JP2005232308A - 湿潤複合体、およびこれを用いた極性溶媒吸収材 - Google Patents

湿潤複合体、およびこれを用いた極性溶媒吸収材 Download PDF

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Abstract

【課題】 水以外の極性溶媒や、電解質や有機物質を含んだ水であっても吸収率が高く、保持された液体が漏洩しにくく、耐熱性が高く、他材料の混合処理等を行うことなく単独で用いることができ、加工性を有する湿潤複合体、これを容易に製造できる製造方法、および湿潤複合体を用いた極性溶媒吸収材を提供する。
【解決手段】 ジカルボン酸ハロゲン化物、ジクロロホーメート化合物およびホスゲン系化合物から選ばれる化合物を有機溶剤に溶解した有機溶液(A)と、珪酸アルカリ、2種以上の金属元素を有しその金属元素の1種がアルカリ金属である、金属酸化物、金属水酸化物および金属炭酸化物から選ばれるアルカリ金属含有無機化合物およびジアミンの水溶液(B)とを接触させて得られる、有機ポリマーと無機化合物との複合体に、極性溶媒が保持された湿潤複合体;および、これを用いた極性溶媒吸収材。
【選択図】 図1

Description

本発明は、湿潤複合体、およびこれを用いた極性溶媒吸収材に関する。
極性溶媒を吸収できる材料の内、特に吸水材としては、ポリアクリル酸またはその塩や、カルボキシメチルセルロースまたはその塩等の吸水性ポリマーが知られており、各種吸水の用途に広く用いられている。(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。吸水性ポリマーは、−COO- 、ナトリウムイオンなど多くのイオンを含んでおり、イオンを有するポリマーは浸透圧の作用によって自重の100倍以上の真水を吸水することができるとされている。
しかしながら、これら吸水性ポリマーの吸水機構は、浸透圧作用のみによって吸水を行っているため、尿、血液など電解質や水溶性タンパク質を多く含む水性の液体を吸水させようとした場合、吸水量が極端に少なくなるという問題があった。また、吸収対象が水以外の極性溶媒の場合もまた、水と同等な高い吸収量は得られなかった。また、これらの吸水ポリマーは吸水量が多くなるほど膨潤が激しくなるか、あるいは溶解してしまい、形状の維持が困難であった。そのため、一般的に吸水ポリマーを、木材等を原料とするパルプに分散させて用いることが行われているが、その際の吸水ポリマーの含有率は、吸水が生じて膨潤した吸水ポリマーゲルが未吸水のポリマーの吸水を阻害する、いわゆる「ゲルブロッキング現象」を防止するために50質量%以上にすることが困難であり、吸水ポリマーが本来有する吸水特性を十分に発揮できないという問題点があった。また、これら吸水性ポリマーは、耐熱性に乏しく、高温条件下では使用できないという制限があった。
一方、無機材料特有の多孔質性を利用した吸水材としては、シリカゲル、活性炭等が広く用いられている(例えば、特許文献3)。しかしながらこれらの材料は、吸収対象となる溶媒の種類や、電解質等の存在による吸収量への影響は少ないものの、その吸水量は自重と同等程度と少ない上、吸収速度が遅く、水を吸水対象とした場合の吸水性ポリマーほどすぐれた吸収特性は無い。また、無機材料は加工性に乏しい問題があるため、加工性を付与するには各種繊維等に混合する必要があった。しかしこの場合は、吸水特性の低下や、繊維等からの脱落が生じやすくなる問題点があった。
また、いずれの吸水材を用いた場合でも繊維等に分散させるためには当然のことながら多数の工程を必要として、コスト及び使用エネルギー的に不利になってしまう問題があった。
特開平11−170414号公報 特開平8−131755号公報 特開昭63−270528号公報
本発明の目的は、多様な吸着、吸収状態で吸収対象液体を吸収保持できることにより、水以外の極性溶媒や、電解質や他の極性溶媒溶解性の有機物質(例えばたんぱく質、ビタミン等)を含んだ水であっても吸収率が高く、保持された液体が漏洩しにくく、しかも耐熱性が高い上に、他材料との混合処理等をおこなうことなく単独で用いることができ、加工性を有する湿潤複合体、およびこれを用いた極性溶媒吸収材を提供することにある。また、これらの特徴を持つ湿潤複合体を容易に製造する方法を提供することにある。
すなわち、本発明の湿潤複合体は、有機ポリマーと無機化合物との複合体と、該複合体に保持された極性溶媒とを有する湿潤複合体であり、該複合体はジカルボン酸ハロゲン化物、ジクロロホーメート化合物およびホスゲン系化合物からなる群から選ばれる1種の化合物を有機溶媒に溶解した有機溶液(A)と、珪酸アルカリ、2種以上の金属元素を有しその金属元素の1種がアルカリ金属である、金属酸化物、金属水酸化物および金属炭酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物およびジアミンの水溶液(B)とを接触させて得られたものであることを特徴とするものである。
ここで、前記極性溶媒の保持量は、複合体100質量部に対して、300〜700質量部であることが望ましい。
また、前記複合体中の無機化合物の含有率は、20〜80質量%であることが望ましい。
また、前記複合体が、繊維径が20μm以下でアスペクト比が10以上のパルプ(屈曲微小繊維)形状を有していることが望ましい。
