JP2006063694A - プレストレストコンクリート用緊張材及びその緊張材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】1)長尺品の連続生産が可能。(2)トラック輸送が許容される径に巻き取り可能。(3)シースが破損し難い。(4)充填剤の充填を確実に行える。(5)シースに対する事前の充填剤封入が可能。の各特性を満たすプレストレストコンクリート用緊張材を提供する。
【解決手段】緊張、定着させてコンクリートにプレストレスを加えるPC鋼線、PC鋼より線などの心材2を有し、可撓性のあるその心材2の外周に充填剤3が塗布され、その充填剤3を塗布した心材2の外周に可撓性を有する金属シース4(図のそれはコルゲートシース)が設けられている巻き取り可能なプレストレストコンクリート用緊張材1を提供する。
【選択図】図1
【解決手段】緊張、定着させてコンクリートにプレストレスを加えるPC鋼線、PC鋼より線などの心材2を有し、可撓性のあるその心材2の外周に充填剤3が塗布され、その充填剤3を塗布した心材2の外周に可撓性を有する金属シース4(図のそれはコルゲートシース)が設けられている巻き取り可能なプレストレストコンクリート用緊張材1を提供する。
【選択図】図1
Description
この発明は、プレストレストコンクリートのポストテンション工法において、プレストレス導入後にコンクリートと一体化して使用するプレストレストコンクリート用緊張材とその緊張材の製造方法に関する。
プレストレストコンクリートのポストテンション工法では、コンクリートを打設する前にシースを配設し、コンクリート打設後にシース内にPC鋼材を挿入して緊張、定着させ、その後、PC鋼材とシースとの間にセメントミルクなどを注入し、これを硬化させてPC鋼材とコンクリートを付着、一体化させる。たとえば、下記特許文献1は、凝結遅延剤を添加したセメントグラウトを使用する方法を開示しており、この方法においてもセメントグラウトのシースへの注入をPC鋼材の挿入後に行っている。
PC鋼材挿入後に、シースにセメントグラウトを注入する上記の方法は、作業が非常に煩雑で多くの時間と労力を費やし、コストアップの原因になる。また、セメントグラウトの注入が不完全になってPC鋼材が腐食する可能性が生じる。この不具合をなくすために、下記特許文献2は、硬化剤の混合比率をコントロールして緊張、定着後に硬化するようにした樹脂をコンクリートにストレスを加える心材の外周に塗布し、その後、金属やポリエチレンなどの樹脂からなるシースを外周に施す方法を提案している。
ところが、この方法で使用する樹脂シースは、以下の問題を有している。
1)輸送時や配筋時にシースが外部部材と接触して損傷し易い。
2)損傷防止のためにシースの肉厚を厚くしたり、シースを保護したりするとコストに影響し、施工性も低下する。
3)ポリエチレンは、鉄に比べて弾性係数が低いため、コンクリートとの付着性が鉄よりも劣る。このため、コンクリートとの付着が要求されるグラウト工法や、アフターボンド工法では、シースをコンクリートに機械的に係止させる目的で設けるシース表面の凹凸を大きくする必要があり、その結果、充填剤の使用量が増えてコスト高となる。
4)樹脂シースは鉄と比べて熱伸縮量が大きいため、配筋後に縮む現象が発生し易い。そのために、シース端から鋼材が抜け出し、鋼材が露出する可能性も生じてくる。
5)樹脂シースは、溶融させた材料を心材の外周に押し出して被覆するので、PC鋼材やPC鋼より線を複数本束ねたマルチケーブルを使用する場合にはシース形状の安定確保が難しくなる。
1)輸送時や配筋時にシースが外部部材と接触して損傷し易い。
2)損傷防止のためにシースの肉厚を厚くしたり、シースを保護したりするとコストに影響し、施工性も低下する。
