JP2005500816A - サイトカイン産生を増加するための増大したpkr発現を有する細胞 - Google Patents
サイトカイン産生を増加するための増大したpkr発現を有する細胞 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2005500816A JP2005500816A JP2002563189A JP2002563189A JP2005500816A JP 2005500816 A JP2005500816 A JP 2005500816A JP 2002563189 A JP2002563189 A JP 2002563189A JP 2002563189 A JP2002563189 A JP 2002563189A JP 2005500816 A JP2005500816 A JP 2005500816A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- pkr
- cells
- expression
- cell
- cytokines
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Classifications
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C12—BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
- C12N—MICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
- C12N9/00—Enzymes; Proenzymes; Compositions thereof; Processes for preparing, activating, inhibiting, separating or purifying enzymes
- C12N9/10—Transferases (2.)
- C12N9/12—Transferases (2.) transferring phosphorus containing groups, e.g. kinases (2.7)
- C12N9/1205—Phosphotransferases with an alcohol group as acceptor (2.7.1), e.g. protein kinases
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C07—ORGANIC CHEMISTRY
- C07K—PEPTIDES
- C07K14/00—Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
- C07K14/435—Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans
- C07K14/52—Cytokines; Lymphokines; Interferons
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C07—ORGANIC CHEMISTRY
- C07K—PEPTIDES
- C07K14/00—Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
- C07K14/435—Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans
- C07K14/52—Cytokines; Lymphokines; Interferons
- C07K14/525—Tumour necrosis factor [TNF]
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C07—ORGANIC CHEMISTRY
- C07K—PEPTIDES
- C07K14/00—Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
- C07K14/435—Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans
- C07K14/52—Cytokines; Lymphokines; Interferons
- C07K14/525—Tumour necrosis factor [TNF]
- C07K14/5255—Lymphotoxin [LT]
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C07—ORGANIC CHEMISTRY
- C07K—PEPTIDES
- C07K14/00—Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
- C07K14/435—Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans
- C07K14/52—Cytokines; Lymphokines; Interferons
- C07K14/555—Interferons [IFN]
- C07K14/56—IFN-alpha
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C12—BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
- C12N—MICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
- C12N2510/00—Genetically modified cells
- C12N2510/02—Cells for production
Landscapes
- Health & Medical Sciences (AREA)
- Chemical & Material Sciences (AREA)
- Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
- Organic Chemistry (AREA)
- Genetics & Genomics (AREA)
- Zoology (AREA)
- Molecular Biology (AREA)
- Medicinal Chemistry (AREA)
- General Health & Medical Sciences (AREA)
- Biochemistry (AREA)
- Biophysics (AREA)
- Gastroenterology & Hepatology (AREA)
- Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
- Toxicology (AREA)
- Engineering & Computer Science (AREA)
- Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
- Wood Science & Technology (AREA)
- Biomedical Technology (AREA)
- Biotechnology (AREA)
- Microbiology (AREA)
- General Engineering & Computer Science (AREA)
- Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
Abstract
動物細胞培養物におけるサイトカイン制御因子および1つ以上のサイトカインの発現を増強する方法が記載される。サイトカイン制御因子(例えば、PKR)を過剰生産する細胞培養物において、1つ以上のサイトカインの合成が高レベルに誘導され、そして有意な量の個々のサイトカインが回収され得る。本発明は、サイトカイン調節因子(例えば、PKR、IRF−3またはIRF−7)を過剰発現する哺乳動物細胞によるサイトカイン生成を増強するための方法を提供する。
Description
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、細胞によるPKR過剰生産の条件下で、細胞培養物中のサイトカインの生成を増強するための方法および組成物に関する。
【0002】
(参考文献)
【0003】
【数1】
(発明の背景)
dsRNA−活性化インヒビターは、ヒト細胞およびマウス細胞中の、それぞれ分子量68kDaおよび65kDaのセリン/スレオニンキナーゼである。dsRNAへの結合または1本鎖RNAへの結合は、PKRの活性化および自己リン酸化を導く(GalabruおよびHovanessian、1987;Meursら、1990)。これは、PKRが、その天然基質である真核生物のタンパク質合成開始因子2(eIF−2)のαサブユニットをリン酸化することを可能にし、タンパク質合成の阻害を導く。
【0004】
ヒトPKR遺伝子のヌクレオチド配列が決定され、そして、この遺伝子が17個のエキソン(これらは551アミノ酸のPKRタンパク質をコードする)を含むことを示す(Kuhenら、1996)。
【0005】
類似の酵素が、ウサギ網状赤血球、異なるマウス組織およびヒト末梢血単核細胞において示された(Farrelら、1977;Levinら、1978;Hovanessian、1980;Krustら、1982;Buffet−Janvresseら、1986)。
【0006】
PKRは、他の基質に加えて、タンパク質合成開始因子eIF2およびI−κB(NF−κBのインヒビター;Kumar Aら、1994)をリン酸化するその能力を介して、翻訳、転写およびシグナル伝達経路の調節において種々の重要な役割を果たすことが示された。
【0007】
PKRに対して最も良く特徴付けられたインビボ基質は、真核生物の開始因子2のαサブユニット(eIF−2α)であり、これは、一旦リン酸化されると、最終的に細胞タンパク質合成およびウイルスタンパク質合成の阻害を導く(Hershey、1991)。PKRは、2本鎖RNAによって活性化された場合に開始因子eIF−2αをインビトロでリン酸化することが実証された(Chongら、1992)。
【0008】
PKRに起因する活性としては、(1)IFN−αおよびIFN−βの抗ウイスル活性および抗増殖活性を媒介すること、(2)非感染細胞の生理的ストレスに対する応答、および(3)細胞増殖調節における役割が挙げられる(Clemens,M.J.およびElia,A.、1997;Zamanian−Daryoush,M.ら、1999)。
【0009】
PKRは腫瘍サプレッサーおよびアポトーシスの誘導因子として機能し得るということもまた示唆されており(例えば、Clemens M.J.およびBommer U.A.、1999;Yeungら、1996;Koromilasら、1992を参照のこと)、最近の結果は、PKRの活性形態の発現が、おそらくFasレセプターのアップレギュレーションを介してアポトーシスを引き起こすということを示す(Donze,O.ら、1999)。
【0010】
インターフェロンを生成し得る細胞株がPKRをコードする発現ベクターを用いてトランスフェクションされる場合、PKRの過剰発現はインターフェロンのさらなる生成を誘導するということがさらに示された(WO 97/08324)。インターフェロンタンパク質は、サイトカインのプロトタイプファミリーであり、そして、病原体および癌組織に対する免疫防御において重要な役割を果たすことが示された。
【0011】
サイトカインは、ある範囲の生物学的活性を示し、そして、広範な標的細胞に作用する調節分子である(例えば、Balkwill,F.R.およびBurke,F.、1989;Wong,G.およびClark,S.、1988;ならびにClark,SおよびKamen,R.、1987を参照のこと)。
【0012】
一般に、サイトカインは、現在のところ、昆虫宿主細胞、細菌宿主細胞、または哺乳動物宿主細胞における組換えタンパク質の発現によって生成される。
【0013】
一般に、サイトカインおよび他のタンパク質は、細胞培養物から天然タンパク質を精製することか、または昆虫細胞、微生物細胞もしくはヒト細胞中でタンパク質を組換え的に生成することのいずれかによって、様々な治療的適用のために生成される。ヒト細胞によって生成される天然のサイトカインおよび他のタンパク質は、これらが、所定のサイトカインまたはタンパク質のネイティブ形態の完全なレパートリーを含むことが知られており、そして、ヒト細胞中で生成されたタンパク質に特有であり得る適切なタンパク質構造(グリコシル化および翻訳後修飾を含む)を有するという点で、好まれ得る。しかし、これらは、ヒト細胞を生成するには高価であり、そして時間の無駄である。
【0014】
組換え的に生成されたサイトカインおよび他のタンパク質は、作製するのはあまり高価ではないが、供給源に依存して、このサイトカインが投与されるヒト被験体による免疫応答が生じるような外来の抗原を含み得るか、または、ネイティブ形態からの構造的バリエーション(すなわちグリコシル化パターン)に起因して活性が弱くあり得る。
【0015】
本発明の方法は、微生物系(サイトカインタンパク質のグリコシル化およびネイティブの折り畳みを可能にしない)、またはヒト細胞(一般に、非常に低レベルの組換えタンパク質を生成する)におけるサイトカインの発現を利用する。従って、本質的に1つ以上のサイトカインを生成する細胞中で、1つ以上のサイトカインの生成を増強するための方法が有利である。
【0016】
本発明は、サイトカイン生成が、サイトカイン調節因子(例えば、PKR、IRF−3またはIRF−7)を過剰発現する培養された哺乳動物細胞において、増強されるという知見に関する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0017】
(発明の要旨)
本発明は、サイトカイン調節因子(例えば、PKR、IRF−3またはIRF−7)を過剰発現する哺乳動物細胞によるサイトカイン生成を増強するための方法を提供する。
【0018】
本発明はさらに、1つ以上のサイトカインの生成の増強を示すサイトカイン調節因子過剰発現細胞株組成物を提供する。
【0019】
1つの好ましいアプローチにおいて、PKRおよび1つ以上のサイトカインを発現し得る親細胞株が提供され、そして、複数のサブクローンを生成するために、限界希釈クローニングに供される。親細胞株よりも少なくとも2倍(2×)より大きいPKR発現レベルを示すサブクローンが選択され、そして、PKR過剰発現細胞を生成するために増殖される。
【0020】
別の好ましいアプローチにおいて、PKRおよび1つ以上のサイトカインを発現し得る親細胞株は、ヒトPKRの生物学的活性形態についてのコーディング配列および選択マーカーについてのコーディング配列を含む異種核酸構築物と共に、提供される。この方法の実施において、異種核酸構築物は、PKRおよび選択マーカーの発現を生じる親細胞株へ導入される。次いで、この細胞株は、選択因子を含む培養培地中で培養され、そして、形質転換されていない親細胞株のPKR発現レベルよりも、少なくとも2倍(2×)より大きいPKR発現レベルを示す細胞をが選択される。
【0021】
いずれかのアプローチにおいて、この方法はさらに、PKR過剰発現細胞をプライムする工程、またはPKR過剰発現細胞をプライムおよび処理する工程、ならびに、1つ以上のサイトカインの増強された発現によって特徴付けられるPKR過剰発現細胞株を生成するために効果的な様式で細胞を増殖する工程を包含する。
【0022】
「プライムする工程」は、細胞をプライミング因子(例えば、酢酸ホルボールミリステート(PMA)または落酸ナトリウム)へ曝すことによって達成され得る。「処理する工程」の例としては、dsRNAを用いた非ウイルス誘導およびセンダイウイルスまたは単純ヘルペスを用いたウイルス誘導が挙げられる。
【0023】
多くのサイトカインのいずれかは、本発明の方法を使用して、このようなPKR過剰発現細胞によって生成され得、そしてこのような細胞から収集され得る。そして、これらのサイトカインとしては以下が挙げられるが、これらに限定されない:α−インターフェロン、β−インターフェロン、TNF−β、IL−6およびIL−8、IL−10、IFN−γ、IL−12ならびにGM−CSF。
【0024】
本発明のこれらおよび他の目的および特徴は、以下の詳細な説明が添付の図面および実施例と併せて読まれる場合、より完全に明確となる。
【0025】
(発明の詳細な説明)
(I.定義)
他に示されない限り、本明細書で使用する全ての専門用語および科学用語は、本発明の当業者に対する意味と同一の意味を有する。当業者は、技術の定義および用語のために、Sambrookら、1989およびAusubel,F.M.ら、1993に特方向付けられる。本発明が、記載された特定の方法論、プロトコルおよび試薬に限定されないことは理解されるべきである。なぜなら、これらは変化し得るからである。
【0026】
本明細書で引用された全ての刊行物は、本発明に関連して使用され得る組成物および方法論を記載し、そして開示する目的で、参考として本明細書中に明白に援用される。
【0027】
「異種」核酸構築物または「異種」核酸配列は、これが発現される細胞に対してネイティブでない配列の一部を有する。制御配列に関して、異種とは、この制御配列が現在調節しているものと同一の遺伝子の発現を調節するように天然には機能しない制御配列(すなわちプロモーターまたはエンハンサー)をいう。一般に、異種核酸配列は、細胞に対して内因性でないか、またはこの異種核酸配列が存在するゲノムの一部でない、そして、感染、トランスフェクション、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどによって細胞へ加えられる。「異種」核酸構築物は、ネイティブ細胞中で見出される制御配列/DNAコード配列の組合せと同じか、または異なる制御配列/DNAコード配列の組合せを含み得る。
【0028】
用語「ベクター」は、本明細書で使用する場合、異なる宿主細胞間を移動するように設計された核酸構築物をいう。「発現ベクター」は、外来細胞において異種DNAフラグメントを組み込み、そして発現する能力を有するベクターをいう。多くの原核生物および真核生物の発現ベクターが市販されている。適切な発現ベクターの選択は、当業者の知識の範囲内である。クローニングベクターまたは発現ベクターは、さらなるエレメントを含み得、例えば、発現ベクターは2つの複製系を有し得、従って、2つの生物体中(例えば、発現に関してはヒト細胞中およびクローニングおよび増幅に関しては原核生物中)で保持されることを可能にする。クローニングベクターおよび発現ベクターは、典型的に、選択マーカーを含む。
【0029】
本明細書で使用する場合、用語「選択マーカーをコードするヌクレオチド配列」は、哺乳動物細胞において発現し得るヌクレオチド配列、および選択マーカーの発現が、発現された遺伝子を含む細胞に、対応する選択因子の存在下で増殖する能力を与えるようなヌクレオチド配列をいう。
【0030】
本明細書で使用する場合、用語「プロモーター」は、下流の遺伝子の転写を指向するように機能する核酸配列をいう。プロモーターは、一般に、標的遺伝子が発現される宿主細胞に適している。他の転写調節核酸配列および翻訳調節核酸配列(「制御配列」とも呼ばれる)とともにプロモーターは、所定の遺伝子を発現するために必要である。一般に、転写調節配列および翻訳調節配列としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:プロモーター配列、リボソーム結合部位、転写開始配列および転写停止配列、翻訳開始配列および翻訳停止配列、ならびにエンハンサーまたはアクチベーター配列。プロモーターは、構成的でも誘導性でもよく、そして、天然に存在するプロモーターでも、操作されたプロモーターでもハイブリッドプロモーターでもよい。
【0031】
用語「制御配列」は、特定の宿主生物体における、作動可能に連結されたコード配列の発現のために必要なDNA配列をいう。原核生物に適した制御配列としては、例えば、プロモーター、必要に応じてオペレーター配列およびリボソーム結合部位が挙げられる。真核生物細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナルおよびエンハンサーを利用することが知られている。
【0032】
本明細書で使用する場合、組換えDNA構築物またはベクターに関して、用語「作動可能に連結された」は、選択されたコード配列の作動的制御のために互いに直接連結された組換えDNA構築物またはベクターのヌクレオチド成分を意味する。一般に、「作動可能に連結された」DNA配列は連続しており、分泌リーダーの場合には、連続しかつリーディングフレーム中にある。しかし、エンハンサーは連続されなくてもよい。連結は、便利な制限部位にてライゲーションすることによって達成される。このような部位が存在しない場合、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーが、慣習的技術に従って使用される。
【0033】
本明細書で使用する場合、用語「遺伝子」は、ポリペプチド鎖の生成に関与するDNAセグメントを意味し、これは、コード領域に先行する領域および後ろの領域(例えば、5’非翻訳(5’UTR)配列または「リーダー」配列、および3’UTRまたは「トレーラー」配列)、ならびに個々のコードセグメント(エキソン)間の介在配列(イントロン)を含んでも含まなくてもよい。
【0034】
本明細書で使用する場合、用語「配列同一性」は、配列アライメントプログラムを使用して整列された、2つ以上の整列配列における核酸配列同一性またはアミノ酸配列同一性を意味する。
【0035】
用語「%相同性」は、本明細書の用語「%同一性」と交換可能に、本明細書中で使用され、そして、配列アライメントプログラムを使用して整列された場合の、2つ以上の整列配列間の核酸配列またはアミノ酸配列の同一性のレベルをいう。例えば、本明細書で使用する場合、80%相同性は、定義されたアルゴリズムによって決定された80%の配列同一性と同義であり、従って、所定の配列のホモログは、所定の配列の長さにわたって、80%よりも大きい配列同一性を有する。配列同一性の例示的なレベルとしては、本明細書に記載されるように、PKR配列に対して80%、85%、90%または95%以上の配列同一性が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
2つの配列間の同一性を決定するために使用され得る例示的なコンピュータープログラムとしては、BLASTプログラム一式(例えば、BLASTN、BLASTXならびにTBLASTX、BLASTPおよびTBLASTN)(「http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/」にて、インターネット上で公に利用可能)が挙げられるが、これらに限定されない。Altschul,S.F.ら、1990およびAltschul,S.F.ら、1997もまた参照のこと。
【0037】
配列検索は、GenBank DNA Sequencesおよび他の公開データベース中の核酸配列と比較して所定の核酸配列を評価する場合、典型的に、BLASTNプログラムを用いて実施される。BLASTXプログラムは、GenBank Protein Sequencesおよび他の公開データベース中のアミノ酸配列に対して、全てのリーディングフレームで翻訳された核酸配列を検索するために好ましい。BLASTNおよびBLASTXの両方は、11.0のオープンギャップペナルティーおよび1.0の伸長ギャップペナルティーのデフォルトパラメーターを使用して実施され、そして、BLOSUM−62マトリックスを利用する(Altschulら、1997を参照のこと)。
【0038】
2つ以上の配列間の「%同一性」を決定するために、選択された配列の好ましいアラインメントが、例えばMac Vector version 6.5のCLUSTAL−Wプログラム(デフォルトパラメーター(10.0のオープンギャップペナルティー、0.1の伸長ギャップペナルティーおよびBLOSUM 30類似性マトリクスを含む)を用いて操作される)を使用して、実施される。
【0039】
核酸配列は、2つの配列が中程度〜高いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件および洗浄条件下で互いに特異的にハイブリダイズする場合、参照核酸配列に対して「選択的にハイブリダイズ可能」であると見なされる。ハイブリダイゼーション条件は、複合体またはプローブに結合する核酸の融解温度(Tm)に基づく。例えば、「最大のストリンジェンシー」は、代表的には約Tm−5℃(プローブのTmより5℃低い)の温度で;「高いストリンジェンシー」は、Tmより約5℃〜10℃低い温度で;「中間のストリンジェンシー」はプローブのTmより10℃〜20℃低い温度で;そして「低いストリンジェンシー」はTmより20℃〜25℃低い温度で起きる。機能的に、最大のストリンジェンシーの条件は、ハイブリダイゼーションプローブと完全な同一性または完全に近い同一性を有する配列を同定するために使用され得る;一方、高いストリンジェンシーの条件は、プローブと約80%以上の配列同一性を有する配列を同定するために使用される。
【0040】
中程度および高いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件は、当該分野に周知である(例えば、Sambrookら、1989、9章および11章、ならびにAusubel,F.M.ら、1993(本明細書中に参考として明白に援用される)を参照のこと)。高いストリンジェンシーの条件の例として、50%のホルムアミド、5×SSC、5×デンハート液、0.5%のSDSおよび100μg/mlの変性キャリアDNA中において、約42℃でのハイブリダイゼーション、続く2×SSCおよび0.5%のSDS中における室温での2回の洗浄、ならびに0.1×SSCおよび0.5%のSDS中における42℃でのさらに2回の洗浄が、挙げられる。
【0041】
本明細書で使用する場合、「組換え体」は、異種核酸配列の導入によって改変された細胞もしくはベクターへの言及、またはこのように改変された細胞由来の細胞を含む。従って、例えば、組換え細胞は、この細胞のネイティブ(非組換え)形態内では、同一の形態で見出されない遺伝子を発現するか、または、意図的な人間の介入の結果として、別に異常に発現されるか、過少発現されるか、または全く発現されないネイティブ遺伝子を発現する。
【0042】
本明細書で使用する場合、哺乳動物細胞に関して用語「形質転換された」、「安定に形質転換された」または「トランスジェニック」は、哺乳動物細胞が、2世代以上を通じて維持される、そのゲノムへ組み込まれた非ネイティブの(異種の)核酸配列を有する、ということを意味する。
【0043】
本明細書で使用する場合、用語「発現」はポリペプチドが遺伝子の核酸配列に基づいて生成されるプロセスをいう。このプロセスは、転写および翻訳の両方を含む。
【0044】
用語「PKR発現」は、PKR遺伝子の転写および翻訳のことをいい、その生成物として、前駆体RNA、mRNA、ポリペプチド、翻訳後プロセスを受けたポリペプチド、およびその誘導体が挙げられる(マウスまたはサルの酵素のような他の種由来のPKR発現を含む)ことが理解される。例として、PKRのアッセイとしては、自己リン酸化アッセイ、eIF2αリン酸化についてのアッセイ、PKRタンパク質のウェスタンブロット、ならびにPKR mRNAに関するノーザンブロット分析およびリバーストランスクリプターゼポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)アッセイが挙げられる。
【0045】