また、本発明の湿潤複合体の製造方法は、ジカルボン酸ハロゲン化物、ジクロロホーメート化合物およびホスゲン系化合物からなる群から選ばれる1種の化合物を有機溶媒に溶解した有機溶液(A)と、珪酸アルカリ、2種以上の金属元素を有しその金属元素の1種がアルカリ金属である、金属酸化物、金属水酸化物および金属炭酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物およびジアミンの水溶液(B)とを接触させる接触工程と、反応生成物を含む液を濾過して、有機ポリマーと無機化合物との複合体と、該複合体に保持された極性溶媒とを有する湿潤複合体を得る濾過工程とを有することを特徴とする。
また、本発明の極性溶媒吸収材は、本発明の湿潤複合体を有することを特徴とするものである。
本発明の湿潤複合体は、多様な吸着状態で対象物質を保持できることにより、水以外の極性溶媒や、電解質や他の極性溶媒溶解性の有機物質(例えばたんぱく質、ビタミン等)を含んだ水であっても吸収率が高く、保持された液体が漏洩しにくく、しかも耐熱性が高い上に、パルプ等他材料との混合処理等をおこなうことなく単独で用いることができ、加工性も有している湿潤複合体である。
また、本発明の湿潤複合体の製造方法によれば、このような湿潤複合体を容易に製造することができる。
また、このような湿潤複合体を用いた本発明の極性溶媒吸収材は、水以外の極性溶媒や、電解質等を含んだ水溶液であっても吸収率が高く、保持された液体が漏洩しにくく、しかも耐熱性が高い。
以下、本発明について詳細に説明する。
<湿潤複合体>
本発明の湿潤複合体は、ジカルボン酸ハロゲン化物、ジクロロホーメート化合物およびホスゲン系化合物からなる群から選ばれる1種の化合物を有機溶媒に溶解した有機溶液(A)と、珪酸アルカリ、2種以上の金属元素を有しその金属元素の1種がアルカリ金属である、金属酸化物、金属水酸化物および金属炭酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物およびジアミンの水溶液(B)とを接触させて得られるものであって、有機ポリマーと無機化合物との複合体に、極性溶媒が保持されたものである。
(複合体)
本発明における有機ポリマーと無機化合物との複合体は、前記有機溶液(A)と、前記水溶液(B)とを接触させて得られる反応生成物である。このようにして得られる有機ポリマーと無機化合物との複合体は、有機ポリマー中にサブミクロンメートルからナノメートルオーダーの無機化合物が微粒子状ないし3次元ネットワークないしは2次元ネットワーク状に微分散した有機/無機ナノコンポジット構造を有するものであり、単に有機ポリマーと無機化合物とを混ぜ合わせた混合物とは異なるものである。
前記有機溶液(A)と、前記水溶液(B)とを接触させて得られる有機ポリマーとしては、例えば、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ尿素が挙げられる。
ポリアミドは、前記ジカルボン酸ハロゲン化物とジアミンとの重縮合によって得られるものであり、その構造は、重縮合に用いるこれらモノマーの種類によって決まる。
ポリウレタンは、前記ジクロロホーメート化合物とジアミンとの重縮合によって得られるものであり、その構造は、重縮合に用いるこれらモノマーの種類によって決まる。
ポリ尿素は、前記ホスゲン系化合物とジアミンとの重縮合によって得られるものであり、その構造は、重縮合に用いるこれらモノマーの種類によって決まる。
前記有機溶液(A)と、前記水溶液(B)とを接触させて得られる無機化合物としては、例えば、シリカ(SiO2 )、金属酸化物が挙げられる。
金属酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化テルルなどが挙げられる。
無機化合物の含有率は、特に限定されないが、後述の湿潤複合体の製造方法によれば、無機化合物の含有率を、複合体(100質量%)中、20〜80質量%の高含有率とすることが可能である。また、複合体の吸収性と加工性とのバランスの観点から、無機化合物の含有率は、複合体中30〜70質量%であることが好ましい。
本発明における湿潤複合体の液体部分を構成する極性溶媒としては、例えば、水のほかに、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類や、アセトン、2-ブタノン等のケトン類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート類、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル等のニトリル類、ギ酸、酢酸等のカルボン酸類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル等の酢酸アルキル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル等のギ酸アルキルの他にエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、エチレンジアミン、ジメトキシエタン、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。本発明では、複合体の製造工程で水溶液(B)を用いる必要があるため、湿潤複合体は水溶液(B)由来の水を含む状態で得られる。そのため、極性溶媒として水を含む湿潤複合体を用いることが特に望ましく自然である。また、合成の際に用いる有機溶液(A)として、後述するアセトン等の極性溶媒を用いた場合は、水と同様に極性溶媒を含む湿潤複合体が得られるので、これを用いてもよい。
