JP2006183457A - 下水管損傷予測方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 損傷の程度を効率的、且つ定量的に評価でき、その調査結果に基づき適切な補修計画を作成するなどの機能を有し、下水道施設の効率的な運営を支援する下水管損傷予測方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 下水道管網からモニタリングポイントとする計測箇所を選定し、
該選定した計測箇所の下水管の損傷に影響を与える環境データを計測して収集し、該収集した環境データと前記下水道管網の地図情報及び属性情報とに基づいて、任意の下水管の環境データを推定し、該推定した環境データと下水管の前記属性情報及び供用年数に基づき前記下水管の損傷を推定し、前記下水道管網内の各下水管の補修工事の順位付けを支援する情報を作成する。
【選択図】 図4

Description

本発明は、下水道施設の維持管理における予防保全に係り、特には下水管損傷予測方法に関する。
生活廃水、工場廃水、雨水等の様々な廃水を効率よく処理するための下水道施設は、近代的な都市生活には欠かすことのできない存在となっているが、近年、下水道処理人口の普及率は60%を超え、施工年数50年を越える下水管も増えていることから、下水道事業は、維持管理の時代を迎えていると言われている。その管渠敷設総延長は、全国で約32Kmとなっており、管材別の使用率は、硬質塩化ビニル管が5割、コンクリート管が3割、陶管が1割、その他1割となっている。
かかる膨大な下水道施設を効率的に維持管理し、更には、その長寿命化を図るなどして効率的に運用することは、極めて重要な課題であって、このために、近年、高度に発達したIT(情報技術)を活用する試みがなされており、例えば、下水道光ネットワークシステムの構築が国策として推進され、又、下水道台帳の電子化(下水道台帳システム)が進められている。
下水道光ネットワークシステムは、下水道施設間を光ファイバケーブルで結んでネットワークを構成しようとするものであって、維持管理する人材の不足を補うと共に、今後の維持管理の高度化を目指したものである。下水道台帳の電子化は、下水道施設の配置を平面的に示す図面である下水道台帳図と、マンホールの種別や数、下水道の延長距離、汚水ますや雨水ます等の種類等を一覧化した書面(データ)である調書の電子化であって、今後の維持管理の自動化などを目指したものである。
かかる従来技術として、例えば、特許文献1(下水道光ネットワークシステム)には、下水道施設内に敷設された光ファイバケーブルの仕様等に関するケーブル情報と、下水管の配管ルート等の下水道施設の地図情報及び諸情報と、光ファイバケーブルを測定して得られる測定情報とを一括管理し、コンピュータにより下水道施設の異常検知、定期点検等を行なう下水道光ネットワークシステムが開示されている。
又、特許文献2(3次元埋設管渠総合システム)には、埋設管渠の設計に必要な地形の平面図の図形データと、図形データに伴う数値等の管路属性データを地図情報としてデータベース化し、入力された埋設管渠ルートに基づき適正な断面と勾配を検出する流量計算を行い、縦断面図の図形データを含む管渠系統図を作成して、その管渠系統図に基づいて、デジタルカメラ等による埋設管渠内の調査・点検・清掃などのデジタル情報を維持管理データとして取り込み、その維持管理データを地図情報と組み合わせて、3次元CADを利用して視覚で容易に認識し得る立体画像として表示し出力する3次元埋設管渠総合システムが開示されている。
又、特許文献3(構造物の維持管理における予防保全方法、予防保全システム、構造物データベース、構造物カルテ、民間資金導入方法および民間資金導入システム)には、各種の専門知識或いは経験を有する構造物専門家による支援を受けて、劣化の傾向を含む現状を定量的に把握すると共に、この現状に応じて寿命、耐久性及び資産価値を最大にするように対処する予防保全方法が開示され、特許文献4(下水道敷設設計支援システム及び記録媒体)には、計画設計・施工工事・敷設後管理に至る一連のデータ処理を効率化し省力化することを目的に、下水道計画データに基づいて、作図及び作表条件に従い計画図面及び計画計算書を作成し、その計画図面を、竣工後、GIS(地理情報システム)と連動可能な下水道設備データに調製し直してGISと連動させることにより、地図ベースでの情報の検索・管理を実現し、他埋設物の施工などの種々の要請にも利用可能とした総合的な下水道管理システムが開示されている。
又、特許文献5(ニユーラルネツトワーク応用雨水流入量予測装置)には、ポンプ運転支援のための雨水ピーク流入量の自動的、且つ高精度の予測を目的として、学習用実績情報入力手段と、その実績情報によりニューラルネットワークの重み係数を学習する予測モデル構築手段と、その予測モデルにより雨水流入量を予測する流入量予測手段と、その予測された雨水流入量を出力する出力手段と、を備えて成るニューラルネットワーク応用雨水流入量予測装置が開示されている。
又、特許文献6(地中管路構造物の設計方法)には、地中管路構造物の設計に際し、遺伝的アルゴリズムを用いる技術が開示され、又、演算時間を縮小するために、遺伝的アルゴリズムにより最適な設計対案を探索する過程で、更にローカルサーチを採用する技術が開示されている。即ち、遺伝的アルゴリズムは、制約条件のもとで優秀遺伝子を決定し、保存、選択、淘汰、交叉、突然変異などにより次世代遺伝子を生成するという操作を繰り返して最適解を求める方法であって、多数の組み合わせの中から、制約条件を満足する最適な組み合わせを求めるに好適な方法として周知の技術である。
