JP2005287478A - ヒト脂肪前駆細胞株及びその利用方法 - Google Patents

ヒト脂肪前駆細胞株及びその利用方法 Download PDF

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Abstract

【課題】脂肪細胞に分化されやすいヒト脂肪前駆細胞株を提供すること。
【解決手段】ヒト脂肪組織から採取した脂肪前駆細胞に対し、継代培養を繰り返すこと。
【選択図】 なし

Description

本発明は、生物学、医学等の分野におけるヒト脂肪前駆細胞株、及びその利用法に関する。
脂肪組織は、発明者は脂肪組織中に幹細胞が存在し、非常に多くの蛋白質を分泌する極めて再生能力の高い組織であることを報告してきた(Maeda K、et al.、Gene.1997 May 6;190(2):227−35、前田和久 他 Annual Review 2004 内分泌、代謝p15−19)。
脂肪細胞は、単にエネルギー貯蔵の役割を担うだけではなく、脂肪燃焼タンパクと呼ばれるアディポネクチンや摂食をコントロールするレプチンなどの生理活性物質を分泌することで、体内の様々な生理現象に関わることが明らかとなっている。また、これらの生理活性物質の分泌は巧妙に制御されているため、いったんこのバランスが乱れると肥満などを招き、糖尿病や高血圧症などの慢性疾患が引き起こされることとなる。このように、脂肪細胞は生体内の恒常性を保つのに重要であると考えられる。
ところで、脂肪細胞をターゲットとして、脂肪分解を亢進させるアドレナリンβ3受容体アゴニストやインスリン感受性を増すチアゾリジン誘導体などが開発された。実際に臨床現場で用いられている薬剤もあり、糖尿病治療などに効果を挙げている。このように、脂肪細胞は薬剤開発の新たなターゲットになると考えられる。しかし、薬剤が脂肪細胞にどのような効果をあらわすかを細胞を用いて調べる方法は、現在のところマウスの脂肪前駆細胞株である3T3L1細胞を用いる場合が多い。ヒトの脂肪細胞に対して影響を調べる実験は、脂肪前駆細胞株がないことやヒト脂肪組織の安定供給が難しいことなどから、ほとんど行われていないのが現状であり、これらの課題を解決できる革新的な技術が強く望まれていた。
そのような中、シミアンウィルス40ラージT抗原(SV40 T−Ag)やテロメアーゼ酵素(hTERT)を用いて脂肪前駆細胞を不死化させ、回収する方法が開示されているが、この技術では脂肪細胞に分化されにくいという課題があった。
そこで、われわれはヒト脂肪前駆細胞を調製できれば有用であると考え、脂肪組織に混在しているヒト脂肪前駆細胞を用いて、その細胞をクローン化する方法を開発した。この方法は、成熟した細胞に不死化能を獲得させる点とクローン化して単一の細胞株として扱うことができる点から新規性があり、独創的であるといえる。
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決することを意図してなされたものである。すなわち、本発明は、従来技術と全く異なった発想からの新規なヒト脂肪前駆細胞株を提供することを目的とする。また、本発明は、その利用法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために、種々の角度から検討を加えて、研究開発を行った。その結果、驚くべくことに、脂肪組織から採取した組織片から特定の方法で培養を継続すると脂肪細胞に分化されやすいことを特徴とするヒト脂肪前駆細胞株を得ることができることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成されたものである。
すなわち、本発明は、脂肪細胞に分化されやすいことを特徴とするヒト脂肪前駆細胞株を提供する。
また、本発明は、そのヒト脂肪前駆細胞株の利用方法を提供する。
