JP2006207127A - 法面緑化工法 - Google Patents

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Abstract

【課題】早期には法面を草本類で覆って法面を保護するとともに、木本類を播種した区画を半日陰の湿潤な環境に保って、木本類の発芽と生長を促し、中長期的には木本類によって草本類を被圧して、最終的には法面を樹林化する緑化方法を提供する。
【解決手段】植生対象面を複数の区画に分けて、草本類の種子を播種する草本区画1と木本類の種子を播種する木本区画2を交互に配置する緑化方法において、木本区画2を草本区画1に播種される前記草本類が木本区画2を被圧する前に前記木本類が生長することができ、かつ草本区画1に播種される前記草本類の成体によって日照を遮られて、半日陰の環境に保たれるような大きさにする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、法面緑化工法、特に、初期には、発芽・成長の速い草本類による法面緑化を行い、その後、発芽・生長の遅い木本類による法面緑化に移行し、最終的には法面に樹林を形成する法面緑化工法に関する。
切土あるいは盛土によって生じた斜面(法面)を保護するとともに、法面に植生を導入して景観を向上するために、法面に種子・肥料・養生材および水の混合物を散布する種子散布工、培養土・肥料・種子および水の混合物(植生基材)を法面に吹き付ける植生基材吹付工、内部または表面に種子を貼り付けたシートあるいはマットで法面を覆う植生シート工・植生マット工、あるいは培養土・肥料および種子の混合物を充填した植生袋を法面に固定する植生袋工などの工法による法面緑化が行われる。
法面緑化工法においては、短期間で植生面を形成するために、発芽・成長の速い植物が望まれていた。そのため、外来種のイネ科の芝草、例えば、スズメガヤ亜科ヤギュウシバ属のヤギュウシバ(通称:バッファローグラス、学名:Buchloe dactyloides)、スズメガヤ亜科ギョウギシバ属のギョウギシバ(通称:バミューダグラス、学名:Cynodon dactylon)、スズメガヤ亜科カゼクサ属のシナダレスズメガヤ(通称:ウィーピングラブグラス、学名:Eragrostis curvula)等の夏緑型の芝草、あるいウシノケグサ亜科カモガヤ属のカモガヤ(通称:オーチャードグラス、学名:Dactylis glomerata)やウシノケグサ亜科ウシノケグサ属のオニウシノケグサ(通称:トールフェスク、学名:Festuca arundinacea)、ウシノケグサ亜科イチゴツナギ属のナガハグサ(通称:ケンタッキーブルーグラス、学名:poa pratensis)などが播種されていた。
しかしながら、これら外来種の芝草は、発芽・成長が速く、繁殖力が強いので、法面に播種すると、播種された外来種だけの群落を形成し、法面の周辺からの在来種の進入を排除し、あるいは法面の周辺の在来種の植生を被圧して、その土地の本来の生態系を破壊するという問題があった。また、単一の外来種の芝草で覆われた法面は、法面の周辺の樹林とは全く異質な景観をなすので、景観を損なうという問題があった。
また、草本類は木本類に比べて根の張り方が浅く、そのため法面に対する固着力が弱いので、法面をより強固に保護する為に、木本類を用いた法面緑化も求められている。そこで、早期には法面を草本類で覆って法面を保護し、中長期的には木本類によって草本類を被圧して、最終的には法面を樹林化することを目的とする緑化工法が種々、提案されている。
例えば、非特許文献1には、施工対象の法面を外来種の草本類を主体に播種する区画と在来種の木本類を主体に播種する区画をモザイク状に配置して、外来種の草本類と在来種の木本類の「住み分け」を行い、草本類と木本類を同時に育生し、将来的には法面全体が森林景観を呈すことを目指した区分播種工が提案されている。
また、特許文献1には、発芽が遅く、外来草本の被圧を受けやすく、幼樹の時に日陰・半日陰の条件が必要で、発芽時期が春から夏に限定される樹木種子と、少量の外来草本種子と、有機質材、保水材、土壌改良材と少量の窒素肥料を溶出させる肥料とを混合した植生基材を法面に吹き付ける樹木導入厚層基材吹き付け工法が開示されている。
