JP2006141217A - てんかん様痙攣を起こすトランスジェニック動物 - Google Patents

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Abstract

【課題】ヒトのてんかんの解明や抗てんかん薬の開発に有用なてんかん様痙攣症状を発現するトランスジェニック動物の提供。
【解決手段】糖鎖抗体遺伝子を導入することによりてんかん様痙攣を起こすトランスジェニック非ヒト哺乳動物。特に、本発明においては以下の(a)又は(b)のタンパク質をコードする糖鎖抗体遺伝子が導入されたトランスジェニック非ヒト哺乳動物を提供する。 (a) 2個の特定のアミノ酸配列からなるタンパク質 (b) 前記2個の特定のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、糖鎖抗体活性を有するタンパク質。
【選択図】なし

Description

本発明は、糖鎖抗体遺伝子が導入された、てんかん様痙攣を起こすトランスジェニック非ヒト哺乳動物に関する。
自己免疫性神経疾患(ギラン・バレー症候群、フィッシャー症候群、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、運動障害優位型末梢神経障害、IgM蛋白血症等)の発症には、糖脂質や糖タンパク質の糖鎖に対する抗体の関与が明らかにされている。例えば、ギラン・バレー症候群ではガングリオシドGM1{Galβ1-3GalNAcβ1-4(NeuAcα2-3)Galβ1-4Glcβ1-1'Cer}をはじめとしてGD1a{NeuAcα2-3Galβ1-3GalNAcβ1-4(NeuAcα2-3)Galβ1-4Glcβ1-1'Cer}、GT1b{NeuAcα2-3Galβ1-3GalNAcβ1-4(NeuAcα2-8NeuAcα2-3)Galβ1-4Glcβ1-1'Cer}、GM2{GalNAcβ1-4(NeuAcα2-3)Galβ1-4Glcβ1-1'Cer}、シアリルパラグロボシド{NeuAcα2-3Galβ1-4GlcNAcβ1-3Galβ1-4Glcβ1-1'Cer}などに対する抗体価が、フィッシャー症候群ではGQ1b{NeuAcα2-8NeuAcα2-3Galβ1-3GalNAcβ1-4(NeuAcα2-8NeuAcα2-3)Galβ1-4Glcβ1-1'Cer}抗体価が、IgM蛋白血症では硫化グルクロンパラグロボシド{GlcUA(3SO4)β1-3Galβ1-4GlcNAcβ1-3Galβ1-4Glcβ1-1'Cer}やジシアロガングリオシドに対する抗体価が特異的に上昇することが報告されている。しかし、その発症機構の詳細は未だ不明な点が多い。

