JP2005056670A - 偏向ヨークおよび陰極線管装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 安価かつ簡易な構成で、トロイダル型の垂直偏向コイルの漏れ磁界を低減することができる偏向ヨークを提供する。
【解決手段】 トロイダル型の垂直偏向コイル36は、複数のコイル束361〜368からなり、フェライトコア34の外周面には、各コイル束の端部に当接する位置にフェライトコア34と一体成形されたリブ351〜358が設けられる。各リブの管軸方向の長さは、フェライトコア34の電子銃側の端面343から、少なくともフェライトコア34の管軸方向の長さの4分の1だけあり、その高さは、当該リブに近接するコイル束の巻厚をTとすると、当該コイル束の最表面から少なくともTだけ突出した高さに設定される。
【選択図】 図2
【解決手段】 トロイダル型の垂直偏向コイル36は、複数のコイル束361〜368からなり、フェライトコア34の外周面には、各コイル束の端部に当接する位置にフェライトコア34と一体成形されたリブ351〜358が設けられる。各リブの管軸方向の長さは、フェライトコア34の電子銃側の端面343から、少なくともフェライトコア34の管軸方向の長さの4分の1だけあり、その高さは、当該リブに近接するコイル束の巻厚をTとすると、当該コイル束の最表面から少なくともTだけ突出した高さに設定される。
【選択図】 図2
Description
本発明は、テレビ受像機やコンピュータ用ディスプレイなどに用いられる陰極線管の偏向ヨークおよび当該偏向ヨークを備えた陰極線管装置に関する。
一般に、カラー陰極線管装置は、インライン型の電子銃から射出された3本の電子ビームを、水平偏向コイルおよび垂直偏向コイルを備えた偏向ヨークで偏向させて、前面パネルの内側の蛍光体スクリーンをラスタースキャンさせるようになっている。
そして、垂直偏向コイルによって発生する磁界は樽型(バレル型)と呼ばれる分布を持つと共に、水平偏向コイルによって発生する磁界は糸巻型(ピンクッション型)と呼ばれる分布を持ち、これにより良好なコンバーゼンスを得ることができるように構成されている。
ところで、上記の垂直偏向コイルの巻回の種類として、コイル線をフェライトコアに直接巻回するトロイダル型といわれるものがある。この方式の垂直偏向コイルは、コイルの巻線数、巻幅、巻厚、巻分布などの調整が容易であり、磁界の最適分布が得られやすいという利点がある一方、フェライトコアの外側に向けて漏れ磁界が発生しやすく、これが電子銃から射出された電子ビームの軌道に悪影響を及ぼして上述のコンバーゼンスを劣化させ色ずれを生じさせるという弊害があった(以下、電子ビームの軌道が変化して蛍光体スクリーンへの到達位置がずれることを「ミスコンバーゼンス」という。)。また、電子銃側における漏れ磁界により、電子銃における主レンズの電界に乱れが生じ、フォーカス特性が劣化するという問題も生じていた。
このような不都合を避けるため、従来は、偏向ヨークの所定の位置に補正コイルを設けて、当該トロイダル型の垂直偏向コイルからの漏れ磁界をキャンセルする方向に磁界を発生させるようにしている(例えば、特許文献1、特許文献2)。
しかしながら、上記の特許文献1に記載の方法では、別途補正コイルを設ける必要があるので、部品点数が増える上、製造ラインにおいて当該補正コイルの配線・設置作業の工程が必要となり、全体としてコストアップとなる。
特開昭62−241242号公報
特開平4−95335号公報
