JP2004525885A - 診断用および治療用の精製c型肝炎ウイルスエンベロープタンパク質 - Google Patents
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Abstract
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、組換えタンパク質発現、組換えタンパク質の精製、合成ペプチド、HCV感染の診断、HCV感染に対する予防的処理の一般的な分野、および慢性肝炎を有する個体の処理の臨床的効率の予後/モニタリング、または天然疾患の予後/モニタリングに関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、C型肝炎ウイルスエンベロープタンパク質のための精製方法、診断における用途、本発明において記載された方法により精製されたHCVエンベロープタンパク質の診断、予防または治療における用途、疾患のモニタリングのためのアッセイにおける単一または特異的オリゴマー状E1および/またはE2および/またはE1/E2エンベロープタンパク質の用途、および/または疾患の診断、および/または疾患の処理に関する。本発明はまた、E1および/またはE2エンベロープタンパク質のエピトープおよびそれらに対するモノクローナル抗体、ならびに診断、予防または処理におけるそれらの用途にも関する。
【0003】
【発明の背景】
本発明に記載された方法にしたがって細胞ライセートから精製されたE2タンパク質は、患者血清の約95%と反応する。この反応性は、CHO細胞から分泌されたE2で得られた反応性と同様である(Spaeteら、1992)。しかし、E2の細胞内発現された形態は、高マンノース炭水化物モチーフを含有することから、ネイティブなウイルスエンベロープタンパク質とよりよく似ている可能性がある。一方、CHO細胞から分泌されたE2タンパク質は、ガラクトースおよびシアル酸糖モチーフでさらに修飾される。E2のアミノ末端側の半分をバキュロウイルス系で発現させた場合、いくつかの患者群の約13〜21%の血清しか検出されない(Inoueら、1992)。E. coliからのE2の発現の後、HCV血清の反応性はさらに低く、14(Yokosukaら、1992)〜17%(Mitaら、1992)の範囲であった。HCV血清の約75%(および慢性患者の95%)は、本発明の精製ワクシニア発現組換えE1タンパク質を用いて抗E1陽性であり、Koharaら(1992)およびHsuら(1993)の結果とはっきりした対比を成す。Koharaらはワクシニアウイルス発現E1タンパク質を用いて7〜23%の患者において抗E1抗体を検出し、一方、Hsuらはバキュロウイルス発現E1を用いて14/50(28%)しか検出しなかった。
【0004】
これらの結果は、ヒト患者血清とのエンベロープタンパク質の高い反応性を達成するためには、よい発現系のみでなく、よい精製プロトコールもまた必要であることを示す。これは、タンパク質の自然な折りたたみ(フォールディング)の保存を保証する適正な発現系および/または本発明の精製プロトコール、およびコンフォメーションを保存し、したがってHCVエンベロープタンパク質の反応性を保存し、夾雑タンパク質の排除を保証する本発明の精製プロトコールを用いて、得ることができる。診断スクリーニングアッセイに必要な精製HCVエンベロープタンパク質の量は、1年当たりグラム単位の範囲である。ワクチンの目的には、より高い量のエンベロープタンパク質が必要となる。したがって、ワクシニアウイルス系は、最良の発現構築体の選択および限られた増量のために使用されうるが、高マンノース炭水化物含有単一または特異的オリゴマー状エンベロープタンパク質の大量発現および精製はいくつかの酵母株から発現させた場合に達成されうる。たとえばB型肝炎の場合、哺乳動物細胞からのHBsAgの製造は酵母由来B型肝炎ワクチンと比較してはるかにコストが高いものであった。
【0005】
【本発明の目的】
組換えタンパク質が夾雑物を含まず凝集物の代わりに単一または特異的オリゴマー状組換えタンパク質として診断およびワクチン目的に直接使用可能な、組換えにより発現されたE1および/またはE2および/またはE1/E2タンパク質のための新規な精製方法を提供することは本発明の目的である。
【0006】
HCVのE1および/またはE2ドメイン由来のコンフォメーショナルエピトープを含む精製(単一または特異的オリゴマー状)組換えE1および/またはE2および/またはE1/E2糖タンパク質を含む組成物を提供することは本発明の別の目的である。
【0007】
E1および/またはE2および/またはE1/E2タンパク質を組換えにより発現させるための新規な組換えベクター構築体、ならびにこのベクター構築体で形質転換された宿主細胞を提供することは本発明のさらに別の目的である。
【0008】
組換えHCV E1および/またはE2および/またはE1/E2タンパク質を生産し精製する方法を提供することもまた、本発明の目的である。
【0009】
本発明の組換えHCV E1および/またはE2および/またはE1/E2タンパク質の診断および免疫原の用途を提供すること、ならびに本発明の組換えHCV E1および/またはE2および/またはE1/E2タンパク質のいずれかを含む診断用途のキット、ワクチンまたは治療薬を提供することもまた、本発明の目的である。
【0010】
HCV感染を受けた患者の処理(たとえばインターフェロンでの)に対する応答をモニタリングする/予見するための、E1、E2、および/またはE1/E2タンパク質、またはそれらの好適な部分の新規な用途を提供することは本発明のさらなる目的である。
【0011】
HCVスクリーニングおよび確認抗体試験における本発明の組換えE1、E2、および/またはE1/E2タンパク質の用途を提供することもまた、本発明の目的である。
【0012】
HCV感染の診断および抗体生成に使用しうるE1および/またはE2ペプチドを提供することもまた、本発明の目的である。このようなペプチドは、ヒトモノクローナル抗体を単離するためにも使用しうる。
【0013】
モノクローナル抗体、より具体的には、組換えタンパク質に含まれるコンフォメーショナルエピトープまたはペプチドに含まれる、E1および/またはE2エピトープと特異的に反応する、ヒトモノクローナル抗体またはヒト化されたマウスモノクローナル抗体を提供することもまた、本発明の目的である。
【0014】
慢性HCV感染の治療またはHCV抗原検出のための抗E1または抗E2モノクローナル抗体の可能な用途を提供することもまた、本発明の目的である。
【0015】
疾患の結果をモニタリング/予見するため、またはHCV感染を受けた患者の(たとえばインターフェロンでの)処理に対する応答をモニタリング/予見するためのキットを提供することもまた、本発明の目的である。
本発明のこれらのすべての目的は、以下に記載する態様によって満足されていると考えられる。
【0016】
定義
以下の定義は、本発明において用いられる異なる用語および表現を説明するために役立つ。
「C型肝炎ウイルス単一エンベロープタンパク質」という用語は、E1またはE2領域の少なくとも1つのHCVエピトープを定義するアミノ酸配列(および/またはアミノ酸アナログ)を含むポリペプチドまたはそのアナログ(たとえばミモトープ)を指す。この言葉の広い意味でのこれらの単一エンベロープタンパク質は、組換えにより発現されたエンベロープタンパク質のモノマー形態またはホモオリゴマー形態の両方でありうる。典型的には、エピトープを定義する配列は、HCVのE1またはE2領域のアミノ酸配列に相当する(同一、またはエピトープを破壊しないネイティブアミノ酸残基のアナログの置換のいずれかによる)。一般に、エピトープを定義する配列は、長さが3アミノ酸以上であり、より典型的には長さが5アミノ酸以上であり、さらに典型的には長さが8アミノ酸以上であり、さらにもっと典型的には長さが10アミノ酸以上である。コンフォメーショナルエピトープに関しては、エピトープを定義する配列の長さは広い変動があり得る。これは、これらのエピトープは抗原の三次元形体(たとえばフォールディング)によって形成されると信じられているためである。したがって、エピトープを定義するアミノ酸は比較的少数でありうるが、分子の長さに沿って広く分散し、フォールディングを介して正しいエピトープコンフォメーションがもたらされる。エピトープを定義する残基間の抗原の部分は、エピトープのコンフォメーションの構造に重要ではない可能性がある。たとえば、これらの介在配列の欠失または置換は、エピトープのコンフォメーションに重要な配列(たとえばジスルフィド結合に関与するシステイン、グリコシル化部位等)が維持されている場合は、コンフォメーショナルエピトープに影響しない可能性がある。コンフォメーショナルエピトープは、1つのホモオリゴマーまたはへテロオリゴマーの複数のサブユニットの2以上の必須領域によって形成されている可能性がある。
【0017】
本発明のHCV抗原は、HCVのE1および/またはE2(エンベロープ)ドメイン由来のコンフォメーショナルエピトープを含む。E1ドメインは、ウイルスエンベロープタンパク質に相当すると信じられており、現在HCVポリタンパク質のアミノ酸192〜383にわたると推定されている(Hijikataら、1991)。哺乳動物系における発現(グリコシル化される)の際、それはSDS−PAGEによって決定した場合35kDaのおよその分子量を有すると信じられている。E2タンパク質は、以前はNS1と呼ばれていたものであり、HCVポリタンパク質のアミノ酸384〜809または384〜746にわたると信じられており(Grakouiら、1993)、これもまたエンベロープタンパク質であると信じられている。ワクシニア系における発現(グリコシル化される)の際、それは約72kDaの見かけのゲル分子量を有すると信じられている。これらのタンパク質の終点は近似であることが理解されている(たとえばE2のカルボキシ末端は730〜820アミノ酸領域のどこかにあり得、たとえばアミノ酸730、735、740、742、744、745、好ましくは746、747、748、750、760、770、780、790、800、809、810、820で終わることがあり得る)。E2タンパク質は、E1、P7(アミノ酸747〜809)、NS2(アミノ酸810〜1026)、NS4A(アミノ酸1658〜1711)またはNS4B(アミノ酸1712〜1972)と共にも発現されうる。これらの他のHCVタンパク質と一緒での発現は、正しいタンパク質フォールディングを得るために重要であり得る。
【0018】
本発明の実施例の章において用いられる単離株は本発明の範囲を制限することを意図されておらず、タイプ1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または他のあらゆる新規なHCVゲノタイプ由来の任意のHCV単離株は本発明の実施のためのE1および/またはE2配列の好適な供給源であることもまた理解される。
【0019】
本発明において用いられるE1およびE2抗原は、全長ウイルスタンパク質、それらの実質的に全長のバージョン、またはそれらの機能的なフラグメント(たとえばエピトープの形成または保持に必須の配列を欠いていないフラグメント)であることができる。さらに、本発明のHCV抗原は、目的のコンフォメーショナルエピトープの形成を妨害または遮断しない他の配列を含むこともできる。コンフォメーショナルエピトープの存在または不存在は、抗体(ポリクローナル血清またはコンフォメーショナルエピトープに対するモノクローナル)を用いて目的の抗原をスクリーニングし、その反応性を、リニアエピトープのみを保持する(あるとすれば)その抗原の変性バージョンの反応性と比較することにより、容易に決定することができる。ポリクローナル抗体を用いたこのようなスクリーニングにおいて、まず変性抗原でポリクローナル血清を吸収し、それが目的の抗原に対する抗体を維持しているかどうか調べるのが有利である。
【0020】
本発明のHCV抗原は、目的のエピトープを提供するいかなる組換え方法によって作製することもできる。たとえば、哺乳動物または昆虫細胞における組換え体の細胞内発現は、天然のHCV抗原の場合のように「ネイティブな」コンフォメーションのグリコシル化されたE1および/またはE2抗原を提供する好ましい方法である。酵母細胞および突然変異体酵母株(たとえばmnn9突然変異体(Kniskernら、1994)またはバナジウム酸耐性選択法により誘導されたグリコシル化突然変異体(Ballouら、1991))は、分泌される高マンノースタイプ糖類の生産に理想的に適しており、一方、哺乳動物細胞から分泌されるタンパク質は、ガラクトースまたはシアル酸を含む修飾を有する可能性があり、これはある種の診断またはワクチンの適用については望ましくない可能性がある。しかし、タンパク質について知られているように、他の組換え宿主(E. coli等)において抗原を発現させ、回収後に元に戻すこともまた可能であり、ある適用については十分である可能性がある。
【0021】
「融合ポリペプチド」という用語は、ポリペプチド内でHCV抗原がアミノ酸の単一の連続鎖の一部であって、その鎖が天然には生じないポリペプチドを意図する。HCV抗原はペプチド結合によって直接連結されているか、または介在アミノ酸配列によって分離されていることができる。融合ポリペプチドは、HCVに対して外来性のアミノ酸配列を含んでいてもよい。
【0022】
「固相」という用語は、個々のHCV抗原またはHCV抗原を含む融合ポリペプチドが、共有結合により、または疎水性吸着のような非共有結合手段により結合される固体を意図する。
【0023】
「生物学的試料」という用語は、個体により産生された抗体、より具体的にはHCVに対する抗体を一般に含む、哺乳動物個体(たとえば類人猿またはヒト)の流体または組織を意図する。これらの流体または組織は、HCV抗原をも含んでいてもよい。このような成分は、当業界で公知であり、制限なしに、血液、血漿、血清、尿、脊髄液、リンパ液;呼吸器、腸もしくは生殖泌尿器管の分泌物;涙、唾液、乳汁、白血球細胞およびミエローマを含む。身体成分は、生物学的液体を含む。「生物学的液体」という用語は、生物から得られる流体を指す。ある生物学的流体は、凝固因子(たとえばVIII:C因子)、血清アルブミン、成長ホルモン等のような他の製品の供給源として使用される。このような場合においては、生物学的流体の供給源がHCVのようなウイルスによる汚染がないことは重要である。
【0024】
「免疫学的に反応性」という用語は、問題の抗原がHCV感染個体由来の身体成分に存在する抗HCV抗体と特異的に反応することを意味する。
【0025】
「免疫複合体」という用語は、抗原上のエピトープに抗体が結合した場合に形成される組み合わせを意図する。
【0026】
ここで用いられる「E1」は、HCVポリタンパク質の最初の400アミノ酸内で発現されるタンパク質またはポリペプチドを指し、場合によってはE,ENVまたはSタンパク質と呼ばれる。その天然の形態においては、35kDa糖タンパク質であり、膜に強く結合して見出される。ほとんどの天然HCV株において、E1タンパク質は、C(コア)タンパク質に続いてウイルスポリタンパク質中にコードされる。E1タンパク質は、全長ポリタンパク質のアミノ酸約192からアミノ酸約383まで広がる。
【0027】
ここで用いられる「E1」という用語は、天然のE1と免疫学的に交差反応性のアナログおよび短縮型をも含み、ゲノタイプ1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または任意の他の新規に同定されたHCVタイプまたはサブタイプのE1タンパク質を含む。
【0028】
ここで用いられる「E2」という用語は、HCVポリタンパク質の最初の900アミノ酸内で発現されるタンパク質またはポリペプチドを指し、場合によってはNS1タンパク質と呼ばれる。その天然の形態においては、これは72kDa糖タンパク質であり、膜に強く結合して見出される。ほとんどの天然のHCV株において、E2タンパク質は、E1タンパク質に続いてウイルスポリタンパク質内にコードされる。E2タンパク質は、アミノ酸位置約384からアミノ酸位置746まで広がり、別の形態のE2はアミノ酸位置809まで広がる。ここで用いられる「E2」という用語は、天然のE2と免疫学的に交差反応性のアナログおよび短縮型をも含む。たとえば、コドン383と384との間への複数コドンの挿入、ならびにアミノ酸384〜387の欠失が、Katoらによって報告されている(1992)。
【0029】
ここで用いられる「E1/E2」は、少なくとも1つのE1成分および少なくとも1つのE2成分を含むエンベロープタンパク質のオリゴマー形態を指す。
【0030】
「特異的オリゴマー(状)」E1および/またはE2および/またはE1/E2エンベロープタンパク質という用語は、凝集塊ではない、組換えにより発現されたE1および/またはE2エンベロープタンパク質のすべての可能なオリゴマー形態を指す。E1および/またはE2特異的オリゴマー状エンベロープタンパク質はまた、ホモオリゴマー状E1またはE2エンベロープタンパク質とも呼ばれる(以下を参照されたい)。
【0031】
「単一または特異的オリゴマー(状)」E1および/またはE2および/またはE1/E2エンベロープタンパク質という用語は、単一モノマー状E1またはE2タンパク質(この言葉の厳密な意味での単一)ならびに特異的オリゴマー状E1および/またはE2および/またはE1/E2組換え発現タンパク質を指す。本発明のこれらの単一または特異的オリゴマー状エンベロープタンパク質は、以下の式:(E1)x(E2)yによってさらに定義することができる(式中、xは0から100の間の数であることができ、yは0から100の間の数であることができるが、xおよびyは両方が0であることはない)。x=1かつy=0の場合、そのエンベロープタンパク質はモノマー状E1を含む。
【0032】
ここで用いられる「ホモオリゴマー」という用語は、2以上のE1またはE2モノマーを含むE1および/またはE2の複合体、たとえばE1/E1ダイマーを指す。E1/E1/E1トリマーまたはE1/E1/E1/E1テトラマーおよびE2/E2ダイマー、E2/E2/E2トリマーまたはE2/E2/E2/E2テトラマー、E1ペンタマーおよびヘキサマー、E2ペンタマーおよびヘキサマーまたはE1もしくはE2のあらゆる高次のホモオリゴマーは、この定義の範囲内ですべて「ホモオリゴマー」である。オリゴマーは、C型肝炎ウイルスの異なるタイプまたはサブタイプ由来の1、2、またはいくつかの異なるモノマーを含んでいてもよく、たとえばWO94/25601として公開された国際出願およびヨーロッパ出願第94870166.9号(いずれも本出願人によるもの)に記載されたものが挙げられる。このような混合オリゴマーは、本発明の範囲においてはなおホモオリゴマーであり、HCVのより普遍的な診断、予防または治療を可能にしうる。
【0033】
ここでタンパク質に関して用いられる「精製(された)」という用語は、所望のタンパク質が組成物中の総タンパク質成分の少なくとも35%を構成する組成物を指す。所望のタンパク質は、総タンパク質成分の、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約60%、さらにより好ましくは少なくとも約70%、なおさらに好ましくは少なくとも約80%、なおさらに好ましくは少なくとも約90%、そして最も好ましくは少なくとも約95%を構成する。組成物は、たとえば炭水化物、塩類、脂質、溶剤等の、他の成分を、ここで用いられる純度パーセンテージの決定に影響することなく含んでいてもよい。「単離された」HCVタンパク質は、少なくとも35%純粋なHCVタンパク質組成物を意図する。
【0034】
「実質的に精製されたタンパク質」という用語は、インビトロ診断法において、および治療化合物として、使用されうるように精製されたタンパク質を指す。これらのタンパク質は、実質的に細胞タンパク質、ベクター由来タンパク質または他のHCVウイルス成分を含まない。通常、これらのタンパク質は、均質(少なくとも80%純粋、好ましくは90%、より好ましくは95%、より好ましくは97%、より好ましくは98%、より好ましくは99%、さらにより好ましくは99.5%、そして最も好ましくは、夾雑タンパク質がSDS−PAGEおよび銀染色のような慣用法によって検出不能)になるまで精製されている。
【0035】
本発明の文脈において用いられる「組換えによって発現された」という用語は、本発明のタンパク質が、それが以下に詳しく述べるような原核生物においてであろうと、下等または高等真核生物においてであろうと、組換え発現法によって産生されたという事実を指す。
【0036】
「下等真核生物」という用語は、酵母、菌類等の宿主細胞を指す。下等真核生物は、一般に(必ずとは限らないが)単細胞である。好ましい真核生物は酵母であり、特にSaccharomyces, Schizosaccharomyces, Kluveromyces、Pichia(たとえばPichia pastoris), Hansenula(たとえばHansenula polymorpha), Yarowia, Schwaniomyces, Schizosaccharomyces, Zygosaccharomyces等に属する種のものである。Saccharomyces cerevisiae, S. carlsbergensisおよびK. lactisは、
最も一般的に使用される酵母宿主であり、好都合な菌類宿主である。
「原核生物」という用語は、E. coli、Lactobacillus、Lactococcus、Salmonella、Streptococcus, Bacillus subtilisまたはStreptomycesのような宿主を指す。これらの宿主もまた、本発明の範囲内で企図される。
【0037】
「高等真核生物」という用語は、哺乳動物、爬虫類、昆虫等の高等動物由来の宿主細胞を指す。現在好ましい高等真核生物宿主細胞は、チャイニーズハムスター(たとえばCHO)、サル(たとえばCOSおよびVero細胞)、ベビーハムスター腎(BHK)、ブタ腎(PK15)、ウサギ腎13細胞(RK13)、ヒト骨肉腫細胞株143B、ヒト細胞株HeLaおよびヒト肝ガン細胞株(たとえばHep G2)、および昆虫細胞株(たとえばSpodoptera fruqiperda)由来である。宿主細胞は、浮遊またはフラスコ培養、組織培養、器官培養等で提供されてもよい。あるいは、宿主細胞は、トランスジェニック動物であってもよい。
【0038】
「ポリペプチド」という用語は、アミノ酸のポリマーを指し、生成物の特定の長さを意味せず、したがって、ペプチド、オリゴペプチド、およびタンパク質はポリペプチドの定義に含まれる。この用語はまた、ポリペプチドの発現後修飾、たとえばグリコシル化、アセチル化、リン酸化等を意味したり、排除したりもしない。この定義に含まれるものとしては、たとえばアミノ酸の1以上のアナログ(たとえば非天然アミノ酸、PNA等を含む)を含むポリペプチド、置換された連結を有するポリペプチド、ならびに天然に生じるものおよび非天然のものの両方の、当業界で公知の他の修飾物がある。
【0039】
「組換えポリヌクレオチドまたは核酸」という用語は、ゲノム、cDNA、半合成または合成起源のポリヌクレオチドまたは核酸であって、その起源または操作の性質によって(1)天然に連結しているポリヌクレオチドの全部または一部と連結していない;(2)天然に連結しているもの以外のポリヌクレオチドと連結している;または(3)天然には生じないもの、を意図する。
【0040】
「組換え宿主細胞」、「宿主細胞」、「細胞」、「細胞株」、「細胞培養」および単細胞体として培養された高等真核生物細胞株または微生物を意味する他のそのような用語は、組換えベクターまたは他のトランスファーポリヌクレオチドのレシピエントとして用いられ得るまたは用いられた細胞を指し、トランスフェクションされた元の細胞の子孫を含む。天然の、偶発的な、または意図的な突然変異のため、単一の親細胞の子孫は、元の親と、ゲノムまたは総DNA相補性においてまたは形態学において、必ずしも完全に同一とは限らないことは理解される。
【0041】
「レプリコン」という用語は、任意の遺伝性要素、たとえばプラスミド、染色体、ウイルス、コスミド等であって、細胞内においてポリヌクレオチド複製の自律的単位として行動するもの、すなわちそれ自身の制御下において複製可能な任意の遺伝性要素である。
【0042】
「ベクター」という用語は、所望のオープンリーディングフレームの複製および/または発現を提供する配列をさらに含むレプリコンである。
【0043】
「制御配列」という用語は、それらに連結されているコード配列の発現を実現するのに必要なポリヌクレオチド配列を指す。このような制御配列の性質は、宿主生物によって異なる。原核生物においては、このような制御配列は一般にプロモーター、リボソーム結合部位および終結因子(ターミネーター)を含み、真核生物においては、一般に、このような制御配列は、プロモーター、ターミネーター、そしてある場合にはエンハンサーを含む。「制御配列」という用語は、最低限として、その存在が発現のために必要なすべての成分を含み、その存在が有利である付加的な成分、たとえば分泌を支配するリーダー配列をも含むことができる。
【0044】
「プロモーター」という用語は、隣接する構造遺伝子のために正常な転写開始部位でmRNA産生が始まるようにDNA鋳型へのRNAポリメラーゼの結合を可能にするコンセンサス配列を含むヌクレオチド配列である。
【0045】
「作動可能に連結された」という表現は、そのように記載された成分がその意図された方式で機能することを可能にする関係にある並置である。コード配列に「作動可能に連結された」制御配列は、制御配列と適合性の条件下でコード配列の発現が達成されるように連結されている。
【0046】
「オープンリーディングフレーム」(ORF)は、ポリペプチドをコードし、終止コドンを含まないポリヌクレオチド配列の領域である。この領域は、コード配列の部分または総コード配列を表す可能性がある。
【0047】
「コード配列」は、適切な調節配列の制御下におかれた場合、mRNAに転写され、および/またはポリペプチドに翻訳される、ポリヌクレオチド配列である。コード配列の境界は、5′末端の翻訳開始コドンおよび3′末端の翻訳終止コドンによって決定される。コード配列は、mRNA、DNA(cDNAを含む)、および組換えポリヌクレオチド配列を含むことができるが、これらに限らない。
【0048】
ここで用いられる場合、「エピトープ」または「抗原決定基」は、免疫反応性のアミノ酸配列を意味する。一般に、エピトープは少なくとも3〜4アミノ酸からなり、より通常は少なくとも5または6アミノ酸からなり、場合によってはエピトープは約7〜8個、さらには約10個のアミノ酸からなる。ここで用いられる場合、指定したポリペプチドのエピトープは、その指定したポリペプチド中のエピトープと同じアミノ酸配列を有するエピトープ、およびそれらの免疫学的等価物をいう。このような等価物はまた、株、サブタイプ(=ゲノタイプ)またはタイプ(グループ)特異的変異体、たとえばゲノタイプ1a,1b,1c,1d,1e,1f,2a,2b,2c,2d,2e,2f,2g,2h,2i,3a,3b,3c,3d,3e,3f,3g,4a,4b,4c,4d,4e,4f,4g,4h,4i,4j,4k,4l,5a,5b,6a,6b,6c,7a,7b,7c,8a,8b,9a,9b,10aまたはその他のあらゆる新規に定義されたHCV(サブ)タイプに属する現在公知の配列または株を含む。エピトープを構成するアミノ酸は、リニア配列の一部である必要はなく、任意の数のアミノ酸によって分断され、コンフォメーショナルエピトープを構成していてもよいことは理解される。
【0049】
