JP2005132738A - アルツハイマー病のタンパク質分子レベルにおける検出方法 - Google Patents

アルツハイマー病のタンパク質分子レベルにおける検出方法

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【課題】 本発明は、タンパク質分子レベルにおけるアルツハイマー病の新規検出方法に関する。
【解決手段】 本発明は、アルツハイマー病患者由来の神経組織のプロテオーム解析により、中枢神経組織、体液における特定のタンパク質、例えば、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ3(NAD+)アルファプレカーサ、グアニン脱アミノ酵素、SH3BGRLなどの、アルツハイマー病に特異的な増減を指標として、これらのタンパク質のうちの1以上を定量することにより、アルツハイマー病を検出する方法を提供する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、タンパク質分子レベルにおけるアルツハイマー病の新規検出方法に関する。
アルツハイマー病(AD)は進行性の神経変性疾患であり、痴呆の最も一般的な原因の一つである。近年の分子生物学的技術の進歩により若年性家族性AD(FAD)の原因と考えられる遺伝子、アミロイドβ前駆タンパク質(amyloid β precursor protein; AβPP)やプレセニリン(presenilin; PS) -1及び-2が同定された。しかしながら、FADは全AD症例の約5%を占めているに過ぎず、ADのほとんどの症例は孤発的に起こっている。孤発性ADは複数遺伝子因子及び環境的要素によるものと考えられている。病理学的にはAD脳は2つのタイプの病変に特徴付けされる。すなわち、アミロイドβ(Aβ)の凝集体から成る老人斑および過剰リン酸化タウから成る神経原線維変化である。AD脳における難溶性タンパク質の研究はこれらの凝集のメカニズム解析に有用な情報を与えるかもしれない。
本研究者らによる、アルツハイマー病の患者の脳組織の解析により、NADHデヒドロゲナーゼ(ユビキノン)Fe-S 75kDaタンパク質、75kDaグルコース制御タンパク質、T−コンプレックスタンパク質1類似タンパク質(Similar to T-complex protein 1)、チューブリンα6、チューブリンβ5、シナプトタグミン1、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ3(NAD+)アルファプレカーサ、グアニン脱アミノ酵素、70kDa熱ショックタンパク質2(HSP70-2)およびミュー-クリスタリンがアルツハイマー病の患者の脳組織では、健常者の脳組織に比べて少ないこと、およびグリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼフラグメント、トリオースホスフェートイソメラーゼ1、脳クレアチンキナーゼ、グリア繊維酸性タンパク質(GFAP)およびSH3ドメイン結合性グルタミン酸リッチタンパク質様タンパク質(SH3BGRL)がアルツハイマー病の患者の脳組織では、健常者の脳組織に比べて多いことが明らかになった。
しかしながら、アルツハイマー病患者の診断は、今のところ、脳波やCTスキャンにより、大脳萎縮および/または海馬萎縮等を検出することによっており、分子レベルでの変調を検出する方法は少ない(特許文献1〜3参照)。
公表特許公報 号特表2002−510975(P2002−510975A)号 公表特許公報 第特表2001−523002(P2001−523002A)号 公表特許公報 第特表2001−512032(P2001−512032A)号 T. Tsuji, S. Shimohama, S. Kamiya, T. Sazuka and O. Ohara, J Neurol Sci 166 (1999), 100-106.
本発明は、中枢神経組織中または体液中の特定のタンパク質を定量することによるアルツハイマー病の検出方法を提供し、タンパク質分子レベルでの解析に基づくアルツハイマー病の診断を可能とするものである。
プロテオーム研究が近年著しく発展し、遺伝子の発現レベル、翻訳後修飾、タンパク質間相互作用のような遺伝子産物の状態に関する情報を得ることができるようになった。二次元ゲル電気泳動(2-DE)は等電点ゲル電気泳動(IEF)とSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動とにより構成され、質量分析(mass spectrometry; MS)によるタンパク質同定の前にタンパク質を分離検出するのに効果的な方法である。IEFのための固定化pH勾配(IPGs)の開発を含む2-DEの改良は、優れた解像度での再現性の高いゲル画像を可能とした。
そこで、本発明者らは、組織病理学的にアルツハイマー病(AD)と診断された剖検脳組織についてプロテオーム解析することにより、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ3(NAD+)アルファプレカーサ、グアニン脱アミノ酵素、70kDa熱ショックタンパク質2(HSP70-2)およびミュー-クリスタリンが、ADではないヒトの脳組織に比べて減少しており、かつドメイン結合性グルタミン酸リッチタンパク質様タンパク質が増加していることを新たに見出した。
さらには、脳タンパク質の連続抽出法という方法を採用し、難溶性タンパク質についても解析を行った。該方法においては、第一段階で、脳サンプルをSDSを含有する溶解バッファーによりホモジナイズした。SDSはタンパク質を可溶化する強力な界面活性剤であり、2-DEゲルの高解像度にとって効果的な試薬でもあるが、SDSの大量使用と定常のIEFとは、SDSが陰イオン性界面活性剤であるため、併用できないので、最初の抽出(可溶性タンパク質の抽出)は尿素及び非イオン性界面活性剤、Nonidet P-40(NP-40)を含有するサンプルバッファーによって希釈した後に行う。第二段階として最初の抽出では溶解されなかったタンパク質(難溶性タンパク質)をSDS溶解用バッファーで可溶化し、次いで尿素、チオ尿素、N-デシル-N,N-ジメチル-3-アンモニア-1-プロパンスルホン酸(SB3-10)及び3-[(3-クロラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホン酸(CHAPS)を含有するサンプルバッファーで希釈して、サンプルとする。
この方法により、従来の方法(非特許文献1参照のこと)では不可能であった、疎水性膜タンパク質や老化あるいは病理的過程において凝集を起こしたある種の脳タンパク質を含んだ難溶性タンパク質を別個に分析することを可能にした。本研究者らは、同じ脳検体について可溶性タンパク質のADにおけるプロテオミック変化についても同様に分析した。この方法により、大量のタンパク質を単離し、AD患者とコントロール群との間で可溶性及び難溶性両画分のタンパク質発現を比較した。その結果、難溶性タンパク質画分のプロテオーム解析により、AD患者の脳組織において、正常なヒトの脳組織に比して有意に増加している2つのタンパク質を見出した。MSによりこれらを解析したところ、GFAPであるという結果が得られた。本発明者らの実験においても、可溶性画分の解析で同定されている。したがって、上記難溶性画分で検出されたGFAPは、GFAPの修飾型であるか、または新規アイソフォームのGFAPである可能性がある。本明細書および本願特許請求の範囲については、該難溶性画分中に同定されたGFAPもGFAPと称することとするが、文脈から明らかな場合を除いて、単にGFAPとした場合可溶性画分に同定されたGFAPを指し、難溶性画分中に検出されたGFAPについては、「難溶性画分に検出されたGFAP」または「難溶性GFAP」と記載することにより区別する。
