JP2006131439A - 硼素ドープダイヤモンドと硼素ドープダイヤモンドの電気抵抗評価方法 - Google Patents

硼素ドープダイヤモンドと硼素ドープダイヤモンドの電気抵抗評価方法 Download PDF

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Abstract


【課題】 硼素ドープダイヤモンドで硼素濃度が一定であっても電気抵抗が異なる。電気抵抗を左右する因子が不明である。ダイヤモンド表面に電極を付けて測定する4端子法などではダイヤモンド表面を傷付けるしオーミックコンタクトが形成できないこともあり電気抵抗が測定できないこともある。電極を付けることなく電気抵抗を測定する手段を与えること。
【解決手段】 水素をキャリヤガスとし、炭化水素、硼素含原料を原料としたプラズマCVD法でダイヤモンドを成長させ、硼素濃度を6000ppmより高いものとし、水素濃度を20000ppm以下にし、価電子帯から2eVの位置に硼素の関連した不純物準位を有するダイヤモンドとすること。2eVにある不純物準位のために導電率が高くなる。水素混入をできるだけ抑えることによって導電率をさらに高くすることができる。
【選択図】図1

Description

この発明は硼素ドープp型ダイヤモンドと硼素ドープp型ダイヤモンドの電気抵抗評価方法に関する。透明度が高く屈折の高い天然のダイヤモンドは宝飾品に使われるが本発明はそのようなダイヤモンドを対象にしない。またダイヤモンドは硬度が高いので切削工具や研磨材料としては古くから用いられている。それは絶縁体のダイヤモンドであって粒子状のものや被膜のものが用いられる。絶縁体のダイヤモンドは天然のものや、高圧合成のもの、気相合成のものがある。切削工具、研磨材としてのダイヤモンドには豊かな実績がある。
本発明はそのようなものではなくて電気伝導度がより高いもので電極や半導体素子としての用途を追求するものである。それは気相合成によって作られるものであり多くは下地基板の上に形成された薄膜の形をとる。不純物濃度が高いので最早透明でなく黒ずんだ外観を呈する。
ダイヤモンドはバンドギャップが5.5eVと広いしキャリヤ移動度が大きく高温に耐えるので新規の半導体電子材料として有望である。導電性を利用した電極としての用途がある。またpn接合を有する半導体能動素子としての用途もある。最近注目されているのがWフィラメントによる電子放射源に代わってダイヤモンドを電子放射源として利用するという用途である。強い電界をダイヤモンドの近傍に形成すると電界の作用でダイヤモンドから電子が飛び出すので電子源として使えるというものである。強い電界を掛けるためにもダイヤモンドが低抵抗であることが望まれる。
半導体材料として考えるのであるから、p型ダイヤモンドとn型ダイヤモンドの可能性が考えられる。両方のものができないと半導体素子の材料としては使いにくい。3族のボロン(B)ドープによってp型のダイヤモンドが得られる。しかしボロンはダイヤモンド中の炭素より直径が大きいので高濃度にドープするのが難しく、また活性化率が低いので通常は正孔濃度はp=1016cm−3程度である。またボロンのドーピングによってどのような不純物(アクセプタ)準位ができているのか?ということもよく分かっていないように思われる。
もともと半導体ダイヤモンドのための研究はボロンドープp型ダイヤモンドが先行していた。しかし半導体素子を作るにはn型ダイヤモンドが不可欠である。それで現在はp型より、n型ダイヤモンドの研究が活発になっている。n型ダイヤモンドは5族の窒素(N)、燐(P)、砒素(As)をドープすることによって得られる筈であるが疑問がある。P、Asドープのものはあまり試みられていない。窒素(N)ドープのダイヤモンドが作られるが窒素がどのようなドナーレベルを作るのかということもハッキリしない。
窒素は深い準位を作り自由キャリヤはあまり発生しないとみなされている。その他にLi、Naがドナーになるかもしれない、と言われている。n型ダイヤモンドについても現在優れたものはない。しかしn型はどのような半導体材料でも基本となるものであるから良質のn型はぜひとも実現しなくてはならない。それで現在のところn型ダイヤモンドの研究が精力的に進められている。
本発明はn型ではなくて、硼素ドープのp型ダイヤモンドを対象にする。硼素は炭素より実効的な半径が大きくてダイヤモンド結晶の中へ入りにくい。だからp型で低抵抗のものはなお得難いのである。それで窒素を一緒にドープして結晶構造を温存しながらボロンをより高濃度にドープするというコードープ(共ドープ;codoping)という手法も試みられている。p型のボロンをダイヤモンド結晶の中へ無理なく入れるためn型不純物の窒素を一緒にドープするというものである。
これもいろいろな説があるが、ダイヤモンド中に−B−N−という結合ができるから応力が緩和されるという説もある。
p型とn型が補償しあうからボロン濃度と窒素濃度の差が正孔濃度を与えるので、ボロン濃度を窒素濃度より大きくしなければならない、という説もある。
また窒素のドナーは不活性であり正孔生成を妨げないという説もある。
そのようなコード−プに関しても定まった見解はないように思われる。それは実際にダイヤモンドのバンド構造において、窒素がどのようなレベルを作るのか、硼素がどのようなアクセプタ準位を形成するのかという直接の知見がなかなか得られないからであろうと思われる。
特開平4−266020号公報「半導体ダイヤモンド」
