JP2005022301A - 二軸延伸多層ポリプロピレンフィルム - Google Patents

二軸延伸多層ポリプロピレンフィルム Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、隠蔽性、表面光沢、低温ヒートシール性に優れ、かつ内部に微細な空孔を有する包装用フィルム等に好適な二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムを開発することを目的とする。
【解決手段】プロピレン重合体(A)70〜95重量%、高級脂肪酸で表面処理された平均粒子径が1〜5μmの炭酸カルシウム(B)3〜15重量%及び酸化チタン(C)2〜15重量%からなるプロピレン重合体組成物から得られる二軸延伸フィルム基材層の片面に、プロピレン重合体(A)から得られる被覆層を介して(メタ)アクリル酸系重合体(F)層が積層され、他の片面にプロピレン・α―オレフィンランダム共重合体(D)から得られる熱融着性層が積層されてなることを特徴とする二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムに関する。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、隠蔽性、表面光沢、低温ヒートシール性に優れ、且つ内部に微細な空孔を有する包装用フィルム等に好適な二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
二軸延伸ポリプロピレンフィルム(以下OPPフィルムと呼ぶことがある)は、その優れた透明性、機械的強度、剛性等を活かして包装材料をはじめ広い分野で使用されている。又、OPPフィルムの隠蔽性を改良するとともに、表面光沢性を付与する方法として、芯材となるポリプロピレンにナイロン等の有機質材料あるいはガラスビード等の無機質材料等の非相溶性材料を添加し、表面層は無添加のポリプロピレン層とした二軸延伸フィルム(特許文献1)、炭酸カルシウム等の無機微細粉末を含有する二軸延伸フィルム基材の少なくとも片面に、表面光沢度が80%以上の表面層を有する二軸延伸フィルム(特許文献2)等、多々提案されている。
しかしながら、かかる特許文献に記載された二軸延伸フィルムは、隠蔽製、表面光沢が十分でなく、また、低温ヒートシール性がないので、包装用フィルム等への使用には適しない場合があった。
【0003】
【特許文献1】
特公平3−24334号公報(特許請求の範囲、第10欄、実施例1)
【特許文献2】
特開2000−127303号公報(請求項1)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、隠蔽性、表面光沢、低温ヒートシール性に優れ、且つ内部に微細な空孔を有する包装用フィルム等に好適な二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムを開発することを目的とした。
【0005】
【課題を解決するための手段】
【発明の概要】
本発明は、プロピレン重合体(A)70〜95重量%、高級脂肪酸で表面処理された平均粒子径が1〜5μmの炭酸カルシウム(B)3〜15重量%及び酸化チタン(C)2〜15重量%からなるプロピレン重合体組成物から得られる二軸延伸フィルム基材層の片面に、プロピレン重合体(A)から得られる被覆層を介して(メタ)アクリル酸系重合体(F)層が積層され、他の片面にプロピレン・α―オレフィンランダム共重合体(D)から得られる熱融着性層が積層されてなることを特徴とする二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムである。
【0006】
【発明の具体的説明】
プロピレン重合体(A)
本発明に係るプロピレン重合体(A)は、一般にポリプロピレンの名称で製造・販売されているポリオレフィン樹脂で、通常、密度が0.890〜0.930g/cm、MFR(ASTM D1238 荷重2160g、温度230℃)が0.5〜60g/10分、好ましくは0.5〜10g/10分、更に好ましくは1〜5g/10分のプロピレンの単独重合体若しくはプロピレンと他の少量例えば、5モル%以下のα−オレフィン、例えばエチレン、ブテン、ヘキセン−1等とのランダム重合体である。又、これらプロピレン重合体(A)は1種あるいは2種以上の組成物、例えば分子量が異なるプロピレンの単独重合体の組成物、プロピレン単独重合体とプロピレン・α―オレフィンランダム共重合体との組成物であってもよい。これらの中でも、プロピレンの単独重合体、若しくは1モル%以下のランダム共重合体でアイソタクテシティの高い重合体が高剛性を有する二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムが得られるので好ましい。