ヒト組織から採取した細胞は取り扱い難いものとされている。本発明の方法により、成熟した細胞に不死化能を獲得させる点とクローン化して単一の細胞株として扱うことができるようになる。生物学、医学分野の基礎研究の材料にとどまらず、創薬、治療、組織再生用の材料へと幅広く展開できるものである。
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
(用語の定義)
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
本明細書において「脂肪細胞」とは、脂肪の貯蔵組織の総称である。疎性結合組織のうち、特に脂肪の多いもの、皮下脂肪組織などがある。各脂肪細胞は格子繊維によって囲まれ,細胞間に毛細血管が密に分布し、脂肪体を形成することがおおい。本明細書では、どのような脂肪組織も供給源とすることができる。脂肪体は、他の組織から独立してほぼ一定した塊状もしくは房状の脂肪組織であり、脊椎動物では腎臓や生殖腺に接して腹腔内に存在する。白色、黄色または橙色をしていることが多い。
本明細書において使用される「細胞」は、当該分野において用いられる最も広義の意味と同様に定義され、多細胞生物の組織の構成単位であって、外界を隔離する膜構造に包まれ、内部に自己再生能を備え、遺伝情報およびその発現機構を有する生命体をいう。本発明の方法においては、どのような細胞でも対象とされ得る。本発明で使用される「細胞」の数は、光学顕微鏡を通じて計数することができる。光学顕微鏡を通じて計数する場合は、核の数を数えることにより計数を行う。当該組織を組織切片スライスとし、ヘマトキシリン−エオシン(HE)染色を行うことにより細胞外マトリクス(例えば、エラスチンまたはコラーゲン)および細胞に由来する核を色素によって染め分ける。この組織片を光学顕微鏡にて検鏡し、特定の面積(例えば、200μm×200μm)あたりの核の数を細胞数と見積って計数することができる。本明細書において使用される細胞は、天然に存在する細胞であっても、人工的に改変された細胞(例えば、融合細胞、遺伝子改変細胞)であってもよい。細胞の供給源としては、例えば、単一の細胞培養物であり得、あるいは、正常に成長したトランスジェニック動物の胚、血液、または体組織、または正常に成長した細胞株由来の細胞のような細胞混合物が挙げられるがそれらに限定されない。また、このような供給源をそのまま細胞として用いることもできる。
本発明において使用される細胞は、脂肪細胞またはその対応物がある限り、どの生物由来の細胞(例えば、メクラウナギ類、ヤツメウナギ類、軟骨魚類、硬骨魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳動物など)でも用いることができる。好ましくは、そのような細胞は、哺乳動物(例えば、単孔類、有袋類、貧歯類、皮翼類、翼手類、食肉類、食虫類、長鼻類、奇蹄類、偶蹄類、管歯類、有鱗類、海牛類、クジラ目、霊長類、齧歯類、ウサギ目など)由来の細胞が用いられる。1つの実施形態では、霊長類(例えば、チンパンジー、ニホンザル、ヒト)由来の細胞、特にヒト由来の細胞が用いられるがそれに限定されない。
本明細書において「幹細胞」とは、自己複製能を有し、多分化能(すなわち多能性)(「pluripotency」)を有する細胞をいう。幹細胞は通常、組織が傷害を受けたときにその組織を再生することができる。本明細書では幹細胞は、組織幹細胞(組織性幹細胞、組織特異的幹細胞または体性幹細胞ともいう)であり得るがそれらに限定されない。また、上述の能力を有している限り、人工的に作製した細胞(たとえば、本明細書において記載される融合細胞、再プログラム化された細胞など)もまた、幹細胞であり得る。胚性幹細胞とは初期胚に由来する多能性幹細胞をいう。胚性幹細胞は、1981年に始めて樹立され、1989年以降ノックアウトマウス作製にも応用されている。1998年にはヒト胚性幹細胞が樹立されており、再生医学にも利用されつつある。組織幹細胞は、胚性幹細胞とは異なり、分化の方向が限定されている細胞であり、組織中の特定の位置に存在し、未分化な細胞内構造をしている。従って、組織幹細胞は多能性のレベルが低い。組織幹細胞は、核/細胞質比が高く、細胞内小器官が乏しい。組織幹細胞は、概して、多分化能を有し、細胞周期が遅く、個体の一生以上に増殖能を維持する。本明細書においては使用される場合は、幹細胞は好ましくは間葉系幹細胞のような組織幹細胞であり得るが、状況に応じて胚性幹細胞も使用され得る。