特許文献1は、コードーピングのダイヤモンドであって、窒素と硼素をいずれも1000ppm以上の濃度で含むようにしたものを提案している。硼素ドープのp型はこれまで硼素を1000ppmドープしてもp=1016cm−3程度のものしか得られなかった。硼素をそれ以上ドープすると結晶構造が崩れたが、窒素を共にドープすることによって結晶構造を維持しつつ1000ppm以上の濃度で硼素をドープすることができた、というものである。それには1000ppm以上の窒素の同時的なドープが必要であった、という。窒素と硼素をほぼ同量ドープするとドナーとアクセプタからでるキャリヤが打ち消し合って自由キャリヤは少なくなる筈である。
しかし引用文献1は窒素の作る準位は禁制帯の奥深く、むしろ価電子帯に近い高さに準位を作るのでドナーとならないと述べている。だから硼素の正孔だけが放出されることになり正孔濃度としてp=1018cm−3の高いキャリヤ濃度が得られたと主張している。窒素がダイヤモンド中でドナーとならないという意見であって疑問がある。
特開平6−144993号公報「硼素ドープダイヤモンド」
特許文献2は高圧合成法で作ったダイヤモンドと、CVDで作ったダイヤモンドを比較し、同じ硼素濃度のp型でもCVD法で作ったものの方が抵抗が低くなってスイッチ電極、化学センサの電極として好ましいと述べている。これまで1000ppm以上の硼素をドープしたダイヤモンドを作ることはできなかった。この発明はCVD法で1000〜4500ppmの硼素を含むダイヤモンドを作ることができたと主張している。CVD法で硼素濃度が1800ppmであるダイヤモンドは抵抗率が1000Ωcm程度で充分低い抵抗率だと言っている。そして1000ppm〜4500ppmの硼素を含むダイヤモンドを作ることができ、それは抵抗が低いと述べている。
特開平9−13188号公報「ダイヤモンド電極」
特許文献3は炭素電極(グラファイト)の上にCVD法によってダイヤモンド電極を設け、さらに水素化、酸化、ハロゲン化などの化学修飾した電極を提案している。塩化ナトリウムの電気分解の電極として使った場合化学修飾によって過電圧の発生を防ぎ電流効率が高く、電極消耗が少なくなると述べている。
特開2004−31022号公報「導電性ダイヤモンド及び導電性ダイヤモンド形成方法」
特許文献4は、硼素と窒素を同時にドープしてCVD法によって10000ppm以上の高濃度の硼素、窒素を含むダイヤモンド被膜をSi基板の上に作成し、それはp型で低抵抗であったと述べている。これもコードーピングのダイヤモンドである。硼素濃度を窒素濃度よりも10000ppm以上高い濃度にすることによってp型とすることができる、と主張している。硼素の単独ドープではダイヤモンド構造が崩れてしまい高濃度に硼素をドープすることは不可能だと言っている。それで特許文献1のように窒素と硼素をコードープする方が良いのであるが、特許文献1のように窒素濃度が硼素濃度に等しい場合は、打ち消し会ってp型として低抵抗にならないと述べている。
特許文献4は窒素が硼素のアクセプタの妨げにならないという意見を否定し窒素のドナーが電子を出し硼素の正孔を打ち消すので窒素濃度が硼素濃度と同じであってはならないと主張している。それで窒素も硼素も10000ppm以上の高濃度ドープするのであるが、窒素濃度より硼素濃度を10000ppm以上高いものにすることによって硼素が全て打ち消されることなく濃度差にあたる硼素が正孔を生ずるので低抵抗のp型ダイヤモンドになると言っている。たとえば硼素濃度が50600ppm、窒素濃度が13600ppmで、それらの濃度差が37000ppmであるとき抵抗率が10−3Ωcmの低抵抗のダイヤモンド被膜が得られたと述べている。
R.Kalish,A.Reznik,C.Uzan−Saguy,& C.Cytermann,"Is Sulfur a donor in diamond?",Appl.Phys.Lett.,vol.76.No.6,p757−759(2000)
非特許文献1はn型ダイヤモンドを作成するために適当なドナーを形成する材料を探している。Li、Na、N、P、Asなどのこれまでダイヤモンド中でドナーとなる候補はいずれも難があるとしている。Nは伝導帯底から測って1.7eVの準位を作り、Pは伝導帯底から下0.5eVに準位を作るという論文があり、それならPは好適のn型不純物であるはずであるが実際にPはダイヤモンド中に入って行かず正孔のモビリティも低いから使いものにならないと主張している。
非特許文献1は硫黄(S)が伝導帯下0.37eVにドナーを作るという意見があるので気相合成の硫黄ドープダイヤモンドを調べた。Hall測定でキャリヤは電子でなく正孔であることがわかった。だから硫黄ドープダイヤモンドはp型であると反対の結論を出している。さらに硫黄ドープダイヤモンドの温度・抵抗、温度・移動度の特性が硼素ドープダイヤモンドとよく似ていると言っている。それで実際にどんな元素が含まれているのかSIMSで調べたところ硫黄よりも硼素が大量に含まれておりp型の性質はボロンによるのだという結論を出している。意図しないで含まれた硼素がp型として働いているのであると言っている。硼素を含まない、純粋に硫黄だけをドープしたものは高抵抗であってHall測定ができないと述べている。つまりダイヤモンド中で硫黄はn型にもp型にもならないと非特許文献1は主張しているのである。
Yung−Hsin Chen & Chen−Ti Hu,"Defect structure and electron field−emission properties of boron−doped diamond films",Appl.Phys.Lett.Vol.75 No.18,p2857−2859,1999
