JP2005250721A - 蛋白質または高分子複合体の検索・照合方法及び装置 - Google Patents
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Abstract
一般に立体形状情報の解析に基づく対象化合物の設計、スクリーニングは自動化されておらず工数を要する。更に、創薬上重要とされる膜蛋白質等、X線結晶解析やNMRによる立体形状解析が不可能な蛋白質に対し、立体形状に基づく解析は不可能であった。
【解決手段】
透過型電子顕微鏡によって得られた蛋白質立体形状情報を用いて、蛋白質立体形状データベースから、類似機能を有する蛋白質、または特異的に反応する蛋白質候補を検索するようにした。
【選択図】 図1
Description
従来の創薬プロセスにおいては、基礎研究段階で抽出された大量の新規化合物の薬理的な有用性を、実験により網羅的に調査していた。結果として、開発された新規化合物のごく一部のみが最終的な臨床試験に合格するにすぎなかった。例えば、1994年度から1998年度においては開発された新規化合物に対し製造承認を取得した割合は1/6、039に過ぎない、との報告がある。また、基礎研究段階から、各種スクリーニング、臨床試験を経て、審査承認、認可に至るまでは10〜18年もの長い年月を要していた。このため、創薬ターゲットの絞込みによる創薬プロセスの高効率化、開発期間の短縮が強く求められている。
(2)ゲノム創薬プロセス
これに対し、近年のゲノム創薬と呼ばれるアプローチにおいては、疾患特異的に過剰発現または発現が抑制される標的遺伝子を特定し、標的遺伝子がコードする蛋白質に対して特異的に作用する化合物を、いわば狙い撃ちで開発することを目指す。従来の創薬プロセスに対し、短期間、高効率の創薬が可能になると期待されている。
各種受容体、分泌蛋白質などをコードする遺伝子との相同性解析やDNAマイクロアレイなどの手法により、標的遺伝子として特定する。
例えば、標的遺伝子の発現を完全に遮断あるいは抑制した遺伝子改変動物の観察により、有効性を検証する。
標的遺伝子がコードする蛋白質を発現、取得し、前記蛋白質に対して特異的に結合する化合物の合成、スクリーニングを行う。
X線結晶解析、またはNMR(Nuclear Magnetic Resonance)を用いて特定された原子座標のデータベース(PDB:Protein Data Bank)への登録が進んでいる。また、一部では、蛋白質分子表面形状のデータベース(eF−site等)への登録も進んでいる。
蛋白質の立体形状解析に用いられている主要なツールは、X線結晶解析、またはNMR(Nuclear Magnetic Resonance)である。これらのツールはいずれも、サンプル作成が困難なため適用可能な対象が限定される、という問題がある。
図1を用いて、本実施の形態による蛋白質または高分子複合体の検索・照合方法の全体構成と概要を説明する。11は蛋白質試料、12は蛋白質試料11を撮像するための透過型電子顕微鏡である。透過型電子顕微鏡12はコンピュータと13の指令により、蛋白質試料11に対する電子線の照射方向を変えながら繰り返し撮像し、撮像した画像をコンピュータ13に転送する。次に、コンピュータ13は、転送されてきた蛋白質試料11の画像をコンピュータトモグラフィの原理に従って処理して標的蛋白質の立体形状を再構成し、3次元モデル14をコンピュータ内に生成する。また、再構成した立体形状から3次元形状特徴(大きさ、体積等)や、3次元構造特徴(チャネル構造、突起部、窪み部の有無)の抽出を行う。
図1の12として示した透過型電子顕微鏡の構成を図2に示す。電子銃21から射出された電子ビームは、電子レンズ、偏向系22を介して試料支持台23が支持する試料24上に収束されて試料24を透過する。試料24を透過した電子は電子線検出器25により検出され、検出された信号は増幅、AD変換された後に、画像信号としてコンピュータ26に転送される。試料支持台23の傾き角を変えて(ステージチルト)試料24を照射する電子線の照射方向を変えた像を多数撮像することにより、立体形状を再構成するための画像群を得る。なお、試料支持台23の傾き角を変える代りに、電子線の試料24への入射角を変える(ビームチルト)ようにしても良く、ステージチルトとビームチルトとを組合わせて多数の画像を得るようにしても良い。