本明細書において幹細胞というときは、幹細胞を少なくとも一定量含む組織集合物をさすことが理解される。したがって、本明細書では、幹細胞は、例えば、コラゲナーゼ処理して脂肪細胞から採取した幹細胞(実施例において使用される幹細胞など)を用いることができるがそれらに限定されない。
由来する部位により分類すると、組織幹細胞は、例えば、皮膚系、消化器系、骨髄系、神経系などに分けられる。皮膚系の組織幹細胞としては、表皮幹細胞、毛嚢幹細胞などが挙げられる。消化器系の組織幹細胞としては、膵(共通)幹細胞、肝幹細胞などが挙げられる。骨髄系の組織幹細胞としては、造血幹細胞、間葉系幹細胞などが挙げられる。神経系の組織幹細胞としては、神経幹細胞、網膜幹細胞などが挙げられる。
本明細書において「脂肪幹細胞」とは、脂肪組織に由来する幹細胞をいう。このような幹細胞の分離方法の一部は公知であり、例えば、脂肪幹細胞は、WO00/53795;WO03/022988;WO01/62901;Zuk,P.A.,et al.、Tissue Engineering,Vol.7,211−228、2001;Zuk,P.A.,et al.、Molecular Biologyof the Cell Vol.,13,4279−4295、2002などに記載される方法またはその改変を利用して調整することができる。具体的には例えば、(1)脂肪吸引物を分液漏斗を用いて生理食塩水で十分に洗浄し;(2)上層に脂肪吸引物、下層に生理食塩水が十分に分離したのを確認し、下層を捨てる。肉眼で見て生理食塩水がほぼ透明になるまでこれを繰り返し;(3)脂肪吸引物と同量の0.075%コラゲナーゼ/PBSを加え、37℃でよく攪拌しながら30分間インキュベートし;(4)上記の試料に等量の10%血清加DMEMを加え;(5)上記の試料を1200gで10分間遠心分離し;(6)ペレットにPBSを加えて懸濁し、室温で適宜(例えば、10〜15分間)インキュベートし;(7)上記の試料を口径100μmのメッシュを用いて吸引ろ過し;および(8)ろ過物を1200gで5分間遠心分離することによって調整することができる。ここで、調整量に応じて、上記プロトコールをスケールアップまたはスケールダウンすることは、当業者の技術範囲内である
その細胞マーカーとしては、例えば、CD4、CD13、CD34、CD36、CD49d、CD71、CD90、CD105、CD117、CD151;あるいは、CD105、CD73、CD29、CD44およびSca−1からなる群より選択される細胞表面マーカーが挙げられるがそれらに限定されない。あるいは、間葉系幹細胞の表面抗原は、CD105(+)、CD73(+)、CD29(+)、CD44(+)、CD14(−)、CD34(−)、CD45(−)であるとされており、少なくともこのいずれか一つ、好ましくはその2以上、より好ましくはそのすべての性質を示す細胞が本発明において使用される細胞として好ましいことが理解される。
本システムにより確立された細胞は角膜シート再生培養のフィーダー細胞への応用も期待される。なぜなら従来なら角膜細胞のフィーダーにはマウスの線維芽細胞が用いられていたが、本システムが実用化されると、容易にヒト細胞を使用できる。細胞再生移植としても極めてニーズが高いと考えられる。
本明細書において「線維芽細胞」とは、支持組織の繊維成分を供給し、繊維性結合組織の重要な成分をなす細胞をいう。組織切片図では、扁平で長目の外形をもち、不規則な突起を示すことが多い。細胞質は、ミトコンドリア、ゴルジ体、中心体、小脂肪球などを含むが、そのほかに特殊な分化は示さない。核は楕円形をしており、しばしば膠原繊維に密接して存在する。脂肪組織から分離された線維芽細胞は、幹細胞をよく含むといわれている。
