有すると推定した。個々の家系を検査したが、連鎖結果に対して寄与する可能性のある家系の間では、高血圧、糖尿病または高脂質血症の有病率との明白な相関は見出されなかった。出血性脳卒中患者を除いたデータを用いて再解析した場合、アレルシェアリングロッドスコアは、D5S2080で4.86に増大した。対数スコアにおける0.46の増大によってSTRK1は、虚血性脳卒中およびTIAに主に関与することが示唆されるが、シミュレーションに基づけば統計学的に有意ではない(片側Pが0.09に等しい)。ロッドスコアにおけるこのような変化が偶然生じる可能性があるか否かを評価するために、本発明者らは、22例の患者の1000の無作為なセットを選択して、次いで、その状態を解析において「未知(unknown)」に変えた。本発明者らの示すP値は1000シミュレーションの一部であって、これによって、22の出血性脳卒中患者の影響状態を「未知」に変化させることにより本発明者らが観察した以上のピーク遺伝子座でのロッドスコア増大が得られる。
対立遺伝子関連の同定
約6cMの間隔の全てのマイクロサテライトマーカー(D5S398〜D5S1474のマーカー)を、対立遺伝子の関連に関して解析した。
マイクロサテライト対立遺伝子関連
本発明者らは最初に、全部で98個のマイクロサテライトマーカーを用いて、864例のアイスランドの脳卒中患者および908例のコントロールを遺伝子型特定した。これらのマーカーは、約11Mbの領域にわたって分布する。この領域は、本発明者らの連鎖ピークに集中して、2 LODドロップに相当する。マーカーの密度は、1LODドロップを含む、この領域の中央の3.7Mb部分においてさらに大きく、1マーカーの平均間隔は53kbずつである。本発明者らは、マーカーD5S1474およびD5S398に隣接するこの中央領域を、STRK1インターバルと命名している。3つのマーカーAC027322−5、D5S2121およびAC008818−1は、患者とコントロールとの間で対立遺伝子の頻度の相違を示し、これは0.01未満のp値であった(表1)。アイスランドの患者の関連性について補正することによって、p値への影響は小さかったが、検定されたマーカーおよび対立遺伝子の数についての補正の後、これらのp値の有意性はなかった(表1)。
本発明者らは、出血性脳卒中患者を除いた場合、有意ではないが、本発明者らの連鎖ピークが増大したことを以前に観察した。従って、本発明者らは、マーカーに対する関連について虚血性脳卒中またはTIAを有する患者のみを検定した。さらに、本発明者らの虚血性脳卒中およびTIA患者は、TOAST検索基準によって小分類されて、本発明者らはまた、3つのTOASTサブカテゴリー:心原性、頸動脈(70%狭窄より大きい)および小血管閉塞疾患を有する患者について、別々に関連解析を繰り返した。最後に、本発明者らは、心原性脳卒中を有する患者および頸動脈脳卒中を有する患者との組み合わせを検定した。なぜなら、脳卒中のこれらのカテゴリーはほとんど明白にアテローム性動脈硬化症に関連するからである。これらの関連研究の各々についての結果を表1に示す。3つの検定は、1つが心原性脳卒中(AC008818−1)について、1つが頸動脈脳卒中(DG5S397)について、そして1つが頸動脈と心原性脳卒中の組み合わせについて(AC008818−1)であって、複数の検定について、補正した後でさえ有意であった(表1)。マーカーDG5S397は、PDE4D遺伝子内に位置し、AC008818−1は、PDE4Dの5’末端および重複する遺伝子前立腺アンドロゲン調節性転写物(PART1)にあり、その転写物は反対方向にすすむもう一方の鎖にある。PDE4Dは、cAMPの細胞内レベルの重要な調節因子であり、そして広く発現されている。PART1は、前立腺において、そしていくつかの癌細胞株において優性に発現される未知の機能を有する推定タンパク質をコードする。全ての遺伝子型特定されたマーカーならびにPDE4DおよびPART1エキソンの物理的な位置は、表2Cにおいて利用可能である。頸動脈および心原性の脳卒中の組み合わせについての関連の結果は、特に顕著であって、マーカーAC008818−1の対立遺伝子0(CEPH参照対立遺伝子)について患者の35.5%の対立遺伝子頻度に対してコントロールにおいては25.5%であった。このマーカーについての未修正のp値は0.0000015であり、マーカーの複数の検定のための修正後は、0.00025である(表1)。これは、研究したいくつかの表現型についての修正後でさえ有意なままである。このマーカーの他の対立遺伝子に対するこの対立遺伝子のリスクは、複合モデルTerwilliger,J.D.およびOtt,J.A haplotype−based「haplotype relative risk」approach to detecting allelic associations.Hum Hered 42,337〜46(1992)、ならびに、Falk,C.T.およびRubinstein,P.Haplotype relative risks:an easy reliable way to construct a proper control sample for risk calculations.Ann Hum Genet 51(Pt 3),227−33(1987)を仮定すれば、1.60であると見積もられ、そして対応する人口寄与危険度は25%であった。
従って、本発明者らの最初のマイクロサテライト関連研究からの強力な関連シグナルによって、STARK1インターバルに対して、そして詳細にはPDE4D遺伝子領域に対して本発明者らが注意を集中することとなった。
対立遺伝子番号:SNP対立遺伝子については、A=0、C=1、G=2、T=3であり;マイクロサテライト対立遺伝子については、CEPHサンプル1347−02(CEPHゲノミクス貯蔵所(repository))を参照として用いる、このサンプルにおける各々のマイクロサテライトの下位の対立遺伝子を0に設定して、他のサンプルにおける全ての他の対立遺伝子をこの参照に関して番号付けする。これにより対立遺伝子1は、CEPHサンプル1347−02における下位の対立遺伝子よりも1bp長く、対立遺伝子2は、CEPHサンプル1347−02における下位の対立遺伝子よりも2bp長く、対立遺伝子3は、CEPHサンプル1347−02における下位の対立遺伝子よりも3bp長く、対立遺伝子4は、CEPHサンプル1347−02における下位の対立遺伝子よりも4bp長く、対立遺伝子-1は、CEPHサンプル1347−02における下位の対立遺伝子よりも1bp短く、対立遺伝子-2はCEPHサンプル1347−02における下位の対立遺伝子よりも2bp短い、以下同様。この同じCEPHサンプルは、対立遺伝子の較正および比較のために世界中で広範に用いられる標準であることに注目のこと。
AC008818-1アンプリマー:
TGCTTGGTGAAGGAATAGCCACCCCAGAGAAGGAGTATGGACTTCTATACACAATCATTCATTCATTCATTCATTCATTCATTCATTCATTCATTCACTACTCATGCATGATCTTTGTCCTTATCTTCCTCCACTGTCACATGAATACCCACCCACTGCACCTACCTGCTTCCTATTCCTGAGAACCCAGGCTC (配列番号: 86)
AC008818−1、対立遺伝子0は、CEPH1347−02、ファミリー137、個体02に観察される最小対立遺伝子と同じ対立遺伝子である。
スウェーデンの患者も、遺伝子型特定されており、マイクロサテライトの単一のおよび複数のマーカー関連は、E−Mアルゴリズムを用いて解析されている。943例のスウェーデン患者の総数(脳卒中患者および頸動脈狭窄を有する患者)および322例のスウェーデン人コントロールを解析した(表2Aに示される結果)。少なくとも3つのハプロタイプは、コントロールと比較して患者ではさらに一般的であって、このことによってPDE4Dは、脳卒中に対する関連を示すことが第二の集団において確認されている。
PDE4Dにおける多形性についてのスクリーニング
本発明者らは、PDE4D遺伝子における機能的なバリアントが、本発明者らの観察したマイクロサテライト関連の原因であり得るか否かを次に考慮した。本発明者らは、公的なドメインESTおよび本発明者ら自身のRT−PCRおよびRACE転写物を、STRK1インターバルの本発明者らの配列に対してマッチさせた。本発明者らは、新しい別のPDE4D転写物を規定したが、これが前に公知の転写物と一緒になって、PDE4D遺伝子が少なくとも1.5Mbにわたって22エキソンを含みPART1と重複することを示した。PDE4D遺伝子は、8つのタンパク質イソ型をコードして、少なくとも7つのプロモーターを有する。同定された全てのイソ型は、同一のC末端触媒性ドメインを有するが、N末端調節性ドメインで異なる(図2)。
本発明者らは、次いで、全ての公知のPDE4Dエキソン(重複するPART1エキソンを含む)および平均して100bpのその隣接するイントロンを、188例の患者および94例のコントロールにおいて配列決定することによって変異を同定することを試みた。46個の多形性;44個のSNPおよび2つのイントロンの欠失を同定した。両方ともSNPである、多形性のうち2つだけがPDE4D遺伝子のコードエキソン内で見出され、これは全ての4つのPDE4クラスについて他者が報告している変動の特別な欠失と一致する、Houslay,M.D.およびAdams,D.R.PDE4 cAMP phosphodiesterases:modular enzymes that orchestrate signalling cross−talk,desensitization and compartmentalization.Biochem J 370,1−18(2003)。2つのコードSNPを、さらなる患者およびコントロールについてタイプ分けした。しかし、これらのSNPは、脳卒中に対して有意な関連を示さなかった(表2B)。従って、脳卒中についてのリスクを与える機能的バリアントがPDE4D遺伝子に存在する場合、これは、転写、スプライシング、メッセンジャーの安定性または1つ以上のイソ型のメッセンジャー輸送に影響する調節領域内であってもよく、またはまだ本発明者らが同定していないエキソン内であってもよい。
PDE4Dイソ型発現
PDE4Dの公知のコードエキソンにおける機能的な変異を見出すことができず、本発明者らは、この遺伝子がこの領域の基礎にある関連の原因であるということを支持する他の可能性のある証拠を考慮することに興味があった。本発明者らは、種々のイソ型の発現レベルを研究するための実験を行なった−ここでは、患者とコントロールとの間の任意の有意差によって、PDE4Dの調節は、脳卒中の罹患性には重要な要素であることが、可能性として示される。本発明者らは、虚血性脳卒中またはTIAを有する無作為に選択された患者由来、およびコントロール由来のEBV形質転換B細胞株を用いた。本発明者らは、イソ型特異的な動的RT−PCR解析を行なって、83例の患者および84例のコントロールにおいて各々のイソ型を定量した。患者は原則的に虚血性脳卒中患者であって、そのうち32例が心原性脳卒中または頸動脈脳卒中を有した。全てのイソ型(PAN)に存在するエキソンにまたがる増幅によって評価されるとおり、総PDE4Dメッセンジャーレベルは、コントロールにおいてよりも患者において有意に低かった(p値=0.0021)ということを本発明者らは観察した。この低下は主に、PDE4D1、PDE4D2およびPDE4D5のイソ型のさらに低い発現に起因した。複数のPDE4Dイソ型の発現のこの重大な調節不全によって、本発明者らは、脳卒中に対するPDE4D遺伝子の関連について検討を続けることを非常に後押しされた。
本発明者らは、次にPDE4Dのイントロン領域および隣接領域においてSNPについて検索した。公的なNCBI SNPデータベースにおいて、または少なくとも94例の患者および94例のコントロールにおいて遺伝子の選択されたイントロン性および隣接する領域を配列決定することによってSNPを同定した。本発明者らは、637個のSNPSを最初に同定した。これらのSNPの多くは完全に相関しており、そのため本発明者らは、さらなる遺伝子型決定から多くの重複するSNPを除いた。極めて低いわずかな対立遺伝子頻度であるいくつかのSNPも無視した。これによって1セットの260 SNPが得られ、次いで、これを患者およびコントロールのコホート全体について遺伝子型決定した。有意な関連を有するマーカーの優勢度はこの遺伝子の5’末端に位置した。頸動脈の脳卒中についての1つのSNP(SNP5PDM76361;SNP83)、ならびに心原性および頸動脈脳卒中を合わせたものについての5つのSNP(SNP5PDM357221=SNP45,SNP5PDM361545=SNP41,SNP5PDM43741=SNP87,SNP5PDM29517=SNP89およびSNP5PDMSNP56)は、検定された全てのSNPについての調節後にさえ有意なままであった(表2D)。これらの重大なSNPの3つがエキソンD7−1に隣接し;他の3つがエキソンD7−2を含む100kb領域にある(物理的位置については表2Dを参照のこと)。2つの最も重要なSNPであるSNP45およびSNP41は、マイクロサテライトマーカーAC008818−1の6kb内であり、そして全ての3つの遺伝子マーカーのリスクのある対立遺伝子は、D'>0.9およびp値がほぼ0という強力な連鎖不均衡にある。相関関係の二乗(R2)は、2つのSNPの間で極めて高い(約0.93)が、各々のSNPとマイクロサテライトのリスクのある対立遺伝子との間では実質的に低い(約0.08)。これは、2つのSNPのリスクのある対立遺伝子の頻度が同様であり、マイクロサテライトのリスクのある対立遺伝子についてよりもかなり頻度が高いという事実に起因する。PDE4Dの5’末端周囲のLDブロック構造は、図13.1に提示される。本発明者らは、PDE4Dの最初の3つのエキソンおよびその直後の下流領域を包含する3つのブロックA、BおよびCを描写する。エキソンD7−3およびD7−2は両方ともブロックAにあり、一方D7−1(最初のエキソン)はブロックBにあるがブロックCとのその境界に近い。このブロック構造を考慮して、本発明者らは、この領域において脳卒中に対する罹患性に関連したハプロタイプを検討することを準備した。
ハプロタイプ解析
本発明者らのハプロタイプ解析への一般的アプローチは、NEsted MOdelsに適用された尤度に基づく推論を用いる工程を包含する。この方法は、本発明者らのプログラムNEMOにおいて実現され、これによって多くの多形性マーカー、SNPおよびマイクロサテライトが可能になる。この方法およびソフトウェアはケースコントロール研究のために特にデザインされ、この目的は種々のリスクを付与するハプロタイプ群を同定することである。これはまたLD構造を研究するためのツールでもある。
各々のハプロタイプを個々に探すのは別として、多くのマーカーから構築されたハプロタイプを検討する場合、意味のあるまとめとしてはしばしば、ハプロタイプを群に分けることが必要である。ハプロタイプ空間の特別の区分は、ある群内のハプロタイプが同じリスクを有するが、異なる群のハプロタイプは、異なるリスクを有し得ると仮定するモデルである。2つのモデル/区画は、1つの代替モデルがもう一方のヌルモデルに比べて細かい区分である場合、ネスト化されており、すなわち代替モデルによって、いくつかのハプロタイプは、異なるリスクを有するヌルモデルにおいて同じリスクを有すると仮定することができる。このモデルは、ヌルモデルが代替モデルの特別な場合であるという古典的な意味でネスト化されている。従って、伝統的な一般化された尤度比検定を用いて、代替モデルに対してヌルモデルを検定することができる。複合モデルを用いて、ハプロタイプhiおよびhjが同じリスクを有すると仮定された場合、fi/Pi=fj/Pjであって、ここでfおよびpは、それぞれ、影響された集団およびコントロール集団におけるハプロタイプ頻度を示すという仮定に相当するということに注目のこと。
フェーズにおける不確実性および失われている遺伝子型を取り扱うための1つの一般的な方法は、最初にハプロタイプカウントを推定して、次いでこの推定されたカウントを正確なカウントとして処理する2工程の方法であり、時には問題であり得る方法であって(例えば、以下の情報測度の節を参照のこと)、そして統計的な有意差を正確に評価するために無作為化が必要であり得る。NEMOでは、最大尤度推定、尤度比およびp値は、EMアルゴリズムの補助によって、これを失われているデータ問題として取り扱う観察されたデータについて、直接算出される。