「免疫原性(の)」という用語は、単独の場合またはキャリアに連結されている場合か、アジュバントの存在下でまたは不存在下で、にかかわらず、体液性および/または細胞性応答を起こすある物質の能力を指す。「中和」は、感染性因子の感染性を、部分的にまたは完全に、遮断する免疫応答を指す。「ワクチン」は、部分的か完全かにかかわらず、HCVに対する保護を誘起することができる免疫原性組成物である。ワクチンは、個体の処理にも有用であり、この場合、それは治療(用)ワクチンと呼ばれる。
【0050】
「治療薬」という用語は、HCV感染を処理することができる組成物を指す。
「有効量」という用語は、投与された個体において免疫原性応答を誘導するか、あるいはその意図された系(たとえばイムノアッセイ)において検出可能なように免疫反応するのに充分なエピトープ担持ポリペプチドの量を指す。好ましくは、有効量は、上記で定義されたように処理を実行するのに充分である。必要な正確な量は適用によって変化することになる。たとえば、ワクチン適用またはポリクローナル抗血清/抗体の作製については、有効量は、種、年齢、および個体の全体的な状態、処理すべき状態の重症度、選択された特定のポリペプチドおよびその投与モード等によって変化しうる。有効量は、比較的大きい、非臨界的範囲内に見出されることも信じられている。適切な有効量は、ルーチンの実験のみを用いて容易に決定することができる。HCV疾患の予防のためのE1および/またはE2および/またはE1/E2単一または特異的オリゴマー状エンベロープタンパク質の好ましい範囲は、0.01〜100μg/用量、好ましくは0.1〜50μg/用量である。充分な免疫応答およびその後のHCV疾患に対する予防を達成するためには、1個体当たりいくつかの用量が必要とされうる。
【0051】
発明の詳細な説明
より具体的には、本発明は、E1および/またはE2および/またはE1/E2からなる群より選択される組換えHCV単一または特異的オリゴマー状エンベロープタンパク質を単離または精製する方法であって、組換えにより発現されたタンパク質を単離するために形質転換された宿主細胞を溶解する際に、ジスルフィド結合切断剤を用いてジスルフィド結合切断または還元工程を行うことを特徴とする方法を企図する。
【0052】
本発明のこれらの「単一または特異的オリゴマー状」エンベロープタンパク質の本質は、それらが夾雑タンパク質を含まないこと、およびそれらが夾雑タンパク質とジスルフィド結合で連結されていないことである。
【0053】
本発明のタンパク質は、下等または高等真核生物細胞または原核生物において組換えにより発現される。本発明の組換えタンパク質は、好ましくはグリコシル化されており、高マンノースタイプ、ハイブリッド、または複合グリコシル化を含んでいることができる。好ましくは、これらのタンパク質は、実施例の章に詳細に述べられているように哺乳動物細胞から発現され、または同じく実施例の章に詳述されているように突然変異酵母株のような酵母において発現される。
【0054】
本発明のタンパク質は、ERまたはゴルジ装置のような、細胞の成分内で発現されるか、分泌されてもよい。しかし、好ましくは、本発明のタンパク質は高マンノースタイプのグリコシル化を有し、哺乳離細胞のERまたはゴルジ装置に保持されるか、酵母細胞内に保持されるもしくは酵母細胞から分泌され、好ましくはmnn9突然変異体のような酵母突然変異株(Kniskernら、1994)から、またはバナデート耐性によって選択された突然変異体から(Ballouら、1991)分泌される。
【0055】
HCVエンベロープタンパク質の発現に際し、本発明は、分子内または分子間ジスルフィド架橋に関与しないシステインの遊離チオール基のいくつかが宿主もしくは発現系由来(たとえばワクシニア)タンパク質または他のHCVエンベロープタンパク質(単一またはオリゴマー状)のシステインと反応し、非特異的分子間架橋を形成することを生じうる。これは、HCVタンパク質と夾雑タンパク質との「凝集塊」の形成をもたらす。WO92/08734において、「凝集塊」は精製後に生じることも示されているが、どのタンパク質相互作用が関与するかは記載されていなかった。WO92/08734特許出願においては、ワクシニアウイルス系を用いて発現された組換えE1/E2タンパク質は、凝集塊として部分的に精製され、70%の純度でしかないことが見出され、これらの精製凝集塊は診断、予防または治療目的には有用ではないものとなっていた。
したがって、本発明の主要な目的は、夾雑タンパク質からの単一または特異的オリゴマー状HCVエンベロープタンパク質の分離にあり、精製タンパク質(>95%純粋)を診断、予防および治療目的に用いることである。これらの目的に対して、本発明者らは、凝集したタンパク質複合体(「凝集塊」)はジスルフィド架橋および非共有結合性タンパク質−タンパク質相互作用に基づいて形成されることの証拠を提供することができた。本発明は、したがって、特異的条件下でジスルフィド結合を選択的に切断し、切断されたタンパク質を診断、予防および治療の適用に対して大きく干渉する夾雑タンパク質から分離する手段を提供する。遊離チオール基は、ジスルフィド架橋の再形成を防止するために(可逆的にまたは不可逆的に)ブロックしてもよく、または酸化して他のエンベロープタンパク質とオリゴマー形成するにまかせてもよい(ホモオリゴーの定義を参照されたい)。このようなタンパク質オリゴマーは、夾雑タンパク質のレベルが検出不可能であるので、本質的にWO92/08734およびWO94/01778に記載された「凝集塊」とは異なることは理解されるべきである。
【0056】
このようなジスルフィド結合切断は、以下のようにして達成してもよい:
(1)システイン酸(cysteic acid)による過蟻酸酸化(Mooreら、1963)、この場合システイン残基がシステイン酸に修飾される。
(2)たとえばCu2+のような適切な酸化剤と共に亜硫酸塩(SO2− 3)を用いることによる、スルフィトリシス(R−S−S−R − 2 R−SO3)、この場合、システインはS−スルホ−システインに修飾される(BaileyおよびCole、1959)。
(3)ジチオスレイトール(DDT)、β−メルカプトエタノール、システイン、グルタチオンレッド、ε−メルカプトエチルアミン、またはチオグリコール酸のようなメルカプタンによる還元、これらのうちDTTおよびβ−メルカプトエタノールが一般に用いられる(Cleland、1964)、この方法は水環境において実行でき、システインが修飾されないので、本発明の好ましい方法である。
(4)ホスフィン(たとえばBu3P)による還元(RueggおよびRudinger、1977)。
すべてのこれらの化合物は、こうして本発明にしたがってジスルフィド結合を切断する手段または薬剤としてみなされる。
【0057】
本発明のこのジスルフィド結合切断(または還元)工程は、好ましくは(部分的切断または還元条件下で行われる)部分的ジスルフィド結合切断(還元)工程である。
【0058】
本発明にしたがった好ましいジスルフィド結合切断または還元剤は、ジチオスレイトール(DTT)である。部分的還元は、低濃度のこのような還元剤を用いて得られ、すなわち、たとえばDTTについては、約0.1〜約50mM、好ましくは約0.1〜約20mM、好ましくは約0.5〜約10mM、好ましくは1mM超、2mM超もしくは5mM超、より好ましくは約1.5mM、約2.0mM、約2.5mM、約5mMもしくは約7.5mMの濃度範囲である。
【0059】
このようなジスルフィド結合切断工程は、発現されたタンパク質を壊すことができる(切断剤と組み合わせて、またはジスルフィド結合を切断する手段の一例として)好適な界面活性剤、たとえばデシルPEG、EMPIGEN−BB、NP−40、コール酸ナトリウム、Triton X−100、の存在下で行ってもよい。
【0060】
このような還元または切断工程(好ましくは部分的還元または切断工程)は、好ましくは界面活性剤の存在下で(界面活性剤を用いて)行う。本発明にしたがった好ましい界面活性剤は、Empigen−BBである。用いる界面活性剤の量は、Empigen−BBのような界面活性剤の好ましくは1〜10%、好ましくは3%超、より好ましくは約3.5%の範囲である。
【0061】
ジスルフィド結合切断を得る特に好ましい方法は、上記で詳述した古典的なジスルフィド結合切断剤と、界面活性剤(これも上記で詳述した)との組み合わせを用いる。実施例の章において企図されているように、低濃度のDTT(1.5〜7.5mM)と約3.5%のEmpigen−BBとの特定の組み合わせは、組換えにより発現されたE1およびE2タンパク質の精製のための特に好ましい還元剤および界面活性剤の組み合わせであることが示されている。ゲルろ過クロマトグラフィの際、この部分的還元は、おそらくダイマー状のE1タンパク質の生成と、イムノアッセイにおいて使用する際に偽反応性を引き起こす夾雑タンパク質からのこのE1タンパク質の分離とをもたらすことが示されている。
【0062】
しかし、当業界で公知のあらゆる還元剤と、システインをよりアクセス可能にする当業界で公知のあらゆる界面活性剤または他の手段との、他のあらゆる組み合わせもまた、その組み合わせが本発明において例示された好ましい組み合わせと同じジスルフィド架橋切断のゴールに到達する限りにおいて、本発明の範囲内であることは理解されるべきである。
【0063】
ジスルフィド結合を還元することを除いて、本発明に従ったジスルフィド結合切断手段は、以下のタイプの反応が起こることを可能にする当業界で公知の任意のジスルフィド架橋交換剤(有機またはタンパク質性である競合剤、たとえばCreighton、1988を参照されたい)を含んでいてもよい:
R1S−SR2 + R3SH−R1S−SR3 + R2SH
*R1、R2はタンパク質凝集塊の化合物である
*R3SHは競合剤(有機、タンパク質性)である
「ジスルフィド架橋交換剤」という用語は、ジスルフィド結合ブロッキング剤ならびにジスルフィド結合再形成剤を含むと解釈されるべきである。
【0064】
本発明は、上述のHCV単一または特異的オリゴマー状エンベロープタンパク質を単離または精製する方法であって、以下のリストから選択されるもののような当業界で公知の任意のSH基ブロッキングまたは結合試薬の使用をさらに含む方法にも関する:
− グルタチオン
− 5,5′−ジチオビス−(2−ニトロベンゼン酸)またはビス−(3−カルボキシ−4−ニトロフェニル)−ジスルフィド(DTNBまたはエルマン試薬)(Elmann、1959)
− N−エチルマレイミド(NEM;Beneschら、1956)
− N−(4−ジメチルアミノ−3,5−ジニトロフェニル)マレイミドまたはTuppyのマレイミド、これはタンパク質に色を与える
− P−クロロメルクリベンゾエート(Grassettiら、1969)
− 4−ビニルピリジン(FriedmanおよびKrull、1969)、酸加水分解による反応後に遊離されうる
− アクリロニトリル、酸加水分解による反応後に遊離されうる(WeilおよびSeibles、1961)
− NEM−ビオチン(たとえばSigma B1267から入手される)
− 2,2′−ジチオピリジン(GrassettiおよびMurray、1967)
− 4,4′−ジチオピリジン(GrassettiおよびMurray、1967)
− 6,6′−ジチオジニコチン酸(DTDNA;BrownおよびCunnigham、1970)
− 2,2′−ジチオビス−(5′−ニトロピリジン)(DTNP;米国特許第3597160号)または他のジチオビス(ヘテロ環型誘導体)化合物(GrassettiおよびMurray、1969)
【0065】
引用した出版物の調査により、しばしばスルフヒドリル基についての異なる試薬が同じタンパク質または酵素分子の異なる数のチオール基と反応することが示される。チオール基の反応性におけるこの変動は、分子の形および原子の周囲の基およびそれらの電荷のようなこれらの基の立体的環境、ならびに試薬分子またはイオンのサイズ、形および電荷によると結論することができる。頻繁に、ドデシル硫酸ナトリウム、尿素またはグアニジン塩酸のような適切な濃度の変性剤の存在は、タンパク質分子の充分なアンフォールディングを引き起こしてチオール基についての試薬のすべてへの等しいアクセスを可能にすることになる。変性剤の濃度を変化させることによって、アンフォールディングの程度は制御され得、このようにして反応性の程度の異なるチオール基が解明されうる。現在まで、報告された研究のほとんどは、p−クロロメルクリベンゾエート、N−エチルマレイミドおよびDTNBを用いて行われていたが、その他のより最近開発された試薬は同様に有用であると証明されうる。それらの異なる構造のため、実際、それらはチオール基の立体的環境における変化に対して異なって応答しうるようである。
【0066】
あるいは、遊離SH基の酸化を防止し、したがってE1およびE2(エンベロープ)タンパク質の組換え発現および精製の際の大きい分子間凝集塊の形成を防止するための低pH(好ましくはpH6未満)のような条件も、本発明の範囲内である。
【0067】
本発明にしたがった好ましいSH基ブロッキング試薬は、N−エチルマレイミド(NEM)である。このSH基ブロッキング試薬は、組換え宿主細胞の溶解の間および上述の部分的還元プロセスの後またはジスルフィド架橋を切断するための他の任意のプロセスの後に投与してもよい。このSH基ブロッキング試薬は、検出可能な標識を提供することができる任意の基および/または固体基材にこの組換えタンパク質を固定化することを補助する任意の基、たとえばビオチン化NEM、で修飾されていてもよい。
【0068】
システイン架橋を切断し、遊離システインをブロッキングする方法は、Darbre(1987)、MeansおよびFeeney(1971)、およびWong(1993)によっても記載されている。
【0069】
上で定義された本発明の単一または特異的オリゴマー状組換えE1および/またはE2および/またはE1/E2タンパク質を精製する方法は、さらに以下の工程を含むことを特徴とする:
− 組換えE1および/またはE2および/またはE1/E2発現宿主細胞を、好ましくはN−エチルマレイミド(NEM)のようなSH基ブロッキング剤、およびおそらくは好適な界面活性剤(好ましくはEmpigen−BB)の存在下で、溶解し、
− このHCVエンベロープタンパク質を、アフィニティ精製によって、たとえばレンチルレクチンクロマトグラフィのようなレクチンクロマトグラフィ、または抗E1および/または抗E2特異的モノクローナル交代を用いるイムノアフィニティクロマトグラフィによって回収し、続いて、
− DTTのようなジスルフィド結合切断剤を用いて、好ましくはNEMまたはビオチン−NEMのようなSH基ブロッキング剤の存在下で、ジスルフィド結合を切断または還元し、
− 還元されたHCV E1および/またはE2および/またはE1/E2エンベロープタンパク質を、たとえばゲルろ過(サイズ排除クロマトグラフィまたは分子ふるい)によって、場合により付加的なNi2+−IMACクロマトグラフィおよび脱塩工程にもよって、回収する。
【0070】
上述の回収工程は、当業者に公知の任意の好適な技術を用いても行うことができることは理解されるべきである。
【0071】
好ましいレクチンクロマトグラフィ系としては、実施例の章に説明されているようなGalanthus nivalisアグルチニン(GNA)クロマトグラフィ、またはLens culinansアグルチニン(LCA)(レンチル)レクチンクロマトグラフィが挙げられる。他の有用なレクチンとしては、高マンノースタイプの糖類を認識するもの、たとえばNarcissus pseudonarcissusアグルチニン(NPA)、Pisum sativum(アグルチニン(PSA)、またはAllium ursinumアグルチニン(AUA)が挙げられる。
【0072】
好ましくは、上記の方法は、上で詳述したように細胞内で産生された単一または特異的オリゴマー状HCVエンベロープタンパク質の精製のために使用可能である。
【0073】
分泌されたE1またはE2またはE1/E2オリゴマーについては、Ricinus communisアグルチニンI(RCA I)のようなレクチン結合複合糖類が好ましいレクチンである。
本発明は、より具体的には、上述の方法によって単離または精製されたことを特徴とする、E1および/またはE2および/またはE1/E2からなる群より選択される、実質的に精製された組換えHCV単一または特異的オリゴマー状エンベロープタンパク質を企図する。
【0074】
本発明は、より具体的にはワクシニアのような組換え哺乳動物細胞から発現された組換えエンベロープタンパク質の精製または単離に関する。
【0075】
本発明はまた、組換え酵母細胞から発現された組換えエンベロープタンパク質の精製または単離にも関する。
【0076】
本発明は、同様に組換え細菌(原核生物性)細胞から発現された組換えエンベロープタンパク質の精製または単離にも関する。
【0077】
本発明はまた、ベクター配列、適切な原核生物性、真核生物性またはウイルス性または合成プロモーター配列、続いて本発明の単一または特異的オリゴマー状E1および/またはE2および/またはE1/E2の発現を可能にするヌクレオチド配列、を含む組換えベクターをも企図する。
【0078】
特に、本発明は、ベクター配列、適切な原核生物性、真核生物性またはウイルス性または合成プロモーター配列、続いて本発明の単一E1またはE1の発現を可能にするヌクレオチド配列、を含む組換えベクターを企図する。
【0079】
特に、本発明は、ベクター配列、適切な原核生物性、真核生物性またはウイルス性または合成プロモーター配列、続いて本発明の単一E1またはE2の発現を可能にするヌクレオチド配列、を含む組換えベクターを企図する。
【0080】
ベクター配列に挿入された所望のE1および/またはE2配列をコードするHCV cDNAのセグメントは、シグナル配列に付着していてもよい。このシグナル配列は、非HCV材料由来のものであってもよく、たとえば哺乳動物細胞での発現のためのIgGまたは組織プラスミノーゲン活性化因子(tpa)リーダー配列、または酵母細胞での発現のためのα−メイティング因子配列であってもよいが、本発明にしたがった特に好ましい構築体は、E1およびE2タンパク質のそれぞれの開始点の前にHCVゲノム中で出現するシグナル配列を含む。ベクターに挿入された所望のE1および/またはE2配列をコードするHCV cDNAのセグメントは、たとえば実施例の章に説明されているような疎水性ドメインの、またはE2超可変性領域Iの、欠失を含んでいてもよい。
【0081】
より具体的には、本発明にしたがった組換えベクターは、HCV単一E1タンパク質の発現のための、アミノ酸位置1〜192の間の領域で始まり、HCVポリタンパク質の位置250〜400の間の領域で終わり、より好ましくは、位置250〜341の間の領域で終わり、さらにより好ましくは位置290〜341の間の領域で終わる、ポリタンパク質をコードするHCV cDNAセグメントを有する核酸を含む。最も好ましくは、本発明の組換えベクターは、HCV単一E1タンパク質の発現のための、位置117〜192の間の領域で始まり、位置263〜326の間の領域の任意の位置で終わる、HCVポリタンパク質の一部をコードするHCV cDNAセグメントを有する組換え核酸を含む。同じく本発明の範囲内にあるのは、最初の疎水性ドメインが欠失した形態(位置264〜293プラスまたはマイナス8アミノ酸)、または5′末端ATGコドンおよび3′末端終止コドンが付加された形態、またはXa因子切断部位および/または3〜10、好ましくは6個のヒスチジンコドンが付加された形態である。
【0082】
より具体的には、本発明にしたがった組換えベクターは、HCV単一E2タンパク質の発現のために、アミノ酸位置290〜406の間の領域で始まり、HCVポリタンパク質の位置600〜820の間の領域で終わり、より好ましくは位置322〜406の間の領域で始まり、さらにより好ましくは位置347〜406の間の領域で始まり、さらにより好ましくは位置364〜406の間の領域で始まる、ポリタンパク質をコードするHCV cDNAセグメントを有する核酸を含む。最も好ましくは、本発明の組換えベクターは、HCV単一E2タンパク質の発現のための、位置290〜406の間の領域で始まり、位置623、650、661、673、710、715、720、746または809の任意の位置で終わる、ポリタンパク質をコードするHCV cDNAセグメントを有する組換え核酸を含む。同じく本発明の範囲内にあるのは、5′末端ATGコドンおよび3′末端終止コドンを付加された形態、または付加されたXa因子切断部位および/または3〜10、好ましくは6個のヒスチジンコドンを有する形態である。
【0083】
多様なベクターが、本発明のHCV単一または特異的オリゴマー状エンベロープタンパク質の組換え発現を得るために使用され得る。酵母のような下等真核生物およびグリコシル化突然変異株は、典型的にはプラスミドで形質転換され、または組換えウイルスで形質転換される。ベクターは、独立して宿主内で複製してもよく、あるいは宿主細胞ゲノムに組み込まれてもよい。
【0084】
高等真核生物は、ベクターで形質転換されてもよく、あるいは組換えワクシニアウイルスのような組換えウイルスに感染されてもよい。ワクシニアウイルスへの外来性DNAの挿入のための技術およびベクターは当業界で周知であり、たとえば相同組換えが用いられる。多様なウイルスプロモーター配列、おそらくはターミネーター配列およびポリ(A)付加配列、おそらくはエンハンサー配列およびおそらくは増幅配列(これらはすべて哺乳動物の発現に必要である)は、当業界において入手可能である。ワクシニアは、宿主細胞タンパク質の発現を停止させるので、特に好ましい。ワクシニアはまた、生きた組換えワクシニアウイルスで免疫された細胞または個体においてHCVのE1およびE2タンパク質の発現を可能にするので、非常に好ましい。ヒトのワクチン接種のためには、アビポックスおよびAnkara改変ウイルス(AMV)が特に有用なベクターである。
【0085】
バキュロウイルスAutographa californica核多角体症ウイルス(AcNPV)由来の昆虫発現トランスファーベクターもまた公知であり、これは、ヘルパー非依存性ウイルス発現ベクターである。この系由来の発現ベクターは、通常、異種遺伝子の発現を駆動するために強いウイルスポリヘドリン遺伝子プロモーターを用いる。バキュロウイルスの所望の部位に異種DNAを導入する方法ならびに異なるベクターは、バキュロウイルス発現についての当業者には利用可能である。昆虫細胞によって認識される転写後修飾のための異なるシグナルもまた当業界で公知である。
【0086】
同じく本発明の範囲内にあるのは、精製組換え単一または特異的オリゴマー状HCV E1またはE2またはE1/E2タンパク質を産生する方法であって、この方法では、凝集塊の形成が防止されるように、凝集塊形成に関与するシステイン残基は核酸配列のレベルで他の残基によって置換される。このような突然変異E1および/またはE2タンパク質をコードする核酸を担持する組換えベクターによって発現された組換えタンパク質もまた、本発明の範囲内である。
【0087】
本発明はまた、組換えE1および/またはE2および/またはE1/E2タンパク質であって、それらのグリコシル化部位の少なくとも1つが除去されていることを特徴とし、その結果グリコシル化突然変異体と呼ばれるタンパク質にも関する。実施例の章で説明されるように、異なるグリコシル化突然変異体が、問題の患者についてHCV疾患を診断(スクリーニング、確認、予後診断等)し、防止するために望ましい可能性がある。たとえば、GLY4を欠くE2タンパク質グリコシル化突然変異体は、診断においてある種の血清の反応性を改良することが見出された。これらのグリコシル化突然変異体は、好ましくは本発明に開示された方法にしたがって精製される。本発明について同様に企図されるのは、このようなE1および/またはE2および/またはE1/E2グリコシル化突然変異体をコードする核酸インサートを担持する組換えベクター、ならびにこのような組換えベクターで形質転換された宿主細胞である。
【0088】
本発明はまた、本発明の一部を形成するポリヌクレオチドを含む組換えベクターにも関する。本発明は、より具体的には、配列番号3、5、7、9、11、13、21、23、25、27、29、31、35、37、39、41、43、45、47および49に表される組換え核酸、またはそれらの一部に関する。
【0089】
本発明はまた、上記で定義された組換えベクターで形質転換された宿主細胞を企図し、ここでは、上記のベクターは、上記で定義されたHCV E1および/またはE2および/またはE1/E2タンパク質をコードするヌクレオチド配列を、このHCV E1および/またはE2および/またはE1/E2配列に作動可能に連結され、このHCV E1および/またはE2および/またはE1/E2タンパク質の発現を調節することができる調節配列に加えて含む。
【0090】
真核生物宿主は、定義の章で記載されたように下等および高等真核生物宿主を含む。下等真核生物宿主は、当業界で周知の酵母細胞を含む。高等真核生物宿主は、主に当業界で公知の哺乳動物細胞株を含み、HeLa細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ベビーハムスター腎(BHK)細胞、PK15、RK13および多数の他の細胞株を含む、ATCCから入手可能な多数の不死化細胞株を含む。
【0091】
本発明は、特に、上記で定義された組換えベクターを含む上記で定義された宿主細胞によって発現された組換えE1および/またはE2および/またはE1/E2タンパク質に関する。これらの組換えタンパク質は、本発明の方法によって特に精製される。
【0092】
上記で定義されたHCVエンベロープタンパク質を精製または単離する好ましい方法は、少なくとも以下の工程を含むことをさらに特徴とする:
− 本発明の組換えベクターまたはE1および/またはE2および/またはE1/E2 HCVエンベロープタンパク質を発現する公知の組換えベクターで形質転換された上記で定義した宿主細胞を、好適な培地中で生育させる工程、
− 好適な条件下で上記で定義したこのベクター配列を発現させる工程、および
− この形質転換された宿主細胞を、好ましくはN−エチルマレイミド(NEM)のようなSH基ブロッキング剤(およびおそらくは好適な界面活性剤(好ましくはEmpigen−BB))の存在下で、溶解させる工程、
− このHCVエンベロープタンパク質を、レクチンクロマトグラフィまたは抗E1および/または抗E2特異的モノクローナル抗体を用いるイムノアフィニティクロマトグラフィ等によって(このレクチンは好ましくはレンチルレクチンまたはGNAである)アフィニティ精製することにより、回収する工程、続いて、
− 前記の工程の溶出液を、DTTのようなジスルフィド結合切断手段とともにインキュベーションし、好ましくは続いてNEMまたはビオチン−NEMのようなSH基ブロッキング剤とともにインキュベーションする工程、および
− HCV単一または特異的オリゴマー状E1および/またはE2および/またはE1/E2タンパク質を、ゲルろ過およびおそらくは後続のNi2+−IMACクロマトグラフィとその後の脱塩工程とのような手段によって、単離する工程。
【0093】
上述のプロセスの結果、E1および/またはE2および/またはE1/E2タンパク質は、実施例の章で説明されるようにゲルろ過カラムまたはIMACカラムのボイド容量中の細胞成分および/またはベクター由来成分を含む大きな凝集塊とは異なって溶出する形態で生成され得る。ジスルフィド架橋切断工程は、有利なことに、宿主および/または発現系由来タンパク質の存在による偽陽性をも排除する。細胞の溶解中のNEMおよび好適な界面活性剤の存在は、既に、HCVエンベロープタンパク質と夾雑物との凝集を、部分的にまたは完全に、防止し得る。
【0094】
Ni2+−IMACクロマトグラフィとその後の脱塩工程は、好ましくは、Janknechtら(1991)およびHochuliら(1988)によって記載されたような(His)6を担持する構築体について使用される。
【0095】
本発明は、本発明のHCV単一または特異的オリゴマー状エンベロープタンパク質を用いて、マウスまたはラットのような小動物においてモノクローナル抗体を生産する方法、ならびに抗HCV抗体を認識するヒトB細胞を単離およびスクリーニングする方法にも関する。
