JP2005278434A - 培養温度による哺乳類細胞でのRNAi効果の制御技術 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、培養温度による哺乳類細胞でのRNAi効果の制御技術である。
【解決手段】本発明は、小さなRNA分子で遺伝子を抑制できるRNAi効果を温度で制御する手法である。この発明はタンパク質の生合成を温度で抑制する技術である。RNAiはin vivoでも遺伝子サイレンシングに広範に用い得る手法であり、癌やウイルス感染症の温度療法である。
【選択図】なし
【解決手段】本発明は、小さなRNA分子で遺伝子を抑制できるRNAi効果を温度で制御する手法である。この発明はタンパク質の生合成を温度で抑制する技術である。RNAiはin vivoでも遺伝子サイレンシングに広範に用い得る手法であり、癌やウイルス感染症の温度療法である。
【選択図】なし
Description
現在の内科的治療では充分に治療することが不可能である癌・免疫不全・ウイルス感染症の治療分野。
RNA interference (RNAi)現象は現在大きな注目を浴び続けている。この反応はほとんどの真核生物に保存されており、抗ウイルス反応やエピジェネティックな遺伝子発現の制御に重要であると考えられている。植物や昆虫でRNAi効果の温度依存性が報告されていたことから、我々はその進化的保存を予測し、哺乳類細胞でのRNAi効果について外来遺伝子発現を指標として様々な温度条件下で解析した。その結果として低体温域温度でのRNAi効果の抑制を検出した。この現象は外来・内在の遺伝子発現をRNAi効果により制御する上で有用であり得る。
RNAiは2本鎖RNA分子に応答し、塩基配列特異的なRNA分解を引き起こす反応である。RNAi反応はほとんどの真核細胞で高度に保存されている。RNAiの生化学反応の過程は未だ完全には解明されていないが、1)RNase III類似酵素(DICER)による2本鎖RNAの切断による低分子干渉RNA(siRNA)の生成、2)核酸分解酵素複合体(RISC)による標的RNAの特異的な分解などいくつかの反応からなることが知られている。
RNAiは2本鎖RNA分子に応答し、塩基配列特異的なRNA分解を引き起こす反応である。RNAi反応はほとんどの真核細胞で高度に保存されている。RNAiの生化学反応の過程は未だ完全には解明されていないが、1)RNase III類似酵素(DICER)による2本鎖RNAの切断による低分子干渉RNA(siRNA)の生成、2)核酸分解酵素複合体(RISC)による標的RNAの特異的な分解などいくつかの反応からなることが知られている。
いくつかの生物種ではRNA依存性RNA合成酵素(RdRP)によるsiRNAの増幅や、siRNAの細胞間輸送による全身性の反応がRNAi反応を増幅することが判明している。真核生物のRNAi反応は抗ウイルス反応の1つであると同時に、内在トランスポゾンの抑制などを含めた染色体の制御機構であると考えられる。
ほとんどの生化学反応は温度感受性である。ショウジョウバエにおいては温度感受性のRNAiが報告されている。この場合、ハエの性決定に関わる遺伝子に対するRNAi効果は29℃では顕著であったが22℃では強く抑制された。抗ウイルス反応としての温度感受性RNAiは植物でも報告されている。この場合のsiRNA合成に阻害をきたす温度は24℃以下であった。
植物においてRNAiの抑制が外来遺伝子の発現を劇的に促進することから、我々は低温が哺乳類RNAiをも抑制し外来遺伝子の発現を促進するのではないかと期待した。
特願2001-141594
特願2002-127089
Biochem. Biophys. Res. Commun..315, 599-602 (2004)
mRNAの段階で遺伝子の発現を消失させてしまう手法の確立は、分子生物学者にとって夢でもあった。RNA interferenceは、小さなRNA分子で遺伝子を抑制できる大変魅力的な手法です。RNAi現象は現在大きな注目を浴び続けている。この反応はほとんどの真核生物に保存されており、抗ウイルス反応やエピジェネティックな遺伝子発現の制御に重要であると考えられている。RNAiを用いて遺伝子の機能の実証(同定と属性の特定)する技術はますます必要になってきた。植物や昆虫でRNAi効果の温度依存性が報告されていたが、哺乳類細胞ではRNAi効果の温度依存性について未だ報告はない。解決すべき問題点は、in vitroでの哺乳動物由来の細胞培養系で温度制御技術を開発することである。
また、癌組織を中程度の加熱で壊死させる温熱療法はよく用いられているが、RNAi効果の温度制御を利用した癌治療法は未だ報告はない。その他、ウイルス感染症や免疫不全症に対するRNAi効果の温度制御治療法は未だ報告はない。
本発明は、培養温度による哺乳類細胞でのRNAi効果の制御技術である。