3)ポリエチレンは、鉄に比べて弾性係数が低いため、コンクリートとの付着性が鉄よりも劣る。このため、コンクリートとの付着が要求されるグラウト工法や、アフターボンド工法では、シースをコンクリートに機械的に係止させる目的で設けるシース表面の凹凸を大きくする必要があり、その結果、充填剤の使用量が増えてコスト高となる。
4)樹脂シースは鉄と比べて熱伸縮量が大きいため、配筋後に縮む現象が発生し易い。そのために、シース端から鋼材が抜け出し、鋼材が露出する可能性も生じてくる。
5)樹脂シースは、溶融させた材料を心材の外周に押し出して被覆するので、PC鋼材やPC鋼より線を複数本束ねたマルチケーブルを使用する場合にはシース形状の安定確保が難しくなる。
一方、金属シースは、樹脂シースに比べて強度に優れ、搬送、配筋時の損傷が起こり難い。しかしながら、長尺の管状金属シースを使用すると緊張材の巻き取りが困難になる。帯状の金属を螺旋状に巻きつけてシースを構成し、そのシースに心材を挿入した後に充填剤を注入すれば、巻き取り可能な緊張材が得られるが、この緊張材はシースの合わせ目すなわち帯状金属の重ね部から充填剤がもれ、コンクリートとの付着が期待できない場合がある。
このような事情から、市販の鋼製シースは、その長さを2〜4m程度と短くして搬送、取り扱い性を良くし、これをジョイントで接続して使用しているが、ジョイントによる接続部はクリアランスが大きくて充填剤が漏れ易いため充填剤を予め充填しておくことができず、建設現場での充填剤注入が必須になる。
建設現場での充填剤注入は、十分な設備が無いことに加えて天候による影響を受け易く、品質のバラツキ、コストアップ、工期遅延などの問題を生起させる。従って、現場での充填剤注入が不要で、しかも上記の他の諸問題も生じない緊張材が望まれるが、その要求に応えられるものが無かった。
特開2000−145018号公報
特公平5−69939号公報
この発明は、1)長尺品の連続生産が可能。(2)トラック輸送が許容される径に巻き取り可能。(3)シースが破損し難い。(4)充填剤の充填を確実に行える。(5)シースに対する事前の充填剤封入が可能(配筋時の充填剤注入が不要)。の各特性を満たす緊張材を実現して提供することを課題としている。
上記の課題を解決するため、この発明においては、緊張、定着してコンクリートにプレストレスを加えるPC鋼線、PC鋼より線などの可撓性のある心材を有し、その心材の外周に充填剤が塗布され、かつ、その充填剤を塗布した心材の外周に可撓性を有する金属シースが設けられている巻取り可能なプレストレストコンクリート用緊張材を提供する。金属シースは、その厚みを0.02mm〜1.0mm、より好ましくは0.02mm〜0.6mmにしたものが好ましい。
この緊張材は、長手方向に連続した管に螺旋の凹凸を施したコルゲートシースを金属シースとして用いると、トラック輸送が可能な直径2.5m以下の径での巻き取りを可能ならしめることができる。金属シースの両端にキャップを装着して未硬化状態の充填剤を金属シースの中に封入し、その後、ドラムなどに巻き取ったものを製品として出荷する。
充填剤は、緊張、定着後に硬化するように組成を調整した経時硬化性の充填剤、中でも、凝結遅延剤を添加したセメントグラウトが好ましい。
心材を収納したコルゲートシースの内部に充填剤が封入された上述のプレストレストコンクリート用緊張材は、
可撓性を有する緊張用の心材を連続的に供給してその心材の外周に充填剤を塗布する充填剤塗布工程、
充填剤を塗布した心材の外周にシース用金属板を環状に曲げ加工しながら供給し、曲げ加工した金属板の両側部を連続的に溶接してシームレス管を形成する金属シース施工工程、
得られたシームレス管に型付けローラで螺旋の凹凸を連続的に形成してコルゲートシースとなすシース成形工程、
シース成形工程を経た緊張材を巻き取り、所要長さに切断後、コルゲートシースの両端にキャップを装着する仕上げ工程を経て製造する。この発明は、このプレストレストコンクリート用緊張材の製造方法も併せて提供する。この方法では、外周に充填剤を塗布した心材を、可変絞り機構に通して充填剤の塗布量を調整し、しかる後、この心材を金属シース施工工程に送り込むと好ましい。