本発明に係るプロピレン重合体(A)は、二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムの二軸延伸フィルム基材層及び被覆層の原料となる。
【0007】
本発明に係るプロピレン重合体(A)を、二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムの基材層あるいは被覆層に用いる際には、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料等の通常ポリオレフィンに用いる各種添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加しておいてもよい。
耐熱安定剤(酸化防止剤)としては、例えば、3,5―ジーt−ブチルー4−ヒドロキシトルエン、テトラキス[メチレン(3,5―ジーt―ブチルー4―ヒドロキシ)ヒドロシンナメート]メタン、n−オクタデシルー3−(4’―ヒドロキシー3,5−ジーt―ブチルフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)等のフェノール系酸化防止剤、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系酸化防止剤、2(2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、置換ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系酸化防止剤、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、フェニルサルチレート、4−t−ブチルフェニルサリチレート等が挙げられる。
帯電防止剤としては、例えば、アルキルアミンおよびその誘導体、高級アルコール、高級脂肪酸のグリセリンエステル類、ピリジン誘導体、硫酸化油、石鹸類、オレフィンの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル類、脂肪酸エチルスルフォン酸塩、アルキルスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、ナフタレンスルフォン酸塩、琥珀酸エステルスルフォン酸塩、リン酸エステル塩、多価アルコールの部分的脂肪酸エステル、脂肪アルコールのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸のエチレンオキサイド付加物、脂肪アミノまたは脂肪酸アミドのエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキサイド付加物、アルキルナフトールのエチレンオキサイド付加物、多価アルコールの部分的脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0008】
滑剤としては、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、高級アルコール、流動パラフィン等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えば、エチレン−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)5−クロロベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2、2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4オクトキシベンゾフェノン等が挙げられる。
また、プロピレン重合体(A)を、二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムの被覆層に用いる場合には、、ブロッキング防止剤を0.01〜3.0重量%、好ましくは0.05〜1.0重量%を添加しておくと、ブロッキング防止性を有する二軸延伸ポリプロピレン多層フィルムとすることができる。ブロッキング防止剤の量が0.01重量%未満では、得られる二軸延伸ポリプロピレン多層フィルムのブロッキング防止効果が充分でなく、一方、3.0重量%を越えると、得られる二軸延伸ポリプロピレン多層フィルムの表面が白化するとともに、表面の光沢が損なわれる傾向にある。かかるブロッキング防止剤としては、種々公知のもの、例えば、シリカ、タルク、雲母、ゼオライトや更には金属アルコキシドを焼成して得た金属酸化物等の無機化合物粒子、ポリメタクリル酸メチル、メラミンホルマリン樹脂、メラミン尿素樹脂、ポリエステル樹脂等の有機化合物粒子等を用い得る。これらの中でも、シリカ、ポリメタクリル酸メチルがアンチブロッキング性の面から特に好ましい。
