JP2006172880A - ダイレクトメタノール型燃料電池システム - Google Patents

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Abstract

【課題】出力安定性が改善されたダイレクトメタノール型燃料電池システムを提供する。
【解決手段】電解質膜、アノード及びカソードからなる電解質膜電極接合体を有し、アノードにメタノール水溶液が供給され、カソードに酸化剤が供給されることにより発電する発電部と、アノードの電極反応時の発生ガスを排出するための排出ポンプと、アノードと排出ポンプの間に設けられた圧力調整部材とを有するダイレクトメタノール型燃料電池システム。
【選択図】図1

Description

本発明は、ダイレクトメタノール型燃料電池システムに関し、さらに詳しくは、出力安定性が改善されたダイレクトメタノール型燃料電池システムに関する。
近年、ノート型パソコンや携帯電話、PDAなどの携帯機器の進化・普及に伴い、多様化・多機能化・高性能化が進められ、数多くの応用機器が提案されている。
現在の携帯機器の電源部分の多くには、リチウムイオン電池やニッケル水素電池などの二次電池が使用されている。しかし、携帯機器の発展とともに、消費電力も増加する傾向にあり、これらの電池では容量や出力が不足すると考えられている。また、充電には、そのための電源が必要となり、充電できる場所が限られるという欠点がある。
そのため、これら既存の二次電池の更なる性能向上とともに提案されているのが、水素と酸素の反応により電気を取り出すことのできる燃料電池である。燃料電池には様々な方式があるが、そのなかでも、携帯機器に適用しやすいものとして、ダイレクトメタノール方式があり、数多く研究・開発が行われている。ダイレクトメタノール方式の燃料電池は、燃料となるメタノールを持ち歩くことで、いつでも・どこでも必要なときに携帯機器を使用することができる。
従来技術によるダイレクトメタノール型燃料電池においては、メタノール−水混合燃料が、燃料タンクから供給ポンプにより単数あるいは複数の電解質膜電極接合体(MEA)から成る発電部(燃料電池)に送られることにより行われる。また、アノードでの未使用燃料は、燃料タンクに戻され、燃料を循環して発電を行っている。
ダイレクトメタノール型燃料電池システムの検討例としては、特開2003−346836号公報(特許文献1)、特表2004−507050号公報(特許文献2)、特開2004−146370号公報(特許文献3)等に開示されている。
特許文献1には、燃料を供給ポンプにより機械的圧力で供給する燃料循環構造を有する燃料電池システムが記載されている。未使用のメタノール−水混合燃料は、アノードで発生した二酸化炭素とともに燃料タンクへもどされ、二酸化炭素は、燃料タンクに設置された気液分離部材でメタノール−水混合燃料と分離され、排出される。気液分離膜等の分離部材は内圧が上昇した時点で気体を分離するため、その圧力は発電部のMEA部分へもかかっている。
また、燃料の循環構造において、未使用のメタノール−水混合燃料を返送するためのポンプを用いる構造例が、特許文献2及び3に記載されている。
特許文献2に記載の構造において、返送用ポンプは、発電部で加熱された燃料を冷却する冷却器とアノードで発生した二酸化炭素を分離するための分離器を経た燃料を返送できるように設置されている。そのため、この構造では、この分離器を経る段階で発生する圧力が発電部へかかり、MEAにも同様にアノードからカソード方向への圧力が常にかかっている。
特許文献3に記載の構造においては、アノードとカソードの両排出物をポンプで回収し、燃料タンクへ送り燃料を循環している。しかし、アノードとカソードの排出物をひとつのポンプで同時回収するため、両電極側の圧力をバランスよく制御することができない。カソード側の引力が強すぎると、アノード側の圧力が増加しMEAのアノードからカソード方向へ圧力がかかる。逆に、アノード側の引力が強い場合、供給ポンプとのバランスが崩れアノードでの燃料不足を引きおこす問題があった。
