JP2006126008A - 光パルスの瞬時強度位相計測方法および装置 - Google Patents

光パルスの瞬時強度位相計測方法および装置 Download PDF

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克弥 小栗
Atsushi Ishizawa
淳 石澤
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泰彬 岡野
Tadashi Nishikawa
正 西川
Hidetoshi Nakano
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Abstract

【課題】より簡便に高強度極短光パルスの瞬時強度位相を計測できるようにする。
【解決手段】イオン化ガス7に高強度極短光パルス2を照射し、非段階的イオン化過程によって生成される2価イオンの生成量を測定する。この測定を光パルス2の瞬時強度位相を変化させて、繰り返し行う(ステップS1〜S5)。2価イオンの生成量は光パルス2の瞬時強度位相に対応して周期的に変化するので、2価イオンの生成量の測定結果から光パルスの瞬時強度位相を所定量変化させたときの瞬時強度位相の値を算出することができる(ステップS6、S7)。
【選択図】 図3

Description

本発明は、光パルスの瞬時強度位相を計測する方法および装置に関する。
近年の可視・近赤外波長領域の極短パルスレーザ技術によって、パルスの半値全幅(パルス幅)が例えば10fs以下という光の振動時間に極めて近い極短光パルスを容易に発生できるようになってきた。このような極短光パルスは、そのパルス幅の中に光の電界振動を2〜3周期しか含んでおらず、「数サイクルパルス」と呼ばれている。例えば、この数サイクルパルス発生に典型的に用いられるチタン・サファイアレーザでは、その中心波長がおよそ800nmであり、振動周期が2.7fsになるので、パルス幅5fsの光パルスを仮定すると、図7(a)に示すように、そのパルス幅中に電界振動をおよそ2周期しか含まない。
このような数サイクルパルスにおいては、電界振動の包絡線に対する電界振動の位相がその光パルスを特徴付ける重要なパラメータとなってくる。この位相は、キャリアエンベロープ位相と呼ばれる。キャリアエンベロープ位相は、光パルスの電界をE(t)=A(t)cos(ωt−ΔφCE)とした場合に、位相角ΔφCEで定義される。ここで、ωは電界振動の角周波数、tは時間、A(t)は時間0に尖頭値をとる電界振動の包絡線関数を表す。図7(a)にω=2.35×1015[Hz]、ΔφCE=π/2[rad]、A(t)=sech(0.766t/Δτ)を仮定した場合(Δτ=5[fs]は強度波形における半値全幅)の光パルスの電界を示す。この場合、図7(a)に示すように、尖頭値に対応する時刻に対して、電界振動の最初の極大値に対応する時刻は、ΔφCE/ω[s]ずれていることがわかる。また、キャリアエンベロープ位相は、光パルスの電界の式から明らかなように、0≦ΔφCE<2πの間の値をとりうる量と定義できる。
一方、光パルスの強度I(t)は|E(t)|2に比例した量で表される。図7(b)に示すように、強度も時間的に大きく振動しており、キャリアエンベロープ位相に従って強度波形(強度振動の包絡線)の尖頭値に対応する時刻と強度振動の最初の極大値に対応する時刻がずれることがわかる。ただし、例えばΔφCE=π/2の場合とΔφCE=3π/2の場合の強度振動を比較すれば明らかなように、両者は全く一致しているため、強度の場合は0≦ΔφCE<2πで定義すれば十分である。ここでは、キャリアエンベロープ位相ΔφCEと区別して瞬時強度位相ΔφIEと定義する。従って、瞬時強度位相ΔφIEは、キャリアエンベロープ位相ΔφCEに対して同位相の場合と、±πの位相差がある場合とがある。
近年、モード同期レーザから出力されるパルス列におけるキャリアエンベロープ位相のパルス毎の揺らぎを自己参照法と呼ばれる手法によって安定化させ、そのパルスを数100μJ/pulseまで増幅したレーザシステムが開発され、ある特定のキャリアエンベロープ位相に固定化された高強度(1013W/cm2以上)極短光パルスが得られるようになった(例えば非特許文献1を参照)。