また、特許文献2には、発芽が遅く、外来草本の被圧をきわめて受けやすく、外来草本の被圧を受けやすく、幼樹の時にも日光が必要で、発芽時期が春から夏に限定される樹木種子と、極く少量の外来草本種子と、有機質材、保水材、土壌改良材と少量の窒素肥料を溶出させる肥料とを混合した植生基材を法面に吹き付ける樹木導入厚層基材吹き付け工法が開示されている。
星清夫「のり面緑化 導入植物に関する2,3の検討事項」、のり面と環境9号 1991年12月15日 社団法人全国特定法面保護協会 発行 特開平9−242077号公報 特開平9−242078号公報
しかしながら、非特許文献1は、外来種の草本類を主体に播種する区画と在来種の木本類を主体に播種する区画をモザイク状に配置することは開示しているが、木本類を播種する区画の環境、特に日照量と湿度については考慮がなされていなかった。草本類を播種する区画に対して木本類を播種する区画が過小であれば、木本類を播種する区画は、草本類を播種する区画から進出する草本類によって早期に被圧され、木本類が育つことはできない。逆に、木本類を播種する区画が草本類を播種する区画に対して過大であれば、木本類を播種する区画は直射日光を浴びて乾燥するので、陽樹陰樹を問わず枯死するおそれがあった。
また、特許文献1および特許文献2に記載の発明は、木本類が発芽生育する環境を最適化する木本類の種子と草本類の種子の最適な混合割合と肥料の成分構成を提案しているが、特定の種の組み合わせにおける成功例を報告するだけで一般性がない。
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、早期には法面を外来種の草本類で覆って法面を保護するとともに、在来種の木本類を播種した区画を半日陰の湿潤な環境に保って、木本類の発芽と生長を促し、中長期的には在来種の木本類によって外来種の草本類を被圧して、最終的には法面を在来種の樹林で被覆する法面緑化工法を提供することを目的とするものである。
本発明の法面緑化工法の第1の構成は、植生対象面を複数の区画に分けて、草本類の種子を播種する草本区画と木本類の種子を播種する木本区画を交互に配置する緑化方法において、前記木本区画は前記草本区画に播種される前記草本類が前記木本区画を被圧する前に前記木本類が生長することができ、かつ前記草本区画に播種される前記草本類の成体によって日照を遮られて、半日陰の環境に保たれるような大きさであることを特徴とする。
この構成によれば、木本区画は草本類が木本区画を被圧する前に木本類が生長することができ、かつ草本区画に播種される草本類の成体によって適度に日照を遮られて、半日陰の湿潤な環境に保たれるので、木本区画に播種される木本類の生長が促され、草本類を被圧できる大きさに生長することができる。その結果、最終的には、法面に樹林が形成される。
本発明の法面緑化工法の第2の構成は、前記第1の構成において、前記木本区画の短辺の長さが、前記草本区画に播種される草本類の成体の草丈の2倍乃至4倍であることを特徴とする。
木本区画の短辺の長さが、草本類の成体の草丈に対して短いと、木本類の種子が発芽・生長する前に、草本類によって木本区画が被圧されてしまう。一方、木本区画の短辺の長さが、草本類の成体の草丈に対して長すぎると、木本区画の日照量が過大になり、木本区画が乾燥し、木本類が枯死してしまう。木本区画の短辺の長さを、前記草本区画に播種される草本類の成体の草丈の2倍乃至4倍にすると、草本類が木本区画を被圧する前に、木本類が十分に生長でき、木本区画の適度に遮って、木本区画を半日陰の湿潤な環境に保つことができる。
なお、半日陰の環境とは、一日のうちの午前中か午後、または3〜4時間日が当たる場所、あるいは大木の梢越しに木漏れ日の当たるような場所をいう。
本発明の法面緑化工法の第3の構成は、前記第1又は第2の構成において、前記草本区画に播種される草本類にイネ科の植物が含まれることを特徴とする。
イネ(Gramineae)科の植物は葉が細長いので、葉と葉の間の隙間から適度な日照が得られるので、木本類を生育する区画を半日陰の環境に保つことができる。
本発明の法面緑化工法の第4の構成は、前記第3の構成において、前記イネ科の植物はウシノケグサ亜科に属する植物であることを特徴とする。
イネ科ウシノケグサ(Festucoideae)亜科に属する植物は、常緑型芝草又は寒地型芝草と呼ばれ、冬季においても緑を保つので、冬季においても木本区画を半日陰の湿潤な環境に保つことができる。