本発明は、上記の課題に鑑み、特にコストアップを招くことなく、トロイダル型コイルの漏れ磁界の影響を低減して良好なコンバーゼンスおよびフォーカス特性が得られる偏向ヨークおよび当該偏向ヨークを備えた陰極線管装置を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明に係る偏向ヨークは、電子銃から射出された電子ビームを垂直方向に偏向する一対の垂直偏向コイルを備えた偏向ヨークであって、前記一対の垂直偏向コイルは、それぞれ、ほぼラッパ状のコアの、周方向の異なる位置にトロイダル状に巻回された複数のコイル束からなり、前記ラッパ状のコアを陰極線管の管軸方向から見て、その管軸の位置を原点とし、この原点を通過して水平偏向方向および垂直偏向方向に伸びる直線をそれぞれx軸、y軸とする座標系を想定した場合に、前記コア外周面の、前記複数のコイル束の巻き始め及び巻き終わりの各位置に近接する複数の特定位置のうち、少なくとも、上記座標系の各第1〜第4象限においてx軸からの角度の絶対値が最大となる特定位置において、磁性体からなるリブが形成されてなることを特徴とする。
ここで、「近接」しているとは、リブとコイル束の巻き始めもしくは巻き終わりが「当接」している場合を含む。
また、本発明は、前記リブの管軸方向における長さは、前記コアの前記電子銃側の端面から、少なくとも前記コアの管軸方向の長さの4分の1以上の長さがあることを特徴とする。
さらに、また本発明は、前記リブは、当該リブに近接するコイル束の巻厚をTとすると、当該コイル束の最表面から少なくともTだけ突出した高さがあることを特徴とする。
ここで、前記リブは、前記コアの前記電子銃側の端面にまで回りこんで形成されている構成とすることが望ましい。
また、ここで、前記コアの端面に形成されたリブの高さは、当該リブに近接するコイル束の巻厚をSとすると、当該コイル束の最表面から少なくともSだけ突出した高さがあることが望ましい。
また、本発明は、前記リブは、前記コアと一体成形されてなることを特徴とする。
さらに、本発明に係る陰極線管装置は、上記偏向ヨークを備えることを特徴とする。
本発明によれば、複数のコイル束をラッパ状のコアに巻回してなるトロイダル型の垂直偏向コイルにおいて、前記ラッパ状のコアを陰極線管の管軸方向から見て、その管軸の位置を原点とし、この原点を通過して水平偏向方向および垂直偏向方向に伸びる直線をそれぞれx軸、y軸とする座標系を想定した場合に、前記コア外周面の、前記複数のコイル束の巻き始め及び巻き終わりの各位置に近接する複数の特定位置のうち、少なくとも、上記座標系の各第1〜第4象限においてx軸からの角度の絶対値が最大となる特定位置において、磁性体からなるリブが形成されているので、偏向ヨークにトロイダル型の垂直偏向コイルであっても補正コイルを用いることなく、その漏れ磁界を磁性体のリブによる磁気シールド効果によりコンバーゼンスやフォーカス特性に影響のない程度まで低減させることができる。これにより偏向ヨークの製造コストを抑えつつ、陰極線管装置に使用されたときに、色ずれや解像度の劣化のない良好な表示画面を得ることができる。
また、本発明は、前記リブの管軸方向における長さが、前記コアの前記電子銃側の端面から、少なくとも前記コアの管軸方向の長さの4分の1以上の長さがあり、これによりミスコンバーゼンスやフォーカス特性の劣化を引き起こす漏れ磁界を効果的に低減することができる。
さらに、上記リブの高さが、当該垂直偏向コイルの最表面からその部分におけるコイル束の巻厚をTの高さだけ高くなるように構成すれば、ミスコンバーゼンスやフォーカス特性の劣化を引き起こす漏れ磁界を一層効果的に低減することができる。
また、前記リブが、前記コアの前記電子銃側の端面にまで回りこんで形成されるようにすれば、電子銃から射出された電子ビームの軌道およびフォーカス特性に対して影響のある漏れ磁界をさらに低減できる。
また、ここで、前記コアの端面に形成されたリブの高さは、当該リブに近接するコイル束の巻厚をSとすると、当該コイル束の最表面から少なくともSだけ突出した高さを有する構成とすることにより、さらに効果的に電子銃から射出された電子ビームの軌道およびフォーカス特性に対して影響のある漏れ磁界を低減できる。
また、前記リブを前記コアと一体成形すれば、コアを製造後に、リブを別途取り付ける手間が省け偏向ヨークの製造工程が簡易になり、コストダウンに資する。
さらに、本発明に係る陰極線管装置は、上記構成を備える偏向ヨークを備えることにより、コストダウンを図りながらも良好なコンバーゼンスとフォーカス特性を有し、高品位な表示画面が得られる。
