JP2005232522A - 原子力発電プラントにおける水素製造システム - Google Patents
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Abstract
【課題】 各種原子力発電プラントの蒸気発生器で生成される蒸気を有効に利用して水素を製造する方法を提供する。
【解決手段】 本発明の一態様は、固体酸化物電解質を隔膜として用いて電解槽を陽極側と陰極側に仕切った高温水蒸気電解装置の陰極側に水蒸気を供給し、陽極側に還元性ガスを供給して高温で水蒸気電気分解を行うことによって水素を製造する方法において、陰極側に供給する水蒸気として、原子力発電プラントの蒸気発生器からの水蒸気の一部を直接使用することを特徴とする高純度水素の製造方法に関する。
【選択図】 図2
【解決手段】 本発明の一態様は、固体酸化物電解質を隔膜として用いて電解槽を陽極側と陰極側に仕切った高温水蒸気電解装置の陰極側に水蒸気を供給し、陽極側に還元性ガスを供給して高温で水蒸気電気分解を行うことによって水素を製造する方法において、陰極側に供給する水蒸気として、原子力発電プラントの蒸気発生器からの水蒸気の一部を直接使用することを特徴とする高純度水素の製造方法に関する。
【選択図】 図2
Description
本発明は、原子力発電プラントで発生する蒸気を利用した水素製造システムに関する。
石炭、石油等の化石燃料、ウラン、太陽光等の一次エネルギーに対し、一次エネルギーから変換された電気、ガス、ガソリン等を二次エネルギーと呼び、地球上には単体(H2)としては存在しない水素もこれに含まれる。
一次エネルギーのうち、石炭、石油、天然ガスは何千〜何億年かけて地球に蓄えられたもので、ある意味では太陽エネルギーが固定されたものとも言える有限なエネルギーである。
第二次大戦以降、それまでの石炭主体から使い易い石油主体へと一次エネルギーがシフトするにつれてその使用量も急増した結果、現在の石油埋蔵量は30〜50年分と予測され、石油生産も2010年過ぎを目処に落ち込んでくると言われている。事実、現在既に石油の重質化と硫黄分の増加が生じており、軽質化と深度脱硫のための水素需要は年々増加している。
他方、CO2排出量は1900年以降急激に上昇し、その結果、大気中のCO2濃度は1800年の280ppmから2000年には360ppmに上昇した。これが過去1世紀の間の0.6℃の平均気温上昇の原因とする説が有力であり、2100年までにさらに1.4〜5.8℃の平均気温の上昇の可能性が指摘されている。
その他、SOx、NOxの排出も深刻な問題であり、今後急速な発展が予想される途上国での排出量の増加が懸念される。いずれにしろ地球環境は一旦悪化すると簡単には元に戻らないことの認識が必要である。
このためCOP3京都議定書では、日本での目標として温室効果ガスを2008〜2012年の間に1990年を基準として6%削減することが盛り込まれた。日本では温室効果ガスの約88%がエネルギー起源のCO2であり、メタンや代替フロン等は数%に過ぎない。2010年の温室効果ガスの排出量増加は、現在の伸びからすると8〜9%であり、従ってその時点で14〜15%の削減が要求されるが、京都メカニズムによる森林吸収を3.7%とすると、実質的に10.3〜11.3%の削減が必要となる。このため政府としては省エネ、コジェネ等による効率向上の他、新エネルギーの積極的導入を図り、2010年で全一次エネルギーの3.2%を新エネルギーとすることを目標としている。
二次エネルギーのうち、電気エネルギーは電力網が完備された状態では使い易く、またエネルギーを作る際は別として、使用する時には何の公害物質も出さないクリーンなエネルギーであり、今後も穏やかながら着実に需要が増大する傾向にある。電気エネルギーの最大の欠点は貯蔵出来ないことである。このため、電気はその利用量に合わせて発電しているのが現状であり、使用のピーク時に合わせて過大な設備を有しておく必要がある。今後期待される風力や太陽光等の自然エネルギーは間欠的にしか得られず、使用ピーク時に合わないことも多い。したがって、これらのエネルギーの有効利用を図るためにも貯蔵、輸送が可能な二次エネルギーが必要である。
水素は物質として貯蔵、輸送が可能で、天然には存在しないが比較的簡単な方法で製造することができ、特に水を電気分解して得る場合には原料は無尽蔵である。また、使用後は再び水として原料を補充することができ、このサイクルは化石燃料と異なり極めて短い時間で完結する。このように水素と電力は電気化学システム(水電解あるいは燃料電池)を通じて互換性があり、全ての一次エネルギーから得られるクリーンなエネルギーであると言える。
