本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態の光伝送システムの全体構成図であり、主に波長多重伝送を説明するための図として描いている。本実施形態の伝送システムは、送信局10から受信局20へ信号光として波長多重光を伝送する構成である。この波長多重光には、複数のチャネル(ch1 〜chn )の信号を多重することができる。送信局10から送出された波長多重光は、伝送路上に設けられた1つ以上の光増幅部によって増幅されて受信局20に伝送される。
送信機(Tx)11−1〜11−nは、それぞれ伝送すべき信号を互いに波長の異なる信号光(各信号光の波長は、それぞれλ1 〜λn )に乗せて出力する。これらの信号光は、合波器12によって多重化されて伝送路31aに送出される。すなわち、送信局10は、n個の波長成分(λ1 〜λn )を含む波長多重光を信号光として出力する。この波長多重光は、光増幅部32によって増幅されて受信局20にまで伝送される。伝送路31bを介して伝送されてきた波長多重光は、波長(λ1 〜λn )に従って分波器21により分波され、それぞれ受信機(Rx)22−1〜22−nに入力される。このように、本実施形態の伝送システムにおいては、送信機11−1〜11−nからそれぞれ送出される信号光は、波長多重光として1本の伝送路を介して伝送され、それぞれ受信機22−1〜22−nにより受信される。
送信局10から受信局20へ伝送される波長多重光としては、例えば、1550nm帯の光を利用する。この場合、チャネルch1 〜chn の信号を乗せる各波長λ1 〜λn は、たとえば、1530〜1560nmの範囲から選ばれる。
光増幅部32としては、信号光の波長を1550nm帯とすると、希土類ドープ光ファイバを用いる。希土類ドープ光ファイバは、例えば、エルビウム等が注入されたエルビウムドープ光ファイバである。以下では、希土類ドープ光ファイバの一例としてエルビウムドープ光ファイバを採り上げて説明する。エルビウムドープ光ファイバは、当業者の間では良く知られているように、増幅すべき信号光(図1では、送信局10から送出される波長多重光)とは別に供給される励起光によって励起エネルギーが与えられ、その励起エネルギーによりエルビウムドープ光ファイバを通過する信号光を増幅する。
本実施形態の伝送システムは、遠隔励起構成であり、励起光を生成する光源およびその光源を制御する回路を光増幅部(エルビウムドープ光ファイバ)から離れた位置に設ける。これらの光源および光源制御回路は、図1には図示していないが、例えば、送信局10の内部またはその近傍、あるいは受信局20の内部またはその近傍に設ける。
図2は、エルビウムドープ光ファイバの光利得(光増幅率)の波長特性を示す図である。図2は、エルビウムドープ光ファイバを用いて入力光を増幅したときに出力される光のパワー分布を示しているが、入力光が一定のパワーであることを考慮すると、このグラフは実質的にエルビウムドープ光ファイバの利得を表している。エルビウムドープ光ファイバの波長特性は、信号伝送波長帯域(1530〜1560nm)において、励起率(Er反転分布率)が高いときは、短波長側の利得と比べて長波長側の利得が小さく、励起率が低いときは、長波長側の利得と比べて短波長側の利得が小さくなる。すなわち、エルビウムドープ光ファイバの励起率が高いときは、波長に対する利得の傾きが「負」になり、励起率が低いときは、波長に対する利得の傾きが「正」になる。
エルビウムドープ光ファイバの励起率は、励起光のパワーにより制御することができる。即ち、エルビウムドープ光ファイバに供給する励起光のパワーを大きくすると、励起率が高くなり、それに伴って波長に対する利得の傾きが「負」になる。一方、励起光パワーを小さくすると、励起率が低下し、波長に対する利得の傾きが「正」になる。この様子を図3に示す。
また、光ファイバに注入する成分を適当に選べば、図2において破線で示すように、エルビウムドープ光ファイバにおける利得が、増幅すべき波長多重光の波長に対して概ね直線的に変化するように構成できる。換言すれば、波長多重光の波長に対して利得が直線的に変化するようなエルビウムドープ光ファイバを伝送路上に設ければ、伝送される波長多重光に多重化されている各チャネルの光レベルは、図4(a)または図4(b)に示すように、波長に対して直線的に変化することが期待される。
この特性を考慮すれば、波長多重光に多重化されている任意の2つチャネルの光レベルを一致させることができれば、すべてのチャネルの光レベルが一致することが期待される。この場合、波長多重光に含まれるチャネルの中で最も波長が短いチャネルと最も波長が長いチャネルを選択し、それら2つのチャネルの光レベルを互いに一致させるときに、チャネル間の光レベルの偏差が最小になると予想される。すなわち、図4に示すように、チャネルch1 に最も短い波長(λ1 )が割り当てられ、チャネルchn に最も長い波長(λn )が割り当てられたとすると、各チャネルch1 〜chn の光レベルを等化するためには、チャネルch1 及びチャネルchnの光レベルを検出し、それらを一致させるように制御すればよい。