かかる遺伝的アルゴリズムの適用に係り、直接的に下水道施設に係るものではないが、特許文献7(ボイラ構成部品の最適交換時期決定方法)には、長寿命化を最終的な目的として、ボイラの予防保全計画に遺伝的アルゴリズムを適用する技術が開示されている。即ち、交換部品数が多く、又、部品が老巧化すれば検査費が増加し、複数の部品を同時に交換すれば交換費用が減少する等、評価要素が多いため、全ての組み合わせを評価することは不可能なボイラの予防保全計画に際し、遺伝的アルゴリズムを適用し、ライフサイクルにおける最適な構成部品交換時期を算出する技術が開示されている。
上述した如く、近年、高度に発達したITを活用して、下水道施設を効率的に維持管理し、更には、その長寿命化を図るなどして効率的に運用しようとする技術は、本発明においても好適に利用し得る技術である。
一方、下水道施設を効率的に維持管理するためには又、適切な損傷度診断と、その調査結果に基づく適切な補修工事の実施が極めて重要であって、その診断調査においては、対象とする下水管網を構成する要素毎の定量的な損傷レベルの把握と、損傷の程度の順位付けが必要となるが、未だその損傷の程度を効率的、且つ定量的に評価できる技術は開示されていない。
即ち、一般には、目視やTVカメラを用いての外観調査を行い、必要となればコアを抜いての物性調査などにより詳細調査するという方法が行われているが、この外観調査は多くの人手を要するなど非効率な方法であって、年度内の補修工事の計画を立案するに際し、総延長が極めて長い下水管網の全てを外観調査することはできず、施工年度の順や過去の事故事例などを総合的に評価して、損傷の進行が予想される下水管を選定して外観調査を行っているのが実態であり、又、目視等による外観調査では定量的な評価はできない。
又、特許文献8(鉄筋コンクリート管の検査方法及び検査機器)には、ハンマーや鋼球などの打撃による衝撃弾性波試験を行って対象管の伝播波を測定し、この伝播波の共振周波数スペクトルを解析して、その共振周波数スペクトルの高周波成分の面積と低周波成分の面積との面積比率から損傷の程度を定量的に評価する技術が開示されている。然しながら、この従来技術は、かかる衝撃波を発生させる装置や伝播波を測定する装置を、極めて長大な下水管網の中に多数常設することは不可能であり、それらを持ち運び、或いは、移動させながら測定せざるを得ず、定量的な評価はできるとしても、極めて非効率な方法と言わざるを得ず、満足できる技術ではない。
又、特許文献9(埋設物管理方法及び装置並びに無線タグ)には、ガス管、上下水道管等の埋設物の状態変化の情報を地上からリアルタイムで高精度に得る方法として、地中の埋設物に取り付けられている無線タグ内に、埋設時の情報(管の種類、埋設時の深度、埋設日時、埋設方向等)と共に、無線タグに備えられたセンサーにて検知したデータ(振動、伸び量、内部圧力等)を記憶しておき、地上の無線装置からのデータ要求を示す電磁波に対して記憶しておいたデータに応じた応答を無線タグで行い、その応答を無線装置で検出する埋設物管理方法が開示されている。然しながら、この従来技術は、かかる振動センサーなどを備えた無線タグを、極めて長大な下水管網の中に極めて多数常設する必要があり、又、それらの維持管理が必要になることもあり、維持管理のコストが増大するなど非効率な方法と言わざるを得ず、満足できる技術ではない。
かかる、下水道施設の維持管理における予防保全システムに係り、埋設された下水管の損傷の程度を診断調査する従来の技術は、対象とする下水管を直接的に調査することに共通の特徴を有し、目視など外観調査や、適合するセンサーを用いることにより、管の破損、クラック、継ぎ目ズレ、管のたるみ、管の蛇行、異物の付着、管の腐食、取付管の突出しなど種々の損傷を診断調査することができるが、上述の如く、そのためには多くの人手を要する、コストが増大するなど非効率にならざるを得ないという問題がある。
一方、これらの損傷の中で、下水管の腐食、特には硫酸塩還元細菌などの微生物が係り生じるコンクリート管の腐食は、下水管が接する環境条件(水中又は気中)の影響を強く受けるため、経過年数のみによる損傷の程度の推定は不可能であり、種々の予防対策(例えば、特許文献10(抗菌性下水道管およびその製造方法)、特許文献11(廃水中の硫化水素除去装置))が提案されているが、適切な診断調査が求められる主要な損傷の一つとなっている。
この腐食のメカニズムは、廃水中に含まれた硫酸イオンが嫌気的な条件下で硫酸塩還元細菌の活動によって硫化水素となった後、この硫化水素が液相部から気相部に移動し、温度差等によって水蒸気等と共に気相部に露出しているコンクリート壁に結露した後、この硫化水素が好気的な条件下で硫黄酸化細菌の作用によって高濃度の硫酸に酸化され、その高濃度の硫酸によってコンクリートが浸食されるものであることが知られている。
又、硫化物濃度やBODなどをパラメータとして下水中における硫化物生成速度を推定する関係式、下水中の分子態割合の関係(pHなどをパラメータとした硫化水素〜硫化物の平衡関係)、水温などをパラメータとした下水中への硫化水素の溶解度関係、気中の硫化水素濃度と供用年数をパラメータとして腐食深度を推定する関係式などが知られている(例えば、非特許文献1(下水道維持管理指針)に示されたEPA(アメリカ合衆国環境保護庁)の式など)。
然しながら、かかるメカニズムが明確でありその損傷の程度を推定し得る、環境条件に著しく係る損傷についても、下水道施設の維持管理における予防保全システムに係り、その特徴を活用して適切な損傷度診断をする技術は開示されておらず、未だその損傷の程度を効率的、且つ定量的に評価できる技術は開示されていない。
