JP2005107388A - 光重合性画像記録材料及びそれを用いた平版印刷版原版の製造方法 - Google Patents

光重合性画像記録材料及びそれを用いた平版印刷版原版の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 感度とセーフライト安全性の双方に優れ、環境安定性の良好な光重合性画像記録材料、及び、それを用いた、高感度でセーフライト安全性、環境安定性に優れた平版印刷版原版の製造方法を提供する。
【解決手段】 支持体上に、(A)650〜1300nmに吸収極大を有する化合物と、(B)アリールラジカル発生剤と、(C)重合性化合物とを含有する光重合性層、及び、25℃、1気圧下における酸素透過性Aが0.2≦A≦20(ml/m2・day)である酸素遮断層、を有することを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、特に作業性や経済性に優れたCTPシステムに適合した走査露光用平版印刷版の製造に好適に用いられる、高感度であり、かつ、セーフライト下での作業下においても使用可能な感光性画像記録材料及びそれを用いた平版印刷版原版の製造方法に関し、更に詳細には、支持体上に、光重合性層および酸素遮断層を有し、感度及び安定性のいずれにも優れた光重合性画像記録材料とそれを用いた、高感度で記録可能であり、安定性、セーフライト安定性に優れた平版印刷版原版の製造方法に関する。
コンピュータ画像処理技術の進歩に伴い、デジタル画像情報から、銀塩マスクフィルムへの出力を行わずに、レーザー光等により、直接レジスト画像を形成する感光ダイレクト製版システムが注目されている。レーザー光としては遠紫外からマイクロ波まで種々の光源が知られているが、レーザー出力、安定性、コスト、感光能力等の観点からリソグラフィーに利用できるレーザー光はArイオンレーザー、YAGレーザー、FD−YAGレーザー、ヘリウムネオンレーザー、半導体レーザー等の可視光から赤外光を発するものが有力である。このため、可視〜赤外光にかけて感光性を有する種々の組成物が検討されている。
なかでも、赤外レーザー光に感光性を有する画像形成材料が有望である。赤外レーザー感応性の重合性組成物としては、カチオン染料とボレート錯体を組み合わせたもの(例えば、特許文献1〜5参照)、光熱変換物質とオニウム塩を組み合わせたもの(例えば、特許文献6、7参照。)等が知られている。これらの光重合性組成物は、酸素による重合禁止作用が顕著なため、通常、光重合性組成物層の上に、酸素遮断性の保護層が設けられる。酸素遮断性を得るために保護層としては、酸素バリアが高く、取り扱いの容易さと水への溶解によって容易に取り除くことが出来るという利点からポリビニルアルコールが一般的に用いられてきている。
近赤外光に感応する色素を用いた画像形成材料は、近赤外光をエネルギー源としているために、白色灯下、あるいは黄色灯下で取り扱いも可能であるが、増感色素とラジカル発生剤とを組み合わせた光重合系の画像形成材料においては、取り扱い性が不十分であり、セーフライト下でハンドリングできる時間が数分以内に限られるなどの制限があった。これは、増感色素とラジカル発生剤とを組み合わせた光重合系の画像形成材料では、少なくとも一部はフォトンモードで重合が起こると考えられるので、少量の可視光であっても重合が開始される場合があり、それにより非画像部の残色など、好ましくない反応を起こす場合があるためである。
また、近年、酸素遮断層の酸素遮断性を低減することで感度とセーフライト安全性の両立を図った光重合性画像形成材料が開示されている(例えば、特許文献8参照。)が、実際の酸素透過性の定量的な値は記載されておらず、また、高湿時には感度の低下が起こるという問題があり、環境安定性について改良が望まれていた。
特開平6−59450号公報 特開平5−216227号公報 特開平5−247110号公報 特開平5−265204号公報 特開平6−33217号公報 特開平9−34110号公報 特開平9−134009号公報 特開2002−139843公報
本発明の目的は、感度とセーフライト安全性の双方に優れ、更に環境に影響を受けにくい光重合性画像記録材料、及び、それを用いた、高感度でセーフライト安全性、環境安定性に優れた平版印刷版原版の製造方法を提供することにある。
本発明者は上記目的に鑑み鋭意検討した結果、赤外レーザーにて画像形成可能な光重合性組成物の開始剤としてアリールラジカル発生剤を用い、保護層として、特定の酸素遮断性を有する保護層を用いた場合に、赤外レーザーに対しての高感度を維持しながら、明室での取り扱い可能時間が大幅に改善され、高湿下での露光条件でも感度が低下しないという大きな利点を見いだし本発明を完成した。
即ち、本発明の光重合性画像記録材料は、支持体上に、(A)650〜1300nmに吸収極大を有する化合物と、(B)アリールラジカル発生剤と、(C)重合性化合物とを含有する光重合性層、及び、25℃、1気圧下における酸素透過性Aが0.2≦A≦20(ml/m2・day)である酸素遮断層、を有することを特徴とする。
ここで、前記酸素遮断層としては、ポリビニルアルコール(PVA)と、ポリビニルピロリドン(PVP)又はその誘導体と、を含有し、且つ、両者の含有比率〔PVA/PVP(またはその誘導体)〕Bが2≦B≦10であるものが好ましい。
また、ここで用いられるPVAのケン化度が85%以上であることが好ましい態様である。
また、本発明の請求項4に係る感光性平版印刷版原版の製造方法は、前記した本発明の光重合性画像記録材料を用いた感光性平版印刷版原版の製造方法であって、支持体上に光重合性層および酸素遮断層を設けて平版印刷版原版を得た後、該酸素遮断層の含水率が7%以下である状態で、平版印刷版原版を巻き取ることを特徴とする。
本発明の作用は明確ではないが以下のように推測される。
通常、高湿環境下では、吸湿することにより保護層の酸素遮断性が下がり、系外から光重合性層中に酸素が入り込みやすくなり、従来のラジカル発生剤を用いた光重合性画像記録材料を用いた場合、高湿環境下で露光すると露光により発生するラジカルが系外から入り込んだ酸素によりクエンチされてその後の重合反応が阻害され、感度低下を引き起こすものと思われる。本発明においては、発生したラジカルの反応性が非常に高いアリールラジカルを発生剤として使用することにより、酸素による重合阻害を受ける前に光重合性層の重合反応を十分に進行させることができるため、感度の低下が効果的に抑制されるものと考えている。
本発明の光重合性画像記録材料は、アリールラジカル発生剤を含む光重合性層と特定の酸素透過性を有する酸素遮断層とを備えるため、感度とセーフライト安全性の双方に優れ、且つ、環境安定性が良好である。
また、この光重合性画像記録材料の製造方法によれば、光重合性層と酸素遮断層を設けた平版印刷版原版を特定条件で巻き取ることにより、高感度で、セーフライト安全性、環境安定性に優れた感光性平版印刷版原版を製造することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の光重合性画像記録材料は、支持体上に、光重合性層、酸素遮断層(保護層)を順次積層することで得られる。該光重合性は、必須成分として(A)650〜1300nmに吸収極大を有する化合物(赤外吸収剤)、(B)重合開始剤、(C)重合成化合物、及び必要に応じ(D)バインダー、その他の添加剤を含有して構成される。
なお、本発明の画像記録材料は、支持体上に、光重合性層と酸素遮断層をこの順に有していればよく、目的に応じて他の層(例えば、中間層、バックコート層、等)を任意の位置に設けることができる。
また、本発明においては、重合開始剤としてはアリールラジカル発生剤を用いるのを特徴とするものであり、好ましい例として、オニウム塩化合物、なかでもスルホニウム塩化合物が好ましい。
〔光重合性層〕
以下、光重合性層に含有される各成分について順次説明する。
(A)650〜1300nmに吸収極大を有する化合物
本発明に係る光重合性層には、650〜1300nmに吸収極大を有する化合物、即ち、赤外線吸収剤を用いることが必須である。
この化合物は、吸収した赤外線を熱に変換する機能を有している。この際発生した熱により、後述する重合開始剤(ラジカル発生剤)が熱分解してラジカルを発生する。本発明において使用される赤外線吸収剤としては、波長650〜1300nm、より好ましくは、760nmから1200nmに吸収極大を有する染料又は顔料を用いることが好ましい。このような染料又は顔料を以下、適宜、赤外線吸収剤と称する。
染料としては、市販の染料及び例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
好ましい染料としては、例えば、特開昭58−125246号公報、特開昭59−84356号公報、特開昭59−202829号公報、特開昭60−78787号公報等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号公報、特開昭58−181690号公報、特開昭58−194595号公報等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号公報、特開昭58−224793号公報、特開昭59−48187号公報、特開昭59−73996号公報、特開昭60−52940号公報、特開昭60−63744号公報等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号公報等に記載されているスクワリリウム色素、英国特許434,875号明細書に記載のシアニン染料等を挙げることができる。
