JP2006271336A - 機能性遺伝子取得方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 自然環境などより得られた被検試料から、目的の機能を有する微生物群を簡便に効率よく取得し、取得した微生物から、目的機能を有する遺伝子を取得する方法を提供することを目的とするものである。
【解決手段】 被検試料から機能性遺伝子を取得する方法であって、当該被検試料中に含まれる微生物群を、フローサイトメトリーにより複数群に分離する工程、分離した群から目的機能を有する微生物を含む群を特定する工程、特定した群から、目的機能を有する遺伝子を抽出し、回収する工程を含むことを特徴とする機能性遺伝子取得方法である。
【選択図】なし
【解決手段】 被検試料から機能性遺伝子を取得する方法であって、当該被検試料中に含まれる微生物群を、フローサイトメトリーにより複数群に分離する工程、分離した群から目的機能を有する微生物を含む群を特定する工程、特定した群から、目的機能を有する遺伝子を抽出し、回収する工程を含むことを特徴とする機能性遺伝子取得方法である。
【選択図】なし
Description
本発明は、自然環境などから産業上有用な遺伝子を取得する方法に関するものであり、特に、微生物を分取することによって目的機能を有する遺伝子を取得する方法に関する。
従来、海水、土壌、バイオフィルムから人間の口腔や皮膚に至るまで、様々な自然環境中の微生物から、直接、産業上有用な遺伝子を取得する試みがなされている。例えば、既知遺伝子を利用して有用遺伝子に特異的なプライマーを設計し、PCRにより増幅して遺伝子を得る方法がある。
しかし、プライマーが目的とする遺伝子以外の遺伝子と相互作用し得ることから、目的遺伝子と配列は類似するが、目的機能を有しないものが得られてしまう可能性がある。また、この方法では新規な遺伝子の取得は困難である。さらに、自然環境中から培養を経ないで直接取得された微生物の遺伝子は「メタゲノム」と呼ばれており、自然環境中に含まれる微生物やその遺伝子は多種多様である。よって、採取した試料中には目的の機能を有する遺伝子が少量しか含まれていない場合があり、単にランダムスクリーニングを行っても効率的ではない。
その他の方法としては、採取した試料中の微生物の集積培養を繰り返すことによって、目的機能を有する遺伝子を含む微生物を増殖させるものがある。しかし、この方法は微生物の生育速度に大きな影響を受け、コロニーを作らないなど増殖能に劣る微生物由来の遺伝子は得られない。
そこで、微生物を培養することなく効率的に目的遺伝子を取得する方法が開発されてきた。
例えば、特許文献1には、ゲルマイクロドロップ法とフローサイトメトリー法を用いて土壌から培養困難な状態の微生物(VBNC状微生物)を取得し、得られた微生物をカタラーゼ添加法により培養し、新規微生物および遺伝子を取得する技術が開示されている。
しかし、この技術では、アガロースゲル微小粒子(ゲルマイクロドロップ)で微生物を包括し、フローサイトメトリーによって細胞を分取し、得られた細胞をカタラーゼにより培養する必要があるため、工程が極めて煩雑であり、微生物の取得に長時間を要する。
また、自然環境中から微生物を検出または取得する方法として、特許文献2には、自然環境試料に含まれる微生物をビーズに吸着させた後、フローサイトメトリーにより検出する技術が記載されている。さらに、特許文献3には、静圧下で蛍光色素を自然環境試料中の微生物に吸着させ、フローサイトメトリーにより微生物を検出する技術が、特許文献4には、蛍光色素を用いず、レーザー光の照射による錯乱光によってフローサイトメトリーを用いて目的微生物を取得する技術が夫々開示されている。
しかし、これら特許文献2〜4の技術では、遺伝子を取得する方法は、何ら開示されていない。さらに特許文献2の技術では、抗体を介して微生物をビーズに吸着する必要があるため、極めて煩雑である。また、特許文献3の技術は、フローサイトメトリーでの検出感度を上げる方法であり、静水圧を必要とする工程は加圧設備が必要となり煩雑である。そして、特許文献4の技術では、取得できる微生物が限られるうえ、類似の微生物同士の分離は困難である。
特開2004−86106号公報
特開2002−181823号公報
特開2000−69995号公報
特開2003−304867号公報