従って又、その適切な損傷度診断に基づきする、適切な補修工事の実施を含む下水道施設の効率的な維持管理や、年間予算に基づいて、予め登録された補修方法から、適正な補修方法を選定してする補修計画の作成、更に又、損害の程度の今後の推移を予測し、LCC(ライフサイクルコスト)が最小となるように補修計画を作成するなどの機能を有して、下水道施設の効率的な運営を支援する下水管損傷予測方法は未だ開示されていない。
特開2003−234708号公報 特開2002−324096号公報 特開2002−201608号公報 特開2001−325310号公報 特開平05−134715号公報 特開2002−189769号公報 特開2000−172663号公報 特開2004−028976号公報 特開平11−287866号公報 特開2003−138634号公報 特開平09−141293号公報 下水道維持管理指針−2003−、(社)日本水道協会
本発明は、下水道施設の維持管理に係るものであり、損傷の程度を効率的、且つ定量的に評価でき、その調査結果に基づき適切な補修計画を作成するなどの機能を有し、下水道施設の効率的な運営を支援するために、下水管損傷予測方法を提供することを目的とする。
本発明は、上記の目的を達成するために、本発明に係る第1の発明では、下水道管網からモニタリングポイントとする計測箇所を選定し、該選定した計測箇所の下水管の損傷に影響を与える環境データを計測して収集し、該収集した環境データと前記下水道管網の地図情報及び属性情報とに基づいて、任意の下水管の環境データを推定し、該推定した環境データと下水管の前記属性情報及び供用年数に基づき前記下水管の損傷を推定し、前記下水道管網内の各下水管の補修工事の順位付けを支援する情報を作成することとした。
第1の発明を主体とする第2の発明では、前記モニタリングポイントは、下水の合流点、屈曲点、及び/又は、段差のある点を有する地点のマンホールであること。また、第1乃至第2の発明を主体とする第3の発明では、前記環境データは、下水の合流点、屈曲点、又は段差のある点を有する地点のマンホールであることとした。
さらに、第1乃至第3の発明を主体とする第4の発明では、前記属性情報は、下水管の内径、厚さ、外径、最大外径、有効長、種類、及び動水勾配であることとした。
本発明は、損傷の程度を効率的、且つ定量的に評価でき、その調査結果に基づき適切な補修計画を作成するなどの機能を有し、下水道施設の効率的な運営を支援することができる。なお、本発明は、主要な社会基盤の一つである下水道施設を、その資産価値を最大化する如くして運営することを可能とするものであって、その産業上の利用価値は極めて大きい。
以下、本発明の好ましい実施の形態について説明する。なお、以下では、下水管の損傷として、代表的に、上述した如く、硫酸塩還元細菌などの微生物が係り生じるコンクリート管の腐食について説明するが、本発明は、これに限定されることなく、下水管が接する環境条件(水中又は気中)の影響を強く受ける損傷、例えば、二酸化炭素や雨の中に含まれる酸性物質に起因する中性化の進行によって生じる鉄筋の腐蝕、膨張によるコンクリートのひび割れなどを対象として実施することもできる。
本発明は、以下、詳細に説明するように、二つの大きな特徴を有している。第一の特徴は、下水管損傷の要因に係る環境データを、特定のマンホールをモニタリングポイントとして収集すると共に、その収集した環境データ等に基づき他の箇所の環境データを推定することにあり、第二の特徴は、その推定した環境データ等に基づきその箇所の損傷の程度を推定することにある。即ち、本発明は、下水管損傷の要因に係る環境データを推定し、その推定した環境データに基づき損傷の程度を推定して、その推定した損傷の程度の大小に基づいて、補修工事の順位付けを支援する情報を作成することに最大の特徴を有する。
第一の特徴は、長大な下水管網が、複数のマンホールとそれらを繋ぐ複数の下水管とを含み、実質上、連結されたネットワークシステムを構成していることを利用したものであって、結合されたネットワークシステムとして捉えることにより、その結合されたネットワークシステムの構成に基づき他の箇所の環境データを推定することにある。例えば、下流側のマンホールの環境データは、上流側のマンホールの環境データと両者を結合する下水管中での変化量との和として推定でき、複数の下水管が結合され下水が合流するマンホールの環境データは、合流するそれぞれの環境データに対しそれぞれの流入量によって重み付けを行うことによって推定できる。
下水管中での変化量は、例えば、上述した如く、EPA(アメリカ合衆国環境保護庁)の式などによって推定することができる。なお、このEPAの式は、後述する実施例にて、具体的に示す。
第二の特徴は、その推定した環境データ等に基づきその箇所の損傷の程度を推定することにあるが、かかる環境データに基づく損傷の程度の推定は、例えば、上述した如く、気中の硫化水素濃度と供用年数をパラメータとして腐食深度を推定する関係式など、従来技術を用いて行うことができる。
即ち、本発明は、下水管網の全マンホールとそれを繋ぐ全下水管の各々に個別の記号を付与して区別し、その中の特定のマンホールをモニタリングポイントとして下水管損傷の要因に係る環境データを収集し、その収集した環境データと下水管網の地図情報及び属性情報とに基づいて任意の下水管の環境データを推定し、その推定した環境データとその下水管の属性情報及び供用年数とに基づきその下水管の損傷の程度を推定する如くして、任意の下水管の損傷の程度を推定し、その推定した損傷の程度の大小に基づいて、下水管網内各下水管の補修工事の順位付けを支援する情報を作成するのが、その基本的な実施の形態である。