Int. J. Oncology 23: 381-388, 2003
本発明は、糖鎖抗体遺伝子が導入された、てんかん様痙攣を呈するトランスジェニック動物を提供する。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、糖鎖抗体遺伝子を導入したトランスジェニック動物がてんかん様痙攣を発することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1) 糖鎖抗体遺伝子が導入された、てんかん様痙攣を起こすトランスジェニック非ヒト哺乳動物。
糖鎖抗体遺伝子としては、以下の(a)又は(b)のタンパク質をコードするものが挙げられる。
(a) 配列番号2又は4で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(b) 配列番号2又は4において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、糖鎖抗体活性を有するタンパク質
また、糖鎖抗体遺伝子は、以下の(a)又は(b)のDNAを含むものを使用することも可能である。
(a) 配列番号1又は3で示される塩基配列からなるDNA
(b) 配列番号1又は3で示される塩基配列からなるDNAに対し相補的なDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、糖鎖抗体活性を有するタンパク質をコードするDNA
本発明において、非ヒト哺乳動物としては、例えばマウス、ラット、ウサギ、モルモット、ブタ、ヒツジ及びヤギからなる群から選択されるいずれか一種が挙げられるが、マウスであることが好ましい。
(2) 糖鎖抗体遺伝子を非ヒト哺乳動物のゲノムに導入することを特徴とする、てんかん用痙攣を起こすトランスジェニック非ヒト哺乳動物の作製方法。
(3) 上記トランスジェニック動物に候補物質を投与することを特徴とする、抗てんかん薬のスクリーニング方法。
本発明により、糖鎖抗体遺伝子が導入された、てんかん様痙攣を起こすトランスジェニック非ヒト哺乳動物が提供される。このトランスジェニック動物は、てんかんの発症機序の解明、あるいは抗てんかん薬のスクリーニングを行うためのモデル動物として有用である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、糖鎖抗体遺伝子が導入された、てんかん様痙攣を起こすトランスジェニック非ヒト哺乳動物である。
1.糖鎖抗体遺伝子
糖鎖抗体とは、糖鎖と特異的に結合する抗体であって、ガングリオシドの糖鎖部分に対する特異性が高い抗体をいう。本発明において用いるのに好ましい糖鎖抗体は、抗体分子全体(ポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であっても良い)またはその断片である。また、本発明の抗体のアイソタイプは特に限定されず、例えば、IgG(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、IgM、IgA(IgA1、IgA2)、IgD又はIgEである。なお、ガングリオシドとは、シアル酸含有スフィンゴ糖脂質の総称で、全ての哺乳類の細胞表面に存在する膜構成成分である。抗体の断片としては、前述したポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体の一部分の領域を意味し、具体的にはF(ab')2、Fab'、Fab、Fv(variable fragment of antibody)、sFv、dsFv(disulphide stabilized Fv)、あるいはdAb(single domain antibody)等が挙げられる。
本発明において使用される糖鎖抗体遺伝子は、このような糖鎖と特異的に結合する抗体タンパク質をコードする遺伝子であり、たとえば、H(heavy)鎖V(variant)領域の塩基配列を示す配列番号1又はL(light)鎖V領域の塩基配列を示す配列番号3を含むDNAのほか、配列番号1又は3で示される塩基配列に相補的な配列に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ糖鎖抗体活性を有するタンパク質をコードするDNAを含む。
このような糖鎖抗体遺伝子は、配列番号1又は3で表される塩基配列からなるDNA又はその断片をプローブとして、コロニーハイブリダイゼーション、プラークハイブリダイゼーション、サザンブロット等の公知のハイブリダイゼーション法により、ヒトのcDNAライブラリー及びゲノムライブラリーから得ることができる。これらの方法については、『Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed.』(Cold Spring Harbor Press (1989))を参照することができる。
上記ハイブリダイゼーション条件において、ストリンジェントな条件としては、例えば、1×SSC〜2×SSC、0.1%〜0.5%SDS及び42℃〜68℃の条件が挙げられ、より詳細には、60〜68℃で30分以上プレハイブリダイゼーションを行った後、プローブを添加して1時間以上68℃に保ってハイブリッド形成させ、その後、2×SSC、0.1%SDS中、室温で5〜15分の洗浄を4〜6回行う条件が挙げられる。
ここで、「糖鎖抗体活性」とは、糖鎖と特異的に結合する活性である。例えば、ガングリオシドGD2特異抗体は、GalNAcβ1-4(NeuAcα2-8NeuAcα2-3)Galβ1-4Glc-1-1'Cerの構造で示されるGD2とのみ結合する活性を有し、シアル酸の一つ少ないGM2{GalNAcβ1-4(NeuAcα2-3)Galβ1-4Glcβ1-1'Cer}、N-アセチルガラクトサミンの一つ少ないGD3(NeuAcα2-8NeuAcα2-3Galβ1-4Glcβ1-1'Cer)、ガラクトースが一つ付加したGD1b{Galβ1-3GalNAcβ1-4(NeuAcα2-8NeuAcα2-3)Galβ1-4Glcβ1-1'Cer}、シアル酸が一つ付加したGT2(NeuAcα2-8NeuAcα2-8NeuAcα2-3Galβ1-4Glcβ1-1'Cer)とは反応しない特異性の高い活性を有する抗体である。
また、ここで用いた糖鎖抗体遺伝子は、GD2と強く反応し、b系列ガングリオシド、すなわちジシアロガングリオシドに幅広く反応する抗体タンパク質をコードする。そのような抗体タンパク質として、例えば、H鎖V領域のアミノ酸配列を示す配列番号2又はL鎖V領域のアミノ酸配列を示す配列番号4からなるタンパク質、又は配列番号2又は4に示すアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ糖鎖抗体活性を有するタンパク質である。
上記アミノ酸の欠失、置換又は付加等の変異型をコードする遺伝子の作製には、通常の部位特異的遺伝子変異導入法を利用することができる。例えば、Kunkel法や Gapped duplex法等の公知手法により、部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット、例えばQuikChangeTM Site-Directed Mutagenesis Kit(ストラタジーン社製)、GeneTailorTM Site-Directed Mutagenesis System(インビトロジェン社製)、TaKaRa Site-Directed Mutagenesis System(Mutan-K、Mutan-Super Express Km等:タカラバイオ社製)等を用いて行うことができる。