本発明の湿潤複合体中の極性溶媒の保持量は、複合体100質量部に対して、300〜700質量部であることが好ましい。極性溶媒の保持量が、複合体100質量部に対して、300質量部未満では、有機ポリマーの極性基に由来する水素結合により、複合体が強固にブロック状に固化し、本来繊維状または粉体形状を有している複合体の外表面積が減少することにより複合体が極性溶媒を吸収しにくくなって、極性溶媒吸収量をあまり多くすることができなくなるおそれがある。一方、極性溶媒の保持量が、複合体100質量部に対して、700質量部を超えると、複合体の極性溶媒吸収量が飽和に近づくことにより、吸収可能な領域がすくなくなり、十分に吸収できなくなるおそれがある。
(吸収対象である極性溶媒)
本発明において吸収対象である極性溶媒としては、水のほかに前述したメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類や、アセトン、2-ブタノン等のケトン類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート類、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル等のニトリル類、ギ酸、酢酸等のカルボン酸類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル等の酢酸アルキル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル等のギ酸アルキルの他にエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、エチレンジアミン、ジメトキシエタン、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。また、NaCl、KCl等の各種無機塩のほか、水溶性タンパク質、アミノ酸、ビタミン等、糖類等の水溶性有機物が含まれている水(生理的食塩水、血液、尿等)であってもよい。また、水以外の極性溶媒にも無機塩や有機物質が含まれていてもよい。また、これらの混合物であってもよい。
本発明における複合体を構成する有機ポリマー及び無機化合物を、吸収する対象の液体によって選択することができる。例えば、有機ポリマーとしてポリアミドと、無機化合物としてシリカとから構成される複合体を用いた場合には、ポリアミドを溶解するクレゾール類と、シリカを溶解する強アルカリ溶液以外の液体には極めて安定であるため、たとえば塩酸や硫酸や硝酸が溶解した強酸溶液であっても吸収することができる。
<湿潤複合体の製造方法>
本発明の湿潤複合体は、ジカルボン酸ハロゲン化物、ジクロロホーメート化合物およびホスゲン系化合物からなる群から選ばれる1種の化合物を有機溶媒に溶解した有機溶液(A)と、珪酸アルカリ、2種以上の金属元素を有しその金属元素の1種がアルカリ金属である、金属酸化物、金属水酸化物および金属炭酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物およびジアミンの水溶液(B)とを接触させる接触工程と、反応生成物を含む液を濾過して、有機ポリマーと無機化合物との複合体と、該複合体に保持された極性溶媒とを有する湿潤複合体を得る濾過工程とを有する方法によって製造される。
(接触工程)
接触工程においては、例えば、常温、常圧下で10秒〜数分程度の攪拌操作により、有機溶液(A)中のモノマーと水溶液(B)中のジアミンとが迅速に重縮合し、有機ポリマーが収率よく得られる。この際、珪酸アルカリなどのアルカリ金属含有無機化合物中のアルカリ金属が、モノマーとジアミンとの重縮合の際に発生するハロゲン化水素の除去剤として作用することで有機ポリマーの生成を促進する。本反応と同時に、アルカリ金属含有無機化合物は、そのアルカリ金属成分が除去され、珪酸アルカリを用いた場合はシリカ(ガラス)へ、他の金属化合物を用いた場合はアルカリ金属以外の金属元素を有する無機化合物へと転化することで水に不溶化し、固体として析出する。さらにこの際、モノマーとジアミンとの重縮合による有機ポリマーの生成と、無機化合物の析出とは、どちらか一方のみが生じることはなく平行して起こるため、サブミクロンメートルからナノメートルオーダーの微粒子状ないし3次元ネットワークないしは2次元ネットワーク状の無機化合物が有機ポリマーに微分散した複合体が得られる。
有機溶液(A)中のジカルボン酸ハロゲン化物としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸の酸ハロゲン化物;イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸の酸ハロゲン化物;あるいは芳香環の水素をハロゲン原子、ニトロ基、アルキル基などで置換した芳香族ジカルボン酸の酸ハロゲン化物などが挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