以上のように有限な化石燃料と地球環境の保護という観点からは、本来、水素エネルギーシステムのゴールは再生可能エネルギーのみで成り立つことであるが、そのためにはまだまだ困難な技術的課題が残されており、実現まで少なくともあと30〜40年は必要と言われている。それまでは少なくともエネルギーを取り出す段階では、化石燃料に依存せず温室効果ガスの排出が殆ど無い原子力エネルギーを利用した水素製造が、本来あるべき姿に近く、かつ大量に水素を製造可能な技術として各方面から注目されており、1000℃近くの高温を達成出来る高温ガス炉を用いた熱化学法による水の直接分解や、天然ガス等の水蒸気改質による水素製造等が検討されている。
このような状況の中、熱分解ガスで発電した電力を利用する電解法により水素を製造する方法が提案されている。かかる方法では比較的簡単な構成で高純度の水素が得られるが、電力消費が極めて大きい。これらの水素製造法に対して、水蒸気を800℃程度の高温で電解することによって、熱エネルギーを水の分解に利用することで電解電圧を下げて電解電力の低減を図る高温水蒸気電解法が提案されている。しかしながら、この方法でもなお水の分解エネルギーの60%以上を電力で補う必要がある。この高温水蒸気電解法の改善策として、米国特許6,051,125では、電解槽の陽極に天然ガスを供給して陽極側への酸素移動に要する電解電圧を低下せしめる方法が提案されているが、この方法は高価な天然ガスを消費する欠点があるのみならず天然ガスと酸素の反応で析出する炭素による電極の汚染を防止する対策が必要になるなどで、実用上問題がある。
これらの問題点を解決する手段として、いわゆる高温水蒸気電解装置において、(1)廃木材・生ごみなどのバイオマスの熱分解ガスが水素と一酸化炭素を主成分とする還元性ガスであること、(2)高温水蒸気電解槽の陽極側に(1)の還元性ガスを供給して陽極側で酸素イオンと反応させることにより電解電圧を大幅に下げ得ること、(3)水素と一酸化炭素を主成分とする(1)の還元性ガスの酸化反応では炭素の析出がなく電極を汚染する恐れがないこと、などの諸事実に着目して、上記還元性ガスを高温水蒸気電解槽の陽極側に供給して、電解電圧を下げた水素の製造装置が提案された(特願2002−249754号)。当該特許出願で提案された装置は、固体酸化物電解質を隔膜として使用し、該隔膜を電解槽内に配置して電解槽を陽極側と陰極側とに仕切った高温水蒸気電解槽を用いて水蒸気の電気分解によって水素を製造するにあたって、電解槽の陰極側に高温の水蒸気を供給すると共に電解槽の陽極側に還元性ガスを供給して高温で水蒸気電気分解を行うことにより、電解槽の陰極側において水蒸気の電気分解によって生成した酸素イオンが固体酸化物電解質を通過して陽極側に移動し、そこで還元性ガスと反応することにより、酸素イオンの濃度勾配が生じて、これにより陽極側への酸素移動に要する電圧を低下せしめるというものである。かかる装置においては、700〜800℃の高温で水蒸気を分解すると共に、陽極側での酸素の濃度勾配を生じさせることで、極めて効率よい高純度水素の製造を可能にしている。
上記で説明した高温水蒸気電解法は、電解槽の陽極側に還元性ガスを供給することで、陽極側の酸素を除去する方法であり、700℃〜800℃或いはそれ以上の高温で水蒸気を分解することが必要である。一方、現在原子力発電を担う主要な炉型である軽水炉、および近い将来、実用化が期待される高速増殖炉の蒸気発生器から発生する蒸気と高温水蒸気電解との組み合わせは、得られる蒸気の温度領域が軽水炉で最高約300℃、高速増殖炉で最高約500℃と、高温ガス炉の900〜1000℃に比べ低く、高温水蒸気電解における蒸気供給源の対象とは必ずしも見なされていなかった。これは高温水蒸気電解法での電解電圧が1000℃での運転でも約1.3V必要であり、100℃前後のアルカリ又は固体高分子電解法での1.7〜1.8Vと比べ優位差を出すためには出来るだけ高温下での運転が前提となっていたためである。
しかしながら、高温水蒸気電解の熱収支について本発明者らのグループが鋭意検討を重ねた結果、電解槽の陽極側に還元性ガスを陰極側に高温水蒸気を供給するタイプの高温水蒸気電解装置においては、供給する水蒸気並びに還元性ガスの温度が200〜500℃であっても、電解槽での約0.5V程度の過電圧によるジュール熱により、高温水蒸気電解の望ましい運転温度である700〜800℃への昇温が可能であることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて、従来、自身で発電した電力を用いるアルカリ又は固体高分子電解法水素製造が唯一現実に近いとされていた軽水炉及び高速増殖炉においても、電解槽の陽極側に還元性ガスを陰極側に高温水蒸気を供給するタイプの高温水蒸気電解装置を用いることにより、アルカリ又は固体高分子電解法の30%以下の消費電力で水素製造が可能であることを見出し、完成するに至ったものである。