さらに本発明者らは、AD患者の脳で変動を示した上記タンパク質が髄液中、血中および尿中でも検出されるとの知見を得ている。
以上の知見に基づき、本発明は以下の:
1. アルツハイマー病の疑いがあるヒト患者から採取した中枢神経系組織または体液について、
(a) 該組織または体液中のイソクエン酸デヒドロゲナーゼ3(NAD+)アルファプレカーサ、グアニン脱アミノ酵素、70kDa熱ショックタンパク質2(HSP70-2)、ミュー-クリスタリンからなる群より選択される少なくとも1種のタンパク質を定量し、その量をアルツハイマー病の疑いのないヒトから採取した同じ中枢神経組織中または体液中に含まれる該量と比較する工程、
(b) その量がアルツハイマー病の疑いのないヒトから採取した該中枢神経組織中または体液中に含まれる量に比べて少ない場合はアルツハイマー病であると判断すること、
を特徴とする、アルツハイマー病の検出方法;
2. アルツハイマー病の疑いがあるヒト患者から採取した中枢神経系組織または体液について、
(c) SH3ドメイン結合性グルタミン酸リッチタンパク質様タンパク質(SH3BGRL)を定量し、その量をアルツハイマー病の疑いのないヒトから採取した同じ中枢神経組織または体液中に含まれる量と比較する工程、
(d) その量がアルツハイマー病の疑いのないヒトから採取した該中枢神経組織中または体液中に含まれる量に比べて多い場合はアルツハイマー病であると判断すること、
を特徴とする、アルツハイマー病の検出方法;
3. アルツハイマー病の疑いがあるヒト患者から採取した中枢神経系組織または体液について、
(e) 該組織または体液を、可溶性画分と難溶性画分とに分画し、難溶性画分中の難溶性グリア繊維酸性タンパク質(GFAP)を定量し、その量をアルツハイマー病の疑いのないヒトから採取した同じ中枢神経組織または体液中に含まれる量と比較する工程、
(f) その量がアルツハイマー病の疑いのないヒトから採取した該中枢神経組織中または体液中に含まれる量に比べて多い場合はアルツハイマー病であると判断すること、
を特徴とする、アルツハイマー病の検出方法;
4. アルツハイマー病の疑いがあるヒト患者から採取した中枢神経系組織または体液について、上記1記載の(a)と(b)、上記2記載の(c)と(d)および上記3記載の(e)と(f)からなる3組の工程の組み合わせから2組以上の組み合わせを含み、そのいずれにおいてもアルツハイマー病であると判断された場合に、該患者はアルツハイマー病であると判断することを特徴とする、アルツハイマー病の検出方法;
5. 上記1〜4のいずれかに記載のアルツハイマー病の検出方法であって、
(g) アルツハイマー病の疑いがあるヒト患者から採取した中枢神経系組織中または体液中の、NADHデヒドロゲナーゼ(ユビキノン)Fe-S 75kDaタンパク質、75kDaグルコース制御タンパク質、T−コンプレックスタンパク質1類似タンパク質、チューブリンα6、チューブリンβ5、およびシナプトタグミン1からなる群より選択される1以上のタンパク質を定量し、その量をアルツハイマー病の疑いのないヒトから採取した同じ中枢神経組織中または体液中に含まれる量と比較する工程、
(h) その量がアルツハイマー病の疑いのないヒトから採取した該中枢神経組織中または体液中に含まれる量に比べて少ないことを確認する工程、
をさらに含む、上記方法;
6. 上記1〜5のいずれかに記載のアルツハイマー病の検出方法であって、
(i) アルツハイマー病の疑いがあるヒト患者から採取した中枢神経系組織中または体液中の、グリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼフラグメント、トリオセホスフェートイソメラーゼ1、脳クレアチンキナーゼ、グリア繊維酸性タンパク質からなる群より選択される1以上のタンパク質を定量し、その量をアルツハイマー病の疑いのないヒトから採取した同じ中枢神経組織中または体液中に含まれる量と比較する工程、
(j) その量がアルツハイマー病の疑いのないヒトから採取した該中枢神経組織中または体液中に含まれる量に比べて多いことを確認する工程、
をさらに含む、上記方法;
7. 上記体液が髄液、血液または尿であることを特徴とする、上記1〜6のいずれかに記載の方法;
8. 定量を免疫化学的手法により実施することを特徴とする、上記1〜7のいずれかに記載の方法;
9. SSSGSTAIKKKQQDV(配列番号1)を免疫原として作製された、ヒトSH3ドメイン結合性グルタミン酸リッチタンパク質様タンパク質に対する抗体;
10. RPATGYPLPPQIFNESQ(配列番号2)を免疫原として作製された、ヒトSH3ドメイン結合性グルタミン酸リッチタンパク質様タンパク質に対する抗体;
11. GLTAPPGSKEAEVQA(配列番号3)を免疫原として作製された、ヒトSH3ドメイン結合性グルタミン酸リッチタンパク質様タンパク質に対する抗体;
12. ウサギポリクローナル抗体である、上記9〜11のいずれかに記載の抗体;
13. 上記9〜12のいずれかに記載の抗体を用いてヒトSH3ドメイン結合性グルタミン酸リッチタンパク質様タンパク質を定量することを含む、上記8記載の方法;
14. 定量を二次元電気泳動解析により実施することを特徴とする、上記1〜7のいずれかに記載の方法;
15. 組織サンプルを、可溶性タンパク質画分と難溶性タンパク質画分とに分画して、それぞれの画分について二次元電気泳動を行い、組織サンプル中の可溶性タンパク質及び難溶性タンパク質の両方について解析する方法であって、
(1) 尿素及び非イオン性界面活性剤を含有するサンプルバッファーを用いて、可溶性タンパク質画分を抽出して遠心分離により可溶性タンパク質画分を上清に回収する工程、
(2) 続いて上記遠心分離によりペレット中に存在する難溶性タンパク質を、SDS、尿素、チオ尿素、N-デシル-N,N-ジメチル-3-アンモニア-1-プロパンスルホン酸(SB3-10)及び3-[(3-クロラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホン酸(CHAPS)を含有するサンプルバッファーを用いて可溶化して抽出し、遠心分離により難溶性タンパク質画分を上清に回収する工程、
を実施することを含む、上記方法;ならびに、
16. 定量を上記15記載の方法を用いる二次元電気泳動解析により実施することを特徴とする、上記14記載の方法;
に関する。
本発明により、アルツハイマー病の分子レベルでの解析が可能となり、確実な診断が可能となった。したがって、患者の髄液、血液または尿をサンプルとして採取することができれば、患者の身体的自由を拘束してCTスキャン、MRI、SPECTや脳波測定を行うことなく、またそのような高価な機器を必要とすることなく正確かつ早期にアルツハイマー病の診断が行え、サンプル採取後は医師によらなくても、専門的技術者による生化学的手法を用いて該サンプルを解析することによりADであるか否かの判定および経過の観察が可能となるため、患者のクオリティーオブライフ(QOL)の向上につながる。
