JP2006185999A - ビルディングファクタの低い変圧器およびリアクトル鉄心の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、変圧器やリアクトルに用いる鉄心に関するもので、更に詳しく言えば電磁鋼板を積層して製造される鉄心のビルディングファクタを小さくする製造方法に関するものである。
変圧器やリアクトルなどの電磁機器で用いられる鉄心では鉄損が発生する。これらの電磁機器は電力の送配電や受電に多用されているため、それらの鉄損を積算すると膨大な損失となる。省エネルギーやCO2排出量の低減が強く求められている昨今では、無駄なエネルギー消費であり、CO2排出の元となる鉄損を低減することが強く求められており、最近では例えば配電用変圧器に対して大幅な損失削減を課するトップランナー方式による規制が導入されたりしている。鉄損は鉄心に用いる電磁鋼板で発生するため、古くから電磁鋼板の鉄損低減技術開発が行われており、鉄損は数十年前と比較すると大幅に低下してきている。
電磁機器の鉄損に関わる因子は2つに大別される。その1つは素材鉄損で、測定方法はエプスタイン法や単板磁気試験法として規格化されている。これらの方法は電磁鋼板に比較的簡単な磁気回路を構成させて鉄損測定するものである。従って、電磁鋼板を理想的な状態や条件で磁化した時に得られる鉄損であり、電磁鋼板を素材として見た時の鉄損面での優劣を決める指標として用いられている。もう1つの因子はビルディングファクタと呼ばれるものである。これは、機器鉄損を素材鉄損で割った値として定義されるものであるため、機器鉄損が素材鉄損を上回ると1を越す値となる。実際にビルディングファクタは1を越す場合が多く、これは鉄損を素材鉄損から更に増加させる現象が機器の鉄心で発生していることを示す。
ビルディングファクタが1よりも大きくなる一因として、電磁機器の鉄心の磁気回路が複雑であるために素材特性を測定する時には発生し得なかった磁化条件が鉄心では発生していることがある。例えば、素材鉄損の測定では電磁鋼板はその圧延方向に正弦波磁束で均一に励磁されるが、電磁機器の鉄心では部分的には圧延方向以外に磁化され、磁束波形が歪み、磁束密度が不均一になる現象が発生する。これがビルディングファクタが1を越す原因となる。
電磁機器の鉄損を削減するためには、素材鉄損を低減させると同時にビルディングファクタも低減させる必要がある。この点についても以前から研究開発が行われている。特許文献1には電磁鋼板の磁束密度B8について、3相3脚積鉄心の継鉄部に用いる電磁鋼板のB8を、脚部に用いる電磁鋼板のB8よりも低くすることで、ビルディングファクタを低減する方法が示されている。図1の斜線部1に継鉄部を示す。その原理を以下に説明する。
3相3脚積鉄心では、図1の円2で示すT接合部と呼ばれる3相の磁気回路が交差する部分で圧延方向外の磁化と磁束密度の不均一が発生して鉄損が増加し、ビルディングファクタが増加することが知られている。特許文献1の方法では、このT接合部を多く含む継鉄部に、前記要因による鉄損増加が少ない材料すなわちB8の低い材料を選んで使用することで、ビルディングファクタの低減を達成している。なお、特許文献1では評価指標としてビルディングファクタを用いる代わりに、T接合部を持たない単相鉄心の鉄損との比を用いている。
特許文献1で示された方法では、鉄心に使用する電磁鋼板の種類を鉄心部位に応じて使い分けるだけで良く、特別な加工や特殊な鉄心構造にする必要がないために容易に実施でき、実現性が高い優れた方法と言える。
特開昭57−126112号公報
特許文献1で示された方法では、鉄心に使用する電磁鋼板の種類を鉄心部位に応じて使い分けるだけで良く、特別な加工や特殊な鉄心構造にする必要がないために容易に実施でき、実現性が高い優れた方法と言える。
特許文献1で示された方法は実現性が高いが、適用範囲が限られている。すなわち、ビルディングファクタ低減の原理が、3相3脚積鉄心にしかないT接合部での鉄損増加を抑えるものであるため、T接合部を持たない単相積鉄心では効果が出ない。また、電磁鋼板を巻き取ることで製作される巻鉄心では脚部と継鉄部の間に接合部がないため、前記方法を用いること自体が不可能である。そこで、使用する電磁鋼板の種類を変えるのみという実現性の高さを保ったまま、単相積鉄心や巻鉄心にも適用できる方法を開発することが本発明の課題となる。