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、自然環境等由来の試料から、目的の機能を有する微生物群を簡便に効率よく取得し、取得した微生物群から、目的機能を有する遺伝子を取得する方法を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、フローサイトメトリーを用いることによって、被検試料中の微生物から、目的の機能を有する遺伝子を効率的に取得し得ることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明の機能性遺伝子取得方法は、被検試料から機能性遺伝子を取得する方法であって、当該被検試料中に含まれる微生物群を、フローサイトメトリーにより複数群に分離する工程(以下、「分離工程」という)、分離した群から目的機能を有する微生物を含む群を特定する工程(以下、「特定工程」という)、および特定した微生物群から、目的機能を有する遺伝子を抽出し、回収する工程(以下、「回収工程」という)を含むことを特徴とする。
上記機能性遺伝子取得方法においては、上記分離工程および/または特定工程を、少なくとも2回以上行うことが好適な場合がある。例えば、試料中での目的遺伝子の存在比が小さい場合などに、目的遺伝子を有する微生物の濃度を高めることによって、目的遺伝子の取得をより一層効率的にできるからである。
上記機能性遺伝子取得方法は、酵素をコードする遺伝子を得るために用いることが好ましい。自然環境中の有害物質等を分解し得る遺伝子などを得ることができるからである。
有用な遺伝子が得られるという観点から、目的機能を有する微生物を含む群の特定を、上記特定化合物に対する酵素活性を指標として行うことが好ましい。また、上記酵素が、テトラクロロエチレン(PCE)分解酵素であることが好ましい。当該分解酵素をコードする遺伝子は、近年、環境汚染物質として問題となっているPCEの処理において、非常に有用である。
また、目的機能を有する微生物を含む群の特定を、特定化合物を含む培地での培養により行うことが好ましい。かかる培養により、例えば、特定化合物の酵素といった機能を有する微生物群および遺伝子を特定し易くなる。
本発明の機能性遺伝子取得方法により、自然環境などから得られる被検試料より、目的機能を有する微生物を従来より簡便で高効率に取得し、取得した微生物から目的の遺伝子を取得することができる。従って、試料中に目的遺伝子を有する微生物が少量しか存在しない場合でも、目的遺伝子を高効率に取得することが可能となる。また、これまで取得できなかったような新規遺伝子の取得も可能となることから、本発明方法は、自然科学分野における新規有用遺伝子の研究開発の促進に大きく寄与することができる。
本発明の機能性遺伝子取得方法は、被検試料から機能性遺伝子を取得する方法であって、当該被検試料中に含まれる微生物群を、フローサイトメトリーにより複数群に分離する工程(以下、「分離工程」という)、分離した群から目的機能を有する微生物を含む群を特定する工程(以下、「特定工程」という)、および特定した微生物群から、目的機能を有する遺伝子を抽出し、回収する工程(以下、「回収工程」という)を含むことを特徴とする。
本発明の製造方法に関して、以下、工程ごとに説明する。
<分離工程>
本発明方法において、分離工程とは、被検試料に含まれる微生物を、フローサイトメトリーにより複数の微生物群に分離する工程である。
本発明方法において、分離工程とは、被検試料に含まれる微生物を、フローサイトメトリーにより複数の微生物群に分離する工程である。
被検試料は、主に自然環境から得る。ここで自然環境とは、土壌、泥、河水、沼水、湖水、海水、植物、動物などの温和な生育環境、または深海、深地下、高温多湿地帯、極寒地、火山地、強酸性地、強塩基性地、高塩地、乾燥地および腐敗などにより小数の微生物種が大量に存在する天然環境等の極端な環境を意味する。その他、病院や工場等における空気、活性汚泥および排水、風味付け、果汁等の食品加工産業原料、更に金属表面等の人工的環境、または人間の口腔や皮膚、細胞組織、体内環境からも得ることができる。これら被検試料は、種類に応じて適切な事前処理をしてもよい。
この自然環境中に含まれる微生物群を、フローサイトメトリーを用いて、複数の微生物群に分離する。
フローサイトメトリーは、微生物細胞を浮遊液にし、高速でフローセル中を通過させ、工学的な手法によって細胞の測定および解析を行う方法である。例えば、蛍光色素によって試料を染色し、染色された試料が微細管を通過する過程で発する蛍光を高感度検出器によって測定し、解析する。即ち、フローセルに被検液を流しながらこれに励起光を照射し、流動する被検液中で発せられる蛍光を受光検出する方法が挙げられる。
