JP2005527179A - Tヘルパー−1細胞及びtヘルパー−2細胞並びにそれらに関連する疾患を確認及び調節するための組成物、キット、及び方法 - Google Patents

Tヘルパー−1細胞及びtヘルパー−2細胞並びにそれらに関連する疾患を確認及び調節するための組成物、キット、及び方法 Download PDF

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Abstract

本発明はTh1またはTh2細胞の分化、増殖および/または成熟を確認し、検出し、調節するための組成物、キット及び方法に関するものである。本発明はさらに、Th1またはTh2関連性疾患を見いだし、特徴づけ、阻止し、治療する組成物、キット及び方法にも関係する。種々のマーカー類において、一つ以上のマーカーの発現レベルの変化が、Th1またはTh2細胞の存在、またはTh1またはTh2関連性疾患の存在と相関関係にある前記種々のマーカーが提供される。

Description

【0001】
(関連出願)
この出願は、参考として本明細書にそのまま組み込まれる2000年5月18日出願の米国仮出願第60/205,204号に対する優先権を主張する。
【0002】
(発明の背景)
ナイーブT細胞からのエフェクターCD4T細胞の発生は、抗原に対する有効かつ適切な免疫反応の生成における重要な段階である。T細胞受容体が、抗原提示細胞(APC)上のMHCクラスII分子類の範囲にある特異的抗原を認識する際に、前駆体CD4T細胞の活性化が起きる。異なる病原体及び病的条件に反応して異質性の(heterogeneous)免疫反応が発生することは長い間認められてきた。サイトカイン産生プロフィールによって定義される2種類のCD4エフェクターT細胞の発見は、観察された免疫反応の異質性を一部分説明した(モスマン(Mosmann)ら(1986)J Immunol 136巻(7号);2348〜57ページ)。Tヘルパー1細胞(Th1細胞)は特異的にIFN−γ及びIL−2を産生し、そのうち前者は、一般的に細胞内病原体に反応して誘発される細胞仲介性免疫反応の発生に関係する主要サイトカインである。その上、Th1細胞は炎症性腸疾患、リウマチ性関節炎、多発性硬化症、及び乾癬等の炎症性疾患の病変に貢献する(リブロー(Liblau)ら(1995)Immunol Today 1995 16巻(1号):34〜8ページ)。Th2細胞はIL−4、IL−5及びIL−3を特異的に産生する。これらのサイトカイン類はB細胞の増殖及び分化を誘導することができ、体液性免疫反応のためのT細胞を補助する。Th2エフェクター細胞はアレルギーや喘息等の疾患状態と関係している(リブローら(1995)Immunol Today1995 16巻(1号):34〜8ページ)。
【0003】
10年以上前に2種類のTヘルパー細胞サブセットが確認されて以来、共通のナイーブ前駆体からこれら2種類の細胞型の分化を誘発する分子に多くの注目が集まった。ナイーブCD4T細胞前駆体からTh細胞を生成するin vitro分析は、分化において非常に重要な幾つかの分子類を決定する手段となる。in vivoで主としてマクロファージ及び樹状細胞によって産生するIL−12は、ナイーブCD4T細胞のTh1細胞への分化(これは多量のIFN−γの産生によって特徴づけられる)を誘導することが判明した(Hsieh(1993)Science 260巻:547〜549ページ;セダー(Seder)ら(1993)Proc.(Natl.Acad.Sci.USA 90巻(21号):10188〜92ページ;マネッティ(Manetti)ら(1993)J Exp Med 177巻(4号):1199〜204ページ)。Th2の分化はIL−4によって誘導されるが、Th2の分化をトリガーするIL−4の最初の起源はまだ不確実である。IL−4の考えられる細胞性起源は好塩基球、肥満細胞及びNK1.1CD4T細胞等である。これらは全てTh2仲介性細胞性免疫反応に存在する(セダー(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88巻:2835−2839;プラウト(Plaut)(1989)Nature 339巻:64〜7ページ;スコット(1990)J.Immunol.145巻:2183〜2188ページ)。
【0004】
近年、Th分化をもたらすシグナル伝達路の報告が現れ始めた。転写のシグナル トランスドューサー及びアクチベータ(STAT)−3及びSTAT4がIL−12によって活性化され、Th1分化に関係する転写因子であり、一方Th2分化はSTAT6のIL−4アクチベータに依存することが判明した(ヤコブソン(1995)J Exp Med 181巻:1755〜62ページ;カプラン(Kaplan)(1996)Immunity 4巻:313〜9ページ;シールフェルダー(Thierfelder)(1996)Nature 382巻(6587):171〜4ページ;シモダら(1996)Nature 380巻(6575):630〜3ページ;タケダ(1996)Nature 380巻(6575):627〜30ページ)。Th1細胞におけるIFN−γの産生はマイトジェン活性化プロテインキナーゼJNK2及びp38に依存することが示された(リンコン(Rincon)(1998)EMBO J.17:2817〜2829ページ)。STAT分子類に加えて、Th分化に関係する数種のその他転写因子が確認されている。転写因子ERMは、STAT−4に依存する仕方でIL−2によってTh1細胞に誘導されたが、STAT−4−欠乏T細胞ではIFN−γ産生を回復できなかった(オヤング(Ouyang)(1999)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96巻(7号):3888〜93ページ)。Tボックス転写因子であるT−betはIFN−γの発現をコントロールすることが最近証明され、Th2クローンを、IFN−γを発現するように方向を変えることができた(スザボ(Szabo)ら(2000)Cell 100巻(6号):655〜69ページ)。GATA−3、c−maf、NF−IL−6及びNIP−45転写因子は全て、IL−4の転写を誘発することが判明した(Zheng(1997)Cell 89巻:587〜596ページ;ツァング(Zhang)(1997)J.Biol.Chem.272巻(14号):9474〜80ページ;ホー(Ho)(1996)Cell 85巻:973〜983ページ;ホッジュ(1996)Science 274巻:1903〜1905ページ;ダビドフ(Davidov)(1995)J Immunol 155巻(11号):5273〜9ページ)。これらの研究はTh1及びTh2細胞の分化における重要なシグナル伝達メカニズムを或る程度洞察するものであるが、多くの未解決の問題が残っている。これまでの研究はナイーブCD4T細胞が6時間後にIL−12に反応してIFN−γ mRNAを産生し始め、48時間後に外因性IL−4に反応してIL−4 mRNAを産生し始めることを証明した(レダラー(Lederer)(1996)J Exp Med 184巻:397〜406ページ)。そのため、Th1及びTh2の発達に重要な分子類は、分化の最初の24〜48時間に発現するらしい。
【0005】
(発明の概要)
一実施形態において、本発明はTh1またはTh2細胞が或る対象に存在するかどうかを、対象からのサンプル中のマーカー(この場合マーカーは表2〜5及び表8〜10に示すマーカー群から選択される)の発現レベルを、対照サンプル中のマーカーの正常な発現レベルと比較することによって評価する方法を与える。この際上記対象からのサンプル中のマーカーの発現レベルと正常レベルとの間に有意差があることは、Th1またはTh2細胞がその対象に存在することの証拠である。好ましい実施の形態において、上記マーカーは転写されたポリヌクレオチドまたはその一部分である;この場合上記ポリヌクレオチドは上記マーカーを含む。特に好ましい実施形態において、サンプル中のマーカーの発現レベルはナイーブT細胞中の上記マーカーの正常な発現レベルとは最低2のファクターだけ異なり、さらに好ましい実施の形態では上記発現レベルは最低5のファクターだけ異なる。また別の好ましい実施の形態において、Th1またはTh2細胞の存在しない組織では上記マーカーは有意には発現しない。
【0006】
また別の好ましい実施の形態において、上記サンプルは対象から得た細胞を含む。また別の好ましい実施の形態において、上記サンプル中の上記マーカーの発現レベルは、上記マーカーに対応する蛋白の、サンプル中における存在を検出することによって評価される。特に好ましい実施形態において、上記蛋白の存在は上記蛋白と特異的に結合する試薬を用いて検出される。さらにより好ましい実施の形態では、上記試薬は抗体、抗体誘導体、及び抗体フラグメントを含む試薬群から選択される。また別の好ましい実施態様において、サンプル中のマーカーの発現レベルは転写されたポリヌクレオチドまたはその部分の、サンプル中における存在を検出することによって評価される;この場合上記転写されたポリヌクレオチドは上記マーカーを含む。特に好ましい実施の形態において、上記転写されたポリヌクレオチドはmRNAまたはcDNAである。また別の特に好ましい実施形態において、検出段階は上記転写されたポリヌクレオチドを増幅することをさらに含む。
【0007】
もう一つの好ましい実施の形態において、サンプル中の上記マーカーの発現レベルは、上記マーカーとアニーリングするか、または厳格なハイブリッド形成条件下でポリヌクレオチドの一部分とアニーリングする転写されたポリヌクレオチドの、サンプル中における存在を検出することによって評価される;この場合ポリヌクレオチドは上記マーカーを含む。また別の好ましい実施の形態において、表2〜5及び表8〜10に列挙したマーカーから独立的に選択した複数のマーカーの各々の、サンプル中における発現レベルを対照サンプルから得た同じタイプのサンプル中における上記複数のマーカーの各々の正常な発現レベルと比較する。ここで上記マーカー類の一つより多いマーカーの発現レベルが上記マーカー類の対応する正常な発現レベルに対して有意に変化している場合、それはTh1またはTh2細胞がそのサンプル中に存在する証拠である。特に好ましい実施の形態において、上記複数とは2種類以上のマーカーを含む。さらにより好ましい実施の形態において、上記複数とは表2〜5及び表8〜10に示されるマーカーを少なくとも5種類含む。
【0008】
また別の実施の形態において、本発明は対象におけるナイーブT細胞のTh1またはTh2細胞への分化をモニターする方法において、対象のサンプル中に先ず最初の時点にマーカーの発現を検出し(その場合マーカーは表2〜5及び8〜10に列挙したマーカーを含む群から選択される)、この検出段階をその後の時点に繰り返し、2検出段階で検出された発現レベルを比較し、対象におけるナイーブT細胞のTh1またはTh2細胞への分化をこの情報を用いてモニターする諸段階を含む前記方法を提供する。好ましい実施の形態において、上記マーカーは表2〜5及び表8〜10及びこれらの組み合わせに列挙されたマーカー類を含む群から選択される。また別の好ましい実施の形態において、上記マーカーは転写されたポリヌクレオチドに対応し、またはその部分に対応する(この際上記ポリヌクレオチドは上記マーカーを含む)。また別の好ましい実施の形態において、上記サンプルは上記対象から得た細胞類を含む。特に好ましい実施の形態において、細胞はリンパまたは血液組織から集められる。
【0009】
また別の実施の形態において、本発明は試験化合物または治療が対象におけるTh1またはTh2細胞の分化を調節する効果を評価する方法を提供し、上記方法は試験化合物または治療を受けるかまたはそれらの存在中に置かれた対象から得た最初のサンプル中のマーカー(このマーカーは表2〜5及び8〜10に列挙されたマーカー類を含む群から選択される)の発現を、上記対象から得た第二のサンプル中のマーカー(この第二のサンプルは試験化合物または治療を受けない)の発現に比較する段階を含む。第一サンプル中のマーカーの発現レベルが第二サンプル中のそれに比較して有意に低い場合、それは上記試験化合物または治療が上記対象のTh1またはTh2細胞の分化を効果的に調節することを示す。好ましい実施の形態において、第一及び第二サンプルは上記対象から得られた一つのサンプルの部分である。また別の好ましい実施の形態において、第一及び第二サンプルは上記対象から得られたプールされているサンプルの部分である。
【0010】
もう一つの実施形態において、本発明は試験化合物または治療が対象におけるTh1またはTh1細胞の分化を調節する効果を評価する方法を提供し、上記方法は上記試験化合物または治療の少なくとも一部を対象に提供する前に上記対象から得た第一サンプル中のマーカー(このマーカーは表2〜5及び8〜10に列挙されるマーカー類を含む群から選択される)の発現と、上記試験化合物または治療の上記部分を提供した後に対象から得た第二サンプル中のマーカーの発現とを比較する段階を含む。第二サンプル中のマーカーの発現レベルが第一サンプルに比較して有意に低い場合、それは試験化合物または治療が上記対象のTh1またはTh2細胞の分化を効果的に調節することの証拠である。
【0011】
また別の実施形態において、本発明は試験化合物または治療が、対象におけるTh1またはTh2細胞の増殖または成熟を調節する効果を評価する方法を提供し、上記方法は上記試験化合物または治療の少なくとも一部分を対象に提供する前に上記対象から得た第一サンプル中のマーカー(このマーカーは表2〜5及び8〜10に列挙されるマーカー類を含む群から選択され、IFNG、SCYA20、またはAPT1を含まない)の発現と、上記試験化合物または治療の上記部分を提供した後に上記対象から得た第二サンプル中のマーカーの発現とを比較することを含み、第一サンプル中のマーカーの発現レベルが第二サンプルに比較して有意に高い場合、それは上記試験化合物または治療が対象のTh1またはTh2細胞の増殖または成熟を効果的に調節することの証拠である。
【0012】
また別の実施形態において、本発明は試験化合物または治療が対象におけるTh1またはTh2細胞の増殖または成熟を調節する効果を評価する方法を提供し、上記方法は上記試験化合物または治療の少なくとも一部分を対象に提供する前に上記対象から得た第一サンプル中のマーカー(このマーカーは表2〜5及び8〜10に列挙されるマーカー類を含む群から選択され、IFNG、SCYA20、またはAPT1を含まない)の発現とを、上記試験化合物または治療の上記部分を提供した後に上記対象から得た第二サンプル中のマーカーの発現と比較することを含み、第二サンプル中のマーカーの発現レベルが第一サンプルに比較して有意に高い場合、それは上記試験化合物または治療が対象のTh1またはTh2細胞の増殖または成熟を効果的に調節することの証拠である。
【0013】
また別の実施形態において、本発明は対象におけるTh1またはTh2の分化を調節するための組成物を選択する方法を提供する;上記方法は対象から細胞を含むサンプルを得、上記サンプルの部分(複数)を別々に複数の試験組成物の存在下に維持し、これら部分の各々におけるマーカーの発現を比較し(この際マーカーは表2〜5及び8〜10に列挙されるマーカー類を含む群から選択される)、上記試験組成物を含む部分における上記マーカーの発現レベルを、その他の試験組成物に比較して低下させた試験組成物類の一つを選択する諸段階を含んでなる。
【0014】
もう一つの実施の形態において、本発明は対象におけるTh1またはTh2の分化を調節する組成物を選択する方法を提供し、前記方法は対象から細胞を含むサンプルを得、上記サンプルの諸部分を別々に複数の試験組成物の存在下に維持し、これら諸部分の各々におけるマーカーの発現を比較し(この際マーカーは表2〜5及び8〜10に列挙されるマーカー類を含む群から選択される)、上記試験組成物を含む部分における上記マーカーの発現レベルを、その他の試験組成物に比較して上昇させた試験組成物類の一つを選択する諸段階を含んでなる。
【0015】
また別の実施形態において、本発明は対象におけるTh1またはTh2の増殖または成熟を調節する組成物を選択する方法を提供する;上記方法は対象から細胞を含むサンプルを得、上記サンプルの諸部分を別々に複数の試験組成物の存在下に維持し、上記諸部分の各々におけるマーカーの発現を比較し(このマーカーは表2〜5および8〜10に列挙されるマーカー類を含む群から選択され、IFNG、SCYA20、またはAPT1を含まない)、上記試験組成物を含む部分におけるマーカーの発現レベルを、その他の試験組成物に比較して低下させる試験組成物類の一つを選択する諸段階を含んでなる。
【0016】
また別の実施形態において、本発明は対象におけるTh1またはTh2細胞の増殖または成熟を調節する組成物を選択する方法を提供し、上記方法は対象から細胞を含むサンプルを得、上記サンプルの諸部分を別々に複数の試験組成物の存在下に維持し、上記諸部分の各々におけるマーカーの発現を比較し(このマーカーは表2〜5および8〜10に列挙されるマーカー類を含む群から選択され、IFNG、SCYA20、またはAPT1を含まない)、上記試験組成物を含む部分におけるマーカーの発現レベルを、その他の試験組成物に比較して低下させる試験組成物類の一つを選択する諸段階を含んでなる。
【0017】
また別の実施形態において、本発明は対象におけるTh1またはTh2細胞の分化、増殖または発達を調節する方法を提供し、上記方法は、対象から細胞を含むサンプルを得、上記サンプルの諸部分を別々に複数の試験組成物の存在下に維持し、上記諸部分の各々におけるマーカーの発現を比較し(ここでマーカーは表2〜5及び8〜10に列挙されたマーカー類を含む群から選択される)、試験組成物を含む部分における上記マーカーの発現レベルを、その他の試験組成物に比較して上昇させる試験組成物の一つを選択する諸段階を含んでなる。
【0018】
また別の実施形態において、本発明は対象におけるTh1またはTh2細胞の分化、増殖または発達を調節する方法を提供し、上記方法は、対象から細胞を含むサンプルを得、上記サンプルの諸部分を別々に複数の試験組成物の存在下に維持し、上記諸部分の各々におけるマーカーの発現を比較し(ここでマーカーは表2〜5及び8〜10に列挙されたマーカー類を含む群から選択される)、試験組成物を含む部分における上記マーカーの発現レベルを、その他の試験組成物に比較して低下させる試験組成物の一つを選択する諸段階を含んでなる。
【0019】
また別の実施形態において、本発明は、Th1またはTh2細胞が対象に存在するかどうかを評価するためのキットであって、表2〜5及び8〜10に列挙されるマーカー類を含む群から選択されるマーカーの発現を評価する試薬を含むキットを提供する。
【0020】
また別の実施形態において、本発明は成熟Th1またはTh2細胞の存在を評価するためのキットを提供する。上記キットは核酸プローブを含み、その際上記プローブは、表2〜5及び8〜10に列挙されるマーカー類を含む群から選択されるマーカーに対応する転写されたポリヌクレオチドと特異的に結合する。
【0021】
また別の実施の形態において、本発明は24時間以下の時間分化したTh1またはTh2細胞の存在を評価するキットを提供し、上記キットは核酸プローブを含み、上記プローブは、表2〜5及び8〜10に列挙されたマーカー類を含むが、IFNG、SCYA20、またはAPT1を含まない群から選択されるマーカーに対応する転写されたポリヌクレオチドと特異的に結合する。
【0022】
また別の実施形態において、本発明は対象におけるTh1またはTh2の分化を調節するための複数の化合物の各々の適性を評価するためのキットを提供し、上記キットは複数の化合物と、表2〜5及び8〜10に列挙されたマーカー類を含む群から選択されるマーカーの発現を評価する試薬とを含む。
【0023】
また別の実施形態において、本発明は、抗体を含む、サンプル中のTh1またはTh2の存在を評価するためのキットを提供する。その際上記抗体は表2〜5及び8〜10に列挙されたマーカー類を含む群から選択されるマーカーに対応する蛋白と特異的に結合する。
【0024】
また別の実施形態において、本発明はサンプル中のTh1またはTh2細胞の存在を評価するためのキットを提供する。上記キットは核酸プローブを含み、上記プローブは表2〜5及び8〜10に列挙されたマーカー類を含む群から選択されるマーカーに対応する転写されたポリヌクレオチドと特異的に結合する。
【0025】
別の実施形態において、本発明は試験化合物がナイーブT細胞からのTh1またはTh2の分化をトリガーする能力を評価する方法であって、細胞類の別々の部分を試験化合物の存在下及び不在下に保持し、各部分におけるマーカー(上記マーカーは表2〜5及び8〜10に列挙されたマーカー類を含む群から選択される)の発現を比較する諸段階を含む方法を提供する;ここで試験化合物の存在下で保持された部分におけるマーカーの発現レベルが上記試験化合物の不在のもとに保持された部分に比較して有意に高い場合、それは上記試験化合物がナイーブT細胞からTh1またはTh2への分化をトリガーする能力を有することを示す。
【0026】
また別の実施形態において、本発明は試験化合物がナイーブT細胞からTh1またはTh2細胞への分化をトリガーする能力を評価する方法であって、細胞類の別々の部分を試験化合物の存在下及び不在下に保持し、各部分におけるマーカー(上記マーカーは表2〜5及び8〜10に列挙されたマーカー類を含む群から選択される)の発現を比較する諸段階を含む方法を提供する;ここで試験化合物の存在下で保持された部分におけるマーカーの発現レベルが上記試験化合物の不在のもとで保持された部分に比較して有意に低い場合、それは上記試験化合物がナイーブT細胞からTh1またはTh2細胞への分化をトリガーする能力を有することを示す。
【0027】
また別の実施形態において、本発明はナイーブT細胞のTh1またはTh2細胞への分化をトリガーする能力を評価するためのキットであって、細胞と、マーカーの発現を評価するための試薬(このマーカーは表2〜5及び8〜10に列挙されたマーカー類を含む群から選択される)とを含むキットを提供する。
【0028】
また別の実施形態において、本発明は、ナイーブT細胞のTh1またはTh2細胞への分化が所望される対象を治療する方法であって、Th1またはTh2関連疾患にかかっている対象の細胞に、表2〜5及び8〜10に列挙されたマーカー類から選択されるマーカーに対応する蛋白を与えることを含む前記方法を提供する。好ましい実施の形態において、上記蛋白は、上記蛋白をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを上記細胞に与えるという仕方で上記細胞に提供される。
【0029】
また別の実施形態において、本発明は、ナイーブT細胞のTh1またはTh2細胞への分化が所望される対象に、表2〜5及び8〜10に列挙されるマーカー類から選択されるマーカーに対応するポリヌクレオチドに相補的なアンチセンス オリゴヌクレオチドを投与する方法を提供する。
【0030】
別の実施形態において、本発明は対象におけるTh1またはTh2分化を抑制する方法であって、表2〜5及び8〜10に列挙されたマーカー類から選択されるマーカーに対応する遺伝子の発現を抑制することを含む前記方法を提供する。
【0031】
また別の実施形態において、本発明は対象におけるTh1またはTh2の分化を抑制する方法を提供し、前記方法は表2〜5及び8〜10に列挙されるマーカーから選択されるマーカーに対応する遺伝子の発現を高めることを含んでなる。
【0032】
本発明のその他の特徴及び利点は下記の詳細な説明及び添付のクレイムから明らかとなる。
【0033】
(発明の詳細な説明)
本発明は少なくとも一部分は、in vitroで発生させたヒトTh1及びTh2細胞母集団における多数の遺伝子の発現の研究から得られるものである。Tヘルパー細胞の分化の初期段階中の、及び再刺激されたTh1及びTh2細胞母集団における遺伝子発現を、未分化T細胞集団における発現と比較した。大規模の遺伝子発現分析から、予想外に、Th1及びTh2誘発性条件のもとで識別的にあるいは異なって発現する(ディファレンシャル・エクスプレッション)遺伝子数は、再刺激された完全に分化したTh1及びTh1細胞母集団における遺伝子発現パターンに比べると、分化の最初の24時間により多いことが判明した。この研究結果は、Th1細胞とTh2細胞では分化した母集団が分子レベルでは比較的同じであり、一方多数の遺伝子がTh1及びTh2細胞発生の初期段階に含まれることを示唆する。その上、種々様々の異なる機能的遺伝子カテゴリー全体に遺伝子の識別的あるいは異なる発現(ディファレンシャル・エクスプレッション)が認められた(例えば、タンパク分解やクロマチン リモデリングのような異なる機能に関係する遺伝子)。表1〜12に示す本発明のマーカー類はTh1またはTh2細胞に分化する最初の24時間(表1〜6)中、または完全に分化したTh1またはTh2細胞の再刺激中(表7〜11)に、Th1および/またはTh2細胞に結合する。これらのマーカーを使用して、以下に記載する方法または組成物により、Th1またはTh2細胞を同定し、サンプル中のTh1細胞集団とTh2細胞集団とを識別し、またはTh1またはTh2細胞集団の増殖を選択的に促進または抑制することができる。
【0034】
さらに、対象ないしは被検者(subject)におけるTh1またはTh2細胞集団の活性および/または量と関係することが知られている多数の病気及び疾患が確認されている。例えば、炎症性腸疾患(クローン病を含む)、多発性硬化症、リウマチ性関節炎、及び乾癬(乾癬性関節炎を含む)は異常なTh1活性に関連づけられる。同様に、アレルギー及び喘息は異常なTh2活性に関連づけられる(リブローら(1995)、Immunol Today1995、16巻(1号):34〜8ページ)。本発明のマーカーないし標識は対象のTh1および/またはTh2細胞の異常な活性および/または量を確認するためにも使用される。
【0035】
本発明は少なくとも一部分は、表1〜12に示される多数の遺伝マーカー(これらはTh1及びTh2細胞に異なって発現する)の確認に基づいている。Th1またはTh2細胞に分化するように誘導したナイーブCD4T細胞における、6800の公知の遺伝子群の発現をスクリーニングした。未分化のナイーブCD4T細胞に比較してTh1および/またはTh2細胞の発現に統計的有意差(例えば少なくとも2倍の差)を有するこれら遺伝子を表1〜12に示す。この識別的発現は発現の減少として(表2、4及び9)または発現の増加として(表3、5、8、10)観察された。
【0036】
本発明の前に、数種のマーカーがTh1またはTh2細胞のどちらかと特異的に関連していることが知られていた。これらのマーカーは表12に示される。これらのマーカーは本発明のマーカーには含まれない。しかしこれらのマーカーは本発明のマーカーと組み合わせて、本発明の方法、パネル、及びキットに便利に使用される。
【0037】
Th1及びTh2細胞における遺伝子発現を異なる誘導条件のもとで評価した。第一実験において、ナイーブCD4T細胞をIL−12またはIL−4それぞれと24時間インキュベートすることによって、Th1またはTh2細胞どちらかに分化するように誘導した(実験1、表1〜6)。第二実験においては、サイトカイン インキュベーションによる分化の誘導が7日間以上行われ、その後、分化したT細胞をPMA及びイオノマイシンで刺激した(実験2、表7〜11)。両方の実験において、上記処理細胞集団から完全に標識化したRNAが作られ、それを、6800の公知の遺伝子のパネルが結合するジーンチップ アレイ(Gene Chip arrays)にハイブリッドさせた。ハイブリッド形成を定量し、ナイーブT細胞の対照値と比較した。表1は、第一実験において異なって発現した(例えば対照値に比して少なくとも2倍の増加または減少を示した)遺伝子を示す。表2には、表1中の遺伝子のうちで、Th1における発現は減少するが、Th2における発現は変化しないことが認められた遺伝子が含まれる。表3は、表1の遺伝子のうち、或る遺伝子のTh1における発現は増加するが、Th2における発現は変化しないことが認められた遺伝子を含む。表4は、表1中の遺伝子のなかで、或る遺伝子がTh1細胞における発現は変化せず、Th2細胞における発現は減少することが認められた遺伝子を含む。表5は、表1中の遺伝子のなかで、Th1細胞においては発現は変化せず、Th2細胞においては発現が増加する遺伝子を含む。表6はナイーブCD4T細胞に比較して、Th1及びTh2細胞両方において発現が変化した(増加または減少のどちらか)遺伝子のみを含む。
【0038】
実験2で、成熟した、再刺激されたTh1及びTh2細胞に識別的に発現することが確認された遺伝子を表7に示す。表8は、表7中の遺伝子のなかでTh1細胞においては発現が増加し、Th2細胞においては発現が減少した遺伝子を含む。表9は表7中の遺伝子のなかで、Th1細胞においては発現が減少し、Th2細胞においては発現が増加した遺伝子を含む。表10は表7の遺伝子のなかで、Th2細胞において発現が増加し、Th1細胞においては発現が変化しなかった遺伝子を含む。表11は、表7中の遺伝子のなかでナイーブT細胞対照に比較してTh1及びTh2細胞両方において発現が変化した(例えば増加または減少)遺伝子を含む。
【0039】
本発明は表1〜12に示される遺伝子類(例えばDNAまたはcDNA)、対応するmRNA転写体、及びコードされたポリペプチドを、Th1またはTh2細胞の存在のマーカーとして使用することに関係する。例えば、“TAP2”と命名される遺伝子(受入れ番号M74447)はTh1における発現レベルがナイーブT細胞に比して増加するが、Th2細胞においては発現は変化せず(表3)、したがってTh1細胞ではマーカーとして役立つが、Th2細胞では役立たない。この遺伝子(及び/または表1〜12に示されるその他の遺伝子)の増加または減少したmRNAの存在、及びこの遺伝子(および/または表1〜12に示されるその他の遺伝子)の蛋白産物の増加または減少したレベルもTh1またはTh2細胞のマーカーとして役立つ。これらマーカーのパネルは好都合にアレイにし、キットに使用したり、固体支持体上で使用することもできる。
【0040】
同様に、本発明は表1〜12に示される遺伝子(例えばDNAまたはcDNA)、対応するmRNA転写体、及びコードされたポリペプチドを、Th1細胞またはTh2細胞の成熟度を見分けるためのマーカーとして使用することに関係する。表1には含まれない表7のマーカー(例えばIFNG、SCAY20及びAPT1を除く全て)は、すでに分化し、再刺激されたTh1またはTh2細胞に特異的なマーカーとして役立ち、一方、表7には含まれない、表1のマーカー類(例えばIFNG、SCAY20及びAPT1を除く全て)は分化24時間以内のTh1及びTh2細胞に特異的なマーカーとして役立つ。さらに、表2及び表3に含まれるマーカー(IFNG、SCAY20及びAPT1を除く)は新しく分化したTh1細胞に特異的であり、表4及び表5に示されるマーカーは新しく分化したTh2細胞に特異的であり、一方表8及び表9に示されるマーカー(IFNG及びSCAY20を除く)は、完全に分化し、再刺激されたTh1細胞に特異的で、表10に含まれるマーカー(APT1を除く)は、完全に分化し再刺激されたTh2細胞に特異的である。マーカーのパネルはキットにおいて、または固体支持体上に好都合にアレイにして使用できる。
【0041】
本発明は表1〜12に示される遺伝子(例えばDNAまたはcDNA)、対応するmRNA転写体、及びコードされたポリペプチドを、Th1−またはTh2関連性疾患の存在または発生リスクのマーカーとして使用することに関係する。これらのマーカーは疾患の範囲及び/または重症度を関連づけるためにも有用である。これらマーカーのパネルはキットまたは固体支持体上に好都合にアレイにして使用できる。上記マーカー類はTh1またはTh2関連疾患の治療にも、またはTh1またはTh2−関連疾患の治療の有効性の評価にも有用である。
【0042】
別の面において、本発明は、(マーカーの)量または活性がTh1またはTh2関連疾患の存在と相関関係にあるマーカー類を提供する。本発明の上記マーカーは核酸分子(例えばDNA、cDNAまたはRNA)またはポリペプチドでよい。これらのマーカーは、正常な対象からのT細胞サンプルに比較して病気の対象からのT細胞サンプルの量または活性が減少または増加している。例えば、“TAP2”と命名された遺伝子(受入れ番号M74447)はナイーブT細胞に比較してTh1細胞では発現レベルが増加するが、Th2細胞では発現に変化がない(表3)、したがって、Th1細胞の集団または活性と関連する疾患(例えば乾癬または多発性硬化症)のマーカーとして役立つ。
【0043】
好ましくは、本発明のマーカーの増加または減少したレベルは、適切な対照サンプル(例えばナイーブT細胞、またはTh1−またはTh2−関連症状にかかっていないサンプル類)に比較して統計的に有意な、大きさ(magnitude)の増加及び減少である。特に好ましい実施形態において、上記マーカーは対照サンプルに比べて少なくとも2−、3−、4−、5−、6−、7−、8−、9−、または10−倍(fold)またはそれ以上、増加または減少する。同様に、当業者は、好ましい検出法が、結果として得られる検出値がその方法の最低検出限界値より高く出る方法であるという事実を認識している。
【0044】
本発明のRNAまたは蛋白マーカーの相対的量の測定は当業者に公知のいかなる方法で行ってもよい(例えばサムブルック(Sambrook,J.、フリッシュ(Fritsh,E.F.)、及びマニアチス、Molecular Cloning:実験室マニュアル、2版、Cold Harbor Laboratory、コールドスプリング ハーバー ラボラトリー出版、コールドスプリング ハーバー、NY、1989;及び最新分子生物学実験法、アウスユーベル(Ausubel)ら編集、ジョンウィリー&ソンズ:1992を参照されたい)。典型的RNA検出法には次の方法がある:細胞または組織サンプルからRNAを抽出し、その後標的RNAに特異的な標識プローブ(例えば相補的核酸分子)を、抽出すべきRNAにハイブリッド化し、上記プローブを検出する(例えばノザンブロット法)。典型的蛋白検出法には次のものがある:細胞または組織サンプルから蛋白を抽出し、上記標的蛋白に特異的な標識プローブ(例えば抗体)を上記蛋白サンプルにハイブリッド化し、上記プローブを検出する。標識群は、放射性同位体、蛍光化合物、酵素、または酵素補因子でよい。特異的蛋白及び核酸分子の検出は、ゲル電気泳動法、カラムクロマトグラフィー、直接シーケンシング(配列決定)、または定量的PCR(核酸分子の場合)によって評価できる。熟練せる当業者に公知の多くのその他の方法もある。
【0045】
若干の実施形態において、遺伝子そのもの(例えばDNAまたはcDNA)がTh1またはTh2細胞のマーカーとして、またはTh1またはTh2関連症状のマーカーとして使用できる。例えば、或る遺伝子(例えば表1からの遺伝子)に対応する核酸の欠乏(上記遺伝子の全部または一部分の欠失による)はTh1またはTh2細胞のどちらかと、またはこれらの細胞型のどちらかと特異的に関連する症状と関連づけられる。同様に、或る遺伝子(例えば表1〜12からの遺伝子)に対応する核酸の増加(例えば上記遺伝子の複製による)もTh1またはTh2細胞と、またはこれらの細胞型のどちらかと特異的に関連する症状と関連づけられる。