NEMOによって区分化の完全な自由度が可能になる。例えば、統計学的解析についての方法の節に記載した第一のハプロタイプ問題は、h1が他のハプロタイプh2、....、hkと同じリスクを有するか否かを試験することを考慮する。ここで代替の分類化は[h1]、[h2、・・・、hk]であり、ヌル分類は、[h1、・・・、hk]である。同じ節における第二のハプロタイプ問題は、3つのハプロタイプh1=G0、h2=GXおよびh3=AXに関与し、そして焦点はh1とh2を比較することにある。代替の分類は[h1]、[h2]、[h3]であり、ヌル分類は[h1、h2]、[h3]である。図11.1において本発明者らが直面した実際の問題は、実際はそれよりわずかに複雑である。なぜなら対立遺伝子Xは、複合対立遺伝子であり、対立遺伝子0以外に5つの対立遺伝子を含み、従ってGXおよびAX各々が5つのハプロタイプに対応するからである。当業者は、データ処理段階でこれらの対立遺伝子を1つに折りたたんで、記載されているように試験を行なうことができた。これは完全に妥当なアプローチであり、実際、フェーズに関わる情報が失われていなければ、本発明者らが、折りたたむかどうかは重要ではない。しかし、実際のデータを用いれば、Xを構築する5つの対立遺伝子の各々が、SNP対立遺伝子と別々に相関しており、このことはフェーズに関するいくつかの部分的な情報を提供する。データ処理段階での折りたたみは、失われている情報の量を不必要に増大させる。実際に行なわれたのは、入れ子モデル/区画フレームワークにおいて自然である。h2をh2a、h2b、・・・・h2eに分けて、h3をh3a、h3b、...h3eに分ける。次いで、代替の分類は、[h1]、[h2a、h2b、...h2e]、[h3a、h3b、...h3e]であり、そしてヌル分類は[h1、h2a、h2b、...h2e]、[h3a、h3b、...h3e]である。同じ方法を用いて、図11.2および11.3における複合ハプロタイプを取り扱うが、ここではデータ処理段階での折りたたみは、オプションですらない。なぜならLcは、25個のSNPから構築された複数のハプロタイプを表すからである。ここで、本発明者らは、図11.1に示されるペアワイズ比較とは別に、[h1]、[h2a、h2b、...h2e]、[h3a、h3b、...h3e]という代替の分類 対 [h1、h2a、h2b、...h2e、h3a、h3b、...h3e]というヌル分類を用いた3元検定もまた実施できたということも言及したい。一般化された尤度比検定統計値は、1つではなく2つの自由度を有するであろうということに注意のこと。本発明者らは、実際に、この検定を行なって、それによって2.4×10-7というp値を得た。
測定情報
フェーズの不確実性および失われている遺伝子型に起因する情報の損失を捕捉した、観察されたデータについて直接計算された尤度に基づく尤度比検定は、有効なp値を得るために依存され得るにもかかわらず、不完全である情報に起因してどの程度の情報が失われているかを知ることは依然として重要である。興味深いことに、当業者は、自然にみえるがたまたま体系的に反保存的であるという統計的有意性を見積もる2段階手順を考慮することによって情報の損失を測定することができる。疾患のある集団と対照集団との間に相違が存在するという代替の仮説のもとで算出された集団ハプロタイプ頻度について本発明者らが最大尤度推定を算出するとしたら、そして疾患のあるサンプルと対照サンプルにおけるハプロタイプ数の観察された頻度の推定としてこれらの頻度推定を使用するとしたらどうであろう。次いで、あたかもそれらが現実の数であるかのようにこれらの推定のハプロタイプ数を扱う尤度比検定を本発明者らが行ったらどうであろうか。本発明者らはまた、フィッシャーの直接確率検定を行なってもよいが、その場合本発明者らは、これらの推定数が一般に整数でないために、四捨五入する必要があろう。この検定は、一般に反保存的である。なぜなら推定された数をそれらが正確な数であるかのように処理することは、この数に伴う不確定性を無視しており、有効なサンプルサイズを過大評価して、サンプリングの変動を過小評価しているからである。これは、Λによって示される、この方法で算出されたカイ二乗尤度比検定統計値が、方法に記載されたように観察されたデータから直接算出された尤度比検定統計値であるΛよりも一般に大きくなるということを意味する。しかしΛは有用である。なぜなら比Λ/Λは、期せずして情報の良好な測度となるか、または1−(Λ/Λ)は、失われている情報に起因して失われた情報の一部の測度であるからである。ハプロタイプ解析のためのこの情報測度は、連鎖解析のために規定された情報測度の自然な拡張としてNicolaeおよびKong, Technical Report 537, Department of Statistics, University of Statistics, University of Chicago, Revised for Biometrics(2003)に記載され、そしてNEMOで実行される。
ハプロタイプ関連性
本発明者らは、まず、全てブロックBにあって、6kbのみ隔てられている、最も有意に関連したSNPおよびマイクロサテライトであるSNP45、SNP41およびAC008818−1に基づいて、ハプロタイプを考慮した。驚くほどのことではないが、SNP45とSNP41との間の高度の相関を考慮して、本発明者らは、マイクロサテライト、およびより高い遺伝子型収量を有するSNPであるSNP45からなる2つのマーカーハプロタイプのみを考慮すれば十分であることを見出した。頚動脈および心原性の脳卒中の組み合わせについてのこの関連性研究の結果を図11.1に示す。便宜上、本発明者らは、マイクロサテライトAC008818−1のリスクのある対立遺伝子である0ではない対立遺伝子のジョイントセットを文字Xで表したことに注意されたい。従って、GXは、G0ハプロタイプを除いて、SNP45のGヌクレオチドを含む全てのハプロタイプの複合であると理解されるべきである。本発明者らのサンプルについては、A0ハプロタイプは存在しない。これによって対立遺伝子0は、SNP45の対立遺伝子Gを有するハプロタイプバックグラウンドに由来し、その後、対立遺伝子0を有する染色体に対するそれらの2つのマーカーの間に組み換えが生じなかったことが示唆される。AX、G0およびGXは、頚動脈および心原性の複合した脳卒中の表現型について有意に異なるリスクを有する。本発明者らは、GXを野生型とよぶ、なぜならGXは、最も一般的(対照で53.4%)であるからであり、そしてまた集団リスクとそれほど違わない中間レベルのリスクを有するからである。ハプロタイプG0はリスクが増大しており、AXは保護的であって、それぞれ野生型に対して1.46および0.70のリスクを有する。G0リスクは保護的なハプロタイプAXのリスクの2.07倍である。3つのペアワイズ比較の各々が、高度に有意であって、0.006〜7.2×10-8に渡るp値を有する。AXおよびGXの両方とも複合ハプロタイプであるにもかかわらず、A0ハプロタイプが存在しないので、AXハプロタイプはSNP45の対立遺伝子Aによって簡単にまとめることができるということが観察されることが興味深い。同様の理由で、G0ハプロタイプはAC008818−1の0対立遺伝子によって完全に決定される。また、各々の検定の情報内容(Info)を図11.1に示す。Infoと1との間の差違は、フェーズの不確実性および失われている遺伝子型に起因して失われている情報の測度である。Infoは図11.1における3つの検定の各々について1に極めて近いことに注意のこと。それはSNP45の結果でありAC008818−1は極めて強力なLDにある。より長いハプロタイプを含む、図11.2および11.3において後に提示される検定は、有する情報の内容がさらに少ないということに注意のこと。
本発明者らは次に、各々のブロック内の共通のSNPハプロタイプについてのリスクを同定して評価した。解析のこの部分のために、20%を超えるマイナーな対立遺伝子頻度を有するSNPのみを検討した。ブロックA(300kb)は、19個のかかるSNPを含み、ブロックB(200kb)は22個のSNPを、そしてブロックC(60kb)は25個のSNPを含んだ。2%以上の集団における推定頻度を有する各々のブロック内の全てのハプロタイプが同定されている。各々のブロック内に、10個未満のかかるハプロタイプが存在し、そしてそれらがそのブロックについての総ハプロタイプ頻度の約80%を占めた。同定されたハプロタイプの簡単な図式を図13.2に示しており、これらのハプロタイプのリスクおよび頻度は表3において利用可能である。ブロックA内に、SNP87単独よりも大きなリスクを有する共通のハプロタイプはない。最強のシグナルは、ブロックBおよびCにおけるハプロタイプについてであった。各々のブロックは、頚動脈および心原性脳卒中の組み合わせに有意に関連し、かつ約1.5の相対リスクを有するハプロタイプを含んだ。ブロックBにおける共通の、リスクのあるハプロタイプは、前に同定されたG0ハプロタイプのSNPバックグラウンドである。
ブロックCには有意な単一のマーカー関連性はないが、対照において15.4%の頻度を有する共通のハプロタイプが観察された。本発明者らは、このハプロタイプをHcと名付ける。SNP45およびAC008818−1ハプロタイプと組み合わせたHcの寄与の検討によって、別の興味深い観察が得られる。表記のために、Hcではない、ブロックCにおける25個のSNPによって規定される全てのハプロタイプは一緒に、複合ハプロタイプLcと示される。最初に、AXおよびHcは、少なくともこれらのサンプルにおいては、同じ染色体に一緒に存在せず(図11.3を参照のこと)、従ってブロックBおよびCは、独立には程遠いということに注意のこと。結果として、拡大された複合ハプロタイプAXLcは、AXと同じである。ハプロタイプG0は、2つの拡大されたハプロタイプG0Hcおよび複合G0Lcに分けることが可能であり、これは、図11.2に示されるように、有意に異なるリスクを有する(p値=0.0067)。さらに、G0のリスクの増大はG0Hcによって完全に説明されると考えられる。なぜならG0Lcは、GX=GXHc+GXLcと有意には異ならないリスクを有するからである(図11.2を参照のこと)。この観察によって、本発明者らは、図13.1のハプロタイプ分類を図13.3によって示される分類へ絞り込むことが可能になる。拡大された、リスクのあるハプロタイプG0Hc(対照で8.8%)および保護的な複合ハプロタイプAXLc(対照で21.1%)は、野生型(対照で70.1%)と比較して、それぞれ、1.98および0.68の相対リスクを有する。これらのリスク見積もりに基づいて、全員のリスクが保護的バリアントのホモ接合体キャリアのリスクに相当するように作製され得る場合、症例の数は55%低下され、これは複合されたリスクのあるハプロタイプおよび野生型の人口寄与危険度と解釈され得る。
リスクのあるハプロタイプG0Hcは、約64kbの領域にまたがる。リスクの増大は、その領域にわたる複数の多形性に起因する可能性があるが、その結果はまた、そのハプロタイプの背景に存在する、まだ同定されていない比較的最近の変異と一致し、その後、この変異を有する染色体についてのその拡大された領域には組み換えが生じない。対照的に、保護的な複合ハプロタイプAXLcは、SNP45の対立遺伝子Aによって単純に表され得る。従って、機能的バリアントは単に、SNP45の対立遺伝子Aと強力なLDにあり、まだ同定されていない可能性があるが、SNP45の対立遺伝子Aは、機能保護的なバリアントである可能性がある。実際、統計的には、SNP45およびSNP41の効果は、相互に識別不能である。
統計学的解析
疾患に対する単一のマーカー関連性について、フィッシャーの直接確率検定を用いて各々の個々の対立遺伝子について両側p値を算出した。全てのp値を、特に示されない限り複数の比較について調整せずに示した。示された頻度(マイクロサテライト、SNPおよびハプロタイプについて)は、キャリアの頻度ではなく対立遺伝子頻度であった。連鎖解析のための家系として補充された患者の関連性に起因するあらゆるバイアスを最小にするために、本発明者らは、患者リストから一等親および二等親血縁者を排除した。さらに、本発明者らは、Risch, N.およびTeng, J.(Genome Res., 8: 1278〜1288 (1998))に記載される分散調整手順を拡大することによって患者間の任意の残りの関連性について関連の補正の検定を繰り返した。一般的な家系の関係に適用され得、比較のための調整されたおよび未調整のp値の両方を示し得るような、同胞群に関する複合のヒト疾患I DNAプーリングの連鎖不平衡研究についての家系に基づくデザインおよびケース対照デザインの強度比(同書)。この相違は、期待されるよりも一般にかなり小さい。複数の検定について補正された単一のマーカー関連の有意性を評価するために、本発明者らは、同じ遺伝子型データを用いて無作為化検定を行なった。本発明者らは、患者および対照のコホートを無作為化して、関連解析をやり直した。この手順を500,000回まで繰り返し、また本発明者らが示したp値は、いくつかのマーカー対立遺伝子についてp値を作成した複製の一部であり、これは、もとの患者および対照のコホートを用いて本発明者らが観察したp値以下である。
単一のマーカーおよびハプロタイプの解析の両方のために、相対リスク(RR)および人口寄与危険度(PAR)を、複合モデル(ハプロタイプ相対リスクモデル)、すなわち、2つの対立遺伝子/ハプロタイプを担持する人のリスクは増えることを仮定して算出した(Terwilliger, J.D.およびOtt, J., Hum Hered,42, 337〜46 (1992)、ならびにFalk, C.T.およびRubinstein, P, Ann Hum Genet 51(Pt 3),227〜33 (1987))。例えば、RRがaに対するAのリスクであるならば、ホモ接合性AAの人のリスクは、ヘテロ接合性AaのリスクのRR倍であり、ホモ接合性aaのリスクのRR2倍である。複合モデルは、解析および計算を簡単にする素晴らしい特性を有する − ハプロタイプは独立しており、すなわち、ハーディ・ワインバーグ平衡においては、疾患のある集団内および対照集団内である。結果として、疾患のある人々および対照の各々のハプロタイプ数は、多項分布を有するが、代替の仮説では異なるハプロタイプ頻度を有する。特に、2つのハプロタイプhiおよびhjについて、リスク(hi)/リスク(hj)=(fi/pi)/(fj/pj)であり、式中fおよびpは、それぞれ、疾患のある集団における、および対照集団における頻度を示す。真のモデルが倍数性ではない場合、ある程度の出力の損失が存在するが、この損失は極端な場合を除いて軽度である傾向がある。最も重要なことには、p値は常に妥当である。なぜなら、それらはヌル仮説に関して計算されるからである。
一般に、ハプロタイプ頻度を最大尤度によって推定して、患者と対照との間の差違の検定を、一般化された尤度比検定を用いて行なう(Rice, J.A. Mathematical Statistics and Data Analysis, 602(International Thomson Publishing,(1995))。NEMOと呼ばれるdeCODEのハプロタイプ解析プログラムは、NEsted MOdelsを意味するが、これを用いて、提示された全てのハプロタイプ結果を計算した。フェーズの不確実性および失われている遺伝子型を取り扱うために、本発明者らは、おそらくはEMアルゴリズム、Dempster(A.P., Laird, N.M.およびRubin, D.B., Journal of the Royal Statistical Society B, 39, 1〜38 (1971))の使用による、ハプロタイプの数を最初に評価する関連検定に対する一般的な2段階アプローチを使用せず、次いで検定を行い、あたかもそれらが真の数であるかのように見積もられた数を処理するということを強調する。この方法は時には問題であり、統計学的有意性を適切に評価するには無作為化が必要であり得る。代わりに、NEMOでは、最大尤度推定、尤度比およびp値は、観察されたデータについてEMアルゴリズムの補助によって直接計算され、従って、フェーズの不確実性および失われている遺伝子型に起因する情報の損失は尤度比によって自動的に捕捉される。たとえそうでも、どれほどの量の情報が保持されているか、または不完全な情報に起因して失われているかを知ることは重要である。尤度のフレームワークのもとで自然であるような測度が、本明細書に記載される。固定されたセットのマーカーについては、本発明者らは最も簡易な検定を行ない、表3に示される結果で、1つの選択されたハプロタイプを他の全てに対して比較する。選択されたハプロタイプh1および他のハプロタイプh2、....、hkを呼び出す。p1、...、pkによって、対照におけるハプロタイプの集団頻度を示させ、そしてf1、...、fkによって、疾患のある人々におけるハプロタイプの集団頻度を示させる。ヌル仮説のもとで、全てのiについてfi=piである。検定のために本発明者らが用いる代替のモデルは、h2、・・・、hkが同じリスクを有するが、h1は、異なるリスクを有することが可能であると仮定する。これは、p1が、i=2、...、kについてf1、fi/(f2+...+fk)=pi/(p2+...+pk)=βiとは異なってもよいことを意味する。rによってf1/p1を意味して、β2+...+βk=1であることに注目すれば、一般化された尤度比に基づく検定統計値は、