また、米国特許第5,156,938号明細書に記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号明細書に記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号公報(米国特許第4,327,169号明細書)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号公報、同58−220143号公報、同59−41363号公報、同59−84248号公報、同59−84249号公報、同59−146063号公報、同59−146061号公報に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号公報に記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号明細書に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号公報、同5−19702号公報に開示されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。また、染料として好ましい別の例として、米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
また、本発明の赤外線吸収色素の好ましい他の例としては、以下に例示するような特願2001−6326明細書、及び、特開2002−278057号公報に記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
Figure 2005107388
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体、インドレニンシアニン色素が挙げられる。更に、シアニン色素やインドレニンシアニン色素が好ましく、特に好ましい例として下記一般式(a)で示されるシアニン色素が挙げられる。
Figure 2005107388
一般式(a)中、X1は、水素原子、ハロゲン原子、−NPh2、X2−L1又は以下に示す基を表す。ここで、X2は酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子を示し、L1は、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環、ヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。なお、ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、またはSeを示す。Phはフェニル基を示す。
Figure 2005107388
a -は後述するZa -と同様に定義され、Raは、水素原子、アルキル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基、ハロゲン原子より選択される置換基を表す。
1及びR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。記録層塗布液の保存安定性から、R1及びR2は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、更に、R1とR2とは互いに結合し、5員環又は6員環を形成していることが特に好ましい。
Ar1、Ar2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環及びナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。Y1、Y2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、硫黄原子又は炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R3、R4は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。R5、R6、R7及びR8は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子又は炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Za -は、対アニオンを示す。ただし、一般式(a)で示されるシアニン色素が、その構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZa -は必要ない。好ましいZa -は、記録層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
本発明において、好適に用いることのできる一般式(a)で示されるシアニン色素の具体例としては、特開2001−133969号公報の段落番号[0017]から[0019]に記載されたものを挙げることができる。
また、特に好ましい他の例としてさらに、前記した特願平2001−6326明細書、及び、特開2002−278057号公報に記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
また、赤外線吸収剤として顔料を用いる場合には、波長650〜1300nmに吸収を有するものであれば、特に制限なく公知のものを適宜選択して用いることができる。これらのうち好ましい例としては、フタロシアニン系顔料およびカーボンブラックが挙げられる。
これらの赤外線吸収剤を、本発明の感光性画像記録材料の光重合性層に適用する場合、他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設けそこへ添加してもよいが、この画像記録材料をネガ型平版印刷版原版として用いる場合、光重合性層の波長760nm〜1200nmの範囲における極大吸収波長での吸光度が、反射測定法で0.5〜1.2の範囲にあるように添加することが好ましく、さらに好ましくは、0.6〜1.15の範囲である。吸光度がこの範囲において、画像部の強度や、支持体と光重合性層との密着性に優れたものとなり、印刷時における十分な印刷枚数が確保できる。
光重合性層の吸光度は、ここに添加する赤外線吸収剤の量と光重合性層の厚みにより調整することができる。吸光度の測定は常法により行うことができる。測定方法としては、例えば、アルミニウム等の反射性の支持体上に、乾燥後の塗布量が平版印刷版として必要な範囲において適宜決定された厚みの光重合性層を形成し、反射濃度を光学濃度計で測定する方法、積分球を用いた反射法により分光光度計で測定する方法等が挙げられる。
また、本発明に係る赤外線吸収剤は、後述する吸光度(ODx)を所定の範囲に制御しうるように光重合性層中に含有されることを要するが、通常、光重合性層の全固形分に対する添加量としては、0.5〜10.0質量%の範囲が好ましく、1.0〜5.0質量%の範囲がより好ましく、1.5〜4.0質量%の範囲がさらに好ましい。
(B)アリールラジカル発生剤
つぎに、本発明における必須成分の一つであるアリールラジカル発生剤について説明する。ここで、アリールラジカル発生剤とは、上記赤外線吸収剤と組み合わせて用い、赤外線レーザーを照射した際にアリールラジカルを発生する化合物を指す。アリールラジカル発生剤としては、熱、光などのエネルギー付与によりアリールラジカルを発生する化合物であれば、いずれのものも制限なく使用できるが、具体的には、例えば、オニウム塩、有機ホウ素アニオンなどが挙げられる。
なお、ここでアリールラジカルとは、無置換の、あるいは、置換基を有していてもよいフェニルラジカルを意味し、アルキルラジカルに比較して高い反応性を有することを特徴とする。
前記有機ホウ素アニオンの例としては、特開昭62−143044号公報、特開昭62−150242号公報、特開平5−5988号公報、特開平5−197069号公報等に記載のものが挙げられる。
以下、保存安定性の面で好ましいオニウム塩化合物について説明する。
好ましいオニウム塩としては、ヨードニウム塩、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩が挙げられる。本発明において、これらのオニウム塩は酸発生剤ではなく、ラジカル重合開始剤として機能する。本発明において好適に用いられるオニウム塩としては、下記一般式(1)〜(3)で表されるオニウム塩が挙げられる。
Figure 2005107388
一般式(1)中、Ar1とAr2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下のアリール基を示す。このアリール基が置換基を有する場合の好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、又は炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。(Z2-はハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、カルボキシレートイオン、及びスルホン酸イオンからなる群より選択される対イオンを表し、好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、カルボキシレートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
一般式(2)中、Ar3は、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下のアリール基を示す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、炭素原子数12個以下のアリールオキシ基、炭素原子数12個以下のアルキルアミノ基、炭素原子数12個以下のジアルキルアミノ基、炭素原子数12個以下のアリールアミノ基又は、炭素原子数12個以下のジアリールアミノ基が挙げられる。(Z3-は(Z2-と同義の対イオンを表す。
一般式(3)中、R23、R24及びR25は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、又は炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。(Z4-は(Z3-と同義の対イオンを表す。
