JP2006108486A - 分子ワイヤの製造方法、分子ワイヤ、分子膜および電子素子 - Google Patents

分子ワイヤの製造方法、分子ワイヤ、分子膜および電子素子 Download PDF

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Abstract

【課題】 共役ポリマーをベースとした分子スケールの電子素子を大量生産するために、単一分子ワイヤを製造する方法を提供する。
【解決手段】 本発明の分子ワイヤ24の製造方法は、ハロゲン21を含む共役モノマー溶液中に導電性基板20を浸漬し、導電性基板20の表面にハロゲン21を吸着させるステップと、導電性基板20を電極として、導電性基板20に第1パルスを印加し、ハロゲン21が吸着された導電性基板20の表面に共役モノマー22が2つ以上重合したオリゴマー23を生成させるステップと、導電性基板20に第2パルスを印加し、ハロゲン21が吸着された導電性基板20の表面に沿ってオリゴマー23に共役モノマー22を重合させるステップとを含む。
【選択図】 図5

Description

本発明は、電気化学エピタキシャル重合により分子ワイヤを製造する方法、該方法により製造される分子ワイヤ、複数の分子ワイヤからなる分子膜および該分子ワイヤまたは該分子膜を使用した電子素子に関する。
共役ポリマーは、有機電界効果トランジスタ(FET)、発光ダイオード、太陽電池などに使用される材料として大きな可能性を有している。これは、共役モノマーおよびポリマーが、多重結合の間に単結合を1つ挟んだ構造とされ、多重結合をつくるπ電子が特定の原子間に局在化しない非局在系であるため、電子が動きやすく、導電性を有するからである。共役ポリマーを使用する上記デバイスにおいて、高い性能を満足させるためには、原子または分子スケールの表面上に、高度に組織化された構造を構築しなければならない。ここで、電気化学は、電極上に共役ポリマーを合成する便利な技術である。例えば、電気化学を利用してナノ構造を構築する様々な技術として、電気化学走査トンネル顕微鏡(STM)、電気化学ディップペンリソグラフィ、電位プログラム電気重合、ナノワイヤの電着などが挙げられる。
しかしながら、電気化学は、原子または分子スケールの表面上に、充分に組織化された構造を構築するための制限がある。すなわち、従来の電気化学を用いた技術では、分子ワイヤの密度、長さ、方向、形状を制御することが困難であった。したがって、折れ曲がった分子ワイヤ、長さが異なる分子ワイヤ、延びる方向が異なる分子ワイヤなどが互いに結合した、数μm〜数十μmといった比較的長い1つの分子ワイヤを形成する。このため、FETでは、電極間の距離が長くなり、また、分子ワイヤ同士の結合部分において電子が飛び移るホッピング伝導を生じるといった問題があった。電子デバイスのサイズを小さくするためには、分子ワイヤの長さを短くする必要があり、安定で、かつデバイスの処理能力を向上させるためには、ホッピング伝導ではなく、高速に流れる弾道型伝導を生じさせる必要があり、そのため、単一分子ワイヤの製造が望まれ、特に、直線状の単一分子ワイヤの製造が望まれている。
ここで、2つの電極と接合させ、その2つの電極間に所定の電圧を印加させることにより、スピン整流された電流を流すことができる単一分子サイズの素子が提案されている(特許文献1参照)。この単一分子サイズの素子は、電子の供受に際して大きなスピン分極を引き起こすスピン分極ドナー部と、スピン分極を伝達しうる分子ワイヤ部と、分子ワイヤ部を金属電極に化学吸着させるための接合部から構成されている。分子ワイヤ部は、不対電子がスピン偏極電流を散乱させることなく伝搬できる分子鎖で、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリフェニレンなどから構成され、接合部が、チオールまたはその前駆体から構成されている。この素子は、例えば、フェニルニトロニルニトロキシド誘導体のエタノール溶液に、雲母(マイカ)上に真空蒸着した金基板を一定時間浸漬した後、エタノールで洗浄して自己集合化単分子膜を調整することにより製造される。
また、高配向性の有機物単分子膜を、ヨウ素単原子膜で覆われた金単結晶表面上に生成することが提案されている(非特許文献1参照)。これは、金電極をヨウ素で修飾して不活性化することで、溶液中においてポルフィリン、クリスタルバイオレットその他芳香族環を含む平面的分子が易動化され、高い規則性の下に単分子層だけ配列するというものである。上述した技術はいずれも、複数の単一分子が規則正しく配列し、金属表面に結合して単分子膜を形成するものである。これらの単分子膜は、導電性を有するものの、個々の分子が配列するのみで結合していないため、上述した弾道型伝導を生じさせることはできない。
特開2003−124544号公報 板谷謹悟、"JSTニュース No.16 1998−2"、[on line]、1998年2月、科学技術振興事業団、[平成16年8月25日検索]、インターネット<URL:http://www.jst.go.jp/pr/jst-news/1997/1998-2.html>
本発明は、上述した問題に鑑み、原子または分子スケールの表面上に、充分に組織化された構造を容易に構築することができる方法を提供することを目的とする。具体的には、一方向に成長させて所定長さの単一分子ワイヤを容易に製造する方法、その方法により製造される分子ワイヤ、表面上に複数の分子ワイヤが密集して製造されることにより形成される分子膜を提供することを目的とし、それに加え、分子ワイヤまたは分子膜を使用した電子素子を提供することも目的とする。
本発明は、電極表面の原子配列に沿って単一共役ポリマーワイヤを着実に成長させる電気化学エピタキシャル重合という新規な製造技術を採用することで達成できることを見出した。上記課題は、本発明の分子ワイヤの製造方法、該方法により製造される分子ワイヤ、分子膜および電子素子を提供することにより達成される。
