JP2006208114A - 分光特性評価方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】光放射の分光特性評価方法において、生物の色覚メカニズムに沿った方法で光放射の分光特性を表記し、誘虫性及びその他の様々な行動特性をより正確に評価・予測可能とする。
【解決手段】分光特性評価方法は、照明光源又は反射面の分光特性φ(λ)を、生物の色感覚に対応したベクトルとして規定するステップa(S1)と、複数の分光特性に対する生物の様々な行動特性の発現程度を求めて定量化した値である評価値をステップaで規定したベクトルに対応させて予め設定するステップb(S2)と、ステップbで設定した評価値を補完・補外して任意の分光特性における評価値を設定するステップc(S3)を行い、ステップcで設定した評価値により任意の分光特性において生物の行動特性の発現程度を評価可能とする(S4)。生物の色感覚に基いて評価するので、単色光でない光放射についてや、メタメリックな現象がある場合にも、正確に評価可能となる。
【選択図】図1
【解決手段】分光特性評価方法は、照明光源又は反射面の分光特性φ(λ)を、生物の色感覚に対応したベクトルとして規定するステップa(S1)と、複数の分光特性に対する生物の様々な行動特性の発現程度を求めて定量化した値である評価値をステップaで規定したベクトルに対応させて予め設定するステップb(S2)と、ステップbで設定した評価値を補完・補外して任意の分光特性における評価値を設定するステップc(S3)を行い、ステップcで設定した評価値により任意の分光特性において生物の行動特性の発現程度を評価可能とする(S4)。生物の色感覚に基いて評価するので、単色光でない光放射についてや、メタメリックな現象がある場合にも、正確に評価可能となる。
【選択図】図1
Description
本発明は、工業、サービス業、農林水産分野などの産業や、家屋を含む産業施設における生物利用・生物防除技術に利用される光放射の分光特性評価方法に関するものである。
従来、光放射の分光特性が、生物の行動特性に対して与える影響を評価する方法として、例えば、誘虫指数を用いて、光放射による昆虫の誘引性、忌避性を評価する方法が知られている。この誘虫指数は、光放射の誘虫性を示しており、非特許文献1に示される光放射の各波長における昆虫の走光性の相対的な強さを表すBickfordの誘虫性曲線R(λ)と、人間の分光視感効率V(λ)と、光放射の分光特性φ(λ)を用いて、下記の数式にて計算される(Iは誘虫指数)。この式で計算された誘虫指数Iを照度や光束などの測光値に乗じることにより光放射の誘虫性の強さとして、光放射による昆虫の誘引性、忌避性を評価している。
一方、現在では生物の色覚メカニズムについて様々なことが明らかになっている。例えば、非特許文献2により、ミツバチが3種の視細胞を持ち、人間と同じように混色が成立することが証明されている。これは、すなわち、複数の単色光が混じった光を、その成分である単色光とは全く異なる色として生物が感じることを意味しており、また逆に、分光特性が異なる光を同じ色として感じる可能性があることも意味している。
Bickford,E.D.:"Biological Lighting",I.E.S. Nat. Tech. Conf. Paper, Preprint No.2, 1964. Stavenga, Smits, Hoenders:"Simple Exponential Functions Describing the Absorbance Bands of Visual Pigment Spectra", Vision Res., vol.33, no.8, pp.1011−1017, 1993.
Bickford,E.D.:"Biological Lighting",I.E.S. Nat. Tech. Conf. Paper, Preprint No.2, 1964. Stavenga, Smits, Hoenders:"Simple Exponential Functions Describing the Absorbance Bands of Visual Pigment Spectra", Vision Res., vol.33, no.8, pp.1011−1017, 1993.