本実施形態の伝送システムでは、図2〜図4を参照しながら説明した特性を利用する。すなわち、エルビウムドープ光ファイバにより増幅された波長多重光に多重化されている各チャネルの光レベルを検出し、その検出結果に従ってエルビウムドープ光ファイバに供給する励起光のパワーを変化させてエルビウムドープ光ファイバの波長特性(利得)を補正する。このことにより、各チャネルの光レベルを等化する。本実施形態の伝送システムは、遠隔励起構成であり、上記励起光の制御をエルビウムドープ光ファイバを設ける位置から離れた地点において行う。
図5は、第1の態様の伝送システムの構成図である。送信局10は、図1を参照しながら説明したように、信号光として波長多重光を伝送路に送出する。この波長多重光は、信号光ch1 〜信号光chn を乗せている。信号光ch1 〜信号光chn は、それぞれ波長λ1 〜λn が割り当てられた信号光である。すなわち、この波長多重光は、信号光ch1 〜信号光chnの各波長成分を含んでいる。送信局10から送出される波長多重光は、エルビウムドープ光ファイバ(以下、EDF)において増幅されて受信局20に伝送される。
EDF41は、光源(Pump)45から出力される励起光が供給されており、その励起エネルギーによって波長多重光(信号光)を増幅する。WDMカプラ42は、互いに異なる波長の光を合波する機能を有し、送信局10から出力された波長多重光および光源45から出力された励起光が入射されると、それらを合波して出力する。したがって、EDF41には、波長多重光および励起光が入力される。
伝送路43a、43bを介して伝送された波長多重光は、受信局20において各波長ごとに分波される。受信局20については図6を参照しながら説明する。波長多重光は、分波器21によって波長成分(λ1 〜λn )ごとに分波され、それら分波された光がそれぞれ受信機(Rx)22−1〜22−nに入力される。受信機22−1〜22−nに入力される光は、それぞれ波長λ1 〜λn を持った光であり、信号光ch1 〜信号光chnである。信号光ch1 〜信号光chn は、それぞれ分岐カプラ46−1〜46−nによってその一部が分岐される。それら各分岐された信号光ch1 〜信号光chnは、制御回路(cont1 )44に入力される。制御回路44は、信号光ch1 〜信号光chnの各分岐光を受信すると、それらのレベルを等化させるように光源45の出力パワーを制御する。制御回路44の構成および動作については後で詳しく説明する。
光源45から出力される励起光は、EDF41に供給され、それを励起状態にする。ここで、EDF41の利得特性は、上述したように、励起光のパワーによって制御される。ところが、この励起光のパワーは、制御回路44により、波長多重光に多重化されている各チャネルの光レベルを等化するような値に調整されている。したがって、伝送路43a、43bを介して伝送される波長多重光は、受信局20によって受信される時点で各チャネルの光レベルが等化されているように、EDF41によって増幅されることになる。
図5に示す伝送システムは、上述のように、フィードバック系を構成する。このフィードバック系では、EDF41の利得を制御の対象とし、EDF41によって増幅された波長多重光の波長特性に基づいてそれらの利得を制御する。
このように、図5に示す伝送システムでは、波長多重光を伝送するシステムにおいて、波長多重光に多重化されている各チャネルの光レベルを考慮しながらエルビウムドープ光ファイバに励起光を供給する遠隔励起用光源のパワーを調整するので、受信局における各チャネルの光レベルの偏差が最小になる。
なお、図5に示す遠隔励起構成のシステムの代わりに、EDF41、制御回路44、および光源45を1つのユニットに組み込んだ光増幅器を用いると、その光増幅器からの出力時点で各チャネルの光レベルの偏差を最小にしても、受信局20によって受信される時点では、伝送路43bを介した伝送によって波形が減衰しており、必ずしも各チャネルの光レベルの偏差が最小になるわけではない。図5に示すような遠隔励起構成では、この点が改善されている。
WDMカプラおよび分岐カプラについて説明する。WDMカプラは、図7(a)に示すように、互いに波長の異なる光を合波することができる。すなわち、図5のシステムでは、信号光(波長多重光)および励起光がWDMカプラに入力されると、それら2つの光は合波されて1つの出力ポートから出力される。また、WDMカプラは、図7(b)に示すように、互いに波長の異なる光が合波された光を波長成分に基づいて分波することができる。即ち、WDMカプラは、信号光(波長多重光)および励起光が合波された光が入力されると、その入力光を信号光と励起光とに分波して出力する。
