JP2004510789A - 選択的抗不安治療薬 - Google Patents

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Abstract

本発明は、あまり重症の副作用(例えば、鎮静作用と記憶消失作用、特に依存性傾向)の無い、不安関連障害の治療を可能にする選択的抗不安治療薬に関する。これらの選択的治療薬は、α1−GABA 受容体に比較してα2−GABA 受容体に選択的または優先的に結合する。あるいはこれらの選択的物質は、α1−GABA 受容体に比較してα2−GABA 受容体を選択的または優先的に活性化する。本発明はまた、かかる選択的抗不安治療薬の同定方法に関する。本発明はまた、α1−GABA 受容体へのベンゾジアゼピンの結合を低下させるが、α2−GABA 受容体への結合を実質的に低下させない、分子の同定方法に関する。

Description

【0001】
1. 発明の分野
本発明は、あまり重症の副作用(例えば、鎮静作用と記憶消失作用、特に依存性傾向)の無い、不安関連障害の治療を可能にする選択的抗不安治療薬に関する。これらの選択的治療薬は、α1−GABA 受容体に比較してα2−GABA 受容体に選択的または優先的に結合する。あるいはこれらの選択的物質は、α1−GABA 受容体に比較してα2−GABA 受容体を選択的または優先的に活性化する。本発明はまた、かかる選択的抗不安治療薬の同定方法に関する。本発明はまた、α1−GABA 受容体へのベンゾジアゼピンの結合を低下させるが、α2−GABA 受容体への結合を実質的に低下させない、分子の同定方法に関する。
【0002】
2. 発明の背景
不安関連障害はよくある医学的症状であり、一般的不安障害、パニック不安症、心的外傷後ストレス障害、恐怖症、不安抑うつ、精神分裂病関連不安症、情動不安、および一般的興奮状態を含む。現在使用されている主要な抗不安薬は、ベンゾジアゼピンである。その精神安定作用以外に、ベンゾジアゼピンはまた種々の好ましくない副作用を示し、例えば鎮静作用、先行性健忘症、およびエタノール増強作用がある。しかしベンゾジアゼピンの治療的使用を制限する主要な要因は、その長期使用後の後遺症、特に依存性傾向である。ベンゾジアゼピンと不安関連障害の治療におけるその使用についての総説は、例えばSchaderとGreenblatt, 1993, New Engl. J. Med. 328(19):1398−1405を参照されたい。
【0003】
ベンゾジアゼピン薬の分子標的は、ベンゾジアゼピンに特異的な結合部位を含有する神経伝達物質GABAの受容体(GABA 受容体)である。さらに、GABA 受容体上には他の結合部位(バルビツレートおよび神経ステロイド結合部位を含む)がある。GABA 受容体は種々のアイソフォームで存在し、主にα−サブユニットのタイプで区別され、α1、α2、α3、およびα5 GABA 受容体サブタイプと呼ばれる。ジアゼパムのような古典的なベンゾジアゼピンは、すべてのベンゾジアゼピン感受性GABA 受容体と、同等の親和性と効率で相互作用する。ベンゾジアゼピン以外に、化学的に無関係のリガンドが、この部位に同様に作用することができる。
【0004】
すなわち、当該分野には、依存性傾向や鎮静作用のような副作用の無い、またはその重症度が低下した、不安関連障害を治療することができる物質に対するニーズがある。
【0005】
第2節または本出願の他の節の文献の引用は、そのような文献が本発明の先行技術として入手できることを認めるものではない。
【0006】
3. 発明の要約
本発明は、α1−GABA 受容体に比較してα2−GABA 受容体に選択的または優先的に結合する、不安関連障害の治療を可能にする一方でα1−GABA 受容体を介するそのような治療の好ましくない副作用を最小にする、選択的抗不安治療薬の同定方法に関する。本方法は、候補分子(試験物質)にα2−GABA 受容体とα1−GABA 受容体とを接触させ、候補分子が、α1−GABA 受容体に比較してα2−GABA 受容体に選択的または優先的に結合するかどうかを測定することを含む。本発明はまた、α1−GABA 受容体に比較してα2−GABA 受容体に選択的または優先的に結合する選択的抗不安治療薬に関する。本発明はまた、治療の必要な被験体に、α1−GABA 受容体に比較してα2−GABA 受容体に選択的または優先的に結合する選択的抗不安治療薬の治療上有効量を投与することを含む、不安関連障害の治療法に関する。本発明の選択的物質はまた、α2−GABA 受容体に比較して、α3−GABA 受容体またはα5−GABA 受容体に対して、より小さいかまたはより大きい結合親和性を有する。