極短光パルスが増幅されて高強度になると、キャリアエンベロープ位相ΔφCEにずれが生じ、それに伴って瞬時強度位相ΔφIEがずれ、瞬時電界強度の大きさが変化する。パルス幅の中に多数の電界振動を含む「マルチサイクルパルス」の場合には、瞬時強度位相ΔφIEのずれに対する尖頭強度の違いは無視できる程小さいのに対して、数サイクルパルスの場合には、その違いは最大数%にも達し、光電界イオン化などの光非線形現象に対して大きな影響を与えることになる。また、光非線形現象が起こるタイミングも変化する。数サイクルパルスにおける数fsという時間スケールにおいては、このタイミング変化は決して小さなものではない。従って、光非線形現象に対する高強度極短光パルスの利用を考えた場合に、キャリアエンベロープ位相ΔφCEまたは瞬時強度位相ΔφIEを検出し制御する方法を確立することは極めて重要である。
しかしながら、高強度極短光パルスのキャリアエンベロープ位相ΔφCEまたは瞬時強度位相ΔφIEの値を計測する方法の開発は発展途上の段階にある。現在までに、高強度極短光パルスのキャリアエンベロープ位相ΔφCEに依存した物理現象や、それに基づいたキャリアエンベロープ位相ΔφCEの計測方法の提案がいくつか報告されている(例えば、非特許文献2,3,4,5を参照)。これらの報告は、キャリアエンベロープ位相ΔφCEの違いにより生ずる高強度極短光パルスにおける光電界の空間非対称性に着目しており、高強度極短光パルスをガスに集光した際に起こる光電界イオン化によって放出される光電子の電子数やエネルギーの空間分布を測定するものである。この測定を行うためには空間位置分解能をもった検出器を用意するか、複数の検出器を各位置にそれぞれ配置する必要があり、この測定の実現は容易ではない。実際、実証実験が行われているのは、ガスに対して2台の光電子検出器を対称に配置して光電子エネルギーの空間分布測定を行ったPaulusらの提案のみである。また、これらの計測方法はキャリアエンベロープ位相ΔφCEの計測が可能ではあるが、多くの光非線形現象においてはキャリアエンベロープ位相ΔφCEに対する±πの不確定さが問題とならない場合が多く、瞬時強度位相ΔφIEを計測できれば十分な場合が多い。従って、上に挙げた計測方法よりも簡便に瞬時強度位相ΔφIEを計測する方法を確立することが重要な課題となっている。
なお、出願人は、本明細書に記載した先行技術文献情報で特定される先行技術文献以外には、本発明に関連する先行技術文献を出願時までに発見するには至らなかった。
A. Baltuska, Th. Udem, M. Uiberacker, M. Hentschel, E. Goulielmakis, Ch. Gohle, R. Holzwarth, V. S. Yakovlev, A. Scrinzi, T. W. Hansch, and F. Krausz, Nature 421, 611 (2003) E. Cormier and P. Lambropoulos, Eur. Phys. J. D2, 15 (1998) P. Dietrich, F. Krausz, and P. B. Corkum, Opt. Lett. 25, 16 (2000) G. G. Paulus, F. Grasbon, H. Walther, P. Villoresi, M. Nisoli, S. Stagira, E. Priori, and S. De Silvestri, Nature 414, 182 (2001) G. G. Paulus, F. Lindner, H. Walther, A. Baltuska, E. Goulielmakis, M. Lezius, and F. Krausz, Phys. Rev. Lett. 91, 253004 (2003) H. Tawara and T. Kato, At. Data Mol. Data Tables 36, 167 (1987)