有機溶液(A)中のジクロロホーメート化合物としては、例えば、1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール等の脂肪族ジオール類の水酸基を全てホスゲン化処理によりクロロホーメート化したもの;レゾルシン(1,3−ジヒドロキシベンゼン)、ヒドロキノン(1,4−ジヒドロキシベンゼン)、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,2’−ビフェノール、ビスフェノールS、ビスフェノールA、テトラメチルビフェノール等、1個または2個以上の芳香環に水酸基を2個持つ2価フェノール類の水酸基を全てホスゲン化処理によりクロロホーメート化したものが挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
有機溶液(A)中のホスゲン系化合物としては、例えば、ホスゲン、ジホスゲンおよびトリホスゲンを挙げることができる。これらは単独で、または両種を組み合わせて使用することができる。
本発明においては、有機溶液(A)中のモノマーを選択することにより、複合体のマトリクスである有機ポリマーの種類を変えることができる。モノマーとしてジカルボン酸ハロゲン化物を用いた場合はポリアミドを、ジクロロホーメート化合物を用いた場合はポリウレタンを、ホスゲン系化合物を用いた場合にはポリ尿素を、水溶液(B)中のジアミンとの反応によって得ることができる。
有機溶液(A)に用いる有機溶媒としては、上記各種モノマーやジアミンとは反応せず、有機溶液(A)中の各種モノマーを溶解させるものであれば特に制限なく用いることができる。このうち水と非相溶なものとしては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、クロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素類、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類を、水と相溶するものとしては、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル等の酢酸アルキルなどを代表的な例として挙げることができる。
有機溶液(A)の有機溶媒として水と非相溶なものを用いた場合、生じる重縮合反応は有機溶液(A)と水溶液(B)との界面のみで生じる界面重縮合となる。この場合は得られる有機ポリマーの分子量を容易に高くすることができるため、繊維形状(パルプ状)の複合体が得られやすい。また、有機溶液(A)と水溶液(B)との界面で生じた複合体膜を引き上げつつ紡糸することで、強度の高い長繊維を得ることもできる。一方、有機溶液(A)の有機溶媒として水と相溶するものを用いた場合には、有機溶媒と水とが乳化した状態で重縮合が生じるため、粉体形状の複合体が容易に得られる。
いずれの有機溶媒を用いた場合でも、得られる複合体は、粉体、パルプ状または長繊維であり、バルク形状に比べて外表面積が大きいため、粉砕等の処理を行うことなしに水や、水以外の極性溶媒や、電解質等を含む水溶液を容易に保持させることができる。
水溶液(B)中のジアミンとしては、有機溶液(A)中の各モノマーと反応し、有機ポリマーを生成するものであれば特に制限なく用いることができる。具体的には、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,8−ジアミノオクタンなどの脂肪族ジアミン;m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,5−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン、2,3−ジアミノナフタレンなどの芳香族ジアミン;あるいは芳香環の水素をハロゲン原子、ニトロ基、またはアルキル基などで置換した芳香族ジアミンなどが例として挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
有機溶液(A)中のモノマー濃度、および水溶液(B)中のジアミン濃度は、重縮合反応が十分に進行すれば特に制限されないが、各々のモノマー同士を良好に接触させる観点から、0.01〜3モル/Lの濃度範囲、特に0.05〜1モル/Lが好ましい。
水溶液(B)中の珪酸アルカリとしては、JIS K 1408に記載された水ガラス1号、2号、3号などのA2O・nSiO2の組成式で表されるものが挙げられる。ここで、Aはアルカリ金属、nの平均値は1.8〜4である。水ガラスに含まれるアルカリ金属化合物が有機溶液(A)中のモノマーと水溶液(B)中のジアミンとが重縮合する際に発生する酸の除去剤として作用することで、水ガラス(珪酸アルカリ)は、モノマーとジアミンとの重縮合を促進すると同時に、極性溶媒に不溶の固体ガラス(シリカ)に転化することで複合体を構成する無機化合物の原料ともなる。
