JP2005139080A - 複合刺激応答材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】生分解性包接組織体の多点包接錯体形成を利用し、機械的な包接を一ヶ所とすることにより包接錯体形成速度を向上させ、また、多点包接錯体形成の際に付与する外部刺激を二種以上とすることを容易とし、設定した条件以外で反応する可能性を減少させ、反応する外部刺激の範囲を狭めた複合刺激応答材料を提供する。
【解決手段】生分解性ポリカチオン又は生分解性ポリアニオンが有するカチオン基又はアニオン基の1/3乃至2/3に、生分解性環状分子が結合した生分解性高分子と、該環状分子に包接可能なゲスト成分を含有する組成物であって、該ゲスト成分は該環状分子に唯一つの部位だけが包接され、包接されない部位(非包接部位)には該生分解性高分子が持つカチオン基又はアニオン基の極性と反対の符号の極性基を有し、該生分解性高分子と該ゲスト成分は二種以上の外部刺激を付与することによって多点包接錯体を形成することを特徴とする複合刺激応答材料。
【選択図】なし

Description

本発明は、複合刺激応答材料に関する。さらに詳しくは、生分解性ポリカチオン又は生分解性ポリアニオンが有するカチオン基又はアニオン基の1/3乃至2/3に、生分解性環状分子が結合した生分解性高分子と、該環状分子に包接可能なゲスト成分を含有する組成物であって、該ゲスト成分は該環状分子に唯一つの部位だけが包接され、包接されない部位(非包接部位)には該生分解性高分子が持つカチオン基又はアニオン基の極性と反対の符号の極性基を有し、該生分解性高分子と該ゲスト成分は二種以上の外部刺激を付与することによって多点包接錯体を形成することを特徴とする複合刺激応答材料に関する。
従来から、化粧品、医農薬品、塗料、食品などの分野において、薬剤、香料、色素などの各種機能性分子の溶解性や安定性の向上、乳化特性の改善、食感の改良、徐放性の付与、潮解性や揮発性の抑制、油脂基材の粉末化などを目的として、分子内に空洞を有する環状分子に、該機能性分子を包接した包接化合物が使用されている。しかし、このような包接分子は製造直後から被包接分子が脱離を開始するため経時安定性に欠ける、被包接分子の持つ機能が必要とされる特定の条件下で脱離できない、被包接分子全体の大きさや該被包接分子が有する官能基の種類に制限があるなどという問題点を有している。
本発明者らは、これらの問題点を解決すべく特許文献1において、環状分子が結合された生分解性高分子に、該環状分子に包接可能な部位を二つ以上有する第三成分(ゲスト成分)を添加することによって形成された多点包接錯体、具体的には、ε−ポリリジンが有するアミノ基の41モル%にα−シクロデキストリンが結合した生分解性高分子と、該α−シクロデキストリン2個によって二つの部位が包接されるトリメチルシリルプロピオン酸とから形成される多点包接錯体である生分解性包接組織体を一例として提案した。
特開2003−246882号公報
しかしながら、特許文献1で提案した多点包接錯体は形成する条件として二種以上の外部刺激を要求しておらず、また、第三成分(ゲスト成分)の二つ以上の部位を包接させる必要があるため、設定した条件以外で反応する場合がある、反応する外部刺激の範囲が広い、反応速度が遅いなどという問題点が残されていた。
本発明者らは前述の背景技術の課題を解決するべく鋭意研究を重ねた。その結果、生分解性ポリカチオン又は生分解性ポリアニオンが有するカチオン基又はアニオン基の1/3乃至2/3に、生分解性環状分子が結合した生分解性高分子と、該環状分子に包接可能なゲスト成分を含有する組成物であって、該ゲスト成分は該環状分子に唯一つの部位だけが包接され、包接されない部位(非包接部位)には該生分解性高分子が持つカチオン基又はアニオン基の極性と反対の符号の極性基を有し、該生分解性高分子と該ゲスト成分は二種以上の外部刺激を付与することによって多点包接錯体を形成する複合刺激応答材料であれば、設定した条件以外で反応する可能性が減少し、反応する外部刺激の範囲が狭まり、反応速度が速くなることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成した。
