JP2005301188A - 吸音構造体 - Google Patents
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Abstract
【課題】 軽量かつ形状自由度が高く、小型化、薄型化された機器にも容易に組み込むことが可能であり、低音においても吸音効率が著しく低下することのない吸音体を提供する。
【解決手段】 この吸音構造体は、空気よりも粘性の高い高粘性気体が充填されたガスバリア性包囲体1の内部に、気体の粘性抵抗を直接的あるいは間接的に利用した吸音効果を有する吸音体8Aが封入されている吸音構造体であって、そのガスバリア性包囲体の壁面の少なくとも一部が柔軟に変形可能あるいは可動に形成されていることを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】 この吸音構造体は、空気よりも粘性の高い高粘性気体が充填されたガスバリア性包囲体1の内部に、気体の粘性抵抗を直接的あるいは間接的に利用した吸音効果を有する吸音体8Aが封入されている吸音構造体であって、そのガスバリア性包囲体の壁面の少なくとも一部が柔軟に変形可能あるいは可動に形成されていることを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
本発明は、空気中を伝搬する音波を効率的に吸収する吸音構造体に関する。
スピーカーシステムや、スピーカーを内蔵したテレビ受像機、ラジオ受信機、等の電気機器において、振動板の振動を音波として効率的に空間に放射するためには、振動板の背面から放射された音波と振動板の前面から放射された音波が互いに打ち消し合うことを防ぐ必要があり、このため、振動板の背面から放射された音波の伝搬を容器内に閉じ込める手段としてスピーカーボックスや容器状の電気機器筐体が使用され、振動板の背面から放射された音波を吸収し減衰させる手段として吸音材が使用される。吸音材は、スピーカーボックス内や容器状の電気機器筐体内に定在波が発生して特定の周波数の音波が強められたり弱められたりすることにより聞きづらい音となるのを防ぐ目的にも使用される。
スピーカーシステムや、スピーカーを内蔵した電気機器に使用される吸音材としては、グラスウール、フェルト、等の繊維集合体や、発泡ポリウレタン、等の多孔質体が一般的である。これらの繊維集合体や多孔質体は、軽量であり且つ任意の寸法に容易に切断できるので、機器の小型軽量化、薄型化の障害にならないという利点を有している。また、これらの繊維集合体や多孔質体は、柔軟であるので、扁平且つ複雑な形状の機器筐体内部に組み込む場合にも、特別な形状加工を施すことなく自在に変形させて配置することが可能であるという利点を有している。
これらの繊維集合体や多孔質体においては、それらの内部に形成されている細密且つ複雑に入り組んだ形状の空間を、気体粒子が移動する際の粘性抵抗すなわち通気抵抗により音波の振動エネルギーが消費吸収される。しかしながら、通気抵抗を利用した吸音材は、気体粒子の振動速度が低い低周波の音波に対しては、通気抵抗の減少により吸音効率が著しく低下するという問題を有している。
低周波の音波に対して吸音効率が著しく低下することを防ぐ方法としては、音響共鳴構造を利用する方法が一般的である。例えばヘルムホルツ共振器は、共振周波数において、共振器首部及び開口部近傍の気体粒子の振動速度が増加するので、気体内部及び気体と共振器壁との間の粘性抵抗による摩擦が増加し、音波の振動エネルギーを減衰させるという吸音効果を有している。特許文献1には、部分的にヘルムホルツ共振器を形成した吸音構造体が開示されている。特許文献1によれば、800Hzよりも小さな種々の周波数の音波吸収を実現することができるとされている。
特許文献2請求項2には、特定周波数に吸音特性を有する繊維体を2層以上積層するとともに、各層の表面位置の間隔が吸音特性を設定した周波数の1/4波長の差だけ空いている構成、若しくは、特性周波数の設定をした各層の厚さが該特定周波数の1/40〜1/8波長の厚さであり、その後部の次の特定周波数の繊維体の表面までの空間に特定周波数の設定をしていない吸音材を位置させる構成の吸音材が開示されている。特許文献2によれば、低周波数領域でとくに優れた吸音特性を有するとされている。
特許文献2請求項3には、圧電体を含む繊維体を用い、その繊維体の圧電体を含む樹脂部分における圧電体の静電容量とその他の部分の電気抵抗とによって決定される特定の周波数の音波に対して、電気機械的共振による吸音効果を有する吸音材が開示されている。特許文献2によれば、その繊維体の圧電体を含む樹脂部分における圧電体の静電容量とその他の部分の電気抵抗とを適切に設定することにより、500Hz以下の特定の周波数の低周波に対して電気機械的共振による吸音効果を有する吸音材が構成可能であるとされている。さらに特許文献2によれば、通気抵抗により音波の振動エネルギーを減衰させるその繊維体の通常の吸音効果に、前述の電気機械的共振による吸音効果を加え合わせることにより、500Hz以下の特定の周波数の低周波に対して吸音効率の低下を補うことが可能であるとされている。
ところで、特許文献1に記載されている吸音構造体は、特定の周波数の低周波に対して音響的共振を発生するため、ヘルムホルツ共振器の空洞部及び開口部を所望の形状並びに寸法に設定しなければならない。このため任意の寸法に切断したり、自在に変形させて機器内に配置させたりすることが出来ないという問題を有している。
