JP2005137680A - 器官色計測システムおよびプログラム - Google Patents

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Abstract

【課題】診断に用いられる器官の色を客観的で精度良く計測できる器官色計測システムの技術を提供する。
【解決手段】東洋医学の舌診では、舌の色等を見て疾病などの診断を行える。この舌診を利用した器官色計測システムでは、デジタルカメラで撮影して得られた舌画像における舌色に対して色座標の変換を行い、XYZ表色系のxyz値を算出する。ここで、舌色に現れる血液の色の特性を考慮すると、舌色はy値の変化が少なく、x値およびz値のバランスが顕著に変化するため、(x−z)を舌色の計測に利用する。このように舌色の計測結果を(x−z)で表して一次元の情報に減じることにより、診断に用いられる舌色(器官の色)を客観的で精度良く計測できることとなる。
【選択図】図5

Description

本発明は、器官を撮像し、診断に用いられる器官の画像を取得する器官色計測システムの技術に関する。
東洋医学においては、舌の状態を観察することにより健康状態や病状を診断する診断手法(舌診)がある。
この舌診については、例えば特許文献1に開示されており、患者の舌像と過去の標準的な舌像(標準舌像)とを対比し舌(下地)や苔(乳頭)の色などを比較することによって、経験等に頼らずに診断できる診断支援技術が記載されている。
特許第2763989号公報
上記の特許文献1の技術では、医師などが目視により舌器官の色である舌色・苔色を判断するため、色の識別を客観的に行うことは困難である。また、舌色・苔色においては、舌を照明する照明光の分光特性などにより条件等色(メタメリズム)が生じるため、目視などに頼っては精度の良い色の識別を行えない。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、診断に用いられる器官の色を客観的で精度良く識別できる器官色計測システムの技術を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するため、請求項1の発明は、器官色計測システムであって、(a)粘膜で覆われ下地から乳頭が突起している器官を撮像し、器官の画像を取得する撮像手段と、(b)前記器官の画像において、前記下地が写る下地画像部分を抽出する抽出手段と、(c)前記下地画像部分に基づき、前記下地の色に関する所定の計測を行い、計測結果を出力する計測手段とを備え、前記下地の色の計測結果は、前記器官を持つ人についての診断に用いられる。
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る器官色計測システムにおいて、前記抽出手段は、(b-1)前記器官の画像において、前記乳頭が写る乳頭画像部分を抽出する手段を有するとともに、前記計測手段は、(c-1)前記乳頭画像部分に基づき、前記乳頭の色に関する所定の計測を行い、計測結果を出力する手段を有し、前記乳頭の色の計測結果は、前記器官を持つ人についての診断に用いられる。
また、請求項3の発明は、器官色計測システムであって、(a)粘膜で覆われ下地から乳頭が突起している器官を撮像し、器官の画像を取得する撮像手段と、(b)前記器官の画像において、前記乳頭が写る乳頭画像部分を抽出する抽出手段と、(c)前記乳頭画像部分に基づき、前記乳頭の色に関する所定の計測を行い、計測結果を出力する計測手段とを備え、前記乳頭の色の計測結果は、前記器官を持つ人についての診断に用いられる。
また、請求項4の発明は、請求項1または請求項2の発明に係る器官色計測システムにおいて、前記計測手段は、(c-2)前記下地画像部分に関する色を、三次元色空間に係る3の座標値として計測する手段と、(c-3)前記3の座標値を入力変数とする所定の関数により、前記計測結果として1の数値情報を出力する手段とを有する。
また、請求項5の発明は、請求項1または請求項2の発明に係る器官色計測システムにおいて、前記計測手段は、(c-4)前記下地画像部分に関する色を、XYZ色空間に係るx座標値、y座標値、およびz座標値として計測する手段と、(c-5)前記x座標値と前記z座標値とを入力変数とする所定の関数により、前記計測結果として1の数値情報を出力する手段とを有する。