2.トランスジェニック動物
本発明のトランスジェニック動物は、遺伝子組換え技術を用いて上記糖鎖抗体遺伝子を非ヒト哺乳動物のゲノムに導入することによって得ることができる。本発明に用いられる非ヒト哺乳動物の種類は、特に限定されるものではない。たとえば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ブタ、ヒツジ及びヤギなどが挙げられる。本発明では取り扱いが容易で繁殖しやすいマウスが好ましい。
トランスジェニック動物の作製は標準的な方法で行うことができる。例えば、糖鎖抗体GMB7のmRNA上のH鎖、L鎖各々のV領域をコードする部分を鋳型とし、適当なプライマーと逆転写酵素を用いてDNAを増幅及びクローニングする。あるいは、ゲノム遺伝子又はゲノムライブラリーからPCR等により糖鎖抗体遺伝子を得る。これらの遺伝子を適当なベクターに組み込んで遺伝子組み換えベクターを作製する。ベクターは、宿主細胞に保持されるものであれば特に限定されず、例えば、プラスミド DNA等が挙げられる。
得られた組換えベクターをES細胞に導入する。ES細胞は胚盤胞期の受精卵の内部細胞塊に由来し、in vitroで未分化状態を保ったまま培養維持できる細胞である。ES細胞としては、既に樹立された細胞株及び新しく樹立した細胞株のいずれをも使用することができる。ES細胞への遺伝子導入は、リン酸カルシウム共沈殿法、エレクトロポレーション法、リポフェクション法、レトロウイルス感染法、凝集法、マイクロインジェクション法、パーティクルガン法などの方法を採用することができるが、簡便に多数の細胞を処理できる点でエレクトロポレーション法が好ましい。
導入遺伝子が組み込まれたES細胞は、単一細胞をフィーダー細胞上で培養して得られるコロニーから分離抽出した染色体DNAをサザンハイブリダイゼーション又はPCR法によりスクリーニングすることによって検定することができる。あるいは、薬剤耐性遺伝子又はレポーター遺伝子を含むベクターを用いることによってセレクションを行ってもよい。薬剤耐性遺伝子としては、例えばネオマイシンホスホトランスフェラーゼII(nptII)遺伝子、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(hpt)遺伝子などが挙げられ、レポーター遺伝子としては、例えばβ−ガラクトシダーゼ(lacZ)遺伝子、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(cat)遺伝子などが挙げられる。
導入遺伝子の組込みが確認されたES細胞を同種の非ヒト哺乳動物由来の胚内に戻すことにより、宿主胚の細胞塊に組み込まれてキメラ胚が形成される。これを仮親に移植して発生及び生育させることにより、キメラトランスジェニック動物が得られる。そして、仮親から生まれた子(マウスの場合は約17日で子が生まれる)のうちキメラ動物を選ぶ。キメラの寄与率が高い動物は、生殖系列の可能性が高いが、キメラ動物を正常な動物と交配することにより、生殖系列のキメラ動物であることの確認が可能である。その後、正常な雌と交配し、F1を得て変異動物系統を樹立する。
上記のようにして得られるキメラトランスジェニック動物は、相同染色体の一方にのみ導入遺伝子を有するヘテロ接合体として得られる。相同染色体の両方に糖鎖抗体遺伝子を有するホモ接合体を得るためには、F1動物のうち相同染色体の一方にのみ導入遺伝子を有するヘテロ接合体の兄妹同士を交雑すればよい。
抗体遺伝子の発現は、PCRにより、抗体の確認は希釈血清のGD3に対する反応により、それぞれ確認することができる。
このトランスジェニック動物のうち、抗体陽性のものを交配により何代か継代することにより、てんかん様痙攣を起こすトランスジェニック動物が作製される。
「てんかん」とは、種々の原因により起こる脳障害のひとつで、脳波に異常がみられる結果、脳の機能が発作的に異常になり、しかもそれが反復しておこる慢性疾患である。具体的には、大脳の神経細胞の過剰な活動に由来する反復性の発作(てんかん発作)を主徴とし、痙攣など、変化に富んだ異常を伴う。また、てんかんは、単一の疾患単位ではなく、大脳神経細胞の過剰発射による発作を主症状とするいくつかの疾患単位を集めたものであり、その種類も広範囲に及ぶ。
本発明のトランスジェニック動物において、「てんかん様痙攣」とは、上記てんかんと同様の痙攣を起こすものといい、例えば、特定の音や振動、好ましくは、金属がすれることにより生じる音や振動に反応した結果、生じる痙攣などをいう。
てんかん様痙攣を発したことの確認は、挙尾反応、行動異常、転倒、脳波異常等により行う。例えば、一定の行動の流れが停止したり、振動を生じたり、転倒したりという、痙攣状態を呈する。あるいは、脳波が独特のてんかん様のスパイクを呈し、痙攣に伴い大きく増幅される時に、痙攣が起こったと判断する。