本発明は、小さなRNA分子で遺伝子を抑制できるRNAi効果を温度で制御する大変魅力的な手法である。この手法を用いてタンパク質の生合成を温度で抑制できる。RNAiはin vivoでも遺伝子サイレンシングに広範に用い得る手法であり、癌やウイルス感染症の温度療法に応用できる。
よって、下記のような研究では、RNAi効果の温度制御は必須の技術となるだろう。
1)真核細胞の転写後遺伝子発現阻害。この種の研究では、RNAiは、遺伝子の機能と、当該遺伝子が発現していない状態での表現型の迅速な解析のための、直截的な手段となる。
2)移植後の胚で使用するためのRNAi技術開発。
3)ヒトの病気を治療するための、RNAiを利用したRNA医薬品の開発(RNAiの経済的価値の大部分は治療への応用の可能性に由来する)。
1)真核細胞の転写後遺伝子発現阻害。この種の研究では、RNAiは、遺伝子の機能と、当該遺伝子が発現していない状態での表現型の迅速な解析のための、直截的な手段となる。
2)移植後の胚で使用するためのRNAi技術開発。
3)ヒトの病気を治療するための、RNAiを利用したRNA医薬品の開発(RNAiの経済的価値の大部分は治療への応用の可能性に由来する)。
本発明において、我々は種々の異なる培養温度が哺乳類細胞でのRNAi効果に及ぼす影響を解析し、低体温域条件における抑制技術を開発した。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
すべての細胞は牛胎児血清を10%含むD-MEM培地で培養された。遺伝子導入にはリポフェクション法(Invitrogen社)を用いた。24well プレートに培養された細胞に対して0.2μgずつのGFP発現プラスミドとLacZ 発現プラスミドを外来遺伝子として導入した。RNAi誘導のためにはプラスミドと共に5pmolの短鎖RNAを導入した。導入した短鎖RNAは1)GFP5(GFPを標的とする)、2)siGFP(GFPを標的とし、GFP5とは異なる塩基組成を持つ)、3)siLacZ(LacZを標的とする)、4)非特異的短鎖RNA(ネガティブコントロール)である。遺伝子導入後に細胞を異なる温度条件で培養した。
遺伝子導入後1〜5日後に全細胞抽出液を調整しSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法で解析した。泳動後のタンパク質をイモビロン膜(ミリポア社)に転写し、抗GFP抗体並びに抗LacZ抗体を用いて特異的タンパク質の発現解析を行った。タンパク質発現レベルは各タンパク質のバンドの濃さを画像解析ソフトにより定量することで検定した。GFP並びにLacZに対するRNAi効果はそれぞれ同時に導入したLacZあるいはGFPの発現レベルを用いた補正を行った。遺伝子導入の効率は全タンパク質量の定量から判断して、各実験において高度に安定していた。
内在遺伝子をRNAiにより抑制すると細胞の生存に不利な効果が生じる場合があるため、RNAiの効果をより客観的に解析するために我々は外来遺伝子(GFPならびにLacZ)を用いた実験を行った。GFP並びにLacZを発現するプラスミドと共に特異的siRNAを導入することでNIH-3T3細胞において特異的なRNAiを誘導できることを確認した(図1B)。
この実験系を用いて我々はRNAiの効果を次の式で算出した。
RNAi抑制度=(標的特異的siRNA導入細胞での標的遺伝子の発現レベル)/(標的特異的siRNA導入細胞での標的遺伝子の発現レベル)
RNAi抑制度=1は標的遺伝子がRNAiで全く抑制されていないことを、RNAi抑制度=0は標的遺伝子の発現がRNAiにより完全に抑制されたことを示す。
RNAi抑制度=(標的特異的siRNA導入細胞での標的遺伝子の発現レベル)/(標的特異的siRNA導入細胞での標的遺伝子の発現レベル)
RNAi抑制度=1は標的遺伝子がRNAiで全く抑制されていないことを、RNAi抑制度=0は標的遺伝子の発現がRNAiにより完全に抑制されたことを示す。
我々は経験的に哺乳類細胞を緩やかな低体温域で培養することで外来遺伝子の発現を促進できた(図1AにGFP・HEK 293細胞・NIH-3T3細胞を用いた確認実験を示す)。我々はヒトHEK 293細胞並びにマウスNIH-3T3細胞を用いて39℃〜26℃(培養細胞の生存を考慮し、高体温から低体温域)における実験を行った。
図1Cに示すようにGFP5によるGFPを標的としたRNAi効果は両細胞株において28℃以下の温度で顕著に抑制された。この抑制効果は遺伝子導入後5日間にわたって維持されていた(図2A)。この低体温域におけるRNAi効果の抑制はsiGFPを用いた場合も同様に顕著であったが、LacZを標的としたsiLacZによるRNAiに対しては若干弱い効果を示した(図2B)。