また、請求項6の発明は、請求項5の発明に係る器官色計測システムにおいて、前記所定の関数は、前記x座標値から前記z座標値を減算した結果を、前記1の数値情報として出力する。
また、請求項7の発明は、請求項2または請求項3の発明に係る器官色計測システムにおいて、前記計測手段は、(c-6)前記乳頭画像部分に関する色を、三次元色空間に係る3の座標値として計測する手段と、(c-7)前記3の座標値を入力変数とする所定の関数により、前記計測結果として1の数値情報を出力する手段とを有する。
また、請求項8の発明は、請求項2または請求項3の発明に係る器官色計測システムにおいて、前記計測手段は、(c-8)前記乳頭画像部分に関する色を、XYZ色空間に係るx座標値、y座標値、およびz座標値として計測する手段と、(c-9)前記z座標値を入力変数とする所定の関数により、前記計測結果として1の数値情報を出力する手段とを有する。
また、請求項9の発明は、請求項8の発明に係る器官色計測システムにおいて、前記所定の関数は、1から前記z座標値を減算した結果を、前記1の数値情報として出力する。
また、請求項10の発明は、請求項1ないし請求項9のいずれかの発明に係る器官色計測システムにおいて、前記器官は、舌である。
また、請求項11の発明は、器官色計測システムが有するコンピュータにおいて実行されることにより、当該器官色計測システムを請求項1ないし請求項10のいずれかの発明に係る器官色計測システムとして機能させるプログラムである。
請求項1ないし請求項11の発明によれば、器官の画像から抽出される下地画像部分や乳頭画像部分に基づき、下地や乳頭の色に関する所定の計測を行い、計測結果を出力するため、診断に用いられる下地や乳頭(器官)の色を客観的で精度良く識別できる。
特に、請求項4の発明においては、下地画像部分に関する色を三次元色空間に係る3の座標値として計測し、3の座標値を入力変数とする所定の関数により計測結果として1の数値情報を出力するため、下地の色を容易に識別できる。
また、請求項5の発明においては、下地画像部分に関する色をXYZ色空間に係るx座標値、y座標値およびz座標値として計測し、x座標値とz座標値とを入力変数とする所定の関数により計測結果として1の数値情報を出力するため、下地の色を容易に精度良く識別できる。
また、請求項6の発明においては、所定の関数はx座標値からz座標値を減算した結果を1の数値情報として出力するため、下地の色を一層精度良く識別できる。
また、請求項7の発明においては、乳頭画像部分に関する色を三次元色空間に係る3の座標値として計測し、3の座標値を入力変数とする所定の関数により計測結果として1の数値情報を出力するため、乳頭の色を容易に識別できる。
また、請求項8の発明においては、乳頭画像部分に関する色をXYZ色空間に係るx座標値、y座標値およびz座標値として計測し、z座標値を入力変数とする所定の関数により計測結果として1の数値情報を出力するため、乳頭の色を容易に精度良く識別できる。
また、請求項9の発明においては、所定の関数は1からz座標値を減算した結果を1の数値情報として出力するため、乳頭の色を一層精度良く識別できる。
また、請求項10の発明においては、器官が舌であるため、舌診による診断を行える。
<器官色計測システムの要部構成>
器官色計測システムの構成を説明する前に、まず健康状態などの診断手法について以下で説明する。
健康状態を知る方法としては、検温、血圧、脈拍など家庭で手軽に実施できる診断から、血液検査、検尿、心電図、X線撮影など職場や自治体で実施される診断、さらにはCT、MRIなど医療機関で実施される高度な検査などがある。
一方、東洋医学には舌診という診断方法があり、舌(下地)や苔(乳頭)の色から体質や体調の偏りを判断できる。舌は全身状態の変化が表れやすく全身を写す鏡と言われている。すなわち、舌組織には血管が豊富で、表面には角質層がなく粘膜で覆われているため、その色は血液や体液の色を反映しており、日焼けや人種などによる影響を受けないという利点がある。