本発明に用いる中枢神経組織は、中枢神経組織中の神経細胞を含むものであればよく、また体液は、尿、血液等であってよい。特に髄液を用いることが好ましい。髄液は髄液穿刺により得ることが可能である。得られた中枢神経組織を、常法にしたがってホモジナイズして組織溶解液を得る。例えば、10mMトリス塩酸(pH7.5)、2%SDS、20%グリセロール及び2%メルカプトエタノールからなる溶解バッファーを、適切な量、例えば1v/wの割合で該組織片に添加し、ハンドソニケーターを使ってホモジナイズすることができる。
続く解析方法としては、免疫化学的手法または二次元電気泳動法を用いるとよい。
免疫化学的手法には、特異的抗体分子(完全な抗体分子に限らず、Fab等の抗体断片およびキメラ抗体等、目的とするタンパク質を特異的に認識し得る可変領域を有する分子をいう)を用いる方法全てが含まれ、定量解析に適しているものとしてはELISA法が挙げられるが、ウェスタンブロット法等で得られる画像などを画像解析ソフトウェア等を用いて定量解析を行う方法も当技術分野における慣用技術となっており、本発明の解析にも用いることができる。
本発明の定量において、免疫化学的手法を用いる場合、上記組織溶解液または体液サンプルに抗体分子を接触させ、その結合を検出すればよい。検出のために、抗体分子は酵素、色素、発光物質、放射性同位元素等で修飾しておくと便利である。また、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ3(NAD+)アルファプレカーサ、グアニン脱アミノ酵素、SH3結合性グルタミン酸リッチタンパク質様タンパク質(SH3 domain binding glutamic acid-rich protein like; SH3BGRL)、NADHデヒドロゲナーゼ(ユビキノン)Fe-S 75kDaタンパク質、70kDa熱ショックタンパク質2、75kDaグルコース制御タンパク質、T−コンプレックスタンパク質1類似タンパク質、チューブリンα6、チューブリンβ5、ミュー-クリスタリン、シナプトタグミン1、グリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼフラグメント、トリオースホスフェートイソメラーゼ1、脳クレアチンキナーゼおよびGFAPからなる群に属するいずれかのタンパク質を定量しようとする場合には、上記組織溶解液から、可溶性画分を分画するとよい。上記溶解液を例えば、9M尿素、2% NP-40、2%ファーマライト及び8mM PMSFを含有するサンプル溶液で希釈し、遠心分離(例えば100,000×gで1時間)により上清を回収することにより、可溶性画分を得ることができる。可溶性画分に分画後、定量する方が、バックグラウンドを抑えることができ、定量の精度、感度が向上する場合がある。
また、本発明者らによって初めてその存在が確認された難溶性画分に分画されるGFAPの定量を行う場合には、上記分画後の遠心ペレットを、SDS含有バッファー等可溶化能の高いバッファーにより可溶化し、遠心分離により不溶性画分を除去することにより得ることができる。例えば、可溶性画分である上清を除去したペレットに、上記と同じSDS溶解バッファー中で充分に超音波処理し、煮沸後、7M尿素、2Mチオ尿素、2% SB3-10、2% CHAPS、2mMトリブチルホスフィン及び2%ファーマライトを含有するサンプル溶液で希釈した後、サンプルを100,000×gで1時間遠心分離し、上清を回収することにより難溶性画分が得られる。
得られた組織溶解液(この場合は、細胞破片を除去するために遠心分離により上清を回収する必要がある)、可溶性画分または難溶性画分溶液を、それぞれ定量しようとするタンパク質に特異的な抗体と接触させて免疫化学的定量を行う。この工程は、種々の方法で行うことができ、調製した分画サンプルおよび定量しようとするタンパク質、用いる抗体等に応じて、適切な方法を当業者は適宜選択することができる。
ヒトSH3BGRLを免疫化学的手法により定量するために、抗体としては、SSSGSTAIKKKQQDV(配列番号1)、RPATGYPLPPQIFNESQ(配列番号2)またはGLTAPPGSKEAEVQA(配列番号3)からなるアミノ酸配列を有するペプチドを免疫原としてウサギなどに免疫し、得られたヒトSH3BGRLに対する抗体を用いるとよい。この際、上記ペプチドをキーホールリンペットヘモシアニン等のキャリアタンパク質に結合させたペプチド複合体を免疫原として免疫してもよい。キャリアタンパク等に結合させるためには、免疫原とするペプチドのN末端側に例えばシステイン残基等を付加したものを用いるとよい。
二次元電気泳動により定量する場合は以下の要領で行うとよい。
上記サンプル溶液(100μgタンパク質/40μL)をpH勾配ゲルの陽極側に滴下し、IEFを適切な条件下(例えば、5分間で0-200V、5時間で200-300V、8時間で300-3500V、その後可溶性画分については3500Vを8時間、難溶性画分については59時間など)で泳動する。続く二次元目の電気泳動は、基本的にはLaemmliの方法の基づいてSDSポリアクリルアミドゲル上で行う。
得られた二次元ゲルを銀染色し、画像解析に供してスポットを定量解析する。画像解析ソフトは種々のものが市販されており、いずれのものを使用してもよい。検出するタンパク質のスポットの位置は、その等電点と分子量から割り出すことができる。また、スポット同定用に、アルツハイマー病患者の中枢神経組織を、被験者のサンプルと同様に処理して、同一条件下で二次元電気泳動に供することにより、スポット同定用のゲルにおけるスポットの位置を確認し、被験者のサンプルを泳動したゲルの中でそれに対応する位置のスポットを特定すればよい。常に同様の条件下でサンプル調製および電気泳動を行う場合は、1つのスポット同定用のゲルの画像を保存しておき、それと対比させることで容易に目的とするタンパク質のスポットの位置を特定することができる。
コントロールとして、被験者のサンプルと同様に処理したADを発症していないヒトのサンプルを用意し、同様の条件にて定量解析する。このコントロールにおける定量値と、上記被験者サンプルにおける定量値とを比較する。
定量したタンパク質が、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ3(NAD+)アルファプレカーサ、グアニン脱アミノ酵素、70kDa熱ショックタンパク質2(HSP70-2)、ミュー-クリスタリン、NADHデヒドロゲナーゼ(ユビキノン)Fe-S 75kDaタンパク質、75kDaグルコース制御タンパク質、T−コンプレックスタンパク質1類似タンパク質、チューブリンα6、チューブリンβ5、およびシナプトタグミン1からなる群に属している場合、被験者サンプルにおける該タンパク質の量がコントロールに比べて少ない場合、アルツハイマー病であると診断できる。
「コントロールの値に比べて少ない」とは、コントロールの値に対して被験者サンプルの定量値が80%以下、好ましくは75%以下であることと定義してもよい。さらに、上記タンパク質群のうちのT−コンプレックスタンパク質1類似タンパク質以外のタンパク質については、70%以下、さらに、70kDa熱ショックタンパク質2、チューブリンα6、シナプトタグミン1の場合は、55%以下もしくは50%以下であることと定義してもよい。