分岐カプラは、図7(c)に示すように、入力光を所定の比率で分岐する。すなわち、分岐カプラに信号光が入力されると、その信号光はそのまま分岐されて出力され、励起光が入力されると、その励起光がそのまま分岐されて出力される。この場合、分岐カプラは、ビームスプリッタとして機能する。また、分岐カプラは、図7(d)に示すように、2つのポートから光が入力されると、それらを結合して出力する。
図8は、図5に示す制御回路44の構成図である。フォトダイオード(PD)51−1〜51−nは、それぞれ信号光ch1 〜信号光chn を受信し、その光レベルに応じた電圧を出力する。すなわち、フォトダイオード51−1〜51−nの各出力は、それぞれチャネルch1〜chnの光レベルを表す信号である。フォトダイオード51−1〜51−nの各出力は、それぞれ各チャネルの光レベルとしてアナログスイッチ52および53に入力される。また、フォトダイオード51−1〜51−nの各出力は、それぞれコンパレータ54−1〜54−nに入力される。
コンパレータ54−1〜54−nは、それぞれ各チャネルの光レベルと閾値Vthとを比較し、その比較結果をTTLレベルで出力する。この閾値Vthは、以下のようにして決められる。即ち、波長多重伝送システムでは、信号は所定のチャネルを介して伝送されるが、信号を伝送しているチャネルの光レベルは、信号を伝送していないチャネルの光レベルよりも大きくなる。図9では、チャネル2〜nは信号を伝送しているのに対し、チャネル1は信号を伝送していない状態を示している。閾値Vthは、各チャネルが信号を伝送しているか否かを判断するための値として設定される。コンパレータ54−1〜54−nは、受信した検出光レベルが閾値Vthよりも大きいときに「L」レベルを出力する。すなわち、コンパレータ54−1〜54−nは、対応するチャネルが信号を伝送しているときに、「L」レベルを出力する。
コンパレータ54−1の出力は、アナログスイッチ52の1番選択端子に入力される。アナログスイッチ52の1番選択端子に「L」レベルが入力されているとき、すなわちコンパレータ54−1の出力が「L」レベルのとき、アナログスイッチ52は、1番入力端子に印加されている電圧を出力する。すなわち、チャネル1が信号を伝送しているとき、アナログスイッチ52は、チャネル1の検出光レベルを出力する。一方、コンパレータ54−1の出力が「H」レベルの時、すなわち、チャネル1が信号を伝送していないときには、アナログスイッチ52は、1番入力端子に印加されている電圧を出力しない。
アナログスイッチ52の2番選択端子には、コンパレータ54−1の出力とコンパレータ54−2の出力との論理積が入力される。したがって、コンパレータ54−2の出力が「L」レベルのときは、アナログスイッチ52の2番選択端子に「L」レベルが入力され、アナログスイッチ52は、2番入力端子に印加されている電圧を出力する。すなわち、チャネル1が信号を伝送しておらず、かつチャネル2が信号を伝送しているときには、アナログスイッチ52は、チャネル2の検出光レベルを出力する。
このように、アナログスイッチ52は、信号を伝送しているチャネルのうちで最も波長の短いチャネルの光レベルを出力する。同様に、アナログスイッチ53は、信号を伝送しているチャネルのうちで最も波長の長いチャネルの光レベルを出力する。したがって、例えば、図9に示すように、チャネル1が信号を伝送しておらず、チャネル2〜nが信号を伝送していたとすると、アナログスイッチ52は、チャネル2の光レベルを出力し、アナログスイッチ53は、チャネルnの光レベルを出力する。アナログスイッチ52および53の出力は、除算器55に入力される。
除算器55は、たとえばオペアンプである。除算器55は、上述したフィードバック系の一部であり、アナログスイッチ52の出力とアナログスイッチ53の出力との差が「0」になるように動作する。アンプ56は、除算器55の出力を増幅する。励起光源駆動回路57は、たとえば、パワートランジスタを含み、アンプ56の出力に応じた電流を流して光源45を駆動する。光源45は、たとえばレーザダイオードであり、励起光源駆動回路57によって供給される電流に応じたパワーの光を励起光として出力する。
このように、制御回路44は、信号を伝送しているチャネルのうちで最も波長の短いチャネルの光レベルと最も波長の長いチャネルの光レベルとを一致させるように光源45の発光パワーを制御する。
なお、図5または図6では、分波器21によって分波された各信号光をそれぞれさらに分岐して制御回路44に入力する構成を示したが、分波器21によって分波される前の波長多重光の一部を制御回路44に入力し、制御回路44が各チャネルの波長成分を抽出するような構成であってもよい。