【0007】
選択的物質は、受容体の神経ステロイド、バルビツレートまたはベンゾジアゼピン結合部位を含む、受容体上の任意の結合部位で、GABA 受容体に結合することができる。選択的抗不安物質が、α1−GABA 受容体、α3−GABA受容体、またはα5−GABA受容体に比較して、α2−GABA 受容体に選択的または優先的に結合するかまたはこれを活性化する限り、選択的物質が結合する受容体の結合部位は、本発明にとって重要ではないと考えられる。
【0008】
本発明はまた一部は、ベンゾジアゼピンのような抗不安治療薬の抗不安作用は、α2−GABA 受容体により仲介され、そのような物質の副作用(例えば、鎮静作用および依存性傾向)は、α1−GABA 受容体により仲介されるという事実に基づく。
【0009】
本発明において、選択的抗不安治療薬は、α1−GABA 受容体に比較してα2−GABA 受容体に優先的または選択的に結合する物質である。例えば、ベンゾジアゼピンであるジアゼパムは、α2−GABA 受容体とα1−GABA 受容体に等しく(非特異的に)結合し、従って選択的物質ではない。しかし選択的治療薬は、非選択的物質と比較して、α1−GABA 受容体に対する結合親和性が小さいか、またはα2−GABA 受容体に対する結合親和性が大きい。本発明のある実施形態において、選択的または優先的結合とは、この物質が、α1−GABA 受容体に対する親和性より少なくとも10%大きいレベルで、α2−GABA 受容体に結合する(親和性を有する)ことを示す。別の実施形態においてこの物質は、α1−GABA 受容体より少なくとも2倍強くα2−GABA 受容体に結合する。別の実施態様においてこの物質は、α1−GABA 受容体より少なくとも10倍強くα2−GABA 受容体に結合する。さらに別の実施態様においてこの物質は、α1−GABA 受容体より少なくとも100倍強くα2−GABA 受容体に結合する。さらに別の実施態様においてこの物質は、α1−GABA 受容体より少なくとも1000倍強くα2−GABA 受容体に結合する。本発明の選択的物質はまた、α2−GABA 受容体と比較して、α3−GABA 受容体またはα5−GABA 受容体に対して、より小さいかまたはより大きい結合親和性を有する。
【0010】
本発明の別の実施形態において、選択的抗不安治療薬は、α1−GABA 受容体と比較して、α2−GABA 受容体に非選択的に結合する物質であるが、受容体活性化の効率は異なる。例えばこの物質の結合親和性は、2つの受容体のサブタイプの間で異ならないが、この物質がα2−GABA 受容体を活性化する能力は、この物質がα1−GABA 受容体を活性化する能力より大きく、従ってこの物質は選択的物質として作用する。この実施形態の1つの態様において、α2−GABA 受容体は、α1−GABA 受容体より少なくとも10%強く活性化される。この実施態様の別の態様において、α2−GABA 受容体は、α1−GABA 受容体より少なくとも25%強く活性化される。この実施態様の好適な態様において、α2−GABA 受容体は、α1−GABA 受容体より少なくとも10%強く活性化される。この実施態様のさらに好適な態様において、α2−GABA 受容体は、α1−GABA 受容体より少なくとも50%強く活性化される。すなわち本発明はまた、α1−GABA 受容体またはα2−GABA 受容体に対する結合親和性とは無関係に、α1−GABA 受容体に比較してα2−GABA 受容体を選択的または優先的に活性化する選択的抗不安治療薬の同定法に関し、この治療薬は、不安関連障害の治療を可能にする一方でα1−GABA 受容体を介するそのような治療の好ましくない副作用を最小にする。本法は、候補分子(試験物質)にα2−GABA 受容体とα1−GABA 受容体とを接触させ、候補分子が、α1−GABA 受容体に比較してα2−GABA 受容体を選択的または優先的に活性化するかどうかを測定することを含む。本発明はまた、α1−GABA 受容体に比較してα2−GABA 受容体を選択的または優先的に活性化する選択的抗不安治療薬に関する。本発明はまた、治療の必要な被験体に、α1−GABA 受容体に比較してα2−GABA 受容体を選択的または優先的に活性化する選択的抗不安治療薬の治療上有効量を投与することを含む、不安関連障害の治療法に関する。本発明の選択的物質はまた、α2−GABA 受容体に比較して、α3−GABA 受容体またはα5−GABA 受容体を活性化するより小さいかまたはより大きい能力を有する。