具体的には、本発明の実施例である、ε−ポリリジンが有するアミノ基の48モル%にβ−シクロデキストリンが結合した生分解性高分子と、該β−シクロデキストリンに唯一つしかないトリメチルシリル基が包接され、アミノ基と反対の極性であるカルボキシル基を有するトリメチルシリルプロピオン酸を含有した組成物から成り、適当なpHと温度を付与することにより多点包接錯体を形成する複合応答刺激材料を挙げることができる。
本発明は、下記(1)〜(8)で示される。
(1)生分解性ポリカチオン又は生分解性ポリアニオンが有するカチオン基又はアニオン基の1/3乃至2/3に、生分解性環状分子が結合した生分解性高分子と、該環状分子に包接可能なゲスト成分を含有する組成物であって、該ゲスト成分は該環状分子に唯一つの部位だけが包接され、包接されない部位(非包接部位)には該生分解性高分子が持つカチオン基又はアニオン基の極性と反対の符号の極性基を有し、該生分解性高分子と該ゲスト成分は二種以上の外部刺激を付与することによって多点包接錯体を形成することを特徴とする複合刺激応答材料。
(2)生分解性ポリカチオン又は生分解性ポリアニオンが、ε−ポリリジン、キトサン、ヒアルロン酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸、カラギナン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸及びそれらの誘導体から選ばれた少なくとも一種である上記(1)項記載の複合刺激応答材料。
(3)生分解性環状分子が、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリン及びそれらの誘導体から選ばれた少なくとも一種である上記(1)項記載の複合刺激応答材料。
(4)ゲスト成分が非包接部位に有する極性基が、上記生分解性高分子が生分解性ポリカチオンから成る場合はアミノ基であり、生分解性ポリアニオンから成る場合はカルボキシル基である上記(1)項記載の複合刺激応答材料。
(5)該生分解性高分子が生分解性ポリカチオンのカチオン基の1/3乃至2/3に生分解性環状分子が結合した生分解性高分子であり、ゲスト成分がトリメチルシリルプロピオン酸及び/又はその誘導体である上記(1)項記載の複合刺激応答材料。
(6)生分解性環状分子が、β−シクロデキストリンまたはγ−シクロデキストリンである上記(5)項記載の複合刺激応答材料。
(7)生分解性高分子がε−ポリリジンのアミノ基の1/3乃至2/3に生分解性環状分子が結合した生分解性高分子であり、ゲスト成分の非包接部位が有する極性基がカルボキシル基である上記(1)項記載の複合刺激応答材料。
(8)生分解性高分子がε−ポリリジンのアミノ基の1/3乃至2/3にβ−シクロデキストリンまたはγ−シクロデキストリンが結合した生分解性高分子であり、ゲスト成分がトリメチルシリルプロピオン酸である上記(1)項記載の複合刺激応答材料。
(9)多点包接錯体を形成するために付与される二種以上の外部刺激の内、少なくとも一種がpH、温度、電磁波、光、酵素、化学物質である前記(1)〜(8)項のいずれかに記載の複合刺激応答材料。
(10)前記(1)〜(9)項のいずれかに記載の複合刺激応答材料を含有する医薬品。
(11)前記(1)〜(9)項のいずれかに記載の複合刺激応答材料を含有する医療材料。
本発明の複合刺激応答材料は、特許文献1で提案された生分解性包接組織体と類似した構成を有するが、ゲスト成分の唯一つの部位だけが該環状分子に包接され、非包接部位には該生分解性高分子が持つカチオン基又はアニオン基の極性と反対の符号の極性基を持たせ、生分解性高分子(ポリカチオン又はポリアニオン)への生分解性環状分子の結合数を制限した点で異なる。すなわち、特許文献1では2個の環状分子が1個のゲスト成分を包接していたのに対し、本発明では1個の環状分子が1個のゲスト成分を包接する構成となっている。