「選択的スプライシング」は、単一の遺伝子から複数のポリペプチドアイソフォームを生成するプロセスであり、その遺伝子のいくつか(全てではない)の転写産物のプロセシングの間に非連続的なエキソンをひとつに繋ぎ合わせる工程を包含する。従って、特定のエキソンは、いくつかの選択的エキソンのいずれか1つに接続され得、メッセンジャーRNAを形成する。選択的スプライシングを受けたmRNAは、いくつかの部分が共通し、その他の部分が異なるポリペプチド(「スプライス改変体」)を生成する。
【0046】
本明細書中で使用する場合、用語「PKRの生物学的活性」および「生物学的に活性なPKR」は、PKR、またはPKRの任意のフラグメント、誘導体、もしくはアナログに関連する任意の生物学的活性(例えば、酵素活性(特に、自己リン酸化活性)および真核生物翻訳開始因子2(eIF−2)リン酸化活性)をいう。
【0047】
本明細書中で使用する場合、用語「正常レベルのPKR活性」および「正常レベルのPKR発現」は、特定の型(例えば、特定の細胞株)の、選択されていない細胞、刺激を受けていない細胞、または感染していない細胞において存在することが決定された、PKR活性またはPKR発現のレベルをいう。このような「正常な」PKR活性またはPKR発現は、選択されておらず、導入された(異種起源または同種起源の)PKRコード配列を含まず、刺激を受けておらず(誘導もプライムもされていない)、そして感染していない所定の型の細胞(または細胞株)について一般的に観察されるPKR活性またはPKR発現の範囲として報告されることが理解される。
【0048】
「正常な」PKR活性またはPKR発現の範囲は、培養条件に依存してある程度変化し得る。例えば、U937細胞株は、Vero細胞株またはNamalwa細胞株と異なるPKR活性の正常な範囲を有し得る。PKRの過剰発現は、選択されておらず、導入された(異種起源または同種起源の)PKRコード配列を含まず、刺激を受けておらず(誘導もプライムもされていない)、そして感染していない所定の型の細胞について一般的に観察されるPKR発現の正常な範囲を超える発現レベルを意味することが理解される。
【0049】
用語「PKR過剰発現」および「増強されたPKR発現」は、本明細書中で使用する場合、PKRを過剰発現するのに効果的な様式で選択または処理されていない特定の型の細胞において代表的に存在するPKR発現またはPKR産生よりも大きいレベルのPKRの活性、発現、または産生をいい、以下でさらに詳述する。従って、PKRの「過剰発現」は、選択されておらず、導入された(異種起源または同種起源の)PKRコード配列を含まず、刺激を受けておらず(誘導もプライムもされていない)、そして感染していない所定の型の細胞について一般的に観察されるよりも大きなPKRの活性、発現、または産生の範囲を意味する。
【0050】
本明細書中で使用する場合、用語「生物学的活性」および「生物学的に活性な」は、培養された細胞株の特定のタンパク質に起因する活性をいう。このようなタンパク質の「生物学的活性」は、培養条件に依存してある程度変化し得、活性の範囲として一般的に報告されることが理解される。従って、タンパク質の「生物学的に不活性な」形態は、そのタンパク質の天然で見出される活性を妨害する様式で改変されたタンパク質の形態をいう。
【0051】
1つの好ましい局面において、PKRの過剰発現は、使用する特定の培養条件下での同一の細胞株について、正常レベルのPKRの活性、発現、産生よりも少なくとも150%(1.5倍または1.5×)、好ましくは、少なくとも200%、300%、または400%、あるいは500%またはそれ以上大きいPKRの活性、発現、産生のレベルを意味する。言い換えると、PKRを過剰発現する細胞株は、代表的に、PKRを過剰発現するのに効果的な様式で選択または処理されていない同一型の細胞株により代表的に示されるPKRの発現、または産生のレベルよりも、少なくとも1.5倍、好ましくは、2倍(2×)、3倍(3×)、4倍(4×)、5倍(5×)、またはそれ以上大きいPKRの産生または発現のレベルを示す。いくつかの場合、PKRを過剰発現する細胞株は、使用する特定の条件下で、PKRを過剰発現するのに効果的な様式で選択または処理されていない同一型の細胞によって代表的に示されるPKRの発現または産生のレベルよりも10倍(10×)またはそれ以上大きいPKRの発現または産生のレベルを示す。一般的に、用語「PKRを過剰発現するのに効果的な様式で処理される」は、細胞中への(異種起源または同種起源の)PKRコード配列の導入、刺激(プライミングまたはプライミングおよび誘導)、および/または感染を意味する。
【0052】
本明細書中で使用する場合、用語「正常レベルのサイトカイン」および「正常レベルのタンパク質」は、活性、発現、または産生に関して、PKRを過剰発現するのに効果的な様式で処理されていない特定の型の細胞において存在することが決定された、サイトカインまたは他のタンパク質の活性、発現、または産生のレベルをいう。例として、PKR活性、発現、または産生を増強するような様式で選択または処理されていない野生型細胞株、および導入されたPKRコード発現を含まない細胞株が挙げられる。このような「正常な」サイトカインまたは他のタンパク質の活性、発現、または産生は、所定の細胞について代表的に観察される活性、発現、または産生として報告され、培養条件に依存してある程度変化し得ることが理解される。
【0053】
本明細書中で使用する場合、用語「精製された」および「単離された」は、一般的に、発見または生成される環境の他の成分から分離された分子(ポリヌクレオチドまたはポリペプチドのいずれか)をいう。例えば、単離または精製されたポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、代表的に、それらの発見または生成された環境の成分の75%以上から分離されている。単離または精製されたポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、好ましくは、それらの発見された環境の成分の少なくとも80%〜85%、より好ましくは、少なくとも90%またはそれ以上から分離されている。例えば、「精製」または「単離」されたサイトカインは、そのサイトカインの生成された細胞培養培地の成分の少なくとも75%またはそれ以上、好ましくは少なくとも80%〜85%またはそれ以上、より好ましくは、少なくとも90%またはそれ以上から分離されているサイトカインを意味する。
【0054】
用語「アポトーシス細胞死」「プログラム細胞死」、および「アポトーシス」は、本明細書中で使用する場合、細胞分化の特定の段階でおよび特定の刺激に応答して生じる細胞現象の複雑なカスケードにより引き起こされるかまたはそのカスケードに関連する任意の細胞死をいう。アポトーシス細胞死は、死滅する細胞の核における、細胞質の凝縮およびクロマチン凝縮により特徴付けられる。このプロセスは、DNAの複数の200塩基対への断片化およびRNAの分解、ならびに壊死性の細胞死におけるような急な細胞溶解を伴わない組織化された様式でのタンパク質分解を伴う。
【0055】
本明細書中で使用する場合、用語「アポトーシス細胞死を阻害する」は、細胞株がサイトカインまたは他のタンパク質の発現または産生の目的で培養される期間にわたり、細胞死プロセスを部分的または完全に阻害することを意味する。このような阻害は、一般的に、アポトーシス細胞死の量が、アポトーシスを阻害するのに効果的な様式に改変されていない細胞株において観察されるアポトーシス細胞死の量と比べて、少なくとも20%、好ましくは、少なくとも50%、より好ましくは、80%までまたはそれ以上減少することを意味する。
【0056】
PKR産生および/またはサイトカイン産生の場合、このような阻害は、一般的に、アポトーシス細胞死の量が、アポトーシスを阻害するのに効果的な様式に改変されていないPKR過剰発現細胞株において観察されるアポトーシス細胞死の量と比べて、少なくとも20%、好ましくは、少なくとも50%、より好ましくは、80%までまたはそれ以上減少することを意味する。
【0057】
(II.PKR)
PKRは、キナーゼ活性を有することが知られている唯一の同定されたdsRNA結合タンパク質である。PKRは、セリン/スレオニンキナーゼであり、その酵素活性はdsRNAへの結合およびその結果としての自己リン酸化を必要とする(Meursら、1990;Feng,C.S.ら、1992)。
【0058】
種々の機能がPKRに起因し、これらの機能として、真核生物開始因子2(eIF−2α)が挙げられ、eIF−2αは、一旦リン酸化されると、タンパク質合成の阻害を引き起こす(Hersheyら、1991)。PKRのこの特定の機能は、IFN−αおよびIFN−βの抗ウイルス活性および抗増殖活性の媒介を担う機構の1つとして示唆されている。PKRのさらなる生物学的機能は、例えば、IkBのリン酸化によるシグナル伝達作用としてのその予想される役割であり、これによって、核因子kB(NF−kB)を放出および活性化する(Kumar A.ら、1994)。
【0059】
PKRは、IFN発現の転写活性を媒介することがこれまでに実証されている(Der,D.およびLau,A.S.、1995)。この観察と併せて、PKRに対するアンチセンスでU937をトランスフェクトすることによる内因性PKR活性の抑制またはPKR欠損変異体の発現により、ウイルス感染に対するIFNの誘導が減少した(Der,D.およびLau,A.S.、1995)。
【0060】
まとめると、PKRは、eIF−2αのリン酸化による、(1)複雑なレセプター系(IFN、TNF、およびFasを含む)に対するシグナル伝達、(2)サイトカイン遺伝子の転写活性化、(3)アポトーシスの阻害、および(4)タンパク質合成の阻害に関連する。
【0061】
PKRは、サイトカインの発現を調節し得るタンパク質の例として、本明細書中で使用されるが、他のサイトカイン調節因子(例えば、PMA、プロテインキナーゼC(PKC)インデューサー、インターフェロンγ、インターフェロンα、インターフェロンβ、IFN調節因子(IRF)、TNF−α、GM−CSF、EGF、およびPDGF)が、PKRの代わりに使用され得ることが理解される。
【0062】
哺乳動物細胞においてサイトカイン調節因子(例えば、PKR)の発現/活性を増大することにより、サイトカイン産生が増大し得る。従って、より高い構成性のレベルのサイトカイン調節因子を発現する哺乳動物細胞培養物、またはサイトカイン調節因子の発現がより高いレベルに誘導された哺乳動物細胞培養物は、サイトカインの産生のために有用である。
【0063】
本発明の方法は、PKRにより本明細書中で例示されるようなサイトカイン調節因子(サイトカインの発現を調節し得るタンパク質)を過剰発現する使用細胞に基づき、特定のサイトカイン調節因子の過剰発現の方法を必要としない。本発明の方法を実施する上で使用するためのさらなるサイトカイン調節因子として、IRF−7、IRF−3、およびNF−kBのような転写因子が挙げられるがこれらに限定されない。これらの因子の過剰発現は、サイトカインの発現または産生を増大するのに使用され得る。
【0064】
PKRを過剰発現または過剰産生する細胞株を獲得する方法の例として、PKRを過剰発現する細胞の選択し、その細胞を増殖してPKR過剰発現細胞を生成する方法および/または(異種起源または同種起源の)内因性PKRコード配列を発現するのに効果的な様式で細胞中にそのコード配列を導入することによりPKRを産生し得るよう細胞を改変する方法が挙げられるがこれらに限定されない。
【0065】
PKRを過剰発現する細胞の選択は、PKR mRNAまたはPKRタンパク質を過剰発現する細胞、または内因性遺伝子の発現に起因してより高いPKRキナーゼ活性を示す細胞の選択またはサブクローニングすることにより達成され得る。このようなサブクローンは、対応する親細胞株よりもより高い機能的PKRキナーゼ活性、より高いPKR mRNAレベル、またはより高いPKRタンパク質レベルを有する細胞を選択することにより選択され得る。
【0066】
この機構は本発明の一部ではないけれども、これらの細胞において増強されたPKRは、(1)増大した転写を導く増強されたプロモーター活性;(2)増強されたキナーゼ活性を有するPKRの改変形態を生じるPKR遺伝子変異;(3)増強されたキナーゼ活性を生じる多数の遺伝子コピー;または(4)細胞ストレスシグナル(例えば、ポリI:C、エンドトキシン、PMA、または熱ショック)を含む刺激に対するプロモーターの増強された応答性の結果であり得る。
【0067】
PKR過剰発現細胞はまた、サイトカインを合成するそれらの機能的能力を試験することによって同定および選択され得る。
【0068】
一旦PKRを過剰発現または過剰産生する細胞株が獲得されると、その細胞株はさらに、PKRおよび/またはサイトカイン産生を増加させるのに効果的な様式でプライムまたはプライムおよび処理され得る。
【0069】
1つの好ましいアプローチにおいて、この方法は、(a)PKRを過剰発現し得る哺乳動物細胞またはそれらのアナログもしくはホモログを、PKRを過剰発現するのに十分な条件下で培養する工程;(b)プライミング工程;および(c)サイトカイン遺伝子の発現を誘導するのに適切に細胞培養物を処理する工程、を包含する。
【0070】
同様に、サイトカイン調節因子(例えば、IFN調節因子(IRF)または他の転写因子)を過剰発現または過剰産生する細胞株を獲得する方法の例として、この因子(例えば、IRF−3またはIRF−7)を過剰発現する細胞を選択し、その細胞を増殖してIRF−3またはIRF−7の過剰発現細胞株を生成する方法が挙げられるがこれらに限定されない。
【0071】
代替のアプローチにおいて、この因子を産生し得る細胞は、(異種起源または同種起源の)この因子(例えば、IRF−3またはIRF−7)の核酸コード配列を含む異種核酸構築物を、このコード配列を発現するのに効果的な様式で細胞中に導入することにより改変され得る。
【0072】
サイトカイン調節因子(例えば、IRFまたは他の転写因子)を過剰発現する細胞はまた、サイトカインを合成するそれらの機能的能力を評価することにより同定および選択され得る。
【0073】
(III.増強されたサイトカイン調節因子の発現は、増強されたサイトカイン産生に関連する)
本発明は、概して、サイトカイン調節因子の過剰発現と増強されたサイトカイン産生との間の関係に関する。
【0074】
哺乳動物細胞においてサイトカイン調節因子(例えば、PKR)の発現/活性を増大させることにより、サイトカイン産生が増大され得る。従って、より高い構成的レベルのサイトカイン調節因子を発現するか、またはサイトカイン調節因子の発現がより高いレベルに誘導され得る哺乳動物細胞培養物は、サイトカインの産生に有用である。
【0075】
この方法は、サイトカイン調節因子またはサイトカインの発現を調節し得るタンパク質を過剰発現する細胞の使用に基づき(本明細書中にPKRにより例示される)、サイトカイン調節因子を過剰発現させる特定の方法を必要としない。
【0076】
一旦PKRを過剰発現または過剰産生する細胞株が獲得されると、その細胞株はさらに、PKRおよび/またはサイトカイン産生を増大するのに効果的な様式でプライムおよび処理され得る。
【0077】
1つの好ましいアプローチにおいて、この方法は、(a)サイトカイン調節因子を過剰発現し得る哺乳動物細胞を培養する工程;(b)サイトカイン調節因子のコード配列を含む異種核酸構築物またはそれらのアナログもしくはホモログを、サイトカイン調節因子を過剰発現するのに十分な条件下で導入する工程;(c)プライミング工程;および(d)サイトカイン遺伝子の発現を誘導するのに適切に細胞培養物を処理する工程、を包含する。
【0078】
1つの好ましい実施形態において、サイトカイン調節因子はPKRであり、細胞はPKRの過剰発現に対して誘導性である。好ましい局面において、PKRを過剰発現し得る細胞は、より高いレベルのPKR発現または産生を生じるような様式で処理および/または誘導される。
【0079】
本発明の1つの好ましい局面において、培養条件、プライミング工程、プライミングおよび処理工程、または誘導工程の組み合わせにより、所定の細胞株によるサイトカイン産生が有意に増強される(例えば、本明細書に記載されるような細胞の処理工程、プライミング工程、誘導工程のうちの1つ以上を含まない同一培養条件下で同一細胞株により示されるレベルに対して、少なくとも200%(2倍または2×)、250%(2.5倍または2.5×)、400%(3倍または3×)、400%(4倍または4×)、500%(5倍または5×)、および好ましくは、1000%(10倍または2×)、またはそれ以上のサイトカイン産生もしくは発現を示す増加)。いくつかの場合、本発明の方法は、100倍(100×)〜1000倍(1000×)またはそれ以上のサイトカイン産生の増大を生じる。
【0080】
従って、本発明の1つの局面は、PKRを過剰発現または過剰産生する細胞(すなわち、細胞株)の単離された集団に関する。用語「集団」は、本明細書中で使用する場合、単一の親細胞から誘導された2つ以上の細胞の群をいう。
【0081】
任意の多くの公知の細胞型が、PKR過剰発現細胞株を作製するのに有用であり、特定の例を以下に提供する。
【0082】
代表的に、細胞培養物におけるサイトカイン産生に付随する問題(例えば、非組み換え哺乳動物系からの低い収率、不適切なグリコシル化、または微生物系において生成されるタンパク質のミスホールディング)は、本発明の方法において排除され、本発明の方法は、治療タンパク質の開発に有用であることを証明するはずである。
【0083】
(IV.内因性PKRの活性、発現、および/または産生の増加)
1つの局面において、本発明は、内因性PKRコード配列を過剰発現または過剰産生するネイティブな細胞株、および同一物を生成する方法を提供する。
【0084】
本発明に従って、PKRおよび1つ以上のサイトカインを発現し得る細胞株が、限界希釈クローニング(本明細書中で、「サブクローニング」と称される)に供され得、増強されたPKRキナーゼ活性および/またはmRNAおよび/またはタンパク質発現についてスクリーニングされ得、増強されたサイトカイン活性および/または発現についてさらにサブクローニングおよび選択され得る(以下でさらに詳述される)ことが発見された。このような増強されたサイトカイン調節因子の過剰発現のマーカーとして使用され得るサイトカインの例として、TNF−β、IL−6、IL−8、およびIFNが挙げられるがこれらに限定されない。
【0085】
本発明を実施する上で、PKRおよび1つ以上のサイトカインを発現し得る細胞株(本明細書中で、「親細胞株」と称される)は、同定され、そして当業者により慣用的に使用される標準的な方法を用いる単一細胞の限界希釈クローニングに供される。一般的に、サブクローニング工程は、少なくとも3回、好ましくは、少なくとも5回、そして代表的には、5〜10回、96ウェルプレートにて実施される。サブクローンは、代表的に親細胞を培養するのに用いられる培養条件を使用して増殖され、約300,000〜500,000細胞/mlの集団を獲得するために増殖される。次いで、このサブクローンは、当該分野で公知の方法を使用して、転写(mRNA)および/またはタンパク質レベル(ウェスタンブロット)および/またはキナーゼ活性を評価することにより、PKR発現についてアッセイされる(例えば、Gunnery,S.およびMathews,M.B.、1998を参照のこと)。
【0086】
例として、PKR活性についてのアッセイとして、自己リン酸化アッセイ(DerおよびLau、Proc.Natl.Acad.Sci.、92:8841−8845、1995)、eIF2αリン酸化についてのアッセイ(Zamanian−Daryoush、Der、Williams、Oncogenes、18:315−326、1999)、およびキナーゼアッセイ(PKRの免疫沈降およびキナーゼについてのインビトロアッセイ(Zamanian−Daryoushら、Molecular and Cellular Biology、20:1278−1290、2000)により実施される)が挙げられる。
【0087】
PKR発現および/または産生についてのアッセイの例として、ウェスタンブロットのようなタンパク質アッセイ、ならびにRT−PCR(リバーストランスクリプターゼポリメラーゼ連鎖反応)およびノーザンブロット、ドットブロット、またはPKRコード核酸配列に基づく適切な標識プローブを用いたインサイチュハイブリダイゼーションのようなPKR mRNAについてのアッセイが挙げられる。
【0088】
親細胞株のPKRの発現または産生のレベルよりも少なくとも2倍(2×)、好ましくは、3倍(3×)、4倍(4×)、5倍(5×)またはそれ以上高い、PKRの発現または産生のレベルを示すサブクローンが選択される。いくつかの場合、このような選択されたサブクローンは、親細胞株のPKR発現または産生レベルよりも10倍(10×)またはそれ以上高いPKRの発現または産生レベルを示す。選択されたサブクローンはまた、より高いレベルのPKRの発現および/または産生を示す。1つの好ましいアプローチにおいて、PKRの発現または産生のレベルは、PKR活性アッセイにより決定される。
【0089】
次いで、選択されたサブクローンは、増強されたPKRおよびサイトカインの活性、発現、および/または産生を生じるのに効果的な様式で処理される。この処理は、以下にさらに記載されるように、細胞培養物に対する微生物(例えば、ウイルス)または非微生物インデューサーの添加を含み得る。
【0090】
代表的に、選択されたサブクローンは、増強されたPKRおよびサイトカイン産生を生じるのに効果的な様式で処理される前に、プライミング試薬に暴露することによりプライムされる。プライミング試薬の例もまた、以下にさらに記載される。
【0091】
(V.細胞中での異種核酸構築物の発現によるPKRの増加)
本発明はまた、PKRコード核酸配列を含む発現ベクターで形質導入、形質転換、またはトランスフェクトされた宿主細胞を提供する。培養条件(例えば、温度、pHなど)は、形質導入、形質転換、またはトランスフェクション前に親宿主細胞に対してそれまで使用されていた培養条件であり、これは当業者に明らかである。
【0092】
1つのアプローチにおいて、哺乳動物細胞株は、PKRをコードするDNAセグメントに作動可能に連結された、宿主細胞株において機能するプロモーターもしくは生物学的に活性なプロモーターフラグメントまたは1つ以上(例えば、一連の)エンハンサーを有する発現ベクターでトランスフェクトされ、その結果、PKRがその細胞株において過剰発現される。
【0093】
(A.ベクター)
PKRをコードする天然または合成のポリヌクレオチドフラグメント(「PKRコード核酸配列」)は、哺乳動物細胞中への導入および哺乳動物細胞中での複製が可能な異種核酸構築物またはベクターに組み込まれ得る。本明細書中に開示されるベクターおよび方法は、PKRの発現のために宿主細胞中で使用するのに適切である。導入された哺乳動物細胞中で複製可能であり、生存可能である限り、任意のベクターが使用され得る。多くの適切なベクターおよびプロモーターが当業者に公知であり、市販されている。ヒト細胞において使用するための適切なクローニングベクターおよび発現ベクターもまた、特に本明細書により参考として援用される、Sambrookら、1989、およびAusubel,F.M.ら、1989に記載されている。適切なDNA配列は、種々の手順により、プラスミドまたはベクター(本明細書中で、集合的に「ベクター」と称される)中に挿入され得る。一般的に、DNA配列は、標準的な手順により、適切な制限エンドヌクレアーゼ部位に挿入される。このような手順および関連のサブクローニング手順は、当業者の認識の範囲内であるとみなされる。
【0094】
このようなベクターは、代表的に、選択マーカー、挿入部位、および適切な制御エレメント(例えば、終結配列)を備えている。ベクターは、コード配列に作動可能に連結された、宿主細胞(および/または改変された可溶性タンパク質抗原コード配列が通常発現されないベクターもしくは宿主細胞環境)におけるコード配列の発現に効果的な調節配列(例えば、非コード配列(例えば、イントロン)および制御エレメント(すなわち、プロモーターおよび終結エレメント)あるいは5’および/または3’非翻訳領域を含む)を含む。多くの適切なベクターおよびプロモーターが当業者に公知であり、市販されており、そしてSambrookら(前出)に記載されている。
【0095】
プロモーターの例として、構成性プロモーターおよび誘導性プロモーターの両方が挙げられる。これらの例として、CMVプロモーター、SV40初期プロモーター、RSVプロモーター、EF−1αプロモーター、記載される(ClonTechおよびBASF)ようなtet−onまたはtet−off系におけるtet応答エレメント(TRE)を含むプロモーター、βアクチンプロモーター、および特定の金属塩の添加によりアップレギュレートされ得るメタロチエネインプロモーターが挙げられる。
【0096】
適切な選択マーカーの選択は、宿主細胞に依存し、種々の宿主に対して適切なマーカーが当該分野で周知である。代表的なマーカー遺伝子は、抗生物質または他の毒素(例えば、アンピシリン、メトトレキサート、テトラサイクリン、ネオマイシン(SouthernおよびBerg,J.、1982)、ミコフェノール酸(MulliganおよびBerg、1980)、ピューロマイシン、ゼオマイシン、またはハイグロマイシン(Sugdenら、1985))に対する耐性を付与するタンパク質をコードする。
【0097】
本発明の1つの好ましい実施形態において、PKRの過剰発現は、細胞培養物におけるPKRの過剰発現に適切なプロモーター(構成性または誘導性のいずれか)の制御下で、外因的に提供されるPKRコード核酸配列を含む細胞を用いて達成される。
【0098】
(B.PKRコード核酸配列)
PKRコード核酸配列を含むベクターは、細胞中に導入され得、その細胞によるPKRの過剰発現をもたらす。このようなベクターにおいて使用するためのコード配列の例として、GenBank登録番号M35663にて見出されるヒトp68PKR遺伝子、マウスPKR遺伝子、および他のeIF−2αキナーゼ(酵母GCN2およびヘミン調節インヒビター(Wek,R.C.、1994)からのコード配列が挙げられるがこれらに限定されない。
【0099】
さらに、これらのPKR遺伝子の変異体または改変体が、PKRの過剰発現において使用するためのベクター構築物に含まれ得る。発現の際に、これらのPKRタンパク質の変異形態または改変形態は、キナーゼ活性を増大または減少させ得る。
【0100】
1つのアプローチにおいて、PKR変異遺伝子は、形質転換部位特異的変異誘発キット(ClonTech)を用いて作製される。CaiおよびWilliams(1998)は、キナーゼ活性(基質のリン酸化)からの基質結合(eIF−αの観点で)の分離を示す一連のPKR変異体を記載した。PKR活性の減少したこれらの変異体は、基質結合において効果が少なくとも、またはキナーゼ活性が低くとも、PKR発現細胞を作製するための細胞のトランスフェクションに使用され得る。
【0101】
選択されたPKRコード配列は、周知の組み換え技術に従って適切なベクター中に挿入され得、そしてPKRを過剰発現し得る細胞株を形質転換するのに使用される(以下にさらに記載される)。
【0102】
本発明に従って、PKRをコードするポリヌクレオチド配列は、スプライス改変体、PKRのフラグメント、融合タンパク質、それらの改変形態または機能等価物を含み、これらは本明細書中で、集合的に、「PKRコード核酸配列」と称される(例えば、Wu,SおよびKaufman,R.J.、1997を参照のこと)。このような「PKRコード核酸配列」は、適切な宿主細胞においてPKRの発現を指向する組み換えDNA分子(異種核酸構築物とも称される)において使用され得る。
【0103】