【0011】
本発明はまた、α1−GABA 受容体に結合する非選択的ベンゾジアゼピンの能力を低下させるが、α2−GABA 受容体に結合する非選択的ベンゾジアゼピンの能力を実質的に低下させない分子の同定法に関する。そのような分子は、ベンゾジアゼピンを用いて、しかし小さい副作用で不安関連障害の治療を可能にする。この方法は、α1−GABA 受容体とα2−GABA 受容体とに、ベンゾジアゼピンと候補分子(試験物質)とを接触させて、α1−GABA 受容体に結合するベンゾジアゼピンの能力を低下させるが、α2−GABA 受容体に結合するベンゾジアゼピンの能力を実質的に低下させない、候補分子の能力を検出することを含む。この実施形態のある態様において、α2−GABA 受容体への結合は75%以下低下し、α1−GABA 受容体への結合は少なくとも25%低下する。この実施形態の好適な態様において、α2−GABA 受容体への結合は50%以下低下し、α1−GABA 受容体への結合は少なくとも50%低下する。この実施形態の別の好適な態様において、α2−GABA 受容体への結合は25%以下低下し、α1−GABA 受容体への結合は少なくとも75%低下する。
【0012】
本発明はまた、α1−GABA 受容体、α3−GABA 受容体、またはα5−GABA 受容体を活性化する非選択的ベンゾジアゼピンの能力を、低下させるが、α2−GABA 受容体を活性化する非選択的ベンゾジアゼピンの能力を実質的に低下させない、分子の同定法に関する。そのような分子は、ベンゾジアゼピンを用いて、小さい副作用で不安関連障害の治療を可能にする。この方法は、α1−GABA 受容体とα2−GABA 受容体とに、ベンゾジアゼピンと候補分子(試験物質)とを接触させて、α1−GABA 受容体、α3−GABA 受容体、またはα5−GABA 受容体を活性化するベンゾジアゼピンの能力を低下させるが、α2−GABA 受容体を活性化するベンゾジアゼピンの能力を実質的に低下させない、候補分子の能力を検出することを含む。この実施形態のある態様において、α2−GABA 受容体の活性化は75%以下だけ低下し、α1−GABA 受容体、α3−GABA 受容体、またはα5−GABA 受容体の活性化は少なくとも25%だけ低下する。この実施形態の好適な態様において、α2−GABA 受容体の活性化は50%以下低下し、α1−GABA 受容体、α3−GABA 受容体、またはα5−GABA 受容体の活性化は少なくとも50%低下する。この実施形態の別の好適な態様において、α2−GABA 受容体の活性化は、25%以下低下し、α1−GABA 受容体、α3−GABA 受容体、またはα5−GABA 受容体の活性化は少なくとも75%低下する。
【0013】
本発明の選択的抗不安治療薬および/または分子は、in vivoで代謝されて生物活性物質すなわち選択的抗不安物質または結合のモジュレーターになるプロドラッグを含む。
【0014】
4. 図面の簡単な説明
図面の簡単な説明については下記参照。
【0015】
5. 発明の詳細な説明
本発明は、α1−GABA 受容体に比較してα2−GABA 受容体に選択的または優先的に結合し、α1−GABA 受容体により介在されるかかる治療の好ましくない副作用を最小にする一方で不安関連障害の治療を可能にする、選択的抗不安治療薬の同定法に関する。本方法は、候補分子(試験物質)にα2−GABA 受容体とα1−GABA 受容体とを接触させ、候補分子が、α1−GABA 受容体に比較してα2−GABA 受容体に選択的または優先的に結合するかどうかを測定することを含む。本発明はまた、α1−GABA 受容体に比較してα2−GABA 受容体に選択的または優先的に結合する選択的抗不安治療薬に関する。本発明はまた、治療の必要な被験者に、α1−GABA 受容体に比較してα2−GABA 受容体に選択的または優先的に結合する選択的抗不安治療薬の治療上有効量を投与することを含む、不安関連障害の治療法に関する。本発明の選択的物質はまた、α2−GABA 受容体に比較して、α3−GABA 受容体またはα5−GABA 受容体に対して、より小さいかまたはより大きい結合親和性を有してもよい。
【0016】
選択的物質は、受容体の神経ステロイド、バルビツレートまたはベンゾジアゼピン結合部位を含む、受容体上の任意の結合部位で、GABA 受容体に結合することができる。選択的抗不安物質が、α1−GABA 受容体、α3−GABA 受容体またはα5−GABA 受容体に比較してα2−GABA 受容体に選択的または優先的に結合するかまたはこれを活性化する限り、選択的物質が結合する受容体の結合部位は、本発明にとって重要ではない。