しかしながら、Bickfordの誘虫性曲線は、行動実験により各単色光毎の虫の誘引しやすさを求めたものであって、本来は単色光についての評価にしか適用できないものであるため、単色光でない光放射についての誘虫性の評価は不確実なものとなる可能性があった。さらに、上述の従来例は、分光特性が異なる光を同じ色として感じるようなメタメリックな現象を考慮しておらず、昆虫が同じ色として感じる光放射同士を、誘虫性が互いに異なるとして誤評価してしまう恐れがあった。
また、光放射が生物に与える影響は、生物の走光性に関するものだけではない。例えば黄色光による昆虫の行動抑制効果等があり、この効果は農業分野において防蛾灯による害虫防除方法として実用化されている。しかしながら、上述の従来例はあくまで昆虫の走光性のみを評価する技術であり、この昆虫の行動抑制効果等の他の行動特性を評価する際に利用できるものではない。
本発明は、上記問題点を鑑みてなされたものであり、生物の色覚メカニズムに沿った方法で光放射の分光特性を表記し、誘虫性及びその他の様々な行動特性をより正確に評価・予測可能な、汎用的な分光特性評価方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため請求項1の発明は、照明光源又は反射面の分光特性φ(λ)に基いて色覚を持つ生物の行動特性を評価する分光特性評価方法であって、(a)前記生物の視細胞の光受容器Siの分光感度(等色関数)をSi(λ)(i=1...n)としたとき、前記分光特性φ(λ)による各光受光器Siの応答Oiを次式により計算し、各応答Oiの大きさの組合せである、S1,...,Snの軸を持つn次元空間上のベクトルF=(O1,...,On)を設定し、前記ベクトルFをS1+...+Sn=c(cは定数)で表される面Cに投影して、前記分光特性φ(λ)を面CとベクトルFとの交点のベクトルG=(o1,...,on−1)として規定するステップと、(b)面C上の複数の点(ベクトルG)で表される、それぞれの分光特性の光放射による照明環境下における前記生物の行動特性の発現程度を予め実験的に求め、この発現程度を定量化した値(評価値という)を、当該分光特性に対応させて、予め設定するステップと、(c)面C上において、前記により予め求めた複数の評価値を補間・補外して、任意の点(ベクトルG)における評価値を求めるステップとを備え、前記評価値により任意の分光特性における生物の行動特性の発現程度を評価可能としたものである。
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記等色関数は、昆虫の視細胞の光受容器の分光感度であり、前記(b)のステップは、前記面C上の複数の点(ベクトルG)で表されるそれぞれの分光特性の光放射による照明環境下における、昆虫の誘引性・忌避性を予め実験的に求めて定量化した値を評価値として、当該分光特性に対応させて予め設定するステップであり、前記(c)のステップを行うことにより任意の分光特性における昆虫の誘引性・忌避性を評価可能としたものである。
請求項3の発明は、請求項1の発明において、前記等色関数は、昆虫の視細胞の光受容器の分光感度であり、前記(b)のステップは、前記面C上の複数の点(ベクトルG)で表されるそれぞれの分光特性の光放射による照明環境下における、昆虫の行動抑制効果を予め実験的に求めて定量化した値を評価値として、当該分光特性に対応させて予め設定するステップであり、前記(c)のステップを行うことにより任意の分光特性を持つ光放射による昆虫の行動抑制効果を評価可能としたものである。
請求項1の発明によれば、生物の色覚メカニズムを考慮して光放射の分光特性を表記し、予め実験的に求めた生物の行動特性の発現程度の評価値から任意の分光特性における評価値を求めるので、単色光でない光放射についても、生物が実際に色を感じるときの色感覚に基いてより正確に生物の行動特性の発現程度を評価することが可能となり、例えば分光特性が互いに異なる光を生物が同じ色として感じるような場合においても正確に評価することができ、また、光放射が反射する反射面の分光反射率についても、生物の行動特性の発現程度を予測、評価することが可能となる。さらに、予め実験的に評価値を求めておくことで、特定の行動特性に限らず、種々の行動特性についての発現程度を、より正確に評価、予測することが可能となる。
