JP2005340014A - イオントラップ質量分析装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】試料を測定する際に、イオントラップ部内で試料の吸着、分解の発生を抑制することが可能なイオントラップ質量分析装置を実現する。
【解決手段】エンドキャップ電極1は銅を材料で、エンドキャップ電極2はモリブデンを材料で、リング電極3はステンレス鋼で製作される。熱伝導率は、銅がステンレス鋼より高くモリブデンは銅とステンレス鋼との中間程度である。イオントラップ部の温度は加熱ブロック4から熱により制御される。加熱ブロック4からの熱供給の受けやすさはイオントラップ部の配置、構造に由来しては、リング電極3、エンドキャップ電極2、エンドキャップ電極1の順であり、各電極の熱伝導率からはエンドキャップ電極1、エンドキャップ電極2、リング電極3であるため、熱放射の較差が補正され、材質を一種類とするよりも、電極間の温度差を縮小することができる。
【選択図】 図2
【解決手段】エンドキャップ電極1は銅を材料で、エンドキャップ電極2はモリブデンを材料で、リング電極3はステンレス鋼で製作される。熱伝導率は、銅がステンレス鋼より高くモリブデンは銅とステンレス鋼との中間程度である。イオントラップ部の温度は加熱ブロック4から熱により制御される。加熱ブロック4からの熱供給の受けやすさはイオントラップ部の配置、構造に由来しては、リング電極3、エンドキャップ電極2、エンドキャップ電極1の順であり、各電極の熱伝導率からはエンドキャップ電極1、エンドキャップ電極2、リング電極3であるため、熱放射の較差が補正され、材質を一種類とするよりも、電極間の温度差を縮小することができる。
【選択図】 図2
Description
本発明は、イオントラップ質量分析装置に関する。
イオントラップ質量分析装置は、ガスクロマトグラフ/質量分析装置、液体クロマトグラフ/質量分析装置におけるイオン検出手段として用いられ、測定対象物質は有機化合物が主体である。
ガスクロマトグラフ/質量分析装置は、ガスクロマトグラフ部分を通過しうる、通常分子量が1000以下の揮発しやすい成分の分析に用いられ、医薬、化学材料、環境汚染物質などの定性、定量分析に好適である。
また、液体クロマトグラフ/質量分析装置は、熱により変性しやすく、気化させて分析することが難しい試料の分析に好適であり、特に、高分子物質、生体関連の物質の定性、定量分析に適する。
イオントラップ質量分析装置の構成は一般に下記の通りである。
(1)液体クロマトグラフやガスクロマトグラフなどの、イオントラップ質量分析装置に試料を導入するための装置が設けられている。
(1)液体クロマトグラフやガスクロマトグラフなどの、イオントラップ質量分析装置に試料を導入するための装置が設けられている。
(2)試料をイオン化するための機構としてのイオン化部が設けられ、ガスクロマトグラフ/質量分析装置のイオン化法にはEI(電子イオン化)及びCI(化学イオン化)があり、液体クロマトグラフ/質量分析装置にはESI(エレクトロスプレイ)、APCI(大気圧化学イオン化)などのイオン化法が実用化されている。
(3)質量/電荷の比で試料イオンを分離するイオントラップ部が設けられている。
(4)試料イオンの強度を測定する二次電子増倍管などの検出器が設けられている。
(5)試料のマススペクトル、クロマトグラムなどを作るデータ処理部が設けられている。
上述したイオントラップ質量分析装置のイオントラップ部には、2個のエンドキャップ電極と、1個のリング電極とが配置され、これらエンドキャップ電極とリング電極とは、通常、互いに同じ材質の金属が用いられる。
これら電極の材質として、一般的には、最も普及している素材の1つであるステンレス鋼が用いられている。
これらの電極は測定対象物質の蒸気圧、耐熱性などの性質に合わせて、ヒータにより室温〜300℃の範囲の温度に制御されるのが普通である。ステンレス鋼は熱伝導度が19W/m・K(300Kにおいて)であり、素材として用いることができる金属の中でも高くない部類に属する。