1個の鉄心中に透磁率が異なる複数種の電磁鋼板を用いる場合、基本的には透磁率の高い材料ほど鉄心全体の平均磁束密度よりも高磁束密度側へ偏位し、透磁率の低い材料ほど低磁束密度側へ偏位することは自明である。この時の鉄損は、透磁率の高い材料であれば平均磁束密度での鉄損よりも高く、透磁率の低い材料であれば平均磁束密度での鉄損よりも低くなる。ビルディングファクタの分母の素材鉄損は、平均磁束密度での各材料の鉄損の使用重量に応じた加重平均として求められるので、前述の磁束密度の偏位による鉄損の増減がビルディングファクタに影響を与えることになる。
鉄損の増減量は磁束密度の関数で表した鉄損特性の傾き、すなわち微分値で決まる。高透磁率の材料の微分値が低ければ鉄損増加量は小さく、低透磁率の材料の微分値が高ければ鉄損低下量が大きくなるため、これらの和となる鉄心全体の鉄損を分子にとったビルディングファクタは低下することとなる。
また、高透磁率の材料を平均磁路長が短くなるように磁気回路を構成することで、この材料では更に高磁束密度側へ偏位する。これによって前述の鉄損に対する効果が更に助長されることとなる。
以上の効果は、T接合部が無くても有効であるため、単相鉄心や巻鉄心でも有効であり、本発明が解決しようとする課題を満たすものである。
また、高透磁率の材料を平均磁路長が短くなるように磁気回路を構成することで、この材料では更に高磁束密度側へ偏位する。これによって前述の鉄損に対する効果が更に助長されることとなる。
以上の効果は、T接合部が無くても有効であるため、単相鉄心や巻鉄心でも有効であり、本発明が解決しようとする課題を満たすものである。
一般的に鉄損が問題となる鉄心にどのような材料を使用するかは、要求された鉄損条件を満たす電磁鋼板を選択するところから始める。n種類の電磁鋼板を使用する際に、要求される鉄心の鉄損Wd、各材料の鉄損Wnとその使用比率Vnに次式が成り立つ必要がある。
ここで、本発明の要件を満たすためには、課題を解決するための手段で示した条件を満たすように材料選択をすれば良い。
また、鉄心の平均磁束密度における透磁率がより高い電磁鋼板を用いる磁気回路の平均磁路長が、より短くなるように構成するためには、例えば鉄心の内周寄りに最も高透磁率の材料を用いて、外周方向へ行くに従って透磁率が低下して行くように材料を配置すれば良い。
本発明の実施例として図2に示す単相巻鉄心を製作した。この鉄心では内周部から、部位3、4、5と領域を設定し、それぞれに異なる種類の電磁鋼板を用いて損失を測定した。なお、鉄心の平均磁束密度は1.613Tとした。用いた電磁鋼板の種類と特許請求の範囲の請求項1で規定した各値を表1に示す。
鉄心A、B、Cは本実施例で使用した3種類の電磁鋼板それぞれのみで作製されたものであるが、これらのビルディングファクタは0.99以上となっている。これに対して本発明への適合条件である鉄心Dのビルディングファクタは0.957で、鉄心A、B、Cに対して3%以上の改善が得られている。
一方、特許請求の範囲の請求項1の条件を満たさない鉄心Eでは、鉄心A、B、Cに対する優位性は見られない。
一方、特許請求の範囲の請求項1の条件を満たさない鉄心Eでは、鉄心A、B、Cに対する優位性は見られない。
本発明の実施例として図3に示す単相積鉄心を製作した。この鉄心では内周部から、部位6、7と領域を設定し、それぞれに異なる種類の電磁鋼板を用いて損失を測定した。なお、鉄心の平均磁束密度は1.812Tとした。用いた電磁鋼板の種類と特許請求の範囲の請求項1で規定した各値を表3に示す。
鉄心F、Gは本実施例で使用した2種類の電磁鋼板それぞれのみで作製されたものであるが、これらのビルディングファクタは0.99以上となっている。これに対して本発明への適合条件である鉄心Hのビルディングファクタは0.935で、鉄心F、Gに対して5%以上の改善が得られている。
一方、特許請求の範囲の請求項1の条件を満たさない鉄心Iでも、鉄心F、Gに対する優位性は見られるが、改善は1%未満と少ない。
一方、特許請求の範囲の請求項1の条件を満たさない鉄心Iでも、鉄心F、Gに対する優位性は見られるが、改善は1%未満と少ない。
1 3相3脚積鉄心の継鉄部
2 3相3脚積鉄心のT接合部
3 実施例1の鉄心の最内周の部位
4 実施例1の鉄心の中間周の部位
5 実施例1の鉄心の最外周の部位
6 実施例2の鉄心の最内周の部位
7 実施例2の鉄心の最外周の部位
2 3相3脚積鉄心のT接合部
3 実施例1の鉄心の最内周の部位
4 実施例1の鉄心の中間周の部位
5 実施例1の鉄心の最外周の部位
6 実施例2の鉄心の最内周の部位
7 実施例2の鉄心の最外周の部位
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