他方、特許文献2請求項2に記載された吸音材は、積層された吸音材の総厚さを吸音特性を設定した周波数の1/4波長に設定するので、500Hz以下の低周波の音波に対しては非常に大きなものとなり、機器の小型化の障害になるという問題を有している。例えば特許文献2の実施例8、10、14には吸音材の総厚さが850mmに達する例が開示されている。
また特許文献2請求項3に記載された吸音材は、一定の開口率で気道が形成された繊維集合体であって、気体の音波振動は、粘性抵抗を媒介して繊維体に伝達され繊維体を振動させる。ところが気体粒子の振動速度が低い低周波の音波に対しては粘性抵抗が減少するので、気体から繊維体への音波振動の伝達率が減少する。その結果、特許文献2請求項3に記載された吸音材は、低周波の音波によっては圧電体を含む繊維体における電気機械的振動が十分に励振されなくなるので、電気機械的共振による吸音効果の吸音効率が低下するという問題を有している。
また、特許文献1に記載されている吸音構造体も、特許文献2請求項2若しくは3に記載されている吸音材も、一つの共振構造または周波数選択構造は特定の周波数にのみ選択的に効果を持つので、広い周波数範囲に渡って一様な吸音特性を得るためには、複数の共振構造または周波数選択構造を併設若しくは積層しなければならず、このため吸音体の寸法が必然的に増大することとなり、機器の小型軽量化、薄型化の障害となるという別の問題を有している。
特開平06−266365号公報(請求項6) 特開2001−306080号公報(請求項2、3)
本発明はこの様な問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、軽量かつ形状自由度が高く、小型化、薄型化された機器にも容易に組み込むことが可能であり、低音においても吸音効率が著しく低下することのない吸音体を提供することにある。
すなわち、請求項1に係る発明は、空気よりも粘性の高い高粘性気体が充填されたガスバリア性包囲体の内部に、気体の粘性抵抗を直接的あるいは間接的に利用した吸音効果を有する吸音体が封入されている吸音構造体であって、そのガスバリア性包囲体の壁面の少なくとも一部が柔軟に変形可能あるいは可動に形成されていることを特徴とする。
そしてまた、請求項2に係る発明は、空気よりも音速の低い低音速気体が充填されたガスバリア性包囲体の内部に、若しくはそのガスバリア性包囲体の外部に隣接して、気体の粘性抵抗を直接的あるいは間接的に利用した吸音効果を有する吸音体が配置されている吸音構造体であって、そのガスバリア性包囲体の壁面の少なくとも一部が柔軟に変形可能あるいは可動に形成されていることを特徴とする。
さらにまた、請求項3に係る発明は、請求項1または2記載の吸音構造体を前提とし、上記ガスバリア性包囲体の壁面の少なくとも一部の領域において、上記吸音体を上記ガスバリア性包囲体の壁面から離れた位置に保持する保持部材が介在することにより、上記ガスバリア性包囲体の壁面と上記吸音体表面とが密着していないことを特徴とする。
さらにまた、請求項4に係る発明は、請求項1または2記載の吸音構造体を前提とし、上記ガスバリア性包囲体の壁面の少なくとも一部の領域に波形部が形成されていることを特徴とする。
さらにまた、請求項5に係る発明は、請求項1または2記載の吸音構造体を前提とし、上記ガスバリア性包囲体の少なくとも一部が外面保護層とガスバリア層と内面保護及びシーリング層とからなる積層フィルムにより構成されていて、そのガスバリア層がアルミニウム層及び/または高ガスバリア性樹脂層を含む単層または多層の構成であって、その積層フィルムの総厚さが0.1mm以下であることを特徴とする。
さらにまた、請求項6に係る発明は、請求項5記載の吸音構造体を前提とし、上記積層フィルムの融着シーリングを行わない領域の少なくとも一部分において、上記内面保護及びシーリング層の厚さが0.02mm以下に設定されていることにより、上記積層フィルムの総厚さが0.05mm以下であることを特徴とする
さらにまた、請求項7に係る発明は、請求項1記載の吸音構造体を前提とし、上記高粘性気体がネオン、クリプトン、キセノンよりなる一群の中から選択される少なくとも一つの気体であることを特徴とする。
さらにまた、請求項8に係る発明は、請求項2記載の吸音構造体を前提とし、上記低音速気体がキセノン、クリプトン、または室温で気体のヒドロフルオロカーボン類よりなる一群の中から選択される少なくとも一つの気体であることを特徴とする。
さらにまた、請求項9に係る発明は、請求項1または2記載の吸音構造体を前提とし、上記吸音体が気体の粘性抵抗を利用した吸音効果を少なくとも部分的に有する繊維集合体、多孔質体あるいはそれらの複合体であることを特徴とする。
さらにまた、請求項10に係る発明は、請求項1または2記載の吸音構造体を前提とし、上記ガスバリア性包囲体の形状が、厚さ変化を含む形状であることを特徴とする。
本発明に係る吸音構造体は、請求項1に記載しているように、空気よりも粘性の高い高粘性気体が充填されたガスバリア性包囲体の内部に、気体の粘性抵抗を直接的あるいは間接的に利用した吸音効果を有する吸音体が封入されている吸音構造体であって、そのガスバリア性包囲体の壁面の少なくとも一部が柔軟に変形可能あるいは可動な構造とすることによって、可聴周波数帯域に含まれる周波数の音波がそのガスバリア性包囲体の壁面を透過してその高粘性気体に伝搬し、その高粘性気体の音波振動がその吸音体により吸音されるので、気体の振動速度が低下する低周波数領域においてもその高粘性気体とその吸音体との間に強い摩擦抵抗が維持されることとなり、従来の吸音材に比べてとくに低周波数領域で優れた吸音性能を有している。