すなわち、本発明の請求項1の発明によれば、ハロゲンを含む共役モノマー溶液中に導電性基板を浸漬し、前記導電性基板の表面に前記ハロゲンを吸着させるステップと、
前記導電性基板を電極として、該導電性基板に第1パルスを印加し、前記ハロゲンが吸着された該導電性基板の表面に前記共役モノマーが2つ以上重合したオリゴマーを生成させるステップと、
前記導電性基板に第2パルスを印加し、前記ハロゲンが吸着された該導電性基板の表面に沿って前記オリゴマーに前記共役モノマーを重合させるステップとを含む、分子ワイヤの製造方法が提供される。
本発明の請求項2の発明によれば、前記共役モノマーを重合させるステップは、前記オリゴマーと重合した共役モノマーに、さらに共役モノマーを重合させることにより分子ワイヤを一方向に成長させるステップを含む分子ワイヤの製造方法が提供される。
本発明の請求項3の発明によれば、前記第1パルスは、前記導電性基板において前記オリゴマーの酸化ピークを示す電位となるように設定される電圧で、パルスの持続時間が50〜200ミリ秒とされ、前記第2パルスは、前記導電性基板において前記共役モノマーの酸化ピークを示す電位となるように設定される電圧で、パルスの持続時間が50〜200ミリ秒とされる分子ワイヤの製造方法が提供される。
本発明の請求項4の発明によれば、前記ハロゲンは、ヨウ素であり、前記共役モノマーは、チオフェン誘導体であることを特徴とする分子ワイヤの製造方法が提供される。
本発明の請求項5の発明によれば、前記ハロゲンを含む共役モノマー溶液は、0.05〜1ミリモル濃度の前記ハロゲンを含有することを特徴とする分子ワイヤの製造方法が提供される。
本発明の請求項6の発明によれば、前記共役モノマーは、3−ブトキシ−4−メチルチオフェン(BuOMT)モノマーであり、前記オリゴマーは、前記BuOMTモノマーが2つ以上重合した重合体である分子ワイヤの製造方法が提供される。
本発明の請求項7の発明によれば、前記第1パルスは、前記電圧が0.6〜0.8Vで、前記持続時間が150ミリ秒であり、前記第2パルスは、前記電圧が1.3〜1.5Vで、前記持続時間が150ミリ秒である分子ワイヤの製造方法が提供される。
本発明の請求項8の発明によれば、ハロゲンを含む共役モノマー溶液中に導電性基板を浸漬し、前記導電性基板の表面に前記ハロゲンを吸着させ、前記導電性基板を電極として、該導電性基板に第1パルスを印加し、前記ハロゲンが吸着された該導電性基板の表面に前記共役モノマーが2つ以上重合したオリゴマーを生成させ、前記導電性基板に第2パルスを印加し、前記ハロゲンが吸着された該導電性基板の表面に沿って前記オリゴマーに前記共役モノマーを重合させて製造される分子ワイヤであって、一方向に複数の前記共役モノマーが重合して形成された分岐していない直鎖状重合体であり、前記共役モノマーと同じ分子径であることを特徴とする分子ワイヤが提供される。
本発明の請求項9の発明によれば、前記ハロゲンは、ヨウ素であり、前記共役モノマーは、チオフェン誘導体であることを特徴とする分子ワイヤが提供される。
本発明の請求項10の発明によれば、前記共役モノマーは、3−ブトキシ−4−メチルチオフェン(BuOMT)モノマーであり、前記オリゴマーは、前記BuOMTモノマーが2つ以上重合した重合体であることを特徴とする分子ワイヤが提供される。
本発明の請求項11の発明によれば、前記分子ワイヤの長さが10nm〜75nmである分子ワイヤが提供される。
本発明の請求項12の発明によれば、ハロゲンを含む共役モノマー溶液中に導電性基板を浸漬し、前記導電性基板の表面に前記ハロゲンを吸着させ、前記導電性基板を電極として、該導電性基板に第1パルスを印加し、前記ハロゲンが吸着された該導電性基板の表面に前記共役モノマーが2つ以上重合した複数のオリゴマーを生成させ、前記導電性基板に第2パルスを印加し、前記ハロゲンが吸着された該導電性基板の表面に沿って前記複数のオリゴマーの各々に複数の前記共役モノマーを重合させることにより形成される分子膜が提供される。
本発明の請求項13の発明によれば、前記ハロゲンは、ヨウ素であり、前記共役モノマーは、チオフェン誘導体であることを特徴とする分子膜が提供される。
本発明の請求項14の発明によれば、前記共役モノマーは、3−ブトキシ−4−メチルチオフェン(BuOMT)モノマーであり、前記オリゴマーは、前記BuOMTモノマーが2つ以上重合した重合体であることを特徴とする分子膜が提供される。
本発明の請求項15の発明によれば、ハロゲンを含む共役モノマー溶液中に導電性基板を浸漬し、前記導電性基板の表面に前記ハロゲンを吸着させ、前記導電性基板を電極として、該導電性基板に第1パルスを印加し、前記ハロゲンが吸着された該導電性基板の表面に前記共役モノマーが2つ以上重合したオリゴマーを生成させ、前記導電性基板に第2パルスを印加し、前記ハロゲンが吸着された該導電性基板の表面に沿って前記オリゴマーに前記共役モノマーを重合させることにより形成される分子ワイヤまたは分子膜を含む電子素子が提供される。
本発明の請求項16の発明によれば、前記ハロゲンは、ヨウ素であり、前記共役モノマーは、チオフェン誘導体であることを特徴とする電子素子が提供される。
本発明の請求項17の発明によれば、前記共役モノマーは、3−ブトキシ−4−メチルチオフェン(BuOMT)モノマーであり、前記オリゴマーは、前記BuOMTモノマーが2つ以上重合した重合体であることを特徴とする電子素子が提供される。
本発明の請求項18の発明によれば、前記電子素子は、絶縁層に挟まれた導電層を備える基板と、前記基板上に離間して形成される2つの電極と、前記2つの電極を電気的に接続する前記導電構造とを含む有機電界効果トランジスタである電子素子が提供される。