遺伝子暗号の固有の縮重に起因して、実質的に同一であるかまたは機能的に等価なアミノ酸配列をコードする他の核酸配列が、PKRのクローニングおよび発現に使用され得る。従って、所定のPKRコード核酸配列について、遺伝子暗号の縮重の結果として、同一のPKRアミノ酸配列をコードする多くのコード配列が生成されることが理解される。例えば、トリプレットCGTは、アミノ酸アルギニンをコードする。アルギニンは、代替的に、CGA、CGC、CGG、AGA、およびAGGによりコードされる。従って、コード領域におけるこのような置換は、本発明により網羅される配列改変体に含まれることが理解される。これらの配列改変体のいずれかまたは全てが、親のPKRコード核酸配列について本明細書中に記載されるのと同一様式で使用され得る。
【0104】
「改変体」PKRコード核酸配列は、ネイティブなPKRポリペプチドから1つ以上のアミノ酸によって変更された「改変体」PKRアミノ酸配列をコードし得る。これらは両方とも本発明の範囲内に含まれる。同様に、用語「〜の改変形態」は、PKRに対して、ネイティブのPKRコード核酸配列またはタンパク質の誘導体または改変形態を意味する。すなわち、PKRの「改変形態」は、少なくとも1つの核酸またはアミノ酸の置換、欠失、または挿入を含む誘導配列を有する。核酸またはアミノ酸の置換、挿入、または欠失は、コードされるアミノ酸配列が、ネイティブのPKRタンパク質の生物学的活性(例えば、自己リン酸化活性または真核生物翻訳開始因子2(eIF−2)リン酸化活性)を維持している限り、配列内の任意の残基で生じ得る。
【0105】
「改変」PKRコード核酸配列は、アミノ酸の挿入または欠失、あるいはその両方を含む「改変」PKRアミノ酸配列をコードし得る。さらに、改変PKRコード核酸配列は、参照ポリヌクレオチドまたはネイティブ配列と同一のポリペプチドをコードし得るが、遺伝子暗号の縮重に起因して、参照ポリヌクレオチド配列またはネイティブポリヌクレオチド配列から1つ以上の塩基が変化した核酸コード配列を有する。
【0106】
改変体核酸コード配列は、「保存的」置換を含む改変体アミノ酸配列をコードし得、ここで、置換されたアミノ酸は、それが置換するアミノ酸に類似の構造または化学的性質、ならびに天然に見出される相同的タンパク質中の物理化学的アミノ酸側鎖性質および高置換頻度を有する(例えば、標準的なDayhoff頻度交換マトリックスまたはBLOSUMマトリックスにより測定されたとき)。さらに、またはあるいは、この改変体核酸コード配列は、「非保存的」置換を含む改変体アミノ酸配列をコードし得、ここで、この置換されたアミノ酸は、それが置換するアミノ酸には類似しない構造または化学的性質を有する。標準的な置換クラスは、当業者に一般に知られるように、共通の側鎖性質および天然の相同性タンパク質における最高の置換頻度を基に、6つのクラスのアミノ酸を含み、そして改変体PKRをコードする核酸配列を開発するために採用され得る。
【0107】
PKRをコードするヌクレオチド配列はまた、コードされたポリペプチドの機能を実質的に改変しない、1つ以上のヌクレオチドの置換、欠失または付加を有し得るポリヌクレオチド配列の代替形態として規定される「対立遺伝子」を含み得る。
【0108】
本発明を実施することにおける使用のためのポリヌクレオチドは、PKRおよびPKRスプライス改変体、タンパク質コード配列に相補的な配列、およびポリヌクレオチドの新規フラグメントをコードする配列を含む。このポリヌクレオチドは、RNAの形態であるか、またはDNAの形態であり得、そしてメーセンジャーRNA、合成RNAおよびDNA、cDNA、およびゲノムDNAを含む。DNAは、二本鎖または一本鎖であり得、そして一本鎖であれば、コード鎖または非コード(アンチセンス、相補的)鎖であり得る。
【0109】
当業者により理解され得るように、いくつかの場合には、天然に存在しないコドンを有するPKRコード化ヌクレオチド配列を生成することが有利であり得る。特定の真核生物宿主により好まれるコドン(Murray、E.ら、1989)が、例えば、PKRポリペプチド発現の比率を増大するため、または天然に存在する配列から生成された転写物より長い半減期のような、所望の性質を有する組換えRNAを生成するために選択され得る。
【0110】
1つの一般的な実施形態では、PKRコードヌクレオチド配列は、本明細書に参考として明確に援用されるGenBank受託番号M35663に見出されるヒトp68PKRコード配列に、少なくとも70%、好ましくは、80%、85%、90%または95%またはそれ以上の配列同一性を有する。
【0111】
PKRをコードするヌクレオチド配列は、細胞によるPKRのクローニング、プロセッシングおよび/または発現を修飾する改変を含むがこれに限定されない種々の理由のためにPKRコード配列を改変するために操作され得る。
【0112】
異種核酸構築物は、PKRのコード配列、改変体、フラグメントまたはそのスプライス改変体を:(i)単離物中;(ii)PKRコード配列が優勢コード配列である、融合タンパク質またはシグナルペプチドのような;さらなるコード配列と組み合わせて;(iii)適切な宿主中でコード配列の発現に有効な、イントロン、およびプロモーターおよびターミネーターエレメントまたは5’および/または3’非翻訳領域のような制御要素のような、非コード化配列と組み合わせて;および/または(iv)PKRコード配列が異種遺伝子であるベクターまたは宿主環境中に含み得る。
【0113】
本発明はまた、上記のような、PKRをコードする核酸配列の1つ以上を含む組換え核酸構築物を含む。この構築物は、その中に本発明の配列が順配向または逆配向で挿入された、プラスミドまたはウイルスベクターのようなベクターを含む。
【0114】
(C.宿主細胞の選択および形質転換)
上記のような適切な核酸コード配列を、適切なプロモーターおよび制御配列とともに含むベクターを採用して哺乳動物細胞を形質転換し得、細胞がPKRを過剰発現するようにし、そしてそれによってサイトカイン発現または産生を増大する。
【0115】
本発明の1つの局面では、異種核酸構築物を採用してインビトロで細胞中(確立された細胞株が好ましい)にPKRをコードする核酸配列を移入する。サイトカイン類の長期間の高収率産生のために、安定発現がまた好ましい。次いで、安定な形質転換対体を生成するに有効な任意の方法が本発明を実施するのに用いられ得る。
【0116】
他にそうであることが示されなければ、本発明の実施には、当該技術分野内にある、分子生物学、微生物学、組換えDNA、および免疫学の従来技法が採用され得る。このような技法は、文献に十分に説明されている。例えば、MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL、第3版(Sambrook、Russell&Sambrook編、2001)、ANIMAL CELL CULTURE(R.I.Freshney編、1988);CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY(F.M.Ausubelら、編、John Wiley&Sons、1993);およびCURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY(J.E.Coliganら、編、John Wiley&Son、1994)を参照のこと。前述および後述両方の、本明細書に述べられる、すべての特許、特許出願、論文および刊行物は、参考として本明細書中に特に援用される。
【0117】
本発明は、外因的に提供されるPKRコード化核酸配列を含むように遺伝子的に改変された細胞および細胞組成物を提供する。親細胞または細胞株は、クローニングベクターまたは発現ベクターを用いて遺伝子的に改変され得る(すなわち、形質導入、形質転換またはトランスフェクション)。このベクターは、例えば、上記でさらに記載のような、プラスミド、ウイルス粒子、ファージなどの形態であり得る。
【0118】
ベクターをインビトロで細胞中に送達するために種々の方法が採用され得る。PKRをコードする核酸配列を含む異種核酸構築物は、インビトロで転写され、そして得られるRNAを、例えば、注入によるような周知の方法により宿主細胞中に導入され得る。異種核酸配列の発現のために、細胞中に核酸を導入する方法はまた、当業者に公知であり、限定されずに、エレクトロポーレーション;核マイクロインジェクションまたは単一細胞中への直接マイクロインジェクション;インタクト細胞との細菌プロトプラスト融合;ポリカチオン(例えば、ポリブレンまたはポリオルニチン)の使用;リポソームを用いた膜融合、リポフェクタミンまたはリポフェクション媒介トランスフェクション;DNA被覆マイクロパーティクルを用いた高速度ボンバードメント;リン酸カルシウム−DNA沈殿物とのインキュベーション;DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション;改変ウイルス核酸での感染;などを含む。(例えば、Davis、L.、Dibner、M.およびBattey、I.、BASIC METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY、1986を参照のこと)。
【0119】
遺伝子改変された細胞は、プロモーターを活性化し、形質転換体を選択し、またはPKRコード化核酸配列の発現を増幅するため、適切に改変された従来の栄養培地中で培養され得る。温度、pHなどのような培養条件は、発現のために選択された宿主細胞に先に用いられたような条件であり、そして当業者に明らかである。
【0120】
異種核酸構築物が導入された細胞の子孫は、一般に、この異種核酸構築物中に見出されるPKRコード化核酸配列を含むと考えられる。
【0121】
(D.増大されたPKR発現のための細胞および培養条件)
従って、本発明は、対応する親細胞株に対して、増大したPKR産生または発現を生じるに有効な様式で、選択、改変、プライムおよび/またはプライムかつ処置された細胞を含む細胞株を提供する。
【0122】
増大したPKR発現のために処置および/または改変され得る親細胞株の例は、制限されずに、B細胞(Namalwa、293、Raji)、単球細胞(U937、THP−1)、Vero、MRC−5、WI−38細胞、Flow1000細胞、Flow4000細胞、FS−4およびFS−7細胞、線維芽細胞(MRC−5、MG−63細胞)、CCRF−SB細胞、T細胞(CCRF−CEM、Jurkat)細胞およびT98G細胞を含む。PKR発現のために選択され、改変され、プライムされおよび/またはプライムかつ処置され得る適切な一次細胞型の例は、制限されずに、単球/マクロファージ系統の細胞、T細胞およびB細胞を含むリンパ球系統の細胞、マスト細胞、線維芽細胞、骨髄細胞、ケラチノサイト、骨芽由来細胞、メラノサイト、内皮細胞、血小板、種々の他の免疫系細胞、肺上皮細胞、膵臓実質細胞、そのような細胞型由来の神経膠腫細胞および腫瘍細胞を含む。PKR過剰発現細胞は、代表的には、親細胞株を培養するために採用された条件下で培養される。
【0123】
一般に、細胞は、生理学的塩および栄養分を含む、代表的には、ウシ胎仔血清のような5−10%血清で補填した、標準RPMI、MEM、IMEMまたはDMEMのような、標準的な培地で培養される。培養条件もまた標準的であり、例えば、培養物は、37℃で、所望のレベルのPKR発現が達成されるまで、静置またはローラー培養でインキュベートされる。
【0124】
所定の細胞株のための好適な培養条件は、科学的文献および/またはAmerican Type Culture Collection(ATCC;「http://www.atcc.org/」)のような細胞株の供給源から見出され得る。線維芽細胞、B細胞、T細胞、内皮細胞、樹状細胞、および単球のような一次細胞株のための好適な培養条件は、一般に、科学的文献中で利用可能である。細胞増殖が確立された後、細胞は、PKRの過剰発現を引き起こすか、または許容するために有効な条件に曝される。
【0125】
PKR遺伝子が誘導性プロモーターの制御下にある場合には、誘導剤、例えば、金属塩または抗生物質が、高レベルPKR発現を誘導するに有効な濃度で培地に添加される。
【0126】
(E.PKR発現をさらに増大するための細胞の処置)
一般に、PKRおよび1つ以上のサイトカイン類の発現を増大するため、または哺乳動物細胞株からサイトカイン類の回収を容易にするためにさらなる工程がとられる。このような工程は、(1)PKRの発現を増大するために有効な条件下で細胞を培養すること;(2)ポリペプチド類、化学薬品類、または核酸類を含むがこれらに限定されない試薬でPKR発現細胞をプライムすること;および(3)PKRおよび1つ以上のサイトカイン類の産生を誘導するためにPKR発現細胞を処置すること(誘導)、の1つ以上を含む。
【0127】
1つの例示のアプローチでは、ポリI:CでのPKR過剰発現細胞株(41.027.A9および4.027.C1)の処置が、野生型Namalwa細胞について観察されたより大きいPKR発現を誘導するために有効であった(図2B)。さらに、本明細書中に提供された結果は、41.027.A9および41.027.C1クローンおよびそのサブクローン化子孫細胞株のような、サブクローニングおよび選択により派生するPKR過剰発現細胞株が、集合的に、対応する野生型細胞株よりPKR活性および発現の誘導に対し応答性であることを示す(図1、2および3)。このようなPKR過剰発現細胞株は、従って、IFNについて図5に、そしてTNF−β、IL−6およびIL−8について図6に例示されるように、より高いレベルのサイトカイン類を産生する。
【0128】
サイトカイン類の回収を容易にするために有効な条件下で細胞を培養することは、制限されずに、血清中および/または無タンパク質もしくは無血清培地中で培養することを含む。
【0129】
プライミングは周知の現象であり、それによって、プライミング剤での細胞の前処理が、次の処置または誘導の後、1つ以上のサイトカイン類の増大した産生を生じる。例示のプライミング剤は、制限されずに、ホルボールミリステートアセテート(PMA)およびその他のホルボールエステル、カルシウムイオノフォア、インターフェロンα、インターフェロンγ、インターフェロンβ、G−CSF、GM−CSF、PDGF、TGF、EGFまたはケモカイン類(IL−8、MCPまたはMIP)、酪酸ナトリウム、エンドトキシン、キナーゼアクチベーター(例えば、PKR、PACTのタンパク質アクチベーター)、または転写アクチベーター(NF−KB、IRF−3およびIRF−7を含むIRF類)を含む。PKRインヒビターp53の抑制もまた、増大したPKR活性を生じることが示されている(Tanら、1998)。あるいは、血清およびIL−3のような増殖因子の枯渇を用いて細胞中のPKR活性を誘導し得る。適切なプライミング剤濃度は、科学的文献中に見出し得、例えば、PMAの濃度は5−50nMの範囲で、好ましくは約10nMが適切である。
【0130】
処置することは、微生物(ウイルス、細菌または真菌)誘導剤、誘導剤として作用し得る微生物の抽出物(例えば、エンドトキシンまたは細菌細胞壁含有抽出物)または非微生物誘導剤を細胞培養に添加することを含み得る。例示の非微生物剤は、制限されずに、ポリ(I):ポリ(C)(ポリI:C)のような二本鎖RNA(dsRNA)、低分子(例えば、ポリアニオン)、ヘパリン硫酸デキストラン、硫酸コンドロイチンおよびサイトカイン類を含む。
【0131】
ウイルス誘導の例示の方法は、制限されずに、(1)生存ウイルス(Sendaiウイルス、脳心筋ウイルスまたは単純ヘルペスウイルスなど)に曝すこと;(2)前述の死滅ウイルスに曝すこと;または(3)単離された二本鎖RNAに曝すことを含む。さらに、サイトカイン誘導は、特定細胞中でサイトカイン産生を刺激することが知られる特定のサイトカイン類を添加することにより生成または増大され得る。
【0132】
誘導剤の添加後、代表的には、細胞は、所望のレベルの誘導されかつ分泌されたサイトカイン類が得られるまで、さらにインキュベートされ得る。37℃で少なくとも12−48時間、そして72−96時間までが一般に十分である。
【0133】
1つの好適なアプローチでは、PKRおよび1つ以上のサイトカイン類の過剰発現は、DEAEデキストランでの細胞のさらなる処置により行われる。
【0134】
ヌクレオチドアナログである2−アミノプリン(2−AP)は、PKRの公知のインヒビターである。図5は、2−APを用いた処置による結果のサイトカイン誘導の抑制によるPKR活性の阻害を示す。代表的には、2APは、約0.5〜5mMの濃度で用いられる。
【0135】
別のアプローチでは、PKR発現は、PKRコード化核酸配列の発現を制御するプロモーターと相互作用する調節因子により増大され得る。内因性PKRコード化核酸配列の発現の場合には、例示の調節因子は、インターフェロン誘導性GAS要素、IL−6感受性NF−IL6およびAPRF要素およびNF−κB要素を含む(例えば、Jagus Rら、1999およびWilliams、B.R.、1999を参照のこと)。
【0136】
(VI.PKR発現を評価する方法)
所定のサイトカイン−調節因子の活性、発現および/または産生は、当該技術分野で公知の方法により測定され得る。
【0137】
例示すれば、内因的または外因的に提供されたPKRコード化核酸配列の存在、増幅および/または発現は、サンプル中で、例えば、PKR活性、発現および/または産生のためのアッセイにより直接測定され得る。このようなアッセイは、自己リン酸化アッセイ、eIF2αリン酸化のためのアッセイ、キナーゼアッセイ;mRNAの転写を定量するためのノザンブロッティング、ドットブロッティング(DNAまたはRNA分析)、RT−PCR(逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応)、またはPKRコード化核酸配列に基づく、適切に標識されたプローブを用いるインサイチュハイブリダイゼーション;および従来のサザンブロッティングを含む。
【0138】
あるいは、遺伝子発現は、PKRの発現を直接評価するための細胞または組織切片の免疫組織化学的染色、ウェスタンブロットまたはELISAのような、免疫学的方法により測定され得る。免疫組織化学的染色および/またはサンプル流体のアッセイのために有用な抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルのいずれかであり得、そして任意の動物中で調製され得る。
【0139】
このような方法の詳細は、当業者に公知であり、そしてこのような方法を実施するための多くの試薬が市販されている。
【0140】
(VII.サイトカイン産生を増大するために有効なさらなる因子)
アポトーシスまたはプログラム化細胞死は、細胞に本質的な自殺プロセスであり、それによって、所望されない個々の細胞は遺伝子により決定されたプログラムを経て、染色体DNAフラグメント化、RNAの分解および最終的な細胞死に至る(Orrenius 1995;Stellar 1995;Vaux 1993に総説がある)。一旦、アポトーシスが始まると、細胞は、新たなラウンドのタンパク質合成、ならびに、細胞質凝縮、核クロマチン凝縮、膜小気胞化、および特徴的なオリゴヌクレオチドのラダーとして検出される最終的なDNA分解を含む、種々の形態学的/生理学的変化を行う。
【0141】
プロトタイプ早期炎症性サイトカインとしてのTNFは、病原体排除、抗ウイルス活性、および腫瘍破壊のプロセスの間に活性化した免疫細胞により産生される細胞傷害性タンパク質である。しかし、インビボで高レベルのTNFαは有害である。なぜなら、TNFαは、代謝障害、消耗、および造血の抑制を誘導するからである。細胞レベルにおいて、TNFαは、スーパーオキシドラジカルの生成、リソソーム酵素の活性化(Larrickら、1990;Liddilら、1989)、およびエンドヌクレアーゼ活性の活性化によるDNAのフラグメント化(Ribinら、1988)を誘導し、アポトーシスに至る。
【0142】
PKRは、TNFαシグナル伝達経路において、およびアポトーシスの誘導において役割を果たすことが知られている。PKRを過剰生産するU937細胞はまた、増大したアポトーシスを示すことが示されている(例えば、Yeung、M.C.ら、1996および1999を参照のこと)。
【0143】
従って、本発明の1つの局面では、PKRを過剰発現する、サイトカイン産生性細胞株を処理してアポトーシスを阻害する。
【0144】
例えば、細胞は、適切なプロモーターの制御下で、細胞におけるアポトーシスを阻害し得るタンパク質をコードする遺伝子でトランスフェクトされる。
【0145】
代表的には、細胞は最初に、抗アポトーシス遺伝子を含むベクターでトランスフェクトされ、次いで、成功した形質転換体がさらに、サイトカイン調節遺伝子を含むベクターでトランスフェクトされる。これは、細胞が抗アポトーシス機能ですでに「安定化」されて、第2のトランスフェクションおよび選択を実施することを可能にする。あるいは、サブクローン化および選択されたPKR過剰生産細胞を増殖して、抗アポトーシス遺伝子を含むベクターが導入されたPKR過剰発現細胞株を生成する。
【0146】
特にPKR過剰発現の条件下で、サイトカイン合成をともなうアポトーシスを阻害することによって細胞培養中のサイトカインの産生を増大する方法は、本明細書中に参考として特に援用される同時所有の米国仮出願第09/657,881号にさらに記載されている。
【0147】
(VIII.サイトカイン産生)
PKRを過剰発現する細胞により産生されるサイトカイン類は、培地中に分泌され、そして、例えば、細胞培養培地から所望されない成分を除去することにより、精製または単離され得る。一般に、サイトカイン類は、特定の結合剤(例えば、抗体またはレセプター)に対する結合親和性のような選択された性質を有するサイトカイン類;または選択された分子量範囲、または等電点の範囲のサイトカイン類を分離するために分画される。
【0148】
(A.PKR過剰発現と組み合わせて過剰生産されるサイトカイン類)
本発明の方法を用いて発現が増大され得る例示のサイトカイン類は、制限されずに、インターフェロン類(α、βおよびγ)、インターロイキン類(IL−1α、IL−1β、IL−1ra、IL−2およびIL−4〜13)、腫瘍壊死因子αおよびβ(TNF−β)およびそれらの個々の可溶性レセプター(sTNF−R)、コロニー刺激因子(顆粒球コロニー刺激因子、G−CSF;顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子、GM−CSF;およびIL−3)、造血因子(線維芽細胞成長因子、FGF;血管内皮細胞成長因子、VEGF);および血小板由来成長因子1および2(PDGF−1および−2)および抗造血因子(アンギオスタチンおよびエンドスタチン)を含む。
【0149】
サイトカイン調節因子、例えば、PKRの過剰発現細胞株が、組換えDNA技術により生成される場合、このサイトカイン調節因子は、誘導性プロモーター、例えば、メタロチオネインプロモーターまたはテトラサイクリン(TRE)プロモーター(tet−onまたはtet−off);構成性プロモーター、例えば、CMVプロモーターまたはSV−40プロモーターの制御下で発現され得る。
【0150】
PKRをコードするベクターでトランスフェクトされた細胞によるサイトカイン類の生産は、先に、インターフェロンについて同時所有の米国特許出願第09/444,224号(特許された)に、そしてその他のサイトカイン類、例えば、IL−1−α、IL−1−β、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13およびTGF−βについては、単独または組み合わせて、同時所有の米国出願番号第09/595,338号および同第09/660,468号に記載されており、これらすべては特に参考として本明細書中に援用される。
【0151】
(B.サイトカイン類の組み合わせ)
本明細書中に記載の方法は、本明細書中に特に参考として援用される同時所有の米国仮出願第09/660,468号に詳細に記載されるように、治療的使用のための2つ以上のサイトカインの混合物、特に、癌、ウイルス感染、または炎症を治療する使用のためのサイトカイン混合物の生産にさらなる有用性を見出す。
【0152】
要約すると、PKR過剰生産細胞株を適切な条件下で培養し、2つ以上のサイトカイン類を得るに有効な様式で誘導および/または処理し、そして細胞により産生され、そして培地中に分泌されたサイトカイン類が、例えば、細胞培養培地から所望されない成分を除去して単離される。
【0153】
好ましくは、この組成物は、収集されたサイトカイン類を分画することにより生成され、結合剤(例えば、抗体またはレセプター)に対する結合親和性、または選択された分子量範囲、または等電点の範囲のような、選択された性質をもつサイトカイン類を単離する。
【0154】
(C.サイトカイン類の精製および/または単離)
1つのアプローチでは、サイトカイン調節因子、例えば、PKRを過剰生産する細胞からのサイトカインの単離を単純にするために、細胞を、血清含有培地中で培養するが、代表的には、誘導剤および単離工程を、血清および/またはタンパク質が実質的にない培地中で実施される。
【0155】
一旦、所定のサイトカインの増加した発現が達成されると、このサイトカインは、細胞培養から単離および/または精製される。この単離工程は、分泌されたサイトカイン類を含む培養培地を、単離されるべきサイトカイン(単数または複数)に対して特異的である表面に付着した抗体を有する固体支持体と接触されること、この固体支持体を洗浄して非結合物質を取り除くこと、およびこの支持体に特異的に結合したサイトカイン類を溶出することを包含する。
【0156】
このような単離および/または精製に適切な例示の手順は以下を包含する:抗体−親和性カラムクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー;エタノール沈殿;逆相HPLC;シリカ上またはDEAEのようなカチオン交換樹脂上のクロマトグラフィー;焦点クロマトグラフィー;SDS−PAGE;硫酸アンモニウム沈殿;および、例えば、SephadexG−75を用いるゲル濾過。タンパク質精製の種々の方法が採用され得、そしてこのような方法は、当該技術分野で公知であり、そして例えば、Deutscher、METHODS IN ENZYMOLOGY、182、1990;Scopes、PROTEIN PURIFICATION:PRINCIPLES AND PRACTICE、第3版、Springer−Verlag、New York、1994に記載されている。選択された精製工程(単数または複数)は、例えば、用いた生産プロセスおよび産生された特定のサイトカインの性質に依存する。
【0157】
サイトカイン類の誘導後の種々の時点で、細胞培地は、1つ以上の選択されたサイトカイン類の存在について試験され得る。選択されたサイトカイン類の存在は、直接検出(例えば、抗体結合アッセイ(以下を参照のこと))を用いるか、または代表的には当該技術分野で採用される生物学的アッセイに従って、種々のサイトカイン応答性細胞の活性に対する培養培地の効果により間接的にアッセイされ得る。
【0158】
(D.サイトカイン発現を評価する方法)
所定のサイトカインの活性、発現および/または産生はまた、当該技術分野で公知の方法により測定され得る。例は、mRNAについてノザンブロットおよび逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を含む。さらに、ELISA、競合イムノアッセイ、ラジオイムノアッセイ、ウェスタンブロット、間接免疫蛍光アッセイなどのイムノアッセイを用いて発現されたタンパク質を検出し得る。
【0159】
一般に、サイトカイン分析のためのキットは市販されており、そして公知のサイトカイン類またはその他のタンパク質の発現レベルの定量的イムノアッセイのために用いられ得る(例えば、R&D Systemsから入手可能なサイトカイン検出キット)。
【0160】