なお、本発明でいう「地図情報」とは、下水道台帳図に対応する情報であって、下水道施設の配置を平面的に示す図面の情報であり、本発明でいう「属性情報」とは、下水道台帳図に関連する調書に対応する情報であって、マンホールの種別や数、下水道の延長距離、汚水ますや雨水ます等の種類等の情報である。
硫酸塩還元細菌などの微生物が係り生じるコンクリート管の腐食は、上述した如く、廃水中に含まれた硫酸イオンが嫌気的な条件下で硫酸塩還元細菌の活動によって硫化水素となった後、この硫化水素が液相部から気相部に移動し、温度差等によって水蒸気等と共に気相部に露出しているコンクリート壁に結露した後、この硫化水素が好気的な条件下で硫黄酸化細菌の作用によって高濃度の硫酸に酸化され、その高濃度の硫酸によってコンクリートが浸食され生じるものであり、下水からの硫化水素の発生量などを把握することにより、腐食の程度を推定することができることが知られている。
又、上述した如く、硫化物濃度やBODなどをパラメータとして下水中における硫化物生成速度を推定する関係式、下水中の分子態割合の関係(pHなどをパラメータとした硫化水素〜硫化物の平衡関係)、水温などをパラメータとした下水中への硫化水素の溶解度関係、気中の硫化水素濃度と供用年数をパラメータとして腐食深度を推定する関係式などが知られている。
下水中における硫化物生成速度は、具体的には、例えば、EPAの式を利用することにより、下水のDO(溶存酸素濃度)、BOD(生物化学的酸素要求量)、水温、及び流量から推定することができ、その生成速度と対象下水管中での在留時間から、硫化物の生成量を推定することができる。なお、ここで言う在留時間は、下水が対象下水管を通過するに要する平均の時間であって、下水管の内径、有効長、流量から計算できる。
気中の硫化水素濃度は、具体的には、例えば、pHなどをパラメータとした下水中の分子態割合の関係と、水温などをパラメータとした下水中への硫化水素の溶解度関係とにより推定することができる。
気中の硫化水素濃度が推定できれば、供用年数との関係において、損傷速度を推定することができ、損傷速度と供用年数から損傷深さを推定することができる。更に、その推定した損傷深度と、下水管の要求性能、例えば、許容最小肉厚、或いは許容腐食深度から緊急性・危険度を判定することができる。
以上のような実施の形態により、本発明は、目視等の主観的な判断に頼ることなく、下水管網の任意の箇所の損傷の程度を推定するに際しても、下水管損傷の要因に係る環境データを収集するモニタリングポイントを大幅に減らし、その少ない測定点で収集した環境データに基づき、任意の箇所の損傷の程度を推定することができるため、損傷の程度を効率的、且つ定量的に評価することができる。
次に、環境データを収集するモニタリングポイントについて、その好適な実施の形態を更に説明する。先ず、モニタリングポイントとする特定のマンホールの選定に際しては、損傷の激しい箇所の近傍がモニタリングポイントとして適しており、例えば、下水の合流点、屈曲点、又は段差のある点を有するマンホールを含み選定するのが好ましい。これらの箇所では、下水が激しく混合されるために、硫化水素の発生量が多く、コンクリートの侵食も進み易いと考えられるためである。
又、モニタリングポイントとする特定のマンホールの選定に際しては、特に、上述したEPAの式などの関係式を用いて環境データを推定しようとする際には、対象とする下水管網のネットワーク構成から、論理的にそれらの環境データの推定に最小限必要なモニタリングポイントを含む、特定のマンホールを選定するのが好ましい。
モニタリングポイントは、本発明の意図するところから、できるだけ少なくするのが望ましいが、一方、一般的に、モニタリングポイントを少なくするほどそれに基づく推定精度は低下する。従って、モニタリングポイントの選定に際しては、例えば、実用上許容し得る推定誤差を設定し、その条件内においてモニタリングポイントを出来るだけ少なくする如くして、モニタリングポイントの箇所及び数を決定する形態として実施するのが好ましいが、かかる好ましいモニタリングポイントの箇所及び数を決定するためには、通常、長期間の実績データが必要であって、本発明の実施においては、環境データの推定値とその推定点における実測値とを比較し、その推定精度に基づき、モニタリングポイントとする特定のマンホールの箇所及び/又は数を変更する工程を有する形態とするのが好ましい。
即ち、最初にモニタリングポイントを選定した後、例えば、実測し収集した環境データに基づいて損傷の激しい箇所とその損傷の程度を推定し、その箇所でのコンクリートの腐食状況を点検して推定値と実測値とを比較し、その推定精度に基づきモニタリングポイントの適否を判断し、モニタリングポイントの見直しを行う形態として実施するのが好ましい。
そのモニタリングポイントの適否の判断に際しては、上述した、実用上許容し得る推定誤差内であることを条件として、モニタリングポイントの箇所と数を決定する形態の他、例えば、モニタリングポイントの数は固定し、その箇所を最適化することもでき、この場合、見直しによって推定精度を上げることができる。
なお、マンホールは、環境データを計測するためのセンサーの設置やその点検・保守などを容易に行うことができる箇所であり、本発明のモニタリングポイントとするに好適な箇所であるが、本発明は、これのみに限定されることなく、例えば、下水管の途中や下水処理場への入り口部など、他の箇所をモニタリングポイントとして含み実施することもできる。