以上のような舌診で用いられる舌色や苔色(舌器官の色)を計測する器官色計測システムの具体的な構成を、以下で説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る器官色計測システム1の要部構成を示す概略図である。
器官色計測システム1は、受診者の舌TNを撮影するカメラ2と、カメラ2とケーブルCBを介して通信可能に接続する処理装置3とを備えている。
カメラ2は、例えばデジタルカメラとして構成されており、背面に例えば液晶ディスプレイなどの表示部20が設けられるとともに、鏡胴から伸びるアームの先端に固定された2灯式のフラッシュ21(21a、21b)が設けられている。
フラッシュ21は、舌TNに対して特定の色温度(分光特性)で照明光を照射する。また、フラッシュ21は、撮像される舌TNの照度が一定となるように、舌TNまでの距離情報に基づく発光量の制御が可能となっている。
処理装置3は、例えばパーソナルコンピュータとして構成されており、画像データの処理が可能である。この処理装置3は、箱状の形状を有する処理部30と、操作部31と、例えばCRTで構成される表示部32とを有している。
処理部30の前面には、光ディスク9を挿入するドライブ301が設けられている。
操作部31は、マウス311とキーボード312とを有しており、処理装置3に対する操作入力を受付ける。
図2は、器官色計測システム1の機能ブロックを示す図である。
カメラ2は、光学ユニット21を介して舌TNを撮像する撮像部22と、これら各部と伝送可能に接続する制御部23とを備えている。また、カメラ2は、制御部23と伝送可能に接続する通信部I/F24を備えている。
光学ユニット21は、レンズ群とレンズ群の配置を変更する駆動部とを有し、フォーカスやズームを行って舌TNの光学像を撮像部22に結像させる。
撮像部22は、例えば3バンド(RGB)のフィルタがベイヤー配列されたCCDなどの撮像素子を有しており、RGBの画像信号を生成する。すなわち、撮像部22は、互いに異なる3の波長帯域(RGB)の光をそれぞれ透過させるフィルタを有するとともに、舌TNを撮像して舌器官の画像を取得する撮像手段として機能する。そして、撮像部22で受診者の舌TNのアナログ画像信号を取得した後には、A/D変換を行ってデジタル信号の画像データを生成する。
通信I/F24は、ケーブルCBを介して処理装置3とデータ伝送するためのインターフェースである。
制御部23は、CPUを有しており、カメラ2の動作を統括制御する部位である。また、制御部23は、撮像部22で取得した画像データを通信I/F24を介して処理装置3に送信するための制御を行う。
処理装置3は、上記の操作部31および表示部32に伝送可能に接続する制御部33を備えている。また、処理装置3は、制御部33に伝送可能に接続する記憶部34と、画像処理部35と、入出力I/F36と、通信I/F37とを備えている。
記憶部34は、例えばハードディスクとして構成されており、後述の器官色計測プログラムDPを格納する。
画像処理部35は、カメラ2で撮影された画像データに対して画像処理を行う部位である。
入出力I/F36は、ドライブ301を介し、記録媒体である光ディスク9に対してデータの入出力を行うためのインターフェースである。
通信I/F37は、ケーブルCBを介してカメラ2とデータ伝送するためのインターフェースである。
制御部33は、コンピュータとして働くCPU331およびメモリ332を有しており、処理装置3の動作を統括制御する部位である。この制御部33において器官色計測プログラムDPが実行されることにより、撮影された舌TNに関する舌色および苔色(器官色)を計測するための動作が処理装置3で行われる(後で詳述)。
制御部33のメモリ332には、光ディスク9に記録されている器官色計測プログラムDPなどのプログラムデータを入出力I/F36を介して格納することができる。これにより、この格納したプログラムを処理装置3の動作に反映できることとなる。
<器官色計測システム1の動作について>
図3は、器官色計測システム1の基本的な動作を示すフローチャートである。この動作は、処理装置3内の器官色計測プログラムDPを制御部33で実行することにより、実施される。