本発明の1つの好適な局面では、培養条件、処置、プライミングおよび誘導の組み合わせが、所定の細胞株による顕著に増大したサイトカイン産生をもたらし、例えば、提示される増加は、本明細書に記載のような細胞の処置、プライミングおよび誘導の1つ以上がない同じ培養条件の下で同じ細胞株により示されるレベルに対し、少なくとも2倍(2×)、2.5倍(2.5×)、3倍(3×)、4倍(4×)、5倍(5×)、および好ましくは10倍(10×)またはそれより多いサイトカイン産生または発現である。いくつかの場合には、本発明の方法は、100倍(100×)〜1000倍(1000×)またはそれより多いサイトカイン産生における増加をもたらす。
【0161】
本明細書中に引用されるすべての特許および参考文献は、それらの全体が参考として本明細書中に特に援用される。
【0162】
以下の実施例は例示であり、いかなる様式においても本発明を制限する意図はない。
【実施例】
【0163】
(実施例1)
PKR過剰生産細胞株の調製
野生型Namalwa細胞を、American Type Culture Collection(ATCC)、10801 University Blvd.、Manassas、Va.、U.S.A.から得た。これらの細胞を、以下に詳細に記載するように、培養し、サブクローン化し、選択し、プイラムおよび誘導した。
【0164】
野生型Namalwa細胞は、0.5〜15%濃度範囲のウシ胎児血清を含むDMEM/F12培地中で培養した。このNamalwa細胞を、当業者により慣用的に採用される標準的な方法を用いて96ウェルプレート中で培養することにより、限界希釈クローニング(本明細書では「サブクローニング」という)した。このサブクローニング工程は、単一細胞の子孫として生じるクローンを生じた。このサブクローニングは、5〜10回実施し、そしてこれらサブクローンを、代表的には親細胞株を培養するために採用された培養条件を用いて増殖させ、約0.3〜0.5百万細胞/mlの集団を得た。次いで、これらサブクローンを、PKR発現および活性について、ノザンブロット、ウェスタンブロット、自己リン酸化アッセイ(DerおよびLau、Proc.Natl.Acad.Sci.1995;92:8841−8845)、eIF2αリン酸化のためのアッセイ(Zamanian−Daryoushら)、およびキナーゼアッセイ(キナーゼのインビトロアッセイ(Zamanian−Daryoushら、2000)と組み合わせたPKRの免疫沈降により実施した)によりアッセイした。
【0165】
親細胞株より少なくとも2倍多いキナーゼ活性を示したサブクローンを選択した。選択されたサブクローンをまた、ウェスタンおよびノザンブロットによりPKR産生および/または発現についてスクリーニングした。次いで、選択されたサブクローンを、誘導前のプライミング有りまたは無しで処置し、増大したPKRおよびサイトカイン活性、産生および/または発現を誘導した。
【0166】
プライミングまたは誘導の不在下で、野生型Namalwa細胞と比べ、2倍またはそれより多いレベルのPKR活性を発現する細胞株を生成した。Namalwa PKR++41.027細胞と命名した例示のPKR過剰生産性細胞株を、本明細書中で本発明を例示するために用いる。
【0167】
(実施例2)
(PKR過剰発現細胞株の特徴づけ)
(A.非ウイルス性誘導への応答における増強された内因性PKR発現)
Namalwa PKR++41.027細胞およびWT Namalwa細胞の個々のサブクローン由来の細胞を、T150フラスコ中で、24時間、5.0×105細胞/mlの密度まで20nM 酢酸ミリスチン酸ホルボール(PMA)を用いて前処理した。続いて、さらに48時間、200μg/mlポリI:Cおよび10μg/ml DEAE デキストランを用いて処理し、PKR発現を誘導した。総RNAを、Chomczynski P.ら(1987)に記載される単一工程の酸グアニジウム チオシアネート−フェノール−クロロホルム方法を用いて単離した。
【0168】
ノーザンブロットを、上記のように単離された20μgの総RNAを用いて調製し、2.2Mのホルミルアミドを含む1%アガロースゲル上で変性条件下で電気泳動し、次いでProtran膜(Schleicher & Schuel)上に移した。PKR−Eco R1フラグメントを、ハイブリダイゼーションのための特定のプローブとして使用した。フィルターを、40%のホルムアミドを含む標準のハイブリダイゼーション溶液を用いて5時間プレハイブリダイズし、次いで、32P標識化プローブ(Amershamから入手した、商業用の標識キットを用いてランダムプライミング反応によって標識した)を用いて一晩ハイブリダイズした。次いで、膜を、2×SSC(0.3M NaCl、0.03M クエン酸ナトリウム、pH7)を用いて60℃で15分間2回洗浄し、0.1%SDSで洗浄し、そして0.1×SSC、0.1%SDSを用いて同様の温度で1度洗浄した。
【0169】
図1Aは、野生型Namalwa細胞におけるPKR発現に関するNamalwa PKR++41.027細胞におけるポリI:C誘導後の増強されたPKR発現を例示する。上のパネルは、生じた細胞(レーン1および3)ならびに上記のようにポリI:Cを用いて処置された細胞(レーン2および4)から単離されたRNAのノーザンブロット分析を示す。32P標識化PKR Eco R1フラグメントを、プローブとして用いた。コントロールとして、下のパネルは、臭化エチジウムを用いて染色されたゲルの写真を示す。rRNAバンドの強度の比較は、各レーンにロードされたRNAの総量が同じであることを示す。28S rRNAのサイズは、約5kbであり、そして18S rRNAのサイズは、約1.9kbである。従って、上のパネルにおけるPKRバンド強度の増加は、PKR RNAのレベルの増加に起因し、そして各レーンに存在する総RNAの量における差異に起因しない。
【0170】
(B.ウイルス性誘導への応答における増強された内因性PKR発現)
Namalwa PKR++41.027細胞およびWTNamalwa細胞の個々のサブクローン由来の細胞を、1mM酪酸ナトリウムを用いて24時間、T150フラスコ中で5.0×105細胞/mlの密度で37℃で前処理した。これに続いて、500HAU/mlのセンダイウイルス(SV)を用いてさらに24時間処理した。RNAを、記載されるような(P.Chomczynskiら、1987)単一工程の酸グアニジウムチオシアネート−フェノール−クロロホルム法を用いることによって単離した。
【0171】
ノザン分析を、20μgの総RNAを用いて実行し、これは2.2Mのホルムアルデヒドを含む1%アガロースゲル上で変性条件下で電気泳動し、続いて、Protran膜(Schleicher&Schuel)上に移した。PKR−Eco R1フラグメントを、市販のBrightStar非同位体検出キット(Ambion)を用いるハイブリダイゼーションのための特異的プローブとして使用した。
【0172】
図1Bは、野生型(WT)Namalwa細胞(レーン1)におけるPKR発現と比較した、NamalwaPKR++41.027細胞(レーン2)におけるセンダイウイルス誘導後の増強されたPKR発現を例示する。コントロールとして、下のパネルは、エチジウムブロミドを用いて染色されたゲルの写真を示す。rRNAバンドの強度の比較は、各レーンにロードされたRNAの総量が、同様であることを示す。28SrRNAのサイズは、約5kbであり、そして18SrRNAのサイズは、約1.9kbである。従って、上のパネルにおけるPKRバンド強度における増加は、PKR RNAの増加したレベルに起因し、各レーンに存在する総RNAの量における差異に起因しない。
【0173】
図1Aおよび1Bに示される結果から見出され得るように、非ウイルス性誘導またはウイルス性誘導後、Namalea41.027細胞によって本明細書中で例示されるPKR過剰発現細胞株は、誘導されて、同じ処理に供された野生型Namalwa細胞よりも有意に多いPKRを産生し得る。この結果は、レーザーデンシトメトリーによって定量され得る。
【0174】
(C.非誘導対ポリI:C誘導WTおよび41.027細胞株のキナーゼアッセイ)
Namalwa WTおよびサブクローンした子孫細胞株41.027.A9および41.027.C1を、10%のウシ胎児血清および2mMのL−グルタミンを含むDMEM/F12培地中で培養し、そして5%のCO2存在下で37℃でインキュベートした。細胞を収集し、そしてトリパンブルー色素排除アッセイを用いて計測し、そして最終の細胞密度50×105細胞/mLで細胞培養処理フラスコ中に接種した。重複フラスコを、各細胞株について調製した。この細胞を、20nMの酢酸ミスチリン酸ホルボール(PMA)を用いて20分間処理することによってプライムした。PMAへの曝露後、次いで、各細胞株について1セットのフラスコを、200μg/mLの最終濃度のポリI:Cと10μg/mLのDEAEデキストランを用いて48時間処理することによって誘導した。
【0175】
プライム工程および誘導工程の後に、細胞抽出物を調製し、PKRを、免疫沈降させ、そしてPKRキナーゼ活性を、インビトロアッセイによって測定した(Zamanian−Daryoushら、2000)。この目的のために、細胞を、PBS中で2回洗浄し、そして細胞ペレットを記載されるように、60〜90μlの免疫沈降(IP)溶解緩衝液に再懸濁した。細胞溶解物を、氷上で20分間インキュベートし、続いて20,800gで、4℃で20分間遠心分離した。PKRを、免疫沈降し、そしてインビトロキナーゼアッセに供した(Zamanian−Daryoushら、1999)。手短には、PKRを、抗PKRモノクローナル抗体(パスツール研究所のAra Hovanssianから入手したMAb71/10)を用いて100μgの総溶解タンパク質から免疫沈降した。氷上での30分間のインキュベーション後、プロテインGセファロースビーズを、添加し、4℃で24時間インキュベートし、そしてビーズ結合キナーゼを、溶解緩衝液を用いて2回洗浄し、続いてDBGA(10mM Tris−HCl、pH7.6、50mM KCl、2mMの酢酸マグネシウム、20%(v/v)グリセロール、7mMのメルカプトエタノール)を用いて洗浄した。免疫沈降したPKRを、0.83mMの塩化マグネシウム、0.8μMのATP、10μの精製したヒストン、および9μCiのγ[32P]ATPを含むDBGA中で30℃で20分間インキュベートした。このキナーゼ反応を、4×SDS−PAGEサンプル緩衝液の添加によって終結した。リン酸化PKRタンパク質を、勾配(4〜12%ポリアクリルアミド)SDS−PAGEゲル上で分離した。次いで、このリン酸化PKRタンパク質を、当該分野において周知の標準的なプロトコルを用いてPVDF膜に移し、そして固定した。PKRバンド中に含まれる放射能の量を、ImageQuant Software vs 5.2と組み合わせて、Molecular Dynamics Typhon 8600 Variable Mode Analyzerのリン酸画像化能(phosphoimager capability)を用いて定量した。
【0176】
図2Aは、SDS−PAGE PKR自動キナーゼ活性アッセイのオートラジオグラフィーの画像を示す。このアッセイを、上記のようにPMA単独またはPMAおよびポリI:C/DEAEデキストランに曝露した後に、Namalwa−WTおよびNamalwa−PKR++サブクローン化細胞株を用いて行った。レーン1〜3は、PMAで20時間プライムしたが、ポリI:C/DEAEデキストランを用いて誘導されないサンプルを示す;レーン4〜6は、PMAで20時間プライムした後に、ポリI:CおよびDEAEデキストランを用いて48時間誘導したサンプルを示す。
【0177】
PKRキナーゼ活性を、定量し、そしてその結果を、図2Bおよび図2Cに示す。示されるように、サブクローンされた細胞株(Namalwa−PKR++41.027.A9および41.027.C1)は、誘導後のWT細胞株よりPKRキナーゼ活性の2倍より大きい増加を伴いポリI:C処理に対してより感受性である。
【0178】
(D.非誘導対ポリI:C誘導WTおよび41.027細胞株のウェスタンブロット分析)
PKRタンパク質を、PVDF膜に固定化し、そして節Cで概要を述べられたようにPKRキナーゼ活性について評価した後、同じ膜を、酵素増幅化学発光ウェスタンブロット分析を用いて総PKRタンパク質のレベルを評価するためにさらに処理した。この目的のために、1次抗体としてウサギポリクローナル抗PKR抗体(Santa Cruz Biotechnology,Inc.,Santa Crus,CAから入手した)を用いてインキュベートし、続いて、2次抗体として、抗ウサギフルオレセイン結合化ポリクローナル抗体を用いて検出し、次いで、抗フルオレセインアルカリホスファターゼ結合化3次抗体を用いて検出した。シグナルを、蛍光基質ECF(Aemrsharm)の添加によって増した。ウェスタンブロットを、Typhoon 8600 Variable Mode Analyzer(Molecular Dynamics)の画像分析能を用いて評価した。ECF反応を、532nmの励起波長でレーザーを用いて検出し、光学マルチパイパーチューブを、100ピクセルの媒体感度でセットされた装置の解像度で500ボルトにセットした。データを、ImageQuantソフトウェア(Molecular Dynamics version5.2)を用いて分析した。図3A、図3B、および図3Cに示される結果は、プライムおよび誘導された野生型Namalwa細胞と比較して、プライムおよび誘導されたPKR過剰発現Namalwa細胞(41.027.C1および41.027.A9)においてPKRタンパク質発現のレベルが2倍増加したことを示す。さらに、タンパク質発現の比較レベルとの活性データの相関は、プライムおよび誘導された野生型Namalwa細胞と比較した、プライムおよび誘導されたPKR過剰発現Namalwa細胞におけるPKR特異的活性の合計3倍〜5倍の増加を明らかにする(図4Aおよび図4B)。
【0179】
(実施例3)
(ウイルス性誘導またはポリI:Cでの処置に応答する、PKR過剰発現細胞株における増強されたインターフェロン産生)
Namalwa PKR++41.027細胞およびWT Namalwa細胞の個々のサブクローン由来の細胞を、6ウェルプレート中で24時間、細胞密度5.0×105細胞/mlで20nMの酢酸ミリスチン酸ホルボール(PMA)を用いて前処理し、続いて、500HAU/mlのセンダイウイルス、または200μg/mLのポリI:Cと10μg/mLのDEAEデキストランを用いてさらに72時間処理して、IFN発現を誘導した。センダイウイルス処理細胞由来の培養上清を、誘導後24時間および48時間で除去し、そしてポリI:C処理細胞由来の上清を、72時間で除去した。IFN−α産生を、ELISA(PBLから入手したHuman Interferon Alfa Multi−Species ELISA Kit)を用いてこれらの細胞培養上清中で測定した。
【0180】
図5は、図5に示されるような野生型Namalwa細胞によるIFN−α産生と比較して、NamalwaPKR++41.027細胞においてセンダイウイルスおよびポリI:C誘導の両方の後にIFN−α産生が高められることを例示する。IFN−α産生のレベルは、センダイウイルスでの誘導後、48時間で最も高く、この点で、NamalwaPKR++41.027細胞は、野生型Namalwa細胞よりも約4倍(4×)高いIFN−α産生を示した。同様に、ポリI:Cは、NamalwaPKR++41.027細胞中にIFNを誘導し得るが、親のNamalwa細胞中でIFN−α誘導は検出不可能である(図5)。
【0181】
対応する実験を、NamalwaPKR++41.027細胞およびWTNamalwa細胞の個々のサブクローンの二重培養物において実行した。これらの培養物をまた、6ウェルプレート中で24時間、5.0×105細胞/mlの細胞密度で20nMの酢酸ミリスチン酸ホルボールを用いて前処理し、続いて、500HAU/mlのセンダイウイルスまたはポリI:C(200μg/ml)と10μg/mlのDEAEデキストランを用いて処理した。さらに、これらの培養物をまた、PKRインヒビターの5mM 2−アミノプリン(2AP;Aldrich Chemical Companyから入手した)を用いて処理した。センダイウイルス誘導細胞由来の培養上清を、誘導後24時間で除き、そしてポリI:C誘導細胞由来の培養上清を、72時間で除き、そしてELISA(PBL Catalogue No.41105 Human Interferon Alfa Multi−Species ELISA Kit)を用いてIFNα産生について評価した。
【0182】
図5は、2−アミノプリンに曝された場合の、NamalwaPKR++41.027およびWT細胞におけるセンダイウイルスまたはポリI:C誘導後のIFN−α産生の減少を示す。この結果は、PKRキナーゼ活性の公知のインヒビターである2−アミノプリンが、IFN−α誘導を阻害し得ることを示す。同様に、2−アミノプリンは、ウイルスまたはポリI:Cによる他の前炎症サイトカインの誘導を阻害する(結果は示されていない)。
【0183】
(実施例4)
(ウイルス性誘導に対する応答におけるPKR過剰発現細胞株中の増強されたTNF−β産生)
NamalwaPKR++41.027細胞およびWTNamalwa細胞の個々のサブクローン由来の細胞を、6ウェルプレート中で、5.0×105細胞/mlの細胞密度で20nMの酢酸ミリスチン酸ホルボールを用いて、20時間前処理した。これに続いて、200μg/mlポリI:Cを用いてさらに72時間処理して、サイトカインの発現を誘導した。処理された細胞由来の培養上清を、誘導後72時間で除き、そしてELISA(R&D Systems)を介して、TNF−β、IL−6およびIL−8産生について評価した。
【0184】
図6は、野生型Namalwa細胞によるTNF−β、IL−6およびIL−8産生と比較して、NamalwaPKR++41.027細胞におけるポリI:C誘導後の増強されたTNF−β、IL−6、およびIL−8産生を例示する。NamalwaPKR++41.027細胞における誘導後72時間のTNF−β産生のレベルは、野生型Namalwa細胞よりも約3倍(3×)高いTNF−β産生を示した。同様に、ポリI:Cでの感染後72時間において、親のコントロールと比較して、41.027細胞において10倍より大きいIL−6およびIL−8が誘導された。
【図面の簡単な説明】
【0185】
【図1】図1Aは、Namalwa PKR++ 41.027細胞および野生型Namalwa細胞(WT)におけるポリI:C誘導に続くPKR発現のノーザンブロット分析を示す。(上段のパネル、レーン1およびレーン3−休止細胞から単離されたRNA、レーン2およびレーン4−ポリI:C処理された細胞由来のRNA;ならびに下段のパネルは臭化エチジウムを用いて染色されたゲルを示す)。
【0186】
図1Bは、Namalwa PKR++ 41.027細胞および野生型Namalwa細胞(WT)におけるセンダイウイルス(SV)誘導に続くPKR発現のノーザンブロット分析を示す。(上段のパネル、レーン1−SV感染したNam−WT細胞由来のRNA;レーン2−SV感染したNamalwa PKR++ 41.027細胞由来のRNA;および下段のパネルは臭化エチジウムを用いて染色されたゲルを示す)。
【図2A】図2Aは、PMA単独または48時間のポリI:C/DEAEデキストランにの前にPMAに20時間曝露した後のNamalwa−WTおよびNamalwa−PKR ++ 41.027細胞株を用いて実施した、SDS−PAGE PKR自己キナーゼ活性アッセイのオートラジオグラフィーの画像を示す。(レーン1〜レーン3−PMAを用いてプライムされたが、ポリI:C/DEAEデキストランを用いて誘導されていないサンプルを示す;レーン4〜レーン6は、ポリI:CおよびDEAEデキストランを用いた48時間の誘導にの前にPMAを用いてプライムさせたサンプルを示す。
【図2B】図2Bは、PMA単独または48時間のポリI:C/DEAEデキストランの前にPMAに20時間暴露した後の野生型Namalwa細胞(WT)中、ならびにNamalwa−PKR ++ 41.027をサブクローニングした子孫細胞株である41.027.A9および41.027.C1中におけるPKRキナーゼ活性を示す。
【図2C】図2Cは、PMA単独または48時間のポリI:C/DEAEデキストランの前にPMAに20時間暴露した後の野生型Namalwa細胞(WT)中、ならびにNamalwa−PKR ++ 41.027をサブクローニングした子孫細胞株である41.027.A9および41.027.C1中におけるPKRキナーゼ活性の増加倍率を示す。
【図3A】図3Aは、PMA単独または48時間のポリI:C/DEAEデキストランの前にPMAに20時間暴露した後の、野生型(WT)中、ならびにNamalwa−PKR ++ 41.027をサブクローニングした子孫細胞株である41.027.A9および41.027.C1中におけるPKR発現の蛍光ウェスタンブロット分析を示す。(レーン1〜レーン3−PMAを用いてプライムされたがポリI:C/DEAEデキストランを用いて誘導されていないサンプルを示す.レーン4〜レーン6は、48時間のポリI:CおよびDEAEデキストランを用いた誘導の前にPMAを用いてプライムされたサンプルを示す)。
【図3B】図3Bは、PMA単独または48時間のポリI:C/DEAEデキストランの前にPMAに20時間暴露した後の野生型Namalwa細胞(WT)中、ならびにNamalwa−PKR ++ 41.027をサブクローニングした子孫細胞株である41.027.A9および41.027.C1中におけるPKRタンパク質の相対レベルを示す。
【図3C】図3Cは、PMA単独または48時間のポリI:C/DEAEデキストランの前にPMAに20時間暴露した後の、野生型Namalwa細胞(WT)中、ならびにNamalwa−PKR ++ 41.027をサブクローニングした子孫細胞株である41.027.A9および41.027.C1中におけるPKRタンパク質の増加倍率を示す。
【図4A】図4Aは、PMA単独または48時間のポリI:C/DEAEデキストランの前にPMAに20時間暴露した後の、野生型Namalwa細胞(WT)、ならびにNamalwa−PKR ++ 41.027をサブクローニングした子孫細胞株である41.027.A9および41.027.C1中におけるPKRタンパク質の比活性を示す。
【図4B】図4Bは、PMA単独または48時間のポリI:C/DEAEデキストランの前にPMAに20時間暴露した後の、野生型Namalwa細胞(WT)、ならびにNamalwa−PKR ++ 41.027をサブクローニングした子孫細胞株である41.027.A9および41.027.C1中におけるPKR比活性の増加倍率を示す。
【図5】図5は、PMAプライミングおよび24時間または48時間のセンダイウイルス誘導に続く、野生型Namalwa細胞(WT)およびNamalwa PKR ++ 41.027細胞中のINF−α産生(データセット1〜3)、ならびにPMAプライミングおよび5mMの2−アミノプリン(2−AP)の存在下で24時間のセンダイウイルス誘導に続く、野生型Namalwa細胞(WT)およびNamalwa PKR ++ 41.027細胞中のINF−α産生(データセット4)を図示する。この図はさらに、PMAプライミングおよび72時間のポリI:C誘導に続く、野生型Namalwa細胞(WT)およびNamalwa PKR ++ 41.027細胞中のINF−α産生(データセット5)、ならびにPMAプライミングおよび5nMの2−アミノプリンの存在下で72時間のポリI:C誘導に続く、野生型Namalwa細胞(WT)およびNamalwa PKR ++ 41.027細胞中のINF−α産生(データセット6)を図示する。
【図6】図6は、Namalwa野生型(WT)およびNamalwa PKR過剰発現細胞株(41.027)の培養物中のTNF−β、IL−6およびIL−8サイトカインノンレベルの分析結果の概要を図示する。
【0001】
(発明の分野)
本発明は、細胞によるPKR過剰生産の条件下で、細胞培養物中のサイトカインの生成を増強するための方法および組成物に関する。
【0002】
(参考文献)
【0003】
【数1】
(発明の背景)
dsRNA−活性化インヒビターは、ヒト細胞およびマウス細胞中の、それぞれ分子量68kDaおよび65kDaのセリン/スレオニンキナーゼである。dsRNAへの結合または1本鎖RNAへの結合は、PKRの活性化および自己リン酸化を導く(GalabruおよびHovanessian、1987;Meursら、1990)。これは、PKRが、その天然基質である真核生物のタンパク質合成開始因子2(eIF−2)のαサブユニットをリン酸化することを可能にし、タンパク質合成の阻害を導く。
【0004】
ヒトPKR遺伝子のヌクレオチド配列が決定され、そして、この遺伝子が17個のエキソン(これらは551アミノ酸のPKRタンパク質をコードする)を含むことを示す(Kuhenら、1996)。
【0005】
類似の酵素が、ウサギ網状赤血球、異なるマウス組織およびヒト末梢血単核細胞において示された(Farrelら、1977;Levinら、1978;Hovanessian、1980;Krustら、1982;Buffet−Janvresseら、1986)。
【0006】
PKRは、他の基質に加えて、タンパク質合成開始因子eIF2およびI−κB(NF−κBのインヒビター;Kumar Aら、1994)をリン酸化するその能力を介して、翻訳、転写およびシグナル伝達経路の調節において種々の重要な役割を果たすことが示された。
【0007】
PKRに対して最も良く特徴付けられたインビボ基質は、真核生物の開始因子2のαサブユニット(eIF−2α)であり、これは、一旦リン酸化されると、最終的に細胞タンパク質合成およびウイルスタンパク質合成の阻害を導く(Hershey、1991)。PKRは、2本鎖RNAによって活性化された場合に開始因子eIF−2αをインビトロでリン酸化することが実証された(Chongら、1992)。
【0008】
PKRに起因する活性としては、(1)IFN−αおよびIFN−βの抗ウイスル活性および抗増殖活性を媒介すること、(2)非感染細胞の生理的ストレスに対する応答、および(3)細胞増殖調節における役割が挙げられる(Clemens,M.J.およびElia,A.、1997;Zamanian−Daryoush,M.ら、1999)。
【0009】
PKRは腫瘍サプレッサーおよびアポトーシスの誘導因子として機能し得るということもまた示唆されており(例えば、Clemens M.J.およびBommer U.A.、1999;Yeungら、1996;Koromilasら、1992を参照のこと)、最近の結果は、PKRの活性形態の発現が、おそらくFasレセプターのアップレギュレーションを介してアポトーシスを引き起こすということを示す(Donze,O.ら、1999)。
【0010】
インターフェロンを生成し得る細胞株がPKRをコードする発現ベクターを用いてトランスフェクションされる場合、PKRの過剰発現はインターフェロンのさらなる生成を誘導するということがさらに示された(WO 97/08324)。インターフェロンタンパク質は、サイトカインのプロトタイプファミリーであり、そして、病原体および癌組織に対する免疫防御において重要な役割を果たすことが示された。
【0011】
サイトカインは、ある範囲の生物学的活性を示し、そして、広範な標的細胞に作用する調節分子である(例えば、Balkwill,F.R.およびBurke,F.、1989;Wong,G.およびClark,S.、1988;ならびにClark,SおよびKamen,R.、1987を参照のこと)。
【0012】
一般に、サイトカインは、現在のところ、昆虫宿主細胞、細菌宿主細胞、または哺乳動物宿主細胞における組換えタンパク質の発現によって生成される。