【0046】
本発明のマーカー遺伝子の全部または一部分のコピーの存在または数の検出は当業者に公知のいかなる方法を用いて行ってもよい。一般的にはDNAまたはcDNAの存在および/または量をサザン分析によって評価するのが便利である。この際細胞または組織サンプルからの総DNAを抽出し、標識プローブ(例えば相補的DNA分子)とハイブリッド化し、上記プローブを検出する。標識群は放射性同位体、蛍光化合物、酵素、または酵素補因子でよい。その他の有用なDNA検出法および/または定量法には、熟練せる当業者には公知のように、直接シーケンシング、ゲル電気泳動、カラムクロマトグラフィー及び定量的PCRがある。
【0047】
本発明は、上記分子類と構造的には異なるが(例えばそれらはわずかに変化した核酸またはアミノ酸配列を有する)上記分子類と同じ特性を有する(例えばコードされたアミノ酸配列、または本質的でないアミノ酸残基のみが変化している)核酸及び蛋白分子も包含する。このような分子には対立遺伝子的変異遺伝子が含まれ、サブセクション1でより詳細に説明される。
【0048】
もう一つの面において、本発明は、量または活性がTh1またはTh2細胞の量または活性と相関関係を有するマーカー類を提供する。これらのマーカーのサンプル中の量または活性は、サンプル中のTh1またはTh2細胞の量または活性とポジティブまたはネガティブに相関するような仕方で、増加または減少する。また別の面では、本発明は、(マーカーの)量または活性が対象におけるTh1またはTh2細胞の発達の偏りの確率と相関するマーカーを提供する。これらのマーカーでは、ナイーブT細胞のTh1またはTh2のどちらかの細胞への分化しやすさに直接相関して、これらのマーカーの活性または量が増加または減少する。
【0049】
また別の面において、本発明は(マーカーの)量または活性がTh1−またはTh2関連疾患(実施例3を参照)の重症度と関連するマーカーを提供する。これらのマーカーではTh1またはTh2関連疾患にかかった組織中の(上記マーカーの)量または活性が、Th1−またはTh2関連疾患の重症度とポジティブまたはネガティブに相関する仕方で増加または減少する。また別の面において、本発明は(マーカーの)量または活性が、或る対象においてTh1−またはTh2関連疾患の発生リスクと相関するという前記マーカーを提供する。これらのマーカーは或る対象におけるTh1−またはTh2関連症状の発生しやすさと直接相関して、活性または量が増加或いは減少する。
【0050】
各マーカーは、本発明の範囲内にあるとはいえ、個々に考えることができ、2つ以上のマーカーの組み合わせを作って本発明及び本発明の組成物に使用し、上記分析の信頼性を高めることができる。また別の面において本発明は、本発明のマーカーのパネルを提供する。好ましい実施の形態において、これらのマーカーのパネルの選択は、どのパネル内のマーカー類も数種の特徴を共有するように行われる。例えば、第一パネルの各マーカーは、Th1細胞ではTh2細胞またはナイーブCD4T細胞に比較して量または活性の増加を示し、他方、第二パネルのマーカー類は個々に、Th1細胞ではTh2細胞またはナイーブCD4T細胞に比較して量または活性の減少を示す。本発明のマーカーのパネルは表1〜12に示される。本発明の方法及び組成物は表1〜12に示されるパネルのどれか、またはそれらの一部分または組み合わせで実施できることは熟練せる当業者には明らかである。
【0051】
本発明のマーカーのパネルは固体支持体上に好都合に作られることも熟練せる当業者には理解できる。例えば、mRNA等のポリヌクレオチド類を、アレイ(ハイブリッド化分析のためのジーンチップ(Gene Chip)アレイ等)に、樹脂(カラムクロマトグラフィーのためにカラムに充填することができる樹脂等)、または基質(ノザンブロット分析のためのニトロセルロース基質等)に結合させる。上記マーカー(類)に相補的な分子を共有結合でまたは非共有結合で固定すると、サンプル中の各マーカーの存在または活性を別々に分析できる。例えば或るアレイでは、マーカーのパネルの各メンバーに相補的なポリヌクレオチドが個々に、上記アレイ上の異なる公知の位置に付着する。上記アレイを例えば対象の皮膚細胞サンプルから抽出したポリヌクレオチドとハイブリッド化させる。サンプルからのポリヌクレオチドと上記アレイのいずれかの位置における上記アレイとのハイブリッド化を検出することができ、これによってサンプル中のマーカーの存在または量を確認することができる。好ましい実施の形態において、“ジーンチップ”アレイが使用される(アフィメトリックス(Affimetrix))。同様に、対象からの蛋白サンプルにハイブリッド化した種々のポリペプチドマーカーに特異的な固定抗体でウエスタン分析を行うこともできる。
【0052】
全マーカー蛋白または核酸分子が上記支持体に結合される必要がないことも熟練せる当業者には理解できる;検出目的(ハイブリッド化等のため)のために十分な長さのマーカー部分、例えば長さが7、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、100またはそれ以上のヌクレオチドまたはアミノ酸部分であるマーカー部分が検出の目的には十分である。
【0053】
本発明の核酸及び蛋白マーカーは、T細胞が見いだされる対象のあらゆる組織または細胞から分離できる。好ましい実施形態において、上記組織は血液、胸腺、脾臓、リンパ、膿汁または骨髄である。しかし、熟練せる当業者には明らかなように、T細胞は多くのその他の組織では浸潤物として存在し、このような組織は、本発明のマーカーを抽出するソース、または本発明のマーカーの存在、活性および/または量を評価するソースとしても役立つ。これらマーカーの1種類以上を含む上記組織サンプルはそれ自体本発明の方法に有用であり、熟練せる当業者はこのようなサンプルを便利に採取し、貯蔵および/または保存する方法を認識している。
【0054】
その他の面では、本発明はTh1及び/またはTh2細胞の存在、相対的量、成熟段階または発達しやすさを評価し、または或る患者がTh1またはTh2関連症状にかかっているかどうかを評価するのに有用な抗体を産生する分離ハイブリドーマの生成法を提供する。この方法において、本発明のマーカーに対応する蛋白を(例えばそれが発現している細胞から精製することによって、または公知の方法を用いてin vivoまたはin vitroで蛋白をコードする核酸の転写及び翻訳によって)分離する。脊椎動物、好ましくはマウス、ラット、ウサギ、またはヒツジ等の哺乳動物を、分離した蛋白または蛋白フラグメントを用いて免疫する。脊椎動物は任意に(または好ましくは)分離蛋白または蛋白フラグメントで追加的に少なくとも1回免疫することができ、そこで上記脊椎動物は蛋白または蛋白フラグメントに対して確実な免疫反応をあらわす。免疫された脊椎動物から脾細胞を分離し、当業者に公知の種々の方法のいずれかによって不死化細胞系と融合させてハイブリドーマを形成する。このやり方で形成したハイブリドーマをその後標準的方法を使用してスクリーニングし、蛋白または蛋白フラグメントと特異的に結合する抗体を産生する1種類以上のハイブリドーマを確認する。本発明は、この方法によって形成されたハイブリドーマ及びこのようなハイブリドーマを使用して作製された抗体類も含む。
【0055】
本発明は対象におけるTh1及び/またはTh2細胞の存在を確認する方法、または対象におけるTh1及び/またはTh1細胞の発達をモニターする方法を提供する。これらの方法は、対象(例えばTヘルパー細胞を含むサンプル)から1つ以上のサンプル(例えば長時間にわたって採取された複数のサンプル)を分離し、Tヘルパー細胞を含まない、またはナイーブT細胞を含む第二サンプルと比較して、各サンプルにおける本発明の1種類以上のマーカーの存在、量、および/または活性を検出することを含む。2つ以上のサンプルのマーカーレベルを比較する。試験サンプルにおける1つ以上のマーカーの有意な(2倍以上の)増加または減少は、対象にTh1及び/またはTh2が存在することを示唆する。長時間にわたって対象から採取した一連のサンプルにおけるマーカー発現の増加または減少をモニターすることによって、これらサンプルを対象から採取している時間中におけるTh1及び/またはTh2細胞の増加または減少をモニターすることも可能である。
【0056】
本発明は対象におけるナイーブT細胞のTh1および/またはTh2細胞への分化能(分化ポテンシャル)の決定法も提供する。これらの方法は対象からサンプル(例えばTヘルパー細胞を含むサンプル)を分離し、本発明の1種類以上のマーカー(例えば表1〜12からのマーカー類)の存在、量、および/または活性を、Tヘルパー細胞を含まない、またはナイーブT細胞を含む第二のサンプルと比較して検出することを含む。2サンプル中のマーカーレベルを比較する;試験サンプル中の1つ以上のマーカーの有意な(2倍以上)増加または減少は、上記対象におけるナイーブT細胞からTh1またはTh2細胞が発生する可能性を示すインジケータ(指標)である。
【0057】
本発明はサンプル中のTh1及び/またはTh2細胞の増殖または成熟を測定する方法も提供する。これらの方法は、対象からサンプルを分離し(例えばTヘルパー細胞を含むサンプル)、本発明の1種類以上のマーカー(例えば表1〜5からのIFNG、SCYA20、またはAPT1を含まないマーカー類、または表7〜10からの、IFNG、SCYA20またはAPT1を含まないマーカー類)の存在、量および/または活性を、Tヘルパーサンプルを含まない、またはナイーブT細胞を含む、または公知の成熟し再刺激されたTh1またはTh2細胞を含む、または新しく分化したTh1またはTh2細胞を含む、第二のサンプルに対して検出する諸段階を含む。2サンプル中のマーカーのレベルを比較した際、試験サンプル中の1種類以上のマーカーの有意な(2倍より大きい)増加または減少は、上記対象のナイーブT細胞からのTh1またはTh2細胞の発生の可能性を示すインジケータである。例えば表9からのマーカーの、試験サンプル中における発現が、対照サンプルと比較して有意に減少するのは、上記試験サンプル中に、完全に発達して再刺激されたTh1細胞が存在することのインジケータである。
【0058】
本発明は、対象におけるTh1−またはTh2関連性疾患、またはTh1−またはTh2関連疾患状発生リスクを診断する方法を提供する。これらの方法には対象からサンプルを分離し(例えばTヘルパー細胞を含むサンプル)、本発明の1種類以上のマーカーの存在、量および/または活性を、Th1−またはTh2関連性疾患がないことがわかっている対象からの第二のサンプルに比較して検出する諸段階を含む。2サンプル中のマーカーのレベルを比較し、試験サンプル中の1種類以上のマーカーが有意に増加または減少する際は、それは対象におけるTh1−またはTh2関連性症状の存在または存在リスクを示唆する。
【0059】
本発明は対象におけるTh1−またはTh2関連性疾患の重症度を評価する方法も提供する。これらの方法は、対象からサンプルを分離し(例えばTヘルパー細胞を含むサンプル)、サンプル中の本発明の1種類以上のマーカーの存在、リスク、および/または活性を、Th1−またはTh2−関連性疾患をもたないことが知られている対象からの第二のサンプルに対して検出する諸段階を含む。2サンプル中のマーカーのレベルは上記対象におけるTh1−またはTh2関連性疾患の重症度と相関する。
【0060】
本発明は、ナイーブT細胞のTh1またはTh2細胞への分化を阻止する方法、または対象におけるTh1−および/またはTh2細胞の増殖及び発達を選択的に阻害する方法も提供する。これらの方法は、対象からサンプルを分離し(例えばTヘルパー細胞を含む細胞)、サンプル中の本発明の1種類以上のマーカーの存在、量および/または活性を第二の対照サンプル(例えばT細胞、またはナイーブT細胞を含まないサンプル)に対して検出する諸段階を含む。上記2サンプル中のマーカーのレベルを比較し、試験サンプル中の1種類以上のマーカーの、対照サンプルに対して有意な増加または減少を観察する。発現または活性が有意に減少したマーカーの場合、上記対象にその発現されたマーカー蛋白を投与するか、または減少したマーカーに対応するmRNAまたはDNAの導入によって治療し(例えば遺伝子治療)、それによって上記対象中の上記マーカー蛋白を増やす。発現または活性が有意に増加したマーカーでは、増加したマーカーに対するmRNAまたはDNAアンチセンスを対象に投与し(例えば遺伝子治療によって)、または上記マーカー蛋白に特異的な抗体を投与し、それによって対象の上記マーカー蛋白のレベルを減らす。
【0061】
本発明は対象におけるナイーブT細胞のTh1またはTh2細胞への分化を増加させる方法、または対象におけるTh1及び/またはTh2細胞の増殖及び発達を選択的に高める方法も提供する。これらの方法は、対象からサンプルを分離し(例えばTヘルパー細胞を含むサンプル)、サンプル中の本発明の1種類以上のマーカーの存在、量及び/または活性を第二の対照サンプル(例えばT細胞またはナイーブT細胞を含まないサンプル)と比較して検出する諸段階を含む。2サンプルのマーカーのレベルを比較する;試験サンプル中の1種類以上のマーカーの、対照サンプルに対する有意な増加または減少を観察する。発現または活性が有意に増加したマーカーの場合、上記対照に、その発現されたマーカー蛋白を投与するか、または上記増加したマーカーに相当するmRNAまたはDNAの導入によって治療し(例えば遺伝子治療)、それによって上記対象のマーカー蛋白レベルをさらに高める。発現または活性が有意に減少するマーカーの場合、上記対象に上記減少したマーカーに対するmRNAまたはDNAアンチセンスを投与する(例えば遺伝子治療)か、または上記マーカー蛋白に特異的な抗体を投与し、それによって対象のマーカー蛋白レベルをさらに低下させる。このやり方で、或る対象におけるナイーブT細胞のTh1またはTh2細胞への分化、またはTh1及び/またはTh2細胞の増殖及び発達は高まる。
【0062】
本発明は対象におけるTh1またはTh2関連性疾患を治療する(例えば抑制する)方法も提供する。これらの方法は、対象からサンプルを分離し(例えばTヘルパー細胞を含むサンプル)、上記サンプル中の本発明の1種類以上のマーカーの存在、量及び/または活性を、Th1−またはTh2関連性疾患をもたないことが判明している対象から得た第二サンプルに対して検出することを含む。2サンプル中のマーカーレベルを比較し、対照サンプルに比べて試験サンプル中の1種類以上のマーカーの有意な増加または減少を観察する。発現または活性が有意に減少したマーカーの場合、上記対象にその発現されたマーカー蛋白を投与するか、または上記減少したマーカーに相当するmRNAまたはDNAの導入によって治療し(例えば遺伝子治療)、それによって上記対象のマーカー蛋白のレベルを高める。発現または活性が有意に増加したマーカーの場合、上記対象に、増加したマーカーに対するmRNAまたはDNAアンチセンスを投与し(例えば遺伝子治療)、または上記マーカー蛋白に特異的な抗体を投与し、それによって対象における上記マーカー蛋白のレベルを低下させる。このやり方で、対象のTh1−またはTh2関連性疾患は治療できる。
【0063】
本発明は対象におけるTh1−またはTh2関連性疾患の進行を阻止する方法も提供する。これらの方法は、発現または活性が有意に減少しているマーカーの場合にはそのマーカー蛋白を投与し、または減少したマーカーに対応するmRNAまたはDNAを導入し、それによって対象におけるマーカー蛋白のレベルを高めることを含む。発現または活性が有意に増加しているマーカーでは、対象に、その増加したマーカーに対するmRNAまたはDNAアンチセンスを投与するか(例えば遺伝子治療)、または上記マーカー蛋白に特異的な抗体を投与し、それによって対象におけるマーカー蛋白レベルを低下させる。このやり方で対象におけるTh1またはTh2関連性疾患の進行は阻止される。
【0064】
本発明は、対象におけるTh1及び/またはTh2の分化または増殖を促進するための処置または治療を評価する方法も提供する。これらの方法は、処置または治療を受けている対象からサンプルを分離し(例えばTヘルパー細胞を含むサンプル);上記第一サンプル中の本発明の1種類以上のマーカーの存在、量、及び/または活性を、処置または治療を受けていない対象からの第二サンプルまたは治療前の対象からのサンプルに対して検出する諸段階を含む。上記2サンプル中のマーカーのレベルを比較し、第一サンプル中の1種類以上のマーカーのその他のサンプルに対する有意な増加または減少を観察し、上記サンプル中のTh1及び/またはTh2細胞の存在または成熟度と相関づける。サンプル中のTh1及び/またはTh2細胞の数または成熟度の変化を評価することによって、上記処置または治療が、ナイーブT細胞のTh1またはTh2細胞への分化を刺激する能力、またはTh1及び/またはTh2細胞の増殖及び成熟を刺激する能力も確認される。
【0065】
本発明は対象におけるTh1及び/またはTh2分化または増殖を抑制するための処置または治療を評価する方法も提供する。これらの方法は、処置または治療を受けている対象からサンプルを分離し(例えばTヘルパー細胞を含むサンプル);処置または治療を受けていない対象からの第二サンプルに対して、または治療前の対象からのサンプルに対して上記第一サンプル中の本発明の1種類以上のマーカーの存在、量、及び/または活性を検出する諸段階を含む。上記2サンプル中のマーカーのレベルを比較し、第一サンプル中の1種類以上のマーカーの、その他のサンプルに対する有意な増加または減少を観察し、上記サンプル中のTh1及び/またはTh2細胞の存在または成熟度と相関づける。上記サンプル中のTh1及び/またはTh2細胞の数または成熟度の変化を評価することによって、上記処置または治療がナイーブT細胞のTh1またはTh2細胞への分化を抑制する能力、またはTh1及び/またはTh2細胞の増殖及び成熟を抑制する能力も確認される。
【0066】
本発明は、或る対象において、或る処置または治療の、対象におけるTh1またはTh2の分化、増殖または成熟をトリガーする能力を評価する方法も提供する。これらの方法は、処置または治療を受けている対象(例えばTh1またはTh2細胞の分化、増殖または成熟の或る確率を有する対象)からサンプルを分離し;第一サンプル中の本発明の1種類以上のマーカーの存在、量及び/または活性を、上記処置または治療を受けていない対象からの第二のサンプルに対して、または処置前の対象からのサンプルに対して検出することを含む。上記2サンプル中のマーカーのレベルを比較し、第一サンプル中の一種類以上のマーカーの、その他のサンプルに対する有意な増加または減少を観察し、上記サンプル中のTh1及び/またはTh2細胞の存在、または成熟度と相関づける。サンプル中のTh1及び/またはTh2細胞の数または成熟度の変化を評価することによって、上記処置または治療の、ナイーブT細胞のTh1またはTh2細胞への分化をトリガーする能力、またはTh1及び/またはTh2細胞の増殖及び成熟をトリガーする能力も決定される。
【0067】
本発明は、対象におけるTh1−またはTh2関連性疾患の処置または治療を評価する方法も提供する。これらの方法は、Th1−またはTh2関連性疾患にかかり、処置または治療を受けている対象からサンプル(例えばTヘルパー細胞を含むサンプル)を分離し、第一サンプル中の本発明の1種類以上のマーカーの存在、量、及び/または活性を、Th1−またはTh2関連性疾患にかかり、その症状のための処置も治療も受けていない第二サンプルに対して、そしてTh1−またはTh2関連性疾患にかっていない対象から、またはTh1−またはTh2関連性疾患の存在による影響を受けていないことが判明した同じ対象の組織から得た第三のサンプルに対しても検出する段階を含む。3サンプル中のマーカーレベルを比較し、第一サンプル中の1種類以上のマーカーの、その他のサンプルに対する有意な増加または減少を観察し、Th1−またはTh2関連性症状の存在、存在リスク、または重症度と関連づける。Th1−またはTh2関連性症状が上記サンプルにおいて少なくなるか、軽減したかどうかを評価することによって、上記処置または治療の、Th1−またはTh2関連性疾患を治療する能力も決定される。
【0068】
本発明はナイーブT細胞のTh1またはTh2細胞への分化を刺激するための、またはTh1またはTh2細胞の増殖を刺激するための医薬組成物も提供する。これらの組成物は、本発明のマーカー蛋白及び/または核酸を含み(例えばナイーブT細胞に対してTh1またはTh2細胞において量または活性が増加しているマーカー)、本明細書に記載のように処方できる。或いはこれらの組成物は本発明のマーカー蛋白のインヒビターに特異的に結合する抗体を含むこともでき、本明細書に記載のように調製できる。
【0069】
本発明はナイーブT細胞のTh1またはTh2細胞への分化を抑制するための医薬組成物、またはTh1またはTh2細胞の増殖を抑制する医薬組成物も提供する。これらの組成物は本発明のマーカー蛋白及び/または核酸を含み(例えば非乾癬組織に比較して乾癬組織では量または活性が減少しているマーカー)、ここに記載のように調製できる。或いは、これらの組成物は本発明のマーカー蛋白に特異的に結合する抗体及び/または本発明のマーカー核酸に相補的なアンチセンス核酸分子を含むことができ(例えば非疾患組織に比較して疾患組織においては量または活性が増加するマーカー)、ここに記載のように処方できる。
【0070】
本発明はTh1またはTh2関連性疾患の治療のための医薬組成物も提供する。これらの組成物には本発明のマーカー蛋白及び/または核酸があり(例えば非乾癬組織に比較して乾癬組織では量または活性が減少するマーカー類)、ここに記載のように処方できる。或いは、これらの組成物は、本発明のマーカー蛋白に特異的に結合する抗体及び/または本発明のマーカー核酸に相補的なアンチセンス核酸分子(非疾患組織に比較して疾患組織では量または活性が増加するマーカー類)を含み、本明細書に記載のように処方できる。
【0071】
本発明はサンプル(例えば対象からのサンプル)中のTh1またはTh2細胞の存在または発達の可能性を評価し、及び/またはサンプル(例えば対象からのサンプル)中の新たに分化したTh1またはTh2細胞 対 成熟Th1またはTh2細胞の存在を評価するキットも提供し、上記キットは抗体を含み、この抗体は表1〜12に列挙されるマーカーからなる群から選択されるマーカーに対応する蛋白と特異的に結合する。
【0072】
本発明は、Th1−またはTh2−関連性疾患に関与する細胞のサンプル中の存在(例えばTh1−またはTh2−関連性症状のリスクのある対象から得たサンプル)を評価するキットを提供し、上記キットは抗体を含み、この抗体は表1〜12に列挙されるマーカーからなる群から選択されるマーカーに対応する蛋白と特異的に結合する。
【0073】
本発明は、Th1またはTh2細胞の存在または発達の可能性を評価し、及び/または、サンプル(例えば対象からのサンプル)中の成熟Th1またはTh2細胞に対する新たに分化したTh1またはTh2細胞の存在を評価するキットであって、核酸プローブを含む上記キットも提供し、その際上記プローブは表1〜12に列挙されるマーカーからなる群から選択されるマーカーに対応する転写ポリヌクレオチドと特異的に結合する。
【0074】
本発明はさらに、対象(Th1またはTh2関連性疾患のリスクのある対象)からのサンプル中のTh1−またはTh2−関連性疾患に関与する細胞の存在を評価するキットであって、核酸プローブを含む上記キットも提供し、その際上記プローブは表1〜12に記載されるマーカーからなる群から選択されるマーカーに対応する転写ポリヌクレオチドと特異的に結合する。
【0075】
本発明はさらに、対象におけるTh1またはTh2細胞の分化または増殖を抑制するための複数の化合物の各々の適性を評価するキットを提供する。このようなキットは試験すべき複数の化合物、及び表1〜12に示される1種類以上のマーカーからなる群から選択される或るマーカーの発現を評価する試薬を含む。
【0076】
本発明はさらに、対象におけるTh1またはTh2細胞の分化または増殖を高めるための複数の化合物の各々の適性を評価するキットを提供する。このようなキットは試験すべき複数の化合物と、表1〜12に示される1種類以上のマーカーからなる群から選択される或るマーカーの発現を評価する試薬とを含む。
【0077】
本発明はさらに、対象におけるTh1またはTh2関連性症状を抑制するための複数の化合物の各々の適性を評価するキットを提供する。このようなキットは試験すべき複数の化合物と、表1〜12に示される1種類以上のマーカーからなる群から選択される或るマーカーの発現を評価する試薬とを含む。
【0078】
別の実施形態において、本発明は表13に示される遺伝子を、Th1またはTh2細胞と特異的に結合するマーカーとして利用する。
【0079】
本発明の上記の組成物及び方法の標準的技術による変更は、熟練せる当業者には容易に理解でき、本発明に包含されるものとする。
【0080】
本発明の理解を容易にするために、多数の用語及びフレーズを以下に定義する:
ここに使用する用語“調節(modulation)”は、その種々の文法的形態(例えば“modulated″、“modulation”、“modulating”等)において、上方調節、誘導、刺激、強化、及び/または抑制の軽減、並びに抑制及び/または下方調節を含む。
【0081】
ここに使用する用語“ポリヌクレオチド”及び“オリゴヌクレオチド”は互換的に用いられ、あらゆる長さのヌクレオチド重合体形、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド類またはそれらの相同体を含む。ポリヌクレオチドはいかなる三次元構造でもよく、公知または未知機能を行うことができる。下記にポリヌクレオチドの非制限的例を挙げる:遺伝子または遺伝子フラグメント、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、組み換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、あらゆる配列の分離DNA、あらゆる配列の分離RNA、核酸プローブ、及びプライマー。ポリヌクレオチドはメチル化ヌクレオチド及びヌクレオチド類似体のような改変ヌクレオチドを含むことができる。もしあるならば、ヌクレオチド構造に対する改変はポリマーのアセンブリーの前または後に加えられる。ヌクレオチド配列は非ヌクレオチド成分によって分断されることがある。ポリヌクレオチドは重合後、標識(ラベル)成分との結合等によってさらに改変されることがある。この用語は二本鎖及び一本鎖分子を両方共含む。特に記載のない限り、またはそれ以外に要求されない限り、この発明のあらゆる実施形態において、ポリヌクレオチドは二本鎖形も、上記二本鎖形を形成することが知られているまたは予想される2本の相補的一本鎖形の各々も包含する。
【0082】
ポリヌクレオチドは次の4種類のヌクレオチド塩基の特異的配列からなる:アデニン(A);シトシン(C);グアニン(G);チミン(T);そしてポリヌクレオチドがRNAの場合はグアニンの代わりにウラシル(U)が入る。この用語“ポリヌクレオチド配列”はポリヌクレオチド分子のアルファベットによりあらわされる。このアルファベット的表現は、中央演算装置(CPU)を有するコンピューターにおいてデータベースにインプットすることができ、機能遺伝子学及び相同性検索等の生物情報学的用途に使用できる。
【0083】
“遺伝子(gene)”には、転写され、翻訳された後の特定のポリペプチドまたは蛋白をコードできる少なくとも一つのオープンリーディング フレームを含むポリヌクレオチドが含まれる。ここに記載されるポリヌクレオチド配列のいずれかを用いて、それらが結合している遺伝子のより長いフラグメントまたは完全長のコーディング配列を決定することができる。より長いフラグメントの分離法は熟練せる当業者には公知であり、そのうちのいくつかは本明細書に記載されている。
【0084】
“遺伝子産物”は、遺伝子が転写及び翻訳された際に生成するアミノ酸(例えばペプチドまたはポリペプチド)を含む。
【0085】
本明細書に用いられる“〜に対応するポリヌクレオチド(polynucleotide corresponds to)”は、下記の関係のいずれかによって第一ポリヌクレオチドに関係しているもう一つのポリヌクレオチドを意味する:
1)第二ポリヌクレオチドが第一ポリヌクレオチドを含み、上記第二ポリヌクレオチドが遺伝子産物をコードする。
【0086】
2)第二ポリヌクレオチドが、cDNA、RNA、ゲノムDNA、またはこれらのポリヌクレオチドのどれかのフラグメント中の第一ポリヌクレオチドに対して5’または3’である。例えば第二ポリヌクレオチドは第一及び第二ポリヌクレオチドを含む遺伝子のフラグメントでもよい。第一及び第二ポリヌクレオチドは、それらが、蛋白または抗体等の遺伝子産物をコードする遺伝子の成分類であるという点で関係がある。しかし、ここに使用する“〜に対応する”という定義に含まれるには、上記第二ポリヌクレオチドが第一ポリヌクレオチドを含んでなるか、または第一ポリヌクレオチドと重なり合う必要はない。例えば、上記第一ポリヌクレオチドは第二ポリヌクレオチドの3’非翻訳領域のフラグメントであってよい。第一および第二ポリヌクレオチドは一つの遺伝子産物をコードする遺伝子のフラグメントでよい。第二ポリヌクレオチドは上記遺伝子のエクソンで、第一ポリヌクレオチドは上記遺伝子のイントロンでもよい。
【0087】
3)上記第二ポリヌクレオチドは上記第一ポリヌクレオチドの補体である。
【0088】
ポリヌクレオチド操作と関連して使用される“プローブ”としては、関心とするサンプル中に存在する標的を、その標的とのハイブリッド化によって検出するための試薬として提供されるオリゴヌクレオチドがある。通常、プローブは、標識(ラベル)であるか、または、ハイブリッド化反応の前か後に標識を付ける手段を含む。適切な標識には非制限的に放射性同位体、蛍光色、化学ルミネッセンス化合物、色素及び、酵素類等の蛋白がある。
【0089】
“プライマー”としては、関心とするサンプル中に存在する標的または“鋳型”に、上記標的とのハイブリッド化によって結合し、その後上記標的に相補的なポリヌクレオチドの重合を促進する、普通は遊離3’−OH基を有する短いポリヌクレオチドが含まれる。ポリメラーゼ連鎖反応法(“PCR”)は、“上流(アップストリーム)”及び“下流(ダウンストリーム)”プライマーからなる“一対のプライマー”または“一組のプライマー”と、DNAポリメラーゼ等の重合触媒と、一般的には耐熱性ポリメラーゼ酵素を使用して、標的ポリヌクレオチドの複製コピーを作る。PCR法は当業者にはよく知られており、例えばマックファーソン(MacPherson)らによってオックスフォード大学出版のIRLプレス(1991)に教示されている。PCRまたは遺伝子クローニング等、ポリヌクレオチドの複製コピーを作製する全ての方法は本明細書では一括して“複製”とする。プライマーは、サザンまたはノザン ブロット分析等のハイブリッド化反応におけるプローブとしても使用できる(例えばサムブルック(Sambrook,J.)、フリッチ(Fritsh,E.F.)、及びマニアチス(Maniatis,T.)、“分子クローニング:実験室マニュアル”、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、コールドスプリングハーバーラボラトリー出版、コールドスプリングハーバー、NY、1989、を参照されたい)。
【0090】
用語“cDNA類”には相補的DNA、すなわち逆転写酵素のような酵素によってcDNAに変換される。細胞または生体に存在するmRNA分子が含まれる“cDNAライブラリー”には、逆転写酵素でcDNAに変換され、その後“ベクター”に挿入される、細胞または生体に存在するmRNA分子のコレクションが含まれる(外来DNAの添加後複製し続けることのできるその他のDNA分子)。ライブラリーのための典型的ベクターには、バクテリオファージ、バクテリアに感染するウィルス類(例えばラムダファージ)がある。その後上記ライブラリーから関心とする特異的cDNA(したがってmRNA)をプローブとして得ることができる。
【0091】
“遺伝子デリバリー担体”としては、一つ以上のポリヌクレオチドをホスト細胞に挿入できる分子が含まれる。遺伝子デリバリー担体の例には、リポソーム、生体適合性ポリマー(天然ポリマーおよび合成ポリマー両方共);リポプロテイン;ポリペプチド;多糖類;リポ多糖;人工的ウィルスエンベロープ;金属粒子;及び細菌;バクロウィルス、アデノウィルス、レトロウィルス等のウィルス及びウィルスベクター、バクテリオファージ、コスミド、プラスミド、真菌ベクター及びその他の、種々の真核および原核細胞ホストにおける複製及び/または発現について記載されている、当業者に一般的に用いられる組換え担体がある。この遺伝子デリバリー担体は挿入されたポリヌクレオチドの複製や遺伝子治療並びに単にポリペプチドおよび蛋白発現のために使用できる。
【0092】
“ベクター”は、挿入されたポリヌクレオチドをホスト細胞に移行させ、及び/またはホスト細胞間を移動させる自己複製核酸分子を含む。この用語は、主として核酸分子を細胞へ挿入するために働くベクター、主として核酸の複製のために働く複製ベクター及びDNAまたはRNAの転写及び/または翻訳のために働く発現ベクターを含むものとする。また、上記の機能の一つより多くを有するベクターも含まれる。
【0093】
“ホスト細胞”は、ベクターのレシピエントまたは外因性核酸分子、ポリヌクレオチド及び/または、蛋白挿入のレシピエントとなり得る、またはレシピエントである個々の細胞または細胞培養物を含むものとする。それは単一細胞の子孫も含むものとする。上記子孫には、自然の、偶発的、または意図的突然変異があるため、上記子孫が元の親細胞と(形態、ゲノム、または全DNA補体において)完全に一致する必要はない。上記細胞は原核または真核細胞でよく、非制限的に細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、動物細胞、及び哺乳動物細胞、例えばネズミ−、ラット−、サル−またはヒト細胞等を含める。
【0094】
用語“遺伝的に改変された(genetically modified)”は、それ自体が細胞またはその子孫の遺伝子型または表現型を改変する外来遺伝子または核酸配列を含み及び/または発現する一細胞を含む。この用語は、細胞の内因性ヌクレオチドに対する付加、欠失または破壊等を含む。
【0095】
本明細書に使用する“発現”は、ポリヌクレオチドがmRNAに転写され、ペプチド、ポリペプチド、または蛋白に翻訳されるプロセスを含む。上記ポリヌクレオチドがゲノムDNAから誘導される場合、適切な真核ホストが選択されれば、発現は上記mRNAのスプライシングを含む。発現に必要な調節要素には、RNAポリメラーゼに結合するプロモーター配列及びリボソーム結合のための転写開始配列等がある。例えば細菌の発現ベクターにはlacプロモーター等のプロモーター、転写開始のためのシャイン−ダルガルノ配列及び開始コドンAUGがある(サムブルック、フリッチ、マニアチス、分子クローニング:実験室マニュアル、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、コールドスプリングハーバー出版、コールドスプリングハーバー、NY、1989)。同様に、真核生物の発現ベクターには、RNAポリメラーゼIIのための非相同性または相同性プロモーター、下流ポリアデニル化シグナル、開始コドンAUG、及びリボソームの分離のための終止コドン等がある。このようなベクター類は商業的に入手でき、または一般的なベクター作製のために以下に説明する方法のような当業者に公知の方法に記載されている配列によって組み立てることができる。