また、複数のMEAを配列したスタック構造においては、アノードで発生した二酸化炭素を排出しやすくするために、スタックの設置条件が制約される場合がある。
特開2003−346836号公報 特表2004−507050号公報 特開2004−146370号公報
従来のダイレクトメタノール型燃料電池では、燃料供給ポンプによる機械的圧力によって、未使用の燃料が、アノードで発生した二酸化炭素とともに押し出されていた。また、アノードで発生した二酸化炭素は、気液分離部で燃料と分離され、排出されていた。この気液分離部は内圧が上昇した時点で気体を分離するものである。
このような構造を有する従来の燃料電池は、発電中、供給ポンプによる圧力と気液分離部に必要な圧力により、MEAに対してアノードからカソードの方向に一定の圧力が加わっている。そのため、特に複数のMEAを平面配列または積層配列したスタック構造において、長期の使用によりMEAの接合面の剥離が起こり、プロトン伝導性や電子伝導性の低下によりMEAの直列抵抗が増加し、出力が低下する問題があった。
また、発電部のMEAが設定条件以上に傾いた場合、二酸化炭素の排出がスムーズに行われなくなり内圧が上昇し、これにより、MEAの接合面の剥離が生じ、プロトン伝導性や電子伝導性が低下したり、燃料の逆流、滞留による燃料不足が発生し、出力が低下する問題があった。
また、一つの燃料供給ポンプを用いて、複数のMEAに燃料を供給する場合、流路構造やスタックの傾き、残存二酸化炭素などによる流路の遮蔽によって、内圧が上昇し、これにより、MEAの接合面の剥離が生じ、プロトン伝導性や電子伝導性が低下したり、燃料の供給バランスの偏りや燃料の逆流による燃料不足が発生し、出力が低下する問題があった。
本発明の目的は、出力安定性が改善されたダイレクトメタノール型燃料電池システムを提供することにある。
本発明は、電解質膜、この電解質膜の一方の面に設けられたアノード及びこの電解質膜の他方の面に設けられたカソードで構成される電解質膜電極接合体を有し、前記アノードにメタノール含有液体燃料が供給され、前記カソードに酸化剤が供給されることにより発電する発電部と、
前記アノードの電極反応時の発生ガスを排出するための排出ポンプと、
前記アノードと前記排出ポンプの間に設けられた圧力調整部材とを有するダイレクトメタノール型燃料電池システムに関する。
また本発明は、さらに燃料タンクと、この燃料タンク内の液体燃料をアノードへ供給するための供給ポンプ及び供給流路と、電極反応時の未使用燃料をこの燃料タンクに返送するための返送流路を有し、
前記排出ポンプが、前記未使用燃料を当該燃料タンクに返送できるように設けられている上記のダイレクトメタノール型燃料電池システムに関する。
また本発明は、前記排出ポンプと前記燃料タンクの間、あるいは前記燃料タンクに気液分離手段が設けられている上記のダイレクトメタノール型燃料電池システムに関する。
また本発明は、前記供給ポンプの吐出能力が、前記電解質膜電極接合体の1cm2あたり0.2ml/分以上、前記排出ポンプの吐出能力が、前記電解質膜電極接合体の1cm2あたり1ml/分以上である上記のダイレクトメタノール型燃料電池システムに関する。
また本発明は、前記電解質膜電極接合体を複数有し、各電解質膜電極接合体に設けられた燃料供給流路が直列に接続され、燃料が1ラインで供給される上記のダイレクトメタノール型燃料電池システムに関する。
また本発明は、前記電解質膜電極接合体を複数有し、各電解質膜電極接合体に設けられた燃料供給流路が並列に接続され、燃料が分岐した複数ラインで供給される上記のダイレクトメタノール型燃料電池システムに関する。
また本発明は、前記排出ポンプの前段に気液分離手段を有し、発生ガスのみを排出する上記のダイレクトメタノール型燃料電池システムに関する。