本発明の分子ワイヤの製造方法および分子ワイヤおよび分子膜を提供することにより、共役ポリマーをベースとした分子スケールの電子素子を大量生産することが可能となる。また、本発明の分子ワイヤおよび分子膜を提供することにより、例えば、極めて小さい電極間を分子ワイヤで接合した、高性能で微細なFETの製作が可能となる。さらに、本発明の分子ワイヤおよび分子膜および電子素子を提供することにより、微細な有機発光素子、極めて薄いフィルムディスプレイ、変形可能なFETや変形可能な光検出器などの製作が可能となる。
本発明は、上述した電気化学エピタキシャル重合という新規な技術を採用して分子ワイヤを製造する方法である。この技術を採用することにより、様々な共役モノマーを、密度、長さ、方向、形状を調整しながら、単一共役ポリマーワイヤを製造することができる。この電気化学エピタキシャル重合は、以下の特徴を有する。
(a)高密度の単一共役ポリマーワイヤを、基板の広いエリア上に大量に製造することができる。
(b)様々な種類のモノマーを採用することができる溶液プロセスである。
(c)キラル分子を使用することにより、新規な構造を構築することができる。
(d)電気化学の使用により、単一ポリマー螺旋構造中へのドープが簡単である。
本発明は、ハロゲンを含む溶液中でモノマーを電気化学重合させることをベースとしている。具体的には、ハロゲンを含む共役モノマー溶液中に導電性基板を浸漬させ、ハロゲンを導電性基板の表面に吸着させた後、その導電性基板を電極として、パルスを印加することにより、ハロゲンが吸着された導電性基板の表面に沿って、高密度の組織化された単一共役ポリマーワイヤを製造するものである。このように、電気化学を使用し、基板上で共役モノマーを重合させ、基板表面に沿って成長させることから、電気化学エピタキシャル重合ということができる。また、本発明は、単一共役ポリマーワイヤを高密度に形成させることにより、複数の単一共役ポリマーワイヤからなる分子膜を製造することもできる。以下、分子ワイヤの製造方法について説明する。
まず、本発明に用いることができるモノマーとしては、多くの種類のモノマーを使用することができ、共役モノマーであればいかなるモノマーでもよく、例えば、チオフェン、フルオレン、ピロール、フラン、セレノフェン、パラフェニレン、ナフタレン、アントラセン、ピレン、アズレン、パラフェニレンスルフィド、パラフェニレンオキシド、アニリン、ビニレンスルフィド、これらの誘導体、これらの混合物を挙げることができる。本発明で採用する電気化学エピタキシャル重合では、ハロゲンが吸着された導電性基板の表面に付着させるため、ハロゲンに良好に付着することができるヘテロ原子を含む共役モノマーが好ましく、特に硫黄原子を含有する、チオフェン、チオフェンアルデヒド、チオフェンカルバルデヒド、チオフェンカルボン酸、チオフェン酢酸、チオフェンメタノール、アルキルチオフェンといったチオフェン誘導体が好ましい。具体的には、電気化学重合されたポリマーがジクロロメタン(DCM)中に極度に可溶であり、他のチオフェン誘導体とは異なり、電極上に容易に不溶沈殿物を形成しない下記式1で表される3−ブトキシ−4−メチルチオフェン(BuOMT)や、下記式2で表される3,3−ジブチル−3,4−ジヒドロ−2H−チエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキセピン(DBuPDOT)、下記式3で表される3−オクチルチオフェン、下記式4で表されるキラル置換基(式中星印で示す。)を有する3−[(s)−2−メチルブトキシ]−4−メチルチオフェン(MBuOMT)などを挙げることができる。
溶媒としては、共役モノマーを溶解することができるものであれば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、臭化エチル、臭化ブチルといったハロゲン化炭化水素系溶剤や、ペンタン、ヘキサン、へプタン、オクタンといった炭化水素系溶剤や、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノールといったアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチルといったエステル系溶剤、エチレングリコール、グリセリン、プロパンジオールといった多価アルコール類などの有機溶媒を用いることができる。また、共役モノマー溶液は、導電性を付与するために電解質を含むことができ、電解質としては、カルボン酸、スルホン酸、酢酸、乳酸、ベンゼンスルホン酸、クエン酸、メタクリル酸、フルオロリン酸などの有機酸、その塩、リン酸や塩酸などの無機酸、テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート(NBuPF)などの無機酸塩を挙げることができる。
ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アスタチンであるが、有機溶媒に容易に溶解させることができる液体または固体であることが好ましく、特に、ヨウ素が好ましい。ハロゲンを含む共役モノマー溶液は、ハロゲンを少なくとも0.05ミリモル濃度以上含有することが好ましく、0.05〜1ミリモル濃度含有することがより好ましい。ハロゲンは、導電性基板を浸漬させると、その表面に吸着するが、溶液中のハロゲン濃度が0.05ミリモルより少ない場合、導電性基板を浸漬させても、充分なハロゲンが導電性基板の表面に吸着しないためである。ここで、充分な吸着とは、導電性基板の表面にハロゲンが吸着し、その表面を被覆することをいう。
また、共役モノマーは、例えば、1〜100ミリモル濃度含有させることができる。電解質は、溶液に導電性を与えるため、例えば、10〜1000ミリモル濃度含有させることができる。なお、共役モノマーおよび電解質は、上記値に限らず、必要な量を含有させることができる。