以下、本発明の実施の形態に係るカラー陰極線管装置について、図面を参照しながら説明する。
(カラー陰極線管装置の全体構成)
図1は、本実施の形態に係るカラー陰極線管装置10の概略構成を示す半断面図である。同図に示すように、カラー陰極線管装置10は、カラー陰極線管12、偏向ヨーク14、CPU(Convergence and Purity Unit)16等から成る。
図1は、本実施の形態に係るカラー陰極線管装置10の概略構成を示す半断面図である。同図に示すように、カラー陰極線管装置10は、カラー陰極線管12、偏向ヨーク14、CPU(Convergence and Purity Unit)16等から成る。
カラー陰極線管12は、フェースパネル20とファンネル22とが接合されてなるガラスバルブ内にインライン型電子銃(以下、単に「電子銃」と言う。)24やシャドウマスク26などが収納されてなる。
フェースパネル20の内面には、赤、緑、青の各蛍光体ドットが規則正しく配列されてなる蛍光体スクリーン28が形成されている。前記シャドウマスク26は当該蛍光体スクリーン28とほぼ並行して設けられている。シャドウマスク26には電子ビーム通過孔が多数設けられ、電子銃24から射出される3本の電子ビーム30がそれぞれの蛍光体に正しく当たるようになっている。
偏向ヨーク14は、ファンネル22のネック23寄りの外周に設けられており、電子銃24から射出される3本の電子ビーム30を上下・左右に偏向し、ラスタースキャン方式で蛍光体スクリーン28を走査させるものである。偏向ヨーク14はサドル型の水平偏向コイル32とトロイダル型の垂直偏向コイル36とを備えており、後者の垂直偏向コイル36はフェライトコア34に巻回されている。
垂直偏向コイル36と水平偏向コイル32との間には、樹脂枠38が設けられている。樹脂枠38は、垂直偏向コイル36と水平偏向コイル32との間の電気的な絶縁状態を維持すると共に、両偏向コイル32,36を支持する役割を果たしている。
フェライトコア34の外周面には、磁性体からなる複数のリブ群35が設けられており、これにより垂直偏向コイル36より生じる漏れ磁界のうち、特に電子銃24から射出された電子ビームの軌道に影響するものを抑制する。詳しくは後述する。
電子銃24は、ネック部23内側に収納されている。電子銃24は、3個のヒータ(不図示)により個別に加熱される3個のカソード(不図示)を水平方向にインライン配列してなる。
また、CPU16は、複数のマグネットリングからなる公知のものであって、ネック部23外周の、電子銃24に対応する位置に設けられており、これにより電子ビームの静コンバーゼンス調整およびピュリティー調整が行われる。
(フェライトコアおよび垂直偏向コイル)
図2は、上記偏向ヨーク14のうち、フェライトコア34とこれに巻回されたトロイダル型の垂直偏向コイル36の形状を示す外観斜視図である。
図2は、上記偏向ヨーク14のうち、フェライトコア34とこれに巻回されたトロイダル型の垂直偏向コイル36の形状を示す外観斜視図である。
同図に示すようにフェライトコア34は、2分割型であって上部コア341と下部コア342を止め金具344により固定して、ほぼラッパ形状に形成されている。
垂直偏向コイル36は、上下方向に対向して配置される上部コイル36aと下部コイル36bからなり、上部コイル36aは、第1、第2コイル束361、362、下部コイル36bは、第3、第4コイル束363、364をそれぞれ直列に接続してなる。なお、これ以外の接続も技術的に可能である。
また、フェライトコア34の外周面には、各コイル束361〜364の巻き始めと巻き終わりの部分に当接するようにリブ351〜358が設けられている。
このリブ351〜358は、フェライトコア34と同じ磁性体からなり当該フェライトコア34本体と一体成形されてなる。具体的には、例えば、フェライトコアの原材料(MgZn系フェライトやNiZn系フェライト)の粉体を当該リブを含むコア形状の金型内に詰めて成形し、これを焼結させることにより形成される。