まず、カメラ2によって取得された舌TNの画像データから、処理装置3において舌領域を抽出する(ステップS1)。
ステップS2では、下地と乳頭との色を計測する。
ステップS3では、ステップS2で計測された色に対して色座標の変換を行う。
ステップS4では、ステップS3で色座標の変換が行われた色の解析を行う。
以上のような動作が器官色計測システム1にて行われるが、以下ではステップS1〜S4の動作を分説する。
<1.舌領域の抽出>
処理装置3の画像処理部35では、カメラ2で撮影された舌TNの画像データから、舌領域の抽出が行われる。この抽出処理について、以下で説明する。
まず、カメラ2によって、舌TNを中心として顔の下半分が撮影されるように撮影画像F1(図4)を取得する。この場合、撮影画像F1には、舌TNの他に顔の表面や唇、歯などが写っている。
そこで、撮影画像F1の輝度エッジに基づき、舌TNの領域を抽出する。具体的には、各画素のGデータにおいて4近傍(上下左右)の差分をとり、その差分値(輝度差)が所定の閾値αを超える画素を抽出して舌領域のエッジを決定する。この場合には、舌TNの周囲には、口腔や歯、舌の影などによる輝度差が存在するため、これらと区別して舌TNの検出が可能となる輝度差の閾値αを設定する。これにより、撮影画像F1から舌TNの領域のみを抽出できる。
<2.色の計測>
撮影画像F1から抽出された舌領域に基づき、舌TNに関する下地および乳頭の色を計測する。この色の計測について、以下で説明する。
図4の画像F2は、舌TNの表面を拡大した画像である。舌TNは、粘膜で覆われており、下地SJから突起する多くの糸状乳頭(以下では単に「乳頭」ともいう)NTが舌表面のほぼ全面に分布している。この乳頭NTには、血管がないため、通常は半透明から白色に見える。一方、乳頭NT以外の下地SJ(平行斜線部)には毛細血管が豊富であるため、血液の色が現れて赤く見える。
このような乳頭NTおよび下地SJは、その色の特徴を利用して画像処理部35で領域判別が行われる。つまり、乳頭NTは白色のため、RGBの数値はほぼ等しいが、下地SJは紅色のため、Gと比較して特にRの数値が大きくなる。そこで、撮影した舌画像のデータにおいて各画素のRとGとの比、例えばR/Gを演算する。そして、演算結果が閾値βを超える紅い領域を下地SJの部分、それ以外の白い領域を乳頭NTの部分と判断する。これにより、舌画像において、下地が写る下地画像部分と乳頭が写る乳頭画像部分とが抽出される。なお、上記の閾値βは、フラッシュ21の色温度やカメラ2のフィルタ特性などを考慮して設定するのが好ましい。
次に、抽出された乳頭NTの画像部分および下地SJの画像部分に基づき乳頭NTおよび下地SJの色を処理装置3で計測する。
乳頭NTにおける苔は、舌粘膜の乳頭が角化し、剥離した細胞や粘液、食べかす、細菌が付着したものであるため、計測された乳頭NTの色が舌診で用いられる苔色となる。一方、乳頭NT以外の舌TNの部分、つまり測定された下地SJの色が舌診で用いられる舌色となる。
<3.色座標の変換>
計測された下地SJおよび乳頭NTの色に対しては、色座標の変換が行われるが、この色座標の変換について、以下で説明する。
カメラ2で取得された撮影画像は、照明(フラッシュ21)やカメラ2の分光特性が反映された固有のRGBデータとして形成されている。そこで、このRGBデータを例えば国際照明委員会で規格化されたXYZ(Yxy)の色度座標に回帰式を用いて変換する。
具体的には、まずフラッシュ21を発光させた状態で、XYZ色度値が既知である複数の色票(カラーチャート)を撮影し、撮影画像のRGBデータを記録する。そして、撮影画像のRGBデータと色票との関係から、次の式(1)の3×3行列(変換行列)の要素a11〜a33を求める。
Figure 2005137680
上記の撮影により、色票のXYZ値とカメラのRGB値との組合せが複数得られるため、前者を目的変量とし、後者を説明変量とした回帰分析により撮影画像のRGBデータから色票のXYZ色度値への変換行列が求められる。なお、得られる変換行列の一例としては、a11=0.5、a12=0.3、a13=0.2、a21=0.2、a22=0.7、a23=0.1、a31=0、a32=0、a33=0.9という各要素を有する行列となる。