図10は、第2の態様の伝送システムの構成図である。図5に示した第1の態様のシステムでは、送信局10と受信局20との間の伝送路上に1つのエルビウムドープ光ファイバ(EDF41)を設けた構成であったが、第2の態様のシステムでは、2つのエルビウムドープ光ファイバ(EDF41、47)を設けている。第2の態様のシステムでは、光源45によって生成される励起光を分岐カプラ48を用いて分岐し、分岐された各励起光をそれぞれEDF41および47に供給する。EDF47へ励起光を供給する際には、WDMカプラ49を用いて波長多重光と励起光とを合波する。
このように、第2の態様のシステムでは、複数のエルビウムドープ光ファイバの利得が同時に調整される。
図11は、第3の態様の伝送システムの構成図である。第3の態様のシステムでは、第2の態様のシステムに加えて、光プリアンプ61をさらに設けている。光プリアンプ61は、たとえば、エルビウムドープ光ファイバおよびレーザ光源を含む光増幅器であり、伝送路43bを介して伝送されてくる波長多重光を増幅する。光プリアンプ61の利得は、制御回路44によって制御される。このように、第3の態様のシステムでは、波長多重光に多重化されている各チャネルの光レベルの偏差を伝送路上で調整した後、さらに受信局20において再度そのレベル偏差を補正する。
上記構成により、以下のメリットが得られる。すなわち、遠隔励起構成では、励起光はEDF41または47に伝送されるまでにその伝送路で減衰してしまうので、励起光の発光パワーを所定値以上に大きくする必用がある。一方、励起光の発光パワーを大きくするためには、光源駆動用に大電流が必用となり、現実的には、励起光の発光パワーを大きくするのには限界がある。このため、遠隔励起用の光源の励起光の発光パワーとして取りうる範囲(ダイナミックレンジ)を大きくすることは、現実的には容易ではない。ここで、エルビウムドープ光ファイバの利得は、そこに入力される励起光パワーにより制御されるので、このように励起光の発光パワーのダイナミックレンジが狭いと、各チャネルの光レベルの偏差を十分に調整できない可能性がある。第3の態様のシステムは、この点を改善している。すなわち、受信局に光プリアンプを設けることにより、小さい消費電流で大きなダイナミックレンジを達成し、効率良く各チャネルの光レベルの偏差を調整できるようになる。
図12は、第4の態様の伝送システムの構成図である。第4の態様のシステムでは、受信局20側に設けられたエルビウムドープ光ファイバ(EDF41)には受信局20から励起光を供給し、送信局10側に設けられたエルビウムドープ光ファイバ(EDF47)には送信局10から励起光を供給する構成である。EDF47に供給される励起光は、送信局10に設けられた光源71によって生成される。光源71は、一定電流で駆動してもよいし、あるいは、ALC(自動レベル制御)で駆動してもよい。EDF41の利得は、図5に示す第1の態様のシステムと同じように制御する。
上記構成によれば、図10に示す第2の態様のシステムと比較した場合、励起光を生成するための消費電力を低減できる。すなわち、第2の態様のシステムでは、光源45によって生成される励起光をEDF47にまで伝送する必用があったが、第4の態様のシステムではEDF41を励起できる程度のパワーでよい。また、光源71からEDF47までの伝送距離は、光源45からEDF47までの伝送距離と比べると小さく、光源71の発光パワーをそれほど大きくする必要はない。
図13は、第5の態様の伝送システムの構成図である。第5の態様のシステムでは、波長多重光に多重化されているチャネルのうち信号を伝送するチャネルの数(波長多重数)を検出し、そのチャネル数に従って励起光を制御する。
一般に、光ファイバ増幅器を用いて波長多重光を増幅する場合、その波長多重光に多重化されているチャネルの中で信号を伝送するチャネルの数が多い程より大きな励起エネルギーを必要とする。また、伝送システムにおける光増幅では、その光増幅器の増幅率を適切に制御しなければならない。すなわち、増幅率が小さすぎれば、信号光は受信装置にまで伝送されないし、反対に増幅率が大きすぎると、伝送路における非線形効果によりノイズが増加してしまう。従って、波長多重光を中継局ごと増幅しながら伝送するシステムにおいては、信号を伝送するチャネルの数に応じて光ファイバ増幅器に供給する励起光を調整することが望ましい。
第5の態様の伝送システムでは、このことを考慮してエルビウムドープ光ファイバに供給する励起光を制御する。すなわち、制御回路(cont2 )72が信号を伝送するチャネルの数を検出し、その検出数に従って光源71の発光パワーを調整する。
分岐カプラ73−1〜73−nは、それぞれ送信機11−1〜11−nから出力された信号光(信号光ch1 〜信号光chn )を分岐して制御回路72へ導く。すなわち、合波器(図1に示す合波器12)によって合波される前の各信号光(信号光ch1 〜信号光chn)の各一部を制御回路72に導く。従って、制御回路72は、各送信機11−1〜11−nの出力レベルを検出できる。