であり、ここでlは、loge尤度であり、そしておよび^は、それぞれヌル仮説および代替の仮説での最大尤度推定を示す。Λは、ヌル仮説下で、1−dfを有する、漸近的にカイ二乗分布を有して、これを表3に示されるp値を算出するために用いた。図11に示される検定は、さらにわずかに複雑にされたヌル仮説および代替の仮説を有する。図11の結果については、h1をG0、h2をGX、かつh3をAXとする。GXに対してG0を比較する場合、すなわち、これは1.46の推定RRおよびp値=0.0002を与える検定であり、ヌルはG0およびGXが同じリスクを有するが、AXは異なるリスクを有するようにされると仮定する。代替の仮説によって全ての3つのハプロタイプ群が異なるリスクを有することが可能になる。このことは、ヌル仮説下では、f1/p1=f2/p2であるか、またはw=[f1/p1]/[f2/p2]=1であるという制限があることを意味する。一般化された尤度比に基づく検定の統計値は

であり、これはやはりヌル仮説下で、1−dfを有するカイ二乗分布を、漸近的に有する。h2およびh3が複合ハプロタイプであることに起因して、検定に対して実際に余分な複雑性がある。すなわち、入れ子モデルのフレームワークのもとで自然の方式で取り扱われる。図11.2および11.3に示される他の検定は同様に行なった。
SNPの対の間のLDは、D'およびR2の標準的な定義を用いて算出された(Lewontin, R., Genetics 49, 49〜67(1964)およびHill, W.G.およびRobertson, A. Theor. Appl. Genet. 22, 226〜231 (1968))。NEMOを用いて、2つのマーカー対立遺伝子組み合わせの頻度は、最大尤度によって推定され、そして連鎖平衡からの偏差は、尤度比検定によって推定される。D'およびR2の定義は、対立遺伝子の周辺確率によって重み付けされた2つのマーカーの全ての可能な対立遺伝子の組み合わせについて値を平均することによってマイクロサテライトを含むように拡大された。特定の領域におけるLD構造を説明する全てのマーカーの組み合わせをプロットする場合、本発明者らは、左上の角にD'を、そして右下の角にp値をプロットする。このLDプロットにおいて、本発明者らは、マーカーがその物理的位置に従うのではなく等距離にプロットされることを示す。
表3 PDE4D遺伝子の5’末端でのハプロタイプの多様性
LDが強い3つの各ブロック中、2%より高い集団頻度を有することが示されている全てのハプロタイプ、ならびに心原性および頚動脈脳卒中の組み合わせ対対照を比較したハプロタイプ関連性の結果。
ブロックA:
ブロックB:
ブロックC:

2つの最も重要なハプロタイプにおける対立遺伝子の定義およびSNPの多形性(ブロックBおよびCにおいて)。
上記に示した解析によって、データの保存的な解析が示される。なぜなら、これによって20%より高いマイナーな対立遺伝子頻度を有するSNPに対して解析が制限されるからである。この5プライム領域における脳卒中に対するPDE4Dの寄与の大きさをさらに理解するために、本発明者らは、遺伝子型決定のために選択された全てのSNPを含む、かかる制限なしに解析を繰り返した。本発明者らは、虚血性脳卒中、頚動脈および心原性脳卒中の2つの主なサブタイプについてSNPハプロタイプを見出した(表3、ブロックC)。これは、5 SNPのハプロタイプであり、48kbの領域をカバーして、イソ型PDE4D7の推定されたプロモーター領域をカバーする5’エキソンのちょうど上流である。これはマーカーAC008818−1についての0対立遺伝子と同じ情報を捕捉する。しかし、SNPハプロタイプは、これがさらに高い相対リスク、すなわち2.3を有するという意味でさらに特別である。このハプロタイプは、47%の患者によって有されており、そして0.25という同じ人口寄与危険度(PAR)を有する。SNPの多形性および対立遺伝子は表4に示される。
表4A
表4B
マイクロサテライトマーカーの配列は次の通りである:
AC008879-2 アンプリマー:
ACAAAGAGCACCTTTCCAGTGGACAACTAACTAAAGTGGTGTGATTTTGGTATAAGTTTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTTGTGTGTGTGTGTATGTGTATACATTTAGTTTTATTGTAACAAAGCAACTTGTACTTTTCACGTTTAAAA (配列番号:85)
* AC008879-2, 対立遺伝子0はCEPH 1347-02、ファミリー137、個体02で観察された最小の対立遺伝子と同じ。
まとめると、この単一のSNPハプロタイプ(上記で見出されたいくつかのうちの1つのハプロタイプのみであるが、おそらく脳卒中に対して最も緊密に関連する)は、心原性および頚動脈の脳卒中について個体のリスクの2倍より大きく、アイスランドにおけるかかる脳卒中の25%を占める。上記の他のハプロタイプによって、脳卒中のさらなるリスクが提供される。このハプロタイプのリスク(risk haplotype)の大きさは、高血圧、糖尿病、高脂質血症および喫煙のような脳卒中の周知の臨床的リスクファクターに匹敵するかそれよりも高い。
これらのSNPは、心臓塞栓および大血管の疾患の患者において、強い関連性を示す。
表5および表6は、配列中の、以前から公知のマイクロサテライトマーカーおよび新規のマイクロサテライトを示す。順方向および逆方向のプライマーを示す。
表5 配列中の、以前から公知のマイクロサテライトマーカー

* 製品サイズ194、テトラヌクレオチドの繰り返し
** 製品サイズ150;ジヌクレオチドの繰り返し
表7
マーカーAC008818-1、SNP45およびSNP41に対する、リスクのある対立遺伝子の間の相関。
リスクのある対立遺伝子である、マーカーAC008818-1に対する対立遺伝子0、SNPに対する対立遺伝子G、およびSNP41に対する対立遺伝子AのLD(相関)の推定値。これらのマーカーは、最も有意に疾患に関連する3つの遺伝子マーカーである。
A.心原性および頚動脈の組み合わせの患者