イオントラップ部の材質にステンレス鋼のように熱伝導度が特に高くない材質を用いた場合、イオントラップ部の温度均一性が保たれにくく、コールドスポットやホットスポットが生じやすいが、蒸気圧の高い試料あるいは熱分解を生じにくい試料の測定では、イオントラップ部の温度の不均一の影響は少なく、分析に大きな障害はない。
しかし、熱分解性が高い、あるいは蒸気圧が低い試料の場合、イオントラップ部の温度均一性が保たれないと、試料はイオントラップ部の電極内側の表面での吸脱着反応の過程で、熱による劣化あるいは分解を受けることがある。
この場合にデータを測定したときには、クロマトグラムのピークのテーリング、感度低下、再現性の悪化、マススペクトルの変化として現れ、分析精度の低下につながる。
このため、2個のエンドキャップ電極、1個のリング電極の温度差を可能な限り少なくし、コールドスポットやホットスポットがない構造とすることが望ましい。また、これらの電極表面は不活性化されていることも重要である。
そこで、イオントラップ質量分析装置の各電極の温度差をなくし、分析精度の向上を図る技術が特許文献1に記載されている。この特許文献1記載の技術では、2個のエンドキャップ電極と1個のリング電極の各々に温度センサを設置し、各電極が均一な温度となるように、加熱保温制御する方法である。
また、イオン化部、イオントラップ電極に吸着し、あるいは熱分解により劣化するのを防ぐためにその表面処理、材質の改良に関する技術が、特許文献2に記載されている。この特許文献2記載の技術は、イオン化室内での分析物の吸着、分解を防ぎ、望ましくないイオン−表面の反応を低減するために、化学イオン化室の少なくとも内側表面に被着、メッキ、コーティングによりモリブデンを設ける方法である。
また、特許文献3には、イオントラップまたはイオン化チャンバーの内側面をその表面と接触する試料の吸着、劣化、分解を最小にするように表面の不活性のために、けい素などの不活性な無機の非金属絶縁材または半導体材料でコーティングを施すことが開示されている。
また、特許文献4には、イオントラップ、イオン化チャンバーと接触した試料の劣化または分解を防ぐためにクロムまたは酸化クロムの表面を用いることが開示されている。
さらに、特許文献5にはイオントラップ質量分析装置の電極の腐食を防止するため、モリブデンの電極表面に銅合金をメッキ、またはコーティング処理することが開示されている。
これら特許文献1〜5に記載された技術は、試料が接触する表面を不活性化することにより、熱分解性の試料及び蒸気圧の低い試料の分析において試料の吸着、分解を改善する上で効果のあるものである。
ところで、エンドキャップ電極は、イオントラップ部を真空チャンバーに支持するための支柱と直接接触し、かつ、真空チャンバーの壁面に対して10〜20mmの距離に配置される。このため、イオン化部側のエンドキャップ電極の熱は上記支柱を介して真空チャンバーに伝導し易い。
これに対してイオン出射側のエンドキャップ電極は、近傍に検出器以外の構造物が少なく、かつ真空チャンバーの壁面に対して100mm以上の距離に配置されるため、イオン出射側のエンドキャップ電極は、イオン化部側のエンドキャップ電極に比較して放熱が少ない。
また、リング電極は、2個のエンドキャップ電極に挟まれた状態、つまり、加熱ブロックの中心に内蔵された状態で配置されているため、2個のエンドキャップ電極からの輻射熱が供給される。
これら3個の電極に同じ材質を用いた場合、通常、電極の温度は、リング電極、イオン出射側のエンドキャップ電極、イオン化部側のエンドキャップの順に高くなる。
リング電極とイオン化部側の温度差が30℃を超えると、試料の吸着や熱分解といった分析精度を低下させる現象が発生しやすくなる。
しかしながら、上述した従来技術にあっては、イオントラップ部の各電極には互いに同じ材質を用いているため、各電極の温度差を改善するためにはまだ十分とは言えない。
特に、試料のイオン化がイオントラップ部内部で行われるいわゆる内部イオン化方式の質量分析装置に対しては上記現象が顕著に現れるため、改善が重要な課題である。
本発明の目的は、試料を測定する際に、イオントラップ部内で試料の吸着、分解の発生を抑制することが可能なイオントラップ質量分析装置を実現することである。
上記目的を達成するため、本発明は次のように構成される。