3.抗てんかん薬のスクリーニング方法
本発明は、てんかん様痙攣が発現されたトランスジェニック動物に、てんかん治療のための薬物の候補物質(被験物質)を投与することにより、てんかん治療薬をスクリーニングすることができる。例えば、本発明のトランスジェニックまたはその一部に薬物候補物質を接触させ、前記候補物質を接触させた非ヒト動物又はその一部において標的とする疾患と相関関係を有する指標値を測定し、対照と比較し、この比較結果に基づいて、てんかん症状を軽減または消滅させるか否かを確認することで、候補物質をスクリーニングすることができる。
「トランスジェニック動物又はその一部」とは、動物の生体の全身、及び限定された組織又は器官の両者を含む。限定された組織又は器官の場合は、動物から摘出されたものも含む。
候補物質としては、例えば、ペプチド、タンパク、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、細胞培養上清、植物抽出液、哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ブタ、ウシ、ヒツジ、サル、ヒトなど)の組織抽出液、血漿などが挙げられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。これら候補物質は塩を形成していてもよく、候補物質の塩としては、生理学的に許容される酸(例えば、無機酸など)や塩基(例えば、有機酸など)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸など)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸など)との塩などが用いられる。
試験動物を候補物質で接触させる方法としては、例えば、経口投与、静脈注射、塗布、皮下投与、皮内投与、腹腔投与などが用いられ、試験動物の症状、候補物質の性質などにあわせて適宜選択することができる。また、候補物質の投与量は、投与方法、候補物質の性質などにあわせて適宜選択することができる。
例えば、ある候補物質を投与した場合に、脳波の示す独特のてんかん様スパイクが消失し、且つ痙攣等が抑えられたことが確認できる結果が得られれば、用いた候補物質を抗てんかん薬として選択することが可能である。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
痙攣発作を起こすマウスの作製
(1)導入遺伝子の再構成
抗-GD2-IgM抗体のH鎖及びL鎖の可変領域に対応するcDNA断片は、抗GD2-IgM抗体産生マウスハイブリドーマGMB7からRT-PCRによりクローン化した。ハイブリドーマGMB7は、全て常法に従って作製した(Hideki Ozawa et al. Generation of one set of monoclonal antibodies specific for b-pathway ganglio-series gangliosides. Biochi. Biophys. Acta, 1123,184-190,1992)。精製ガングリオシド(10μg)とS.minnesota(250μg)との縣濁液1mlを作製し、C3H/HeNマウスに200μlずつ、0、4、7、11、21日後に尾静脈より注入することによってマウスを免疫した。マウスミエローマ細胞株(PAI、2-3x107/10ml)と、最終免疫(21日)後から3日目にマウスから取り出した脾臓細胞(2x108/20ml)とを、PEG(ポリエチレングリコール)#4000 を用いて細胞融合させ、得られた融合細胞をHAT培地に移し、96穴のプレートに播種した。その後、HAT耐性コロニーを観察し、GD2ガングリオシドをコーティングしたELISAプレートを用いて、細胞が増殖しているウエルの培養上清の抗体価を測定した。高い抗体価を示したウエルのハイブリドーマをクローニングに供し、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマGMB7を得た。
次に、総RNAをGMB7から調整し、そしてオリゴ-dT15プライマーとSuperscript II RNaseH- reverse transcriptase と一緒に42℃、50分間反応させた。その後、H鎖及びL鎖の大部分の可変領域のクローニングの為にデザインしたH鎖プライマーミックスとL鎖プライマーミックスを用いて40サイクルの増幅をする(96℃で30秒、55℃で1分、72℃で1分)PCRを行なった。用いたプライマーミックスは以下の通りである。