本明細書において「分化(した)細胞」とは、機能および形態が特殊化した細胞(例えば、筋細胞、神経細胞など)をいい、幹細胞とは異なり、多能性はないか、またはほとんどない。分化した細胞としては、例えば、表皮細胞、膵実質細胞、膵管細胞、肝細胞、血液細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、骨芽細胞、骨格筋芽細胞、神経細胞、血管内皮細胞、色素細胞、平滑筋細胞、脂肪細胞、骨細胞、軟骨細胞などが挙げられる。本発明において用いられる場合、分化細胞は、集団または組織の形態であってもよい。
本発明の細胞は、細胞の維持または所望の分化細胞へ分化する限り、任意の培養液を用いることができる。そのような培養液としては、例えば、DMEM、P199、MEM、HBSS、Ham‘s F12、BME、RPMI1640、MCDB104、MCDB153(KGM)およびそれらの混合物などが挙げられるがそれらに限定されない。このような培養液には、デキサメタゾンなどの副腎皮質ステロイド、インスリン、グルコース、インドメタシン、イソブチル−メチルキサンチン(IBMX)、アスコルベート−2−ホスフェート、アスコルビン酸およびその誘導体、グリセロホスフェート、エストロゲンおよびその誘導体、プロゲステロンおよびその誘導体、アンドロゲンおよびその誘導体、aFGF、bFGF、EGF、IGF、TGFβ、ECGF、BMP、PDGFなどの増殖因子、下垂体エキス、松果体エキス、レチノイン酸、ビタミンD、甲状腺ホルモン、ウシ胎仔血清、ウマ血清、ヒト血清、ヘパリン、炭酸水素ナトリウム、HEPES、アルブミン、トランスフェリン、セレン酸(亜セレン酸ナトリウムなど)、リノレン酸、3−イソブチル−1−メチルキサンチン、5−アザンシチジンなどの脱メチル化剤、トリコスタチンなどのヒストン脱アセチル化剤、アクチビン、LIF、IL−2・IL−6などのサイトカイン、ヘキサメチレンビスアセトアミド(HMBA)、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジブチルcAMP(dbcAMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヨードデオキシウリジン(IdU)、ヒドロキシウレア(HU)、シトシンアラビノシド(AraC)、マイトマイシンC(MMC)、酪酸ナトリウム(NaBu)、ポリブレン、セレニウム、コレラトキシンなどを1つまたはその組み合わせとして含ませておいてもよい。
本明細書において「生体内」または「インビボ」(in vivo)とは、生態の内部をいう。特定の文脈において、「生体内」は、目的とする組織または器官が配置されるべき位置をいう。
本明細書において「インビトロ」(in vitro)とは、種々の研究目的のために生体の一部分が「生体外に」(例えば、試験管内に)摘出または遊離されている状態をいう。インビボと対照をなす用語である。
本明細書において「エキソビボ」とは、遺伝子導入を行うための標的細胞を被験体より抽出し、インビトロで治療遺伝子を導入した後に、再び同一被験体に戻す場合、一連の動作をエキソビボという。
1つの実施形態において、本発明の再生治療法における培養の条件、および本発明において使用される所望の臓器、組織または細胞の一部またはそれに分化し得る幹細胞の培養の提供の条件は、その細胞、組織または臓器を培養するために通常用いられるものであれば、用いることができる。そのような培養条件の例としては、例えば、培養条件は通常、37℃、5%COを利用することができる。使用する培地もまた、任意のものを利用することができ、例えば、DMEM/Ham12(1:1)、10%FCS、インスリン・コレトキシンなどを含む培地を利用することができる。また、必要に応じて、分化因子(例えば、EGF(10ng/ml)を予め含めた培養液を使用してもよいがそれらに限定されない。