図1のコンピュータ13における立体形状の再構成方法を、コンピュータトモグラフィにおいて一般的に行われている逆投影法の原理を例に、図3を用いて説明する。図3では簡便のため、X方向にX線を透過、撮像した像を1次元波形311、Y方向にX線を透過、撮像した像を1次元波形321、として示す。逆投影とは、投影波形上の任意の点Pにおける信号レベルfを投影直線上Lpに存在する全ての点に加算する操作をいう。再構成においては、全ての投影方向に対して逆投影を行い、投影前の濃淡分布を再構成する。図3の例では1次元波形311をX方向に、1次元波形321をY方向に逆投影する。一般にはmissing coneと呼ばれる撮像不可能な方向が存在し、特定方向への投影情報が欠落するが、通常、代数的手法と呼ばれる再構成手法により、立体形状再構成の高精度化が可能とされている。
本データベースは2種類のデータからなる。
第一のデータである蛋白質の原子座標情報161は、X線結晶解析やNMR(Nuclear Magnetic Resonance)を用いて得られた分子を構成する各原子の3次元座標群である。座標データであるため、蛋白質の立体形状解析のために直接利用することは難しく、また高分子におけるデータ量はメガバイトオーダであり、少なくない。従来、一般に公開されているデータベースであるPDB(Protein Data Bank)には、この形態でデータが集積されている。
データベースサーバ17の第一の機能は、データベース16に登録された蛋白質の原子の3次元座標から立体形状データを生成し、データベース16に登録する点にある。分子立体形状データは、分子表面形状データや分子立体形状ボリュームデータ、もしくはその圧縮データである。
STEP1:データベースの更新
STEP2:標的蛋白質のデータ取得
STEP3:データベースへの問い合わせ
図は、コンピュータにおけるユーザインターフェース画面を示す。
標的蛋白質の再構成像を示す。
特徴部位の抽出機能
チャネル(トンネル状構造)、突起、窪み状構造
STEP4:検索・照合処理
標的蛋白質の形状特徴と構造特徴を用いた検索を行う。例えば、以下の問い合わせを行う。
コンピュータディスプレイ上でマニュアルで指定した部位、あるいは、特徴抽出ステップで抽出した部位と、活性が予想される蛋白質の検索を指示する。これにより標的蛋白質の機能発現を抑制するための候補物質を効率的に探索する。
コンピュータディスプレイ上でマニュアルで指定した部位、あるいは、特徴抽出ステップで抽出した部位と、類似した構造を有する蛋白質、あるいは活性部位の検索を指示する。あるいは、また標的蛋白質の立体形状自体を検索キーとして、検索を指示する。これにより標的蛋白質の機能を予測する。
立体形状特徴を直接指定して検索を行う。例えば、一定以上の径のチャネルを有する蛋白質の検索やを指示する。
STEP5:出力
[3]検索・照合処理
次に、コンピュータ13における検索・照合処理について、図11を用いて説明する。
前記検索・照合処理により合致度が高いと特定されたデータベースの蛋白質の情報を用いて、特異的に結合する化合物の合成,スクリーニングを行う。
この場合,標的蛋白質分子に対して特異的に結合する化合物の設計や,設計した化合物と他の生体蛋白質の相互作用(副作用)を予測する方法として,蛋白質の立体構造解析に基づくアプローチがある。
構造ゲノムにおいては,蛋白質の機能が立体構造と高い相関がある事実に基づき,化合物の設計や化合物の機能予測を行う。例えば,機能既知の蛋白質活性部位と標的蛋白質分子の形状を比較観察することにより,形状類似性から機能類似性を予測したり,標的蛋白質の形状観察により,リガンド部位を特定,リガンドとの結合が予想される化合物を設計する。
14・・・標的蛋白質試料の3次元モデル 15・・・蛋白質立体構造解析装置
16・・・蛋白質データベース 17・・・データベースサーバ 21・・・電子銃
22・・・電子レンズ、偏向系 23・・・試料指示台 24・・・試料