【0096】
遺伝子に適用される“識別的に発現された(differentially expressed)”は、上記遺伝子によってコードされる遺伝子または蛋白産物から転写されるmRNAの識別的産生を含む。識別的に発現された遺伝子は正常または対照細胞の発現レベルに比較して過剰にまたは過小に発現する可能性がある。一面において、それは対照サンプルに検出される発現レベルより2.5倍(2.5分の1)、より好ましくは5倍(5分の1)またはより好ましくは10倍(10分の1)高い(または低い)差を含む。用語“識別的に発現された”は、対照細胞では発現しないのに発現する、細胞または組織中のヌクレオチド配列、あるいは対照細胞では発現するのに発現しない、細胞または組織中のヌクレオチド配列についても用いられる。
【0097】
用語“ポリペプチド”は2種類以上のアミノ酸、アミノ酸同族体、またはペプチド類似体からなるサブユニットの複合体を含む。上記サブユニットはペプチド結合によって結合し得る。また別の実施形態では、サブユニットはその他の結合、例えばエステル、エーテル等によって結合する。本明細書に用いる用語“アミノ酸”は、グリシン及びそのDまたはL光学異性体等の天然及び/または非天然または合成アミノ酸、及びアミノ酸同族体及びペプチド類似体を含む。3個以上のアミノ酸のペプチドは一般にオリゴペプチドと呼ばれる。3個以上より長いアミノ酸のペプチド鎖はポリペプチドまたは蛋白と呼ばれる。
【0098】
“ハイブリッド化”は、一個以上のポリヌクレオチドが反応して、ヌクレオチド残基の塩基間の水素結合によって安定化した複合体を形成する反応を含む。上記水素結合はワトソン−クリック塩基ペアリング、フーグスタイン(Hoogstein)結合、またはその他の配列特異的方法によって起きる。上記複合体は二本鎖構造を形成する2本のストランドを含み、3本以上のストランドはマルチストランド複合体、または単一の自己ハイブリッド化 ストランド、またはこれらの組み合わせを形成する。ハイブリッド化反応は、PCR反応の開始またはポリヌクレオチドのリボザイムによる酵素分解等、より大きいプロセスの一段階を構成する。
【0099】
ハイブリッド化反応は異なる“厳格性(stringency)”の条件のもとで行うことができる。ハイブリッド化反応の緊縮性は、2つの核酸分子が互いにハイブリッド化する困難さを含む。厳格条件下では互いに最低60%、65%、70%、75%一致する核酸分子は互いにハイブリッド化したままであるが、低いパーセントの同一性を有する分子類はハイブリッド化したままであることができない。高度に厳格なハイブリッド化条件の好ましいが非制限的な例は、6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中で約45℃でハイブリッド化を行い、その後0.2×SSC、0.1%SDS中で50℃、より好ましくは55℃で、より好ましくは60℃で、さらにより好ましくは65℃で1回以上洗うものである。
【0100】
ハイブリッド化が2本の一本鎖ポリヌクレオチド間でアンチパラレル構造に起きる場合、その反応を“アニーリング”と呼び、それらのポリヌクレオチドは“相補的”と記される。もしもハイブリッド化が第一ポリヌクレオチドのストランドの一つと、第二ポリヌクレオチドのストランドの1つとの間で起き得るならば、一つの二本鎖ポリヌクレオチドはもう一つのポリヌクレオチドに対して“相補的”または“相同的”であると言える。“相補性”または“相同性”(一つのポリヌクレオチドがもう一つのポリヌクレオチドと相補的である程度)は、一般に容認される塩基対合法則によって互いに水素結合すると予想される、対置するストランド中の塩基類の割合によって定量できる。
【0101】
“抗体”は、抗原上に存在するエピトープに結合することができる免疫グロブリン分子を含む。本明細書に用いられるこの用語は、モノクローナル抗体やポリクローナル抗体等の完全無傷の免疫グロブリン分子だけでなく、抗イディオタイプ抗体、突然変異体、フラグメント、融合蛋白、ハイブリッド抗体、ヒト化蛋白、及び要求される特異性の抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の変形物も包含する。
【0102】
ここに使用する用語“Th1−関連性疾患”は、或る病気の原因または進行にTヘルパー1(Th1)細胞が或る役割を演じていると考えられる上記病気または疾患を含む。Th1−関連性疾患の例には、非制限的に刺激性腸症候群(クローン病を含む)、リウマチ性関節炎、多発性硬化症、及び乾癬が含まれる(例えばリブローら(1995)Immunol Today 1995、16巻(1号):34〜8ページを参照)。
【0103】
ここに使用する用語“Th2−関連性疾患”は、疾患の原因または進行にT−ヘルパー2(Th2)細胞が或る役割を演じていると考えられる病気及び疾患を含む。Th2−関連性疾患の例には非制限的に、アレルギー及び喘息がある(例えばリブローら(1995)Immunol Today 1995、16巻(1号):34〜8ページを参照)。
【0104】
ここに使用する用語“病気の組織(deseased tissue)”は、Th1またはTh2−関連性疾患にかかった対象からの生物学的組織を含む。ここに使用する用語“病気でない組織(nondeseased tissue)”はTh1またはTh2−関連性疾患にかかっていない対象からの生物学的組織、またはTh1またはTh2−関連性疾患による影響は受けていない病気の人からの組織を含む。好ましい生物学的組織は、血液、血清、リンパ、胸腺、脾臓、骨髄、または膿汁等、Tヘルパー細胞を含む組織である。
【0105】
ここに使用する用語“マーカー”には、Th1またはTh2−関連性疾患にかかった対象、またはTh1またはTh2−関連性疾患にかかった細胞において、量または活性が存在し或いは欠乏し、または増加または減少しているポリヌクレオチドまたはポリペプチド分子が含まれる。上記マーカーの量または活性の相対的変化はTh1またはTh2−関連性疾患の発生、または発生リスクと相関づけられる。
【0106】
ここに使用する用語“マーカーのパネル”には、マーカー群の各メンバーの量または活性がTh1またはTh2−関連性疾患の発生または発生リスクと相関する上記マーカー群が含まれる。若干の実施形態において、マーカーのパネルはTh1またはTh2−関連性疾患にかかった対象または細胞において量または活性が増加または減少したマーカーのみを含む。その他の実施形態においてはマーカーのパネルはTh1またはTh2−関連性疾患の発生または発生リスクと相関する、特異的組織型に存在するマーカーのみを含む。
【0107】
本発明の種々の面を下記のサブセクションにおいてより詳細に説明する:
1.分離されたた核酸分子
本発明の一面は、それ自体が本発明の遺伝マーカー(例えばmRNA)であるか、または本発明のポリペプチドマーカーまたはそれらのフラグメントをコードするか、どちらかである分離された核酸分子に関係する。本発明のまた別の面は、サンプル中の本発明のマーカー類をコードする核酸分子を確認するためのハイブリッド化プローブとして使用するのに十分な分離核酸フラグメント類、並びに本発明のマーカー類をコードする核酸分子の増幅または突然変異のためにPCRプライマーとして使用するためのヌクレオチドフラグメントに関係する。ここに使用する用語“核酸分子”はDNA分子(cDNAまたはゲノミックDNA等)及びRNA分子(mRNA等)及びヌクレオチド同族体(analog)を用いて生成するDNAまたはRNAの同族体を含むものとする。核酸分子は一本鎖でも二本鎖でもよいが、二本鎖DNAがより好ましい。
【0108】
用語“分離された核酸分子(または分離核酸分子)”には、核酸の天然ソースに存在するその他の核酸分子から分離した核酸分子も含まれる。例えば、ゲノミックDNAに関して、用語“分離された”は、上記ゲノミックDNAが天然に結合している染色体から分離された核酸分子も含む。“分離された”核酸には、その核酸が由来する生体のゲノミックDNAにおいて天然には上記核酸の横にある配列(すなわち上記核酸の5’及び3’末端にある配列)がないのが好ましい。例えば、種々の実施形態において、本発明の分離されたたマーカー核酸分子または本発明のポリペプチドマーカーをコードする核酸分子は、上記核酸が由来する細胞のゲノミックDNAにおいて天然には上記核酸の横にあるヌクレオチド配列を約5kb、4kb、3kb、2kb、1kb、0.5kbまたは0.1kb未満含むことができる。さらに、cDNAのような“分離された”核酸分子は、組換え技術で産生した場合、その他の細胞性物質または培養培地を実質的に含まず、または化学的に合成した場合は化学的前駆体またはその他の化学物質を実質的に含まないのがよい。
【0109】
本発明の核酸分子、例えば表1〜12に示す遺伝子の一つのヌクレオチド配列またはその一部分を有する核酸分子等は、標準的分子生物学的技術及びここに提供される配列情報を用いて分離することができる。表1〜12に示す遺伝子の一つの核酸配列の全部または一部分をハイブリッド化プローブとして使用して、本発明のマーカー遺伝子、または本発明のポリペプチドマーカーをコードする核酸分子を標準的ハイブリッド化及びクローニング技術によって分離することができる(例えばサムブルック、フリッチ、マニアチス 分子クローニング:実験室マニュアル。第二版、Cold Spring Harbor Laboratory、コールドスプリングハーバー出版、コールドスプリングハーバー、NY、1989に記載されている)。
【0110】
本発明の核酸を、鋳型としてのcDNA、mRNAまたはそれに代わるゲノミックDNA、及び適切なオリゴヌクレオチド プライマーを用い、標準的PCR増幅法によって増幅することができる。こうして増幅した核酸は適切なベクターにクローン化され、DNA配列分析によって特徴づけられる。さらに、マーカーヌクレオチド配列に対応するオリゴヌクレオチド類、または本発明のマーカーをコードするヌクレオチド配列を、標準的合成法により、例えば自動DNA合成器を用いて作製できる。
【0111】
もう一つの好ましい実施の形態において、本発明の分離した核酸分子は、本発明のマーカーのヌクレオチド配列の補体である核酸分子(例えば表1〜12に示される遺伝子セット)、またはこれらのヌクレオチド配列のいずれかの配列の一部分を含む。このようなヌクレオチド配列に相補的な核酸分子は、それがヌクレオチド配列にハイブリッド化することができ、それによって安定な二本鎖を形成できるように、上記核酸配列に十分に相補的なものである。
【0112】
その上、本発明の核酸分子は、本発明のマーカー核酸のヌクレオチド配列の一部分だけ、または本発明のマーカー ポリペプチドをコードする遺伝子、例えばプローブまたはプライマーとして使用できるフラグメントを含むことができる。プローブ/プライマーは一般的には実質的に精製されたオリゴヌクレオチドを含む。上記オリゴヌクレオチドは一般的には厳格な条件下で、マーカー核酸、または本発明のマーカー ポリペプチドをコードする核酸の連続するヌクレオチドを最低約7または15、好ましくは約20または25、より好ましくは約50、75、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、400またはそれ以上にハイブリッド化 するヌクレオチド配列領域を含む。
【0113】
マーカー遺伝子または本発明のマーカー ポリペプチドをコードする核酸分子のヌクレオチド配列に基づくプローブを使用して本発明のマーカー遺伝子(類)及び/またはマーカー ポリペプチド(類)に対応する転写体またはゲノミック配列を検出することができる。好ましい実施の形態において、上記プローブはそれに付着した標識(ラベル)群を含む。例えば上記標識群は放射性同位体、蛍光化合物、酵素、または酵素補因子でよい。このようなプローブを診断試験キットの一部として用いて本発明のマーカー ポリペプチドを異常発現(例えば過剰または過小発現)する細胞または組織、または本発明のマーカー遺伝子をより多くまたはより少なく含む細胞または組織を確認することができる。例えば、対象からの細胞サンプル中のマーカー ポリペプチド−コーディング−核酸のレベルが検出され、マーカー ポリペプチドをコードする遺伝子のmRNA転写体の量が確認され、または本発明のマーカー遺伝子の突然変異または欠失の存在が評価される。
【0114】
本発明はさらに、遺伝子暗号の変化により表1〜12に示す遺伝子の核酸配列とは異なる核酸分子、及び表1〜12に示される遺伝子によってコードされる蛋白と同じ蛋白をコードする核酸分子も包含する。
【0115】
表1〜12に示す遺伝子類のヌクレオチド配列に加えて、表1〜12に示す遺伝子セットによってコードされる蛋白のアミノ酸配列の変化に導くDNA配列多形性が一母集団(例えばヒト母集団)内に存在することは熟練せる当業者には理解できる。表1〜12に示される遺伝子のこのような遺伝子多形性は、天然の対立遺伝子変化により、一母集団内の個人間に存在することがあり得る。対立遺伝子は或る遺伝子座に代わりに現れる遺伝子群の一つである。その上、RNA発現レベルに影響するDNA多形性が存在し、それはその遺伝子の全体的発現レベルに影響する(例えば調節または分解に影響を与えることによって)ことが認められる。ここに用いるフレーズ“対立遺伝子変異体”は或る与えられた座、または上記ヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドに起こるヌクレオチド配列を含む。ここに用いられる用語“遺伝子”及び“組換え遺伝子”とは、本発明のマーカー ポリペプチドをコードするオープン リーディング フレームを含む核酸分子を言う。
【0116】
マーカー遺伝子の天然の対立遺伝子変異体及び相同体、または本発明のマーカー蛋白をコードする遺伝子は、表1〜12に示す遺伝子に対する相同性に基づき、厳格なハイブリッド化条件のもとで標準的ハイブリッド化技術によるハイブリッド化プローブとして本明細書に開示されるcDNA、またはその一部分を使用して分離される。本発明のマーカー遺伝子の天然対立遺伝子変異体及び相同体は、上記マーカー遺伝子または本発明のマーカー蛋白をコードする遺伝子と同じ染色体または座(locus)にマッピングすることによってさらに分離できる。
【0117】
また別の実施形態において、本発明の分離した核酸分子は最低15、20、25、30、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000またはそれ以上のヌクレオチドの長さであり、本発明のマーカー蛋白をコードするマーカー遺伝子または遺伝子のヌクレオチド配列に対応する核酸分子厳格なでハイブリッド化する。ここに用いられる用語“厳格な条件下でハイブリッド化する”は、互いに最低60%の相同性を有するヌクレオチド配列が一般的に互いにハイブリッド化したままになる、ハイブリッド化及び洗浄条件を説明するものである。この条件は、好ましくは互いに最低約70%、より好ましくは最低約80%、さらにより好ましくは最低約85%または90%の相同性を有する配列が一般に互いにハイブリッド化したままになるような条件である。このような厳格な条件は熟練せる当業者には公知であり、Current Protocols in Molecular Biology、ジョンウィリー&ソンズ、NY(1989)、6.3.1−6.3.6に見いだされる。緊縮な条件の好ましい非制限的例は、6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中で45℃でハイブリッド化を行い、その後0.2×SSC、0.1%SDSで50℃、より好ましくは55℃、より好ましくは60℃、さらにより好ましくは65℃で1回以上洗うことである。好ましくは、厳格な条件のもとで表1〜12に示す遺伝子類の一配列にハイブリッド化する本発明の分離核酸分子は、天然に発生する核酸分子に対応する。ここに使用する“天然に発生する”核酸分子は、天然に発生するヌクレオチド配列を有するRNAまたはDNA分子(例えば天然蛋白をコードする)を含む。
【0118】
上記母集団に存在する本発明の配列のマーカー蛋白をコードするマーカー遺伝子及び遺伝子の天然発生性対立遺伝子変異体に加えて、本発明のマーカー蛋白をコードする遺伝子のヌクレオチド配列には、突然変異によって変化を導入することができ、それによって、これらの蛋白の機能的活性は変化せずに、コードされた蛋白のアミノ酸配列を変化させ得ることは熟練せる当業者には理解できる。例えば、“非必須(non−essential)”アミノ酸残基におけるアミノ酸置換に導くヌクレオチド置換が起こり得る。“非必須”アミノ酸残基は、生物学的活性を変えることなく野生型蛋白配列から変化し得る残基であり、一方“必須”アミノ酸残基は生物学的活性のために必要である。例えば、或る遺伝子の対立遺伝子変異体または相同体のなかに(例えば異なる種からの遺伝子の相同体のなかに)保存されるアミノ酸残基は、特に変化しにくいと予想される。
【0119】
よって、本発明のもう一つの面は、活性のために必須でないアミノ酸残基に変化を含む本発明のマーカー蛋白をコードする核酸分子類に関係する。このような蛋白は、表1〜12に示される遺伝子によってコードされるマーカー蛋白とはアミノ酸配列が異なるが、それでも生物学的活性は保持する。一実施形態において、上記蛋白は本発明のマーカー蛋白に対して最低約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%またはそれ以上の相同性を有するアミノ酸配列を含む。
【0120】
本発明のマーカー蛋白に相同である蛋白をコードする分離核酸分子を作製するには、コードされた蛋白に一つ以上のアミノ酸の置換、付加または欠失が導入されるように、上記マーカー遺伝子をコードする遺伝子のヌクレオチド配列に一つ以上のヌクレオチド置換、付加または欠失を導入する。本発明の遺伝子(表1〜12に示す遺伝子等)に、部位突然変異及びPCR仲介性突然変異等の標準的方法によって突然変異を挿入することができる。1個以上の予測した非必須アミノ酸残基に保存的アミノ酸置換を行うのが好ましい。“保存的アミノ酸置換”とは、或るアミノ酸残基が同様な側鎖を有するアミノ酸残基に代わるというアミノ酸置換である。同様な側鎖を有するアミノ酸のファミリーは当業者には明らかである。これらのファミリーには、塩基性側鎖を有するアミノ酸(リジン、アルギニン、ヒスチジン等)、酸性側鎖を有するアミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸等)、電荷をもたない極性側鎖を有するアミノ酸(グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、システイン等)、無極性側鎖を有するアミノ酸(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン等)、ベータ−分岐側鎖を有するアミノ酸(スレオニン、バリン、イソロイシン等)及び芳香族側鎖を有するアミノ酸(チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン等)がある。或いは、突然変異は、本発明の遺伝子のコーディング配列の全部または一部に沿ってランダムに、例えば飽和突然変異等によって導入でき、生成した突然変異体を生物学的活性に関してスクリーニングし、活性を保持する突然変異体を同定する。突然変異後、コードされた蛋白が組換えによって発現し、その蛋白の活性を測定できる。
【0121】
本発明のもう一つの面は、本発明のマーカー遺伝子およびマーカー蛋白をコードする遺伝子に対してアンチセンスである分離核酸分子に関する。“アンチセンス”核酸は、或る蛋白をコードする“センス”核酸に相補的であるヌクレオチド配列、例えば二本鎖cDNAのコード鎖に相補的な、またはmRNA配列に相補的なヌクレオチド配列、を含む。よって、アンチセンス核酸は、センス核酸に水素結合することができる。上記アンチセンス核酸は、本発明の遺伝子(例えば表1〜12に示される遺伝子)の全コード鎖に相補的であっても、またはそれらの一部分だけに相補的であってもよい。一実施形態において、アンチセンス核酸分子は本発明のヌクレオチド配列のコード鎖の“コード領域”にアンチセンスである。用語“コーディング領域”は、アミノ酸に翻訳されるコドンを含むヌクレオチド配列領域を含む。もう一つの実施形態において、アンチセンス核酸分子は本発明のヌクレオチド配列のコード鎖の“非コード領域”に対してアンチセンスである。用語“非コード領域”とは、アミノ酸に翻訳されないコード領域の横にある5’及び3’配列(すなわち5’及び3’非翻訳領域とも呼ばれる)を含む。
【0122】
本発明のアンチセンス核酸はワトソン・クリック塩基対合法則によって設計された。上記アンチセンス核酸分子は、本発明の遺伝子に対応するmRNAの全コード領域に相補的でもよいが、上記コード領域または非コード領域の一部分だけにアンチセンスであるオリゴヌクレオチドであるのがより好ましい。アンチセンス オリゴヌクレオチドは例えば約5、10、15、20、25、30、35、40、45または50ヌクレオチドの長さでよい。本発明のアンチセンス核酸は当業者に公知の方法により、化学的合成及び酵素的結合反応を利用して作製される。例えばアンチセンス核酸(アンチセンス オリゴヌクレオチド等)は、天然に発生するヌクレオチド類、または分子の生物学的安定性を高め、またはアンチセンス核酸とセンス核酸との間で形成される二本鎖の物理的安定性を高めるようにデザインされた種々に変化したヌクレオチド類を使用して化学的に合成できる。例えばホスホロチオエート誘導体及びアクリジン置換ヌクレオチドを使用できる。アンチセンス核酸を生成するために使用できる変化したヌクレオチドの例には、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、ベータ−D−ガラクトシルケオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、ベータ−D−マンノシルケオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、シュードウラシル、ケオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、及び2,6−ジアミノプリンがある。或いは、核酸をアンチセンス方向にサブクローニングした発現ベクターを使用してアンチセンス核酸を生物学的に作製することができる(すなわち、以後のサブセクションにさらに説明するように、挿入された核酸から転写したRNAは、関心とする標的核酸に対してアンチセンス配向である)。
【0123】
本発明のアンチセンス核酸分子は、それらが本発明のマーカー蛋白をコードする細胞性mRNA及び/またはゲノミックDNAにハイブリッド化または結合し、それによって、例えば転写及び/または翻訳を阻害することによって蛋白の発現を抑制するように、対象に普通に投与されるか、またはin situ生産される。上記ハイブリッド化は安定な二重体(duplex)を形成するための一般的ヌクレオチド相補性によって起こり、または、例えばDNA二重体に結合するアンチセンス核酸分子の場合には、二重らせんの広い溝における特異的相互作用によって起こる。本発明のアンチセンス核酸分子の投与経路の例には、組織部位(例えば皮膚等)への直接注射がある。或いはアンチセンス核酸分子を選択した細胞を標的とするように変形し、それから全身的に投与することができる。例えば全身投与では、例えば上記アンチセンス核酸分子を細胞表面受容体または抗体に結合するペプチド類または抗体類と結合させることによって、上記アンチセンス分子が選択された細胞表面に発現した受容体または抗体に特異的に結合できるように上記アンチセンス分子を変形することができる。上記アンチセンス核酸分子は、本明細書に記載するベクターを使用して細胞に運搬することもできる。アンチセンス分子の十分な細胞内濃度を得るためには、上記アンチセンス核酸分子が強力なpolII またはpolIIIプロモータのコントロール下に置かれているベクター構成物が好ましい。
【0124】
もう一つの実施形態において、本発明のアンチセンス核酸分子はα−アノマー型核酸分子である。α−アノマー型核酸分子は、相補的RNAと特異的二本鎖ハイブリッドを形成する:そこでは通常のβ−ユニットとは異なり、鎖は互いにパラレルである(ガウルティール(Gaultier)ら(1987)Nucleic Acids Res.15巻:6625〜6641ページ)。上記アンチセンス核酸分子は2’−o−メチルリボヌクレオチド(イノウエら(1987)Nucleic Acids Res.15巻:6131〜6148ページ)またはキメラRNA−DNA同族体(イノウエら(1987)FEBS Lett.215巻:327〜330ページ)も含むことができる。
【0125】
また別の実施形態において、本発明のアンチセンス核酸はリボザイムである。リボザイムは、それらが相補的領域を有するmRNA等の一本鎖核酸を切断できるリボヌクレアーゼ活性を有する触媒的RNA分子である。例えばリボザイム(例えばハンマーヘッド リボザイム(ハーゼルホフ(Haselhoff)及びゲルラッハ(Gerlach)(1988)Nature 334巻:585〜591ページに記載))を使って本発明の遺伝子(表1〜12に示される遺伝子等)のmRNA転写体を触媒的に切断し、それによってこのmRNAの翻訳を阻害することができる。マーカー蛋白−コード化核酸に特異性を有するリボザイムは、ここに開示される本発明の遺伝子のヌクレオチド配列に基づいてデザインできる。例えば、活性部位のヌクレオチド配列がマーカー蛋白−コード化mRNAの切断すべきヌクレオチド配列に相補的である、テトラヒメナ(Tetrahymena) L−19 IVS RNAの誘導体を構成できる。Cechらの米国特許第4,987,071号;及びCechらの米国特許第5,116,742号を参照されたい。或いは、本発明の遺伝子から転写されたmRNAを使って、RNA分子のプールから特異的リボヌクレアーゼ活性を有する触媒的RNAを選択することができる。例えばバルテル(Bartel,D.)及びゾスタク(Szostak,J.W.)(1993)Science261巻:1411〜1418ページを参照されたい。
【0126】
或いは、これらの遺伝子の調節領域(プロモータ及び/またはエンハンサ等)に相補的なヌクレオチド配列をターゲティングし、標的細胞における上記遺伝子の転写を阻止する三重らせん構造を形成することによって、本発明の遺伝子(表1〜12に示す遺伝子等)の発現を阻止することができる。全般的に、ヘレン(Helene,C.)著(1991)Anticancer Drug Des.6(6):569〜84ページ;ヘレンら(1992)のAnn.N.Y.Acad.Sci.660巻27〜36ページ;及びメイハー(Maher,L.J.)(1992)のBioassays 14巻(12号):807〜15ページを参照されたい。
【0127】
もう一つの実施形態において、本発明の核酸分子を塩基部分、糖部分またはホスフェート主鎖部分において変化させて、例えば上記分子の安定性、ハイブリッド化、または溶解性を改善することができる。例えば、上記核酸分子のデオキシリボース燐酸主鎖を、ペプチド核酸を生成するように変化させることができる。(Hyrup B.ら(1996)Bioorganic & Medicinal Chemistry 4巻(1号):5〜23ページ)。ここに使用する用語“ペプチド核酸”または“PNA類は”、デオキシリボース燐酸主鎖が擬似ペプチド主鎖によって置換され、天然のヌクレオベース(nucleobases)が4つだけ残っている核酸模擬物、例えばDNA模擬物等を言う。PNA類の中性主鎖は低イオン強度の条件のもとでDNA及びRNAに特異的にハイブリッド化できることが判明している。PNAオリゴマーの合成は、Hyrup B.ら(1996)同上;Perry−O’Keefeら Proc.Natl.Acad.Sci.93巻:14670〜675ページに記載される標準的固相ペプチド合成プロトコルによって実施できる。
【0128】
PNA類は治療的及び診断的目的に使用できる。例えばPNA類をアンチセンスまたはアンチジーン(antigene)剤として使用し、例えば転写または翻訳停止を誘発し、または複製を抑制することによって、遺伝子発現を配列特異的に調節することができる。本発明の核酸分子(表1〜12に示される遺伝子等)のPNA類は、遺伝子における単塩基対突然変異の分析にも用いることができ(例えばPNA−指向性PCRクランピングにより);またはその他の酵素と組み合わせて使用する際には“人工的制限酵素”として(例えばS1ヌクレアーゼ類(HyrupB.(1996)同上));またはDNAシーケンシングまたはハイブリッド化のためのプローブまたはプライマーとしても(Hyrup B.ら(1996)同上;Perry−O’Keefe同上)用いることができる。
【0129】
また別の実施形態において、親油性基またはその他のヘルパー基をPNAに付着させることによって、PNA−DNAキメラの形成によって、またはリポソームの使用またはその他の当業者には公知の薬剤送達技術によって、PNA類を変化させることができる(PNA類の安定性または細胞への取り込みを高める等)。例えば、PNAとDNAの好都合の特性を組合わせた本発明の核酸分子のPNA−DNAキメラを作製することができる。このようなキメラはDNA認識酵素類(リボヌクレアーゼH及びDNAポリメラーゼ等)のDNA部分との相互作用を可能にし、他方PNA部分は高い結合親和性と特異性を与える。PNA−DNAキメラは、塩基列、ヌクレオベース間の結合数、及び方向に関して選択した適切な長さのリンカーを使用して結びつけることができる(Hyrup B.(1996)同上)。PNA−DNAキメラの合成はHyrup B.(1996)同上、及びフィン(Finn P.J.)ら(1996)Nucleic Acids Res.24巻(17号):3357〜63ページに記載されているように実施することができる。例えば、DNA鎖は標準的ホスホラミダイト(phosphoramidite)カップリング法を用いて固体支持体上で合成することができ、5’−デオキシ−チミジンホスホラミダイト等の改変ヌクレオチド同族体をPNAとDNAの5’末端との間に使用できる(マグ(Mag,M.)ら(1989)Nucleic Acids Res.17巻:5973〜88ページ)。PNAモノマー類を、その後、段階的につなぎ合わせ、5’PNAセグメントと3’DNAセグメントを有するキメラ分子を生成する(フィンら(1996)同上)。別法として5’DNAセグメントと3’PNAセグメントでキメラ分子を合成することができる(Peterser,K.H.ら(1975)Bioorganic Med.Chem.Lett.5巻:1119〜11124ページ)。
【0130】
その他の実施形態において、オリゴヌクレオチドはその他の付加基、例えばペプチド(in vivo ホスト細胞受容体をターゲティングするため)、または細胞膜を通過する運搬を容易にする作用物質等を含むことができる(レッチンガー(Letsinger)ら(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86巻:6553〜6556ページ;レマイター(Lemaitre)ら(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84巻:648〜652ページ;PCT公報WO88/09810等を参照)。その他に、オリゴヌクレオチドは、ハイブリッド化トリガード−切断剤(クロール(Krol)ら(1988)Bio−Techniques 6巻:958〜976ページ)または挿入剤(ゾン(Zon)(1988)Pharm.Res.5巻:539〜549ページ等を参照)で改変することができる。この目的のために、オリゴヌクレオチドをその他の分子(ペプチド、ハイブリッド化誘起−開裂剤、運搬剤、またはハイブリッド化誘起−開裂剤等)に結合してもよい。最後に、上記オリゴヌクレオチドは検出可能に標識化することができ、その標識が別の試薬(例えば酵素標識の際には基質)の添加によって検出されるか、または上記ヌクレオチドのハイブリッド化で直ちに検出できるようにする(例えば放射標識または蛍光標識等(米国特許第5,876,930号に記載される分子ビーコン等))。
【0131】
II.分離された蛋白及び抗体
本発明の一面は分離されたマーカー蛋白、及びその生物学的活性部分、並びに抗マーカー蛋白抗体を産生するための免疫原として適切に使用できるポリペプチドフラグメントに関係する。一実施形態において、天然マーカー蛋白は細胞または組織ソースから、標準的蛋白精製法を使用する適切な精製スキームによって分離できる。また別の実施形態において、マーカー蛋白は組換えDNA法によって生産される。組換え発現に代わって、マーカー蛋白またはポリペプチドは標準的ペプチド合成法を使用して化学的に合成できる。
【0132】
“分離された”または“精製した”蛋白またはその生物学的活性部分は上記マーカー蛋白が由来する細胞または組織からの細胞性物質またはその他の混入蛋白を実質的に含まず、または化学的に合成した際には化学的前駆体またはその他の化学物質を実質的に含まない。“細胞性物質を実質的に含まない”という言葉は、蛋白が細胞(上記蛋白がこの細胞から分離されまたは組換え生産された)の細胞性成分から分離されているマーカー蛋白の調製物を含む。一実施形態において、“細胞性物質を実質的に含まない”という言葉は、乾燥重量で約30%未満の非−マーカー蛋白(本明細書では“混入蛋白”とも言う)、より好ましくは約20%未満の非マーカー蛋白、最も好ましくは約10%未満の非−マーカー蛋白、さらにより好ましくは約5%未満の非マーカー蛋白を有するマーカー蛋白の調製物を含む。上記マーカー蛋白またはその生物学的に活性な部分が組換え法で生産される場合、好ましくはそれが培養培地を実質的に含まず、すなわち培養培地は上記蛋白調製物の体積の約20%未満であり、より好ましくは約10%未満であり、最も好ましくは約5%未満である。
【0133】
“化学的前駆体またはその他の化学物質を実質的に含まない”という言葉は、マーカー蛋白の合成に関係する化学的前駆体またはその他の化学物質から上記蛋白が分離されている上記マーカー蛋白の調製物を意味する。一実施形態において、“化学的前駆体またはその他の化学物質を実質的に含まない”という言葉は、約30%(乾燥重量)未満の化学的前駆体または非蛋白化学物質、より好ましくは約20%未満の化学前駆体または非蛋白化学物質、さらにより好ましくは約10%未満の化学的前駆体または非蛋白化学物質、そして最も好ましくは約5%未満の化学的前駆体または非蛋白化学物質を有する蛋白の調製物を意味する。
【0134】
本明細書に使用する、マーカー蛋白の“生物学的活性部分”とは、上記マーカー蛋白のアミノ酸配列と十分な相同性を有するか、または上記アミノ酸配列から誘導されるアミノ酸配列を含むマーカー蛋白のフラグメントを含む;これらのアミノ酸配列は完全長のマーカー蛋白より少ないアミノ酸を含み、マーカー蛋白の少なくとも一つの活性を示す。一般的には生物学的活性部分は上記マーカー蛋白の少なくとも一つの活性を有する領域または特徴部を含んでなる。マーカー蛋白の生物学的活性部分は例えば10、25、50、100、200またはそれ以上のアミノ酸長さであるポリペプチドでよい。マーカー蛋白依存性活性を調節する薬剤を開発するために、マーカー蛋白の生物学的活性部分を標的として使うことができる。