B.対照
表8
リスクファクターの関連性。
マイクロサテライトAC00818-1のリスクを有する対立遺伝子0、SNP45対立遺伝子AおよびハプロタイプG0Hcそれぞれと、様々なリスクファクターとの関連性。
患者はリスクファクターを有する脳卒中患者であり、対照はリスクファクターを有さない脳卒中患者である。p値は両側である。
脳卒中遺伝子同定の考察
系統学、広範に規定された脳卒中患者の包括的な集団ベースのリスト、およびノンパラメトリックアレルシェアリング法を組み合わせて、公知の最も複雑な疾患のうちの1つについて第5染色体に対して主な遺伝子を首尾よくマッピングした。次いで本発明者らは、大規模ケース対照関連研究を用いて、PDE4Dがこの位置の遺伝子であり、脳卒中の実質的なリスクを付与する遺伝子であることを示した。これは、脳卒中の一般的な形式についてこれまでにマッピングされ単離された最初の遺伝子である。この遺伝子座に対する家系の寄与と高血圧、糖尿病または高脂血症との間には相関はなかった。またこの遺伝子は、これらのリスクファクターに寄与するいずれの公知の遺伝子にも適合しない。本研究で研究された脳卒中のタイプは、脳卒中のまれな形態にも、またはアイスランド特異的な形態にも影響しない;むしろアイスランド人の脳卒中表現型の多様性およびリスクファクターは、ほとんどの他の白人種集団のそれと同様である(Agnarsson, U.ら、Ann. Intern. Med., 130: 987 (1999); Eliasson, J.H.ら、Loeknabladid, 85: 517〜25 (1999); Sveinbjornsdottir, S.ら、Systematic registration of patients with Stroke and TIA admitted to The National University Hospital, Reykjavik, Iceland, in 1997, XIII. Meeting of the Icelandic Association in Internal Medicine, Akureyri, Iceland(Valdimarsson,E.M.ら、Loeknabladid 84: 921 (1998))。
一般的集団における疾患ハプロタイプのリスクおよび頻度の大きさによって、本発明者らが、脳卒中の共通の形態であって脳卒中のいくつかのまれな形態ではない形態について遺伝子をマッピングしたことを確認した。この遺伝子は一般における一人の脳卒中のリスクのほとんど2倍であり、脳卒中の2つの最も一般的なサブタイプである頚動脈および心原性の脳卒中についての一人のリスクの2倍を超える。さらに、最も一般的な疾患ハプロタイプは、25%という人口寄与危険度を有し(これは、患者の25%を占めることを意味する)、そして本発明者らが本明細書において記載しており、より一般的でなく、他の患者の原因である他のハプロタイプが存在する。従って、PDE4Dは、脳卒中の主な原因であり、そしてその相対リスクは、高血圧、喫煙、糖尿病および高脂血症の相対リスクに対抗する。PDE4Dは、アテローム性動脈硬化症(頚動脈および心原性脳卒中)に依存する脳卒中の形態に対してより緊密な相関を示し、そして血管平滑筋細胞、マクロファージおよび内皮細胞のようなアテローム性動脈硬化症にとって重要であることが公知の細胞タイプで発現される。これによって、PDE4Dの変動が脳卒中のリスクに有する強力な効果は、アテローム性動脈硬化症の血管生物学におけるその役割によるということが示唆される(実施例の最後の考察を参照のこと)。実施例2は、PDE4D遺伝子全体の本発明者らの配列決定ならびに新規なおよび古いcDNAに基づくエキソン−イントロン構造の定義を詳述し、また実施例3は、PDE4Dイソ型の発現パターンが、脳卒中関連ハプロタイプと相関するということを示す。
実施例2:ヒト遺伝子およびそのRNA/タンパク質イソ型の配列決定および特徴づけ
脳卒中遺伝子領域の配列
本発明者らの研究の開始時点で、脳卒中遺伝子領域をカバーする公的ドメインにおいて利用可能なゲノム配列はほとんど存在しなかった。従って、本発明者らは、ロッドにおける1ドロップによって規定される約3Mbの領域を配列決定した。ゲノムワイドスキャンにおいて示された5q12上の遺伝子座は、細菌人工染色体(BAC)を用いて物理的にマッピングした。20cMの領域についての重複するクローンのセットを、ハイブリダイゼーションおよびBACフィンガープリントウォーキングの組み合わせを通じてアセンブルした。1つのLODインターバルの最小タイル方式パスをカバーする18個のBAC(細菌人工クローン)(RP11−164A5、RP11−188I15、RP11−313P15、RP11−631M6、RP11−103A15、RP11−489L13、RP11−621C19、RP11−113C1、RP11−567M18、RP11−412M9、RP11−151G2、RP11−151F7、RP11−281M3、RP11−421L6、RP11−1A7、RP11−68E13、RP11−379P8、およびRP11−422K3)を、ショットガンクローニングおよび配列決定を用いて、解析した。蛍光自動化DNA配列決定のためにダイターミネーター(ABI PRISM BigDye)化学を用いた。ABIプリズム377配列を用いてデータを収集して、Phred/Phrap/ConsedソフトウェアパッケージをPolyphredソフトウェアと組み合わせて用いて配列をアセンブルした(表10および11を参照のこと)。この領域由来の公的に利用可能な配列(AC008836、AC073546、AC021603、AC008498、AC016435、AC021601、AC016591、AC008818、AC008879、AC008934、AC011929、AC027322、AC008111、AC020924、AC026693、AC012315、AC08804、AC008791、AC020975、AC008833、AC008829、AC022125、AC008790、AC026095、AC066693、AC008852、AC016642、AC034250、AC025179、AC08814、AC008926、AC010391、AC016635およびAC016604)を、得られた配列とアセンブルして、3.7Mbの配列(22のギャップを有する)を生成した。STRK1遺伝子座の本発明者らの配列に対する現在の公的なヒトアセンブリ(NCBI BUILD 33)の比較ではわずかな不一致しか示さなかった。
本発明者らが配列決定したBACクローンは、RCPI−11 ヒトBACライブラリー(Pieter deJong, Roswell Park)由来である。用いたベクターは、pBACe3.6であった。このクローンを、LB/クロラムフェニコール(25μg/ml)/グリセロール(7.5%)を含む94ウェルマイクロタイタープレートに拾い上げ、配列決定を通じて単一のコロニーを陽性として同定した後に−80℃で保管した。次いで、このクローンを適切な抗生物質であるクロラムフェニコール(25μg/ml)/スクロース(5%)を有するLBアガープレート上にストリークしてもよい。
表9A

「コメント」欄の手がかり:
1=このBACは公的に入手可能な配列を有し、
これはDecodeで配列決定して配列が正しいことを確認した。
2=このBACに関しては、BACの末端配列のみが公的に入手可能である。
表9B
PDE4D遺伝子;新規なエキソンおよびスプライスバリアントの同定
遺伝子、ヒトcAMP特異的ホスホジエステラーゼ4D(HPDE4D)をGenBank由来のcDNA/ESTデータベースを用いて本発明者らの新規なゲノム配列のBLASTによって配列決定された領域において同定した。さらに、本発明者らは、RT−PCR反応および5プライムおよび3プライムのRACE反応を、ヒト大動脈を含む種々の組織から生成したcDNAライブラリーを用いて行なった。用いたプライマー部位は、公知のエキソン、またはGenscanおよびFgeneを用いて本発明者らのゲノム配列から推測されたエキソンに相当した。本発明者らは、いくつかの新規のcDNAを見出し、そしてPDE4Dおよびその周囲の3Mbの配列に対してそれらをマッチングさせた。これまでのところPDE4Dの全ての公知のおよび新規なエキソンをカバーするゲノム配列は約1,550,000塩基長である。
本発明者らは、すでに公知の転写物と一緒に新規な別の転写物を規定したが、これは、PDE4D遺伝子が少なくとも1.5Mbにわたって22個のエキソンを含み、そしてその転写物が5’末端でもう一方の鎖にあるPART1遺伝子と重複することを示した。PDE4D遺伝子は、少なくとも7つのプロモーターを有し、そして8つのタンパク質イソ型をコードする。全てのイソ型が同一のC末端触媒性ドメインを有するがN末端調節性ドメインは異なる。8つの形態のうちの6つがいわゆる長型イソ型である。それらの各々は、固有のN末端調節性ドメインを有するが、それらの全てが、全てのPDE4サブファミリーにおいて見出される2つの高度に保存された領域、すなわち上流の保存された領域1および2(UCR1および2)によって特徴付けられる。6つの長型は、固有の別の5プライムエキソンによって互いに異なり、これによって対応する5プライムエキソンの各々の上流である6つの別のプロモーターが予測される。残りの2つはいわゆる短型形態であり、UCR1を欠くバリアントである(Houslay, M.D.およびAdams, D.R., Biochem J, 370, 1〜18 (2003))。5つのすでに公知のイソ型は0.9Mbのセグメントにわたって分布した17のエキソンによってコードされる。
3つの新規なエキソンであるD7A−1、D7A−2およびD7A−3を互いに対してスプライシングし、エキソンLF1上に一緒にスプライシングしてスプライスバリアントを形成し、PDE4D7と名付けた(図3)。エキソンD7−1は非コードである。エキソンD8およびD9を、それ自体によってエキソンLF1上にスプライシングして、2つのスプライスバリアントを形成し、それぞれPDE4D8およびPDE4D9と名付けた(図3)。
ゲノム構造に関して、D7Aエキソンは、PDE4Dの5’末端に590,000bp延在し、D8およびD9エキソンは、エキソンD3とLF1との間にある(表2Cにエキソンの物理的位置を示す)。新規なPDE4D7イソ型は、LF1に延びるオープンリーディングフレームを有し、これによってさらなる91アミノ酸がこの推定タンパク質のN末端で生じる。D8およびD9 5’エキソンは、長い5’UTRを、続いてこのエキソンの末端付近にATGを含み、これがORFをLF1に伸ばし、これによって、それぞれPDE4D8およびPDE4D9という推定タンパク質において22アミノ酸および30アミノ酸の新規なN末端セグメントが得られる。この新規なスプライスバリアントを異なるcDNA組織パネルに関するRT−PCR、ならびにこの産物の引き続くクローニングおよび配列決定によって確認した。
PDE4D遺伝子は、少なくとも8つの異なるイソ型をコードする。8つの形態のうちの6つがいわゆる長型イソ型である。その各々が固有のN末端調節ドメインを有するが、それらの全てが、全てのPDE4サブファミリーにおいて見出される2つの高度に保存された領域、すなわち上流の保存された領域1および2(UCR1および2)によって特徴付けられる。残りの2つのイソ型は短型形態であり、UCR1を欠くバリアントである。
3つのPDE4Dイソ型が、受入れ番号AF536975(PDE4D6と命名されたイソ型)、AF536976(PDE4D7と命名された)およびAF536977(PDE4D8と命名)として2002年9月16日および2002年12月17日にMemory PharmaceuticalsによってGenBankに提出されている。2001年1月4日公開、PCT WO01/00851も参照のこと。この配列AF536977は、本発明者らが初期に報告したPDE4D6イソ型に相当し、AF536976は、本発明者らが初期に報告したPDE4D7イソ型に部分的に対応するが、最初の翻訳されていないエキソンであって本発明者らがD7−1と命名したものはこの配列から失われている。この配列AF536975は、新規な短いPDE4Dイソ型である。従って本発明者らは、それに応じて以下のように本明細書においてイソ型の名称を変えた:PDE4D6は、ここではPDE4D8と呼び、PDE4D7は、ここではPDE4D7と呼び、PDE4D8はここではPDE4D9と呼ぶ。本発明者らは、新規なPDE4DスプライスバリアントであるPDE4D7およびPDE4D9をGenBankに提出した(受入れ番号はそれぞれ、AY245866およびAY245867)。
本発明者らはさらに、EST、マウス相同性およびGeneMinerエキソン予測に基づいてLF1の上流の17個の推定エキソンを同定した。これらのエキソンから設計したプライマーを、新規なエキソンを同定することを期待してRT PCRのためにLF1およびエキソン3由来のプライマーと組み合わせて用いた。次に新規なエキソンを用いて種々のRT−PCR反応のためのプライマーを設計した。本発明者らはまたLF1の上流の公知のエキソンから設計した5’RACEプライマーを用いた。本発明者らは、14個の新規なエキソンを今までに同定しているが、これには今ではLF1と連絡されているUniGene Cluster Hs. 343602に属するエキソンが挙げられる。
5’RACE反応のために、本発明者らは、心臓から作製したcDNA、SkNAS(神経芽細胞腫細胞株)およびHVAEnd5050(内皮細胞株)を用いた。RT−PCR反応のために、総RNAから作製された多数のcDNAを用いた(以下を参照のこと)。
表12において、新規なエキソンはイタリック体である;すでに公知のPDE4Dエキソンはそのままである。EST AW272330のエキソン3は、UniGeneクラスターHs 343602由来のESTの3’の代表として表に含まれる。与えられた位置は配列番号:1からである。異なるスプライシングの4D9−3.2、4D9−3.1およびAW272330exon3に注意のこと。
マニュアルに従って、GibcoBRL提供のTRIZOL(登録商標)試薬を用いてHeLa、SkNAsおよびJurkat 77細胞培養物から総RNAを単離した。本発明者らは、製造業者のプロトコルに従ってInvitrogenのGeneRacer(商標)、ThermoZyme(商標)およびTOPO TA cloning(登録商標)(pCR(登録商標)2.1−TOPO(登録商標)を含む)キットを用いた。
表10A
新規のエキソンの配列
>4D7-A
GGCCTCGAGCAGAACTTCCCATTTGAGTGGGACCAAGAAGAGCATACAAAGCTGAAATGTTCTCCAGAAGTTGATTTCCAATGGGGATAAA (配列番号:88)
>4D7-4_順方向のプライマー由来
TGATTACAGGTTTTAGAGAAGAGGAACAATGCTTCCTCTGAGCCTGAAGAAAAGAA (配列番号:89)
>4D7-8
AGTTCTGACCATGTCCTGTGTCACTCTCAAGCAGAGATTGAAAATGACATTCGTCCTTTACTTGTTCCAAGGAAGCAAACATTTTATAGTTTGAAACTGTTTCTCTTGCATTTGCTTTGCAAGAGGTTTGCAGAAGTTAAGCCTCATGGAGTCTTCTCTCCTTAACTTAA (配列番号:90)
>4D7-B
TGTGAAGAATTTGGAAATTGCAAGGAGCATGGGAAGGAGATGATTTGGG (配列番号:91)
>4D7-5
GAATGAAGAGGAAATCAAGACATACTTAGATAAAAACAGATTATCACCAGGAGATCTGCTGTAAAAGAATGGCTAAAGGAAGTTAGCTAAGCAGAAAGGAAGTAACATAAAAAGGAACCTTGGAACATCAGGGAGGACAAAAGAACATG (配列番号:92)
>4D7-C
TTTCTCTTTCTCCAATCACTCACTCTGGAGGCAGCTAGCTGTCAACTCACAAAGACACTCAAGCAGCCTATGGAAGAAGGCCACATGGTAAAATATGGAGGCCTCCAGCCAACAGTCAGCAAGGAACTGAGACAAGTCAACAACCATGTGAGTGACTCGAGAAGTGCTTCTCTAGCTCCAGTTGAGACTTGCAGTAGCAGCAGCCTCAGCTGGCGGCTTGACTGCAATCTCTTGAGAGACCCTAAGCTCTCCTGAATTCTTGATCCTTAGAAACTGTGTGAG (配列番号:93)
>4D7-6
GGTCTAGCTGTGTCCCAGAGAGCAACTTCCCTTTTCAAGGCAGCCCACTCTGTGTGATGCTTTTTCCTAGGTATGGGCAACCCATCCCTCCTAGGGTGAAAACTTCGCTGTTGCTAGTTCCAG (配列番号:94)
>4D7-7
AATGATGCCGTATTATTCTCCTGACCTAACTTCAAAGAAATAAAGAGTTTGCAAGAAGAACTGCAGTTCTTCAAAGTACGCAATATGGATTTCCAAGATGAATGTAGTTTCTCTCTCTGAGGAATTCTGAACAGTG (配列番号:95)
>4D7-9
GACTTGAGCATCTGAAGATTTTGGTTTCTGCAGAGGGTGGGAAAGGTTGAACCAATCCCCCATGGATACCAAG (配列番号:96)
>4D9-1
GGCTTTCCAGATCCCTGAAGATAAAATACAAACTCTCCAACAAGACCTTTTGGCCATCAGGAACGCAGCACCTGGCTCTCTCACTA (配列番号:97)
>4D9-2
AAAGTCGCAGAGATAGCGGAGAACAAGAACCAGATCTCACAGTCATGGTGCCAAAAGA (配列番号:98)
>4D9-3.1
CTGTTACCCTAGCATGACTGCTTCAGCGAAGAGATAAGAGCTTCTTTGACTTTTTCCACTGGAATTTTTCATGCCAGAAGAAATTGAACATGTGAGCCTGGTGTCTGGAAGAGTAGCCTGGATTTATG (配列番号:99)
>4D9-3.2
AATTCAGCTGTTACCCTAGCATGACTGCTTCAGCGAAGAGATAAGAGCTTCTTTGACTTTTTCCACTGGAATTTTTCATGCCAGAAGAAATTGAACATGTGAGCCTGGTGTCTGGAAGAGTAGCCTGGATTTATG (配列番号:100)
>4D9-4
TTCCTTGATAGTTCCAATATCTGTAATCTTGTTGGTCTACCTGTGCAGTTTATTCCACTGATTGTCTCTCAG (配列番号:101)
>4D9-5
GCGAAAATACTGAGGCTCAACAGACATAAAATGGCTTGAGTTACCAGGCTACAGTAGAACTAGGATTTCAGTCCAG (配列番号:102)
RT-PCR/RACEに規定されるようなエキソンのスプライシング
新規のエキソンはイタリックで示される。
RT4D7: 4D7-1 + 4D7-2 + 4D7-3 + LF1
RT1: 4D7-1 + 4D7-8 + 4D7-2 + 4D7-3 + LF1
RT2: 4D7-4 + 4D7-2 + 4D7-9+ 4D7-3 + LF1
RT3: 4D7-2 + 4D7-3 + LF1
RT4: 4D7-1 + 4D7-2 + 4D7-7 + 4D7-3 + 4D9-1 + 4D9-3.1
RT5: 4D7-1 + 4D7-2 + 4D7-3 + 4D9-2+ 4D9-3.1
Race6: 4D7-A + 4D7-B + 4D7-2 + 4D7-C + 4D7-3
RT7: 4D7-1 + 4D7-4
RT8: 4D7-1 + 4D7-5 + 4D7-2
RT9: 4D7-1 + 4D7-6 + 4D7-2
RT10: 4D9-1 + 4D9-3.1 + LF1
RT11: 4D9-2 + 4D9-3.2 + LF1
RT12: 4D9-3 + 4D9-4 + LF1
RT13: 4D9-3 + 4D9-4 + 4D9-5+ LF1
RT14: 4D9-3 + LF1
種々の組織由来のcDNAにおけるバリアントの検出:
表10B