すなわち、本発明は、一態様においては、固体酸化物電解質を隔膜として用いて電解槽を陽極側と陰極側に仕切った高温水蒸気電解装置の陰極側に水蒸気を供給し、陽極側に還元性ガスを供給して高温で水蒸気電気分解を行うことによって水素を製造する方法において、陰極側に供給する水蒸気として、原子力発電プラントの蒸気発生器からの水蒸気の一部を直接使用することを特徴とする高純度水素の製造方法に関する。
なお、本発明でいう「還元性ガス」とは、下記に説明する水蒸気電解槽において固体酸化物電解質膜を通して電解槽の陽極側に通過してくる酸素と反応して、陽極側での酸素濃度を低下させることのできるガスを意味し、メタンガスや、後述する廃材や生ゴミ、バイオマスなどの熱分解ガス、コークス炉や高炉や石油プラントなどの副生ガスなどが含まれる。
図1に、本発明にかかる固体酸化物電解質膜を用いた高温水蒸気電解による水素の製造装置の基本原理を示す。
高温水蒸気電解槽113は、固体酸化物電解質の隔膜114によって陽極側115と陰極側116に仕切られている。高温水蒸気119を電解槽の陰極側116に、還元性ガス110を電解槽の陽極側115に供給して、電力117をAC−DC変換器118で直流に変換して電解槽に通電すると、陰極側116に供給された高温水蒸気119は電解作用で水素と酸素に分解される。生成した水素120が、高純度水素として回収される。一方、生成した酸素121は、固体酸化物電解質の隔膜114を選択的に通過して、過電圧の駆動力によって陽極側115に移動する。陽極側115では、酸素121が還元性ガス110と反応して消費され、酸素イオンの濃度勾配が形成されるので、酸素が陽極側に移動するのに必要な電圧が下がり、電力消費量は大幅に低減される。
本発明者らのグループは、このような高温水蒸気電解槽内での熱収支バランスを検討した。
例えば、電解槽の陽極側にメタンガスを供給する場合は、電解槽の陽極側及び陰極側での反応及び反応熱は次式の通りである。
例えば、電解槽の陽極側にメタンガスを供給する場合は、電解槽の陽極側及び陰極側での反応及び反応熱は次式の通りである。
陽極:CH4+2O2→CO2+2H2O :ΔH=−803kJ
陰極:4H2O→4H2+2O2 :ΔH=+968kJ
したがって、反応の熱収支はトータルでは165kJの吸熱となり、原理的に外部からの熱供給が必要となる。
陰極:4H2O→4H2+2O2 :ΔH=+968kJ
したがって、反応の熱収支はトータルでは165kJの吸熱となり、原理的に外部からの熱供給が必要となる。
また、水素と一酸化炭素を主成分とするガスを供給する場合には、電解槽の陽極側及び陰極側での反応は次式の通りである。
陽極:2H2+O2→2H2O :ΔH=−484kJ
2CO+O2→2CO2 :ΔH=−566kJ
陰極:4H2O→4H2+O2 :ΔH=+968kJ
したがって、反応はトータルでは僅かに発熱反応(ΔH=−81kJ)となり、原理的には外部からの熱供給が必要ないことになる。
2CO+O2→2CO2 :ΔH=−566kJ
陰極:4H2O→4H2+O2 :ΔH=+968kJ
したがって、反応はトータルでは僅かに発熱反応(ΔH=−81kJ)となり、原理的には外部からの熱供給が必要ないことになる。
陽極に還元性ガスを供給する固体酸化物電解質膜による高温水蒸気電解法では、熱力学的に解析したとき、電気エネルギーは殆ど必要ないこととなるが、実際には陽極過電圧、陰極過電圧、電解質の電気抵抗で消費される電圧が必要である。この過電圧は、0.5V以下にすることが省電力のために必要である。
0.5Vの過電圧は熱となるが、その熱量は、4モルの水を電解する場合には260kJ程度である。したがって、電解槽の陽極側にメタンを供給する場合には、この過電圧による発熱が、吸熱反応のエネルギーとして利用される。しかしながら、反応の吸熱は上記で計算したように165kJであるので、トータルで260−165=95kJのエネルギーが残り、これが供給ガスを加熱する余力として利用される。