【0135】
好ましい実施形態において、マーカー蛋白は表1〜12に示す遺伝子によってコードされる。その他の実施形態において、上記マーカー蛋白は表1〜12に示す遺伝子によってコードされるマーカー蛋白と実質的に相同であり、上記マーカー蛋白の機能的活性を保有するが、上のサブセクションIに詳細に記載したように、天然の対立遺伝子変異または突然変異によりアミノ酸配列には差がある。よって、もう一つの実施形態においては、マーカー蛋白は、表1〜12に示す遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%またはそれ以上の相同性を有するアミノ酸配列を含む蛋白である。
【0136】
2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列のパーセント同一性を測定するために、これらの配列を最適比較の目的で整列(アラインメント)させる(例えば第一及び第二のアミノ酸または核酸の片方または両方にギャップを導入し、最適に整列させる。非相同性配列は比較の目的では無視することができる)。好ましい実施形態において、比較の目的で整列させる比較配列の長さは、比較配列の長さの最低30%、好ましくは最低40%、より好ましくは最低50%、さらにより好ましくは最低60%、さらにより好ましくは最低70%、80%、または90%である。それから対応するアミノ酸の位置またはヌクレオチドの位置のアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第一の配列の或る位置が、第二配列の対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占められている場合、それらの分子はその位置では同一である(ここで用いるアミノ酸または核酸の“同一性”は、アミノ酸または核酸の“相同性”と同等である)。2配列間のパーセント同一性は、2配列の最適整列のために導入しなければならないギャップの数及びギャップの長さを考慮に入れた、それら配列が共有する同一位置の数の関数である。
【0137】
配列の比較、及び2配列間のパーセント同一性の測定は数学的アルゴリズムを用いて行うことができる。好ましい実施形態において、2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性はニードルマン及びヴンシュ(J.Mol.Biol.(48):444〜453ページ)のアルゴリズム(これはGCGソフトウェアーパッケージ中のGAPプログラム(http://www.gcg.comで提供される)に組み込まれている)を用い、Blossom 62マトリックスまたはPAM250マトリックスのどちらか、及びギャップ重量16、14、12、10、8、6、または4及び長さ重量(a length weight)1、2、3、4、5または6を用いて測定される。もう一つの実施形態において、2つのヌクレオチド配列間のパーセント同一性はGCGソフトウエア パッケージのGAPプログラム(http://www.gcg.comで提供される)を用い、NWSgapdna.GCPマトリックス及びギャップ重量40、50、60、70または80、及び長さ重量1、2、3、4、5、または6を用いて決定される。もう一つの実施形態において、2つのアミノ酸またはヌクレオチド配列間のパーセント同一性は、マイヤー(E.Meyers)及びミラー(W.Miller)のアルゴリズム(CASIOS、4巻:11〜17ページ(1989))(これはALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている)を用い、PAM120重量残基表、ギャップ長さペナルティー12及びギャップペナルティー4を用いて決定される。
【0138】
本発明の核酸及び蛋白配列を“質問配列(query sequence)”として使用して、公開データベースを検索し、例えばその他のファミリーメンバーまたは関連配列の同定等をすることができる。このような検索はアルチュル(Altshul)ら(1990)J.Mol.Biol.215巻:403〜10ページのNBLAST及びXBLASTプログラム(バージョン2.0)を使用して実施できる。BLAST蛋白検索をXBLASTプログラム、スコア=50、ワード長さ=3で実施し、本発明のマーカー蛋白分子と相同のアミノ酸配列を得ることができる。比較の目的でギャップド アラインメントを行うために、アルチュルら(1997)のNucleic Acids Res.25巻(17号):3389〜3402ページに記載のようにギャップドBLASTを利用することができる。BLAST及びギャップドBLASTプログラムを利用する際には、関連プログラム(例えばXBLAST及びNBLAST等)のdefaultパラメーターを使用できる。http://www.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい。
【0139】
本発明はキメラまたは融合マーカー蛋白を提供する。ここに使用するマーカー“キメラ蛋白”または“融合蛋白”は非マーカーポリペプチドと機能的に結合するマーカーポリペプチドを含む。“マーカーポリペプチド”は表1〜12に示される遺伝子によってコードされるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含み、他方“非マーカーポリペプチド”は上記マーカー蛋白と実質的に相同でない蛋白、例えば同じまたは異なる生体から誘導される、マーカー蛋白とは異なる蛋白、に対応するアミノ酸配列を含む。マーカー融合蛋白内では、上記ポリペプチドはマーカー蛋白の全部または一部分に対応し得る。好ましい実施の形態において、マーカー融合蛋白はマーカー蛋白の少なくとも一つの生物学的活性部分を含む。融合蛋白では、用語“機能的に結合”とは、マーカーポリペプチドと非マーカーポリペプチドとがフレーム内で互いに融合することを示すものである。非マーカーポリペプチドはマーカーポリペプチドのN−末端またはC−末端に融合できる。
【0140】
例えば、一実施形態において、融合蛋白は、マーカー配列がGST配列のC−末端に融合しているGST−マーカー融合蛋白である。このような融合蛋白は組換えマーカー蛋白の精製を容易にすることができる。
【0141】
もう一つの実施形態において、融合蛋白はそのN−末端に非相同性(heterologous)のシグナル配列を含むマーカー蛋白である。或るホスト細胞において(例えば哺乳動物ホスト細胞)、マーカー蛋白の発現及び/または分泌が非相同性シグナル配列の使用によって増加することがある。このようなシグナル配列は当業者にはよく知られている。
【0142】
本発明のマーカー融合蛋白は本明細書に記載されるように、医薬組成物に組み込まれ、in vivoで対象に投与される。上記マーカー融合蛋白を使用して、マーカー蛋白基質の生体適合性に影響を与えることができる。マーカー融合蛋白は、例えば(i)マーカー蛋白をコードする遺伝子の異常変形または突然変異;(ii)マーカー蛋白−コード化遺伝子の誤調節;および(iii)マーカー蛋白の異常な翻訳後変形、によって生じる病気(例えばTh1またはTh2−関連性疾患等)の治療に有用である。
【0143】
さらに、本発明のマーカー融合蛋白は、対象における抗マーカー蛋白抗体を産生する免疫原として、マーカー蛋白リガンドの精製のために、そしてマーカー蛋白とマーカー蛋白基質との相互作用を阻止する分子を確認する選別診断に使用できる。
【0144】
好ましくは、本発明のマーカーキメラまたは融合蛋白は標準的組換えDNA法によって生成する。例えば異なるポリペプチド配列をコードするDNAフラグメント類を、結合のための平滑末端または千鳥末端の使用、適切な末端を提供するための制限酵素消化、凝集末端の適切な充填、不都合な結合を回避するためのアルカリ性ホスファターゼ処理、及び酵素結合等の一般的方法によって、きっちりと(in−frame)つなぎ合わせる。また別の実施形態において、上記融合遺伝子は自動DNA合成器等の一般的技術で合成できる。或いは遺伝子フラグメントのPCR増幅を、2つの連続する遺伝子フラグメントの間に相補的懸垂体を生じさせるアンカープライマーを使用して行うことができる。上記連続する2遺伝子フラグメントはその後アニーリングされ、再増幅されてキメラ遺伝子配列を生成する(Current Protocols in Molecular Biology)アウスユーべル(Ausubel)ら編集、ジョンウィリー&ソンズ:1992、等を参照されたい)。その上、すでに融合部分(GSTポリペプチド等)をコードする多くの発現ベクターが商業的に入手できる。マーカー蛋白−コーディング核酸は、上記融合部分がきっちりと上記マーカー蛋白に結合できるような発現ベクターにクローン化される。
【0145】
シグナル配列を使用して、関心とする分泌蛋白またはその他の蛋白の分泌及び分離を容易にすることができる。シグナル配列は、一般的に分泌中に一つ以上の切断事象によって成熟蛋白から切り離された疎水性アミノ酸のコアによって特徴づけられる。そのようなシグナルペプチドは、それらが分泌経路を通過する際に成熟蛋白からシグナル配列を切り離すことができるプロセッシング部位を含む。すなわち、本発明は、シグナル配列を有する上に記載のポリペプチド、並びに上記シグナル配列が蛋白分解的に切り離される(すなわち切断産物としての)上記ポリペプチドに関係する。一実施形態において、シグナル配列をコードする核酸配列を、発現ベクターにおいて、関心とする蛋白、例えば普通は分泌されないか、または分離が困難である蛋白に機能的に結合することができる。上記シグナル配列は、上記発現ベクターが変換された真核生物ホストからの蛋白分泌を方向づけ、上記シグナル配列はその後、または同時に切断される。その後上記蛋白は当業者には公知の方法によって、容易に細胞外媒体から精製される。或いは、上記シグナル配列は精製を容易にする例えばGSTドメイン等の配列を使用して関心とする蛋白に結合することができる。
【0146】
本発明はマーカー蛋白に対する作動物質(アゴニスト)(mimetics)または拮抗物質(antagonist)として機能する本発明のマーカー蛋白の変異体にも関係する。上記マーカー蛋白の変異体は、マーカー蛋白の離散点変異または切断(トランケーション)等の突然変異によって生成し得る。上記マーカー蛋白のアゴニストは天然発生型のマーカー蛋白の生物学的活性と実質的に同じ活性、またはその一部(サブセット)を保有し得る。マーカー蛋白の拮抗物質は、例えばマーカー蛋白の活性を競合的に調節することによって、上記天然発生型のマーカー蛋白の活性を一つ以上阻害する。そのため特異的生物学的効果が、制限された機能をもつ変異体による処理によって引き出される。一実施形態において、天然発生型の蛋白の生物学的活性のサブセットを有する変異体で対象を処理すると、天然発生型のマーカー蛋白による処理に比べて、対象に起きる副作用はより小さい。
【0147】
マーカー蛋白アゴニスト(mimetics)として、またはマーカー蛋白拮抗物質として機能するマーカー蛋白変異体は、マーカー蛋白の突然変異体、例えばトランケーション突然変異体等、の組み合わせライブラリーを、マーカー蛋白アゴニストまたは拮抗物質活性に関してスクリーニングすることによって確認できる。一実施形態において、マーカー蛋白変異体の異型(variegated)ライブラリーは、核酸レベルの組み合わせ突然変異によって作ることができ、異型遺伝子ライブラリーによってコードされる。マーカー蛋白変異体の異型ライブラリーは次のようにして作ることができる:例えば潜在的マーカー蛋白配列の変性セットが個々のポリペプチドとして発現するように、またはマーカー蛋白配列のセットを含むより大きい融合蛋白のセットとして(例えばファージ ディスプレー等)発現するように、合成オリゴヌクレオチドの混合物を酵素的にリゲーションして遺伝子配列を形成する等。変性オリゴヌクレオチドから潜在的マーカー蛋白変異体のライブラリーを作成するために使用できる方法はいろいろある。変性遺伝子配列の化学的合成は自動DNA合成器で行われ、合成遺伝子はその後適切な発現ベクターに結合(ligate)する。遺伝子の変性セットの使用により、潜在的マーカー蛋白配列の所望のセットをコードする全ての配列を一混合物中で供給することができる。変性オリゴヌクレオチドの合成法は当業者には知られている(ナラング(Narang,S.A.)Tetrahedron 39巻、3ページ;イタクラら(1984)Annu.Rev.Biochem.53巻:323ページ;イタクラら(1984)Science 198巻Nucleic Acids Res.11巻:477ページ等を参照されたい)。
【0148】
さらに、本発明のマーカー蛋白に対応する蛋白コーディング配列のフラグメントのライブラリーを利用してマーカー蛋白フラグメントの異型(variegated)集団を作り、それをスクリーニングし、その後マーカー蛋白の変異体を選択することができる。一実施形態において、コーディング配列フラグメント類のライブラリーを作るために、マーカー蛋白コーディング配列の二本鎖PCRフラグメントを、1分子あたり約1回だけニッキング(一本鎖におけるホスホジエステル結合の加水分解的切断)が起きるような条件のもとでヌクレアーゼ処理し、二本鎖DNAを変性し、そのDNAを復元し、種々のニッキング産物からのセンス/アンチセンス対を含むことができる二本鎖DNAを形成し、再生した二本鎖からS1ヌクレアーゼ処理によって一本鎖部分を除去し、生成したフラグメント ライブラリーを発現ベクターに結合(ligate)する。この方法で、マーカー蛋白のN−末端、C−末端及び種々の大きさの内部フラグメントをコードする発現ライブラリーが誘導できる。
【0149】
点変異またはトランケーションによって作られる組み合わせライブラリーの遺伝子産物をスクリーニングする方法及び選択された特性を有する遺伝子産物に関してcDNAライブラリーをスクリーニングする数種の方法が当業者には知られている。大規模遺伝子ライブラリーをスクリーニングする高処理量分析に適合した、最も広く使われる技術は、一般的に、上記遺伝子ライブラリーを複製可能の発現ベクターにクローニングすること、生成したベクターライブラリーで適切な細胞を形質変換すること、所望活性の検出によって遺伝子産物を生成したその遺伝子をコードするベクターの分離が容易になるような条件のもとで組合わせ遺伝子を発現すること等である。ライブラリー中の機能的突然変異体の頻度を高める新しい技術である反復アンサンブル(recursive ensemble)突然変異(REM)をスクリーニングアッセイと組み合わせて用い、マーカー変異体を同定することができる(アルキン(Arkin)及びユアヴァン(Yourvan)(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89巻:7811〜7815ページ;デルグレーブ(Delgrave)ら(1993)Protein Engineering6巻(3号):327〜331ページ)。
【0150】
分離されたマーカー蛋白、またはその部分またはフラグメントを免疫原として使用する、ポリクローナル及びモノクローナル抗体産生のための標準的方法を用い、マーカー蛋白に結合する抗体を産生することができる。完全長のマーカー蛋白を使用することができるが、その代わりに本発明はこれら蛋白の抗原性ペプチドフラグメントを作製し、免疫原として使用することもできる。マーカー蛋白の抗原性ペプチドは、表1〜12に示す遺伝子によってコードされるアミノ酸配列の最低8個のアミノ酸残基を含む。マーカー蛋白の抗原性ペプチドはマーカー蛋白のエピトープを含み、上記ペプチドに対して出現する抗体が上記マーカー蛋白と特異的免疫コンプレックスを形成するようにする。好ましくは上記抗原性ペプチドは少なくとも10個のアミノ酸残基を含み、より好ましくは少なくとも15個のアミノ酸残基、さらにより好ましくは少なくとも20個のアミノ酸残基、最も好ましくは少なくとも30個のアミノ酸残基を含む。
【0151】
抗原性ペプチドに含まれる好ましいエピトープは、マーカー蛋白の表面に位置する領域、例えば親水性領域並びに高い抗原性を有する領域である。
【0152】
一般的にはマーカー蛋白免疫原を使用して、適切な対象(ウサギ、ヤギ、マウスまたはその他の哺乳動物)を上記免疫原で免疫することによって抗体を作る。適切な免疫原性調製物には、例えば組換えによって発現するマーカー蛋白または化学的に合成されたマーカー ポリペプチドが含まれる。上記調製物はさらにフロイント(Freund)の完全または不完全補助薬(アジュバント)のようなアジュバント、または同様な免疫刺激剤を含むことができる。適切な対象を免疫原性マーカー蛋白調製物で免疫するとポリクローナル抗マーカー蛋白抗体反応が誘発される。
【0153】
よって、本発明のもう一つの面は抗マーカー蛋白抗体に関係する。本明細書で使用する用語“抗体”は、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫学的活性部分、すなわちマーカー蛋白のような抗原に特異的に結合する(すなわち上記抗原と免疫反応を起こす)抗原結合部位を含む分子等である。免疫グロブリン分子の免疫学的活性部分の例には、抗体をペプシン等の酵素で処理することによって生成するF(ab)及びF(ab’)2フラグメントがある。本発明はマーカー蛋白に結合するポリクローナル及びモノクローナル抗体を提供する。ここに用いられる用語“モノクローナル抗体”または“モノクローナル抗体組成物”には、特定のエピトープと免疫反応できる抗原結合部位を一種だけ含む抗体分子の集団が含まれる。したがってモノクローナル抗体組成物は、それが免疫反応を起こす特定のマーカー蛋白に対して単一の結合親和性をあらわすのが普通である。
【0154】
ポリクローナル抗マーカー蛋白抗体類は上記のように、適切な対象を本発明のマーカー蛋白で免疫することによって作られる。免疫された対象における抗マーカー蛋白抗体タイター(力価)を固定マーカー蛋白を用いる固相酵素免疫測定法(ELISA)のような標準的方法によって長時間モニターできる。所望ならば、マーカー蛋白に向けられる抗体分子を哺乳動物から(例えば血液から)分離し、蛋白Aクロマトグラフィー等の公知の方法によってさらに精製し、IgGフラクションを得ることができる。免疫後適切な時間に、例えば抗マーカー蛋白抗体タイターが最も高いときに、抗体産生細胞を対象から採取し、これを使用して、最初にコーラー及びミルスタイン(1975)がNature 256巻:495〜497ページに記載したハイブリドーマ法のような標準的方法によりモノクローナル抗体を作製する(ブラウン(Brown)ら(1981)J.Immunol.127巻:539〜46ページ;ブラウンら(1980)J.Biol.Chem.255巻:4980〜83ページ;Yehら(1976) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 76巻:2927〜31ページ;Yehら(1982)Int.J.Cancer 29巻:269〜75ページ)、EBV−ハイブリドーマ法(コール(Cole)ら(1985)、“モノクローナル抗体及びがん治療”アランR.リス社、77〜96ページ)またはトリオーマ法等も参照されたい)。ハイブリドーマによってモノクローナル抗体を生産する方法はよく知られている(全般的に、ケネス(R.H.Kenneth)“モノクローナル抗体:生物学的分析の新しい領域”プレナム出版社、ニューヨーク、ニューヨーク(1980);レルナー(E.A.Lerner)(1981)Yale J.Biol.Med.54巻:387〜402ページ;ゲフター(M.L.Gefter)ら(1977)Somatic Cell Genet.3巻:231〜36ページ)。つまり、不死細胞系(一般的には骨髄腫)を、上記のようにマーカー蛋白免疫原で免疫した哺乳動物からのリンパ球(一般的には脾細胞)に融合し、生成したハイブリドーマ細胞の培養上澄液をスクリーニングし、本発明のマーカー蛋白に結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを確認する。
【0155】
抗マーカー蛋白モノクローナル抗体を産生する目的のためには、リンパ球と不死化細胞系とを融合するために使われる多くの公知のプロトコルのいずれを用いてもよい(ガルフル(G.Galfre)ら(1977) Nature 266巻:55052;ゲフターら、Somatic Cell Genet.同上;レルナー、Yale J.Biol.Med.同上;ケネス、“モノクローナル抗体”同上、等を参照されたい)。さらに同業者は、このような方法に多くの有用な変法があることを理解する。一般的には上記不死細胞系(例えば骨髄腫細胞系)は上記リンパ球と同じ哺乳動物種から誘導される。例えばネズミハイブリドーマは、本発明の免疫原性調製物(プレパレーション)で免疫したマウスからのリンパ球と不死化マウス細胞系とを融合することによって作ることができる。好ましい不死細胞系は、ヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含む培養培地(“HAT”培地)に感受性のあるマウス骨髄腫細胞系である。多数の骨髄腫細胞系のいずれかを標準的方法による融合相手として使用することができる;例えばP3−NS1/1−Ag4−1、P3−x63−Ag8.653またはSp2/O−Ag14骨髄腫系列。これらの骨髄腫系列はATCCから入手できる。一般的には、ポリエチレングリコール(“PEG”)を使用してHAT−感受性マウス骨髄腫細胞をマウス脾細胞に融合する。その後、融合により生成したハイブリドーマ細胞をHAT培地を使用して選択する。上記培地は未融合の及び非生産的融合の骨髄腫細胞を殺す(未融合脾細胞は、形質変換されないため、数日後には死ぬ)。本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞は、標準的ELISAアッセイを用いて、マーカー蛋白に結合する抗体類に関して上記ハイブリドーマ培養培地上澄液をスクリーニングすることによって検出される。
【0156】
モノクローナル抗体分泌ハイブリドーマを作製する代わりに、モノクローナル抗−マーカー蛋白抗体は、組換え組み合わせ免疫グロブリン ライブラリー(抗体ファージ ディスプレー ライブラリー)をマーカー蛋白でスクリーニングし、それによってマーカー蛋白に結合する免疫グロブリン ライブラリー メンバーを分離することによって同定され、分離される。ファージ ディスプレー ライブラリーを作成、及びスクリーニングするためのキットは商業的に入手できる(例えば、ファルマシア組換えファージ抗体系、カタログ番号27−9400−01;及びストラタジーンSurfZAP(商品名)ファージ ディスプレー キット、カタログ番号240612等)。その他に、抗体ディスプレー ライブラリーの作成及びスクリーニングに特に使用しやすい方法及び試薬の例が次の文献に見いだされる:例えばラドナー(Ladner)ら、米国特許第5,223,409号;カング(Kang)ら、PCT国際公報WO92/18619;ドワー(Dower)ら、PCT国際公報WO91/17271;ウィンター(Winter)ら、PCT国際公報WO92/20791;マークランド(Markland)ら、PCT国際公報WO92/15679;ブライトリング(Breitling)ら、PCT国際公報WO93/01288;マッカファテイー(MaCafferty)ら、PCT国際公報WO92/01047;ガラード(Garrard)ら、PCT国際公報WO92/09690;ラドナーら、PCT国際公報WO90/02809;フックス(Fuchs)ら(1991)Bio/technology9巻:1370〜1372ページ;ヘイ(Hay)ら、(1992)Hum.Antibody Hybridomas 3巻:81〜85ページ;ヒューズ(Huse)ら(1989)Science 246巻:1275〜1281ページ;グリフィス(Griffiths)ら(1993)EMBO J 12巻:725〜734ページ;ホーキンス(Hawkins)ら(1992)J.Mol.Biol.226巻:889〜896ページ;クラークソン(Clarkson)ら(1991)Nature 352巻:624〜628ページ;グラム(Gram)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89巻:3576〜3580ページ;ガラードら(1991)Bio/technology 9巻:1373〜1377ページ;フーゲンブーム(Hoogenboom)ら(1991)Nuc.Acids Res.19巻:4133〜4137ページ;バーバス(Barbas)ら(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88巻:7978〜7982ページ;及びマッカファテイーら、Nature(1990)348巻:552〜554ページ、等。
【0157】
その他に、ヒト及び非ヒト部分を両方含む、キメラ及びヒト化モノクローナル抗体等の組換え抗−マーカー蛋白抗体(これらは標準的組換えDNA法を使用して作製される)も本発明の範囲内である。これらのキメラ及びヒト化モノクローナル抗体は当業者には公知の組換えDNA法によって、例えば次の特許公報等に記載されている方法を用いて生産できる:ロビンソン(Robinson)ら、国際特許出願第PCT/US86/02269号;アキラ(Akira)ら、欧州特許出願第184,187号;タニグチ(Taniguchi M.)、欧州特許出願第171,496号;モリソン(Morrison)ら、欧州特許出願第173,494号;ノイバーガー(Neuberger)ら、PCT国際公報第WO86/01533;キャビリー(Cabilly)ら、米国特許第4,816,567号;キャビリーら、欧州特許出願第125,023号;ベター(Better)ら(1988)Science 240巻:1041〜1043ページ;リウ(Liu)ら(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84巻:3439〜3443ページ;リウら(1987)J Immunol 139巻:3521〜3526;サン(Sun)ら(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84巻:214〜218ページ;ニシムラら(1987)Canc.Res.47巻:999〜1005ページ;ウッド(Wood)ら(1985)Nature 314巻:446〜449ページ;及びシャウ(Shaw)ら(1988)J.Natl.Cancer Inst.80巻:1553〜1559ページ;モリソンら(1985)Science 229巻:1202〜1207ページ;オイ(Oi)ら(1986)Bio techniques 4巻:214ページ;ウィンター、米国特許第5,225,539号;ジョーンズ(Jones)ら(1986)Nature 321巻:552〜525ページ;ベルホヤン(Verhoeyan)ら(1988)Science 239巻:1534ページ;及びバイドラー(Beidler)ら(1988)J Immunol 141巻:4053〜4060ページ等。
【0158】
ヒトの治療的処置のためには完全なヒト抗体が特に望ましい。このような抗体は、内因性免疫グロブリン重鎖及び軽鎖遺伝子を発現することはできないが、ヒト重鎖及び軽鎖遺伝子を発現することはできるトランスジェニック(遺伝子導入)マウスを使って生産できる。上記トランスジェニックマウスを、選択される抗原、例えば本発明のマーカーに対応するポリペプチドの全部または一部分で、通常のやり方で免疫する。上記抗原に対するモノクローナル抗体は、一般的ハイブリドーマ技術を使用して得ることができる。トランスジェニックマウスに取り込まれたヒト免疫グロブリン トランスジーンはB細胞の分化中に再配列され、引き続きクラス スイッチング及び体細胞変異を受ける。このような方法を利用して、治療的に有用なIgG、IgA及びIgE抗体を産生することができる。このヒト抗体の産生法の全体像を知るには、ロンバーグ(Lonberg)及びフスツァー(Huszar)(1995)Int.Rev.Immunol.13巻:65〜93ページを参照されたい。ヒト抗体及びヒトモノクローナル抗体のこの産生法及びこのような抗体類を産生するプロトコルの詳細な議論については、米国特許第5,625,126号;米国特許第5,633,425号;米国特許第5,569,825号;米国特許第5,661,016号;及び米国特許第5,545,806号等を参照されたい。この他に、アプゲニックス社(Abgenix,Inc.)(フリーモント、CA)等の複数の会社が、選択された抗原に対するヒト抗体を上記に類似の技術を使用して提供することを保証している。
【0159】
選択されたエピトープを認識する完全なヒト抗体は、“ガイデド・セレクション(guided selection)”と呼ばれる方法を用いて生産することができる。この方法では、選択された非ヒトモノクローナル抗体、例えばネズミ抗体等、を使用して、同じエピトープを認識する完全ヒト抗体の選択をガイドする。(ジェスパース(Jespers)ら、1994、Bio/technology 12巻:899〜903ページ)抗マーカー蛋白抗体(モノクローナル抗体等)を使用し、アフィニティークロマトグラフィーまたは免疫沈殿等の標準的方法によって、本発明のマーカー蛋白を分離することができる。抗−マーカー蛋白抗体は、細胞からの天然マーカー蛋白の精製、及びホスト細胞に発現する組換え生産されたマーカー蛋白の精製を容易にする。その上、抗−マーカー蛋白抗体を使用してマーカー蛋白(例えば細胞溶解物または細胞上澄液中のマーカー蛋白)を検出し、上記マーカー蛋白の発現量及び発現パターンを評価することができる。抗−マーカー蛋白抗体を使用して、臨床試験操作等の一部として組織中の蛋白レベルを診断的にモニターし、例えば或る治療法の有効性を確認することができる。上記抗体を検出可能物質に結合(すなわち物理的結合)することによって、検出は容易になる。検出可能物質の例は種々の酵素類、置換基、蛍光物質、発光物質、生発光物質、及び放射性活性物質がある。適切な酵素の例にはホースラディッシュ ペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、ガラクトシダーゼまたはアセチルコリンエステラーゼがある;適切な置換基複合体の例にはストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチン等があり、適切な蛍光物質にはウンベリフェロン、フルオレッセイン、フルオレッセイン イソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミン フルオレッセイン、ダンシルクロリドまたはフィソエリスリン等があり;生発光物質の例にはルシフェラーゼ、ルシフェリン、エクォリン等があり、適切な放射性物質には125I、131I、35SまたはHがある。
【0160】
III.組換え発現ベクター及びホスト細胞
本発明のまた別の面は、本発明のマーカー蛋白(またはその一部分)をコードする核酸を含むベクター類、好ましくは発現ベクター類に関係する。本明細書に使用する用語“ベクター”は、別の核酸と結合してそれを運搬できる核酸分子を含む。ベクターの一つの型は“プラスミド”であり、それは円形の二本鎖DNAループを含んでなり、そのループにはその他のDNAセグメントが結合できる。もう一つの型のベクターはウィルスベクターであり、この場合、別のDNAセグメントがウィルスゲノムに結合することができる。若干のベクターは、それらが導入されたホスト細胞において自己複製することができる(細菌性複製開始点を有する細菌ベクター、及びエピソーマル哺乳動物ベクター等)。その他のベクター類(非エピソーマル哺乳動物ベクター類)はホスト細胞に導入されるとこのホスト細胞のゲノムに組み込まれ、それによってホストゲノムと共に複製される。さらに、若干のベクターは、これらベクターが操作可能に結合している遺伝子の発現を指令することができる。このようなベクターを本明細書では“発現ベクター”と呼ぶ。概して組換えDNA法に利用される発現ベクターはプラスミドの形であることが多い。本明細書において用語“プラスミド”及び“ベクター”は代替的に使用される。なぜならばプラスミドは、ベクターの最も一般的に使用される形だからである。しかし、本発明は、ウィルスベクター(複製欠陥レトロウィルス類、アデノウィルス類、アデノ−関連ウィルス類等)のような、同等な機能に役立つその他の型の発現ベクターも含むものとする。
【0161】
本発明の組換え発現ベクターは、本発明の核酸を、上記核酸をホスト細胞に発現させるのに適した形で含む。これは上記組換え発現ベクターが、発現するために使用されるホスト細胞によって選択される、発現すべき核酸配列に操作可能に結合した1つ以上の調節配列を含むことを意味する。組換え発現ベクターに関連して、“機能的に結合する”とは、関心とするヌクレオチド配列が上記調節配列に、上記ヌクレオチド配列を発現させるような仕方で結合することを意味する(例えば、in vitro転写/翻訳系において、またはベクターがホスト細胞に導入される場合はホスト細胞において)。用語“調節配列”はプロモーター、エンハンサー、及びその他の発現コントロール要素(例えば、ポリアデニレーション シグナル等)を含むものとする。このような調節配列は例えばゴエデル(Goeddel);“遺伝子発現テクノロジー:酵素学的方法”185、アカデミックプレス、サンジェゴ、CA(1990)に記載されている。調節配列には、多くの種類のホスト細胞においてヌクレオチド配列の構成的発現に関するもの、及び或る種のホスト細胞においてのみヌクレオチド配列の発現に関係するもの(組織特異的調節配列等)がある。発現ベクターの設計は、転換されるホスト細胞の選択、所望蛋白の発現レベル等の要因に依存することは熟練せる当業者には当然である。本発明の発現ベクターはホスト細胞に導入され、それによって、ここに記載のように核酸によってコードされる蛋白またはペプチド(融合蛋白またはペプチドも含む)を生成することができる(マーカー蛋白、マーカー蛋白の突然変異体型、融合蛋白等)。
【0162】
本発明の組換え発現ベクターは原核または真核生物細胞においてマーカー蛋白を発現するために設計される。例えばマーカー蛋白は大腸菌(E.coli)のような細菌細胞、昆虫細胞(バクロウィルス発現ベクターを使用)、酵母細胞または哺乳動物細胞に発現される。適切なホスト細胞は、ゴエデル(Goeddel);“遺伝子発現テクノロジー:酵素学的方法”185、アカデミックプレス、サンジェゴ、CA(1990)において、より詳細に議論されている。或いは上記組換え発現ベクターは、in vitroで例えばT7プロモーター調節配列及びT7ポリメラーゼを使用して転写及び翻訳することができる。
【0163】