非特許文献2は硼素ドープダイヤモンドを電界誘起電子放出源として利用する場合において硼素の含有量をどこまで高めることができるかということを調べている。硼素濃度の低い試料は電子放射に必要な電界強度が小さくて良いし電子量も多いが、硼素濃度の高い試料は強い電界を必要とし放射される電子量も弱い。原料中の硼素源濃度(B(OCH)を高くするとダイヤモンドに取り込まれる硼素の割合は増えるが上限がある。SIMSでその上限を測定すると上限濃度はB=5×1021cm−3であった。硼素源濃度を上げても、それ以上硼素はダイヤモンド中に入らないということである。
赤外吸収(IR absorption)スペクトルにおいてB−Cボンドに対応する1280cm−1のピークを調べると,炭素サイトを置換した硼素の最高の濃度はB=5×1020cm−3であるということがわかる、と言っている。それはSIMS測定でのB濃度上限の1/10にすぎない。ということは5×1020cm−3以上にドープした硼素は格子点にないということである。
硼素ドープダイヤモンドにおいて硼素以外に抵抗率を支配するパラメータがある。それを明確にするのが本発明の一つの目的である。硼素を高濃度にドープしても抵抗がなかなか下がらないが抵抗を実効的に下げる方法を明らかにするのが本発明の別の目的である。非破壊で高濃度硼素ドープダイヤモンドの抵抗率を測定する方法を提供するのが別の目的である。高濃度硼素ドープ、高導電率ダイヤモンドを提供するのが本発明のさらなる目的である。
本発明は、窒素を含む共ドープを用いることなく、硼素濃度を6000ppm以上にして、価電子帯頂上から2eVの硼素と水素に関連した不純物準位Qを禁制帯の中に形成し、この不純物準位Qを大きくすることによってp型ダイヤモンドの抵抗率を下げるようにする。禁制帯の中2eVにある準位Qが大きいと導電率が高くなる。つまり導電率を上げるには準位Qを高くすればよい。同じ硼素濃度bであっても、水素濃度xが低いと準位Qが大きくなる。つまり高濃度硼素をドープするとき水素が取り込まれないようにすれば高導電率のp型ダイヤモンドが得られる。CVD法でダイヤモンドを作るときは炭化水素(メタンなど)が水素を含んでいる。だからCVDダイヤモンドに水素が含まれ易い。水素はプラズマCVDでダイヤモンドを作る場合にキャリヤガスとしても使うのでダイヤモンドの中に意図せずして含有される。その水素を減らすことによって導電率に優れたダイヤモンドが得られる。水素を減らすにはキャリヤガスで原料ガスを希釈するときに希釈率を下げれば良い。
また本発明は非破壊の電気抵抗測定方法を与えることができる。価電子帯の頂上にできるアクセプタに対応する第1エネルギー準位(S)のピーク1に対し、禁制帯の2eVの高さにできる第2エネルギー準位(Q)のピーク2比率をx=ピーク2/ピーク1=Q/Sとして、xの値によって抵抗率を評価する。同じ硼素濃度bであっても、ピーク比xが大きいほど(Qが優勢)抵抗率が低い。ピーク比xが小さいほど(Qが劣勢)抵抗率が高い。そのような性質からダイヤモンドの電気抵抗を評価することができる。
硼素濃度が7000ppmのときは、抵抗率yがy=exp(−4.5x+0.6)で与えられる。
硼素濃度が70000ppmのときは、抵抗率yがy=exp(−4.5x−0.3)で与えられる。
硼素濃度が6000ppm以上のとき、水素に関連する導電率σ
σ=(b−5000)0.258exp(+4.5x−2.56)
或いは
σ=(b−5500)0.239exp(+4.5x−2.35)
又は
σ=(b−6000)0.216exp(+4.5x−2.09)
によって与えられる。それは臨界値を5000ppm、5500ppm、6000ppmのいずれにするかの違いによっている。本発明は6000ppm以上のものに対して適用されるのであるが、6000ppm以上であればいずれの式を使って計算してもあまり変わりのない値が得られる。
価電子帯の近くのS準位、2eV禁制帯へ入った(禁制帯幅は5.5eV)Q準位の電子密度は、180eV〜200eVのエネルギー帯のX線を連続的に含むX線源を用い連続波長のX線を試料に当てて吸収スペクトルを求め、その吸収の大きさから測定できる。図1、図2は後で説明するが、ダイヤモンド試料二つのX線吸収スペクトルである。1s電子をX線でS準位やQ準位へ励起する。1s軌道と禁制帯のエネルギー差が180eV〜200eVであるから、その辺りの連続波長を出すX線源が必要である。ここではフェルミ準位を0eVとしている。大量に硼素をドープしているからアクセプタが大量に存在し、フェルミ準位は、価電子帯の頂上とほぼ同じになる。だから基準の0eVというのはフェルミ準位であるが価電子帯頂上と考えて良い。第2のピークQは硼素が作る不純物準位であって導電率を上げる作用がある。それは水素が少ないときに優勢であるが、水素が増えると劣勢になり(図2)水素が20000ppm以上で消失する。ピーク比xが高い方が導電率が高い。そのためには水素含有率を減らせば良い。
導電率の高いダイヤモンドを作るために本発明は硼素濃度を上げるだけでなく、第2のエネルギー準位Qを形成しピークを高くするために水素濃度を下げるということを提案する。水素濃度を下げると第2の準位Qが強化されて導電性が向上する。また水素濃度を下げることによって硼素を安定化させるという作用もあって、より高濃度に硼素をドープすることができる。