以上のように、高強度極短光パルスにおけるキャリアエンベロープ位相ΔφCEまたは瞬時強度位相ΔφIEの従来の計測方法は、複数の光電子検出器を用意する必要があるなど簡便な方法ではないという問題があった。特に、高強度極短光パルスの光非線形現象への利用を考えた場合には瞬時強度位相ΔφIEの計測がより重要であるのにもかかわらず、その計測方法については未だ確立されていないという問題があった。
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、従来より簡便に高強度極短光パルスの瞬時強度位相を計測できるようにすることにある。
このような目的を達成するために、本発明に係る光パルスの瞬時強度位相計測方法は、光パルスの瞬時強度位相を変化させてイオン化ガスに照射し非段階的イオン化過程によって生成される2価イオンの生成量を繰り返し測定するステップと、前記光パルスの瞬時強度位相の変化に応じた前記2価イオンの生成量の周期的変化から前記光パルスの瞬時強度位相を所定量変化させたときの前記瞬時強度位相の値を算出するステップとを備えることを特徴とする。
ここで、前記瞬時強度位相の値を算出するステップは、前記2価イオンの生成量の周期的変化における1周期の区間を検出するステップと、前記区間の長さをπとし、前記区間における位置から前記光パルスの瞬時強度位相を所定量変化させたときの前記瞬時強度位相の値を算出するステップとを備えるものであってもよい。
また、本発明に係る光パルスの瞬時強度位相計測装置は、イオン化用ガスを供給するガス供給手段と、光パルスを出力する光パルス出力手段と、通過する光パルスの瞬時強度位相を変化させる瞬時強度位相調整手段と、前記ガス供給手段から供給される前記イオン化用ガスに前記光パルス出力手段から出力され前記瞬時強度位相調整手段を通過した光パルスを照射した状態で非段階的イオン化過程によって生成される2価イオンの生成量を測定するイオン検出手段と、前記瞬時強度位相調整手段による前記瞬時強度位相の変化量を変えて前記2価イオンの生成量を繰り返し測定したときの前記イオン検出手段の測定結果に基づき、瞬時強度位相の変化に応じた前記2価イオンの生成量の周期的変化から前記瞬時強度位相調整手段により前記光パルスの瞬時強度位相を所定量変化させたときの前記瞬時強度位相の値を算出する瞬時強度位相算出手段とを備えることを特徴とする。
ここで、前記瞬時強度位相算出手段は、前記2価イオンの生成量の周期的変化における1周期の区間を検出する手段と、前記区間の長さをπとし、前記区間における位置から前記光パルスの瞬時強度位相を所定量変化させたときの前記瞬時強度位相の値を算出する手段とを備えるものであってもよい。
本発明では、イオン化用ガスに光パルスを照射し、非段階的イオン化過程によって生成される2価イオンの生成量を、光パルスの瞬時強度位相を変化させて繰り返し測定する。2価イオンの生成量は光パルスの瞬時強度位相に対応して周期的に変化するので、2価イオンの生成量の測定結果から光パルスの瞬時強度位相を所定量変化させたときの瞬時強度位相の値を算出することができる。
また、本発明では、光電子の空間分布を測定しないので複数の光電子検出器を用意する必要がなく、1台のイオン検出手段で光パルスの瞬時強度位相を計測することができる。従って、従来よりも簡便に瞬時強度位相計測を行うことができる。
以下、図面を参照し、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る高強度極短光パルスの瞬時強度位相計測装置の一構成例を示す図である。この高強度極短光パルスの瞬時強度位相計測装置は、高強度極短パルスレーザ装置1と、瞬時強度位相調整機構3と、集光用光学素子4と、ガス供給装置6と、イオン検出器8と、コンピュータ9とから構成される。
ここで、高強度極短パルスレーザ装置1は、高強度極短光パルス2を出力する光パルス出力手段である。この高強度極短パルスレーザ装置1は、高強度極短光パルス2の尖頭強度並びにキャリアエンベロープ位相が一定に固定された直線偏光の光パルス2を出力できるものであるとする。