原核生物における蛋白の発現は、大腸菌において、融合または非融合蛋白どちらかの発現を指令する形成性または誘発性プロモーターを含むベクターで行うのが最も一般的である。融合ベクターは多数のアミノ酸を、そのベクターでコードされる蛋白に、普通は組換え蛋白のアミノ末端に付加する。このような融合ベクターは一般的には3つの目的に役立つ:1)組換え蛋白の発現を増やす;2)上記組換え蛋白の溶解度を高める;3)アフィニティー精製におけるリガンドとして働くことによって上記組換え蛋白の精製を促進する。融合発現ベクターにおいては、タンパク分解的切断部位が融合部分と組換え蛋白との接合部に導入され、融合蛋白の精製に続いて行われる上記組換え蛋白と上記融合部分との分離を可能にすることがよくある。このような酵素類、及びそれらの同種の(cognate)認識配列には、ファクターXa、トロンビン及びエンテロキナーゼがある。典型的融合発現ベクターにはpGEX(ファルマシア バイオテック社;スミス(Smith,D.B.)及びジョンソン(Johnson,K.S.)1988、Gene 67巻:31〜40ページ)、pMAL(ニューイングランド ビオラボ、ビバリー、MA)及びpRIT5(ファルマシア、ピスカタウェイ、NJ)がある。これらはそれぞれグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合蛋白、またはプロテインAを、標的の組換え蛋白に融合する。
【0164】
精製融合蛋白類はマーカー活性アッセイ(以下に詳細に記載される直接アッセイまたは競合アッセイ)に使用でき、またはマーカー蛋白に特異的な抗体の作製等に利用できる。
【0165】
適切な誘導性非融合大腸菌発現ベクターの例にはpTrc(アマン(Amann)ら(1988)Gene 69巻:301〜315ページ)、及びpET11d(スタディア(Studier)ら、遺伝子発現テクノロジー:酵素学的方法185、アカデミックプレス、サンジエゴ、カリフォルニア(1990)60〜89ページ)がある。pTrcベクターからの標的遺伝子発現は、ハイブリッド trp−lac融合プロモーターからのホストRNAポリメラーゼ転写に依存する。pET11dベクターからの標的遺伝子発現は、同時発現のウィルスRNAポリメラーゼ(T7gnl)によって仲介されるT7 gn10−lac融合プロモーターからの転写に依存する。このウィルスポリメラーゼは、ホスト菌株BL21(DE3)、またはT7 gnl遺伝子を担うレジデントプロファージからのHMS174(DE3)によって、lacUV5プロモーターの転写コントロールのもとで供給される。
【0166】
大腸菌の組換え蛋白の発現を最大にする一つの方法は、損傷された(impaired)能力を有するホスト細菌において上記蛋白を発現させ、上記組換え蛋白を蛋白切断的に切り離すことである(ゴッテスマン(Gottesman,S.)遺伝子発現テクノロジー:酵素学的方法 185、アカデミックプレス、サンジエゴ、カリフォルニア(1990)119〜128ページ)。もう一つの方法は、発現ベクターに挿入すべき核酸の核酸配列を改変して、各アミノ酸の個々のコドンが優先的に大腸菌に使用されるようにすることである(ワダら(1992)Nucleic Acids Res.20巻:2111〜2118ページ)。本発明の核酸配列のこのような改変は標準的DNA合成法によって達成できる。
【0167】
もう一つの実施形態において、マーカー蛋白発現ベクターは酵母発現ベクターである。酵母S.cerevisiaeに発現するベクター類の例にはpYepSecl(バルダリ(Baldari)ら(1987)Embo J.6巻:229〜234ページ)、pMFa(Kurjan & Herskowitz(1982)Cell 30巻:933〜943ページ)、pJRY88(シュルツ(Schultz)ら(1987)Gene 54巻:113〜123ページ)、pYES2(インビトロゲン・コーポレーション、サンジエゴ、CA)及びpicZ(インビトロゲン・コーポレーション、サンジエゴ、CA)等がある。
【0168】
或いは、本発明のマーカー蛋白はバクロウィルス発現ベクターを使用して昆虫細胞に発現される。培養昆虫細胞(Sf9細胞等)における蛋白の発現に使用できるバクロウィルスベクターにはpAcシリーズ(スミスら(1983)Mol.Cell Biol.3巻:2156〜2165ページ)及びpVLシリーズ(ルックロー(Lucklow)及びサマーズ(Summers)(1989)Virology 170巻:31〜39ページ)がある。
【0169】
また別の実施形態において、本発明の核酸は哺乳動物発現ベクターの使用により哺乳動物細胞に発現される。哺乳動物発現ベクターの例にはpCDM8(シード(Seed,B.)(1987)Nature 329巻:840ページ)及びpMT2PC(カウフマン(Kaufman)ら、(1987)EMBO J.6巻:187〜195ページ)がある。哺乳動物細胞に使用する際、上記発現ベクターのコントロール機能はウィルス調節要素によって与えられることが多い。例えば、一般に使用されるプロモーターは、ポリオーマ、アデノウィルス2、サイトメガロウィルス及びシミアンウィルス40から誘導される。原核及び真核生物細胞両方のその他の適切な発現系については、サムブルック、フリッチ、マニアチス著“分子クローニング:実験室マニュアル”第2版、コールドスプリング・ハーバー・ラボラトリー、コールドスプリング ハーバー ラボラトリー プレス、コールドスプリングハーバー、NY、1989、の16章及び17章を参照されたい。
【0170】
また別の実施形態において、組換え哺乳動物発現ベクターにより、核酸の発現を優先的に特定の細胞型に指令することができる(例えば組織特異的調節要素を使用して上記核酸を発現する)。組織特異的調節要素は当業者には公知である。適切な組織特異的プロモーターの非制限的例にはアルブミン プロモーター(肝臓特異的;ピンカート(Pinkert)ら、(1987)Gene Dev.1巻:268〜277ページ)、リンパ組織−特異的プロモーター(カラム(Calame)及びイートン(Eaton)(1988)Adv.Immunol.43巻:235〜275ページ)、特にT細胞受容体のプロモーター(ウィノト(Winoto)及びバルチモア(Baltimore)(1989)EMBO J.8巻:729〜733ページ)及び免疫グロブリン(バナージ(Banerji)ら(1983)Cell 33巻:729〜740ページ;クイーン(Queen)及びバルチモア(1983)Cell 33巻:741〜748ページ)ニューロン特異的プロモーター(神経線維プロモーター等;バイルン(Byrne)及びラドル(Ruddle)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86巻:5473〜5477ページ)、膵臓−特異的プロモーター(エドランド(Edlund)ら(1985)Science 230巻:912〜916ページ)、及び乳腺特異的プロモーター(ミルクホエー プロモーター等;米国特許第4,873,316号及び欧州特許出願第264,166号)がある。発生的に調節されるプロモーターも含まれる;例えばネズミ hox プロモーター(ケッセル(Kessel)及びグルス(Gruss)(1990)Science 249巻:374〜379ページ)及びα−フェトプロテイン プロモーター(キャンプス(Campes)及びチルグマン(Tilghman)(1989)Gene Dev.3巻:537〜546ページ)等である。
【0171】
本発明はさらに、アンチセンス配向の発現ベクターにクローン化された本発明のDNA分子を含んでなる組換え発現ベクターも提供する。すなわち上記DNA分子は、本発明の遺伝子(表1〜12に示す遺伝子等)に対応するmRNAにアンチセンスであるRNA分子を(上記DNA分子の転写により)発現させ得るような仕方で、調節配列に機能的に結合する。アンチセンス方向にクローン化された核酸に機能的に結合し、種々の細胞型におけるアンチセンスRNA分子の連続的発現を指令する調節配列、例えばウィルス プロモーターおよび/またはエンハンサー等を選択することができる。またはアンチセンスRNAの構成的、組織特異的または細胞型特異的発現を指令する調節配列を選択することができる。上記アンチセンス発現ベクターは、組換えプラスミド、ファージミドまたはアテニュエーテド(転写減衰)ウィルスの形でよい;これらにおいてはアンチセンス核酸は高効率の調節領域のコントロール下で産生され、その活性は上記ベクターが導入される細胞型によって決定できる。アンチセンス遺伝子を使用する遺伝子発現調節の議論に関しては、ワイントラウプ(Weintraub,H)ら、“遺伝子分析の分子ツールとしてのアンチセンスRNA”Reviews−Trends in Genetics、1巻(1号)(1986)を参照されたい。
【0172】
本発明のまた別の面は、本発明の核酸分子が導入されるホスト細胞に関係する。例えば、ホスト細胞のゲノムの特異的部位に相同的に組換えられ得る配列を含む本発明の組換え発現ベクターまたは核酸分子の範囲内で、表1〜12に示される遺伝子である。用語“ホスト細胞”及び“組換えホスト細胞”は本明細書では代替的に使用される。このような用語は特定の対象細胞だけでなく、そのような細胞の子孫または潜在的子孫も意味する。連続する世代において、突然変異または環境的影響によって若干の変化が起こり得るから、このような子孫は実際に親細胞と同一でないかも知れないが、本明細書で使用するこの用語の範囲内には含まれる。
【0173】
ホスト細胞は原核または真核生物細胞いずれでもよい。例えば本発明のマーカー蛋白は大腸菌のような細菌細胞、昆虫細胞、酵母または哺乳動物細胞(チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)またはCHO細胞)に発現できる。その他の適切なホスト細胞は熟練せる当業者には公知である。
【0174】
ベクターDNAは一般的トランスフォーメーションまたはトランスフェクション法によって原核または真核生物細胞に導入される。ここに使用する用語“トランスフォーメーション”及び“トランスフェクション”は外来核酸(例えばDNA)をホスト細胞に導入するための、当業者に認知される種々の方法、例えば燐酸カルシウムまたは塩化カルシウム共沈殿、DEAE−デキストラン依存性トランスフェクション、リポフェクション、またはエレクトロポレーション等を言う。ホスト細胞をトランスフォーメーションまたはトランスフェクシオンを行う適切な方法はサムブルックら“分子クローニング:実験室マニュアル”第2版、コールドスプリング・ハーバー・ラボラトリー、コールドスプリング ハーバー ラボラトリー プレス、コールドスプリングハーバー、NY、1989、及びその他の実験室マニュアルに見いだすことができる。
【0175】
哺乳動物細胞の安定なトランスフェクションでは、使用する発現ベクター及びトランスフェクション法に応じて、細胞の小部分だけがそれらのゲノムに外来DNAを組み込む。これら組み込まれたものを確認し、選択するために、選択可能マーカー(例えば抗生物質に対する耐性)をコードする遺伝子を関心とする遺伝子と共にホスト細胞に導入するのが一般的である。好ましい選択可能のマーカーには、G418、ヒグロマイシン及びメトトレキセート等の薬剤に対する耐性を与えるもの等がある。選択可能マーカーをコードする核酸は、マーカー蛋白をコードする核酸と同じベクター上でホスト細胞に導入してもよいし、または別々のベクターで導入してもよい。導入された核酸で安定的にトランスフェクトされた細胞は薬剤選択性によって確認できる(例えば、選択可能マーカー遺伝子を組み込んだ細胞は生存し続け、他の細胞は死ぬ)。
【0176】
培養培地中の本発明のホスト細胞、例えば原核細胞または真核細胞を使ってマーカー蛋白を産生(すなわち発現)できる。よって、本発明はさらに本発明のホスト細胞を使ってマーカー蛋白を産生する方法を提供する。一実施形態において、この方法は本発明のホスト細胞(そのなかにマーカー蛋白をコードする組換え発現ベクターが導入されている)を適切な培地に、本発明のマーカー蛋白が産生するように培養することを含んでいる。もう一つの実施形態において、この方法はさらに、上記培地または上記ホスト細胞からマーカー蛋白を分離することも含む。
【0177】
本発明のホスト細胞を使ってヒト以外の遺伝子導入(トランスジェニック)動物を得ることができる。例えば一実施形態において、本発明のホスト細胞は、マーカー蛋白のコード配列が導入されている受精した卵母細胞または胚性幹細胞である。このようなホスト細胞をその後使って、本発明のマーカー蛋白をコードする外因性配列がゲノムに導入されている非ヒト−トランスジェニック動物、または本発明のマーカー蛋白をコードする内因性配列が改変された相同性組換え動物を作り出すことができる。このような動物は、マーカー蛋白の機能および/または活性を研究するために、そしてマーカー蛋白活性のモジュレーターを確認および/または評価するために有用である。ここに使用する用語“トランスジェニック動物”とは、上記動物の細胞の一つ以上が導入遺伝子(トランスジーン)を含む、非ヒト動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはラットまたはマウス等の囓歯類である。トランスジェニック動物のその他の例には、非ヒト−霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ヤギ、ヒナドリ、両生類等がある。導入遺伝子は、トランスジェニック動物の発生の元である細胞のゲノムに組み込まれ、成熟動物のゲノムにそのまま残り、それによってトランスジェニック動物の一つ以上の細胞型または組織におけるコードされた遺伝子産物の発現を方向づける外因性DNAである。本明細書に使用する“相同性組換え動物”とは、本発明の内因性遺伝子(例えば表1〜12に示す遺伝子等)が、この内因性遺伝子と、発生前の上記動物の細胞、例えば上記動物の胚細胞等、に導入された外因性DNA分子との間の相同性組換えによって変えられた、非ヒト−動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはマウスである。
【0178】
本発明のトランスジェニック動物は、マーカーをコードする核酸をマイクロインジェェクションやレトロウィルス感染等によって受精卵母細胞の雄性前核に挿入し、前記卵母細胞を偽妊娠雌里親動物(pseudopregnant female foster animal)に発達させることによって作り出される。イントロン配列及びポリアデニルシグナルも導入遺伝子に含まれ、導入遺伝子の発現効率を高める。組織特異的調節配列を導入遺伝子に操作可能に結合させ、マーカー蛋白の発現を特定細胞に指令することができる。胚操作及びマイクロインジェェクションによってトランスジェニック動物、特にマウス等を作り出す方法は、当業者には一般的になっており、米国特許第4,736,866号及び第4,870,009号(両方共レダー(Leder)らの特許である)、ワグナー(Wagner)らの米国特許第4,873,191号、そしてホーガン(Hogan B.)、“マウス胚の操作”(コールド スプリング ハーバー ラボラトリー プレス、コールド スプリング ハーバー、N.Y.1986)等に記載されている。同様な方法がその他のトランスジェニック動物の生成のために使用される。トランスジェニック ファウンダー(founder)動物はそのゲノム中の本発明の導入遺伝子の存在、および/またはその動物の組織または細胞における本発明の遺伝子に対応するmRNAの発現に基づいて確認される。さらに、トランスジェニック ファウンダー動物を使って上記導入遺伝子を担う動物を繁殖させることができる。さらに、その上マーカー蛋白をコードする導入遺伝子を担うトランスジェニック動物をその他の導入遺伝子を担うその他のトランスジェニック動物につがわせることもできる。
【0179】
相同性組換え動物を作り出すために、本発明の遺伝子の少なくとも一部分を含むベクターを作製する;上記ベクターには欠失、付加または置換が導入され、それによって上記遺伝子を改変し、例えば機能崩壊を起させる。上記遺伝子はヒト遺伝子でもよいが、本発明のヒト遺伝子(表1〜12に示す遺伝子等)の非ヒト相同体であるのがより好ましい。例えばマウス遺伝子を使ってマウスゲノム中の本発明の内因性遺伝子を適切に改変する相同性組換え核酸分子、例えばベクターを構成できる。好ましい実施の形態において、相同性組換え核酸分子は、相同性組換えで、本発明の内因性遺伝子が機能的に崩壊する(すなわちもはや機能的蛋白をコードしない;“ノックアウト”ベクターとも呼ばれる)ようにデザインされる。或いは、相同性組換え核酸分子は、相同性組換えで、内因性遺伝子が突然変異しまたはそれ以外に変化し、だが機能的蛋白をコードすることはできるようにデザインされる(例えば上流調節領域が改変され、それによって内因性マーカー蛋白の発現が変化する)。相同性組換え核酸分子において、本発明の遺伝子の上記改変部分を本発明の遺伝子の別の核酸配列によって5’及び3’末端の横に存在し、上記相同性組換え核酸分子に担われる外因性遺伝子と、細胞中、例えば胚性幹細胞中の内因性遺伝子との間に相同性組換えを起こさせる。上記追加された横に存在する(フランキング)核酸配列は、上記内因性遺伝子とうまく相同性組換えするのに十分な長さである。一般的に数キロベースのフランキングDNA(5’及び3’末端の両方)が相同性組換え核酸分子に含まれる(相同性組換えベクターについては、トーマス(Thomas,K.R.)及びキャペッチ(Capecchi,M.R.)(1987)Cell 51巻:503ページを参照されたい)。相同性組換え核酸分子は細胞、例えば胚性幹細胞系に(エレクトロポレーション等によって)導入され、導入された遺伝子が内因性遺伝子と相同性組換えを行った細胞が選択される(リーら(1992)Cell 69巻:915ページ)。選択された細胞をその後動物(マウス等)の胚盤胞に注入し、集合キメラを形成する(ブラドリー(Bradley,A.)“奇形癌及び胚性幹細胞:実際的アプローチ”ロバートソン(E.J.Robertson)編集(IRL、オックスフォード、1987)113〜152ページ)。キメラ胚をその後適切な偽妊娠雌里親動物に移植し、満期に達せしめる。相同性組換えを行ったDNAを生殖細胞内に宿す子孫を使って、導入遺伝子の生殖細胞系伝達によって全細胞が相同的に組換えられたDNAを含む動物を繁殖させることができる。ベクター等の相同性組換え核酸分子、または相同性組換え動物を構成する方法は、ブラドリー(1991)Current Opinion in Biotechnology 2巻:823〜829ページ及びルマウレク(Le Mouellec)らのスミシーズ(Smithies)らのPCT国際特許出願WO90/11354;WO91/01140;ZijlrtraらのWO92/0968;及びベルンス(Berns)らのWO93/04169にも記載されている。
【0180】
また別の実施形態において、導入遺伝子の調節された発現を可能にする選択された系を含むトランスジェニック非ヒト動物を作り出すことができる。このような系の一例は、バクテリオファージP1のcre/loxPリコンビナーゼ系である。cre/loxPリコンビナーゼ系の説明に関しては、ラクソ(Lakso)ら(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 6232〜6236ページを参照されたい。リコンビナーゼ系のもう一つの例はSaccaromyces cerevisiaeのFLPリコンビナーゼ系である(オゴルマン(O’Gorman)ら(1991)Science251巻:1351〜1355ページ)。cre/loxPリコンビナーゼ系を使って導入遺伝子の発現を調節する場合、Creリコンビナーゼと選択された蛋白とを両方コードする導入遺伝子を含む動物が必要である。このような動物は、例えば2匹のトランスジェニック動物(一匹は選択された蛋白をコードする導入遺伝子を含み、他はリコンビナーゼをコードする導入遺伝子を含む)をつがわせることによつて、“二重”トランスジェニック動物を作ることにより提供される。
【0181】
本明細書に記載される非ヒドトランスジェニック動物のクローンも、ウィルムート(Wilmut,I)ら(1997)Nature 385巻:810〜813ページ及びPCT国際特許出願WO97/07668及びWO97/07669に記載の方法によって産生される。つまり、トランスジェニック動物から1つの細胞、例えば体細胞を分離し、増殖サイクルを出てGフェースに入るように誘導する。それから上記静止細胞を、電気的パルス等の使用によって、上記静止細胞が分離されたのと同じ種の動物からの除核卵母細胞に融合することができる。再構成された卵母細胞を培養して、それを桑実胚(morula)または未分化胎細胞に発達させ、その後偽妊娠雌里親動物に移す。この雌里親動物から産まれた子孫は、上記細胞、例えば体細胞を分離した上記動物のクローンをもつ。
【0182】
IV.医薬組成物
本発明の核酸分子(例えば表1〜12に示す遺伝子等)、本発明のマーカー蛋白フラグメント、及び本発明の抗−マーカー蛋白抗体(ここでは“活性化合物”とも呼ばれる)は、適切に投与できる医薬組成物に組み込むことができる。このような組成物は一般的には核酸分子、蛋白または抗体と、薬物学的に容認される担体とを含む。ここで用いられる用語“薬物学的に容認される担体”は、薬剤投与に適合するいずれかの、または全ての溶媒類、分散媒質、コーティング類、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張性及び吸収遅延性作用物質等を含むものとする。薬物学的活性物質にこのような媒質を使用することは当業者にはよく知られている。何らかの一般的媒体または作用物質が上記活性化合物と不適合でない限り、上記組成物におけるこれらの使用は考慮される。補助的活性化合物もこの組成物に組み込むことができる。
【0183】
本発明は本発明のマーカーに対応するポリペプチドまたは核酸の発現または活性を調節する医薬組成物の製法を含む。このような方法は、薬物学的に容認される担体に、本発明のマーカーに対応するポリペプチドまたは核酸の発現または活性を調節する作用物質を配合することを含んでなる。このような組成物は追加的活性物質をさらに含むことができる。このため本発明は、薬物学的に容認される担体に、本発明のマーカーに対応するポリペプチドまたは核酸の発現または活性を調節する作用物質及び1種類以上の追加的活性化合物を配合するという医薬組成物の製法も含む。
【0184】
本発明は、(a)マーカーに結合し、または(b)上記マーカーの活性に調節的(例えば刺激または抑制的)影響を及ぼし、またはより詳細に述べれば(c)上記マーカーとその天然物質類(例えばペプチド、蛋白、ホルモン、補因子、または核酸)との相互作用に調節的影響を有し、または(d)上記マーカーの発現に調節的影響を有するモジュレーター、すなわち候補または試験化合物または作用物質(例えばペプチド、ペプチドミメチックス、ペプトイド、小分子またはその他の作用物質)を確認する方法(ここでは“スクリーニングアッセイ”ともいわれる)も提供する。このようなアッセイは一般的には上記マーカーと1種類以上のアッセイ成分との反応を含んでなる。その他の成分類は試験化合物そのものであるか、または試験化合物と上記マーカーの天然結合パートナーとの組み合わせであるかどちらかである。
【0185】
本発明の試験化合物は天然および/または合成化合物の系統的ライブラリーを含むあらゆる入手し得るソースから得られる。試験化合物は、次のものを含む当業者に公知の組み合わせライブラリー法の多数のアプローチのいずれかによって得られる:ペプトイド ライブラリー(ペプチドの機能性を有するが、新規の非ペプチド主鎖(それは酵素分解には耐性を有するが生体活性を残している)を有する分子類のライブラリー;ツッカーマン(Zuckermann)ら、1994、J.Mol.Chem.32巻:2678〜85ページ等を参照);立体的に取扱える平行固体相または溶液相ライブラリー;デコンヴォリューション(deconvolution)を必要とする合成ライブラリー法;“one−bead one−compound”ライブラリー法;及び親和性クロマトグラフ選択を利用する合成ライブラリー法。生物学的ライブラリー及びペプトイドライブラリー法はペプチドライブラリーに限定されるが、その他の4方法はペプチド、非−ペプチドオリゴマーまたは化合物の小分子ライブラリーに適用できる(ラム(Lam)1997、Anticancer Drug Des.12巻:145ページ)。
【0186】
本発明の医薬組成物は、その所望投与経路に適合するように処方される。投与経路の例には、非経口、例えば静脈内、皮内、皮下、経口(吸入等)、経皮(局所)、経粘膜、及び直腸投与がある。非経口、皮内または皮下投与に使用する溶液または懸濁液は以下の構成成分を含むことができる;注射用水、生理的食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたはその他の合成溶媒;ベンジルアルコールまたはメチルパラベン等の抗菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム等の抗酸化剤;酢酸塩、クエン酸塩または燐酸塩等の緩衝剤及び塩化ナトリウムまたはデキストロース等の張力調節剤等。pHは塩酸または水酸化ナトリウム等の酸または塩基で調節できる。非経口製剤はガラスまたはプラスチックで作られたアンプル、使い捨て注射器または多数回投与バイアルに封入することができる。
【0187】
注射に適切に使用できる医薬組成物には、滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散液、及び滅菌注射溶液または分散液を使用時に調製するための滅菌粉末等がある。静脈内投与の場合、適切な担体は生理的食塩液、静菌水、クレモフォルEL(商品名)(BASF、パーシッパニー、NJ)または燐酸緩衝食塩液(PBS)等である。全ての場合に上記組成物は無菌でなければならない、そして容易に注射できる程度に液体でなければならない。それは製造条件及び保存条件のもとで安定でなければならず、細菌や真菌等の微生物の混入から保護されていなければならない。担体は、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール等)、及びこれらの適切な混合物等を含む溶媒または分散液である。レシチンのようなコーティングの使用、分散液の場合は必要な粒度の維持、及び界面活性剤の使用によって適正な流動性が維持される。微生物作用の防止は、種々の抗細菌及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等によって実現される。多くの場合、砂糖、マンニットやソルビットのようなポリアルコール類、塩化ナトリウム等の等張剤を組成物中に含むのが好ましい。注射組成物を長時間にわたり吸収させるためには、上記組成物に吸収を遅らせるモノステアリン酸アルミニウムやゼラチン等の物質を加える。
【0188】
滅菌注射溶液は、活性化合物(マーカー蛋白のフラグメントまたは抗マーカー蛋白抗体)の必要量を、必要に応じて上に挙げた諸成分の一つまたは組み合わせと共に、適した溶媒に入れ、その後濾過滅菌を行うというやり方で調製できる。一般に分散液は、塩基性分散媒質と、上に挙げたもののなかで必要なその他の成分類とを含む滅菌賦形剤中に上記活性化合物を一体化することによって調製される。滅菌注射溶液を調製するための滅菌粉末の場合は、好ましい調製法は真空乾燥及び凍結乾燥である;このやり方によって、前に滅菌濾過した溶液からの活性成分及び所望の追加的成分類の粉末が生成する。
【0189】
経口組成物は概して不活性希釈剤または食用担体を含む。それらはゼラチンカプセルに封入されるか、または圧縮されて錠剤になる。経口的治療投与の目的では、上記活性化合物は賦形剤と共に組み込まれ、錠剤、トローチ、またはカプセルの形で使用される。経口組成物も液体担体を使用して調製され、口腔洗浄の目的で使用される;その際液体担体中の化合物は口に入り、口腔を洗浄し、吐き出すかまたは飲み込まれる。薬物学的に適合する結合剤および/またはアジュバント物質が上記組成物の一部として含まれることがある。錠剤、丸薬、カプセル、トローチ等は下記の成分、または同様な性質の化合物を含むことができる:微晶質セルロース、トラガントゴムまたはゼラチン;澱粉またはラクトース等の賦形剤、アルギン酸、プリモゲルまたはコーンスターチ等の崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムまたはステロテス等の潤滑剤;コロイド性二酸化珪素等の滑り剤(glidants);スクロースまたはサッカリン等の甘味料;またはペパミント、サリチル酸メチルまたはオレンジ香料等の香味料。
【0190】
吸入によって投与する際には、上記化合物はエアロゾルスプレーの形で、二酸化炭素等の適切な噴射剤を含む加圧容器またはデイスペンザーから、または噴霧器で供給される。
【0191】
全身投与は経粘膜または経皮的手段によっても行われる。経粘膜的または経皮的投与では、障壁を通過するのに適した浸透剤が上記処方に使用される。このような浸透剤は当業者には一般に知られており、例えば経粘膜的投与の場合は界面活性剤、胆汁酸、及びフシジン酸誘導体等がある。経粘膜投与は鼻孔スプレーまたは坐薬の使用によって行われる。経皮的投与では、当業者には一般的に知られているように、上記活性化合物を軟膏、ザルベ、ゲルまたはクリームに処方する。
【0192】
上記化合物類は坐薬の形(ココアバター及びその他のグリセリド等の一般的坐薬基剤と共に)、または直腸投与のためには貯留浣腸剤の形にも調製できる。
【0193】
一実施形態において、上記活性化合物は、体からの速やかな排泄を防ぐ担体と共に、埋設物あるいはマイクロカプセル化投与系等の徐放組成物として調製される。エチレン−酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル及びポリ酢酸のような生体内分解性、生体適合性ポリマーを使用できる。このような組成物の製法は熟練せる当業者には明らかである。上記材料はアルザ・コーポレーション及びノバ・ファーマシューティックス社から商業的に入手できる。リポソーマル懸濁液(ウィルス抗原に対するモノクローナル抗体を有する感染細胞を標的とするリポソーム類を含む)も薬物学的に容認される担体として使用できる。これらは米国特許第4,522,811号に記載されているように、熟練せる当業者には公知の方法によって製造できる。
【0194】
投与しやすさ及び投与量の均一化のためには経口または非経口組成物を用量単位形態で処方するのが特に好都合である。本明細書に用いる用量単位形態とは、治療すべき対象への一回投与量として適合させた物理的に分けた単位形態である;各単位形態は所望治療効果をもたらすように計算された所定量の活性化合物を必要な薬物学的担体と共に含む。本発明の用量単位形態の詳細は、活性化合物の特異的特性及び得られる特定の治療効果、及びこの技術分野に固有の配合制限(例えば人の治療のための活性化合物等)によって決まり、またはこれらに依存する。
【0195】
このような化合物の毒性及び治療効果は細胞培養または実験動物を使ってLD50(母集団の50パーセントを死亡させる量)やED50(母集団の50パーセントに対し治療的に有効な量)等を測定する標準的薬学的方法によって決定できる。毒性と治療効果との用量比は、治療インデックスであり、比 LD50/ED50としてあらわすことができる。大きい治療インデックスを示す化合物が好ましい。毒性副作用をあらわす化合物は使ってもよいが、このような化合物を疾患組織部位にターゲティングする投与形態を設計する際には、非疾患細胞に与える潜在的ダメージを最小にし、それによって副作用を減らすように十分注意しなければならない。
【0196】
細胞培養アッセイ及び動物試験から得られたデータを使ってヒトに使用する用量範囲を処方することができる。このような化合物類の用量は、毒性をほとんどまたは全くもたないED50値を含む循環血中濃度範囲内にあるのが好ましい。上記用量は使用する投与型及び利用する投与経路に依存する範囲内で変動する。本発明の方法に使用する全ての化合物において、治療的有効量を最初に細胞培養アッセイから推定する。動物モデルに或る量を投与し、細胞培養で決めたようにIC50(すなわち症状の50%を抑制する試験化合物濃度)を含む循環血中濃度を得る。このような情報を使ってヒトにおける有効な用量をより正確に決定することができる。血中濃度は高性能液体クロマトグラフィー等によって測定できる。
【0197】
本発明の核酸分子をベクターに挿入し、遺伝子治療ベクターとして使用することができる。遺伝子治療ベクターは例えば静脈内注射、局所的投与(米国特許第5,328,470号)によって、または定位注射(Chenら、(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91巻:3054〜3057ページ)によって対象に投与される。遺伝子治療ベクターの医薬製剤は遺伝子治療ベクターを容認可能の希釈剤中に含むものでもよいし、上記遺伝子配達ベヒクルを埋め込んだ徐放性基質からなることもある。或いは、完全遺伝子配達ベクターがレトロウィルスベクター等の組換え細胞から完全無傷に産生できる場合には、医薬製剤は遺伝子デリバリーシステムを産生する細胞を一つ以上含むことができる。
【0198】
医薬組成物は容器、パック、またはディスペンサーに使用説明書と共に含まれる。
【0199】
V.コンピューター読取り可能な手段及びアレイ
本発明のマーカーを含むコンピューター リーダブル(コンピューターで読める)メディアも提供される。ここに使用する用語“コンピューター リーダブルメディア”はコンピューターによって読み取られ、直接アクセスできるメディアを含む。そのようなメディアは非制限的に:フロッピーディスク、ハードディスク保存メディア、及び磁気テープ等の磁気保存メディア;CD−ROM等の光学的保存メディア;RAM及びROMのような電気的保存メディア;及びこれらのカテゴリーに入る磁気/光学保存メディア等の組み合わせを含む。熟練せる当業者は現在知られているコンピューター リーダブル メディアのいずれかを用いて、本発明のマーカーを記録したコンピューターリーダブル メディアを含む製品を製作する方法を容易に理解する。
【0200】
ここに使用する“記録された(recorded)”は、情報をコンピューターリーダブル メディアに保存するプロセスを含む。熟練せる当業者は情報をコンピューターリーダブル メディアに記録して本発明のマーカーを含む製造物を作り出す現在知られている方法のいずれかを容易に採用することができる。
【0201】
種々のデータ プロセッサー プログラム及びフォーマットを使用して本発明のマーカー情報をコンピューターリーダブル メディア上に保存することができる。例えば、これらマーカーに対応する核酸配列を、WordPerfect 及びMicroSoft Wordのような市販のソフトウエアにフォーマットされたワードプロセッサー テキストファイルに表すことができる。またはDB2、Sybase、オラクル等のデータベース アプリケーションに保存されたASCIIファイルの形に表すことができる。本発明のマーカーを記録したコンピューターリーダブル メディアを得るためには、いかなる数のデータプロセッサー・ストラクチュアリング・フォーマット(例えばテキストファイルまたはデータベース)を使用してもよい。
【0202】
本発明のマーカーをコンピューターで読める形で提供することによって、種々の目的のためにマーカー配列情報に日常的にアクセスすることができる。例えば、熟練せる当業者は本発明のヌクレオチドまたはアミノ酸配列をコンピューターで読める形で使用し、標的配列または標的の構造的モチーフをデータ保存装置内に保存されている配列情報と比較することができる。検索手段を使用して特定の標的配列または標的モチーフに合う本発明の配列のフラグメントまたは領域を確認することができる。