さらに、硼素濃度が6000ppm以上である場合、硼素濃度bと、ピーク比x=Q/Sを知ってダイヤモンドの電気抵抗(導電率)を本発明によって評価することができる。それは非破壊検査であるから有用である。ただし電子状態密度の直接観測がそのために必要とされる。連続エネルギーをもつX線源が必要となる。そのような好都合のX線源は現在のところ数少ないが用途があれば製造できる装置である。そのような光源を作れば本発明を実施することは難しくない。
本発明は硼素ドープp型ダイヤモンド全般に適用でき、それは高圧合成法で作成したダイヤモンドにも、CVDを使った気相合成法で作成したダイヤモンドにも適用することができる。CVD法といってもいろいろあって、フィラメントCVD法、プラズマCVD法などがある。水素量は合成方法によって違うが、いずれにしても水素の過剰が抵抗を上げるということである。下地基板はダイヤモンド、Si、GaAs、InP、サファイヤなど様々なものを利用できる。
高圧合成の場合、原料は炭素粉体と触媒である。
気相合成の場合、炭素原料は、メタン、エチルアルコール、アセトンなどの炭化水素を水素で希釈したものを用いる。原料が水素を含みキャリヤガスも水素だから大量の水素が意図せずしてダイヤモンドに含まれる。
硼素源はB、B、B(CH、B(OCHなどである。これらは水素またはアルゴンで希釈して用いることができる。
最も優れた方法は、ダイヤモンド基板の上にマイクロ波プラズマCVD法で水素希釈メタン(CH)と、アルゴン希釈B(OCHを用いダイヤモンドを形成することである。
エネルギー準位を直接に観察する手法はなかなかないが、180eV〜200eVのエネルギー帯を含む連続波長X線源を用い吸収スペクトルを求めて状態密度を測定できるX線吸収分光法(XAFS法:X−ray absorption fine structure)が適する。
あるいは195eV以上の電子線を当てて電子のエネルギー損失スペクトルを測定する電子線エネルギー損失スペクトル分光法(EELS;electron energy loss spectroscopy)によっても電子状態密度を直接に測定できる。
価電子帯の頂上付近(0eV付近)にある第1エネルギー準位Sは硼素が作る浅いアクセプタ準位である。それは水素含有率とは無関係の電子密度を形成する。価電子帯上から2eVにできる第2準位Qは硼素が誘起したものである。硼素が6000ppmを越えて初めて生成するのだから硼素が結晶サイトにあってできるものではなく、炭素サイトから飛び出し炭素格子に歪みを与えることによって生成された準位だと思われる。炭素空孔かとも思われるが、空孔がどうして正孔を発生するのか明確でない。また空孔だとして水素が入ると、それがどうして不活性になるのか?それも明確でない。しかし本発明は第2準位Qが硼素6000ppm以上で生成されそれが伝導に有用だということを主張する。
通常の常識では第1準位Sが電気伝導に寄与するというものであるが本発明はそうでなく第2準位Qが電気伝導に主要な働きをすると考えるものである。
絶縁体の単結晶ダイヤモンド基板の上にプラズマCVD法によってボロンドープダイヤモンド薄膜を生成した。条件の相違する10個の試料A〜Jがある。試料A〜Hは本発明の実施例である。試料I、Jは比較例である。それぞれの試料について、水素量(H)、硼素量(B)、抵抗率などを測定した。その結果を表1に纏めている。
Figure 2006131439
1.水素量及び硼素量
硼素量と水素量は二次イオン質量分析法(SIMS;secondary ion mass spectrometry)によって測定した。これは試料の表面に加速したイオンビ−ムを当てて衝撃によって表面の原子を飛び出させ質量分析してその個数を数えることによって試料表面の構成元素の数を直接に調べるものである。表面をエッチングしてゆきながら構成元素の数を計数して行くので深さ方向に構成元素(母材、不純物)の分布を知ることができる。硼素ドープダイヤモンドであるから硼素量を測定するのは当たり前であるが、水素量を測定するという着想は新規のものである。それは水素の関連したレベルが禁制帯に形成される、という本発明の主張を裏付けるものだから必要なのである。
試料A〜Dは硼素量が7000ppmである。試料E〜Hは硼素量が70000ppmである。初めに従来技術に関する文献を説明したが、このように大量の硼素が入ること自体珍しいことである。試料I、Jは硼素量が5000ppmである。そのように硼素量に関しては3通りのものを含んでいる。
水素量に関してはもっと大きいばらつきがある。プラズマCVDでダイヤモンドを作る場合にキャリヤガスを水素、窒素、Arなどにすることができるが、水素をキャリヤガスにすると、水素が自然にダイヤモンドに不純物として含まれるようになる。試料A、E、Iは水素量が10ppmで極めてわずかである。試料Bは80ppm、試料Fは100ppmでこれも低い水素濃度である。試料Cは1200ppm、試料Gは900ppm、試料Jは1000ppmでかなり大きい水素量となっている。試料Dは9000ppm、試料Hは15000ppmで最大の水素濃度をもっていた。本発明は水素濃度の違いによって禁制帯にレベルができたりできなかったりするという主張をするので水素濃度は本発明において重要なパラメータである。
2.抵抗率
Hall測定によってシート抵抗を測定する。SIMS測定で試料の薄膜の厚みdがわかるのでシート抵抗に厚みを掛けて抵抗率がわかる。先述の特許文献2(特開平6−144993号公報)はCVDダイヤモンドで硼素量が500〜1800ppmでだいたい抵抗率が1000Ωcm程度としていた。本発明は硼素量が特許文献2に比べて高いが、薄膜の抵抗率が1/10〜1/1000Ωcmの程度になっており、特許文献2に比べて格段に低抵抗であることがわかる。試料Eは抵抗率が最少で5×10−4Ωcmである。試料A、B、F、Gは抵抗率が極めて低くて10−2〜10−3Ωcmの範囲にある。試料C、D、Hは抵抗率が少し高くなり10−1〜10−2Ωcmの範囲である。試料I、Jは比較例であるが抵抗率は10−1Ωcmの程度である。