瞬時強度位相調整機構3は、高強度極短パルスレーザ装置1の出力側に配置され、通過する高強度極短光パルス2の瞬時強度位相を変化させるものであり、その変化量はコンピュータ9により制御される。瞬時強度位相調整機構3は、例えば一組のガラスウエッジで構成される。
集光用光学素子4は、瞬時強度位相調整機構3を通過した高強度極短光パルス2を、ガス・レーザ光相互作用部5に集光させるものである。
ガス供給装置6は、光電界イオン化の媒質であるイオン化用ガス7をガス・レーザ光相互作用部5に所定の密度で供給するものである。イオン化用ガス7としては、例えばHeガスなどの希ガスや、その他の分子ガス(例えばN2,O2,CO2など)を用いることができる。
イオン検出器8は、ガス・レーザ光相互作用部5においてイオン化用ガス7に高強度極短光パルス2を照射したときに非段階的イオン化過程によって生成される2価イオンの生成量を測定するものであり、例えば飛行時間分析器で構成される。
コンピュータ9は、瞬時強度位相調整機構3による瞬時強度位相の変化量を変えて2価イオンの生成量を繰り返し測定したときのイオン検出器8の測定結果に基づき、高強度極短光パルス2の瞬時強度位相を所定量変化させたときの当該瞬時強度位相の値を算出する機能を有する。
図2は、コンピュータ9の一構成例を示すブロック図である。コンピュータ9は、瞬時強度位相調整機構制御部11と、2価イオン生成量記憶部12と、瞬時強度位相算出部13とから構成される。
ここで、瞬時強度位相調整機構制御部11は、瞬時強度位相調整機構3に対して制御信号を出力し、瞬時強度位相の変化量を制御する。同じ制御信号を2価イオン生成量記憶部12にも出力し、2価イオン生成量記憶部12に瞬時強度位相調整機構3による現在の瞬時強度位相の変化量を通知する。
2価イオン生成量記憶部12は、瞬時強度位相調整機構3による瞬時強度位相の変化量に対応付けて、そのときにイオン検出器8で測定された2価イオンの生成量を記憶する。2価イオン生成量の測定は瞬時強度位相の変化量を変えて繰り返し行われるので、2価イオン生成量記憶部12には瞬時強度位相の変化量と2価イオンの生成量とが複数対記憶される。
瞬時強度位相算出部13は、2価イオン生成量記憶部12に記憶されているデータから、瞬時強度位相調整機構3による瞬時強度位相の変化量に応じて周期的に変化する2価イオンの生成量の1周期の区間を検出し、この区間の長さをπとおき、この区間における「瞬時強度位相調整機構3による瞬時強度位相の変化量」とその変化が与えられた「瞬時強度位相の値」との対応関係を算出する。
次に、図3を参照し、図1および図2に示した計測装置を用いた高強度極短光パルスの瞬時強度位相計測方法について説明する。図3は、高強度極短光パルスの瞬時強度位相計測方法の流れを示すフローチャートである。
まず、瞬時強度位相調整機構制御部11を用いて、瞬時強度位相調整機構3による瞬時強度位相の変化量を設定する(ステップS1)。
ガス供給装置6によりガス・レーザ光相互作用部5にイオン化用ガス7を供給し、高強度極短パルスレーザ装置1から高強度極短光パルス2を出力する。高強度極短光パルス2は瞬時強度位相調整機構3を通過するときに、ステップS1で設定された量だけ瞬時強度位相が変化する。そして、集光用光学素子4を経由して、ガス・レーザ光相互作用部5においてイオン化用ガス7に照射される(ステップS2)。イオン化用ガス7に高強度極短パルスレーザ光2が照射されると、イオン化用ガス7を構成する中性原子の一部が非段階的イオン化により2価イオンにイオン化する。このイオン化の原理については後で詳しく説明する。
この非段階的イオン化過程によって生成される2価イオンの生成量をイオン検出器8で測定する(ステップS3)。そして、測定された2価イオンの生成量を、瞬時強度位相調整機構3による瞬時強度位相の変化量とともに、2価イオン生成量記憶部12に記憶する(ステップS4)。
次に、瞬時強度位相調整機構制御部11を用いて、瞬時強度位相調整機構3による瞬時強度位相の変化量を所定量変化させる(ステップS5,NO→ステップS1)。そして、同様にして高強度極短光パルス2をイオン化用ガス7に照射し、2価イオンの生成量を測定、記憶する(ステップS2、S3、S4)。