図3は、このフェライトコア34の電子銃側の端面343における各コイル束361〜364の巻線の位置を示す図である。同図では、説明の便宜上、管軸zの位置を原点Oとし、水平偏向方向をx軸、垂直偏向方向をy軸とする座標系を設定している。
同図に示すように各コイル束361〜364は、x軸、y軸に対して対称な位置に巻回され、各コイル束361〜364の巻き始めと巻き終り(なお、どちら側が巻き始めになるか巻き終わりになるかはコイルの製造上の問題なので、以下では双方を区別せず単に「コイル端部」という。)の各象限における位置は、x軸からαおよびβの角度(巻角)にある。
そして、各リブ351〜358は、各コイル束361〜364の両コイル端部に当接する位置に設けられている。
なお、本明細書において、「各象限におけるx軸からの角度」というときは、当該象限に属するx軸から時計回りもしくは反時計周りに計測した場合の角度の絶対値をいうものとする(0<β<α<90°)。このようなα及びβの値および各コイル束の巻き数は、最適なバレル型の垂直偏向磁界が発生できるように設計段階で決定されている。
図4は、図3のA−A線における矢視断面図である。なお、コイル束361の巻線は実際には複数段あるが、便宜上、図4では簡易に示してある。
同図に示すようにリブ351の高さH1は、コイル束361の巻き線の最表面よりさらに高くなっており、この部分のコイル束361の巻線の最表面の、フェライトコア34表面からの距離をh1、巻き線の巻厚をTとするとH1≧h1+Tとなるように設定されている。
また、リブ351は、フェライトコア34の電子銃側端面343側にも回り込んで形成されており、この回り込み部351aのリブの高さH2は、コイル束361のこの部分での巻厚Sの2倍以上(H2≧2S)となっている。
さらに、リブ351の電子銃側端面343から管軸z方向における長さL1(回り込み部351aの高さH2を除く)は、フェライトコア34の管軸方向の長さLの4分の1以上であることが望ましい。
なお、リブ351は、実際には製造段階、特に金型から取り出す段階で、欠けたりしないようにその横断面(管軸に直交する平面における切断面)の形状は台形状であって、頂部にいくほど幅がわずかに細くなるようにリブの側壁がテーパー状(左右0.8%程度)になっている。このリブの頂部の幅W1(図3参照)は、本実施の形態では、ほぼ1mm程度に設定されているが、この寸法に限定されない。他のリブ352〜358の形状や寸法も上記リブ351と同様の条件を満たしている。
上記リブ351の形成により漏れ磁界が低減される効果を確認するため、コンピュータによるシミュレーションを試みた。
図5は、本シミュレーションの対象となるフェライトコア34、リブ351の簡易化したモデルであり、フェライトコア34の外周面は、屈曲部のない単純な円錐台形状の外周であり、また、リブ351には回り込み部351aを設けていない。このようなモデルと従来のリブがないモデル(不図示)について、管軸zに直交する面Vと、管軸zと平行な面Pをそれぞれ漏れ磁界の強度の評価面としてシミュレートしたところそれぞれ図6、図7に示すような結果が得られた。
なお、図6、図7の各(a)(b)において「R」は、コイル束361の巻かれている領域を示すと共に、線分a、b、cは漏れ磁界の強度分布を示し、コイル束に近付くほど磁界強度が強くなっている(a>b>c)。
図6は、管軸zに直交する評価面Vにおける漏れ磁界の強度分布のシミュレーション結果を示す概略図であり、(a)がリブを有する場合、(b)が従来のリブを有しない場合を示している。当該図6(a)、(b)を比較して分かるようにリブを設けたフェライトコアの方が従来のリブなしのフェライトコアよりも磁界強度の高い領域の範囲が小さくなっており、漏れ磁界が抑制されているのがよく分かる。
このような現象が生じるのは、漏れ磁界が多く発生する箇所は主にコイル端部であり、これに当接させて所定の高さのリブを形成すると、当該リブが漏れ磁界に対して磁気シールドとして作用するからである。