このように、被検試料を蛍光色素で染色し、フローサイトメーターにより測定および解析を行うことができる。この解析結果によって、例えば、蛍光強度と細胞の大きさに基づいて複数のカテゴリー(本明細書では「リージョン(Regeon)」とも称する)に分類され、それぞれのカテゴリーに属する微生物を含む群(以下、「微生物群」という場合がある)に分離することができる。
上記分離工程は、1回あるいは2回以上行ってもよく、特に限定されない。また、連続して分離工程を行っても、後述する特定工程を行った後、再び分離工程を行ってもよく特に限定されない。
上記蛍光色素としては、フローサイトメーターで検出できるものであれば、特に限定されないが、例えば、フィコエリスリン(PE)、エチジウムブロマイド、プロピジウムアイオダイド、ヘキスト33258/33342、DAPI、アクリジンオレンジ、クロモマイシン、ミトラマイシン、オリボマシシン、パイロニンY、チアゾールオレンジ、FITC、ローダミン101、イソチオシアネート、BCECF、BCECF−AM、C.SNARF−1、C.SNARF−1−AMA、エクオリン、Indo−1、Indo−1−AM、Fluo−3、Fluo−3−AM、Fura−2、Fura−2−AM、オキソノール、ローダミン123、10−N−ノニ−アクリジンオレンジ、フルオレセイン、フルオレセインジアセテート、カルボキシフルオレセイン(CF)、カルボキシフルオレセインジアセテート(CFDA)、カルボキシジクロロフルオレセインジアセテート(CDCFDA)などを用いることができる。
<特定工程>
本発明方法において、特定工程とは、上記分離工程で分離した微生物群から目的機能を有する微生物を含む群を特定する工程である。
本発明方法において、特定工程とは、上記分離工程で分離した微生物群から目的機能を有する微生物を含む群を特定する工程である。
上記「特定」するとは、上記分離工程で得られた各カテゴリーのうち目的とする機能を有する微生物群を他の微生物群と識別し、分取することを意味する。目的とする機能を特定する方法としては、特に限定されないが、例えば、特定化合物に対する酵素活性を指標とすることができる。特定化合物に対する有用な機能を検出し得るからである。また、目的とする機能を特定する方法としては、抗原抗体反応などの当業者に公知な方法を用いて、各カテゴリーの微生物群が有する機能を特定することができ、特に限定されないが、例えば、各カテゴリーで得られた微生物群を、特定化合物を含む培地で夫々培養することにより特定することが好ましい。当該培地で培養することにより、特定化合物に対する耐性あるいは酵素活性などを評価することができる。例えば、上記指標と培養法を用いれば、培地で特定化合物を分解できる微生物群は、該特定化合物の分解酵素として有用機能を有する可能性がある。
上記特定化合物としては、当業者に公知のあらゆる化合物を用いることができ、特に限定されないが、例えば、環境有害物質、病原菌、再生医療用細胞などに由来する化合物を用いることができる。このうち、環境有害物質を用いることが好ましく、テトラクロロエチレン(PCE)を用いることがより好ましい。PCEに対する機能として、PCE脱塩素化(PCE分解)作用を有すれば、PCEにより汚染された土壌や地下水の浄化が可能となるからである。
上記特定工程により、目的機能を有する微生物群を高濃度に含むリージョンを識別し、該リージョンから該微生物群を分取することができる。
上記特定工程は、1回あるいは2回以上行ってもよく、特に限定されない。つまり、特定工程を行った後、上述した分離工程を再度行い、その後、再び特定工程を行ってもよく、特に限定されない。また、上記特定工程は、例えば、1つの特定化合物を含む培地で特定後、更に異なる特定化合物を含む培地で特定するという様に、複数の特定方法を用いて特定を行ってよく、特に限定されない。
本発明方法では、上記分離工程および/または特定工程を、少なくとも2回以上繰り返すことが好適な場合がある。このように繰り返すことにより、目的機能を有する微生物群をより高濃度に分取することが可能となる場合があるからである。
このような態様として、例えば、以下の順に行う様に構成される方法を挙げることができるが、かかる態様に限定されるものではない。
1)分離工程、分離工程、特定工程
2)分離工程、特定工程、分離工程、特定工程
3)分離工程、分離工程、特定工程、分離工程、特定工程
1)分離工程、分離工程、特定工程
2)分離工程、特定工程、分離工程、特定工程
3)分離工程、分離工程、特定工程、分離工程、特定工程