次に、この95kJのエネルギーで、供給ガスをどの程度加熱できるかについて考察する。電解槽の陽極側にメタンを供給する場合、メタンの熱容量が約50J/deg・molなので、例えばメタンを400℃温度上昇させる場合に必要なエネルギーは20kJ/mol程度である。一方、陰極側に供給される水蒸気は、メタンの4倍モル使用されるので、水蒸気の熱容量約37J/molから、これを400℃温度上昇させるのに必要なエネルギーは60kJ程度となる。この合計は約80kJなので、上述の95kJの余剰エネルギーで、メタン及び水蒸気を加熱して400℃温度上昇させることができることになる。すなわち、例えば、400℃の還元性ガス及び水蒸気を本発明にかかる高温水蒸気電解槽に供給すれば、過電圧による余力のエネルギーで約800℃まで昇温できることになる。
したがって、高温水蒸気電解槽の陽極側に供給する還元性ガス及び陰極側に供給する高温水蒸気の温度を300〜500℃とすれば、0.5Vの過電圧をかけることによって、過電圧による発熱によって電解槽内での温度を700〜900℃とすることができ。効率的に高温水蒸気電解によって高純度の水素を製造することができる。
また、より高い過電圧をかける場合には、電解槽内での温度上昇をより高くすることができるので、電解槽へ供給する還元性ガス及び水蒸気の温度をより低くすることができる。よって、実用性を考慮すると、本発明によれば、高温水蒸気電解槽の陽極側へ供給する還元性ガスの温度及び陰極側に供給する高温水蒸気の温度は、一般に200〜500℃であり、300〜500℃がより好ましく、350〜450℃が更に好ましい。
電解槽の陽極側に、還元性ガスとして一酸化炭素と水素の混合ガスを供給する場合の熱バランスについても上記と同様の熱収支の考察を行うことができ、メタンの場合よりも更に熱収支が良いため、例えば高温水蒸気電解槽の陽極側に供給する還元性ガス及び陰極側に供給する高温水蒸気の温度を200〜500℃とすれば、0.5Vの過電圧をかけることによって、過電圧による発熱によって電解槽内での温度を700〜1000℃とすることができ。効率的に高温水蒸気電解によって高純度の水素を製造することができる。
なお、高温水蒸気電解槽の陽極側或いは陰極側に供給するガスの温度を測定装置で測定し、制御装置を介して、その測定温度に応じて供給する過電圧の値を変えることによって、電解槽内の温度を所望の温度に制御することができる。即ち、供給するガスの温度が比較的高ければ、過電圧の値を例えば0.5Vから低下させて電解槽内の温度を700℃〜1000℃の範囲内に維持し、一方、供給するガスの温度が比較的低い場合には、過電圧の値を例えば0.5Vから上昇させて電解槽内の温度を700℃〜1000℃の範囲内の維持することができる。
なお、高温水蒸気電解槽の陽極側に供給する還元性ガスとして、有機物の熱分解により発生させた還元性ガスを使用する場合は、原理的にはトータルで発熱反応になるものの、不純物として二酸化炭素や窒素を含むことから、必ずしもメタンより有利とは言えない。
なお、上記の値は熱ロスなどを考慮していない計算上の熱収支なので、実際にはもう少し加熱する必要がある。しかし、メタンに関しては加熱に要する熱量がたいした大きさではないことから、一旦常温にして脱硫等の前処理を行ってもあまり不利にはならない。むしろ100℃以下として脱硫することが好ましい。
以上に説明したように、本発明によれば、高温水蒸気電解槽に供給する還元性ガス及び高温水蒸気の温度を200〜500℃程度と低く設定することができるので、加圧水型原子力発電プラントの蒸気発生器で生成される200〜300℃の蒸気の一部、高速増殖炉型原子力発電プラントの蒸気発生器で生成される300〜500℃の蒸気の一部、或いは高温ガス型原子力発電プラントの蒸気発生器で生成される500〜700℃の蒸気の一部を、高温水蒸気電解槽に供給する水蒸気として、直接供給することができる。
このように、原子力発電プラントの蒸気発生器からの蒸気の一部を直接高温水蒸気電解槽へ供給することは従来技術においては提案されておらず、蒸気温度を極力高温に維持すると共に、原子炉出力を変更することなく、電力需要に合わせ、水素製造量を変更することで高い設備利用率を維持出来ることができる。特に加圧水型及び高速増殖型原子力発電プラント等の場合、原子炉で発生し一次冷却材で除去された熱が、蒸気発生器で二次系の軽水と熱交換されて蒸気を発生するという間接サイクルのため、生成する蒸気中には放射性物質は含まれず、製造された水素は、原子力発電所内で熱源等に使用出来るのは勿論、一般の需要先へも供給することが可能である。