請求項2の発明によれば、昆虫の色覚メカニズムを考慮して光放射の分光特性を表記し、評価値を昆虫の誘引性・忌避性の発現程度を定量化した値とするので、上記と同様に、任意の分光特性をもつ光放射の昆虫の誘引性・忌避性をより正確に評価、予測することが可能となる。
請求項3の発明によれば、昆虫の色覚メカニズムを考慮して光放射の分光特性を表記し、評価値を昆虫の行動抑制効果を定量化した値とするので、上記と同様に、任意の分光特性をもつ光放射の昆虫の誘引性・忌避性をより正確に評価、予測することが可能となる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1(a)(b)(c)(d)は、本実施形態の分光特性評価方法のフローチャートを示す。この分光特性評価方法は、図1(a)に示されるように、まず、照明光源又は反射面の分光特性φ(λ)を、生物の色感覚に対応したベクトルとして規定するステップa(S1、請求項1の(a)のステップに対応)を複数のサンプル放射光について行って、このサンプル放射光の分光特性を示すベクトルを規定する。そして、この複数のベクトルにそれぞれ対応させて、当該ベクトルの示す分光特性に対する、生物の様々な行動特性の発現程度を求めて定量化した値である評価値を設定してデータベース化するステップb(S2、請求項1の(b)のステップに対応)を行っておく。次に、評価対象となる任意の光放射について上記のステップaを行い、この任意の分光特性のベクトルを規定する。このベクトルについての評価値を、予めステップbで設定しておいた各ベクトルについての評価値を補完・補外することによって求めるステップc(S3、請求項1の(c)のステップに対応)を行う。そして、このステップcで設定した評価値により任意の分光特性において生物の行動特性の発現程度を評価可能とする(S4)ものである。
図1(b)は、ステップaの詳細な手順を示す。ステップaでは、まず、評価対象となる生物の視細胞の、n種類の光受容器Siの分光感度(等色関数)をSi(λ)(i=1...n)としたとき、照明光源又は反射面の分光特性φ(λ)による各光受光器Siの応答Oiを下記の数式により計算する(S11)。次に、各応答Oiの大きさの組合せである、S1,...,Snの軸を持つn次元空間上のベクトルF=(O1,...,On)を設定する(S12)。そして、このベクトルFをS1+...+Sn=c(cは定数)で表される面Cに投影して、面CとベクトルFとの交点となる面C上のベクトルG=(o1,...,on−1)を算出し(S13)、このベクトルGを、分光特性として規定する(S14)。
多くの色覚を持つ生物は、異なる分光感度を示す複数の光受容器を持ち、これらの光受容器の応答の割合が生物が感じる色感覚に対応する。このステップaにおいては、生物が感じる光放射の色感覚を、各光受容器の応答の大きさの組合せ(ベクトルF)によって表記可能としており、生物の色覚メカニズムを考慮して光放射の分光特性を表記する。そして、このベクトルFからベクトルGを求めることで、ベクトルFから光放射の強度の成分を除いて、色相・彩度にあたる相対的な色感覚を表記するので、たとえ分光特性が異なっても、生物が同じ色であると感じるならば、この光放射を示すベクトルGの表記は同一となる。
ここで、ステップaにおいて行われる各処理の一例を示す。例えば、人間やミツバチ等は、3種類の光受容器によって光放射を感じており、これらの応答の大きさに対応した3次元空間上のベクトルFとして色感覚を表記できる。図2に、例えば生物が人間やミツバチのように3種類の色覚系の光受容器を持っている場合においての、ステップaの処理内容を模式的に示す。この図は、3種類の光受容器S1,S2,S3に対応する軸をもつ3次元空間を示しており、ステップaのS11にて計算された3種類の光受容器S1,S2,S3の応答O1,O2,O3の大きさの組合せをベクトルF=(O1,O2,O3)(図の一点鎖線矢印)として該空間に示している。このベクトルFの大きさは、光放射の強度に対応するものであり、本実施形態において強度を除いた色相・彩度にあたる相対的な色感覚を表記するために、ベクトルの向きの成分だけを抽出する。そこで、この3次元空間において、このベクトルFと、S1+S2+S3=c(cは定数)で示される、平面Cとの交点をベクトルG=(o1,o2)として表す。このようにすることで、生物が光放射を感じる色感覚に対応してこの光放射の分光特性を表記できる。