次に、環境データについて、その好適な実施の形態を更に説明する。この環境データは、測定した環境データ等に基づき他の箇所の環境データを推定し、その推定した環境データに基づき下水管の損傷の程度を推定するためのものであり、具体的には、当然ながら、その環境データの推定法や損傷の程度の推定法によって異なるものであって、例えば、上述したEPAの式などを用いる場合、具体的には、下水のDO(溶存酸素濃度)、BOD(生物化学的酸素要求量)、水温、流量、pH、硫化物濃度、及び気中の硫化水素濃度を含める必要がある。
環境データの収集は、継続的に行うことができる形態として実施するのが好ましい。これらの環境データは、一般に、一日の内でも変動し、又、年間でも変動するが、下水管の損傷の程度の推定に際し、例えば、代表値を用いるか平均値を用いるかなど、どのような値を用いるべきか必ずしも明確ではなく、又、それは推定法などによっても異なるものである。
従って、一般に、計算の負荷の軽減のためには代表値を選定し用いることが望ましいが、正確な損傷の程度の推定を可能とし、更に、計算の負荷の軽減を図るためには、環境データの継続的な収集を可能として、その継続的な測定データに基づき、推定に用いるべきデータの形態を最適化できるようにして実施するのが好ましい。
この環境データの収集は、特に本発明を限定するものではないが、継続的なデータ収集を可能とする際には特に、環境データの計測とその蓄積と発信の機能を備えた複合センサーを、モニタリングポイントとする特定のマンホールに設置し、その複合センサーから発信された信号を受け、継続的な環境データの収集を行うことができる形態として実施するのが好ましい。
即ち、下水管は地中に埋設されているために、人間が入ってのサンプル収集は、時間が掛かると共に危険を伴う作業であり、人間が入ってのサンプル収集により継続的なデータ収集を行うことは現実的には困難であって、継続的なデータ収集を可能とする際には特に、上述の如く、複合センサーを設置し、その複合センサーからの信号を受けて、環境データの収集を行う形態として実施するのが好ましい。
かかる複合センサーは、下水のDO(溶存酸素濃度)、BOD(生物化学的酸素要求量)、水温、流量、pH、硫化物濃度、気中の硫化水素濃度などのような、下水管損傷の要因に係る環境データを計測するセンサーと、その計測したデータを蓄積するRAM等のメモリと、その蓄積したデータを定期的に及び/又は要求信号を受けて発信する発信機と、電源や制御器などから構成することができ、例えば、市販の機器を組み合わせることによって容易に作製することができる。
次に、属性情報について、その好適な実施の形態を更に説明する。属性情報は、上述の如く、下水道台帳図に関連する調書に対応する情報であって、マンホールの種別や数、下水道の延長距離、汚水ますや雨水ます等の種類等の情報であるが、EAPの式などを用いて環境データの推定を行う際には特に、下水管の内径、厚さ、外径、最大外径、有効長、種類、及び動水勾配を含む形態として実施するのが好ましい。例えば、内径や動水勾配などは流速に係り、有効長などは下水の在留時間に係り、内径や厚さなどは許容腐食深度に係る。
次に、任意の下水管の環境データを推定する方法の形態について、更に説明する。即ち、この環境データの推定は、上述した如く、硫化物濃度やBODなどをパラメータとして下水中における硫化物生成速度を推定する関係式や、下水中の分子態割合の関係(pHなどをパラメータとした硫化水素〜硫化物の平衡関係)、水温などをパラメータとした下水中への硫化水素の溶解度関係などを用いて行うこともできるが、本発明は、これに限らず、例えば、任意の下水管の環境データの推定を、ニューラルネットワークを用いて行うこともできる。
ニューラルネットワークは、周知の如く、脳や神経回路網のモデルに基づいた計算技術として分類される計算手法であり、入力層と中間層と出力層との階層構造を備え、計算問題の解法を学習するために、内部の重みを外部出力に適用することに特徴づけられる。ニューラルネットワークの中間層を構成する中間素子は、基底関数とも呼ばれ、任意の関数が使用でき、例えば、放射状基底関数(RBF)などが好適に用いられる。放射状基底関数の特徴は、関数の応答が中心点からの距離に応じて単調に減少(又は増加)することにあり、放射状基底関数の中心、距離目盛り及び正確な形状は、モデルのパラメータであり、放射状基底関数の例としては、ガウス関数などがある。
ニューラルネットワークの学習に用いる学習データは、要因指標のデータとその要因に基づき推定しようとする教師データとのデータセットであり、環境データに基づき下水管の損傷の程度を推定しようとする本発明においては、環境データが要因データであり、損傷の程度が教師データとなる。
ニューラルネットワークを用いるに際しては、通常、上述した特許文献5にも示されている如く、先ず、学習用実績情報(学習データ)を収集し、その実績情報を学習することによりニューラルネットワークの重み係数を決定して推定モデルを構築し、その構築した推定モデルを用いて推定するといったステップを踏む。又、ニューラルネットワークは、通常、追加学習機能を有し、追加学習させることにより、推定モデルを更新できる形態として実施される。
本発明の実施において、環境データを推定する具体的な手段としてかかるニューラルネットワークを用いることにより、発生機構が明確で無い場合でも、或いは、発生機構が明確であるがその関係式が確立されていない場合でも、特定のマンホールをモニタリングポイントとして収集した環境データから、任意の下水管の環境データを推定することができ、このニューラルネットワークを用いて環境データを推定する方法は、本発明の実施において好ましい形態の一つである。