本発明の法面緑化工法の第5の構成は、前記第4の構成において、前記イネ科の植物はオニウシノケグサ、ヒロハウシノケグサ、イトウシノケグサあるいはコウライウシノケグサであることを特徴とする。
ウシノケグサ亜科に属する植物の内、ハイウシノケグサ(通称:クリーピングレッドフェスク、学名Festuca rubra var. genuina)等は、匍匐茎が伸びるので、進出速度が速く、木本区を早期に被圧してしまうが、オニウシノケグサ(通称:トールフェスク、学名:Festuca arundinacea)、ヒロハウシノケグサ(通称:メドウフェスク、学名:Festuca elatior)、イトウシノケグサ(通称:チューイングフェスク、学名:Festuca rubra var. commutata)あるいはコウライウシノケグサ(通称:ハードフェスク、学名:Festuca ovina
var. duriuscula)は、匍匐茎が無く、分げつ枝の叢生によって広がるので、進出速度が遅く、木本類が十分に生長する前に木本区画を被圧することがない。
本発明の法面緑化工法の第6の構成は、前記第3の構成において、前記イネ科の植物はヤギュウシバ属、ギョウギシバ属あるいはカゼクサ属の何れかに属する植物であることを特徴とする。
イネ科スズメガヤ(Eragrostoideae)亜科のヤギュウシバ(Buchloe)属、ギョウギシバ(Cynodon)属あるいはカゼクサ(Eragrostis)属に属する植物、例えば、ヤギュウシバ(通称:バッファローグラス、学名:Buchloe dactyloides)、ギョウギシバ(通称:バミューダグラス、学名:Cynodon dactyion)、シナダレスズメガヤ(通称:ウィーピングラブグラス、学名:Eragrostis curvula)などは、夏緑型芝草又は暖地型芝草と呼ばれ、夏季に茂り冬季に枯れる芝草であり、しかも、匍匐茎が無く、分げつ枝の叢生によって広がるので、進出速度が遅い芝草である。そのため、夏季において、適度に日照を遮って、木本区を半日陰の湿潤な環境に保つことができる。
本発明の法面緑化工法の第7の構成は、前記第3の構成において、ヤギュウシバ属、ギョウギシバ属あるいはカゼクサ属の何れかに属する植物とウシノケグサ亜科に属する植物を前記草本区画に混播することを特徴とする。
この構成によれば、夏緑型芝草であるヤギュウシバ属、ギョウギシバ属あるいはカゼクサ属の何れかに属する植物と、常緑型芝草であるウシノケグサ亜科に属する植物を前記草本区画に混播するので、年間を通して、適度に日照を遮って、木本区を半日陰の湿潤な環境に保つことができる。
本発明の法面緑化工法の第8の構成は、前記第1又は第2の構成において、前記草本区画に播種される草本類にセイヨウミヤコグザが含まれることを特徴とする。
セイヨウミヤコグザ(通称:バーズフィット・トレフォイル、学名:Lotus corniculatus var. corniculatus )は、乾燥に強く、真夏でも生育旺盛なので、真夏においても、適度に日照を遮って、木本区を半日陰の湿潤な環境に保つことができる。
以上説明したように、本発明の法面緑化工法によれば、草本区画に播種された草本類の成体によって日照を適度に遮って、木本区画を半日陰の湿潤な環境に保つので、草本類が木本区画に進出して木本類の幼樹を被圧する前に、前記幼樹は十分に成長でき、十分に成長した木本類は逆に草本類を被圧し、法面全体が木本類の樹林で被覆される。また、木本類は草本類に比べて根が深く張るので、木本類で被覆された法面は、より強固に保護される。また、木本類によって被覆された法面は周囲の天然の植生と調和して、良好な景観を形成するとともに、外来種の芝草等を排除して、我が国固有の生態系を保全する。
このように、本発明の緑化工法は、法面の強力に保護するとともに、良好な景観を提供し、生態系を保全するので、国土の保全に資するところが大きい。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1および図2は本発明の実施例に係る法面の植生区分図である。図1および図2において、1は草本類の種子を播種する草本区画であり、2は木本類の種子を播種する木本区画である。