【0203】
本発明は、本発明のマーカー(類)を含むアレイ(配列物)も含む。上記アレイを使ってアレイ中の一つ以上の遺伝子の発現をアッセイすることができる。一実施形態において、上記アレイを使って組織中の遺伝子発現をアッセイし、アッセイ中の遺伝子の組織特異性を確認することができる。このやり方で、約8600までの遺伝子の発現を同時にアッセイすることができる。これは一つ以上の組織で特異的に発現する遺伝子の一群を示すプロフィールを発生させることができる。
【0204】
このような定性的測定の他に、本発明により遺伝子発現の定量もできる。例えば、上記組織における遺伝子の一群の発現の組織特異性だけでなくそのレベルも確かめられる。そこで遺伝子を、それらの組織発現そのもの、及びその組織における発現レベルに基づいてグループ分けすることができる。これは例えば遺伝子発現の組織間または組織内の関係を確かめるのに役立つ。例えば或る組織が撹乱され、第二の組織における遺伝子発現へのその影響を確認することができる。この範囲では、生物学的刺激に反応した、或る細胞の他の細胞に与える影響が確認できる。このような測定は、遺伝子発現レベルで細胞−細胞相互作用の効果を知るために有用である。或る細胞型を治療するために或る作用物質を治療的に投与したが、別の細胞型に不都合な効果があらわれたという場合、本発明はその不都合な効果の原因を分子レベルで確認し、相殺する作用物質を同時投与する、さもなくば上記不都合な効果を治療する機会を提供する。同様に、単一の細胞型のなかでさえも不都合な生物学的効果が分子レベルで確認できる。例えば或る作用物質が標的遺伝子以外の遺伝子に効果を与えることが確認でき、それを抑制することができる。
【0205】
もう一つの実施形態において、アレイを使って上記アレイ内の一つ以上の遺伝子の発現の時間的経過をモニターすることができる。これは本明細書に開示されているように、種々の生物学的領域に起こる;例えば発生及び分化、病気の進行、細胞のトランスフォーメーション及び老化等のin vitroプロセス、痛みや食欲等の自律神経及び神経的プロセス、及び学習及び記憶等の認識機能等。
【0206】
上記アレイは、遺伝子発現が同じ細胞または異なる細胞におけるその他の遺伝子の発現に与える影響を確かめるために有用である。例えば最後のまたは下流の標的が調節できない場合に別の標的を選択して治療的処置をすることができる。
【0207】
アレイは、正常なおよび病気の細胞における一つ以上の遺伝子の異なる発現パターンを確かめるためにも有用である。診断または治療的措置のための分子標的として役立つ遺伝子の一群を提供する。
【0208】
VI.予測的医学
本発明は、予知(予測)目的のために診断アッセイ、予知アッセイ、薬理遺伝学及び臨床的試験モニタリングを行って、それによって人を予防的に治療するという予測的医学の領域に関係する。よって、本発明の一面は、生物学的サンプル(例えば血液、血清、細胞、組織)の範囲内でマーカー蛋白および/または核酸発現並びにマーカー蛋白の活性を確認し、それによって人が病気または疾患にかかっているかどうか、または疾患の発生リスクがあるかどうかをマーカー蛋白の発現または活性の増加または減少と関連づけて決定するための診断アッセイに関係する。本発明は、ヒトがマーカー蛋白、核酸の発現または活性と関連した疾患にかかるリスクがあるかどうかを確認する予知(prognostic)(または予測(predictive))アッセイも提供する。例えば生物学的サンプルにおいてマーカー遺伝子のコピー数を分析試験することができる。このようなアッセイを予知または予測目的のために使用し、それによってマーカー蛋白、核酸の発現または活性によって特徴づけられ、またはこれらと関連する疾患(例えばTh1−またはTh2関連疾患)がヒトに発生する前に、予防的にそのヒトを治療することができる。
【0209】
本発明のまた別の面は、臨床試験におけるマーカーの発現または活性に与える作用物質(例えば薬剤類、化合物類)の影響をモニターすることである。これらの、及びその他の作用物質は以下の章でより詳しく説明する。
【0210】
1.診断的アッセイ
生物学的サンプル中における本発明のマーカー蛋白または核酸の存在または欠如を見いだす典型的方法は、試験対象から生物学的サンプルを採取し、その生物学的サンプルと、上記マーカー蛋白をコードする蛋白または核酸(例えばmRNA、ゲノミックDNA)を検出できる化合物または作用物質とを、上記生物学的サンプル中に上記マーカー蛋白または核酸の存在が検出されるようなやり方で接触させる諸段階を含む。本発明のマーカー遺伝子または蛋白に対応するmRNAまたはゲノミックDNAを検出するための好ましい作用物質は、本発明のmRNAまたはゲノミックDNAにハイブリッド化できる標識核酸プローブである。
【0211】
マーカー蛋白を検出するための好ましい作用物質はマーカー蛋白に結合できる抗体、より好ましくは検出可能標識(ラベル)をつけた抗体である。抗体類はポリクローナルまたはモノクローナル(より好ましい)でよい。完全無傷抗体、またはそのフラグメント(FabまたはF(ab’)2)が使用できる。用語“標識化(labeled)”とは、プローブまたは抗体に関して、検出可能物質をプローブまたは抗体にカップリングする(すなわち物理的に結合する)ことによって上記プローブまたは抗体を直接標識化すること、並びに直接標識化されているもう一つの試薬との反応によって上記プローブまたは抗体を間接的に標識化することを含むものとする。間接的標識化の例は、蛍光標識した二次抗体を使用し、DNAプローブが蛍光標識ストレプトアビジンで検出できるように、上記DNAプローブをビオチンで末端標識することを含む。用語“生物学的サンプル”とは、対象に存在する組織、細胞、液等、対象から分離した組織、細胞および生物学的液を含むものとする。すなわち、本発明の検出法を使ってin vitro並びにin vivoで生物学的サンプル中のマーカーmRNA、蛋白またはゲノミックDNAを検出できる。例えば、マーカーmRNAのin vivo検出法には、ノザン ハイブリッド化及びin situハイブリッド化がある。マーカー蛋白のin vitro検出法には固相酵素免疫法(ELISAs)、ウェスタン ブロット、免疫沈殿及び免疫蛍光法がある。マーカー ゲノミックDNAのin vitro検出法にはサザンハイブリッド化がある。その他に、マーカー蛋白のin vivo検出法には、対象に標識抗マーカー抗体を挿入する方法がある。例えば、上記抗体を放射性マーカーで標識化する;対象におけるその存在及び位置は標準的画像化法によって検出できる。
【0212】
一実施形態において、生物学的サンプルは試験対象から分離した蛋白分子類を含む。或いは、上記生物学的サンプルは上記試験対象からのmRNAまたは上記試験対象からのゲノミックDNA分子を含む。好ましい生物学的サンプルは一般的方法で対象から分離した血清サンプルである。
【0213】
また別の実施形態において、上記方法は、コントロール(対照の)対象から対照の生物学的サンプルを分離し、その対照サンプルとマーカー蛋白、mRNAまたはゲノミックDNAを検出できる化合物また作用物質とを、マーカー蛋白、mRNAまたはゲノミックDNAが上記生物学的サンプルに検出されるような仕方で接触させ、上記対照サンプル中のマーカー蛋白、mRNAまたはゲノミックDNAの存在を、試験サンプル中のマーカー蛋白、mRNAまたはゲノミックDNAの存在と比較することをさらに含む。
【0214】
本発明は生物学的サンプル中のマーカーの存在を検出するためのキットも包含する。例えば、上記キットは生物学的サンプル中のマーカー蛋白またはmRNAを検出できる標識化合物;サンプル中のマーカーの量を測定する手段;及びサンプル中のマーカーの量を標準と比較する手段を含むことができる。上記化合物または作用物質は適切な容器に包装できる。上記キットは上記キットを使用してマーカー蛋白または核酸を検出するための使用説明書も含むことができる。
【0215】
2.予知アッセイ
ここに記載する診断法は異常マーカーの発現または活性に関連する病気または疾患にかかった、またはこれら疾患の発生リスクのある対象を確認するためにも利用できる。本明細書に使用する用語“異常”は、野生型マーカーの発現または活性からはずれる(deviate)マーカー発現または活性を含む。異常な発現または活性には、増加したまたは減少した発現または活性、並びに発現の野生型発生パターンまたは発現の亜細胞性パターンにしたがわない発現または活性が含まれる。例えば異常なマーカー発現または活性とは、マーカー遺伝子の突然変異が上記マーカー遺伝子を過小発現または過剰発現させ場合、及びこのような突然変異が、非機能的マーカー蛋白、または野生型のやり方では機能しない蛋白、例えばマーカーリガンドと相互作用しない蛋白や、非−マーカー蛋白リガンドと相互作用する蛋白等を生じさせる状態を含むものとする。
【0216】
既述の診断的アッセイまたは下記のアッセイ等、本明細書に記載されるアッセイを利用してマーカー蛋白活性または核酸発現の異常調節と関連する疾患、例えばTh1−またはTh2関連疾患等にかかった、またはその発生リスクのある対象を確認することができる。或いは予知アッセイを利用してマーカー蛋白活性または核酸発現の異常調節と関連する疾患、例えばTh1−またはTh2−関連疾患にかかった、またはその発生リスクのある対象を確認することができる。このため本発明は、異常なマーカー発現または活性と関連する病気または疾患を確認する方法であって、試験サンプルを対象から分離し、マーカー蛋白または核酸(mRNAまたはゲノミックDNA)を検出し、その際マーカー蛋白または核酸の存在によって異常マーカー発現または活性と関連する病気または疾患の発生リスクを有する対象を診断できるという上記方法を提供する。本明細書に使用する“試験サンプル”は関心とする対象から得られる生物学的サンプルを含む。例えば試験サンプルは生物学的液(例えば血液)、細胞サンプル、または組織(皮膚等)でよい。
【0217】
さらに、本明細書に記載の予知アッセイを使用して対象に作用物質(アゴニスト、拮抗物質、ペプチドミメチック、蛋白、ペプチド、核酸、小分子またはその他の薬剤候補等)を投与することにより、増加または減少したマーカー発現または−活性と関連する病気または疾患を治療できるかどうかを調べることができる。例えば、このような方法を使用して、Th1−またはTh2−関連疾患等の疾患のための作用物質で対象を効果的に治療できるかどうかを確認できる。このため、本発明は、増加したまたは減少したマーカー発現または活性と関連する疾患のための作用物質で対象を効果的に治療できるかどうかを確認する方法であって、その際試験サンプルを採取し、マーカーまたは核酸発現または活性を検出する上記方法を提供する(例えばマーカー蛋白または核酸の発現または活性が豊富に存在する場合、対象に上記作用物質を投与して、増加または減少したマーカー発現または活性と関連する疾患を治療することができると診断される)。
【0218】
本発明の方法を利用して、マーカー遺伝子の遺伝子変化を検出し、変化した遺伝子を有する対象に、マーカー蛋白活性または核酸発現の異常調節を特徴とする疾患、例えばTh1−またはTh2−関連疾患等のリスクがあるかどうかを確認することもできる。好ましい実施形態において、上記方法は、対象から分離した細胞サンプルに、マーカー蛋白をコードする遺伝子の一体性に影響を与える少なくとも一つの変化によって特徴づけられる遺伝子変化や、マーカー遺伝子の誤発現が存在するか存在しないかを見いだすことを含む。例えばこのような遺伝子変化は、次のうちの少なくとも一つの存在を確かめることによって検出できる:1)マーカー遺伝子からの一つ以上のヌクレオチドの欠失;2)一つ以上のヌクレオチドのマーカー遺伝子への付加;3)マーカー遺伝子の一つ以上のヌクレオチドの置換;4)マーカー遺伝子の染色体再配列;5)マーカー遺伝子のメッセンジャーRNA転写体のレベル変化、6)マーカー遺伝子の異常な改変、例えばゲノミックDNAのメチル化パターン等、7)マーカー遺伝子のメッセンジャーRNA転写体の非野生型スプライシングパターンの存在;8)マーカー蛋白の非野生型レベル、9)マーカー遺伝子の対立遺伝子喪失、及び10)マーカー遺伝子の不適切な翻訳後改変。ここに記載のように、マーカー遺伝子の変化を検出するために使用できる多数のアッセイが当業者には知られている。好ましい生物学的サンプルは一般的方法で対象から分離された組織(皮膚等)または血液サンプルである。
【0219】
幾つかの実施形態において、変化の検出にはポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)におけるプローブ/プライマーの使用が含まれる(米国特許第4,683,195号及び第4,683,202号)、例えばアンカーPCRまたはRACE PCR、またはリゲーション鎖反応(LCR)(ランデグラン(Landegran)ら(1988)Science 241巻:1077〜1080ページ;及びナカザワら(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91巻:360〜364ページ)等。この後者はマーカー遺伝子の点突然変異を検出するために特に有用である(アブラヴァヤ(Abravaya)ら(1995)Nucleic Acids Res.23巻:675〜682ページ)。この方法は対象から細胞サンプルを集め、そのサンプルの細胞から核酸(ゲノミック、mRNAまたはこれら両方)を分離し、上記核酸サンプルと、マーカー遺伝子に特異的にハイブリッド化する一種類以上のプライマーとを、マーカー遺伝子(存在すれば)のハイブリッド化及び増幅が起きるような条件下で接触させ、増幅産物が存在するかどうかを検出するか、または増幅産物のサイズを検出し、その長さをコントロールサンプルの長さと比較する諸段階からなる。PCRおよび/またはLCRは本明細書に記載の突然変異を検出するために使用する方法のいずれかと組み合わせて、予備的増幅段階として好適に使用できると期待される。
【0220】
これに代わる増幅法には、自己持続的(self susteined)配列複製(グァテリ(Guatelli,J.C.)ら(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87巻:1874〜1878ページ)、転写増幅系(クォー(Kwoh,D.Y.)ら、(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86巻:1173〜1177ページ)、Q−ベータ リプリカーゼ(リザーディ(Lizardi,P.M.)ら(1988)Bio−technology 6巻:1197ページ)、またはその他の核酸増幅法があり、その後に熟練せる当業者に公知の方法を使用して増幅した分子の検出が行われる。このような検出スキームは、核酸分子がごく少数存在する際には、そのような分子を検出するために特に有用である。
【0221】
また別の実施形態において、サンプル細胞からのマーカー遺伝子の突然変異は制限酵素切断パターンの変化によって確認できる。例えば、サンプル−及び対照DNAを分離し、(任意に)増幅し、一種類以上の制限エンドヌクレアーゼで消化し、フラグメントの長さを電気泳動法によって測定し、比較する。サンプルと対照とのDNAのフラグメント長さの差があればサンプルDNAの突然変異を示唆する。配列特異的リボザイム(米国特許第5,498,531号等を参照)を使用して、リボザイム切断部位の発生または喪失によって特異的突然変異の存在を評価することができる。
【0222】
その他の実施形態において、本発明のマーカー遺伝子または本発明のマーカー蛋白をコードする遺伝子における突然変異は、サンプル及び対照の核酸、例えばDNAまたはRNAをハイブリッド化して数百または数千のオリゴヌクレオチドプローブを含む高密度アレイにすることによって確認できる。(クローニン(Cronin,M.T.)ら、1996、Human Mutation 7巻:244〜255ページ;コーザル(Kozal,M.J.)ら(1996)Nature Medicine 2巻:753〜759ページ)。例えばマーカーにおける遺伝子突然変異は、クローニンら(同上)によって記載されているように、光照射により合成したDNAプローブを含む二次元アレイにおいて確認できる。つまり、プローブの最初のハイブリッド化 アレイを使用してサンプル及び対照のDNAの長い伸長に亘って走査し、配列の重なるプローブの線状アレイを作ることによって、配列間での塩基の変化を確認することができる。この段階により点突然変異を確認できる。この段階に第二のハイブリッド化 アレイが続き、これにより、検出された全ての変異体または突然変異に相補的な、より小さい特殊化されたプローブアレイを使用することによって、特異的突然変異を特徴づけることができる。各突然変異アレイは平行したプローブセットからなり、一つは野生型遺伝子に相補的であり、他は上記突然変異遺伝子に相補的である。
【0223】
もう一つの実施形態において、当業者に公知の種々の配列化(シーケンシング)反応のいずれかを使用して、マーカー遺伝子を直接配列決定し、サンプルマーカーの配列を野生型(対照)配列と比較することによって、突然変異を検出する。配列化反応の例には、マクサム(Maxam)およびギルバート(Gilbert)((1977)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 74巻:560ページ)またはサンガー((1977)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 74巻:5463ページ)によって開発された技術に基づくもの等がある。質量分析による配列化等の診断的アッセイ((1995)Biotechniques 19巻:448ページ)を実施する際には種々の自動配列化法のいずれを使用してもよいと考えられる(PCT国際特許出願WO94/16101;コーエン(Cohen)ら(1996)Adv.Chromatogr.36巻:127〜162ページ;及びグリフィンら(1993)Appl.Biochem.Biotechnol.38巻:147〜159ページ等を参照されたい)。
【0224】
本発明のマーカー遺伝子、または本発明のマーカー蛋白をコードする遺伝子の突然変異を検出するその他の方法には、切断剤から保護することによって、RNA/RNAまたはRNA/DNAヘテロドュプレックスの不斉合(ミスマッチ)塩基を検出する方法が含まれる(マイヤーズ(Myers)ら、(1985)Science 230巻:1242ページ)。概してこの分野における“不斉合分割”の技術は、野生型マーカー配列を含む(標識)RNAまたはDNAを、組織サンプルから得た潜在的突然変異体RNAまたはDNAとハイブリッド化することによって形成されたヘテロドュプレックスを提供することから始まる。二本鎖ドュプレックスは、対照ストランドとサンプル ストランドとの間の塩基対不斉合により存在する上記ドュプレックスの一本鎖領域を分割する作用物質で処理される。例えば、RNA/DNAドュプレックスはリボヌクレアーゼで処理され、DNA/DNAハイブリッドはS1ヌクレアーゼで処理され、上記不斉合領域を酵素的に消化することができる。その他の実施形態において、DNA/DNAまたはRNA/DNAドュプレックスのどちらかがヒドロキシルアミンまたはオスミウム テトロキシドで、及びピペリジンで処理され、不斉合領域を消化することができる。上記不斉合領域の消化後、生成した物質を変性ポリアクリルアミドゲル上でサイズによって分離し、突然変異の部位を決定する。コットン(Cotton)ら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85巻:4397ページ;サレーバ(Saleeba)ら(1992)Methods Enzymol.217巻:286〜295ページ等を参照されたい。好ましい実施形態では、対照のDNAまたはRNAを標識し、検出する。
【0225】
もう一つの実施形態において、上記不斉合分割反応は、細胞のサンプル類から分離したマーカーcDNAの点突然変異を検出し、マッピングするための決められた系において、二本鎖DNAにおける不斉合の塩基対を認識する一つ以上の蛋白(いわゆる“DNA不斉合修復”酵素)を使用する。例えば大腸菌のmutY酵素はG/A不斉合のAを分割し、HeLa細胞からのチミジンDNAグリコシレートはG/T不斉合のTを分割する(フス(Hus)ら(1994)Carsinogenesis 15巻:1657〜1662ページ)。典型的実施形態により、マーカー配列に基づくプローブ、例えば野生型マーカー配列、を試験細胞(類)からのcDNAまたはその他のDNA産物にハイブリッド化する。上記ドュプレックスをDNA不斉合修復酵素で処理し、分割産物(もしあれば)を電気泳動法等によって検出することができる。米国特許第5,459,039号を参照されたい。
【0226】
その他の実施形態において、電気泳動の移動度の変化を利用して本発明のマーカー遺伝子または本発明のマーカー蛋白をコードする遺伝子の突然変異を確認する。例えば一本鎖DNA高次構造多型(SSCP)を使用して突然変異体と野生型核酸との間の電気泳動移動度の差を検出することができる(オリタ(Orita)ら(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86巻:2766ページ。コットン(1993)Mutat.Res.285巻:125〜144ページ;及びハヤシ(1992)Genet.Anal.Tech.Appl.9巻:73〜79ページも参照されたい)。サンプル及び対照のマーカー核酸の一本鎖DNAフラグメントを変性し、修復させる。一本鎖核酸の二次構造は配列によって変動し、その結果生ずる電気泳動移動度の変化は単一塩基の変化でさえ検出を可能にする。このDNAフラグメントを標識プローブで標識化し、または検出することができる。上記アッセイの感度をRNA(DNAよりむしろRNA)を使って高めることができる、その際上記二次構造は配列の変化に、より敏感である。好ましい実施形態において、主題の方法はヘテロドュプレックス分析を使って、電気泳動移動度の変化に基づいて二本鎖ドュプレックスを分離する(キーン(Keen)ら(1991)Trends Genet 7巻:5ページ)。
【0227】
もう一つの実施形態において、或る濃度勾配の変性体(denaturant)を含むポリアクリルアミドゲル中の突然変異体または野生型フラグメントの移動を変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法(DGGE)を使用して分析試験する(マイヤーズら(1985)Nature 313巻:495ページ)。DGGEを分析法として使用する際、DNAはそれが完全には変性しないことが確実であるように改変される;例えば高融点GCに富むDNAの約40bpのGCクランプをPCRによって付加する。その他の実施形態において、変性勾配の代わりに温度勾配を使用してコントロールおよびサンプルDNAの移動度の差を確認する(ローゼンバウム(Rosenbaum)及びライスナー(Reissner)(1987)Biophys Chem 265巻:12753ページ)。
【0228】
点突然変異を検出するその他の方法の例としては、それらに限定されるものではないが、選択的オリゴヌクレオチドハイブリッド化、選択的増幅、および選択的プライマー伸長法がある。例えば、中心部に既知の突然変異を設けたオリゴヌクレオチドプライマー群を作成し、それらを標的DNAと完全な一致がある場合にのみハイブリッド化がおこる条件下でハイブリッド化させる(サイキら(1986)Nature 324巻:163ページ;サイキら(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86巻:6230ページ)。このような対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドは、それらオリゴヌクレオチドがハイブリッド化膜に付着されていて標識化した標的DNAとハイブリッド化される場合には、PCR増幅した標的DNAや異なる多くの突然変異体とハイブリッド化させる。
【0229】
別法として、選択的PCR増幅に依存する対立遺伝子特異的増幅法を本発明と組み合わせて使用してもよい。特異的増幅のためのプライマーとして使用するオリゴヌクレオチドは、その分子の中心に(そのため増幅は鑑別ハイブリッド化に依存する)(ギッブス(Gibbs)ら(1989)Nucleic Acids Res.17巻:2437〜2448ページ)、または一つのプライマーの3’末端に(この場合は適当な条件下で不斉合によりポリメラーゼ伸長を阻止または減少させることができる)、関心とする突然変異を有することができる(プロスナー(Prossner)(1993)Tibtech 11巻:238)。それに加えて、上記突然変異の領域に新規の制限部位を挿入し、切断に基づいて検出できることが望ましい(ガスパリニら(1992)Mol.Cell Probes6巻:1ページ)。幾つかの実施形態において、増幅用Taqリガーゼを使用して増幅を行うことも期待される(バラニー(Barany)(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88巻:189ページ)。このような場合、5’配列の3’末端に完全な斉合がある場合に限り結合(ligation)が起こり、増幅があるかないかを見ることによって特異的部位の既知の突然変異の存在を検出することが可能である。
【0230】
本明細書に記載される方法は、例えば少なくとも1つのプローブ核酸または本明細書に記載する抗体試薬を含んでなるあらかじめ包装した診断キットにおいて、マーカー遺伝子に関係する病気または疾患の症状または家族歴をあらわす対象を臨床的に診断するために便利に使用できる上記キットの使用によって行われる。
【0231】
さらに、マーカーが発現する細胞型または組織をここに記載の予知アッセイに利用してもよい。
【0232】
3.臨床試験中の効果のモニタリング
マーカー蛋白の発現または活性に対する作用物質(薬剤等)の影響(例えばTh1またはTh2−関連疾患の調節等)のモニタリングは基礎的薬剤スクリーニングだけでなく、臨床試験にも適用される。例えば、ここに記載のスクリーニング アッセイによつて測定される、或る作用物質のマーカー遺伝子発現や蛋白レベルの増加効果、またはマーカー活性の上方調節効果を、マーカー遺伝子発現や蛋白レベルの減少、またはマーカー活性の下方調節を示す対象の臨床試験においてモニターすることができる。或いは、スクリーニングアッセイによって測定された、或る作用物質の、マーカー遺伝子発現や蛋白レベルを減少させる効果またはマーカー活性を下方調節する効果を、マーカー遺伝子発現や蛋白レベルの増加またはマーカー活性の上方調節を示す対象の臨床試験においてモニターすることができる。このような臨床試験において、マーカー遺伝子の発現または活性、及びより好ましくは、例えばマーカー関連疾患(Th1またはTh2−関連疾患等)に関連するその他の遺伝子の発現または活性を、特定細胞の表現型の“リードーアウト(読み出し)”またはマーカーとして使用することができる。
【0233】
例えば、非制限的に、マーカー活性を調節する(例えばここに記載のスクリーニングアッセイで確認された)作用物質(化合物、薬剤または小分子等)で処理することによって細胞において調節される本発明のマーカー遺伝子及び、本発明のマーカー蛋白をコードする遺伝子を含む遺伝子類が確認できる。例えば臨床試験等でマーカー関連疾患(例えばTh1−またはTh2−関連疾患)に対する作用物質の効果を研究するために、細胞を分離し、RNAを調製し、マーカー関連疾患にそれぞれ関係するマーカー及びその他の遺伝子の発現レベルを分析することができる。遺伝子発現レベル(遺伝子発現パターン等)を本明細書に記載されるノザンブロット分析またはRT−PCRによって、或いは産生された蛋白の量をここに記載の方法の一つによって測定することによって、またはマーカーまたはその他の遺伝子の活性レベルの測定によって定量することができる。この仕方で、遺伝子発現パターンは、作用物質に対する上記細胞の生理的反応を示唆するマーカーとして役立つ。よって、人を上記作用物質で治療する前、及び治療中の種々の時点において、この反応状態を測定することができる。
【0234】
好ましい実施形態において、本発明は、対象を或る作用物質(アゴニスト、拮抗物質、ぺプチドミメチック、蛋白、ペプチド、核酸、小分子またはここに記載されるスクリーニングアッセイによって確認されたその他の薬剤候補)で治療した際のその作用物質の有効性をモニターする方法を提供する。上記方法は(i)上記作用物質の投与前に対象から投与前のサンプルを分離し、(ii)投与前のサンプルにおけるマーカー蛋白、mRNA、またはゲノミックDNAの発現レベルを検出し、(iii)対象から一つ以上の投与後サンプルを分離し;(iv)上記投与後サンプル中のマーカー蛋白、mRNA、またはゲノミックDNAを発現レベルまたは活性レベルを検出し;(v)投与前のサンプル中のマーカー蛋白、mRNA、またはゲノミックDNAの発現または活性のレベルを投与後サンプル(類)中のマーカー蛋白、mRNAまたはゲノミックDNAと比較し;(vi)それにしたがって上記対象に対する作用物質の投与を変える諸段階を含んでなる。例えば、作用物質の高められた投与は、マーカーの発現または活性を上記検出されたものより高いレベルにまで増加させるために、すなわち上記作用物質の有効性を高めるために好ましい。或いは、上記作用物質の低められた投与はマーカーの発現または活性を上記検出されたものより低いレベルにまで減らすために、すなわち作用物質の有効性を低めるために好ましい。このような実施形態によって、マーカーの発現または活性は、観察できる表現型反応がない場合でさえ、或る作用物質の有効性のインジケータとして使用できる。
【0235】
C.治療法
本発明は異常なマーカー発現または活性に関連する疾患のリスクのある(上記疾患にかかりやすい)または上記疾患にかかった対象の予防的治療法並びに治療的処置を両方提供する。予防的治療法及び治療的処置法に関して、このような治療は薬理遺伝学の領域から得られる知識に基づいて特異的に組み立てられ、または改良される。ここに使用する“薬理遺伝学”とは、遺伝子配列、統計的遺伝学及び遺伝子発現分析等のゲノミックス技術を臨床的開発中の薬剤及び市場の薬剤に適用することを含む。より詳細に述べれば、この用語は、或る人の遺伝子が、薬に対する彼または彼女の反応(例えば“薬剤反応の表現型”または薬剤反応の遺伝子型)を決める仕方の研究を言う。例えば、本発明のもう一つの面は、本発明のマーカー分子か、または個々の薬剤反応遺伝子型によるマーカーモジュレーターで個々の予防的または治療的処置を組み立てる方法を提供する。薬理遺伝学により、臨床医または内科医はこの治療によって最も利益を受ける対象を標的として予防的または治療的処置を行い、毒性薬剤関連性副作用を経験する対象への投与を避けることができる。
【0236】
1.予防的方法
一面において、本発明は或る対象において、マーカー蛋白か、またはマーカー蛋白の発現または少なくとも一つのマーカー蛋白活性をモジュレートする作用物質を上記対象に投与することによって、マーカー発現または活性の増加または減少と関連する病気または疾患(Th1−またはTh2−関連疾患)を防止する方法を提供する。増加したまたは減少したマーカー発現または活性によつて誘起される病気、またはこれらに関係する病気のリスクをもつ対象は、例えば本明細書に記載される診断的または予知アッセイのいずれかまたはこれらの組み合わせによって確認できる。予防薬の投与は、病気または疾患が防止されるように、マーカー蛋白発現の変化に特徴的な諸症状の発現する前に行うことができるし、或いは遅れて、その亢進中に行うこともできる。マーカー異常(例えば発現レベルの増加または減少)のタイプによって、マーカー蛋白、マーカー蛋白アゴニスト、またはマーカー蛋白拮抗剤を使用して上記対象を治療することができる。適切な作用物質はここに記載されるスクリーニングアッセイに基づいて決めることができる。
【0237】
2.治療法(Therapeutic Method)
本発明のもう一つの面は、治療目的のためにマーカー蛋白発現または活性を調節する方法に関係する。よって、典型的実施形態において、本発明の上記調節法は、細胞と、その細胞と関連するマーカー蛋白活性の諸活性の一つ以上を調節するマーカー蛋白または作用物質とを接触させることを含む。マーカー蛋白活性を調節する作用物質は、本明細書に記載されるような作用物質、例えば核酸または蛋白、マーカー蛋白の天然発生性標的分子(マーカー蛋白基質等)、マーカー蛋白抗体、マーカー蛋白アゴニストまたは拮抗物質、マーカー蛋白アゴニストまたは拮抗物質のペプチドミメチック、またはその他の小分子等でよい。一実施態様において、上記作用物質は一つ以上のマーカー蛋白活性を刺激する。このような刺激剤の例には、活性マーカー蛋白及び上記細胞に挿入されたマーカー蛋白をコードする核酸分子がある。もう一つの実施形態において、上記作用物質は一つ以上のマーカー蛋白活性を阻害する。このような阻止的作用物質の例には、アンチセンスマーカー蛋白、核酸分子、抗マーカー蛋白抗体、及びマーカー蛋白インヒビター等がある。これらの調節法はin vitroで(例えば上記細胞を作用物質と共に培養することによって)、またはin vivoで(例えば作用物質を対象に投与することによって)行うことができる。このように、本発明はマーカー蛋白または核酸分子の異常な発現または活性によって特徴づけられる病気または疾患にかかった人の治療法を提供する。一実施形態において、上記方法は、マーカー蛋白の発現または活性を調節する(上方調節または下方調節等)作用物質(例えばここに記載されるスクリーニングアッセイによって確認された作用物質)、または作用物質類の組み合わせを投与することを含む。もう一つの実施形態において、上記方法は、減少したまたは異常なマーカー蛋白発現または活性を相殺する治療としてマーカー蛋白または核酸分子を投与することを含む。
【0238】
マーカー蛋白が異常に下方調節された状態および/または増加した蛋白活性が有益な効果を与えそうな状態においてはマーカー蛋白活性の刺激が望ましい。例えば、マーカー蛋白活性の刺激は、マーカーが下方調節されおよび/または増加したマーカー蛋白活性が有益な効果を与えそうな状態が望ましい。同様に、マーカー蛋白が異常に上方調節されおよび/または減少したマーカー蛋白活性が有益な効果を与えそうな状態においてはマーカー蛋白活性の抑制が望ましい。
【0239】
3.薬理遺伝学
本発明のマーカー蛋白及び核酸分子、並びにここに記載のスクリーニングアッセイによって確認されたマーカー蛋白活性(マーカー遺子発現)に刺激的または抑制的効果を有する作用物質または調節剤(モジュレータ)を人に投与して、異常マーカー蛋白活性に関連するマーカー関連性疾患(Th1−またはTh2−関連性疾患等)を治療(予防的にまたは治療的に)することができる。このような治療と関連して、薬理遺伝学(すなわち人の遺伝子型と外来化合物または薬剤に対するその人の反応との関係の研究)が考慮される。治療薬の代謝の差は、薬理学的活性薬剤の用量と血中濃度との関係を変化させることによって、ひどい毒性または治療の失敗に導き得る。例えば、内科医または臨床医は、マーカー分子またはマーカーモジュレータを投与すべきかどうかを決める際に、並びにマーカー分子またはマーカーモジュレータを使用する治療の用量および/または治療法を組み立てる際に、当該薬理遺伝学研究で得られた知識を適用することを考えることができる。