また、図7(a)、(b)は、図5における管軸zに平行な評価面Pにおける漏れ磁界の強度分布のシミュレーション結果を示す概略図であり、(a)がリブを有する場合、(b)が従来のリブを有しない場合を示している。同図 (a)(b)を比較して分かるように管軸と平行な方向においてもリブを設けたフェライトコアの方が従来のリブなしのフェライトコアよりも磁界強度の高い領域の範囲が小さくなっており、漏れ磁界の広がりが抑制されている。
このように磁性体からなるリブをコイル端部に当接させて形成することによって、当該コイル端部からの磁界が透磁率の高いリブ側に引き寄せられ、フェライトコア外部における漏れ磁界の強度が弱くなるため、特に偏向中心に近い位置にある電子ビームや電子銃の主レンズ電界への影響力が低減し、ミスコンバーゼンスやフォーカス特性の劣化を抑制できるのである。
なお、リブがその磁気シールドとしての効果を十全に発揮するためには、上述のようにコイル端部に当接(接触)しているのが望ましいが、両者間に若干の隙間があっても効果はある。本明細書においては、上記のように「当接」している場合と、完全に当接していなくても、ほぼ「当接」と同視できる範囲に接近している場合を含めて「近接」しているという用語を用いている。
次に、上記リブの寸法の最適範囲を実験に基づき説明する。
(1)リブのコア表面からの高さH1の最適範囲
上述の原理から、磁性体であるリブの高さH1が大きければ大きいほど漏れ磁界の遮断効果が大きくなるのはいうまでもないが、当該偏向ヨーク34の配置スペースや他の部品配置との関係でリブの高さにも自ら限界があり、具体的には設計段階で決定される。
上述の原理から、磁性体であるリブの高さH1が大きければ大きいほど漏れ磁界の遮断効果が大きくなるのはいうまでもないが、当該偏向ヨーク34の配置スペースや他の部品配置との関係でリブの高さにも自ら限界があり、具体的には設計段階で決定される。
問題は、少なくともどれ以上の高さがあれば、ミスコンバーゼンスやフォーカス劣化を許容範囲内に抑えることができるかである。
そこで、リブの高さH1を、リブがない場合(H1=0)、近接するコイル束の巻線表面の高さと同じ場合(H1=h1)および、H1=h1+T(Tは、リブに近接するコイル端部における巻厚)、H1=h1+2Tの各場合において漏れ磁界の強度をフェライトコアの電子銃側の所定位置で測定してみると、図8のグラフに示すような結果が得られた。
同図において、横軸はリブの高さH1、縦軸は、漏れ磁界の強度を示しており、ここではリブなしの場合の漏れ磁界の強度を「1」としたときの相対的な数値で示している。なお、この実験においてリブの管軸方向の長さL1は、L/2に設定している。
一般に漏れ磁界の強度をリブなしの場合より50%低減すれば、仮に漏れ磁界の影響によりミスコンバーゼンスが生じたとしても許容範囲内であると考えられており、また、フォーカス特性の劣化も十分解消される。図8の実験結果から、H1が、ほぼh1+0.4Tを超えれば、この条件を満足することになるが、本発明では、さらに漏れ磁界を低減してミスコンバーゼンスおよびフォーカス劣化を抑制すべく、H1が少なくともh1+T以上であるようにしている。これにより漏れ磁界が、リブがない場合よりもおよそ60%も低減され、従来のように補正コイルを用いずとも、画質に影響を与えない程度まで十分小さくすることができる。
なお、フェライトコア端面への回り込み部の高さH2についても、磁気シールドの原理から上述と同様の条件を満足すればよい。すなわち、その部分のコイル端部の巻線の最表面から、少なくとも当該コイル束の巻厚Sだけ突出した高さだけあればよい。
(2)リブの管軸方向の長さL1の最適範囲
次に、リブのフェライトコアの電子銃側端面からの管軸方向における長さL1の最適範囲について検討する。なお、本実験では、リブ351に回り込み部3351aを形成していないものを用いている。