図14は、図13に示す制御回路72の構成図である。各送信機11−1〜11−nから出力された信号光の分岐光は、それぞれフォトダイオード(PD)81−1〜81−nによって受信される。フォトダイオード81−1〜81−nは、受光レベルに応じた電圧を出力する。すなわち、フォトダイオード81−1〜81−nは、送信機11−1〜11−nの出力レベルを検出する。フォトダイオード81−1〜81−nの出力は、それぞれコンパレータ82−1〜82−nに入力される。
コンパレータ82−1〜82−nは、フォトダイオード81−1〜81−nからそれぞれ受信した電圧レベルを予め設定されてある閾値Vthと比較する。この閾地Vthは、信号を含んでいるか否かを判断するための値である。すなわち、図9を参照しながら言及したように、信号を伝送するチャネルの光レベルは信号を伝送していないチャネルの光レベルよりも大きいので、このレベル差を判断するような閾値Vthを設定することにより、各チャネルが信号を伝送しているか否かを判断できる。コンパレータ82−1〜82−nは、対応するチャネルが信号を伝送する場合には、「H」レベルを出力し、信号を伝送していない場合には、「L」レベルを出力する。
アナログスイッチ83は、コンパレータ82−1〜82−nの出力信号を受信する。そして、受信信号の中から「H」レベル信号の数に検出し、そのことにより信号を伝送しているチャネルの数を認識する。アナログスイッチ83は、n個の電圧設定端子を備える。各電圧設定端子にはそれぞれ電圧V1 〜Vn が印加されている。アナログスイッチ83は、上記チャネル数に対応する電圧設定端子に印加されている電圧を出力する。すなわち、信号を伝送しているチャネルの数が「m」であれば、電圧Vm を出力する。なお、電圧Vi (i=1,2,...,n)は、励起光パワーを指示する電圧値である。
アナログスイッチ83の出力は、アンプ84により増幅されて励起光源駆動回路85に入力される。励起光源駆動回路85は、たとえば、パワートランジスタを含み、アンプ84の出力に応じた電流を流して光源71を駆動する。そして、光源71は、励起光源駆動回路85によって供給される電流に応じたパワーの光を励起光として出力する。
このように、制御回路72は、信号を伝送しているチャネルの数に応じて光源71の発光パワーを制御する。
図15は、第6の態様の伝送システムの構成図である。図13に示した第5の態様のシステムでは、送信局10と受信局20との間の伝送路上に1つのエルビウムドープ光ファイバ(EDF47)を設けた構成であったが、第6の態様のシステムでは、2つのエルビウムドープ光ファイバ(EDF41、47)を設けている。第6の態様のシステムでは、光源71によって生成される励起光を分岐カプラ91を用いて分岐し、分岐された各励起光をそれぞれEDF41および47に供給する。このように、第6の態様のシステムでは、複数のエルビウムドープ光ファイバの利得が同時に調整される。
図16は、第7の態様の伝送システムの構成図である。第7の態様のシステムは、図5に示す第1の態様と図13に示す第5の態様とを組み合わせたシステムである。すなわち、送信局側に設けられたEDF47には、信号を伝送するチャネル数に応じて調整された励起光が供給され、受信局側に設けられたEDF41には、各チャネルの光レベルの偏差を最小にするように調整された励起光が供給される。
図17は、第8の態様の伝送システムの構成図である。第8の態様のシステムは、図16に示した第7の態様のシステムの変形例である。すなわち、第8の態様の伝送システムでは、波長多重光(信号光)の伝送路と励起光の伝送路とを分離し、また、双方向励起構成を採用している。
光源71から出力される励起光は、分岐カプラ91によって分岐され、前方励起光としてEDF41および47に供給される。このとき、光源71からEDF47に供給された励起光の一部がEDF47によって消費されることなくそこを通過した場合には、図18に示すように、そのEDF47を通過した励起光(残留励起光)はWDMカプラ92によって波長多重光から分波されて伝送路93bに導かれる。WDMカプラ92によって分波された励起光は、伝送路93bを伝送されてEDF41に供給される。したがって、伝送路43cには波長多重光のみが導かれる。
一方、光源45から出力される励起光は、光源71から出力された励起光と同様に、EDF41および47に供給される。ただし、光源71から出力される励起光は前方励起光として供給されるのに対し、光源45から出力される励起光は後方励起光として供給される。
上記構成によれば、1つ目のエルビウムドープ光ファイバで消費されずに通過した残留励起光を2つ目のエルビウムドープ光ファイバへの励起光として利用できるので、励起光の利用効率が高まる。
また、上記構成において、光源45と光源71による励起光供給の配分の初期値を予め決めておいてもよい。たとえば、最低使用チャネル数が「m」に決まっているシステムの場合には、光源45からの励起光のみでmチャネルの信号が多重された波長多重光を所定のレベルにまで増幅できるように光源45の発光パワーを設定する。そして、多重するチャネル数が増加したときに光源71をその増加数に応じて発光させるようにする。