25・・・電子線検出器 26・・・コンピュータ 61・・・データ登録時における処理フロー 62・・・検索・照合時における処理フロー 61、71・・・データベースに登録された分子立体形状表面データ 62・・・標的分子の立体形状表面データ 72、82、92・・・標的分子の立体形状ボリュームデータ 81、91・・・標的分子の立体形状ボリュームデータ 1001・・・立体形状再構成結果
1002・・・特徴量算出領域 1003・・・カーソル 1004、1005・・・スクロールバー 1006・・・特徴量算出実行指示ボタン
Claims (11)
- 試料である蛋白質の立体形状情報を取得する立体形状情報取得手段と、
構造が既知の蛋白質の立体形状情報を記憶するデータベースと、
前記立体形状情報取得手段で取得した試料である蛋白質の立体形状情報と前記データベースに記憶された構造が既知の蛋白質の立体形状情報とを照合する照合手段と、
該照合した結果を出力する出力手段と、
を備えたことを特徴とする蛋白質または高分子複合体の検索・照合装置。 - 前記立体形状情報取得手段として、透過型電子顕微鏡を有し、前記試料である蛋白質の透過電子線画像から立体形状情報を取得することを特徴とする請求項1記載の蛋白質または高分子複合体の検索・照合装置。
- 前記立体形状情報取得手段として、クライオ電子顕微鏡を有し、前記試料である蛋白質のクライオ電子顕微鏡画像から立体形状情報を取得することを特徴とする請求項1記載の蛋白質または高分子複合体の検索・照合装置。
- 前記立体形状情報取得手段として、X線結晶解析装置を有することを特徴とする請求項1記載の蛋白質または高分子複合体の検索・照合装置。
- 前記立体形状情報取得手段として、NMR(Nuclear Magnetic Resonance)を有することを特徴とする請求項1記載の蛋白質または高分子複合体の検索・照合装置。
- 前記データベースには、構造が既知の蛋白質を構成する原子の座標に基づいて、蛋白質分子の表面形状、または電子密度の3次元分布、または、蛋白質分子のシミュレーション電子顕微鏡画像の少なくともいずれか一つを生成した結果が記憶されていることを特徴とする請求項1記載の蛋白質または高分子複合体の検索・照合装置。
- 前記照合手段は、前記データベースに記憶されている構造が既知の蛋白質の立体形状情報を、蛋白質分子の表面形状、または電子密度の3次元分布、または、蛋白質分子のシミュレーション電子顕微鏡画像の少なくともいずれかのデータに変換し、該変換したデータを前記立体形状情報取得手段によって取得した蛋白質の立体形状情報と比較し照合することを特徴とする請求項1記載の蛋白質または高分子複合体の検索・照合装置。
- 試料である蛋白質の立体形状情報を取得し、
構造が既知の蛋白質の立体形状情報をデータベースとて記憶し、
前記取得した試料である蛋白質の立体形状情報を前記データベースに記憶しておいた構造が既知の蛋白質の立体形状情報と照合し、
該照合した結果を画面上に表示する、
ことを特徴とする蛋白質または高分子複合体の検索・照合方法。 - 前記立体形状情報を、前記試料である蛋白質の透過電子線画像、またはクライオ電子顕微鏡画像、またはX線結晶解析の情報またはNMR(Nuclear Magnetic Resonance)の情報の何れかから取得することを特徴とする請求項8記載の蛋白質または高分子複合体の検索・照合方法。
- 前記データベースには、構造が既知の蛋白質を構成する原子の座標に基づいて、蛋白質分子の表面形状、または電子密度の3次元分布、または、蛋白質分子のシミュレーション電子顕微鏡画像の少なくともいずれか一つを生成した結果が記憶されていることを特徴とする請求項8記載の蛋白質または高分子複合体の検索・照合方法。
- 前記照合するステップにおいて、前記データベースに記憶されている構造が既知の蛋白質の立体形状情報を、蛋白質分子の表面形状、または電子密度の3次元分布、または、蛋白質分子のシミュレーション電子顕微鏡画像の少なくともいずれかのデータに変換し、該変換したデータを前記試料である蛋白質の立体形状情報と比較し照合することを特徴とする請求項8記載の蛋白質または高分子複合体の検索・照合方法。
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