図1に、本発明に使用することができる装置を示す。図1に示す装置は、共役モノマー溶液を収容する容器10と、対電極(CE)11と参照電極(RE)12と作用電極(WE)13とからなる三電極と、作用電極13に正電圧パルスを印加するパルス発生手段14を備え、参照電極12と作用電極13との間の電圧が設定値になるように対電極11と作用電極13との間を流れる電流を制御する制御手段15と、作用電極13に流れる電流を測定する電流測定手段16と、参照電極12と作用電極13との間の電圧を測定する電圧測定手段17とを含んで構成される。一般に、作用電極13の電位は、参照電極12との電位差、すなわち電圧を電圧測定手段17で測定することにより得ることができる。具体的に制御手段15としては、ポテンショスタットを使用することができる。
対電極11および参照電極12としては、白金ワイヤなどの白金電極を使用することができる。一般に白金電極は、安定した酸化還元対にならないため、理想的な参照電極ではないが、本発明において白金電極を使用しても充分に再現可能であるため、参照電極12として使用することができる。その他、リチウム/リチウムイオン電極やカロメル電極などを使用することができる。本発明において作用電極13は、ハロゲンを二次元に密に吸着し、ハロゲン原子配列に沿って成長させるため、原子レベルで平坦な表面であることが好ましく、導電性材料としては、例えば、金、白金、銀、銅などを挙げることができる。本発明では、マイカに金を蒸着させたものを導電性材料として用いることができる。この材料は、結晶がある特定の方向に沿って割れたり、はがれたりして、平滑な面を現わす劈開したマイカを真空蒸着装置内に入れ、例えば、2.7×10−7Paの圧力および450℃の温度で、金を加熱蒸発させ、その蒸気をマイカ表面に薄膜状に付着させることにより作製することができる。
本発明の方法を、ハロゲンとしてヨウ素を用い、共役モノマー溶液としてBuOMT溶液を用いる場合について説明する。ヨウ素を含むBuOMT溶液と電解質としてNBuPFとを容器10に入れ、その溶液に対電極11、参照電極12、作用電極13を浸漬し、作用電極13表面にヨウ素を吸着させる。例えば、作用電極13を5〜10分浸漬することにより、作用電極13表面全体をヨウ素で被覆することができる。
ここで、参照電極12を浸漬させた時の電極の状態を、図2を参照して説明する。図2は、ヨウ素を含有しない共役モノマー溶液と比較して、ヨウ素を含有する共役モノマー溶液の参照電極12の電位がどの程度シフトするかを確認するために採用されるサイクリックボルタモグラフである。サイクリックボルタモグラフは、ポテンショスタットといった制御手段15で電位を掃引し、電流測定手段16によって電流を測定することにより、電流と電位との関係として得られるサイクリックボルタンメトリの測定結果を示すものである。図2中のAは、ヨウ素を含有する溶液の結果を示し、Bは、ヨウ素を含有しない溶液の結果を示す。なお、共役モノマー溶液は、電解質として0.1モル濃度のNBuPFを含むジクロロメタン(DCM)中に、共役モノマーとして10ミリモル濃度のBuOMTを含むものである。ヨウ素を含有する溶液は、0.1ミリモル濃度のヨウ素を含むものである。また、電位を変化させる速度である電位掃引速度は、1.0V/sである。横軸は、参照電極12に対する作用電極13の電位(V)を示し、縦軸は、作用電極13から参照電極12へと流れる電流(mA)を示す。図2に示す曲線において最大値が酸化ピークを示し、ヨウ素を含有することにより、この酸化ピークが約0.2Vほど小さくなる方向にシフトする。これは、参照電極12の表面上にヨウ素が吸着し、参照電極12の電位が変化したためである。したがって、ヨウ素を含む溶液において、作用電極13の電位をBで表される曲線の酸化ピークを示す約1.2Vにするためには、印加する電圧を約1.4Vにしなければならない。なお、酸化ピークを示すことは、溶液中に酸化力を有する種が存在することを意味する。
次にヨウ素の役割について説明する。ヨウ素を含まない溶液を使用して正電圧パルスを印加すると、図3(a)に示すように、約1.4Vのパルスでは、作用電極13の表面上にランダムな点構造しか形成されず、また、図3(b)に示すように、約1.6Vのパルスでは、ランダムな束状構造しか形成されなかった。しかしながら、ヨウ素を含む溶液を使用すると、図4に示すように、作用電極13の表面に沿って横たわるポリチオフェンワイヤを形成させることができた。このことから、ヨウ素は、作用電極13の表面に沿ってポリチオフェンワイヤを付着させるための接着剤としての役割を果たすことを見出した。したがって、導電性基板としての作用電極表面に沿って分子ワイヤを形成するためには、接着剤としての役割を果たすハロゲンを、電極表面を被覆するように充分に吸着させることが重要である。
本発明の方法では、次に、作用電極13に0.6〜0.8Vの電圧で、持続時間(電圧を1回印加する時間)50〜200ミリ秒の第1パルスを1回印加する。本発明では、一方向に延びる直線状の分子ワイヤをチオフェンモノマーの成長によって形成するために、その成長のための前駆体となる核を生成する必要があることを見出した。この核は、スペクトル分析によって吸収する光の波長がBuOMTモノマーが2つ以上重合した重合体と同様であったことから、オリゴマーであることを見出した。このオリゴマーは、電子受容体であるヨウ素によるBuOMTの酸化によって形成されたものと推定される。
ここで、オリゴマーは、チオフェンモノマーが2つ以上重合して一方向に延びた構造であるため、そのオリゴマーが配向性を有し、その後のモノマーの重合による成長方向を方向付けするものと推定することができる。しかしながら、本発明では、STM画像の解析により、分子ワイヤを付着する、作用電極13に吸着したヨウ素原子の原子間隔が変化していることから、この変化により、格子構造に沿って一方向に成長することを見出した。この変化を起こす推進力は、ヨウ素の被覆率と作用電極13の電位と考えられる。なお、核となるオリゴマーを生成しない場合には、作用電極13の表面に分子ワイヤは形成されない。