本発明によれば、アノードで発生したガスを強制排出する排出ポンプを有し、発電部のアノードと排出ポンプの間に圧力調整部材を設けることにより、MEAにかかる過度の圧力を軽減することができ、長期の使用においても、圧力負荷に起因するMEAの劣化が抑えられ、出力を維持することができる。
また、本発明によれば、発電部のアノードに液体燃料を供給する供給ポンプと、アノードで使用されなかった未使用燃料と発生したガスを強制排出する排出ポンプを有し、さらに未使用燃料と発生ガスを分離するための気液分離手段が、排出ポンプの後段に設けられた循環構造を有する燃料電池システムが提供される。この燃料電池システムでは、気液分離手段にかかる圧力がMEAに影響することはなく、また、供給ポンプによる圧力も低減できるため、MEAにかかる圧力を軽減することができる。したがって、長期の使用においても、MEAの接合界面の剥離が起こりにくく、出力を維持することができる。
また、本発明によれば、アノードで使用されなかった未使用燃料と発生したガスを強制排出する排出ポンプを有するため、発電部の設置条件の制限が少ない燃料電池システムを提供することができる。すなわち、発電部のMEAが水平方向に対して±60度の傾斜角で設置されている場合でも、未使用燃料と発生ガスが強制排出されるため、流路の滞留が起こりにくく、内圧の上昇、燃料の逆流、燃料不足が起こりにくいため、良好に発電でき、出力を維持することができる。
また、本発明によれば、一つの供給ポンプを用いて複数のMEAに液体燃料を供給する場合においても、排出ポンプにより、未使用の液体燃料と発生ガスが強制排出されるため、流路における滞留や、内圧の上昇、燃料の逆流、燃料不足が起こりにくいため、供給のバランスが保たれ、良好に発電でき、出力を維持することができる。
さらに、本発明によれば、MEAにアノードからカソード方向へ過度の圧力がかからないため、液体燃料のクロスオーバーが抑制され、利用効率を向上することができる。
本発明の燃料電池システムの一実施形態を図1に示す。
本実施形態の燃料電池システムは、1つ又は2つ以上のMEAを有する発電部111と、燃料102を貯留する燃料タンク101と、燃料を発電部111へ供給するための供給ポンプ104及び供給管103と、未使用の燃料を燃料タンクへ返送できるように設けられた排出ポンプ106、排出管107及び返送管108を有し、燃料の循環系構造を形成している(以下「循環型燃料電池システム」という)。燃料102は、アノード113側に設けられた燃料供給流路112へ供給され、未使用の燃料が排出管107から排出され、排出ポンプ106及び返送管108を経由して燃料タンク101へ返送される。一方、空気等の酸化剤は、カソード115側に設けられた酸化剤供給流路116へ供給され、未使用の酸化剤および生成水がファン110により排出される。
この循環型燃料電池システムは、アノードで発生した二酸化炭素を燃料と分離し、二酸化炭素を系外へ排出するための気液分離手段109を有する。気液分離手段としては、公知のものを用いることができ、例えば、図1に示すように、気液分離膜109を燃料タンク101に設けることができる。あるいは、気液分離装置を、排出ポンプ106と燃料タンク101との間に返送管を介して設けることもできる。このような構成においては、気液分離手段と発電部の間に排出ポンプが設けられているため、気液分離手段にかかる圧力の影響をMEAが受けることがなくなり、排出ポンプの作動と相俟ってMEAに過度の圧力がかかることを防止できる。
また、この燃料電池システムは、アノード側に設けた燃料供給流路112に圧力調整部材105を有する。この圧力調整部材は、MEAと排出ポンプ106の間であれば設置位置は特に制限されない。この圧力調整用部材を設けることにより、排出ポンプにより燃料供給流路内が陰圧になるのを防止することができ、MEAのアノードへ燃料を安定して供給できるとともに、MEAの劣化を抑制することができる。この圧力調整部材は、気液分離膜など、水やメタノールなどの液体を透過せず、気体を透過でき、圧力を調整できるものであれば限定されず、システムの構造に応じて適宜選択することができる。
