JP2006250779A - 換気効率の測定方法および換気効率の測定システム - Google Patents
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Abstract
【課題】 計測設備コストを安価にすることができ、画像処理の知識を必要とすることなく、簡単に換気効率を測定することができる換気効率の測定方法および該方法を実現できるシステムを提供する。
【解決手段】 本発明の換気効率の測定方法は、室内10の測定領域10aに所定の照度の照明を照射するステップと、その照度において室内10のミスト粒子濃度が測定領域10aの輝度に比例する範囲内の所定濃度となるように、発煙装置11からミスト粒子を発生させるステップと、室内10を換気するステップと、撮影手段13の各較正要素を設定し、測定領域10aを所定時間間隔で撮影し、画像データを経過時間と関連付けて記憶するステップと、撮影手段13から画像データと経過時間とを読み出し、画像データを輝度に対応した画像信号値に変換し、画像信号値の対数値と経過時間との関係から、室内10の測定領域10aにおける局所換気回数Npを算出するステップとを含む。
【選択図】 図1
【解決手段】 本発明の換気効率の測定方法は、室内10の測定領域10aに所定の照度の照明を照射するステップと、その照度において室内10のミスト粒子濃度が測定領域10aの輝度に比例する範囲内の所定濃度となるように、発煙装置11からミスト粒子を発生させるステップと、室内10を換気するステップと、撮影手段13の各較正要素を設定し、測定領域10aを所定時間間隔で撮影し、画像データを経過時間と関連付けて記憶するステップと、撮影手段13から画像データと経過時間とを読み出し、画像データを輝度に対応した画像信号値に変換し、画像信号値の対数値と経過時間との関係から、室内10の測定領域10aにおける局所換気回数Npを算出するステップとを含む。
【選択図】 図1
Description
本発明は、室内の所定測定領域の換気効率を測定する方法および該換気効率の測定システムに関する。
近年、新築あるいは改築後の住宅やビルなどにおいて、建築材料などから発散する化学物質による室内空気汚染によって、めまい、吐き気、頭痛などのシックハウスが大きな問題となっている。室内空気汚染の原因となる化学物質として、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレンなどが指定されており、指針値(ホルムアルデヒドは0.08ppm、トルエンは0.07ppm、キシレンは0.20ppm)が設定されている。ホルムアルデヒドは、合板や繊維板などの建材、オフィス家具、カーペットなどに使用される接着剤や防腐剤に含有され、トルエンやキシレンは、塗料や接着剤などの溶剤として含有されている。これらホルムアルデヒド、トルエン、キシレンは、蒸気となって室内に拡散し、室内を汚染する。その他、防虫剤、化粧品、タバコ、ストーブなどからも有害な化学物質が発生し、室内を汚染する。室内の汚染によるシックハウスは、住宅やビルが高気密化していることによって生じており、適切な換気を行うことで解消できるものである。建築基準法では、居室の種類に応じて、所定の換気回数を確保できる有効換気量を有する換気設備の設置を義務付けている。住居などの居室では、毎時0.5回以上、その他の居室では、毎時0.3回以上の換気回数とされている。ここで、換気とは、室内の空気と外気とが入れ替わることをいい、換気回数とは、1時間に入れ替わった空気の容積で表される換気量を、室内の容積で除した値をいう。
住宅やビルなどに換気設備を設置するに際して、例えば、給気口をどの位置にすれば効率が良いか、排気口をどの位置にすれば効率が良いか、また、設置した場合に、どの位置でどの程度の換気が行われるかなどを検討する上で、所定位置における換気効率の測定が行われている。従来、換気効率を測定する方法として、トレーサーガス法が使用されている(例えば、特許文献1参照)。ここで、トレーサーガス法を用い、室内の所定領域における換気効率を測定する場合について説明する。トレーサーガス法では、まず、室内に、フッ化硫黄(SF6)または二酸化炭素(CO2)などのトレーサーガスを、所定濃度になるように拡散させる。次に、室内を換気し、濃度測定器を用いて所定時間ごとに、その所定領域のトレーサー濃度を測定する。この場合、トレーサーガスを拡散させるとともに、室内を換気していてもよい。