上記オリゴマーは、例えばモノマーが3つ重合したトリマーであり、BuOMTトリマーの場合、サイクリックボルタモグラフによれば、酸化ピークを示す電位が約0.5Vである。核となるこのトリマーを効果的に生成するためには、酸化ピークを示す電位が約0.5Vであり、参照電極12の電位の変化により約−0.2Vシフトすることから、約0.7Vの電圧の第1パルスを作用電極13に印加する必要がある。したがって、0.7Vの電圧を印加することが好ましいが、この場合には、0.6〜0.8Vの電圧の第1パルスを印加することができる。この第1パルスは、1回印加することで、複数のオリゴマーを生成することができるため、1回で充分である。しかしながら、本発明では、1回に限らず、複数回印加してもよい。
持続時間が50〜200ミリ秒といった短いパルスを印加することについて説明する。約1.4Vの電圧で、持続時間が2秒といった長いパルスを印加した場合には、ヨウ素を吸着させていない場合のサイクリックボルタンメトリの測定結果と同様のものとなった。これに対し、約150ミリ秒といった短いパルスを15回印加しても、ヨウ素を吸着させた時のサイクリックボルタンメトリの測定結果と同様であった。このことから、数十ミリ秒から数百ミリ秒といった短い持続時間のパルスであれば、吸着したヨウ素が大幅に脱着することはなく、数秒といった長い持続時間のパルスでは、ヨウ素が大幅に脱着し、作用電極13の表面が露出することを見出した。したがって、本発明では、上記短い持続時間のパルスを印加する必要があり、そのパルスの持続時間は、数十ミリ秒から数百ミリ秒といった短い持続時間であればいかなる時間であってもよいが、接着剤としての役割を担うハロゲンが大幅に脱着しない50〜200ミリ秒とすることが好ましい。パルスを複数印加する場合には、50〜200ミリ秒ごとに印加と停止とを繰り返すことができる。
本発明の方法では、次に、作用電極13に1.3〜1.5Vの電圧で、持続時間50〜200ミリ秒の第2パルスを少なくとも1回印加する。共役モノマーを重合させるためには、この共役モノマーのラジカルを生成しなければならない。BuOMTモノマーは、サイクリックボルタモグラフの酸化ピークが約1.2Vであり、BuOMTの酸化電位が約−0.2Vシフトすることから、このモノマーのラジカルを効果的に生成するためには、約1.4Vの電圧で第2パルスを印加する必要がある。したがって、1.4Vの電圧を印加することが好ましいが、この場合には、1.3〜1.5Vの電圧の第2パルスを印加することができる。この第2パルスの印加によってBuOMTモノマーのラジカルが生成される。ここで、BuOMTは、チオフェン環の3位にブトキシ基と4位にメチル基とを有しているため、ポリマー生成のために結合することができる反応位置は、2位と5位に限られる。この反応位置の限定により、直線状のポリマー構造を形成することができる。なお、成長して形成される分子ワイヤは、全体として見れば、直線状の分子ワイヤであるものの、詳細に見れば、完全な直線ではなく、ジグザグ構造または螺旋構造である。なお、分子ワイヤは、パルスを印加する回数に依存して成長させることができる。
また、作用電極13表面は、ヨウ素で被覆されているため、BuOMTモノマーのラジカルは、オリゴマーと反応して結合するとともにヨウ素に付着される。次に結合するBuOMTモノマーのラジカルは、オリゴマーに結合されたモノマーの一端に結合されるとともにヨウ素に付着される。このようにして、ヨウ素に付着した、一方向に延びるように成長した単一分子ワイヤを形成することができる。複数回のパルスを印加することで、所定長さに成長した分子ワイヤが、ヨウ素が吸着された作用電極13表面の格子構造に沿って形成される。上記第1パルスの印加では、複数のオリゴマーが生成され、ランダムに付着するため、その複数のオリゴマーを核として上記格子構造に沿って成長したすべての分子ワイヤは互いに平行に配列しない。しかしながら、分子ワイヤは、パルスの印加によって、ヨウ素が吸着された作用電極13の表面上の空いたスぺース、すなわち分子ワイヤが付着されていないスペースに密集するように形成されるため、数本の分子ワイヤが互いに平行に配列したものとなる。このように、空いたスペースに分子ワイヤが形成されることにより、高密度の組織化された構造を構築することができる。なお、第1パルスと同様、分子ワイヤを付着するヨウ素が脱着しないようにするため、パルスの持続時間は50〜200ミリ秒といった短い時間にする必要がある。
ここで、作用電極13に印加する第2パルスを5回、13回、15回と変えた場合のSTM画像を図4(a)〜(c)に示す。図4の各図の中には、20nmの目盛りが示されている。図4(a)に示すように、第2パルスを5回印加することで、平均10nmの長さの短い分子ワイヤが形成された。1つのモノマーの長さは、0.38nmである。また、図4(b)に示すように、第2パルスを13回印加することで、平均35nmの長さの分子ワイヤが形成された。これは、約10nmの短いワイヤと、約200個のモノマーが重合した約75nmの長いワイヤとを両方含むものであった。このことから、パルス数の増加によって、ワイヤ長さが長くなることが見出された。しかしながら、第2パルスを15回と回数を増加させても、図4(c)に示すように、約75nmの長いワイヤの長さは変化せず、約10nmの短いワイヤの数が増加した。これは、隣接する長いワイヤ間で摩擦を生じ、約75nmの最大長で成長が止まり、空いているスペースに短いワイヤが成長したためと考えられる。また、図4(a)〜(c)に示すように、単一のポリチオフェンワイヤは、表面上の一方向に沿って成長した。製造される単一ポリチオフェンワイヤはそれぞれ、一方向に成長するため、分岐していない直鎖状で、共役モノマーと同じ分子径であり、その長さは、図4(c)に示すように、約10nm〜約75nmである。