なお、ニューラルネットワークを用いるに際しては、推定モデルを構築するために必要な学習用実績情報を収集するために、少なくともある程度の期間、推定しようとする箇所を含む、下水中の硫化物量や気中の硫化水素濃度等の環境データの測定が必要になることは言うまでもない。
次に、推定した損傷の程度の大小に基づいて、作成した補修工事の順位付けを支援する情報などを表示する際の形態に係り、更に説明する。即ち、本発明は、補修工事の順位付けを支援する情報の表示などに係り、GIS(地理情報システム)を用いて地図上に下水管網を表示可能とした形態で実施するのが好ましい。
GIS(地理情報システム)は、周知の如く、文字や数字、画像などを地図と結び付けて、コンピュータ上でさまざまな情報を検索、結合、分析することができ、その結果を地図に表現する機能を有するソフトウェアシステムであって、GISを用いて、例えば、下水管網の全マンホールとそれを繋ぐ全下水管の各々に個別の記号を付与して区別し、地図上へのその個別記号を含む下水管網の表示、その下水管網への緊急度・危険度の判定結果の色表示などの機能を有する形態として実施するのが好ましい。
GIS(地理情報システム)を用いることにより又、モニタリングポイントで測定した環境データの収集に際し、そのデータ入力作業時の誤入力を防止することができると共に、その入力作業を効率化することができる。
即ち、測定した環境データは、当然ながら、そのモニタリングポイントとする特定のマンホールでの値として、正確に区別して入力する必要があるが、下水管は、通常、非常に複雑なネットワークを構成して敷設されているだけでなく、地中構造物であるために、マンホールの同定が非常に難しいのが実態である。これに対し、GIS(地理情報システム)を用い、例えば、地図上で下水管網のマンホールのそれぞれの位置を同定できるようにすることにより、測定した環境データの入力作業時の誤入力を防止できると共に、その入力作業を効率化することができる。
本発明の下水管損傷予測方法は、上述したような、測定した環境データに基づいて他の箇所の環境データを推定し、その推定した環境データに基づきその箇所の損傷の程度を推定して、その推定した損傷の程度の大小に基づいて、補修工事の順位付けを支援する情報を作成する形態の他、その支援情報を、詳細調査の順位付けを支援する情報として、更に、その支援情報に基づき詳細調査する複数の下水管を選択し、その選択した下水管について損傷の程度を実測し、その実測した損傷の程度の大小に基づいて、実測した複数の下水管の補修工事の順位付けを支援する情報を作成する形態として実施することもできる。
この実施の形態は、上述した如くして推定した損傷の程度の精度が、未だ最終的に下水管の補修工事の順位付けを決定する情報としては十分でない場合などに好適なものであって、更に行う詳細調査としては、上述した従来技術などが何らの制限なく用いることができる。例えば、目視やTVカメラを用いての外観調査、コアを抜いての物性調査、ハンマーや鋼球などの打撃による衝撃弾性波試験、或いは、X線法、電磁波法、赤外線法、超音波法などが挙げられる。
詳細調査を更に行うこの実施の形態によれば、下水管網の任意の箇所の損傷の程度を推定するに際しても、下水管損傷の要因に係る環境データを収集するモニタリングポイントを大幅に減らし、その少ない測定点で収集した環境データに基づき、任意の箇所の損傷の程度を推定することができ、その情報に基づき詳細調査する下水管を限定することができるため、損傷の程度を効率的、且つ定量的に評価することができる。更に、その詳細調査を含め、効率的、高精度、且つ定量的に評価した、補修工事の順位付けを支援する情報を作成し、提供することができる。
又、本発明の下水管損傷予測方法は、上述の如く、推定又は実測した損害の程度と、その推定又は実測した箇所の下水管に対する要求性能から、緊急度・危険度を判定し、年間予算に基づいて、予め登録された補修方法から適正な補修方法を選定し、補修計画を作成する形態として実施することもできる。即ち、補修工事の順位付けを支援する情報の他、その適正な補修方法を含め、更に補修計画を作成する形態として実施することもできる。
補修計画は、通常、緊急度・危険度と、年間の補修予算に基づいて決められるが、一般に、同じ損傷でも種々の補修方法が可能であるなど、コストと効果の評価を含め、その中から適正な補修方法を選定するのは極めて難しい問題であって、本発明の実施においては、種々の補修方法を予め登録し、緊急度・危険度と年間の補修予算に基づき、設定された所定の手順に従って、その登録された補修方法から適正な補修方法を選定し、補修計画を作成する形態として実施するのが好ましい。
設定された所定の手順とは、補修計画を作成するために、本発明の下水管網の統合型マネジメントシステムに設定された明確な手順であって、例えば、先ず、緊急度・危険度をランク付けして、そのランクの高い順に、下水管網に設定された期待寿命を達成する補修方法を選択し、更にその中からコストが最小となる補修方法をその下水管に適正な補修方法として選定する如くして、その合計したコストが年間の補修予算内であることを条件にして、補修箇所の選定とその適正な補修方法の選定を進める形態として実施することができる。
かかる補修計画は又、周知のLCCA(ライフサイクルコスト解析)やRM(リスク管理)の手法を用いて好適に行うこともでき、本発明の下水管網の統合型マネジメントシステムは、環境データ等に基づき、損害の程度の今後の推移を更に予測し、年間予算に基づいて、予め登録された補修方法から、LCC(ライフサイクルコスト)が最小となるように遺伝的アルゴリズムを用いて補修計画を作成する形態として実施することもできる。