換気回数Nは、換気設備によって単位時間あたりに流入した供給空気を、室容積で除することにより算出することができる。経過時間と、測定したトレーサーガス濃度との関係をグラフ化し、そのグラフの減衰曲線と時間軸で囲まれる面積を算出することにより、換気によって供給空気が室内のある点に到達するまでに要した平均的な時間である空気齢τpを算出する。空気齢τpは、トレーサーガスで色付けされた室内の空気と外気との入れかわりを表す指標であるが、例えば、トレーサーガスとして炭酸ガスを用いる場合には、大気中に予め炭酸ガスが含まれるため、大気中の炭酸ガス濃度をバックグラウンド濃度とし、室内のトレーサーガス濃度とバックグラウンド濃度の差を取る必要がある。また、この値を濃度減衰が始まる前の初期トレーサー濃度で基準化した値を、上記トレーサーガス濃度として採用する。上記点を含む所定領域内に、トレーサーガスが完全拡散していると仮定すると、空気齢τpの逆数は、所定領域内の局所的な換気回数Np(以下、局所換気回数と呼ぶ。)とみなすことができる。この局所換気回数Npを上記の換気回数Nで除して、空気交換効率Eを得る。この空気交換効率Eは、換気効率の1つの指標であり、空気交換効率Eを算出することにより、その所定領域における換気効率を得ることができる。
トレーサーガス法では、トレーサーガスとして、SF6を用いる場合、約10ppm、CO2を用いる場合、約5000〜約10000ppmの濃度になるように拡散させることができる。このトレーサーガス法は、室内の空気交換効率に顕著な分布がある場合、室内をより多くの空間に分割して測定点を増やさなければ、正確な空気交換効率分布を得ることができず、測定点を多くすると、時間と労力を要するといった問題があった。
そこで簡便な方法として、ビデオカメラを用いる方法が提案されている(非特許文献1および非特許文献2参照)。トレーサーガス法では、トレーサー物質の濃度減衰を測定しているが、このビデオカメラによる方法では、ビデオ画像によってトレーサー物質の濃度減衰を測定する。具体的には、まず、発煙装置で、固体粒子を霧状に噴射させ、その固体粒子を拡散させた後、換気を行い、ビデオカメラで撮影して所定時間ごとにビデオ画像信号値を測定する。なお、ビデオ画像信号値は、モノクロ映像の8ビットの映像信号(輝度信号)を、0〜255の画像信号にデジタル変換することによって得ている。次に、得られたビデオ画像信号値(トレーサー濃度が0の時に画像信号値が0でない場合には、これをバックグラウンド画像信号値として、ビデオ画像信号値から差し引いた値)と、撮影開始からの経過時間とをグラフ化し、最小自乗法により傾きを算出し、その傾きを換気回数とし、この方法では、換気回数を測定する。また、この方法では、ビデオカメラの絞り、露出時間、フィルム感度、照度などの各要素が、単位の異なる要素であるため、経験に基づいて較正を行っている。ここで、カメラの較正とは、撮影対象の輝度と画像信号が直線的な関係となるようにカメラを設定することをいい、正確に較正することで、高い精度を実現することができるものである。
ビデオカメラは、入力された光の信号をCCD(電荷結合素子)といった半導体で受け、光電変換することにより、光の信号を電気信号に変換する。光の信号は、無ステップに無限の情報をもつため、アナログ信号とみなすことができ、ビデオカメラで取り込まれた信号は、電圧の強弱に変換されたアナログの映像信号となる。したがって、アナログの映像信号をデジタル変換して画像信号を得るには、アナログ−デジタル変換(AD変換)を含む画像処理の知識を必要とする。
上記方法では、カメラの較正を、経験に基づいて行うため、高い精度を得ることができないといった問題があった。したがって、共通の規格として正確に較正でき、画像処理の知識を必要とすることなく、換気効率を簡単に測定することができるシステムおよび方法が望まれている。
特開2004−101058号公報
大場正昭、入江謙治、「環境風洞におけるビデオ画像計測手法の開発研究 その3 画像濃度減衰法による通風模型の換気回数の測定方法について」、日本建築学会計画系論文集、第506号、p25−30、1998年4月
大場正昭、「ビデオ画像による室内換気回数の測定方法に関する研究」、可視化情報、Vol.16、Suppl.、No1、1996年7月
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、計測設備コストを安価にすることができ、画像処理の知識を必要とすることなく、簡単に換気効率を測定することができる換気効率の測定方法および該方法を実現する換気効率測定システムを提供することを目的とする。
本発明者等は、上記課題に鑑みて鋭意検討を加えてきたところ、ビデオカメラに代えて、一般に多く普及しているデジタルカメラを用いることで、AD変換といった画像処理の知識を必要とすることなく、また、経験に基づく較正ではなく、絞り、露出時間、フィルム感度(ISO)、照度を適切な範囲の値に設定し、かつ共通のAPEX値に変換して較正することにより、正確な較正を行うことができ、さらに、照明の照度に応じて適切な範囲のトレーサー濃度に設定することで、得られる画像信号値が撮影対象の輝度に比例することを見出し、また、画像信号値の自然対数値が、時間に比例し、その傾きを局所換気回数とみなすことができることを見出すことによりなされたものである。また、室全体の換気回数Nは、局所換気回数を得るのと同様の方法を用いて、室内のトレーサー濃度が一様に減衰するように室内を撹拌すれば、測定することができ、局所換気回数をこの換気回数Nで除することにより簡単に空気交換効率Eを得ることができる。