本発明において使用する供給ポンプ及び排出ポンプは、メタノール−水混合燃料に対する耐薬品性および 耐酸性を有していれば特に制限されない。供給ポンプの動作は、MEA1cm2あたり吐出量0.2ml/分以上が好ましく、0.4〜2ml/分がより好ましく、排出ポンプの動作は、MEA1cm2あたり吐出量1ml/分以上が好ましく、2〜3.5ml/分がより好ましい。なお、発電量0.2A/cm2で発生する二酸化炭素の量は60℃において最大0.6ml/分であり、発電部からの二酸化炭素の排出量は、発電量と発電部に設置するMEA数に依存する。
本発明における発電部が複数のMEAを有する場合、燃料の供給流路は、直列型燃料供給方式と並列型燃料供給方式のいずれかを用いることができる。図4及び図5は、複数のMEAが平面方向に配列された場合の燃料の供給方式を示す。
直列型燃料供給方式は、図4に示すように、各MEA201〜204に設けられた燃料供給流路205が直列に接続され、燃料が一ラインで供給される。並列型燃料供給方式は、図5に示すように、各MEA201〜204に設けられた燃料供給流路205が並列に接続され、燃料が分岐した複数ラインで供給される。
図2に、本発明による燃料電池システムの他の実施形態を示す。
本実施形態は、燃料を循環しない非循環型燃料電池であり、1つ又は2つ以上のMEAを有する発電部111と、アノード113から発生した二酸化炭素を排出するための気液分離手段、排出ポンプ106及び排出管107とを有する。発生した二酸化炭素は、気液分離手段により分離され、排出ポンプ及び排出管を経由して系外へ排出される。本実施形態においては、さらに、前記実施形態と同様に、アノード側に設けられた燃料タンク112に圧力調整部材105を有する。
上述の図1及び図2に示す実施形態の構成によれば、排出ポンプを設けたことにより、発電部の燃料供給部における過度の内圧上昇が防止でき、MEAの劣化を抑制することできる。結果、長期間の作動においても出力を維持することができる。また、MEAに対するアノード側からカソード側方向への圧力が軽減されるため、クロスオーバー量を低減することができる。さらに、本発明によれば、複数のMEAに対して直列あるいは並列に燃料を供給したり、発電部のMEAを水平方向に対して±60度以内の傾斜角で設置したりしても、未使用燃料および発生ガスが強制排出されるため、流路内での滞留が起こりにくく、内圧の上昇、燃料の逆流、燃料不足が起こりにくいため、良好な発電を行うことができる。結果、発電部の設置条件や燃料供給方式の制限が少ないため、携帯機器に適した発電システムを容易に提供することができる。
本発明における燃料は、3〜67vol%のメタノール水溶液が好ましく、7〜35vol%がより好ましい。メタノールの濃度が高すぎると、クロスオーバーにより利用効率が低下し、低すぎると十分な出力を得ることができない。
本発明におけるMEA(電解質膜電極接合体)は、電解質膜114の両側にアノード113及びカソード115が対向配置された構成を有し、電解質膜、アノード及びカソードは従来燃料電池に使用されているものを用いることができる。電解質膜としては、例えば、スルホン酸基等のプロトン交換基を有する高分子電解質膜を用いることができる。アノード及びカソードとしては、例えば、白金系触媒、プロトン伝導性材料、必要により導電補助剤を含有する触媒層を有するものを用いることができる。触媒としては、触媒粒子がカーボン材料等の導電性材料に担持されたものを用いることができる。プロトン伝導性材料としては、スルホン酸基等のプロトン交換基を有する高分子電解質を用いることができる。
MEAに燃料や酸化剤を供給するための燃料供給流路112及び酸化剤供給流路116は平面型スタック構造の場合、酸やアルコールに対して耐食性を有し燃料や酸化剤ガスを透過しない絶縁性材料で形成されたものを用いることができ、積層型スタック構造の場合は、金属やグラファイトなどの、酸やアルコールに対して耐食性を有し燃料や酸化剤ガスを透過しない導電性材料で形成されたものを用いることができる。これら供給流路112の116のMEA側には、燃料や酸化剤がMEAの電極に効率的に供給できるように流路を設けることができ、燃料供給流路112の外側面には圧力調整部材105が設けられる。