以上のようにして得られたベクトルGは、生物の色感覚に対応した表記であるので、分光特性が異なるが当該生物が同じ色感覚として感じる場合においても、同一のベクトルGとして光放射を表記することが可能となる。このベクトルGが表現される空間(色度座標)は、上述の例のように人間やミツバチのように色覚系の光受容器の種類が3種類の場合は、2次元座標(平面)になるが、それ以外の場合は、(光受容器の種類数−1)次元座標になる。例えば光受容器が4種類なら3次元座標、5種類なら4次元座標になる。
図1(c)は、ステップbの詳細な手順を示す。ステップbでは、ステップaによって面C上に表されたサンプル光放射の分光特性を示す複数の点(ベクトルG)について、当該点に対応するサンプル光放射による照明環境下における生物の行動特性の発現程度を実験的に求め(S21)、この発現程度を定量化して評価値とし(S22)、この評価値を、当該分光特性を表記したベクトルGに対応させて、評価値のデータベースとして予め設定しておく(S23)。この評価値のデータベースは、評価対象となる生物の行動特性について一度設定されれば、ステップcに繰り返し用いることができ、ステップbは、任意の分光特性についての評価毎に毎回行う必要はない。
図1(d)は、ステップcの詳細な手順を示す。ステップcでは、色度座標である面C上において、ステップbで予めデータベースとして設定しておいたサンプル放射光の分光特性に対応する複数の点(ベクトルG)についての評価値を補間・補外し(S31)、ステップaにより規定される任意の点(ベクトルG)における評価値を求める(S32)。ステップcのS31において、ステップbにて設定したサンプル光放射の分光特性に対応した評価値間を補間・補外するには、種々の方法が可能である。例えば、色度座標上で最近傍点となる評価値の値を採用してもよく、最近傍3点をとる平面においてその3点の平均値をとったり、任意の座標点の値を推定してもよい。また、1つの行動特性を評価する中で、異なる補間方法を組み合わせて使用してもよい。
上記ステップa、ステップb及びステップcの各手順を行うことで、生物の色覚メカニズムを考慮して光放射の分光特性を表記し、予め実験的に求めた生物の行動特性の発現程度の評価値から任意の分光特性における評価値を求め、これにより、任意の分光特性をもつ光放射に対応する色度座標上の点における評価値を調べることで、当該光放射における生物の行動特性の発現程度が評価可能となる。よって、単色光でない光放射についても、生物が実際に色を感じるときの色感覚に基いてより正確に生物の行動特性の発現程度を評価することが可能となり、例えば分光特性が互いに異なる光を生物が同じ色として感じるようなメタメリックな現象がある場合においても、ベクトルGの表記は同一となって正確に評価することができ、また、従来では予測できなかった、光放射が反射する反射面の分光反射率についても、生物の行動特性の発現程度を予測、評価することが可能となる。
ここで、本実施形態において、評価値は、評価対象となる、光放射によって発現される行動について、その発現程度を定量化したものであればよく、後述のような種々の行動特性について設定可能である。例えば、走光性を評価する場合は、標準光放射刺激があるときの誘引数に対する各サンプル光放射があるときの誘引数の比率などを評価値として設定することが考えられ、また、産卵促進効果の度合いを評価する場合は、標準光放射下での産卵数に対する、各サンプル光放射下での産卵数の比率等を評価値とすればよく、種々の行動特性に応じて適宜評価値を定義すればよい。このように定義する評価値を、ステップbにおいて実験的に予め求めておくことで、特定の行動特性に限らず、種々の行動特性について幅広く、より正確に評価、予測することが可能となる。
次に、本実施形態において評価対象となる生物の行動特性の具体例を実施例1乃至実施例4として説明する。