可撓性を有する緊張用の心材を連続的に供給してその心材の外周に充填剤を塗布する充填剤塗布工程、
充填剤を塗布した心材の外周にシース用金属板を環状に曲げ加工しながら供給し、曲げ加工した金属板の両側部を連続的に溶接してシームレス管を形成する金属シース施工工程、
得られたシームレス管に型付けローラで螺旋の凹凸を連続的に形成してコルゲートシースとなすシース成形工程、
シース成形工程を経た緊張材を巻き取り、所要長さに切断後、コルゲートシースの両端にキャップを装着する仕上げ工程を経て製造する。この発明は、このプレストレストコンクリート用緊張材の製造方法も併せて提供する。この方法では、外周に充填剤を塗布した心材を、可変絞り機構に通して充填剤の塗布量を調整し、しかる後、この心材を金属シース施工工程に送り込むと好ましい。
この発明の緊張材は、シースの内部に心材と充填剤を予め挿入しているので、現場での充填剤注入が不要であり、配筋の作業性に優れる。
また、金属シースを採用したので、樹脂シースを採用したものに比べると下記の利点が得られる。
(1)運搬、配筋時のシース損傷が起こり難い。
(2)金属シースは強度が高く、厚みが薄くてよいので、製品の直径を小さくして施工性を良くすることが可能になる。
(3)金属シースはコンクリートとの付着性に優れ、付着力を確保するための表面の凹凸を小さくすることができるので、製造の容易化とそれによるコスト低減が図れる。
(4)金属シースは樹脂シースよりも線膨張係数が小さいので端部の鋼材が露出することはない。
(1)運搬、配筋時のシース損傷が起こり難い。
(2)金属シースは強度が高く、厚みが薄くてよいので、製品の直径を小さくして施工性を良くすることが可能になる。
(3)金属シースはコンクリートとの付着性に優れ、付着力を確保するための表面の凹凸を小さくすることができるので、製造の容易化とそれによるコスト低減が図れる。
(4)金属シースは樹脂シースよりも線膨張係数が小さいので端部の鋼材が露出することはない。
なお、螺旋の凹凸を有するコルゲートシースを採用すると、金属シースの内部に心材と充填剤を挿入したものを汎用のドラムに巻き取って出荷することが可能になる。金属シースは、厚みが薄すぎると破れ易くなり、逆に厚すぎると剛性が高まって巻き取りが困難になるので、その厚みを0.02mm〜1.0mmにしたものが好ましい。
また、充填剤として、凝結遅延剤を添加したセメントグラウトを用いたものは、長期安定性が証明された無機系材料のみで緊張材を構成することができ、長期使用での信頼性が向上する。樹脂シースを溶融被覆する方法では、水分を含むセメントグラウトはシース被覆時の熱で水分が蒸発するので充填剤として使用することができないが、金属シースを用いればその問題は発生せず、エポキシ樹脂に比べてコスト面でも有利な凝結遅延剤を添加したセメントグラウトを使用することができる。
このほか、この発明の方法によれば、長尺緊張材の連続製造が可能になる。その連続製造によって短尺シースを接続する必要がなくなるので、配筋に要する時間と手間とコストが少なくなる。また、工場での大量生産が可能になるので、品質の安定化と量産によるコスト低減が可能になる。さらに、シースの形成が連続溶接によってなされるので、シースによる水密封止の信頼性も確保され、充填剤の漏れが起こらない。
この発明のプレストレストコンクリート用緊張材の実施形態を図1乃至図4に示す。図1のプレストレストコンクリート用緊張材1は、心材2の外周に充填剤3を塗布し、その外周を金属シース4で覆った構造になっている。