【0017】
本発明は、一部には、ベンゾジアゼピンのような抗不安治療薬の抗不安作用は、α2−GABA 受容体により介在され、一方そのような物質の副作用(例えば、鎮静および依存性傾向)は、α1−GABA 受容体により介在されるという事実に基づく。
【0018】
本発明に従えば、選択的抗不安治療薬は、α1−GABA 受容体に比較してα2−GABA 受容体に優先的または選択的に結合する物質である。例えば、ベンゾジアゼピンであるジアゼパムは、α2−GABA 受容体とα1−GABA 受容体に等しく(非特異的に)結合し、従って選択的物質ではない。しかし選択的治療薬は、非選択的物質と比較してα1−GABA 受容体に対する結合親和性がより小さいか、またはα2−GABA 受容体に対してより大きな結合親和性を有する。本発明のある実施形態において、選択的または優先的結合とは、この物質が、α1−GABA 受容体に対する親和性より少なくとも10%大きいレベルで、α2−GABA 受容体に結合する(に対する親和性を有する)ことを示す。別の実施形態においてこの物質は、α1−GABA 受容体より少なくとも2倍良好にα2−GABA 受容体に結合する。別の実施態様においてこの物質は、α1−GABA 受容体より少なくとも10倍良好にα2−GABA 受容体に結合する。さらに別の実施態様においてこの物質は、α1−GABA 受容体より少なくとも100倍良好にα2−GABA 受容体に結合する。さらに別の実施態様においてこの物質は、α1−GABA 受容体より少なくとも1000倍良好にα2−GABA 受容体に結合する。本発明の選択的物質はまた、α2−GABA 受容体と比較して、α3−GABA 受容体またはα5−GABA 受容体に対して、より小さいかまたはより強力な結合親和性を有しうる。
【0019】
本発明の別の実施形態において、選択的抗不安治療薬は、α1−GABA 受容体と比較して、α2−GABA 受容体に非選択的に結合するが、受容体活性化の効率が異なる物質である。例えばこの物質の結合親和性は、2つの受容体のサブタイプの間で異ならないが、この物質がα2−GABA 受容体を活性化する能力は、α1−GABA 受容体を活性化する能力より大きく、従ってこの物質は選択的物質として作用する。この実施形態の1つの態様において、α2−GABA 受容体は、α1−GABA 受容体より少なくとも10%大きく活性化される。この実施態様の別の態様において、α2−GABA 受容体は、α1−GABA 受容体より少なくとも25%大きく活性化される。この実施態様の好適な態様において、α2−GABA 受容体は、α1−GABA 受容体より少なくとも10%大きく活性化される。この実施態様のさらに好適な態様において、α2−GABA 受容体は、α1−GABA 受容体より少なくとも50%大きく活性化される。すなわち本発明はまた、α1−GABA 受容体またはα2−GABA 受容体に対する結合親和性とは無関係に、α1−GABA 受容体に比較してα2−GABA 受容体を選択的または優先的に活性化し、α1−GABA 受容体により介在されるかかる治療の好ましくない副作用を最小にする一方で不安関連障害の治療を可能にする、選択的抗不安治療薬の同定法に関する。本方法は、候補分子(試験物質)にα2−GABA 受容体とα1−GABA 受容体とを接触させ、候補分子が、α1−GABA 受容体に比較してα2−GABA 受容体を選択的または優先的に活性化するかどうかを測定することを含む。本発明はまた、α1−GABA 受容体に比較してα2−GABA 受容体を選択的または優先的に活性化する選択的抗不安治療薬に関する。本発明はまた、治療の必要な被験者に、α1−GABA 受容体に比較してα2−GABA 受容体を選択的または優先的に活性化する選択的抗不安治療薬の治療上有効量を投与することを含む、不安関連障害の治療法に関する。本発明の選択的物質はまた、α2−GABA 受容体に比較して、α3−GABA 受容体またはα5−GABA 受容体を活性化する能力が、より大きいかまたはより小さくありうる。
【0020】