+ = 存在し、配列決定によって確認された
* = 存在する、正しいサイズの製品;まだ配列決定によって確認されていない
- = 検出されず
n = 調査していない
# これらは:副腎、 胎仔肝臓、小脳、肺、小腸である。
より広範に発現されるバリアントのうち2つは、互いに排反すると思われる:4D7[第一のエキソンとして4D7−1を有する]は10個のcDNAにおいて検出されたが、RT14は9個のcDNAにおいて見出される。これらのうち甲状腺および前立腺は、両方のバリアントに共通な唯一の組織である。
上記に示した13個の新規なRTおよびRACEバリアント(本発明者らは、前に4D7バリアントを記載していた)は、なんら新規な翻訳配列を追加しない。RT1産物は、4D7推定タンパク質と同じであると予想される。バリアントRT2およびRace6において、4D7−2と4D7−3との間のエキソンは、最初のAUGを有するORFおよびLF1のすぐ内側であるORFと干渉する。同様にエキソン4D9−3は、3つ全てのリーディングフレームに停止コドンを含み、そしてバリアントRT10、11、12、13および14は、LF1の内側にそのATG開始コドンを有する。エキソン4D9−3を含むバリアントRT4およびRT5が、LF1に延びるかまたは4D9−3にそれらの3’を有するかは明らかではない(後者の可能性はESTデータによって支持される)。
4D7、RT3およびRT14以外の全てのバリアントがcDNAのうちの1つにおいてのみ観察されていることに注目のこと。全ての新規なエキソン(4D9−3.1を除く)がAG/GTスプライスシグナルを有するが、これらのバリアントは、生理学的な重要性の乏しい、まれであるかまたは異常な事象を表すということがもっともらしく思われる。
以下のエキソンはAlu反復エレメント配列:4D7−5および4D7−Cを含む。遺伝子特異的リバース(3’)プライマーを、PDE4DエキソンLF1のために設計した(5’GGCAATGGAGGAGTTCCGGGACATA−3’;Homo sapiens由来の配列番号:87)。
PDE4D遺伝子の不完全なゲノム配列についてのコンティグは、他者によって2000年11月に提出された(GenBank entry NT_023193、International Human Genome Projectの共同研究者による)。コンティグのサイズは614 481 bp(ギャップを含む)であったが、全PDE4D領域についての本発明者らの新規なゲノム配列(すなわち、PDE4Dバリアントの第一のエキソンから)は、1,690,000bpに近く、ギャップを含まない。コンティグNT_023193は、PDE4D遺伝子の11エキソンしか含まず(図3では、エキソン4D1/D2−11)、そして5’の別々にスプライシングされたエキソンは、コンティグで失われている(図3では、エキソンD4、D5、D3、D8、D9、D7A−1、D7A−2、D7A−3、LF1、LF2、LF3およびLF4)。
表13:新規のイソ型