本発明において、アリールラジカル発生剤として好適に用いることのできるオニウム塩の具体例としては、特開2001−133969号公報の段落番号[0030]〜[0033]に記載されたものを挙げることができる。
本発明において用いられるアリールラジカル発生剤は、極大吸収波長が400nm以下であることが好ましく、さらに360nm以下であることが好ましい。このように吸収波長を紫外線領域にすることにより、本発明に係る感光性画像記録材料やそれを用いた平版印刷版原版の取り扱いを白灯下で実施することができる。
これらのアリールラジカル発生剤は、感度と非画像部の汚れ性の観点から、光重合性層塗布液の全固形分に対し0.1〜50質量%、好ましくは0.5〜30質量%、特に好ましくは1〜20質量%の割合で光重合性層塗布液中に添加することができる。これらのアリールラジカル発生剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、これらのアリールラジカル発生剤は他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設けそこへ添加してもよい。
(C)重合性化合物
本発明に係る光重合性層に用いられる重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定なく用いることができる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態をもつものをも包含する。
モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能イソシアネート類或いはエポキシ類との付加反応物、及び単官能若しくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。
クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。
イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。
マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。
その他のエステルの例として、例えば、特公昭46−27926号公報、特公昭51−47334号公報、特開昭57−196231号公報に記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240号公報、特開昭59−5241号公報、特開平2−226149号公報に記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号公報に記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。更に、前述のエステルモノマーは混合物としても使用することができる。
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726号公報に記載のシクロへキシレン構造を有すものを挙げることができる。
また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式(4)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
CH2=C(R1)COOCH2CH(R2)OH 一般式(4)
(但し、R1及びR2は、H又はCH3を示す。)
また、特開昭51−37193号、特公平2−32293号、特公平2−16765号の各公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417号、特公昭62−39418号の各公報記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。更に、特開昭63−277653号、特開昭63−260909号、特開平1−105238号の各公報に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることによって、非常に硬化反応速度に優れた光重合性層を形成することができる。
その他の例としては、特開昭48−64183号公報、特公昭49−43191号公報、特公昭52−30490号公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。また、特公昭46−43946号公報、特公平1−40337号公報、特公平1−40336号公報に記載の特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号公報に記載のビニルホスホン酸系化合物等も挙げることができる。また、ある場合には、特開昭61−22048号公報に記載のペルフルオロアルキル基を含有する構造が好適に使用される。更に日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
これらの付加重合性化合物について、どのような構造を用いるか、単独で使用するか併用するか、添加量はどうかといった、使用方法の詳細は、最終的な光重合性層の性能設計にあわせて任意に設定できる。例えば、次のような観点から選択される。感光スピードの点では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上が好ましい。また、画像部すなわち硬化膜の強度を高くするためには、3官能以上のものがよく、更に、異なる官能数・異なる重合性基(例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、ビニルエーテル系化合物)のものを併用することで、感光性と強度の両方を調節する方法も有効である。大きな分子量の化合物や疎水性の高い化合物は、感光スピードや膜強度に優れる反面、現像スピードや現像液中での析出といった点で好ましくない場合がある。
また、光重合性層を構成する組成物中の他の成分(例えば、バインダーポリマー、開始剤、着色剤等)との相溶性、分散性に対しても、付加重合化合物の選択・使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上の併用により相溶性を向上させ得ることがある。
また、本発明の光重合性画像記録材料を平版印刷版原版に適用した場合に、支持体や後述の酸素遮断層等の密着性を向上せしめる目的で特定の構造を選択することもあり得る。
光重合性層を構成する組成物中の付加重合性化合物の配合比に関しては、多い方が感度的に有利であるが、多すぎる場合には、好ましく無い相分離が生じたり、平版印刷版原版に適用した際に光重合性層の粘着性による製造工程上の問題(例えば、光重合性層成分の転写、粘着に由来する製造不良)や、現像液からの析出が生じる等の問題を生じうる。これらの観点から、(C)付加重合性化合物は、光重合性層を構成する組成物中の全固形分に対して、好ましくは5〜80質量%、更に好ましくは25〜75質量%の範囲で使用される。また、これらは単独で用いても2種以上併用してもよい。そのほか、付加重合性化合物の使用法は、酸素に対する重合阻害の大小、解像度、かぶり性、屈折率変化、表面粘着性等の観点から適切な構造、配合、添加量を任意に選択できる。更に、この画像記録材料を平版印刷版原版に適用する場合には、下塗り、上塗りといった層構成・塗布方法も実施し得る。
〔(D)バインダーポリマー〕
本発明に係る光重合性層には、皮膜特性向上などの目的で、バインダーポリマーを添加することが好ましい。バインダーポリマーとしては、線状有機ポリマーを用いることが好ましい。このような「線状有機ポリマー」としては、公知のものを任意に使用できる。好ましくは水現像あるいはアルカリ水現像を可能とするために、水あるいはアルカリ水可溶性または膨潤性である線状有機ポリマーが選択される。線状有機ポリマーは、光重合性層を形成するための皮膜形成剤としてだけでなく、水、アルカリ水あるいは有機溶剤現像剤としての用途に応じて選択使用される。例えば、水可溶性有機ポリマーを用いると水現像が可能になる。このような線状有機ポリマーとしては、側鎖にカルボン酸基を有するラジカル重合体、例えば特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭54−92723号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号の各公報に記載されているもの、即ち、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等がある。また同様に側鎖にカルボン酸基を有する酸性セルロース誘導体がある。この他に水酸基を有する重合体に環状酸無水物を付加させたものなどが有用である。
特にこれらの中で、ベンジル基又はアリル基と、カルボキシル基を側鎖に有する(メタ)アクリル系ポリマーが、膜強度、感度、現像性のバランスに優れており、好適である。
また、特公平7−12004号、特公平7−120041号、特公平7−120042号、特公平8−12424号、特開昭63−287944号、特開昭63−287947号、特開平1−271741号の各公報、特開平13−312062号公報等に記載される酸基を含有するウレタン系バインダーポリマーは、非常に、強度に優れるので、耐刷性・低露光適性の点で有利である。
さらにこの他に水溶性線状有機ポリマーとして、ポリビニルピロリドンやポリエチレンオキサイド等が有用である。また硬化皮膜の強度を上げるためにアルコール可溶性ナイロンや2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとエピクロロヒドリンのポリエーテル等も有用である。
本発明で使用されるバインダーポリマーの重量平均分子量は、好ましくは5,000以上であり、さらに好ましくは1万〜30万の範囲であり、数平均分子量については好ましくは1,000以上であり、さらに好ましくは2,000〜25万の範囲である。多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は1以上が好ましく、さらに好ましくは1.1〜10の範囲である。