【0009】
炭酸カルシウム(B)
本発明に係る炭酸カルシウム(B)は、その粒子表面が高級脂肪酸、好ましくは炭素原子数10〜28の高級脂肪酸で表面処理された平均粒子径が1〜5μm、好ましくは1.5〜4μmの範囲にある炭酸カルシウムである。かかる高級脂肪酸でその粒子表面が処理されていることにより、炭酸カルシウムの2次凝集による異物、フィッシュアイ等の発生を防止することができ、良好な外観を呈する二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムが得られる。
高級脂肪酸としては、具体的には、デカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸等の飽和高級脂肪酸[CH(CH)nCOOH、n=8〜26];オレイン酸(cis)、エライジン酸(trans)、セトレイン酸、エルカ酸(cis)、ブラシジン酸(trans)、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和高級脂肪酸などが挙げられる。これら中でも、飽和高級脂肪酸、特にステアリン酸が好ましい。
本発明に係る炭酸カルシウム(B)は、好ましくは、最大粒子径が、10μm以下、より好ましくは9μm以下である。
なお、粒子径は、超遠心式自動粒度分布測定装置(型式 CAPA−700、堀場製作所製)を用い遠心沈降による光透過測定方式にて測定した。
又、本発明に係る炭酸カルシウム(B)は、好ましくは粒子径が5μm以下の炭酸カルシウム粒子が、炭酸カルシウム全体の80重量%以上、好ましくは85重量%以上占める粒度分布を有する。このような粒度分布と平均粒子径とを有する炭酸カルシウムを用いると、炭酸カルシウム粒子によるボイドの大きさが均一となるため、むらのない白色光沢が得られる。
さらに、この炭酸カルシウム(B)は、よりむらのない白色を有するフィルム得るために、炭酸カルシウム(B)の水分が、0.5重量%以下であることが好ましい。かかる水分は、JIS K 5101に準じて測定した。
さらには、白色度は、90%以上の炭酸カルシウムが好ましい。
【0010】
酸化チタン(C)
本発明に係る酸化チタン(C)は、平均粒子径が0.1〜0.5μm、好ましくは0.2〜0.3μmの範囲にある。酸化チタンは、チタンホワイトとも呼ばれており、ルチル型とアナターゼ型があるが、ルチル型の方が、隠蔽力が大きいので好ましい。又、本発明の係る酸化チタン(C)は、その表面が、アルミナ処理されていることが好ましい。酸化チタンの表面を処理したものを使用することにより、得られる二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムの外観が改良される。さらには、チタンホワイトの白色度は、95%以上が好ましい。
【0011】
プロピレン・α―オレフィンランダム共重合体(D)
本発明に係るプロピレン・α―オレフィンランダム共重合体(D)は、好ましくは融点が80〜155℃、より好ましくは90〜145℃の範囲にあるプロピレンとのランダム共重合体であり、融点が155℃を越えるものは、得られる二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムの低温ヒートシール性、ラミネート強度が改良されない虞があり、一方、80℃未満のものは、得られる二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムの表面にべたが発生し、ブロッキングし易くなる傾向にある。又、かかるプロピレン・α−オレフィン共重合体(D)は、通常、α―オレフィン含有量が、1〜40モル%、好ましくは2〜35モル%の範囲にある。α―オレフィンの含有量がかかる範囲にあると、低温ヒートシール性、耐ブロッキング性等のバランスに優れた二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムが得られる。
プロピレンと共重合されるα―オレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル・1−ペンテン、1−オクテン等が例示できる。具体的な共重合体としては、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテンランダム共重合体、プロピレン・1−ブテンランダム共重合体等が挙げられる。これら共重合体は、単独で用いても良いし、二種以上を混合して用いても良い。
本発明に係るプロピレン・α―オレフィンランダム共重合体(D)は、二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムの熱融着性層の原料となる。