そしてまた、請求項2に記載しているように、空気よりも音速の低い低音速気体が充填されたガスバリア性包囲体の内部に、若しくはそのガスバリア性包囲体の外部に隣接して、気体の粘性抵抗を直接的あるいは間接的に利用した吸音効果を有する吸音体が配置されている吸音構造体であって、そのガスバリア性包囲体の壁面の少なくとも一部が柔軟に変形可能あるいは可動な構造とすることによって、可聴周波数帯域に含まれる周波数の音波がそのガスバリア性包囲体の壁面を透過してその低音速気体に伝搬し、その低音速気体中において音波の波長が短縮されるので、音波の波長が増大する低周波数領域においても、その吸音体を音波振動の節となる機器壁面から等価的により遠方に配置し、かつその吸音体を音波振動の腹となる機器壁面から1/4波長離れた位置のより近くに配置することが可能となるので、気体の振動速度が低下する低周波数領域においても、振動速度が高い音波振動の腹の近くを上記吸音体に作用させることが可能となり、従来の吸音材に比べてとくに低周波数領域で優れた吸音性能を有している。
さらにまた、請求項3に記載しているように、上記ガスバリア性包囲体の壁面の少なくとも一部の領域において、上記吸音体を上記ガスバリア性包囲体の壁面から離れた位置に保持する保持部材が介在することにより、上記ガスバリア性包囲体の壁面と上記吸音体表面とが密着していない構造とすることにより、その密着していない領域において上記ガスバリア性包囲体の壁面が上記吸音体に拘束されずに自由に振動することが可能となるので、上記ガスバリア性包囲体の外部から渡来した可聴周波数帯域に含まれる周波数の音波が上記ガスバリア性包囲体の壁面をより容易に透過することとなり、上記ガスバリア性包囲体の内部の高粘性気体若しくは低音速気体に音波振動がより効率的に伝達されるという効果を有している。
さらにまた、請求項4に記載しているように、上記ガスバリア性包囲体の壁面の少なくとも一部の領域に波形部が形成されている構造とすることにより、その波形部の伸縮若しくは開閉により上記ガスバリア性包囲体の壁面が容易に振動することが可能となるので、上記ガスバリア性包囲体の外部から渡来した可聴周波数帯域に含まれる周波数の音波が上記ガスバリア性包囲体の壁面をより容易に透過することとなり、上記ガスバリア性包囲体の内部の高粘性気体若しくは低音速気体に音波振動がより効率的に伝達されるという効果を有している。
さらにまた、請求項5に記載しているように、上記ガスバリア性包囲体の少なくとも一部が外面保護層とガスバリア層と内面保護及びシーリング層とからなる積層フィルムにより構成されていて、そのガスバリア層がアルミニウム層及び/または高ガスバリア性樹脂層を含む単層または多層の構成であって、その積層フィルムの総厚さが0.1mm以下である構成のものとすることにより、上記高粘性気体が上記ガスバリア性包囲体の壁面を透過して外部に散逸することを防ぎながら、上記ガスバリア性包囲体の外部から渡来した可聴周波数帯域に含まれる周波数の音波が上記ガスバリア性包囲体の壁面を容易に透過することとなり、上記ガスバリア性包囲体の内部の高粘性気体若しくは低音速気体に音波振動がより効率的に伝達されるという効果を有している。
さらにまた、請求項6に記載しているように、上記積層フィルムの融着シーリングを行わない領域の少なくとも一部分において、上記内面保護及びシーリング層の厚さが0.02mm以下に設定されていることにより、上記積層フィルムの総厚さが0.05mm以下である構成のものとすることにより、上記高粘性気体が上記ガスバリア性包囲体の壁面を透過して外部に散逸することを防ぎながら、上記ガスバリア性包囲体の外部から渡来した可聴周波数帯域に含まれる周波数の音波が上記ガスバリア性包囲体の壁面をさらに容易に透過することとなり、上記ガスバリア性包囲体の内部の高粘性気体若しくは低音速気体に音波振動がよりいっそう効率的に伝達されるという効果を有している。
さらにまた、請求項7に記載しているように、上記高粘性気体がネオン、クリプトン、キセノンよりなる一群の中から選択される少なくとも一つの気体である構成のものとすることにより、上記高粘性気体の粘性係数を最高で空気の略1.7倍に設定することが可能となる効果を有している。
さらにまた、請求項8に記載しているように、上記低音速気体がキセノン、クリプトン、または室温で気体のヒドロフルオロカーボン類よりなる一群の中から選択される少なくとも一つの気体である構成のものとすることにより、上記低音速気体の音速を最低で空気の略0.5倍に設定することが可能となる効果を有している。
さらにまた、請求項9に記載しているように、上記吸音体が気体の粘性抵抗を利用した吸音効果を少なくとも部分的に有する繊維集合体、多孔質体あるいはそれらの複合体である構成のものとすることにより、軽量かつ形状自由度が高く、小型化、薄型化された機器にも容易に組み込むことが可能となる効果を有している。
さらにまた、請求項10に記載しているように、低音速気体が充填された上記ガスバリア性包囲体の形状が厚さ変化を含む形状であることにより、機器壁面から反射された音波の音路長が場所により異なり、その結果、スピーカーボックス内や容器状の電気機器筐体内に定在波が発生することを防ぐ効果を有している。