一般に、下水管網の補修方法は、損傷の部位や程度によっても異なり、又、同じ部位の同じ損傷であってもそれに適用できる複数の補修方法が存在し、それぞれ耐用年数とコストが異なるのが通常である。更に、補修の時期によっても、耐用年数とコストとが異なり、又、複数の箇所を同時に補修すれば補修費用が減少する等、評価要素が多いのが一般的であるが、全供用期間を通じてのコスト(ライフサイクルコスト)を最小にする補修方法を選定し、最適な補修計画を立案するためには、長大な下水管網に関し、その全供用期間を通じ、損害の程度の今後の推移の予測も含め、極めて多くの評価要素の組み合わせについて評価する必要がある。
かかる膨大な組み合わせをそれぞれ評価するのは、極めて多くの時間を要するなど、困難であって、本発明の実施においては、特に発明を限定するものではないが、その膨大な組み合わせの中から最適解を探索する方法として、遺伝的アルゴリズムを用いるのが好ましい。遺伝的アルゴリズムは、上述の如く、周知の技術であって、多数の組み合わせの中から、制約条件を満足する最適な組み合わせを求めるに好適な方法である。なお、例えば、特許文献6に示されている如く、更にローカルサーチを採用するなどして、更に演算時間を短縮した形態として実施することもできる。
又、かかる全供用期間を通じてのコスト(LCC)を最小にする補修方法を選定し、最適な補修計画を立案するに際しては、本発明により環境データ等に基づきその程度を推定・予測する損傷に対する補修計画に限らず、環境データでは推定し難い他の損傷、例えば、道路上を走行する車両の影響などを主たる要因とするクラックや継ぎ目ズレなどに対する補修計画を含み、更には、下水道施設全体の補修計画を立案する形態として実施することもできる。
その際に必要となる他の損傷についての調査は、例えば、従来技術として上述した如く、施工年度の順や過去の事故事例などを総合的に評価して、損傷の進行が予想される下水管を選定して外観調査を行い、その結果によって更に詳細調査を行うなどの形態として実施することができ、かかる実施の形態によれば、管の破損、クラック、継ぎ目ズレ、管のたるみ、管の蛇行、異物の付着、管の腐食、取付管の突出しなど下水管損傷の全ての形態を含み、更には下水処理場なども含み、下水道施設全体の最適な補修計画を立案する形態として実施することができる。
かかる実施の形態によれば、具体的には、例えば、損傷の程度が軽微な時点で補修することによって、大幅な補修を不要とするなど、予防保全の機能を高め、LCC(ライフサイクルコスト)を最小とする如くして、下水道施設を維持・管理することができ、更には下水道施設の長寿命化を図ることができる。
本発明は又、特許文献1などに示されている如く、下水道施設内に敷設された光ファイバケーブルの情報のマネジメントを含み、下水道施設間を光ファイバケーブルで結んでネットワークを構成する形態として実施することもできる。
本発明の下水管損傷予測方法は、そのハード構成としては、例えば、環境データを計測する計測装置と、その計測した環境データなどを入力する入力装置と、その入力情報や推定した環境データなどを格納・記憶する格納装置と、少なくとも、測定又は推定した環境データなどに基づき他の下水管の環境データを推定する機能と、測定又は推定した環境データなどに基づき下水管の損傷の程度を推定する機能と、その損傷の程度の大小に基づいて補修工事の順位付けを支援する情報を作成する機能とを有する演算装置と、作成した補修工事の順位付けを支援する情報などを表示及び/又は出力する出力装置と、を含み備えた構成として実施することができる。
更に具体的には、例えば、計測装置を、上述した如く、環境データの計測とその蓄積と発信の機能を備えた複合センサーとして、これをモニタリングポイントとする特定のマンホールに設置し、入力装置をキーボード、マウス、ペンタブレット、或いは、計測機器等から通信回線を介してデータを受信する受信装置など、複数種類の装置からなり目的に応じた使い分け可能な装置とし、格納装置を磁気ディスク等のコンピュータ用記憶装置とし、演算装置をワークステーションやパーソナルコンピュータ等のコンピュータとし、出力装置をCRTディスプレイ、プリンタなど複数種類の装置からなり目的に応じた使い分け可能な装置として、本発明の下水管損傷予測方法のハードを構成することができる。
以上、詳細に説明した実施の形態の如くして、本発明は、損傷の程度を効率的、且つ定量的に評価でき、その調査結果に基づき適切な補修計画を作成するなどの機能を有し、下水道施設の効率的な運営を支援する下水管損傷予測方法を提供することができる。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。先ず、対象とした下水管網について説明する。図1は、某市の実際の下水管網の一部を示した概要図であって、本実施例で対象とした下水管網の概要図をパソコンのCRT画面に表示したものである。
この中から、下水の合流点、屈曲点、段差のある点を優先する観点からマンホール12箇所をモニタリングポイントとして選定し、下水のDO(溶存酸素濃度)、BOD(生物化学的酸素要求量)、水温、水深、pH、硫化物濃度、及び気中の硫化水素濃度を、一日5回測定した。
下水管網の地図情報及び属性情報は、下水管網敷設時の下水道台帳図及びそれに関連する調書図面から予めデータベース化しておいたものを使用し、属性情報には下水管の内径、厚さ、外径、最大外径、有効長、種類、動水勾配を含んでいる。
