JP2006063366A - 熱交換器の炭素鋼配管の防食方法 - Google Patents

熱交換器の炭素鋼配管の防食方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 配管系、特に熱交換器の配管に用いられる炭素鋼配管の防食を一層確実にすることを目的とし、それにより配管の寿命延長、保守点検の工数削減を達成する。
【解決手段】 冷却水に、アミノトリメチレンホスホン酸(ATMP)と2価の金属イオン(M2+)を添加して炭素鋼配管の防食を行うに当たり、アミノトリメチレンホスホン酸と2価の金属イオンのモル比M2+/ATMPを2〜6に調整するとともに、アミノトリメチレンホスホン酸の濃度を質量比で50ppm以上の濃度とする。上記発明において、2価の金属イオンを亜鉛イオンとすること、冷却水を質量比で、塩化ナトリウム(30〜150ppm、次亜塩素酸ナトリウム0.5〜1.5ppmを含有するものとすることまた、アミノトリメチレンホスホン酸の濃度を50〜250ppmとすることが好適である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、配管系の防食方法、特に熱交換器の配管に用いられる炭素鋼配管の防食方法に係り、なかでもホスホン酸系インヒビターを用いる炭素鋼配管の防食方法に関する。
化学プラントの熱交換器には、一般に工業用水が冷却水として用いられる。この冷却水は循環使用され、80ppm以下の塩化ナトリウム(NaCl)を含むほか、スライム付着防止のため1ppm以下の次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)が添加されている。この塩化ナトリウムや次亜塩素酸ナトリウムは、熱交換器の配管材料である炭素鋼の腐食原因となるため、それを防止するために冷却水中にインヒビターが添加される。
このインヒビターとしては、酸化皮膜型、沈殿皮膜型、吸着皮膜型の3種があるが、上記熱交換器の冷却水用には、非特許文献1に記載されているように、酸化皮膜型と沈殿皮膜型の双方の機能を有するホスホン酸系インヒビター、特にアミノトリメチレンホスホン酸(ATMP)が広く用いられている。また、非特許文献2、3には、上記ホスホン酸系インヒビターは、2価の金属イオン、たとえばZn2+と併用すると、錯体を形成して防食効果が上昇することが示されている。また、特許文献1には、防食剤(インヒビター)としてホスホン酸系の化合物を用い、スライムコントロール剤として次亜塩素酸を用いるときに冷却水中に5,5−ジアルキルヒダントイン化合物を含有させて防食剤(インヒビター)の酸化分解を抑制するという手段が開示されている。
特開2002−79260号公報 栗田工業薬品ハンドブック編集委員会編,薬品ハンドブック J. Telegdi et al.: Electrochimica Acta, 46, 3791 (2001) S. Rajendran et al.: Corrosion Science, 43, 1345 (2001)
しかしながら、上記ATMPをインヒビターとして添加しても、流路の拡大部や弁付近においてはなお腐食が生じることがある。本発明は、このような配管系、特に熱交換器の配管に用いられる炭素鋼配管の防食を一層確実にすることを目的とし、それにより配管の寿命延長、保守点検の工数削減を達成することを目的とする。
本発明においては、冷却水に、アミノトリメチレンホスホン酸(ATMP)と2価の金属イオン(M2+)を添加して炭素鋼配管の防食を行うに当たり、アミノトリメチレンホスホン酸(ATMP)と2価の金属イオン(M2+)のモル比M2+/ATMPを2〜6に調整するとともに、アミノトリメチレンホスホン酸(ATMP)の濃度を質量比で50ppm以上の濃度とする。
上記発明において、2価の金属イオン(M2+)として亜鉛イオン(Zn2+)を選択するのが好適であり、また冷却水は質量比で、塩化ナトリウム(NaCl)30〜150ppm、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)0.5〜1.5ppmを含有するものであることが好ましい。また、この場合、アミノトリメチレンホスホン酸(ATMP)の濃度が50〜250ppmであることが好適である。