一方、陽極へ供給する還元性ガスは地域で発生する廃材、生ゴミに加え、国内の原子力発電所立地条件では比較的入手しやすい、農林及び水産業で発生するバイオマスを熱分解して容易に得ることができる。さらには、冷却水の取水口に繁殖する海生生物の消化ガスを用いることも可能である。
次に、本発明を加圧水型原子力発電プラントに適用した水素製造システムの一具体例を図2を参照して説明する。以下の説明は、運転の一具体例について記載したもので、本発明はかかる記載に限定されるものではない。
図2に示すシステムにおいて、原子炉1の核分裂反応により約325℃に加温された加熱水は、1次系ループを通り、蒸気発生器2に導入され、2次系との熱交換を行った後に、再び原子炉に戻される。蒸気発生器2の2次系に導入された復水は約280℃の蒸気となり、タービン3を駆動させて発電を行った後、復水器4で冷却され復水にされた後、再び蒸気発生器2に戻される。
一方、高温水蒸気電気分解装置5は、固体酸化物電解質(安定化ジルコニアなど)を隔膜として用いて電解槽を陽極側と陰極側に仕切った装置で、その陽極側に還元性ガスを、陰極側に水蒸気を供給し、陽極側の酸素イオンを還元性ガスと反応させることにより、酸素イオンの濃度勾配を生じさせ、従来法に比べて低い電解電圧により高純度水素を製造可能にした装置である。
前述のタービン3の高圧側、或いは低圧側より抽気された200〜250℃の蒸気は、高温水蒸気電気分解装置5の陰極側に導入され、高温水蒸気電気分解により酸素イオンが除去され、高純度水素ガスとなる。生成水素ガスは冷却器6で冷却され、スクラバー7によりアンモニア、ヒドラジン等の不純物が除去された後に、水素貯留タンク8に貯留され、所内熱源、或いは一般水素需要に供することができる。ここで、原子力発電プラントの復水系には、腐食抑制剤としてアンモニア、ヒドラジンなどが含まれており、これが蒸気となって生成水素中に混入するが、上記のような後処理を行うことによって、高純度の水素を回収することが可能となる。なお、上記の操作によって、電気分解装置5に供給される分の水が原子力発電プラントの2次系蒸気−復水系から取り出されることになるので、それに見合った量の水を2次系蒸気−復水系に補充することが好ましい。
また、発電所に熱分解炉9を設置して、発電施設内、或いは周辺地域より収集される廃材、生ゴミ、並びに水産業や取水口のスクリーン等より回収される海洋生物等のバイオマスを熱分解処理することによってCO、メタンなどを含む還元性ガスを生成させ、これを冷却器10で冷却した後に、スクラバー11で洗浄・除塵して、塩酸及び、又は硫酸化合物の濃度を10ppm以下に低減した後、該熱分解炉9で再加温して、高温水蒸気電気分解装置5の陽極側に導入することができる。
電気分解装置5の陽極側に導入された還元性ガスは、酸素イオンとの化学反応により、未燃焼物を含む高温廃ガスとなり、所内ボイラーなどに補助燃料として供給することができる。
本装置のフローは上述の通りであるが、装置の運転は、発電プラントの電力負荷変動に対応して、タービン3の高圧側、或いは低圧側より抽気される200〜250℃の蒸気流量を流量制御弁12により調整することにより、高温水蒸気電気分解装置5の陰極側に導入される水蒸気量を制御し、製造される水素量を効率的にコントロールすることが可能なように構成することができる。これによって、例えば電力需要が少なくなった場合に、余剰蒸気を水素製造に用いることで、原子力発電プラントの効率的な運転を行うことが可能となる。
本発明によれば、従来の高温水蒸気電気分解法では使用できなかった温度条件の低い加圧水型原子力発電プラントの蒸気が、そのまま使用可能であると共に、バイオマスを有効に利用することにより、高純度で効率的な水素製造が可能となる。
また、他の例として、本発明を高速増殖型原子力発電プラントに適用した水素製造システムの一具体例を図3を参照して説明する。上記と同様に、以下の説明は、運転の一具体例について記載したもので、本発明はかかる記載に限定されるものではない。また、図2の構成と同様の構成については、適宜説明を省略する。
図3に示すシステムにおいては、原子炉1の核分裂反応で約530℃に加温された冷却材のナトリウムは、中間熱交換器13に導入され熱交換されて2次系ループのナトリウムを約505℃に加温する。2次系ナトリウムは蒸気発生器2に導入され3次系復水と熱交換を行う。各ループのナトリウムは1次系、2次系の系統内で夫々、循環運転される。
蒸気発生器2の3次系に導入された復水は、ナトリウムと熱交換されて約480℃の蒸気となり、タービン3を駆動させて発電を行った後、復水器4で冷却され復水にされた後、再び蒸気発生器2に戻される。