次に、リブのフェライトコアの電子銃側端面からの管軸方向における長さL1の最適範囲について検討する。なお、本実験では、リブ351に回り込み部3351aを形成していないものを用いている。
まず、L1の最大値は、当然ながらフェライトコア外周の管軸方向全長のLとなる。
しかし、漏れ磁界の影響により電子ビームの軌道に一番影響を及ぼすのは、特に当該電子ビームの偏向中心に近い部分や電子銃に作用する漏れ磁界なので、必ずしもリブの長さがフェライトコアの管軸方向の全長Lだけ必要というわけではなく、電子銃側の端面から管軸方向に所定長さL1だけあればよい。
そこで、L1の大きさを変化させて、電子銃側の所定位置において漏れ磁界の強度を測定したところ、図9のグラフに示すような結果が得られた。同グラフにおいて、横軸は、フェライトコアの管軸方向の全長Lに対するリブの、フェライトコアの電子銃側端面からの相対的な管軸方向の長さを示し、縦軸は、図8同様リブなしの場合の漏れ磁界の強度を「1」としたときの相対的な漏れ磁界の強度を示している。
なお、ここでは、リブの高さH1は、h1+2Tで一定となるようにした。
同グラフに示すようにリブの管軸方向の長さが、ほぼL/4以上あれば、漏れ磁界の相対値が約0.75程度で一定となるので、これ以上リブを長くしても意味がない。 なお、リブ351〜358を形成することにより、上述の漏れ磁界低減の効果のほかに、フェライトコアの表面積を増加させて放熱効果を向上させるという副次的な効果も得られるものである。
(変形例)
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明の技術的範囲は、上記の実施の形態に限定されないことは勿論であり、例えば、以下のような変形例を考えることができる。
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明の技術的範囲は、上記の実施の形態に限定されないことは勿論であり、例えば、以下のような変形例を考えることができる。
(1)上記実施の形態では、各コイル束のコイル端部の全ての位置にリブを設けるようにしたが、それより少ない箇所であっても従来のリブのない場合に比べて垂直偏向コイルの漏れ磁界を低減するという効果は得られる。
但し、電子ビームの軌道に一番影響を与えるのは、yz平面およびxz平面における漏れ磁界、とりわけx方向成分の磁界成分であると考えられるので、少なくとも水平のx軸から一番巻角の大きなコイル端部に近接する位置にはリブを設けることが望ましい(図3では、リブ351、352に該当。)。すなわち、偏向ヨークの電子銃側の領域においては、電子ビームはまだほとんど偏向されておらず、この領域で漏れ磁界のx方向成分により電子ビームの軌道がy方向にずれると、電子ビームがスクリーンに到達したときにはそのずれが拡大される。このため、x軸方向からの角度の絶対値が最大となる位置にリブを設けて、漏れ磁界のx方向成分を吸収する方が望ましいのである。
(2)上記実施の形態では、上下の垂直偏向コイルがそれぞれ2つのコイル束に分割されていたが、陰極線管のサイズや形状等に応じて最適な偏向磁界の分布を得るため、当該コイル束の数がさらに多くなっても構わない。この場合でも、全てのコイル端部に近接してリブを設けるのが望ましいが、少なくとも、x軸からの巻角が一番大きな位置のコイル端部の位置にリブを設ける必要があるのは上記(1)と同じである。
(3)上記実施の形態では、リブとフェライトコアが一体成形されるとした。しかし、必ずしも一体成形しなくても、例えばフェライトコア外周面のリブ形成予定位置に溝を形成しておき、この溝に別途形成したリブを嵌め込むようにして取り付けても構わない。この場合には、リブをフェライトより透磁率の高い別材料で形成することにより、漏れ磁界の一層の低減が可能となる。
(4)上記実施の形態では、リブをフェライトコアの電子銃側の端面まで回り込んで形成させたが、この回り込み部がなくても漏れ磁界低減の効果は得られるので、必須の構成ではない。