水溶液(B)中の、2種以上の金属元素を有しその金属元素の1種がアルカリ金属である、金属酸化物、金属水酸化物および金属炭酸化物(以下、アルカリ金属含有金属化合物とも記す)としては、一般式AxMyBzとして表すことができる化合物を挙げることができる。ここで、Aはアルカリ金属元素であり、Mはアルカリ金属以外の金属元素からなる群から選ばれる少なくとも1種類以上の金属元素であり、BはO、CO3 、OHからなる群から選ばれる少なくとも1種の基であり、x、y、zは、A、MおよびBの結合を可能とする数である。上記一般式AxMyBzで表される化合物は、水に溶解し塩基性を示すものが好ましい。アルカリ金属含有金属化合物に含まれるアルカリ金属もまた、珪酸アルカリ中のアルカリ金属化合物と同様に、重縮合の際に発生する酸の除去剤として作用することで、モノマーとジアミンとの重縮合を促進すると同時に、極性溶媒に不溶の金属化合物に転化することで複合体を構成する無機化合物の原料となる。
アルカリ金属含有金属化合物の内、上記一般式中のBがOである化合物としては、亜鉛酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウム、亜クロム酸ナトリウム、モリブデン酸ナトリウム、スズ酸ナトリウム、亜テルル酸ナトリウム、チタン酸ナトリウム、バナジン酸ナトリウム、タングステン酸ナトリウム、マンガン酸ナトリウム、チタン酸ナトリウム等のナトリウム複合酸化物;亜鉛酸カリウム、アルミン酸カリウム、亜クロム酸カリウム、モリブデン酸カリウム、スズ酸カリウム、マンガン酸カリウム、タンタル酸カリウム、亜テルル酸カリウム、鉄酸カリウム、バナジン酸カリウム、タングステン酸カリウム、金酸カリウム、銀酸カリウム、チタン酸カリウム等のカリウム複合酸化物;アルミン酸リチウム、モリブデン酸リチウム、スズ酸リチウム等のリチウム複合酸化物のほか、ルビジウム複合酸化物、セシウム複合酸化物などが挙げられる。
上記一般式中のBがCO3 とOHとの双方の基を含むアルカリ金属含有金属化合物としては、炭酸亜鉛カリウム、炭酸ニッケルカリウム、炭酸ジルコニウムカリウム、炭酸コバルトカリウム、炭酸スズカリウム等を例示することができる
これらのアルカリ金属含有金属化合物は、水に溶解させて用いるため、水和物であってもよい。また、これらは単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。また、前述の珪酸アルカリと同時に用いてもよい。
水溶液(B)中のアルカリ金属含有無機化合物の濃度は、有機溶液(A)中のモノマー濃度および水溶液(B)中のジアミン濃度によってある程度は決定されるが、複合体の高収率を維持し、かつ重縮合時の過剰な発熱により生じうる有機溶液(A)中のモノマーと水との副反応を防止する理由より、1〜200g/Lが望ましい。
アルカリ金属含有無機化合物は、重縮合反応時に生じるハロゲン化水素を中和して重縮合反応を促進させる作用も有するため、これらの配合量が少なく、生じるハロゲン化水素が重縮合反応の進行を阻害する場合には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの酸受容体を水溶液(B)に添加してもよく、上記酸受容体の溶液を合成系に後添加してもよい。
湿潤複合体の製造に用いられる製造装置としては、有機溶液(A)と水溶液(B)とを良好に接触させることができる装置であればとくに限定されず、連続式、バッチ式のいずれの方式でも可能である。連続式の具体的な装置としては、大平洋機工株式会社製「ファインフローミルFM−15型」、同社製「スパイラルピンミキサSPM−15型」、あるいは、インダク・マシネンバウ・ゲーエムベー(INDAG Machinenbau Gmb)社製「ダイナミックミキサDLM/S215型」などが挙げられる。バッチ式の装置としては、有機溶液(A)と水溶液(B)との接触を良好に行わせる必要があるので、プロペラ状翼、マックスブレンド翼、ファウドラー翼等を持つような汎用の攪拌装置を用いることができる。
水溶液(B)中のジアミンとして脂肪族ジアミンを、有機溶液(A)中のモノマーとして脂肪族ジカルボン酸ハロゲン化物を用いた場合には、重縮合によって強固なゲル状物が生成する場合がある。その場合にはゲルを破砕し反応を進行させるために高い剪断力を持つミキサーを用いることが好ましく、ミキサーの例としては、オスタライザー(OSTERIZER)社製ブレンダーなどが挙げられる。
有機溶液(A)中のモノマーと水溶液(B)中のジアミンとの重縮合反応は、例えば−10〜50℃の常温付近の温度範囲で十分に進行する。したがって、有機溶液(A)と水溶液(B)とを接触させる温度は、−10〜50℃の常温付近の温度範囲とされる。この際、加圧、減圧も必要としない。また、重縮合反応は、用いるモノマー種や反応装置にもよるが、通常10分以下で完結する。
(濾過工程)
こうして得られた複合体を含む液を濾過することによって、複合体100質量部に対して300〜700質量部の液体を保持したウェットケーキ状の湿潤複合体を得ることができる。有機溶液(A)として、水と非相溶であるトルエン等の非極性溶媒を用いた場合には複合体が極性溶媒への親和性が高いことにより、ウエットケーキの液体成分は、大部分が水となる。一方、有機溶液(A)として、水を相溶であるアセトン等の極性溶媒を用いた場合には、ウエットケーキの液体成分は、水と極性溶媒との混合液体となる。また、必要に応じて、湿潤複合体を各種の極性溶媒に再度分散させ、この分散液を濾過して湿潤複合体を得る洗浄工程を行ってもよく、また、この洗浄工程を2回以上繰り返しても構わない。