本発明に係るプロピレン・α―オレフィンランダム共重合体(D)を、二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムの熱融着性層に用いる際には、プロピレン重合体(A)で記述した耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料等の通常ポリオレフィンに用いる各種添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加しておいてもよい。
【0012】
1−ブテン・α―オレフィンランダム重合体(E)
本発明に係わる1−ブテン・α―オレフィン共重合体(E)は、好ましくは1−ブテン含有量が60〜99モル%、より好ましくは65〜96モル%、好ましくはDSCに基づく融点(Tm)が50〜130℃、より好ましくは60〜125℃、好ましくは135℃のデカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が0.5〜6dl/g、より好ましくは1〜5dl/g、好ましくはX線回折法によって測定した結晶化度が5〜60%、より好ましくは10〜58%の範囲にある1−ブテンとプロピレン、エチレン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等の炭素数が2〜10のα−オレフィンとのランダム共重合体、好ましくは1−ブテン・プロピレンランダム共重合体である。又、1−ブテン・α―オレフィン共重合体(E)のMFR(ASTM D−1238 荷重2160g
温度190℃)は、通常、0.2〜20g/10分、より好ましくは1〜20g/10分の範囲にある。
この1−ブテン・α―オレフィン共重合体(E)は、前記プロピレン・α―オレフィンランダム共重合体(D)に添加、好ましくは10〜40重量%、さらに好ましくは15〜30重量%添加添加することにより、得られる二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムの低温ヒートシール性、すなわちヒートシール開始温度を低温にシフトする効果がある。
1−ブテン・α―オレフィン共重合体(E)の量が40重量%を越えると得られる二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムにべたが発生し、ブロッキングし易くなる傾向なり、また、フィルム製造時にフィルムがロールに付着し成形が困難となる(成形性が劣る)場合がある。
本発明に係わる1−ブテン・α―オレフィン共重合体(E)は、前記プロピレン・α−オレフィン共重合体(D)とともに二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムの熱融着性層の原料となる。
【0013】
本発明に係わるプロピレン・α−オレフィン共重合体(D)および1−ブテン・α―オレフィン共重合体(E)の、融点(Tm)は以下の方法で測定した。プロピレン・α−オレフィン共重合体(D)あるいは1−ブテン・α―オレフィン共重合体(E)約5mgを秤量し、セイコ−電子工業株式会社製の示差走査熱量計(タイプDSC220モジュ−ル)を用いて、昇温速度;10℃/分で200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、降温速度;10℃/分で0℃まで冷却し、再度、昇温速度;10℃/分で0℃〜200℃まで昇温したときの融解曲線を測定し、かかる融解曲線から、ASTM D3419の方法に習い、融解曲線からピ−ク温度を融点(Tm)とした。
【0014】
(メタ)アクリル酸系重合体(F)
本発明に係る(メタ)アクリル酸系重合体(F)は、アクリル酸、メタアクリル酸の単独重合体若しくは共重合体、あるいは(メタ)アクリル酸とエチレンとの共重合体、及びその金属イオンアイオノマー等、(メタ)アクリル酸を含む単独重合体若しくは共重合体で熱融着性を有する重合体である。
これら(メタ)アクリル酸系重合体の中でも、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体の金属イオンアイオノマーが、得られる二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムの印刷適性、ヒートシール性に優れる点で特に好ましい。
かかるエチレン・(メタ)アクリル酸共重合体の金属イオンアイオノマーは、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体を周期表のIa,IIa,又はIIb族の少なくとも1種のある量の金属イオン、好ましくは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、カルシウム又は亜鉛イオンで中和、好ましくは60%以上、特に好ましくは70%以上であり、また金属イオンの総量が、金属イオンアイオノマー1kg当たり0.4〜4モル、とくに0.6〜2モルの範囲にあることが好ましい。中でも、カリウム、ナトリウム、ルビジウム、セシウムイオン、特にナトリウムイオンで中和したアイオノマーが、より帯電防止性ヒートシール性、表面光沢に優れた積層フィルムが得られるので好ましい。