【0013】
一般に、サイトカインおよび他のタンパク質は、細胞培養物から天然タンパク質を精製することか、または昆虫細胞、微生物細胞もしくはヒト細胞中でタンパク質を組換え的に生成することのいずれかによって、様々な治療的適用のために生成される。ヒト細胞によって生成される天然のサイトカインおよび他のタンパク質は、これらが、所定のサイトカインまたはタンパク質のネイティブ形態の完全なレパートリーを含むことが知られており、そして、ヒト細胞中で生成されたタンパク質に特有であり得る適切なタンパク質構造(グリコシル化および翻訳後修飾を含む)を有するという点で、好まれ得る。しかし、これらは、ヒト細胞を生成するには高価であり、そして時間の無駄である。
【0014】
組換え的に生成されたサイトカインおよび他のタンパク質は、作製するのはあまり高価ではないが、供給源に依存して、このサイトカインが投与されるヒト被験体による免疫応答が生じるような外来の抗原を含み得るか、または、ネイティブ形態からの構造的バリエーション(すなわちグリコシル化パターン)に起因して活性が弱くあり得る。
【0015】
本発明の方法は、微生物系(サイトカインタンパク質のグリコシル化およびネイティブの折り畳みを可能にしない)、またはヒト細胞(一般に、非常に低レベルの組換えタンパク質を生成する)におけるサイトカインの発現を利用する。従って、本質的に1つ以上のサイトカインを生成する細胞中で、1つ以上のサイトカインの生成を増強するための方法が有利である。
【0016】
本発明は、サイトカイン生成が、サイトカイン調節因子(例えば、PKR、IRF−3またはIRF−7)を過剰発現する培養された哺乳動物細胞において、増強されるという知見に関する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0017】
(発明の要旨)
本発明は、サイトカイン調節因子(例えば、PKR、IRF−3またはIRF−7)を過剰発現する哺乳動物細胞によるサイトカイン生成を増強するための方法を提供する。
【0018】
本発明はさらに、1つ以上のサイトカインの生成の増強を示すサイトカイン調節因子過剰発現細胞株組成物を提供する。
【0019】
1つの好ましいアプローチにおいて、PKRおよび1つ以上のサイトカインを発現し得る親細胞株が提供され、そして、複数のサブクローンを生成するために、限界希釈クローニングに供される。親細胞株よりも少なくとも2倍(2×)より大きいPKR発現レベルを示すサブクローンが選択され、そして、PKR過剰発現細胞を生成するために増殖される。
【0020】
別の好ましいアプローチにおいて、PKRおよび1つ以上のサイトカインを発現し得る親細胞株は、ヒトPKRの生物学的活性形態についてのコーディング配列および選択マーカーについてのコーディング配列を含む異種核酸構築物と共に、提供される。この方法の実施において、異種核酸構築物は、PKRおよび選択マーカーの発現を生じる親細胞株へ導入される。次いで、この細胞株は、選択因子を含む培養培地中で培養され、そして、形質転換されていない親細胞株のPKR発現レベルよりも、少なくとも2倍(2×)より大きいPKR発現レベルを示す細胞をが選択される。
【0021】
いずれかのアプローチにおいて、この方法はさらに、PKR過剰発現細胞をプライムする工程、またはPKR過剰発現細胞をプライムおよび処理する工程、ならびに、1つ以上のサイトカインの増強された発現によって特徴付けられるPKR過剰発現細胞株を生成するために効果的な様式で細胞を増殖する工程を包含する。
【0022】
「プライムする工程」は、細胞をプライミング因子(例えば、酢酸ホルボールミリステート(PMA)または落酸ナトリウム)へ曝すことによって達成され得る。「処理する工程」の例としては、dsRNAを用いた非ウイルス誘導およびセンダイウイルスまたは単純ヘルペスを用いたウイルス誘導が挙げられる。
【0023】
多くのサイトカインのいずれかは、本発明の方法を使用して、このようなPKR過剰発現細胞によって生成され得、そしてこのような細胞から収集され得る。そして、これらのサイトカインとしては以下が挙げられるが、これらに限定されない:α−インターフェロン、β−インターフェロン、TNF−β、IL−6およびIL−8、IL−10、IFN−γ、IL−12ならびにGM−CSF。
【0024】
本発明のこれらおよび他の目的および特徴は、以下の詳細な説明が添付の図面および実施例と併せて読まれる場合、より完全に明確となる。
【0025】
(発明の詳細な説明)
(I.定義)
他に示されない限り、本明細書で使用する全ての専門用語および科学用語は、本発明の当業者に対する意味と同一の意味を有する。当業者は、技術の定義および用語のために、Sambrookら、1989およびAusubel,F.M.ら、1993に特方向付けられる。本発明が、記載された特定の方法論、プロトコルおよび試薬に限定されないことは理解されるべきである。なぜなら、これらは変化し得るからである。
【0026】
本明細書で引用された全ての刊行物は、本発明に関連して使用され得る組成物および方法論を記載し、そして開示する目的で、参考として本明細書中に明白に援用される。
【0027】
「異種」核酸構築物または「異種」核酸配列は、これが発現される細胞に対してネイティブでない配列の一部を有する。制御配列に関して、異種とは、この制御配列が現在調節しているものと同一の遺伝子の発現を調節するように天然には機能しない制御配列(すなわちプロモーターまたはエンハンサー)をいう。一般に、異種核酸配列は、細胞に対して内因性でないか、またはこの異種核酸配列が存在するゲノムの一部でない、そして、感染、トランスフェクション、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどによって細胞へ加えられる。「異種」核酸構築物は、ネイティブ細胞中で見出される制御配列/DNAコード配列の組合せと同じか、または異なる制御配列/DNAコード配列の組合せを含み得る。
【0028】
用語「ベクター」は、本明細書で使用する場合、異なる宿主細胞間を移動するように設計された核酸構築物をいう。「発現ベクター」は、外来細胞において異種DNAフラグメントを組み込み、そして発現する能力を有するベクターをいう。多くの原核生物および真核生物の発現ベクターが市販されている。適切な発現ベクターの選択は、当業者の知識の範囲内である。クローニングベクターまたは発現ベクターは、さらなるエレメントを含み得、例えば、発現ベクターは2つの複製系を有し得、従って、2つの生物体中(例えば、発現に関してはヒト細胞中およびクローニングおよび増幅に関しては原核生物中)で保持されることを可能にする。クローニングベクターおよび発現ベクターは、典型的に、選択マーカーを含む。
【0029】
本明細書で使用する場合、用語「選択マーカーをコードするヌクレオチド配列」は、哺乳動物細胞において発現し得るヌクレオチド配列、および選択マーカーの発現が、発現された遺伝子を含む細胞に、対応する選択因子の存在下で増殖する能力を与えるようなヌクレオチド配列をいう。
【0030】
本明細書で使用する場合、用語「プロモーター」は、下流の遺伝子の転写を指向するように機能する核酸配列をいう。プロモーターは、一般に、標的遺伝子が発現される宿主細胞に適している。他の転写調節核酸配列および翻訳調節核酸配列(「制御配列」とも呼ばれる)とともにプロモーターは、所定の遺伝子を発現するために必要である。一般に、転写調節配列および翻訳調節配列としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:プロモーター配列、リボソーム結合部位、転写開始配列および転写停止配列、翻訳開始配列および翻訳停止配列、ならびにエンハンサーまたはアクチベーター配列。プロモーターは、構成的でも誘導性でもよく、そして、天然に存在するプロモーターでも、操作されたプロモーターでもハイブリッドプロモーターでもよい。
【0031】
用語「制御配列」は、特定の宿主生物体における、作動可能に連結されたコード配列の発現のために必要なDNA配列をいう。原核生物に適した制御配列としては、例えば、プロモーター、必要に応じてオペレーター配列およびリボソーム結合部位が挙げられる。真核生物細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナルおよびエンハンサーを利用することが知られている。
【0032】
本明細書で使用する場合、組換えDNA構築物またはベクターに関して、用語「作動可能に連結された」は、選択されたコード配列の作動的制御のために互いに直接連結された組換えDNA構築物またはベクターのヌクレオチド成分を意味する。一般に、「作動可能に連結された」DNA配列は連続しており、分泌リーダーの場合には、連続しかつリーディングフレーム中にある。しかし、エンハンサーは連続されなくてもよい。連結は、便利な制限部位にてライゲーションすることによって達成される。このような部位が存在しない場合、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーが、慣習的技術に従って使用される。
【0033】
本明細書で使用する場合、用語「遺伝子」は、ポリペプチド鎖の生成に関与するDNAセグメントを意味し、これは、コード領域に先行する領域および後ろの領域(例えば、5’非翻訳(5’UTR)配列または「リーダー」配列、および3’UTRまたは「トレーラー」配列)、ならびに個々のコードセグメント(エキソン)間の介在配列(イントロン)を含んでも含まなくてもよい。
【0034】
本明細書で使用する場合、用語「配列同一性」は、配列アライメントプログラムを使用して整列された、2つ以上の整列配列における核酸配列同一性またはアミノ酸配列同一性を意味する。
【0035】
用語「%相同性」は、本明細書の用語「%同一性」と交換可能に、本明細書中で使用され、そして、配列アライメントプログラムを使用して整列された場合の、2つ以上の整列配列間の核酸配列またはアミノ酸配列の同一性のレベルをいう。例えば、本明細書で使用する場合、80%相同性は、定義されたアルゴリズムによって決定された80%の配列同一性と同義であり、従って、所定の配列のホモログは、所定の配列の長さにわたって、80%よりも大きい配列同一性を有する。配列同一性の例示的なレベルとしては、本明細書に記載されるように、PKR配列に対して80%、85%、90%または95%以上の配列同一性が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
2つの配列間の同一性を決定するために使用され得る例示的なコンピュータープログラムとしては、BLASTプログラム一式(例えば、BLASTN、BLASTXならびにTBLASTX、BLASTPおよびTBLASTN)(「http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/」にて、インターネット上で公に利用可能)が挙げられるが、これらに限定されない。Altschul,S.F.ら、1990およびAltschul,S.F.ら、1997もまた参照のこと。
【0037】
配列検索は、GenBank DNA Sequencesおよび他の公開データベース中の核酸配列と比較して所定の核酸配列を評価する場合、典型的に、BLASTNプログラムを用いて実施される。BLASTXプログラムは、GenBank Protein Sequencesおよび他の公開データベース中のアミノ酸配列に対して、全てのリーディングフレームで翻訳された核酸配列を検索するために好ましい。BLASTNおよびBLASTXの両方は、11.0のオープンギャップペナルティーおよび1.0の伸長ギャップペナルティーのデフォルトパラメーターを使用して実施され、そして、BLOSUM−62マトリックスを利用する(Altschulら、1997を参照のこと)。
【0038】
2つ以上の配列間の「%同一性」を決定するために、選択された配列の好ましいアラインメントが、例えばMac Vector version 6.5のCLUSTAL−Wプログラム(デフォルトパラメーター(10.0のオープンギャップペナルティー、0.1の伸長ギャップペナルティーおよびBLOSUM 30類似性マトリクスを含む)を用いて操作される)を使用して、実施される。
【0039】
核酸配列は、2つの配列が中程度〜高いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件および洗浄条件下で互いに特異的にハイブリダイズする場合、参照核酸配列に対して「選択的にハイブリダイズ可能」であると見なされる。ハイブリダイゼーション条件は、複合体またはプローブに結合する核酸の融解温度(Tm)に基づく。例えば、「最大のストリンジェンシー」は、代表的には約Tm−5℃(プローブのTmより5℃低い)の温度で;「高いストリンジェンシー」は、Tmより約5℃〜10℃低い温度で;「中間のストリンジェンシー」はプローブのTmより10℃〜20℃低い温度で;そして「低いストリンジェンシー」はTmより20℃〜25℃低い温度で起きる。機能的に、最大のストリンジェンシーの条件は、ハイブリダイゼーションプローブと完全な同一性または完全に近い同一性を有する配列を同定するために使用され得る;一方、高いストリンジェンシーの条件は、プローブと約80%以上の配列同一性を有する配列を同定するために使用される。
【0040】
中程度および高いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件は、当該分野に周知である(例えば、Sambrookら、1989、9章および11章、ならびにAusubel,F.M.ら、1993(本明細書中に参考として明白に援用される)を参照のこと)。高いストリンジェンシーの条件の例として、50%のホルムアミド、5×SSC、5×デンハート液、0.5%のSDSおよび100μg/mlの変性キャリアDNA中において、約42℃でのハイブリダイゼーション、続く2×SSCおよび0.5%のSDS中における室温での2回の洗浄、ならびに0.1×SSCおよび0.5%のSDS中における42℃でのさらに2回の洗浄が、挙げられる。
【0041】
本明細書で使用する場合、「組換え体」は、異種核酸配列の導入によって改変された細胞もしくはベクターへの言及、またはこのように改変された細胞由来の細胞を含む。従って、例えば、組換え細胞は、この細胞のネイティブ(非組換え)形態内では、同一の形態で見出されない遺伝子を発現するか、または、意図的な人間の介入の結果として、別に異常に発現されるか、過少発現されるか、または全く発現されないネイティブ遺伝子を発現する。
【0042】
本明細書で使用する場合、哺乳動物細胞に関して用語「形質転換された」、「安定に形質転換された」または「トランスジェニック」は、哺乳動物細胞が、2世代以上を通じて維持される、そのゲノムへ組み込まれた非ネイティブの(異種の)核酸配列を有する、ということを意味する。
【0043】
本明細書で使用する場合、用語「発現」はポリペプチドが遺伝子の核酸配列に基づいて生成されるプロセスをいう。このプロセスは、転写および翻訳の両方を含む。
【0044】
用語「PKR発現」は、PKR遺伝子の転写および翻訳のことをいい、その生成物として、前駆体RNA、mRNA、ポリペプチド、翻訳後プロセスを受けたポリペプチド、およびその誘導体が挙げられる(マウスまたはサルの酵素のような他の種由来のPKR発現を含む)ことが理解される。例として、PKRのアッセイとしては、自己リン酸化アッセイ、eIF2αリン酸化についてのアッセイ、PKRタンパク質のウェスタンブロット、ならびにPKR mRNAに関するノーザンブロット分析およびリバーストランスクリプターゼポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)アッセイが挙げられる。
【0045】
「選択的スプライシング」は、単一の遺伝子から複数のポリペプチドアイソフォームを生成するプロセスであり、その遺伝子のいくつか(全てではない)の転写産物のプロセシングの間に非連続的なエキソンをひとつに繋ぎ合わせる工程を包含する。従って、特定のエキソンは、いくつかの選択的エキソンのいずれか1つに接続され得、メッセンジャーRNAを形成する。選択的スプライシングを受けたmRNAは、いくつかの部分が共通し、その他の部分が異なるポリペプチド(「スプライス改変体」)を生成する。
【0046】
本明細書中で使用する場合、用語「PKRの生物学的活性」および「生物学的に活性なPKR」は、PKR、またはPKRの任意のフラグメント、誘導体、もしくはアナログに関連する任意の生物学的活性(例えば、酵素活性(特に、自己リン酸化活性)および真核生物翻訳開始因子2(eIF−2)リン酸化活性)をいう。
【0047】
本明細書中で使用する場合、用語「正常レベルのPKR活性」および「正常レベルのPKR発現」は、特定の型(例えば、特定の細胞株)の、選択されていない細胞、刺激を受けていない細胞、または感染していない細胞において存在することが決定された、PKR活性またはPKR発現のレベルをいう。このような「正常な」PKR活性またはPKR発現は、選択されておらず、導入された(異種起源または同種起源の)PKRコード配列を含まず、刺激を受けておらず(誘導もプライムもされていない)、そして感染していない所定の型の細胞(または細胞株)について一般的に観察されるPKR活性またはPKR発現の範囲として報告されることが理解される。
【0048】
「正常な」PKR活性またはPKR発現の範囲は、培養条件に依存してある程度変化し得る。例えば、U937細胞株は、Vero細胞株またはNamalwa細胞株と異なるPKR活性の正常な範囲を有し得る。PKRの過剰発現は、選択されておらず、導入された(異種起源または同種起源の)PKRコード配列を含まず、刺激を受けておらず(誘導もプライムもされていない)、そして感染していない所定の型の細胞について一般的に観察されるPKR発現の正常な範囲を超える発現レベルを意味することが理解される。
【0049】
用語「PKR過剰発現」および「増強されたPKR発現」は、本明細書中で使用する場合、PKRを過剰発現するのに効果的な様式で選択または処理されていない特定の型の細胞において代表的に存在するPKR発現またはPKR産生よりも大きいレベルのPKRの活性、発現、または産生をいい、以下でさらに詳述する。従って、PKRの「過剰発現」は、選択されておらず、導入された(異種起源または同種起源の)PKRコード配列を含まず、刺激を受けておらず(誘導もプライムもされていない)、そして感染していない所定の型の細胞について一般的に観察されるよりも大きなPKRの活性、発現、または産生の範囲を意味する。
【0050】
本明細書中で使用する場合、用語「生物学的活性」および「生物学的に活性な」は、培養された細胞株の特定のタンパク質に起因する活性をいう。このようなタンパク質の「生物学的活性」は、培養条件に依存してある程度変化し得、活性の範囲として一般的に報告されることが理解される。従って、タンパク質の「生物学的に不活性な」形態は、そのタンパク質の天然で見出される活性を妨害する様式で改変されたタンパク質の形態をいう。
【0051】
1つの好ましい局面において、PKRの過剰発現は、使用する特定の培養条件下での同一の細胞株について、正常レベルのPKRの活性、発現、産生よりも少なくとも150%(1.5倍または1.5×)、好ましくは、少なくとも200%、300%、または400%、あるいは500%またはそれ以上大きいPKRの活性、発現、産生のレベルを意味する。言い換えると、PKRを過剰発現する細胞株は、代表的に、PKRを過剰発現するのに効果的な様式で選択または処理されていない同一型の細胞株により代表的に示されるPKRの発現、または産生のレベルよりも、少なくとも1.5倍、好ましくは、2倍(2×)、3倍(3×)、4倍(4×)、5倍(5×)、またはそれ以上大きいPKRの産生または発現のレベルを示す。いくつかの場合、PKRを過剰発現する細胞株は、使用する特定の条件下で、PKRを過剰発現するのに効果的な様式で選択または処理されていない同一型の細胞によって代表的に示されるPKRの発現または産生のレベルよりも10倍(10×)またはそれ以上大きいPKRの発現または産生のレベルを示す。一般的に、用語「PKRを過剰発現するのに効果的な様式で処理される」は、細胞中への(異種起源または同種起源の)PKRコード配列の導入、刺激(プライミングまたはプライミングおよび誘導)、および/または感染を意味する。
【0052】
本明細書中で使用する場合、用語「正常レベルのサイトカイン」および「正常レベルのタンパク質」は、活性、発現、または産生に関して、PKRを過剰発現するのに効果的な様式で処理されていない特定の型の細胞において存在することが決定された、サイトカインまたは他のタンパク質の活性、発現、または産生のレベルをいう。例として、PKR活性、発現、または産生を増強するような様式で選択または処理されていない野生型細胞株、および導入されたPKRコード発現を含まない細胞株が挙げられる。このような「正常な」サイトカインまたは他のタンパク質の活性、発現、または産生は、所定の細胞について代表的に観察される活性、発現、または産生として報告され、培養条件に依存してある程度変化し得ることが理解される。
【0053】
本明細書中で使用する場合、用語「精製された」および「単離された」は、一般的に、発見または生成される環境の他の成分から分離された分子(ポリヌクレオチドまたはポリペプチドのいずれか)をいう。例えば、単離または精製されたポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、代表的に、それらの発見または生成された環境の成分の75%以上から分離されている。単離または精製されたポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、好ましくは、それらの発見された環境の成分の少なくとも80%〜85%、より好ましくは、少なくとも90%またはそれ以上から分離されている。例えば、「精製」または「単離」されたサイトカインは、そのサイトカインの生成された細胞培養培地の成分の少なくとも75%またはそれ以上、好ましくは少なくとも80%〜85%またはそれ以上、より好ましくは、少なくとも90%またはそれ以上から分離されているサイトカインを意味する。
【0054】
用語「アポトーシス細胞死」「プログラム細胞死」、および「アポトーシス」は、本明細書中で使用する場合、細胞分化の特定の段階でおよび特定の刺激に応答して生じる細胞現象の複雑なカスケードにより引き起こされるかまたはそのカスケードに関連する任意の細胞死をいう。アポトーシス細胞死は、死滅する細胞の核における、細胞質の凝縮およびクロマチン凝縮により特徴付けられる。このプロセスは、DNAの複数の200塩基対への断片化およびRNAの分解、ならびに壊死性の細胞死におけるような急な細胞溶解を伴わない組織化された様式でのタンパク質分解を伴う。
【0055】
本明細書中で使用する場合、用語「アポトーシス細胞死を阻害する」は、細胞株がサイトカインまたは他のタンパク質の発現または産生の目的で培養される期間にわたり、細胞死プロセスを部分的または完全に阻害することを意味する。このような阻害は、一般的に、アポトーシス細胞死の量が、アポトーシスを阻害するのに効果的な様式に改変されていない細胞株において観察されるアポトーシス細胞死の量と比べて、少なくとも20%、好ましくは、少なくとも50%、より好ましくは、80%までまたはそれ以上減少することを意味する。
【0056】
PKR産生および/またはサイトカイン産生の場合、このような阻害は、一般的に、アポトーシス細胞死の量が、アポトーシスを阻害するのに効果的な様式に改変されていないPKR過剰発現細胞株において観察されるアポトーシス細胞死の量と比べて、少なくとも20%、好ましくは、少なくとも50%、より好ましくは、80%までまたはそれ以上減少することを意味する。
【0057】
(II.PKR)
PKRは、キナーゼ活性を有することが知られている唯一の同定されたdsRNA結合タンパク質である。PKRは、セリン/スレオニンキナーゼであり、その酵素活性はdsRNAへの結合およびその結果としての自己リン酸化を必要とする(Meursら、1990;Feng,C.S.ら、1992)。
【0058】
種々の機能がPKRに起因し、これらの機能として、真核生物開始因子2(eIF−2α)が挙げられ、eIF−2αは、一旦リン酸化されると、タンパク質合成の阻害を引き起こす(Hersheyら、1991)。PKRのこの特定の機能は、IFN−αおよびIFN−βの抗ウイルス活性および抗増殖活性の媒介を担う機構の1つとして示唆されている。PKRのさらなる生物学的機能は、例えば、IkBのリン酸化によるシグナル伝達作用としてのその予想される役割であり、これによって、核因子kB(NF−kB)を放出および活性化する(Kumar A.ら、1994)。
【0059】
PKRは、IFN発現の転写活性を媒介することがこれまでに実証されている(Der,D.およびLau,A.S.、1995)。この観察と併せて、PKRに対するアンチセンスでU937をトランスフェクトすることによる内因性PKR活性の抑制またはPKR欠損変異体の発現により、ウイルス感染に対するIFNの誘導が減少した(Der,D.およびLau,A.S.、1995)。
【0060】
まとめると、PKRは、eIF−2αのリン酸化による、(1)複雑なレセプター系(IFN、TNF、およびFasを含む)に対するシグナル伝達、(2)サイトカイン遺伝子の転写活性化、(3)アポトーシスの阻害、および(4)タンパク質合成の阻害に関連する。
【0061】
PKRは、サイトカインの発現を調節し得るタンパク質の例として、本明細書中で使用されるが、他のサイトカイン調節因子(例えば、PMA、プロテインキナーゼC(PKC)インデューサー、インターフェロンγ、インターフェロンα、インターフェロンβ、IFN調節因子(IRF)、TNF−α、GM−CSF、EGF、およびPDGF)が、PKRの代わりに使用され得ることが理解される。
【0062】
哺乳動物細胞においてサイトカイン調節因子(例えば、PKR)の発現/活性を増大することにより、サイトカイン産生が増大し得る。従って、より高い構成性のレベルのサイトカイン調節因子を発現する哺乳動物細胞培養物、またはサイトカイン調節因子の発現がより高いレベルに誘導された哺乳動物細胞培養物は、サイトカインの産生のために有用である。
【0063】
本発明の方法は、PKRにより本明細書中で例示されるようなサイトカイン調節因子(サイトカインの発現を調節し得るタンパク質)を過剰発現する使用細胞に基づき、特定のサイトカイン調節因子の過剰発現の方法を必要としない。本発明の方法を実施する上で使用するためのさらなるサイトカイン調節因子として、IRF−7、IRF−3、およびNF−kBのような転写因子が挙げられるがこれらに限定されない。これらの因子の過剰発現は、サイトカインの発現または産生を増大するのに使用され得る。
【0064】
PKRを過剰発現または過剰産生する細胞株を獲得する方法の例として、PKRを過剰発現する細胞の選択し、その細胞を増殖してPKR過剰発現細胞を生成する方法および/または(異種起源または同種起源の)内因性PKRコード配列を発現するのに効果的な様式で細胞中にそのコード配列を導入することによりPKRを産生し得るよう細胞を改変する方法が挙げられるがこれらに限定されない。
【0065】
PKRを過剰発現する細胞の選択は、PKR mRNAまたはPKRタンパク質を過剰発現する細胞、または内因性遺伝子の発現に起因してより高いPKRキナーゼ活性を示す細胞の選択またはサブクローニングすることにより達成され得る。このようなサブクローンは、対応する親細胞株よりもより高い機能的PKRキナーゼ活性、より高いPKR mRNAレベル、またはより高いPKRタンパク質レベルを有する細胞を選択することにより選択され得る。
【0066】