〔長期出力試験〕
下記の循環型燃料電池システムについて、燃料温度および試験環境温度40℃、試験環境湿度30%RH、定電力0.05W/cm2の条件下で、定期的に燃料タンク101の燃料を交換し長期間システムを作動させた。電圧の経時変化を図6に示す。また、試験前と400時間後のMEAの開回路における等価直列抵抗(ESR)の測定結果を図7に示す。
下記の非循環型燃料電池システムについては、上記と同条件で、3時間連続して動作させ(1回目の出力)、燃料を入れ替えて再度3時間連続して動作させ(2回目の出力)、これを50回行った。最低出力電圧の変化を図8に示す。また、上記と同様にして測定した試験後の等価直列抵抗(ESR)を図7に示す。
〔実施例1〕
図1に示した循環型燃料電池システムを作製した。発電部111は、電気的に直列に接続されたMEA(面積:16cm2)を4つ有し、水平に設置され、燃料の供給流路は、図4に示すように直列型供給方式とした。燃料に15vol%のメタノール水溶液を用い、供給ポンプ104の吐出量0.4ml/分(MEA1cm2あたり)、排出ポンプ106の吐出量2ml/分(MEA1cm2あたり)として動作させ、カットオフ電圧は1.2Vとした。
MEAは次にようにして作製した。Pt30%とRu20%を担持したカーボンをNafion溶液(商品名:DE520、デュポン社製)で分散しスラリーを調製し、このスラリーを集電体となるステンレス製の多孔性マットに塗布、乾燥し、これをアノード113とした。一方、Pt40%を担持したカーボンをNafion溶液(商品名:DE520、デュポン社製)で分散しスラリーを調製し、このスラリーを集電体となるステンレス製のマットに塗布、乾燥し、これをカソード115とした。塗布量は、アノードはPtが2〜2.5mg/cm2、カソードはPtが2.5〜4mg/cm2となるように調整した。これらアノードとカソードで、180μmのプロトン伝導膜(商品名:Nafion117、デュポン社製)を挟んで、10MPa、130℃、1分間プレスし、MEAを形成した。このMEAを用いた発電部111の出力は48mW/cm2であった。
燃料供給流路112の圧力調整部材105として、MEA1cm2に対し、0.04cm2の気液分離膜を配置した。これにより、過度の陰圧を防止でき、燃料不足やMEAの劣化が防止された。図1に示す構成において、アノード113で発生した二酸化炭素と、圧力調整部材105で吸気された気体は、燃料タンク101へ導入され、燃料タンク101に設置された気液分離膜109を介して排気される。
本実施例の長期出力試験の結果を図6及び図7に示す。本実施例では、400時間後の発電部の電圧は初期の82%であり、MEAのESR上昇率は6〜53%であった。
〔実施例2〕
発電部111を傾斜設置した以外は実施例1と同様の燃料電池システムを作製した。傾斜方向は、排出ポンプ106側を下側に供給ポンプ104側を上側に、水平面に対して40度の傾斜角をつけた。
本実施例の長期出力試験の結果を図6及び図7に示す。本実施例では、320時間後にカットオフ電圧まで電圧降下し、MEAのESR上昇率は25〜50%であった。
〔実施例3〕
燃料の供給流路を図5に示すように並列型供給方式とした以外は、本実施例1と同様な燃料電池システムを作製した。
本実施例の長期出力試験の結果を図6及び図7に示す。本実施例では、400時間後の電圧は初期の89%であり、MEAのESR上昇率は3〜22%であった。
〔実施例4〕
発電部111を傾斜設置し、燃料の供給流路を図5に示すように並列型供給方式とした以外は実施例1と同様の燃料電池システムを作製した。傾斜方向は、排出ポンプ106側を下側に供給ポンプ104側を上側に、水平面に対して40度の傾斜角をつけた。
本実施例の長期出力試験の結果を図6及び図7に示す。本実施例では、400時間後の電圧は初期の84%であり、MEAのESR上昇率は21〜38%であった。