本発明の分子ワイヤ製造のメカニズムの理解を容易にするため、図5を参照してさらに説明する。図5は、分子ワイヤの製造メカニズムを示した図である。図5(a)は、ヨウ素を含む共役モノマー溶液に導電性基板を浸漬させたところを示した図である。図5(a)に示すように、溶液に基板20を浸漬させることで、基板20の表面にヨウ素21が吸着する。ヨウ素21は、基板20の表面を被覆するように二次元にそれぞれが隣接して吸着する。図5(b)は、基板20に第1パルスを印加したところを示した図である。図5(b)に示すように、第1パルスを印加することで、分子ワイヤの核となるオリゴマー23を生成する。図5(b)に示す実施の形態では、オリゴマー23は、3つのモノマー22が重合したトリマーとされており、ヨウ素21が吸着された基板20上に付着する。なお、オリゴマー23を構成する各モノマーがそれぞれ、ヨウ素21に付着する。詳細には、このオリゴマー23はラジカルとして付着しており、他のラジカルと反応して重合する。図5(c)は、基板20に第2パルスを印加したところを示した図である。図5(c)に示すように、第2パルスを印加することで、共役モノマー22をラジカルにし、そのラジカルをオリゴマー23と重合させる。なお、その重合したモノマーは、ヨウ素21に付着する。さらに第2パルスを印加することで、オリゴマー23に重合したモノマーと共役モノマー22とがさらに重合し、ヨウ素21に付着する。このようにして、複数の第2パルスを印加することにより、一方向に重合して成長した分子ワイヤ24を基板20上に形成することができる。なお、成長は、ヨウ素21が吸着された基板20上の格子構造に沿って行われるため、略直線状の単一分子ワイヤが形成される。
実際には、第1パルスを印加すると、核となるオリゴマー23が複数生成する。なお、第1パルスを複数印加することにより、さらに多くのオリゴマー23を生成させることができる。この複数のオリゴマー23が付着した基板20に、複数の第2パルスを印加することで、基板20上に複数の分子ワイヤ24を形成することができる。第2パルスを印加する回数を増加することにより、分子ワイヤが形成されていない空いたスペースに分子ワイヤ24を形成させることができ、これにより、分子ワイヤが密集した状態となり、分子膜を形成することができる。この分子膜は、複数の分子ワイヤから構成されており、分子ワイヤを構成する各分子が互いに重合しているため、電流を流すと、弾道型伝導を生じさせることができる。
これまで、共役モノマーをBuOMTとして説明してきたが、上述したその他の共役モノマーを使用することもできる。例えば、DBuPDOTであれば、3位と4位にプロピレンジオキシ基を有し、BuOMTと同様、直線状のポリチオフェンワイヤを形成することができる。このDBuPDOTモノマーから形成された分子ワイヤを、図6(a)に示す。図6(a)に示すように、DBuPDOTモノマーから形成された分子ワイヤは、BuOMTから形成される分子ワイヤに比べて短いものであった。なお、DBuPDOTモノマーの酸化ピークを示す電位は、約1.1Vであり、核としてDBuPDOTオリゴマーを生成する。そのDBuPDOTオリゴマーとして、例えばDBuPDOTトリマーの酸化ピークを示す電位は、約0.5Vである。したがって、ハロゲンとしてヨウ素を使用する場合、DBuPDOTトリマーを生成するために、第1パルスとして0.7Vの電圧を印加し、DBuPDOTモノマーを重合させるために、第2パルスとして1.3Vの電圧を印加することができる。3−オクチルチオフェンは、3位にのみオクチル基を有し、パルスを印加することにより生成される分子ワイヤは、図6(b)に示すように、曲がった形状であった。なお、3−オクチルチオフェンモノマーの酸化ピークを示す電位は、約1.2Vであり、核として3−オクチルチオフェンオリゴマーを生成する。その3−オクチルチオフェンオリゴマーとして、例えば3−オクチルチオフェントリマーの酸化ピークを示す電位は、約0.5Vである。したがって、ハロゲンとしてヨウ素を使用する場合、3−オクチルチオフェントリマーを生成するために、第1パルスとして0.7Vの電圧を印加し、3−オクチルチオフェンモノマーを重合させるために、第2パルスとして1.4Vの電圧を印加することができる。また、MBuOMTは、キラル置換基を有し、パルスを印加することにより生成される分子ワイヤは、図6(c)に示すように、新規な直線状の団粒構造であった。キラル置換基を有するポリチオフェンは、団粒構造を形成することがサイクリックダイクロイック分光器で確認された。なお、MBuOMTモノマーの酸化ピークを示す電位は、約1.4Vであり、核としてMBuOMTオリゴマーを生成する。そのMBuOMTオリゴマーとして、例えばMBuOMTトリマーの酸化ピークを示す電位は、約0.5Vである。したがって、ハロゲンとしてヨウ素を使用する場合、MBuOMTトリマーを生成するために、第1パルスとして0.7Vの電圧を印加し、MBuOMTモノマーを重合させるために、第2パルスとして1.6Vの電圧を印加することができる。本発明では、作用電極において酸化ピークを示す電位となる電圧をパルスとして印加することが好ましいが、第1パルスの印加でオリゴマーを生成することができるのであればその電圧に限らず、所定範囲の電圧を印加することができる。上記MBuOMTであれば、第1パルスの電圧は0.7Vに限らず、トリマーを生成することができる電圧範囲として、例えば、0.6〜0.8Vの電圧を印加することができ、第2パルスの電圧は1.6Vに限らず、カチオンラジカルを生成することができる電圧範囲として、例えば、1.5〜1.7Vの電圧を印加することができる。