次に、実際に舌TNを撮影して得られた下地SJおよび乳頭NTのRGBデータを式(1)の右辺に代入し、既に求められている変換行列と乗算することにより、XYZ色度値を算出する。すなわち、下地SJの画像部分および乳頭NTの画像部分に関する色が三次元色空間に係る3の座標値として計測されることとなる。
以上のような色座標変換により、下地SJの色(舌色)および乳頭NTの色(苔色)に関して照明光等の分光特性を排除した絶対的な指標が得られる。
<4.色の計測結果の生成>
変換されたXYZ値に基づき、下地SJの色および乳頭NTの色の計測結果が生成されるが、まずXYZ色度値を、次の式(2)に基づいてxyz色度値に変換する。
Figure 2005137680
次に、xyz色度値を利用して下地SJの色および乳頭NTの色の計測結果が生成されるが、この計測結果の生成について以下で説明する。
<4−1.下地SJの色について>
図5は、複数人の下地SJの色(舌色)の測定値をプロットした図である。ここで、図5(a)はxy色度図を示しており、図5(b)はxz色度図を示している。
図5(a)に示す各測定値においては、y値が0.32付近で変化せずにx値のみが変化している。
下地SJでは、上述したように血液の色が現れる。そして、血液は、赤血球中のヘモグロビンの酸素飽和度や血液の濃度によって色が変化するものである。この血液の特性について、以下で詳述する。
図6は、ヘモグロビンに関する波長と吸収度との関係を示す図である。この図においては、酸素飽和度が高いヘモグロビン(oxy-Hb)のグラフKa(実線)と、酸素飽和度が低いヘモグロビン(deoxy-Hb)のグラフKb(破線)とを示している。
ヘモグロビンは、その酸素飽和度の高低により、Rの波長域(約600〜700nm)とBの波長域(約400〜500nm)とで吸収度が逆転する。一方、Gの波長域(約500〜600nm)では、酸素飽和度の違いによる吸収度の差が少ない。
そこで、このような血液の特性を考慮して、xyzの三次元色空間に係るx座標値、y座標値およびz座標値を入力変数とする関数f(x,y,z)により、下地SJの色の計測結果として1の数値情報を出力することを考える。
プロットされた各測定値においては、図5(a)に示すようにG値に関連するy値の変化は少ないものの、図5(b)に示すようにR値およびB値に関連するx値およびz値のバランスは顕著に変化している。すなわち、x値およびz値のバランスを計る(x−z)が小さいと紫色が表れ、(x−z)が大きくなるにつれて淡紅、深紅へと変化するが、これは酸素飽和度の変化に対応している。つまり、輝度に関連するy座標値を除外してx座標値とz座標値とを入力変数とし、x座標値からz座標値を減算した結果を出力する関数(f(x,z)=x−z)を利用すれば、下地SJの色を容易に識別するための1の数値情報を得られることとなる。
例えば、図5(b)において点Paの座標は、(x,z)=(0.42,0.26)であるが、(x−z)は0.16と小さいため紫色と識別できる。一方、点Pbの座標は、(x,z)=(0.53,0.15)であるが、(x−z)は0.38と大きいため深紅色と識別できることとなる。
以上のように下地SJの色の計測結果を(x−z)で表して一次元の情報に減じることにより、下地SJの色の判定を容易に行えることとなる。また、(x−z)の方向は、図5(b)に示すように色の分散が最大となる方向であり、色識別の精度を向上できる。
<4−2.乳頭NTの色について>
図7は、複数人の乳頭NTの色(苔色)の測定値をxy色度図にプロットした図である。
苔は、上述したように舌粘膜の乳頭が角化し、剥離した細胞や粘液、食べかす、細菌が付着したものである。そして、この付着物から硫化水素(H2S)が発生することにより、ヘモグロビンなどと結合して硫化鉄(Fe23)が生成される場合には、黄色や褐色を呈することとなる。
そこで、このような苔色(乳頭NTの色)の特性を考慮して、上述した下地SJの色の場合と同様に、xyzの三次元色空間に係るx座標値、y座標値およびz座標値を入力変数とする関数g(x,y,z)により、乳頭NTの色の計測結果として1の数値情報を出力することを考える。