3.ピーク強度比
ピーク強度比というのは、価電子帯の直近にできるアクセプタによる電子状態密度に対応する第1ピークSと、禁制帯の半ばで価電子帯の頂上から約2eVの高さにある不純物が作った第2ピークQの高さの比率Q/Sである。ピークの面積を積分して求め、その比をとるのが正確であろうが、それは容易でないからピーク高さを測ってその比をとる。比の値Q/Sの変化が水素濃度、抵抗率の変化と強い関係をもち、それが抵抗を支配している、というのが本発明の新しい主張である。
硼素量が7000ppmの試料A、B、C、Dの内、試料Aは抵抗率が2×10−3Ωcmで最も低い。試料Bはその2倍、試料Cはその16倍、試料Dは試料Aの50倍程度である。そのような違いが何に由来するのか?それは水素量の増大と関連付けることができる。試料Aの水素量は10ppmで、試料Bはその8倍、試料Cは120倍、試料Dは900倍である。水素量が増えると抵抗も増える。しかし単純に水素量に比例して抵抗率が増えるのではない。それに水素量はSIMSによってやっと測れる量であって簡単には分からない。抵抗率は第2ピークQの第1ピークSに対する比率Q/Sによっても論ずることができる。
試料Aは第2ピークQが大きくてQ/Sが1.5である。その場合に最も抵抗率が低い。試料Bは第2ピークQが少し低くなりQ/Sが1.3である。それが抵抗率を2倍に上げていると考えるのである。試料Cは第2ピークがより低くなり比Q/Sが0.9である。それが試料Aよりも試料Cの抵抗を16倍に引き上げている。試料Dは第2ピークQがより低くてQ/Sが0.75に下がっている。それが試料Dの抵抗を試料Aの50倍に引き上げていると考える。それは正比例でないが、第2ピークの大きさが導電性を高めているというように考えられる。
硼素量が70000ppmの試料E、F、G、Hについても同じような傾向が見られる。水素量が10ppmで最少である試料Eは、抵抗率が5×10−4Ωcmであって、10個の試料の内の最小値を示す。それは水素量が最少で硼素量が大きいからであると推論される。水素量が100ppmである試料Fは、抵抗率が2.5×10−3Ωcmであって、試料Eの5倍である。試料Gは水素量が900ppmなので試料Eの90倍の水素を含む。抵抗率は6×10−3Ωcmだから、試料Eの12倍になる。試料Hは水素量が15000ppmで、試料Eの1500倍である。試料Hの抵抗率は3×10−2Ωcmと高く、試料Eの60倍である。それも水素量の大きいことによるのである。抵抗率とピーク高さ比Q/Sとの関連を見てみよう。
試料Eはピーク比が1.6であり、70000ppmの4つの試料の内で最大である。試料Fはピーク比Q/Sが1.2であり、少し低い。水素が減少するのでピーク比も減少するのである。抵抗率は5倍に上がっていた。試料Gはピーク比Q/Sが1.0である。ピーク比が減少し、抵抗率が12倍に上がっている。これまで見てきたものと同じような傾向がある。試料Hはピーク比Q/Sが0.8となり、第2ピークがさらに下がる。抵抗率が60倍に上がり、ピーク比と抵抗率の間の関係は正比例ではないが強い関連があるということがわかる。
試料I、Jは比較例であるが水素量が10ppmと1000ppmというように大きく異なるにも拘らず、抵抗率は0.1Ωcmの程度であまり変わらない。それに禁制帯の中の第2ピークQが消失している。それはピーク比が0である(Q/S=0)というところに表れている。つまりQ=0ということである。第2ピークが禁制帯に出現しない試料の場合、水素量によって抵抗率が変わるという上述の性質が失われるようである。
ということは、硼素量が同一の場合、抵抗率を大きく変化させているのは水素量であるが、むしろ第2ピークだということができる。第2ピークが抵抗率を下げている、というように推論することができる。
第2ピークがいつ出現するのか?ということが次の問題になるが、それは硼素量が7000ppmの試料A〜Dでは出現しており、硼素量が5000ppmの試料I、Jで水素量が10ppmでも1000ppmでも第2ピークがない。第2ピークが出現するのはその境界の6000ppm程度と推定される。だから本発明は6000ppm以上の硼素を含むダイヤモンドの場合に適用することができる。
硼素量が7000ppmの場合の試料A〜Dと、硼素量が70000ppmの場合の試料E〜Hについて、ピーク強度比Q/S(x)と、抵抗率(y)を半対数グラフに表現したのが図3である。抵抗率変化は極めて大きいので対数目盛りにし、ピーク比Q/S変化は0〜1.6の程度であるからそのままの尺度を使っている。これらの点を直線で近似すると図に引いた右下がりの2本の直線のようになる。
硼素量7000ppmの場合
y=exp(−4.5x+0.6) (1)
硼素量70000ppmの場合
y=exp(−4.5x−0.3) (2)