以下、本発明について図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明による吸音構造体の構成の一例を示す断面図である。図において1はガスバリア性包囲体、8Aは吸音体である。ガスバリア性包囲体1の外壁2A、外壁2B、側壁2Cはそれぞれガスバリア性の積層フィルムにより構成されていて、ヒートシール部9においてヒートシール材3に介在されて気密に融着されている。吸音体8Aはフィルム状の保持部材4Aとフィルム状の保持部材4Bとに挟まれて、外壁2Aおよび外壁2Bと離れた位置に保持されており、保持部材4Aと外壁2Aの間、および保持部材4Bと外壁2Bの間には、それぞれ空洞部6が形成されている。吸音体8Aが配置された保持部材4Aと保持部材4Bの間の空間は、保持部材4Aおよび4Bに複数形成された開口5により空洞部6と連通している。空洞部6を含むガスバリア性包囲体1の内部には高粘性気体が充填されている。また図1の例では、保持部材4Aおよび4Bに良好な融着性を有する材質を用いることにより、それらの外縁部をヒートシール材3としても利用している。
吸音体8Aには、例えばグラスウール、フェルト等の繊維集合体、若しくは発泡ポリウレタン等の多孔質体を用いることが出来る。また、それらを組み合わせた複合体を用いてもよい。繊維集合体や多孔質体は、軽量であり且つ任意の寸法に容易に切断できるので、機器の小型軽量化、薄型化の障害にならないという利点を有している。また、これらの繊維集合体、多孔質体は柔軟であるので、扁平且つ複雑な形状の機器筐体内部に組み込む場合にも、特別な形状加工を施すことなく自在に変形させて配置することが可能であるという利点を有している。
これらの繊維集合体や多孔質体の主要な吸音効果は粘性抵抗を直接的に利用したものであり、その内部に形成されている細密且つ複雑に入り組んだ形状の空間を、気体粒子が移動する際の粘性抵抗すなわち通気抵抗により音波の振動エネルギーが消費吸収される。また副次的吸音効果としては、繊維間の細密な気道において運動する気体の音波振動が粘性抵抗を媒介して繊維体に伝達され、更に繊維体の機械的振動エネルギーが繊維体の有する内部摩擦により熱エネルギーに変換されて消費される効果を僅かながら有している。すなわち、粘性抵抗を媒介して気体の音波振動により駆動されるエネルギー変換型の吸音体としての性質も僅かながら具備している。
吸音体8Aには、例えば特開2001−306080号公報に記載されているような圧電繊維の集合体を用いることも出来る。圧電繊維集合体の吸音効果は間接的に粘性抵抗を利用したものであり、繊維間の細密な気道において運動する気体の音波振動が粘性抵抗を媒介して繊維体に伝達され、更に繊維体の機械的振動エネルギーが繊維体の有する圧電効果により電気エネルギーに変換されて消費される。すなわち、圧電繊維集合体は粘性抵抗を媒介して気体の音波振動により駆動されるエネルギー変換型の吸音体である。
直接的若しくは間接的に粘性抵抗を利用した吸音材においては、気体粒子の振動速度が低い低周波の音波に対しては粘性抵抗が減少するので、低周波の音波に対して吸音効率が低下する。そこで本発明による吸音構造体においては、直接的若しくは間接的に粘性抵抗を利用した吸音材に、空気よりも粘性の高い高粘性気体を作用させることにより高粘性気体と吸音体との間に比較的強い粘性抵抗を発生せしめ、従来の吸音材に比べてとくに低周波数領域においても優れた吸音性能を維持することが可能な構成としている。
上記高粘性気体は、例えばネオン、クリプトン、キセノンよりなる一群の中から選択される少なくとも一つの気体で構成することができる。例えばネオンの粘性率は空気の1.73倍であり、クリプトンの粘性率は空気の1.37倍であり、キセノンの粘性率は空気の1.25倍である。
ところで、図1の吸音構造体においてガスバリア性包囲体1の外部から渡来した音波が吸音体8Aと高粘性気体との作用によって効率よく吸収されるためには、ガスバリア性包囲体1の外部から渡来した音波がガスバリア性包囲体1の外壁2A、外壁2B、側壁2Cのうちの少なくとも一つの壁面を容易に透過することが必要であるが、ガスバリア性包囲体1の壁面に過剰な張力が導入されていると壁面の自由な振動が妨げられ、音波の透過伝搬が阻害されてしまう。そこでガスバリア性包囲体1に封入された高粘性気体の圧力は、略1気圧に設定されている。
図1において、吸音体8Aはフィルム状の保持部材4Aとフィルム状の保持部材4Bとに挟持されており、吸音体8Aは外壁2Aおよび外壁2Bとは密着していない構造となっている。その結果、外壁2Aおよび外壁2Bが吸音体8Aに拘束されずに自由に振動することが可能となるので、ガスバリア性包囲体1の外部から渡来した可聴周波数帯域に含まれる周波数の音波がガスバリア性包囲体1の外壁2Aおよび外壁2Bをより容易に透過することとなり、ガスバリア性包囲体1の内部の高粘性気体に音波振動がより効率的に伝達される。
図1の例においては、側壁2Cの振動が吸音体8Aとの接触により妨げられる可能性があるが、この問題は図2に示した例のように側壁2Cを波形に整形することにより回避することが出来る。また、波形の伸縮若しくは開閉により側壁2C及び連動する外壁2Aおよび外壁2Bが容易に振動することが可能となるので、ガスバリア性包囲体1の外部から渡来した可聴周波数帯域に含まれる周波数の音波がガスバリア性包囲体1の壁面をより容易に透過することとなり、ガスバリア性包囲体1の内部の高粘性気体に音波振動がより効率的に伝達される。また図3に例示された構成においては、外壁2Aおよび外壁2Bに同心円状の波形部を形成することによって、同様の効果を得ている。