【0240】
薬理遺伝学は、疾患にかかっている人において変化した薬剤性素因及び異常作用による、薬剤に対する反応の臨床的に重要な遺伝的変化を取り扱う学問である。アイヘルバウム(Eichelbaum,M)ら(1996)Clin.Exp.Pharumacol.Physio 1.23巻(10〜11号):983〜985ページ及びリンダー(Linder,M.W.)ら(1997)Clin.Chem.43巻(2号):254〜266ページ等を参照されたい。概して、2タイプの薬理遺伝学条件が区別される。薬剤が身体に作用する仕方を変える単一の因子として伝達される遺伝条件(変化した薬剤作用)、または身体が薬に作用する仕方を変える単一因子として伝達される遺伝条件(変化した薬剤代謝)である。これらの薬理遺伝学的条件は、まれに起こる遺伝子欠損として、または天然発生性の多型性として起こり得る。例えばグルコース−6−燐酸脱水素酵素欠乏症(G6PD)は一般的に遺伝によって受けつがれる酵素経路であり、その際主な臨床的合併症は酸化薬剤(抗マラリア剤、スルホンアミド剤、鎮痛剤、ニトロフラン)の摂取後、及びソラマメ摂取後の溶血である。
【0241】
“ゲノム−ワイド アソシエーション(genome−wide association)”として知られる、薬剤反応を予測する遺伝子を確認する薬理遺伝学の一つのアプローチは、主として、公知の遺伝子関連マーカーからなるヒトゲノムの高解像地図(例えばヒトゲノム上の60,000〜100,000の多型性または変動性部位(その各々は2変異体を有する)からなる“二対立(bi−allelic)”遺伝子マーカー地図)に依存する。このような高解像遺伝地図を、フェースII/III薬剤トライアルに参加した統計的に有意な数の人々の各々のゲノムの地図と比較して、特に観察される薬剤反応または副作用と関連するマーカー類を確認することができる。或いは、このような高解像地図を、ヒトゲノムの大体一千万個の既知の単ヌクレオチド多型(SNPs)の組み合わせから作成することができる。ここに使用する“SNP”はDNAの延長における単ヌクレオチド塩基に起きる共通の変化である。例えばSNPはDNAの1000塩基ごとに一回起き得る。SNPは病気のプロセスに関係することがあるが、大多数は病気とは関係ない。もしも遺伝地図がこのようなSNPsの発生に基づくと仮定すれば、人々は彼らの個々のゲノムのSNPsの特定のパターンによって複数の遺伝カテゴリーにグループ化されることがあり得る。このような仕方で、このような遺伝的に類似の個々人に共通となり得る特徴を考慮して、治療法を遺伝的に類似の人々に合わせて決めることができる。
【0242】
或いは、“候補遺伝子アプローチ”と名付けられた方法を用いて薬剤反応を予測する遺伝子を確認できる。この方法によると、もしも薬剤標的をコードする遺伝子が知られているならば(本発明のマーカー蛋白等)、その遺伝子の全ての一般的変異体はその集団中にかなり容易に確認でき、上記遺伝子に或る変種があり、また別の変種もあることにより、特定の薬剤反応と関連するかどうかを決定できる。
【0243】
例証的実施形態として、薬剤代謝酵素の活性は薬剤作用の強さ及び持続時間療法の主要決定因子である。薬剤代謝酵素(例えばN−アセチルトランスフェラーゼ2(NAT2)及びチトクロームP450酵素、CYP2D6及びCYP2C19)の遺伝多型性の発見は、なぜ若干の対象が期待する薬剤効果を得られず、または薬剤の標準的かつ安全な用量の投与後に、誇張された薬剤反応及び重大な毒性を示すかについて或る説明を与えた。これらの多型性は上記集団において次の2表現型に発現する;すなわち強メタボライザー(EM(extensive metabolizer))及び弱メタボライザー(PM(poor metabolizer))である。PMの発生率は異なる集団では異なる。例えばCYP2D6をコードする遺伝子は高度に多型性であり、PMには数個の突然変異が確認され、それらの突然変異は全て機能的CYP2D6の欠如に導く。CYP2D6及びCYP2C19の弱メタボライザーは、標準用量を投与した際には誇張された薬剤反応及び副作用を経験することが非常に多い。代謝産物が活性治療部分である場合、PMは治療的反応を示さない。その説明として、例えばコデインの鎮痛効果はそのCYP2D6形成−代謝産物モルフィンによって示されることが挙げられる。他の極端な状態は、標準的用量に反応しないいわゆる超急速メタボライザーである。最近、超急速代謝の分子的根拠がCYP2D6遺伝子増幅によるものであることが確認された。
【0244】
これに代わって、“遺伝子発現プロファイリング”と呼ばれる方法を利用して薬剤反応を予測する遺伝子を確認することができる。例えば、或る薬剤(本発明のマーカー分子またはマーカーモジュレーター)を投与した動物の遺伝子発現は、毒性に関係する遺伝子経路が開通するかどうかを示唆することができる。
【0245】
上記の薬理遺伝学の一つ以上のアプローチから得られる情報を使って人を予防的または治療的に処置する適切な投与量及び治療法を決定することができる。この知識を用量または薬剤の選択に利用すると、不都合な反応または治療の失敗を避けることができ、マーカー分子またはマーカーモジュレーター、例えば本明細書に記載した例証的スクリーニングアッセイの一つによって決定されるモジュレーター等で対象を治療する際の治療または予防効果を高めることができる。
【0246】
本発明を、非制限的な下記の実施例によってさらに詳しく説明する。この出願全体を通して記載される全ての参考文献、特許、及び公開特許出願の内容、並びに図面および表の内容は参照により、明細書に組み込まれる。
【0247】
(実施例)
(実施例1)
マーカーcDNAの同定及び特徴づけ
A.ナイーブCD4T細胞の分離
血液はノースロンドン輸血サービス(ロンドン、UK)または新生児の臍帯(ロイヤルフリーホスピタル、ロンドン、UK、チェルシー(Chelsea)及びウェストミンスターホスピタル、ロンドン、UK)から得た。Lymphoprep(Nycomed、オスロ、ノールウェー)を使ってPBMCを分離し、HBSS(PAAラボラトリー、リンツ、オーストリア)で3回洗った。CD4をM−450CD4ダイナビーズ(ダイナル、オスロ、ノールウェー)を使用する免疫磁気分離法によって精製した。この方法で分離した臍帯血CD4T細胞は>96%CD4であり、全てがナイーブ表現型であった。CD4CD45RA+T細胞(ナイーブT細胞等)を成人血液から、UCHL1(抗CD45RO−10μg/1.0×10標的細胞)に特異的なモノクローナル抗体と30分間インキュベートすることによって精製した。抗体結合細胞を、2.5%FCSを補充したHBSSで3回洗い、その後ヒツジ抗マウスIgGダイナビーズ(Dynabeads)(ダイナル、オスロ、ノールウェー)と培養した。CD4CD45RA+細胞は免疫磁気分離法によってネガティブに選択され、これを染色し、流動細胞光度測定法(フローサイトメトリー)(FACSスキャン、ベクトン ジキンソン、サンジョース、CA、USA)によって分析し、95%より多いCD45RA+が見いだされた。
【0248】
B.RNAの分離及び標識ミクロアレイプローブの製法
全RNAをRNeasyミニキット(キアゲン、ヒルデン、ドイツ)を使用して細胞から分離した。ハイブリッド化のためのcRNAを調製するために、全RNAの3〜5μgをT7のタグ付きオリゴ−dTプライマーで、70℃で変性し、氷上で冷却し、それから200単位のスーパースクリプトRTIIで、1×第一ストランド緩衝液、10mMのDTT及び0.5mMの各dNTP中で50℃で1時間逆転写した。第二ストランドcDNAは、40単位DNApolI、10単位大腸菌DNAリガーゼ、2単位リボヌクアーゼH、30μLの第二ストランド緩衝液、3μLの各10mMのdNTP及び水を加えて最終容量150μlとし、15.8℃で2時間培養することによって合成した。生成したcDNAをフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコールで1回抽出した。cDNAをフェース ロック ゲル チューブ(Phase Lock Gel tube)上で最大速度で2分間分離し、酢酸ナトリウム及び100%エタノールで沈殿させた。生成したぺレットを80%エタノールで洗い、乾燥し、ジエチルピロカルボネート処理(DEPC−処理)水に再懸濁した。
【0249】
標識RNAをT7RNAポリメラーゼ プロモーター部位を含むクローンから、in vitro転写(IVT)反応で標識リボヌクレオチドを挿入することによって作製した。調製説明書にしたがって精製cDNAの半分を使ってT7RNAポリメラーゼキットでin vitro転写を行い、一晩37℃で培養し、それによってビオチニル化CTP及びUTPを挿入した。標識RNAをRNeasyカラム(キアゲン)を使用して精製した。RNAを濃化し、分光光度計分析により定量した。標識RNA(13〜15μg)を40mMトリス−アセテート8.0、100mM酢酸カリウム、30mM酢酸マグネシウム、総容量40μL中で35分間94℃でフラグメント化した。
【0250】
C.アレイハイブリッド化及び蛍光の検出
標識化し、フラグメント化したRNAプローブを1×MES緩衝液、RIO948、Bio C、B cre、100μg/mlニシン精液DNA、及び50μg/mlアセチル化BSA中に希釈した。新しいプローブをミクロフージュ管中でガラスビーズと共に45℃で一晩前ハイブリッド化してくずを除去した。6800ヒト遺伝子からなるオリゴヌクレオチドアレイ(マイクロアレイ、アフィメトリックス、LpcN、カタログ番号51037)を1×MESハイブリッド化緩衝液と共に45℃で5分間前ハイブリッド化し、その後不溶性物質を遠心分離によって除去した。前ハイブリッド化緩衝液をオリゴ アレイ カートリッジから除去し、200μLプローブを加え、カートリッジを16時間45℃で60rpmでハイブリッド化させた。ハイブリッド化後、プローブを取り出し、カートリッジをフルーディックス(fluidics)ステーション(アフィメトリックス)を使って6×SSPETでよく洗った。ハイブリッド化後、上記溶液を除去し、アレイを6×SSPE−Tで22℃で7分間洗い、0.5×SSPE−Tで40℃で15分間洗った。ビオチン標識RNAを使用した際、ハイブリッド化したRNAを、読み取り前にストレプトアビジン−フィコエリスリン結合体(モレキュラープローブス、オイジーン、OR)で染色した。ハイブリッド化アレイを6×SSPE−T中2μg/mlストレプトアビジン−フィコエリスリンで40℃で5分間染色した。アレイを、モレキュラーダイナミックス社がアフィメトリックスのために作製した走査共焦マイクロスコープ(アフィメトリックス、サンタクララ、CA、から商業的に入手できる)を使って読み取った。走査器は励起ソースとしてアルゴンイオンレーザーを用い、放射はフォトマルチプライヤー管を使い、530nmバンドパスフィルター(蛍光)か、560nmロングパスフィルター(フィコエリスリン)のどちらかを通して検出した。ハイブリッド化実験にはセンスまたはアンチセンス方向どちらかの核酸を使用した。どちらかの方向のプローブ(互いに逆の補体)をもったアレイは、光化学工程の順序(order)を逆にしてフォトリトグラフィーマスクの同じセットを使用し、相補的ヌクレオチドを組み込むことによってて作られる。
【0251】
D.ハイブリッド化のパターン及び強度の定量分析
アレイの定量的走査に続いて、アレイの既知のディメンジョン及びマーカーとしてのコーナーコントロール領域を用いてグリッドをイメージに整列させる。上記イメージを、アフィメトリックスで開発されたソフトウェアー(GENECHIP3.0ソフトウェアー)を使って、位置および強度情報を含む簡単なテキストファイルに縮小する。この情報を、アレイ上の物理的位置に関連する情報を含む別のテキストファイルと合体させ、RNAの配列及び同一性、および上記RNAの特異的部分(これに対して上記オリゴヌクレオチドプローブがデザインされる)を検査する。ハイブリッド化結果の定量分析は、“特異的RNAの存在下ではPMプローブはそれらのMMパートナより平均してより強くハイブリッド化する”という仮定に基づく、簡単な形のパターン認識を含む。PMハイブリッド化シグナルがMMシグナルより大きい例の数が各プローブセットのPM/MM比の対数の平均と共にコンピューターに入れられる。これらの数値を使用してRNAの存在または不在に関する決定がなされる(あらかじめ定義された決定マトリックスを使用)。量的RNAの豊富さを確認するために、各プローブファミリーで差の平均(PMマイナスMM)を計算する。この識別的方法の利点は、ランダム クロス−ハイブリッド化からのシグナルが平均して等しくPM及びMMプローブに貢献し、他方特異的ハイブリッド化はPMプローブに貢献することである。対合した場合の差を平均することによって、真のシグナルが構成的に加わり、一方クロス−ハイブリッド化からの貢献は打ち消される傾向がある。2つの異なるRNAサンプル間の差を評価する際、同一に合成されたアレイ上の平行(side−by−side)実験からのハイブリッド化シグナルを直接比較する。差(PM−MM)の数値の平均値の変化の大きさは、スパイキング実験の結果との比較、並びに、各サンプルに加えられた既知量の内部標準細菌性およびファージRNAsで観察されたシグナルとの比較によって説明される。アフィメトリックスで開発されたデータ分析プログラム、例えばGENECHIP3.0ソフトウェアーなどがこれらの操作を自動的に行う。
【0252】
表1のデータを作成するために、アイゼン(Eisen)ら(1998、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95巻(25号):14863〜8ページ)の方法によって、遺伝子をそれらの発現プロフィールの類似性に基づいて、分類体系的に群にまとめた。この実施例において、6800のユニークな完全長遺伝子配列をあらわすDNAミクロアレイを使用してin vitroで作製したヒトTh1またはTh2細胞集団における遺伝子発現パターンを分析した。記述の実験はTヘルパー細胞分化の早期段階中の遺伝子発現を地図にし、分化し、再刺激されたTh1及びTh2細胞集団と比較するように計画された。所定の実験において全てのサンプルにabsent(存在せず)とされた遺伝子は分析から排除された;それはベースラインからの倍数変化が2未満だったからである。全てのサンプルにおいてabsentと示された遺伝子は排除された。Th1及びTh2サンプル間の倍数変化(または倍変化)(fold change)の差は引き算によって計算した。アフィメトリックスソフトウエアは、遺伝子の存在または不在、及びベースラインを基準とした増加または減少を決定するために2種類のアルゴリズムを使用する。そこで、若干の場合に或る遺伝子は増加としてあらわされるが、absentと呼ばれることもある。さらに、遺伝子はベースラインを超えて有意に増加するが、変化せずと記載されることもある。そのため、これらの基準の両方に合う遺伝子はその後の分析のために最も興味深い遺伝子である。
【0253】
表1には、遺伝子の既知機能に基づき諸カテゴリーにグループ化された、ナイーブCD4T細胞から最低2のファクターだけ増加または減少した発現レベルを有することが判明した遺伝子が列挙されている。Th1−誘導性またはTh2−誘導性処理の24時間後のTh1及びTh2細胞における遺伝子発現の実際的測定値(−倍(−fold)変化としてあらわされる)が“Th1 24h”及び“Th2 24h”と記されたカラムにそれぞれ示される。Th1及びTh2細胞の各々における各遺伝子の差の表示(増加、減少または変化せず等)も、表1に示される。表2は、表1中の遺伝子であって、Th1における発現は減少したがTh2における発現は変化しないことが認められた遺伝子を含む。表3は、表1中の遺伝子であって、Th1における発現は増加したがTh2における発現は変化しないことが認められた遺伝子を含む。表4は、表1中の遺伝子であって、Th1細胞における発現は変化しなかったがTh2細胞における発現が減少することが認められた遺伝子を含む。表5は、Th1細胞における発現は変化しないが、Th2細胞における発現が増加することが認められた表1中の遺伝子を含む。表6はTh1及びTh2細胞両方において、ナイーブCD4T細胞に比較して発現が変化(増加または減少)した遺伝子のみを含む。
【0254】
E.Th1誘導性及びTh2誘導性条件に反応したナイーブCD4T細胞における遺伝子発現の時間的経過
予備的実験を計画し、Th1誘導性またはTh2誘導性条件に反応して起こる遺伝子発現の24時間にわたる変化を分析した。3種類のドナーからの臍帯血から分離したナイーブCD4T細胞を、抗CD3及び抗CD28及び10ng/ml組換え(r)ヒトIL−2を塗布したマイクロビーズの存在下で指示された時間培養した。このような条件はこれら細胞の速やか、かつ持続的増殖を誘起した。10ng/mlのrIL−12及び200ng/mlの抗IL−4(Th1誘導性条件)、または10ng/mlのrIL−4及び2ng/mlの抗IL−12(Th2誘導性条件)のどちらかの存在下で細胞を培養した。指示された時間にRNAをナイーブCD4T細胞及び細胞培養液から分離し、個々のドナーをプールした。蛍光RNAプローブをこれらのプローブから作り、アフィメトリックス ヒト6800DNAミクロアレイセットを調べた。
【0255】
遺伝子発現レベルをアフィメトリックスソフトウエアを使って評価した。特定の遺伝子の“平均差″と呼ばれる相対的豊富さは、完全にマッチしたオリゴヌクレオチドのセットに対するハイブリッド化の強度を、単塩基がミスマッチしているオリゴヌクレオチドの対応するセットに比較することによって計算した。遺伝子はそれらの平均差によって存在する、または存在しない、と示された。サンプル間での転写物の相対的豊富さを比較するために、ナイーブCD4T細胞RNAサンプルをベースラインとして示し、その他の全てのサンプル中の各遺伝子の平均差をこれと比較した。全部で775遺伝子(〜12%)がナイーブCD4T細胞ベースラインに存在するとされた。存在すると示される遺伝子の数は刺激の長さによって増加し、24時間後に最大値に達した(24時間のTh1誘導性条件、1193;24時間のTh2誘導性条件、1261)。
【0256】
分類体系的クラスターアルゴリズムを使って類似の発現パターンで遺伝子または処理(treatment)をグループ化した(データは示されず)。処理群によってサンプルを集めると、処理は、刺激条件よりもむしろ刺激の長さによってグループ化される結果になり、大部分の遺伝子が一般にはTh1誘導性及びTh2誘導性条件で刺激の最初の24時間に発現することが示唆される(データは示されず)。こうして処理群を遺伝子発現の類似性によって集めた。即時早期に反応する遺伝子及び遅く反応する遺伝子の両方の集合が確認された。99遺伝子の発現が分化の最初の6時間中に増加または減少することが示され、それらがTh1及びTh2分化の初期相に関係することが示唆される(図4のA群,B群,D群及びH群)。これらの遺伝子の大部分はナイーブCD4T細胞ベースラインから2倍より大きくは異ならなかった。これらの群はJunB、pim1、c−myc及びSTAT5等の既知の即時的早期遺伝子を含んだ。これらの即時的早期遺伝子のうち、hCREM(環状AMP反応性要素モジュレーター)を含む11の遺伝子だけがTh1特異性と分類されIL−4受容体を含む16の遺伝子がTh2特異性と分類された(図4のH群)。
【0257】
24時間後両サンプル中で増加したがTh1またはTh2分化に特異的でなかった112遺伝子の群はTエフェクター細胞分化に関係するらしい(図4のE群)。この群はサイクリン、数種のATPシンターゼ遺伝子、数種のチトクロームCオキシダーゼ遺伝子及び数種のプロテオソーム サブユニット遺伝子等を含んでいた。42遺伝子の群はTh1誘導性条件において24時間後識別的に発現することが判明し、これらは、抗原提示に関係するIFN−γ、STAT1及びTAP1等の遺伝子を含んでいた(図4のG群)。70遺伝子の群はTh2誘導性条件において24時間後に識別的に発現することが判明し、GATA−3、Th2特異性転写因子等の遺伝子を含んでいた。
【0258】
各時点において3人のドナーから集めたRNAを使用してDNAアレイ分析を行い、検出された遺伝子発現レベルが各サンプルを代表しているかどうかを確認し、別の遺伝子発現評価法を使用してDNAミクロアレイ上に検出される相対的遺伝子発現レベルを独立的に確認した。マクロファージ阻害因子(MIF)の遺伝子発現を、その後のPCR分析のために選択した、なぜならばMIF mRNAは、DNAアレイ分析によってTh1誘導性及びTh2誘導性条件において24時間以上増加することが判明したからである(図4のF群)。Th1及びTh2培養培地で一時点における、3つの個々のRNAサンプルの各々の遺伝子発現レベルを、タックマン5’ヌクレアーゼ蛍光標識定量的PCRアッセイを使用して測定した(図1)。Th1誘導性条件(図1A)またはTh2誘導性条件(図1B)におけるMIFmRNAの発現は、DNAミクロアレイ分析によつて評価されたように、Th1及びTh2サンプル両方において時と共に増加することが示された。PCRによって検出されたMIFmRNAの相対的増加はTh1誘導性条件においてDNAミクロアレイレベルと相関することが判明した(図1A)。Th2誘導性条件中においては、3サンプル間により大きい変動が認められたが、相対的MIF mRNAレベルはPCR及びDNAミクロアレイデータ間で一致した。これまでの研究は、アフィメトリックスDNAミクロアレイを使用するDNAミクロアレイ分析が、伝統的mRNA検出法に匹敵する比、並びに絶対的mRNAレベルを与えることを示している。これらのデータは、DNAミクロアレイ分析が遺伝子発現レベルを分析する確実な方法であること、そして3ドナーサンプルの間には遺伝子発現の有意な変動はなかったことを証明するものである。
【0259】
F.Th1誘導性及びTh2誘導性条件に反応するナイーブCCD4T細胞における遺伝子発現パターン
これまでの結果に照らして、24時間という刺激時間を選び、Th1誘導性 対 Th2誘導性条件における遺伝子発現の差をより詳細に分析した。第二の実験は単一ドナーからのナイーブCD4T細胞で行った。抗CD3及び抗CD28ミクロビーズ、及び10ng/mlのIL−2、そして10ng/mlのIL−2と200ng/mlの抗IL−4(Th1−誘導性条件)か、または10ng/mlのIL−4と2μg/mlの抗IL−12(Th2−誘導性条件)を使用して細胞を24時間刺激した。
【0260】
Th1誘導性及びTh2誘導性条件における各遺伝子の平均的差を互いに対してプロットした(図2)。0以下の平均差を有する遺伝子は1に設定した。グラフ上に引かれた線は、Th2誘導性条件と比較してTh1誘導性条件において2倍以上の増加を示し(△)、またはTh1誘導性条件と比較してTh2誘導性条件において2倍以上の増加を示す(□)、線lである。2本の平行線の間にある遺伝子の大部分はTh1及びTh2誘導性条件間の差が2倍未満であった。Th1誘導性条件とTh2誘導性条件の間での差が2倍より大きい平均差を有する遺伝子は2本の線の外側にあり、その後の研究のために最も興味深いと考えられた。大きい平均差を有する高度に発現される遺伝子、例えばリボソーマル蛋白S11等(平均差Th1−29911、Th2−25621)は主としてハウスキーピング遺伝子であった。より低い平均差を有する遺伝子、例えばIFN−γ(Th1−1455、Th2−44)及びGATA−3(Th1−309、Th2−1326)等も2サンプル間に2倍より大きい差を示し、Th1およびTh2細胞の分化に重要であると見られた。
【0261】
G.Th1誘導性及びTh2誘導性条件に反応したナイーブCD4T細胞における個々の遺伝子発現の分析
24時間の刺激後、Th1誘導性またはTh2誘導性条件下で刺激されたCD4T細胞は、分化Tヘルパー細胞に典型的なサイトカイン分泌プロフィールを示さない。これまでの研究は、IFN−γ及びIL−4の産生が細胞サイクルに依存することを証明している。IFN−γはたった一回の細胞分割(1日目)後に産生され、他方IL−4産生には最低4回の細胞分割(3日目)が必要であった。この実施例において、IFN−γmRNAの増加した発現(ベースラインより15.7倍の増加)がTh1誘導性条件下で検出され、Th2誘導性条件下では見いだされなかった(表1)。IL−12Rβ2mRNA発現も同様な発現パターンを示した。この研究結果は、これまでの研究と一致する。これまでの研究は、IL−12Rβ2鎖がT細胞受容体による刺激に反応してCD4T細胞上で上方調節され、IL−12に反応して維持されるが、IL−4に反応して下方調節されることを示した。IL−4mRNAはTh2誘導性条件では24時間後に検出されなかったが、これに対してIL−4受容体mRNAは検出された。IL−4受容体は静止T細胞上に存在し、外因性IL−4の添加でIL−4受容体mRNAの上方調節が起きる。GATA−3mRNAはナイーブCD4T細胞ベースライン サンプルに検出され、Th1誘導性条件では存在せず、Th2誘導性条件では増加した(表1)。GATA−3はナイーブCD4T細胞に存在すると報告されており、Th1経路に沿って分化する細胞では下方調節される。特定の細胞型に産生されたmRNAの相対的量の影響を測定するのは難しい。翻訳後変化及びmRNA安定性は産生された特定の蛋白のレベルに影響を与える。相対的IFN−γ蛋白レベルの分析からはmRNAと蛋白発現との相関関係が証明された(データは示されず)。
【0262】
異なる機能的カテゴリーからの多くの遺伝子はTh1誘導性またはTh2誘導性いずれかの条件において識別的にに発現することが見いだされた。ケモカインは生理的及び炎症的条件に反応した白血球の組織内への移動をコントロールする分子群である。Th1及びTh2細胞は、現在それらの特定炎症部位への特異的移動を支配することが知られているケモカイン受容体の、重なり合ったセット及び分離したセットを発現することが判明した。Th1細胞はより好んでCXCR3及びCCR5を発現し、一方Th2細胞は好んでCR3及びCCR4を発現する。DNAミクロアレイを使用する遺伝子発現の分析は、CCR7がTh2誘導性条件では24時間後に識別的に発現することを証明した。CCR7はナイーブCD4T細胞によって発現されることが示され、T細胞をリンパ節に向かわせ、そこで抗原によってプライムされることに関係すると考えられている。マウスの分化したTh1細胞は優先的にCCR7mRNAを発現し、動脈周囲リンパ鞘に局在することが判明した。これに対して、CCR7が欠如した活性化Th2細胞はB細胞ゾーンに隣接したT細胞ゾーンの周辺に存在した。CCR7表面発現はTh2分極化細胞系ではTh1分極化細胞系と比較して、T細胞活性化の最初の24時間に高水準に上方調節され、その後の24時間にはCCR7は両方の細胞系で減少した。本研究は、Th2誘導性条件におけるナイーブCD4T細胞の刺激は、刺激の少なくとも最初の24時間はCCR7mRNA発現を上方調節することを示し、これまでの研究と共に、IL−4がTh2細胞上のCCR7を速やかに、かつ一過性に上方調節し得ることを示唆するのかも知れない。この知見を確認するにはIL−4に反応するケモカイン受容体mRNA発現のさらなる分析が必要とされる。CCR7mRNAの一過性発現は、ケモカイン受容体発現が非常にフレキシブルであり、リンパ球の運搬の調節に重要な役割を演ずるらしいことを示すものである。
【0263】
ケモカインmRNAの発現もTh1−誘導性及びTh2−誘導性条件両方において検出された。IL−12及びIFN−γ両方によって誘導されるMIP−1α及びMIP−1βmRNAは、Th1−誘導性条件において識別的に発現した。IFN−誘導性であるMIP−3αもTh1−誘導性条件に反応して優先的に誘導された。MIP−3αはリンパ球及び単球の化学的誘引物質である。それは未成熟ランゲルハンス樹状細胞を好んで誘引することも判明した。炎症周辺部におけるTh1細胞中のIFN−γ誘導性MIP−3αの産生は、未成熟樹状細胞をその部位に補充する手段を提供する。これに対して、TARCはTh2誘導性条件下で識別的に発現する。TARCはCCR4受容体に結合し、それはTh2細胞に優先的に発現する。T細胞によるこれらケモカインの産生はケモカインリセプターの発現をさらに上方調節する手段となり得る。
【0264】
遺伝子発現の後生的調節がリンパ球の表現型の遺伝形質を与えるという新しい証拠がある。クロマチン(染色質)のかさばった構造に関する後生的制約は遺伝子のアクセシビリティー(近づきやすさ)を制限し、それらの転写を制限する。ヒストン類の過メチル化及びDNAの脱メチル化によって後生的制約を緩和すると遺伝子の転写は活発になる。最近の研究はサイトカイン遺伝子座のクロマチン リモデリングがTヘルパー細胞分化と機能的に関連していることを証明した。ナイーブT細胞のTh1またはTh2細胞への分化は、それぞれIFN−γ及びIL−4遺伝子座の異なるクロマチン アクセシビリティーと関連づけられた。細胞をヒストン デアセチラーゼ及びシトシンメチラーゼのインヒビターで処理するとIFN−γ及びIL−4産生が増加することが判明した((データは)示されず)。IL−4遺伝子座のクロマチンの再構築(リモデリング)は、IL−4転写体がほとんど検出されない場合は48時間以内に起きる。
【0265】
この実施例において、転写のクロマチン依存性抑制の逆転に関係する2つのアクチン依存性−クロマチン レギュレーター、SMARCB1及びSMARCA2はそれぞれTh2誘導性及びTh1誘導性条件において識別的に発現した。これらの分子はクロマチン構造を変化させ、ATPに依存するやり方でDNAアクセシビリティーを高めることが示された(ワークマン(Workman)及びキングストン(Kingston)、1998)。IFN−γ及びIL−4遺伝子座のクロマチンのリモデリングに関係する特異的分子はこれまで確認されておらず、SMARCB1及びSMARCA2がこのプロセスに特異的にかかわっている可能性がある。
【0266】
H.タックマン(Taqman)ポリメラーゼ連鎖反応法
遺伝子チップ(GeneChip)分析(上記)から得られるデータが細胞サンプル中の遺伝子発現の実際的レベルを反映したことを確認するために、選択された遺伝子、MIP、の発現をポリメラーゼ連鎖反応法によっても測定し、その結果をGeneChip分析によって観察された発現レベルと比較した。全RNAを10単位のRQ1デオキシリボヌクレアーゼ(プロメガ、マジソン、WI、USA)で37℃で30分間処理した。サンプルをフェノール/クロロホルムで抽出し、RNAを0.3M酢酸ナトリウム及び2容量の100%エタノールで沈殿させた。RNAをDEPC処理水に再懸濁し、そのRNA濃度を、260nmの吸光度の測定によって確認した。それからrTth DNAポリメラーゼを使用して逆転写し、全RNA25ngをシングルチューブ アッセイで増幅した;その際遺伝子特異的センス及びアンチセンス プライマーと、5’末端を6−カルボキシル−フルオレッセイン(6−FAM)で蛍光標識したプローブとを含むパーキン−エルマーTaqMan EZRT−PCRキット(パーキン−エルマー・アプライド・ビオシステムズ、フォスターシティー、CA、USA)を使用した(クルーズ(Kruse)(1997)J Immunol.Methods 210巻(2号):195〜203ページ;ヘイド(Heid)ら(1996)Genome Res.6巻(10号):986〜94ページ)。プライマー及び蛍光標識プローブはプライマー発現ソフトウェア(パーキン−エルマー)を使って作製され、パーキン−エルマー社によって合成された。混入ゲノミックDNAの増幅を避けるために、イントロン/エキソン境界を横切るプライマー対を選択した。ドュプリケート サンプルを60℃で30分間逆転写し、それからABI Prism7700配列検出装置を用い、メーカー(パーキン−エルマー)の説明にしたがって、15秒間95℃、1分間60℃の増幅を40ラウンド行った(クルーズら(1997)同上)。配列特異的増幅は増幅サイクル中の6−FAMの蛍光シグナルの増加として検出された。遺伝子特異的メッセージ レベルの定量は未知のmRNAサンプルの蛍光強度と、既知のmRNAレベルの標準曲線から得られる蛍光強度との比較に基づいて行われた。ヒト酸性リボソーマル蛋白(HARP)の遺伝子の増幅は、全ての試験サンプルで行い、RNA量の変動をコントロールした。MIFmRNAをこのコントロールmRNAに標準化した。結果は図1に示され、遺伝子チップ(GeneChip)分析から得られるデータが細胞サンプル中の遺伝子の発現レベルを正確に反映することを示した。
【0267】
1.検討
Th1−誘導性条件に反応した24時間後のIFN−誘導可能遺伝子発現の明確なプログラムを確認した。インターフェロン群は多くの異なる細胞型において約200の遺伝子の発現を誘導することが判明している。この遺伝子発現パターンは、インターフェロン分子の一つ以上がTh1細胞の初期分化に重要な役割を演ずることを示唆する。IL−12Rβ2鎖の発現はTh1発生に重要であり、IL−12によって誘導され、IL−4の存在下で消失することが判明した。IL−12誘起性のIL−12Rβ2の発現及びSTAT4の活性化はIFN−γ依存性であることが判明した。T細胞におけるIFN−γmRNAの発現は6時間以内にIL−12によって誘導されることが前に示された。IFN−γが高レベルのSTAT1mRNAを誘導することも判明している。この実施例において、STAT1mRNAの24時間後の発現は、Th2誘導性条件に比較してTh1誘導性条件においてより優先的に上方調節された。STAT1はIFN−γに反応した燐酸化によって活性化され、IFN−γ処理後15ないし30分以内にあらわれる。その後STAT1は核に移り、そこで多数の遺伝子の転写アクチベータとして作用する。STAT1のDNA結合活性は1時間以内に消失する。IFN−γまたはIL−12によるSTAT1転写の誘導は、この強力な転写アクチベータのための付加的制御点として役立つと思われる。
【0268】
STAT1レベルはユビキチン依存性タンパク分解によって負に調節されることが判明している。タンパク分解に関係する3種類の遺伝子、UBE1L、UBE2D1及びプロテオソーム サブユニット、はTh1誘導性条件において識別的に発現することが示された。これらの蛋白は蛋白分解によって活性STAT1レベルを調節することに関係していると思われる。そこでSTAT1活性は、IFN−γまたはIL−12により、またはこれら両方によって、転写レベルではmRNA蓄積を増やすことによって、また翻訳後には蛋白分解及び蛋白崩壊を促進することによって調節され得る。
【0269】
Th1及びTh2分化において重要であることが示されたシグナルの大部分はマウス及びヒト細胞両方に適用されるが、一つ注目すべき例外がある。I型IFNであるIFN−αもIFN−βも両方共直接ヒトTh1分化を誘導し得る。これに対してI型IFNはマウスTh1分化を誘導できない。IFN−α/βはヒトにおいてSTAT−4活性化を誘導できるがマウスT細胞ではできないことが証明され、これがこの種特異的相違を説明する。
【0270】