複合体を含む液を濾過する際、複合体100質量部に対する極性溶媒の保持量が300質量部よりも低くならないように濾過の条件を調整することが好ましい。ウエットケーキ状態の湿潤複合体中の極性溶媒の保持量を低くしすぎると、有機ポリマーの極性基に由来する水素結合により、複合体が強固なブロック状に固化し、本来繊維状または粉体形状を有している複合体の外表面積が減少することにより複合体が極性溶媒を吸収しにくくなって、極性溶媒吸収量をあまり多くすることができなく上、吸収速度が遅くなるおそれがある。したがって、濾過後に、熱プレス、加熱乾燥、高真空乾燥等の積極的な乾燥を行わないことが望ましい。濾過手段としては、従来公知の減圧濾過、加圧濾過、圧搾脱液、遠心脱液等を用いることができる。
(極性溶媒吸収機構)
本発明の湿潤複合体の極性溶媒吸収性は、複合体の有機ポリマーおよび無機化合物の各成分が持つ化学的特性及び形状的な因子により発現している。
複合体中の無機化合物の役割は以下の通りである。
複合体の無機化合物は、シリカ、金属酸化物であり、これらは水等の極性溶媒との親和性が極めて高い。また、無機化合物の含有率は20〜80質量%と高く、さらに無機化合物の大きさはサブミクロンメートルからナノメートルオーダーと極めて小さい。
無機化合物がサブミクロンメートルからナノメートルオーダーであることは単位質量当たりの表面積が極めて大きい微粒子状ないし3次元ネットワークないしは2次元ネットワーク状の無機化合物が無数に複合体中に存在していることを意味する。これらの無機化合物の広い表面により水等の極性溶媒への強い親和性が付与されることで、複合体には高い極性溶媒吸収性が発現する。また、該複合体は無機化合物の含有率を最大で80質量%と極めて大きくできるため、無機化合物の有する上記の特性を更に一層高くできる(無機化合物による、化学吸着的な極性溶媒吸収機構)。
特に無機化合物がシリカまたは酸化アルミニウムの場合は、微粒子状の無機化合物の粒子径が約10ナノメートルと極めて微小となる上、該無機化合物の微粒子同士が一部分で連結したネットワーク構造を形成していることが、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により明らかになっている。この構造により該複合体は50〜150m2 /gの高い比表面積(つまりは多孔質性)を有しており、さらに高い極性溶媒吸収性を持ち得る。このような構造を付与できる無機化合物の原料は前述のとおり珪酸アルカリ、アルミン酸アルカリである(物理吸着的な極性溶媒吸収機構)。
一方、極性溶媒吸収性に対する有機ポリマーの役割は次の通りである。
複合体の有機成分であるポリアミド、ポリウレタン、ポリ尿素はそれらが高い頻度で有するアミド結合、ウレタン結合、尿素結合の高極性に由来して、ポリオレフィン等に比べ、高い水等の極性溶媒への親和性を持つ。そのため、有機ポリマー成分も吸収性に寄与している(有機ポリマーによる、化学吸着的な極性溶媒吸収機構)。また、有機ポリマーがマトリクス(基材)となっていることにより、本来高極性に起因して自己凝集性が高い無機化合物に分散状態と、且つハンドリング可能な複合体形状とを与えている。
加えて、特に有機ポリマーが脂肪族ポリアミドの場合は、容易に分子量を高くできるので、複合体の合成時に高せん断力を加えることで、繊維径が約20μmでアスペクト比が10以上のパルプ形状(屈曲微小繊維)に加工することもできる。複合体がこのようなパルプ形状を有している場合は、複合体の繊維間に極性溶媒を強固に保持できるので、さらに吸収性および保持力を高めることが可能である。この構造を与えることができる有機ポリマーは、前述の通り有機溶媒(A)として脂肪族ジカルボン酸の酸ハロゲン化物を水に非相溶な溶媒に溶解させた系と、水溶液(B)として脂肪族ジアミンを水に溶解させた系とを接触させた場合である。また、複合体の有機ポリマー成分が脂肪族ポリアミド以外の有機ポリマーの場合は複合体形状が粉体となるが、この場合でもブロック形状の複合体にくらべて、材料の外表面積が高いため、高い極性溶媒吸収量、吸収速度を有する(複合体形状による極性溶媒の保持特性)。
また、本発明の湿潤複合体は、従来の吸水性ポリマーや無機吸着剤とは異なり、複数の極性溶媒吸収機構を有しているため、電解質等を多く含む水でも吸水性は殆ど影響を受けない上、他の極性溶媒の吸収性にも優れている。加えて、複合体が繊維形状の場合は抄紙性を、粉体の場合は塗工性、成型性を有しており、複合体自身が加工性を有し、ハンドリングしやすい特徴を持っている。そのため、他の材料との複合化や混合の必要がなく、本複合体すなわち極性溶媒吸収材のみから構成される材料を容易に提供することができる。また、有機ポリマーと無機化合物との複合体は、無機化合物が有する、有機ポリマーへの補強効果に起因して耐熱性が高く(例えば、有機ポリマーとしてポリアミドを、無機化合物としてシリカとから構成されシリカの含有率が60質量%である複合体は300℃以上まで物性変化を生じない)、これに極性溶媒を保持させた本発明の湿潤複合体もまた耐熱性が高い。
(極性溶媒吸収材)
本発明の極性溶媒吸収材は、本発明の湿潤複合体を主成分とするものである。
本発明の極性溶媒吸収材は前述の通り、単独で用いることができることが特徴の一つではあるが、極性溶媒吸収材をさらに所望の形状に成形することを目的に、結合材や各種樹脂等の結着材を、必要とされる吸収性、耐熱性を損なわない範囲で含有させてもよい。
(繰り返し使用)