xy色度図において、黄色は白色からx+y方向に分布するものであり、これを苔色の分布とみなすことができる。ここで、式(2)から導かれるx+y+z=1という関係を利用すれば、苔色は、(x+y)=(1−z)の演算値で表現できることとなる。
すなわち、(1−z)が小さいと白色が表れ、(1−z)が大きくなるにつれて黄色、褐色へと変化する。つまり、z座標値を入力変数とし、1からz座標値を減算した結果を出力する関数(g(z)=1−z)を利用すれば、乳頭NTの色を容易に識別するための1の数値情報を得られることとなる。
例えば、図7において点Qaの座標は、(x,y)=(0.42,0.31)であるが、(1−z)は0.73と比較的小さいため白色と識別できる。一方、点Qbの座標は、(x,y)=(0.43,0.37)であるが、(1−z)は0.8と比較的大きいため黄色と識別できる。
以上のように乳頭NTの色(苔色)の計測結果を(1−z)で表して一次元の情報に減じることにより、乳頭NTの色の判定を容易に行えることとなる。
以上のような器官色計測システム1の動作により、下地SJの色の計測結果として(x−z)値を算出するとともに乳頭NTの色の計測結果として(1−z)値を算出するため、客観的で精度の良い色の識別が可能となり、撮影された舌器官を持つ人についての健康状態などの診断が容易となる。
なお、下地SJの色(舌色)および乳頭NTの色(苔色)の変化については、舌全体でなく舌の一部で部分的に表れる場合がある。これは、血液や体液の分布、乳頭の再生能力などについて舌で偏りが生じるためであると考えられる。一方、舌診においては、色の変化が生じる舌の場所によって疾病の存在する臓器を特定できる。以上のことから、下地SJの色や乳頭NTの色の計測においては、舌画像から抽出する範囲を限定するのも有効である。
そこで、例えば医師が器官色計測システム1を使用して色の計測を行う場合には、操作部31を操作することによって、舌画像が表示される表示部32の画面上で計測範囲を指定できるようにする。これにより、所望する舌画像の一部において計測データを得られることとなる。
また、器官色計測システム1において、舌画像を複数の領域に分割して分割領域ごとに下地SJの色および乳頭NTの色を測定し、健康な人との差異が大きくなる分割領域を代表値として利用するようにしても良い。
すなわち、健康な人に関する下地SJの色の平均値は、(x,y)=(0.45,0.32)程度となっており、(x−z)は0.23となる。よって、受診者の下地SJの色を分割領域ごとに計測し、計測結果と0.23との差異が大きくなる分割領域を代表として採用する。
同様に、健康な人に関する乳頭NTの色の平均値は、(x,y)=(0.40,0.32)程度となっており、(1−z)は0.72となる。よって、受診者の乳頭NTの色を分割領域ごとに計測し、計測結果と0.72との差異が大きくなる分割領域を代表として採用する。
以上のように舌画像の計測範囲を自動的に指定することでも、下地SJの色や乳頭NTの色を適切に計測でき、舌診を精度良く行えることとなる。
<変形例>
◎上記の実施形態における下地の色については、(x−z)を計測結果をとして算出するのは必須でなく、(x/z)を計測結果として算出しても良い。すなわち、x座標値をz座標値で除算した結果を出力する関数を利用しても、適切に下地の色を識別できる1の数値情報を得られることとなる。
◎上記の実施形態における乳頭の色については、(1−z)を計測結果として算出するのは必須でなく、z値を計測結果としても良い。すなわち、z座標値を入力変数とする関数を利用しても、適切に乳頭NTの色を容易に識別するための1の数値情報を得られることとなる。
◎上記の実施形態における撮像部22においては、RGB3バンドのフィルタを有するのは必須でなく、4バンド以上のフィルタを有しても良い。
図8は、本発明の変形例に係る撮像素子4を示す図である。