また、上記実施態様において、例えば、分離工程あるいは特定工程を更に連続して行うことも、更に追加することも、必要に応じて適宜行うことができる。また、上記態様以外にも、必要に応じて分離工程と特定工程を適宜組合せて実施することは、本発明方法の技術的範囲に当然含まれる。
<回収工程>
本発明方法において、回収工程とは、特定した微生物群から、目的機能を有する遺伝子を抽出し、回収する工程である。
本発明方法において、回収工程とは、特定した微生物群から、目的機能を有する遺伝子を抽出し、回収する工程である。
微生物が有する機能の発現は、微生物中の遺伝子に支配されるため、上記特定した微生物群から、遺伝子を取得することは、極めて有用であり、当該遺伝子の塩基配列のうち、機能の中心となる遺伝子部分を増殖することが可能となる。
そこで、上記特定工程により分取した目的機能を有する微生物群から、目的機能を有する遺伝子を抽出し、回収する。
上記遺伝子の抽出方法は、当業者に公知ないかなる方法も用いることができ、特に限定されないが、例えば、プロテアーゼを用いた溶菌法により行うことが好ましい。プロテアーゼにより微生物の細胞壁や細胞膜を破壊でき、遺伝子の抽出をより容易に行うことが可能となる。
このように抽出した遺伝子は、検出感度向上のため、増幅しておくことが好ましい。増幅方法としては、例えば、上記抽出した遺伝子DNAを鋳型として、センスプライマー、アンチセンスプライマーおよびDNAポリメラーゼなどを用いて増幅するPCRにより行うことができる。
さらに、例えば、増幅した遺伝子を用いてゲノムライブラリーを構築し、目的とする塩基配列を有する遺伝子を制限酵素により切断し、ベクターへ組み込んだ後、宿主細胞に入れ、目的遺伝子を増殖することにより、目的機能を有する遺伝子をコードする遺伝子を大量に取得することができる。
従って、上記特定工程と相俟って、自然環境などからの試料中に微生物が少量しか含まれていない場合でも、目的遺伝子を大量に取得することができる。
このような本発明方法は、特定化合物に対する有用な機能をコードする遺伝子を得ることができるが、このうち、酵素をコードする遺伝子を得るためのものであることが好ましく、例えば、上述した如く、テトラクロロエチレン(PCE)分解酵素をコードする遺伝子を得るためのものであることがより好ましい。
また、本発明方法では、少量の微生物から目的遺伝子を大量に得ることができるため、当業者に公知の例えばランダムスクリーニング法などにより、新規な有用機能を探索することが可能となり、新規有用遺伝子の開発研究に大きく寄与することも可能となる。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、前・後記の趣旨に適合しうる範囲で適宜変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
実施例1
PCE脱塩素化細菌として知られているDesulfitobacterium属細菌のKBC−1株(FERM BP−08573)をモデル微生物として選択して、フローサイトメトリーを用いた微生物群の特定を行った。
PCE脱塩素化細菌として知られているDesulfitobacterium属細菌のKBC−1株(FERM BP−08573)をモデル微生物として選択して、フローサイトメトリーを用いた微生物群の特定を行った。
<培地作成条件および培養条方法>
先ず、PCE分解菌を培養するための培地を、以下に示す通り調製した。表1の成分を水に溶解し、1N KOH水溶液でpHを7.2に調整し、更に水を添加して500mLにメスアップしたものを、20%CO2−80%N2ガスで液相パージした後、オートクレーブ滅菌した。
先ず、PCE分解菌を培養するための培地を、以下に示す通り調製した。表1の成分を水に溶解し、1N KOH水溶液でpHを7.2に調整し、更に水を添加して500mLにメスアップしたものを、20%CO2−80%N2ガスで液相パージした後、オートクレーブ滅菌した。
表1中、微量元素溶液は、表2に示す組成を有する。因みに、成分中FeCl2・4H2O溶解し難かったため、先ず、塩酸に溶解させた後に蒸留水を加え、更に他の成分を加えて均一溶液とした。
また、表1中のビタミン溶液は、表3に示す組成からなる均一溶液を200mLにメスアップした後、フィルター滅菌したものを用いた。
次に、別途表4に示す溶液を調製して滅菌後、嫌気的に混合した。さらに、滅菌した嫌気水(N2置換)を加えて約1Lに調整した。
表4中、1mMセレン−タングステン溶液は、表5に示す組成からなる溶液を用いた。