【0096】
本発明は、さらに表3に列挙された以下のE1ペプチドの少なくとも1つを含む組成物に関する:
コア/E1 V1領域のアミノ酸181〜200にわたるE1−31(配列番号56)、
E1領域のアミノ酸193〜212にわたるE1−33(配列番号57)、
E1 V2領域のアミノ酸205〜224にわたるE1−35(配列番号58)(エピトープB)、
E1 V2領域のアミノ酸208〜227にわたるE1−35A(配列番号59)(エピトープB)、
E1領域V1、C1、およびV2領域のアミノ酸192〜228にわたる1bE1(配列番号53)(エピトープBを含む)、
E1領域のアミノ酸301〜320にわたるE1−51(配列番号66)、
E1 C4領域のアミノ酸313〜332にわたるE1−53(配列番号67)(エピトープA)、
E1領域のアミノ酸325〜344にわたるE1−55(配列番号68)。
本発明は、表3に列挙された以下のE2ペプチドの少なくとも1つを含む組成物にも関する:
E2領域のアミノ酸位置397〜418にわたるEnv67またはE2−67(配列番号72)(エピトープA、モノクローナル抗体2F10H10によって認識される;図19参照)、
E2領域のアミノ酸位置409〜428にわたるEnv69またはE2−69(配列番号73)(エピトープA)、
E2領域の位置583〜602にわたるEnv23またはE2−23(配列番号86)(エピトープE)、
E2領域の位置595〜614にわたるEnv25またはE2−25(配列番号87)(エピトープE)、
E2領域の位置607〜626にわたるEnv27またはE2−27(配列番号88)(エピトープE)、
E2領域の位置547〜566にわたるEnv17BまたはE2−17B(配列番号83)(エピトープD)、
E2領域の位置523〜542にわたるEnv13BまたはE2−13B(配列番号82)(エピトープC;モノクローナル抗体16A6E7によって認識される、図19を参照されたい)。
本発明は、以下のE2コンフォメーショナルエピトープの少なくとも1つを含む組成物にも関する:
モノクローナル抗体15C8C1、12D11F1および8G10D1H9によって認識されるエピトープF、
モノクローナル抗体9G3E6によって認識されるエピトープG、
モノクローナル抗体10D3C4および4H6B2によって認識されるエピトープH(またはC)、
モノクローナル抗体17F2C2によって認識されるエピトープI。
【0097】
本発明はまた、ペプチドまたはタンパク質組成物で免疫して生成されたE1またはE2特異的抗体であって、この抗体は、上述のポリペプチドまたはペプチドのいずれかと特異的に反応性であって、この抗体は好ましくはモノクローナル抗体であるものにも関する。
【0098】
本発明はまた、当業界で公知の方法によって、ヒトB細胞集団から、またはプラスミドまたはファージ中の可変鎖ライブラリーからスクリーニングされたE1またはE2特異的抗体であって、この抗体は上記で定義されたポリペプチドまたはペプチドのいずれかと反応性であり、この抗体は好ましくはモノクローナル抗体であるものにも関する。
【0099】
本発明のE1またはE2特異的モノクローナル抗体は、一方では、上記で定義されたように、本発明のHCVポリペプチドまたはペプチドに対して免疫された動物の(特にマウスまたはラットの)脾臓細胞から、そして他方ではミエローマ細胞株の細胞から、古典的な方法によって形成され得、最初の動物の免疫のために使用されたポリペプチドを認識するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの能力によって選択されるべき任意のハイブリドーマによって作製することができる。
【0100】
本発明に包含される抗体は、酵素、蛍光または放射能タイプの適切な標識によって標識されることができる。
【0101】
本発明のこの好ましい態様にしたがったモノクローナル抗体は、H鎖およびL鎖をコードするcDNAまたはゲノムクローンからのH鎖およびL鎖をコードするマウスおよび/またはヒトゲノムDNA配列の部分から出発して、組換えDNA技術によって作製された、マウスモノクローナル抗体のヒト化バージョンであることができる。
【0102】
あるいは、本発明のこの好ましい態様に従ったモノクローナル抗体は、ヒトモノクローナル抗体であることができる。本発明のこの態様にしたがったこれらの抗体は、HCV感染した、またはHCVに対してワクチン接種された患者のヒト末梢血リンパ球由来であることもできる。このようなヒトモノクローナル抗体は、たとえば重症複合性免疫不全症(SCID)マウスのヒト末梢血リンパ球(PBL)リポピュレーションによって調製される(最近の総説については、Duchosalら、1992を参照されたい)。
【0103】
本発明は、レパートリークローニングの方法による組換え抗体の選択(Perssonら、1991)のための、本発明のタンパク質またはペプチドの用途にも関する。
【0104】
ある種のゲノタイプ由来のペプチドまたは単一もしくは特異的オリゴマー状エンベロープタンパク質に対する抗体は、医薬として、より具体的にはHCVゲノタイプの検出についてのイムノアッセイ中への取り込み(HCV E1またはE2抗原の存在の検出のための)用、HCV疾患の予後診断/モニタリング用、または治療剤として、使用することができる。
【0105】
あるいは、本発明は、生物学的試料中のE1またはE2抗原の存在を検出するためのイムノアッセイキットの調製用、HCV疾患の予後診断/モニタリングのためのキットの調製用、またはHCV医薬の調製用の、任意の上述のE1またはE2特異的モノクローナル抗体の用途にも関する。
【0106】
本発明はまた、少なくとも以下の工程を含む、生物学的試料中に存在するHCV抗原の検出またはインビトロ診断のための方法にも関する:
(i)前記生物学的試料を、上記で定義されたE1および/またはE2特異的モノクローナル抗体のいずれかと、好ましくは固定化形態で免疫複合体の形成を可能にする適切な条件下で接触させる工程、
(ii)結合していない成分を除去する工程、
(iii)分析すべき試料中に存在する抗体に特異的に結合する異種抗体と形成された免疫複合体を、適切な条件下で検出可能な標識とのコンジュゲートにされた上記異種抗体とインキュベートする工程、
(iv)上記免疫複合体の存在を、視覚的にまたは機械的に(たとえば分光計測、蛍光計測、比色計測によって)検出する工程。
本発明はまた、以下のものを含む生物学的試料中に存在するHCV抗原のインビトロ診断のためのキットにも関する:
− 上記で定義された少なくとも1つのモノクローナル抗体、この抗体は固体基材上に優先的に固定化される、
− 生物学的試料中に存在するHCV抗原とこれらの抗体との間の結合反応を可能にする緩衝液を作製するために必要な成分または緩衝液、
− 前の結合反応において形成された免疫複合体を検出するための手段、
− おそらくは観察された結合パターンから試料中に存在するHCV抗原を推測するための自動化されたスキャンおよび解釈装置をも含む。
【0107】
本発明は、本発明の方法に従って精製されたE1および/またはE2および/またはE1/E2組換えHCVタンパク質を含む組成物または医薬としての用途のために上記で特定された少なくとも1つのペプチドを含む組成物にも関する。
【0108】
本発明は、より具体的には、充分な量の組成物を、おそらくは医薬的に許容されうるアジュバントを伴って投与し、免疫応答を生じることを含む、哺乳動物(好ましくはヒト)をHCVに対して免疫するためのワクチンとしての用途のための、少なくとも1つの上記で特定したエンベロープペプチドを含む組成物または上記で定義された組換えエンベロープタンパク質組成物に関する。
【0109】
より具体的には、本発明は、上で記載されたワクチンの調製のための、ここで上に記載された任意の組成物の用途に関する。
【0110】
また、本発明は、上で記載されたE1および/またはE2領域由来のHCV単一または特異的オリゴマー状タンパク質またはペプチドを含む、哺乳動物(好ましくはヒト)をHCVに対して免疫するためのワクチン組成物にも関する。
【0111】
免疫原性組成物は、当業界で公知の方法に従って調製することができる。本発明の組成物は、免疫原性の量の上記の定義された組換えE1および/またはE2および/またはE1/E2単一または特異的オリゴマー状タンパク質または上記で定義されたE1またはE2ペプチドを、通常は医薬的に許容可能な、好ましくはアジュバントをさらに含むキャリアとの組み合わせで、含む。
【0112】
本発明の単一または特異的オリゴマー状エンベロープタンパク質、すなわちE1および/またはE2および/またはE1/E2は、E1またはE2に対する抗体の形成は他のエンベロープタンパク質に対するものよりも望ましい可能性があるので、そしてE2タンパク質はHCVタイプ間で交差反応性であり、E1タンパク質はタイプ特異的であるので、特に有用なワクチン抗原を提供すると期待される。いくつかのゲノタイプから由来するタイプ1のE2タンパク質およびE1タンパク質を含むカクテルは、特に有利であり得る。E2に対してE1のモル過剰またはE1に対してE2のモル過剰を含むカクテルもまた、特に有用であり得る。免疫原性組成物は、抗体の供給源を提供するため、または動物に保護免疫を誘導するため、動物に投与されて抗体の産生を誘導することができる。
【0113】
医薬的に許容可能なキャリアとしては、それ自身はその組成物を受容する個体に有害な抗体の産生を誘導しない、任意のキャリアが挙げられる。好適なキャリアは、典型的には、タンパク質、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、アミノ酸ポリマー、アミノ酸コポリマー;および不活性ウイルス粒子のような、大きい、ゆっくり代謝される巨大分子である。このようなキャリアは当業者には周知である。
【0114】
組成物の有効性を強化するために好ましいアジュバントとしては、水酸化アルミニウム(ミョウバン)、米国特許第4,606,918号に見出されるようなN−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(nor−MDP)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1′−2′−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリロキシ)−エチルアミン(MTP−PE)およびRIBI(これは細菌から抽出された3つの成分、モノホスホリル脂質A、トレハロースジミコレート、および細胞壁骨格(MPL+TDM+CWS)を2%スクワレン/Tween 80乳化液中に含む)が挙げられるが、これらに限らない。3つの成分MPL、TDMまたはCWSのいずれかを、単独で用いてもよく、あるいは2つずつ組み合わせてもよい。付加的に、Stimulon (Cambridge Bioscience, Worcester, MA)またはSAF−1(Syntex)のようなアジュバントを用いてもよい。さらに、フロイントの完全アジュバント(CFA)およびフロイント不完全アジュバント(IFA)を非ヒト適用および研究目的については使用してもよい。
【0115】
免疫原性組成物は、典型的には水、生理食塩水、グリセロール、エタノール等のような医薬的に許容可能な賦形薬を含有する。さらに、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質、保存剤等の補助剤を、このような賦形薬に含んでいてもよい。
【0116】
典型的には、免疫原性組成物は、液体溶液または懸濁液のいずれかとして注射可能に調製される。注射の前に液体賦形薬中に溶解または懸濁させるのに好適な固体形態もまた調製され得る。調製物は、強化されたアジュバント効果のために、乳化させるか、リポソーム中に封入してもよい。E1およびE2タンパク質は、サポニンとともに免疫刺激複合体中に取り込ませてもよい(たとえばQuil A(ISCOMS))。
ワクチンとして使用される免疫原性組成物は、「充分な量」または「免疫学的に有効な量」の本発明のエンベロープタンパク質を、必要に応じて上述の任意の他の成分とともに含む。「免疫学的に有効な量」は、単一用量またはシリーズの一部での、個体に対するその量の投与が、上記で定義されたように処理に有効であることを意味する。この量は、処理されるべき個体の健康および身体的状態、処理されるべき個体の分類学的グループ(たとえば非ヒト霊長類、霊長類等)、抗体を合成するための個体の免疫系の能力、望ましい保護の程度、ワクチンの処方、処理医師の医学的状態の評価、感染しているHCVの株、および他の関連要因に依存する。その量はルーチンの試験によって決定することができる比較的広い範囲内に入ることが期待される。通常、その量は、0.01〜1000μg/用量、より具体的には0.1〜100μg/用量まで変化する。
【0117】
単一または特異的オリゴマー状エンベロープタンパク質は、B型肝炎表面抗原と同じ様式で(ヨーロッパ特許出願174444を参照されたい)、本発明の同種(たとえばコア、NS2,NS3,NS4またはNS5領域由来のT細胞エピトープまたはB細胞エピトープ)または異種(非HCV)ハプテンについてのワクチンキャリアとしても役立ちうる。この用途においては、エンベロープタンパク質は、凝集塊にコンジュゲート化された抗原またはハプテンに対する免疫応答を刺激することができる免疫原性キャリアを提供する。抗原は、従来の化学的方法によってコンジュゲート化されていてもよく、またはタンパク質の親水性領域に相当する位置でE1および/またはE2をコードする遺伝子中にクローニングされていてもよい。このような親水性領域としては、V1領域(アミノ酸位置191〜202にわたる)、V2領域(アミノ酸位置213〜223にわたる)、V3領域(アミノ酸位置230〜242にわたる)、V4領域(アミノ酸位置230〜242にわたる)、V5領域(アミノ酸位置294〜303にわたる)、およびV6領域(アミノ酸位置329〜336にわたる)が挙げられる。ハプテンの挿入について有用な別の位置は、疎水性領域(アミノ酸位置約264〜293にわたる)である。本発明において、この領域を、欠失E1タンパク質の抗血清との反応性に影響することなしに欠失させ得ることが示されている。したがって、ハプテンは、欠失の部位に挿入してもよい。
【0118】
免疫原性組成物は、従来は非経口、たとえば典型的には皮下または筋内注射によって投与されている。他の投与方法について好適なさらなる製剤としては、経口製剤および坐剤が挙げられる。用量処理は単一用量スケジュールまたは複数用量スケジュールであることができる。ワクチンは、他の免疫調節剤と一緒に投与されてもよい。
【0119】
本発明は、生物学的試料に存在するHCV抗体のインビトロ検出のための、上述のペプチドまたはポリペプチドを含む組成物にも関する。
【0120】
本発明はまた、生物学的試料中に存在するHCV抗体を検出するためのイムノアッセイキットの製造のための上述の組成物の用途にも関する。
【0121】
本発明は、少なくとも以下の工程を含む、生物学的試料中に存在するHCV抗体のインビトロ診断の方法にも関する:
(i)前記生物学的試料を、上記で定義されたエンベロープペプチドまたはタンパク質のいずれかを含む組成物と、好ましくは固定化形態で免疫複合体の形成を可能にする適切な条件下で接触させる工程、ここでこれらのペプチドまたはタンパク質はストレプトアビジンまたはアビジン複合体によって固体基材に共有結合されているビオチニル化ペプチドまたはタンパク質であることができる、
(ii)結合していない成分を除去する工程、
(iii)形成された免疫複合体を、適切な条件下で検出可能な標識とのコンジュゲートにされた上記異種抗体とインキュベートする工程、
(iv)上記免疫複合体の存在を、視覚的にまたは機械的に(たとえば分光計測、蛍光計測、比色計測によって)検出する工程。
【0122】
また別に、本発明は、上で開示された組換えにより産生された単一または特異的オリゴマー状タンパク質E1および/またはE2および/またはE1/E2タンパク質が、生物学的試料中に存在するHCV抗体に関して競合するためにE1および/またはE2ペプチドとの組み合わせで用いられる競合イムノアッセイフォーマットにも関する。
【0123】
本発明はまた、以下のものを含む、生物学的試料中のHCV抗体の存在を決定するためのキットにも関する:
− おそらくはHCVまたはHCVの他のタイプ由来の他のポリペプチドまたはペプチドとの組み合わせでの、上で定義された少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質組成物、ここでこれらのペプチドまたはタンパク質は、固体基材上に、より好ましくは同じELISAプレートの異なるマイクロウェルに、そしてさらに優先的には同じ1つのメンブレンストリップに、優先的に固定化される、
− 生物学的試料中に存在するHCVに対する抗体とこれらのポリペプチドまたはペプチドとの間の結合反応を可能にする緩衝液を製造するのに必要な成分または緩衝液、
− 先の結合反応において形成された免疫複合体を検出する手段、
− おそらくは観察された結合パターンから試料中に存在するHCVゲノタイプを推測するための自動化スキャンニングおよび解釈装置をも含む。
【0124】
本発明のイムノアッセイ方法は、HCV感染した個体からの血清中の抗体によって認識されるコンフォメーショナルエピトープ(単一または特異的オリゴマー状タンパク質)およびリニア(ペプチドの場合)エピトープを維持する、E1および/またはE2ドメイン由来の単一または特異的オリゴマー状抗原を用いる。たとえば単一または特異的オリゴマー状抗原、ダイマー状抗原、ならびに単一または特異的オリゴマー状抗原の組み合わせを使用することは、本発明の範囲内である。本発明のHCV E1およびE2抗原は、抗体を検出するための公知の抗原を使用する本質的に任意のアッセイフォーマットにおいて使用され得る。もちろん、HCVコンフォメーショナルエピトープを変性させるフォーマットは回避または採用すべきである。これらのアッセイのすべての共通の特徴は、抗原を、HCV抗体を含有する疑いのある身体成分と、その成分中に存在するこのような任意の抗体に抗原が結合することを可能にする条件下で接触させることである。このような条件は、典型的には過剰の抗原を用いて生理学的な温度、pHおよびイオン強度である。検体と抗原とのインキュベーションに続いて抗原を含む免疫複合体の検出が行われる。
【0125】
イムノアッセイの設計は、広範な変更の対象であり、多くのフォーマットが当業界で公知である。たとえば、プロトコールは、固体支持体、または免疫沈降を用いることができる。ほとんどのアッセイは、標識抗体またはポリペプチドの使用を含む。標識は、たとえば、酵素的、蛍光性、化学発光性、放射性、または色素分子であることができる。免疫複合体からのシグナルを増幅するアッセイもまた公知である。それらの例としては、ビオチンおよびアビジンまたはストレプトアビジンを用いるアッセイ、およびELISAアッセイのような酵素標識および媒介性イムノアッセイがある。
【0126】
イムノアッセイは、制限なしに、異種または同種フォーマットであることができ、標準的または競合的タイプのものであることができる。異種フォーマットにおいては、ポリペプチドは、典型的には、インキュベーション後にポリペプチドからの試料の分離を容易にするために固体マトリックスまたは支持体に結合している。用いることができる固体支持体の例は、ニトロセルロース(たとえば、メンブレンまたはマイクロタイターウェル)、ポリビニルクロリド(たとえば、シートまたはマイクロタイターウェル)、ポリスチレンラテックス(たとえば、ビーズまたはマイクロタイタープレート)、フッ化ポリビニリデン(Immunolon(商標)として公知)、ジアゾ化紙、ナイロンメンブレン、活性化ビーズ、およびプロテインAビーズである。たとえば、Dynatech Immunolon(商標)1またはImmunlon(商標)2マイクロタイタープレートまたは0.25インチポリスチレンビーズ(Precision Plastic Ball)は、異種フォーマットにおいて使用することができる。抗原性ポリペプチドを含有する固体支持体は、典型的には試験試料からそれを分離した後、結合抗体の検出の前に、洗浄される。標準および競合フォーマットの両方が当業界で公知である。
【0127】
同種フォーマットにおいては、試験試料は溶液中の抗原の組み合わせとともにインキュベートされる。たとえば、形成されたあらゆる抗原−抗体複合体と一緒に沈降する条件下であろう。これらのアッセイについて標準的および競合的の両方のフォーマットが当業界で公知である。
【0128】
標準的フォーマットにおいて、抗体−抗原複合体中のHCV抗体の量は、直接モニタリングされる。これは、抗HCV抗体上のエピトープを認識する標識抗異種(たとえば抗ヒト)抗体が複合体形成のために結合するかどうかを決定することにより、達成されることができる。競合的フォーマットにおいては、試料中のHCV抗体の量は、複合体中の標識抗体(または他の競合リガンド)の既知の量の結合に対する競合的効果をモニタリングすることによって推定される。
【0129】
抗HCV抗体を含んで形成された複合体(または競合的アッセイの場合、競合抗体の量)は、フォーマットに応じて多数の公知の技術のいずれかによって検出される。たとえば、複合体中の非標識HCV抗体は、標識(たとえば酵素標識)との複合体を形成した抗異種Igのコンジュゲートを用いて検出することができる。
【0130】
免疫沈降または凝集アッセイフォーマットにおいては、HCV抗原と抗体との反応は、溶液または懸濁液から沈降するネットワークを形成し、沈降物の可視的な層またはフィルムを形成する。試験検体中に抗HCV抗体が存在しない場合、可視的沈降物は形成されない。
【0131】
現在、3つの特異的タイプの粒子凝集(PA)アッセイが存在する。これらのアッセイは、支持体にコーティングされると種々の抗原に対する抗体の検出のために用いられる。このアッセイの1つのタイプは、赤血球(RBC)に対し受動的に吸着する抗原(または抗体)によって感作された赤血球(RBC)を用いるヘマグルチネーションアッセイである。身体成分中に存在する特異的抗原抗体の添加(存在する場合)は、精製抗原でコーティングされたRBCの凝集を引き起こす。
【0132】
ヘマグルチネーションアッセイにおける潜在的な非特異的反応を排除するために、PAにおいてRBCの代わりに2つの人工的キャリアを用いることができる。これらの最も一般的なものは、ラテックス粒子である。しかし、ゼラチン粒子もまた使用することができる。これらのキャリアのいずれかを使用するアッセイは、精製抗原でコーティングされた粒子の受動的凝集に基づいている。
【0133】
コンフォメーショナルエピトープを含む本発明のHCV単一または特異的オリゴマー状E1および/またはE2および/またはE1/E2抗原は、典型的にはこれらのイムノアッセイにおける用途のためのキットの形態で包装されることになる。このキットは、通常は、ネイティブなHCV抗原、対照抗体製剤(陽性および/または陰性)、アッセイフォーマットが必要とする場合には標識抗体、および標識がシグナルを直接生成しない場合にはシグナル生成試薬(たとえば酵素基質)を、別個の容器内に含む。ネイティブHCV抗原は、固体マトリックスに既に結合されていてもよく、またはマトリックスに結合させるための試薬と別々であってもよい。アッセイを行うための指示書(たとえば書面、テープ、CD−ROM等)は、通常、キットに包含される。
【0134】
ネイティブHCV抗原を使用するイムノアッセイは、潜在的に感染性のHCVのない製品の製造のための血液のスクリーニングにおいて有用である。血液製品の製造の方法は、以下の工程を含む。個々の供血からの、身体成分、好ましくは血液または血液成分を、本発明のHCV E1および/またはE2タンパク質と反応させて、存在する場合のHCV抗体とHCV抗原との間の免疫学的反応を可能にする工程。抗HCV抗体−HCV抗原複合体が反応の結果として形成されたかどうかを検出する工程。血液製品に寄付される血液は、ネイティブHCV抗原、E1またはE2に対する抗体を示さないドナー由来である。
【0135】
HCV抗原に対する陽性の反応性の場合、イムノアッセイを繰り返して、偽陽性の確率を下げることが好ましい。たとえば、血液製品(たとえば輸血、血漿、第VIII因子、免疫グロブリン等)の製造のための血液の大規模スクリーニングの場合、「スクリーニング」試験は、典型的には、特異性を犠牲にして感度を増大させるように(汚染血液の通過がないことを確実にするため)フォーマットされる。すなわち、偽陽性率は増大する。したがって、「反復的に反応性」、すなわち供与された試料に対する2回以上のイムノアッセイの実行において陽性であるドナーを、さらにテストするためにのみ据え置くことが典型的である。しかし、HCV陽性の確認については、「確認」試験は、典型的には感度を犠牲にして特異性を増大させる(偽陽性試料が確認されないことを確実にするため)ようにフォーマットされる。したがって、本発明においてE1およびE2について記載された精製方法は、単一または特異的オリゴマー状エンベロープタンパク質をHCV診断アッセイに含ませるために非常に有利である。
【0136】
選択された固相は、ポリマー性またはガラスのビーズ、ニトロセルロース、微粒子、反応トレーのマイクロウェル、試験管および磁性ビーズを含むことができる。シグナル生成化合物は、酵素、発光性化合物、クロモゲン、放射性元素および化学発光性化合物を含むことができる。酵素の例としては、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、およびβ−ガラクトシダーゼが挙げられる。エンハンサー化合物の例としては、ビオチン、抗ビオチンおよびアビジンが挙げられる。エンハンサー化合物結合部材の例としては、ビオチン、抗ビオチンおよびアビジンが挙げられる。リューマチ因子様物質の影響をブロックするために、試験試料はリューマチ因子様物質の影響をブロックするのに充分な条件に供される。これらの条件は、試験試料を、ある量の抗ヒトIgGと接触させて混合物を形成させる工程、およびこの混合物を、実質的にリューマチ因子様物質を含まない反応混合物生成物が形成されるのに充分な時間および条件下でインキュベートする工程を含む。
【0137】
本発明は、以下の工程を含む、E1タンパク質、またはそれらの部分、より具体的には上で定義されたHCV単一または特異的オリゴマー状E1タンパク質、のHCV疾患のインビトロモニタリングまたはHCV感染を受けた患者の処理(たとえばインターフェロンでの)に対する応答の予後のための用途をさらに企図する:
− C型肝炎感染を有する患者由来の生物学的試料を、E1タンパク質またはその好適な部分とともに、免疫学的複合体の形成を可能にする条件下でインキュベートする工程、
− 非結合成分を除去する工程、
− 上記試料中に存在する抗E1タイターを算出する工程(たとえば治療の開始時および/または(インターフェロン)治療期間中)、
− HCV疾患の自然の経過をモニタリングする工程、または処理の開始時および/または処理の期間中の上記試料中に見出される抗E1タイターの量に基づいての上記患者の処理に対する応答の予後診断の工程。
【0138】
最初の抗E1タイターの2,3、4、5、7、10、15または好ましくは20倍を超える低減を示す患者は、HCV療法、より具体的にはインターフェロン療法に対する長期持続的応答者であると結論づけることができる。実施例の章において、抗E1アッセイがIFN処理、または一般にC型肝炎ウイルス疾患の処理に対する長期応答の予後診断のために、非常に有用であり得ることが説明されている。
【0139】
より具体的には、表3に列挙されている以下のE1ペプチドは、HCV疾患のインビトロモニタリングまたはHCV感染を受けた患者のインターフェロン処理に対する応答の予後診断のために有用であることが見出された:
コア/E1 V1領域のアミノ酸181〜200にわたるE1−31(配列番号56)、