【0015】
このような金属イオンアイオノマーとしては、例えばエチレン・(メタ)アクリルエステル共重合体をケン化することによっても製造することができる。またかかる金属イオンアイオノマーのMFR(190℃、2160g荷重)は、通常0.01〜1000g/10分、好ましくは0.1〜100g/10分の範囲にある。
【0016】
前記金属イオンアイオノマーのベースポリマーとなるエチレン・(メタ)アクリル共重合体は、エチレン及び(メタ)アクリル酸、及び任意に他の単量体成分を共重合したものであって、通常、エチレンが60〜90重量%、好ましくは70〜88重量%、(メタ)アクリル酸が10〜40重量%、好ましくは12〜30重量%、他の単量体成分が0〜30重量%、好ましくは0〜20重量%の割合でランダム共重合されているものである。またこのようなランダム共重合体とともに、エチレン含有量が上記のものより多く、したがって(メタ)アクリル酸含有量が上記のものより少ない同様のランダム共重合体を併用してもよい。
【0017】
プロピレン重合体組成物
本発明に係るプロピレン重合体組成物は、前記プロピレン重合体(A)70〜95重量%、好ましくは70〜90重量%、炭酸カルシウム(B)3〜15重量%、好ましくは5〜15重量%及び酸化チタン(C)2〜15重量%、好ましくは5〜15重量%からなる組成物である。
炭酸カルシウム(B)の量が3重量%未満では、得られる二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムの隠蔽性が改良されない虞があり、一方、15重量%を越えると、得られる二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムの外観が損なわれる虞がある。
酸化チタン(C)の量が2重量%未満では、得られる二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムの隠蔽性が改良されない虞があり、一方、15重量%を越えると、得られる二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムの外観が損なわれる虞がある。
本発明に係るプロピレン重合体組成物は、炭酸カルシウム(B)及び酸化チタン(C)が併用されることにより、隠蔽性、白色度及び外観に優れた二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムが得られるのであって、何れか一方を添加しない場合は、かかる特性に欠けたフィルムとなる。
本発明に係るプロピレン重合体組成物には、上記炭酸カルシウム(B)及び酸化チタン(C)に加えて、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料等の通常ポリオレフィンに用いる各種添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加しておいてもよい。
【0018】
二軸延伸多層ポリプロピレンフィルム
本発明の二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムは、前記プロピレン重合体組成物から得られる二軸延伸フィルム基材層の片面に、プロピレン重合体(A)から得られる被覆層を介して(メタ)アクリル酸系重合体(F)層(表面層)が積層され、他の片面にプロピレン・α―オレフィンランダム共重合体(D)から得られる熱融着性層が積層されてなる。
また、好ましくは被覆層である前記プロピレン系重合体(A)および熱融着層である前記プロピレン・α―オレフィンランダム共重合体(D)に夫々ブロッキング防止剤を含んでなる二軸延伸ポリプロピレン多層フィルムである。
本発明の二軸延伸ポリプロピレン多層フィルムの厚さは用途により種々決められるものであり特に限定はされないが、通常、基材層10〜100μm、好ましくは15〜50μmの範囲、被覆層が0.5〜15μm、好ましくは1〜10μmの範囲、(メタ)アクリル酸系重合体(F)層が0.1〜5μm、好ましくは0.5〜2μmの範囲にあり、熱融着性層が0.5〜15μm、好ましくは1〜10μmの範囲にある。
【0019】
本発明の二軸延伸ポリプロピレン多層フィルムは、種々公知の方法、例えば、基材層となるプロピレン重合体組成物、被覆層となるプロピレン重合体(A)及び必要に応じて1−ブテン・α―オレフィン共重合体(E)を添加してなるプロピレン・α―オレフィンランダム共重合体(D)とを共押出し成形して得た多層シートを、公知の同時二軸延伸法あるいは逐次二軸延伸法等の二軸延伸フィルム製造方法により得られる二軸延伸フィルムのプロピレン重合体(A)からなる被覆層上に(メタ)アクリル酸系重合体(F)を積層(被覆)することにより得られる。