それによって、上述した生分解性包接組織体では多点包接錯体を形成する際に二つ必要だった機械的な包接が一ヶ所だけですみ、それによって包接錯体形成速度を向上させることができ、また、生分解性ポリカチオン又は生分解性ポリアニオンが有する極性基とゲスト成分が非包接部位に有する極性基との静電相互作用(イオン結合等)とによる多点包接錯体を形成することが可能となり、該多点包接錯体を形成させるために付与する外部刺激を二種以上とすることが容易となったため、設定した条件以外で反応する可能性を減少させ、反応する外部刺激の範囲を狭めさせることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において生分解性とは生体内分解性をも含む総称である。本発明に使用する生分解性ポリカチオン(又はポリアニオン)は、生分解性環状分子と結合するため及び後述するゲスト成分と静電相互作用するためのカチオン基(又はアニオン基)、例えば水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルホニル基などを有していれば特に限定されるものではなく、使用する用途・目的に応じて適宜選択すればよい。
例えば、疾患部への埋植薬剤として使用する場合は生体内分解性ポリカチオン(又はポリアニオン)を選択することができ、薬剤送達システムとして使用する場合は疾患部への移行性に優れた生体内分解性ポリカチオン(又はポリアニオン)を選択することができ、農薬など外部環境で使用する場合は環境中の微生物で分解する生分解性ポリカチオン(又はポリアニオン)を選択することができる。
かかる生分解性ポリカチオン(又はポリアニオン)としては、例えばε−ポリリジン、キトサン、ヒアルロン酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸、カラギナン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸及びその誘導体などを挙げることができる。
本発明に使用する生分解性環状分子は、前述した生分解性ポリカチオン(又はポリアニオン)を結合させるためのカチオン基(又はアニオン基)、例えば水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルホニル基などと、後述するゲスト成分を包接することができる空洞とを有していれば特に限定されるものではなく、例えばα−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリンなどは、安定性、安全性、入手の容易性などの面から好適に使用することができる。
本発明におけるゲスト成分は、前述した生分解性環状分子1個に唯一つの部位だけが包接され、非包接部位に前述した生分解性ポリカチオン(又はポリアニオン)が持つ極性と反対の符号の極性基を有していれば特に限定されるものではなく、使用する用途・目的に応じて加えられる二種以上の外部刺激によって、本発明の多点包接錯体が形成するような生分解性環状分子との組み合わせを適宜選択すればよい。
かかるゲスト成分が非包接部位に有する極性基としては、前述した生分解性高分子が生分解性ポリカチオンから成る場合はアミノ基が、生分解性ポリアニオンから成る場合はカルボキシル基が、安定性、生体適合性などの面から好適に使用することができる。
本発明において、多点包接錯体を形成するために付与される二種以上の外部刺激としては特に限定されるものではないが、pH、温度、電磁波、光、酵素、化学物質などが付与の容易性の面から好適に用いることができる。
本発明の医薬品は、複合刺激応答材料を含有していれば特に限定されるものではなく、例えば疾患部への埋植薬剤や薬剤送達システムなどに好適に使用することができる。
本発明の医療材料は、複合刺激応答材料を含有していれば特に限定されるものではなく、例えば手術中の止血用被覆剤や人工生体組織などに好適に使用することができる。