L鎖 43-20J-L (配列番号5): 5'-TTGGTCCCAGCACCGAACGTGAGT-3'
L ProPvSu(配列番号6): 5'-TCTTTAAGGCAGCTGCCAGGAG-3'
H鎖 43-20J-H (配列番号7): 5'-AGTCAAAGTAGGCCCGAGCTGTCC-3'
H ProBX u(配列番号8): 5'-TCTAGCAGTGGGATCCTGTCCTG-3'

ここで、配列番号5のプライマー43-20J-Lの塩基配列は、図1Bにおいて、第559〜582番目の領域の塩基配列(下線部)に相補的であり、配列番号7のプライマー43-20J-Hの塩基配列は、図1Aにおいて、第491〜514番目の領域の塩基配列(下線部)に相補的な配列である。配列番号6および配列番号8のプライマーは、いずれも、可変領域よりもさらに上流に位置するプロモーター領域にある配列に相補的な塩基配列である。
H鎖に関しては、VH cDNA プローブとλgt10ベクターで調製したGMB7 genomic DNA ライブラリーから分離したJH-Cμ intron プローブ(pVH167μからの1.5kbp HindIII-Xbal 断片)の両方で、4.1kbp EcoR1-EcoR1 genomic DNA 断片をハイブリダイズした。DNA配列解析はこの断片がプロモーター、リーダーエクソン、再構成VHDHJHエクソンと抗-TNPIg H鎖遺伝子のIntronic enhancer の一部を含んでいることを示した。Intronic enhancerの一部を欠く(0.3kbp EcoR1-Xbal 断片)、とgermline Cμ遺伝子の3.5kbp Xbal-Xbal断片は、既に報告された配列に基づくBalb/cマウス肝臓genomic DNAライブラリーから単離した。
これら3つの断片を、抗GD2-IgMのμH鎖をコードする再構成genomic DNAを得るためにpBluscript II SK+ で連結して、クローン化した。図1Aは、GMB7のH鎖可変領域(V領域)の塩基配列及びアミノ酸配列を示す。図1Aでは、17番目の塩基アデニン(A)から始まるエクソン中の最後のアミノ酸はアラニンであり、トリプレットコドンGCAで表される。そうすると、このエクソン最後の塩基である101番目のグアニン(G)が残るが、このグアニンは、次のエクソンの始まりである185番目のグアニン、186番目のチミンとトリプレットコドンとなり、アミノ酸グリシンを形成する。
L鎖に関しては、VL cDNA プローブとZAP発現ベクターで調製したGMB7 genomic DNA ライブラリーから分離したJκ-Cκ intron プローブ(pVL167κからの0.8kbp SacI-SacII 断片)の両方で、2.3kbp HindIII-HindIII genomic DNA 断片をハイブリダイズした。抗GD2イムノグロブリンL鎖遺伝子のリーダーエクソンと再構成VκJκ遺伝子断片を含む1.3kbp断片は、2.3kbp断片のPvuII-PstI処理により単離した。κL鎖遺伝子のプロモーターを含む5kbp SalI-PvuII断片及びκL鎖遺伝子のIntronic enhancer、Cκと3'エンハンサーを含む12kbp PstI-NotI断片は pMM222から単離した。
これら3つの断片は抗GD2-IgMのκL鎖をコードする再構成genomic DNAを得るためにpBluscript II SK+ で連結した後、クローン化した。図1Bは、GMB7のL鎖可変領域(V領域)の塩基配列及びアミノ酸配列を示す。ここでは、79番目の塩基グアニンが、次のエクソンの始まりである261番目の塩基チミン、262番目の塩基シトシンと結合してトリプレットコドンGTCに対応するアミノ酸バリンを形成する。
図1A及び図1Bにおいて、小文字はイントロン領域を、大文字は、ノンコーディングリージョン(アミノ酸に翻訳されることのない部分ではあるが、遺伝子として特定される領域)とコーディングリージョン(アミノ酸翻訳領域)をそれぞれ示す。