図1Cに示すようにGFP5によるGFPを標的としたRNAi効果は両細胞株において28℃以下の温度で顕著に抑制された。この抑制効果は遺伝子導入後5日間にわたって維持されていた(図2A)。この低体温域におけるRNAi効果の抑制はsiGFPを用いた場合も同様に顕著であったが、LacZを標的としたsiLacZによるRNAiに対しては若干弱い効果を示した(図2B)。
我々は37℃と28℃におけるGFP5によるRNAi効果をいくつかの哺乳類細胞株を用いて解析した。STO細胞(マウス)COS-1細胞(アフリカミドリザル)を用いた場合もHEK 293細胞(ヒト)、NIH-3T3細胞(マウス)を用いた場合と同様に28℃でのRNAi効果の抑制が観察された(図3)。ラット由来3Y1細胞では28℃におけるRNAi抑制効果はそれほど顕著ではなかった。
本実験において我々はいくつかの哺乳類培養細胞株を用いて、昆虫や植物で報告されていたRNAi効果の温度感受性を見いだした。これは本現象の真核生物おける進化的保存を示唆する。GFP並びにLacZに対するRNAi効果の温度感受性は異なっていた(図2B)。GFPを標的としたRNAiは異なる塩基組成を持つsiRNA(GFP5とsiGFP)において同様な温度感受性を示した。一方でLacZを標的としたsiLacZによるRNAiは低温に対して比較的耐性を示した。これは標的遺伝子ごとにRNAiの温度感受性が異なることを示唆する。
本現象は哺乳類細胞が低体温域条件で外来遺伝子を高発現することの一つの原因である可能性がある。また、RNAi現象を実験・臨床に応用する場合、試験管内あるいは生体中で温度条件をコントロールすることでその効果を調節しうるという点で有用である。
恒温動物である哺乳類でのRNAi効果の温度感受性の生物学的意義は不明である。しかし、温度条件が変温動物の発生・代謝・行動(性決定や冬眠を含む)に大きな影響を与えることはよく知られている。近年、染色体制御の上でRNAiによる染色体上の可動繰り返し配列の抑制が重要な役割をなしていることが判明した。遺伝子発現におけるクロマチン効果や、内在トランスポゾンの活性化が昆虫・植物・菌類で温度感受性であることは示唆的である。温度感受性RNAiは変温動物や、低体温条件の哺乳類にとっても外来・内在の遺伝子発現をエピジェネティックに調節する上で重要な役目を持つのかもしれない。
真核細胞の転写後遺伝子発現阻害の温度制御により、遺伝子の機能と当該遺伝子が発現していない状態での表現型の迅速な解析のための直截的な手段となり、遺伝子の機能を解明するための基礎研究に利用できる。また、哺乳動物細胞の増殖・分化を温度制御できるので、再生医療に応用できる。さらに、ヒトの病気を治療するための、RNAiを利用したRNA医薬品の開発に利用できる。最後に、現在の温熱治療や遺伝子治療では充分に治療することが不可能である癌治療が可能になると期待される。
Claims (3)
- 培養温度による哺乳類細胞でのRNAi効果の制御技術
- RNAiを用いた遺伝子の機能の実証(同定と属性の特定)のための温度制御技術
- RNAiを用いた癌治療・免疫治療のための温度制御技術
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JP2004094363A JP2005278434A (ja) | 2004-03-29 | 2004-03-29 | 培養温度による哺乳類細胞でのRNAi効果の制御技術 |
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US11014424B2 (en) | 2014-10-31 | 2021-05-25 | Gentherm Incorporated | Vehicle microclimate system and method of controlling same |
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2004
- 2004-03-29 JP JP2004094363A patent/JP2005278434A/ja active Pending
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US11014424B2 (en) | 2014-10-31 | 2021-05-25 | Gentherm Incorporated | Vehicle microclimate system and method of controlling same |
US11718146B2 (en) | 2014-10-31 | 2023-08-08 | Gentherm Incorporated | Vehicle microclimate system and method of controlling same |
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