本実施例では、図1に示したパソコン画面中の下水管網のマンホールを選択することにより、そのマンホールでの環境データを入力するための画面が開かれるようになっており、図2は、その環境データを入力するためのCRT画面の一例を示したものである。この入力画面の諸欄に、当該モニタリングポイントで測定した下水中及び気中の環境データを入力する如くして、測定した全てのモニタリングポイントに関する環境データの入力をする。
しかる後、図2に示した画面中の計算ボタンをクリックすることにより、下水管の諸元などや、これまでの環境入力データのデータベースから環境データが読み込まれ、損傷の程度の推定計算が行われる。なお、図3は、下水管の諸元など、損傷の程度の推定に係るデータ構成をCRT画面に表示したものである。
以下、本実施例で用いた損傷の程度の推定方法について、その概要を説明する。先ず、硫化物の生成速度の推定は、下記に示すEPAの式を用いて行った。式(1)が、自然流下管の場合であり、式(2)が、圧送管の場合である。
Figure 2006183457
ここで、Sは自然流下管での硫化物濃度(mg/L)、hは時間(h)、BODは生物化学的酸素要求量(mg/L)、Tは下水の温度(℃)、Rは径深(m)であり、流水面の断面積をその濡辺長で除したものである。Sは圧送管での流化物濃度(mg/L)であり、dは管径(m)である。
なお、このEPAの式を用いるに際し、硫化物を生成する細菌はDOが1.0mg/L以上の環境で活性化することから、DOが1.0mg/L以上の場合は、DOが最小の時刻でのBODの値を用い、DOが1.0mg/L未満の場合は、DOの平均値を示す時刻でのBODの値を一日の代表値として用いた。
下水管渠終端側の硫化物濃度Sは、上式で推定した硫化物生成速度と、下水管渠始端側の硫化物濃度Sから、式(3)により推定した。なお、管渠内における平均硫化物濃度Sとしては、このSとSとの単純平均を用いた。
Figure 2006183457
ここに、H=L/3600v、v=1/n×R2/3×I1/2であり、Hは管渠在留時間(h)、Lは管渠延長(m)、vは管渠内平均流速(m/s)、n:粗度係数(ヒューム管は0.013)、Iは動水勾配である。
下水中で生成した硫化物の全てが大気中に拡散されるのではなく、大気中に拡散されるのは硫化水素であって、具体的には、周知の如く、下水中における溶存硫化物のイオン態硫化物と分子態硫化物(即ち、硫化水素)との可逆平衡関係と、硫化水素の下水中への溶解性とによって、大気中に拡散される硫化水素が決まる。これらの関係は概ね、下水のpHと温度をパラメータとしており、詳細な説明は省略するが、推定した硫化物濃度とこれらの関係において、気中の硫化水素ガス濃度を推定することができる。
この気中の硫化水素濃度に基づく損傷の程度の推定は、周知の以下の式(4)を用いて行った。なお、式中、Dは腐食深度(mm)、Cは気中の硫化水素濃度(ppm)、tは供用年数(年)である。
Figure 2006183457
この推定した腐食深度に基づく緊急度・危険度の判定は、本実施例では、管厚みの1/3以上の腐食深度を危険と判定し、この危険度判定で危険と位置づけられた下水管を、補修対象の候補とした。
以上のようにして、下水管網全体について、損傷の程度の推定と、その損傷の程度に対する緊急度・危険度の判定が行われ、これらに基づき、下水管網の補修工事の順位付けを支援する情報が作成され、表示される。
図4は、その下水管網の補修工事の順位付けを支援する情報をCRT画面に表示した一例であって、本実施例によれば、下水管損傷の要因に係る環境データを収集するモニタリングポイントを大幅に減らし、その少ない測定点で収集した環境データに基づき、任意の箇所の損傷の程度を推定することができるため、損傷の程度を効率的、且つ定量的に評価することができる。
某市の実際の下水管網の一部を示した概要図であって、本実施例で対象とした下水管網の概要図をパソコンのCRT画面に表示したものである。 実施例において、環境データを入力するためのCRT画面の一例である。 実施例において、損傷の程度の推定に係るデータ構成をCRT画面に表示したものである。 損傷の程度を推定し、緊急度・危険度を判定し、これらに基づき作成した、下水管網の補修工事の順位付けを支援する情報をCRT画面に表示した一例である。

Claims (4)

  1. 下水道管網からモニタリングポイントとする計測箇所を選定し、
    該選定した計測箇所の下水管の損傷に影響を与える環境データを計測して収集し、該収集した環境データと前記下水道管網の地図情報及び属性情報とに基づいて、任意の下水管の環境データを推定し、該推定した環境データと下水管の前記属性情報及び供用年数に基づき前記下水管の損傷を推定し、前記下水道管網内の各下水管の補修工事の順位付けを支援する情報を作成することを特徴とする請求項1記載の下水管損傷予測方法。
  2. 前記モニタリングポイントは、下水の合流点、屈曲点、及び/又は、段差のある点を有する地点のマンホールであることを特徴とする請求項1記載の下水管損傷予測方法。
  3. 前記環境データは、下水の合流点、屈曲点、又は段差のある点を有する地点のマンホールであることを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載の下水管損傷予測方法。
  4. 前記属性情報は、下水管の内径、厚さ、外径、最大外径、有効長、種類、及び動水勾配であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の下水管損傷予測方法。
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