(1)イオン化部側に配置されるエンドキャップ電極と、このイオン化部側のエンドキャップ電極に対向し、イオン射出側に配置されるエンドキャップ電極と、これらイオン化部側エンドキャップ電極とイオン射出側エンドキャップ電極との間に配置されるリング電極とを有するイオントラップ部を備えるイオントラップ質量分析装置において、上記イオン化部側エンドキャップ電極の熱伝導率とイオン射出側エンドキャップ電極の熱伝導率とは、上記リング電極の熱伝導率より高い。
(2)好ましくは、上記(1)において、上記イオン化部側エンドキャップ電極の熱伝導率は、上記イオン射出側エンドキャップ電極の熱伝導率より高い。
(3)また、好ましくは、上記(1)において、上記イオン化部側エンドキャップ電極の材質と、上記イオン射出側エンドキャップ電極の材質は、銅であり、上記リング電極の材質はステンレス鋼である。
(4)また、好ましくは、上記(2)において、上記イオン化部側エンドキャップ電極の材質は銅であり、上記イオン射出側エンドキャップ電極の材質はモリブデンであり、上記リング電極の材質はステンレス鋼である。
(5)また、好ましくは、上記(1)〜(4)において、上記イオン化部側エンドキャップ電極の表面と、上記イオン射出側エンドキャップ電極の表面と、上記リング電極の表面とは、クロム又はクロム合金によりコーティングされている。
(6)また、好ましくは、上記(1)〜(4)において、上記イオン化部側エンドキャップ電極と、上記イオン射出側エンドキャップ電極と、上記リング電極とは、ヒータ及び温度センサを有する加熱ブロックにより収容され、この加熱ブロックは、上記温度センサにより検出された温度に基づいて、加熱温度が制御される。
イオントラップ質量分析装置において、2個のエンドキャップ電極に熱伝導率の比較的高い金属と中間の金属、例えば銅とモリブデンを用い、リング電極に熱伝導率の比較的小さい金属、例えばステンレス鋼を用いることにより、イオントラップ部の構造に由来する各電極の温度差を縮小し、測定試料の吸着、劣化、分解が低減され、測定データが改善される。
本発明によれば、試料を測定する際に、イオントラップ部内で試料の吸着、分解の発生を抑制することが可能なイオントラップ質量分析装置を実現することができる。
つまり、熱分解性あるいは蒸気圧の低い試料の質量分析装置による測定において、複雑な加熱機構を用いなくともイオントラップ部の温度を均一化することができ、試料の吸着、分解、劣化が低減し、クロマトグラムのピークのテーリング、感度低下、再現性の悪化、マススペクトルの変化を改善することができる。
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。なお、本発明の実施形態については、本発明をガスクロマトグラフ/イオントラップ質量分析装置に適用した場合を例として説明する。
図1は、ガスクロマトグラフ/イオントラップ質量分析装置の概略構成図である。図1において、イオントラップ部は、真空ポンプ14により、10−3Pa以下の真空度に保たれた真空チャンバー9内に設置される。真空チャンバー9の外側は大気圧下である。
2個のエンドキャップ電極1、2と1個のリング電極3とは加熱ブロック4に収納されており、加熱ブロック4にはヒータ5と温度センサ6とが設置されている。加熱ブロック4にはヒータ5により熱が供給され、これら3個の電極1、2、3は加熱ブロック4の熱伝導により、加熱保温されている。
2個のエンドキャップ1、2のうち、EI電子銃7などを用いたイオン化部側のエンドキャップ電極1はイオントラップ部を真空チャンバー9に保持するための支柱8と、直接接し、かつ真空チャンバー9の壁面に対し10〜20mmの距離にある。
これに対し、イオン化部側のエンドキャップ電極1と対向するイオン出射側のエンドキャップ電極2は、その近傍に検出器10以外の構造物がなく、真空チャンバー9の壁面からの距離は通常100mm以上確保され開放された真空空間に面している。一方、リング電極3は、2個のエンドキャップ電極1、2に挟み込まれた構造となっている。
次に、イオントラップ質量分析装置の動作について説明する。
ガスクロマトグラフ/質量分析装置では、質量分析装置内部の10−3Pa以下の真空度に保たれた質量分析装置内の真空チャンバー9中に置かれたイオン化部に、ガスクロマトグラフ13から気体状となった試料がフューズドシリカなどの細管(内径0.1〜0.32mm)を通して導入される。