EDF41とEDF47との間の波長多重光の伝送路(伝送路43c)と励起光の伝送路(93b)とを分離した理由は以下の通りである。
波長多重光の伝送路と励起光の伝送路とを分離することなく上述のようにして励起光の利用効率を高めようとすると、図17に示すシステムにおいては、WDMカプラ42、92、および伝送路93bを除去することになる。このような構成とすると、光源71から出力されてEDF47を通過した残留励起光は、伝送路43cを介してEDF41に供給される。同様に、光源45から出力されてEDF41を通過した残留励起光は、伝送路43cを介してEDF47に供給される。
ところが、光伝送システムでは、反射などを防止する目的で光増幅器などの前段および後段に光アイソレータを設けることがある。図18では、EDF47の前段および後段に光アイソレータ101aおよび101bを設けた例を示している。このように光アイソレータ設けると、光源45から出力されて伝送路43cを介して伝送されてくる残留励起光は、光アイソレータ101bによって遮断されてしまい、EDF47に供給されることはない。すなわち、EDF41とEDF47との間の波長多重光用の伝送路と励起光用の伝送路とを分離した理由は、反射を防止しながら双方向励起を実現するためである。尚、波長多重光用の伝送路と励起光用の伝送路とを分離すると、特に3段以上の光増幅器を設ける場合、光増幅器ごとの励起光の制御が容易になる。
図19は、第9の態様の伝送システムの構成図である。第9の態様のシステムは、ローカル局とリモート局との間で信号光としての波長多重光を双方向に伝送する構成を前提とする。ここでは、ローカル局からリモート局への伝送路を「上り伝送路」と呼び、リモート局からローカル局への伝送路を「下り伝送路」と呼ぶことにする。
第9の態様の伝送システムでは、ローカル局から出力されてエルビウムドープ光ファイバ(EDF131)により増幅された波長多重光の一部をリモート局からローカル局へ波長多重光を伝送する下り伝送路上に導き、この増幅された波長多重光の一部をローカル局で受信する。そして、ローカル局は、ローカル局から出力されて増幅された波長多重光に多重化されているチャネルの各光レベルの偏差を最小にするように、上り伝送路上に設けたエルビウムドープ光ファイバ(EDF131)に供給する励起光のパワーを調整する。また、下り伝送路上に設けたエルビウムドープ光ファイバ(EDF132)に供給する励起光のパワーも同様に調整する。
以下、詳細に説明する。ここでは、上り伝送路について説明する。また、ローカル局から出力される波長多重光を「波長多重光(FL)」と呼び、リモート局から出力される波長多重光を「波長多重光(FR)」と呼ぶことにする。
ローカル局110から出力される波長多重光(FL)は、EDF131によって増幅されてリモート局120に伝送される。EDF131には、リモート局110に設けられた光源111によって生成される励起光が供給されている。EDF131によって増幅された波長多重光(FL)は、分岐カプラ133によって分岐され、その分岐された波長多重光(FL)が下り伝送路上に設けられた分岐カプラ134に導かれる。分岐カプラ134には、リモート局120から出力される波長多重光(FR)と分岐カプラ133によって分岐された波長多重光(FL)を合波して下り伝送路に導く。したがって、ローカル局110は、波長多重光(FR)と波長多重光(FL)とが合波された波長多重光を受信する。
ローカル局110は、波長多重光(FR)と波長多重光(FL)とが合波された波長多重光を受信すると、図6を参照しながら説明したように、分波器を用いてその波長多重光を波長ごとに分波する。そして、各分波された信号光は、それぞれ分岐カプラにより分岐されて制御回路(cont3 )112に導かれる。制御回路112の動作は、基本的に制御回路44と同じである。すなわち、受信した波長多重光に多重化されているチャネルの各光レベルの偏差が最小となるように光源111の発光パワーを調整する。
なお、上り伝送路と下り伝送路とで互いに異なる波長のチャネルを利用してもよい。即ち、波長多重光として使用する波長λ1 〜λn のうち、例えば、上り伝送路を介して伝送される波長多重光(FL)として波長λ1 、λ3 、λ5 、...を利用し、一方、下り伝送路を介して伝送される波長多重光(FR)としては波長λ2 、λ4 、λ6 、...を利用する。このような構成とすれば、ローカル局110に波長多重光(FL)と波長多重光(FR)とが合波された波長多重光が入力されたときに、その波長多重光の中から波長λ1 、λ3 、λ5 、...を有する信号光のみを制御回路112に導くことができる。すなわち、波長多重光(FL)に多重化されているチャネルに対応する信号光のみを制御回路112に入力させることができる。この場合、制御回路112は、リモート局120から出力される波長多重光(FR)の影響を受けることなく波長多重光(FL)に多重化されているチャネルを等化するように光源111の発光パワーを調整できる。