(2)トランスジェニックマウスの樹立
抗GD2-IgM抗体 H鎖及びL鎖コンストラクトを等量混和し、BALB/cマウスの受精卵にマイクロインジェクションし、擬妊娠ICRマウスの輸卵管に移植した。
抗体遺伝子の発現はPCRで、抗体の確認は希釈血清のGD3に対する反応で確認した。すなわち、トランスジーン発現の確認は、マウスの尻尾からのDNAを試験材料とし、H鎖とL鎖の2つの遺伝子に特異的なプライマーを用いたPCRにて行った。PCR反応は、反応組成液として、DNA試料2μl、dNTPs混合溶液2μl、x5反応緩衝液5μl、MgCl2 2μl、プライマー各2μl、Taq0.25μl を混合したものを用いて、PCRサイクル条件を96℃(0.5分)、55℃(1分)、72℃(1分)を1サイクルとしたものを40サイクル繰り返して行った。このPCR反応で用いたプライマーは以下の通りである。

L鎖 5'-TTGGTCCCAGCACCGAACGTGAGT-3'(配列番号9)及び
5'-TCTTTAAGGCAGCTGCCAGGAG-3'(配列番号10)
H鎖 5'-AGTCAAAGTAGGCCCGAGCTGTCC-3'(配列番号11)及び
5'-TCTAGCAGTGGGATCCTGTCCTG-3'(配列番号12)

また、血清中の抗体の確認は、GD3を固相化したELISA法にて確認した。その結果、1匹のマウスにトランスジーンの存在が確認され、同時に血清中にGD3を認識するIgM抗体の産生が確認された。
抗体陽性の個体を交配することにより継代をくり返して、てんかん様痙攣症状を発現するトランスジェニックマウスを作製した。このマウスは、生後2ヶ月移後、雄マウスに明確な痙攣を起こすものが認められた(図2)。
痙攣時の脳波の測定
トランスジェニックマウスにネンブタール麻酔したのち、脳波測定用電極を装着し、経時的に脳波を測定した。
すなわち、ネンブタール5mg/kgを腹腔内投与し、麻酔下で頭部固定器にてマウス頭部を固定する。頭部を切り開いて頭外骨を露出させ、電極を埋め込み、電極にリード線を繋ぎ測定装置へと導いた。麻酔が完全にきれると思われる7時間後より脳波の測定をシールドルーム内で開始した。
その結果、正常マウスでは現れない、てんかん様脳波、即ち一定の間隔で発現するスパイクと痙攣の始まる前より増幅された脳波が観測された(図3A、図3B、図3C)。ここで、図3A〜Cは術後7時間経過後の脳波の経時変化(秒)を示しており、それにより、本発明のトランスジェニックマウスは、てんかん様の痙攣を示した。
FISH解析(蛍光in situハイブリッド形成法)による抗体遺伝子の導入部位の確認
(1)染色体の調製とFISH(Fluorescence in situ hybridization:蛍光in situハイブリッド形成)法
FISH法を用いて、染色体に導入された抗体遺伝子の位置を確認した。染色体の調製とFISH法は松田らの方法(Matsuda, Y. and Chapman, V.M.: Application of fluorescence in situ hybridization in genome analysis of the mouse. Electrophoresis 16:261-272, 1995)に従って行った。
分裂促進因子刺激リンパ球の培養は、サイミジン阻害により同期させた。複製期後半における5-ブロモデオキシウリジンの取込みは、過剰なサイミジンから放出されたあと、異なる複製染色により確認した。染色体上のバンドはHoechst 33258で染色した後、UVライトに染色体スライドを露光することによって得られた。スライドは65℃、2時間硬化し、その後2xSSC中の70%ホルムアミドを用いて70℃で変性させ、4℃の70-85-100%エタノールで脱水した。
ビオチンプローブとして抗体のL鎖の22kbゲノムDNAフラグメント及びH鎖の16kbのゲノムDNAフラグメントを用いた。L鎖とH鎖の22kbと16kb遺伝子DNA断片は、以下に示す市販化された方法に従って、ビオチン16-dUTPによるニックトランスレーションにより標識化した。標識されたDNA断片は10倍量のマウスCot-1 DNAでエタノール沈澱し、それから100%ホルムアミド中10分間、75℃で変性させた。変性プローブを等量のハイブリダイゼーション溶液と混和した。250ngラベルしたDNAを含む20ulの混合物をスライドグラスに置き、37℃で一晩反応させた。スライドグラスを洗浄し、4xSSCでリンスした後、それらを蛍光アビジンと反応させた。染色体スライドを洗浄した後、プロピジウムアイオデートで染色した。FISHの像はB-2AとUV-2Aのフィルターが装着されたニコン蛍光顕微鏡を用いることにより得られた。
その結果は以下の通りである。すなわち、
(1)内因性の抗体H鎖遺伝子は12番染色対のF1に存在し、導入されたトランスジーンはX染色体上のD-E1に存在することが判明した(図4A矢印)。
(2)内因性の抗体L鎖遺伝子は6番染色対のC1-C3に存在し、導入されたトランスジーンはX染色体上のD-E1に存在することが判明した(図4B矢印)。
図4Aにおいて、aはB-2Aのフィルターを装着したときの観察像、bはUV-2Aのフィルターを装着したときの観察像、cは、抗体遺伝子の導入部位の拡大図(B-2Aのフィルター装着)、dは抗体遺伝子の導入部位の拡大図(UV-2Aのフィルター装着)である。どちらの図面も、大きな矢印は、抗体導入遺伝子の導入部位を、小さな矢印は、内因性遺伝子の部位を示す。黄色の発色は、蛍光アビジンが発色していることを示す。
本発明に関するてんかん様痙攣症状を発現するトランスジェニック動物は、ヒトのてんかんの解明や抗てんかん薬の開発に有用であり、これらのモデルマウスは、糖鎖抗体の神経疾患への詳細な発症機構の解明向けて新たな研究領域を切り開く可能性がある。
GMB7 H鎖可変領域の塩基配列及びアミノ酸配列を示す。小文字はイントロン、大文字は、ノンコーディングリージョン(アミノ酸に翻訳されることのない部分ではあるが、遺伝子として特定される部分)とコーディングリージョン(アミノ酸翻訳部分)を示す。 GMB7 L鎖可変領域の塩基配列及びアミノ酸配列を示す。小文字はイントロン、大文字は、ノンコーディングリージョン(アミノ酸に翻訳されることのない部分ではあるが、遺伝子として特定される部分)とコーディングリージョン(アミノ酸翻訳部分)を示す。 痙攣発作を生じたマウスの写真。C1からC3はコントロールを示し、TG1からTG7はトランスジェニックマウスを示す。 典型的なてんかん様スパイクの脳波の測定結果を示す図。横軸は経時変化(秒)を示す。 典型的なてんかん様スパイクの脳波の測定結果を示す図。横軸は経時変化(秒)を示す。 痙攣時の脳波の測定結果を示す図。横軸は経時変化(秒)を示す。 FISH解析による抗体遺伝子のH鎖における導入部位を同定した結果を示す図。大きな矢印は、抗体導入遺伝子の導入部位を、小さな矢印は、内因性遺伝子の部位を示す。黄色の発色は、蛍光アビジンが発色していることを示す。 FISH解析による抗体遺伝子のL鎖における導入部位を同定した結果を示す図。大きな矢印は、抗体導入遺伝子の導入部位を、小さな矢印は、内因性遺伝子の部位を示す。黄色の発色は、蛍光アビジンが発色していることを示す。
配列番号5:合成DNA
配列番号6:合成DNA
配列番号7:合成DNA
配列番号8:合成DNA
配列番号9:合成DNA
配列番号10:合成DNA
配列番号11:合成DNA
配列番号12:合成DNA