一方、高温水蒸気電気分解装置5は、固体酸化物電解質(安定化ジルコニアなど)を用いた装置で、その陽極側に還元性ガスを、陰極側に水蒸気を供給し、陽極側の酸素イオンを還元性ガスと反応させることにより、酸素イオンの濃度勾配を生じさせ、従来法に比べて低い電解電圧により高純度水素を製造可能にした装置である。
前述のタービン3の高圧側、或いは低圧側より抽気された300〜450℃の蒸気は、高温水蒸気電気分解装置5の陰極側に導入され、高温水蒸気電気分解により酸素イオンが除去され、高純度水素ガスとなる。該水素ガスは冷却器6で冷却され、スクラバー7によりアンモニア、ヒドラジン等の不純物が除去された後に、水素貯留タンク8に貯留され、所内熱源、或いは一般水素需要に供される。なお、図2に示すシステムと同様に、なお、上記の操作によって、電気分解装置5に供給される分の水が原子力発電プラントの3次系蒸気−復水系から取り出されることになるので、それに見合った量の水を3次系蒸気−復水系に補充することが好ましい。
また、発電所に設置される熱分解炉9は、発電施設内、或いは周辺地域より収集される廃材、生ゴミ、並びに水産業や取水口のスクリーン等より回収される海洋生物等のバイオマスを原材料とする熱分解炉であり、ここで熱分解反応により生成されるCO、メタンなどを含む還元性ガスは、冷却器10で冷却され、スクラバー11で洗浄・除塵し、塩酸及び、又は硫酸化合物の濃度を10ppm以下に低減した後、該熱分解炉9で再加温され、高温水蒸気電気分解装置5の陽極側に導入される。
導入された還元性ガスは、酸素イオンとの化学反応により、未燃焼物を含む高温廃ガスとなり、所内ボイラーなどに補助燃料として供給される。
本装置のフローは上述の通りであるが、装置の運転は、発電プラントの電力負荷変動に対応して、タービン3の高圧側、或いは低圧側より抽気される300〜450℃の蒸気流量を流量制御弁12により調整することにより、高温水蒸気電気分解装置5の陰極側に導入される水蒸気量を制御し、製造される水素量を効率的にコントロールすることが可能なようになっている。
本装置のフローは上述の通りであるが、装置の運転は、発電プラントの電力負荷変動に対応して、タービン3の高圧側、或いは低圧側より抽気される300〜450℃の蒸気流量を流量制御弁12により調整することにより、高温水蒸気電気分解装置5の陰極側に導入される水蒸気量を制御し、製造される水素量を効率的にコントロールすることが可能なようになっている。
本発明によれば、従来の高温水蒸気電気分解法では使用できなかった温度条件の低い高速増殖型原子力発電プラントの蒸気が、そのまま使用可能であると共に、バイオマスを有効に利用することにより、高純度で効率的な水素製造が可能となる。
更に他の例として、本発明を高温ガス型原子力発電プラントに適用した水素製造システムの一具体例を図4を参照して説明する。上記と同様に、以下の説明は、運転の一具体例について記載したもので、本発明はかかる記載に限定されるものではない。また、図2及び図3の構成と同様の構成については、適宜説明を省略する。
図4に示すシステムにおいて、原子炉1の核分裂反応で約1000℃に加温された冷却材のへリウムは、直接ガスタービン13を駆動させて発電した後、熱交換器14に導入され、冷却された後、再び、原子炉に戻される。この1次系ヘリウムループよりヘリウムガスをガスタービン13の下流、又は上流で一部抜出し、蒸気発生器2に導入し2次系復水と熱交換させる。蒸気発生器2を出たヘリウムガスは、熱交換器14下流側に合流され、再び、原子炉に戻される。
蒸気発生器2に導入された復水は、約700〜900℃のヘリウムと熱交換されて約600〜750℃の蒸気となり、タービン3を駆動させて発電を行った後、復水器4で冷却され復水にされた後、再び蒸気発生器2に戻される。
一方、高温水蒸気電気分解装置5は、固体酸化物電解質(安定化ジルコニアなど)を用いた装置で、その陽極側に還元性ガスを、陰極側に水蒸気を供給し、陽極側の酸素イオンを還元性ガスと反応させることにより、酸素イオンの濃度勾配を生じさせ、従来法に比べて低い電解電圧により高純度水素を製造可能にした装置である。
前述のタービン3の高圧側、或いは低圧側より抽気された500〜700℃の蒸気は、高温水蒸気電気分解装置5の陰極側に導入され、高温水蒸気電気分解により酸素イオンが除去され、高純度水素ガスとなる。該水素ガスは冷却器6で冷却され、スクラバー7によりアンモニア、ヒドラジン等の不純物が除去された後に、水素貯留タンク8に貯留され、所内熱源、或いは一般水素需要に供される。なお、図2に示すシステムと同様に、なお、上記の操作によって、電気分解装置5に供給される分の水が原子力発電プラントの2次系蒸気−復水系から取り出されることになるので、それに見合った量の水を2次系蒸気−復水系に補充することが好ましい。