これらのポリマーは、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等のいずれであってもよいが、ランダムポリマーであることが好ましい。
本発明に係る光重合性層に所望により使用されるバインダーポリマーは従来公知の方法により合成できる。合成する際に用いられる溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、ジメチルスルホキシド、水等が挙げられる。これらの溶媒は単独で又は2種以上混合して用いられる。
本発明で使用されるポリマーを合成する際に用いられるラジカル重合開始剤としては、アゾ系開始剤、過酸化物開始剤等公知の化合物が使用できる。
本発明で使用されるバインダーポリマーは単独で用いても混合して用いてもよい。これらポリマーを光重合性層に添加する場合、添加量としては、画像形成性及び画像部強度向上の観点から、光重合性層塗布液の全固形分に対し20〜95質量%の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは30〜90質量%の範囲である。また、前記(C)重合性化合物と(D)線状有機ポリマーとは、質量比で1/9〜7/3の範囲とするのが好ましい。
本発明の感光性組成物には、以上の必須成分の他に、更にその用途、製造方法等に適したその他の成分を適宜添加することができる。以下、好ましい添加剤に関し例示する。
〔重合禁止剤〕
本発明においては、(C)重合性化合物の所望されない熱重合を阻止する目的で、少量の熱重合禁止剤を添加することが望ましい。ここで用いうる適当な熱重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4'−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン第一セリウム塩等が挙げられる。熱重合禁止剤の添加量は、光重合性層を構成する組成物中の固形分に対して約0.01質量%〜約5質量%であることが好ましい。
また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するために、ベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で光重合性層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、全組成物中の不揮発性成分に対して約0.5質量%〜約10質量%が好ましい。
〔着色剤〕
本発明に係る光重合性層には、その着色を目的として染料若しくは顔料などの着色剤を添加してもよい。これにより、印刷版としての、製版後の視認性や、画像濃度測定機適性といったいわゆる検版性を向上させることができる。具体例としては、例えば、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタンなどの顔料、エチルバイオレット、クリスタルバイオレット、アゾ系染料、アントラキノン系染料、シアニン系染料などの染料がある。着色剤としての染料及び顔料の添加量は、光重合性層の組成物中の全固形分に対して約0.5質量%〜約5質量%の範囲であることが好ましい。
本発明の光重合性画像記録材料においては、前記光重合性層を支持体上に設けてなる。本発明に係る光重合性層は、前記の如く、必須成分として、(A)650〜1300nmに吸収極大を有する化合物と、(B)アリールラジカル発生剤と、(C)重合性化合物とを含有し、好ましくはさらにバインダーポリマーを含有する。このネガ型光重合性層は、熱または光によりラジカル発生剤が分解してラジカルを発生させ、この発生したラジカルにより重合性化合物が重合反応を起こすという機構により画像を形成する。
本発明の光重合性画像記録材料は、ネガ型平版印刷版原版に好適に適用され、このような平版印刷版原版は、300〜1,200nmの波長を有するレーザー光での直接描画での製版に特に好適であり、従来の平版印刷版原版に比べ、高い耐刷性及び画像形成性を発現する。
上記の光重合性層を支持体上に塗設する際には、前記した光重合性層を構成する組成物の各成分を適切な有機溶剤に溶かして、支持体又は中間層上に塗布すればよい。ここで使用する溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、エチレンジクロライド、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシプロパノール、メトキシメトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチルなどがある。これらの溶剤は、単独或いは混合して使用することができる。そして、塗布溶液中の固形分の濃度は、2〜50質量%が適当である。
前記光重合性層の被覆量は、主に、感度、現像性、露光膜の強度・耐刷性に影響し得るもので、用途に応じ適宜選択することが望ましい。被覆量が少なすぎる場合には、耐刷性が低下する傾向になり、多すぎる場合には、感度が低下する傾向になり、露光に時間がかかる上、現像処理にもより長い時間を要することが懸念される。本発明の主要な目的である走査露光用光重合性ネガ型平版印刷版原版としては、光重合性層の被覆量は乾燥後の質量で約0.1g/m2〜約10g/m2の範囲が適当であり、より好ましくは0.5〜5g/m2である。
なお、本発明の画像記録材料における光重合性層の物性としては、pH10〜13.5のアルカリ現像液に対する未露光部の現像速度が80nm/sec以上、かつ、該アルカリ現像液の露光部における浸透速度が100nF/sec以下であることが好ましい。
ここで、pH10〜13.5のアルカリ現像液による現像速度とは、光重合性層の膜厚(m)を現像に要する時間(sec)で除した値であり、アルカリ現像液の浸透速度とは、導電性支持体上に前記光重合性層を製膜し、現像液に浸漬した場合の静電容量(F)の変化速度を示す値である。
以下に、本発明における「アルカリ現像液に対する現像速度」及び「アルカリ現像液の浸透速度」の測定方法について詳細に説明する。
<アルカリ現像液に対する現像速度の測定>
ここで、光重合性層のアルカリ現像液に対する現像速度とは、光重合性層の膜厚(m)を現像に要する時間(sec)で除した値である。
本発明における現像速度の測定方法としては、図1に示すように、アルミニウム支持体上に未露光の光重合性層を備えたものをpH10〜13.5の範囲の、一定のアルカリ現像液(30℃)中に浸漬し、光重合性層の溶解挙動をDRM干渉波測定装置で調査した。図1に、光重合性層の溶解挙動を測定するためのDRM干渉波測定装置の概略図を示す。本発明においては、640nmの光を用い干渉により膜厚の変化を検出した。現像挙動が光重合性層表面からの非膨潤的現像の場合、膜厚は現像時間に対して徐々に薄くなり、その厚みに応じた干渉波が得られる。また、膨潤的溶解(脱膜的溶解)の場合には、膜厚は現像液の浸透により変化するため、きれいな干渉波が得られない。
この条件において測定を続け、光重合性層が完全に除去され、膜厚が0となるまでの時間(現像完了時間)(s)と、光重合性層の膜厚(nm)より、現像速度を以下の式により求めることができる。この現像速度が大きいものほど、現像液により容易に膜が除去され、現像性が良好であると判定する。
(未露光部の)現像速度=〔光重合性層厚(nm)/記録完了時間(sec)〕
<アルカリ現像液の浸透速度の測定>
アルカリ現像液の浸透速度とは、導電性支持体上に前記光重合性層を製膜し、現像液に浸漬した場合の静電容量(F)の変化速度を示す値である。
本発明における浸透性の目安となる静電容量の測定方法としては、図2に示すように、pH10〜13.5の範囲の、一定のアルカリ現像液(28℃)中にアルミニウム支持体上に所定の露光量にて露光を行ない、硬化した光重合性層を備えたものを一方の電極として浸漬し、アルミニウム支持体に導線をつなぎ、他方に通常の電極を用いて電圧を印加する方法が挙げられる。電圧を印加後、浸漬時間の経過に従って現像液が支持体と光重合性層との界面に浸透し、静電容量が変化する。
この静電容量が変化するまでにかかる時間(s)と、光重合性層の静電容量の飽和値(nF)より以下の式により求めることができる。この浸透速度が小さいものほど、現像液の浸透性が低いと判定する。
(露光部の)現像液浸透速度=
〔光重合性層の静電容量の飽和値(nF)/静電容量変化が一定になるまでに要する時間(s)〕
本発明の平版印刷版原版における光重合性層の好ましい物性としては、上記測定によるpH10〜13.5のアルカリ現像液による未露光部の現像速度が、好ましくは80〜400nm/secであり、同様のアルカリ現像液の光重合性層に対する浸透速度は90nF/sec以下であることが好ましい。
また、上記測定によるpH10〜13.5のアルカリ現像液による未露光部の現像速度が、更に好ましくは90〜200nm/secであり、同様のアルカリ現像液の光重合性層に対する浸透速度は80nF/sec以下であることが好ましい。
現像速度の上限値、或いは、浸透速度の下限値には、特に制限はないが、両者のバランスを考慮するに、未露光部の現像速度は90〜200nm/secの範囲であることがより好ましく、アルカリ現像液の光重合性層に対する浸透速度は80nF/sec以下であることが好ましい。
光重合性層の未露光部の現像速度や硬化後の光重合性層に対するアルカリ現像液の浸透速度の制御は、常法により行うことができるが、代表的なものとしては、未露光部の現像速度の向上には、親水性の化合物の添加が有用であり、露光部への現像液浸透抑制には、疎水性の化合物の添加する手段が有用である。
本発明においては、前記(A)赤外線吸収剤、(B)アリールラジカル発生剤、(C)重合性化合物などの光重合性層に含まれる化合物の種類、含有量などを調整することで、光重合性層の現像速度、現像液の浸透速度を容易に上記の好ましい範囲に制御することができる。
[支持体]