Claims (7)

  1. 糖鎖抗体遺伝子が導入された、てんかん様痙攣を起こすトランスジェニック非ヒト哺乳動物。
  2. 糖鎖抗体遺伝子が、以下の(a)又は(b)のタンパク質をコードするものである請求項1記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物。
    (a) 配列番号2又は4で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質
    (b) 配列番号2又は4において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、糖鎖抗体活性を有するタンパク質
  3. 糖鎖抗体遺伝子が、以下の(a)又は(b)のDNAを含むものである請求項1記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物。
    (a) 配列番号1又は3で示される塩基配列からなるDNA
    (b) 配列番号1又は3で示される塩基配列からなるDNAに対し相補的なDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、糖鎖抗体活性を有するタンパク質をコードするDNA
  4. 非ヒト哺乳動物が、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ブタ、ヒツジ及びヤギからなる群から選択されるいずれか一種である、請求項1記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物。
  5. 非ヒト哺乳動物がマウスである請求項1記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物。
  6. 糖鎖抗体遺伝子を非ヒト哺乳動物のゲノムに導入することを特徴とする、てんかん用痙攣を起こすトランスジェニック非ヒト哺乳動物の作製方法。
  7. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物に候補物質を投与することを特徴とする、抗てんかん薬のスクリーニング方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2010035888A1 (ja) * 2008-09-25 2010-04-01 住友化学株式会社 マイクロドメイン病のバイオマーカー

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