また、発電所に設置される熱分解炉9は、発電施設内、或いは周辺地域より収集される廃材、生ゴミ、並びに水産業や取水口のスクリーン等より回収される海洋生物等のバイオマスを原材料とする熱分解炉であり、ここで熱分解反応により生成されるCO、メタンなどを含む還元性ガスは、冷却器10で冷却され、スクラバー11で洗浄・除塵し、塩酸及び、又は硫酸化合物の濃度を10ppm以下に低減した後、該熱分解炉9で再加温され、高温水蒸気電気分解装置5の陽極側に導入される。
導入された還元性ガスは、酸素イオンとの化学反応により、未燃焼物を含む高温廃ガスとなり、所内ボイラーなどに補助燃料として供給される。
本装置のフローは上述の通りであるが、装置の運転は、発電プラントの電力負荷変動に対応して、タービン3の高圧側、或いは低圧側より抽気される500〜700℃の蒸気流量を流量制御弁12により調整することにより、高温水蒸気電気分解装置5の陰極側に導入される水蒸気量を制御し、製造される水素量を効率的にコントロールすることが可能なようになっている。
本装置のフローは上述の通りであるが、装置の運転は、発電プラントの電力負荷変動に対応して、タービン3の高圧側、或いは低圧側より抽気される500〜700℃の蒸気流量を流量制御弁12により調整することにより、高温水蒸気電気分解装置5の陰極側に導入される水蒸気量を制御し、製造される水素量を効率的にコントロールすることが可能なようになっている。
本発明によれば、従来の高温水蒸気電気分解法では直接使用できなかった温度条件の高温ガス型原子力発電プラントの蒸気が、そのまま使用可能であると共に、バイオマスを有効に利用することにより、高純度で効率的な水素製造が可能となる。
本発明の各種態様は以下の通りである。
1.固体酸化物電解質を隔膜として用いて電解槽を陽極側と陰極側に仕切った高温水蒸気電解装置の陰極側に水蒸気を供給し、陽極側に還元性ガスを供給して高温で水蒸気電気分解を行うことによって水素を製造する方法において、陰極側に供給する水蒸気として、原子力発電プラントの蒸気発生器からの水蒸気の一部を直接使用することを特徴とする高純度水素の製造方法。
1.固体酸化物電解質を隔膜として用いて電解槽を陽極側と陰極側に仕切った高温水蒸気電解装置の陰極側に水蒸気を供給し、陽極側に還元性ガスを供給して高温で水蒸気電気分解を行うことによって水素を製造する方法において、陰極側に供給する水蒸気として、原子力発電プラントの蒸気発生器からの水蒸気の一部を直接使用することを特徴とする高純度水素の製造方法。
2.発生する水素ガス中に含まれるアンモニア、ヒドラジン等の不純物を、スクラバーなどで除去することを特徴とする上記第1項に記載の水素の製造方法。
3.陽極側に供給される還元性ガスとして、原子力発電プラント内に設置した熱分解炉を用いて、発電施設内或いは周辺地域より収集される廃材、生ゴミ、並びに水産業や取水口のスクリーン等により回収される海洋生物等のバイオマスを原料として生成された熱分解ガスを用い、該熱分解ガスは、スクラバーなどで洗浄・除塵して、塩酸及び/又は硫黄化合物の濃度を10ppm以下とすることを特徴とする上記第1項又は第2項に記載の水素の製造方法。
4.原子力発電プラントの蒸気発生器から水素製造装置に供給される水蒸気量を制御することにより、原子力発電プラントの電気出力を制御可能とすると共に余剰蒸気を効率的に利用して、高純度の水素を発生、貯蔵することを特徴とする上記第1項〜第3項のいずれかに記載の水素の製造方法。
5. 水素製造装置に供給される蒸気として、加圧水型原子力発電プラントの蒸気発生器から発生する200〜300℃の蒸気を使用することを特徴とする上記第1項〜第4項のいずれかに記載の水素製造方法。
6.水素製造装置に供給される蒸気として、高速増殖型原子力発電プラントの蒸気発生器から発生する300〜500℃の蒸気を使用することを特徴とする上記第1項〜第4項のいずれかに記載の水素製造方法。
7.水素製造装置に供給される蒸気として、高温ガス型原子力発電プラントの蒸気発生器から発生する500〜700℃の蒸気を使用することを特徴とする上記第1項〜第4項のいずれかに記載の水素製造方法。
8.固体酸化物電解質の隔膜によって陽極側と陰極側に仕切られている電解槽、還元性ガスを電解槽の陽極側に供給する管路、水蒸気を電解槽の陰極側に供給する管路を具備し、電解槽の陰極側に供給する水蒸気として、原子力発電プラントの蒸気発生器からの水蒸気の一部を直接使用することを特徴とする水素の製造装置。