〔実施例5〕
図2に示した非循環型燃料電池システムを作製した。発電部111は、実施例1と同様に、電気的に直列に接続されたMEAを4つ有し、圧力調整部材105を設けた燃料供給流路に代わる燃料タンク112と、酸化剤供給流路116を有するものを用い、水平に設置した。本実施例では、排出ポンプ106に燃料が吸入されないように排出管107と燃料タンク112の間に気液分離装置を配置した。実施例1と同様に、燃料に15vol%のメタノール水溶液を用い、供給ポンプ104の吐出量0.4ml/分(MEA1cm2あたり)、排出ポンプ106の吐出量2ml/分(MEA1cm2あたり)として動作させた。
本実施例の長期出力試験の結果を図7及び図8に示す。本実施例では、50回出力後の電圧は初期の89%であり、MEAのESR上昇率は11〜16%であった。また、一回目の出力時のメタノール利用効率は室温で23.8%であった。
〔比較例1〕
図3に示した燃料電池システムを作製した。排出ポンプを設けていない以外は実施例1と同様な構成である。実施例1と同様に、燃料に15vol%のメタノール水溶液を用い、供給ポンプ104の吐出量0.4ml/分(MEA1cm2あたり)として動作させ、カットオフ電圧は1.2Vとした。
本比較例の長期出力試験の結果を図6及び図7に示す。本比較例では、260時間後にカットオフ電圧まで電圧降下し、MEAのESR上昇率は59〜115%であった。
〔比較例2〕
発電部111を傾斜設置した以外は比較例1と同様の燃料電池システムを作製した。傾斜方向は、排出管107側を下側に供給ポンプ104側を上側に、水平面に対して40度の傾斜角をつけた。
本比較例の長期出力試験の結果を図6及び図7に示す。本比較例では、80時間後にカットオフ電圧まで電圧降下し、MEAのESR上昇率は147〜206%であった。
〔比較例3〕
発電部111を傾斜設置し、燃料の供給流路を図5に示すように並列型供給方式とした以外は比較例1と同様の燃料電池システムを作製した。傾斜方向は、排出管107側を下側に供給ポンプ104側を上側に、水平面に対して40度の傾斜角をつけた。
本比較例の長期出力試験の結果を図6及び図7に示す。本比較例では、180時間後にカットオフ電圧まで電圧降下し、MEAのESR上昇率は112〜147%であった。
〔比較例4〕
排出ポンプ106と排出管107を設置しない以外は実施例5と同様の燃料電池システムを作製した。
本比較例の長期出力試験の結果を図7及び図8に示す。本比較例では、50回出力後の電圧は初期の81%であり、MEAのESR上昇率は25〜59%であった。また、一回目の出力時のメタノール利用効率は室温で21.3%であった。
上記のとおり、実施例1は、比較例1に対して大幅に改善されたことがわかる。これは、燃料供給流路内の二酸化炭素の滞留が抑えられ、圧力が軽減されたことによると考えられる。
比較例2では二酸化炭素の滞留によりスタックの一部が燃料不足となり出力停止になったのに対し、実施例2では、発電部が傾いているにもかかわらず、良好な結果が得られた。これは、二酸化炭素や未使用の燃料の滞留が抑えられ、圧力が軽減されたことによると考えられる。
実施例3及び4では、燃料の供給流路を並列型供給方式にしたことで、直列型供給方式の実施例1及び2に対してそれぞれ良好な結果が得られている。並列型供給方式は、直列型供給方式よりMEA間で燃料濃度に差が生じにくく、各MEAに電圧差が生じにくいため、長期試験において出力低下が起こりにくいと考えられる。比較例3に対しては大幅に改善されており、これは、強制排出による二酸化炭素や未使用の燃料の滞留が抑えられ、圧力が軽減したことによると考えられる。
実施例5の非循環型の燃料電池システムにおいても、比較例4に対し出力が維持されているのは、排出ポンプを設置したことによる内圧上昇が抑制され、MEAの劣化が抑制されたためと考えられる。