図20は、第10の態様の伝送システムの構成図である。第10の態様のシステムでは、送信局から出力されて光増幅器で増幅されたた波長多重光の一部を送信局に送り返し、そこでその受信した波長多重光を解析することによって励起光パワーを調整する。
送信局10から出力される波長多重光は、EDF47によって増幅されて受信局20に伝送される。EDF47には、送信局10に設けられた光源71によって生成される励起光が供給されている。EDF47によって増幅された波長多重光は、分岐カプラ142によって分岐され、その分岐された波長多重光がWDMカプラ143によって導波されて送信局10に送り返される。なお、波長多重光の一部を送信局10に送り返す経路は、図20に示すように励起光を供給する伝送路を利用してもよいし、あるいは別途設けた伝送路を介して伝送するようにしてもよい。
送信局10に送り返されてきた波長多重光は、分岐カプラ144によって制御回路(cont4 )141に導かれる。制御回路141は、図1または図6に示す分波器21と同じ機能を有し、受信した波長多重光を波長成分ごとに分波することにより各チャネルに対応する信号光を抽出する。そして、制御回路141は、その波長多重光に多重化されている複数のチャネルの光レベルの偏差を最小にするように光源71の発光パワーを調整する。
図21は、第11の態様の伝送システムの構成図である。第11の態様のシステムでは、第10の態様のシステムと同様に、送信局から出力されて光増幅器で増幅された波長多重光の一部を送信局に送り返し、そこでその受信した波長多重光を解析することによって励起光パワーを調整する。ただし、第10の態様のシステムでは、励起光を供給する伝送路を介して波長多重光を送信局に送り返していたが、第11の態様のシステムでは、受信局に向かって波長多重光を伝送する伝送路を介してその波長多重光の一部を送信局に送り返す構成である。
送信局10から出力される波長多重光は、光サーキュレータ151を通過した後、EDF47によって増幅されて受信局20に伝送される。EDF47には、送信局10に設けられた光源71によって生成される励起光が供給されている。EDF47によって増幅された波長多重光は、分岐カプラ142によって分岐され、その分岐された波長多重光が光サーキュレータ151によって伝送路43aに導かれる。この波長多重光は、伝送路43aを介して伝送されて送信局10に入力される。
送信局10に送り返されてきた波長多重光は、合波器21を逆方向に通過することにより、各チャネルに対応する信号光に分波される。そして、それら各チャネルに対応する信号光は、それぞれ分岐カプラ152−1〜152−nによって分岐されて制御回路112に導かれる。制御回路112は、各チャネルの光レベルの偏差を最小にするように光源71の発光パワーを調整する。
図22は、第12の態様の伝送システムの構成図である。第12の態様のシステムは、波長多重光を増幅するエルビウムドープ光ファイバを通過した残留励起光のパワーに基づいてその波長多重光に多重化されているチャネルの各光レベルの偏差を調整する構成である。伝送路の長さと波長多重光を増幅するエルビウムドープ光ファイバの利得特性が既知であれば、そのエルビウムドープ光ファイバに供給する励起光の発光パワーとそのエルビウムドープ光ファイバにおいて消費されることなく通過した残留励起光のパワーに基づいて、上記波長多重光に多重化されている複数のチャネルの光レベルの偏差を推定することができる。第12の態様の伝送システムは、この特性を利用する。
送信局10から出力される波長多重光は、EDF47によって増幅されて受信局20に伝送される。EDF47には、送信局10に設けられた光源71によって生成される励起光が供給されている。EDF47を通過した残留励起光は、WDMカプラ161によって波長多重光から分波される。この残留励起光は、分岐カプラ162により送信局10に導かれる。
送信局10に送り返されてきた残留励起光は、分岐カプラ163によって制御回路(cont5 )164に導かれる。制御回路164は、この残留励起光と光源71の発光パワーとに基づいて波長多重光に多重化されている複数のチャネルの光レベルの偏差を推定し、その推定結果に従ってそれら各チャネルの光レベルの偏差を最小にするように光源71の発光パワーを調整する。
図23は、第12の態様の伝送システムの変形例の構成図である。図23に示すシステムでは、第12の態様の伝送システムと比べて、WDMカプラ49および143を設ける位置が異なっている。