【0020】
二軸延伸ポリプロピレンフィルムのプロピレン重合体(A)からなる被覆層上に(メタ)アクリル酸系重合体(F)を積層(被覆)する方法としては、二軸延伸されたフィルムのプロピレン重合体(A)からなる被覆層面に(メタ)アクリル酸系重合体(F)の水性分散液あるいは溶液を塗布する方法、基材層、被覆層及び熱融着性層からなる共押出し多層シートを縦方向に延伸し、被覆層となるプロピレン重合体(A)面をコロナ処理した後、(メタ)アクリル酸系重合体(F)の水性分散液あるいは溶液を塗布し、乾燥しながらあるいは乾燥した後横方向に延伸する方法が例示できる。(メタ)アクリル酸系重合体(F)の水性分散液の塗布方法としては、グラビアコート法、リバースコート法、ロールコート法、バーコート法、スプレーコート法、エアナイフコート法などの慣用の方法を採用でき、これらを適当に組み合わせて実施することも可能である。
【0021】
本発明に係る(メタ)アクリル酸系重合体(F)を水性分散液にして塗布する場合は、水性分散液における固形分の好ましい濃度は通常1〜30重量%であり、より好ましくは5〜25重量%である。水性分散液の固形分濃度が1%以下では一定の塗膜厚みを得るために厚塗りが必要で生産性が悪化する虞があり、また濡れ性も低下する。30%以上では粘度が高く、塗布ムラができる虞がある。分散媒体としては、コスト、作業環境面から水が好ましく用いられるが、水以外の溶媒、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、或いはその他ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等を必要に応じて、1種または2種以上を組み合わせて加えることも可能である。
本発明の二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムは必要に応じて片面あるいは両面をコロナ処理、火炎処理等の表面処理をしてもよい。
また、本発明の二軸延伸ポリプロピレン多層フィルムにガスバリアー性を付与するために、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリアミド、ポリエステル、塩化ビニリデン系重合体等を押出しコーティング等を積層してもよいし、金属あるいはその酸化物、シリカ等を蒸着してもよい。勿論、他の物質との接着性を増すために、延伸フィルムの表面をイミン、ウレタン等の接着剤でアンカー処理してもよいし、無水マレイン酸変性ポリオレフィンを積層してもよい。
【0022】
【発明の効果】
本発明の二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムは、内部に微細な空孔を有するので隠蔽性に優れ、被覆層として表面にプロピレン重合体(A)から得られる被覆層及び(メタ)アクリル酸系重合体(F)からなる表面層を有するので表面光沢に優れ、且つ両面が低温ヒートシール性があるので、優れた包装適性を有する。したがって、かかる特性を活かして、スナック、アイス等のお菓子包装、包装紙代替え等を始めあらゆる包装用材料に使用できる。
【0023】
【実施例】
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限りこれらの実施例に制約されるものではない。
【0024】
実施例及び比較例における物性値等は、以下の評価方法により求めた。
(評価方法)
1)隠蔽性[%/1枚]:二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムの隠蔽性は、Haze Meter(日本電色工業社製 NDH−300A)を使用して、フィルム1枚の光線透過率をJIS K 7105の試験を行うことにより測定した。
2)表面光沢度[%/1枚]:二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムの被覆層の表面光沢度をHaze Meter(日本電色工業社製 VGS−1D−300A)を使用して、入射角60°でJIS K 7105の試験を行うことにより測定した。
3)ヒートシール強度[N/15mm]:二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムの熱融着層面を重ね合わし、ヒートシールテスター(東洋精機社製)幅5mmのシールバーを用い、表記載の温度で圧力0.1MPa、0.5秒間の条件でヒートシールし室温にて放冷した。これを15mm幅に切り出し引張り試験機(東洋精機社製)を用い引張速度300mm/分でヒートシール部の剥離強度を測定しヒートシール強度とした。