E1領域のアミノ酸193〜212にわたるE1−33(配列番号57)、
E1 V2領域のアミノ酸205〜224にわたるE1−35(配列番号58)(エピトープB)、
E1 V2領域のアミノ酸208〜227にわたるE1−35A(配列番号59)(エピトープB)、
E1領域のアミノ酸192〜228にわたる1bE1(配列番号53)(V1、C1、およびV2領域(エピトープBを含む))、
E1領域のアミノ酸301〜320にわたるE1−51(配列番号66)、
E1 C4領域のアミノ酸313〜332にわたるE1−53(配列番号67)(エピトープA)、
E1領域のアミノ酸325〜344にわたるE1−55(配列番号68)。
【0140】
上述のペプチドのより小さいフラグメントもまた本発明の範囲内であることは理解されたい。上記のより小さいフラグメントは、化学合成によって容易に調製することができ、上述および実施例の章に詳述されているようにアッセイにおいて使用されるためのそれらの能力について試験されることができる。
【0141】
本発明は、以下のものを含む、HCV疾患のモニタリングまたはHCV感染を受けた患者の処理に対する(たとえばインターフェロンに対する)応答の予後のためのキットにも関する:
− 少なくとも1つのE1タンパク質またはE1ペプチド、より具体的には上記で定義されたE1タンパク質またはE1ペプチド、
− 生物学的試料中に存在する抗E1抗体とこれらのタンパク質またはペプチドとの間の結合反応を可能にする緩衝液を作製するために必要な成分または緩衝液、
− 先の結合反応において形成された免疫複合体を検出する手段、
− おそらくは、さらに、処理の進行の間の抗E1タイターの低減を推測するための自動化スキャンニングおよび解釈装置。
【0142】
本発明にしたがったE2タンパク質およびペプチドも、E1タンパク質またはペプチドについて上に示したようなHCV処理のモニタリング/予後のためにある程度使用され得ることは理解されたい。これは、抗E2レベルもまた、他のHCV抗原に対する抗体と比較して低減するためである。しかし、HCV疾患のモニタリング/予後についての試験における使用について好適なE2領域内のある種のエピトープを決定することも可能であろうことは理解されたい。
【0143】
本発明は、少なくとも以下の工程を含む、生物学的試料中に存在するHCVの1または2以上の血清学的タイプを検出するための、より具体的には1つのアッセイフォーマットにおいて一緒にされた検出されるべきHCVの異なるタイプの抗体を検出するための、セロタイプアッセイにも関する:
(i)1または2以上の血清学的タイプのHCV抗体の存在について分析すべき生物学的試料を、上で定義された少なくとも1つのE1および/またはE2および/またはE1/E2タンパク質組成物または少なくとも1つのE1またはE2ペプチド組成物と、優先的には固定化された形態で免疫複合体の形成を可能にする適切な条件下で接触させる工程、
(ii)非結合成分を除去する工程、
(iii)異種抗体と形成された免疫複合体をインキュベートする工程、ここで上記の異種抗体は適切な条件下で検出可能な標識とコンジュゲート化されている、
(iv)上記の免疫複合体の存在を視覚的にまたは機械的に(たとえば分光計測、蛍光計測、比色計測によって)検出し、観察された結合パターンから存在する1または2以上のHCV血清学的タイプの存在を推測する工程。
【0144】
この方法において使用されるタンパク質またはペプチドの組成物は、組換えによって発現されたタイプ特異的エンベロープタンパク質またはタイプ特異的ペプチドであることは理解されたい。
【0145】
本発明は、さらに、以下のものを含む、生物学的試料中に存在するHCVの1または2以上の血清学的タイプをセロタイピングするための、より具体的にはこれらの血清学的タイプのHCVに対する抗体を検出するための、キットにも関する:
− 上で定義された、少なくとも1つのE1および/またはE2および/またはE1/E2タンパク質またはE1もしくはE2ペプチド、
− 生物学的試料中に存在する抗E1抗体とこれらのタンパク質またはペプチドとの間の結合反応を可能にする緩衝液を作製するために必要な成分または緩衝液、
− 先の結合反応において形成された免疫複合体を検出する手段、
− おそらくは、観察された結合パターンから存在する1または2以上の血清学的タイプの存在を検出するための自動化されたスキャンニングおよび解釈装置。
【0146】
本発明は、固体基材上への固定化および逆相ハイブリダイゼーションアッセイ中への取り込みのための、好ましくはメンブレンストリップのような固体支持体上への平行線としての固定化のための、上で定義された方法にしたがったHCVのゲノタイプまたは存在を決定するための、上で定義されたペプチドまたはタンパク質組成物の用途にも関する。他のHCVポリタンパク質領域由来の他のタイプ特異的抗原との組み合わせもまた本発明の範囲内にある。
【0147】
本発明は、組換えプロセスによって産生されたE1および/またはE2および/またはE1/E2タンパク質から選択される組換えHCV単一または特異的オリゴマー状エンベロープタンパク質を精製する方法であって、上記タンパク質をジスルフィド結合切断または還元剤と接触させる工程を含む方法を提供する。本発明の方法の接触工程は、部分的切断または還元条件下で行ってもよい。好ましくは、ジスルフィド結合切断剤は、ジチオスレイトール(DTT)であり、好ましくは0.1〜50mM、好ましくは0.1〜20mM、より好ましくは0.5〜10mMの範囲内のものである。あるいは、ジスルフィド結合切断剤は、Empigen−BB(これは主成分としてN−ドセシル−N,N−ジメチルグリシンを含有する混合物である)のような界面活性剤であってもよく、好ましくは1〜10%の濃度、より好ましくは3.5%の濃度のものである。界面活性剤、ジスルフィド結合切断剤および/または還元剤の混合物もまた使用することができる。1つの態様においては、ジスルフィド結合再形成は、N−エチルマレイミド(NEM)またはその誘導体のようなSH基ブロッキング剤で防止される。好ましい態様においては、ジスルフィド結合再形成は、低pH条件の使用によってブロックされる。
【0148】
本発明は、以下の工程をさらに含む、ここで記載された方法を提供する:組換えE1および/またはE2および/またはE1/E2発現宿主細胞を、場合によってはN−エチルマレイミド(NEM)のようなSHブロッキング剤の存在下で、溶解させる工程;レンチルレクチンクロマトグラフィのようなレクチンクロマトグラフィ、または抗E1および/または抗E2特異的モノクローナル抗体を用いるイムノアフィニティ手段のようなアフィニティ精製によって、上記HCVエンベロープタンパク質を回収する工程;DTTのようなジスルフィド結合切断剤で、好ましくはNEMまたはビオチン−NEMのようなSHブロッキング剤の存在下で、ジスルフィド結合を還元または切断する工程;およびゲルろ過と、場合によっては付加的に後続のNi−IMACクロマトグラフィおよび脱塩工程とによって、還元されたE1および/またはE2および/またはE1/E2エンベロープタンパク質を回収する工程。
【0149】
本発明は、好ましくはここで記載された方法から単離された、E1および/またはE2および/またはE1/E2から選択される、実質的に単離されたおよび/または精製された、および/または単離されたおよび/または精製された組換えHCV単一または特異的オリゴマー状組換えエンベロープタンパク質を含有する、組成物を提供する。好ましい態様においては、本発明の組換えHCVエンベロープタンパク質は、ワクシニアのような組換え哺乳動物細胞、組換え酵母細胞において発現されたものである。
【0150】
本発明は、ベクター配列;原核、真核またはウイルスプロモーター配列;および単一または特異的オリゴマー状E1および/またはE2および/またはE1/E2タンパク質の発現を可能にするヌクレオチド配列を、作動可能な組み合わせで含む、組換えベクターを提供する。1つの態様においては、ベクターのヌクレオチド配列は、アミノ酸位置1〜192の間の領域で始まってアミノ酸位置250〜400の間の領域で終わる、より具体的には位置250〜341の間の領域で終わる、さらに好ましくは位置290〜341の間の領域で終わる、単一HCV E1タンパク質をコードする。別の態様においては、ベクターのヌクレオチド配列は、アミノ酸位置117〜192の間の領域で始まってアミノ酸位置263〜400の間の領域で終わる、より具体的には位置250〜326の間の領域で終わる、単一HCV E1タンパク質をコードする。さらに別の態様においては、ベクターのヌクレオチド配列は、位置264〜293プラスまたはマイナス8アミノ酸の間の最初の疎水性ドメインの欠失を有する単一のHCV E1タンパク質をコードする。さらなる態様においては、ベクターのヌクレオチド配列は、アミノ酸位置290〜406の間の領域で始まり、アミノ酸位置600〜820の間の領域で終わる、より具体的には位置322〜406の間の領域で始まり、さらにより好ましくは位置347〜406の間の領域で始まり、もっとも好ましくは位置364〜406の間の領域で始まり;かつ好ましくはアミノ酸位置623,650,661,673,710,715,720,746または809のいずれかで終わる、単一HCV E2タンパク質をコードする。本発明のベクターは、1つの態様においては、ヌクレオチド配列に作動可能に連結された5′末端ATGコドンおよび3′末端終止コドンを含む。ベクターは、1つの態様においては、さらに、Xa因子切断部位に、および/またはコード領域の3′末端に付加された3〜10、好ましくは6個のヒスチジンコドンをさらに含むヌクレオチド配列を含む。本発明のベクターは、場合によっては、E1またはE2タンパク質中に存在するグリコシル化部位の少なくとも1つが核酸レベルで除去されているヌクレオチド配列を含む。
【0151】
本発明は、配列番号3,5,7,9,11,13,21,23,25,27,29,31,35,37,39,41,43,45,47および49、またはそれらの部分のいずれかを含む核酸を提供する。本発明のベクターは、好ましくは配列番号3,5,7,9,11,13,21,23,25,27,29,31,35,37,39,41,43,45,47および49、またはそれらの部分のいずれかを含有する核酸を含むヌクレオチド配列を含んでいることができる。
【0152】
本発明の組成物は、ここで記載されたベクターの発現生成物である、または発現された、組換えHCVエンベロープタンパク質をさらに含む。
【0153】
本発明は、ベクターが、ここで記載されたHCV E1および/またはE2および/またはE1/E2タンパク質をコードするヌクレオチド配列を、宿主細胞において作動可能でありHCV E1および/またはE2および/またはE1/E2タンパク質の発現を調節することができる調節配列に加えて含む、ここで記載された少なくとも1つの組換えベクターで形質転換された宿主細胞を提供する。さらに、本発明は、本発明の宿主細胞によって発現された組換えE1および/またはE2および/またはE1/E2タンパク質を提供する。
【0154】
本発明は、ここで記載され、以下の工程を含む方法をさらに提供する:ここで記載された組換えベクターで形質転換されたここで記載された宿主細胞を、好適な培地中で生育させる工程;好適な条件下で、ここで記載されたベクターのベクターヌクレオチド配列の発現を引き起こす工程;形質転換された細胞を、好ましくはN−エチルマレイミド(NEM)のようなSH基ブロッキング剤の存在下で、溶解させる工程;たとえばレクチンクロマトグラフィ(上記レクチンクロマトグラフィは好ましくはレンチルレクチンである)、または抗E1および/または抗E2特異的モノクローナル抗体を用いるイムノアフィニティクロマトグラフィのようなアフィニティ精製と、続いての、好ましくはこれもNEMまたはビオチン−NEMのようなSH基ブロッキング剤の存在下での、先の工程の溶出液の、DTTのようなジスルフィド結合切断剤とのインキュベーションとによって、HCVエンベロープタンパク質を回収する工程;およびHCV単一または特異的オリゴマー状E1および/またはE2および/またはE1/E2タンパク質を、ゲルろ過によって、おそらくは付加的なNi2+−IMACクロマトグラフィおよび脱塩工程の手段にもよって、単離する工程。
【0155】
本発明は、以下のE1および/またはE2ペプチドの少なくとも1つを含む組成物を提供する:
コア/E1 V1領域のアミノ酸181〜200にわたるE1−31(配列番号56)、
E1領域のアミノ酸193〜212にわたるE1−33(配列番号57)、
E1 V2領域のアミノ酸205〜224にわたるE1−35(配列番号58)(エピトープB)、
E1 V2領域のアミノ酸208〜227にわたるE1−35A(配列番号59)(エピトープB)、
E1領域のアミノ酸192〜228にわたる1bE1(配列番号53)(V1、C1、およびV2領域(エピトープBを含む))、
E1領域のアミノ酸301〜320にわたるE1−51(配列番号66)、
E1 C4領域のアミノ酸313〜332にわたるE1−53(配列番号67)(エピトープA)、
E1領域のアミノ酸325〜344にわたるE1−55(配列番号68)、
E2領域のアミノ酸位置397〜418にわたるEnv67またはE2−67(配列番号72)(エピトープA)、
E2領域のアミノ酸位置409〜428にわたるEnv69またはE2−69(配列番号73)(エピトープA)、
E2領域の位置583〜602にわたるEnv23またはE2−23(配列番号86)(エピトープE)、
E2領域の位置595〜614にわたるEnv25またはE2−25(配列番号87)(エピトープE)、
E2領域の位置607〜626にわたるEnv27またはE2−27(配列番号88)(エピトープE)、
E2領域の位置547〜566にわたるEnv17BまたはE2−17B(配列番号83)(エピトープD)、
E2領域の位置523〜542にわたるEnv13BまたはE2−13B(配列番号82)(エピトープC)。
【0156】
本発明は、以下のE2コンフォメーショナルエピトープの少なくとも1つを含む組成物を提供する:
モノクローナル抗体15C8C1,12D11F1,および8G10D1H9によって認識されるエピトープF、
モノクローナル抗体9G3E6によって認識されるエピトープG,
モノクローナル抗体10D3C4および4H6B2によって認識されるエピトープH(またはC)、
モノクローナル抗体17F2C2によって認識されるエピトープI。
【0157】
本発明は、ここで記載された組成物で免疫した際に生成されるE1および/またはE2特異的モノクローナル抗体を提供する。本発明の抗体は、たとえば医薬剤として、HCV E1またはE2抗原の存在を検出するためのイムノアッセイキットへの取り込み用、疾患の予後/モニタリング用またはHCV治療用に、使用することができる。本発明は、HCV E1またはE2抗原を検出するためのイムノアッセイキットの製造用、HCV疾患の予後/モニタリングのためのキットの製造用、またはHCV医薬剤の製造用の、ここで記載されたE1および/またはE2特異的モノクローナル抗体の用途を提供する。
【0158】
本発明は、少なくとも以下の工程を含む、生物学的試料中に存在するHCV抗原のインビトロ診断の方法を提供する:
(i)上記生物学的試料を、ここで記載されたE1および/またはE2特異的モノクローナル抗体と、好ましくは固定化された形態で免疫複合体の形成を可能にする適切な条件下で接触させる工程、
(ii)非結合成分を除去する工程、
(iii)異種抗体と形成された免疫複合体をインキュベートする工程、ここで異種抗体は適切な条件下で検出可能な標識とコンジュゲート化されている、
(iv)免疫複合体の存在を、視覚的にまたは機械的に検出する工程。
【0159】
本発明は、少なくとも以下のものを含む、生物学的試料中に存在するHCV抗原の存在を決定するためのキットを提供する:好ましくは固体基材上に固定化された形態の、少なくとも1つのここで記載されたE1および/またはE2特異的モノクローナル抗体、生物学的試料中に存在するHCV抗原とこれらの抗体との間の結合反応を可能にする緩衝液を作製するのに必要な成分または緩衝液、および場合によっては先の結合反応において形成された免疫複合体を検出するための手段。
【0160】
本発明の組成物は、薬物の形態で提供してもよい。
本発明は、上記組成物の有効量を、場合により薬学的に許容可能なアジュバントとともに投与して免疫応答を生じさせる工程を含む、HCVに対して哺乳動物、好ましくはヒトを免疫するためのワクチンとしての使用のための、ここで記載された組成物を提供する。
【0161】
本発明は、上記組成物の有効量を、場合により薬学的に許容可能なアジュバントとともに投与して免疫応答を生じさせる工程を含む、HCVに対して哺乳動物、好ましくはヒトを免疫するためのワクチンの製造のため、ここで記載された組成物を使用する方法を提供する。
【0162】
本発明は、ここで記載されたE1および/またはE2含有組成物を含む組成物の有効量を、場合により薬学的に許容可能なアジュバントとともに、含む、HCVに対して哺乳動物、好ましくはヒトを免疫するためのワクチン組成物を提供する。
【0163】
本発明の組成物は、生物学的試料中に存在するHCV抗体のインビトロ検出のための形態で提供されることができる。本発明は、生物学的試料中に存在するHCV抗原を検出するためのイムノアッセイキットを製造する方法、および生物学的試料中に存在するHCV抗体を診断するための、本発明のキットを用いて生物学的試料中に存在するHCV抗体を検出する方法をも提供する。本発明のこのような方法は、少なくとも以下の工程を含む:
(i)上記生物学的試料を、ここで記載された組成物と、好ましくは固定化された形態で生物学的試料中に存在するHCV抗体との免疫複合体の形成を可能にする適切な条件下で接触させる工程、
(ii)非結合成分を除去する工程、
(iii)形成された免疫複合体を、適切な条件下で検出可能な標識とコンジュゲート化された異種抗体とインキュベートする工程、
(iv)免疫複合体の存在を、視覚的にまたは機械的に検出する工程。
本発明は、以下のものを含む、生物学的試料中のHCV抗体の存在を決定するためのキットを提供する:好ましくは固体基材上に固定化された形態の、少なくとも1つのここで記載されたペプチドまたはタンパク質組成物;生物学的試料中に存在するHCV抗体とこれらのペプチドまたはタンパク質との間の結合反応を可能にする緩衝液を作製するのに必要な成分または緩衝液;および、場合によっては先の結合反応において形成された免疫複合体を検出するための手段。
【0164】
本発明は、HCV疾患のインビトロモニタリングまたは処理(好ましくはインターフェロンでの)に対するHCV感染を受けた患者の応答の診断の方法を提供し、この方法は以下の工程を含む:HCV感染を受けた患者由来の生物学的試料を、免疫学的複合体の形成を可能にする条件下でE1タンパク質またはその好適な部分とインキュベートする工程;非結合成分を除去する工程;処理の開始時および処理の経過中に試料中に存在する抗E1タイターを算出する工程;処理の開始時および/または処理の経過中に試料中に見出された抗E1タイター量に基づいて、HCV疾患の自然の経過をモニタリングする工程または処理に対する患者の応答を診断する工程。
【0165】
本発明は、HCV感染を受けた患者の、処理、特にインターフェロンでの処理に対する応答の予後診断またはHCV疾患のモニタリングのためのキットを提供し、このキットは以下のものを含む:少なくとも1つのE1タンパク質またはE1ペプチド、より具体的にはここで記載されたE1タンパク質またはE1ペプチド;生物学的試料中に存在する抗E1抗体とこれらのタンパク質またはペプチドとの間の結合反応を可能にする緩衝液または緩衝液を作製するのに必要な成分;および、場合によっては先の結合反応において形成された免疫複合体を検出する手段、および場合によってはさらに処理の進行中の抗E1タイターの低減を推測するための自動化されたスキャンニングおよび解釈装置。
【0166】
本発明は、少なくとも以下の工程を含む、生物学的試料中に存在するHCVの1または2以上の血清学的タイプを検出するための、より具体的には1つのアッセイフォーマットに一緒にされた検出されるべきHCVの異なるタイプの抗体を検出するための、セロタイピングアッセイを提供する:(i)1または2以上の血清学的タイプのHCV抗体の存在について分析されるべき生物学的試料を、ここで記載された少なくとも1つのE1および/またはE2および/またはE1/E2タンパク質組成物またはここで記載された少なくとも1つのE1またはE2ペプチド組成物と、優先的には固定化された形態で免疫複合体の形成を可能にする適切な条件下で接触させる工程;(ii)非結合成分を除去する工程;(iii)形成された免疫複合体を、異種抗体とインキュベートする工程、ここで異種抗体は適切な条件下で検出可能な標識とコンジュゲート化されている;および、場合によっては、(iv)上記免疫複合体の存在を視覚的にまたは機械的に検出する工程(たとえば分光計測、蛍光計測、比色計測)および観察された結合パターンから存在する1または2以上のHCV血清学的タイプの存在を推測する工程。
【0167】
本発明は、以下のものを含む、生物学的試料中に存在する1または2以上の血清学的タイプのHCVのセロタイピングのための、より具体的にはこれらの血清学的タイプのHCVに対する抗体を検出するための、キットを提供する:ここで記載された少なくとも1つのE1および/またはE2および/またはE1/E2タンパク質またはここで記載されたE1またはE2ペプチド;生物学的試料中に存在する抗E1抗体とこれらのタンパク質またはペプチドとの間の結合反応を可能にする緩衝液または緩衝液を作製するのに必要な成分;場合によっては先の結合反応において形成された免疫複合体を検出する手段、および場合によってはさらに観察された結合パターンから存在する1または2以上の血清学的タイプを検出するための自動化されたスキャンニングおよび解釈装置。
【0168】
本発明は、固体基材上への固定化および逆相ハイブリダイゼーションアッセイへの取り込みのための、好ましくはメンブレンストリップのような固体支持体上への平行な線としての固定化のための、ここで記載された方法にしたがったHCVのゲノタイプまたは存在を決定するための、ここで記載されたペプチドまたはタンパク質組成物を提供する。
【0169】
本発明は、治療的有効量の、E1タンパク質およびE2タンパク質からなる群より選択される少なくとも1つの精製組換えHCV単一または特異的オリゴマー状組換えエンベロープタンパク質;および場合により薬学的に許容可能なアジュバントを含む組成物、を含む治療用ワクチン組成物を提供する。本発明のワクチンのHCVエンベロープタンパク質は、場合によっては組換え哺乳動物細胞または組換え酵母細胞によって産生される。本発明は、以下のE1およびE2ペプチドの少なくとも1つを含む治療的有効量の組成物を含む治療ワクチン組成物を提供する:
コア/E1 V1領域のアミノ酸181〜200にわたるE1−31(配列番号56)、
E1領域のアミノ酸193〜212にわたるE1−33(配列番号57)、
E1 V2領域のアミノ酸205〜224にわたるE1−35(配列番号58)(エピトープB)、
E1 V2領域のアミノ酸208〜227にわたるE1−35A(配列番号59)(エピトープB)、
E1領域V1、C1、およびV2領域のアミノ酸192〜228にわたる1bE1(配列番号53)(エピトープBを含む)、
E1領域のアミノ酸301〜320にわたるE1−51(配列番号66)、
E1 C4領域のアミノ酸313〜332にわたるE1−53(配列番号67)(エピトープA)、
E1領域のアミノ酸325〜344にわたるE1−55(配列番号68)、
E2領域のアミノ酸位置397〜418にわたるEnv67またはE2−67(配列番号72)(エピトープA)、
E2領域のアミノ酸位置409〜428にわたるEnv69またはE2−69(配列番号73)(エピトープA)、
E2領域の位置583〜602にわたるEnv23またはE2−23(配列番号86)(エピトープE)、
E2領域の位置595〜614にわたるEnv25またはE2−25(配列番号87)(エピトープE)、
E2領域の位置607〜626にわたるEnv27またはE2−27(配列番号88)(エピトープE)、
E2領域の位置547〜586にわたるEnv178またはE2−178(配列番号83)(エピトープD)、および
E2領域の位置523〜542にわたるEnv13BまたはE2−13B(配列番号82)(エピトープC)。
【0170】
本発明は、上述のワクチンのような、ここで記載された組成物の有効量を、場合によっては医薬的に許容されうるアジュバントとともに、投与する工程を含む、HCVに感染した、ヒトのような哺乳動物を処置する方法を提供する。1つの態様においては、本発明の組成物は、抗ウイルス治療と組み合わせて、またはそれの際に、本発明の組成物の投与の少し前、その後、またはそれとともに、投与される。
【0171】
本発明は、E1タンパク質およびE2タンパク質からなる群より選択される少なくとも1つの精製組換えHCV組換えエンベロープタンパク質、および場合によってはアジュバント、を含む組成物を提供する。好ましい態様においては、この組成物は、以下のE1およびE2ペプチドの少なくとも1つを含む:
コア/E1 V1領域のアミノ酸181〜200にわたるE1−31(配列番号56)、
E1領域のアミノ酸193〜212にわたるE1−33(配列番号57)、
E1 V2領域のアミノ酸205〜224にわたるE1−35(配列番号58)(エピトープB)、
E1 V2領域のアミノ酸208〜227にわたるE1−35A(配列番号59)(エピトープB)、
E1領域V1、C1、およびV2領域のアミノ酸192〜228にわたる1bE1(配列番号53)(エピトープBを含む)、
E1領域のアミノ酸301〜320にわたるE1−51(配列番号66)、
E1 C4領域のアミノ酸313〜332にわたるE1−53(配列番号67)(エピトープA)、
E1領域のアミノ酸325〜344にわたるE1−55(配列番号68)、
E2領域のアミノ酸位置397〜418にわたるEnv67またはE2−67(配列番号72)(エピトープA)、
E2領域のアミノ酸位置409〜428にわたるEnv69またはE2−69(配列番号73)(エピトープA)、
E2領域の位置583〜602にわたるEnv23またはE2−23(配列番号86)(エピトープE)、
E2領域の位置595〜614にわたるEnv25またはE2−25(配列番号87)(エピトープE)、
E2領域の位置607〜626にわたるEnv27またはE2−27(配列番号88)(エピトープE)、
E2領域の位置547〜586にわたるEnv178またはE2−178(配列番号83)(エピトープD)、
E2領域の位置523〜542にわたるEnv13BまたはE2−13B(配列番号82)(エピトープC)。
【0172】
本発明は、精製HCV単一または特異的オリゴマー状組換えE1またはE2タンパク質から形成されたE1/E2複合体;および場合により薬学的に許容可能なアジュバントを含む治療的有効量の組成物を含む、HCV特異的抗体を誘導するための治療組成物を提供する。本発明の組換えHCVエンベロープタンパク質は、組換え哺乳動物細胞によって生産されてもよく、あるいは、組換えエンベロープタンパク質は組換え酵母細胞によって生産される。本発明は、ここで記載された有効量の組成物および場合により薬学的に許容可能なアジュバントを投与する工程を含む、HCV感染したヒトのような哺乳動物を処置する方法を提供する。本発明は、E1タンパク質およびE2タンパク質の群から選択される少なくとも1つの精製組換えHCV単一または特異的オリゴマー状エンベロープタンパク質;および場合により薬学的に許容可能なアジュバントを含む治療的有効量の組成物を含むHCV特異的抗体を誘導するための治療組成物を提供する。
【0173】
【実施例】
実施例1:C型肝炎ウイルスE1タンパク質のクローニングおよび発現
1.ワクシニアウイルス組換えベクターの構築