本実施例は、照明機器等の誘虫性を評価するものである。昆虫の視細胞の光受容器の分光感度を等色関数Si(λ)として、ベクトルGを規定し、ステップb及びステップcにおける評価値を、昆虫の誘引性・忌避性を定量化した値とすることによって、任意の分光特性の光放射による照明環境下における昆虫の誘引性・忌避性を評価可能とし、例えば照明機器等の誘虫性等をより正確に判断することを可能とする。
図3は、本実施例における等色関数Si(λ)として用いる昆虫の光受容器の分光感度の例である。昆虫は紫外線を感じる分光感度S1(λ)と、青色を感じる分光感度S2(λ)と、黄緑色を感じる分光感度S3(λ)の3種類の分光感度を有するので、3種類の等色関数Si(λ)を用いてそれぞれの分光感度の応答を計算し、ベクトルFからベクトルGを規定する。分光感度は、例えば神経生理的方法で直接測定したものでも良く、視物質の吸収特性等から推定した近似値としても良い。
そして、誘引性・忌避性を定量化した評価値としては、例えば、行動実験における標準刺激への誘引数に対するサンプル光放射の誘引数の比率や、サンプル光放射の分光特性に等しい粘着シートの、単位時間当たりの平均補虫数などを定義し、この実験的に求められる評価値をサンプル光放射を示す色度座標上のベクトルGと対応させたデータベースとして予め設定しておき、この予め設定された評価値を色度座標上で補完・補外する。図4は、色度座標上に、等色関数Si(λ)を用いて計算した380nm〜500nmの単色光のベクトルGの座標点(黒丸)と、サンプル光放射に対して求めた評価値を補間・補外して得られた各種分光特性の評価値の等高線を示す。この評価値は、標準反射面に対する各座標に対応する分光特性をもつ反射面の誘引率であり、この値が高いほど昆虫が誘引されやすいことを示している。この図を用いることにより、任意の分光特性をもつ光放射に対応する色度座標上の点における評価値を調べ、当該光放射の照明環境下における昆虫の誘引性・忌避性をより確実に評価することが可能となる。
本実施例は、圃場において農作物の被害を防止するための防蛾灯等の照射光を評価するものである。ヤガ類をはじめとする一部の農業害虫は、夜間、黄色光などを照射すると行動が抑制され、農作物への被害が軽減されることが知られている。そこで、本実施例は、昆虫の視細胞の光受容器の分光感度を等色関数Si(λ)として、ベクトルGを規定し、ステップb及びステップcにおける評価値を、昆虫の行動抑制効果の発現程度を定量化した値とすることによって、任意の分光特性の光放射による昆虫の行動抑制効果を評価し、例えば上記のような農作物の被害を防止するための防蛾灯等の照射光について、昆虫の行動を抑制して被害を防止する効果が大きい分光特性であるかどうかより確実に判断することを可能にする。
本実施例では、上述の実施例1と同様に、図3に示されるような昆虫の光受容器の分光感度を等色関数Si(λ)として用いてベクトルGを規定する。そして、行動抑制効果を定量化した評価値としては、例えば、様々な光放射下で記録した昆虫の活動記録から積算して求められる活動量の比率や、農地において、様々な分光特性の照明を点灯したときの昆虫(害虫)による農作物等の被害率を定義し、この実験的に求められる評価値をサンプル光放射を示すベクトルと対応させたデータベースとして予め設定しておき、この予め設定された評価値を色度座標上で補完・補外する。これにより、任意の分光特性をもつ光放射に対応する色度座標上の点における評価値を調べ、当該光放射による昆虫の行動抑制効果をより確実に評価することが可能となる。
本実施例は、集魚灯等の集魚効果を評価するものである。漁業においては、魚介類の走光性を利用し、集魚灯によって効率的に漁獲を行うことがある。そこで、本実施例においては、魚介類の視細胞の光受容器の分光感度を等色関数Si(λ)として、ベクトルGを規定し、ステップb及びステップcにおける評価値を、魚介類の誘引性・忌避性の発現程度を定量化した値とし、上述の実施例と同様に、魚介類の色覚メカニズムに基いて、任意の分光特性の光放射による魚介類の誘引性・忌避性を評価することが可能となる。これにより、例えば集魚灯の光放射について、集魚効果が大きい分光特性であるかどうか正確に判断することを可能にする。