図1は、水平に延びた帯状の草本区画1と木本区画2を交互に配置して横縞模様を形成した例であり、正面から日照を受ける法面、つまり南向きの法面に適した例である。木本区画2の短辺の長さ、つまり横縞の幅は、草本区画1に播種された草本類が木本区画2を被圧する前に木本類が生長することができ、草本区画1に播種された草本類によって、日照が適度に遮られて、木本区画2が半日陰の湿潤な環境に保たれるような大きさが選ばれている。なお、ここでは、横縞のパターンを示したが、側方から日照を受ける法面、つまり東向き又は西向きの法面にあっては、縦縞模様を形成すると側方からの日射を防ぐのに効果的である。
また、図2に示すように、木本区画2を正方形に形成して、その四辺を草本区画1で取り囲むように区画してもよい。この場合も、木本区画2の辺の長さは、草本区画に播種された草本類によって、日射が適度に遮られて、半日陰の湿潤な環境が保たれるような長さが選ばれている。
なお、半日陰の環境とは、一日のうちの午前中か午後、または3〜4時間日が当たる場所、あるいは草本類の葉の隙間から葉漏れ日の当たるような場所をいう。
草本区画1には、発芽・生育が速く、短期間で法面を被覆保護する外来種の植物の種子が播種される。外来種の中でもイネ(Gramineae)科の植物は、葉が細長いので、葉と葉の間の隙間から適度な日照が得られるので、本発明の法面緑化工法の実施に好適である。
また、イネ科の中でも、ウシノケグサ(Festucoideae)亜科に属する植物は、常緑型芝草又は寒地型芝草と呼ばれ、冬季においても緑を保つので、冬季においても木本区画2を半日陰の湿潤な環境に保つことができるので、草本区画1に播種するのに、更に好適である。
ウシノケグサ亜科の中でも、オニウシノケグサ(通称:トールフェスク、学名:Festuca arundinacea)、ヒロハウシノケグサ(通称:メドウフェスク、学名:Festuca elatior)、イトウシノケグサ(通称:チューイングフェスク、学名:Festuca rubra var. commutata)あるいはコウライウシノケグサ(通称:ハードフェスク、学名:Festuca ovina var. duriuscula)などは、分げつ枝の叢生によって広がる種類なので、匍匐茎を伸ばして広がる種類、例えば、ハイウシノケグサ(通称:クリーピングレッドフェスク、学名Festuca rubra var. genuina)等に比べて、進出速度が遅いので、草本区画1と木本区画2の境界を越えて広がるのに日数がかかる。つまり、木本類が発芽・生長する前に、木本区画2を被圧する可能性が小さいので、木本類が発芽・生長する時間を稼ぐことができる。
また、イネ科スズメガヤ(Eragrostoideae)亜科のヤギュウシバ(Buchloe)属、ギョウギシバ(Cynodon)属あるいはカゼクサ(Eragrostis)属に属する植物、例えば、ヤギュウシバ(通称:バッファローグラス、学名:Buchloe dactyloides)、ギョウギシバ(通称:バミューダグラス、学名:Cynodon dactyion)、シナダレスズメガヤ(通称:ウィーピングラブグラス、学名:Eragrostis curvula)などは、夏緑型芝草又は暖地型芝草と呼ばれ、夏季に茂り冬季に枯れる芝草であり、しかも、匍匐茎が無く、分げつ枝の叢生によって広がるので、進出速度が遅いので、木本類が生長する前に木本区画2に進出して、木本区画2を被圧する可能性が低い。これらの種子を草本区画1に播種すると、夏季において、適度に日照を遮って、木本区画2を半日陰の湿潤な環境に保つことができる。
また、夏緑型芝草であるヤギュウシバ属、ギョウギシバ属あるいはカゼクサ属の何れかに属する植物と、常緑型芝草であるウシノケグサ亜科に属する植物を草本区画1に混播するので、年間を通して、適度に日照を遮って、木本区画2を半日陰の湿潤な環境に保つことができる。
なお、草本区画1に播種される草本類はイネ科の植物には限られない、匍匐茎のないマメ(Papilionaceae)科の植物、例えば、セイヨウミヤコグザ(通称:バーズフィット・トレフォイル、学名:Lotus corniculatus var. corniculatus )を播種しても、良い結果が得られる。
また、草本区画1に在来種の木本類の種子を混播してもよい。混播された在来種の木本類の種子は、早期には草本類に被圧されているが、草本類が駆逐された後に生長するのでて、法面を在来種の木本類でカバーするのに好都合である。
また、草本区画1は必ずしも、前述したイネ科やマメ科の植物単独の植生にする必要はない。これらに加えて、花の咲く一年草、例えば、ヤグルマソウ、ハナビシソウ等を混播すれば、法面の美観が向上する。