定量したタンパク質が、SH3BGRL、グリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼフラグメント、トリオセホスフェートイソメラーゼ1(triosephosphate isomerase 1)、脳クレアチンキナーゼ、GFAP、および難溶性画分に検出されるGFAPからなる群に属している場合、被験者サンプルにおける該タンパク質の量がコントロールに比べて多い場合、アルツハイマー病であると診断できる。
「コントロールの値に比べて多い」とは、コントロールの値に対して被験者サンプルの定量値が125%以上、好ましくは130%以上であることと定義してもよい。さらに、上記タンパク質群のうちのSH3BGRL以外のタンパク質については、160%以上、または180%以上と定義するこができる。さらに、SH3BGRLおよびトリオセホスフェートイソメラーゼ1以外の場合は、200%以上であることと定義してもよい。さらに、GFAPおよび難溶性画分に検出されるGFAPについては、「コントロールの値に比べて多い」とは、250%以上と定義することもできる。
以上に述べた通り、コントロールと対比して、上記タンパク質の定量値に基づいてアルツハイマー病を診断し得るが、個々のタンパク質の定量はその誤差等を考慮する必要があるため、1つのタンパク質についての定量値のみに基づいて診断するよりも、2以上のタンパク質についての定量値に基づいて診断する方が、より確実である。上記タンパク質群のうち、より多種のタンパク質についての定量値に基づいて診断する方が、より確実であり、好ましい。
本発明において、難溶性タンパク質についても二次元電気泳動を行うことができるが、その方法は、本発明者らによって新規に開発されたものである。以下に詳細に説明する。
従来の2-DEではある種のタンパク質の選択的損失がなお問題であり、一般的には膜タンパク質は損失される。膜タンパク質等の疎水性タンパク質、とりわけ高分子のタンパク質は、疎水性であるとタンパク質の凝集を起こし易く、サンプルのアプライやIEFの際に大きな障害となる。膜タンパク質は細胞中のタンパク質の大きな部分を占めており、細胞外環境からのシグナル伝達等の重要な細胞機能は、レセプターやイオンチャネルなどの膜タンパク質に大きく依存している。したがって、膜タンパク質は薬剤標的としての意義が大きい。
本発明において、可溶性と難溶性の脳タンパク質を別々に観察できるようなプロトコールを開発し、ADにおけるタンパク質発現の変化の検出を可能にするような脳タンパク質に関するデータベースを構築した。AD脳についてのいくつかの2-DEデータベースが公開されているが、これらはいずれもAD脳の難溶性タンパク質に関するものではなかった。本研究者らは、難溶性脳タンパク質に関して解析するために、疎水性タンパク質の同定能を改良した新たな方法を開発した。
該方法は、脳タンパク質の連続抽出法という新規方法である。第一段階で、組織サンプルをSDSを含有する溶解バッファーによりホモジナイズした。SDSはタンパク質を可溶化する強力な界面活性剤であり、2-DEゲルの高解像度にとって効果的な試薬でもある。SDSの大量使用と定常のIEFとは、SDSが陰イオン性界面活性剤であるため、併用できないので、最初の抽出(可溶性タンパク質の抽出)は尿素及び非イオン性界面活性剤Nonidet P-40(NP-40)を含有するサンプルバッファーによって希釈した後に行った。第二段階として最初の抽出では溶解されなかったタンパク質(難溶性タンパク質)をSDS溶解用バッファーで可溶化し、次いで尿素、チオ尿素、N-デシル-N,N-ジメチル-3-アンモニア-1-プロパンスルホン酸(SB3-10)及び3-[(3-クロラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホン酸(CHAPS)を含有するサンプルバッファーで希釈した。この方法により疎水性膜タンパク質や老化あるいは病理的過程において凝集を起こしたある種の脳タンパク質を含んだ難溶性タンパク質を別個に分析することが可能となった。この方法により、大量のタンパク質を単離し、AD患者とコントロール群との間で可溶性及び難溶性両画分のタンパク質発現を比較した。
かかる連続抽出法を用いることにより、1つのサンプルから分画される2つの画分を別々に二次元電気泳動解析に供することができ、ゲル画像を鮮明に得ることができ、解析が容易となる。また、鮮明なゲル画像が得られるため、泳動ゲルのサイズを縮小することもでき、経済的時間的に有利である。
また、当該方法により、難溶性タンパク質のプロテオーム解析が容易となった。
1.材料及び方法
剖検脳検体
脳組織は臨床的及び組織病理学的にADと診断された患者10人(年齢;79.1±5.0歳、死後経過時間;5.2±5.8時間)、及び臨床的、形態学的に脳の病変が認められなかった年齢層の一致した対象群10人(年齢;72.2±9.5歳、死後経過時間;6.2±4.6時間)からオートプシーにより採取した。両群における代表的な死因は心疾患または呼吸不全であった。オートプシー後直ちに脳を矢状方向に二分し、一方を生化学的研究に、他の半分を組織学的試験に使用した。ADの脳病理学的評価はAD登録事項設置コンソーシアム(the Consortium to Establish a Registry for AD: CERAD)の基準に従った。本研究では側頭及び前頭皮質を分析用及び予備的使用のために準備した。
試薬
IPG勾配ゲルストリップ及びファーマライト(Pharmalyte)はアマシャムバイオサイエンス(Amersham Biosicences; Uppsala, Sweden)から購入した。SDS-PAGEマーカーはバイオラド(Bio-Rad; Hercules, CA)の製品を使用した。フェニルメチルスルフォニルフルオライド(PMSF)、SB3-10及びCHAPSはシグマケミカル(Sigma Chemicals; St Louis, MO, USA)から購入した。チオ硫酸ナトリウム及び硝酸銀は和光純薬(大阪、日本)から購入した。炭酸ナトリウムは高杉製薬(福岡、日本)から購入した。他の化学薬品は全てナカライテスク(京都、日本)から購入した。
サンプルの調製
可溶性タンパク質:可溶性タンパク質は既報の方法により調製した。脳組織は10mMトリス塩酸(pH7.5)、2% SDS、20%グリセロール及び2%メルカプトエタノールから成る溶解バッファーの1v/w中でハンドソニケーターを使って超音波分解を充分に行った。9M尿素、2% NP-40、2%ファーマライト及び8 mM PMSFを含有するサンプル溶液で5倍に希釈後、100,000×gで1時間遠心分離し上清を集めた。
難溶性タンパク質:最初の抽出によって得られたペレットを同じSDS溶解バッファー中で充分に超音波分解し、煮沸した。7M尿素、2Mチオ尿素、2%SB3-10、2%CHAPS、2mMトリブチルホスフィン及び2%ファーマライトを含有するサンプル溶液で5倍に希釈した後、サンプルを100,000×gで1時間遠心分離し、上清を収集した(図1)。
2-DEゲル電気泳動