本発明において、生分解性ポリカチオン(又はポリアニオン)に生分解性環状分子を結合させる方法は特に限定されるものではないが、使用する用途・目的に応じて選択された生分解性環状分子及び生分解性ポリカチオン(又はポリアニオン)が有するカチオン基(又はアニオン基)、例えば水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルホニル基などに応じて適宜選択すればよい。例えば、ε−ポリリジンにβ−シクロデキストリンを結合する場合は、モノアルデヒド化したβ−シクロデキストリンとε−ポリリジンとをシッフ塩基化した後、還元する方法が好適に用いられる。
さらに、生分解性ポリカチオン(又はポリアニオン)に結合させる生分解性環状分子の数としては、生分解性ポリカチオン(又はポリアニオン)が有するカチオン基(又はアニオン基)の1/3乃至2/3が好ましく、さらには2/5乃至3/5がより好ましい。この値が1/3を下回るか又は2/3を上回ると、生分解性環状分子に包接したゲスト成分が非包接部位に有する極性基と、前述した生分解性高分子が有する極性基との静電相互作用が弱くなるため、前述した多点包接錯体の形成速度が遅くなる、外部刺激への応答範囲が拡大する、強度が弱くなるなど、本発明の効果を十分発揮できないことがある。
本発明において、多点包接錯体を形成させる方法は特に限定されるものではないが、上述したような生分解性環状分子が結合された生分解性ポリカチオン(又はポリアニオン)は通常水溶性のため、多点包接錯体を形成させるために必要な外部刺激の要因を予め付与しておいた水溶液に、上述のゲスト成分を添加して多点包接錯体を形成させる方法が例示できる。また、必要な外部刺激の要因を一つだけ除いて予め付与しておき、最後に除いておいた刺激を付与しても速やかに多点包接錯体を形成させることができる。
例えば、β−シクロデキストリンが結合されたε−ポリリジンに、ゲスト成分としてトリメチルシリルプロピオン酸ナトリウムを添加して多点包接錯体を形成する場合、両者の水溶液を予めpH7、20℃に調製しておけば、混合後0.1秒程度で反応が終了する。
次に実施例をあげて本発明をさらに説明するが、本実施例は本発明をなんら限定するものではない。また、本実施例においてα及びβ−シクロデキストリンは東京化成工業株式会社製α及びβ−シクロデキストリンを、トリメチルシリルプロピオン酸は関東化学株式会社製トリメチルシリルプロピオン酸ナトリウムを、ε−ポリリジンはチッソ株式会社製ε−ポリリジン100%粉末を精製せずに用いた。該ε−ポリリジンの分子量は、低角度光散乱光度計を検出器としたゲル浸透クロマトグラフィー法による測定で、重量平均分子量が4700±470、数平均分子量が4090±410であり、ペアードイオンクロマトグラフィー法による測定で、平均重合度は約30.5であった。
合成例1 β−シクロデキストリンのモノアルデヒド化物の合成
β−シクロデキストリン11.7g(10.3mmol)をジメチルスルホキシド250mlに溶解させ、2当量のデス−マーチンペリオジナン8.7g(20.6mmol)を加え、1時間、25℃にて撹拌した。該溶液をアセトンに加え、−20℃で2時間冷却し析出した沈殿を濾過して濾過物を得た。該濾過物を蒸留水に再溶解させ、不溶物を濾過にて除去した。該濾過液をエバポレーターにて濃縮後、0℃のアセトンに加え再結晶させ、該結晶を濾過にて回収後、60℃で減圧乾燥させモノアルデヒド化β−シクロデキストリン(化合物1)を得た。収率は88%であった。得られた化合物1の確認は、プロトン核磁気共鳴スペクトル法(以下、H−NMRという。)及びフーリエ変換赤外線吸収スペクトル法(以下、FT−IRという。)により行った。その結果を以下に示した。
FT−IR(KBr):3384(s;OH),2930(s;C−H),1731(m;アルデヒドC=O),1500〜1200(m;C−H,CH,OH),1200〜800cm−1(m;C−C,C−O)
H−NMR(300MHz,DMSO−d):δ=9.68(s;ホルミルH),5.48(m;14H,2級OH),4.81(s;7H,H−1),4.43(m;6H,1級OH),4.00〜3.00ppm(4m;シクロデキストリンH)。
合成例2 β−シクロデキストリンが結合したε−ポリリジンの合成