というような近似式を得る。データはこれだけしかないので、硼素量が7000ppm、70000ppm以外ではどうなるのか?ということがここからはわからない。それならたくさんのデータを取れば良いようであるが、それは難しい問題がある。先述のように実際に電子状態密度を直接に知るための測定方法というのは白色(連続)のX線を当ててその吸収スペクトルから電子状態を求めるXAFS法(X−ray absorption fine structure)があるぐらいである。白色X線というのは波長の連続した一様パワーのX線ということであるが、そのような理想的な光源はなかなかない。原子、分子の励起状態と基底状態の遷移を利用した光源は状態間エネルギー差に応じた固有の波長の電磁波を作る。孤立波長で強いX線を出すX線源は存在する。しかし連続波長で強いX線を出すX線光源は数少ない。連続エネルギーの電磁波を出すためには原子、分子の励起状態間遷移を利用しないものでなければならない。
連続X線なら例えばシンクロトロン放射光(SR)を使うことが考えられる。それは光速近くに加速した電子ビームを磁石で曲げるときに曲げの接線方向に制動輻射による電磁波を出すという性質を利用したX線源である。パワーは一様でないがだいたい均一であって連続スペクトルをもっている。しかも強度が大きくてXAFS測定に向いている。SR光装置は大型の装置ほど放射エネルギーが高い。西播磨にあるSR光装置ではかなりの波長範囲を含む強い連続X線を出すがX線のエネルギーが高すぎる。ダイヤモンドの最低エネルギーにある電子軌道(1s電子)と価電子帯、伝導帯のエネルギーの差は190eV程度(6.5nm)である。それは軟X線であってエネルギーが低い。前記の西播磨のSR装置は8GeVに電子線を加速するので高いエネルギーの連続X線を出すが、より低い200eV程度の低いエネルギーのX線の連続光源とはなりにくい。だから光源の限定のために、ダイヤモンドの電子状態密度を直接測定することは大層難しい。そのような好都合な低エネルギー連続光を出す光源は非常に限られており利用希望者が多いので、光源の空きを待つ時間も長い。ついにそのチャンスがないということもある。様々の硼素量の試料を作ることができたとしても電子状態密度測定が難しくてデータが限られてしまう。
上のデータだけで内挿することを考える。抵抗率には、硼素濃度bの依存性と、ピーク比xの依存性がある。5000ppmの硼素濃度ではピーク比xの依存性がなくて高い抵抗率を示し、7000ppm、70000ppmではピーク比xの依存性があってしかも低い抵抗率を示す。抵抗率yでは分かりにくいのでその逆数の導電率σを考えよう。σ=1/y という定義である。そして今は水素量依存性のある導電率を考えそれをσとする。水素濃度依存性のない導電率成分は後で述べる。
硼素量7000ppmの場合
σ=exp(+4.5x−0.6) (3)
硼素量70000ppmの場合
σ=exp(+4.5x+0.3) (4)
となる。臨界硼素濃度が5000ppmと7000ppmの間にある。
(A)臨界硼素濃度が5000ppmの場合
臨界硼素濃度を5000ppmだと仮定し、臨界硼素濃度から差の値の1/m乗で導電率σが増大するというように仮定しよう。これはある種の相転移に当たると考えられる。そうであれば臨界点で非連続の変化をすると推定される。非連続変化で最も単純なものは多重根の近似である。そのような推定で統一的な式を考える。すると、硼素濃度の差は70000−5000=65000ppmと、7000−5000=2000ppmとなり、(3)、(4)式の比の値が、exp(0.3+0.6)=exp(0.9)=2.459であるので、
(65000/2000)1/m =2.459 (5)
となる。左辺括弧の中は32.5である。log32.5=1.511、log2.459=0.3907であるので、
m=3.87 (6)
あるいは、
1/m=0.258 (7)
というように計算することができる。これを使うと、σについての統一的な式を得る。
σ=(b−5000)0.258exp(+4.5x−2.56) (8)
を得ることができる。exp()の中の定数が−2.56であるのは、b=7000ppmでの連続条件から決めたものである。bは硼素(B)濃度をppmで表現したものである。これは水素濃度依存性が現れる臨界値を硼素濃度b=5000ppmとしているが、5000ppmと7000ppmの間に臨界値があるのだから、別異の可能性もある。硼素濃度の臨界値が5500ppmと6000ppmの場合を次に述べる。
(B)臨界硼素濃度が5500ppmの場合
臨界硼素濃度を5500ppmだと仮定し、前例と同じように、臨界硼素濃度から差の値の1/m乗で導電率σが増大するというように仮定する。すると、硼素濃度の差は70000−5500=64500ppmと、7000−5500=1500ppmとなる。exp(0.3+0.6)=exp(0.9)=2.459である。
(64500/1500)1/m =2.459 (9)
となる。左辺括弧の中は43である。log43=1.633、log2.459=0.3907であるので、
m=4.18 (10)
あるいは、
1/m=0.239 (11)
というように計算することができる。これを使うと、σについての統一的な第2の式を得る。
σ=(b−5500)0.239exp(+4.5x−2.35)
(12)
を得ることができる。
(C)臨界硼素濃度が6000ppmの場合
臨界硼素濃度を6000ppmだと仮定し、前例と同じように、臨界硼素濃度から差の値の1/m乗で導電率σが増大するというように仮定する。すると、硼素濃度の差は70000−6000=64000ppmと、7000−6000=1000ppmとなる。exp(0.3+0.6)=exp(0.9)=2.459である。
(64000/1000)1/m =2.459 (13)
となるべきである。左辺括弧の中は64である。log64=1.806、log2.459=0.3907であるので、
m=4.62 (14)