ゲル電気泳動の一次元は固定化pH勾配ゲル(固定化乾燥ストリップゲル、pH4-7、180×3×0.5mm)により水平電気泳動機器(Multiphor II, Pharmacia)を使って行った。サンプル溶液(100mg/40μL)をゲルの陽極側に滴下し、IEFは、5分間で0-200V、5時間で200-300V、8時間で300-3500V、その後3500Vを可溶性画分については8時間、難溶性画分については59時間、それぞれ泳動した。ゲル電気泳動の二次元は基本的にはLaemmliの方法の基づいてSDSの存在下に12-14%グラジエントゲル(24.5×18×0.05cm)を使って行った。必要な場合には、分子量の指標としてマーカータンパク質を同じ方法で分離した。
ゲルスキャンニングと画像解析
銀染色した2-DEゲル上のタンパク質スポットはフラットベッド・スキャナ(Agfa-Gevaert, Mortsel, Belgium)を使って300dpiでデジタル化処理した。画像データをマッキントッシュコンピュータ(Power Macintosh G4)上でメラニーIIソフトウェア(Melanie II software: Bio-Rad)を使って分析した。コントロール群で2つ以上のゲルに認められたスポットを拾い上げ、これらのスポットを融合して参照ゲルを作成し、この参照ゲルの各スポットに番号付けをした。各ゲルのスポットを参照ゲルと同様の番号付けスキームに従って番号付けを行った。スポットの体積(VOL)はスポット部分の光学密度(OD)の積分により定義し、相対体積(%VOL)は全画像の合計VOLに対するそのスポットのVOLの割合とした。スポットの%VOLを求め、AD群とコントロール群との間で有意差を示したスポットを検出した。データをマッキントッシュ マイクロソフト エクセル(Microsoft Excel on Macintosh)を使って統計学的に解析し、p<0.05の危険率でスチューデントt検定により%VOLがコントロール群から有意に変化したAD群のスポットを同定した。
MS分析用への改変銀染色
電気泳動後、ゲル・スラブを50%メタノール、5%酢酸水中で20分間固定化した。50%メタノール水で10分間洗浄後、0.02%チオ硫酸ナトリウム中で1分間インキュベートして増感した。ゲルを洗浄後、0.1%硝酸銀溶液中に浸し4℃で20分間インキュベートした。ゲル・スラブを2%炭酸ナトリウムの0.04%フォルマリン中で発色させた。スポットが見えてきたら5%酢酸水を加え反応を止めた。
前処理方法
銀染色したタンパク質スポットをゲルから切り出し、目的のゲルをチューブAに入れ、100μMのNH4HCO3 100μLを加えて15分間放置後、遠心分離し上清を捨てる。アセトニトリル100μLを加えて15分間放置後、遠心分離し上清を捨てる。この操作を2回繰り返した後、減圧乾燥する。トリプシン緩衝液a(50mM NH4CO3, 5mM CaCl2, 25ng/μl トリプシン)を10μL加えて、10分間室温静置した後、トリプシン緩衝液aを除去し、緩衝液b(50mM NH4HCO3, 5mM CaCl2)を10μL加えて、37℃で一晩静置した。上清をチューブBに移し、5%トリフルオロ酢酸 20μLを加え、20分間振蕩後、別のチューブBに移した。チューブAに50%アセトニトリル及び5%トリフルオロ酢酸溶液20μLを入れ、20分間振蕩後、上清をチューブBに移す。この操作を3回繰り返した後、チューブBのサンプルを減圧乾燥し、ZipTip(Millipore Corp.)で脱塩する。マトリックスとして1/8希釈ジヒドロキシ安息香酸飽和溶液を使用し、プレート上で結晶化させ、質量分析用の検体とした。
質量分析によるタンパク質の同定
銀染色したタンパク質スポットをゲルから切り出し、ゲル切片をトリプシン分解した。得られたペプチド画分を2つの異なる系、すなわち、マトリックス支援レーザーイオン化(MALDI)飛行時間型質量分析(TOF/MS)及び融合型MS/MS TOFシステム(QSSTAR Pulser 1:アプライドバイオシステムズ(株)製)を利用したタンデム質量分析(MS/MS)により分析した。
タンパク質データベース検索
ペプチド-マッピングデータをpI及びMW値(2-DEゲルからの推定値)と共にAnalystQSによりNCBInrデータベースの検索に使用した。
SH3BGRLペプチドに対する抗体の作製方法
ヒトSH3BGRLの9番目のセリンから23番目のバリンまで:SSSGSTAIKKKQQDV(配列番号1)のN末端にシステイン残基を付加したペプチドを合成し、このペプチドをキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)に結合させたKLH-ペプチド複合体(1.6mg/mL)を免疫原として作製し、雌ウサギ(日本白色種)に初回は0.4mgを完全フロインドアジュバントと共に背皮内投与した。初回免疫後、2週間の間隔で免疫原0.2mgを不完全フロインドアジュバントと共に3回背皮内投与し、最終免疫の2週間後に全採血し抗血清を得た。得られた抗血清は免疫原に使用したペプチドをセファロース樹脂に結合させたアフィニティーカラムを用いて精製し、特異抗体を得た。同様の方法で、ヒトSH3BGRLの58番目のアルギニンから74番目のグルタミンまでの17アミノ酸:RPATGYPLPPQIFNESQ(配列番号2)、96番目のグリシンから110番目のアラニンまでの15アミノ酸:GLTAPPGSKEAEVQA(配列番号3)に対する特異抗体を作製した。
2.結果
2-DEを用いるプロテオミック解析は一度に多数のタンパク質を調査することが可能であり、"多因子"ADにおける疾病経過の研究に有用な手段である。AD脳のプロテオミック解析は既に報告されている。IPGはIEFを大幅に改良したが、疎水性タンパク質はその解像度が悪く、IPGによる分離の際に失われるということがかなり早い段階で指摘されていた。これはタンパク質とIPGマトリックスの塩基性アクリルアミド誘導体との間の疎水性相互作用によるものであると考えられる。最初のサンプル溶解が疎水性タンパク質喪失の主な要因であった。近年、細胞膜の生物学的、薬理学的重要性についての理解が深まり、これら難溶性タンパク質のIPGによる2-DEの高度解像法を用いる分離方法の改良に多くの努力がなされた。難溶性タンパク質を含むAD脳タンパク質のデータベースを作成するために、サンプル調製に連続抽出法を採用した。可溶性タンパク質はSDS溶解バッファーにより可溶化して調製した後、NP-40と尿素を含有するサンプル溶液で希釈した。最初の抽出段階で可溶化されなかった難溶性タンパク質はSDS溶解バッファーでホモジナイズし、煮沸処理した後、CHAPS、SB3-10、尿素及びチオ尿素を含有するサンプル溶液で希釈した。可溶性、難溶性両タンパク質について別々に2-DEを行い、2-Dゲル上のスポットを銀染色により検出した。AD群と健常コントロール群との間のタンパク質発現の差を調べた。結果として、高解像度の2-DEデータを得、難溶性画分については531のスポットを、可溶性画分については1283のスポットがそれぞれの参照ゲル上に示された。AD群とコントロール群でのタンパク質発現の差異を比較し、18のスポットの%VOLがAD脳ではコントロール脳に比較して有意に変動していたことが明らかになった。
2-Dゲルの写真はフィルター処理されていないそのままの画像であり、可溶性、難溶性両タンパク質の分析に対し高解像度での分離及び低バックグラウンドの像を提供した(図2,3)。難溶性画分では、コントロール群で2つ以上のゲルに現れたスポットを回収し、これらのスポットを融合させて参照ゲルを作成した。531のスポットを参照ゲルに付し、番号付けした。参照ゲルの番号付けスキームに従って各ゲルのスポットを解析し、それらの%VOLを計算した。その結果、3つのタンパク質スポットの%VOLがAD脳で有意に上昇していた(図2)。これら3つのスポットの2つはGFAPであることがMSにより同定された。他の1つはスポットが弱く同定はできなかったが、スポット当たりのタンパク質量が少ないこと及び質量スペクトルが不適当であったことが示された。