本発明の画像記録材料に用いられる支持体としては、従来公知の、平版印刷版原版に使用される親水性支持体であればいずれも使用することができる。
使用される支持体は寸度的に安定な板状物であることが好ましく、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記の如き金属がラミネート若しくは蒸着された紙若しくはプラスチックフィルム等が含まれる。これらの支持体表面には、必要に応じて、親水性の付与や強度向上等の目的で、適切な公知の物理的、化学的処理を施してもよい。
特に、好ましい支持体としては、紙、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が挙げられ、その中でも寸法安定性がよく、比較的安価であり、必要に応じた表面処理により親水性や強度にすぐれた表面を提供できるアルミニウム板が特に好ましい。また、特公昭48−18327号公報に記載されているようなポリエチレンテレフタレートフィルム上にアルミニウムシートが結合された複合体シートも好ましい。
本発明でいう支持体に好適なアルミニウム板とは、寸度的に安定なアルミニウムを主成分とする金属板であり、純アルミニウム板の他、アルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板、又はアルミニウム(合金)がラミネート若しくは蒸着されたプラスチックフィルム又は紙の中から選ばれる。以下の説明において、上記に挙げたアルミニウム又はアルミニウム合金からなる基板をアルミニウム基板と総称して用いる。前記アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがあり、合金中の異元素の含有量は10質量%以下である。本発明では純アルミニウム板が好適であるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。
このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のもの、例えば、JIS A 1050、JIS A 1100、JIS A 3103、JIS A 3005などを適宜利用することができる。
また、本発明に用いられるアルミニウム支持体の厚みは、およそ0.1mm〜0.6mm程度である。この厚みは印刷機の大きさ、印刷版の大きさ及びユーザーの希望により適宜変更することができる。アルミニウム支持体には適宜必要に応じて後述の支持体表面処理が施されてもよく、施されなくてもよい。
(粗面化処理)
粗面化処理方法は、特開昭56−28893号公報に開示されているような機械的粗面化、化学的エッチング、電解グレインなどがある。更に塩酸又は硝酸電解液中で電気化学的に粗面化する電気化学的粗面化方法、及びアルミニウム表面を金属ワイヤーでひっかくワイヤーブラシグレイン法、研磨球と研磨剤でアルミニウム表面を砂目立でするポールグレイン法、ナイロンブラシと研磨剤で表面を粗面化するブラシグレイン法のような機械的粗面化法を用いることができ、上記粗面化方法を単独或いは組み合わせて用いることもできる。その中でも粗面化に有用に使用される方法は塩酸又は硝酸電解液中で化学的に粗面化する電気化学的方法であり、適する陽極時電気量は50C/dm2〜400C/dm2の範囲である。更に具体的には、0.1〜50%の塩酸又は硝酸を含む電解液中、温度20〜80℃、時間1秒〜30分、電流密度100C/dm2〜400C/dm2の条件で交流及び/又は直流電解を行うことが好ましい。
このように粗面化処理したアルミニウム支持体は、酸又はアルカリにより化学的にエッチングされてもよい。好適に用いられるエッチング剤は、苛性ソーダ、炭酸ソーダ、アルミン酸ソーダ、メタケイ酸ソーダ、リン酸ソーダ、水酸化カリウム、水酸化リチウム等であり、濃度と温度の好ましい範囲はそれぞれ1〜50%、20〜100℃である。エッチングのあと表面に残留する汚れ(スマット)を除去するために酸洗いが行われる。用いられる酸は硝酸、硫酸、リン酸、クロム酸、フッ酸、ホウフッ化水素酸等が用いられる。特に電気化学的粗面化処理後のスマット除去処理方法としては、好ましくは特開昭53−12739号公報に記載されているような、温度が50〜90℃であり、濃度が15〜65質量%の硫酸と接触させる方法及び特公昭48−28123号公報に記載されているアルカリエッチングする方法が挙げられる。以上のように処理された後、処理面の中心線平均粗さRaが0.2〜0.5μmであれば、特に方法条件は限定しない。
(陽極酸化処理)
以上のようにして処理され酸化物層を形成したアルミニウム支持体には、その後に通常、陽極酸化処理がなされる。
陽極酸化処理は硫酸、燐酸、シュウ酸若しくは硼酸/硼酸ナトリウムの水溶液が単独若しくは複数種類組み合わせて電解浴の主成分として用いられる。この際、電解液中に少なくともAl合金板、電極、水道水、地下水等に通常含まれる成分はもちろん含まれても構わない。更には第2、第3成分が添加されていても構わない。ここでいう第2、3成分とは、例えば、Na、K、Mg、Li、Ca、Ti、Al、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn等の金属のイオンやアンモニウムイオン等に陽イオンや、硝酸イオン、炭酸イオン、塩素イオン、リン酸イオン、フッ素イオン、亜硫酸イオン、チタン酸イオン、ケイ酸イオン、硼酸イオン等の陰イオンが挙げられ、その濃度としては0〜10000ppm程度含まれてもよい。陽極酸化処理の条件に特に限定はないが、好ましくは30〜500g/リットル、処理液温10〜70℃で、電流密度0.1〜40A/m2 の範囲で直流又は交流電解によって処理される。形成される陽極酸化皮膜の厚さは0.5〜1.5μmの範囲である。好ましくは0.5〜1.0μmの範囲である。以上の処理によって作製された支持体が、陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアのポア径が5〜10nm、ポア密度が8×1015〜2×1016個/m2の範囲に入るように処理条件を選択することができる。
前記支持体表面の親水化処理としては、広く公知の方法が適用できる。特に好ましい処理としては、シリケート又はポリビニルホスホン酸等による親水化処理が施される。皮膜はSi、又はP元素量として2〜40mg/m2、より好ましくは4〜30mg/m2で形成される。塗布量はケイ光X線分析法により測定できる。
上記の親水化処理は、アルカリ金属ケイ酸塩、又はポリビニルホスホン酸が1〜30質量%、好ましくは2〜15質量%であり、25℃のpHが10〜13である水溶液に、陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム支持体を、例えば、15〜80℃で0.5〜120秒浸漬することにより実施される。
前記親水化処理に用いられるアルカリ金属ケイ酸塩としては、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウムなどが使用される。アルカリ金属ケイ酸塩水溶液のpHを高くするために使用される水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどがある。なお、上記の処理液にアルカリ土類金属塩若しくは第IVB族金属塩を配合してもよい。アルカリ土類金属塩としては、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウムのような硝酸塩や、硫酸塩、塩酸塩、リン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、ホウ酸塩などの水溶性の塩が挙げられる。第IVB族金属塩としては、四塩化チタン、三塩化チタン、フッ化チタンカリウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸チタン、四ヨウ化チタン、塩化酸化ジルコニウム、二酸化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウムなどを挙げることができる。
アルカリ土類金属塩若しくは、第IVB族金属塩は単独又は2種以上組み合わせて使用することができる。これらの金属塩の好ましい範囲は0.01〜10質量%であり、更に好ましい範囲は0.05〜5.0質量%である。また、米国特許第3,658,662号明細書に記載されているようなシリケート電着も有効である。特公昭46−27481号、特開昭52−58602号、特開昭52−30503号の各公報に開示されているような電解グレインを施した支持体と、上記陽極酸化処理及び親水化処理を組合せた表面処理も有用である。
[中間層(下塗り層)]
本発明の画像記録材料では、光重合性層と支持体との間の密着性や汚れ性を改善する目的で、中間層(下塗り層)を設けてもよい。このような中間層の具体例としては、特公昭50−7481号、特開昭54−72104号、特開昭59−101651号、特開昭60−149491号、特開昭60−232998号、特開平3−56177号、特開平4−282637号、特開平5−16558号、特開平5−246171号、特開平7−159983号、特開平7−314937号、特開平8−202025号、特開平8−320551号、特開平9−34104号、特開平9−236911号、特開平9−269593号、特開平10−69092号、特開平10−115931号、特開平10−161317号、特開平10−260536号、特開平10−282682号、特開平11−84674号、特開平10−69092号、特開平10−115931号、特開平11−38635号、特開平11−38629号、特開平10−282645号、特開平10−301262号、特開平11−24277号、特開平11−109641号、特開平10−319600号、特開平11−84674号、特開平11−327152号、特開2000−10292号、特開2000−235254号、特開2000−352824号、特開2001−209170号の各公報等に記載のものを挙げることができる。