以上のように本発明に係る偏向ヨークによれば、補正コイルを設けなくても、トロイダル型の垂直偏向コイルから発生する漏れ磁界を効果的に低減できるので、これを使用することのより表示画像の質を維持しつつ、製造コストが低減された陰極線管装置を提供することができる。
10 カラー陰極線管装置
12 カラー陰極線管
24 電子銃
28 蛍光体スクリーン
32 水平偏向コイル
34 フェライトコア
36 垂直偏向コイル
50 磁性体リング
351〜358 リブ
361〜364 コイル束
343 フェライトコアの電子銃側端面
H1 リブのフェライトコア外周面からの高さ
H2 リブのフェライトコア端面からの高さ
Ll リブのフェライトコア端面からの管軸方向における長さ
L フェライトコアの管軸方向における全長
12 カラー陰極線管
24 電子銃
28 蛍光体スクリーン
32 水平偏向コイル
34 フェライトコア
36 垂直偏向コイル
50 磁性体リング
351〜358 リブ
361〜364 コイル束
343 フェライトコアの電子銃側端面
H1 リブのフェライトコア外周面からの高さ
H2 リブのフェライトコア端面からの高さ
Ll リブのフェライトコア端面からの管軸方向における長さ
L フェライトコアの管軸方向における全長
Claims (7)
- 電子銃から射出された電子ビームを垂直方向に偏向する一対の垂直偏向コイルを備えた偏向ヨークであって、
前記一対の垂直偏向コイルは、それぞれ、ほぼラッパ状のコアの、周方向の異なる位置にトロイダル状に巻回された複数のコイル束からなり、
前記ラッパ状のコアを陰極線管の管軸方向から見て、その管軸の位置を原点とし、この原点を通過して水平偏向方向および垂直偏向方向に伸びる直線をそれぞれx軸、y軸とする座標系を想定した場合に、
前記コア外周面の、前記複数のコイル束の巻き始め及び巻き終わりの各位置に近接する複数の特定位置のうち、少なくとも、上記座標系の各第1〜第4象限においてx軸からの角度の絶対値が最大となる特定位置において、磁性体からなるリブが形成されてなることを特徴とする偏向ヨーク。 - 前記リブの管軸方向における長さは、前記コアの前記電子銃側の端面から、少なくとも前記コアの管軸方向の長さの4分の1以上の長さがあることを特徴とする請求項1記載の偏向ヨーク。
- 前記リブは、当該リブに近接するコイル束の巻厚をTとすると、当該コイル束の最表面から少なくともTだけ突出した高さがあることを特徴とする請求項1または2に記載の偏向ヨーク。
- 前記リブは、前記コアの前記電子銃側の端面にまで回りこんで形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の偏向ヨーク。
- 前記コアの端面に形成されたリブの高さは、当該リブに近接するコイル束の巻厚をSとすると、当該コイル束の最表面から少なくともSだけ突出した高さがあることを特徴とする請求項4に記載の偏向ヨーク。
- 前記リブは、前記コアと一体成形されてなることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の偏向ヨーク。
- 請求項1から6のいずれかに記載の偏向ヨークを備えることを特徴とする陰極線管装置。
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Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003286074A Pending JP2005056670A (ja) | 2003-08-04 | 2003-08-04 | 偏向ヨークおよび陰極線管装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2005056670A (ja) |
-
2003
- 2003-08-04 JP JP2003286074A patent/JP2005056670A/ja active Pending
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