撮像素子4は、撮像センサ41の前面にレンズアレイ42とフィルタアレイ43とが設けられている。このフィルタアレイ43は、9つの領域に分割され、それぞれの領域では互いに異なる透過波長の特性を有している。すなわち、フィルタアレイ43は、互いに異なる9の波長帯域の光をそれぞれ透過させるフィルタとして機能する。このような構成の撮像素子4により9バンドの分光画像が取得できる。
そして、回帰によってXYZ値を推定する場合には、上記の撮像素子4のように多くのバンド数で撮影すれば説明変量が多くなるため、精度が向上することとなる。
◎上記の実施形態における乳頭と下地との領域判別(抽出)については、可視光の波長で判別するのは必須でなく、可視光以外の波長で判別するようにしても良い。図6に示すようにヘモグロビンは短波長の光を多く吸収するため、紫外線など短波長の光を照射して撮影することにより、下地は一層暗く撮影される一方、反射率が変化しない乳頭の明るさは変化しない。よって、紫外線などの光を舌に照射して撮影することによって、乳頭と下地との領域判別をより適切に行えることとなる。
◎上記の実施形態における色座標の変換については、XYZ(Yxy)表色系に変換するのは必須でなく、三次元色空間を有するLab表色系やLuv表色系などに変換するようにしても良い。
◎上記の実施形態においては、舌に関する色に限らず、口腔や消化管など粘膜で覆われる臓器(器官)の色で診断するようにしても良い。粘膜で覆われる臓器においては乳頭を有するものが多く、この乳頭の色および臓器の下地の色を計測すれば、舌の場合と同様に疾病などの診断が行えるものと考えられる。例えば、内視鏡によって胃の内壁などを撮影し、撮影画像から乳頭および下地を抽出して色の計測を行えば、舌診と同様に診断を行えることとなる。
◎上記の実施形態においては、式(1)に示すようにRGBの3入力と3×3の変換行列とを乗算してXYZ値を算出するのは必須でなく、次の式(5)にしめすように二次の項(R×B、R×G、G×B)を追加した6入力と3×6の変換行列とを乗算してXYZ値を算出するようにしても良い。
Figure 2005137680
これにより、算出されるXYZ値の精度が向上することとなる。
また、上述した色票(カラーチャート)の代わりに実際の舌を撮影して計測データを求めることにより、XYZ値の算出精度を向上することができる。
◎上記の実施形態においては、カメラと処理装置とに分けて器官色計測システムを構成するのは必須でなく、処理装置の機能をカメラ側で有するようにしても良い。これにより、カメラ単体で舌を撮影して診断結果をカメラの表示部20(図1)に表示することができ、受診者の利便性が向上する。
本発明の実施形態に係る器官色計測システム1の要部構成を示す概略図である。 器官色計測システム1の機能ブロックを示す図である。 器官色計測システム1の基本的な動作を示すフローチャートである。 舌画像を説明するための図である。 複数人の下地の色(舌色)の測定値をプロットした図である。 ヘモグロビンに関する波長と吸収度との関係を示す図である。 複数人の乳頭NTの色(苔色)の測定値をxy色度図にプロットした図である。 本発明の変形例に係る撮像素子4を示す図である。
符号の説明
1 器官色計測システム
2 カメラ
3 処理装置
21、21a、21b フラッシュ
22 撮像部
33 制御部
35 画像処理部
DP 器官色計測プログラム
NT 乳頭
SJ 下地
TN 舌

Claims (11)

  1. 器官色計測システムであって、
    (a)粘膜で覆われ下地から乳頭が突起している器官を撮像し、器官の画像を取得する撮像手段と、
    (b)前記器官の画像において、前記下地が写る下地画像部分を抽出する抽出手段と、
    (c)前記下地画像部分に基づき、前記下地の色に関する所定の計測を行い、計測結果を出力する計測手段と、
    を備え、
    前記下地の色の計測結果は、前記器官を持つ人についての診断に用いられることを特徴とする器官色計測システム。
  2. 請求項1に記載の器官色計測システムにおいて、
    前記抽出手段は、
    (b-1)前記器官の画像において、前記乳頭が写る乳頭画像部分を抽出する手段、
    を有するとともに、
    前記計測手段は、
    (c-1)前記乳頭画像部分に基づき、前記乳頭の色に関する所定の計測を行い、計測結果を出力する手段、