本発明により、液静止下のみならず、液流動化においても最適の条件で防食皮膜を形成することができる。そして、それによって従来インヒビターを添加しても、特に流路の拡大部や弁付近において生じることがあった腐食をほぼ完全に防止し得るようになり、配管の寿命延長、保守点検の工数削減が達成できる。
本発明は、工業用水を循環使用するために用いる配管系、特に炭素鋼が使用される配管系に広く利用することができる。なかでも、熱交換器の配管に用いられる炭素鋼配管に好適に利用することができる。
本発明において用いる冷却水は、通常の工業用水でよく、その純度は特に制限しない。一般に、工業用水に含有される塩化ナトリウムを80ppm以下含むことが許容されるほか、スライム付着防止のため次亜塩素酸ナトリウムが1ppm以下の添加されることも許容される。後に示すように、これら塩化ナトリウムや次亜塩素酸ナトリウムは、適量含有されているようにすることが防食皮膜の形成にとって好ましい影響をもたらす。
本発明においては、このような工業用水からなる冷却水に対して、アミノトリメチレンホスホン酸(ATMP)とともに2価の金属イオンを添加する。2価の金属イオンとしては、亜鉛のイオン(Zn2+)が好適に利用できる。亜鉛イオンのほか、亜鉛イオンと同程度のイオン半径を有し、アミノトリメチレンホスホン酸(ATMP)と錯体を形成し得る金属イオン、たとえば鉄イオン(Fe2+)、マグネシウムイオン(Mg2+)、コバルトイオン(Co2+)、ニッケルイオン(Ni2+)、クロムイオン(Cr2+)、銀イオン(Ag2+)が利用できる。これらの金属イオンはアミノトリメチレンホスホン酸と錯体を形成し、防食効果を増大させる働きを有する。
図1は、イオン交換水に質量比で塩化ナトリウム50ppm、次亜塩素酸ナトリウム0.5ppmを含有させた模擬工業用水を用い、これにアミノトリメチレンホスホン酸を50〜350ppm、塩化亜鉛を亜鉛イオンがモル比Zn2+/ATMPが1から6になるように添加し、さらに水酸化ナトリウムを添加して、pHを7.0、液温40℃、空気飽和を行った試験溶液を用いて、炭素鋼の浸漬腐食試験を行ったときの試験溶液のATMP濃度と質量損失との関係を、アミノトリメチレンホスホン酸(ATMP)と亜鉛イオン(Zn2+)のモル比Zn2+/ATMPをパラメータとして表したグラフである。
試験に用いた炭素鋼の化学組成(単位:質量%)は、表1に示すとおりであり、試験は、直径16mmの試験片を試験溶液中に72h浸漬した後に取り出す浸漬試験によって行い、評価は、試験片の質量損失の測定及び試験片表面の観察によって行った。
Figure 2006063366
図1から分るように、この浸漬試験の結果では、アミノトリメチレンホスホン酸(ATMP)と亜鉛イオン(Zn2+)のモル比Zn2+/ATMPが1の場合は、ATMPの濃度が150ppmまでは濃度の上昇に伴って質量損失が減少するが、150ppmを超えると却って質量損失が大きくなり、ATMPの濃度350ppmでは、インヒビターを添加しない場合と同程度になっている。これに対し、モル比Zn2+/ATMPが2以上の場合には、ATMPの濃度が50ppm以上において質量損失が0.1mg以下と非常に小さくなった。このことから、冷却水に、アミノトリメチレンホスホン酸(ATMP)と亜鉛イオン(Zn2+)を添加して炭素鋼配管の防食を行うに当たり、アミノトリメチレンホスホン酸(ATMP)と2価の金属イオン(M2+)のモル比M2+/ATMPを2〜6に調整するとともに、アミノトリメチレンホスホン酸(ATMP)の濃度を質量比で50ppm以上の濃度とすることが素鋼配管の防食のために非常に有効であることが分る。なお、モル比Zn2+/ATMPが大きくなりすぎると、特にATMPの濃度が高いときに冷却水が白濁することがあるので、モル比Zn2+/ATMPは6以下とするのがよい。