外壁2A、外壁2B、側壁2Cに用いられるガスバリア性の積層フィルムの構成例を図7に示す。図の例においては、積層フィルムは、高ガスバリア層10と外面保護層11と内面保護及びシーリング層12よりなる3層構造となっている。
高ガスバリア層10は、上記高粘性気体に対して良好なガスバリア性を有し、高粘性気体のガスバリア性包囲体外部への散逸を防止するとともに、分圧差に起因する大気中の気体分子、例えば酸素、窒素、二酸化炭素、水のガスバリア性包囲体内部への侵入を防止する。高ガスバリア層10の代表的な厚さは0.01mmから0.015mmであり、材質としては、例えばエチレンビニルアルコール(例えば商品名エバール、クラレ製)、ポリビニルアルコール(例えば商品名テックバリア、クラレ製)、芳香族ポリアミド(例えば商品名ミクトロン、東レ製)、等を使用することができる。さらに、それらの材質表面にアルミニウム若しくはシリカの蒸着層を形成したものを、より有利に使用することが出来る。また樹脂層の代わりに厚さ0.007mmから0.015mmのアルミニウム箔を使用することも出来る。
外面保護層11は、外部の異物との摩擦的接触により高ガスバリア層10に微細な損傷が導入されることを防止するとともに、高ガスバリア層10の吸湿によるガスバリア性能の低下を防止する。このため外面保護層11には滑らかで透湿性の低い材質を選択する。外面保護層11の代表的な厚さは0.015mmであり、材質としては例えば延伸ポリプロピレンを使用することが出来る。
内面保護及びシーリング層12は、吸音体との摩擦的接触により高ガスバリア層10に微細な損傷が導入されることを防止する。また、ガスバリア性包囲体の壁面同士を互いの内面保護及びシーリング層12を対向させて密着させた状態で加熱手段或いは超音波手段を用いれば、ガスバリア性包囲体の壁面同士を相互に融着することが可能となる。内面保護及びシーリング層12の材質としては低密度ポリエチレン若しくは無延伸ポリプロピレンを使用することが出来る。
上記材質の組合せにより構成された積層フィルムは、総厚さを0.1mm以下望ましくは0.08mm以下とすることにより、上記ガスバリア性包囲体の外部から渡来した可聴周波数帯域に含まれる周波数の音波がガスバリア性包囲体の壁面を透過するに十分な柔軟性と軽量性を確保することが出来る。その結果、ガスバリア性包囲体内に充填された高粘性気体に音波振動が効率的に伝達される。
安定且つ気密な融着を形成するためには、一般に内面保護及びシーリング層12の厚さは図7(B)に示すように他の層に比べて厚く設定される。しかしながら、図1の例においては、保持部材4Aおよび4Bに良好な融着性を有する材質(例えば低密度ポリエチレン若しくは無延伸ポリプロピレン)を用いることにより、融着が必要とされる部位においては保持部材4Aおよび4Bの外縁部をヒートシール材3としても利用しているので、内面保護及びシーリング層12の厚さを図7(A)に例示されているように他の層と同等の厚さとしても、安定且つ気密な融着を形成することが可能となっている。
このように、融着シーリングを行わない領域において内面保護及びシーリング層12の厚さを0.02mm以下に設定することにより、上記積層フィルムの総厚さを0.05mm以下とすることが可能であり、上記高粘性気体が上記ガスバリア性包囲体の壁面を透過して外部に散逸することを防ぎながら、上記ガスバリア性包囲体の外部から渡来した可聴周波数帯域に含まれる周波数の音波が上記ガスバリア性包囲体の壁面をさらに容易に透過することとなり、上記ガスバリア性包囲体の内部の高粘性気体若しくは低音速気体に音波振動がよりいっそう効率的に伝達される。
次に図4を用いて本発明による吸音構造体の他の構成を説明する。図4において図1との対応部分には同一符合を付して重複説明を省略する。図4に示す吸音構造体は、外壁2Bを設置面としてスピーカーシステムの内壁面やスピーカーを内蔵した電気機器の筐体の内部の壁面に設置され、主として外壁2Aの側から到来する音波を吸音体8Aと吸音体8Bにより吸収する。吸音体8Aと吸音体8Bは気体の粘性抵抗を直接的あるいは間接的に利用した吸音効果を有しており、ガスバリア性包囲体1の内部には空気よりも音速の低い低音速気体が充填されている。
設置面の近傍は音波振動の節に対応していて気体粒子の振動速度が低いので、設置面の近傍に配置された吸音材は直接的若しくは間接的に粘性抵抗を十分に利用することができず吸音効率が低下する。これに対して、設置面から1/4波長離れた位置は音波振動の腹に対応していて気体粒子の振動速度が高いので、設置面から1/4波長離れた位置に配置された吸音材は直接的若しくは間接的に粘性抵抗を十分に利用することができ、高い吸音効率を得ることができる。そこで図4に示す吸音構造体においては、吸音体8Aと設置面との間に空気よりも音速の低い低音速気体が充填されたガスバリア性包囲体1を配置することにより音波の波長を短縮し、より低い周波数の音波に対しても吸音体8Aと設置面との間に1/4波長の距離を確保することが出来るので、従来の吸音材に比べてとくに低周波数領域においても優れた吸音性能を維持することが可能な構成となっている。