また、木本区画2に播種される木本類は、我が国固有の樹種(在来種)、さらに言えば、緑化工法が施工される地域に固有の樹種(郷土種)を選ぶ。周囲の天然の植生との調和を取って質の高い景観を形成するとともに、生態系を保全するためである。例えば、アカマツ、クロマツ、ウバメカシ、アラカシ、ヤマモミジ、ヤブツバキ、ヤマハギ、ヤシャブシ等々を播種する。
また、播種の方法は、法面の状態に応じて、種子散布工、客土種子吹付工、厚層基材吹付工、植生シート工、植生マット工、あるいは植生袋工などの方法を適宜選択して施工すれば良い。
図3および図4は、本発明の実施例に係る法面の模式的な断面図であり、客土種子吹付工による本発明の法面緑化工法の施工例である。図3および図4において、3は草本類の種子を含む植生基盤材であり、4は草本類の成体である。また、5は木本類の種子を含む植生基盤材であり、6は木本類の幼樹である。植生基盤材3,5は、培養土、堆肥、化成肥料、粘着材及び播種対象の種子の混合物であり、湿式ガン機等で、法面に吹き付けられる。図3および図4の例では、最初に、草本区画1に、草本類の種子を混合した植生基盤材3を吹き付け、その後に、木本類の種子を混合した植生基盤材5を吹き付けることによって、草本区画1と木本区画2を区分している。植生基盤材3を後から吹き付けると、草本類の種子が飛び散って木本区画2に混入するおそれがあるので、かならず、植生基盤材3を先に吹き付ける。なお、植生基盤材5の下になった植生基盤材3に含まれる草本類の種子は、植生基盤材5によって被圧されるので、発芽しない。
また、植生基盤材3には窒素(N)、燐酸(P)及びカリウム(K)成分を含む化成肥料を混合し、植生基盤材5には燐酸(P)及びカリウム(K)成分のみを含み、窒素(N)を含まないPK肥料を混合するとよい。N、P、Kの3成分を含む化成肥料は速効性があり、植生基盤材3に含まれる草本類の成長を促して、木本区画2を早期に半日陰の状態にする。一方、PK肥料は遅効性なので、木本区画2に進入した草本類の成長を遅らせることができる。また、植生基盤材3に混合する化成肥料は、N、P、Kの3成分をそれぞれ10%以上含む高度化成肥料が更に望ましい。
また、植生基盤材3と植生基盤材5の色を分ければ、施工の際に草本区画1と木本区画の見分けが容易になる。例えば、植生基盤材3にピートを混合して黒っぽくし、植生基盤材5にパーライトを混合して白っぽくすれば、施工の際に便利である。
前述したように、木本区画2は草本区画1に播種される草本類が木本区画2を被圧する前に木本類が生長することができ、前記草本類の成体によって適度に日照を遮られて、半日陰の湿潤な環境に保たれるような大きさを選ぶ必要があるが、発明者らはこの木本区画2の大きさの最適値を、草本区画1に播種される草本類の草丈によって決定できること
を発見した。なお、イネ科の芝草の多くは葉や茎が直立せず、横に曲がって広がるので、本明細書では、自然に横に曲がって広がった状態で、地面から計った最大高さを「草丈」と呼ぶことにする。
図3は、木本区画2の短辺の長さBを、草本区画1で生長した草本類の成体4の草丈hの2倍にした状態を示している。木本区画2の短辺の長さBをこれより短くすると、木本類の幼樹6が、十分に生長する前に、草本区画1から草本類が進出して、木本区画1を覆ってしまうので、木本類の幼樹6は枯死してしまうが、木本区画2の短辺の長さBを草本類の成体4の草丈hの2倍以上にすれば、草本区画1から草本類が進出して木本区画1を覆う前に、木本類の幼樹6は十分に成長して、逆に草本区画1に進出して草本類を駆逐することができる。
図4は、木本区画2の短辺の長さBを、草本区画1で生長した草本類の成体4の草丈hの4倍にした状態を示している。木本区画2の短辺の長さBをこれより長くすると、木本区画2の内部に草本類の成体1の陰が落ちないので、木本区画2の内部の日照量が過大になり、半日陰の環境を好む陰樹は発芽・生長できない。また、日照を好む陽樹であっても、日照量が過大になって、木本区画2が乾燥すると枯死してしまう。
このように、木本区画2の短辺の長さBを、草本区画1で生長した草本類の成体4の草丈hの2倍から4倍にすると、草本区画1に播種される草本類が木本区画2を被圧する前に木本類が生長することができ、前記草本類の成体によって適度に日照を遮られて、木本区画2は、半日陰の湿潤な環境に保たれるので、木本区画2に播種した木本類の生長が促され、生長した木本類が草本類を駆逐して、法面全体を樹林化することができる。