ガスクロマトグラフ/質量分析装置では、質量分析装置内部の10−3Pa以下の真空度に保たれた質量分析装置内の真空チャンバー9中に置かれたイオン化部に、ガスクロマトグラフ13から気体状となった試料がフューズドシリカなどの細管(内径0.1〜0.32mm)を通して導入される。
イオン化法がEIの場合、試料分子に熱電子が照射されることにより試料分子は電子を放出し、一価またはそれ以上の価数の陽イオンとなる。同時に試料分子は構造に応じて開裂イオンを生じる。なお、イオン化法がCIの場合には、試料に試薬ガスイオンとしてのメタン、イソブタンの陽イオンを反応させ、主に試料分子にプロトンH+が付いた分子イオンを生成させる。
このようにして生成した試料由来のイオンはイオントラップ部に導かれる。リング電極3には約1MHzの周波数の高周波電圧が印加され、2個のエンドキャプ電極1、2に対しては直流電圧が印加される。この結果、これらの3個の電極1、2、3に囲まれた空間に3次元の電界が形成される。
試料イオンは、互いに対向するエンドキャップ電極1、2の軸方向とそれに垂直な径方向に加速、減速され、捕捉される。このようにして試料イオンをイオントラップ部に一定時間捕捉したのち、リング電極3に印加する高周波電圧の振幅を増大させることにより試料イオン運動を不安定化させ、質量/電荷比ごとにエンドキャップ電極1、2から取り出し、試料イオンの質量分離を行う。
イオントラップ部から取り出されたイオンは検出部10である二次電子増倍管に達し、質量/電荷比ごとに信号強度を測定する。データ処理部16では、これらのマススペクトルデータを記録し、定性・定量分析を行う。
なお、制御部15は、装置全体の動作制御を行い、温度センサ6により検出された温度に基づいて、ヒータ5の加熱動作制御も行う。
図2は、図1に示したイオントラップ部の詳細図である。
図2において、イオン化部はEIイオン源7と、このイオン源7から放出された熱電子を集束する集束レンズ電極18とを備える。ガスクロマトグラフ13から気体状となった試料はフューズドシリカなどからなるカラム12を通して、イオントラップ部内に導入される。
図2において、イオン化部はEIイオン源7と、このイオン源7から放出された熱電子を集束する集束レンズ電極18とを備える。ガスクロマトグラフ13から気体状となった試料はフューズドシリカなどからなるカラム12を通して、イオントラップ部内に導入される。
そして、イオントラップ部内において、試料分子に熱電子が照射されることにより試料分子は電子を放出し、一価またはそれ以上の価数の陽イオンとなる。試料イオンはイオントラップ部から放出されたのち、試料イオンの集束レンズ電極17を通過して、2次電子増倍管などの検出部10に到達してイオン検出される。
ここで、エンドキャップ電極1は、銅を材料として製作される。また、エンドキャップ電極2は、モリブデンを材料として製作され、リング電極3はステンレス鋼で製作されている。なお、エンドキャップ電極1の材質である銅の熱伝導率は、リング電極3の材質であるステンレス鋼の熱伝導率より高く、エンドキャップ電極2の材質であるモリブデンの熱伝導率は、電極1と電極3の中間程度である。
上記電極1、2、3の表面の少なくともイオントラップ空間側の表面は、クロム又はクロム合金によりコーティングされる。このクロム又はクロム合金による表面処理11は、メッキ、コーティングまたは表面の均一性を持たせたクロムの薄板を接着することで行う。
ヒータ5により加熱される加熱ブロック4は、アルミナセラミックスなどの絶縁材で製作されている。ヒータ5は少なくとも1個あればよく、形状は棒状あるいはリング状でもよい。エンドキャップ電極1とエンドキャップ電極2及びリング電極3は印加された電圧がリークしないように十分な縁面距離を持って加熱ブロック4に設置されており、加熱ブロック4からの熱伝導によって加熱保温される。
そして、イオントラップ部の温度は加熱ブロック4に設置された温度センサ6によりモニタされ、ヒータ5に供給する電流が制御部15により制御される。イオントラップ部の温度は、測定試料に応じて100〜250℃の範囲で制御される。