このような測定をn回(nは2以上の整数)繰り返したら(ステップS5,YES)、2価イオン生成量記憶部12に記憶されているデータを瞬時強度位相算出部13に出力する。
2価イオンの生成量は、後述する図6に示すように、高強度極短光パルス2の瞬時強度位相に対応して周期的に変化する。従って、瞬時強度位相調整機構3による瞬時強度位相の変化量に応じて、2価イオンの生成量が周期的に変化することになる。
そこで、瞬時強度位相算出部13では、2価イオン生成量記憶部12から入力されるデータを基に、2価イオン生成量の周期的変化における1周期の区間を検出する(ステップS6)。2価イオン生成量の1周期の長さは後述するようにπであるから、検出された区間の始めの位相を「0」、終わりの位相を「π」とおく。また、2価イオン生成量の1周期は瞬時強度位相の1周期に対応するから、検出された区間における「瞬時強度位相調整機構3による瞬時強度位相の変化量」の位置に応じた位相を、その変化が与えられた「瞬時強度位相の値」とみなす。この区間に続くm番目(mは自然数)の区間においても、区間の始めの位相を「(m−1)π」、終わりの位相を「mπ」として同様の演算を行う。このようにして「瞬時強度位相調整機構3による瞬時強度位相の変化量」が与えられたときの「瞬時強度位相の値」を算出する(ステップS7)。
このようにして算出された「瞬時強度位相調整機構3による瞬時強度位相の変化量」と「瞬時強度位相の値」との対応関係に基づいて瞬時強度位相調整機構3による瞬時強度位相の変化量を制御することにより、所望の瞬時強度位相を容易に得ることができる。
次に、上述した高強度極短光パルスの瞬時強度位相計測の原理について説明する。
2価イオンを生成する非段階的イオン化過程には、通常、3つのステップがあると説明されている。
まず、ガスに直線偏光の高強度極短パルスレーザ光が照射されると、中性原子における束縛ポテンシャルがレーザ光電界によって歪み、トンネル効果によって束縛電子が放出され、中性原子がイオン化される。この光電界によるトンネルイオン化過程は、高次の非線形現象であるため、高強度極短パルスレーザ光の瞬時強度に大きく依存する。
次いで、トンネルイオン化によってイオンコアの束縛から自由になった電子は、光電界の向きと大きさに従って加速される。しかし、高強度極短パルスレーザ光が直線偏光の場合には、電界振動中の所定のタイミングでトンネルイオン化すると、加速された電子が再び元のイオンコアの位置に戻ってくる場合がある。
イオンコアに戻ってくる電子(戻り電子)は、光電界により加速されているので、ある運動エネルギーをもっている。この戻り電子の運動エネルギーが2価イオン化ポテンシャルを超えると、ある確率でイオンコア内の別の電子と衝突し、2価イオンが生成されることになる。
この過程は、パルスの電界強度が立ち上がるにつれて1価イオンずつ多価イオンヘと段階的にイオン化していく段階的イオン化に対して、非段階的イオン化と呼ばれている。特に、パルスの尖頭強度が比較的小さい場合には、この非段階的イオン化が2価イオンの生成において支配的な過程であることが知られている。従って、非段階的イオン化過程によって生成される2価イオンを効率よく検出するためには、パルスの尖頭強度を不必要に大きくする必要はない。
図4は、パルス尖頭強度4×1014W/cm2の高強度極短光パルスをHe原子に照射した場合における戻り電子の運動エネルギーを計算した結果を示す図である。光パルスの電界強度をI(t)={A(t)cos(ωt−Δφ)}2と仮定し、強度波形A(t)を半値全幅5fs双曲正割関数、角周波数をω=2.35×1015Hz(中心波長800nmに対応)、そして瞬時強度位相をΔφと仮定した。瞬時強度位相Δφが0およびπ/2の場合について計算を行った。