あるいは、
1/m=0.216 (15)
というように計算することができる。これを使うと、σについての統一的な第2の式を得る。
σ=(b−6000)0.216exp(+4.5x−2.09) (16)
を得ることができる。
(8)、(12)、(16)は臨界値を5000ppm、5500ppm、6000ppmにしたもので見かけは違うが、7000ppmを越える硼素濃度の試料については大体同じ値を与えるから、どの式で計算してもあまり変わりがない。これらの式によって7000ppm〜100000ppmの硼素濃度をもつダイヤモンドの導電率をXAFSデータから得たピーク比xによって求めることができる。
これは水素濃度xに依存する部分であるが、水素濃度によらない部分もある。それをσ(b)とする。硼素濃度が5000ppmである試料I、Jはその部分だけを含んでいる。だから全体の導電率σは
σ=σ(b)+σ(b,x) (17)
というように表現することができる。簡単に言えば、前項がピーク1(アクセプタ準位)による伝導であり、後項がピーク2による伝導である。xはピーク1(S)でピーク2(Q)の高さを割った比の値Q/Sであるが、ピーク1は正規化の基準であって、後項にピーク1の作用が入っているというのではない。試料I、J(比較例)ではσ(b)だけなので導電率が低い。実施例のA〜Hはσ(b)の他にσ(b,x)の寄与があるから導電率が高くなる。それはアクセプタ準位(ピーク1、Sレベル)によるものではなく、価電子帯頂上から2eVのところにできる不純物によるQ準位によるものである。それは水素の混入によって容易に消失する。
従来から試みられた、水素をキャリヤガスとするプラズマCVD法ダイヤモンドは、キャリヤガスを水素とするので水素がダイヤモンドの中へ混入してしまう。従来法は混入した水素に対し無関心であった。しかし本発明者の見解によれば、その水素が導電率を決める重要な要素となっている。水素の量を測定し水素量を低減することによってQ準位を活発にし導電率を上げることができる。そのような知見は本発明が最初に発見したものである。また導電率をあげるためには、水素混入を抑制すればよいのであって明確な指針が得られる。
また上の式から硼素濃度bを既知としてXAFSによって、試料の導電率を求めることができる。それは非破壊検査であるから好ましいものである。
硼素ドープp型プラズマCVD法ダイヤモンドに含まれてしまう水素量をできるだけ少なくすることによって高い導電率のダイヤモンドを得ることができる。硼素をたくさん含ませると正孔が増えて導電率が高くなるかというとそうでなく、硼素の含有率を増やすとダイヤモンド構造が崩れてくる。硼素はダイヤモンド中の炭素より原子半径が大きくて過剰の硼素はダイヤモンド構造を破壊するように働く。だから特許文献2のように、硼素の含有率の上限は1000ppmだったがある工夫によって1000ppm〜4500ppmへ広げたというものもあった。本発明はそれより上の7000ppm、70000ppmの高濃度ドープをしている。
また窒素とコードープすることによって硼素濃度を1000ppmまで上げたという特許文献1のような手法もある。それはコードープだから正孔が過剰に増える訳でなく導電率も上がらない。窒素より硼素が10000ppm高いようにコードープして実質的に正孔濃度を上げたという特許文献4は窒素の助けをかりてキャリヤ濃度を上げるものである。非特許文献2は2eVの当たりにESR信号の強い(常磁性帯磁率が高い)空孔準位ができるが硼素を過剰に入れるとそれがなくなってしまうということを言っている。だから硼素量を0に近くしないとこのレベルが出現しないと言っている。
本発明も価電子帯の頂上から2eVの辺りの不純物準位Qの出現を主張する。2eVというところで共通するが、本質は違う。非特許文献2の空孔準位は硼素がほとんど0の時に出現し硼素ドープ量を増やすと消失する。本発明の2eVのQ準位はそうでなく硼素濃度が6000ppm程度以上の高濃度で出現する。しかも水素の過剰によって消失する。もっと重要なことは、この2eVの不純物によるQ準位は正孔を発生し導電率を上げるのに寄与するということである。
本発明の知見によれば、水素含有率を減らすことによって大きいQ準位を作ることができQ準位が導電率を上げるということである。プラズマCVD法でキャリヤガスとして水素を使う場合水素が含まれてしまうものであるが、なるべく水素がダイヤモンド中へ取り込まれないようにすれば導電率の高いp型ダイヤモンドを作ることができる、ということである。それは導電率を上げるため硼素濃度を上げることだけを考えていた特許文献1、2、3、4と大きく相違する。
本発明はXAFSによってダイヤモンド試料の電気抵抗を測定することを可能にする。従来の4端子法など電極を試料の表面に立てる電気抵抗測定法は、破壊検査であるし、必ずしもオーミックに電極を立てることができない場合もある。ダイヤモンドの場合は導電率の測定が容易でない場合も多い。本発明はXAFSで非破壊に導電率、抵抗率を測定することを可能にする。先述のように200eV程度の連続X線光源はまだまだ世界に少ないが、いつまでもそうだということではない。低いエネルギーの連続X線源は、既存の高いX線源よりも小規模の装置でよいのだから製造、設置、維持はより容易である。必要があれば多数設置される可能性がある。そのような場合本発明のようなX線吸収スペクトルによって導電率、抵抗率を非破壊に測定できる方法はコスト、手間の点でも有利なものになる可能性がある。