すなわち、本発明の換気効率の測定方法は、(A)室内の所定の測定領域に所定の照度の照明を照射するステップと、(B)照度において室内のミスト粒子濃度が測定領域の輝度に比例する範囲内の所定濃度となるように、発煙装置からミスト粒子を発生させるステップと、(C)室内を換気するステップと、(D)撮影手段の各較正要素を設定し、測定領域を所定時間間隔で撮影し、画像データを経過時間と関連付けて記憶するステップと、(E)撮影手段から画像データと経過時間とを読み出し、画像データを輝度に対応した画像信号値に変換し、画像信号値の対数値と経過時間との関係から、室内の測定領域における局所換気回数を算出するステップとを含むものである。
また、本発明によれば、上記(A)、(C)、(B)、(D)、(E)のステップの順に実行されてもよい。
本発明によれば、上記(C)のステップを除く、上記(A)、(B)、(D)、(E)のステップを繰り返すステップをさらに含み、これによって得られた補正値を用いて局所換気回数を補正することにより、高い精度の局所換気回数を得ることができる。
本発明によれば、ミスト粒子を拡散させるステップを含むことが好ましい。特に、測定を行う上で、測定前の条件を同じにするべく、換気前の室内のミスト粒子濃度を均一にすることが好ましいからである。
また、本発明によれば、上記(B)および上記(C)のステップの前に、測定領域を撮影するステップを含むことが好ましい。これは、空気齢の定義上、ミスト粒子によって色付けされた空気と、ミスト粒子によって色付けされていない空気の画像信号値の差を必要とするためである。なお、室内にミスト粒子が存在しない場合においても、背景色によって輝度が0になることはないため、このステップで、ミスト粒子が存在しない場合の輝度に対応する画像信号値を得るために必要な画像データを得ることが好ましい。
さらに、本発明によれば、上記(B)のステップの後に、測定領域を撮影するステップを含むことが好ましい。このステップでは、初期画像信号値を得るために必要な画像データを得る。この初期画像信号値は、各画像信号値を基準化するために用いられる。
また、本発明によれば、上記撮影手段が、デジタルカメラであり、上記較正要素が、フィルム感度、絞り、露出時間であることを特徴とする。
本発明によれば、上記フィルム感度、絞り、露出時間、測定領域の輝度の値を、APEX値に変換し、フィルム感度のAPEX値と測定領域の輝度のAPEX値との和を光値とし、絞りのAPEX値と露出時間のAPEX値との和を露出値とし、光値と露出値との差と、画像信号値の対数値とが比例関係になる範囲で、フィルム感度、絞り、露出時間を選択し、これら較正要素を撮影手段に設定する。
本発明の換気効率測定システムは、ミスト粒子を発生させ、室内を所定のミスト粒子濃度にする発煙装置と、室内の測定領域を所定の照度で照射する照明手段と、較正要素の設定が可能で、測定領域を所定時間間隔で撮影し、デジタル値で得られる画像データを経過時間と関連付けて記憶する撮影手段と、撮影手段から画像データと経過時間とを読み出し、画像データを輝度に対応した画像信号値に変換し、画像信号値の対数値と経過時間との関係から、室内の測定領域における局所換気回数を算出する処理手段とを含む。
本発明によれば、上記換気測定システムは、ミスト粒子を拡散させる撹拌手段をさらに含む。
本発明の換気効率の測定方法および換気効率測定システムを提供することにより、計測設備コストを安価にすることができ、画像処理の知識を必要とすることなく、換気効率を簡単に測定することができる。
以下、本発明を図面に示した具体的な実施の形態をもって説明するが、本発明は、後述する実施の形態に限定されるものではない。
図1は、本発明の換気効率の測定方法を実現するための装置を例示した図である。換気設備としては、一般の住居用では換気扇を挙げることができ、工場や事業用事務所などでは、給気ファンまたは排気ファンを備えるものを挙げることができる。本発明の換気効率の測定方法を説明する前に、この方法を実現するための換気効率測定システムについて説明する。
本発明の換気効率測定システムは、図1に示すように、ミスト粒子を発生させ、室内10を所定のミスト粒子濃度にする発煙装置11と、室内10の測定領域10aを所定の照度で照射する照明手段12と、較正要素の設定が可能で、測定領域10aを所定時間間隔で撮影し、デジタル値で得られる画像データを経過時間と関連付けて記憶する撮影手段13と、撮影手段13から画像データと経過時間とを読み出し、画像データを輝度に対応した画像信号値に変換し、画像信号値の対数値と経過時間との関係から、室内10の測定領域10aにおける局所換気回数を算出する処理手段14とを含んで構成される。図1では、さらに、ミスト粒子を室内10に均一に拡散させるための撹拌手段15が配置されている。図1には、給気ファンが接続される給気口16aと、排気ファンが接続される排気口16bとが示されている。また、図1では、撮影手段13が室外に配置され、窓17を通して測定領域10aを撮影している。撮影手段13に記録された画像データは、撮影終了後、撮影手段13と処理手段14とを接続し、処理手段14に送ることによって画像信号値に変換され、その画像信号値から局所換気回数が算出される。