図2は本発明の効果を確認するために用いたすき間噴流法試験装置の模式説明図である。このすき間噴流法試験装置の試験部Aにおいては、試験溶液が孔径1.6mmのノズルから直径16mmの試験片表面に向かって0.4mmのすき間を満たしながら放射状に流れるようになっており、すき間では周辺に向かうにつれて流れ断面が増加するため、流速が次第に減速し、激しい乱れが生ずるようにようになっている(順流)。一方、試験部Bにおいては、上記試験部Aと逆の方向に試験溶液を流すようになっており、溶液流に全く乱れを生じさせない状態とすることができる(逆流)。試験溶液の流量は0.4l/min、試験時間は20hとした。また、腐食試験の評価は、試験片の質量損失の測定、試験片表面の観察及び表面粗さ計による浸食断面の測定によって行った。
図3は、前記と同様の試験片と試験溶液を用い、図2に示すすき間噴流法試験装置を用いて得たモル比Zn2+/ATMPを2〜6としたときの液流動下での試験溶液のATMP濃度と質量損失との関係を、アミノトリメチレンホスホン酸(ATMP)と亜鉛イオン(Zn2+)のモル比Zn2+/ATMPをパラメータとして現したグラフである。
図3から分るようにモル比Zn2+/ATMPの場合、ATMPの濃度の上昇とともに質量損失が少なくなり、さらにモル比Zn2+/ATMPが4以上の場合、ATMP濃度が50ppm以上において質量損失及び平均腐食速度がほぼ0となっている。このように、液流動下での腐食試験では、2価の金属イオン、たとえばZn2+の量を増加させることが効果的であり、具体的にはモル比M2+/ATMPを4以上とすることが望ましい。
図4は、前記と同様の試験片を用い、図2に示すすき間噴流法試験装置を用いて得たモル比Zn2+/ATMPを2〜6としたときの液流動下での試験溶液のATMA濃度と質量損失との関係を、試験溶液中の塩化ナトリウム及び次亜塩素酸ナトリウムの有無をパラメータとして現したグラフである。また、図5は、図2に示すすき間噴流法試験装置を用い、試験溶液(モル比Zn2+/ATMP:4、ATMP濃度:150ppm、NaClO濃度:0.5ppm)によって塩化ナトリウム濃度を200ppmまでに範囲で変動させたときの液流動下での塩化ナトリウム濃度と質量損失との関係を示すグラフであり、図6は、試験溶液(モル比Zn2+/ATMP:4、ATMP濃度:150ppm、NaCl濃度:50ppm)によって次亜塩素酸化ナトリウム濃度を2ppmまでに範囲で変動させたときの液流動下での次亜塩化酸ナトリウム濃度と質量損失との関係を示すグラフである。
ここに示されているように、液流動下においては、試験溶液中に塩化ナトリウム及び次亜塩素酸ナトリウムの有無により質量損失に対するアミノトリメチレンホスホン酸(ATMP)の濃度の影響が大きく異なっている。すなわち、試験溶液中に塩化ナトリウム及び次亜塩素酸ナトリウムを含有しない場合には、質量損失(平均腐食速度)がインヒビターとして用いたアミノトリメチレンホスホン酸の濃度にそれほど大きく影響されず、ほぼ質量損失が0.3〜0.4mgの範囲で推移するのに対し、試験溶液中に塩化ナトリウム30〜150ppm及び次亜塩素酸ナトリウム0.5〜1.5ppmを含有する場合には、インヒビターとして用いたアミノトリメチレンホスホン酸の量(濃度)に大きく依存し、アミノトリメチレンホスホン酸の濃度が50〜250ppmの範囲で質量損失がほぼ0.1mg以下となり、特に濃度150ppmの近傍では実質的に0となる。
図7は、上記図4に示す結果を得た試験片(試験後の順流試験片)の表面粗さ計による浸食断面の測定結果を示す。ここに示すように、モル比Zn2+/ATMPが2でありかつ、試験溶液に塩化ナトリウム及び次亜塩素酸ナトリウムを含有する場合(a)には、試験片表面全面に白い皮膜が形成され、試験片表面に深い浸食が形成されていた。これに対し、モル比Zn2+/ATMPが4でありかつ、試験溶液に塩化ナトリウム及び次亜塩素酸ナトリウムを含有する場合(b)には、試験片の中心部においても試験片表面が金属光沢を呈し、外周部には白色の沈殿物が付着し、試験片表面は極めて滑らかで深い浸食の形成は認められなかった。一方、モル比Zn2+/ATMPが4であるが試験溶液に塩化ナトリウム及び次亜塩素酸ナトリウムを含有しない場合(c)には、試験片の中心部近傍に白色の皮膜が形成されその部分に程度は軽度であるが、浸食が認められた。