本発明の一実施形態のように、エンドキャップ電極1の熱伝導率が、リング電極3の熱伝導率より高く、エンドキャップ電極2の熱伝導率は、電極1と電極3の中間程度となるように各電極の材質を特定した場合と、本発明とは異なり、電極1、2、3を同一の材質とし、熱伝導率の大小関係を特定しない場合との質量分析装置の感度を比較した結果について説明する。
図3、図4は、本発明の一実施形態による分析結果を従来技術と比較した農薬の一測定例であり、図3が電極1、2、3を同一の材質とし、熱伝導率の大小関係を特定しない場合の例であり、図4が本発明の一実施形態による場合の例である。
図3に示した例においては、保持時間が後半の3成分である11番目のイソキサチオン、12番目のCNP、13番目のEPNについては、実際には、他の成分と同じ濃度にも関わらず、イオントラップ電極への吸着、熱分解のため十分な感度が得られていない(イオン強度は2500程度)。
これに対して、図4に示す本発明の一実施形態の場合、上記3成分である11番目のイソキサチオン、12番目のCNP、13番目のEPNについての感度が、図3に示した場合の例と比較して、2〜3倍程度増大し(イオン強度5500〜6000程度)、他の成分とほぼ同等の感度が得られていることがわかる。
ここで、本発明のように、エンドキャップ電極1の熱伝導率が、リング電極3の熱伝導率より高く、エンドキャップ電極2の熱伝導率は、電極1と電極3の中間程度となるようにするための材質の選択について説明すると共に、本発明により、感度が向上することの理由について説明する。
銅は、その熱伝導率が381W/m・K(300Kにおいて)であり、金属材料の中では最も高い熱伝導率を有する金属の部類に属する。また、ステンレス鋼は、その熱伝導率が19W/m・K(300Kにおいて)であり、熱伝導率が比較的低い金属である。また、モリブデンは、その熱伝導率が127W/m・K(300Kにおいて)であり、銅とステンレス鋼との中間の熱伝導率を持つ。
これらの金属材料はイオントラップ部電極1、2、3の材質として持たなければならない強度、電気特性、耐薬品性、耐熱性、熱膨張率などの特性を併せ持っている。
表1は、イオントラップ電極として使用可能な金属材料と熱伝導率の分布を示す表である。表1において、括弧内の数値は300Kにおける熱伝導率(単位はW/m・K)である。
表1に示した熱伝導率から、2個のエンドキャップ電極1、2のうちイオン化部側の電極1の材質を銅にして、イオン出射側の電極2の材質をモリブデンにする。そして、リング電極3の材質をステンレス鋼にすることにより、加熱ブロック4からの熱の供給の受けやすさは、イオン化部側のエンドキャップ電極1、イオン出射側のエンドキャップ電極2、リング電極3の順となる。
この結果、先に説明したイオントラップ部の配置、構造に由来する各電極の熱伝導は、リング電極3、イオン出射側のエンドキャップ電極2、イオン化部側のエンドキャップ電極1の順であるので、各電極の熱伝導率を、上述のように規定すれば、熱放射の較差が補正され、材質を一種類とするよりも、電極間の温度差を縮小することができる。
したがって、本発明によれば、各電極1、2、3にヒータ及び温度センサを設置し、個別に加熱保温する手段を用いなくとも、1個の加熱ブロック4と少なくとも1個のヒータ5と温度センサ6を用いれば、イオントラップ電極1、2、3のお互いの温度差を10℃以内に収め、コールドスポットやホットスポットのない温度の均一なイオントラップ部を構成することが可能である。
また、上述して一実施形態のように、電極1、2、3の表面に有機化合物に対して不活性な金属である100%クロムまたはクロムを含む合金をメッキ、コーティングにより表面処理を行うか、または数mmの厚さの板にして接着することにより表面の不活性度を増大させれば、試料の熱分解や吸着を抑える効果が増大する。
このように、本発明の実施形態によれば、イオントラップ質量分析装置において、農薬のような熱分解性及び吸着性が高い成分の吸着、分解、劣化が低減でき、分析精度の向上を図ることができることがわかる。
なお、上述した例においては、エンドキャップ電極1を銅、エンドキャップ電極2をモリブデンとしたが、エンドキャップ電極1とエンドキャップ電極2とを同一種の銅で製作した場合にも、各電極の温度差は10℃以内となり、エンドキャップ電極1とエンドキャップ電極2に異種の金属材料を使う場合とほぼ同様の効果が得られる。