1以前には前の出願でPDE4D8と呼ばれている
配列は以下のとおりである:
D7A-1:
ATAGTTGGCGTACCCTGAGGCCTGCCAGTTCCTGCCTTAATGCATATGTAGTCGTAATTGAGTTCTGACACGGCCTTGGATGTTTCTGTCCTAAATAGCTGACATTGCATCTTCAAGACTGT
D7A-2:
CATTCCAGTTGGCTTTTGAGTGGATACGTGCAGTGAGATCATTGACACTGGAAACACTAGTTCCCATTTTAATTACTTAAAACACCACGATGAAAAGAAATACCTGTGATTTGCTTTCTCGGAGCAAAAGT
D7A-3:
GCCTCTGAGGAAACACTACATTCCAGTAATGAAGAGGAAGACCCTTTCCGCGGAATGGAACCCTATCTTGTCCGGAGACTTTCATGTCGCAATATTCAGCTTCCCCCTCTCGCCTTCAGACAGTTGGAACAAGCTGACTTGAAAAGTGAATCAGAGAACATTCAACGACCAACCAGCCTCCCCCTGAAGATTCTGCCGCTGATTGCTATCACTTCTGCAGAATCCAGTGG (配列番号:11;D7A-1, D7A-2およびD7A-3 を含む)
上記からの新規な推定アミノ末端タンパク質配列(PDE4D7):
MKRNTCDLLSRSKSASEETLHSSNEEEDPFRGMEPYLVRRLSCRNIQLPPLAFRQLEQADLKSESENIQRPTSLPLKILPLIAITSAESS (90個のアミノ酸) (配列番号:12)
D9:
TTCTCACTGCCCTGCGGTGTTTTGAACTGCCTTCTTACAGACGTCATACAGCCCTTGAGGAATAGTTTCTGCCTGGTGAGATTGAATGATAGTTCTCATTCACAAAACCCTGGATTCTAAGCAGGGACACACAGAAATTACTTTCGCAGGTAAATCAGCCCACCCAGCCAAAGTGTGGAGAGATTTGTTCCTTGGCTGACTTCTTTGCTCCACGGAGAGGAGTGTTTTCCTGTGCTTGCCCTGAAATGGAACTTCCTTGACAGCTCTCCCGTGTTACAGTACCTCCCGGTCATTTTCTTTTTCTCTCTCTCTACCTGCGCTCTTCGAGTGTCAGAAACCTTTAAAGCTGTTACTATGGAATTGCAAAAAAGAGATCAAGTGACTCTTTCACTATGCTGGTTTCCCTTGTGACCCAGATGAAGAATCAATTCAGAATTCAGTTCCTCCCTTGGCATTGCAAGACACAGAAGAAACTGTCACTTCCTAACAGCCTAGTACTGGAGTAAATTCAGTATGAAGGAAGAAAGCGCTCCTGCGTGTTAGAACCTTGCCCATGAGCTGGACCGAGGACAGGAGATGGACTCCAGGAAAATTGGATTTCTTCAAGCAGCCTCCCTTGGAAATGGAATATCTTTAAAATCTTCTTTGCAGAAAGACAGTTAGAATGTATTAATCAGAATAGTTGAAGACTTATTTTCCTTTTTATTTTTTTTCAAAATGAGCATTATTATGAAGCCAAGATCCCGATCTACAAGTTCCCTAAGGACTGCAGAGGCAGTTTG (配列番号:13)
上記からの新規な推定アミノ末端タンパク質配列(PDE4D9):
MSIIMKPRSRSTSSLRTAEAV(21個のアミノ酸)(配列番号:14)。
表11
公的に入手可能なSNP;NCBIデータベースのSNP番号
表12
deCODEにより同定された新規SNP
実施例2の考察:
ここでは、本発明者らは、ヒトPDE4Dの最初の完全なゲノム配列、PDE4Dの2つの新規なmRNA/タンパク質イソ型およびその対応するエキソン、ならびに公知および新規のイソ型のイントロン−エキソン構造を示す。ホスホジエステラーゼのベースは、学習および記憶に関与する、Drosophila melanogasterの「dunce」遺伝子の哺乳動物ホモログである(Davis, R.L.およびB. Dauwalder, Trends Genet., 7(7): 224〜229 (1991))。PDEは、9個そして、可能性としては10個の異なるファミリーに細分割されたアイソザイムの大きいスーパーファミリーのメンバーであり(Conti, M.およびS.L. Jin, Prog. Nucleic Acid Res.Mol. Biol., 63: 1〜38 (1999))、各々のファミリーに数個の遺伝子を有し、そして各々の遺伝子について1つより多いイソ型を有する。PDEの多様性の有意性は知られていないが、イソ型の多くがその生化学的特性、リン酸化、細胞内標的化、タンパク質間相互作用および組織における発現のパターンにおいて異なり、これによって種々のイソ型の各々が異なる機能を有し得ることが示唆される(Bolger, G.B., Cell Signal, 6(8): 851〜859 (1994); Conti, M.ら、Endocr. Rev., 16(3): 370〜378 (1995))。
cAMPに対する高い親和性によって特徴付けられる一群の酵素である、5型のPDEをコードする4つの遺伝子が存在する(PDE4A、PDE4B、PDE4CおよびPDE4D)。PDE4Dの遺伝子は、ヒト染色体5q12に割り当てられ(Milatovich, A.ら、Somat. Cell Mol. Genet., 20(2): 75〜86 (1994); Szpirer, C.ら、Cytogenet. Cell Genet., 69(1〜2): 22−14 (1995))、5つの別個のスプライスバリアントが特徴付けられた(短型PDE4D1、PDE4D2ならびに長型PDE4D3、PDE4D4およびPDE4D5)(Bolger, G.B.ら、Biochem. J., 328(Pt.2): 539〜548 (1997))(図3)。ヒトPDE4Dバリアントの配列は、マウスおよびラットにおいて発現されたPDE4Dに対して高度の相同性を示す。スプライシングのパターンおよび異なるプロモーターの用法は、進化の間に高度に保存されており、このことは重要な生理学的役割を示す(Nemoz, G.ら、FEBS Lett., 384(1): 97〜102 (1996))。PDE4Dバリアントは、遺伝子に存在する2つの主な境界で生成される。一つ目の境界は、エキソン2の接合部に相当する。この領域における特異なスプライシングによって、2つの短いバリアントPDE4D1(586アミノ酸)およびPDE4D2(508アミノ酸)が生成される(図3)。このスプライシング境界は、マウス、ラットおよび異なるヒトPDE4遺伝子の間で保存される。スプライシングバリアントPDE4D2は、PDE4D1配列から256bpを除去することによって生成される。PDE4D2バリアントにおける開始コドンは、エキソンD1/D2内にある。短いPDE4Dバリアントの発現は、cAMPによって調節された内部プロモーターの制御下であることがデータによって実証される(Vicini, E.およびM. Conti, Mol. Endocrinol., 11(7): 839〜850 (1997))。第二の主なスプライシング境界も進化の間に保存されており、Drosophilaのdunce遺伝子に記載されたものと同一である。スプライシングはLF1エキソンのイントロン/エキソン境界で生じる(図3)。
PDE機能
PDEは、細胞において少なくとも4つの主な機能を発揮する。それらは、(1)レセプターおよびGタンパク質と相互作用することによってシグナルトランスダクションのエフェクターとして働き;(2)環状ヌクレオチド依存性経路と他のシグナルトランスダクション経路とを統合し;(3)恒常性調節因子として機能して、ホルモンおよび神経伝達物質刺激の間に環状ヌクレオチドレベルを制御するフィードバック機構で役割を果たし;(4)環状ヌクレオチドの分散を制御することにおいて、および亜細胞ドメインを作製することまたは環状ヌクレオチドシグナル伝達をチャネリングすることにおいて、重要な役割を果たすことができる(Conti, M.およびS.L. Jin, Prog. Nucleic Acid Res. Mol Biol., 63: 1〜38.(1999))。PDEの阻害は、細胞内環状ヌクレオチドレベルを変えるために有効な薬理学的ストラテジーとして長らく認識されている(Flamm, E.S.ら、Arch. Neurol., 32(8): 569〜71 (1975))。
PDE4は、脳血管においてcAMP加水分解によって媒介される血管緊張を調節する主なアイソザイムであることが報告されている(Willette, R.N.ら、J. Cereb. Blood Flow Metab., 17(2): 210〜9 (1997))。
PDE4D遺伝子の標的化された破壊を有するマウスに関する近年の研究(Hansen, Gら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 97(12): 6751〜6 (2000))によって、平滑筋収縮およびムスカリン性コリン作用レセプターシグナル伝達の制御におけるPDE4Dの重要な役割が実証されているが、ただし気道炎症の制御においては実証されなかった。PDE4D−/−マウスの肺表現型によって、この遺伝子がcAMPの恒常性において非冗長的な役割を果たすことが実証される。肺において、PDE活性の有意な低下、ならびに休止期および刺激されたcAMPレベルの増大が存在し、このことは他のPDE4(または他のPDE)がアップレギュレーションされず、PDE4Dの損失を補償できないということを示す。これらの知見によって、PDE4Dは細胞シグナル伝達において固有の重複しない機能を果たすということが支持される。
確立された遺伝性の障害と公知のPDE遺伝子座との間に明確な関連は、PDE6を除いて、判明していない。PDEのインヒビターは、気道反応性および肺アレルギー性炎症に影響することが示されている(Schudt, C.ら、Pulm. Pharmacol. Ther., 12(2): 123〜9 (1999))。変化させられたPDE4機能は、腎性尿崩症(Takeda, S.,ら、Endocrinology,129(1): 287−94 (1991))またはアトピー性皮膚炎(Chan, S.C.ら、J. Allergy Clin. Immunol., 91(6): 1179〜88 (1993))に関連し得ることを示唆する報告があるが、突然変異は同定されていない。PDE4によって調節される血管緊張低下(A、B、CまたはD遺伝子ファミリーのいずれであるかは言及しない)がクモ膜下出血に関連する慢性脳血管攣縮において損なわれるということもまた報告されている(Willette, R.N.ら、J. Cereb. Blood Flow Metab., 17(2): 210〜9 (1997))。PDE4D自体は前には脳卒中には関連していなかった。
PDE4D発現および細胞局在化
PDE4Dは、ヒト末梢単核細胞(Nemoz, G.ら、FEBS Lett, 384(1): 97〜102 (1996))、脳(Bolger, G.ら、Mol. Cell Biol., 13(10): 6558〜71 (1993))、心臓(Kostic, M.M.ら、J. Mol. Cell Cardiol., 29(11): 3135〜46 (1997))および血管平滑筋細胞(Liu, H.およびD.H. Maurice, J. Biol. Chem., 274(15): 10557〜65 (1999))において発現される。
ラット脳のイムノブロッティングによって、PDE4D3、PDE4D4およびPDE4D5タンパク質が脳に存在し(Bolger, G.B.ら、Biochem. J., 328(Pt 2): 539〜48 (1997))、そしてラット由来の皮質および小脳において発現される(Iona, S.ら、Mol. Pharmacol., 53(1): 23〜32 (1998))ということが示されている。これらのタンパク質は、微粒子画分においてほとんどまたは排他的に回収され、このことによって、これらの形態は、不溶性の細胞構造に対して標的され得るということが示唆される。さらに、PDE4D1、PDE4D2またはその両方を示し得る、68kDaのタンパク質を検出した。これを確証するために、RT−PCRをラット脳由来のmRNAについて行ない、その結果によって、PDE4D1および2の転写物が存在したことが示された。それらのデータによってまた、そのmRNAの選択的にスプライシングされた領域に由来するPDE4D3−5のN末端領域は、その細胞下局在活性およびインヒビターに対する特異な罹患性を決定するのに重要であることが示唆され、そして長いPDE4Dイソ型について、細胞の粒子画分と相互作用する傾向があるということが示される。
実施例3:PDE4Dイソ型発現
EBV形質転換されたB細胞株における発現解析
PDE4Dの公知のコードエキソンにおける機能的な変異は同定されなかったので、次に遺伝子発現を研究して、脳卒中に対する遺伝的関連性が、その発現レベルの調節に関連するか否かを決定した。これを試験するために、本発明者らは、これらの研究のために血液または組織の代わりに細胞株を用いることを選択した。なぜなら、細胞株の発現解析は、複数の細胞タイプの存在で惑わされることはないからである。細胞タイプはPDE4Dを異なるレベルで発現し得、そのため一般に、組織よりも細胞株における発現を定量することがさらに信頼できる。イソ型特異的な動的PCR解析をEBV形質転換されたB細胞株で行なって、83例の脳卒中患者および84例の対照において各々のイソ型を定量した。これらの患者は、この解析のために、脳卒中のいかなる特定のサブタイプに基づいても選択されなかった。患者のほとんどが虚血性脳卒中を有し、彼らのうち38%が頚動脈または心原性の脳卒中の原因を有した。全体的に、イソ型に存在するエキソンにまたがる増幅によって評価した場合、総PDE4Dメッセージのレベル(PAN)は、対照におけるよりも患者において有意に低かった(p値<0.005)。この低下は主にイソ型PDE4D1、PDE4D2およびPDE4D5のより低い発現に起因した(図4)。
本発明者らは、特定の脳卒中関連ハプロタイプを有する個体を選択し、患者および対照を別々に試験して、このハプロタイプのキャリア対非キャリアの発現レベルを比較した(図5および6)。ハプロタイプは、マイクロサテライトマーカーAC008818−1およびSNP45(SNP5PDM357221)およびSNP41(SNP5PDM361545)についてリスクのある対立遺伝子から構築した。このハプロタイプは、本発明者らがLDブロックBにおいて同定している疾患関連ハプロタイプについての代用物として働く(表3)。ハプロタイプを有する患者は、PDE4D7およびPDE4D9のイソ型の発現が有意に低下した(図5)。PDE4Dのいくつかの他のイソ型を発現したが、疾患ハプロタイプに対する相関は示されなかった。PDE4D7の相関は対照にも存在したが、わずかに有意であった(図6)。興味深いのは、このリスクのあるハプロタイプはPDE4D7に特異的な5’エキソンおよびおそらくそのプロモーターをカバーすることである。
これらの結果によって、脳卒中患者における複数のPDE4Dイソ型の発現の重大な調節不全が存在することが示される。
定量的逆転写酵素PCRを用いる発現解析の方法論
マニュアルに従って、GibcoBRLによって提供されるTRIZOL(登録商標)試薬を用いてEBV形質転換B細胞培養物から総RNAを単離した。カラムDNA消化を用いるRNeasyミニQiagenキットを用いてRNAを浄化した。RNAの質および量を2100 Agilent Bioanalyserを用いて評価した。Applied Biosystems(N808−0234)のTaqMan Reverse Transcription Reagentsキットによってランダムヘキサマーを用いて総RNAからcDNAを調製した。Primer Express 2.0およびOligo 6ソフトウェアを用いてPDE4DおよびPDE4Dイソ型のcDNA特異的プライマーおよびプローブを作成した。Applied BiosystemsからGAPDH「Assay-On-Demand」を入手して、ハウスキーピング遺伝子として用いた。PDEアッセイを試験して、ABI 7900 Instrumentを用いて384ウェルのハイスループット発現解析に最適化した。最終濃度で200nMのプローブ、900nMのプライマーおよび2ng/mlのcDNAを10mclの反応容積で用いた。各々のプレートを2回行なって、各々のサンプルについての平均を算出した。ABI7900装置を用いてCT(Threshold Cycle)値を算出した。二連の間の1より大きいΔCTを示すサンプルは本発明者らの解析では用いなかった。式2−ΔCTを用いて量を得たが、ここでΔCTは、標的とハウスキーピングアッセイとの間のCT値の差違を示す。