図1に示す発煙装置11は、セラミックヒータなどの気化器または熱交換器などの加熱手段を備え、液状のスモーク液を所定位置に配置し、加熱手段によって加熱気化させることにより、霧状のミスト粒子を発生させる。加熱温度は、スモーク液の沸点とすることができる。スモーク液は、これまで知られたいかなる材料であってもよいが、安全性の高いものが好ましく、石油から得た液状の炭化水素類の混合物であり、無色、無味で、高い安全性を有することから食品・医薬品・化粧品など、人体と直接コンタクトするところに用いられる流動パラフィン、安全性の高いグリコールと蒸留水とからなる発煙剤などを挙げることができる。なお、発煙装置で発生するミスト粒子は、約0.05μm〜約50μmで分布し、その多くは、約0.5μm〜約5μmで存在する。室内に発生させるミスト粒子の濃度は、照明手段の照度において、測定領域10aの輝度と室内10におけるミスト粒子濃度とが比例関係となる範囲から決定される。ミスト粒子濃度と輝度との関係を説明するため、図2を参照する。
図2は、各照度における、粒子濃度(g/m3)と、輝度計で測定した測定領域の輝度(cd/m2)との関係を示した図である。ここでは、室内の寸法を、高さ2.1m、幅1.77m、奥行き1.77m、容積6.64m3とし、照明手段として、500Wのレフランプを使用し、ミスト粒子濃度を変化させるため、スモーク液(SAFEX社 D spezial)の量を変化させた。なお、照度は、レフランプの照射量を変化させ、200ルクス、400ルクス、600ルクスの3種類で測定した。
この結果、ミスト粒子の濃度が高くなるにつれて、光が遠方まで届かなくなり、輝度の増加量が小さくなった。しかしながら、ミスト粒子の濃度が低い範囲では、濃度の増加に比例して輝度が増加した。その比例する範囲は、照度が大きくなるほど範囲が広がった。本発明では、輝度に比例する、この直線性が得られる範囲で、ミスト粒子濃度を決定する。例えば、図2に示す実施の形態で、照明手段の照度が200ルクスの場合には、直線性が得られる0〜約0.8g/m3の範囲、400ルクスの場合には、0〜約1.6g/m3の範囲、600ルクスの場合には、0〜約3.2g/m3の範囲とすることができる。
再び図1を参照して、本発明の換気効率測定システムについて説明する。照明手段12は、測定領域10aを所定の照度で照射する。照明手段12としては、上記のレフランプを挙げることができる。レフランプは、ガラス球の内面が反射率の高いアルミニウム反射鏡になっており、効率の高い反射型電球である。照度が小さい場合には、ミスト粒子の濃度範囲が狭くなり、スモーク液の計量誤差などによってその濃度範囲から逸脱し、測定精度が低下する。したがって、ミスト粒子の濃度範囲が広い、高い照度で照射可能な照明手段12が好ましい。また、照明手段12は、1つに限らず、複数配置することもできる。
撮影手段13は、較正要素の設定が可能で、測定領域10aを所定時間間隔で撮影し、デジタル値で得られる画像データを経過時間と関連付けて記憶する。デジタル画像として撮影することができ、その画像を経過時間とともに記憶することができるものであればいかなるものであってもよいが、一般に普及しているデジタルカメラを用いることができる。デジタルカメラは、解像度に応じて、200万画素、400万画素、600万画素といった数多くの画素からなるデジタル画像として撮影することができる。各画素は、デジタル値で得られるため、AD変換を行う必要はない。デジタルカメラは、メモリスロットを備え、メモリスロットにメモリを挿入することができる。撮影された画像は、画像データとしてメモリ内に格納することができ、このメモリを取り外し、処理手段14として使用されるコンピュータに設けられるメモリスロットに挿入することにより、また、撮影手段13をUSB(Universal Serial Bus)などで処理手段14に接続することにより、処理手段14に画像データを送ることができる。
本発明では、撮影された画像信号値と、被写体の輝度とが一定の関係になければならず、より高い精度を実現するため、較正要素の設定が必要である。撮影手段13としてデジタルカメラを用いる場合、3つの較正要素の設定が必要である。すなわち、フィルム感度(ISO)、絞り、露出時間である。これらは互いに異なる単位であるため、同次元で考えるためにAPEX値を導入する。各要素からAPEX値への変換は、下記式によって行われる。