本発明の分子ワイヤの製造方法は、上述したように、電気化学を使用するものであるため、ドーパントを溶解した溶液中に、分子ワイヤを付着した電極を浸漬させ、電圧を印加することで、容易にドーピングすることができる。ドーパントとしては、塩素、臭素、ヨウ素、フッ化ヨウ素といったハロゲン、五フッ化リン、塩化ホウ素、亜硫酸などのルイス酸、塩酸や硝酸などのプロトン酸、三塩化鉄、塩化チタン、塩化タンタル、フッ化モリブデン、塩化モリブデンなどの遷移金属化合物、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンといった電解質アニオン、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、カルシウムやバリウムなどのアルカリ土類金属を挙げることができる。本発明では、溶液中にハロゲンや電解質を含むため、特に、ドーパントを添加することなく、ドーピングすることができる。
本発明の分子ワイヤを使用した電子素子として、有機電界効果トランジスタ(FET)を例示する。これは例示であるので、本発明の電気素子はこれに限定されるものではない。FETは、第1絶縁層上に、イオンプレーティング、スパッタリング、スピンコートなどの物理蒸着(PVD)や化学反応を利用して薄膜を形成する化学蒸着(CVD)により導電層を形成することができる。第1絶縁層は、絶縁性を有する材料であればいかなるものであってもよく、例えば、酸化珪素、窒化珪素、ガラス、酸化アルミニウムなどを挙げることができる。導電層は、導電性を有する材料であればいかなるものであってもよいが、例えば、金、銀、白金、銅などを挙げることができる。このようにして作製した基板を、図1に示す容器10に浸漬させて基板表面にハロゲンを吸着させる。吸着させたハロゲンは、第2絶縁層を形成する。次に、基板に第1パルスを印加し、共役モノマーが2つ以上重合したオリゴマーを生成し、ハロゲン原子が吸着された基板上に付着させる。そして次に、第2パルスを印加し、共役モノマーのラジカルを生成させ、オリゴマーに重合させる。この際、ハロゲン原子にも付着する。第2パルスを複数回印加し、共役モノマーを重合させ、一方向に成長した直線状の分子ワイヤを形成させる。
次に、分子ワイヤの両端に、導電性を有する材料を、例えば、フォトリソグラフィを適用して電極を形成することができる。具体的には、電極を形成するための導電性材料を第2絶縁層上に形成し、その上に、スピンコータなどを使用してフォトレジストを塗布し、プリベークする。フォトマスクを通して紫外線を照射することで、フォトレジストを感光させ、現像液によって現像し、ポストベークすることで、フォトマスクパターンをレジストパターンに転写する。また、像形成プロセスにおいて、エキシマーレーザ(KrF、XeF、ArF)、電子線またはX線などによる直接描画プロセスを使用することができる。この際のフォトレジストとしては、ノボラック系レジスト、アクリル樹脂系レジスト、酸解離系フォトレジスト、無機系フォトレジストなどを使用することができる。続いて、湿式または乾式エッチング法、RIE(反応性イオンエッチング)法などによってレジストで被覆されていない部分を除去することにより、所望の形状の電極を得ることができる。ここで、形成されたFETの断面構造を図7に示す。図7に示すように、第1絶縁層30、導電層31、第2絶縁層32と積層された基板上に、2つの電極33、34が離間して形成され、2つの電極33、34を導通させるように分子ワイヤ35で配線している。本発明では、BuOMTを使用して形成される分子ワイヤ35は、最大約75nmであることから、電極間の距離を最大約75nmとしたFETを製造することができる。また、第1絶縁層30上に2つの電極33、34を設け、それらを分子ワイヤ35で配線し、その上に第2絶縁層32を設け、さらに上に導電層31を設けた構成とすることもできる。
FETの1つの製造方法を例示したが、これに限られるものではなく、その他これまで知られたいかなる方法でも採用することができる。また、FET以外にも、配線を必要とするいかなる電子部品にも適用することができる。分子ワイヤを吸着するヨウ素および金基板を除去して分子ワイヤのみを取り出し、第1絶縁層30、導電層31、第2絶縁層32からなる基板を作成し、次に2つの電極33、34を形成し、取り出した分子ワイヤ35を電極33と電極34とに接合させてFETを製造することもできる。また、分子ワイヤに代えて分子膜を使用することもでき、上記導電層31、上記2つの電極33、34を分子膜で形成することもできる。また、上記導電層および電極のほか、有機発光ダイオードの電極など導電性を必要とするいかなる箇所に分子膜を適用することができる。
本発明の分子ワイヤの製造方法により製造された分子ワイヤおよび分子膜は、極微デバイスを安価で、かつ大量生産することを可能にし、特に、微細で、変形可能な有機電界効果トランジスタ、変形可能な光検出器、微細な有機発光素子や薄いフィルムディスプレイに有用である。
本発明の分子ワイヤの製造方法に使用される装置を示した図。 BuOMTモノマー溶液のサイクリックボルタモグラフ。 ヨウ素を含まない溶液を使用した場合に形成される分子ワイヤのSTM画像。 本発明の方法で製造された分子ワイヤのSTM画像。 本発明の方法により製造される分子ワイヤの製造メカニズムを示した図。 本発明の方法により製造されるポリチオフェンワイヤのSTM画像。 本発明の電子素子としてFETの断面構造を示した図。
符号の説明
10…容器
11…対電極
12…参照電極
13…作用電極
14…パルス発生手段
15…制御手段
16…電流測定手段
17…電圧測定手段
20…基板
21…ヨウ素
22…モノマー
23…オリゴマー
24…分子ワイヤ
30…第1絶縁層
31…導電層
32…第2絶縁層