4)密度[g/cm]:二軸延伸多層ポリプロピレンフィルム厚み及び1mあたりのフィルム重量を測定することにより算出した。
5)フィルム外観評価:目視判定にて評価した。○:成形した二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムの外観に問題がない=綺麗な外観を有する。×:成形した二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムの外観に問題がある=ブツやむらが多数発生している。
【0025】
実施例1
<基材層:プロピレン重合体組成物層>
プロピレン単独重合体(PP−1):融点:162℃、MFR:2.0g/10分に耐熱安定剤としてテトラキス[メチレンー3−(3’、5’―ジーt―ブチルー4’ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(日本チバガイキー社製品 製品名イルガノックス1010)1000ppm及びステアリン酸カルシウム(日本油脂製)1000ppmを加えた組成物、プロピレン単独重合体に予め、ステアリン酸でコーティングされた炭酸カルシウム粉末〔平均粒子径;1.9μm、最大粒子径;8μm以下、粒子径が5μm以下の粒子の量;94重量%、水分量;400ppm以下(カールフィッシャー法、200℃で測定)〕を混練して得た組成物、及びプロピレン単独重合体に予め、アルミナ処理されたルチル型酸化チタン〔平均粒子径;0.23μm、水分量;400ppm以下(カールフィッシャー法、200℃で測定)〕を混練した組成物を夫々ドライブレンドして、プロピレン単独重合体を90重量%、炭酸カルシウムを5重量%及び酸化チタンを5重量%含むプロピレン重合体組成物を用意した。
<熱融着層:プロピレン共重合体組成物層>
熱融着層を構成する重合体組成物として、プロピレン・エチレンランダム共重合体(PEC);エチレン含有量:2.2重量%、融点:139.3℃、MFR:7g/10分、ポリメチルメタクリレート粒子からなるアンチ・ブロッキング剤を0.10重量%、耐熱安定剤としてテトラキス[メチレンー3−(3’、5’―ジーt―ブチルー4’ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(日本チバガイキー社製品 製品名イルガノックス1010)1000ppm及びステアリン酸カルシウム(日本油脂製)1000ppmを加えたプロピレン共重合体組成物を用意した。
<被覆層:プロピレン系重合体組成物層>
被覆層を構成する重合体としてプロピレン単独重合体(PP−2);融点:162℃、MFR:2.4g/10分に、ポリメチルメタクリレート粒子からなるアンチ・ブロッキング剤を0.10重量%、耐熱安定剤としてテトラキス[メチレンー3−(3’、5’―ジーt―ブチルー4’ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(日本チバガイキー社製品 製品名イルガノックス1010)1000ppm及びステアリン酸カルシウム(日本油脂製)1000ppmを加えたプロピレン系重合体組成物を用意した。
<二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムの製造>
熱融着層としてプロピレン共重合体組成物、基材層としてプロピレン重合体組成物及び被覆層としてプロピレン系重合体組成物を用意し、熱融着層/基材層/被覆層の押出量比が1/10/1になるよう各々スクリュー押出機を用いて溶融押出しマルチマニホールドタイプT−ダイを用いて押出し、冷却ロール上にて急冷し厚さ約1.5mmの多層シートを得た。このシートを120℃で加熱しフィルムの流れ方向(縦方向)に5倍延伸した。この5倍延伸したシートの被覆層上にメタアクリル酸含有率15重量%、水酸化ナトリウム中和度54モル%のエチレン・メタアクリル酸共重合体のナトリウム塩(EMA―Na)の水性ディスパージョン(濃度20重量%)をグラビアロールにてコートし120℃で乾燥した。このシートを160℃で加熱し流れ方向に対して直交する方向(横方向)に10倍延伸して、基層の厚さ:25μm、熱融着層の厚さ:2.5μm、被覆層の厚さ:2.0μm及び表面層の厚さ:0.5μm(合計厚さ:30μm)の二軸延伸ポリプロピレン多層フィルムを得た。二軸延伸ポリプロピレン多層フィルムの表面層には、コロナ処理を施した。
かかる二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムの物性等を前記記載の方法で測定した。評価結果を表1に示す。
【0026】
実施例2