この機構は本発明の一部ではないけれども、これらの細胞において増強されたPKRは、(1)増大した転写を導く増強されたプロモーター活性;(2)増強されたキナーゼ活性を有するPKRの改変形態を生じるPKR遺伝子変異;(3)増強されたキナーゼ活性を生じる多数の遺伝子コピー;または(4)細胞ストレスシグナル(例えば、ポリI:C、エンドトキシン、PMA、または熱ショック)を含む刺激に対するプロモーターの増強された応答性の結果であり得る。
【0067】
PKR過剰発現細胞はまた、サイトカインを合成するそれらの機能的能力を試験することによって同定および選択され得る。
【0068】
一旦PKRを過剰発現または過剰産生する細胞株が獲得されると、その細胞株はさらに、PKRおよび/またはサイトカイン産生を増加させるのに効果的な様式でプライムまたはプライムおよび処理され得る。
【0069】
1つの好ましいアプローチにおいて、この方法は、(a)PKRを過剰発現し得る哺乳動物細胞またはそれらのアナログもしくはホモログを、PKRを過剰発現するのに十分な条件下で培養する工程;(b)プライミング工程;および(c)サイトカイン遺伝子の発現を誘導するのに適切に細胞培養物を処理する工程、を包含する。
【0070】
同様に、サイトカイン調節因子(例えば、IFN調節因子(IRF)または他の転写因子)を過剰発現または過剰産生する細胞株を獲得する方法の例として、この因子(例えば、IRF−3またはIRF−7)を過剰発現する細胞を選択し、その細胞を増殖してIRF−3またはIRF−7の過剰発現細胞株を生成する方法が挙げられるがこれらに限定されない。
【0071】
代替のアプローチにおいて、この因子を産生し得る細胞は、(異種起源または同種起源の)この因子(例えば、IRF−3またはIRF−7)の核酸コード配列を含む異種核酸構築物を、このコード配列を発現するのに効果的な様式で細胞中に導入することにより改変され得る。
【0072】
サイトカイン調節因子(例えば、IRFまたは他の転写因子)を過剰発現する細胞はまた、サイトカインを合成するそれらの機能的能力を評価することにより同定および選択され得る。
【0073】
(III.増強されたサイトカイン調節因子の発現は、増強されたサイトカイン産生に関連する)
本発明は、概して、サイトカイン調節因子の過剰発現と増強されたサイトカイン産生との間の関係に関する。
【0074】
哺乳動物細胞においてサイトカイン調節因子(例えば、PKR)の発現/活性を増大させることにより、サイトカイン産生が増大され得る。従って、より高い構成的レベルのサイトカイン調節因子を発現するか、またはサイトカイン調節因子の発現がより高いレベルに誘導され得る哺乳動物細胞培養物は、サイトカインの産生に有用である。
【0075】
この方法は、サイトカイン調節因子またはサイトカインの発現を調節し得るタンパク質を過剰発現する細胞の使用に基づき(本明細書中にPKRにより例示される)、サイトカイン調節因子を過剰発現させる特定の方法を必要としない。
【0076】
一旦PKRを過剰発現または過剰産生する細胞株が獲得されると、その細胞株はさらに、PKRおよび/またはサイトカイン産生を増大するのに効果的な様式でプライムおよび処理され得る。
【0077】
1つの好ましいアプローチにおいて、この方法は、(a)サイトカイン調節因子を過剰発現し得る哺乳動物細胞を培養する工程;(b)サイトカイン調節因子のコード配列を含む異種核酸構築物またはそれらのアナログもしくはホモログを、サイトカイン調節因子を過剰発現するのに十分な条件下で導入する工程;(c)プライミング工程;および(d)サイトカイン遺伝子の発現を誘導するのに適切に細胞培養物を処理する工程、を包含する。
【0078】
1つの好ましい実施形態において、サイトカイン調節因子はPKRであり、細胞はPKRの過剰発現に対して誘導性である。好ましい局面において、PKRを過剰発現し得る細胞は、より高いレベルのPKR発現または産生を生じるような様式で処理および/または誘導される。
【0079】
本発明の1つの好ましい局面において、培養条件、プライミング工程、プライミングおよび処理工程、または誘導工程の組み合わせにより、所定の細胞株によるサイトカイン産生が有意に増強される(例えば、本明細書に記載されるような細胞の処理工程、プライミング工程、誘導工程のうちの1つ以上を含まない同一培養条件下で同一細胞株により示されるレベルに対して、少なくとも200%(2倍または2×)、250%(2.5倍または2.5×)、400%(3倍または3×)、400%(4倍または4×)、500%(5倍または5×)、および好ましくは、1000%(10倍または2×)、またはそれ以上のサイトカイン産生もしくは発現を示す増加)。いくつかの場合、本発明の方法は、100倍(100×)〜1000倍(1000×)またはそれ以上のサイトカイン産生の増大を生じる。
【0080】
従って、本発明の1つの局面は、PKRを過剰発現または過剰産生する細胞(すなわち、細胞株)の単離された集団に関する。用語「集団」は、本明細書中で使用する場合、単一の親細胞から誘導された2つ以上の細胞の群をいう。
【0081】
任意の多くの公知の細胞型が、PKR過剰発現細胞株を作製するのに有用であり、特定の例を以下に提供する。
【0082】
代表的に、細胞培養物におけるサイトカイン産生に付随する問題(例えば、非組み換え哺乳動物系からの低い収率、不適切なグリコシル化、または微生物系において生成されるタンパク質のミスホールディング)は、本発明の方法において排除され、本発明の方法は、治療タンパク質の開発に有用であることを証明するはずである。
【0083】
(IV.内因性PKRの活性、発現、および/または産生の増加)
1つの局面において、本発明は、内因性PKRコード配列を過剰発現または過剰産生するネイティブな細胞株、および同一物を生成する方法を提供する。
【0084】
本発明に従って、PKRおよび1つ以上のサイトカインを発現し得る細胞株が、限界希釈クローニング(本明細書中で、「サブクローニング」と称される)に供され得、増強されたPKRキナーゼ活性および/またはmRNAおよび/またはタンパク質発現についてスクリーニングされ得、増強されたサイトカイン活性および/または発現についてさらにサブクローニングおよび選択され得る(以下でさらに詳述される)ことが発見された。このような増強されたサイトカイン調節因子の過剰発現のマーカーとして使用され得るサイトカインの例として、TNF−β、IL−6、IL−8、およびIFNが挙げられるがこれらに限定されない。
【0085】
本発明を実施する上で、PKRおよび1つ以上のサイトカインを発現し得る細胞株(本明細書中で、「親細胞株」と称される)は、同定され、そして当業者により慣用的に使用される標準的な方法を用いる単一細胞の限界希釈クローニングに供される。一般的に、サブクローニング工程は、少なくとも3回、好ましくは、少なくとも5回、そして代表的には、5〜10回、96ウェルプレートにて実施される。サブクローンは、代表的に親細胞を培養するのに用いられる培養条件を使用して増殖され、約300,000〜500,000細胞/mlの集団を獲得するために増殖される。次いで、このサブクローンは、当該分野で公知の方法を使用して、転写(mRNA)および/またはタンパク質レベル(ウェスタンブロット)および/またはキナーゼ活性を評価することにより、PKR発現についてアッセイされる(例えば、Gunnery,S.およびMathews,M.B.、1998を参照のこと)。
【0086】
例として、PKR活性についてのアッセイとして、自己リン酸化アッセイ(DerおよびLau、Proc.Natl.Acad.Sci.、92:8841−8845、1995)、eIF2αリン酸化についてのアッセイ(Zamanian−Daryoush、Der、Williams、Oncogenes、18:315−326、1999)、およびキナーゼアッセイ(PKRの免疫沈降およびキナーゼについてのインビトロアッセイ(Zamanian−Daryoushら、Molecular and Cellular Biology、20:1278−1290、2000)により実施される)が挙げられる。
【0087】
PKR発現および/または産生についてのアッセイの例として、ウェスタンブロットのようなタンパク質アッセイ、ならびにRT−PCR(リバーストランスクリプターゼポリメラーゼ連鎖反応)およびノーザンブロット、ドットブロット、またはPKRコード核酸配列に基づく適切な標識プローブを用いたインサイチュハイブリダイゼーションのようなPKR mRNAについてのアッセイが挙げられる。
【0088】
親細胞株のPKRの発現または産生のレベルよりも少なくとも2倍(2×)、好ましくは、3倍(3×)、4倍(4×)、5倍(5×)またはそれ以上高い、PKRの発現または産生のレベルを示すサブクローンが選択される。いくつかの場合、このような選択されたサブクローンは、親細胞株のPKR発現または産生レベルよりも10倍(10×)またはそれ以上高いPKRの発現または産生レベルを示す。選択されたサブクローンはまた、より高いレベルのPKRの発現および/または産生を示す。1つの好ましいアプローチにおいて、PKRの発現または産生のレベルは、PKR活性アッセイにより決定される。
【0089】
次いで、選択されたサブクローンは、増強されたPKRおよびサイトカインの活性、発現、および/または産生を生じるのに効果的な様式で処理される。この処理は、以下にさらに記載されるように、細胞培養物に対する微生物(例えば、ウイルス)または非微生物インデューサーの添加を含み得る。
【0090】
代表的に、選択されたサブクローンは、増強されたPKRおよびサイトカイン産生を生じるのに効果的な様式で処理される前に、プライミング試薬に暴露することによりプライムされる。プライミング試薬の例もまた、以下にさらに記載される。
【0091】
(V.細胞中での異種核酸構築物の発現によるPKRの増加)
本発明はまた、PKRコード核酸配列を含む発現ベクターで形質導入、形質転換、またはトランスフェクトされた宿主細胞を提供する。培養条件(例えば、温度、pHなど)は、形質導入、形質転換、またはトランスフェクション前に親宿主細胞に対してそれまで使用されていた培養条件であり、これは当業者に明らかである。
【0092】
1つのアプローチにおいて、哺乳動物細胞株は、PKRをコードするDNAセグメントに作動可能に連結された、宿主細胞株において機能するプロモーターもしくは生物学的に活性なプロモーターフラグメントまたは1つ以上(例えば、一連の)エンハンサーを有する発現ベクターでトランスフェクトされ、その結果、PKRがその細胞株において過剰発現される。
【0093】
(A.ベクター)
PKRをコードする天然または合成のポリヌクレオチドフラグメント(「PKRコード核酸配列」)は、哺乳動物細胞中への導入および哺乳動物細胞中での複製が可能な異種核酸構築物またはベクターに組み込まれ得る。本明細書中に開示されるベクターおよび方法は、PKRの発現のために宿主細胞中で使用するのに適切である。導入された哺乳動物細胞中で複製可能であり、生存可能である限り、任意のベクターが使用され得る。多くの適切なベクターおよびプロモーターが当業者に公知であり、市販されている。ヒト細胞において使用するための適切なクローニングベクターおよび発現ベクターもまた、特に本明細書により参考として援用される、Sambrookら、1989、およびAusubel,F.M.ら、1989に記載されている。適切なDNA配列は、種々の手順により、プラスミドまたはベクター(本明細書中で、集合的に「ベクター」と称される)中に挿入され得る。一般的に、DNA配列は、標準的な手順により、適切な制限エンドヌクレアーゼ部位に挿入される。このような手順および関連のサブクローニング手順は、当業者の認識の範囲内であるとみなされる。
【0094】
このようなベクターは、代表的に、選択マーカー、挿入部位、および適切な制御エレメント(例えば、終結配列)を備えている。ベクターは、コード配列に作動可能に連結された、宿主細胞(および/または改変された可溶性タンパク質抗原コード配列が通常発現されないベクターもしくは宿主細胞環境)におけるコード配列の発現に効果的な調節配列(例えば、非コード配列(例えば、イントロン)および制御エレメント(すなわち、プロモーターおよび終結エレメント)あるいは5’および/または3’非翻訳領域を含む)を含む。多くの適切なベクターおよびプロモーターが当業者に公知であり、市販されており、そしてSambrookら(前出)に記載されている。
【0095】
プロモーターの例として、構成性プロモーターおよび誘導性プロモーターの両方が挙げられる。これらの例として、CMVプロモーター、SV40初期プロモーター、RSVプロモーター、EF−1αプロモーター、記載される(ClonTechおよびBASF)ようなtet−onまたはtet−off系におけるtet応答エレメント(TRE)を含むプロモーター、βアクチンプロモーター、および特定の金属塩の添加によりアップレギュレートされ得るメタロチエネインプロモーターが挙げられる。
【0096】
適切な選択マーカーの選択は、宿主細胞に依存し、種々の宿主に対して適切なマーカーが当該分野で周知である。代表的なマーカー遺伝子は、抗生物質または他の毒素(例えば、アンピシリン、メトトレキサート、テトラサイクリン、ネオマイシン(SouthernおよびBerg,J.、1982)、ミコフェノール酸(MulliganおよびBerg、1980)、ピューロマイシン、ゼオマイシン、またはハイグロマイシン(Sugdenら、1985))に対する耐性を付与するタンパク質をコードする。
【0097】
本発明の1つの好ましい実施形態において、PKRの過剰発現は、細胞培養物におけるPKRの過剰発現に適切なプロモーター(構成性または誘導性のいずれか)の制御下で、外因的に提供されるPKRコード核酸配列を含む細胞を用いて達成される。
【0098】
(B.PKRコード核酸配列)
PKRコード核酸配列を含むベクターは、細胞中に導入され得、その細胞によるPKRの過剰発現をもたらす。このようなベクターにおいて使用するためのコード配列の例として、GenBank登録番号M35663にて見出されるヒトp68PKR遺伝子、マウスPKR遺伝子、および他のeIF−2αキナーゼ(酵母GCN2およびヘミン調節インヒビター(Wek,R.C.、1994)からのコード配列が挙げられるがこれらに限定されない。
【0099】
さらに、これらのPKR遺伝子の変異体または改変体が、PKRの過剰発現において使用するためのベクター構築物に含まれ得る。発現の際に、これらのPKRタンパク質の変異形態または改変形態は、キナーゼ活性を増大または減少させ得る。
【0100】
1つのアプローチにおいて、PKR変異遺伝子は、形質転換部位特異的変異誘発キット(ClonTech)を用いて作製される。CaiおよびWilliams(1998)は、キナーゼ活性(基質のリン酸化)からの基質結合(eIF−αの観点で)の分離を示す一連のPKR変異体を記載した。PKR活性の減少したこれらの変異体は、基質結合において効果が少なくとも、またはキナーゼ活性が低くとも、PKR発現細胞を作製するための細胞のトランスフェクションに使用され得る。
【0101】
選択されたPKRコード配列は、周知の組み換え技術に従って適切なベクター中に挿入され得、そしてPKRを過剰発現し得る細胞株を形質転換するのに使用される(以下にさらに記載される)。
【0102】
本発明に従って、PKRをコードするポリヌクレオチド配列は、スプライス改変体、PKRのフラグメント、融合タンパク質、それらの改変形態または機能等価物を含み、これらは本明細書中で、集合的に、「PKRコード核酸配列」と称される(例えば、Wu,SおよびKaufman,R.J.、1997を参照のこと)。このような「PKRコード核酸配列」は、適切な宿主細胞においてPKRの発現を指向する組み換えDNA分子(異種核酸構築物とも称される)において使用され得る。
【0103】
遺伝子暗号の固有の縮重に起因して、実質的に同一であるかまたは機能的に等価なアミノ酸配列をコードする他の核酸配列が、PKRのクローニングおよび発現に使用され得る。従って、所定のPKRコード核酸配列について、遺伝子暗号の縮重の結果として、同一のPKRアミノ酸配列をコードする多くのコード配列が生成されることが理解される。例えば、トリプレットCGTは、アミノ酸アルギニンをコードする。アルギニンは、代替的に、CGA、CGC、CGG、AGA、およびAGGによりコードされる。従って、コード領域におけるこのような置換は、本発明により網羅される配列改変体に含まれることが理解される。これらの配列改変体のいずれかまたは全てが、親のPKRコード核酸配列について本明細書中に記載されるのと同一様式で使用され得る。
【0104】
「改変体」PKRコード核酸配列は、ネイティブなPKRポリペプチドから1つ以上のアミノ酸によって変更された「改変体」PKRアミノ酸配列をコードし得る。これらは両方とも本発明の範囲内に含まれる。同様に、用語「〜の改変形態」は、PKRに対して、ネイティブのPKRコード核酸配列またはタンパク質の誘導体または改変形態を意味する。すなわち、PKRの「改変形態」は、少なくとも1つの核酸またはアミノ酸の置換、欠失、または挿入を含む誘導配列を有する。核酸またはアミノ酸の置換、挿入、または欠失は、コードされるアミノ酸配列が、ネイティブのPKRタンパク質の生物学的活性(例えば、自己リン酸化活性または真核生物翻訳開始因子2(eIF−2)リン酸化活性)を維持している限り、配列内の任意の残基で生じ得る。
【0105】
「改変」PKRコード核酸配列は、アミノ酸の挿入または欠失、あるいはその両方を含む「改変」PKRアミノ酸配列をコードし得る。さらに、改変PKRコード核酸配列は、参照ポリヌクレオチドまたはネイティブ配列と同一のポリペプチドをコードし得るが、遺伝子暗号の縮重に起因して、参照ポリヌクレオチド配列またはネイティブポリヌクレオチド配列から1つ以上の塩基が変化した核酸コード配列を有する。
【0106】
改変体核酸コード配列は、「保存的」置換を含む改変体アミノ酸配列をコードし得、ここで、置換されたアミノ酸は、それが置換するアミノ酸に類似の構造または化学的性質、ならびに天然に見出される相同的タンパク質中の物理化学的アミノ酸側鎖性質および高置換頻度を有する(例えば、標準的なDayhoff頻度交換マトリックスまたはBLOSUMマトリックスにより測定されたとき)。さらに、またはあるいは、この改変体核酸コード配列は、「非保存的」置換を含む改変体アミノ酸配列をコードし得、ここで、この置換されたアミノ酸は、それが置換するアミノ酸には類似しない構造または化学的性質を有する。標準的な置換クラスは、当業者に一般に知られるように、共通の側鎖性質および天然の相同性タンパク質における最高の置換頻度を基に、6つのクラスのアミノ酸を含み、そして改変体PKRをコードする核酸配列を開発するために採用され得る。
【0107】
PKRをコードするヌクレオチド配列はまた、コードされたポリペプチドの機能を実質的に改変しない、1つ以上のヌクレオチドの置換、欠失または付加を有し得るポリヌクレオチド配列の代替形態として規定される「対立遺伝子」を含み得る。
【0108】
本発明を実施することにおける使用のためのポリヌクレオチドは、PKRおよびPKRスプライス改変体、タンパク質コード配列に相補的な配列、およびポリヌクレオチドの新規フラグメントをコードする配列を含む。このポリヌクレオチドは、RNAの形態であるか、またはDNAの形態であり得、そしてメーセンジャーRNA、合成RNAおよびDNA、cDNA、およびゲノムDNAを含む。DNAは、二本鎖または一本鎖であり得、そして一本鎖であれば、コード鎖または非コード(アンチセンス、相補的)鎖であり得る。
【0109】
当業者により理解され得るように、いくつかの場合には、天然に存在しないコドンを有するPKRコード化ヌクレオチド配列を生成することが有利であり得る。特定の真核生物宿主により好まれるコドン(Murray、E.ら、1989)が、例えば、PKRポリペプチド発現の比率を増大するため、または天然に存在する配列から生成された転写物より長い半減期のような、所望の性質を有する組換えRNAを生成するために選択され得る。
【0110】
1つの一般的な実施形態では、PKRコードヌクレオチド配列は、本明細書に参考として明確に援用されるGenBank受託番号M35663に見出されるヒトp68PKRコード配列に、少なくとも70%、好ましくは、80%、85%、90%または95%またはそれ以上の配列同一性を有する。
【0111】
PKRをコードするヌクレオチド配列は、細胞によるPKRのクローニング、プロセッシングおよび/または発現を修飾する改変を含むがこれに限定されない種々の理由のためにPKRコード配列を改変するために操作され得る。
【0112】
異種核酸構築物は、PKRのコード配列、改変体、フラグメントまたはそのスプライス改変体を:(i)単離物中;(ii)PKRコード配列が優勢コード配列である、融合タンパク質またはシグナルペプチドのような;さらなるコード配列と組み合わせて;(iii)適切な宿主中でコード配列の発現に有効な、イントロン、およびプロモーターおよびターミネーターエレメントまたは5’および/または3’非翻訳領域のような制御要素のような、非コード化配列と組み合わせて;および/または(iv)PKRコード配列が異種遺伝子であるベクターまたは宿主環境中に含み得る。
【0113】
本発明はまた、上記のような、PKRをコードする核酸配列の1つ以上を含む組換え核酸構築物を含む。この構築物は、その中に本発明の配列が順配向または逆配向で挿入された、プラスミドまたはウイルスベクターのようなベクターを含む。
【0114】
(C.宿主細胞の選択および形質転換)
上記のような適切な核酸コード配列を、適切なプロモーターおよび制御配列とともに含むベクターを採用して哺乳動物細胞を形質転換し得、細胞がPKRを過剰発現するようにし、そしてそれによってサイトカイン発現または産生を増大する。
【0115】
本発明の1つの局面では、異種核酸構築物を採用してインビトロで細胞中(確立された細胞株が好ましい)にPKRをコードする核酸配列を移入する。サイトカイン類の長期間の高収率産生のために、安定発現がまた好ましい。次いで、安定な形質転換対体を生成するに有効な任意の方法が本発明を実施するのに用いられ得る。
【0116】
他にそうであることが示されなければ、本発明の実施には、当該技術分野内にある、分子生物学、微生物学、組換えDNA、および免疫学の従来技法が採用され得る。このような技法は、文献に十分に説明されている。例えば、MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL、第3版(Sambrook、Russell&Sambrook編、2001)、ANIMAL CELL CULTURE(R.I.Freshney編、1988);CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY(F.M.Ausubelら、編、John Wiley&Sons、1993);およびCURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY(J.E.Coliganら、編、John Wiley&Son、1994)を参照のこと。前述および後述両方の、本明細書に述べられる、すべての特許、特許出願、論文および刊行物は、参考として本明細書中に特に援用される。
【0117】
本発明は、外因的に提供されるPKRコード化核酸配列を含むように遺伝子的に改変された細胞および細胞組成物を提供する。親細胞または細胞株は、クローニングベクターまたは発現ベクターを用いて遺伝子的に改変され得る(すなわち、形質導入、形質転換またはトランスフェクション)。このベクターは、例えば、上記でさらに記載のような、プラスミド、ウイルス粒子、ファージなどの形態であり得る。
【0118】
ベクターをインビトロで細胞中に送達するために種々の方法が採用され得る。PKRをコードする核酸配列を含む異種核酸構築物は、インビトロで転写され、そして得られるRNAを、例えば、注入によるような周知の方法により宿主細胞中に導入され得る。異種核酸配列の発現のために、細胞中に核酸を導入する方法はまた、当業者に公知であり、限定されずに、エレクトロポーレーション;核マイクロインジェクションまたは単一細胞中への直接マイクロインジェクション;インタクト細胞との細菌プロトプラスト融合;ポリカチオン(例えば、ポリブレンまたはポリオルニチン)の使用;リポソームを用いた膜融合、リポフェクタミンまたはリポフェクション媒介トランスフェクション;DNA被覆マイクロパーティクルを用いた高速度ボンバードメント;リン酸カルシウム−DNA沈殿物とのインキュベーション;DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション;改変ウイルス核酸での感染;などを含む。(例えば、Davis、L.、Dibner、M.およびBattey、I.、BASIC METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY、1986を参照のこと)。
【0119】
遺伝子改変された細胞は、プロモーターを活性化し、形質転換体を選択し、またはPKRコード化核酸配列の発現を増幅するため、適切に改変された従来の栄養培地中で培養され得る。温度、pHなどのような培養条件は、発現のために選択された宿主細胞に先に用いられたような条件であり、そして当業者に明らかである。
【0120】
異種核酸構築物が導入された細胞の子孫は、一般に、この異種核酸構築物中に見出されるPKRコード化核酸配列を含むと考えられる。
【0121】
(D.増大されたPKR発現のための細胞および培養条件)
従って、本発明は、対応する親細胞株に対して、増大したPKR産生または発現を生じるに有効な様式で、選択、改変、プライムおよび/またはプライムかつ処置された細胞を含む細胞株を提供する。
【0122】
増大したPKR発現のために処置および/または改変され得る親細胞株の例は、制限されずに、B細胞(Namalwa、293、Raji)、単球細胞(U937、THP−1)、Vero、MRC−5、WI−38細胞、Flow1000細胞、Flow4000細胞、FS−4およびFS−7細胞、線維芽細胞(MRC−5、MG−63細胞)、CCRF−SB細胞、T細胞(CCRF−CEM、Jurkat)細胞およびT98G細胞を含む。PKR発現のために選択され、改変され、プライムされおよび/またはプライムかつ処置され得る適切な一次細胞型の例は、制限されずに、単球/マクロファージ系統の細胞、T細胞およびB細胞を含むリンパ球系統の細胞、マスト細胞、線維芽細胞、骨髄細胞、ケラチノサイト、骨芽由来細胞、メラノサイト、内皮細胞、血小板、種々の他の免疫系細胞、肺上皮細胞、膵臓実質細胞、そのような細胞型由来の神経膠腫細胞および腫瘍細胞を含む。PKR過剰発現細胞は、代表的には、親細胞株を培養するために採用された条件下で培養される。
【0123】
一般に、細胞は、生理学的塩および栄養分を含む、代表的には、ウシ胎仔血清のような5−10%血清で補填した、標準RPMI、MEM、IMEMまたはDMEMのような、標準的な培地で培養される。培養条件もまた標準的であり、例えば、培養物は、37℃で、所望のレベルのPKR発現が達成されるまで、静置またはローラー培養でインキュベートされる。
【0124】
所定の細胞株のための好適な培養条件は、科学的文献および/またはAmerican Type Culture Collection(ATCC;「http://www.atcc.org/」)のような細胞株の供給源から見出され得る。線維芽細胞、B細胞、T細胞、内皮細胞、樹状細胞、および単球のような一次細胞株のための好適な培養条件は、一般に、科学的文献中で利用可能である。細胞増殖が確立された後、細胞は、PKRの過剰発現を引き起こすか、または許容するために有効な条件に曝される。
【0125】
PKR遺伝子が誘導性プロモーターの制御下にある場合には、誘導剤、例えば、金属塩または抗生物質が、高レベルPKR発現を誘導するに有効な濃度で培地に添加される。
【0126】
(E.PKR発現をさらに増大するための細胞の処置)