〔酸素遮断層〕
本発明においては、光重合性層の上に酸素遮断層を設けることを要する。
以下、本発明の特徴的構成要素である酸素遮断層について説明する。
本発明に用いられる酸素者断層は25℃、1気圧下における酸素透過性Aが0.2≦A≦20 (ml/m2・day)であることを特徴とする。酸素透過性A上記範囲において、高感度な記録と、製造時・生保存時における不要な重合反応、画像露光時におけるカブリの効果的な抑制が達成できる。
また、酸素遮断層に望まれる特性としては、上記酸素透過性以外に、さらに、露光に用いる光の透過は実質阻害せず、光重合性層(以下、単に「感光層」ともいう)との密着性に優れ、かつ、露光後の現像工程で容易に除去できる事が望ましい。このような酸素遮断層に関する工夫が従来なされており、米国特許第3,458,311号、特開昭55−49729号公報に詳しく記載されている。
酸素遮断層に使用できる材料としては例えば、比較的結晶性に優れた水溶性高分子化合物を用いることが好ましく、具体的には、ポリビニルアルコール、ビニルアルコール/フタル酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/ビニルアルコール/フタル酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、酸性セルロース類、ゼラチン、アラビアゴム、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミドなどのような水溶性ポリマーが挙げられ、これらは単独または混合して使用できる。これらの内、ポリビニルアルコールを主成分として用いる事が、酸素遮断性、現像除去性といった基本特性的にもっとも良好な結果を与える。
酸素遮断層に使用するポリビニルアルコールは、必要な酸素遮断性と水溶性を有するための、未置換ビニルアルコール単位を含有する限り、一部がエステル、エーテル、およびアセタールで置換されていても良い。また、同様に一部が他の共重合成分を有していても良い。ポリビニルアルコールの具体例としては71〜100%加水分解され、重合繰り返し単位が300から2400の範囲のものをあげる事ができる。具体的には、株式会社クラレ製のPVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−117H、PVA−120、PVA−124、PVA−124H、PVA−CS、PVA−CST、PVA−HC、PVA−203、PVA−204、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−217EE、PVA−217E、PVA−220E、PVA−224E、PVA−405、PVA−420、PVA−613、L−8等が挙げられる。
また、ポリビニルアルコールのカルボキシル基変性タイプ、カチオン変性タイプ、アセトアセチル変性タイプ、スルホン酸変性タイプ等も好適に用いることができる。これらの具体例としては、T−330H、T−330ST,T−350,T−230,T−215、K−210,Z−200,Z−200H,Z−210,Z−100、F−78(いずれも日本合成化学工業株式会社製)等が挙げられる。
前記ポリビニルアルコールの酸素遮断層中における含有量は、固形分換算で、50〜100質量%の範囲であることが好ましく、70〜90質量%の範囲であることがより好ましい。
酸素遮断層に含まれる前記ポリビニルアルコール以外の樹脂成分としては、例えば、セルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体などの水溶性高分子、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ナイロン、ポリアミド、シリコーン等の非水溶性高分子化合物などがあげられる。
通常、酸素遮断層は、画像形成時に水で除去されるため、層自体は水溶性であることが好ましく、そのため、ポリビニルアルコールと併用される樹脂も水溶性高分子を含むことが好ましい。酸素遮断層に含まれるポリビニルアルコール以外の樹脂成分のうち、50%以上が水溶性高分子であることがさらに好ましい態様である。
酸素遮断層と光重合性層との接着性が高いことが耐刷性の点で有利であり、この観点から、ポリビニルアルコールと併用する樹脂として、ビニルピロリドンを構造単位として含む水溶性高分子が好ましく、ポリビニルピロリドンやビニルピロリドンと酢酸ビニルの共重合体等がその例として挙げられる。
ポリビニルピロリドンを構造単位として含む水溶性高分子を用いる場合、ビニルピロリドン単位構造の酸素遮断層中に占める割合には特に制限はないが、通常5〜30質量%であり、好ましくは10〜25質量%であり、さらに好ましくは15〜20質量%の範囲である。
保護層中には、ポリビニルアルコール、その他の樹脂成分に加えて、各種の有機化合物、無機化合物を添加してもよい。また、光重合性組成物上に塗設するための、塗布性を改善するなどの目的で界面活性剤を添加しても良い。
酸素遮断層の成分(PVAの選択、添加剤の使用)、塗布量等は、酸素遮断性・現像除去性の他、カブリ性や密着性・耐傷性を考慮して選択される。一般には使用するPVAの加水分解率が高い程(酸素遮断層中の未置換ビニルアルコール単位含率が高い程)、膜厚が厚い程酸素遮断性が高くなり、感度の点で有利である。しかしながら、極端に酸素遮断性を高めると、製造時・生保存時に不要な重合反応が生じたり、また画像露光時に、不要なカブリ、画線の太りが生じたりという問題を生じる。
本発明における酸素遮断層の、25℃、1気圧下における酸素透過性Aが0.2≦A≦20(ml/m2・day)である必要があり、好ましくは1≦A≦12(ml/m2・day)、更に好ましくは2≦A≦8(ml/m2・day)の範囲である。
なお、酸素遮断性の制御は、酸素遮断性の高いポリビニルアルコールと併用して、ポリビニルアルコール(PVA)よりも酸素遮断性の低い樹脂を用い、両者の含有比を調整することにより行うのが好ましく、特に、酸素遮断性の低い樹脂として前記したポリビニルピロリドン(PVP)またはその誘導体を用いるのが好ましい。ここで、PVA/PVP(またはその誘導体)の比率Bは2≦B≦10が好ましい。更に好ましくは3≦B≦7である。
また、同様の観点から、本発明に係る酸素遮断層に用いられるPVAのケン化度は85%以上であることが好ましく、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上である。PVAのケン化度は、高いほうが耐水性が高く、高湿下での保存性が向上する。
ここで用いられるポリビニルアルコール(PVA)等の(共)重合体の分子量は、2000〜1000万の範囲のものが使用でき、好ましくは1万〜100万の範囲のものが好適であり、2万〜10万のものがより好ましい。
本発明における酸素遮断層の含水率は7%以下であることが好ましい。より好ましくは6%以下、さらに好ましくは5%以下である。含水率が高い場合には印刷版を製造時におけるアルミの巻き取り後に、アルミの裏面に酸素遮断層が接着してしまい、その後の剥離が困難となり、製造上問題となりやすくなる。
次に、本発明の平版印刷版原版の製造方法について説明する。
本発明の感光性平版印刷版原版の製造方法は、前記した本発明の光重合性画像記録材料を用いた感光性平版印刷版原版の製造方法であって、支持体上に光重合性層および酸素遮断層を設けて平版印刷版原版を得た後、該酸素遮断層の含水率が7%以下である状態で、平版印刷版原版を巻き取ることを特徴とする。以下、この含水率に調整する具体的工程を説明する。
(含水率及びその制御工程)
本発明に係る酸素遮断層の含水率は、感度と画像形成性の観点から、7%以下、好ましくは4〜7%の範囲内である。より好ましくは4.5〜6%の範囲内である。本明細書において、含水率とは、酸素遮断層の固形成分の全重量に対する、酸素遮断層中に含有される水の重量%を意味する。含水率の測定は、例えば酸素遮断層を剥離して適宜溶剤に溶解して、カールフィッシャー法を原理とする水分測定装置等により測定することができる。
このような含水率に調整する工程を含む光重合性平版印刷版原版の製造方法は、全て本発明の方法として含まれる。例えば、本発明の製造方法として、酸素遮断層を光重合性層上に塗布した後、恒温、恒湿である調湿ゾーン内に支持体を放置、または通過させることにより、上述した一定の含水率を有する酸素遮断層を得ることができる。恒温、恒湿の調湿ゾーンとしては、例えば給気及び排気手段を備え、これにより湿度を保つことができる恒温ケーシング等が挙げられる。このような調湿ゾーン内の温度は15〜30℃の範囲内、また湿度は20〜65%の範囲内であることが好ましい。このような条件下の調湿ゾーン内に例えば30秒〜10分間放置するか又は調湿ゾーン内を通過させることにより、酸素遮断層を目的の含水率にしてもよい。
図3は本発明の製造方法における調湿工程の一実施態様である、調湿ケーシングを用いる工程の模式図である。図3において光重合性層及び酸素遮断層を塗布された支持体は、乾燥用の第一の槽を通過した後、温度25℃、湿度60%のケーシング中を一定の速度で通過し、含水率が一定に調整される。図3のケーシングは給気及び排気手段と連結されており、これによりケーシング内の温度及び湿度が一定に保たれる。このような調湿ケーシングについてさらに具体的に述べると、例えばケーシングはアクリル板、アルミ等の材質からなるものを用いることができ、また、給気及び排気手段は1時間当たりケーシング内容積の10〜100倍の給気及び排気量を有するファン等により行うことができる。しかし、ケーシングの材質、サイズ、給気及び排気システム等については設定湿度、調湿を行う光重合性平板印刷版の種類やサイズ、また製造ラインの規模等により適宜設計を行えることは当業者に明らかであり、これらのものに限定されない。