本発明はまた、α1−GABA 受容体に結合する非選択的ベンゾジアゼピンの能力を低下させるが、α2−GABA 受容体に結合する非選択的ベンゾジアゼピンの能力を実質的に低下させない分子の同定法に関する。そのような分子は、ベンゾジアゼピンを用いて、低下した副作用で不安関連障害の治療を可能にする。この方法は、α1−GABA 受容体とα2−GABA 受容体とに、ベンゾジアゼピンと候補分子(試験物質)とを接触させて、α1−GABA 受容体に結合するベンゾジアゼピンの能力を低下させるがα2−GABA 受容体に結合するベンゾジアゼピンの能力を実質的に低下させない、候補分子の能力を検出することを含む。この実施形態の1つの態様において、α2−GABA 受容体への結合は、75%以下だけ低下し、α1−GABA 受容体への結合は少なくとも25%だけ低下する。この実施形態の好適な態様において、α2−GABA 受容体への結合は、50%以下だけ低下し、α1−GABA 受容体への結合は少なくとも50%だけ低下する。この実施形態の別の好適な態様において、α2−GABA 受容体への結合は、25%以下だけ低下し、α1−GABA 受容体への結合は少なくとも75%だけ低下する。
【0021】
本発明はまた、α1−GABA 受容体を活性化する非選択的ベンゾジアゼピンの能力を低下させるが、α2−GABA 受容体を活性化する非選択的ベンゾジアゼピンの能力を実質的に低下させない分子の同定法に関する。そのような分子は、ベンゾジアゼピンを用いて、低下した副作用で不安関連障害の治療を可能にする。この方法は、α1−GABA 受容体とα2−GABA 受容体とに、ベンゾジアゼピンと候補分子(試験物質)とを接触させて、α1−GABA 受容体を活性化するベンゾジアゼピンの能力を低下させるが、α2−GABA 受容体を活性化するベンゾジアゼピンの能力を実質的に低下させない、候補分子の能力を検出することを含む。この実施形態の1つの態様において、α2−GABA 受容体の活性化は、75%以下だけ低下し、α1−GABA 受容体の活性化は少なくとも25%だけ低下する。この実施形態の好適な態様において、α2−GABA 受容体の活性化は、50%以下だけ低下し、α1−GABA 受容体の活性化は少なくとも50%だけ低下する。この実施形態の別の好適な態様において、α2−GABA 受容体の活性化は、25%以下だけ低下し、α1−GABA 受容体の活性化は少なくとも75%だけ低下する。
【0022】
5.1  優先的結合物質のスクリーニング
本発明は、α1−GABA 受容体に比較してα2−GABA 受容体に選択的または優先的に結合し、α1−GABA 受容体により介在されるかかる治療の副作用を最小にする一方で不安関連障害の治療を可能にする選択的抗不安治療薬の同定法に関する。本方法は、候補分子にα2−GABA 受容体とα1−GABA 受容体とを接触させ、候補分子が、α1−GABA 受容体に比較してα2−GABA 受容体に選択的または優先的に結合するかどうかを測定することを含む。本発明の1つの実施形態において、この物質は、α1−GABA 受容体に対する親和性より少なくとも10%大きいレベルで、α2−GABA 受容体に結合する(に対して親和性を有する)。別の実施形態においてこの物質は、α1−GABA 受容体より少なくとも2倍良好にα2−GABA 受容体に結合する。別の実施態様においてこの物質は、α1−GABA 受容体より少なくとも10倍良好にα2−GABA 受容体に結合する。さらに別の実施態様においてこの物質は、α1−GABA 受容体より少なくとも100倍良好にα2−GABA 受容体に結合する。さらに別の実施態様においてこの物質は、α1−GABA 受容体より少なくとも1000倍良好にα2−GABA 受容体に結合する。
【0023】
前記を実施するのに使用することができるスクリーニング法は、当技術分野で一般的に知られている。例えば、ペプチドライブラリーのスクリーニングを開示する以下の参考文献を参照されたい:ParmleyおよびSmith, 1989, Adv. Exp. Med. Biol. 251:215−218;ScottおよびSmith, 1990, Science 249:386−390;Fowlkesら, 1992, BioTechniques 13:422−427;Oldenburgら, 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:5393−5397;Yuら, 1994, Cell 76:933−945;Staudtら, 1988, Science 241:577−580;Bockら, 1992, Nature 355:564−566;Tuerkら, 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:6988−6992;Ellingtonら, 1992, Nature 355:850−852;米国特許第5,096,815号;米国特許第5,223,409号;米国特許第5,198,346号;RebarおよびPabo, 1993, Science 263:671−673;および国際特許公報第WO94/18318号。