心材2は、緊張、定着してコンクリートにプレストレスを付与するためのものであり、PC鋼より線やPC鋼材によって形成されている。この心材2は、PC棒鋼よりもPC鋼より線が、緊張材の連続製造が可能であり、また、可撓性がよくて線さばき、挿入、曲げの作業がし易く、配筋時の施工性がよくて好ましい。この心材2のサイズは特に制限しないが、経済性や施工性を考慮すると、φ17.8mm〜φ28.6mmの太径のより線が特に好ましい。図示の心材2は、単線のPC鋼より線であるが、単心のPC鋼材であってもよいし、複数本のPC鋼より線を束ねたもの(図4のマルチケーブル参照)や複数本のPC鋼材を束ねたものなどであってもよい。
充填剤3は、用途に応じて、グリースなどの防食剤やエポキシアフターボンド樹脂、凝結遅延剤を添加したセメントグラウトなどを採用する。中でも、凝結遅延剤を添加したセメントグラウトは、安価であり、心材とセメントの一体化の効果も高くて好ましい。凝結遅延剤は、周知の超遅延硬化性グラウトに採用されているオキシカルボン酸ナトリウムなどでよい。凝結遅延剤を添加したセメントグラウトは、心材に対する付着性のよいものを使用する。
金属シース4は、鋼製コルゲートシースを採用している。例示の鋼製コルゲートシースは、セメントグラウトを塗布した心材2の外周に金属板を円筒状に巻いて被せた後、曲げ加工したたこの金属板の両側縁を長手方向の全域にわたって溶接してシームレス管を形成する。そして、その後に、シームレス管の外周に型付けローラで螺旋の凹部(谷)5aと螺旋の凸部(山)5bとからなる波5を連続的に形成して作られている。
この金属シース4の材料は特に制限されないが、耐食性に優れるステンレス鋼や耐食メッキを施した鋼などが好ましい。メッキは、心材であるPC鋼材の水素脆性破壊を招かない錫メッキなどが好ましい。また、金属シース4の厚みは、薄すぎるとシースが破れ易くなるので、下限を0.02mm程度にするのが好ましい。このシースの厚みの上限は、0.6mm程度がシースの可撓性を高め易く、緊張作業前に行うシースの余長切断も容易で好ましい。シースを不必要に厚くするとコストにも悪影響がでるので、上限は1.0mm以下にとどめるのがよい。
金属シース4の外形は特に制限されないが、アフターボンド工法に用いるシースは、シースの表面にコンクリートに対して機械的に係止する凹凸を付けるとコンクリートの付着性が良くなって好ましい。また、その凹凸は、例示の螺旋状凹凸がシースの可撓性を高める効果が高く、シースの連続製造による生産性向上も図れて好ましい。
図示の金属シース4に採用した波5は、緩やかなうねりを持つものになっているが、図2のように角張った波にすることも考えられる。図1の緊張材の金属シース4の波形状は、凹部5aの長さ(波の谷の幅)をL1、凸部5bの長さ(波の山の幅)をL2、心材2の直径をD、凹部の深さをTとしたとき、L1≦L2、(L1+L2)<D、T>D×1/2の各条件を併せて満たすものにしており、好ましいとした厚みのシース及びφ17.8mm〜φ28.6mmのPC鋼より線と組み合わせて、直径2.5m以下の巻き径でドラムなどに巻き取れる緊張材を得ることができる。
以上のほか、心材2が金属シース4の内部中心に配置されるようにしておくのも好ましい。例えば、図2、図3に示すように、金属シース4に設ける凹部5aの底にさらに第2凹部5cを設けると、この第2凹部5cがスペーサとして働いて心材2がシース中心に保持される。なお、図2、図3の第2凹部5cは螺旋を描いて周方向に連続しているもの、周方向に不連続で飛び飛びに設けられたものの2通りが考えられ、そのどちらであってもよい。
次に、この発明のプレストレストコンクリート用緊張材の製造方法を図5に基づいて説明する。図中6は充填剤塗布工程、7は金属シース施工工程、8はシース成形工程、9は仕上げ工程であり、この発明の緊張材の製造では以上の各工程を経る。
充填剤塗布工程6においては、コイル巻きされた心材2(PC鋼より線)を巻き戻して連続的に供給し、走行する心材2をタンク10内の充填剤(凝結遅延剤を添加したセメントグラウトなど)3に浸漬してこの心材2の外周に充填剤3を塗布する。その後、心材2をダイス11に通し、外周に塗布された充填剤3の量を調整する。