一般に、PKRおよび1つ以上のサイトカイン類の発現を増大するため、または哺乳動物細胞株からサイトカイン類の回収を容易にするためにさらなる工程がとられる。このような工程は、(1)PKRの発現を増大するために有効な条件下で細胞を培養すること;(2)ポリペプチド類、化学薬品類、または核酸類を含むがこれらに限定されない試薬でPKR発現細胞をプライムすること;および(3)PKRおよび1つ以上のサイトカイン類の産生を誘導するためにPKR発現細胞を処置すること(誘導)、の1つ以上を含む。
【0127】
1つの例示のアプローチでは、ポリI:CでのPKR過剰発現細胞株(41.027.A9および4.027.C1)の処置が、野生型Namalwa細胞について観察されたより大きいPKR発現を誘導するために有効であった(図2B)。さらに、本明細書中に提供された結果は、41.027.A9および41.027.C1クローンおよびそのサブクローン化子孫細胞株のような、サブクローニングおよび選択により派生するPKR過剰発現細胞株が、集合的に、対応する野生型細胞株よりPKR活性および発現の誘導に対し応答性であることを示す(図1、2および3)。このようなPKR過剰発現細胞株は、従って、IFNについて図5に、そしてTNF−β、IL−6およびIL−8について図6に例示されるように、より高いレベルのサイトカイン類を産生する。
【0128】
サイトカイン類の回収を容易にするために有効な条件下で細胞を培養することは、制限されずに、血清中および/または無タンパク質もしくは無血清培地中で培養することを含む。
【0129】
プライミングは周知の現象であり、それによって、プライミング剤での細胞の前処理が、次の処置または誘導の後、1つ以上のサイトカイン類の増大した産生を生じる。例示のプライミング剤は、制限されずに、ホルボールミリステートアセテート(PMA)およびその他のホルボールエステル、カルシウムイオノフォア、インターフェロンα、インターフェロンγ、インターフェロンβ、G−CSF、GM−CSF、PDGF、TGF、EGFまたはケモカイン類(IL−8、MCPまたはMIP)、酪酸ナトリウム、エンドトキシン、キナーゼアクチベーター(例えば、PKR、PACTのタンパク質アクチベーター)、または転写アクチベーター(NF−KB、IRF−3およびIRF−7を含むIRF類)を含む。PKRインヒビターp53の抑制もまた、増大したPKR活性を生じることが示されている(Tanら、1998)。あるいは、血清およびIL−3のような増殖因子の枯渇を用いて細胞中のPKR活性を誘導し得る。適切なプライミング剤濃度は、科学的文献中に見出し得、例えば、PMAの濃度は5−50nMの範囲で、好ましくは約10nMが適切である。
【0130】
処置することは、微生物(ウイルス、細菌または真菌)誘導剤、誘導剤として作用し得る微生物の抽出物(例えば、エンドトキシンまたは細菌細胞壁含有抽出物)または非微生物誘導剤を細胞培養に添加することを含み得る。例示の非微生物剤は、制限されずに、ポリ(I):ポリ(C)(ポリI:C)のような二本鎖RNA(dsRNA)、低分子(例えば、ポリアニオン)、ヘパリン硫酸デキストラン、硫酸コンドロイチンおよびサイトカイン類を含む。
【0131】
ウイルス誘導の例示の方法は、制限されずに、(1)生存ウイルス(Sendaiウイルス、脳心筋ウイルスまたは単純ヘルペスウイルスなど)に曝すこと;(2)前述の死滅ウイルスに曝すこと;または(3)単離された二本鎖RNAに曝すことを含む。さらに、サイトカイン誘導は、特定細胞中でサイトカイン産生を刺激することが知られる特定のサイトカイン類を添加することにより生成または増大され得る。
【0132】
誘導剤の添加後、代表的には、細胞は、所望のレベルの誘導されかつ分泌されたサイトカイン類が得られるまで、さらにインキュベートされ得る。37℃で少なくとも12−48時間、そして72−96時間までが一般に十分である。
【0133】
1つの好適なアプローチでは、PKRおよび1つ以上のサイトカイン類の過剰発現は、DEAEデキストランでの細胞のさらなる処置により行われる。
【0134】
ヌクレオチドアナログである2−アミノプリン(2−AP)は、PKRの公知のインヒビターである。図5は、2−APを用いた処置による結果のサイトカイン誘導の抑制によるPKR活性の阻害を示す。代表的には、2APは、約0.5〜5mMの濃度で用いられる。
【0135】
別のアプローチでは、PKR発現は、PKRコード化核酸配列の発現を制御するプロモーターと相互作用する調節因子により増大され得る。内因性PKRコード化核酸配列の発現の場合には、例示の調節因子は、インターフェロン誘導性GAS要素、IL−6感受性NF−IL6およびAPRF要素およびNF−κB要素を含む(例えば、Jagus Rら、1999およびWilliams、B.R.、1999を参照のこと)。
【0136】
(VI.PKR発現を評価する方法)
所定のサイトカイン−調節因子の活性、発現および/または産生は、当該技術分野で公知の方法により測定され得る。
【0137】
例示すれば、内因的または外因的に提供されたPKRコード化核酸配列の存在、増幅および/または発現は、サンプル中で、例えば、PKR活性、発現および/または産生のためのアッセイにより直接測定され得る。このようなアッセイは、自己リン酸化アッセイ、eIF2αリン酸化のためのアッセイ、キナーゼアッセイ;mRNAの転写を定量するためのノザンブロッティング、ドットブロッティング(DNAまたはRNA分析)、RT−PCR(逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応)、またはPKRコード化核酸配列に基づく、適切に標識されたプローブを用いるインサイチュハイブリダイゼーション;および従来のサザンブロッティングを含む。
【0138】
あるいは、遺伝子発現は、PKRの発現を直接評価するための細胞または組織切片の免疫組織化学的染色、ウェスタンブロットまたはELISAのような、免疫学的方法により測定され得る。免疫組織化学的染色および/またはサンプル流体のアッセイのために有用な抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルのいずれかであり得、そして任意の動物中で調製され得る。
【0139】
このような方法の詳細は、当業者に公知であり、そしてこのような方法を実施するための多くの試薬が市販されている。
【0140】
(VII.サイトカイン産生を増大するために有効なさらなる因子)
アポトーシスまたはプログラム化細胞死は、細胞に本質的な自殺プロセスであり、それによって、所望されない個々の細胞は遺伝子により決定されたプログラムを経て、染色体DNAフラグメント化、RNAの分解および最終的な細胞死に至る(Orrenius 1995;Stellar 1995;Vaux 1993に総説がある)。一旦、アポトーシスが始まると、細胞は、新たなラウンドのタンパク質合成、ならびに、細胞質凝縮、核クロマチン凝縮、膜小気胞化、および特徴的なオリゴヌクレオチドのラダーとして検出される最終的なDNA分解を含む、種々の形態学的/生理学的変化を行う。
【0141】
プロトタイプ早期炎症性サイトカインとしてのTNFは、病原体排除、抗ウイルス活性、および腫瘍破壊のプロセスの間に活性化した免疫細胞により産生される細胞傷害性タンパク質である。しかし、インビボで高レベルのTNFαは有害である。なぜなら、TNFαは、代謝障害、消耗、および造血の抑制を誘導するからである。細胞レベルにおいて、TNFαは、スーパーオキシドラジカルの生成、リソソーム酵素の活性化(Larrickら、1990;Liddilら、1989)、およびエンドヌクレアーゼ活性の活性化によるDNAのフラグメント化(Ribinら、1988)を誘導し、アポトーシスに至る。
【0142】
PKRは、TNFαシグナル伝達経路において、およびアポトーシスの誘導において役割を果たすことが知られている。PKRを過剰生産するU937細胞はまた、増大したアポトーシスを示すことが示されている(例えば、Yeung、M.C.ら、1996および1999を参照のこと)。
【0143】
従って、本発明の1つの局面では、PKRを過剰発現する、サイトカイン産生性細胞株を処理してアポトーシスを阻害する。
【0144】
例えば、細胞は、適切なプロモーターの制御下で、細胞におけるアポトーシスを阻害し得るタンパク質をコードする遺伝子でトランスフェクトされる。
【0145】
代表的には、細胞は最初に、抗アポトーシス遺伝子を含むベクターでトランスフェクトされ、次いで、成功した形質転換体がさらに、サイトカイン調節遺伝子を含むベクターでトランスフェクトされる。これは、細胞が抗アポトーシス機能ですでに「安定化」されて、第2のトランスフェクションおよび選択を実施することを可能にする。あるいは、サブクローン化および選択されたPKR過剰生産細胞を増殖して、抗アポトーシス遺伝子を含むベクターが導入されたPKR過剰発現細胞株を生成する。
【0146】
特にPKR過剰発現の条件下で、サイトカイン合成をともなうアポトーシスを阻害することによって細胞培養中のサイトカインの産生を増大する方法は、本明細書中に参考として特に援用される同時所有の米国仮出願第09/657,881号にさらに記載されている。
【0147】
(VIII.サイトカイン産生)
PKRを過剰発現する細胞により産生されるサイトカイン類は、培地中に分泌され、そして、例えば、細胞培養培地から所望されない成分を除去することにより、精製または単離され得る。一般に、サイトカイン類は、特定の結合剤(例えば、抗体またはレセプター)に対する結合親和性のような選択された性質を有するサイトカイン類;または選択された分子量範囲、または等電点の範囲のサイトカイン類を分離するために分画される。
【0148】
(A.PKR過剰発現と組み合わせて過剰生産されるサイトカイン類)
本発明の方法を用いて発現が増大され得る例示のサイトカイン類は、制限されずに、インターフェロン類(α、βおよびγ)、インターロイキン類(IL−1α、IL−1β、IL−1ra、IL−2およびIL−4〜13)、腫瘍壊死因子αおよびβ(TNF−β)およびそれらの個々の可溶性レセプター(sTNF−R)、コロニー刺激因子(顆粒球コロニー刺激因子、G−CSF;顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子、GM−CSF;およびIL−3)、造血因子(線維芽細胞成長因子、FGF;血管内皮細胞成長因子、VEGF);および血小板由来成長因子1および2(PDGF−1および−2)および抗造血因子(アンギオスタチンおよびエンドスタチン)を含む。
【0149】
サイトカイン調節因子、例えば、PKRの過剰発現細胞株が、組換えDNA技術により生成される場合、このサイトカイン調節因子は、誘導性プロモーター、例えば、メタロチオネインプロモーターまたはテトラサイクリン(TRE)プロモーター(tet−onまたはtet−off);構成性プロモーター、例えば、CMVプロモーターまたはSV−40プロモーターの制御下で発現され得る。
【0150】
PKRをコードするベクターでトランスフェクトされた細胞によるサイトカイン類の生産は、先に、インターフェロンについて同時所有の米国特許出願第09/444,224号(特許された)に、そしてその他のサイトカイン類、例えば、IL−1−α、IL−1−β、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13およびTGF−βについては、単独または組み合わせて、同時所有の米国出願番号第09/595,338号および同第09/660,468号に記載されており、これらすべては特に参考として本明細書中に援用される。
【0151】
(B.サイトカイン類の組み合わせ)
本明細書中に記載の方法は、本明細書中に特に参考として援用される同時所有の米国仮出願第09/660,468号に詳細に記載されるように、治療的使用のための2つ以上のサイトカインの混合物、特に、癌、ウイルス感染、または炎症を治療する使用のためのサイトカイン混合物の生産にさらなる有用性を見出す。
【0152】
要約すると、PKR過剰生産細胞株を適切な条件下で培養し、2つ以上のサイトカイン類を得るに有効な様式で誘導および/または処理し、そして細胞により産生され、そして培地中に分泌されたサイトカイン類が、例えば、細胞培養培地から所望されない成分を除去して単離される。
【0153】
好ましくは、この組成物は、収集されたサイトカイン類を分画することにより生成され、結合剤(例えば、抗体またはレセプター)に対する結合親和性、または選択された分子量範囲、または等電点の範囲のような、選択された性質をもつサイトカイン類を単離する。
【0154】
(C.サイトカイン類の精製および/または単離)
1つのアプローチでは、サイトカイン調節因子、例えば、PKRを過剰生産する細胞からのサイトカインの単離を単純にするために、細胞を、血清含有培地中で培養するが、代表的には、誘導剤および単離工程を、血清および/またはタンパク質が実質的にない培地中で実施される。
【0155】
一旦、所定のサイトカインの増加した発現が達成されると、このサイトカインは、細胞培養から単離および/または精製される。この単離工程は、分泌されたサイトカイン類を含む培養培地を、単離されるべきサイトカイン(単数または複数)に対して特異的である表面に付着した抗体を有する固体支持体と接触されること、この固体支持体を洗浄して非結合物質を取り除くこと、およびこの支持体に特異的に結合したサイトカイン類を溶出することを包含する。
【0156】
このような単離および/または精製に適切な例示の手順は以下を包含する:抗体−親和性カラムクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー;エタノール沈殿;逆相HPLC;シリカ上またはDEAEのようなカチオン交換樹脂上のクロマトグラフィー;焦点クロマトグラフィー;SDS−PAGE;硫酸アンモニウム沈殿;および、例えば、SephadexG−75を用いるゲル濾過。タンパク質精製の種々の方法が採用され得、そしてこのような方法は、当該技術分野で公知であり、そして例えば、Deutscher、METHODS IN ENZYMOLOGY、182、1990;Scopes、PROTEIN PURIFICATION:PRINCIPLES AND PRACTICE、第3版、Springer−Verlag、New York、1994に記載されている。選択された精製工程(単数または複数)は、例えば、用いた生産プロセスおよび産生された特定のサイトカインの性質に依存する。
【0157】
サイトカイン類の誘導後の種々の時点で、細胞培地は、1つ以上の選択されたサイトカイン類の存在について試験され得る。選択されたサイトカイン類の存在は、直接検出(例えば、抗体結合アッセイ(以下を参照のこと))を用いるか、または代表的には当該技術分野で採用される生物学的アッセイに従って、種々のサイトカイン応答性細胞の活性に対する培養培地の効果により間接的にアッセイされ得る。
【0158】
(D.サイトカイン発現を評価する方法)
所定のサイトカインの活性、発現および/または産生はまた、当該技術分野で公知の方法により測定され得る。例は、mRNAについてノザンブロットおよび逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を含む。さらに、ELISA、競合イムノアッセイ、ラジオイムノアッセイ、ウェスタンブロット、間接免疫蛍光アッセイなどのイムノアッセイを用いて発現されたタンパク質を検出し得る。
【0159】
一般に、サイトカイン分析のためのキットは市販されており、そして公知のサイトカイン類またはその他のタンパク質の発現レベルの定量的イムノアッセイのために用いられ得る(例えば、R&D Systemsから入手可能なサイトカイン検出キット)。
【0160】
本発明の1つの好適な局面では、培養条件、処置、プライミングおよび誘導の組み合わせが、所定の細胞株による顕著に増大したサイトカイン産生をもたらし、例えば、提示される増加は、本明細書に記載のような細胞の処置、プライミングおよび誘導の1つ以上がない同じ培養条件の下で同じ細胞株により示されるレベルに対し、少なくとも2倍(2×)、2.5倍(2.5×)、3倍(3×)、4倍(4×)、5倍(5×)、および好ましくは10倍(10×)またはそれより多いサイトカイン産生または発現である。いくつかの場合には、本発明の方法は、100倍(100×)〜1000倍(1000×)またはそれより多いサイトカイン産生における増加をもたらす。
【0161】
本明細書中に引用されるすべての特許および参考文献は、それらの全体が参考として本明細書中に特に援用される。
【0162】
以下の実施例は例示であり、いかなる様式においても本発明を制限する意図はない。
【実施例】
【0163】
(実施例1)
PKR過剰生産細胞株の調製
野生型Namalwa細胞を、American Type Culture Collection(ATCC)、10801 University Blvd.、Manassas、Va.、U.S.A.から得た。これらの細胞を、以下に詳細に記載するように、培養し、サブクローン化し、選択し、プイラムおよび誘導した。
【0164】
野生型Namalwa細胞は、0.5〜15%濃度範囲のウシ胎児血清を含むDMEM/F12培地中で培養した。このNamalwa細胞を、当業者により慣用的に採用される標準的な方法を用いて96ウェルプレート中で培養することにより、限界希釈クローニング(本明細書では「サブクローニング」という)した。このサブクローニング工程は、単一細胞の子孫として生じるクローンを生じた。このサブクローニングは、5〜10回実施し、そしてこれらサブクローンを、代表的には親細胞株を培養するために採用された培養条件を用いて増殖させ、約0.3〜0.5百万細胞/mlの集団を得た。次いで、これらサブクローンを、PKR発現および活性について、ノザンブロット、ウェスタンブロット、自己リン酸化アッセイ(DerおよびLau、Proc.Natl.Acad.Sci.1995;92:8841−8845)、eIF2αリン酸化のためのアッセイ(Zamanian−Daryoushら)、およびキナーゼアッセイ(キナーゼのインビトロアッセイ(Zamanian−Daryoushら、2000)と組み合わせたPKRの免疫沈降により実施した)によりアッセイした。
【0165】
親細胞株より少なくとも2倍多いキナーゼ活性を示したサブクローンを選択した。選択されたサブクローンをまた、ウェスタンおよびノザンブロットによりPKR産生および/または発現についてスクリーニングした。次いで、選択されたサブクローンを、誘導前のプライミング有りまたは無しで処置し、増大したPKRおよびサイトカイン活性、産生および/または発現を誘導した。
【0166】
プライミングまたは誘導の不在下で、野生型Namalwa細胞と比べ、2倍またはそれより多いレベルのPKR活性を発現する細胞株を生成した。Namalwa PKR++41.027細胞と命名した例示のPKR過剰生産性細胞株を、本明細書中で本発明を例示するために用いる。
【0167】
(実施例2)
(PKR過剰発現細胞株の特徴づけ)
(A.非ウイルス性誘導への応答における増強された内因性PKR発現)
Namalwa PKR++41.027細胞およびWT Namalwa細胞の個々のサブクローン由来の細胞を、T150フラスコ中で、24時間、5.0×105細胞/mlの密度まで20nM 酢酸ミリスチン酸ホルボール(PMA)を用いて前処理した。続いて、さらに48時間、200μg/mlポリI:Cおよび10μg/ml DEAE デキストランを用いて処理し、PKR発現を誘導した。総RNAを、Chomczynski P.ら(1987)に記載される単一工程の酸グアニジウム チオシアネート−フェノール−クロロホルム方法を用いて単離した。
【0168】
ノーザンブロットを、上記のように単離された20μgの総RNAを用いて調製し、2.2Mのホルミルアミドを含む1%アガロースゲル上で変性条件下で電気泳動し、次いでProtran膜(Schleicher & Schuel)上に移した。PKR−Eco R1フラグメントを、ハイブリダイゼーションのための特定のプローブとして使用した。フィルターを、40%のホルムアミドを含む標準のハイブリダイゼーション溶液を用いて5時間プレハイブリダイズし、次いで、32P標識化プローブ(Amershamから入手した、商業用の標識キットを用いてランダムプライミング反応によって標識した)を用いて一晩ハイブリダイズした。次いで、膜を、2×SSC(0.3M NaCl、0.03M クエン酸ナトリウム、pH7)を用いて60℃で15分間2回洗浄し、0.1%SDSで洗浄し、そして0.1×SSC、0.1%SDSを用いて同様の温度で1度洗浄した。
【0169】
図1Aは、野生型Namalwa細胞におけるPKR発現に関するNamalwa PKR++41.027細胞におけるポリI:C誘導後の増強されたPKR発現を例示する。上のパネルは、生じた細胞(レーン1および3)ならびに上記のようにポリI:Cを用いて処置された細胞(レーン2および4)から単離されたRNAのノーザンブロット分析を示す。32P標識化PKR Eco R1フラグメントを、プローブとして用いた。コントロールとして、下のパネルは、臭化エチジウムを用いて染色されたゲルの写真を示す。rRNAバンドの強度の比較は、各レーンにロードされたRNAの総量が同じであることを示す。28S rRNAのサイズは、約5kbであり、そして18S rRNAのサイズは、約1.9kbである。従って、上のパネルにおけるPKRバンド強度の増加は、PKR RNAのレベルの増加に起因し、そして各レーンに存在する総RNAの量における差異に起因しない。
【0170】
(B.ウイルス性誘導への応答における増強された内因性PKR発現)
Namalwa PKR++41.027細胞およびWTNamalwa細胞の個々のサブクローン由来の細胞を、1mM酪酸ナトリウムを用いて24時間、T150フラスコ中で5.0×105細胞/mlの密度で37℃で前処理した。これに続いて、500HAU/mlのセンダイウイルス(SV)を用いてさらに24時間処理した。RNAを、記載されるような(P.Chomczynskiら、1987)単一工程の酸グアニジウムチオシアネート−フェノール−クロロホルム法を用いることによって単離した。
【0171】
ノザン分析を、20μgの総RNAを用いて実行し、これは2.2Mのホルムアルデヒドを含む1%アガロースゲル上で変性条件下で電気泳動し、続いて、Protran膜(Schleicher&Schuel)上に移した。PKR−Eco R1フラグメントを、市販のBrightStar非同位体検出キット(Ambion)を用いるハイブリダイゼーションのための特異的プローブとして使用した。
【0172】
図1Bは、野生型(WT)Namalwa細胞(レーン1)におけるPKR発現と比較した、NamalwaPKR++41.027細胞(レーン2)におけるセンダイウイルス誘導後の増強されたPKR発現を例示する。コントロールとして、下のパネルは、エチジウムブロミドを用いて染色されたゲルの写真を示す。rRNAバンドの強度の比較は、各レーンにロードされたRNAの総量が、同様であることを示す。28SrRNAのサイズは、約5kbであり、そして18SrRNAのサイズは、約1.9kbである。従って、上のパネルにおけるPKRバンド強度における増加は、PKR RNAの増加したレベルに起因し、各レーンに存在する総RNAの量における差異に起因しない。
【0173】
図1Aおよび1Bに示される結果から見出され得るように、非ウイルス性誘導またはウイルス性誘導後、Namalea41.027細胞によって本明細書中で例示されるPKR過剰発現細胞株は、誘導されて、同じ処理に供された野生型Namalwa細胞よりも有意に多いPKRを産生し得る。この結果は、レーザーデンシトメトリーによって定量され得る。
【0174】
(C.非誘導対ポリI:C誘導WTおよび41.027細胞株のキナーゼアッセイ)
Namalwa WTおよびサブクローンした子孫細胞株41.027.A9および41.027.C1を、10%のウシ胎児血清および2mMのL−グルタミンを含むDMEM/F12培地中で培養し、そして5%のCO2存在下で37℃でインキュベートした。細胞を収集し、そしてトリパンブルー色素排除アッセイを用いて計測し、そして最終の細胞密度50×105細胞/mLで細胞培養処理フラスコ中に接種した。重複フラスコを、各細胞株について調製した。この細胞を、20nMの酢酸ミスチリン酸ホルボール(PMA)を用いて20分間処理することによってプライムした。PMAへの曝露後、次いで、各細胞株について1セットのフラスコを、200μg/mLの最終濃度のポリI:Cと10μg/mLのDEAEデキストランを用いて48時間処理することによって誘導した。
【0175】
プライム工程および誘導工程の後に、細胞抽出物を調製し、PKRを、免疫沈降させ、そしてPKRキナーゼ活性を、インビトロアッセイによって測定した(Zamanian−Daryoushら、2000)。この目的のために、細胞を、PBS中で2回洗浄し、そして細胞ペレットを記載されるように、60〜90μlの免疫沈降(IP)溶解緩衝液に再懸濁した。細胞溶解物を、氷上で20分間インキュベートし、続いて20,800gで、4℃で20分間遠心分離した。PKRを、免疫沈降し、そしてインビトロキナーゼアッセに供した(Zamanian−Daryoushら、1999)。手短には、PKRを、抗PKRモノクローナル抗体(パスツール研究所のAra Hovanssianから入手したMAb71/10)を用いて100μgの総溶解タンパク質から免疫沈降した。氷上での30分間のインキュベーション後、プロテインGセファロースビーズを、添加し、4℃で24時間インキュベートし、そしてビーズ結合キナーゼを、溶解緩衝液を用いて2回洗浄し、続いてDBGA(10mM Tris−HCl、pH7.6、50mM KCl、2mMの酢酸マグネシウム、20%(v/v)グリセロール、7mMのメルカプトエタノール)を用いて洗浄した。免疫沈降したPKRを、0.83mMの塩化マグネシウム、0.8μMのATP、10μの精製したヒストン、および9μCiのγ[32P]ATPを含むDBGA中で30℃で20分間インキュベートした。このキナーゼ反応を、4×SDS−PAGEサンプル緩衝液の添加によって終結した。リン酸化PKRタンパク質を、勾配(4〜12%ポリアクリルアミド)SDS−PAGEゲル上で分離した。次いで、このリン酸化PKRタンパク質を、当該分野において周知の標準的なプロトコルを用いてPVDF膜に移し、そして固定した。PKRバンド中に含まれる放射能の量を、ImageQuant Software vs 5.2と組み合わせて、Molecular Dynamics Typhon 8600 Variable Mode Analyzerのリン酸画像化能(phosphoimager capability)を用いて定量した。
【0176】
図2Aは、SDS−PAGE PKR自動キナーゼ活性アッセイのオートラジオグラフィーの画像を示す。このアッセイを、上記のようにPMA単独またはPMAおよびポリI:C/DEAEデキストランに曝露した後に、Namalwa−WTおよびNamalwa−PKR++サブクローン化細胞株を用いて行った。レーン1〜3は、PMAで20時間プライムしたが、ポリI:C/DEAEデキストランを用いて誘導されないサンプルを示す;レーン4〜6は、PMAで20時間プライムした後に、ポリI:CおよびDEAEデキストランを用いて48時間誘導したサンプルを示す。
【0177】
PKRキナーゼ活性を、定量し、そしてその結果を、図2Bおよび図2Cに示す。示されるように、サブクローンされた細胞株(Namalwa−PKR++41.027.A9および41.027.C1)は、誘導後のWT細胞株よりPKRキナーゼ活性の2倍より大きい増加を伴いポリI:C処理に対してより感受性である。
【0178】
(D.非誘導対ポリI:C誘導WTおよび41.027細胞株のウェスタンブロット分析)