pgptATA18ワクシニア組換え用プラスミドは、ワクシニアウイルス13中間プロモーターの制御下にE. coliキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子を含む付加的な挿入を有するpATA18の改変されたバージョン(Stunnenbergら、1988)である(図1)。プラスミドpgsATA18は、PstIおよびHindIII切断pATA18ベクター中に、3つのリーディングフレーム中に終止コドンを含む配列番号1/94のオリゴヌクレオチドリンカーを挿入することによって構築した。これは、余分のPacI制限部位を生じさせた(図2)。もとのHindIII部位は復旧しなかった。
配列番号1/94を有するオリゴヌクレオチドリンカー:
【0174】
【表1】
【0175】
組換えタンパク質に融合した操作されたヒスチジンストレッチのNi2+キレート化による迅速で効率的な精製を容易にするために、付加的なカルボキシ末端ヒスチジンタグを有する分泌タンパク質を発現するようにワクシニア組換え用ベクターpMS66を設計した。平滑末端を生成する3つの制限酵素(SmaI、StuI、およびPmlI/BbrPI)のためのユニーク部位を含む配列番号2/95を有するオリゴヌクレオチドリンカーは、任意のcDNAのカルボキシ末端を、プロテアーゼXa因子切断部位をコードする配列およびそれに続く6つのヒスチジンおよび2つの終止コドンをコードするヌクレオチド配列とフレームを合わせて挿入し得るように合成した(新規のPacI部位もまた3′末端の下流に生成された)。配列番号2/95を有するこのオリゴヌクレオチドを、pgptATA18のXmaIおよびPstI部位の間に導入した(図3)。
配列番号2/95を有するオリゴヌクレオチドリンカー:
【0176】
【表2】
【0177】
Escherichia coli MC1061(ラムダ)内に含まれるプラスミドpgptATA−18は、ブダペスト条約の規定の下でBCCM/LMBP(Belgian Coordinated Collections of Microorganisms/Laboratorium voor Moleculaire Biologie − Plasmidencollectie, Universiteit Gent, K.L.Ledeganckstraat 35, B−9000 Ghent, Belgium)に寄託されており、受託番号LMBP4486を有する。この寄託は、2002年1月9日になされた。
【0178】
実施例2.HCV組換えプラスミドの構築
2.1 E1タンパク質の異なる形態をコードする構築物
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)生成物は、RNA調製およびその後の逆転写およびPCRによって、以前記載されたとおりに(Stuyverら、1993b)血清試料から派生させた。表1は、それぞれのクローンおよび増幅に用いたプライマーの特徴を示す。PCRフラグメントは、SmaI切断pSP72(Promega)プラスミド中にクローニングした。図21に示したように、以下のクローンを、ワクシニア組換えベクター中への挿入のために選択した:HCCl9A(配列番号3)、HCCl10A(配列番号5)、HCCl11A(配列番号7)、HCCl12A(配列番号9)、HCCl13A(配列番号11)、およびHCCl17A(配列番号13)。E1コード領域を含むcDNAフラグメントを、EcoRIおよびHindIII制限によってそれぞれのpSP72プラスミドから切断し、EcoRI/HindIII切断pgptATA−18ワクシニア組換えベクター(実施例1に記載したもの)中に、11Kワクシニア後期プロモーターの下流に挿入した。それぞれのプラスミドを、pvHCV−9A、pvHCV−10A,pvHCV−11A,pvHCV−12A,pvHCV−13AおよびpvHCV−17Aと名付けた。このうち、pvHCV−11Aを図4に示す。
【0179】
2.2 疎水性領域E1欠失突然変異体
コドンAsp264〜Val287(ヌクレオチド790〜861、疎水性ドメインIをコードする領域)の欠失を有するクローンHCCl37を、以下のようにして作製した:2つのPCRフラグメントを、クローンHCCl10AからプライマーセットHCPr52(配列番号16)/HCPr107(配列番号19)およびHCPr108(配列番号20)/HCPR54(配列番号18)を用いて生成した。これらのプライマーを図21に示す。これらの2つのPCRフラグメントを、電気泳動後にアガロースゲルから精製し、1ngの各フラグメントを、プライマーHCPr52(配列番号16)およびHCPr54(配列番号18)によるPCRのための鋳型として一緒に使用した。得られたフラグメントを、SmaI切断pSP72ベクター中にクローニングし、欠失を有するクローンを24コドン(72塩基対)の欠失によって容易に同定した。クローンHCCl37(配列番号15)を含むプラスミドpSP72HCCl37を選択した。疎水性ドメインIを欠く全長E1 cDNAを含む組換えワクシニアプラスミドを、ワクシニアプラスミドpvHCV−10AのXmaI−BamHI部位中に、欠失を取り囲むHCV配列(XmaIおよびBamHIによってベクターpSP72−HCCl37から切断されたフラグメント)を挿入することによって構築した。得られたプラスミドをpvHCV−37と名付けた。確認的配列決定の後、内部欠失を含むアミノ末端領域をこのベクターpvHCV−37から単離し(EcoRIおよびBstEIIによる切断)、EcoRIおよびBstEII切断pvHCV−11Aプラスミド中に再挿入した。この構築体は、両方の疎水性ドメインが欠失したE1タンパク質を発現すると期待され、pvHCV−38と名付けられた。クローンHCCl38のE1コード領域を、配列番号23に示す。
E1カルボキシ末端の疎水性領域(理論的にアミノ酸337〜340付近に広がる)は構築体pvHCV−38中に完全には包含されていなかったので、疎水性ドメインIを欠くより大きいE1領域をpvHCV−37プラスミドからEcoRI/BamHI切断によって単離し、EcoRI/BamHI切断pgsATA−18ベクター中にクローニングした。得られたプラスミドはpvHCV−39と名付けられ、クローンHCCl39(配列番号25)を含んでいた。同じフラグメントをpvHCV−37ベクターからBamHIで切断し(その粘着末端はクレノウDNAポリメラーゼI(Boehringer)で充填した)、続いてEcoRI(5′粘着末端)によって切断した。この配列を、EcoRIおよびBbrPIで切断したベクターpMS−66中に挿入した。これにより、そのカルボキシ末端に6ヒスチジンテールを含む、プラスミドpvHCV−40中のクローンHCCl40(配列番号27)が得られた。
【0180】
2.3 他のゲノタイプのE1
クローンHCCl62(配列番号29)は慢性C型肝炎を有するタイプ3a感染患者(WO94/25601における血清BR36,クローンBR36−9−13,配列番号19;Stuyverら、1993aも参照されたい)から由来し、HCCl63(配列番号31)は輸血後肝炎を有するタイプ5aに感染した子供(WO94/25601における血清BE95、クローンPC−4−1、配列番号45)から由来した。
【0181】
2.4 E2構築体
HCV E2PCRフラグメント22を、血清BE11(ゲノタイプ1b)からStuyverら(1993b)に記載されているようにRNA調製、逆転写およびPCRの技術を用いてHCPr109(配列番号33)およびHCPr72(配列番号34)のプライマーによって入手し、フラグメントをSmaI切断pSP72ベクター中にクローニングした。クローンHCCl22A(配列番号35)をNcoI/AlwNIまたはBamHI/AlwNIで切断し、フラグメントの粘着末端を平滑化した(クレノウDNAポリメラーゼI(Boehringer)でNcoIおよびBamHI部位、T4DNAポリメラーゼ(Boehringer)でAlwNI)。次に、BamHI/AlwNI cDNAフラグメントを、EcoRIおよびHindIII切断によって線状化し粘着末端をクレノウDNAポリメラーゼ(Boehringer)で充填したワクシニアpgsATA−18ベクター中に挿入した。得られたプラスミドはpvHCV−41と名付けられ、シグナル配列として役立つE1タンパク質の(Met347〜Gln383の)37アミノ酸を含む、アミノ酸Met347〜Gln673の領域をコードしていた。同じHCV cDNAを、後にクレノウDNAポリメラーゼで平滑化されたEcoRIおよびBbrPI切断ベクターpMS66中に挿入した。得られたプラスミドは、pvHCV−42と名付けられ、これもアミノ酸347〜683をコードしていた。NcoI/AlwNIフラグメントを、同様にしてpgsATA−18(pvHCV−43)またはpMS−66ワクシニアベクター(pvHCV−44)の同じ部位に挿入した。pvHCV−43およびpvHCV−44は、HCVポリタンパク質のアミノ酸364〜673をコードしており、そのうちアミノ酸364〜383は、E2のためのシグナル配列をコードするE1タンパク質の天然カルボキシ末端領域から、そしてアミノ酸384〜673は成熟E2タンパク質から由来していた。
【0182】
2.5 組換えHCV−ワクシニアウイルスの作製
ウサギ腎RK13細胞(ATCC CCL37)、ヒト骨肉腫143Bチミジンキナーゼ欠損(TK−)(ATCC CRL8303)、HeLa(ATCC CCL2)、およびHep G2(ATCC HB8065)細胞株を、American Type Culture Collection (ATCC, Rockville, MD, USA)から入手した。これらの細胞を、10%ウシ胎児血清と、RK13および143B(TK−)についてはEarleの塩類(EMEM)、Hep G2についてはグルコース(4g/l)とを添加したDulbecco改変Eagle培地(DMEM)中で生育させた。ワクシニアウイルスWR株(Western Reserve, ATCC VR119)を、143BまたはRK13細胞のいずれかにおいて、以前記載されたようにルーチンに増殖させた(Panicali&Paoletti,1982;Picciniら、1987;Mackettら、1982,1984、および1986)。143B細胞のコンフルエント単層培養を、0.1の感染多重度(m.o.i.)で(すなわち0.1プラーク形成単位(PFU)/細胞)野生型ワクシニアウイルスに感染させた。2時間後、ワクシニア組換えプラスミドを、500ngのプラスミドDNAを含むリン酸カルシウム共沈殿の形態で感染細胞にトランスフェクションし、相同組換えを起こさせた(Graham&van der Eb、1973;Mackettら、1985)。Escherichia coliキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(gpt)タンパク質を発現する組換えウイルスを、選択培地(25μg/ml ミコフェノール酸(MPA)、250μg/mlキサンチン、および15μg/mlヒポキサンチンを含有するEMEM;Falkner&Moss,1988;Janknechtら、1991)中でインキュベートされたウサギ腎RK13細胞上で選択した。単独の組換えウイルスを、選択培地中0.9%アガロース重層下のRK13細胞の新鮮単層培養上で精製した。チミジンキナーゼ欠損(TK−)組換えウイルスは、25μg/ml 5−ブロモ−2′−デオキシウリジンの存在下でヒト143B細胞(TK−)の新鮮単層培養上で選択し、プラーク精製した。精製組換えHCV−ワクシニアウイルスのストックは、ヒト143BまたはウサギRK13細胞のいずれかを0.05のm.o.i.で感染させることによって調製した(Mackettら、1988)。組換えワクシニアウイルス中へのHCV cDNAフラグメントの挿入は、それぞれのHCVフラグメントをクローニングするために使用したプライマーを用いるPCRによってMPA選択後の細胞ライセートのアリコート(50μl)で確認した(表1を参照されたい)。組換えワクシニア−HCVウイルスは、ワクシニア組換え用プラスミド番号にしたがって名付け、たとえば組換えワクシニアウイルスvvHCV−10Aは野生型WR株のpvHCV−10Aプラスミドとの組換えに由来していた。
【0183】
実施例3:組換えワクシニアウイルスによる細胞の感染
RK13細胞のコンフルエント単層培養を、3のm.o.i.で組換えHCV−ワクシニアウイルスに、実施例2に記載したように感染させた。感染のためには、細胞単層培養をリン酸緩衝生理食塩水、pH7.4(PBS)で2回洗浄し、組換えワクシニアウイルスストックをMEM培地中で希釈した。106細胞当りウイルス溶液200μlを、m.o.i.が3になるように添加し、24℃で45分間インキュベートした。ウイルス溶液を吸引除去し、106細胞当り2mlの完全生育培地(実施例2を参照)を添加した。細胞を37℃で24時間インキュベートし、その間にHCVタンパク質の発現が起こった。
【0184】
実施例4:ウェスタンブロットによる組換えタンパク質の分析
感染細胞をPBSで2回洗浄し、溶解緩衝液(50mM Tris−HCl、pH7.5、150mM NaCl、1%Triton X−100, 5mM MgCl2、1μg/mlアプロチニン(Sigma、Bornem,Belgium)で直接溶解させるか、または50mM Tris−HCl、pH7.5/10mM EDTA/150mM NaCl中で5分間のインキュベーションによってフラスコからはがし、遠心分離(1000gで5分間)によって集めた。細胞ペレットを、次に106細胞当り200μlの溶解緩衝液(50mM Tris−HCl、pH8.0、2mM EDTA、150mM NaCl、5mM MgCl2、アプロチニン、1%Triton X−100)中に再懸濁した。細胞ライセートをエッペンドルフ遠心機中で14,000rpmで5分間清澄化し、不溶性破砕物(デブリス)を除去した。20μlライセートのタンパク質を、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)によって分離した。次に、トランスファー緩衝液(25mM Tris−HCl、pH8.0、192mMグリシン、20%(v/v)メタノール)中で100V定電圧で2時間、4℃に冷却されたHoefer HSIトランスファーユニットを用いて、タンパク質を、ゲルからニトロセルロースシート(Amersham)に電気的にトランスファーした。ニトロセルロースフィルターをBlotto(PBS中5%(w/v)無脂肪インスタントミルク粉末;Johnsonら、1981)でブロッキングし、Blotto/0.1%Tween 20 中で希釈された一次抗体とともにインキュベートした。通常、非特異的結合を減少させるため、ヒト陰性対照血清またはHCV感染患者血清は、200倍希釈し、200倍希釈された野生型ワクシニアウイルス感染細胞ライセートと1時間室温でプレインキュベートした。Blotto/0.1% Tween 20中で洗浄後、ニトロセルロースフィルターをBlotto/0.1% Tween 20中で希釈したアルカリホスファターゼ基質溶液とインキュベートした。PBS中0.1% Tween 20で洗浄後、フィルターをアルカリホスファターゼ基質溶液(100mM Tris−HCl、pH9.5、100mM NaCl、5mM MgCl2、0.38μg/mlニトロブルーテトラゾリウム、0.165μg/ml 5−ブロモ−4−クロロ―3−インドリルホスフェート)とインキュベートした。すべての工程は、電気的トランスファーを除き、室温で行った。
【0185】
実施例5:組換えE1またはE2タンパク質の精製
5.1 溶解
感染RK13細胞(E1またはE2構築物を担持する)を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗浄し、10mM EDTAを含有するPBS中でのインキュベーションによって培養容器からはがした。はがれた細胞をPBSで2回洗浄し、105細胞当り1mlの溶解緩衝液(50mM Tris−HCl、pH7.5、150mM NaCl,1% Triton X−100,5mM MgCl2、1μg/mlアプロチニン(Sigma, Bornem, Belgium)、2mMビオチン化N−エチルマレイミド(ビオチン―NEM)(Sigma)含有)を4℃で添加した。このライセートを、タイプBダウンサー(douncer)でホモジナイズし、室温で0.5時間置いた。10mM N−エチルマレイミド(NEM, Aldrich, Bornem, Belgium)を含有する別の5倍容量の溶解緩衝液を一次ライセートに添加し、混合物を室温に15分置いた。不溶性の細胞破砕物を14,000rpm(fmaxで30100g)で4℃、1時間のBeckman JA−14ローター中での遠心によって溶液から除去した。
【0186】
5.2 レクチンクロマトグラフィ
清澄化した細胞ライセートを、1ml/分の速度で5カラム容量の溶解緩衝液で平衡化しておいた0.8×10cmのレンチルレクチンSepharose 4Bカラム(Pharmacia)上に、1ml/分の速度で注入した。このレンチルレクチンカラムを、5〜10カラム容量の緩衝液1(0.1M リン酸カリウム、pH7.3、500mM KCl、5%グリセロール、1mM 6−NH2−ヘキサン酸、1mM MgCl2、および1%デシルPEG(KWANT, Bedum, The Netherlands)で洗浄した。いくつかの実験においては、続いてカラムを、1%デシルPEGの代わりに0.5%Empigen−BB(Calbiochem, San Diego, CA, USA)を含む10カラム容量の緩衝液1で洗浄した。結合した物質を、溶出緩衝液(10mMリン酸カリウム、pH7.3、5%グリセロール、1mMヘキサン酸、1mM MgCl2、0.5%Empigenn−BBおよび0.5M α−メチル−マンノピラノシド)を適用することによって溶出した。溶出した物質を分画し、フラクションを、実施例6に記載するELISAによってE1またはE2タンパク質の存在についてスクリーニングした。図22は、wHCV39(タイプ1b)、wHCV40(タイプ1b)、wHCV62(タイプ3a)、およびwHCV63(タイプ5a)に感染した細胞ライセートの4つの異なるE1精製物のレンチルレクチン溶出液フラクションから得られたELISAの結果を示す。図23は、図22に示す値から得られたプロフィールを示す。これらの結果は、レクチンアフィニティカラムを、異なるタイプのHCVのエンベロープタンパク質について使用し得ることを示す。
【0187】
5.3 濃縮および部分的還元
E1またはE2陽性フラクションをプールし、Centricon 30 kDa(Amicon)上でBeckman JA−20ローター中で4℃、5000rpmで3時間の遠心によって濃縮した。いくつかの実験においては、E1またはE2陽性フラクションをプールし、窒素エバポレーションによって濃縮した。3×108細胞の等量を約200μlに濃縮した。部分的還元のためには、30%Empigen−BB(Calbiochem, San Diego, CA, USA)をこの200μlに最終濃度3.5%になるように添加し、水中1M DTTを続いて最終濃度1.5〜7.5mMになるように添加し、37℃で30分間インキュベートした。NEM(ジメチルスルホキシド中1M)を最終濃度50mMになるように続いて添加し、遊離のスルヒドリル基をブロックするために37℃でさらに30分間反応させた。
【0188】
5.4 ゲルろ過クロマトグラフィ
Superdex−200HR 10/20カラム(Pharmacia)を3カラム容量のPBS/3%Empigen−BBで平衡化した。還元された混合物をSmart System(Pharmacia)の500μlサンプルループ中に注入し、ゲルろ過のためにPBS/3%Empigen−BB緩衝液を添加した。250μlのフラクションをV0〜Vtまで集めた。これらのフラクションを、実施例6に記載したようにE1またはE2タンパク質の存在についてスクリーニングした。
図24は、wHCV39(タイプ1b)、wHCV40(タイプ1b)、wHCV62(タイプ3a)、およびwHCV63(タイプ5a)に感染した細胞ライセートの4つの異なるE1精製物のゲルろ過クロマトグラフィ後に得られたELISAの結果を示す。図25は、タイプ1b、3a、および5aのE1タンパク質の精製物(それぞれwHCV39、wHCV62、およびwHCV63に感染したRK13細胞由来;先の実施例におけるようにレンチルレクチン上で精製され還元されたもの)から得られたプロフィールを示す。「1」、「2」、および「3」で示すピークは、純粋E1タンパク質のピークを表す(E1反応性は主にフラクション26〜30中)。これらのピークは、ダイマー状E1タンパク質に相当する、約70kDaの非常に類似した分子量を示す。3つのプロフィール中の他のピークは、実施例5.3に概略を記した還元工程のためのみに、そして適正な界面活性剤の存在下での後続のゲルろ過工程のためのみに、E1から分離され得たワクシニアウイルスおよび/または細胞タンパク質を表す。図26に示すように、プール1(フラクション10〜17を表す)およびプール2(フラクション18〜25)は、E1プール(フラクション26〜30)に存在しない夾雑タンパク質を含む。E1ピークフラクションを、SDS/PAGEに供し、実施例4に記載したようにブロッティングした。NEM−ビオチンで標識したタンパク質は、図27に示すようにストレプトアビジン−アルカリホスファターゼによって検出した。中でも特に、ゲルろ過クロマトグラフィ前に存在する29kDaおよび45kDaの夾雑タンパク質(レーン1)がフラクション26〜30中には非常に低レベルでしか存在しないことは容易に観察され得る。約65kDaのバンドは、完全にはモノマーE1形態に破壊できなかったE1ダイマー形態を表す。同様の結果は、タイプ3a E1タンパク質(レーン10〜15)についても得られ、それらは、6ではなく5しかない炭水化物の存在のため、SDS/PAGE上でより速い移動度を示す。図28は、図26と同一の条件下で行ったSDS/PAGEゲルの銀染色を示す。精製手順の完全な俯瞰図を図29に示す。
精製E1タンパク質の存在は、実施例4に記載したウェスタンブロッティングによってさらに確認した。ダイマー状E1タンパク質は、凝集しておらず、夾雑物質を含まないようであった。上記のスキームにしたがってwHCV−40感染細胞から精製したサブタイプ1bのE1タンパク質を、477 Perkin−Elmerシークエンサーで配列決定し、最初の残基としてチロシンを含むようであった。これは、E1タンパク質が正しい位置(A191とY192との間)でシグナル配列からシグナルペプチダーゼによって切断されたことを確認した。これは、成熟E1タンパク質のアミノ末端がアミノ酸位置192で始まるというHijikataら(1991)の知見を確認する。
【0189】
5.5 E2タンパク質の精製
E2タンパク質(アミノ酸384〜673)を、実施例5.1〜5.4に示したようにwHCV44に感染したRK13細胞から精製した。図39は、レンチルレクチンクロマトグラフィのOD280プロフィール(連続線)を示す。点線は、ELISAによって検出されたE2反応性を表す(実施例6を参照されたい)。図31は、レンチルレクチンE2プールのゲルろ過クロマトグラフィから得られた同じプロフィールを示す(図30を参照されたい)。その一部は実施例5.3に述べたような方法に従って還元およびブロックされ、一部は直ちにカラムに適用された。E2プールの両部分を、別個のゲルろ過カラムに供した。還元をまったく行わなかった場合、E2が夾雑タンパク質と共有結合した凝集塊を形成することが明らかになった。還元およびブロッキングの後、夾雑タンパク質の大部分はV0フラクションに分離した。E2タンパク質と共精製された他の夾雑タンパク質は、もはやE2タンパク質に共有結合していなかったが、これは、これらの夾雑物質が後続の工程で除去され得たためである。図32は、E2タンパク質精製のために行った付加的なNi2+−IMAC精製工程を示す。このアフィニティ精製工程は、wHCV44から発現されたE2タンパク質に付加された6個のヒスチジン残基を使用する。夾雑タンパク質は、カラムを素通りするか、または30mMイミダゾール洗浄によって除去され得る。図33は、0.5μgの精製E2タンパク質および30mMイミダゾール洗浄の銀染色されたSDS/PAGEを示す。純粋E2タンパク質は、200mMイミダゾール溶出工程によって容易に回収され得た。図34は、イミダゾールを除去し、所望の緩衝液、たとえばPBS、カーボネート緩衝液、生理食塩水に切り替えることができることを意図した、付加的な脱塩工程を示す。
E1の生産のためのwHCV11A(またはwHCV40)、またはE2タンパク質の生産のためのwHCV41、wHCV42、wHCV43もしくはwHCV44に感染した約50,000cm2のRK13細胞から出発して、実施例5.1〜5.5に記載した手順は、約1.3mgのE1タンパク質および0.6mgのE2タンパク質の精製を可能にする。
分泌されたE2タンパク質(約30〜40%を構成、60〜70%は細胞内形態である)が(予想に反して)凝集塊形成を特徴とすることもまた顕著である。したがって、同じ問題は分泌されたE2にも存在する。分泌されたE2は、上で開示したようにして精製することができる。
【0190】
実施例6:抗E1または抗E2抗体の検出あるいはE1またはE2タンパク質 の検出のためのELISA
Maxisorbマイクロウェルプレート(Nunc, Rockilde, Denmark)を、1ウェル当たり1容量(たとえば50μl、または150μl、または200μl)のPBS中5μg/mlのストレプトアビジン(Boehringer Mannheim)溶液で、4℃で16時間または37℃で1時間、コーティングした。あるいは、ウェルを、1容量の50mM炭酸ナトリウム緩衝液、pH9.6中5μg/mlのGalanthus nivalisアグルチニン(GNA)で、4℃で16時間または37℃で1時間コーティングした。GNAでのコーティングの場合には、プレートを、400μlのInnotest HCV Ab IIIキット(Innogenetics, Zwijndrecht, Belgium)の洗浄液で2回洗浄した。未結合のコーティング表面を、1.5〜2容量のブロッキング溶液(PBS中0.1%カゼインおよび0.1%NaN3)で37℃で1時間または4℃で16時間ブロッキングした。ブロッキング溶液を吸引除去した。精製E1またはE2を100〜1000ng/ml(A=280nmで測定した濃度)に希釈し、あるいは、E1またはE2についてスクリーニングすべきカラムフラクション(実施例5を参照されたい)、または未精製細胞ライセート中のE1またはE2(実施例5.1)を、ブロッキング溶液中で20倍希釈し、1容量のE1またはE2を各ウェルに添加してストレプトアビジンまたはGNAでコートされたプレート上で37℃で1時間インキュベートした。マイクロウェルを1容量のInnotest HCV Ab IIIキット(Innogenetics, Zwijndrecht, Belgium)の洗浄液で3回洗浄した。Innotest HCV Ab IIIキットの試料希釈液で、血清試料を20倍希釈し、またモノクローナル抗E1または抗E2抗体を20ng/mlの濃度に希釈し、1容量の溶液を37℃で1時間、E1またはE2タンパク質と反応させた。マイクロウェルを400μlのInnotest HCV Ab IIIキット(Innogenetics, Zwijndrecht, Belgium)の洗浄液で5回洗浄した。結合した抗体を、1容量のInnotest HCV Ab IIIキット(Innogenetics, Zwijndrecht, Belgium)のコンジュゲート希釈液で1/80,000希釈したヤギ抗ヒトまたは抗マウスIgG、ペルオキシダーゼ結合二次抗体(DAKO、Glostrup,Denmark)と、37℃で1時間、各ウェルをインキュベートすることによって検出し、発色を、400μlのInnotest HCV Ab IIIキット(Innogenetics, Zwijndrecht, Belgium)の洗浄液でプレートを3回洗浄した後、24℃で30分間の、1容量のInnotest HCV Ab IIIキット(Innogenetics, Zwijndrecht, Belgium)の基質溶液中で100倍希釈したInnotest HCV Ab IIIキット(Innogenetics, Zwijndrecht, Belgium)の基質の添加によって得た。