低音速気体は、キセノン、クリプトン、または室温で気体のヒドロフルオロカーボン類よりなる一群の中から選択される少なくとも一つの気体で構成することができる。例えばキセノンの音速は空気の0.51倍であり、クリプトンの音速は空気の0.64倍である。室温で気体のヒドロフルオロカーボン類としては例えばHFC−125、HFC−134a、HFC−245ca、HFC−245faなどが低い音速を有している。しかしながら、ヒドロフルオロカーボン類は地球温暖化の原因物質とされているため、工業製品への使用は好ましくない。
例えば、ガスバリア性包囲体1の厚さを22cmに設定し内部にキセノンを充填した場合、吸音体8Aの後面と設置面である外壁2Bとの距離は、周波数が200Hzの低周波数に対して1/4波長に相当する。同時に吸音体8Aの厚さを10cmに設定した場合には、吸音体8Aの前面と設置面である外壁2Bとの距離は、周波数が160Hzの低周波数に対して1/4波長に相当するので、160Hzから200Hzの間の低周波数領域の音波に対して音波振動の腹が吸音体8Aの内部に位置することになり、高い吸音効率を得ることができる。200Hzよりも高い周波数領域の音波に対しては、ガスバリア性包囲体1の内部に配置されている吸音体8Bの内部に音波振動の腹が存在することになるので、やはり効率的な吸音が可能である。キセノンの粘性率は空気の1.25倍であり、クリプトンの粘性率は空気の1.37倍であるので、これらは高粘性気体としても吸音体8Bに作用することになり、図1の例と同様の吸音性能の改善効果を得ることが出来る。但し、本説明例において200Hzよりも低い周波数領域の音波に対する吸音効果は、主に吸音体8Aが担っているので、構成の簡素化を優先して吸音体8Bを省略してもよいことは言うまでもない。
比較例として吸音体8Aの後面と設置面との間が通常の空気層である場合を考察すると、周波数が200Hzの音波に対して1/4波長相当となる空気層の厚さは43cmにもなり、機器の小型化の障害となることがわかる。
吸音体8Aと同様に、吸音体8Bには例えばグラスウール、フェルト等の繊維集合体、発泡ポリウレタン等の多孔質体、若しくはそれらを組み合わせた複合体を用いることが出来るので、吸音体8Bも吸音体8Aと同様に、軽量であり且つ任意の寸法に容易に切断でき機器の小型軽量化、薄型化の障害にならないという利点と、柔軟であり扁平且つ複雑な形状の機器筐体内部に組み込む場合にも特別な形状加工を施すことなく自在に変形させて配置することが可能であるという利点とを、有している。
設置面においては音波振動は節に対応していて振幅が小さいので、図4の例において外壁2Bは特に音波に応答して振動する必要がない。このため、外壁2Aには音波の透過が容易な図7(A)の構成の積層フィルムが用いられているのに対し、外壁2Bには図7(B)の構成の積層フィルムが用いられている。外壁2Aはその一部分を同心円状の波形に形成されていて、吸音体8Aおよび8Bには密着していない。そのため外壁2Aは柔軟に変形可能あるいは可動であり、可聴周波数帯域に含まれる周波数の音波を容易に透過する。
以下、本発明の実施例について具体的に説明する。
以下、本発明の実施例について具体的に説明する。
図1に本発明による吸音構造体の一実施例を示す。本実施例では、ガスバリア性包囲体1の内部に吸音体8Aとともに高粘性気体であるネオンを封入した例を示す。
ガスバリア性包囲体1の外壁2A、外壁2B、側壁2Cは図7(A)に示す構成の総厚さ0.037mmの柔軟な積層フィルムであり、厚さ0.007mmの高ガスバリア層10はアルミニウム箔であり、厚さ0.015mmの外面保護層11の材質は延伸ポリプロピレンであり、厚さ0.015mmの内面保護及びシーリング層12の材質は低密度ポリエチレンである。外壁2A、外壁2B、側壁2Cはヒートシール部9において保持部材4Aおよび4Bの外縁部であるヒートシール材3に介在されて気密に融着されている。保持部材4Aおよび4Bは厚さ0.1mmの低密度ポリエチレンフィルムであり良好な融着性を有する。
吸音体8Aにはグラスウールを用いている。吸音体8Aは保持部材4Aと保持部材4Bとで挟持されており空洞部6Aおよび6Bが確保されているので、吸音体8Aが外壁2Aおよび外壁2Bを圧迫することがなく、外壁2Aおよび外壁2Bは外来の音波に応答して自由に振動することができる。外壁2Aおよび外壁2Bに隣接して確保された空洞部6は、保持部材4Aおよび4Bに複数形成された開口5により、吸音体8Aが配置された保持部材4Aと保持部材4Bの間の空間と連通している。
図2に本発明による吸音構造体の第2の実施例を示す。本実施例では、ガスバリア性包囲体1の内部に吸音体8Aとともに高粘性気体であるネオンを封入した例を示す。
ガスバリア性包囲体1の外壁2A、外壁2B、側壁2Cは図7(A)に示す構成の総厚さ0.037mmの柔軟な積層フィルムであり、厚さ0.007mmの高ガスバリア層10はアルミニウム箔であり、厚さ0.015mmの外面保護層11の材質は延伸ポリプロピレンであり、厚さ0.015mmの内面保護及びシーリング層12の材質は低密度ポリエチレンである。外壁2A、外壁2B、側壁2Cはヒートシール部9において保持部材4Aおよび4Bの外縁部であるヒートシール材3に介在されて気密に融着されている。保持部材4Aおよび4Bは厚さ0.1mmの低密度ポリエチレンフィルムであり良好な融着性を有する。