充填剤3は、ダイス11で塗布量を粗調整した後、可変絞り12でしごいて再調整を行うと緊張材の仕様変更に対応でき、塗布量も安定する。また、充填剤3がセメントグラウトの場合には、加湿ゾーン13を設けてタンク10の入り口部から可変絞り12の出口部までの区間を加湿できるようにしておくとさらに好ましい。加湿ゾーン13を併設すると、水分の蒸発によってグラウトの塗布や余剰グラウトのしごき取りが困難になることを、加湿を行って防止することができる。
金属シース施工工程7においては、コイル巻きされたシース用金属板4Aを巻き戻して可変絞り12を通過した心材2の外周に供給する。このシース用金属板4Aは、図示しない成形型に引き込んで充填剤を塗布した心材2の外周を連続的に包むように環状に曲げ加工する。また、曲げ加工した金属板4Aの両側部をシームレス溶接機14で長手方向に連続的に溶接して心材2と充填剤を封入し、水密性に優れたシームレス管4Bを形成する。
その後、シース成形工程8において、シームレス管4Bに型付けローラ15で螺旋の凹部5aと凸部5bとからなる波5を連続的に形成し、シームレス管4Bを巻き取り可能なコルゲートシースとなす。
金属シース4は、曲げ加工した金属板4Aの両側部をかしめ固定することも考えられるが、シームレス溶接したものが水密性に優れる管を形成できて好ましい。また、この方法での溶接速度は、可変絞り12による絞り速度と連動するようにしておくと好ましい。さらに、波5の成形は例示の型付けローラ15を用いて行うと連続成形が可能になって生産性が向上する。
シース成形工程8を通過した緊張材1は、仕上げ工程9において、コイル状に巻き取り、計尺、切断機16で所要の長さに計尺して切断し、金属シース4の端部に内部の心材と充填剤を封入するキャップを装着して出荷する。緊張材1の切断はインライン切断も可能であるが、計尺、切断機をシース切断用のカッタと組み合わせて用いるのが好ましい。
線径D=21.8mmのPC鋼より線をタンク内に引き通してここでPC鋼より線の外周に凝結遅延剤を添加したセメントグラウトを厚さが3mmとなるように塗布し、次いで、厚さ0.8mmの鉄板をPC鋼より線の外周に長手方向に連続して巻き付け、その鉄板の継ぎ目(両側部)を連続的に溶接した後、得られたシームレス管にローラダイスで図1のL1=1mm、L2=7mm、T=2.3mmの螺旋の凹部5aと凸部5bとからなる波を形成した。その結果、直径1m〈半径50cm〉の巻き胴に巻き付けられる可撓性を有したプレストレストコンクリート用緊張材を得ることができた。なお、セメントグラウトは、各実施例、比較例とも、低熱ポルトランドセメントと、石灰石微粉末と、水溶性セルロースエーテルを主成分とする増粘剤と、同じく水溶性セルロースエーテルを主成分とする粘性調整剤と、凝結遅延剤としてのオキシカルボン酸ナトリウムと、水を混合したものを使用した。
線径D=21.8mmのPC鋼より線に凝結遅延剤を添加したセメントグラウトを厚さが3mmとなるように塗布した後、セメントグラウトの外周に樹脂シースとなる加熱溶融したポリエチレン(PE)樹脂を1.5mm厚さに被覆したところ、セメントグラウトに含まれる蒸発成分がPEシース内で蒸発、膨張し、PEシースが膨れて形状の安定したシースが得られなかった。
PC鋼材の配筋作業として、条件の厳しいPC橋の横締めに緊張材を使用する場合を想定し、桁の内部に緊張材を配線するときのプレストレストコンクリート用緊張材の最小曲げ半径を求める試験を実施した。
線径D=21.8mmのPC鋼より線と線径D=15.2mmのPC鋼より線を3本集合させたマルチケーブルにそれぞれ、凝結遅延剤を添加したセメントグラウトを厚さが3mmとなるように塗布した後、表1に示す厚みの鉄板をPC鋼より線の外周に長手方向に連続して巻き付け、その鉄板の継ぎ目(両側部)を連続的に溶接した。そして、得られたシームレス管にローラダイスで図1のL1=1mm、L2=7mm、T=2.3mmの螺旋の凹部5aと凸部5bとからなる波5を形成する手順を経てプレストレストコンクリート用緊張材を製造した。また、金属シースに代えてPEシースを被覆することも試みた。