PKRタンパク質を、PVDF膜に固定化し、そして節Cで概要を述べられたようにPKRキナーゼ活性について評価した後、同じ膜を、酵素増幅化学発光ウェスタンブロット分析を用いて総PKRタンパク質のレベルを評価するためにさらに処理した。この目的のために、1次抗体としてウサギポリクローナル抗PKR抗体(Santa Cruz Biotechnology,Inc.,Santa Crus,CAから入手した)を用いてインキュベートし、続いて、2次抗体として、抗ウサギフルオレセイン結合化ポリクローナル抗体を用いて検出し、次いで、抗フルオレセインアルカリホスファターゼ結合化3次抗体を用いて検出した。シグナルを、蛍光基質ECF(Aemrsharm)の添加によって増した。ウェスタンブロットを、Typhoon 8600 Variable Mode Analyzer(Molecular Dynamics)の画像分析能を用いて評価した。ECF反応を、532nmの励起波長でレーザーを用いて検出し、光学マルチパイパーチューブを、100ピクセルの媒体感度でセットされた装置の解像度で500ボルトにセットした。データを、ImageQuantソフトウェア(Molecular Dynamics version5.2)を用いて分析した。図3A、図3B、および図3Cに示される結果は、プライムおよび誘導された野生型Namalwa細胞と比較して、プライムおよび誘導されたPKR過剰発現Namalwa細胞(41.027.C1および41.027.A9)においてPKRタンパク質発現のレベルが2倍増加したことを示す。さらに、タンパク質発現の比較レベルとの活性データの相関は、プライムおよび誘導された野生型Namalwa細胞と比較した、プライムおよび誘導されたPKR過剰発現Namalwa細胞におけるPKR特異的活性の合計3倍〜5倍の増加を明らかにする(図4Aおよび図4B)。
【0179】
(実施例3)
(ウイルス性誘導またはポリI:Cでの処置に応答する、PKR過剰発現細胞株における増強されたインターフェロン産生)
Namalwa PKR++41.027細胞およびWT Namalwa細胞の個々のサブクローン由来の細胞を、6ウェルプレート中で24時間、細胞密度5.0×105細胞/mlで20nMの酢酸ミリスチン酸ホルボール(PMA)を用いて前処理し、続いて、500HAU/mlのセンダイウイルス、または200μg/mLのポリI:Cと10μg/mLのDEAEデキストランを用いてさらに72時間処理して、IFN発現を誘導した。センダイウイルス処理細胞由来の培養上清を、誘導後24時間および48時間で除去し、そしてポリI:C処理細胞由来の上清を、72時間で除去した。IFN−α産生を、ELISA(PBLから入手したHuman Interferon Alfa Multi−Species ELISA Kit)を用いてこれらの細胞培養上清中で測定した。
【0180】
図5は、図5に示されるような野生型Namalwa細胞によるIFN−α産生と比較して、NamalwaPKR++41.027細胞においてセンダイウイルスおよびポリI:C誘導の両方の後にIFN−α産生が高められることを例示する。IFN−α産生のレベルは、センダイウイルスでの誘導後、48時間で最も高く、この点で、NamalwaPKR++41.027細胞は、野生型Namalwa細胞よりも約4倍(4×)高いIFN−α産生を示した。同様に、ポリI:Cは、NamalwaPKR++41.027細胞中にIFNを誘導し得るが、親のNamalwa細胞中でIFN−α誘導は検出不可能である(図5)。
【0181】
対応する実験を、NamalwaPKR++41.027細胞およびWTNamalwa細胞の個々のサブクローンの二重培養物において実行した。これらの培養物をまた、6ウェルプレート中で24時間、5.0×105細胞/mlの細胞密度で20nMの酢酸ミリスチン酸ホルボールを用いて前処理し、続いて、500HAU/mlのセンダイウイルスまたはポリI:C(200μg/ml)と10μg/mlのDEAEデキストランを用いて処理した。さらに、これらの培養物をまた、PKRインヒビターの5mM 2−アミノプリン(2AP;Aldrich Chemical Companyから入手した)を用いて処理した。センダイウイルス誘導細胞由来の培養上清を、誘導後24時間で除き、そしてポリI:C誘導細胞由来の培養上清を、72時間で除き、そしてELISA(PBL Catalogue No.41105 Human Interferon Alfa Multi−Species ELISA Kit)を用いてIFNα産生について評価した。
【0182】
図5は、2−アミノプリンに曝された場合の、NamalwaPKR++41.027およびWT細胞におけるセンダイウイルスまたはポリI:C誘導後のIFN−α産生の減少を示す。この結果は、PKRキナーゼ活性の公知のインヒビターである2−アミノプリンが、IFN−α誘導を阻害し得ることを示す。同様に、2−アミノプリンは、ウイルスまたはポリI:Cによる他の前炎症サイトカインの誘導を阻害する(結果は示されていない)。
【0183】
(実施例4)
(ウイルス性誘導に対する応答におけるPKR過剰発現細胞株中の増強されたTNF−β産生)
NamalwaPKR++41.027細胞およびWTNamalwa細胞の個々のサブクローン由来の細胞を、6ウェルプレート中で、5.0×105細胞/mlの細胞密度で20nMの酢酸ミリスチン酸ホルボールを用いて、20時間前処理した。これに続いて、200μg/mlポリI:Cを用いてさらに72時間処理して、サイトカインの発現を誘導した。処理された細胞由来の培養上清を、誘導後72時間で除き、そしてELISA(R&D Systems)を介して、TNF−β、IL−6およびIL−8産生について評価した。
【0184】
図6は、野生型Namalwa細胞によるTNF−β、IL−6およびIL−8産生と比較して、NamalwaPKR++41.027細胞におけるポリI:C誘導後の増強されたTNF−β、IL−6、およびIL−8産生を例示する。NamalwaPKR++41.027細胞における誘導後72時間のTNF−β産生のレベルは、野生型Namalwa細胞よりも約3倍(3×)高いTNF−β産生を示した。同様に、ポリI:Cでの感染後72時間において、親のコントロールと比較して、41.027細胞において10倍より大きいIL−6およびIL−8が誘導された。
【図面の簡単な説明】
【0185】
【図1】図1Aは、Namalwa PKR++ 41.027細胞および野生型Namalwa細胞(WT)におけるポリI:C誘導に続くPKR発現のノーザンブロット分析を示す。(上段のパネル、レーン1およびレーン3−休止細胞から単離されたRNA、レーン2およびレーン4−ポリI:C処理された細胞由来のRNA;ならびに下段のパネルは臭化エチジウムを用いて染色されたゲルを示す)。
【0186】
図1Bは、Namalwa PKR++ 41.027細胞および野生型Namalwa細胞(WT)におけるセンダイウイルス(SV)誘導に続くPKR発現のノーザンブロット分析を示す。(上段のパネル、レーン1−SV感染したNam−WT細胞由来のRNA;レーン2−SV感染したNamalwa PKR++ 41.027細胞由来のRNA;および下段のパネルは臭化エチジウムを用いて染色されたゲルを示す)。
【図2A】図2Aは、PMA単独または48時間のポリI:C/DEAEデキストランにの前にPMAに20時間曝露した後のNamalwa−WTおよびNamalwa−PKR ++ 41.027細胞株を用いて実施した、SDS−PAGE PKR自己キナーゼ活性アッセイのオートラジオグラフィーの画像を示す。(レーン1〜レーン3−PMAを用いてプライムされたが、ポリI:C/DEAEデキストランを用いて誘導されていないサンプルを示す;レーン4〜レーン6は、ポリI:CおよびDEAEデキストランを用いた48時間の誘導にの前にPMAを用いてプライムさせたサンプルを示す。
【図2B】図2Bは、PMA単独または48時間のポリI:C/DEAEデキストランの前にPMAに20時間暴露した後の野生型Namalwa細胞(WT)中、ならびにNamalwa−PKR ++ 41.027をサブクローニングした子孫細胞株である41.027.A9および41.027.C1中におけるPKRキナーゼ活性を示す。
【図2C】図2Cは、PMA単独または48時間のポリI:C/DEAEデキストランの前にPMAに20時間暴露した後の野生型Namalwa細胞(WT)中、ならびにNamalwa−PKR ++ 41.027をサブクローニングした子孫細胞株である41.027.A9および41.027.C1中におけるPKRキナーゼ活性の増加倍率を示す。
【図3A】図3Aは、PMA単独または48時間のポリI:C/DEAEデキストランの前にPMAに20時間暴露した後の、野生型(WT)中、ならびにNamalwa−PKR ++ 41.027をサブクローニングした子孫細胞株である41.027.A9および41.027.C1中におけるPKR発現の蛍光ウェスタンブロット分析を示す。(レーン1〜レーン3−PMAを用いてプライムされたがポリI:C/DEAEデキストランを用いて誘導されていないサンプルを示す.レーン4〜レーン6は、48時間のポリI:CおよびDEAEデキストランを用いた誘導の前にPMAを用いてプライムされたサンプルを示す)。
【図3B】図3Bは、PMA単独または48時間のポリI:C/DEAEデキストランの前にPMAに20時間暴露した後の野生型Namalwa細胞(WT)中、ならびにNamalwa−PKR ++ 41.027をサブクローニングした子孫細胞株である41.027.A9および41.027.C1中におけるPKRタンパク質の相対レベルを示す。
【図3C】図3Cは、PMA単独または48時間のポリI:C/DEAEデキストランの前にPMAに20時間暴露した後の、野生型Namalwa細胞(WT)中、ならびにNamalwa−PKR ++ 41.027をサブクローニングした子孫細胞株である41.027.A9および41.027.C1中におけるPKRタンパク質の増加倍率を示す。
【図4A】図4Aは、PMA単独または48時間のポリI:C/DEAEデキストランの前にPMAに20時間暴露した後の、野生型Namalwa細胞(WT)、ならびにNamalwa−PKR ++ 41.027をサブクローニングした子孫細胞株である41.027.A9および41.027.C1中におけるPKRタンパク質の比活性を示す。
【図4B】図4Bは、PMA単独または48時間のポリI:C/DEAEデキストランの前にPMAに20時間暴露した後の、野生型Namalwa細胞(WT)、ならびにNamalwa−PKR ++ 41.027をサブクローニングした子孫細胞株である41.027.A9および41.027.C1中におけるPKR比活性の増加倍率を示す。
【図5】図5は、PMAプライミングおよび24時間または48時間のセンダイウイルス誘導に続く、野生型Namalwa細胞(WT)およびNamalwa PKR ++ 41.027細胞中のINF−α産生(データセット1〜3)、ならびにPMAプライミングおよび5mMの2−アミノプリン(2−AP)の存在下で24時間のセンダイウイルス誘導に続く、野生型Namalwa細胞(WT)およびNamalwa PKR ++ 41.027細胞中のINF−α産生(データセット4)を図示する。この図はさらに、PMAプライミングおよび72時間のポリI:C誘導に続く、野生型Namalwa細胞(WT)およびNamalwa PKR ++ 41.027細胞中のINF−α産生(データセット5)、ならびにPMAプライミングおよび5nMの2−アミノプリンの存在下で72時間のポリI:C誘導に続く、野生型Namalwa細胞(WT)およびNamalwa PKR ++ 41.027細胞中のINF−α産生(データセット6)を図示する。
【図6】図6は、Namalwa野生型(WT)およびNamalwa PKR過剰発現細胞株(41.027)の培養物中のTNF−β、IL−6およびIL−8サイトカインノンレベルの分析結果の概要を図示する。
Claims (24)
- ヒト細胞組成物であって、以下のプロセス:
(a)PKRおよび1つ以上のサイトカインを発現し得る親細胞株を提供する工程;
(b)該親細胞株を、複数のサブクローンを効果的に生成する様式で限界希釈クローニングに供する工程;
(c)PKR発現について該複数のサブクローンをアッセイする工程;ならびに
(d)該親細胞株のPKR発現レベルよりも少なくとも2倍(2×)大きい、PKR発現レベルによって同定されたPKR過剰発現サブクローンを選択し、そしてPKR過剰発現細胞株を生成するために該サブクローンを増殖する工程、
によって調製されるPKR過剰発現細胞を含む、ヒト細胞組成物。 - 請求項1に記載の細胞組成物であって、前記調製プロセスが、さらに以下の工程:
(e)前記PKR過剰発現細胞をプライミングする工程;および
(f)1つ以上のサイトカインの増大した発現によって特徴づけられる、PKR過剰発現細胞株を生成するために効果的な様式で、該プライム化PKR過剰発現細胞を増殖する工程、
を包含する、細胞組成物。 - 前記調製プロセスが、前記増殖工程(f)の前に前記プライム化PKR過剰発現細胞を処置する工程をさらに包含する、請求項2に記載の細胞組成物。
- 前記親細胞株が、少なくとも3回限界希釈クローニンングに供される、請求項1に記載の細胞組成物。
- 前記プライミング工程が、前記細胞を酢酸ミリスチン酸ホルボール(PMA)または酪酸ナトリウムと共に培養する工程を包含する、請求項2に記載の細胞組成物。
- 前記処置工程が、dsRNAを用いた非ウイルス性誘導を含む、請求項3に記載の細胞組成物。
- 前記処置工程が、センダイウイルスを用いたウイルス性誘導を含む、請求項3に記載の細胞組成物。
- 前記1つ以上のサイトカインが、α−インターフェロン、β−インターフェロン、TNF−β、IL−6、およびIL−8、IL−10、IFN−γ、IL−12およびGM−CSFからなる群から選択される、請求項3に記載の細胞組成物。
- 前記1つ以上のサイトカインが、α−インターフェロンまたはβ−インターフェロンを含む、請求項3に記載の細胞組成物。
- サイトカイン生成における使用のためのヒト細胞組成物であって、以下:
増強されたPKR生成およびサイトカイン生成を生じるために効果的な様式で、処置および誘導されたPKR過剰発現細胞であって、該細胞が、対応する親細胞株によって生成されるより少なくとも2倍以上の、1つ以上のサイトカインの発現または生成レベルによって特徴づけられる、PKR過剰発現細胞、
を含む、ヒト細胞組成物。 - PKRを過剰発現する細胞株を生成する方法であって、該方法が以下:
(a)PKRおよび1つ以上のサイトカインを発現し得る親細胞株を提供する工程;
(b)該親細胞を、複数のサブクローンを生成するために効果的な様式で、限界希釈クローニングに供する工程;
(c)PKR発現について該複数のサブクローンをアッセイする工程;および
(d)該親細胞株のPKR発現レベルよりも少なくとも2倍(2×)以上のPKR発現レベルによって同定されるPKR過剰発現サブクローンを選択する工程;および
(e)PKR過剰発現細胞株を生成するために該サブクローンを増殖する工程、
を包含する、方法。 - 前記増殖工程の前に、前記PKR過剰発現細胞株をプライミングする工程をさらに包含する、請求項11に記載の方法。
- 前記増殖工程の前に、前記プライム化PKR過剰発現細胞株を誘導する工程をさらに包含する、請求項12に記載の方法。
- 前記プライミング工程が、前記PKR過剰発現細胞を、酢酸ミリスチン酸ホルボール(PMA)または酪酸ナトリウムと共に培養する工程を包含する、請求項12に記載の方法。
- 前記誘導する工程が、dsRNAを用いた非ウイルス性誘導およびセンダイウイルスを用いたウイルス性誘導を含む、請求項13に記載の方法。
- 前記増殖工程が、1つ以上のサイトカインの増大した発現により特徴付けられるPKR過剰発現細胞株を生成するために効果的な様式である、請求項11に記載の方法。
- 前記1つ以上のサイトカインが、α−インターフェロン、β−インターフェロン、TNF−β、IL−6およびIL−8からなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
- 前記1つ以上のサイトカインが、α−インターフェロンまたはβ−インターフェロンを含む、請求項16に記載の方法。
- 高められたサイトカイン生成のためのヒト細胞組成物であって、以下を包含するプロセス:
(a)PKRならびに生物学活性形態のヒトPKRのための第1のコード配列および選択マーカーのための第2のコード配列を含む異種核酸構築物を発現し得る親細胞を提供する工程;
(b)PKRおよび該選択マーカーの発現を生じるために効果的な様式で、該親細胞株に前記異種核酸配列構築物を導入する工程;
(c)該形質転換親細胞を、PKRの発現を高めるために効果的な条件下で培養する工程;
(d)形質転換PKR過剰発現細胞を選択する工程であって、該PKR過剰発現細胞が、非形質転換親細胞株のPKR発現レベルの少なくとも2倍(2×)以上である、PKR発現レベルによって同定される、工程;
(e)該選択されたPKR過剰発現細胞を増殖する工程;ならびに
(f)該選択を繰り返し、そして1つ以上のサイトカインの高められた発現によって特徴づけられるPKR過剰発現子孫細胞株を生成するために増殖する工程、
によって、調製されるPKR過剰発現細胞を含む、ヒト細胞組成物。 - 前記調製プロセスが、前記PKR過剰発現細胞をプライミングする工程、および前記増殖工程の前に該プライム化PKR過剰発現細胞を処置する工程をさらに包含する、請求項19に記載の細胞組成物。
- 前記プライミング工程が、前記細胞を、酢酸ミリスチン酸ホルボール(PMA)または酪酸ナトリウムとともに培養する工程を包含する、請求項20に記載の細胞組成物。
- 前記処置工程が、dsRNAを用いた非ウイルス性誘導またはセンダイウイルスを用いたウイルス性誘導を含む、請求項20に記載の細胞組成物。
- 前記1つ以上のサイトカインが、α−インターフェロン、β−インターフェロン、TNF−β、IL−6およびIL−8、IL−10、IFN−γ、IL−12およびGM−CSFからなる群から選択される、請求項19に記載の細胞組成物。
- 前記1つ以上のサイトカインが、α−インターフェロンまたはβ−インターフェロンを含む、請求項19に記載の細胞組成物。
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
US25658600P | 2000-12-19 | 2000-12-19 | |
PCT/US2001/050553 WO2002062837A2 (en) | 2000-12-19 | 2001-12-19 | Cells with enhanced pkr expression for increasing cytokine production |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2005500816A true JP2005500816A (ja) | 2005-01-13 |
Family
ID=22972799
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002563189A Pending JP2005500816A (ja) | 2000-12-19 | 2001-12-19 | サイトカイン産生を増加するための増大したpkr発現を有する細胞 |
Country Status (4)
Country | Link |
---|---|
US (1) | US20020115212A1 (ja) |
JP (1) | JP2005500816A (ja) |
AU (1) | AU2002251714A1 (ja) |
WO (1) | WO2002062837A2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US20210340501A1 (en) * | 2018-08-27 | 2021-11-04 | The Regents Of The University Of California | Methods to Control Viral Infection in Mammalian Cells |
Family Cites Families (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US5840565A (en) * | 1995-08-22 | 1998-11-24 | The Regents Of The University Of California | Methods for enhancing the production of viral vaccines in PKR-deficient cell culture |
CA2376487A1 (en) * | 1999-06-15 | 2000-12-21 | Allan S. Lau | Methods for enhancing the production of cytokines in cell culture |
-
2001
- 2001-12-19 JP JP2002563189A patent/JP2005500816A/ja active Pending
- 2001-12-19 US US10/029,653 patent/US20020115212A1/en not_active Abandoned
- 2001-12-19 WO PCT/US2001/050553 patent/WO2002062837A2/en active Application Filing
- 2001-12-19 AU AU2002251714A patent/AU2002251714A1/en not_active Abandoned
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
US20020115212A1 (en) | 2002-08-22 |
WO2002062837A2 (en) | 2002-08-15 |
WO2002062837A3 (en) | 2003-02-06 |
AU2002251714A1 (en) | 2002-08-19 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
Holmes et al. | Sema7A is a potent monocyte stimulator | |
CA2229405C (en) | Methods for enhancing the production of interferon in cell culture | |
Masumi et al. | IRF‐8/ICSBP and IRF‐1 cooperatively stimulate mouse IL‐12 promoter activity in macrophages | |
Jaramillo et al. | Molecular Biology: The Interferon System: A Review with Emphasis on the Role of PKR in Growth Control | |
US20050208474A1 (en) | Method and cell composition for screening compounds for anti-inflammatory activity | |
AU6403700A (en) | Methods for enhancing the production of cytokines in cell culture | |
EP1214399B1 (en) | High level cytokine production with enhanced cell viability | |
US20080176223A1 (en) | Methods and compositions for modulating telomerase reverse transcriptase (TERT) expression | |
JP2005500816A (ja) | サイトカイン産生を増加するための増大したpkr発現を有する細胞 | |
US20020150541A1 (en) | Compositions comprising mixtures of therapeutic proteins and methods of producing the same | |
US20070122401A1 (en) | Methods and compositions for modulating telomerase reverse transcriptase (tert) expression | |
JP2004537269A (ja) | 細胞の生存性の増強を伴う高レベルのサイトカイン産生 | |
US20030129162A1 (en) | Compositions comprising mixtures of therapeutic proteins and methods of producing the same | |
US20020150552A1 (en) | Compositions comprising mixtures of therapeutic proteins and methods of producing the same | |
US20050250186A1 (en) | Methods and compositions for modulating telomerase reverse transcriptase (TERT) expression | |
Ishihara et al. | Preparation of recombinant rat interleukin-5 by baculovirus expression system and analysis of its biological activities | |
Knies et al. | Expression of EMAP II in the developing and adult mouse | |
DaSilva et al. | Molecular cloning of FKHRL1P2, a member of the developmentally regulated fork head domain transcription factor family | |
US6855519B2 (en) | Methods for enhancing the production of interferon in cell culture | |
AU2002245326A1 (en) | High level cytokine production with enhanced cell viability | |
WO2019024875A1 (zh) | 直接或间接调控yb-1磷酸化的物质在制备治疗炎性因子所致疾病的药物方面的应用 | |
Pavicic Jr et al. | Tristetraprolin Regulates CXCL1 (KC) | |
TW200412996A (en) | Compositions comprising mixtures of therapeutic proteins and methods of producing the same |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20041216 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20071012 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20080306 |