受入れ番号AY245866(PDE4D7)およびAY245867(PDE4D9)
3つの実施例および結論の考察
本発明者らの結果によって、PDE4D遺伝子における遺伝的変動は、虚血性脳卒中に関連することが示される。PDE4Dの直接関与は、関連解析および発現解析と組み合わせて連鎖によって強力に支持される。本発明者らは最初に、マイクロサテライトマーカーを用いて関連を同定して、SNPのより高密度なセットでこのマイクロサテライトデータを補充してこれをさらに支持した。最強の関連は、2つの虚血性サブタイプである、頚動脈および心原性の脳卒中に対してであるが、本発明者らは、アテローム性動脈硬化症とは独立していると考えられる脳卒中の形態である、小血管閉塞性疾患に対する関連を観察しなかった。本発明者らは、PDE4D遺伝子における機能的変異を同定しなかったが、本発明者らは、頚動脈および心原性の脳卒中に有意に関連するPDE4Dの第一のエキソンに及ぶハプロタイプを同定した。このハプロタイプは、このハプロタイプのキャリアについて2倍を超える脳卒中リスクを有する対照群における21%に比べて、頚動脈/心原性脳卒中患者では47%に存在する。これは25%の人口寄与危険度を有する。合わせた心原性および頚動脈の脳卒中のサブタイプについては、複数の比較についての調整後でさえ疾患と有意に関連する個々のSNPおよびマイクロサテライト対立遺伝子を見出すこととは別に、最も興味深いのは、PDE4Dの第一のエキソンをカバーするハプロタイプが明確に異なるリスクを有する3つの群に分類され得るという発見である。保護的な群に関して、リスクのあるおよび野生型の群を合わせた人口寄与危険度は、55%と見積もられる。集団の約16%が、図12.3においてリスクのあるハプロタイプの1コピーを担持する。それらは、心原性脳卒中または頚動脈脳卒中になることに関して、一般的な集団の約1.8倍のリスクを有する。集団の約0.8%がリスクのあるハプロタイプについてホモ接合性であり、複合モデルを仮定すれば、それらのリスクは、一般的な集団のリスクの約3.8倍と見積もられる。何がこれらのハプロタイプ群の観察された効果を担う機能的なバリアントであるかということを納得がいくようには本発明者らはまだ特定も証明もしていないというのが真実である。これらのハプロタイプ群は、連鎖シグナルを完全に説明しないので、本発明者らはこの領域において全ての脳卒中患者について観察し、本発明者らは確実に、脳卒中に対するリスクを付与すると同定したものに直接関連しないPDE4D内の他のバリアント/ハプロタイプがあるということを認めないわけにはいかず、実際にそうであることを予期する。これらはまれであるようだが、極めて高い浸透度を有し得る。本発明者らはまた、PDE4Dと独立した、またはPDE4Dと組み合わされた連鎖領域におけるいくつかの他の遺伝子が脳卒中に対する罹患性を付与するという可能性を認めないわけにはいかない。
本発明者らは、疾患関連の対立遺伝子およびハプロタイプが、脳卒中の各々の発症および性別に加えて、高血圧、高コレステロール血症、糖尿病、末梢動脈閉塞性疾患および冠動脈疾患のような、特定の脳卒中のリスクファクターに関連するか否かを試験した(表9)。高コレステロール血症に対するわずかに有意な関連が観察されたが、脳卒中に対するPDE4Dの寄与は、これらの公知のリスクファクターのいずれにも強力には相関しないということが明らかである。
PDE4D遺伝子は、高度に複雑な遺伝子である。選択的スプライシングおよび種々のプロモーターの使用によって、この遺伝子は、N末端領域で互いに異なる、機能的なタンパク質を生じる少なくとも8つの異なるイソ型を生成する。本発明者らは、2つの新規なイソ型PDE4D7およびPDE4D9のN末端をコードする4つの新規なエキソンを同定した。疾患関連ハプロタイプは新規なPDE4D7バリアントに固有の5’エキソンおよびこのイソ型の推定のプロモーター領域に及び、これによってこの機能的な変動は転写調節に関与し得ることが示唆される。この仮説はまた、疾患関連ハプロタイプとPDE4D7メッセージのレベルとの間の有意な相関を示す本発明者らのPDE4D発現解析によって支持される。
このPDE4Dハプロタイプについて見出された最も強い関連性は、虚血性脳卒中、頚動脈および心原性脳卒中の2つの主なサブタイプに対してであって、これによってアテローム性動脈硬化症の血管生物学におけるこの遺伝子の役割が示唆される。虚血性脳卒中について複数の病因が存在するが、アテローム性動脈硬化症は、最も重要な病因を保持しており、これは2つの虚血性サブタイプ、頚動脈および心原性脳卒中についての主な病理学的過程である。第一に、これは、頚動脈脳卒中をもたらす内頚動脈および総頚動脈の狭窄および閉塞性の病変の主な原因である。第二に、脳に対して塞栓を脱落させる心血栓は、冠動脈疾患の背景において、例えば急性心筋梗塞または虚血性心筋症の後に、かつ/または虚血性心室の乏しいコンプライアンス(拡張機能障害/硬化)に基づく心房細動に起因して、最も一般的に生じる。心房細動は、脳卒中を被る傾向の年齢群において、他の疾患、例えば、弁膜症、甲状腺機能亢進症および高血圧の背景で生じ得るが、虚血性心疾患は、依然として最も重要な原因の1つである。脳内の小さい穿通性動脈の閉塞(小血管閉塞性疾患または腺窩性小梗塞)から生じる虚血性脳卒中は一般に、内皮増殖からの結果と考えられる。なぜなら、アテローム性動脈硬化症はそれより大きい動脈でのみ生じるからである。PDE4Dは、アテローム性動脈硬化症における役割に一致して、小血管脳卒中に対して関連を示さない。頚動脈および心原性脳卒中を一緒にすれば、ほとんどの虚血性脳卒中を占める(本発明者らはより厳密な狭窄のカットオフを用いたので、頚動脈についての本発明者らの数は少ないことに注意のこと)。
PDE4Dは、第二のメッセンジャーcAMPを選択的に分解し(Kong,A.ら、Nat Genet 10, 10 (2002))、これがシグナルトランスダクションおよび生理学的な応答の調節において中心的役割を果たす。これは、アテローム性動脈硬化症の病因に重要なほとんどの細胞タイプで発現されるが、この細胞タイプとしては、血管平滑筋細胞(VSCM)、内皮細胞、単球、マクロファージおよびTリンパ球が挙げられる(Houslay, M.D.およびAdams, D.R., Biochem J 370, 1〜18 (2003); Liu, H.およびMaurice, D.H., J Biol Chem 274, 10557〜65. (1999); Liu, H.ら, J Biol Chem 275, 26615〜24.(2000); Baillie, G.ら、Mol Pharmacol 60, 1100−11.(2000); Jin, S.L.およびConti, M., Proc Natl Acad Sci USA 99, 7628〜33.(2002))。サイクリックAMPは、これらの細胞において重要なシグナル伝達分子である(Landells, L.J.ら、Br J Pharmacol 133, 722〜9(2001); Fukumoto, S.ら,Circ Res 85, 985〜91 (1999); Ogawa, S.ら、Am J Physiol 262, C546〜54 (1992))。VSMCでは、低いcAMPのレベルによって、増殖および遊走の増大がもたらされ、その少なくとも一部はPDE4によって媒介される(Landells, L.J.ら,Br J Pharmacol 133, 722〜9 (2001); Stelzner, T.J.ら、J Cell Pltysiol 139, 157〜66 (1989); Pan,X.ら、Biochem Pharmacol 48, 827〜35 (1994))。動物モデルによって、cAMPの上昇が新生内膜病変形成を軽減して、動脈損傷後のSMCの増殖を阻害することも示されている(Palmer, D.ら、Circ Res 82, 852〜61.(1998); Indolfi, C.ら、Nat Med 3,775〜9.(1997))。単球およびTリンパ球において、cAMPの蓄積は一般に、免疫機能の阻害、例えば、増殖およびサイトカイン分泌と関連する(Indolfi, C.ら,J Am Coll Cardiol 36, 288〜93 (2000))。1つ以上のPDE4Dイソ型の絶対的または相対的な発現を通じたcAMPの調節が、脳卒中に対して罹患性の高い個体において異なり得ると仮定することは魅力的である;数例の脳卒中患者は、上記の細胞タイプのいずれかにおいて増大したPDE4D活性を、そして結果としてさらに低いcAMPレベルを有し得、アテローム斑の発達および/またはその不安定性をもたらす。しかし、当業者が期待し得るものとは反対に、本発明者らは、脳卒中患者由来のEBV細胞株におけるPDE4Dイソ型のいくつかにおいて低下した発現をみる。これらのイソ型はcAMPによって全てアップレギュレーションされることが興味深く(Liu, H.およびMaurice, D.H., J Biol Chem 274, 10557〜65.(1999); Tilley, S.L.ら、J Clin Invest 108, 15〜23 (2001); Vicini, E.およびConti, M., Mol Endocrinol 11, 839〜50 (1997))、このことによって患者におけるcAMPのレベルでの調節不全が示唆される。従って、1または数個のスプライスバリアントの活性増大によって、細胞の有効なPDE4D酵素活性が変化させられて、cAMPレベルが低下し、これによって本発明者らの発現研究において観察されたように、cAMP調節性イソ型の発現が変化させられるということが可能である。このPDE4Dイソ型の相対的な発現は、PDE4Dイソ型の区画的な局在化、そしてこれによって、近年観察されている細胞内cAMPの対応する勾配を決定することができる(Housleyの概説を参照のこと)。
まとめると、本発明者らは、PDE4D遺伝子が虚血性脳卒中に対してリスクを付与するという概念を支持する関連解析(単一のマーカーおよびハプロタイプ解析)を提示している。さらに、本発明者らは、脳卒中患者において複数のPDE4Dイソ型の有意な調節不全を観察した。本発明者らは、この遺伝子は、アテローム性動脈硬化症による脳卒中の病因に関与するということを提唱する。PDE4Dは、アテローム性動脈硬化症において重要な細胞タイプにおいて発現され、アテローム性動脈硬化症の病因において重要な過程に対して中心的役割によって第二メッセンジャーを調節する。PDE4D一般または特異的に1つ以上のイソ型の阻害は、低分子薬物または他の薬理学的因子によって、一般に、そして特にPDE4D遺伝子における変動を通じて脳卒中に対して素因のあるものの、脳卒中のリスクを低下させ得る。
本発明は、その好ましい態様に関して詳細に示されかつ記載されてきたが、形態および詳細における種々の変化が、添付の特許請求の範囲に規定される本発明の趣旨および範囲から逸脱することなくなされ得るということが当業者によって理解されよう。
図1.1および1.2は、出血性脳卒中を含むいくつかの脳卒中サブタイプにそれぞれ罹患している2つの家系図を示す。 図2.1、2.2および2.3は、30個の多型マーカーを使ってPDE4D遺伝子の位置を特定するための遺伝地図、複合地図および物理地図を示す。複合地図では、別段の表示がない限り、全てのマーカーが遺伝地図および物理地図に割り当てられている(は物理地図にのみ割り当てられているマーカーを示し、**は遺伝地図にのみ割り当てられているマーカーを示す)。 図3はPDE4Dスプライス変異体の模式図を示す。スプライス変異体PDE4D9は、エキソンD7A-1、D7A-2、D7A-3、D8およびD9と共に新規である。スプライス変異体4DN1、4DN2および4DN3(Miroら,Biochem.Biophys.Res.Comm., 274:415-421(2002))と、4D1、4D2、4D3、4D4および4D5は既知である(Bolgerら,Biochem.J. pt.2:539-548(1997))。 図4はEBV形質転換細胞におけるPDE4Dイソ型発現を表すグラフである(PDE4D3およびPDE4D9の発現は検出限界未満)。 脳卒中関連ハプロタイプを持つ患者または持たない患者から得たEBV形質転換細胞におけるPDE4Dイソ型の発現を表すグラフである。 脳卒中関連ハプロタイプを持つ対照または持たない対照から得たEBV細胞におけるPDE4Dイソ型の発現を表すグラフである。 図7.1〜7.10は、PDE4D遺伝子のイソ型のアミノ酸配列を示す。配列番号2はD4、配列番号3はN2、配列番号4はD5、配列番号5はN3、配列番号6はD3、配列番号7はN1、配列番号8はD8、配列番号9はD1、配列番号10はD2である。 図8.1および8.2は、全て公共利用できるPDE4D mRNAと、deCODE geneticsによって同定された新規cDNAセグメントの一覧である。 図9.1〜9.351は、ヒトPDE4D遺伝子のゲノム配列を示す。 図10.1〜10.3は、PDE4D遺伝子内の単一マーカー対立遺伝子関連を表す図式である。図10.1は、遺伝子構造を示す概略図である。図10.2は、PDE4D遺伝子内のマイクロサテライトとSNPの分布を表すグラフを示す。図10.3は、マイクロサテライト(黒丸)およびSNP(白丸)の両方について、PDE4D遺伝子の全体にわたる単一マーカー対立遺伝子関連を表すグラフを示す。負のlog p値を物理的位置(単位:キロ塩基)に対して表示している。 図11.1〜11.3は、頚動脈性脳卒中と心原性脳卒中との組合せに関して、ハプロタイプ関連を図式的に表したものである。推定ハプロタイプ頻度を、患者および対照のそれぞれについて、カッコ内に示す。図11.1は、6kb離れた2つのマーカーSNP45とAC008818-1から構築したハプロタイプ群の比較である。Xは、対立遺伝子0以外の全てのAC008818-1対立遺伝子をまとめて表示する混成対立遺伝子であることに注意されたい。本発明者らの試料には見いだされないハプロタイプA0を別にして、他のハプロタイプは、異なるリスクを持つ3つの群に分類することができる。各矢印は2つの群間の比較に対応し、RRは、矢印が指している群の、他方の群に対する推定リスクである。1と情報(Info)との差は、相の不確定性と不明な遺伝子型とによって失われた情報の割合の尺度である。図11.2は、調査を、SNP45とAC008818-1(どちらもLDブロックB中にある)から、LDブロックC中の25個のSNPを含むように拡張した場合の中間結果を表す。Hcは図13に記載のリスクのあるハプロタイプであり、LcはHc以外の25個のSNPのハプロタイプを全てまとめて表示する混成ハプロタイプである。AC008818-1およびSNP45と合わせると、ここでのハプロタイプは64kbにまたがる。Aに記載のハプロタイプG0は、拡張ハプロタイプG0HcおよびG0Lcに分割される。G0HcはG0Lcよりも有意に高いリスクを持ち、G0Lcのリスクは野生型GXと識別できない。図11.3はAに記載した分類を精密化したものであり、G0Lcはリスクのある群から野生型群に移動している。また、拡張ハプロタイプAXHcは存在しないことも注目される。これは、ブロックBおよびCがLD状態にあることを示している。 図12はSTRK1区間の物理地図の概略図であり、領域内の全ての遺伝子およびmRNAを示している。アスタリスク(*)で示したマーカーは、有意な単一マーカー関連を持つものを表す。 図13.1〜13.3は、PDE4D遺伝子の5'末端における連鎖不平衡(LD)およびハプロタイプの図式的表現である。図13.1は、PDE4Dの5'末端600kb領域におけるSNP間のペアワイズ連鎖不平衡を表す。マーカーは等距離にプロットされている。2つのLD尺度、すなわち左上三角形部分のD'と、右下三角形部分のp値を示す。この領域は、強いLD状態にあり、それぞれが限定されたハプロタイプ多様性を持つ3つのブロック、すなわちブロックA、ブロックBおよびブロックCに分割することができる。線は、3つのエキソンD7-1、D7-2およびD7-3と、マイクロサテライトマーカーAC008818-1の位置を示している。図13.2は、3つのブロックのそれぞれにおいて同定された全ての一般的ハプロタイプを示す。これらのハプロタイプの全てについて関連の調査結果を表2Cに示す。図13.3は、上記一般的ハプロタイプの一つに適合する各ブロック内の染色体のパーセンテージを表す。