【0191】
実施例7:異なる臨床的プロフィールの患者群のフォローアップ
7.1 抗E1および抗E2抗体のモニタリング
現在のC型肝炎ウイルス(HCV)診断アッセイは、HCV抗体の存在のスクリーニングおよび確認のために開発されてきた。このようなアッセイは、処理のモニタリングまたは疾患の結果の予後診断のために有用な情報を提供するとは思われない。しかし、B型肝炎の場合におけるように、抗エンベロープ抗体の検出および定量は、臨床的な環境においてはより有用であり得る。C型肝炎疾患の結果についての予後診断のマーカーとしての抗E1抗体タイターおよび抗E2抗体タイターの使用の可能性を研究するために、長期持続的応答を示すIFN−α処理患者のシリーズ(処理後少なくとも1年の期間について血液中に正常のトランスアミナーゼレベルおよび陰性HCV−RNA試験(5′非コード領域中のPCR)を有する患者として定義される)を、応答を示さない、または処理の終了時に再発をした生化学的応答を示す患者と比較した。
長期持続的応答を示す8人のIFN−α処理患者の群(LTR、1〜3.5年のフォローアップ(追跡)、タイプ3a 3人およびタイプ1b 5人)を、処理に対して不完全応答を示す9人の患者(NR、1〜4年の追跡、タイプ1b 6人およびタイプ3a 3人)と比較した。タイプ1b(wHCV−39、実施例2.5参照)およびタイプ3a E1(wHCV−62、実施例2.5参照)タンパク質を、ワクシニアウイルス系によって発現させ(実施例3および4参照)、均質になるまで精製した(実施例5)。実施例6に記載したELISAにおいて、タイプ1bのC型肝炎ウイルスに感染した患者由来の試料を精製タイプ1b E1タンパク質との反応性について試験し、一方、タイプ3a感染の試料を抗タイプ3a E1抗体との反応性について試験した。異なる患者に感染しているC型肝炎ウイルスのゲノタイプは、Inno−LiPAゲノタイプアッセイ(Innogenetics, Zwijndrecht, Belgium)によって決定した。図5は、インターフェロン処理の経過中および処理後のフォローアップ期間中に追跡したこれらの患者の抗E1シグナル対ノイズ比を示す。LTRの症例は、迅速に低下する抗E1レベル(3例においては完全に陰性)を一致して示し、一方、NR症例の抗E1レベルは大体一定にとどまっていた。得られた抗E1データのいくつかを、平均S/N比±SD(平均抗E1タイター)として表2に示す。抗E1タイターは、図5,6,7および8に示すようにシグナル対ノイズ比から推定し得た。
既に処理の終了時に、この2つの群間で顕著な差異が観察された。LTRにおいては抗E1タイターが6.9倍低減したが、NRでは1.5倍にすぎなかった。追跡の終了時に、抗E1タイターは、持続的応答の患者においては22.5倍低減したが、NRにおいてはむしろやや上昇した。したがって、これらのデータに基づいて、IFN−α治療のモニタリング中の抗E1抗体レベルの低減は、処理に対する長期の持続的応答と相関する。抗E1アッセイは、IFN処理、またはC型肝炎疾患の処理一般に対する長期応答の予後のために非常に有用であり得る。
この知見は、予測されなかった。それと反対に、本発明者らは、抗E1抗体レベルは長期応答患者においてIFN処理の経過中に上昇すると予測していた。B型肝炎の場合におけるように、ウイルスは抗HBsAg抗体についての血清転換(セロコンバージョン)の結果として除去される。また、多くの他のウイルス感染においても、ウイルスは、抗エンベロープ抗体が上昇すると排除される。しかし、本発明の実験においては、抗E1抗体は、処理に対する長期応答患者においては明らかに減少したが、不応答患者においては抗体レベルは大体同じにとどまっていた。これらの実験の結果は予測されていなかったが、この非自明な知見は非常に重要である可能性があり、HCV感染の臨床診断に有用であり得る。図9,10,11および12に示すように、抗E2レベルは、研究した同じ患者において非常に異なった挙動を示し、抗E1抗体についてはタイターの顕著は低減は観察されなかった。図35はパイロット研究の完全な俯瞰図を与える。
表2から推定し得るように、抗E1タイターは、処理に対する不完全応答者と比較して長期応答者においては処理の開始時に平均で少なくとも2倍高かった。したがって、処理の開始時に抗E1抗体のタイターを測定すること、または感染の経過中に患者をモニタリングすることおよび抗E1タイターを測定することは、C型肝炎の臨床診断のための有用なマーカーとなり得る。さらに、実施例7.3に示すように、E1またはE2タンパク質のより定義された領域の使用は望ましくなり得る。
【0192】
7.2 より大きい患者コホートにおけるE1およびE2抗体の分析
パイロット研究により、本発明者らは、感染が完全に排除された場合には、HCVエンベロープタンパク質に対する抗体は、より慣例的に研究されるHCV抗原に対する抗体よりも迅速に変化する、そしてE1抗体は最も激しく変化する、と結論するに至った。したがって、本発明者らは、より多くのタイプ1bおよび3a感染LTRを包含させ、その上、マッチングさせたNRのシリーズでコホートをさらに補充して、両群がそれぞれ14人の患者を含むようにした。幾人かの部分的応答者(PR)および再発ありの応答者(RR)もまた分析した。
図36は、LTRおよびNR群における平均E1抗体(E1Ab)およびE2抗体(E2Ab)レベルを描き、表4および5は、統計的分析を示す。このより大きいコホートにおいては、IFN−α治療前のより高いE1抗体レベルは、LTRと関連していた(P<0.03)。タイプ1b感染患者と比較してタイプ3a感染患者においてはるかに高いE1抗体レベルが観察されたため(図37)、ゲノタイプを考慮に入れた(表4)。タイプ1b感染群内で、処理の開始時にLTRはNRよりも高いE1抗体レベルを有していた(p<0.05)。タイプ3a感染NRの数が限られていたため、統計的分析は不可能であった。
1.5年間の追跡期間中にLTRにおいてモニタリングされた抗体レベルのうち、E1抗体のみが処理の開始時に測定されたレベルと比較して迅速に除去された(治療終了時、P=0.0058;治療後6ヶ月および12ヶ月でそれぞれP=0.0047およびP=0.0051)。このクリアランスは、タイプ1またはタイプ3感染LTR内でも有意のままであった(平均P値<0.05)。これらのデータは、消散の初期においてE1Abレベルが迅速に低減するという当初の知見を確認した。この特徴は、ウイルスのゲノタイプには依存しないようである。NR、PRまたはRRにおいては、追跡期間中を通して測定したいずれの抗体においても変化が観察されなかった。処理中にALTレベルの正常化およびHCV−RNA陰性を示した、処理に対して好ましく応答した患者においては、持続的応答者(LTR)と再発ありの応答者(RR)との間で顕著な差異があった。LTRとは対照的に、RRは、E1抗体レベルのいかなる低減も示さず、PCRまたはHCV−RNAの検出のための他の古典的な技術によっても、上昇したALTレベルによっても明らかにすることができないオカルトHCV感染の存在を示した。少量のウイルスRNAは、処理中にRRグループになお存在し、抗E1 B細胞刺激が可能なようであった。したがって、抗E1モニタリングは、NRからLTRを区別することができるだけでなく、RRからも区別し得る。
【0193】
7.3 E1タンパク質の定義された領域の抗体のモニタリング
HCV抗原の同定の分子生物学的アプローチは、ウイルス診断薬の開発において先例のないブレークスルーをもたらしたが、λgt11ライブラリーの免疫スクリーニングの方法は、主に、コアおよび非構造領域全体に分散したリニアエピトープを生じ、エンベロープ領域の分析は、哺乳動物細胞におけるE1/E2領域のクローニングおよび発現を待たなければならなかった。このアプローチは、ゲノム構造が解読されるはるか以前にエンベロープ領域のエピトープが既にマッピングされていた多くの他のウイルス感染と鋭い対照を成す。このようなエピトープおよび相当する抗体は、しばしばワクチン開発に有用な中和活性を有しており、および/または臨床または予後において有意な診断アッセイの開発を可能にした(たとえばB型肝炎表面抗原に対する抗体)。今日、C型肝炎疾患の臨床診断および予後診断を可能にするHCVワクチンまたは試験は存在しないので、免疫サーベイランスにさらされるウイルスエンベロープ領域の特徴付けは、HCV診断および予防における新規な方向性に多大に貢献しうる。
各々8アミノ酸ずつ重複するいくつかの20マーペプチド(表3)を、HC−J1配列に基づいて(Okamotoら、1990)以前記載された方法にしたがって合成した(EP−A−0489968)。これらのいずれもが、ペプチドenv35(E1−35とも呼ばれる)を除いては、約200のHCV症例の血清中の抗体を検出できなかった。2つの血清のみが、env35ペプチドとわずかに反応した。しかし、実施例6に記載した抗E1ELISAによって、以下のように更なるエピトープを発見することが可能であった:実施例6に記載した抗E1−ELISAを、50μg/mlのE1ペプチドを試料希釈液中の1/20希釈ヒト血清と混合することによって改変した。図13は、単独E1ペプチドまたはE1ペプチド混合物の存在下での、ヒト血清の組換えE1(wHCV−40から発現されたもの)タンパク質に対する反応性を示す。2%の血清のみがライン・イムノアッセイフォーマットのストリップ上にコーティングされたE1ペプチドによって検出可能であったにすぎないが、一方で、半分以上の血清が、組換えE1タンパク質で試験した場合、同じペプチドによって競合されうる抗E1抗体を含んでいた。精製E1タンパク質での注射の後にBalb/Cマウスから得られたマウスモノクローナル抗体のいくつかを、続いて単独のペプチドと、E1に対する反応性に関して競合させた(図14)。env53の添加はE1といくつかの血清の反応性について実質的に競合できたので、明らかに、env53の領域は優勢エピトープを含んでおり、env31領域も検出された。env53およびenv31ペプチドは固相に直接コーティングした場合にはいかなる反応性も示していなかったので、この知見は驚くべきことであった。
したがって、本出願人によって以前記載された技術(WO93/18054)を用いてペプチドを合成した。以下のペプチドを合成した:
ペプチド env35A−ビオチン
NH2−SNSSEAADMIMHTPGCV−GK−ビオチン(配列番号51)
E1領域のHCVポリタンパク質のアミノ酸208〜227にわたる。
ペプチド ビオチン−env53(「エピトープA」)
ビオチン−GG−ITGHRMAWDMMMNWSPTTAL−COOH(配列番号52)
E1領域のHCVポリタンパク質のアミノ酸313〜332にわたる。
ペプチド 1bE1(「エピトープB」)
H2N−YEVRNVSGIYHVTNDCSNSSIVYEAADMIMHTPGCGK−ビオチン(配列番号53)
E1領域のHCVポリタンパク質のアミノ酸192〜228にわたる。
そして、ゲノタイプ1aおよび1bの配列の同じ領域からそれぞれ由来し、IXth International Virology Meeting in Glasgow、1993で記載されていたペプチド E1a−BB(ビオチン−GG−TPTVATRDGKLPATQLRRHIDLL、配列番号54)およびE1b−BB(ビオチン−GG−TPTLAARDASVPTTTIRRHVDLL、配列番号55)(「ペプチドC」)の反応性と比較した。HCV血清のパネルの反応性を、エピトープA,BおよびCについて試験し、エピトープBは、env35Aとも比較した(47のHCV陽性血清のうち、8がエピトープBについて陽性であり、env35Aとはいずれも反応しなかった)。エピトープA,BおよびCに対する反応性を、実施例6に記載したようにストレプトアビジンでコーティングしたプレートに結合したビオチン化ペプチド(50μg/ml)に対して直接試験した。明らかに、エピトープAおよびBは、最も反応性であったが、エピトープCおよびenv35A−ビオチンははるかに反応性が低かった。完全E1タンパク質に対する反応性についてモニタリングした同じシリーズの患者(実施例7.1)を、エピトープA,BおよびCに対する反応性について試験した。エピトープCについてはほとんど反応性が見られなかったが、図15,16,17および18に示すように、エピトープAおよびBは、大部分の血清と反応した。しかし、最も反応性のエピトープ(エピトープA)に対する抗体は、疾患の軽快を予測しないようであったが、抗1bE1抗体(エピトープB)は、IFN処理の開始時にほとんど長期応答者のみに存在した。したがって、抗1bE1(エピトープB)抗体および抗env53(エピトープA)抗体は、C型肝炎疾患の予後診断のための有用なマーカーであることが示された。env53エピトープは、交差反応性抗体(主要ゲノタイプ間で交差反応する抗体)の検出のために有利に使用し得、env53領域に対する抗体は、血清中または肝臓組織中の普遍的E1抗原検出のために非常に有用であり得る。env53領域を認識するモノクローナル抗体は、ランダムエピトープライブラリーと反応した。モノクローナル抗体5E1A10でのイムノスクリーニングで反応した4つのクローンにおいて、配列−GWD−が存在した。env53領域中のすべてのHCV変異体に存在する普遍的HCV配列との類似性のため、配列AWDは、env53交差反応性マウスエピトープの必須配列を含むと考えられている。env31もまた、アミノ末端配列−YQVRNSTGL−(配列番号93)中のエピトープを含みうる可変性領域を含み、診断に有用であり得る。表3に示すように、Env31またはE−31は、ペプチド1bE1の部分である。ペプチドE1−33およびE1−51もまた、マウス抗体とある程度反応し、ペプチドE1−55(可変性領域6(V6)を含む;アミノ酸位置329〜336にわたる)もまた患者血清のいくつかと反応した。
抗E2抗体は、明らかに抗E1抗体とは異なるパターンを、特に処理に対して長期応答する患者においてとった。したがって、抗エンベロープ抗体の低減は、組換えE1/E2タンパク質を用いるアッセイでは単一抗E1または抗E2タンパク質と同じように効率的には測定できなかったことは明らかである。抗E2応答は、両種類の抗体を同時に測定するアッセイにおいては抗E1応答を不鮮明にしたであろう。したがって、単独のE1およびE2タンパク質に対する抗エンベロープ抗体を試験する能力は、有用であることが示された。
【0194】
7.4 抗E2抗体のマッピング
24の抗E2モノクローナル抗体のうち、3つのみがペプチドによって組換えE2に対する反応性について競合し得たが、そのうち2つはHVRI領域と反応し(ペプチドE2−67およびE2−69、エピトープAと名付けられている)、1つはペプチドE2−13Bによって競合されるエピトープ(エピトープC)を認識した。マウス抗体の大部分は、コンフォメーショナル抗E2エピトープを認識した(図19)。HVRI(エピトープA)、およびより少ない程度でHVRII(エピトープB)および第3のリニアエピトープ領域(ペプチドE2−23,E2−25またはE2−27によって競合された;エピトープEと名づけられている)および第4のリニアエピトープ領域(ペプチドE2−17Bによって競合された;エピトープD)、に対するヒト応答もまた頻繁に観察されたが、血清の大部分はコンフォメーショナルエピトープと反応した(図20)。これらのコンフォメーショナルエピトープは、それらの相対的位置によって以下のようにグループ分けできた:コンフォメーショナルエピトープを認識するハイブリドーマ15C8C1,12D11F1,9G3E6,8G10D1H9,10D3C4,4H6B2,17F2C2,5H6A7,15B7A2の上清中のIgG抗体を、プロテインAアフィニティカラムによって精製し、1mg/mlの得られたIgGをビオチンの存在下でホウ酸緩衝液中でビオチン化した。ビオチン化抗体を、ゲルろ過クロマトグラフィによって遊離ビオチンから分離した。プールしたビオチン化抗体フラクションを、100〜10,000倍に希釈した。固相に結合したE2タンパク質を、100倍量の非ビオチン化競合抗体の存在下でビオチン化IgGによって検出し、続いてアルカリホスファターゼで標識したストレプトアビジンで検出した。
競合のパーセンテージを、表6に示す。これらの結果に基づいて、4つのコンフォメーショナル抗E2エピトープ領域(エピトープF,G,HおよびI)を描画できた(図38)。あるいは、これらのモノクローナル抗体は、この研究で使用されたペプチドによって表されない突然変異リニアエピトープを認識し得る。モノクローナル抗体4H6B2および10D3C4は、16A6E7の反応性と競合したが、16A6E7とは違って、それらはペプチドE2−13Bを認識しなかった。これらのモノクローナル抗体は、同じリニアエピトープ(エピトープC)の変異体を認識するか、立体的に制約を受けた、またはE2−13B領域に対する16A6E7の結合後にコンフォメーションを変える、コンフォメーショナルエピトープ(エピトープH)を認識する可能性がある。
【0195】
実施例8:E1グリコシル化突然変異体
8.1 序論
哺乳動物細胞から発現された、wHCV10AによってコードされるE1タンパク質およびwHCV41〜44によってコードされるE2タンパク質は、それぞれ6個および11個の炭水化物部分を含む。これは、wHCV10A感染またはwHCV44感染RK13細胞のライセートを、減少する濃度のグリコシダーゼ(PNGアーゼFまたはエンドグリコシダーゼH(Boehringer Mannheim Biochemica))とともに製造者の指示に従ってインキュベートし、ライセート中のタンパク質(E1を含む)が部分的に脱グリコシル化されるようにすることによって示された(それぞれ図39および40)。
グリコシル化部位のいくつかを持たない突然変異体は、改良された免疫反応性を有するエンベロープタンパク質の選択を可能にし得た。たとえばHIVについては、ある種の選択された糖付加モチーフを欠くgp120タンパク質が、診断またはワクチン目的に特に有用であることが見出された。A/Hong Kong/3/68(H3N2)インフルエンザウイルスのエスケープ突然変異体のヘマグルチニンタンパク質中の新規のオリゴ糖側鎖の付加は、中和モノクローナル抗体との反応性を妨害する(Skelelら、1984)。部位特異的突然変異誘発によってインフルエンザのヘマグルチニンタンパク質中に新規のグリコシル化部位を導入した場合、劇的な抗原の変化が観察され、炭水化物が抗原性の調節因子として作用することが示唆された(Gallagherら、1988)。別の分析においては、フレンドマウス白血病ウイルスの表面タンパク質gp70の8個の炭水化物付加モチーフを欠失させた。突然変異のうち7つはウイルスの感染性に影響しなかったが、アミノ末端に関して4番目のグリコシル化シグナルの突然変異は、非感染性フェノタイプをもたらした(Kaymanら、1991)。さらに、N−結合炭水化物鎖の付加が、フォールディング中間体の安定化、したがって効率的なフォールディング、過誤フォールディングおよび小胞体での分解の防止、オリゴマー化、生物活性、および糖タンパク質の輸送に重要であることが当業界で公知である(Roseらによる総説、1988; Domsら、1993;Helenius, 1994を参照されたい)。
HCVゲノタイプの異なるエンベロープタンパク質配列の整列後、HCVサブタイプ1bE1タンパク質上の6個全部のグリコシル化部位が正しいフォールディングおよび反応性のために必要ではないことが推測されうる。これは、いくつかはある(サブ)タイプには存在しないからである。タイプ1b、6a、7,8および9に存在する4番目の炭水化物モチーフ(Asn251上)は、今日公知の他のすべてのタイプには存在しない。この糖付加モチーフは、突然変異して改良された反応性を有するタイプ1bE1タンパク質を生じる可能性がある。また、タイプ2b配列はV5領域に余分のグリコシル化部位を示す(Asn299上)。ゲノタイプ2cに属する単離株S83は、V1領域の1番目の炭水化物モチーフ(Asn上)さえ欠いているが、これはその他のすべての単離株には存在する(Stuyverら、1994)。しかし、完全に保存された糖付加モチーフ間でさえ、この炭水化物の存在は、フォールディングに必要ではないかもしれないが、免疫サーベイランスの回避において役割を有する可能性がある。したがって、正しいフォールディング(および反応性)に必要ではない炭水化物付加モチーフの同定は明らかではなく、反応性について各突然変異体を分析し試験しなければならない。グリコシル化モチーフの突然変異誘発(NXSまたはNXT配列)は、N,SまたはTのコドンを、これらのコドンがNの場合にはNと異なるアミノ酸、および/またはSの場合およびTの場合にはSまたはTと異なるアミノ酸をコードするように、突然変異させることによって達成できる。あるいは、NPSまたはNPTは頻繁には炭水化物で修飾されないことが公知であるので、Xの位置をPに突然変異させてもよい。どの炭水化物付加モチーフがフォールディングおよび/または反応性に必要か、およびどれが必要でないか、を確立した後、そのような突然変異の組み合わせを作製することができる。
【0196】
8.2 E1タンパク質の突然変異誘発
すべての突然変異は、クローンHCCl10A(配列番号5)のE1配列に対して行った。PCRの第1ラウンドを、ワクシニア11K後期プロモーターの上流に位置するGPT配列を標的としたセンスプライマー「GPT」(表7参照)、および突然変異誘発を得るための所望の塩基変化を含むアンチセンスプライマー(GLY#と名付けたもの;ここで#はグリコシル化部位の番号を表す、図41参照)を用いて行った。6つのGLY#プライマー(特定のグリコシル化部位に対して各々特異的)を、以下のように設計した:
− N−グリコシル化Asn(AACまたはAAT)をコードするコドンのGlnコドン(CAAまたはCAG)への修飾。グルタミンは、アスパラギンに非常に類似しているため選択した(両アミノ酸とも、中性で、非極性残基を含む;グルタミンはより長い側鎖(1つ多い−CH2−基)を有する)。
− 新規のユニークまたは希少(たとえばE1Gly5についての第2のSmaI部位)制限酵素部位を作製するための、グリコシル部位の下流の1つまたはいくつかのコドンへのサイレント突然変異の導入。アミノ酸配列を改変せずに、この突然変異は、突然変異配列を元のE1配列(pvHCV−10A)から、または互いから、区別する方法を提供することになる(図41)。この付加的な制限部位は、新規のハイブリッド(二重、三重等)グリコシル化突然変異体の構築についても有用であり得る。
− 最初のミスマッチのヌクレオチドの5′側の18ヌクレオチドの伸長部(エクステンド)および3′末端への12〜16ヌクレオチドの伸長部。表7は、N−結合グリコシル化部位の配列と重複する6つのGLY#プライマーの配列を描く。
部位特異的突然変異誘発のために、「ミスプライミング」または「重複伸長」(Horton、1993)を用いた。そのコンセプトは図42および43に説明されている。最初に、2つの別個のフラグメントを、各突然変異部位について標的遺伝子から増幅した。5′末端から得られたPCR生成物(生成物GLY#)を、5′センスGPTプライマー(表7参照)、およびそれぞれの3′アンチセンスGLY#プライマーで増幅した。第2のフラグメント(生成物OVR#)を、3′アンチセンスTKRプライマーおよびそれぞれの5′センスプライマーで増幅した(OVR#プライマー、表7、図43参照)。
OVR#プライマーは、GLY#プライマー配列の部分を標的とする。したがって、2つのグループのPCR生成物は、同一配列の重複領域を共有する。これらの中間体生成物を混合し(GLY−1とOVR−1,GLY−2とOVR−2等)、高温で融解し、再アニーリングした場合、2つの鎖がお互いに対してのプライマーとして作用するようなやり方で、生成物GLY#のトップのセンス鎖は、生成物OVR#のアンチセンス鎖に(および逆も)アニーリングしうる(図42B参照)。2回のPCRサイクルの間のTaqポリメラーゼによるアニーリングした重複物の伸長によって、全長突然変異体分子E1Gly#が作製され、これは、グリコシル部位番号#を破壊する突然変異を有する。クローニングのために充分な量のE1GLY#生成物を、2つの内部ネステッドプライマーの共通のセットによって第3のPCRで生成させた。これらの2つの新規なプライマーは、それぞれワクシニア11Kプロモーターの3′末端(センスGPT−2プライマー)およびワクシニアチミジンキナーゼ遺伝子座の5′末端(アンチセンスTKR−2プライマー、表7参照)に重複する。すべてのPCR条件は、Stuyverら(1993)に記載されたように行った。
これらのPCR生成物の各々を、EcoRI/BamHI切断によって、元のE1配列を含むEcoRI/BamHI切断ワクシニアベクター(pvHCV−10A)中にクローニングした。
選択したクローンを、EcoRI/BamHI切断によって、インサートの長さについて、および各新規制限部位の存在について分析した。突然変異部位に重複する配列を、二本鎖配列決定によって確認した。
【0197】
8.3 E1グリコシル化突然変異体の分析
実施例8.2に記載した突然変異E1配列を含む6つのプラスミドから出発して、実施例2.5に記載したにようにwtワクシニアウイルスとの組換えによって組換えワクシニアウイルスを生成した。簡単に言うと、175cm2のフラスコのサブコンフルエントRK13細胞を、突然変異E1配列を有する6つの組換えワクシニアウイルス、ならびにwHCV−10A(非突然変異E1配列を有する)およびwtワクシニアウイルスに感染させた。細胞を、24時間のインキュベーション後に溶解し、実施例4に記載したようにウェスタンブロット上で分析した(図44A参照)。すべての突然変異体は、SDS−PAGE上で元のE1タンパク質よりも速い移動度(約2〜3kDa小さい分子量に相当)を示し、1個の炭水化物部分が付加されていないことが確認された。異なる突然変異体の内容を確認するために、組換えウイルスをPCRおよび制限酵素分析によっても分析した。図44Bは、(図41に示すように)すべての突然変異体が、予測された付加的制限部位を含むことを示す。細胞ライセートの別の部分を用いて、ELISAによって異なる突然変異体の反応性を試験した。ライセートを20倍希釈して、実施例6に記載したようにレクチンGNAでコーティングしたマイクロウェルプレートに添加した。捕獲された(突然変異)E1糖タンパク質を、実施例6に記載したように24のHCV感染患者の20倍希釈血清と反応させた。6つの突然変異体およびE1についてのシグナル対ノイズ(S/N)値(GLY#のOD/wtのOD)を表8に示す。この表は、GLY#およびE1タンパク質のS/N値間の比をも示す。患者血清との反応性の比較のために異なる突然変異体の細胞ライセートを使用するアプローチは、反応性レベルというよりも異なる発現レベルの結果である観察をもたらしうることは理解されるべきである。このような困難は、実施例5に記載したような異なる突然変異体の精製によって、そして異なるE1タンパク質すべての同量を試験することによって克服しうる。しかし、表5に示す結果は、1番目(GLY1)、3番目(GLY3)および6番目(GLY6)のグリコシル化モチーフの除去が、いくつかの血清の反応性を低減させるが、一方2番目および5番目の部位の除去はそうではないことを既に示している。GLY4の除去は、ある種の血清の反応性を改良するようである。これらのデータは、異なる患者が本発明のグリコシル化突然変異体に対して異なって反応することを示す。したがって、このような突然変異E1タンパク質は、HCV疾患の診断(スクリーニング、確認、予後等)および予防のために有用であり得る。