図24は、第13の態様の伝送システムの構成図である。第13の態様のシステムは、第12の態様のシステムと同様に、波長多重光を増幅するエルビウムドープ光ファイバを通過した残留励起光のパワーに基づいてその波長多重光に多重化されている複数のチャネルの光レベルの偏差を調整する構成である。ただし、第12の態様のシステムでは送信局側で生成する励起光を調整するのに対し、第13の態様のシステムでは受信局側で生成する励起光を調整する。
送信局10から出力される波長多重光は、EDF41によって増幅されて受信局20に伝送される。EDF41には、受信局20に設けられた光源45によって生成される励起光が供給されている。EDF41を通過した残留励起光は、WDMカプラ171によって波長多重光から分波されて制御回路(cont5 )172に導かれる。制御回路164の動作は、基本的に図22に示した制御回路164と同じであり、受信した残留励起光と光源45の発光パワーとに基づいて波長多重光に多重化されている複数のチャネルの光レベルの偏差を推定し、その推定結果に従ってそれら各チャネルの光レベルの偏差を最小にするように光源45の発光パワーを調整する。
図25は、第14の態様の伝送システムの構成図である。第14の態様のシステムは、第12の態様のシステムと同様に、波長多重光を増幅するエルビウムドープ光ファイバを通過した残留励起光のパワーに基づいてその波長多重光に多重化されている複数のチャネルの光レベルの偏差を調整する構成である。ただし、第12の態様のシステムでは、WDMカプラを用いて残留励起光を送信局に送り返していたが、第14の態様のシステムでは、反射デバイスを用いて残留励起光を送信局に送り返す構成である。
送信局10から出力される波長多重光は、EDF47によって増幅された後、反射デバイス181を通過して受信局20に伝送される。EDF47には、送信局10に設けられた光源71によって生成される励起光が供給されている。反射デバイス181は、例えば、ファイバグレーティングにより構成されており、励起光の波長成分(この実施例では、1480nm)の光のみを反射し、他の波長成分の光を通過させる。したがって、送信局10から出力される波長多重光は、この反射デバイス181を通過するが、EDF47を通過した残留励起光はこの反射デバイス181によって反射される。反射された残留励起光は、WDMカプラ49、分岐カプラ163によって制御回路164に導かれる。制御回路164は、上述したように、受信した残留励起光と光源45の発光パワーとに基づいて波長多重光に多重化されている複数のチャネルの光レベルの偏差を推定し、その推定結果に従ってそれら各チャネルの光レベルの偏差を最小にするように光源45の発光パワーを調整する。
なお、エルビウムドープ光ファイバに励起光を供給する方法としては、信号光の伝送方向と同じ方向に励起光を供給する前方励起方式と、信号光の伝送方向と反対方向に励起光を供給する後方励起方式とがあるが、本発明は、各実施態様においてどちらか一方に限定されるものではない。
また、励起光をエルビウムドープ光ファイバに供給する際、多くの実施例において、エルビウムドープ光ファイバの直前または直後に設けたWDMカプラを用いて励起光を信号光用の伝送路に合流させているが、送信局または受信局において信号光と励起光を1本の光ファイバ上に合波させた後にそれらをエルビウムドープ光ファイバにまで伝送するようにしてもよい。信号光と励起光とを合波させて伝送する構成は、ノイズが大きくなる可能性があるが、励起光を伝送するための伝送路が不要となるので、コスト的には有利である。
さらに、上記各実施態様に示す例では、励起光を生成する光源およびその励起光を制御する回路を送信局または受信局の中に設けているが、これら光源および制御回路を送信局または受信局の外に設けてもよい。ただし、光源および制御回路を送信局または受信局の外に設ける場合であっても、メンテナンスなどの利便性を考えれば、送信局または受信局の近傍に設けることが望ましい。
上記各実施態様では、エルビウムドープ光ファイバを用いて波長多重光を増幅する例を示したが、本発明は、希土類ドープ光ファイバをはじめ各種光ファイバ増幅器に広く適用される。さらに、本発明は光ファイバ増幅器に限定されることはなく、利得を遠隔制御可能な光増幅器に広く適用することができ、例えば半導体光増幅器にも適用可能である。
また、上記各実施態様では、励起光のパワーを制御することによってエルビウムドープ光ファイバの利得を制御しているが、エルビウムドープ光ファイバに入力する信号光の光レベルを調整することによってそのエルビウムドープ光ファイバの利得を制御するような方式であってもよい。この場合、エルビウムドープ光ファイバの前段に光レベル調節器(例えば、光アッテネータ)を設けておき、その光レベル調節器を遠隔制御する。
さらに、上記いくつかの実施態様においては、各チャネルの光レベルを等化する構成を示したが、各チャネルの光レベルに所定の傾向を持たせるようにしてもよい。たとえば、波長が長くなるにつれて光レベルを大きくするように増幅することも可能である。