上記液体培地18mLを、25mL容量のバイアル瓶へ嫌気的に分注した。ここへ、大根畑土壌に由来するPCE脱塩素機能を有する微生物を含む微生物群(PCE脱塩素化微生物群)を接種した後、エタノールで溶解したPCEを50ppmとなる様に添加し、バイアル瓶をテフロンコートされたブチルゴム栓を介してアルミシールで密閉して30℃、150rpmで5週間振とう培養を行い、KBC−1株微生物群を培養した。
上記培養後のKBC−1株微生物群を含む培地を用いて、フローサイトメトリーによる解析を行った。詳しくは、上記培養液に、生細胞検出用の蛍光色素であるCFDAを最終濃度が1mMとなるように添加し、30℃で30分間保温・染色した。染色後の微生物細胞を適当に希釈し、フローサイトメーター(ベックマンコールター社、FPICS ALTRA)を用いて解析し、縦軸をCFDAの蛍光強度、横軸を細胞の大きさとしたサイトグラムを作製した(図1(1))。細胞群集を蛍光強度と大きさに基づいてA〜Eの5種類のリージョンに分類した。
得られた各リージョン中のKBC−1株微生物群を、PCE脱塩素化能を調べることにより同定したところ、KBC−1株微生物群は、リージョンAに集積することがわかった。また、試料中全微生物に対するリージョンAの微生物群の存在比から、フローサイトメトリーによる分離前のKBC−1株微生物群の存在率は約0.1%であることがわかった。
更に、リージョンAから10個の細胞を分取し、培養し、再びフローサイトメーターにより解析し、サイトグラムを作製したところ、KBC−1株微生物群を含むリージョンが特定された(図1(2))。
このリージョン中のKBC−1株微生物群は、図1(2)で示された全微生物の約30%であり、上記図1(1)でのリージョンAの存在比と比べ、フローサイトメトリーにより、はるかに濃縮されていることがわかる。また、フローサイトメトリーによって、10種類以下の微生物群に絞り込むことができた。
上記実施例1では、モデル化合物を用いたため、予め培養を行ったが、自然環境中からの試料を用いてフローサイトメトリーにより微生物群を分取し、PCEを含む培地で培養することによって、PCE脱塩素化活性に有用な遺伝子を含む微生物群を高効率に取得することができることが示された。
実施例2
PCEをcis−DCEまで脱塩素化する微生物であるDesulfitobacterium sp.KBC76株を用いて、フローサイトメトリーによる微生物群および遺伝子の特定を行った。
PCEをcis−DCEまで脱塩素化する微生物であるDesulfitobacterium sp.KBC76株を用いて、フローサイトメトリーによる微生物群および遺伝子の特定を行った。
25mLのバイアル瓶に、実施例1で用いた5mLの液体培地を分注し、KBC76株微生物群を含むPCEで汚染された土壌(8g)を添加した。
上記KBC76株微生物群を含む培地を用いて、実施例1と同様にして、フローサイトメトリーによる解析を行い、サイトグラムを作製し(図2(1))、A〜Dの4種類のリージョンに分類した。各リージョン中のKBC76株微生物群を、PCE脱塩素化能を調べることにより同定したところ、リージョンCに集積することがわかった。リージョンCから、細胞を分取し、再度フローサイトリーにより解析し、サイトグラムを作製した(図2(2))。この結果、フローサイトメトリーによりKBC76株微生物群を含むリージョンが特定され、100種類以下の微生物群に絞り込むことができることがわかった。
更に、フローサイトメトリーによる分離前のサンプル(以下、分離前サンプル)と、フローサイトメトリーによって得られた微生物群から(以下、分離後サンプル)、PCE脱塩化活性を有する遺伝子(以下、PCE分解遺伝子)をそれぞれ抽出し、KBC76株が有する脱塩素化(デハロゲナーゼ)遺伝子を特異的に検出することができる下記プライマーを用いてPCRを行った。PCR条件は、以下に示す。
<DNAの抽出方法>
DNA抽出は、DNA抽出キット(Qbiogene社製のFastDNA SPINkit for Soil)を用いて行った。
DNA抽出は、DNA抽出キット(Qbiogene社製のFastDNA SPINkit for Soil)を用いて行った。
<PCR条件>
上記キットで得られたDNAを鋳型とし、下記の条件でPCRを行った。
(1)プライマー
KBC76株のデハロゲナーゼ遺伝子検出用プライマー:配列番号1(SEQ ID NO:1)および配列番号2(SEQ ID NO:2)
(2)PCR反応液(100μL中)
1×Ex Taq buf.