実施例1の熱融着層に用いたプロピレン共重合体組成物に代えて、PEC:80重量%及びブテン−1・プロピレンランダム共重合体(BPC);ブテン−1含有量:84重量%、融点:74℃、MFR4.0g/10分(190℃)20重量%とからなる組成物を用いる以外は実施例1と同様に行い二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムを得た。得られた二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムの評価結果を表1に示す。
【0027】
比較例1
実施例1の基材層で用いたプロピレン重合体組成物に代えて、プロピレン単独重合体を93.8重量%、炭酸カルシウムを1.2重量%及び酸化チタンを5重量%含むプロピレン重合体組成物を用いる以外は、実施例1と同様に行い二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムを得た。
評価結果を表1に示す。
【0028】
比較例2
実施例1の基材層で用いたプロピレン重合体組成物に代えて、プロピレン単独重合体を95重量%及び酸化チタンを5重量%含むプロピレン重合体組成物を用いる以外は、実施例1と同様に行い二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムを得た。
評価結果を表1に示す。
【0029】
比較例3
実施例1の基材層で用いたプロピレン重合体組成物に代えて、プロピレン単独重合体を95重量%及び炭酸カルシウムを5重量%含むプロピレン重合体組成物を用いる以外は、実施例1と同様に行い二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムを得た。
評価結果を表1に示す。
【0030】
比較例4
実施例1の基材層で用いた平均粒子径;1.9μmの炭酸カルシウムに代えて平均粒子径が0.8μmの炭酸カルシウムを用いる以外は、実施例1と同様に行い二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムを得た。
評価結果を表1に示す。
【0031】
【表1】
Figure 2005022301
【0032】
表1から明らかなように、炭酸カルシウムと酸化チタンとを所定量添加した基材層からなる二軸延伸多層ポリプロピレンフィルム(実施例1及び2)は隠蔽性に優れ、且つ表面光沢及びフィルム外観が良好なフィルムであるのに対し、炭酸カルシウムの添加量を少なくしたフィルム(比較例1)あるいは炭酸カルシウム及び酸化チタンの何れかを添加しない場合(比較例2及び比較例3)は、何れも隠蔽性に劣り、又、炭酸カルシウムの平均粒子径が小さいもの(比較例4)は、隠蔽性及びフィルム外観が劣り、何れも良好な二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムは得られない。

Claims (8)

  1. プロピレン重合体(A)70〜95重量%、高級脂肪酸で表面処理された平均粒子径が1〜5μmの炭酸カルシウム(B)3〜15重量%及び酸化チタン(C)2〜15重量%からなるプロピレン重合体組成物から得られる二軸延伸フィルム基材層の片面に、プロピレン重合体(A)から得られる被覆層を介して(メタ)アクリル酸系重合体(F)層が積層され、他の片面にプロピレン・α―オレフィンランダム共重合体(D)から得られる熱融着性層が積層されてなることを特徴とする二軸延伸多層ポリプロピレンフィルム。
  2. 炭酸カルシウム(B)が、最大粒子径が10μmであり、かつ粒子径が5μm以下の粒子が炭酸カルシウム全体の80重量%以上を占める炭酸カルシウムである請求項1記載の二軸延伸多層ポリプロピレンフィルム。
  3. 酸化チタン(C)が、アルミナで表面処理されてなる請求項1記載の二軸延伸多層ポリプロピレンフィルム。
  4. プロピレン重合体(A)が、プロピレン単独重合体である請求項1記載の二軸延伸多層ポリプロピレンフィルム。
  5. プロピレン・α―オレフィンランダム共重合体(D)が、1−ブテン・プロピレンランダム共重合体(E)を含んでなる請求項1記載の二軸延伸多層ポリプロピレンフィルム。
  6. (メタ)アクリル酸系重合体(F)が、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体の金属イオンアイオノマーである請求項1記載の二軸延伸多層ポリプロピレンフィルム。
  7. ニ軸延伸フィルム基材層、被覆層及び熱融着性層が共押出し成形されてなる請求項1記載の二軸延伸多層ポリプロピレンフィルム。
  8. (メタ)アクリル酸系重合体(F)層が、ニ軸延伸フィルム基材層、被覆層及び熱融着性層が共押出し成形されてなる多層シートを縦方向に延伸した後、被覆層上に積層された後、横方向に延伸されてなる請求項1記載の二軸延伸多層ポリプロピレンフィルム。
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