ε−ポリリジン1.1g(0.27mmol)を0.2M酢酸緩衝液(pH4.4)1000mlに溶解し、11.33g(10.0mmol)の化合物1を加えて1時間25℃にて撹拌後、続けて化合物1に対して2当量のシアノ水素化ホウ素ナトリウムを加え72時間25℃にて撹拌した。2M水酸化ナトリウム水溶液にて中和し、分画分子量10000の透析膜にて1週間透析を行った後、該透析内液を凍結乾燥してβ−シクロデキストリン結合ε−ポリリジン(化合物2)を得た。収率は73%であった。得られた化合物2の確認は、H−NMR及びFT−IRにより行った。その結果を以下に示した。
FT−IR(KBr):3413(s;OH),2929(s;C−H),1637(m;C=O),1559(m;N−H),1458(m;C−H),1200〜800cm−1(m;C−C,C−O)
H−NMR(300MHz,DO):δ=4.96(s;7H,H−1,シクロデキストリン),4.00〜3.35(2m;シクロデキストリンH),3.35〜2.90(3m;αH,εH,ε−ポリリジン),1.78〜1.00ppm(3m;βH,δH,γH,ε−ポリリジン)。
ε−ポリリジンの全アミノ基に対する、β−シクロデキストリンが結合したアミノ基の割合と得られた化合物2の数平均分子量は、H−NMRスペクトルにおけるグルコースのH−1と、リジンのβ、γ及びδのピーク面積の比から算出し、その値は48モル%と20270であった。
合成例3 α−シクロデキストリンのモノアルデヒド化物の合成
α−シクロデキストリン10.0g(10.3mmol)をジメチルスルホキシド250mlに溶解させ、2当量のデス−マーチンペリオジナン8.7g(20.6mmol)を加え、1.5時間25℃にて撹拌した。該溶液をアセトンに加え、−20℃で2時間冷却し析出した沈殿を濾過して濾過物を得た。該濾過物を蒸留水に再溶解させ、不溶物を濾過にて除去した。該濾過液をエバポレーターにて濃縮後、0℃のアセトンに加え再結晶させ、該結晶を濾過にて回収後、60℃で減圧乾燥させモノアルデヒド化α−シクロデキストリン(化合物3)を得た。収率は88%であった。得られた化合物3の確認は、H−NMR及びFT−IRにより行った。その結果を以下に示した。
FT−IR(KBr):3384(s;OH),2930(s;C−H),1731(m;アルデヒドC=O),1500〜1200(m;C−H,OH),1154(m;C−O),1032cm−1(m;C−O)
H−NMR(300MHz,DMSO−d):δ=9.68(s;ホルミルH),5.44(m;12H,2級OH),4.75(s;6H,H−1),4.42(m;5H,1級OH),4.00〜3.00ppm(4m;シクロデキストリンH)。
合成例4 α−シクロデキストリンが結合したε−ポリリジンの合成
ε−ポリリジン1.25g(0.31mmol)を0.5M酢酸緩衝液(pH4.5)1000mlに溶解し、7.5g(7.7mmol)の化合物3を加えて1時間25℃にて撹拌後、続けてシアノ水素化ホウ素ナトリウム3.07g(48.85mmol)を加え96時間25℃にて撹拌した。2M水酸化ナトリウム水溶液にて中和し、分画分子量8000の透析膜にて1週間透析を行った後、該透析内液を凍結乾燥してα−シクロデキストリン結合ε−ポリリジン(化合物4)を得た。収率は32%であった。得られた化合物4の確認は、H−NMR及びFT−IRにより行った。その結果を以下に示した。
FT−IR(KBr):3413(s;OH),2929(s;C−H),1637(m;C=O),1559(m;N−H),1458(m;C−H),1154(m;C−O),1077(m;C−O),1031cm−1(m;C−O)
H−NMR(300MHz,DO):δ=4.96(s;6H,H−1,シクロデキストリン),4.30〜3.35(2m;シクロデキストリンH),3.35〜2.60(3m;αH,εH,ε−ポリリジン),2.00〜1.00ppm(3m;βH,γH,δH,ε−ポリリジン)。
ε−ポリリジンの全アミノ基に対する、α−シクロデキストリンが結合したアミノ基の割合と得られた化合物4の数平均分子量は、H−NMRスペクトルにおけるグルコースのH−1と、リジンのβ、γ及びδのピーク面積の比から算出し、その値は41モル%と15860であった。