図4では、電子がトンネルイオン化を起こして光電界中の運動を開始した時間を横軸にとり、その電子が元のイオンコアの位置に戻ってきたときの運動エネルギーを縦軸とっている。電界振動の振幅の大きさが極大になった時点から0に下がるまでのタイミングで電子がトンネルイオン化をした場合に限り、トンネルイオン化した電子がイオンコアの位置に戻ることができる。それ以外のタイミングでトンネルイオン化した場合には、イオンコアの位置に戻ることができないので、運動エネルギーが0となっている。図中に示してある53.5eVのラインは、He2+へのイオン化ポテンシャルエネルギーである。このポテンシャルエネルギーより高い運動エネルギーをもつ戻り電子のみが、非段階的イオン化に関与することができる。この図からわかるように、戻り電子の運動エネルギーはイオン化した時間とその後に運動する電界の大きさに依存するので、瞬時強度位相Δφ=0およびπ/2の違いによって大きく変化している。
図5は、図4と同じ条件の下で、各時間における瞬時電界振幅に対するトンネルイオン化確率を計算した結果を示す図である。光電界イオン化確率を最もよく説明する理論として知られているAmmosov-Delone-Krainov(ADK)理論に基づいてトンネルイオン化確率を計算した。
高次の非線形現象であるトンネルイオン化は電界強度に大きく依存するので、数サイクルパルスでは、隣り合う電界振幅に対応するトンネルイオン化確率が大きく異なる。その結果、瞬時強度位相Δφ=0およびπ/2に対するトンネルイオン化確率のふるまいも大きく異なっている。
ところが、全パルスでこのトンネルイオン化確率を積算すると、瞬時強度位相Δφ=0とπ/2との間に大きな違いはない。このため、トンネルイオン化により生成された全光電子数を測定するだけでは、瞬時強度位相の違いを検出することは難しい。
光電子数を計測して瞬時強度位相の違いを検出するためには、Δφ=0およびπ/2で最もトンネルイオン化確率が異なっている尖頭強度付近から発生する光電子のみを検出するように超高速のゲートをかけて測定するか、Paulusらにより提案されたように光電界の大きさの空間非対称性を利用する必要がある。現在の技術では、1fs程度の超高速ゲートをかけることは実現不可能であるので、空間非対称性を利用する方法しか実現されていない。
これに対し、本実施の形態では、トンネルイオン化した光電子のうちの戻り電子の数に着目する。図4で計算したように、戻り電子の運動エネルギーはトンネルイオン化した時間に依存するので、瞬時強度位相の違いによって時間に対する運動エネルギーの分布が異なっている。例えば、He2+のイオン化ポテンシャルを超えて非段階的イオン化に関与できるのは、Δφ=0においては図4(a)の2〜4番目のピークに対応する時間にトンネルイオン化した電子であり、Δφ=π/2においては図4(b)の2,3番目のピークに対応する電子のみである。従って、本実施の形態において、戻り電子の運動エネルギーに制限を受ける非段階的イオン化を利用することは、言わば超高速ゲートをかけてトンネルイオン化により生成された光電子数を測定することに相当する。
上述したように、本実施の形態では、非段階的イオン化過程における2価イオンの生成量を測定する。その生成量は照射した光パルス全体における2価イオンヘのイオン化確率に比例する。
図4および図5における計算結果を組み合わせれば、戻り電子がもつ運動エネルギーの確率分布を計算できる。特定の運動エネルギーをもつ電子がHe+イオンと衝突し、He2+を生成する衝突断面積は、H.Tawaraらによって報告されている(例えば、非特許文献6を参照)。この衝突断面積と上記確率分布との積をとり、電子の運動エネルギーに対して積分したものが、2価イオン化確率に比例する量となる。
従って、各瞬時強度位相に対してこの量を計算することにより、2価イオン生成量の瞬時強度位相依存性を見積もることが可能である。
図6は、瞬時強度位相に対するパルス当たりの2価イオン生成確率を計算した結果を示す図である。2価イオン生成確率は瞬時強度位相の変化に対して敏感に変化しており、瞬時強度位相の変化に応じて2価イオン生成確率が周期的に変化していることがわかる。2価イオン生成確率は照射する極短光パルスの強度のみに依存し、電界振動の向きには依存していないため、2価イオン生成確率の周期は2πではなくπである。