GFAPは中間フィラメントタンパク質のクラスIIIに属し、成熟星状細胞に最も豊富に存在する。AD脳における星状細胞はアミロイド沈着や神経細胞変性に反応性であることが知られているだけでなく、星状細胞の退行性応答、すなわち、細胞内対ペアードヘリカルフィラメント(paired helical filament)、アミロイド小体の数の増加、及びアポトーシスもまた示されている。酵素免疫測定法を用いた定量によりGFAPレベルの上昇がCSFやAD患者の脳サンプルにおいて報告されている。更に、5つのGFAPα、-β、-γ、-δ及び-εとして表されるアイソフォームについての記載があり、GFAPεはプレセニリンタンパク質と相互作用することが最近報告された。GFAPは重合したフィラメント及び未重合サブユニットの間で動的平衡を保っている。GFAPフィラメントの会合は主要ドメインのリン酸化と脱リン酸化により制御されており、主要領域のあるアミノ酸がリン酸化されるとフィラメントの分解が起こるということが提示されている。2ーDゲルではGFAPは異なる分解物、アイソフォーム及び翻訳後修飾により複数のスポットとして分離されることが知られている。可溶性画分の解析によりAD群で%VOLが上昇したGFAPのスポットが認められた。このスポットのpIとMWは難溶性画分に認められた2つのGFAPスポットのpI及びMWとは異なっていた。異なる発現を示したこれらの修飾、アイソフォーム、分解に関して更に検討して得られたGFAPスポットの特徴はADの病因におけるGFAPの関連性について重要な情報を与えるであろう。
可溶性画分についても、参照ゲルを上記の方法で作成し、1283のスポットを参照ゲルとして割り当てた。定量分析により10のスポットの%VOLがADで有意に減少していた。逆に5つのスポットでAD脳の%VOLが上昇していることが検出された(図3)。これらのタンパク質全てをMSにより同定し、表1にそのNCBInr登録番号、正式名称及び同定されたタンパク質のコントロールに対するADの%VOL比を示した。同定されたタンパク質は酵素、分子シャペロン、細胞骨格タンパク質及びその他タンパク質などのいくつかのグループに分類される(表1)。これらのタンパク質の中で次のもの、すなわち、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ3(NAD+)、グアニン脱アミノ酵素、70kDa熱ショックタンパク質2(HSP70-2)、ミュー-クリスタリン及びSH3BGRLはAD脳との関連について未だ報告されていない。
Figure 2005132738
以下、表1のタンパク質の分類にしたがって、説明する。
酵素:
上記実験により、ミトコンドリア酵素であるNADHデヒドロゲナーゼ(ユビキノン; ubiquinone)Fe-Sタンパク質1(75kDa)及びイソクエン酸デヒドロゲナーゼ3(NAD+)アルファプレカーサ、及びグアニン脱アミノ酵素はAD脳において減少していた。
NADHデヒドロゲナーゼはミトコンドリア電子伝達系の酵素複合体の一つであり、少なくとも41のサブユニットから成り、NADHからユビキノンヘの電子の輸送を触媒する。NADHデヒドロゲナーゼのサブユニットをコードしているいくつかの遺伝子においてAD脳での発現が低下しているといういくつかの報告が成されている。Kimら(S.H. Kim, R. Vlkolinsky, N. Cairns, M. Fountoulakis and G. Lubec, Life Sciences 68 (2001), 2741-2750)はNADHデヒドロゲナーゼの2つのサブユニットのタンパク質発現レベルが低下しているという報告をしている。イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(NAD+)はミトコンドリアマトリックス中に2α、1β及び1γサブユニットから成るヘテロ四量体として存在している。トリカルボン酸サイクルの主要な制御酵素であり、イソクエン酸のα-ケトグルタール酸への酸化的脱炭酸、電子伝達系における還元物質を産生する、反応を触媒する。これらの結果はミトコンドリアにおけるエネルギー代謝の欠陥はAD病変に影響を与えるということを示している。
グアニン脱アミノ酵素はグアニンとアンモニアの加水的脱アミノ反応を触媒する。この反応は更なる利用からグアニン塩基をグアニル酸ヌクレオチドとして非可逆的に脱アミノする。グアニン・ヌクレオチドは神経のシグナル経路において重要な役割を担っている。GDPとDTPはG-タンパク質結合レセプター及び低分子量G-タンパク質を経由するシグナルのレギュレーターである。サイクリックGMP(cGMP)はシグナル伝達における細胞内セカンドメッセンジャーとして作用し、cGMP依存性プロテイン・キナーゼの活性化に誘導する。このようにこれらヌクレオチドのレベルはグアニン脱アミノ酵素によって制御されているから、この酵素タンパク質の発現変動は細胞性シグナルを変化させる可能性がある。
これとは逆に、解糖酵素であるトリオースリン酸イソメラーゼやグリセルアルデヒド三リン酸デヒドロゲナーゼ(G3PD)、及び脳クレアチンキナーゼの%VOLがADにおいて上昇していた。
脳クレアチンキナーゼ(BCK)はATPとクレアチンとの間のホスホリル基の可逆的転移を触媒する。その活性はADを含む加齢に伴う神経変性疾患において低下することが知られている。AksenovらはADにおけるBCKレベルの低下はBCK遺伝子発現の低下によるものではないと報告しており(M. Aksenov, M. Aksenova. D.A. Butterfield, and W.R. Markesbey, J Neurochem 74 (2000), 2520-2527.)、BCKの損失は少なくとも一部には酸化により損傷をうけたBCK分子の分解によるものであろうと示唆している。
分子シャペロン:
本研究では、シャぺロンタンパク質であるグルコース制御タンパク質(GRP)75及びHSP70-2の%VOLが低下していた。ADはタンパク質の立体構造変化に起因する疾病の一つであるから、ADにおける他のポリペプチドの折りたたみ(フォールディング)を仲介するという役割を有する分子シャペロンについては多くの研究がなされている。ADにおける低分子量熱ショックタンパク質HSP27やαB-クリスタリンの発現はアミロイド繊維形成やその結果現れる毒性を低減するための防御反応であると言われている(H. Shinohara, Y. Inaguma, S. Goto, T. Inagaki and K. Kato, J Neurol Sci 119 (1993), 203-208.、K. Renkawek, C.E. Voorter, G.J. Bosman, F.P. van Workum and W.W. de Jong, Acta Neuropatol (Berl) 87 (1994), 155-160.)。GRP78はAPPに結合し、Aβ1-40やAβ1-42の分泌を下げることが報告されている(Y. Yang, R.S. Turner and J.R. Gaut, J Biol Chem 273 (1998), 25552-25555.)。GRP75及びHSP70-2は共に重要なシャペロンの一つであるHSP70ファミリーのメンバーである。GRP75はミトコンドリアに存在し、ミトコンドリアに入ってくるタンパク質のフォールディングと組み立てを促進している。YooらはAD脳においてGRP75の発現が下方制御されていることを報告している(B.C. Yoo, S.H. Kim, N. Cairns, M. Fountoulakis and G. Lubec, Biochem Biophys Res Commun 280 (2001), 249-258.)。HSP70-2は精子形成細胞に特異的に発現することが知られており、男性不妊症の病因との関連が指摘されている。HSP70-2遺伝子は脳においても発現することが報告されているが、脳におけるHSP70-2機能はまだわかっていない。