ここで、Svは、APEX値に変換されたフィルム感度値である。ISOは、フィルム感度で、フィルムの光に対する敏感さを数値化したものである。Bvは、APEX値に変換された被写体の輝度値である。Bは、被写体の輝度で、単位はcd/m2である。Avは、APEX値に変換されたレンズ絞り値である。Fは、レンズ絞りによって調整される値である。Tvは、APEX値に変換されたシャッタースピード値である。Tは、シャッタースピードで、1/Tは、露出時間で、単位は秒である。ここでさらに、白からの色の閾値である光値Lvと、シャッタースピードと絞りとによって決まる露出値Evとを定義する。
撮影手段13によって撮影された画像の明るさは、光値Lvと露出値Evとのバランスによって変化する。ここで、図3に、光値Lv−露出値Evと、画像信号値Iの対数値との関係を示す。色票を背景板上に配置し、左右2個ずつの計4個の照明手段で、背景板の表面に対して45°の方向から照射し、上記3つの要素のうち、2つの要素をAPEX値が5になるように設定し、残りの1つの設定を変化させながら撮影した。照明手段には、ブルーランプを使用した。図3に示されるように、Lv−EvとIの底が2の対数値とが直線的な関係になり、この範囲では撮影対象の輝度と画像信号値とが比例関係となることが見出された。図3に示す実施の形態では、Lv−Evが約1.5以下であれば、直線性を示した。したがって、Lv−Evが1.5以下になるように設定することで、画像信号値を、その撮影対象の輝度と見なすことができる。
再び図1を参照して、本発明のシステムを説明すると、撮影手段13に記憶された画像データは、上述したUSBなどで接続された処理手段14に送られる。処理手段14は、パーソナルコンピュータなどのコンピュータとすることができ、市販の画像処理ソフトウェアを実行して、画像処理を行うことができる。画像データは、撮影手段13が処理手段14に送っても、処理手段14が撮影手段13から取得してもよい。処理手段14が読み取った画像データと経過時間とは、処理手段14のメモリ内に保持され、上記ソフトウェアの実行によって、画像データは画像信号値に変換される。画像データが位置、色、明暗などの情報からなる場合、その情報の中から明暗を示す情報を得、色を考慮した上で、明暗を表す、例えば、0〜255の画像信号に変換する。画像データが白黒二値のデータであれば、明暗のみを考慮すればよい。この場合、0が黒で、255が白である。
本発明では、換気前の画像データを時間0として取得し、その画像データを変換して初期画像信号値を得ておき、各経過時間において得られた画像信号値を、この初期画像信号値で除することにより基準化した値を算出し、その基準化した値を使用することもできる。また、ミスト粒子によって色付けされた空気と、ミスト粒子によって色付けされていない空気の画像信号値の差を取るため、ミスト粒子を発生させる前に、測定領域10aの背景を撮影し、画像データを得ることが好ましい。その画像データは、処理手段14によって画像信号値に変換され、各経過時間における各画像信号値からこの画像信号値を引算した値を、以下に示す局所換気回数を算出するために使用する画像信号値とすることができる。
得られた画像信号値を、自然対数値に変換し、対数値と経過時間との関係から局所換気回数を算出する。画像信号値と経過時間とをグラフ化すると、減衰曲線を表し、空気齢は、この減衰曲線と時間軸で囲まれた面積となる。図4に、例示として、減衰曲線を示す。図4(a)に、経過時間(h)と、基準化した画像信号値との関係を、図4(b)に、経過時間(h)と、基準化した画像信号値の自然対数値との関係を示す。図4(a)に示す減衰曲線は、指数関数で近似することができ、この指数関数を積分した値は、図4(b)に示す直線の傾きの逆数となり、空気齢τpとして得ることができる。測定領域10aの局所換気回数Npは、この空気齢τpの逆数であるから、上記傾きを、局所換気回数Npとして算出することができる。さらに、室全体の換気回数Nを、局所換気回数を得るのと同様の方法を用いて、室内のトレーサーが一様の濃度で減衰するように、室内を撹拌しながら測定して求め、この換気回数Nと、局所換気回数Npとから空気交換効率Eを算出することができる。上記ソフトウェアは、この局所換気回数Np、空気交換効率Eを算出するプログラムを含むように構成することができる。処理手段14は、上記換気回数Nを、ユーザの入力により得ることができる。
本発明のシステムは、図1に示すように、室内10の中央床に配置され、ミスト粒子を拡散させる撹拌手段15を含むことができる。撹拌手段15は、回転する撹拌翼を備え、撹拌翼の回転によってミスト粒子を室内10に均一に拡散させる。撹拌手段15は、撹拌することができればいかなるものであってもよく、例えば、プロペラファンとすることができる。図1では、撹拌手段15が1つ配置されているが、1つに限らず、2以上の撹拌手段を配置することもできる。本発明では、撹拌手段15の有無に関係なく、局所換気回数を得ることができるため、撹拌手段を設けても、設けなくてもよい。なお、撹拌手段15を設けることで、1の測定で、室内全体の換気回数を得ることができる。また、撹拌手段15の使用は、測定を行う上で、測定前の条件を同じにするべく、換気前の室内のミスト粒子濃度を均一にするため好ましい。