図1および図2に示した計測装置を用いた計測方法においては、Δφを変化させることが瞬時強度位相調整機構3による瞬時強度位相の変化量を変えることに対応し、2価イオン生成確率が2価イオン生成量の相対値に対応する。従って、瞬時強度位相調整機構3の変化量の関数として2価イオン生成量を測定し、図6のような周期的変化を見出すことにより、その変化量に対応する瞬時強度位相を決定することが可能である。
なお、非段階的イオン化はガス固有の性質に因らない一般的な現象であるので、計算に用いたHeガス以外の希ガスやその他の分子ガスについても、それぞれのイオン化ポテンシャルに見合った尖頭強度の極短光パルスを照射することにより、Heガスと同様の効果を得ることが可能である。
本発明の一実施の形態に係る高強度極短光パルスの瞬時強度位相計測装置の一構成例を示す図である。 コンピュータの一構成例を示すブロック図である。 高強度極短光パルスの瞬時強度位相計測装置を用いた計測方法の流れを示すフローチャートである。 Heガスの光電界イオン化過程における戻り電子の運動エネルギーを計算した結果を示す図である。 Heガスの光電界イオン化過程における戻り電子のトンネルイオン化確率を計算した結果を示す図である。 非段階的イオン化過程による2価イオン生成確率の瞬時強度位相依存性を計算した結果を示す図である。 高強度極短光パルスにおけるキャリアエンベロープ位相および瞬時強度位相を説明する図である。
符号の説明
1…高強度極短パルスレーザ装置、2…高強度極短光パルス、3…瞬時強度位相調整機構、4…集光用光学素子、5…ガス・レーザ光相互作用部、6…ガス供給装置、7…イオン化用ガス、8…イオン検出器、9…コンピュータ、11…瞬時強度位相調整機構制御部、12…2価イオン生成量記憶部、13…瞬時強度位相算出部。

Claims (4)

  1. 光パルスの瞬時強度位相を変化させてイオン化ガスに照射し、非段階的イオン化過程によって生成される2価イオンの生成量を繰り返し測定するステップと、
    前記光パルスの瞬時強度位相の変化に応じた前記2価イオンの生成量の周期的変化から前記光パルスの瞬時強度位相を所定量変化させたときの前記瞬時強度位相の値を算出するステップと
    を備えることを特徴とする光パルスの瞬時強度位相計測方法。
  2. 請求項1に記載の瞬時強度位相計測方法において、
    前記瞬時強度位相の値を算出するステップは、
    前記2価イオンの生成量の周期的変化における1周期の区間を検出するステップと、
    前記区間の長さをπとし、前記区間における位置から前記光パルスの瞬時強度位相を所定量変化させたときの前記瞬時強度位相の値を算出するステップと
    を備えることを特徴とする光パルスの瞬時強度位相計測方法。
  3. イオン化用ガスを供給するガス供給手段と、
    光パルスを出力する光パルス出力手段と、
    通過する光パルスの瞬時強度位相を変化させる瞬時強度位相調整手段と、
    前記ガス供給手段から供給される前記イオン化用ガスに前記光パルス出力手段から出力され前記瞬時強度位相調整手段を通過した光パルスを照射した状態で、非段階的イオン化過程によって生成される2価イオンの生成量を測定するイオン検出手段と、
    前記瞬時強度位相調整手段による前記瞬時強度位相の変化量を変えて前記2価イオンの生成量を繰り返し測定したときの前記イオン検出手段の測定結果に基づき、瞬時強度位相の変化に応じた前記2価イオンの生成量の周期的変化から前記瞬時強度位相調整手段により前記光パルスの瞬時強度位相を所定量変化させたときの前記瞬時強度位相の値を算出する瞬時強度位相算出手段と
    を備えることを特徴とする光パルスの瞬時強度位相計測装置。
  4. 請求項3に記載の瞬時強度位相計測装置において、
    前記瞬時強度位相算出手段は、
    前記2価イオンの生成量の周期的変化における1周期の区間を検出する手段と、
    前記区間の長さをπとし、前記区間における位置から前記光パルスの瞬時強度位相を所定量変化させたときの前記瞬時強度位相の値を算出する手段と
    を備えることを特徴とする光パルスの瞬時強度位相計測装置。
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