細胞骨格タンパク質及び関連タンパク質:
既に述べたように、一つのGFAPスポットはAD群においてその%VOLが上昇していた。更にチューブリンの二つのアイソフォーム、α6とβ5がAD群で変化していた。チューブリンα-β異種二量体は微小管のサブユニットであり、細胞分裂、細胞内輸送や分泌、軸索輸送や細胞形態の維持を含む多くの細胞内事象に関与している(S. Khatoon, I. Grundke-Iqbal and K. Iqbal, J Neurochem 64 (1995), 777-787など参照)。タウは微小管結合タンパク質ファミリーに属し、AD脳におけるペアードヘリカルフィラメントが異常にリン酸化されたタンパク質構成要素であることが知られている(I. Grunoke-Iqbal, K. Iqbal, Y-C. Tung, M. Quinlan, H.M. Wisniewski and L.I. Binder, Proc Natl Acad Sci USA 83 (1986), 4913-4917)。チューブリンは多数のアイソフォームとして存在し、哺乳類においては少なくとも7つのα-と8つのβ-チューブリン・アイソフォームが存在する。in vitroの研究により異なるβ-チューブリンを有するチューブリン異種二量体はその組み立てと形成される微小管の動態に大きな相違が存在することが証明されている(A. Banerjee, M.C. Roach, P. Trcka and R.F. Luduena, J Brol Chem 267 (1992), 5625-5630.、Panda, H.P. Miller, A Banerjee R.F. Luduena and L. Wilson, Proc Natl Acad Sci USA 91 (1994), 11358-11362.)。本研究はAD脳で%VOLが変動したチューブリンのアイソフォームを明らかにし、この結果に基づく更なる研究はAD脳でのタンパク質凝集機構の解明に有用である。
その他のタンパク質:
皮質及び海馬におけるシナプスの消失はADにおける認知能力低下の主たる原因であると認識されている。シナプトタグミンIはシナプス小胞膜のカルシウムセンサータンパク質であり、この研究ではその%VOLは減少していた。このタンパク質は脱分極誘導、カルシウム-仲介エクソサイトーシス及び神経伝達物質放出において役割を担っていると考えら得ている。DavidssonらはADのCSF、新皮質及び海馬におけるシナプトタグミンIの減少を示した(P.Davidsson, R.Jahn, J.Berguist, R. Ekman and K. Blennow, Mol. Chem. Neurphathol 27 (1996) 195-210)。
ミュー-クリスタリンは有袋類のレンズの主要な構成タンパク質として最初同定されたものであり、本発明者らの研究ではその%VOLが減少していた。そのアミノ酸配列の細菌性オルニチンシクロデアミナーゼとの類似性はミュー-クリスタリンがレンズ組織の構築というよりはむしろ酵素的役割を果たしているということを示唆していた。しかしながら、現在は細胞内サイロイドホルモンの隔離及び放出に関与している細胞質型NADP制御サイロイドホルモン結合タンパク質であると考えられている(M-P. Vie, C. Evrard, J. Osty, A. Breton-Gilet, P. Blanchet, M. Pomerance, P. Rouget, J. Francon, and J-P. Blondeau, Mol. Endocrinol. 11 (1997), 1728-1736)。ミュー-クリスタリンはヒト脳でも検出されるが、その機能は明らかにされていない。
更に、SH3BGRLの%VOLは上昇していた。SH3BGR遺伝子は染色体21に存在する新しい遺伝子を同定する過程においてクローン化され、ダウン症候群の先天性心不全の病因に関連があるとされている。EgeoらはESTデータベースをスクリーニングした結果、SH3BGRと高い相同性を示す新規ヒト遺伝子を同定し、SH3BGRL(SH3BGR-like)と名付けた(A. Egeo, M. Mazzocco, P. Arrigo, J.M. Vidal-Taboada R. Oliva, B. Pirola, S. Giglio, A. Rasore-Quartino and P. Scartezzini, Biochem Biophys Res Commun 247 (1998), 302-306.)。低分子量タンパク質をコードするこの遺伝子は、チオレドキシン様タンパク質スーパーファミリーに属し、レドックス恒常性のコントロールに関与していると予想されている(A. Egeo, M. Mazzocco, P. Arrigo, J.M. Vidal-Taboada R. Oliva, B. Pirola, S. Giglio, A. Rasore-Quartino and P. Scartezzini, Biochem Biophys Res Commun 247 (1998), 302-306.)。
本発明を完成させるにあたり、タンパク質可溶化に連続する独自の抽出方法を用いてAD脳のプロテオーム解析を行い、疎水性タンパク質に関するデータを含む高解像度2-DEゲルを取得した。コントロール群と比較した結果、難溶性画分の分析により3つのスポットの%VOLがAD脳で増加しており、これらのスポットの2つはGFAPであることが同定された。その翻訳後修飾やイソフオームに関する更なる研究によりADにおける凝集タンパク質のメカニズムについての有用な情報を得ることができるであろう。可溶性画分の解析により%VOLが上昇する5つのスポットと%VOLが減少する10のスポットがAD群に見られた。同定されたタンパク質には酵素、分子シャペロン、細胞骨格タンパク質が含まれていた。これらのタンパク質のいくつかはADとの関連性についての報告はなく、これらのタンパク質とADとの関係についての研究はADの病因解明と疾病マーカーの探索に役立つと考えられる。