本発明では、室内10は、明るくても、暗くてもよいが、被写体となる測定領域10aの背景が暗く、その周辺領域の背景が明るい場合、周辺領域の背景からの光の影響を受けて高い画像信号値が得られ、画像信号値が正確に得られないため、背景となる壁面は暗いほうが好ましい。したがって、室内10は、暗幕などを降ろし、暗くすることが好ましい。
ここで、上述した高さ、幅、奥行き、容積の室内10で、下記表1に示す条件とし、10秒ごとに撮影し、画像信号値に変換し、画像信号値の対数値をとり、その対数値と経過時間との関係から算出された局所換気回数Npを、従来のトレーサーガス法で測定された局所換気回数Ntとともに表2に示す。トレーサーガス法では、トレーサーガスとしてSF6を用い、その濃度を測定し、経過時間とともにグラフ化して減衰曲線を得、減衰曲線と時間軸で囲まれた面積を算出することにより空気齢を得、空気齢の逆数として局所換気回数Ntを得た。表1に示すSPは、シャッタースピードである。
表2における換気回数Nは、換気量と室内容積とから求めた値である。表2の結果から、トレーサーガス法により算出された局所換気回数Ntより、本発明のシステムで得られた局所換気回数Npは、いずれも多い回数を示した。これは、ミスト粒子に質量があり、自重によって床へと沈降し、見かけ上、換気された状態になったためと考えられる。そこで、測定精度を高めるべく、本発明では補正値uを適用する。
補正値uは、以下のようにして算出することができる。室内10を所定のミスト粒子濃度にし、測定領域10aに所定の照度の照明を照射し、所定時間間隔で測定領域10aを撮影し、画像データおよび経過時間を記憶する。この場合、室内10を換気しない。画像データを画像信号値に変換し、局所換気回数を算出する。この局所換気回数は、室内10が換気されていないため、理論上は0である。しかしながら、上述したように、ミスト粒子には自重がかかるため、床に沈降し、所定の換気回数が得られる。この換気回数は、自重による見かけの換気回数であり、これを補正値uとして採用する。
本発明では、上記のようにして算出された局所換気回数Npから補正値uを引くことにより、換気回数N、局所換気回数Ntとほぼ同様の値を得ることができることを見出した。ちなみに、表1の条件で、換気しない場合に得られる換気回数は0.49であった。この0.49を補正値として使用し、算出された各Npの値から差し引いた結果を、表3に示す。
表3に示すように、局所換気回数Ntとほぼ同様の値が得られた。
次に、図5を参照して、本発明の換気測定システムを用いた換気測定方法について説明する。換気設備は、給気ファンのみ、あるいは、排気ファンのみ、もしくは自然換気口のみとすることができるが、ここでは、給気ファン40aと排気ファン40bを備えるものとする。また、換気設備が設けられる閉鎖された空間は、住宅などの室内41とする。室内41の中央の床上に、撹拌手段42を配置し、発煙装置43の噴霧ダクトを、壁を挿通させて配置する。発煙装置43は、室内41に配置してもよい。測定領域41aに向けて所定角度で光が照射されるように照明手段44を配置する。例えば、測定領域41aとなる室内41の所定の壁面に対して45°に光が照射するように、その壁面に対して45°の角度の位置に1つの照明手段、−45°の角度にもう1つの照明手段を配置することができる。撮影においては、上述したように、暗幕を降ろすなどして背景色を暗くすることが好ましいため、背景を暗くし、照明手段44により室内41を照射することができる。
室外に、窓を通して撮影手段45を配置する。撮影手段45は、測定領域41aに向けて配置される。次に、室内41が所定濃度になるように所定量のミスト粒子を発生させるため、スモーク液を発煙装置43内に配置する。室内41の容積が6.64m3であり、輝度に比例する範囲内である0.5g/m3のミスト粒子濃度にする場合、3.32gのスモーク液を計量し、発煙装置43内にセットすることができる。
撮影手段45の3つの較正要素、すなわちフィルム感度、絞り、露出時間を設定する。これらの値は、上述したように、Lv−Evの値が、画像信号値の対数値に比例する範囲内になるように設定される。