0.2mM dNTP溶液
1.5mM MgCl2
0.2μM 上記2種類のプライマー
0.25U Ex Taq Polymerase(タカラバイオ)
1%(vol/vol)段階希釈DNA溶液
(3)PCR増幅装置:Geneamp PCR System 9700(アプライドバイオシステムズ)
(4)PCRサイクル
94℃×5分を行った後、94℃×30秒、53℃×30秒、72℃×30秒を30サイクル行い、さらに72℃×7分の工程を行った後、4℃で保存した。
上記キットで得られたDNAを鋳型とし、下記の条件でPCRを行った。
(1)プライマー
KBC76株のデハロゲナーゼ遺伝子検出用プライマー:配列番号1(SEQ ID NO:1)および配列番号2(SEQ ID NO:2)
(2)PCR反応液(100μL中)
1×Ex Taq buf.
0.2mM dNTP溶液
1.5mM MgCl2
0.2μM 上記2種類のプライマー
0.25U Ex Taq Polymerase(タカラバイオ)
1%(vol/vol)段階希釈DNA溶液
(3)PCR増幅装置:Geneamp PCR System 9700(アプライドバイオシステムズ)
(4)PCRサイクル
94℃×5分を行った後、94℃×30秒、53℃×30秒、72℃×30秒を30サイクル行い、さらに72℃×7分の工程を行った後、4℃で保存した。
PCRの増幅結果を、各希釈率における遺伝子の存在の有無として、表6に示す。評価方法は、○:遺伝子を検出できた、×:遺伝子を検出できなかった、とした。
この結果、分離前サンプルと分離後サンプルとでは、PCR増幅産物であるプライマー由来の16SrRNA遺伝子をコードするDNA遺伝子が同じ希釈率で検出され、両者でPCR増幅(微生物数)は同程度とみなすことができる。PCE分解遺伝子をコードする遺伝子を検出した結果、分離前サンプルでは、希釈率101までしか検出することができなかったのに対し、分離後サンプルでは、希釈率104まで検出することができた。
この結果、自然環境中の試料からPCE分解機能を有する遺伝子を取得できることがわかった。また、試料中に目的微生物が少ない場合でも、目的遺伝子を高効率に取得することができることがわかった。
従って、本発明方法により、自然環境中の試料から高効率に目的遺伝子を取得することができ、また、従来では取得することが困難であった微量の微生物群に含まれる遺伝子を取得することも可能となり、新規有用遺伝子の取得に繋がる。
Claims (6)
- 被検試料から機能性遺伝子を取得する方法であって、
当該被検試料中に含まれる微生物群を、フローサイトメトリーにより複数群に分離する工程(以下、「分離工程」という)、
分離した群から目的機能を有する微生物を含む群を特定する工程(以下、「特定工程」という)、および
特定した微生物群から、目的機能を有する遺伝子を抽出し、回収する工程
を含むことを特徴とする機能性遺伝子取得方法。 - 上記分離工程および/または特定工程を、少なくとも2回以上行う請求項1に記載の機能性遺伝子取得方法。
- 目的機能を有する微生物を含む群の特定を、特定化合物を含む培地での培養により行う請求項1または2に記載の機能性遺伝子取得方法。
- 酵素をコードする遺伝子を得るためのものである請求項1〜3のいずれかに記載の機能性遺伝子取得方法。
- 目的機能を有する微生物を含む群の特定を、特定化合物に対する酵素活性を指標として行う請求項4に記載の機能性遺伝子取得方法。
- 上記酵素が、テトラクロロエチレン(PCE)分解酵素である請求項4または5のいずれかに記載の機能性遺伝子取得方法。
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