図1は、脳タンパク質の連続抽出手順のフローチャートである。第一抽出(可溶性画分)はSDS溶解バッファーでホモジナイズした後、尿素/NP40を含有するサンプル溶液で希釈し遠心分離して取得した。ペレットをSDS溶解バッファーホモジナイズし煮沸処理した後、尿素/チオ尿素/SB3-10/CHAPSを含有するサンプル溶液で希釈して遠心分離された上清(難溶性画分)を回収した。 図2は、難溶性画分の2-DEゲルの代表的銀染色画像である。難溶性画分コントロール脳と比較してAD脳で3つのスポットの%VOLが有意に増加していた。これらのスポットの2つはMSによりGFAPであると同定された。 図3は、可溶性画分の2-DEゲルの代表的銀染色画像である。可溶性画分コントロール脳と比較してAD脳で10スポットの%VOLが有意に減少しており、5つのスポットの%VOLが有意に増加していた。

Claims (16)

  1. アルツハイマー病の疑いがあるヒト患者から採取した中枢神経系組織または体液について、
    (a) 該組織または体液中のイソクエン酸デヒドロゲナーゼ3(NAD+)アルファプレカーサ、グアニン脱アミノ酵素、70kDa熱ショックタンパク質2(HSP70-2)、ミュー-クリスタリンからなる群より選択される少なくとも1種のタンパク質を定量し、その量をアルツハイマー病の疑いのないヒトから採取した同じ中枢神経組織中または体液中に含まれる該量と比較する工程、
    (b) その量がアルツハイマー病の疑いのないヒトから採取した該中枢神経組織中または体液中に含まれる量に比べて少ない場合はアルツハイマー病であると判断すること、
    を特徴とする、アルツハイマー病の検出方法。
  2. アルツハイマー病の疑いがあるヒト患者から採取した中枢神経系組織または体液について、
    (c) SH3ドメイン結合性グルタミン酸リッチタンパク質様タンパク質(SH3BGRL)を定量し、その量をアルツハイマー病の疑いのないヒトから採取した同じ中枢神経組織または体液中に含まれる量と比較する工程、
    (d) その量がアルツハイマー病の疑いのないヒトから採取した該中枢神経組織中または体液中に含まれる量に比べて多い場合はアルツハイマー病であると判断すること、
    を特徴とする、アルツハイマー病の検出方法。
  3. アルツハイマー病の疑いがあるヒト患者から採取した中枢神経系組織または体液について、
    (e) 該組織または体液を、可溶性画分と難溶性画分とに分画し、難溶性画分中の難溶性グリア繊維酸性タンパク質(GFAP)を定量し、その量をアルツハイマー病の疑いのないヒトから採取した同じ中枢神経組織または体液中に含まれる量と比較する工程、
    (f) その量がアルツハイマー病の疑いのないヒトから採取した該中枢神経組織中または体液中に含まれる量に比べて多い場合はアルツハイマー病であると判断すること、
    を特徴とする、アルツハイマー病の検出方法。
  4. アルツハイマー病の疑いがあるヒト患者から採取した中枢神経系組織または体液について、請求項1記載の(a)と(b)、請求項2記載の(c)と(d)および請求項3記載の(e)と(f)からなる3組の工程の組み合わせから2組以上の組み合わせを含み、そのいずれにおいてもアルツハイマー病であると判断された場合に、該患者はアルツハイマー病であると判断することを特徴とする、アルツハイマー病の検出方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のアルツハイマー病の検出方法であって、
    (g) アルツハイマー病の疑いがあるヒト患者から採取した中枢神経系組織中または体液中の、NADHデヒドロゲナーゼ(ユビキノン)Fe-S 75kDaタンパク質、75kDaグルコース制御タンパク質、T−コンプレックスタンパク質1類似タンパク質、チューブリンα6、チューブリンβ5、およびシナプトタグミン1からなる群より選択される1以上のタンパク質を定量し、その量をアルツハイマー病の疑いのないヒトから採取した同じ中枢神経組織中または体液中に含まれる量と比較する工程、
    (h) その量がアルツハイマー病の疑いのないヒトから採取した該中枢神経組織中または体液中に含まれる量に比べて少ないことを確認する工程、
    をさらに含む、上記方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のアルツハイマー病の検出方法であって、
    (i) アルツハイマー病の疑いがあるヒト患者から採取した中枢神経系組織中または体液中の、グリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼフラグメント、トリオースホスフェートイソメラーゼ1、脳クレアチンキナーゼ、グリア繊維酸性タンパク質からなる群より選択される1以上のタンパク質を定量し、その量をアルツハイマー病の疑いのないヒトから採取した同じ中枢神経組織中または体液中に含まれる量と比較する工程、
    (j) その量がアルツハイマー病の疑いのないヒトから採取した該中枢神経組織中または体液中に含まれる量に比べて多いことを確認する工程、
    をさらに含む、上記方法。
  7. 上記体液が髄液、血液または尿であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
  8. 定量を免疫化学的手法により実施することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
  9. SSSGSTAIKKKQQDV(配列番号1)を免疫原として作製された、ヒトSH3ドメイン結合性グルタミン酸リッチタンパク質様タンパク質に対する抗体。
  10. RPATGYPLPPQIFNESQ(配列番号2)を免疫原として作製された、ヒトSH3ドメイン結合性グルタミン酸リッチタンパク質様タンパク質に対する抗体。
  11. GLTAPPGSKEAEVQA(配列番号3)を免疫原として作製された、ヒトSH3ドメイン結合性グルタミン酸リッチタンパク質様タンパク質に対する抗体。
  12. ウサギポリクローナル抗体である、請求項9〜11のいずれか1項に記載の抗体。
  13. 請求項9〜12のいずれか1項に記載の抗体を用いてヒトSH3ドメイン結合性グルタミン酸リッチタンパク質様タンパク質を定量することを含む、請求項8記載の方法。
  14. 定量を二次元電気泳動解析により実施することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
  15. 組織サンプルを、可溶性タンパク質画分と難溶性タンパク質画分とに分画して、それぞれの画分について二次元電気泳動を行い、組織サンプル中の可溶性タンパク質及び難溶性タンパク質の両方について解析する方法であって、
    (1) 尿素及び非イオン性界面活性剤を含有するサンプルバッファーを用いて、可溶性タンパク質画分を抽出して遠心分離により可溶性タンパク質画分を上清に回収する工程、
    (2) 続いて上記遠心分離によりペレット中に存在する難溶性タンパク質を、SDS、尿素、チオ尿素、N-デシル-N,N-ジメチル-3-アンモニア-1-プロパンスルホン酸(SB3-10)及び3-[(3-クロラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホン酸(CHAPS)を含有するサンプルバッファーを用いて可溶化して抽出し、遠心分離により難溶性タンパク質画分を上清に回収する工程、
    を実施することを含む、上記方法。
  16. 定量を請求項15記載の方法を用いる二次元電気泳動解析により実施することを特徴とする、請求項14記載の方法。
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