すべての装置の配置および設定が終了した後、発煙装置43においてスモーク液を気化させ、室内41にミスト粒子を発生させる。発煙装置43によるミスト粒子の発生前、発生後のいずれでもよいが、撹拌手段42を起動し、室内41の空気を撹拌する。この撹拌によって、ミスト粒子が室内41に均一に拡散する。スモーク液がすべてミスト粒子となって室内41に拡散した後、撹拌手段42を停止し、撮影手段45によって撮影を開始する。得られる画像信号値を基準化する場合には、ミスト粒子減衰前に、撮影手段45によって測定領域41aを撮影し、画像データと経過時間0とを関連付けて、撮影手段45に装着されるメモリに記憶する。また、ミスト粒子が存在しなくても、輝度が完全に0になることはないため、ミスト粒子を発生させる前に、撮影手段によって測定領域41aを撮影しておくことが好ましい。画像データは、画像信号値に変換され、バックグラウンドにおける画像信号値として、各経過時間における画像信号値を補正するために使用される。
排気ファン40bと給気ファン40aを起動させる。換気回数は、上述した方法により、または、風量計を給気ファンの吹き出し側あるいは排気ファンの吸い込み側に設置し、その風量計で測定した換気量と、室内41の容積とから算出することもできる。撮影は、10秒間隔といった所定時間間隔で行う。本発明では、減衰曲線を得ることができればよいため、換気を開始した後に、発煙装置からミスト粒子を発生させることもでき、スモーク液がなくなった時点を測定開始点とし、所定時間間隔で撮影を行うことができる。
撮影後、撮影手段45と処理手段46とを接続し、撮影手段45に装着されたメモリ内に記憶された画像データおよび経過時間を処理手段46に送り、ソフトウェアを実行して、画像データを画像信号値に変換する。なお、画像信号値を基準化する場合には、時間0の画像データを変換して得られた初期画像信号値で、各経過時間における画像信号値を除して基準化する。また、上記のようにして得られたバックグラウンドにおける画像信号値を、各経過時間における画像信号値から引算し、補正後の画像信号値を得る。必要であれば、その補正後の画像信号値を、初期画像信号値で除して基準化した画像信号値を得る。
処理手段46では、得られた画像信号値の対数値と経過時間との関係から、局所換気回数Npを算出する。局所換気回数Npは、上述した方法により算出することができる。局所換気回数Npと、換気回数Nとから、空気交換効率Eを算出する。
空気交換効率Eを算出することで、換気効率を測定することができるが、ミスト粒子が質量をもち、自重によって沈降するため、時間の経過とともに、沈降によるミスト粒子の減衰も生じている。そこで、上述したようにして補正値uを求め、局所換気回数Npを補正することができる。
補正値uは、ここでは、給気ファン40aおよび排気ファン40bを起動させることなく、上記と同様の操作を行うことにより得ることができる。上記の操作前でもよいが、操作後に行うこともでき、その場合、各装置は所定位置に配置されているため、2つのファン40a、40bを停止し、再び所定量のスモーク液を準備する。ただし、室内41は、ミスト粒子が存在しない程度に充分に換気されている必要がある。発煙装置43によってスモーク液を加熱し、すべてのスモーク液を気化させる。すべてのスモーク液が気化した時点を、経過時間0として、撮影を開始する。当然のことながら、撮影前に、照明手段44によって測定領域41aを照射し、撹拌手段42によってミスト粒子を室内41に拡散させる。
時間の経過とともに、自重によって沈降し、ミスト粒子の濃度が減衰する。所定時間間隔ごとに撮影を行い、その後、処理手段46に画像データを送り、画像信号値に変換し、経過時間と画像信号値の対数値とから見かけ上の換気回数を算出する。この換気回数が、補正値uとなる。局所換気回数Npから補正値uを引いて補正後の局所換気回数を算出する。この補正後の局所換気回数は、トレーサーガス法で算出される局所換気回数Ntとほぼ同じ値となる。最後に、この補正後の局所換気回数を換気回数Nで除して、空気交換効率Eを得る。得られた空気交換効率Eは、1に近づくにつれて、換気効率が高いことを示す。
なお、この場合も同様に、画像信号値を基準化する場合には、換気前に、撮影手段45によって測定領域41aを撮影し、画像データと経過時間0とを関連付けて、撮影手段45に装着されるメモリに記憶する。その後、時間0の画像データを変換し、初期画像信号値を得、各経過時間における画像信号値を除して基準化する。また、ミスト粒子を発生させる前に、撮影手段によって測定領域41aを撮影し、画像データを変換して、バックグラウンドにおける画像信号値を得、その画像信号値を、各経過時間における画像信号値から引算し、補正後の画像信号値を得ることができる。必要であれば、その補正後の画像信号値を、上記の初期画像信号値で除して基準化した画像信号値を得ることができる。得られた画像信号値の対数値を算出し、上記のようにして換気回数を補正値uとして算出する。