なお、通常水溶性高分子を主成分とする酸素遮断層は水に溶解されて塗布されるため、酸素遮断層を塗布した後、含水率の調整工程の前に乾燥を行うことが好ましい。乾燥は例えば、90℃〜140℃の温度範囲内で30秒〜5分間加熱することにより行われる。乾燥工程に引き続き上記調湿工程を行ってもよく、また、乾燥工程後、例えば保管等により一定時間経過した後上記調湿工程を行ってもよい。調湿工程の条件はこの乾燥工程後の支持体の含水率によって適宜変えることができ、このようにして、一定の含水率の支持体を得ることができる。
以下、実施例によって本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1〜23、比較例1〜10]
〔支持体の作製〕
<アルミニウム板>
Si:0.06質量%、Fe:0.30質量%、Cu:0.001質量%、Mn:0.001質量%、Mg:0.001質量%、Zn:0.001質量%、Ti:0.03質量%を含有し、残部はAlと不可避不純物のアルミニウム合金を用いて溶湯を調製し、溶湯処理、及び、ろ過を行った上で、厚さ500mm、幅1200mmの鋳塊をDC鋳造法で作製した。表面を平均10mmの厚さで面削機により削り取った後、550℃で、約5時間均熱保持し、温度400℃に下がったところで、熱間圧延機を用いて厚さ2.7mmの圧延板とした。更に、連続焼鈍機を用いて熱処理を500℃で行った後、冷間圧延で、厚さ0.24mmに仕上げ、JIS 1050材のアルミニウム板を得た。このアルミニウム板を幅1030mmにした後、以下に示す表面処理に供した。
<表面処理>
表面処理は、以下の(a)〜(j)の各種処理を連続的に行うことにより行った。なお、各処理および水洗の後にはニップローラで液切りを行った。
(a)機械的粗面化処理
図4に示したような装置を使って、比重1.12の研磨剤(パミス)と水との懸濁液を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転するローラ状ナイロンブラシにより機械的粗面化処理を行った。図4において、1はアルミニウム板、2および4はローラ状ブラシ、3は研磨スラリー液、5、6、7および8は支持ローラである。研磨剤の平均粒径は30μm、最大粒径は100μmであった。ナイロンブラシの材質は6・10ナイロン、毛長は45mm、毛の直径は0.3mmであった。ナイロンブラシはφ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。回転ブラシは3本使用した。ブラシ下部の2本の支持ローラ(φ200mm)の距離は300mmであった。ブラシローラはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、ブラシローラをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して7kWプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。ブラシの回転数は200rpmであった。
(b)アルカリエッチング処理
上記で得られたアルミニウム板をカセイソーダ濃度2.6質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%、温度70℃の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を行い、アルミニウム板を10g/m2溶解した。その後、スプレーによる水洗を行った。
(c)デスマット処理
温度30℃の硝酸濃度1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。デスマット処理に用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的粗面化処理を行う工程の廃液を用いた。
(d)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸10.5g/L水溶液(アルミニウムイオンを5g/L、アンモニウムイオンを0.007質量%含む。)、液温50℃であった。交流電源波形は図5に示した波形であり、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電解槽は図6に示すものを使用した。
電流密度は電流のピーク値で30A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で220C/dm2であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。その後、スプレーによる水洗を行った。
(e)アルカリエッチング処理
アルミニウム板に、カセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.50g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的粗面化処理を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、スプレーによる水洗を行った。
(f)デスマット処理
温度30℃の硝酸濃度15質量%水溶液(アルミニウムイオンを4.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。デスマット処理に用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的粗面化処理を行う工程の廃液を用いた。
(g)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、塩酸5.0g/L水溶液(アルミニウムイオンを5g/L含む。)、温度35℃であった。交流電源波形は図5に示した波形であり、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電解槽は図6に示すものを使用した。
電流密度は電流のピーク値で25A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で50C/dm2であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
(h)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.10g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的粗面化処理を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、スプレーによる水洗を行った。
(i)デスマット処理
温度60℃の硫酸濃度25質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。
(j)陽極酸化処理
図7に示す構造の陽極酸化装置を用いて陽極酸化処理を行い、平版印刷版用支持体を得た。第一および第二電解部に供給した電解液としては、硫酸を用いた。電解液は、いずれも、硫酸濃度170g/L(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)、温度38℃であった。その後、スプレーによる水洗を行った。最終的な酸化皮膜量は2.7g/m2であった。
以上の処理により得られた支持体のRaは0.45であった。
〔下塗り〕
次に、このアルミニウム支持体に下記下塗り液をワイヤーバーにて塗布し、温風式乾燥装置を用いて90℃で30秒間乾燥した。乾燥後の被覆量は10mg/m2であった。
<下塗り液>
・メチルアクリレート:エチルアクリレート:2−アクリルアミド−2−
メチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム塩の
モル比70:15:15の共重合体 0.1g
・2−アミノエチルホスホン酸 0.1g
・メタノール 50g
・イオン交換水 50g
〔光重合性層〕
次に、下記光重合性層塗布液(P−1〜P−5、比較感光液1〜3)を調整し、上記の下塗り済みのアルミニウム板にワイヤーバーを用いて塗布した。乾燥は、温風式乾燥装置にて122℃で43.5秒間行って光重合性層を形成した。乾燥後の被覆量は1.4g/m2であった。
<光重合性層塗布液>
・赤外線吸収剤(表1に記載の化合物) 0.08g
・重合開始剤(表1に記載の化合物) 0.30g
・増感助剤(CI−1) 0.15g
・重合性化合物(表1に記載の化合物) 1.00g
・バインダーポリマー(表1に記載の化合物) 1.00g
・着色剤(エチルバイオレットEV−6Hnaps ) 0.04g
・フッ素系界面活性剤 0.02g
(メガファックF−780−F 大日本インキ化学工業(株))
・メチルエチルケトン 10.4g
・メタノール 4.83g
・1ーメトキシー2ープロパノール 10.4g
Figure 2005107388
なお、上記表1中、光重合性塗布液P−4においては、2種の開始剤(AR−2とAR−3)をそれぞれ0.15gづつ添加した。
上記光重合性層塗布液に用いた赤外線吸収剤(IR−1〜IR−3)、可視光に吸収を有する増感色素(比較色素)、重合開始剤〔アリールラジカル発生剤(AR−1〜AR−4)、アリールラジカルを発生しない公知の開始剤(NAR−1〜NRA−3)〕、増感助剤(CI−1)、重合性化合物(M−1〜M−3)、及びバインダーポリマー(B−1〜B−3)の構造を以下に示す。
Figure 2005107388
Figure 2005107388
Figure 2005107388
Figure 2005107388
Figure 2005107388
〔酸素遮断性層〕
次に、下記組成の6質量%水溶液を調整し、酸素遮断層塗布液(OC−1〜OC−13、比較OC−1〜比較OC−7)を得た。この塗布液を表3記載の乾燥塗布重量になるように、上記の光重合性層表面にワイヤーバーを用いて塗布し、温風式乾燥装置にて125℃、75秒間乾燥させ、酸素遮断層を形成した。
<酸素遮断層塗布液>
・ポリビニルアルコール(表2に記載の化合物) A 重量部
・ポリビニルピロリドン誘導体(表2に記載の化合物) B 重量部