本発明の実施例にかかり、水素量が10ppm、硼素量が7000ppmである試料Aの、価電子帯の頂上を0Vとし、価電子帯、禁制帯、伝導帯を含むエネルギー帯の電子状態密度図。価電子帯の近傍にあるアクセプタによる電子状態ピーク1(S)と、価電子帯から2eVの高さにある未知の不純物準位による電子状態ピーク2(Q)とがあって、ピーク2(Q)が優勢であり、ピーク2/ピーク1の比として定義したピーク比xは1より大きいものであることを示す。
本発明の実施例にかかり、水素量が9000ppm、硼素量が7000ppmである試料Dの、価電子帯の頂上を0Vとし、価電子帯、禁制帯、伝導帯を含むエネルギー帯の電子状態密度図。価電子帯の近傍にあるアクセプタによる電子状態ピーク1(S)と、価電子帯から2eVの高さにある未知の不純物準位による電子状態ピーク2(Q)とがあって、ピーク2(Q)は劣勢であり、ピーク2/ピーク1の比として定義したピーク比xは1より小さいものであることを示す。
8つの実施例にかかる試料の、x=ピーク2/ピーク1として定義したピーク比xと、抵抗率(Ωcm)とを、半対数方眼紙にプロットし、硼素7000ppmの4つの試料のプロット点は一つの右下がり直線で近似でき、硼素70000ppmの4つの試料のプロット点は上の直線に平行な右下がりの直線で近似できることを示すグラフ。

Claims (10)

  1. 窒素原料を用いず炭素原料又は炭化水素原料と硼素原料を用い高圧合成法またはCVD法で作成され、窒素を含まないか含んでも100ppm以下であって、硼素濃度が6000ppm以上で水素濃度が20000ppm以下であって、価電子帯の上端を基準として0eV付近に第1のエネルギー準位(S)を有し、2eV近傍に第2のエネルギー準位(Q)をもつことを特徴とする硼素ドープダイヤモンド。
  2. 同じ硼素濃度であれば、水素濃度が低いと第2のエネルギー準位の状態密度が上がり抵抗率が下がることを利用し、水素濃度を制御することによって抵抗率を制御したことを特徴とする請求項1に記載の硼素ドープダイヤモンド。
  3. 窒素原料を用いず炭素原料又は炭化水素原料と硼素原料を用い高圧合成法またはCVD法で作成され、窒素を含まないか含んでも100ppm以下であって、硼素濃度が6000ppm以上で水素濃度が20000ppm以下であって、価電子帯の上端を基準として0eV付近に第1のエネルギー準位(S)を有し、2eV近傍に第2のエネルギー準位(Q)をもつ硼素ドープダイヤモンドにおいて、第1電子エネルギー準位(S)の電子状態密度と、第2エネルギー準位(Q)の電子状態密度を測定し、第1エネルギー準位(S)のピーク高さで、第2エネルギー準位(Q)のピーク高さを割った値x(=ピーク2/ピーク1)と、硼素濃度bからダイヤモンドの抵抗率を算出することを特徴とする硼素ドープダイヤモンドの電気抵抗評価方法。
  4. 硼素濃度が7000ppmであって、第1エネルギー準位(S)の電子状態密度で第2エネルギー準位(Q)の電子状態密度を割った比の値x(=Q/S)から抵抗率y(Ωcm)を
    y=exp(−4.5x+0.6)
    によって計算することを特徴とする請求項3に記載の硼素ドープダイヤモンドの電気抵抗評価方法。
  5. 硼素濃度が70000ppmであって、第1エネルギー準位(S)の電子状態密度で第2エネルギー準位(Q)の電子状態密度を割った比の値x(=Q/S)から抵抗率y(Ωcm)を
    y=exp(−4.5x−0.3)
    によって計算することを特徴とする請求項3に記載の硼素ドープダイヤモンドの電気抵抗評価方法。
  6. 硼素濃度bが6000ppm以上であって、水素濃度が20000ppm以下であり、電子状態密度の測定値の第2ピーク(Q)と第1ピーク(S)の比をxとして、導電率σ(=1/y)のうち水素濃度に依存する部分σ
    σ=(b−5000)0.258exp(+4.5x−2.56)
    によって計算されることを特徴とする請求項3に記載の硼素ドープダイヤモンドの電気抵抗評価方法。
  7. 硼素濃度bが6000ppm以上であって、水素濃度が20000ppm以下であり、電子状態密度の測定値の第2ピーク(Q)と第1ピーク(S)の比をxとして、導電率σ(=1/y)のうち水素濃度に依存する部分σ
    σ=(b−5500)0.239exp(+4.5x−2.35)
    によって計算されることを特徴とする請求項3に記載の硼素ドープダイヤモンドの電気抵抗評価方法。
  8. 硼素濃度bが6000ppm以上であって、水素濃度が20000ppm以下であり、電子状態密度の測定値の第2ピーク(Q)と第1ピーク(S)の比をxとして、導電率σ(=1/y)のうち水素濃度に依存する部分σ
    σ=(b−6000)0.216exp(+4.5x−2.09)
    によって計算されることを特徴とする請求項3に記載の硼素ドープダイヤモンドの電気抵抗評価方法。
  9. 180eV〜195eVのエネルギー範囲を含む連続X線を発生する装置を用いて連続波長のX線をダイヤモンド試料に当て吸収スペクトルから第1のエネルギー準位(S)の電子状態密度と第2のエネルギー準位(Q)の電子状態密度を測定することを特徴とする請求項3に記載の硼素ドープダイヤモンドの電気抵抗評価方法。
  10. 195eV以上の電子線をダイヤモンド試料に当て電子のエネルギー損失スペクトルから第1のエネルギー準位(S)の電子状態密度と第2のエネルギー準位(Q)の電子状態密度を測定することを特徴とする請求項3に記載の硼素ドープダイヤモンドの電気抵抗評価方法。
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