試験例1:多点包接錯体の形成pHの確認(20℃)
化合物2を20℃の0.1Mリン酸緩衝液(pH6)に溶解して1wt%の水溶液を調製し、ゲスト成分としてトリメチルシリルプロピオン酸ナトリウムを、溶解した化合物2に付加されているβ−シクロデキストリンと化学量論的に等しくなるように添加して水溶液Aを調製した。化合物4を20℃の0.1Mリン酸緩衝液(pH7)に溶解して1wt%の水溶液を調製し、ゲスト成分としてトリメチルシリルプロピオン酸ナトリウムを、溶解した化合物4に付加されているα−シクロデキストリンと化学量論的に等しくなるように添加して水溶液Bを調製した。水溶液Aに2Mの塩酸又は2Mの水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH2,3,4.5,5,5.5,6.5,7,7.5,8,9,10,11,12の水溶液を調製した。水溶液Bも同様にして、pH2,3,4,5,6,6.5,7.5,8,9,10,11,12の水溶液を調製した。
可視紫外分光光度計(日本分光株式会社製V−550)により、20℃での500nmにおける吸光度を調製した各水溶液について測定し、それらの結果を図1に示した。
図1から明らかなように、本発明の実施例である化合物2とトリメチルシリルプロピオン酸ナトリウムからなる組成物は、20℃においてpH6〜6.5という狭いpH範囲で多点包接錯体を形成していることがわかる。また、比較例である化合物4とトリメチルシリルプロピオン酸ナトリウムからなる組成物も、化合物2とほぼ同じくpH7〜7.5という狭いpH範囲で多点包接錯体を形成していることがわかる。
試験例2:多点包接錯体の形成温度の確認(pH6及びpH7)
水溶液A及びBを約50℃まで加温し、冷却過程での500nmにおける透過率の変化を試験例1と同様に測定し、その結果を図2に示した。
図2から明らかなように、本発明の実施例である化合物2とトリメチルシリルプロピオン酸ナトリウムからなる組成物は、約34〜32.5℃という非常に狭い温度範囲で急激に多点包接錯体を形成していることがわかる。それに対し、比較例である化合物4とトリメチルシリルプロピオン酸ナトリウムからなる組成物は、実施例とは異なり約45〜20℃に渡って徐々に多点包接錯体を形成していることがわかる。
試験例3:多点包接錯体の形成時間の確認(20℃)
化合物2を20℃の0.1Mリン酸緩衝液(pH6)に溶解し、4.7×10−4Mの水溶液Cを調製した。ゲスト成分としてトリメチルシリルプロピオン酸ナトリウムを、水溶液Cに溶解した化合物2に付加されているβ−シクロデキストリンと化学量論的に等しくなるように20℃の0.1Mリン酸緩衝液(pH6)に溶解し、7.3×10−3Mの水溶液Dを調製した。水溶液C及びDに、2Mの塩酸又は2Mの水酸化ナトリウム水溶液を添加して、各々pH4,7,9の水溶液を調製した。
ストップド−フロー法により、20℃での500nmにおける吸光度を測定した。可視紫外分光光度計は大塚電子株式会社製RA−2100HSを用いた。該分光光度計がデータ収集を開始してから60ms後に、水溶液C及びDを測定セルに同時に注入し100ms混合した。従って、実際の測定開始時間は60msである。pH4,7,9の各水溶液についても同様に測定を行い、それらの結果を図3に示した。
図3から明らかなように、多点包接錯体を形成可能なpH6,7においては、本発明の実施例となる組み合わせである、化合物2とトリメチルシリルプロピオン酸ナトリウムを混合してから、約100msという非常に短い時間で該包接錯体を形成していることがわかる。それに対し、データとしては測定していないが、比較例となる組み合わせである化合物4とトリメチルシリルプロピオン酸ナトリウムの混合は、目視で確認できる数秒程度を要して多点包接錯体を形成する。