(但し、A+B=98重量部であり、A/Bは表2記載のPVA/PVP値である。)
・界面活性剤(エマレックス710) 日本エマルジョン社製 2重量部
・純水
Figure 2005107388
前記表2における化合物は以下の通りである。
(PVA誘導体)
PVA105、PVA205、PVA405、PVA613、PVA706、PVACST、PVAL−9(商品名、すべてクラレ社製)
(PVP誘導体)
ルビスコール :ルビスコールVA64W (商品名、BASF社製)
VPC :VPC 55 K65W (BASF社製)
Vcap :cap K43E (BASF社製)
VPI :uvitec VPI55 K18P (BASF社製)
ここで、表3に記載の塗布量(g/m2)としたときの、酸素遮断層の酸素透過率を以下の条件で測定した。結果を前記表2に酸素透過性として併記した。
(酸素透過率の測定)
両面を厚さ約20μmのポリエチレンでコートした厚さ約200μmの印画紙表面に、前記光重合性層上に塗布するのと同様に酸素遮断層を塗布、乾燥し、測定用の試料を作製した。予め測定した印画紙の酸素透過率は、下記測定条件において約700ml/(m2・day・atom)であり、酸素遮断層における透過率を測定する際には十分無視できる値であった。
このようにして得られた試料を用い、JIS K7126B及びASTM D3985に記載の気体透過度試験方法に準じて、モコン社製 OX−TRAN2/20を用いて、25℃60%RHの条件で酸素透過率〔ml/(m2・day・atom)〕を測定した。
以上のようにして、支持体上に光重合性層、酸素遮断層を有する実施例1〜25及び比較例1〜10の平版印刷版原版を得た。いずれの光重合性層塗布液、酸素遮断層塗布液を用いたかは、下記表3に記載した。
[評価]
(1)感度評価
得られた平版印刷版原版を、水冷式40W赤外線半導体レーザーを搭載したCreo社製Trendsetter3244VXにて、解像度175lpi、外面ドラム回転数150rpm、出力0〜8Wの範囲でlogEで0.15ずつ変化させて露光した。なお、露光は25℃50%RHの条件で行った。露光後、水道水による水洗により保護層を除去した後、富士写真フイルム社製LP−1310HIIを用い、30℃12秒で現像した。現像液は、富士フイルム(株)社製DV−2の1:4水希釈水を用い、フィニッシャーは、富士フイルム(株)社製GN−2Kの1:1水希釈液を用いた。
この条件で、処理前の版濃度を1.0としたとき、0.9の濃度の画像を得るのに必要な露光量を感度の指標とした。実施例1の値を100として相対値で示した。結果を表3に示す。
(2)セーフライト安全性評価
平版印刷版原版を25℃、50%RHの環境下で、UVカット白灯(FLR 40S−W−NUM 紫外線吸収膜付きナショナル社製)、400ルクスに1時間曝光し、その後、下記の方法により現像した。続いて現像後の印刷版原版の非画像部濃度を、マクベス反射濃度計RD−918を使用し測定した。また、曝光させず、赤灯下で取り扱った平版印刷版原版についても、同様の方法で現像を行い、非画像部濃度を測定した。本実施例においては、それらの非画像部濃度の差Δfogを求め、セーフライト安全性の指標とした。Δfogの値が小さいほどセーフライト安全性が良好であり、0.02以下が実用上問題ないレベルである。結果を表3に示す。
(現像)
水道水による水洗により保護層を除去した後、(1)感度評価の現像工程と同じ方法で現像した。
(3)耐刷性評価
得られた平版印刷版原版に、水冷式40W赤外線半導体レーザーを搭載したCreo社製Trendsetter3244VXにて、解像度175lpiの80%平網画像を、25℃50%RHの環境下で、出力6W、外面ドラム回転数150rpm、版面エネルギー100mJ/cm2で露光した。露光後、水道水による水洗により保護層を除去した後、(1)感度評価の現像工程と同じ方法で現像し、平版印刷版を得た。
得られた平版印刷版を、小森コーポレーション(株)製印刷機リスロンを用いて印刷し、刷了枚数を耐刷性の指標とした。結果を表1に示す。
(4)環境依存性評価
環境を30℃70%RHに変えた以外は同様にして上記のように耐刷評価を行い、25℃50%RHの環境下で作成した印刷版と30℃70%RHの環境下で作成した印刷版の耐刷性を比較し、以下の基準で評価した。結果を表3に示す。
○:耐刷性に差が見られない
△:耐刷性1〜2割減
×:耐刷性半減以下
Figure 2005107388
表3の結果より明らかなように、本発明の特徴である特定開始剤を含有する光重合性層と、酸素透過性Aが0.2≦A≦20(ml/m2・day)である酸素遮断層とを有する実施例の平版印刷版原版は、いずれも、セーフライト安全性、耐刷性及び環境依存性のいずれにおいても優れていることが判った。
一方、酸素遮断性Aが0.2未満の比較例2、5、6ではセーフライト安全性が悪化し、Aが20よりも大きい比較例1、3、4、7では、耐刷が悪化し、いずれも実用上問題があるレベルであることが判った。
また、光重合性層中に、赤外線吸収剤を添加せず、可視光吸収型の増感色素(比較色素)を用いた比較例10では、酸素遮断層の酸素透過性Aが0.2≦A≦20(cc/m2・day)の条件を満たしていても、セーフライト安全性が不十分であることがわかる。
さらに、光重合性層中にアリールラジカル以外のラジカルを発生する本発明の範囲外の開始剤を用いた比較例8〜10においては、環境依存性が悪化することがわかる。
[実施例24〜27、比較例11]
実施例1と同様にして酸素遮断層の乾燥まで行い、その後、図3に示されるようなケーシング内で表4に示される条件において調湿工程を行い、光重合性平版印刷版(実施例24〜27、比較例11)を得た。得られた平版印刷版原版の酸素遮断層について含水率を以下に示す方法により測定した。結果を表4に示す。ここで得られた各平版印刷版原版を巻き取ってコイル状とした。
(酸素遮断層含水率の測定方法)
酸素遮断層の一部を剥離して重量を測定し、これを無水メタノールに溶解し、カールフィッシャー法を原理とする水分測定装置(KYOTO ELECTRONICS MKC-3)によりオーバーコート層中の水分量を測定した。上記装置におけるカールフィッシャー法の測定原理を以下に簡単に説明する。
2O+I2+SO2+CH3OH+3RN→2RN・HI+RN・HSO4CH3
(1)
2I-→ I2+2e- (2)
ヨウ素イオンを含む発生液中で電気分解によりヨウ素イオンからヨウ素を発生させ、発生ヨウ素が(1)式に従って水分子と反応して消費されると、装置の電極でヨウ素が消費されたことを検知して再び電気分解により(2)式に従いヨウ素を発生させる。この電気分解に要した電気量から試料内の水分量が換算される。
(剥離性の評価方法)
巻き取られた印刷版コイルを、30℃70%RHの環境下で2ヶ月放置した後、コイルから印刷版を剥がす際の剥離しやすさを以下の基準により官能評価した。結果を表4に示す。
良 好 :印刷版表面を傷つけることなく剥離可能
酸素遮断層はがれ:剥離時に酸素遮断層が支持体であるアルミニウム板の裏面に接着し、剥がれを生じた
Figure 2005107388
表4に明らかなように、酸素遮断層の含水率を本発明の製造方法における範囲内に調整して得られた平版印刷版原版は、コイル状にして高湿環境下で長期保存した後も、酸素遮断層の剥離がなく、製造適性に優れることがわかった。
感光層の溶解挙動を測定するためのDRM干渉波測定装置の一例を示す概略構成図である。 現像液の感光層への浸透性を評価するのに用いられる静電容量の測定方法の一例を示す概略構成図である。 本発明の製造方法における調湿工程の一実施態様を示す模式図である。 本発明の画像記録材料に用いる支持体の作製における機械粗面化処理に用いられるブラシグレイニングの工程の概念を示す側面図である。 本発明の画像記録材料に用いる支持体の作製における電気化学的粗面化処理に用いられる交番波形電流波形図の一例を示すグラフである。 本発明の画像記録材料に用いる支持体の作製における交流を用いた電気化学的粗面化処理におけるラジアル型セルの一例を示す側面図である。 本発明の画像記録材料に用いる支持体の作製における陽極酸化処理に用いられる陽極酸化処理装置の概略図である。
符号の説明
1 アルミニウム板
2、4 ローラ状ブラシ
3 研磨スラリー液
5、6、7、8 支持ローラ
11 アルミニウム板
12 ラジアルドラムローラ
13a、13b 主極
14 電解処理液
15 電解液供給口
16 スリット
17 電解液通路
18 補助陽極
19a、19b サイリスタ
20 交流電源
40 主電解槽
50 補助陽極槽
410 陽極酸化処理装置
412 給電槽
414 電解処理槽
416 アルミニウム板
418、426 電解液
420 給電電極
422、428 ローラ
424 ニップローラ
430 電解電極
432 槽壁
434 直流電源

Claims (4)

  1. 支持体上に、(A)650〜1300nmに吸収極大を有する化合物と、(B)アリールラジカル発生剤と、(C)重合性化合物とを含有する光重合性層、及び、25℃、1気圧下における酸素透過性Aが0.2≦A≦20(ml/m2・day)である酸素遮断層、を有する光重合性画像記録材料。
  2. 前記酸素遮断層が、ポリビニルアルコール(PVA)と、ポリビニルピロリドン(PVP)又はその誘導体と、を含有してなり、両者の含有比率〔PVA/PVP(またはその誘導体)〕Bが2≦B≦10である請求項1に記載の光重合性画像記録材料。
  3. 前記PVAのケン化度が85%以上である請求項2に記載の光重合性画像記録材料。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の光重合性画像記録材料を用いた感光性平版印刷版原版の製造方法であって、
    支持体上に光重合性層および酸素遮断層を設けて平版印刷版原版を得た後、
    該酸素遮断層の含水率が7%以下である状態で、平版印刷版原版を巻き取ることを特徴とする感光性平版印刷版原版の製造方法。
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