吸音体8Aには発泡ポリウレタンを用いている。。吸音体8Aは保持部材4Aと保持部材4Bとで挟持されており空洞部6Aおよび6Bが確保されているので、吸音体8Aが外壁2Aおよび外壁2Bを圧迫することがなく、外壁2Aおよび外壁2Bは外来の音波に応答して自由に振動することができる。外壁2Aおよび外壁2Bに隣接して確保された空洞部6は、保持部材4Aおよび4Bに複数形成された開口5により、吸音体8Aが配置された保持部材4Aと保持部材4Bの間の空間と連通している。
更に本実施例においては、側壁2Cを波形に整形することにより、波形の伸縮若しくは開閉により側壁2C及び連動する外壁2Aおよび外壁2Bが容易に振動することが可能となっている。
図3に本発明による吸音構造体の第3の実施例を示す。本実施例では、ガスバリア性包囲体1の内部に吸音体8Aとともに高粘性気体であるクリプトンを封入した例を示す。
ガスバリア性包囲体1の外壁2A、外壁2B、側壁2Cは図7(A)に示す構成の総厚さ0.045mmの柔軟な積層フィルムであり、厚さ0.015mmの高ガスバリア層10の材質はエチレンビニルアルコールであり、厚さ0.015mmの外面保護層11の材質は延伸ポリプロピレンであり、厚さ0.015mmの内面保護及びシーリング層12の材質は低密度ポリエチレンである。外壁2A、外壁2B、側壁2Cはヒートシール部9においてヒートシール材3に介在されて気密に融着されている。ヒートシール材3は厚さ0.1mmの低密度ポリエチレンフィルムを枠形状に成形したものであり良好な融着性を有する。吸音体8Aにはカーボンフェルトを用いている。
本実施例においては、外壁2Aおよび外壁2Bに同心円状の波形部を形成することによって空洞部6Aおよび6Bを確保し、吸音体8Aが外壁2Aおよび外壁2Bに密着して圧迫することがないように工夫されている。外壁2Aおよび外壁2Bは吸音体8Aと部分的に接触しているが、波形の伸縮若しくは開閉により容易に振動することが可能となっている。
図4に本発明による吸音構造体の第4の実施例を示す。本実施例では、低音速気体であるクリプトンを封入したガスバリア性包囲体1の外部前面に吸音体8Aを配置し、ガスバリア性包囲体1の内部に吸音体8Bを配置した例を示す。本実施例の吸音構造体は、外壁2Bを設置面としてスピーカーシステ厶の内壁面やスピーカーを内蔵した電気機器の筐体の内部の壁面に設置され、主として外壁2Aの側から到来する音波を吸音体8Aと吸音体8Bにより吸収する。
ガスバリア性包囲体1の外壁2Aと側壁2Cは図7(A)に示す構成の総厚さ0.045mmの柔軟な積層フィルムであり、厚さ0.015mmの高ガスバリア層10の材質はエチレンビニルアルコールであり、厚さ0.015mmの外面保護層11の材質は延伸ポリプロピレンであり、厚さ0.015mmの内面保護及びシーリング層12の材質は低密度ポリエチレンである。外壁2Aと側壁2Cはヒートシール部9においてヒートシール材3に介在されて気密に融着されている。ヒートシール材3は厚さ0.1mmの低密度ポリエチレンフィルムを枠形状に成形したものであり良好な融着性を有する。吸音体8Aと吸音体8Bにはカーボンフェルトを用いている。
本実施例においては、外壁2Aに同心円状の波形部を形成することによって、吸音体8Aまたは吸音体8Bが外壁2Aに密着して圧迫することがないように工夫されている。外壁2Aは吸音体8Aまたは吸音体8Bと部分的に接触しているが、波形の伸縮若しくは開閉により容易に振動することが可能となっている。
設置面においては音波振動は節に対応していて振幅が小さいので、本実施例において外壁2Bは特に音波に応答して振動する必要がない。このため、外壁2Bには図7(B)の構成の積層フィルムが用いられている。総厚さ0.08mmの積層フィルムにおいて、厚さ0.015mmの高ガスバリア層10の材質はエチレンビニルアルコールであり、厚さ0.015mmの外面保護層11の材質は延伸ポリプロピレンであり、厚さ0.05mmの内面保護及びシーリング層12の材質は無延伸ポリプロピレンである。側壁2Cはヒートシール部9において外壁2Bの内面保護及びシーリング層12により外壁2Bと気密に融着されている。
図5に本発明による吸音構造体の第5の実施例を示す。本実施例は実施例4の構成を基本とし、更に吸音体8Aを高粘性気体であるネオンとともにガスバリア性包囲体1の内部に封入した例である。すなわち、本実施例においてはガスバリア性包囲体1の内部が隔壁7により前後2つの気室に分割されていて、吸音体8Aと高粘性気体であるネオンを封入した第1の気室の背後に、吸音体8Bと低音速気体であるクリプトンを封入した第2の気室が配設されている。本実施例の吸音構造体は、外壁2Bを設置面としてスピーカーシステムの内壁面やスピーカーを内蔵した電気機器の筐体の内部の壁面に設置され、主として外壁2Aの側から到来する音波を吸音体8Aと吸音体8Bにより吸収する。
本実施例のガスバリア性包囲体1は実施例1におけるガスバリア性包囲体に類似の構成の第1の気室と、実施例4におけるガスバリア性包囲体に類似の構成の第2の気室を複合したものである。すなわち、本実施例における第1の気室の外壁2Aと側壁2Cは実施例1における外壁2Aと同一構成の積層フィルムであり、本実施例における第2の気室の外壁2Bは実施例4における外壁2Bと同一構成の積層フィルムであり、また本実施例における第2の気室の側壁2Dは実施例4における側壁2Dと同一構成の積層フィルムである。更に、本実施例における隔壁7は実施例4における外壁2Aと同一構成の積層フィルムである。吸音体8Aと吸音体8Bには実施例4と同様にカーボンフェルトを用いている。壁面相互の融着シール構造と外壁2Aおよび隔壁7の可動性についても対応実施例と同様であるので詳細説明は省略する。