したがって、本発明を実施するに当たっては、配管の腐食進行が特に流路の拡大部や弁付近において生じやすいことを考慮すると、上記すき間噴流法試験装置装置の順流試験で得られた結果を考慮して、冷却水を質量比で塩化ナトリウム(NaCl)30〜150ppm、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)0.5〜1.5ppmを含有するものとなるように調整するのが好ましく、またその際、インヒビターであるアミノトリメチレンホスホン酸(ATMP)の濃度を50〜250ppm、特に150ppm近傍とするのが最も好ましい。
このように、塩化ナトリウム及び次亜塩素酸ナトリウムを含有する場合において、特に順流条件で腐食進行が抑制される原因については、本発明の技術的範囲を制限するものではないが、以下のように考察される。すなわち、順流試験においては、試験片中心部には試験溶液である流体の乱れにより物質拡散が促進されるため、試験溶液中に塩化ナトリウム及び次亜塩素酸ナトリウムが存在する場合の方が良好な皮膜形成が促進されるのに対し、これらが存在しない場合には、皮膜形成が不完全であり、鉄(Fe)の溶出が進行したものと推定される。また、モル比Zn2+/ATMPの増大に伴い良好な皮膜が形成されることは、アミノトリメチレンホスホン酸と亜鉛との錯体が形成されていることを窺わせるものであるが、塩化ナトリウム及び次亜塩素酸ナトリウムは、この防食皮膜の形成に補助的に作用するものと推察される。たとえば塩化ナトリウムは、皮膜の均一化に寄与し、次亜塩素酸ナトリウムは少量であっても、皮膜形成の初期過程に関与するものと推定される。
試験溶液のATMA濃度と質量損失との関係を、アミノトリメチレンホスホン酸(ATMP)と亜鉛イオン(Zn2+)のモル比Zn2+/ATMPをパラメータとして現したグラフである。 本発明の模式的に示すすき間噴流法試験装置の模式図である。(a)は全体の概略図であり、(b)は噴流部の詳細図である。 図2に示すすき間噴流法試験装置を用いて得た液流動下での試験溶液のATMA濃度と質量損失との関係を、アミノトリメチレンホスホン酸(ATMP)と亜鉛イオン(Zn2+)のモル比Zn2+/ATMPをパラメータとして現したグラフである。 図2に示すすき間噴流法試験装置を用いて得た液流動下での試験溶液のATMA濃度と質量損失との関係を、試験溶液中の塩化ナトリウム及び次亜塩素酸ナトリウムの有無をパラメータとして現したグラフである。 試験溶液中の塩化ナトリウム濃度を変動させたときの液流動下での塩化ナトリウム濃度と質量損失との関係を示すグラフである。 試験溶液中の次亜塩素酸化ナトリウム濃度を変動させたときの液流動下での次亜塩化酸ナトリウム濃度と質量損失との関係を示すグラフである。 図4に示す結果を得た試験後の順流試験片の表面観察結果及び表面粗さ計による浸食断面の測定結果を示す図である。

Claims (4)

  1. 冷却水に、アミノトリメチレンホスホン酸(ATMP)と2価の金属イオン(M2+)を添加して炭素鋼配管の防食を行うに当たり、
    アミノトリメチレンホスホン酸(ATMP)と2価の金属イオン(M2+)のモル比M2+/ATMPを2〜6に調整するとともに、アミノトリメチレンホスホン酸(ATMP)の濃度を質量比で50ppm以上の濃度とすることを特徴とする炭素鋼配管の防食方法。
  2. 2価の金属イオン(M2+)は亜鉛イオン(Zn2+)であることを特徴とする請求項1記載の炭素鋼配管の防食方法。
  3. 冷却水は、質量比で塩化ナトリウム(NaCl)30〜150ppm、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)0.5〜1.5ppmを含有するものであることを特徴とする請求項1又は2記載の炭素鋼配管の防食方法。
  4. アミノトリメチレンホスホン酸(ATMP)の濃度が50〜250ppmであることを特徴とする請求項3記載の炭素鋼配管の防食方法。

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JP2013006173A (ja) * 2012-03-30 2013-01-10 Kurita Water Ind Ltd 船舶バラスト水の処理方法
JP2018154897A (ja) * 2017-03-21 2018-10-04 東京瓦斯株式会社 配管、給水システム及び給水方法

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