なお、好光性種子の発芽には750ルクスから1250ルクスの照度が最適とされるが、九州北部に於いて冬季の晴天時に半日陰環境にある木本区画の照度を計測したところ、1165ルクスの値が得られた。一方、完全な日陰の照度は111ルクス、裸地の照度は測定不能(2000ルクス超)であった。半日陰環境にある木本区画の地面近くの気温および地中温度(深さ約5cm)の温度は、裸地に比べて数度高く、照度、温度共に種子の発芽、成長に適しているといえる。
図5は、木本区画の日照時間を説明する図であり、水平面に設置された木本区画であって、四辺を草丈hの草本類で囲繞され、一辺の長さが草丈hの3倍であり、前記四辺がそれぞれ東西南北に向く正方形の木本区画を想定して、夏至および春分・秋分における、日照を受ける面積を示した図である。図中のハッチングで示した範囲は周囲の草本類が木本区画に落とす影を示している。また、図中の格子は草丈hをピッチとする目盛りであり、数字は、日照を受ける面積の比率(百分比)である。なお、この図は九州北部(北緯34°付近)を基準に算出したものである。
図5に示すように、この木本区画で日照を受ける面積の比率は春分・秋分において、平均60%、夏至においても84%に留まるので、この木本区画は適度に日照を遮られて、半日陰の環境に保たれる。
このように、法面の緯度、向きおよび傾斜が解れば、草本類が木本区画に落とす影の大きさが計算できるから、半日陰の環境が得られるような木本区画の短辺の長さを、草丈hの2倍乃至4倍の範囲で選択すればよい。一般に、北向き法面では草本類の影は長く伸びるから、木本区画の短辺の長さを草丈hの4倍程度にすればよいし、逆に南向き法面では影が短くなるので、草丈hの2倍程度にすればよい。
本発明の実施例に係る法面の植生区分図である。 本発明の実施例に係る法面の植生区分図である。 本発明の実施例に係る法面の模式的な断面図である。 本発明の実施例に係る法面の模式的な断面図である。 木本区画の日照時間を説明する図である。
符号の説明
1 草本区画
2 木本区画
3 植生基盤材
4 草本類の成体
5 植生基盤材
6 木本類の幼樹

Claims (8)

  1. 植生対象面を複数の区画に分けて、草本類の種子を播種する草本区画と木本類の種子を播種する木本区画を交互に配置する法面緑化工法において、前記木本区画は前記草本区画に播種される草本が前記木本区画を被圧する前に前記木本類が生長することができ、かつ前記草本区画に播種された前記草本類の成体によって日照を遮られて、半日陰の環境に保たれるような大きさであることを特徴とする法面緑化工法。
  2. 植生対象面を複数の区画に分けて、草本類の種子を播種する草本区画と木本類の種子を播種する木本区画を交互に配置する法面緑化工法において、前記木本区画の短辺の長さが、前記草本区画に播種される草本類の成体の草丈の2倍乃至4倍であることを特徴とする請求項1に記載の法面緑化工法。
  3. 前記草本区画に播種される草本類にイネ科の植物が含まれることを特徴とする請求項2に記載の法面緑化工法。
  4. 前記イネ科の植物はウシノケグサ亜科に属する植物であることを特徴とする請求項3に記載の法面緑化工法。
  5. 前記イネ科の植物はオニウシノケグサ、ヒロハウシノケグサ、イトウシノケグサあるいはコウライウシノケグサであることを特徴とする請求項4に記載の法面緑化工法。
  6. 前記イネ科の植物はヤギュウシバ属、ギョウギシバ属あるいはカゼクサ属の何れかに属する植物であることを特徴とする請求項3に記載の法面緑化工法。
  7. ヤギュウシバ属、ギョウギシバ属あるいはカゼクサ属の何れかに属する植物とウシノケグサ亜科に属する植物を前記草本区画に混播することを特徴とする請求項3に記載の法面緑化工法。
  8. 前記草本区画に播種される草本類にセイヨウミヤコグザが含まれることを特徴とする請求項1又は2に記載の法面緑化工法。



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JP2010259331A (ja) * 2009-04-30 2010-11-18 Toko Geotech Corp 緑化工法
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