【0198】
実施例9:グリコシル化欠損酵母におけるHCV E2タンパク質の発現
クローンHCCL41に相当するE2配列は、α−メイティング因子プレ/プロシグナル配列つきで、酵母発現ベクター中に挿入されて提供され、この構築体で形質転換されたS. cerevisiae細胞は、生育培地中にE2タンパク質を分泌した。S. cerevisiae株でのこのような構築体の発現に際し、ほとんどのグリコシル化部位が高マンノースタイプのグリコシル化で修飾されたことが観察された(図45)。これは、高すぎるレベルの異質性および反応性の隠蔽をもたらし、これはワクチンまたは診断目的いずれについても望ましくなかった。この問題を克服するために、改変されたグリコシル化経路を有するS. cerevisiae突然変異体を、バナデート耐性クローンの選択によって生成した。このようなクローンを、糖タンパク質インベルターゼの異質性および分子量の分析によって、改変されたグリコシル化経路について分析した。これにより、異なるグリコシル化欠損S. cerevisiae突然変異体を同定することが可能になった。続いて、E2タンパク質を、いくつかの選択した突然変異体において発現させ、実施例4に記載したようにウェスタンブロット上で、実施例7に記載したモノクローナル抗体と反応させた(図46)。
【0199】
実施例10:一般的有用性
本結果は、良好な発現系のみでなく、良好な精製プロトコールもまた、ヒト患者血清とのHCVエンベロープタンパク質の高い反応性を達成するために必要であることを示す。これは、タンパク質の天然のフォールディングの保存を保証する、本発明の精製プロトコールおよび/または適正なHCVエンベロープタンパク質発現系と、夾雑タンパク質の排除を保証し、コンフォメーションを保存する、したがってHCVエンベロープタンパク質の反応性を保証する、本発明の精製プロトコールとを用いて得ることができる。診断スクリーニングアッセイに必要とされる精製HCVエンベロープタンパク質の量は、年間グラム単位の範囲である。ワクチン目的には、より多量のエンベロープタンパク質が必要とされるであろう。したがって、ワクシニアウイルス系は、最良の構築体の選択および限られた大量化のために使用でき、高マンノース炭水化物を含む単一または特異的オリゴマー化エンベロープタンパク質の大量発現および精製は、いくつかの酵母株から発現される場合に達成されうる。たとえばB型肝炎の場合、哺乳動物細胞からのHBsAgの製造は、酵母由来B型肝炎ワクチンと比較してはるかに費用がかかるものであった。
本発明に開示した精製方法は、「ウイルスエンベロープタンパク質」一般についても使用しうる。例としては、フラビウイルス類、新規に発見されたGB−A、GB−B、およびGB−C肝炎ウイルス、ペスチウイルス類(たとえばウシウイルス性下痢症ウイルス(BVDV)、ブタコレラウイルス(HCV)、ボーダー病ウイルス(BDV))由来のものがあるが、B型肝炎ウイルス(主にHBsAgの精製のため)のような関連性のより低いウイルスもある。
本発明のエンベロープタンパク質精製方法は、詳細な説明の章において詳述したように、下等または高等真核生物細胞において、または原核生物において、細胞内または細胞外発現されたタンパク質について用いることができる。
【0200】
実施例11:予防および治療上の有用性の証明
HCVに慢性感染したチンパンジーにおける肝臓疾患は、E1で免疫することによって低減することができる。しかし、有意な免疫応答を達成するためには複数回の免疫が必要であった。当業者は、ウイルス残存性が、ウイルス自身によってまたは宿主によって支配された免疫調節に伴って生成されることを理解するであろう。このような免疫調節がHCVにおいて存在するかどうかを分析するために、ナイーブ(未感染)および慢性感染チンパンジーにおけるE1およびNS3に対する免疫応答を比較した。慢性感染動物においてより低い応答が予想されたので、この群の動物を、以下を含む、より徹底的な免疫スケジュールのために選択した:マウスにおいてミョウバン(これはナイーブ動物について使用したアジュバントである)と比較して細胞性応答の誘導(表9)についてより強力であることが証明されたアジュバントの使用;そして、慢性感染動物についての免疫スケジュールは、ナイーブ動物については6回であったのに対し、12回の免疫から成っていた(図47)。
免疫した動物の数は、統計的分析を可能にしなかったが、以下の明確な傾向が液性応答において検知され得る(表10):血清転換(セロコンバージョン)のための免疫回数は、ナイーブ動物においてより少ない;そして、免疫応答の程度はナイーブ動物において実質的により大きく、2/3の感染動物が、12回の免疫の後でさえ、10内部単位のレベルに到達しない。
3回の免疫後の細胞性応答の分析により、以下のことを含むさらに大きな差異が明らかになった(図48a〜d):E1特異的T細胞増殖は、慢性感染動物においてはほとんどないのに対し、ナイーブな環境では明確な刺激が見られる;IL−2測定は、慢性キャリアにおけるT細胞コンパートメントの低い刺激を確認した;および、ミョウバンアジュバント含有ワクチンについて予測されるように、ナイーブ動物において明確なTh2(IL−4)応答が誘導される。
これは、少なくともE1免疫がナイーブ動物において予防的効果を提供することを確認するものであり、E2、および/またはE1およびE2タンパク質および/またはペプチドとの組み合わせが、ナイーブ動物において有用な治療的および/または予防的利益を提供しうることを示唆する。
HCV E1抗原に対する細胞性および液性の両方の応答を誘導するための「欠陥」は、以下の結果によって証明されるように、複数回の免疫によって部分的にのみ克服できる:各注射後の抗体タイターの上昇は記録されたが、ナイーブ動物におけるようなレベルには2/3の動物においては到達しなかった;および、T細胞増殖応答は非常に低いままであった(図49)。しかし、ELISPOTの結果は、IL−2のわずかな上昇(示していない)、IFN−gの無変化(示していない)、およびIL−4の上昇(図49)を示し、これは、Th2タイプの応答がより容易に誘導されることを示す。IL−4はナイーブ動物における3回の免疫後に到達されたレベルと比較して低いレベルのままであることが記録された。
非常に類似した観察が、慢性チンパンジーにおいてさらに強力なアジュバント(RIBI)を使用したNS3免疫について、なされた。ナイーブ動物におけるミョウバン処方と比較して、以下の点が注目される:誘導された抗体タイターは、両群において匹敵する(示していない);および、サイトカイン分泌およびT細胞増殖の両方が、ナイーブ動物における応答と比較して慢性動物ではほとんど見られない(図49a−b)。
現在のところ、慢性キャリアにおけるHCVに対する免疫応答は低いか、少なくとも感染を排除するには不充分である兆候があった。上記の結果は、HCV慢性キャリアの免疫系は欠陥している可能性があり、ナイーブな状況におけるように効率的にはそれらはHCV抗原に対して応答しない、という仮説を支持する。
Wiedmannらによる研究(Hepatology 2000;31:230−234)において、HBVについてのワクチン接種は、HCV慢性キャリアにおいては効果が低かったが、これは、このような免疫欠陥がHCV抗原に限らないことを示す。De Mariaら(Hepatology 2000;32:444−445)は、これらのデータを確認し、HCV患者のために適合させたワクチン用量決定処方を提案した。ここで提示したデータは、免疫の回数を増大させることが、液性免疫を実際に高めうるが、しかし、強力なアジュバントを使用してさえ、細胞性(特にTh1)応答は誘導が困難であることを示す。免疫系がより応答しやすい抗ウイルス治療の時に免疫を開始するのが有利である可能性がある。
【0201】
表の説明
表1:実施例1に示すE1タンパク質の異なる形態を構築するための増幅に用いたそれぞれのクローンおよびプライマーの特徴。
表2:抗E1試験の概要。
表3:競合研究のための合成ペプチド。
表4:経時的エンベロープ抗体レベルの変化。
表5:LTRおよびNR間の差異。
表6:マウスE2モノクローナル抗体間の競合実験。
表7:E1グリコシル化突然変異体の構築のためのプライマー。
表8:ELISAによるE1グリコシル化突然変異体の分析。
表9:アジュバント処理E1 Balb/cマウスのプロフィール。
表10:液性応答:異なるE1抗体レベルのために必要な免疫回数。
【0202】
【表3】
【0203】
【表4】
【0204】
【表5】
【0205】
【表6】
【0206】
【表7】
【0207】
【表8】
【0208】
【表9】
【0209】
【表10】
【0210】
【表11】
1 3回のsc/im免疫の後、3匹のランダムに選択したマウスを個別に分析し、結果を、E1刺激(1μg/ml)の4日後に得られた平均特異的cpmとして表した。かっこ内の数字は、バックグラウンドを超える特異的刺激を示したマウスの数である。
2 1回の単独の肢掌(footpath)内免疫の後(n=2)、結果をE1刺激(1μg/ml)の5日後に得られた平均特異的cpmとして表す。
【0211】
【表12】
1 免疫前にE1抗体が存在しなかった場合、カットオフレベルより高いELISAシグナルとして定義した。その他の場合においては、3つの個別の時点のプレ免疫タイターより高いタイターの観察をセロコンバージョンのポイントとして考えた。
2 単位は以下のようにして定義する:インターフェロン治療の前のゲノタイプ1bに感染したヒト慢性キャリアにおけるE1抗体のレベルは50%の患者について<0.1U/mlであり;患者の25%については0.1〜1U/mlであり、残りの25%の患者においては>1U/mlである。n=58。
【0212】
実施例12:HCVサブタイプ1bに慢性感染したチンパンジーの免疫
HCVサブタイプ1b株に既に13年(免疫前5015日)以上感染していたチンパンジー(フィル)を、異なるゲノタイプの株から由来し、アミノ酸レベルで同一性95.1%の(WO99/67285の表2も参照されたい;その全体は参照によりここに援用される)、そしてWO99/97285の実施例1〜3に記載されたように調製した、E1(アミノ酸192〜326)でワクチン接種した。このチンパンジーは、製造者(Ribi Inc., Hamilton, MT)のプロトコールにしたがってRIBI R−730(MPLA+TDM+CWS)と混合したPBS/0.05%CHAPS中の、それぞれ50μgのE1の合計6回の筋内免疫を受けた。この6回の免疫は、3週間の間隔をあけた3回の注射の2つのシリーズで、その2つのシリーズ間に6週間のラグ期間をおいて与えた。免疫前150日から出発して、免疫期間中および免疫後1年間まで(しかし、以下およびWO99/67285を参照されたい)、このチンパンジーを、HCV誘発疾患の活性についての種々のパラメーター指標について連続的にモニタリングした。これらのパラメーターは、血液化学、ALT,AST,ガンマGT,血液化学、血清中ウイルス量、肝臓内ウイルス量および肝臓組織学を含んでいた。さらに、免疫に対する免疫回答を、液性および細胞性レベルでモニタリングした。この期間中、動物を、行動の変化、臨床症状、体重、体温および局所反応(赤み、腫脹、硬化)のような免疫のあらゆる悪影響についてもモニタリングした。このような影響は検出されなかった。
明らかに、ALT(および特にガンマGT、データは示していない)レベルはE1に対する抗体レベルが最高に達すると直ちに減少した(WO99/67285の図8参照)。ALTは、抗体レベルが低下し始めるや否やむしろ迅速に再上昇したが、ガンマGTは抗E1が検出可能のままである限りは低いレベルにとどまった。
肝臓のE2抗原は、この期間中にほとんど検出不能のレベルに低下し、この期間中に、抗E1は検出可能であり、E2抗原はこれらの抗体の消失後ほどなく再上昇した。コアおよびE2抗原が肝臓において検出不能になるとともに、肝臓の炎症は顕著に軽快した(WO99/67285の図3も参照)。これは、ワクチンが、おそらくウイルス抗原を少なくとも部分的にその主要標的器官である肝臓から除去することによって、肝臓損傷の軽快を誘発することの主要な証拠である。
ウイルス血症(viraemia)レベルは、Amplicor HCV Monitor (Roche, Basel, Switzerland)によって測定したところ、研究期間全体のあいだ血清中でほぼ不変のままであった。
液性応答のさらに詳細な分析により、最高終点タイターが14.5×103(6回の免疫後)に達したこと、およびこのタイターが免疫1年後に検出不能まで低下したことが解明された(WO99/67285の図8)。WO99/67285の図9は、ペプチドによって模倣することができ、B細胞によって認識される主要エピトープは、E2のN末端領域に位置することを示す(ペプチドV1V2およびV2V3、使用したペプチドに関する詳細についてはWO99/67285の表4参照)。組換えE1に対する反応性はより高く、長く存続するので、この図から、これらのペプチドを認識する抗体は、E1に対する抗体集団全体のほんの一部のみを表すことも推定されうる。残りの部分は、ペプチドによって模倣され得ないエピトープ、すなわち不連続エピトープに対するものである。このようなエピトープは、完全E1分子上、または粒子様構造上のみに存在する。このようなE1に対する免疫応答は、少なくとも、感染の自然の経過中に抗E1抗体を生じるヒト慢性HCVキャリアにおいて(MaertensらのWO96/13590)およびチンパンジーにおいて(van Doornら、1996)、通常観察されるものと比較して、ユニークである。これらの患者において、抗E1は、一部分は不連続エピトープにも向けられているが、大部分はC4エピトープ(±50%の患者血清)に対して、小部分はV1V2(ゲノタイプによって2〜70%の範囲にわたる)に対して向けられており、V2V3に対する反応性は例外的に記録されるに過ぎない(Maertensら、1997)。
T細胞反応性の分析は、これらのT細胞の刺激インデックスが1から2.5に上昇し、追跡期間中いくらか上昇したままにとどまるので、免疫系のこのコンパートメントがワクチンによって特異的に刺激されることを示した(WO99/67285の図10)。インターフェロン治療に対する長期応答者において唯一見られるのは、このT細胞反応性である(Leroux−RoelsらのPCT/EP94/03555;Leroux−Roelsら、1996参照)。
【0213】
実施例13:異なるサブタイプを有する慢性HCVキャリアの免疫
ゲノタイプ1a由来HCVに既に10年(免疫前3809日)以上感染しているチンパンジー(トン)を、アミノ酸レベルで79.3%しか同一性がなく(WO99/67285の表2も参照されたい)、先の実施例に記載したように調製した、ゲノタイプ1b由来のE1でワクチン接種した。このチンパンジーは、製造者(Ribi Inc., Hamilton, MT)のプロトコールにしたがってRIBI R−730と混合したPBS/0.05%CHAPS中の50μgのE1の合計6回の筋内免疫を受けた。この6回の免疫は、3週間の間隔をあけた3回の注射の2つのシリーズで、その2つのシリーズ間に4週間のラグ期間をおいて与えた。免疫前250日から出発して、免疫期間中および免疫後9ヶ月まで(しかし、以下およびWO99/67285を参照されたい)このチンパンジーを、HCV誘発疾患の活性についての種々のパラメーター指標について連続的にモニタリングした。これらのパラメーターは、血液化学、ALT,AST,ガンマGT,血清中ウイルス量、肝臓内ウイルス量および肝臓組織学を含んでいた。さらに、免疫に対する免疫回答を、液性および細胞性レベルでモニタリングした。この期間中、動物を、行動の変化、臨床症状、体重、体温および局所反応(赤み、腫脹、硬化)のような免疫のあらゆる悪影響についてもモニタリングした。このような影響は検出されなかった。
明らかに、ALTレベル(およびガンマGTレベル、データは示していない)はE1に対する抗体レベルが最高に達すると直ちに低減した(WO99/67285の図11)。ALTおよびガンマGTは、抗体レベルが低下し始めるや否や再上昇したが、ALTおよびガンマGTは、完全な追跡期間中低いレベルにとどまった。ALTレベルは、ワクチン接種前(85±11U/l)と比較してワクチン接種後にむしろ有意に低減した(62±6U/l)。より少ない組織損傷のマーカーが血清中で回収されたので、これらの知見は、ワクチン接種が肝臓疾患の改善を誘導したことの最初の指標であった。
E2抗原レベルは、抗E1が1.0×103のタイターを超えるままであった期間中に、検出不能となったが、より低いE1抗体レベルの時には再び検出可能となった。HCV抗原の消失とともに、肝臓の炎症は、中程度の慢性活性肝炎から慢性持続性肝炎の最小限の形態へと顕著に軽減した(WO99/67285の表3)。これは、ワクチンが、おそらく(少なくとも部分的に)ウイルスをその主要な標的器官である肝臓から除去することによって、肝臓損傷の軽快を誘導したことの別の主要な証拠である。
ウイルス血症レベルは、Amplicor HCV Monitor(Roche, Basel, Switzerland)によって測定したところ、研究期間全体のあいだ血清中でほぼ同じレベルのままであった。液性応答のさらに詳細な分析により、最高終点タイターが30×103(6回の免疫後)に達したこと、およびこのタイターが免疫9ヶ月後に0.5×103まで低下したことが解明された(WO99/67285の図11)。WO99/67285の図12は、ペプチドによって模倣することができ、B細胞によって認識される主要エピトープが、N末端領域に位置することを示す(ペプチドV1V2およびV2V3、使用したペプチドに関する詳細についてはWO99/67285の表4参照)。組換えE1に対する反応性はより高く、長く存続するので、この図から、これらのペプチドを認識する抗体は、E1に対する抗体集団全体のほんの一部のみを表すことも推定されうる。残りの部分は、ペプチドによって模倣され得ないエピトープ、すなわち不連続エピトープに対するものである可能性が最も高い。このようなエピトープは、おそらく完全E1分子上または粒子様構造上のみに存在する。このようなE1に対する免疫応答は、少なくとも、検出可能な抗E1を有するヒト慢性HCVキャリアにおいて通常観察されるものと比較して、ユニークである。これらの患者において、抗E1は、一部分は不連続エピトープにも向けられているが、大部分はC4エピトープ(50%の患者血清)に対して、小部分はV1V2(ゲノタイプによって2〜70%の範囲にわたる)に対して向けられており、V2V3に対する反応性は例外的に記録された(Maertensら、1997)。このチンパンジーは1a単離株に感染しているので、抗体応答を、E1−1a抗原に対する交差反応性についても評価した。WO99/67285の図13において見られるように、このような交差反応性抗体は、抗体集団全体のほんの一部を形成するにすぎないとしても、確かに生成されている。顕著なのは、肝臓中のウイルス抗原の再出現と血清中の検出可能な抗1a E1抗体の消失との相関である。
T細胞反応性の分析は、これらのT細胞の刺激インデックスが0.5から5に上昇し、追跡期間中上昇したままにとどまるので、免疫系のこのコンパートメントがワクチンによって特異的に刺激されることを示した(WO99/67285の図14)。
【0214】
実施例14:E1でのHCV慢性キャリアの再増強( reboosting )
実施例12および13において観察されたE1抗体タイターは安定ではなく、時間とともに低下したので(1b感染チンパンジーにおいては検出不能レベルにまで)、この抗体応答が、付加的な追加免疫によって再び増大し得るかどうかを調べた。両チンパンジーを、3週間の間隔で3回の連続的筋内免疫によって再度免疫した(RIBIアジュバントと混合された50μgのE1)。WO99/67285の図8および11から判定し得るように、抗E1応答は、実際、増強され得、再び肝臓中のウイルス抗原レベルは検出限界未満に低減した。しかし、トンにおいては、血清中のウイルス量は一定のままであった(WO99/67285の図11)。追跡期間中初めて、1ml当り<105ゲノム等量のウイルス血症レベルが測定された。
注目すべきは、最初のシリーズの免疫について既にそうであったように、サブタイプ1bのHCV株に感染したチンパンジー(フィル)はサブタイプ1aのHCV株に感染したチンパンジーよりも低い抗E1タイターで応答する(トンについて最初のラウンドにおける最高タイター14.5×103対30×103、そして付加的な追加免疫後フィルについてわずか1.2×103対トンについて40×103)という知見である。両方の動物について有益な効果は同様であるように見えるが、この実験から、別のサブタイプまたはゲノタイプ由来のE1タンパク質での慢性キャリアの免疫は、より高いタイターに達するのに特に有益であり得、おそらく、感染サブタイプまたはゲノタイプによって誘導された、先に存在する、宿主中に存在する特異的免疫抑制を回避しうる、と結論することができる。あるいは、相同の環境(1bワクチン+1b感染)において観察されたより低いタイターは、ウイルスに対する抗体の大部分の結合を示す可能性がある。したがって、誘導された抗体は中和能を有する可能性がある。
【0215】
実施例15:チンパンジーにおけるE1ワクチン接種の予防的有用性の証明
HCV E1sタンパク質(アミノ酸192〜326)を、組換えワクシニアウイルスHCV11Bを用いてVero細胞において発現させた。このワクシニアウイルスは、(米国特許第6150134号に記載されたとおり;その内容全体は参照によりここに援用される)vvHCV11Aと本質的に同一であるが、RK13からVero細胞に継代された。このタンパク質を、本質的にPCT/E99/04342(WO99/67285)の実施例9に記載されたように、(レンチルクロマトグラフィ、還元アルキル化およびサイズ排除クロマトグラフィによって)システインのアルキル化剤としてヨードアセタミドを使用して精製した。精製後、PCT/E99/04342の実施例1に記載されたようにサイズ排除クロマトグラフィによって3%Empigen−BBを3%ベタインに交換した。このプロセスは、E1sを粒子として回収することを可能にする。最後に、この物質を、0.5%ベタインおよび500μg/mlのE1s濃度を有するPBSに脱塩した。このE1を、等量のAlhydrogel 1.3%(Superfos, Denmark)と混合し、最終的に8倍容量の0.9%NaClでさらに希釈し、50μg/mlのE1および0.13%のAlhydrogelの濃度のミョウバンアジュバント含有E1を生じた。
HCV E2デルタHVRI(アミノ酸412〜715)を、PCT/E99/04342の実施例8に記載されたpvHCV−101と野生型ワクシニアウイルスから組換えされた組換えワクシニアウイルスHCV101を用いて、本質的にE1について記載したようにVero細胞で発現させ、精製した。E2デルタHVRIもまた、Empigenからベタインに交換した後、粒子として挙動する(動的光散乱によって測定)。
HCV−RNAおよびHCV抗体について陰性の試験結果を与えた5匹のチンパンジーを選択した。動物のうち1匹(ハウブ)は免疫せず、2匹の動物はミョウバンでアジュバント化した50μgのE1での6回の免疫を受け(マーティおよびヨーラン)、残りの2匹の動物はミョウバンでアジュバント化した50μgのE2デルタHVRIでの6回の免疫を受けた(ジョーストおよびカーリン)。すべての免疫は、3週間の間隔で筋内投与した。液性および細胞性応答を、各動物においてそれらを免疫した抗原に対して評価し、各動物において表11に示すように両タイプの応答が検出された。
表11:6回目の免疫の2週間後に抗体タイターをELISAによって決定した。試料の連続希釈物を社内(インハウス)標準と比較した(1000mU/mlのE1または抗E2デルタHVRI抗体を有すると定義されたこの社内標準は、高抗エンベロープタイターに基づいて選択されたHCV慢性キャリア由来の3つの血清の混合物である)。刺激インデックス(細胞性免疫応答を反映する)は、エンベロープ抗原の存在下または不存在下で、3回目の免疫後2週間の動物から採取したPBMCを培養し、培養5日後の18時間のパルス中にこれらの細胞に取り込まれたトリチウム化チミジンの量を決定することによって得られた。刺激インデックスは、エンベロープ抗原と培養された細胞に取り込まれたチミジン対抗原なしで培養されたものの比である。>3の刺激インデックスは陽性シグナルと考えられる。
【0216】
【表13】
【0217】
6回の免疫の最後の3週間後、対照を含むすべての動物を、100CID(チンパンジー感染用量)のゲノタイプ1b接種物(J4.91;NIH,Bethesda,MarylandのJ. Bukh博士の好意により提供された)で攻撃した。ワクチンタンパク質とJ4.91単離株(その配列情報は受託番号BAA01583として利用可能である)とのアミノ酸配列多様性は、E1sについて7%(135アミノ酸のうち9個)、そしてE2デルタHVRIについて11%(304アミノ酸のうち32個)である。結果として、この攻撃は非相同と考えられ、現実生活の攻撃を反映する。
すべてのチンパンジーは、攻撃後7日にHCV−RNA陽性(Monitor HCV、Roche, Basel, Switzerlandで決定した)となり、最初のALTおよびガンマGTピークは第35日と63日の間に測定された。これは、すべてのチンパンジーが急性肝炎を発症したことを証明する。顕著なことに、E1で免疫した両方の動物は、その感染を散らしたが、E2デルタHVRIおよび対照の動物はそうではなかった。これは、E1で免疫された動物が第98日(ヨーラン)および133日(マーティ)にHCV−RNAを失い(Monitor HCV、Roche, Basel, Switzerlandによって決定した)、毎月試験して第273日まで陰性のままであったという事実によって証明される。その他のすべての動物は、273日間の追跡期間全体の間RNA陽性のままであり、それまではALTおよびガンマGT値はE1で免疫されたチンパンジーについてのように正常に戻らず、次第に増大した。
結論として、本発明者らは、E1免疫が、HCVに関する主要な健康問題である慢性感染への発展を防止することによって、HCV感染の自然の経過を変えることを示した。
【0218】
実施例16:チンパンジーにおいて感染の除去を可能にした同様のE1応答はヒトにおいて誘導することができる
ヒトにおいてE1免疫の予防的効果を得るためには、チンパンジーと比較して同様の免疫応答がヒトにおいて誘導されうることが必要である。したがって、本発明者らは、抗E1応答(液性または細胞性)が全く検出できなかった20人のヒト男性志願者を、0.5ml中の0.13%Alhydrogelで処方された20μgのE1sの3用量で免疫した。すべての免疫は、3週間の間隔をあけて筋内で与えた。表12で証明するように、20人の志願者のうち17人は、E1に対して有意な液性および細胞性免疫を実際に示し、これは深刻な悪影響を伴わなかった。1人の志願者(個体021)のみが、3回のE1免疫後に液性も細胞性もどちらの応答もカットオフレベルを超えなかったため、不応答者と考えられた。チンパンジーと比較して液性応答が低いという観察は、20μgでの3回の免疫のみが与えられ、50μgでの6回ではなかったという事実に関連している。
表12:抗体タイターを、3回目の免疫後2週間でELISAによって決定した。試料の連続希釈物を社内標準と比較した(1000mU/mlのE1または抗E2デルタHVRI抗体を有すると定義されたこの社内標準は、高抗エンベロープタイターに基づいて選択されたHCV慢性キャリア由来の3つの血清の混合物である)。刺激インデックス(細胞性免疫応答)は、1μgのE1sの存在下または不存在下で、3回目の免疫後2週間の個体から採取したPBMCを培養し、培養5日後の18時間のパルス中にこれらの細胞に取り込まれたトリチウム化チミジンの量を決定することによって得られた。刺激インデックスは、エンベロープ抗原と培養された細胞に取り込まれたチミジン対抗原なしで培養されたものの比である。>3の刺激インデックスは陽性シグナルと考えられる。