本発明の複合刺激応答材料は、生分解性ポリカチオン(又はポリアニオン)を適宜選択すること、例えば、生体内分解性ポリカチオン(又はポリアニオン)を使用することにより生体内残留性の低い生体内埋植薬剤として、疾患部への移行性に優れた生体内分解性ポリカチオン(又はポリアニオン)を使用することにより薬剤送達システムとして、環境中の微生物で分解する生分解性ポリカチオン(又はポリアニオン)を使用することにより使用後・廃棄後の環境への負荷が低減された農薬や塗料などの外部環境で使用する機能性材料として好適に用いることができる。
また、本発明の複合刺激応答材料は、特定の外部刺激による形成時間が非常に短いため、例えば、生体内分解性ポリカチオン(又はポリアニオン)を使用することにより手術中の止血用被覆剤や一時的に使用する人造筋肉などの人工生体組織として、さらには、形成と解離を可逆的に繰り返すことができるため、マイクロマシンの動力源として利用することも可能である。
多点包接錯体水溶液のpH変化による光透過率の変化を示した図である。 多点包接錯体水溶液の温度変化による光透過率の変化を示した図である。 多点包接錯体の形成に伴う吸光度の変化を経時的に示した図である。
符号の説明
図1、図2、図3中において、TPAはトリメチルシリルプロピオン酸ナトリウムを表す。

Claims (11)

  1. 生分解性ポリカチオン又は生分解性ポリアニオンが有するカチオン基又はアニオン基の1/3乃至2/3に、生分解性環状分子が結合した生分解性高分子と、該環状分子に包接可能なゲスト成分を含有する組成物であって、該ゲスト成分は該環状分子に唯一つの部位だけが包接され、包接されない部位(非包接部位)には該生分解性高分子が持つカチオン基又はアニオン基の極性と反対の符号の極性基を有し、該生分解性高分子と該ゲスト成分は二種以上の外部刺激を付与することによって多点包接錯体を形成することを特徴とする複合刺激応答材料。
  2. 生分解性ポリカチオン又は生分解性ポリアニオンが、ε−ポリリジン、キトサン、ヒアルロン酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸、カラギナン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸及びそれらの誘導体から選ばれた少なくとも一種である請求項1記載の複合刺激応答材料。
  3. 生分解性環状分子が、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリン及びそれらの誘導体から選ばれた少なくとも一種である請求項1に記載の複合刺激応答材料。
  4. ゲスト成分が非包接部位に有する極性基が、上記生分解性高分子が生分解性ポリカチオンから成る場合はアミノ基であり、生分解性ポリアニオンから成る場合はカルボキシル基である請求項1に記載の複合刺激応答材料。
  5. 該生分解性高分子が生分解性ポリカチオンのカチオン基の1/3乃至2/3に生分解性環状分子が結合した生分解性高分子であり、ゲスト成分がトリメチルシリルプロピオン酸及び/又はその誘導体である請求項1記載の複合刺激応答材料。
  6. 生分解性環状分子が、β−シクロデキストリンまたはγ−シクロデキストリンである請求項5記載の複合刺激応答材料。
  7. 生分解性高分子がε−ポリリジンのアミノ基の1/3乃至2/3に生分解性環状分子が結合した生分解性高分子であり、ゲスト成分の非包接部位が有する極性基がカルボキシル基である請求項1記載の複合刺激応答材料。
  8. 生分解性高分子がε−ポリリジンのアミノ基の1/3乃至2/3にβ−シクロデキストリンまたはγ−シクロデキストリンが結合した生分解性高分子であり、ゲスト成分がトリメチルシリルプロピオン酸である請求項1記載の複合刺激応答材料。
  9. 多点包接錯体を形成するために付与される二種以上の外部刺激の内、少なくとも一種がpH、温度、電磁波、光、酵素、化学物質である請求項1〜8のいずれかに記載の複合刺激応答材料。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載の複合刺激応答材料を含有する医薬品。
  11. 請求項1〜9のいずれかに記載の複合刺激応答材料を含有する医療材料。
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