これまで、換気設備として、給気ファンと排気ファンとを備える構成として説明してきたが、換気できれば、上述したように、給気ファンのみ、あるいは、排気ファンのみ、または、単なる窓のみであってもよい。上記補正値uは、例えば、実験室などで予め測定し、求めておくことができ、その都度、補正値を求めるための測定を行うことなく、その予め求めておいた補正値を適用することができる。これにより、実際の住宅において換気効率測定を行う場合、換気を行わずにミスト粒子を発生させて住宅を汚すといったことをなくすことができる。
本発明の換気効率の測定方法および換気効率測定システムは、閉鎖された空間であればいかなる場所においても、適用することができ、例えば、トンネル坑内などにおいても適用可能なものである。
10…室内、10a…測定領域、11…発煙装置、12…照明手段、13…撮影手段、14…処理手段、15…撹拌手段、16a…給気口、16b…排気口、17…窓、40a…給気ファン、40b…排気ファン、41…室内、41a…測定領域、42…撹拌手段、43…発煙装置、44…照明手段、45…撮影手段、46…処理手段
Claims (11)
- 室内の所定測定領域の換気効率を測定する方法であって、
(A)前記室内の所定の測定領域に所定の照度の照明を照射するステップと、
(B)前記照度において前記室内のミスト粒子濃度が測定領域の輝度に比例する範囲内の所定濃度となるように、発煙装置からミスト粒子を発生させるステップと、
(C)前記室内を換気するステップと、
(D)撮影手段の各較正要素を設定し、前記測定領域を所定時間間隔で撮影し、画像データを経過時間と関連付けて記憶するステップと、
(E)前記撮影手段から前記画像データと前記経過時間とを読み出し、前記画像データを輝度に対応した画像信号値に変換し、前記画像信号値の対数値と経過時間との関係から、前記室内の測定領域における局所換気回数を算出するステップとを含む、換気効率の測定方法。 - 前記方法は、前記(A)、(C)、(B)、(D)、(E)のステップの順に実行される、請求項1に記載の方法。
- 前記(A)、(B)、(D)、(E)のステップを繰り返すステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
- 前記ミスト粒子を拡散させるステップをさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 前記(B)および前記(C)のステップの前に、前記測定領域を撮影するステップをさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
- 前記(B)のステップの後に、前記測定領域を撮影するステップをさらに含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
- 前記撮影手段は、デジタルカメラであり、前記較正要素は、フィルム感度、絞り、露出時間である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
- 前記フィルム感度、前記絞り、前記露出時間、前記測定領域の輝度の値を、APEX値に変換し、前記フィルム感度のAPEX値と前記測定領域の輝度のAPEX値との和を光値とし、前記絞りのAPEX値と前記露出時間のAPEX値との和を露出値とし、前記光値と前記露出値との差と、前記画像信号値の対数値とが比例関係になる範囲で、前記フィルム感度、前記絞り、前記露出時間が選択され、前記撮影手段に設定される、請求項7に記載の方法。
- 室内の所定測定領域の換気効率を測定するシステムであって、
ミスト粒子を発生させ、前記室内を所定のミスト粒子濃度にする発煙装置と、
前記室内の測定領域を所定の照度で照射する照明手段と、
較正要素の設定が可能で、前記測定領域を所定時間間隔で撮影し、デジタル値で得られる画像データを経過時間と関連付けて記憶する撮影手段と、
前記撮影手段から前記画像データと前記経過時間とを読み出し、前記画像データを輝度に対応した画像信号値に変換し、前記画像信号値の対数値と前記経過時間との関係から、前記室内の測定領域における局所換気回数を算出する処理手段とを含む、換気効率測定システム。 - 前記ミスト粒子を拡散させる撹拌手段をさらに含む、請求項9に記載のシステム。
- 前記撮影手段は、デジタルカメラであり、前記較正要素は、フィルム感度、絞り、露出時間である、請求項9または10に記載のシステム。
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CN115054852A (zh) * | 2022-05-17 | 2022-09-16 | 内蒙古天行安全技术有限公司 | 一种智能消防工程施工工艺流程 |
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2005
- 2005-03-11 JP JP2005068880A patent/JP2006250779A/ja active Pending
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