Claims (37)

  1. 健康な個体と比較して、脳卒中に対して罹患性である個体においてより頻繁に存在するホスホジエステラーゼ4D遺伝子のリスクのあるハプロタイプについてスクリーニングする工程を含み、リスクのあるハプロタイプが脳卒中のリスクを有意に増大する、個体における脳卒中または脳卒中に対する罹患性を診断する方法。
  2. 有意な増大が少なくとも約20%である請求項1記載の方法。
  3. 有意な増大が少なくとも約1.2のオッズ比として同定される請求項1記載の方法。
  4. 健康な個体(対照)における存在の頻度と比較して、脳卒中に対して罹患性である個体(罹患者)においてより頻繁に存在するホスホジエステラーゼ4D遺伝子のリスクのあるハプロタイプについてスクリーニングする工程を含み、リスクのあるハプロタイプの存在が脳卒中に対する罹患性の指標となる、個体における脳卒中に対する罹患性の診断方法。
  5. リスクのあるハプロタイプ1が、配列番号:1およびマイクロサテライトマーカーAC0088181-1の対立遺伝子0と比べて、核酸位置142780のGの存在により特徴付けられる請求項4記載の方法。
  6. リスクのあるハプロタイプ2が、核酸位置:142780、135112、132562、131865、129361、129360、125304、123426、123312、120628、118914、111781、111252、109301、107849、105225、104552、102977、100795、99035、88614、88456、83119、82244、80127、78552におけるGTAACCACGAACTTATTGAATTTGAAの存在により特徴付けられる請求項4記載の方法。
  7. リスクのあるハプロタイプ3が、配列番号:1と比べて、核酸位置138806、131865、129361、120628、91470のA A C A Aの存在により特徴付けられる請求項4記載の方法。
  8. ハプロタイプ1または脳卒中罹患性に特異的に相関するPDE4D内または付近のリスクのあるハプロタイプの存在についてスクリーニングする工程を含む請求項4記載の方法。
  9. ハプロタイプ2または脳卒中罹患性に有意に相関するPDE4D内または付近にハプロタイプの存在についてスクリーニングする請求項4記載の方法。
  10. ハプロタイプ3または脳卒中罹患性に有意に相関するPDE4D内または付近のハプロタイプの存在についてスクリーニングする請求項10記載の方法。
  11. 前記個体由来の核酸の酵素的増幅を含むホスホジエステラーゼ4D遺伝子のリスクのあるハプロタイプの存在についてスクリーニングする工程が、前記個体からの核酸の酵素増幅を含む請求項4記載の方法。
  12. 核酸がDNAである請求項11記載の方法。
  13. DNAが哺乳動物である請求項12記載の方法。
  14. DNAがヒトである請求項13記載の方法。
  15. ホスホジエステラーゼ4D遺伝子のリスクのあるハプロタイプの存在についてスクリーニングする工程が:
    (a)個体から核酸を含む材料を得ること;
    (b)該核酸を増幅する工程;および
    (c)該増幅核酸においてリスクのあるハプロタイプの存在または非存在を測定する工程
    を含む請求項4記載の方法。
  16. リスクのあるハプロタイプの存在が電気泳動分析により行われる請求項15記載の方法。
  17. リスクのあるハプロタイプの存在を測定する工程が制限断片長多型分析により行われる請求項15記載の方法。
  18. リスクのあるハプロタイプの存在を測定する工程が配列分析により行われる請求項15記載の方法。
  19. リスクのあるハプロタイプの存在を測定する工程がハイブリダイゼーション分析により行われる請求項15記載の方法。
  20. リスクのあるハプロタイプを含有するホスホジエステラーゼ4D遺伝子の領域の核酸増幅のためのプライマーを含有してなる、個体における脳卒中に対する罹患性を診断するためのキット。
  21. プライマーが、核酸増幅に適切な長さの核酸のセグメント、配列番号:1およびマイクロサテライトマーカーAC0088181-1の対立遺伝子0と比べて核酸位置142780にそれぞれ、単一ヌクレオチド多型を含有してなる請求項20記載のキット。
  22. プライマーが、配列番号:1、ミクロサテライトマーカーAC008818-1の対立遺伝子0と比較して、核酸位置142780、135112、132562、131865、129361、129360、125304、123426、123312、120628、118914、111781、111252、109301、107849、105225、104552、102977、100795、99035、88614、88456、83119、82244、80127、78552の単一ヌクレオチド多型またはミクロサテライトマーカーおよびその組み合わせからなる群より選ばれる、核酸増幅に適切な長さの核酸のセグメントを含有してなる請求項20記載のキット。
  23. プライマーが、配列番号:1と比べて、核酸位置138806、131865、129361、120628、91470の核酸位置の単一ヌクレオチド多型からなる群より選ばれる、核酸増幅に適切な長さの核酸のセグメントを含有してなる請求項20記載のキット。
  24. 対照と比べて個体におけるPDE4Dイソ型発現レベルを決定する工程を含み、イソ型発現の発現における差異が脳卒中に対する罹患性を示す個体における脳卒中に対する感受性の評価方法。
  25. イソ型PDE4D7および/またはPDE4D9発現が測定される請求項24記載の方法。
  26. 対照試料中のホスホジエステラーゼ4D遺伝子によりコードされるポリペプチドの発現または組成と比較して、試験試料中のホスホジエステラーゼ4D遺伝子によりコードされるポリペプチドの発現または組成における変化を検出する工程を含み、試験試料中のポリペプチドの発現または組成における変化が脳卒中に対する罹患性を示す、脳卒中に対する感受性の診断方法。
  27. ホスホジエステラーゼ4D遺伝子によりコードされるポリペプチドの発現または組成における変化が、対照試料中に発現されたスプライシングバリアントポリペプチドとは異なる試験試料中の試験試料中のスプライシングバリアントポリペプチドの発現を含む請求項26記載の方法。
  28. 対照と比較してPDE4Dイソ型レベルを調節することを含み、それにより調節されたイソ型レベルが健康な個体におけるレベルを模倣する、個体における脳卒中の発生を予防する方法。
  29. イソ型レベルが、ホスホジエステラーゼ4D遺伝子結合因子、ホスホジエステラーゼ4D遺伝子レセプター、ペプチド模倣物、融合タンパク質、プロドラッグ、抗体またはリボザイムを用いてイソ型の発現を調節することにより調節される請求項28記載の方法。
  30. イソ型レベルがイソ型の発現レベルを遺伝子的に変化させることにより制御される請求項28記載の方法。
  31. イソ型レベルがイソ型の比を変化させることにより調節される請求項28記載の方法。
  32. イソ型PDE4D7および/またはPDE4D9が調節される請求項28記載の方法。
  33. 末梢血またはそれに由来する細胞のサンプル中のPDE4Dメッセージまたはタンパク質または酵素活性を測定することにより、RNAまたはタンパク質レベルでの1つ以上のPDE4Dイソ型の発現、またはその酵素活性の調節において治療の有効性をモニターする方法。
  34. ホスホジエステラーゼ4D遺伝子における脳卒中のリスクがあるハプロタイプの有無についてスクリーニングする工程を含む、特定の個体における脳卒中予防または処置のための特定の治療の有効性を予測する方法。
  35. 末梢血またはそれに由来する細胞の試料中のPDE4Dメッセージまたはタンパク質または酵素活性を測定することにより、RNAまたはタンパク質レベルでの1つ以上のPDE4Dイソ型の発現、またはその酵素活性についてスクリーニングする工程を含む、特定の個体における脳卒中予防または処置のための特定の治療の有効性を予測する方法。
  36. 脳卒中に対して罹患性である個体と比べて、個体により頻繁に存在するホスホジエステラーゼ4D遺伝子における保護的ハプロタイプについてスクリーニングする工程を含み、保護的ハプロタイプが脳卒中のリスクを有意に減少させる、個体における脳卒中に対する低減した、または保護的罹患性の診断方法。
  37. 保護的ハプロタイプが、配列番号:1およびミクロサテライトマーカーAC0088181-1についての対立遺伝子-8と比べて、142780位のA対立遺伝子により特徴付けられる請求項36記載の方法。
JP2004540173A 2002-09-25 2003-09-25 ヒト脳卒中の罹患性遺伝子;治療法 Pending JP2006500068A (ja)

Applications Claiming Priority (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US10/255,120 US20040091865A1 (en) 2001-03-19 2002-09-25 Human stroke gene
US10/419,723 US20040014099A1 (en) 2001-03-19 2003-04-18 Susceptibility gene for human stroke; methods of treatment
US65012003A 2003-08-27 2003-08-27
PCT/US2003/029906 WO2004028341A2 (en) 2001-03-19 2003-09-25 Susceptibility gene for human stroke; methods of treatment

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2006500068A true JP2006500068A (ja) 2006-01-05
JP2006500068A5 JP2006500068A5 (ja) 2006-11-24

Family

ID=56290488

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004540173A Pending JP2006500068A (ja) 2002-09-25 2003-09-25 ヒト脳卒中の罹患性遺伝子;治療法

Country Status (4)

Country Link
EP (1) EP1552012A4 (ja)
JP (1) JP2006500068A (ja)
AU (1) AU2003278877A1 (ja)
CA (1) CA2499320A1 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN109298133B (zh) * 2018-07-18 2021-07-13 重庆邮电大学 基于边缘通道校正的探测器模块生产良品率改进方法

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
AU6189999A (en) * 1998-10-15 2000-05-08 Bioimage A/S Specific therapeutic interventions obtained by interference with redistribution and/or targetting
ATE387498T1 (de) * 1998-12-30 2008-03-15 Oligos Etc Inc Therapeutische pde4d phosphodiesterase inhibitoren
CA2377484A1 (en) * 1999-06-25 2001-01-04 Memory Pharmaceutical Corporation Cyclic amp phosphodiesterase isoforms and methods of use
US20030054531A1 (en) * 2001-03-19 2003-03-20 Decode Genetics Ehf, Human stroke gene

Also Published As

Publication number Publication date
AU2003278877A8 (en) 2004-04-19
AU2003278877A1 (en) 2004-04-19
EP1552012A4 (en) 2006-06-07
CA2499320A1 (en) 2004-04-08
EP1552012A2 (en) 2005-07-13

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US20050287551A1 (en) Susceptibility gene for human stroke; methods of treatment
US20050164220A1 (en) Susceptibility gene for human stroke: method of treatment
CA2612475C (en) Genetic variants in the tcf7l2 gene as diagnostic markers for risk of type 2 diabetes mellitus
US20030054531A1 (en) Human stroke gene
US20050272051A1 (en) Methods of preventing or treating recurrence of myocardial infarction
JP2004508835A (ja) ヒト骨粗鬆症遺伝子
AU2003290527A1 (en) Susceptibility gene for myocardial infarction
US8034564B2 (en) Obesity gene and use thereof
US20080261231A1 (en) Diabetes gene
AU2003201728B2 (en) Gene for peripheral arterial occlusive disease
WO2003076658A2 (en) A susceptibility gene for late-onset idiopathic parkinson's disease
US20040014099A1 (en) Susceptibility gene for human stroke; methods of treatment
AU2003201728A1 (en) Gene for peripheral arterial occlusive disease
JP2006506988A (ja) 染色体5q35に位置したヒトII型糖尿病遺伝子−SLIT−3
JP2006500068A (ja) ヒト脳卒中の罹患性遺伝子;治療法
WO2000071751A1 (en) Diabetes gene
US20050214780A1 (en) Human type II diabetes gene - Kv channel-interacting protein (KChIP1) located on chromosome 5
WO2005123964A2 (en) Susceptibility gene for human stroke: methods of treatment
WO2000069879A9 (en) Ca7 cg04 gene
JP2006515992A (ja) ヒト骨粗鬆症遺伝子

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20060922

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20060922

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090611

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20091106