1つの好ましい実施形態において、本発明の方法における培養のために、分化因子を加えることができる。そのような分化因子としては、例えば、DNA脱メチル化剤(5−アザシチジンなど)、ヒストン脱アセチル化剤(トリコスタチンなど)、核内レセプターリガンド(例えば、レチノイン酸(ATRA),ビタミンD、T3など)、細胞増殖因子(アクチビン、IGF−1、FGF、PDGF、TGF−β、BMP2/4など)、サイトカイン(LIF、IL−2、IL−6など)ヘキサメチレンビスアセトアミド、ジメチルアセトアミド、ジブチルcAMP、ジメチオルスルホキシド、ヨードデオキシウリジン、ヒドロキシル尿素、シトシンアラボノシド、マイトマイシンC、酪酸ナトリウム、アフィディコリン、フルオロデオキシウリジン、ポリブレン、セシンなどが挙げられるが、それらに限定されない。角膜への分化には、EGFという分化因子を加えることができる。他の分化細胞についてもまた、本明細書において記載される任意の分化因子を使用することができる。
本発明では、新規なヒト脂肪前駆細胞株を示す。通常、ヒト細胞は培養が困難であり、長期間の培養は勿論のこと、その培養操作自身にも熟練技術が必要であった。本発明に示すヒト脂肪前駆細胞株とは取り扱い易い、全く新規な細胞株である。本発明のヒト脂肪前駆細胞株は脂肪細胞に分化され易い特徴を有する。このような細胞株は従来技術では全く得られなかったものである。その際、脂肪細胞の同定は形態、脂肪滴貯留、代謝判定、フィーダー効果等の脂肪細胞独特な特徴をもって判断できる。
本発明で示すところのヒト脂肪前駆細胞株とは不死化されたものである。ヒト細胞の場合、通常、不死化させることは困難でそのような中、シミアンウィルス40ラージT抗原(SV40 T−Ag)やテロメアーゼ酵素(hTERT)を用いて脂肪前駆細胞を不死化させ、回収する方法が開示されているが、この技術では脂肪細胞に分化されにくいという課題があった。
本発明のヒト脂肪前駆細胞株は、脂肪幹細胞、線維芽細胞、及びフィーダー細胞として利用できる特徴を有する。
本発明は、ヒト脂肪組織から採取した脂肪前駆細胞からヒト脂肪前駆細胞株を得る方法を示す。その際、不死化及びクローン化の際の正確かつ厳密な細胞の取り扱いに注意を払う必要がある。
本発明は、ヒト脂肪前駆細胞株を利用した医薬品のスクリーニング、食品、及び食品成分のスクリーニング方法に有用である。
以下に、本発明を実施例に基づいて更に詳しく説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
以下に示した実施例において使用した試薬は、特に言及しない限り和光純薬、Sigmaから得た。ヒトを対象とする場合は、厚生労働省の基準に従い、事前に同意を得た上で実験を行った。
(脂肪組織からの脂肪前駆細胞の単離)
本実施例では、まず、本実験に対して同意を示したヒトから細胞を脂肪組織から調整した。脂肪吸引物を生理食塩水で十分に洗浄した。上層に脂肪吸引物、下層に生理食塩水が十分に分離したのを確認し、下層を捨て、肉眼で見て生理食塩水はほぼ透明になるまでこれを繰り返した。この実験例では、7回行った。脂肪組織を40mlと同量40mlの0.075%コラゲナーゼ/PBS(Gibco)を加え、37℃でよく攪拌しながら1時間インキュベートした。この試料に、同量の10%血清加DMEMを加え、1200×gで10分間遠心分離した。
遠心分離により得られたペレットに0.16M HNCl/PBS(Gibco)を加え懸濁し、25℃で20分間インキュベートした。この試料を口径100μmのメッシュ(Whatman)を用いて吸引ろ過した。このろ過物を1200×gで5分間遠心分離した。
(脂肪前駆細胞の不死化)
脂肪前駆細胞を5×10cells/cmの濃度で細胞培養用プレートあるいはディッシュにまく。4日から6日たつとほぼ一面にはえひろがる。そこで、細胞を0.25%トリプシン(1mM EDTA含有)溶液を用いて回収する。回収した細胞数を数えた後、再び5×10cells/cmの濃度でまく。この操作を繰り返す。