【0219】
【表14】
【0220】
*この個体は、ELISAシグナルの有意な増大が免疫前試料と3回免疫後の試料との間に見られず、しかしタイターが非常に低く、正確な決定が不可能であるため、免疫後抗E1陽性と考えられる。
【0221】
実施例17:ワクチン接種した健常志願者におけるE1応答の増強
実施例16の20人のヒト志願者のうち19人を、0.5ml中の0.13%Alhydrogelで処方した20μgのE1sで第26週(すなわち3回目の免疫の20週間後)にもう一度追加免疫した。再び抗体タイターおよび細胞性免疫応答をこの付加的な免疫の2週間後に決定した。すべての個体において、抗体タイターは20週間の間隔のあいだに低減していたが、この付加的な免疫によって第8週に観察されたレベルと同じまたはそれ以上まで容易に増強され得た。平均で、抗体タイターは、第8週のタイターと比較してこの追加免疫後は2倍高く、第26週のタイターと比較して7倍高かった(表13)。
表13:抗体タイターを、3回目の免疫後2週間(=第8週)および20週間(=第26週)、および最後に追加免疫後2週間(=第28週)にELISAによって決定した。試料の連続希釈物を社内標準と比較した(1000mU/mlのE1抗体を有すると定義されたこの社内標準は、高抗エンベロープタイターに基づいて選択されたHCV慢性キャリア由来の3つの血清の混合物である)。正確な比較のために、第8週でのタイターの決定を、第26週および28週の試料と同じアッセイ内で反復したが、これは実施例16の表12との違いを説明する。
【0222】
【表15】
【0223】
顕著なことに、T細胞応答は個体の大多数について20週間の間隔の後にもなお高かった。以前のワクチン接種の結果としてほとんどの個体に存在する破傷風(tetanos)応答に対する標準化を考慮に入れると、刺激インデックスの幾何平均には変化はない。付加的な追加免疫後、破傷風応答に対する標準化を考慮にいれて、変化が見られない(図51)。これは、強いTヘルプ応答が3回のE1免疫後に誘導されたことを確認するものであり、これらの免疫が、少なくとも6ヶ月の間、さらなる追加免疫を必要としない、既に非常に良好なTヘルプメモリーを誘導したことを示す。
図51の凡例:刺激インデックス(細胞性免疫応答)は、3μgの組換えE1sまたは2μgの破傷風トキソイドの存在下または不存在下で、免疫前(第0週)、3回目の免疫の2週間後(第8週)、追加免疫前(第26週)および追加免疫の2週間後(第28週)に個体から採取したPBMC(105細胞)を培養し、培養5日後の18時間のパルス中にこれらの細胞に取り込まれたトリチウム化チミジンの量を決定することによって得られた。刺激インデックスは、エンベロープ抗原と培養された細胞に取り込まれたチミジン対抗原なしで培養されたものとの比である。第0週および第8週の試料を最初のアッセイ(A)で決定し、第26週および第28週の試料を第2のアッセイ(B)(第0週の試料を再分析した)で決定した。結果は、20人すべての(A,実験)または19人(B,実験)の志願者の幾何平均刺激インデックスとして表す。
さらに、Th1サイトカインであるインターフェロン−γおよびTh2サイトカインであるインターロイキン−5を、第26および28週に採取しE1で再刺激した試料のPBMC培養の上清中で測定した。図52から判定され得るように、E1刺激PBMCによって分泌される優勢サイトカインはインターフェロン−γである。ミョウバンはTh2誘導因子として知られているので、ミョウバンでアジュバント化したE1について強いTh1偏向型の応答が観察されるのを見ることは、非常に驚くべきことである。再度、最終追加免疫前(第26週)に既に非常に強い応答が観察されるので、これらの結果は、良好なT細胞メモリー応答が誘導されることを確認する。インターフェロン−γ分泌は、特異的であることが見出されたが、これは、更なる実験において本発明者らは第0週に採取した試料を用いてこれらの志願者のE1刺激細胞培養と非刺激細胞培養との間でインターフェロン−γ分泌に差を見出さなかったからである。
図52の凡例:追加免疫前(第26週)および追加免疫2週間後(第28週)に個体から採取したPBMC(105細胞)を、3μgの組換えE1s(E1)または2μgの破傷風トキソイド(TT)の存在下、または抗原なし(BI)で培養した。24時間後(インターロイキン−5)または120時間後(インターフェロン‐γ)に採取された上清においてELISAによってサイトカインを測定した。刺激インデックスは、エンベロープ抗原と培養された細胞の上清中で測定されたサイトカイン対抗原なしで培養されたものとの比である。結果は、19人すべての志願者の分泌されたpgサイトカイン/mlの幾何平均として表す。検出限界を下回るサイトカイン量の試料には、検出限界の値を与えた。同様に、アッセイの直線範囲を逸脱する非常に高濃度のサイトカインを有する試料には、アッセイの直線範囲の限界の値を与えた。
【0224】
実施例18:ワクチン接種した健常志願者におけるE1に対する細胞性応答の詳細マッピング
E1特異的応答をマッピングするために、標準Fmoc化学を用いて、8アミノ酸の重複を有し、E1sの全体の配列をカバーする、一連の20マーペプチドを合成した。すべてのペプチドを、C末端でアミド化し、N末端でアセチル化した(IGP1626は遊離アミノ末端を有し、例外である)。
【0225】
【表16】
【0226】
E1sでワクチン接種されていない異なる14人の健常ドナーおよびE1sでワクチン接種された10人のドナー由来のPBMCを、25μg/ml(未ワクチン接種者)または10μg/ml(ワクチン接種者、3回目または追加免疫注射後に試料を採取)の各ペプチド別個の存在下で培養した。図53から判定され得るように、ペプチドIGP1627、1629、1630,1631,1633,1635および1635はすべて、未ワクチン接種者と比較してワクチン接種者において有意に高い応答を誘導した。カットオフとして3という刺激インデックスを用いて、ペプチドIGP1627、1629、1631および1635はもっとも高頻度で認識された(すなわち、試験したワクチン接種者の少なくとも半数に認識された)。この実験は、哺乳動物細胞培養に由来するE1sによって誘導されたT細胞応答が、E1に対して特異的であることを証明する。これは、これらの応答が、哺乳動物細胞培養由来の同じE1sによって呼び起こされるのみでなく、合成ペプチドによっても呼び起こされるからである。さらに、この実験は、E1において最も免疫原性のT細胞ドメインが、アミノ酸204〜223、228〜271、276〜295、300〜331の間、そしてより具体的にはアミノ酸204〜223、228〜247、252〜271および300〜319の間に位置することを明らかにする。
図53の凡例:刺激インデックス(細胞性免疫応答)は、ペプチドの存在下または不存在下でPBMC(3×105細胞)を培養し、培養5〜6日後のパルス中にこれらの細胞に取り込まれたトリチウム化チミジンの量を滴定することによって得られた。刺激インデックスは、ペプチドと培養された細胞に取り込まれたチミジン対ペプチドなしで培養されたものとの比である。結果は、ワクチン接種者(上のパネル)または未ワクチン接種者(下のパネル)について個別の値として表す。
本発明はまた、そのために、以下のE1ペプチド、タンパク質、それらを含む組成物およびキット、これらのペプチドおよびそれらを含むタンパク質をコードする核酸配列、およびそれらの製造および使用の方法をも、それらが本発明の他のE1および関連ペプチドについてここで一般的に記載されているように、提供する。
IGP1626、E1領域の位置192〜211にわたる(配列番号112)、
IGP1627、E1領域の位置204〜223にわたる(配列番号113)、
IGP1628、E1領域の位置216〜235にわたる(配列番号114)、
IGP1629、E1領域の位置228〜247にわたる(配列番号115)、
IGP1630、E1領域の位置240〜259にわたる(配列番号116)、
IGP1631、E1領域の位置252〜271にわたる(配列番号117)、
IGP1632、E1領域の位置264〜283にわたる(配列番号118)、
IGP1633、E1領域の位置276〜295にわたる(配列番号119)、
IGP1634、E1領域の位置288〜307にわたる(配列番号120)、
IGP1635、E1領域の位置300〜319にわたる(配列番号121)、
IGP1636、E1領域の位置312〜331にわたる(配列番号122)。
【0227】
【表17】
【図面の簡単な説明】
【図1】
プラスミドpgpt ATA18の制限地図。
【図2】
プラスミドpgs ATA18の制限地図。
【図3】
プラスミドpMS66の制限地図。
【図4】
プラスミドpv HCV−11Aの制限地図。
【図5】
IFN処理に対する無応答者における抗E1レベル。
【図6】
IFN処理に対する応答者における抗E1レベル。
【図7】
IFN処理に対する完全応答患者における抗E1レベル。
【図8】
IFN処理に対する不完全応答者における抗E1レベル。
【図9】
IFN処理に対する不応答者における抗E2レベル。
【図10】
IFN処理に対する応答者における抗E2レベル。
【図11】
IFN処理に対する不完全応答患者における抗E2レベル。
【図12】
IFN処理に対する完全応答者における抗E2レベル。
【図13】
ペプチドと競合したヒト抗E1反応性。
【図14】
ペプチドとの抗E1モノクローナル抗体の反応性の競合。
【図15】
IFN処理に対する不応答者における抗E1(エピトープ1)レベル。
【図16】
IFN処理に対する応答者における抗E1(エピトープ1)レベル。
【図17】
IFN処理に対する不応答者における抗E1(エピトープ2)レベル。
【図18】
IFN処理に対する応答者における抗E1(エピトープ2)レベル。
【図19】
ペプチドとの抗E2モノクローナル抗体の反応性の競合。
【図20】
ペプチドと競合したヒト抗E2反応性。
【図21】
本発明の核酸配列。本発明のE1またはE2タンパク質をコードする核酸配列は、配列表に示すそれぞれのE1またはE2タンパク質のアミノ酸配列に翻訳され得る(配列番号3〜13、21〜31、35および41〜49は残基番号1から開始するリーディングフレームで翻訳され、配列番号37〜39は残基番号2から開始するリーディングフレームで翻訳される)。
【図22】
wHCV39(タイプ1b)、wHCV40(タイプ1b)、wHCV62(タイプ3a)およびwHCV63(タイプ5a)に感染した細胞ライセートの4回の異なるE1精製のレンチルレクチンクロマトグラフィ溶出液フラクションから得られたELISA結果。
【図23】
図22に示す値に基づいた4つの異なるE1構築物のレンチルレクチンクロマトグラフィから得られた溶出プロフィール。
【図24】
wHCV39(タイプ1b)、wHCV40(タイプ1b)、wHCV62(タイプ3a)およびwHCV63(タイプ5a)に感染した細胞ライセートの4回の異なるE1精製のゲルろ過クロマトグラフィ後に得られたフラクションから得られたELISA結果。
【図25】
タイプ1b(1)、タイプ3a(2)、およびタイプ5a(3)(それぞれwHCV39、wHCV62、wHCV63に感染したRK13細胞由来;実施例5.2〜5.3におけるようにレンチルレクチン上で精製され、還元されたもの)および標準(4)のE1タンパク質の精製から得られたプロフィール。「1」、「2」および「3」で示すピークは、純粋E1タンパク質ピークを表す(図24を参照されたい、E1反応性は主にフラクション26〜30中)。
【図26】
E1 wHCV40(タイプ1b)の生ライセート(レーン1)、図25に示すフラクション10〜17を表すwHCV40のゲルろ過のプール1(レーン2)、図25に示すフラクション18〜25を表すwHCV40のゲルろ過のプール2(レーン3)、およびE1プール(フラクション26〜30)(レーン4)の、実施例4に記載されたSDS−PAGEの銀染色。
【図27】
E1構築物39(タイプ1b)および62(タイプ3a)のゲルろ過のフラクションのストレプトアビジン−アルカリホスファターゼブロット。タンパク質は、NEM−ビオチンで標識された。レーン1:出発ゲルろ過構築物39;レーン2:フラクション26構築物39;レーン3:フラクション27構築物39;レーン4:フラクション28構築物39;レーン5:フラクション29構築物39;レーン6:フラクション30構築物39;レーン7:フラクション31構築物39;レーン8:分子量マーカー;レーン9:出発ゲルろ過構築物62;レーン10:フラクション26構築物62;レーン11:フラクション27構築物62;レーン12:フラクション28構築物62;レーン13:フラクション29構築物62;レーン14:フラクション30構築物62;レーン15:フラクション31構築物62。
【図28】
図26と同一の条件下で行ったwHCV−39(E1s、タイプ1b)およびwHCV−62(E1s、タイプ3a)のゲルろ過フラクションのSDS−PAGEの銀染色。レーン1:出発ゲルろ過構築物39;レーン2:フラクション26構築物39;レーン3:フラクション27構築物39;レーン4:フラクション28構築物39;レーン5:フラクション29構築物39;レーン6:フラクション30構築物39;レーン7:フラクション31構築物39;レーン8:分子量マーカー;レーン9:出発ゲルろ過構築物62;レーン10:フラクション26構築物62;レーン11:フラクション27構築物62;レーン12:フラクション28構築物62;レーン13:フラクション29構築物62;レーン14:フラクション30構築物62;レーン15:フラクション31構築物62。
【図29】
精製手順の完全な概略を与える抗E1マウスモノクローナル抗体5E1A10でのウェスタンブロット分析。レーン1:粗ライセート;レーン2:レンチルクロマトグラフィの素通り物(フロースルー);レーン3:レンチルクロマトグラフィ後のEmpigenn−BBでの洗浄物;レーン4:レンチルクロマトグラフィの溶出液;レーン5:レンチル溶出液の濃縮中のフロースルー;レーン6:サイズ排除クロマトグラフィ(ゲルろ過)後のE1のプール。
【図30】
wHCV44に感染したRK13細胞由来のE2タンパク質のレンチルレクチンクロマトグラフィのOD280プロフィール(連続線)。点線は、(実施例6のように)ELISAによって検出されたE2反応性を表す。
【図31A】
wHCV44に感染したRK13細胞由来のレンチルレクチンゲルろ過クロマトグラフィのE2タンパク質のプールのOD280プロフィール(連続線)。ここでは、E2プールはゲルろ過カラムに直ちに適用されている(非還元条件)。点線は、(実施例6のように)ELISAによって検出されたE2反応性を表す。
【図31B】
wHCV44に感染したRK13細胞由来のレンチルレクチンゲルろ過クロマトグラフィのE2タンパク質のプールのOD280プロフィール(連続線)。ここでは、E2プールは実施例5.3のように還元され、ブロックされた(還元条件)。点線は、(実施例6のように)ELISAによって検出されたE2反応性を表す。
【図32】
図31Bに示すような還元条件下のゲルろ過後のwHCV44から発現されたE2タンパク質のELISA反応性およびNi2+−IMACクロマトグラフィ。
【図33】
図32に示すNi2+−IMACクロマトグラフィの200mMイミダゾール溶出工程(レーン2)および30mMイミダゾール洗浄(レーン1)によって回収された精製E2タンパク質0.5μgのSDS−PAGEの銀染色。
【図34】
イミダゾールを除去することを意図した、図33に示すような200mMイミダゾールによって回収された精製E2タンパク質の脱塩工程のODプロフィール。
【図35A】
LIAスキャン法によって決定された処理中および処理後6〜12ヶ月の間に追跡された、NRおよびLTRについての異なるHCV抗原(コア1、コア2、E2HCVR、NS3)に対する抗体レベル。平均値は、白四角を付した曲線で示す。
【図35B】
LIAスキャン法によって決定された処理中および処理後6〜12ヶ月の間に追跡された、NRおよびLTRについての異なるHCV抗原(NS4、NS5、E1およびE2)に対する抗体レベル。平均値は、白四角を付した曲線で示す。
【図36】
LTRおよびNR群における平均E1抗体(E1Ab)およびE2抗体(E2Ab)レベル。
【図37】
タイプ1bおよびタイプ3aに関して不応答者(NR)および長期応答者(LTR)についての平均E1抗体(E1Ab)レベル。
【図38】
抗E2モノクローナル抗体の相対地図位置。
【図39】
HCV E1エンベロープタンパク質の部分的脱グリコシル化。wHCV10A感染RK13細胞のライセートを、製造者の指示にしたがって異なる濃度のグリコシダーゼとともにインキュベートした。右パネル:グリコペプチダーゼF(PNGアーゼF)。左パネル:エンドグリコシダーゼH(Endo H)。
【図40】
HCV E2エンベロープタンパク質の部分的脱グリコシル化。wHCV64感染(E2)およびwHCV41感染(E2s)RK13細胞のライセートを、製造者の指示にしたがって異なる濃度のグリコペプチダーゼF(PNGアーゼF)とともにインキュベートした。
【図41】
HCV E1糖タンパク質のインビトロ突然変異誘発。変異配列および新規の制限部位の作製の地図。
【図42A】
HCV E1糖タンパク質のインビトロ突然変異誘発(パート1)。PCR増幅の第一段階。
【図42B】
HCV E1糖タンパク質のインビトロ突然変異誘発(パート2)。重複伸長およびネストPCR。
【図43】
HCV E1糖タンパク質のインビトロ突然変異誘発。増幅の第一段階中に合成されたPCR突然変異フラグメント(GLY−#およびOVR−#)の地図。
【図44A】
HeLa(左)およびRK13(右)細胞において発現されたE1糖タンパク質突然変異体のウェスタンブロットによる分析。レーン1:野生型VV(ワクシニアウイルス);レーン2:もとのE1タンパク質(wHCV−10A);レーン3:E1突然変異体Gly−1(wHCV−81);レーン4:E1突然変異体Gly−2(wHCV−82);レーン5:E1突然変異体Gly−3(wHCV−83);レーン6:E1突然変異体Gly−4(wHCV−84);レーン7:E1突然変異体Gly−5(wHCV−85);レーン8:E1突然変異体Gly−6(wHCV−86)。
【図44B】
PCR増幅/制限によるE1グリコシル化突然変異体ワクシニアウイルスの分析。レーン1:E1(wHCV−10A)、BspEI;レーン2:E1 GLY−1(wHCV−81)、BspEI;レーン4:E1(wHCV−10A)、SacI;レーン5:E1 GLY−2(wHCV−82)、SacI;レーン7:E1(wHCV−10A)、SacI;レーン8:E1 GLY−3(wHCV−83)、SacI;レーン10:E1(wHCV−10A)、StuI;レーン11:E1 GLY−4(wHCV−84)、StuI;レーン13:E1(wHCV−10A)、SmaI;レーン14:E1 GLY−5(wHCV−85)、SmaI;レーン16:E1(wHCV−10A)、StuI;レーン17:E1 GLY−6(wHCV−86)、StuI;レーン3−6−9−12−15:低分子量マーカー、pBluescript SK+、MspI。
【図45】
S. cerevisiaeにおいて発現された組換えE2のSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動。接種物をロイシン選択培地中で72時間生育させ、完全培地で1/15希釈した。28℃での培養10日後、培地試料を採取した。スピードバックで濃縮した培養上清200μl等量をゲルに適用した。2つの別個の形質転換体を分析した。
【図46】
グリコシル化欠損S. cerevisiae突然変異体において発現された組換えE2のSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動。接種物をロイシン選択培地中で72時間生育させ、完全培地で1/15希釈した。28℃での培養10日後、培地試料を採取した。イオン交換クロマトグラフィで濃縮した培養上清350μl等量をゲルに適用した。
【図47】
チンパンジーのプロフィールおよび免疫スケジュール。
【図48】
3回の免疫後の細胞性応答。
【図49】
繰り返したE1免疫に際しての細胞性応答の進展。
【図50】
NS3免疫に際しての細胞性応答。
Claims (14)
- 治療的に有効な量の、
E1タンパク質およびE2タンパク質からなる群より選択される少なくとも1つの精製組換えHCV単一または特異的オリゴマー状組換えエンベロープタンパク質;および場合により薬学的に許容可能なアジュバントを含む組成物
を含む、治療ワクチン組成物。 - 前記組換えHCVエンベロープタンパク質が、組換え哺乳動物細胞によって産生される、請求項1記載の組成物。
- 前記組換えHCVエンベロープタンパク質が、組換え酵母細胞によって産生される、請求項1記載の組成物。
- 以下のE1およびE2ペプチド:
コア/E1 V1領域のアミノ酸181〜200にわたるE1−31(配列番号56)、
E1領域のアミノ酸193〜212にわたるE1−33(配列番号57)、
E1 V2領域のアミノ酸205〜224にわたるE1−35(配列番号58)(エピトープB)、
E1 V2領域のアミノ酸208〜227にわたるE1−35A(配列番号59)(エピトープB)、
E1領域V1、C1、およびV2領域のアミノ酸192〜228にわたる1bE1(配列番号53)(エピトープBを含む)、
E1領域のアミノ酸301〜320にわたるE1−51(配列番号66)、
E1 C4領域のアミノ酸313〜332にわたるE1−53(配列番号67)(エピトープA)、
E1領域のアミノ酸325〜344にわたるE1−55(配列番号68)、
E2領域のアミノ酸位置397〜418にわたるEnv67すなわちE2−67(配列番号72)(エピトープA)、
E2領域のアミノ酸位置409〜428にわたるEnv69すなわちE2−69(配列番号73)(エピトープA)、
E2領域の位置583〜602にわたるEnv23すなわちE2−23(配列番号86)(エピトープE)、
E2領域の位置595〜614にわたるEnv25すなわちE2−25(配列番号87)(エピトープE)、
E2領域の位置607〜626にわたるEnv27すなわちE2−27(配列番号88)(エピトープE)、
E2領域の位置547〜586にわたるEnv178すなわちE2−178(配列番号83)(エピトープD)、
E2領域の位置523〜542にわたるEnv13BすなわちE2−13B(配列番号82)(エピトープC)、
E1領域の位置192〜211にわたるIGP1626(配列番号112)、
E1領域の位置204〜223にわたるIGP1627(配列番号113)、
E1領域の位置216〜235にわたるIGP1628(配列番号114)、
E1領域の位置228〜247にわたるIGP1629(配列番号115)、
E1領域の位置240〜259にわたるIGP1630(配列番号116)、
E1領域の位置252〜271にわたるIGP1631(配列番号117)、
E1領域の位置264〜283にわたるIGP1632(配列番号118)、
E1領域の位置276〜295にわたるIGP1633(配列番号119)、
E1領域の位置288〜307にわたるIGP1634(配列番号120)、
E1領域の位置300〜319にわたるIGP1635(配列番号121)、
および
E1領域の位置312〜331にわたるIGP1636(配列番号122)
の少なくとも1つを含む治療的に有効な量の組成物を含む治療ワクチン組成物。 - 請求項1〜4のいずれか1項記載の有効量の組成物、および場合により医薬的に許容可能なアジュバント、を投与することを含む、HCV感染した哺乳動物を処置する方法。
- 前記哺乳動物がヒトである、請求項5記載の方法。
- E1タンパク質およびE2タンパク質からなる群より選択される少なくとも1つの精製組換えHCV組換えエンベロープタンパク質、および場合によってはアジュバント、を含む組成物。
- 以下のE1およびE2ペプチド:
コア/E1 V1領域のアミノ酸181〜200にわたるE1−31(配列番号56)、
E1領域のアミノ酸193〜212にわたるE1−33(配列番号57)、
E1 V2領域のアミノ酸205〜224にわたるE1−35(配列番号58)(エピトープB)、
E1 V2領域のアミノ酸208〜227にわたるE1−35A(配列番号59)(エピトープB)、
E1領域V1、C1、およびV2領域のアミノ酸192〜228にわたる1bE1(配列番号53)(エピトープBを含む)、
E1領域のアミノ酸301〜320にわたるE1−51(配列番号66)、
E1 C4領域のアミノ酸313〜332にわたるE1−53(配列番号67)(エピトープA)、
E1領域のアミノ酸325〜344にわたるE1−55(配列番号68)、
E2領域のアミノ酸位置397〜418にわたるEnv67すなわちE2−67(配列番号72)(エピトープA)、
E2領域のアミノ酸位置409〜428にわたるEnv69すなわちE2−69(配列番号73)(エピトープA)、
E2領域の位置583〜602にわたるEnv23すなわちE2−23(配列番号86)(エピトープE)、
E2領域の位置595〜614にわたるEnv25すなわちE2−25(配列番号87)(エピトープE)、
E2領域の位置607〜626にわたるEnv27すなわちE2−27(配列番号88)(エピトープE)、
E2領域の位置547〜586にわたるEnv178すなわちE2−178(配列番号83)(エピトープD)、
E2領域の位置523〜542にわたるEnv13BすなわちE2−13B(配列番号82)(エピトープC)、
E1領域の位置192〜211にわたるIGP1626(配列番号112)、
E1領域の位置204〜223にわたるIGP1627(配列番号113)、
E1領域の位置216〜235にわたるIGP1628(配列番号114)、
E1領域の位置228〜247にわたるIGP1629(配列番号115)、
E1領域の位置240〜259にわたるIGP1630(配列番号116)、
E1領域の位置252〜271にわたるIGP1631(配列番号117)、
E1領域の位置264〜283にわたるIGP1632(配列番号118)、
E1領域の位置276〜295にわたるIGP1633(配列番号119)、
E1領域の位置288〜307にわたるIGP1634(配列番号120)、
E1領域の位置300〜319にわたるIGP1635(配列番号121)、
および
E1領域の位置312〜331にわたるIGP1636(配列番号122)
の少なくとも1つを含む組成物。 - 治療的に有効な量の、精製組換えHCV単一または特異的オリゴマー状組換えE1またはE2タンパク質から形成されたE1/E2複合体;および場合により医薬的に許容可能なアジュバントを含む組成物、を含む、HCV特異的抗体を誘導するための治療用組成物。
- 前記組換えHCVエンベロープタンパク質が、組換え哺乳動物細胞によって産生される、請求項9記載の組成物。
- 前記組換えHCVエンベロープタンパク質が、組換え酵母細胞によって産生される、請求項9記載の組成物。
- 請求項9〜11のいずれか1項記載の有効量の組成物、および場合により医薬的に許容可能なアジュバント、を投与することを含む、HCV感染した哺乳動物を処置する方法。
- 前記哺乳動物がヒトである、請求項12記載の方法。
- 治療的に有効な量の、E1タンパク質およびE2タンパク質からなる群より選択される少なくとも1つの精製組換えHCV単一または特異的オリゴマー状組換えエンベロープタンパク質;および場合により医薬的に許容可能なアジュバント、を含む治療的に有効な量の組成物を含む、HCV特異的抗体を誘導するための治療用組成物。
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