また、実施例5は比較例4に比較して燃料の利用効率が改善されている。これは、MEAのアノードからカソード方向への圧力が軽減されたため、メタノールクロスオーバー量が減少したためと考えられる。
以上説明したように、本発明によれば、アノードからの未使用燃料と発生ガスを強制排出することで、発電部への燃料の供給と発生ガスの排出を円滑に行い、MEAにかかるアノード側からカソード方向への圧力を軽減させることで、MEAの接合界面の剥離が防止でき、結果、出力の低下を抑制できる。また、このような圧力軽減効果によってクロスオーバー量が低減できる。さらに、複数のMEAへの燃料供給を均一にすることが可能となり、MEAの部分的な劣化を防止することができ、結果、出力の低下を抑制できる。よって、本発明によれば、長期にわたり信頼性の高いダイレクトメタノール型燃料電池システムを提供できる。
本発明による循環型燃料電池システムの一実施形態の概略構成図 本発明による非循環型燃料電池システムの一実施形態の概略構成図 比較例の燃料電池システムの概略構成図 直列型燃料供給方式の説明図 並列型燃料供給方式の説明図 循環型燃料電池システムの長期作動による電圧経時変化を示す図 循環型または非循環型燃料電池システムの長期作動による電解質膜電極接合体(MEA)の等価直列抵抗(ESR)の増加率を示す図 非循環型燃料電池システムの作動回数に伴う出力変化を示す図
符号の説明
101 燃料タンク
102 燃料
103 供給管
104 供給ポンプ
105 圧力調整部材
106 排出ポンプ
107 排出管
108 返送管
109 気液分離手段
110 ファン
111 発電部
112 燃料供給流路または燃料タンク
113 アノード
114 電解質膜
115 カソード
116 酸化剤供給流路
201 MEA番号1
202 MEA番号2
203 MEA番号3
204 MEA番号4
205 燃料供給流路
点線矢印:気体の流れ方向
実線矢印:燃料の流れ方向

Claims (7)

  1. 電解質膜、この電解質膜の一方の面に設けられたアノード及びこの電解質膜の他方の面に設けられたカソードで構成される電解質膜電極接合体を有し、前記アノードにメタノール含有液体燃料が供給され、前記カソードに酸化剤が供給されることにより発電する発電部と、
    前記アノードの電極反応時の発生ガスを排出するための排出ポンプと、
    前記アノードと前記排出ポンプの間に設けられた圧力調整部材とを有するダイレクトメタノール型燃料電池システム。
  2. さらに燃料タンクと、この燃料タンク内の液体燃料をアノードへ供給するための供給ポンプ及び供給流路と、電極反応時の未使用燃料をこの燃料タンクに返送するための返送流路を有し、
    前記排出ポンプが、前記未使用燃料を当該燃料タンクに返送できるように設けられている請求項1に記載のダイレクトメタノール型燃料電池システム。
  3. 前記排出ポンプと前記燃料タンクの間、あるいは前記燃料タンクに気液分離手段が設けられている請求項2に記載のダイレクトメタノール型燃料電池システム。
  4. 前記供給ポンプの吐出能力が、前記電解質膜電極接合体の1cm2あたり0.2ml/分以上、前記排出ポンプの吐出能力が、前記電解質膜電極接合体の1cm2あたり1ml/分以上である請求項2又は3に記載のダイレクトメタノール型燃料電池システム。
  5. 前記電解質膜電極接合体を複数有し、各電解質膜電極接合体に設けられた燃料供給流路が直列に接続され、燃料が1ラインで供給される請求項2〜4のいずれかに記載のダイレクトメタノール型燃料電池システム。
  6. 前記電解質膜電極接合体を複数有し、各電解質膜電極接合体に設けられた燃料供給流路が並列に接続され、燃料が分岐した複数ラインで供給される請求項2〜4のいずれかに記載のダイレクトメタノール型燃料電池システム。
  7. 前記排出ポンプの前段に気液分離手段を有し、発生ガスのみを排出する請求項1に記載のダイレクトメタノール型燃料電池システム。
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