9.電解槽の陰極側から発生する生成水素ガスを処理して、生成水素ガス中に含まれるアンモニア、ヒドラジン等の不純物を除去する手段を更に具備することを特徴とする上記第8項に記載の装置。
10.廃材、生ゴミ、並びに水産業や取水口のスクリーン等により回収される海洋生物等のバイオマスを熱分解して還元性ガスを生成させる熱分解炉、該熱分解炉で生成させた還元性ガスを処理して塩酸及び/又は硫黄化合物の濃度を10ppm以下とする手段、塩酸及び/又は硫黄化合物の濃度が低減せしめられた還元性ガスを電解槽の陽極側に供給する管路、を更に具備することを特徴とする上記第8項又は第9項に記載の装置。
本発明によれば、従来の高温水蒸気電気分解法では直接使用できないと考えられていた温度条件の原子力発電プラントの蒸気発生器で生成される蒸気の一部を、高温水蒸気電解槽への供給蒸気としてそのまま使用可能であると共に、バイオマスを有効に利用することにより、高純度で効率的な水素製造が可能となる。
Claims (10)
- 固体酸化物電解質を隔膜として用いて電解槽を陽極側と陰極側に仕切った高温水蒸気電解装置の陰極側に水蒸気を供給し、陽極側に還元性ガスを供給して高温で水蒸気電気分解を行うことによって水素を製造する方法において、陰極側に供給する水蒸気として、原子力発電プラントの蒸気発生器からの水蒸気の一部を直接使用することを特徴とする高純度水素の製造方法。
- 発生する水素ガス中に含まれるアンモニア、ヒドラジン等の不純物を、スクラバーなどで除去することを特徴とする請求項1に記載の水素の製造方法。
- 陽極側に供給される還元性ガスとして、原子力発電プラント内に設置した熱分解炉を用いて、発電施設内或いは周辺地域より収集される廃材、生ゴミ、並びに水産業や取水口のスクリーン等により回収される海洋生物等のバイオマスを原料として生成された熱分解ガスを用い、該熱分解ガスは、スクラバーなどで洗浄・除塵して、塩酸及び/又は硫黄化合物の濃度を10ppm以下とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の水素の製造方法
- 原子力発電プラントの蒸気発生器から水素製造装置に供給される水蒸気量を制御することにより、原子力発電プラントの電気出力を制御可能とすると共に余剰蒸気を効率的に利用して、高純度の水素を発生、貯蔵することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水素の製造方法。
- 水素製造装置に供給される蒸気として、加圧水型原子力発電プラントの蒸気発生器から発生する200〜300℃の蒸気を使用することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の水素製造方法。
- 水素製造装置に供給される蒸気として、高速増殖型原子力発電プラントの蒸気発生器から発生する300〜500℃の蒸気を使用することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の水素製造方法。
- 水素製造装置に供給される蒸気として、高温ガス型原子力発電プラントの蒸気発生器から発生する500〜700℃の蒸気を使用することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の水素製造方法。
- 固体酸化物電解質の隔膜によって陽極側と陰極側に仕切られている電解槽、還元性ガスを電解槽の陽極側に供給する管路、水蒸気を電解槽の陰極側に供給する管路を具備し、電解槽の陰極側に供給する水蒸気として、原子力発電プラントの蒸気発生器からの水蒸気の一部を直接使用することを特徴とする水素の製造装置。
- 電解槽の陰極側から発生する生成水素ガスを処理して、生成水素ガス中に含まれるアンモニア、ヒドラジン等の不純物を除去する手段を更に具備することを特徴とする請求項8に記載の装置。
- 廃材、生ゴミ、並びに水産業や取水口のスクリーン等により回収される海洋生物等のバイオマスを熱分解して還元性ガスを生成させる熱分解炉、該熱分解炉で生成させた還元性ガスを処理して塩酸及び/又は硫黄化合物の濃度を10ppm以下とする手段、塩酸及び/又は硫黄化合物の濃度が低減せしめられた還元性ガスを電解槽の陽極側に供給する管路、を更に具備することを特徴とする請求項8又は9に記載の装置。
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