本発明の極性溶媒吸収材は、化学的、物理的に非常に安定であることより、一旦吸収した液体を減圧濾過、加圧濾過、圧搾脱液、遠心脱液することにより回収または除去することにより、何度でも繰り返し使用することができる。再度の使用に際しては湿潤複合体を各種の極性溶媒に再度分散させ、この分散液を濾過して湿潤複合体を得る洗浄工程を行ってもよい。
以下に実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。特に断らない限り、「部」は「質量部」を表す。
[実施例1]
(シリカ/ポリアミド複合体の合成)
イオン交換水81.1部に1,6−ジアミノヘキサン1.58部、水ガラス3号9.18部を加え、25℃で15分間攪拌し、均質透明な水溶液(B)を得た。室温下でこの水溶液(B)をオスタライザー社製ブレンダー瓶中に仕込み、毎分10000回転で攪拌しながら、アジポイルクロライド2.49部をトルエン44.4部に溶解させた有機溶液(A)を20秒かけて滴下した。生成したゲル状物をスパチュラで砕き、さらに毎分10000回転で40秒間攪拌した。この操作で得られたパルプ状の生成物が分散した液を、直径90mmのヌッチェを用い目開き4μmのろ紙上で減圧濾過した。ヌッチェ上の生成物をメタノール100部に分散させスターラーで30分間攪拌し減圧濾過することで洗浄処理を行った。引き続き同様な洗浄操作を蒸留水100部を用いて行い減圧濾過することで、純白色のシリカ/ポリアミド複合体のウエットケーキ(湿潤複合体)を得た。
[実施例2]
(酸化アルミニウム/ポリアミド複合体の合成)
水溶液(B)としてイオン交換水81.1部に1,6−ジアミノヘキサン1.58部、アルミン酸ナトリウム(Na2O/Al23 モル比=1.3)2.26部を入れ、室温で15分間攪拌して得られた均質透明な水溶液(B)を用いた以外は、実施例1に記載した方法と同様にして、純白色の酸化アルミニウム/ポリアミド複合体のウエットケーキ(湿潤複合体)を得た。
[実施例3]
(酸化ジルコニウム/ポリアミド複合体の合成)
水溶液(B)としてイオン交換水38.5部に1,6−ジアミノヘキサン1.58部と炭酸ジルコニウムカリウム(K2[Zr(OH)2(CO32])3.79部を入れ、攪拌して得られた均質な水溶液(B)を用いた以外は、実施例1に記載した方法と同様にして、純白色の酸化ジルコニウム/ポリアミド複合体のウエットケーキ(湿潤複合体)を得た。
[比較例1]
(無機化合物を含まないポリアミドの合成)
水溶液(B)として、水ガラス3号の代わりに水酸化ナトリウム1.18部を加えたものを用いた以外は、実施例1に記載した方法と同様にして、無機化合物を一切含まないポリアミドのウエットケーキを得た。
<湿潤複合体およびポリアミドの材料特性の評価>
上記操作で得られた湿潤複合体および無機化合物を含まないポリアミドについて、以下の項目の測定、あるいは試験を行い、得られた結果を表1に示した。
(1)無機化合物含有率(灰分)の測定法:
各材料に含まれる無機化合物の含有率の測定法は以下の通りである。
各材料を絶乾後に精秤(複合体質量)し、これを空気中、600℃で3時間焼成し、有機ポリマー成分を完全に焼失させ、焼成後の質量を測定し灰分質量(=無機化合物質量)とした。下式により無機化合物含有率を算出した。
無機化合物含有率(質量%)=(灰分質量/複合体質量)×100
(2)複合体中の無機化合物種の検証(FP法):
各材料を蒸留水に0.2g/dLの濃度に分散させた分散液200gを、直径55mmのヌッチェを用い目開き4μmのろ紙上で減圧濾過した。得られたケーキを170℃、5MPa/cm2 の条件で2分間熱プレスし、不織布を作製した。得られた不織布は柔軟性に富むものであり、無機化合物を含有するものでも、折り曲げても粒子の脱落は一切なかった。
不織布を3cm角に切り出し、これを開口部が直径20mmの測定用ホルダーにセットし測定用試料とした。該試料について、理化学電気工業株式会社製蛍光X線分析装置「ZSX100e」を用いて全元素分析を行った。得られた全元素分析の結果を用い、測定用試料の試料データ(試料形状;フィルム、化合物種;酸化物、補正成分;セルロース、実測した試料の面積当たりの質量値)を装置に与えることにより、FP法(Fundamental Parameter法;試料の均一性、表面平滑性を仮定し装置内の定数を用いて補正を行い成分の定量を行う方法)にて該複合体中の元素存在割合を算出した。FP法から算出した無機化合物量は、(1)の灰分測定法より算出した値と良い一致を示した。この値から、目的とする無機化合物(原料に水ガラスを用いた場合はシリカ、アルミン酸ナトリウムを用いた場合は酸化アルミニウム、炭酸ジルコニウムカリウムを用いた場合は酸化ジルコニウム)が複合体中に多量に(40質量%以上)存在していることが検証できた。
また、本測定ではアルカリ金属(ナトリウム)はいずれの試料とも0.03質量%以下しか検出されず、本発明におけるモノマーの重縮合および無機化合物原料からのアルカリ金属除去、および無機化合物の固体化反応が予測された反応機構のとおり行われていることが明らかとなった。
(3)複合体中の無機化合物の粒径測定および分散状態の観察:
複合体を170℃、20MPa/cm2 の条件で2時間熱プレスを行い、厚さ約1mmの複合体からなる薄片を得た。これをマイクロトームを用いて厚さ75nmの超薄切片とした。得られた切片を日本電子社製透過型電子顕微鏡「JEM−200CX」にて100000倍の倍率で観察した。無機化合物は暗色の像として、明るい有機ポリマーに微分散しているのが観察された。図1は、シリカ/ポリアミド複合体の透過型電子顕微鏡写真であり、図2は、酸化アルミニウム/ポリアミド複合体の透過型電子顕微鏡写真であり、図3は、酸化ジルコニウム/ポリアミド複合体の透過型電子顕微鏡写真である。
続いて、100個の無機化合物粒子の粒径を測定し、その平均値を無機化合物平均粒径とした。本観察においては、シリカ/ポリアミド複合体では約10nmの無機化合物(シリカ)が網目状、すなわち3次元的にネットワークを形成しポリアミド中に微分散しているのが観察された。酸化アルミニウム/ポリアミド複合体では約10nmの酸化アルミニウムが層状、すなわち2次元的にネットワークを形成しポリアミド中に微分散しているのが観察された。一方、酸化ジルコニウム/ポリアミド複合体では、850nm近辺の酸化ジルコニウム粒子の各々の粒子が独立して分散しているのが観察された。
(4)保水量の測定:
得られた各種ウエットケーキの質量測定後(湿潤質量)、150℃で2時間熱風乾燥させ、質量を測定した(乾燥質量)。これらの数値より、複合体(またはポリアミド)100質量部に対する水の保持量(保水量)を下式により算出した。
保水量(質量部)={(湿潤質量−乾燥質量)/乾燥質量}×100
(5)吸水量の測定(蒸留水):
得られた各種ウエットケーキが、さらにどれだけの水を吸水できるかを以下のようにして測定した。厚さ1cm、3cm角の形状を持つ、ウエットケーキを得た。該ウエットケーキを2枚のガラス板間に挟み、60cm2 /gの圧力をかけつつ、蒸留水を滴下した。ウエットケーキが蒸留水を保持できなくなり、ガラスと複合体の隙間に液体が染み出し始める点を目視により観察し、この点を限界湿潤状態とした。この状態のウエットケーキの質量測定後(限界湿潤質量)、150℃で2時間熱風乾燥させ、質量を測定した(乾燥質量)。これらの数値より、複合体(またはポリアミド)100質量部に対する水の保持量(限界湿潤量)を下式により算出した。
純水限界湿潤量(質量部)={(限界湿潤−乾燥質量)/乾燥質量}×100
(6)吸水量の測定(生理的食塩水):
(5)の蒸留水を生理的食塩水に変更した測定を行った。生理的食塩水の限界湿潤状態のウエットケーキの重量を測定したのち、100cm3 の蒸留水中で常温下30分間の分散洗浄を行い、塩分を除いてから、乾燥重量を測定した以外は(5)と同様な方法により生理的食塩水限界湿潤量(質量部)を算出した。
Figure 2005232308
本発明の湿潤複合体は、多様な吸着状態で吸収対象液体を吸収保持できることにより、水以外の極性溶媒や、電解質や他の極性溶媒溶解性の有機物質(例えばたんぱく質、ビタミン、尿、血液等)を含んだ水であっても吸収率が高く、保持された液体が漏洩しにくく、しかも耐熱性が高い上に、他材料の混合処理等をおこなうことなく単独で用いることができ、加工性をも有する。そのため電解質や極性溶媒溶解性の有機物を多く含む極性溶媒の吸収材、高温条件下で使用される極性溶媒吸収材に好適に用いられる。
シリカ/ポリアミド複合体の透過型電子顕微鏡写真である。 酸化アルミニウム/ポリアミド複合体の透過型電子顕微鏡写真である。 酸化ジルコニウム/ポリアミド複合体の透過型電子顕微鏡写真である。

Claims (6)

  1. 有機ポリマーと無機化合物との複合体と、
    該複合体に保持された極性溶媒とを有する湿潤複合体であって、該複合体が
    ジカルボン酸ハロゲン化物、ジクロロホーメート化合物およびホスゲン系化合物からなる群から選ばれる1種の化合物を有機溶媒に溶解した有機溶液(A)と、珪酸アルカリ、2種以上の金属元素を有しその金属元素の1種がアルカリ金属である、金属酸化物、金属水酸化物および金属炭酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物およびジアミンの水溶液(B)とを接触させて得られたものであることを特徴とする湿潤複合体。
  2. 前記極性溶媒の保持量が、複合体100質量部に対して、300〜700質量部である請求項1に記載の湿潤複合体。
  3. 前記複合体中の無機化合物の含有率が、20〜80質量%である請求項1または請求項2に記載の湿潤複合体。
  4. 前記複合体が、繊維径が20μm以下でアスペクト比が10以上のパルプ形状を有する請求項1ないし3のいずれか一項に記載の湿潤複合体。
  5. ジカルボン酸ハロゲン化物、ジクロロホーメート化合物およびホスゲン系化合物からなる群から選ばれる1種の化合物を有機溶媒に溶解した有機溶液(A)と、珪酸アルカリ、2種以上の金属元素を有しその金属元素の1種がアルカリ金属である、金属酸化物、金属水酸化物および金属炭酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物およびジアミンの水溶液(B)とを接触させる接触工程と、反応生成物を含む液を濾過して、有機ポリマーと無機化合物との複合体と、該複合体に保持された極性溶媒とを有する湿潤複合体を得る濾過工程とを有することを特徴とする湿潤複合体の製造方法。
  6. 請求項1ないし4のいずれか一項に記載の湿潤複合体を有することを特徴とする極性溶媒吸収材。
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