これらの試作緊張材を用いた試験は、図6に示すように、作業者Mがプレストレストコンクリート用緊張材1を持ち上げてターンさせて床板17に設けた空間18に挿入し、このときの緊張材1の曲げ半径rを求めた。
その結果、曲げ半径1.5mで空間18に挿入できるプレストレストコンクリート用緊張材を得ることができた。なお、厚みが0.01mmの金属シースは作業時に破れた。また、2mmの厚みを有する金属シースを用いた緊張材は、剛性は高くて人力では曲げることができなかった。
1 緊張材
2 心材
3 充填剤
4 金属シース
4A 金属板
4B シームレス管
5 波
5a 凹部
5b 凸部
5c 第2凹部
6 充填剤塗布工程
7 金属シース施工工程
8 シース成形工程
9 仕上げ工程
10 タンク
11 ダイス
12 可変絞り
13 加湿ゾーン
14 シームレス溶接機
15 型付けローラ
16 計尺、切断機
17 床板
18 空間
2 心材
3 充填剤
4 金属シース
4A 金属板
4B シームレス管
5 波
5a 凹部
5b 凸部
5c 第2凹部
6 充填剤塗布工程
7 金属シース施工工程
8 シース成形工程
9 仕上げ工程
10 タンク
11 ダイス
12 可変絞り
13 加湿ゾーン
14 シームレス溶接機
15 型付けローラ
16 計尺、切断機
17 床板
18 空間
Claims (8)
- 緊張、定着させてコンクリートにプレストレスを加えるPC鋼線、PC鋼より線などの可撓性のある心材を有し、その心材の外周に充填剤が塗布され、その充填剤を塗布した心材の外周に可撓性を有する金属シースが設けられている巻取り可能なプレストレストコンクリート用緊張材。
- 前記充填剤が、緊張定着後に硬化するように組成を調整した経時硬化性の充填剤であることを特徴とする請求項1に記載のプレストレストコンクリート用緊張材。
- 前記硬化性充填剤が、凝結遅延剤を添加したセメントグラウトであることを特徴とする請求項2に記載のプレストレストコンクリート用緊張材。
- 前記金属シースが、シームレス管に螺旋の溝を施して得られるコルゲートシースであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のプレストレストコンクリート用緊張材。
- 前記金属シースの厚みを0.02mm〜1.0mmにしたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のプレストレストコンクリート用緊張材。
- 前記金属シースの両端にキャップを装着して未硬化状態の前記充填剤を金属シースの中に封入した請求項1乃至5のいずれかに記載のプレストレストコンクリート用緊張材。
- 可撓性を有する緊張用の心材を連続的に供給してその心材の外周に充填剤を塗布する充填剤塗布工程、
充填剤を塗布した心材の外周にシース用金属板を環状に曲げ加工しながら供給し、曲げ加工した金属板の両側部を連続的に溶接してシームレス管を形成する金属シース施工工程、
得られたシームレス管に型付けローラで螺旋の凹凸を連続的に形成してコルゲートシースとなすシース成形工程、
シース成形工程を経た緊張材を巻き取り、所要長さに切断後、コルゲートシースの両端にキャップを装着する仕上げ工程、
を経て心材を収納したコルゲートシースの内部に充填剤が封入された構造の緊張材を得るプレストレストコンクリート用緊張材の製造方法。 - 外周に充填剤を塗布した心材を、可変絞り機構に通して充填剤の塗布量を調整し、しかる後、この心材を金属シース施工工程に送り込むことを特徴とする請求項7に記載のプレストレストコンクリート用緊張材の製造方法。
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