図6に本発明による吸音構造体の第6の実施例を示す。本実施例においてはガスバリア性包囲体1の内部が隔壁7により前後2つの気室に分割されていて、吸音体8Aと高粘性気体であるネオンを封入した第1の気室の背後に、低音速気体であるキセノンを封入した第2の気室が配設されている。また本実施例においては隔壁7を傾斜して配設することにより、各気室と吸音体8Aの厚さを場所により変化させている。その結果、必ずしも第2の気室に吸音体を配置しなくても広い周波数範囲の音波に対して音波振動の腹が吸音体8Aの内部に位置することになるので、本実施例では広い周波数範囲の音波に対して効率的な吸音が可能である。本実施例の吸音構造体は、外壁2Bを設置面としてスピーカーシステムの内壁面やスピーカーを内蔵した電気機器の筐体の内部の壁面に設置され、主として外壁2Aの側から到来する音波を吸音体8Aにより吸収する。
本実施例において第2の気室の厚さが場所により変化していることのもう一つの作用は、設置面2B側の機器壁面から反射された音波の音路長が場所により異なることである。その結果、本実施例はスピーカーボックス内や容器状の電気機器筐体内に定在波が発生することを防ぐ効果も備えている。
本実施例における第1の気室は実施例1におけるガスバリア性包囲体に類似の構成を採用しており、第2の気室の外壁2Bは実施例4における外壁2Bと同一構成であるので詳細説明は省略する。
1 ガスバリア性包囲体
2A 外壁
2B 外壁
2C 側壁
2D 側壁
3 ヒートシール材
4A 保持部材
4B 保持部材
5 保持部材開口部
6A 空洞部
6B 空洞部
7 隔壁
8A 吸音体
8B 吸音体
9 ヒートシール部
10 高ガスバリア層
11 外面保護層
12 内面保護及びシーリング層
2A 外壁
2B 外壁
2C 側壁
2D 側壁
3 ヒートシール材
4A 保持部材
4B 保持部材
5 保持部材開口部
6A 空洞部
6B 空洞部
7 隔壁
8A 吸音体
8B 吸音体
9 ヒートシール部
10 高ガスバリア層
11 外面保護層
12 内面保護及びシーリング層
Claims (10)
- 空気よりも粘性の高い高粘性気体が充填されたガスバリア性包囲体の内部に、気体の粘性抵抗を直接的あるいは間接的に利用した吸音効果を有する吸音体が封入されている吸音構造体であって、そのガスバリア性包囲体の壁面の少なくとも一部が柔軟に変形可能あるいは可動に形成されていることを特徴とする吸音構造体。
- 空気よりも音速の低い低音速気体が充填されたガスバリア性包囲体の内部に、若しくはそのガスバリア性包囲体の外部に隣接して、気体の粘性抵抗を直接的あるいは間接的に利用した吸音効果を有する吸音体が配置されている吸音構造体であって、そのガスバリア性包囲体の壁面の少なくとも一部が柔軟に変形可能あるいは可動に形成されていることを特徴とする吸音構造体。
- 上記ガスバリア性包囲体の壁面の少なくとも一部の領域において、上記吸音体を上記ガスバリア性包囲体の壁面から離れた位置に保持する保持部材が介在することにより、上記ガスバリア性包囲体の壁面と上記吸音体表面とが密着していないことを特徴とする請求項1または2記載の吸音構造体。
- 上記ガスバリア性包囲体の壁面の少なくとも一部の領域に波形部が形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の吸音構造体。
- 上記ガスバリア性包囲体の少なくとも一部が外面保護層とガスバリア層と内面保護及びシーリング層とからなる積層フィルムにより構成されていて、そのガスバリア層がアルミニウム層及び/または高ガスバリア性樹脂層を含む単層または多層の構成であって、その積層フィルムの総厚さが0.1mm以下であることを特徴とする請求項1、2記載の吸音構造体。
- 上記積層フィルムの融着シーリングを行わない領域の少なくとも一部分において、上記内面保護及びシーリング層の厚さが0.02mm以下に設定されていることにより、上記積層フィルムの総厚さが0.05mm以下であることを特徴とする請求項5記載の吸音構造体。
- 上記高粘性気体がネオン、クリプトン、キセノンよりなる一群の中から選択される少なくとも一つの気体であることを特徴とする請求項1記載の吸音構造体。
- 上記低音速気体がキセノン、クリプトン、または室温で気体のヒドロフルオロカーボン類よりなる一群の中から選択される少なくとも一つの気体であることを特徴とする請求項2記載の吸音構造体。
- 上記吸音体が気体の粘性抵抗を利用した吸音効果を少なくとも部分的に有する繊維集合体、多孔質体あるいはそれらの複合体であることを特徴とする請求項1または2記載の吸音構造体。
- 上記ガスバリア性包囲体の形状が、厚さ変化を含む形状であることを特徴とする請求項2記載の吸音構造体。
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KR20190056302A (ko) * | 2017-11-16 | 2019-05-24 | 재단법인 파동에너지 극한제어 연구단 | 흡음 캡슐 및 이를 이용한 수중 흡음판 |
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