また、上述した例は、本発明をガスクロマトグラフ/質量分析装置に適用した場合の例であるが、本発明は、液体クロマトグラフ/質量分析装置に適用しても、同様な効果を得ることができる。
1 イオン化部側のエンドキャップ電極
2 イオン射出側のエンドキャップ電極
3 リング電極
4 加熱ブロック
5 ヒータ
6 温度センサ
7 EI電子銃
8 支柱
9 真空チャンバー
10 検出部
11 クロムクロムメッキ部分
12 カラム
13 ガスクロマトグラフ
14 真空ポンプ
15 制御部
16 データ処理部
17、18 集束レンズ電極
2 イオン射出側のエンドキャップ電極
3 リング電極
4 加熱ブロック
5 ヒータ
6 温度センサ
7 EI電子銃
8 支柱
9 真空チャンバー
10 検出部
11 クロムクロムメッキ部分
12 カラム
13 ガスクロマトグラフ
14 真空ポンプ
15 制御部
16 データ処理部
17、18 集束レンズ電極
Claims (6)
- イオン化部側に配置されるエンドキャップ電極と、このイオン化部側のエンドキャップ電極に対向し、イオン射出側に配置されるエンドキャップ電極と、これらイオン化部側エンドキャップ電極とイオン射出側エンドキャップ電極との間に配置されるリング電極とを有するイオントラップ部を備えるイオントラップ質量分析装置において、
上記イオン化部側エンドキャップ電極の熱伝導率とイオン射出側エンドキャップ電極の熱伝導率とは、上記リング電極の熱伝導率より高いことを特徴とするイオントラップ質量分析装置。 - 請求項1記載のイオントラップ質量分析装置において、上記イオン化部側エンドキャップ電極の熱伝導率は、上記イオン射出側エンドキャップ電極の熱伝導率より高いことを特徴とするイオントラップ質量分析装置。
- 請求項1記載のイオントラップ質量分析装置において、上記イオン化部側エンドキャップ電極の材質と、上記イオン射出側エンドキャップ電極の材質は、銅であり、上記リング電極の材質はステンレス鋼であることを特徴とするイオントラップ質量分析装置。
- 請求項2記載のイオントラップ質量分析装置において、上記イオン化部側エンドキャップ電極の材質は銅であり、上記イオン射出側エンドキャップ電極の材質はモリブデンであり、上記リング電極の材質はステンレス鋼であることを特徴とするイオントラップ質量分析装置。
- 請求項1〜4のうちのいずれか一項記載のイオントラップ質量分析装置において、上記イオン化部側エンドキャップ電極の表面と、上記イオン射出側エンドキャップ電極の表面と、上記リング電極の表面とは、クロム又はクロム合金によりコーティングされていることを特徴とするイオントラップ質量分析装置。
- 請求項1〜4のうちのいずれか一項記載のイオントラップ質量分析装置において、上記イオン化部側エンドキャップ電極と、上記イオン射出側エンドキャップ電極と、上記リング電極とは、ヒータ及び温度センサを有する加熱ブロックにより収容され、この加熱ブロックは、上記温度センサにより検出された温度に基づいて、加熱温度が制御されることを特徴とするイオントラップ質量分析装置。
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JP2010048556A (ja) * | 2008-08-19 | 2010-03-04 | Nishikawa Keisoku Kk | 化学剤検出・定量方法 |
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2004
- 2004-05-27 JP JP2004157879A patent/JP2005340014A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2010048556A (ja) * | 2008-08-19 | 2010-03-04 | Nishikawa Keisoku Kk | 化学剤検出・定量方法 |
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