33、34…電極
35…分子ワイヤ

Claims (18)

  1. ハロゲンを含む共役モノマー溶液中に導電性基板を浸漬し、前記導電性基板の表面に前記ハロゲンを吸着させるステップと、
    前記導電性基板を電極として、該導電性基板に第1パルスを印加し、前記ハロゲンが吸着された該導電性基板の表面に前記共役モノマーが2つ以上重合したオリゴマーを生成させるステップと、
    前記導電性基板に第2パルスを印加し、前記ハロゲンが吸着された該導電性基板の表面に沿って前記オリゴマーに前記共役モノマーを重合させるステップとを含む、分子ワイヤの製造方法。
  2. 前記共役モノマーを重合させるステップは、前記オリゴマーと重合した共役モノマーに、さらに共役モノマーを重合させることにより分子ワイヤを一方向に成長させるステップを含む、請求項1に記載の分子ワイヤの製造方法。
  3. 前記第1パルスは、前記導電性基板において前記オリゴマーの酸化ピークを示す電位となるように設定される電圧で、パルスの持続時間が50〜200ミリ秒とされ、前記第2パルスは、前記導電性基板において前記共役モノマーの酸化ピークを示す電位となるように設定される電圧で、パルスの持続時間が50〜200ミリ秒とされる、請求項1または2に記載の分子ワイヤの製造方法。
  4. 前記ハロゲンは、ヨウ素であり、前記共役モノマーは、チオフェン誘導体であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の分子ワイヤの製造方法。
  5. 前記ハロゲンを含む共役モノマー溶液は、0.05〜1ミリモル濃度の前記ハロゲンを含有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の分子ワイヤの製造方法。
  6. 前記共役モノマーは、3−ブトキシ−4−メチルチオフェン(BuOMT)モノマーであり、前記オリゴマーは、前記BuOMTモノマーが2つ以上重合した重合体である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の分子ワイヤの製造方法。
  7. 前記第1パルスは、前記電圧が0.6〜0.8Vで、前記持続時間が150ミリ秒であり、前記第2パルスは、前記電圧が1.3〜1.5Vで、前記持続時間が150ミリ秒である、請求項6に記載の分子ワイヤの製造方法。
  8. ハロゲンを含む共役モノマー溶液中に導電性基板を浸漬し、前記導電性基板の表面に前記ハロゲンを吸着させ、前記導電性基板を電極として、該導電性基板に第1パルスを印加し、前記ハロゲンが吸着された該導電性基板の表面に前記共役モノマーが2つ以上重合したオリゴマーを生成させ、前記導電性基板に第2パルスを印加し、前記ハロゲンが吸着された該導電性基板の表面に沿って前記オリゴマーに前記共役モノマーを重合させて製造される分子ワイヤであって、一方向に複数の前記共役モノマーが重合して形成された分岐していない直鎖状重合体であり、前記共役モノマーと同じ分子径であることを特徴とする、分子ワイヤ。
  9. 前記ハロゲンは、ヨウ素であり、前記共役モノマーは、チオフェン誘導体であることを特徴とする、請求項8に記載の分子ワイヤ。
  10. 前記共役モノマーは、3−ブトキシ−4−メチルチオフェン(BuOMT)モノマーであり、前記オリゴマーは、前記BuOMTモノマーが2つ以上重合した重合体であることを特徴とする、請求項8または9に記載の分子ワイヤ。
  11. 前記分子ワイヤの長さが10nm〜75nmである、請求項10に記載の分子ワイヤ。
  12. ハロゲンを含む共役モノマー溶液中に導電性基板を浸漬し、前記導電性基板の表面に前記ハロゲンを吸着させ、前記導電性基板を電極として、該導電性基板に第1パルスを印加し、前記ハロゲンが吸着された該導電性基板の表面に前記共役モノマーが2つ以上重合した複数のオリゴマーを生成させ、前記導電性基板に第2パルスを印加し、前記ハロゲンが吸着された該導電性基板の表面に沿って前記複数のオリゴマーの各々に複数の前記共役モノマーを重合させることにより形成される、分子膜。
  13. 前記ハロゲンは、ヨウ素であり、前記共役モノマーは、チオフェン誘導体であることを特徴とする、請求項12に記載の分子膜。
  14. 前記共役モノマーは、3−ブトキシ−4−メチルチオフェン(BuOMT)モノマーであり、前記オリゴマーは、前記BuOMTモノマーが2つ以上重合した重合体であることを特徴とする、請求項12または13に記載の分子膜。
  15. ハロゲンを含む共役モノマー溶液中に導電性基板を浸漬し、前記導電性基板の表面に前記ハロゲンを吸着させ、前記導電性基板を電極として、該導電性基板に第1パルスを印加し、前記ハロゲンが吸着された該導電性基板の表面に前記共役モノマーが2つ以上重合したオリゴマーを生成させ、前記導電性基板に第2パルスを印加し、前記ハロゲンが吸着された該導電性基板の表面に沿って前記オリゴマーに前記共役モノマーを重合させることにより形成される分子ワイヤまたは分子膜を含む、電子素子。
  16. 前記ハロゲンは、ヨウ素であり、前記共役モノマーは、チオフェン誘導体であることを特徴とする、請求項15に記載の電子素子。
  17. 前記共役モノマーは、3−ブトキシ−4−メチルチオフェン(BuOMT)モノマーであり、前記オリゴマーは、前記BuOMTモノマーが2つ以上重合した重合体であることを特徴とする、請求項15または16に記載の電子素子。
  18. 前記電子素子は、絶縁層に挟まれた導電層を備える基板と、前記基板上に離間して形成される2つの電極と、前記2つの電極を電気的に接続する前記分子ワイヤまたは分子膜とを含む有機電界効果トランジスタである、請求項15〜17のいずれか1項に記載の電子素子。
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