    を有し、
    前記乳頭の色の計測結果は、前記器官を持つ人についての診断に用いられることを特徴とする器官色計測システム。
  3. 器官色計測システムであって、
    (a)粘膜で覆われ下地から乳頭が突起している器官を撮像し、器官の画像を取得する撮像手段と、
    (b)前記器官の画像において、前記乳頭が写る乳頭画像部分を抽出する抽出手段と、
    (c)前記乳頭画像部分に基づき、前記乳頭の色に関する所定の計測を行い、計測結果を出力する計測手段と、
    を備え、
    前記乳頭の色の計測結果は、前記器官を持つ人についての診断に用いられることを特徴とする器官色計測システム。
  4. 請求項1または請求項2に記載の器官色計測システムにおいて、
    前記計測手段は、
    (c-2)前記下地画像部分に関する色を、三次元色空間に係る3の座標値として計測する手段と、
    (c-3)前記3の座標値を入力変数とする所定の関数により、前記計測結果として1の数値情報を出力する手段と、
    を有することを特徴とする器官色計測システム。
  5. 請求項1または請求項2に記載の器官色計測システムにおいて、
    前記計測手段は、
    (c-4)前記下地画像部分に関する色を、XYZ色空間に係るx座標値、y座標値、およびz座標値として計測する手段と、
    (c-5)前記x座標値と前記z座標値とを入力変数とする所定の関数により、前記計測結果として1の数値情報を出力する手段と、
    を有することを特徴とする器官色計測システム。
  6. 請求項5に記載の器官色計測システムにおいて、
    前記所定の関数は、前記x座標値から前記z座標値を減算した結果を、前記1の数値情報として出力することを特徴とする器官色計測システム。
  7. 請求項2または請求項3に記載の器官色計測システムにおいて、
    前記計測手段は、
    (c-6)前記乳頭画像部分に関する色を、三次元色空間に係る3の座標値として計測する手段と、
    (c-7)前記3の座標値を入力変数とする所定の関数により、前記計測結果として1の数値情報を出力する手段と、
    を有することを特徴とする器官色計測システム。
  8. 請求項2または請求項3に記載の器官色計測システムにおいて、
    前記計測手段は、
    (c-8)前記乳頭画像部分に関する色を、XYZ色空間に係るx座標値、y座標値、およびz座標値として計測する手段と、
    (c-9)前記z座標値を入力変数とする所定の関数により、前記計測結果として1の数値情報を出力する手段と、
    を有することを特徴とする器官色計測システム。
  9. 請求項8に記載の器官色計測システムにおいて、
    前記所定の関数は、1から前記z座標値を減算した結果を、前記1の数値情報として出力することを特徴とする器官色計測システム。
  10. 請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の器官色計測システムにおいて、
    前記器官は、舌であることを特徴とする器官色計測システム。
  11. 器官色計測システムが有するコンピュータにおいて実行されることにより、当該器官色計測システムを請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の器官色計測システムとして機能させることを特徴とするプログラム。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007047045A (ja) * 2005-08-10 2007-02-22 Olympus Corp 画像処理装置及び方法並びにプログラム
JP2010025915A (ja) * 2008-06-18 2010-02-04 Ricoh Co Ltd 撮像装置及び路面状態判別方法
KR101195917B1 (ko) 2010-06-15 2012-10-30 한국 한의학 연구원 혀 진단 영역 추출 방법

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