(脂肪前駆細胞株のクローン化)
不死化したと考えられる細胞群を1穴に細胞が0.5個入ると考えられる濃度に希釈し、96穴プレートにまく。2週間ほど後に増殖が観察された穴から細胞を回収する。それぞれのクローンについて、その脂肪細胞への分化能を確かめ、脂肪細胞へと分化するクローンを選び出した。
図1に脂肪前駆細胞の増殖のようすを示す。1週間に一度の継代を繰り返し、何回分裂したかをグラフ化したものである。例えば、3×10の細胞が1週間で1.2×10になった場合、計算上は4倍、つまり1個の細胞が2回分裂したことになるのでDoubling numberを2として、これを累積した結果である。
脂肪前駆細胞の培養を続けた結果、継代数が4から9まではほぼ一定の割合で増殖した。しかし、継代数が10以降になると、いったん12継代目では増殖がよくなったものの、15継代目までは増殖が悪かった。その後、徐々に増殖率は良くなり、21継代目にはほぼもとの増殖能にもどった。このことは、Greenらが報告している3T3L1細胞を樹立したときに観察された現象と同じであると考えられる。しかし、彼らは胎児の線維芽細胞を出発材料に用いており、われわれとは異なる。われわれは、胎児の細胞よりも増殖が悪く、細胞として成熟した段階の細胞を出発材料として用いている。このような細胞を用いても、正常細胞を不死化させることができた点については、他に報告はなく新規性が高い。
クローン化の方法は、モノクローナル抗体を作る細胞をクローン化する方法を応用したものであるが、われわれはすでにこの方法を用いてマウスの胎児線維芽細胞からの脂肪前駆細胞のクローン化にも成功している。これは、Greenらが3T3L1細胞を樹立したときの方法とは異なっており、独創的な方法と考えられる。また、21継代目の細胞を分化させたところ、かなりの割合で脂肪細胞にと分化することを確かめており、クローン化は有望と考えられる。
(脂肪細胞への分化)
コンフルエントまで増殖させた脂肪前駆細胞を脂肪細胞分化用培地で2日おきに処理した。分化開始日と2日目には、0.5mM IBMX、1μMデキサメタゾン、1μMトリグリタゾン、5μg/mlインスリンを含んだ10%CCS−DMEM培地で処理した。4日目には、トリグリタゾンとインスリンを含んだ10%CCS−DMEM培地で、6日目以降は、500ng/mlインスリンを含んだ10%CCS−DMEMで処理した。分化の割合は、分化誘導後10日目以降に観察した。図2に結果を示す。
1)ヒト脂肪細胞を用いて、容易に創薬や代謝の研究を行うことができる。従って脂肪細胞に分化するとされているマウス3T3−L1とってかわる。
2)再生医療分野では、現在汎用されているマウス由来フィーダー細胞(NIH3T3細胞やJ2細胞)に取って代わる可能性がある。すなわち、異種移植でなく同種移植となることができる。
3)本細胞は脂肪幹細胞として多系統に分化しうるものであり、再生医療の臓器或いは細胞ソースになる可能性がある。
実施例1の脂肪由来線維芽細胞の増殖のようすを示した図である。 実施例2の脂肪細胞への分化後のようすを示した図である。

Claims (6)

  1. 脂肪細胞に分化されやすいことを特徴とするヒト脂肪前駆細胞株。
  2. 細胞が不死化されたものである、請求項1記載のヒト脂肪前駆細胞株。
  3. 脂肪幹細胞、線維芽細胞、及びフィーダー細胞として利用できる特徴を有する、請求項1、2いずれか1項記載のヒト脂肪前駆細胞株。
  4. ヒト脂肪組織から採取した脂肪前駆細胞に対し、継代培養を繰り返すことを特徴とするヒト脂肪前駆細胞株製造方法。
  5. 請求項1〜3のヒト脂肪前駆細胞株を利用した医薬品スクリーニング方法。
  6. 請求項1〜3のヒト脂肪前駆細胞株を利用した食品、或いは食品成分スクリーニング方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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