本実施例は、魚介類の養殖等における照明を評価するものである。例えばニジマスやアユなどは、日照時間により産卵時期が影響されるため、人工的に補光することにより日照時間を擬似的に延長させ、産卵時期を制御することができる。また、クロダイの養殖では、上記と同様に人工的に日照時間を延長させることで、採餌時間が増えて成長促進することが知られている。そこで、本実施例においては、魚介類の視細胞の光受容器の分光感度を等色関数Si(λ)として、ベクトルGを規定し、ステップb及びステップcにおける評価値を、魚介類の行動抑制率、または行動活性率とすることによって、上述の実施例と同様に、魚介類の色覚メカニズムに基いて、任意の分光特性の光放射による魚介類の行動抑制・活性率を評価可能とする。これにより、例えば、上記のような魚介類への照明が、産卵促進効果や行動活性効果が大きい分光特性であるかどうか正確に判断することを可能にする。
なお、本発明は上記各実施例における用途に限定するものではなく、種々の用途に用いることが可能である。例えば、任意の鳥類や哺乳類の視細胞の光受容器の分光感度を等色関数Si(λ)として、評価値を当該鳥類又は哺乳類の誘引・忌避効果又は行動活性・鎮静効果などとすることで、害獣の捕獲器や忌避装置に取り付ける照明の分光特性や、ペット用品の配色など種々の評価目的について正確に評価することが可能となる。
S1 ステップa
S2 ステップb
S3 ステップc
S4 任意の分光特性における生物の行動特性の発現程度を評価する処理
S2 ステップb
S3 ステップc
S4 任意の分光特性における生物の行動特性の発現程度を評価する処理
Claims (3)
- 照明光源又は反射面の分光特性φ(λ)に基いて色覚を持つ生物の行動特性を評価する分光特性評価方法であって、
(a)前記生物の視細胞の光受容器Siの分光感度(等色関数)をSi(λ)(i=1...n)としたとき、前記分光特性φ(λ)による各光受光器Siの応答Oiを次式により計算し、
前記ベクトルFをS1+...+Sn=c(cは定数)で表される面Cに投影して、前記分光特性φ(λ)を面CとベクトルFとの交点のベクトルG=(o1,...,on−1)として規定するステップと、
(b)面C上の複数の点(ベクトルG)で表される、それぞれの分光特性の光放射による照明環境下における前記生物の行動特性の発現程度を予め実験的に求め、この発現程度を定量化した値(評価値という)を、当該分光特性に対応させて、予め設定するステップと、
(c)面C上において、前記により予め求めた複数の評価値を補間・補外して、任意の点(ベクトルG)における評価値を求めるステップとを備え、
前記評価値により任意の分光特性における生物の行動特性の発現程度を評価可能とすることを特徴とする分光特性評価方法。 - 前記等色関数は、昆虫の視細胞の光受容器の分光感度であり、
前記(b)のステップは、前記面C上の複数の点(ベクトルG)で表されるそれぞれの分光特性の光放射による照明環境下における、昆虫の誘引性・忌避性を予め実験的に求めて定量化した値を評価値として、当該分光特性に対応させて予め設定するステップであり、
前記(c)のステップを行うことにより任意の分光特性における昆虫の誘引性・忌避性を評価可能とすることを特徴とする請求項1記載の分光特性評価方法。 - 前記等色関数は、昆虫の視細胞の光受容器の分光感度であり、
前記(b)のステップは、前記面C上の複数の点(ベクトルG)で表されるそれぞれの分光特性の光放射による照明環境下における、昆虫の行動抑制効果を予め実験的に求めて定量化した値を評価値として、当該分光特性に対応させて予め設定するステップであり、
前記(c)のステップを行うことにより任意の分光特性をもつ光放射による昆虫の行動抑制効果を評価可能とすることを特徴とする請求項1記載の分光特性評価方法。
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JP2016038259A (ja) * | 2014-08-06 | 2016-03-22 | 国立大学法人浜松医科大学 | 虫用輝度・照度計 |
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