インターフェロン調節因子(IRFs)と呼ばれる転写因子群は本研究においてTh1誘導性条件において識別的に発現した。IRF−1、ISGF3G及びICSBPは全てTh1誘導性条件において優先的に発現した。IRF−1及びISGF3GはIFNで刺激される遺伝子のポジティブなレギュレーターであり、他方ICSBPはこれら2種類の蛋白との相互作用によって、ネガティブに働くレギュレーターとして作用する。IRF−1遺伝子発現はT細胞におけるSTAT4活性化を介してIL−12によって上方調節されることが判明し、IFN−αによって間接的に仲介されなかった。IFN−γで誘導できる遺伝子(L07633)及びIP30が、Th1誘導性条件において優先的に誘導された;アフィメトリックスDNAミクロアレイを用い、線維肉腫細胞系においてIFN−α、−β及び−γに反応した遺伝子発現を比較した別の研究において、これらがIFN−γによって誘導されることが明らかにされた。デル(Der)らは、各IFNがIFN誘導遺伝子の分離した一組を調節することを証明した。特に、MX1、G1P2はIFN−α及び−βによって誘導され、他方PPP3CAはIFN−αによって誘導され、IFN−βによって下方調節された。本研究において、Th1誘導性条件におけるMX1及びG1P2の誘導、それと共にPPP3CAの下方調節は、I型IFN類がヒトT細胞のTh1分化の初期段階に作用することを示唆する。
【0271】
抗原提示に関係する一組のIFN−誘導(inducible)遺伝子もTh1誘導性条件において識別的に発現した。MHC分子の発現を誘起するIFN−γの役割はよく議論されている。2種類のMHCクラスI遺伝子はTh1誘導性条件において識別的に発現することが示された。MHCクラスI遺伝子はT細胞において構成的に発現するが、IFN−γによって有意にさらに上方調節することもある。TAP1及びTAP2はゲノムのMHC領域においてコードされ、LMP2及びLMP7(2つのプロテオソーマル多型遺伝子)に密に結合している。4遺伝子全てはIFN−γによって誘導される。この領域の多くの遺伝子は、インターフェロン刺激−反応因子(ISRE)と呼ばれる短い二方向配列特徴部との相互作用を介してIFN−γによって調節されることが知られている。Th1誘導性条件におけるMHC領域の識別的遺伝子発現は、この遺伝子クラスの別々のメンバーが共通のプロモーターを使用する結果として、これらメンバーが同時調節されることを反映していると思われる。
【0272】
(実施例2)
再刺激された完全分化Th1及びTh2細胞における遺伝子発現の分析
A.分化の刺激
Th1及びTh2細胞における遺伝子発現を、これら細胞を正常に刺激する条件のもとで調べた。精製CD4CD45RA+T細胞を6ウェルの平底組織培養プレート(ファルコン、ベクトン ジキンソン ラブウエア、NJ、USA)に培養した;その際10%ヒト血清(Biowhittaker、ウォーカズヴィル、MD、USA)、100μg/mlのペニシリン及びストレプトマイシン(OAAラボラトリーズ、リンツ、オーストリア)及び2μMのL−グルタミン(PAAラボラトリーズ、リンツ、オーストリア)を補充したRPMI 1640(PAAラボラトリーズ、リンツ、オーストリア)に、2.0×10細胞/mlの密度で植え付けた。細胞を、抗CD3及び抗CD28(レヴィン(Levin)(1995)Int.Immunol.7巻:891〜904ページ)を塗布したM−450トシル活性化ダイナビーズ(ダイナル、オスロ、ノールウェイ)(1細胞につき1個のビーズを使用)及び10ng/mlのrIL、10ng/mlのrIL12及び200ng/mlの抗IL−4(Th1分化を刺激するため)、または10ng/mlのIL−4及び2μg/mlの抗IL−12(Th2の分化を刺激するため)で刺激した。培養7日後、細胞を1.0×10細胞あたり10μLのDETACHaBEAD中で2時間培養し、それから2.5%FCS(シグマ、セントルイス、MO、USA)を補充したHBSSで3回洗うことによって、抗CD3/抗CD28塗布ビーズを細胞から除去した。次いで細胞を50ng/mlの4−フォルボール−12ミリステート13−アセテート(PMA)及び250ng/mlのカルシウム イオノフォア イオノマイシンで4時間再刺激した。細胞を遠心分離によって集め、燐酸緩衝食塩液で1回洗い、RNA及びマーカ分析を上記のように行った。
【0273】
ナイーブCD4T細胞に比べて有意に(例えば2倍以上)増加または減少した発現を示す多数の遺伝子が確認された。これらの遺伝子は表7及び表13に示される。表8はTh1細胞で発現が増加し、Th2細胞で発現が変化しなかった、表7中の遺伝子を含む。表9は、Th1細胞で発現が減少し、Th2細胞で発現が増加した表7中の遺伝子を含む。表10はTh2細胞で発現が増加し、Th1細胞で発現が変化しなかった表7中の遺伝子を含む。表11はTh1及びTh2両方の細胞において対照ナイーブT細胞に対して発現が変化した(増加または減少等)表7中の遺伝子を含む。
【0274】
B.分化の確認
Th1またはTh2細胞のどちらかに分化を誘発するようにナイーブT細胞に適用した処置が適切な細胞分化を誘導したことを確認するために、各細胞型によって産生されると期待されるサイトカインを測定する実験を行った。分離したCD4ナイーブT細胞を適切なサイトカインとともに培養することによって、Th1またはTh2細胞のどちらかに分化するように誘導した。ナイーブT細胞を10ng/mlのrIL−2、10ng/mlのrIL−12及び200ng/mlの抗IL−4で(Th1の分化を刺激するため)、または10ng/mlのIL−4及び2μg/mlの抗IL−12で(Th2分化を刺激するため)7日間処理した。この培養に続いて、細胞をPMAまたはイオノマイシンで上記のように4日間刺激した。Th1細胞は一般的にIFN−γを分泌し、Th2細胞は一般的にIL−4を分泌する;そのため、培養上澄液中のIFN−γ(図3A)及びIL−4(図3B)産生をELISAによって分析試験した。図3に示す結果は、3サンプルの平均値及び標準偏差をあらわし、いくつかの実験を代表するものである。このグラフからわかるように、Th1細胞はナイーブT細胞(T)またはTh2細胞のどちらよりも有意に多いIFN−γを分泌し、Th2細胞はナイーブT細胞(T)またはTh1細胞のどちらよりも有意に多いIL−4を分泌した。
【0275】
C.検討
1.分化Th1及びTh2細胞集団における遺伝子発現のパターン
この実施例は、DNAミクロアレイ法を使って、分化しつつある細胞の或る特定時点における遺伝子発現を分析できることを示すものである。分化したTh1及びTh2細胞集団の遺伝子発現パターンを分化の最初の24時間の遺伝子発現と比較した。
【0276】
抗CD3、抗CD28及びrIL−2による刺激に反応して誘導される遺伝子をコントロールするために、ナイーブT細胞を、Tヘルパー誘導性サイトカイン及び抗サイトカイン抗体の不在下で刺激した。ナイーブCD4T細胞を、抗−CD3及び抗CD28塗布ミクロビーズ及び10ng/mlのIL−2(Th0条件)、ならびに10ng/mlのrhuIL−12と200ng/mlの抗IL−4(Th1条件)と、10ng/mlのrhuIL−4と2μg/mlの抗IL−12(Th2条件)とのいずれかで7日間刺激した。7日後、ミクロビーズを除去し、更に細胞を媒体中で2時間徹底的に洗い、外因性サイトカインを除去した。次いで、各集団を媒体だけで4時間刺激するか、または50ng/mlのPMA及び250ng/mlのイオノマイシンで4時間及び24時間刺激した。細胞集団のTh0、Th1またはTh2への分化が、4時間及び24時間培養上澄液のELISAアッセイによって確認された(図3)。マイトジェン刺激がない場合、どの細胞集団もIFN−γまたはIL−4を発現しなかった。抗CD3及び抗CD28塗布ミクロビーズ及びrIL−2の存在下で培養した細胞は、4時間再刺激後にIFN−γを発現し、24時間再刺激後にIFN−γとIL−4を両方共発現した。この細胞集団はTh1細胞より少ないIFN−γを発現し、Th2細胞より少ないIL−4を発現し、そのためTh0細胞と名付けられた。Th1条件のもとで培養した細胞は4時間及び24時間刺激後にTh0またはTh2細胞集団より多いIFN−γを産生し、4時間刺激後においてIL−4を全く産生せず、24時間刺激後のIL−4レベルはTh0またはTh2細胞のどちらよりも低かった。
【0277】
マイトジェンの存在のもとで4時間再刺激した細胞培養物から生成したRNAを使用して蛍光プローブを作り、それを一晩アフィメトリックス6800ミクロアレイにハイブリッド化した。蛍光パターンをレーザースキャナーを使用して検出し、その結果を、ナイーブCD4T細胞ベースラインを超える倍数変化(フォールド変化)として示した。培養条件に反応して誘導された遺伝子を排除するために、Th1及びTh2細胞のフォールド変化をTh0フォールド変化から差し引いた。Th1及びTh2細胞において、Th0細胞と比べて2倍以上異なる遺伝子だけを考慮した(表7〜11)。
【0278】
蛋白レベルでのサイトカイン発現分析は、細胞集団がTh1及びTh2細胞表現型に分化することを示した。分化したTh1及びTh2細胞を4時間再刺激すると、Th1細胞ではIFN−γ及びIL−2mRNAが識別発現し、Th2細胞ではIL−4及びIL−13mRNAが識別発現した(表7)。マイトジェによる再刺激は、in vitroで分化したTh1細胞とTh2細胞とをサイトカインプロフィールに基づいて区別するために明らかに重要である。単一細胞レベルのサイトカインmRNA分泌プロフィールの分析からは、細胞混合集団からの個々のクローンでは発現サイトカインの組み合わせ及び量が広く変動することが判明した。ここに示される分析は、Th1及びTh2細胞間での分子レベルでの差は、比較的小さいことを示唆している。多くのTh1及びTh2特異的遺伝子はIFN−γまたはIL−4によって誘導されるから、この分析は必ずしもこれらの特異的遺伝子が開示されるものではない。なぜならばTh1及びTh2遺伝子発現は、これらサイトカインを両方発現するTh0細胞のバックグラウンドから差し引かれたものだからである。クローン化Tヘルパー細胞系の分析により、これら2細胞型間での遺伝子発現がより多様であることが明らかとなろう。より重要なことは、この実験が“Th1及びTh2細胞の発生が時間をかけて徐々に起き、炎症部位に見いだされるTヘルパー細胞がサイトカイン分泌プロフィールに関して段階的に分化する”というin vivo状態を反映していると考えられることである。
【0279】
2.分化Th1及びTh2細胞集団における個々の遺伝子発現の分析
Th1及びTh2誘導性条件における遺伝子発現の分析は、多数のケモカインがこれら細胞型において優先的に上方調節されることを示した。24時間後に識別的に発現したもののなかで、MIP−3αだけが分化したTh1細胞に優先的に発現することが見いだされた。炎症周辺部位のTh1細胞におけるMIP−3αのIFN−γ誘起性産生は、未成熟の樹状細胞をこの部位に集める一つの手段を与えると思われる。
【0280】
ANX2、またはリポコルチンIIは、カルシウム依存性−内在性膜結合蛋白である。リポコルチンIIは細胞増殖を促進する。そして破骨細胞形成および骨吸収を高めることが明らかにされている。リポコルチンII/アネキシン2(リポプロテイン36としても知られている)は、マウスに注射すると、Th2免疫反応を誘発することが示されている。本研究によれば、リポコルチンIIはTh2細胞に優先的に発現する。幾つかの研究は、IL−4が単球類及び単球細胞系の破骨細胞発生を促進し得ることを示したが、他の研究は、IL−4がex vivo モデルにおける骨吸収を抑制することを示している。リポコルチンII産生がT細胞においてIL−4によって誘導され、破骨細胞形成及び骨吸収がIL−4誘起性リポコルチンIIによって促進されることはあり得ることである。
【0281】
Th1またはTh2細胞に優先的に発現することがこれまで知られていなかった多数の遺伝子がこの分析において確認された。熱衝撃蛋白(hsp)70として知られているHSPA1Lは、Th1細胞に比べてTh0及びTh2細胞においてより高度に上方調節された。hsp値は多くの細胞機能に関係するいたるところに発現する分子シャペロンである。熱衝撃蛋白の免疫原性は十分に説明されているが、リンパ球によって産生するhspの役割は解明されていない。特定のサイトカインに反応したメモリーT細胞による特異的熱衝撃蛋白の産生は、特定の炎症部位における免疫反応を増幅する手段に役立つと思われる。hsp70がサイトカインとして作用し、単球における炎症前サイトカインの産生を誘導し得るという最近の研究結果は、hsp70が免疫反応の誘発に関係することを示唆する。G−α16として知られているG−蛋白はTh0及びTh1細胞に比較してTh2細胞において上方調節された。G−α16蛋白は造血細胞において特異的に発現し、IL−2シグナリングに関係している可能性がある。Th2細胞におけるG−α16蛋白の発現増加はこのシグナリング分子がTh2特異的サイトカイン遺伝子発現に関係することを意味すると思われる。
【0282】
【表1】
Figure 2005527179
【0283】
【表2】
Figure 2005527179
【0284】
【表3】
Figure 2005527179
【0285】
【表4】
Figure 2005527179
【0286】
【表5】
Figure 2005527179
【0287】
【表6】
Figure 2005527179
【0288】
【表7】
Figure 2005527179
【0289】
【表8】
Figure 2005527179
【0290】
【表9】
Figure 2005527179
【0291】
【表10】
Figure 2005527179
【0292】
【表11】
Figure 2005527179
【0293】
【表12】
Figure 2005527179
【0294】
【表13】
Figure 2005527179
【0295】
【表14】
Figure 2005527179
【0296】
【表15】
Figure 2005527179
【0297】
【表16】
Figure 2005527179
【0298】
【表17】
Figure 2005527179
【0299】
【表18】
Figure 2005527179
【0300】
【表19】
Figure 2005527179
【0301】
【表20】
Figure 2005527179
【0302】
(均等物)
熟練せる当業者は、単に日常的実験を使用することによって、本明細書に記載した本発明の特定の実施形態に相当する多くのものがあることを認識し、確認することができる。このような同等物は添付のクレイムに包含されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【図1】
図1Aおよび図1Bは、Th1誘導性条件、及びTh2誘導性条件にさらした細胞における、ナイーブCD4T細胞のMIF mRNAの発現の、タックマン(Taqman)5’ヌクレアーゼ蛍光定量PCR法(蛍光で定量するPCR法)による解析結果を示す図である。MIF mRNA発現は、各時点で3の個別サンプルで測定され、PCRを使用してHARP mRNAに標準化された。タックマンの任意値(左側)はTh1誘導性(図1A)またはTh2誘導性(図1B)条件における3サンプルの平均値をあらわす。誤差の棒は標準偏差をあらわす。各サンプルのミクロアレイ値(右側)はアフィメトリックスソフトウエアを使って計算した平均差をあらわす。
【図2】
Th1誘導性及びTh2誘導性条件における遺伝子発現の比較を示す図である。各処理群からのRNAを蛍光標識し、実施例に説明するようにアフィメトリックス遺伝子ミクロアレイにハイブリッド化した。Th1−誘導性及びTh2−誘導性条件下における各遺伝子の平均差を、両サンプルをナイーブCD4T細胞ベースラインに対して標準化することによって求め、対応してプロットした。全てのサンプルでabsentとされた遺伝子は分析から除外した。0以下の平均差を有する遺伝子は1とした。Th2誘導性条件に比べてTh1誘導性条件下では2倍以上の増加を示す群、またはTh1誘導性条件に比べてTh2誘導性条件下で2倍以上の増加を示す群を、代表して線を引いた。
【図3】
図3A及び図3Bは、分化したTh1及びTh2細胞集団の表現型を示す図である。臍帯血から分離したナイーブCD4T細胞を指示された時に、抗CD3及び抗CD28を塗布したミクロビーズ及び10ng/mlのrIL−2の存在下で(Th0)、そして10ng/mlのrIL−12及び200ng/mlの抗Il−4(Th1細胞)または10ng/mlのrIL−4および2マイクログラム/ml抗IL−12(Th2細胞)の存在下で、それぞれ7日間培養した。その後細胞集団をPMA及びイオノマイシンの存在下(+)または不在下(−)で4時間または24時間再刺激した。培養上澄液のIFN−γ(図3A)及びIL−4(図3B)産生をELISAによって分析試験した。結果はプロテアーゼ3サンプルの平均値及び標準偏差を示し、いくつかの実験を代表するものである。
【図4】
Th1−誘導性またはTh2−誘導性条件で24時間培養したCD4T細胞における遺伝子発現の群(クラスター)分析を示す図である。各処理群の全RNAを蛍光標識し、アフィメトリックス遺伝子ミクロアレイにハイブリッド化した。遺伝子発現は、ナイーブCD4T細胞を1として、これを超える倍数変化(fold change)としてあらわした。2未満の倍数変化は分析から排除し、遺伝子類を発現プロフィールの類似性に基づいて複数の群に分類体系的に集めた。右のグラフは、確認されたそれぞれの“群(クラスター)”(A−H、クラスター図の右側の棒によって示される)の平均的発現プロフィールを示す。

Claims (49)

  1. Th1またはTh2細胞が対象に存在するかどうかを評価する方法であって、
    a)対象から採取したサンプル中のマーカーであって、表2〜5及び表8〜10に列挙されるマーカー類からなる群から選択される前記マーカーの発現レベルと、
    b)対照サンプル中の前記マーカーの正常な発現レベル
    とを比較することを含んでなり、
    その際対象からのサンプル中のマーカーの発現レベルと前記正常な発現レベルとの間の有意差を以って前記対象におけるTh1またはTh2細胞の存在を示すものとする
    前記方法。
  2. 前記マーカーが転写ポリヌクレオチドまたはその部分に対応し、前記ポリヌクレオチドが前記マーカーを含む請求項1記載の方法。
  3. 前記サンプルが対象から得られた細胞を含む請求項1記載の方法。
  4. 前記細胞がリンパから集められる請求項3記載の方法。
  5. 前記細胞が血液組織から集められる請求項3記載の方法。
  6. サンプル中の前記マーカーの発現レベルがナイーブT細胞の前記マーカーの発現レベルと最低約2のファクターだけ異なる請求項1記載の方法。
  7. サンプル中の前記マーカーの発現レベルがナイーブT細胞のマーカーの発現レベルと最低約5のファクターだけ異なる請求項1記載の方法。
  8. 前記マーカーがTh1またはTh2細胞が欠如している組織では有意には発現されない請求項1記載の方法。
  9. サンプル中の前記マーカーの発現レベルが、前記マーカーに対応する蛋白の、前記サンプル中における存在の検出によって評価される請求項1記載の方法。
  10. 前記蛋白の存在が、前記蛋白と特異的に結合する試薬を使って検出される請求項9記載の方法。
  11. 前記試薬が抗体、抗体誘導体、及び抗体フラグメントからなる群から選択される請求項10記載の方法。
  12. 前記サンプルにおける前記マーカーの発現レベルが、サンプル中の転写ポリヌクレオチドまたはその部分の存在を検出することによって評価され、その際前記転写ポリヌクレオチドは前記マーカーを含む請求項1記載の方法。
  13. 前記転写ポリヌクレオチドがmRNAである請求項12記載の方法。
  14. 前記転写ポリヌクレオチドがcDNAである請求項12記載の方法。
  15. 前記検出段階が前記転写ポリヌクレオチドを増幅することをさらに含む請求項12記載の方法。
  16. サンプル中の前記マーカーの発現レベルを、
    前記マーカーとアニールするか、または前記マーカーを含んでなるポリヌクレオチドの一部分とアニールする転写ポリヌクレオチドの、前記サンプル中の存在を、厳格なハイブリッド化条件のもとで検出することによって評価する請求項1記載の方法。
  17. a)表2〜5及び表8〜10に列挙したマーカー類から独立的に選択される複数のマーカーの各々の、サンプル中における発現レベルと
    b)Th1またはTh2細胞を含まない同一タイプのサンプル中における複数のマーカーの各々の正常な発現レベル
    とを比較することを含み、
    その際前記マーカー類の一つより多くの発現レベルが前記マーカー類の対応する正常な発現レベルに比較して有意に変化している場合、それはTh1またはTh2細胞が前記サンプル中に存在することを示すものとする
    請求項1記載の方法。
  18. 前記複数が、2種類以上の前記マーカーを含む請求項17記載の方法。
  19. 前記複数が、少なくとも5種類のマーカーを含む請求項17記載の方法。
  20. 対象におけるナイーブT細胞の、Th1またはTh2細胞への分化をモニターする方法であって:
    a)対象サンプルにおいて最初の時点でマーカーの発現を検出し、その際前記マーカーは表2〜5及び表8〜10に列挙されるマーカー類及びそれらの組合わせからなる群から選択され;
    b)その後の時点で段階a)を繰り返し;
    c)段階a)及びb)で検出された発現レベルを比較し、
    その結果から前記対象におけるナイーブT細胞のTh1またはTh2細胞への分化をモニターする方法。
  21. 対象におけるTh1またはTh2細胞の増殖及び発達をモニターする方法であって:
    a)対象サンプルにおいて最初の時点にマーカーの発現を検出し、その際前記マーカーは表2〜5及び表8〜10に列挙されるマーカー類及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、その際前記マーカー群はIFNG、SCYA20、またはAPT1を含まず;
    b)その後の時点に段階a)を繰り返し;
    c)段階a)及びb)で検出された発現レベルを比較し、
    その結果から前記対象におけるTh1またはTh2細胞の増殖及び発達をモニターする方法。
  22. マーカーが転写ポリヌクレオチドまたはその一部分に対応し、前記ポリヌクレオチドは前記マーカーを含む
    請求項20または請求項21のいずれかの項に記載の方法。
  23. 前記サンプルが前記対象から得られた細胞を含む請求項20または請求項21のいずれかの項に記載の方法。
  24. 前記細胞がリンパから集められる請求項23記載の方法。
  25. 前記細胞が血液組織から集められる請求項23記載の方法。
  26. 対象におけるTh1またはTh2細胞の分化を調節するための試験化合物または治療の効果を評価する方法であって:
    a)前記対象から得られ、試験化合物または治療にさらされるか、または前記試験化合物または治療の存在のもとに維持される第一サンプル中のマーカーの発現において、前記マーカーが表2〜5及び表8〜10に列挙した前記マーカーからなる群から選択される前記マーカーの発現と、
    b)前記対象から得られ、試験化合物または治療にさらされない第二のサンプル中の前記マーカーの発現
    とを比較することを含んでなり、
    その際第二サンプルに比較して第一サンプル中のマーカーの有意に低い発現レベルを以って、前記試験化合物または治療が前記対象におけるTh1またはTh2細胞の分化を効果的に抑制することの表示とするる
    前記方法。
  27. 対象におけるTh1またはTh2細胞の分化を調節するための試験化合物または治療の効果を評価する方法であって、
    a)前記試験化合物または治療の少なくとも一部分を与える前に前記対象から得た第一サンプル中のマーカー、すなわち表2〜5及び8〜10に列挙されたマーカーからなる群から選択されるマーカーの発現と、
    b)前記試験化合物または治療の前記一部分を与えた後に前記対象から得た第二のサンプル中の前記マーカーの発現
    とを比較することを含んでなり、
    その際第一サンプルに比較して第二サンプル中の前記マーカーの有意に低い発現レベルを以って、前記試験化合物または治療が前記対象におけるTh1またはTh2細胞の分化を効果的に抑制することの表示とする
    前記方法。
  28. 対象におけるTh1またはTh2細胞の増殖または成熟を調節するための試験化合物または治療の効果を評価する方法であって、
    a)前記対象に前記試験化合物または治療の少なくとも一部分を与える前に前記対象から得た第一サンプル中のマーカーの発現において、前記マーカーは、表2〜5及び表8〜10に列挙されるマーカー類からなるが、IFNG、SCYA20、またはAPT1を含まない群から選択される、前記マーカーの発現と、
    b)前記試験化合物または治療の前記部分の投与後に前記対象から得た第二のサンプル中の前記マーカーの発現
    とを比較することを含んでなり、
    その際第一サンプルに比較して第二サンプル中の有意に高い発現レベルを以って、前記試験化合物または治療が前記対象のTh1またはTh2細胞の増殖または成熟を効果的に抑制する表示とする
    前記方法。
  29. 対象におけるTh1またはTh2細胞の増殖または成熟を調節するための試験化合物または治療の効果を評価する方法であって、
    a)前記対象に前記試験化合物または治療の少なくとも一部分を与える前に前記対象から得た第一サンプル中のマーカーの発現において、前記マーカーは、表2〜5及び表8〜10に列挙されるマーカー類からなるが、IFNG、SCYA20、またはAPT1を含まない群から選択される前記マーカーの発現と、
    b)前記試験化合物または治療の前記部分の投与後に前記対象から得た第二のサンプル中の前記マーカーの発現
    とを比較することを含んでなり、
    その際第二サンプルに比較して第一サンプル中のマーカーの有意に高い発現レベルを以って、前記試験化合物または治療が前記対象におけるTh1またはTh2細胞の増殖または成熟を効果的に抑制することの表示とする
    前記方法。
  30. 対象におけるTh1またはTh2細胞の分化を調節する組成物の選択法であって;
    a)前記対象から細胞を含むサンプルを採取し;
    b)前記サンプルの複数の部分を複数の試験組成物の存在下に別々に維持し;
    c)前記各部分におけるマーカーの発現を比較し、その際前記マーカーは表2〜5及び表8〜10に列挙されるマーカー類からなる群から選択され;
    d)試験組成物類の一つを含む部分ではその他の試験組成物を含む部分に比較してより低い発現レベルを誘導する場合に、前記試験組成物類の一つを選択する諸段階からなる方法。
  31. 対象においてTh1またはTh2細胞の分化を調節する組成物を選択する方法であって、
    a)細胞を含むサンプルを対象から採取し;
    b)前記サンプルの複数の部分を複数の試験組成物の存在下に別々に維持し;
    c)前記各部分におけるマーカーの発現を比較し、その際前記マーカーは表2〜5及び表8〜10に列挙されるマーカー類からなる群から選択され;
    d)前記試験組成物の一つを含む部分ではその他の試験組成物を含む部分に比較して高い発現レベルを誘導する場合に、前記試験組成物類の前記一つを選択する
    諸段階からなる方法。
  32. 対象においてTh1またはTh2細胞の増殖または成熟を調節する組成物を選択する方法であって、
    a)細胞を含むサンプルを対象から採取し;
    b)前記サンプルの複数の部分を複数の試験組成物の存在下に別々に維持し;
    c)前記各部分におけるマーカーの発現を比較し、その際前記マーカーは、表2〜5及び表8〜10に列挙されるマーカー類からなるが、IFNG、SCYA20、またはAPT1を含まない群から選択され;
    d)前記試験組成物の一つ、すなわちその試験組成物を含む部分ではその他の試験組成物を含む部分に比較して前記マーカーの高められた発現レベルを誘導するという前記試験組成物類の前記一つを選択する
    諸段階からなる方法。
  33. 対象においてTh1またはTh2細胞の増殖及び成熟を調節する組成物を選択する方法であって、
    a)細胞を含むサンプルを対象から採取し;
    b)前記サンプルの複数の部分を複数の試験組成物の存在下に別々に維持し;
    c)前記各部分におけるマーカーの発現を比較し、その際前記マーカーは、表2〜5及び表8〜10に列挙されるマーカー類からなるが、IFNG、SCYA20、またはAPT1を含まない群から選択され;
    d)前記試験組成物類の一つ、すなわちその試験組成物を含む部分ではその他の試験組成物を含む部分に比較して前記マーカーの高められた発現レベルが誘導されるという前記試験組成物類の前記一つを選択する
    諸段階からなる方法。
  34. 対象においてTh1またはTh2細胞の分化、増殖または発達を調節する方法であって、
    a)細胞を含むサンプルを対象から採取し;
    b)前記サンプルの複数部分を複数の試験組成物の存在下に別々に維持し;
    c)前記各部分におけるマーカーの発現を比較し、その際前記マーカーは表2〜5及び表8〜10に列挙されるマーカー類からなる群から選択され;
    d)前記対象に、前記試験組成物類の少なくとも一つ、すなわちその試験組成物を含む部分においてはその他の試験組成物を含む部分に比べて前記マーカーのより高い発現レベルが誘導されるという前記試験組成物類の少なくとも一つを投与する
    諸段階からなる方法。
  35. 対象においてTh1またはTh2細胞の分化、増殖または発達を調節する方法であって、
    a)細胞を含むサンプルを対象から採取し;
    b)前記サンプルの複数部分を複数の試験組成物の存在下に別々に維持し;
    c)前記各部分におけるマーカーの発現を比較し、その際前記マーカーは表2〜5及び表8〜10に列挙されるマーカー類からなる群から選択され;
    d)前記対象に、前記試験組成物類の少なくとも一つ、すなわちその試験組成物を含む部分においてはその他の試験組成物を含む部分に比べて前記マーカーのより高い発現レベルが誘導されるという前記試験組成物類の少なくとも一つを投与する
    諸段階からなる方法。
  36. Th1またはTh2細胞が対象に存在するか否かを評価するためのキットであって、表2〜5及び表8〜10に列挙されるマーカー類からなる群から選択されるマーカーの発現を評価する試薬を含んでなるキット。
  37. 成熟Th1またはTh2細胞の存在を評価するためのキットであって、核酸プローブを含んでなり、
    前記プローブは、表7〜11に列挙されるマーカーからなるが、IFNG、SCYA20、またはAPT1を含まない群から選択されるマーカーに対応する転写ポリヌクレオチドと特異的に結合するものである
    前記キット。
  38. 24時間以下の時間、分化させたTh1またはTh2細胞の存在を評価するためのキットであって、核酸プローブを含んでなり、
    前記プローブは、表1〜6に列挙されるマーカー類からなるが、IFNG、SCYA20、またはAPT1を含まない群から選択されるマーカーに対応する転写ポリヌクレオチドと特異的に結合するものである
    前記キット。
  39. 対象におけるTh1またはTh2細胞の分化を調節する複数の化合物の各々の安定性を評価するためのキットであって、
    a)複数の化合物
    b)表2〜5及び表8〜10に列挙されるマーカー類からなる群から選択されるマーカーの発現を評価するための試薬
    を含んでなるキット。
  40. サンプル中のTh1またはTh2細胞の存在を評価するためのキットであって、抗体を含んでなり、
    前記抗体は表2〜5及び表8〜10に列挙されるマーカー類からなる群から選択されるマーカーに対応する蛋白と特異的に結合するものである
    前記キット。
  41. サンプル中のTh1またはTh2細胞の存在を評価するためのキットであって、核酸プローブを含んでなり、
    前記プローブは、表2〜5及び表8〜10に列挙されるマーカーからなる群から選択されるマーカーに対応する転写ポリヌクレオチドと特異的に結合するものである
    前記キット。
  42. ナイーブT細胞からTh1またはTh2細胞への分化をトリガーする試験化合物の能力(ポテンシャル)を評価する方法であって:
    a)ナイーブT細胞の別々の部分を試験化合物の存在下及び不在下に維持し;
    b)各部分におけるマーカーの発現を比較し、その際前記マーカーは表2〜5及び表8〜10に列挙されるマーカー類からなる群から選択される
    諸段階からなり、
    その際前記試験化合物の存在下に維持されたマーカーの発現レベルが前記試験化合物の不在下に維持された部分に比較して有意に高い場合は、前記試験化合物がナイーブT細胞のTh1またはTh2細胞への分化をトリガーする能力(ポテンシャル)を有することを示すものとする
    前記方法。
  43. ナイーブT細胞からのTh1またはTh2細胞への分化をトリガーする試験化合物の能力を評価する方法であって:
    a)ナイーブT細胞の別々の部分を試験化合物の存在下及び不在下に維持し;
    b)各部分におけるマーカーの発現を比較し、その際前記マーカーは表2〜5及び表8〜10に列挙されるマーカー類からなる群から選択される
    諸段階からなり、
    その際前記試験化合物の存在下に維持された部分におけるマーカーの発現レベルが前記試験化合物の不在下に維持された部分に比較して有意に低い場合は、前記試験化合物がナイーブT細胞のTh1またはTh2細胞への分化をトリガーする能力を有することを示すものとする
    前記方法。
  44. ナイーブT細胞のTh1またはTh2細胞への分化をトリガーする能力を評価するためのキットであって、ナイーブT細胞と、マーカーの発現を評価するための試薬とを含んでなり、その際前記マーカーは表2〜5及び表8〜10に列挙されるマーカー類からなる群から選択される
    前記キット。
  45. ナイーブT細胞のTh1またはTh2細胞への分化が望まれる対象を治療する方法であって、前記対象の細胞に、表2〜5及び表8〜10に列挙されるマーカー類から選択されるマーカーに対応する蛋白を与えることを含んでなる方法。
  46. 前記蛋白をコード化するポリヌクレオチドを含むベクターを前記細胞に提供することによって、前記蛋白が前記細胞に与えられる請求項45記載の方法。
  47. ナイーブT細胞のTh1またはTh2細胞への分化が望まれる対象を治療する方法であって、前記対象の細胞に、表2〜5及び表8〜10に列挙されるマーカー類から選択されるマーカーに対応するポリヌクレオチドに相補的なアンチセンス オリゴヌクレオチドを与えることを含んでなる方法。
  48. 対象におけるTh1またはTh2分化を抑制する方法であって、表2〜5及び表8〜10に列挙されるマーカー類から選択されるマーカーに対応する遺伝子の発現を抑制することを含んでなる方法。
  49. 対象におけるTh1またはTh2分化を抑制する方法であって、表2〜5及び表8〜10に列挙されるマーカー類から選択されるマーカーに対応する遺伝子の発現を高めることを含んでなる方法。
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