【0024】
特定の実施形態において、スクリーニングは、ライブラリーのメンバーに、固相に固定化したα1−GABA 受容体および/またはα2−GABA 受容体を接触させ、受容体に結合するライブラリーメンバーを採取することにより行われうる。そのようなスクリーニング法の例(「パニング(panning)」技法と呼ぶ)は、例えばParmleyおよびSmith, 1988, Gene 73:305−318;Fowlkesら, 1992, BioTechniques 13:422−427;国際特許公報第WO94/18318号;および上記で引用した参考文献に記載されている。
【0025】
好適な実施形態において、両方のタイプの受容体が細胞表面に発現され、細胞は、スクリーニングアッセイで使用される。
【0026】
別の特定の実施形態において、候補分子は、競合的または非競合的受容体リガンドとしてスクリーニングされる。さらに別の特定の実施形態において、使用される結合アッセイは、後述の第6節に記載の結合アッセイである。
【0027】
スクリーニング法は、放射性リガンド(例えば、125IまたはH)、磁性リガンド(例えば、フォトビオチンアセテートに共有結合した常磁性ビーズ)、蛍光性リガンド(例えば、フルオレセインまたはローダミン)、または酵素リガンド(例えば、ルシフェラーゼまたはβ−ガラクトシダーゼ)を用いて受容体を標識することを含み得る。次に、溶液中で結合する反応物を、当技術分野で公知の多くの技法(限定されないが、非標識リガンド(または、標識部分で使用されるものから区別可能なマーカーで標識したリガンド)に対する抗血清を使用する標識部分の共免疫沈降、免疫親和性クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、および濃度勾配遠心分離法を含む)の1つを使用して単離することができる。
【0028】
受容体または候補分子を標識するのに、当技術分野で一般的に知られている方法が使用される。好適な標識には、限定されないが、放射能標識アミノ酸(例えば、H−ロイシンまたは35S−メチオニン)の取り込みによる放射能標識、クロラミンT法、Bolton−Hunter試薬などを使用する125Iまたは131Iによる翻訳後ヨウ素化による放射能標識、キナーゼおよび無機放射能標識リンを使用する32Pによる標識、フォトビオチン−アセテートと太陽灯露光を用いるビオチン標識などが含まれる。受容体の1つが固定化されている場合、リガンドが標識される。受容体も候補分子も固定化されていない場合、それぞれを区別可能なマーカーで標識し、両方の部分を単離して、続いてより正確に定量し、結合複合体の形成を区別するようにすることができる。
【0029】
典型的な結合条件は、例えば、限定されるものではないが、10〜250mM NaCl、5〜50mM Tris−HCl(pH5〜8)、および0.5% Triton X−100、または相互作用の特異性を改良する他の界面活性剤の塩水溶液である。金属キレート剤および/または2価陽イオンを加えて、結合を改良するかおよび/またはタンパク質分解を低下させてもよい。反応温度としては、4、10、15、22、25、35、または42℃を挙げることができ、インキュベーション時間は、典型的には少なくとも15秒であるが、結合平衡を起こすには、より長時間が好ましい。
【0030】
複合体形成の物理的パラメーターは、使用される標識に特異的なアッセイ方法(例えば放射活性検出には液体シンチレーション分光法、酵素標識には酵素活性測定など)を用いて複合体形成を定量することにより分析されうる。次に反応結果は、スキャッチャード(Scatchard)分析、Hill分析、および当技術分野で一般的に知られる他の方法を使用して分析される(例えば、Proteins, Structures, and Molecular Principles、第2版(1993)、Creighton編、W.H. Freeman and Company、New York、を参照)。
【0031】
結合アッセイへの第2の一般的なアプローチにおいて、結合分子種(species)の1つ(すなわち、受容体またはリガンド)は、フィルター上、マイクロタイタープレートウェル、試験管、クロマトグラフィーマトリックスなどに、共有結合または非共有結合で固定化される。当技術分野で周知の方法を使用して、タンパク質を共有結合的に固定化することができ、例えば限定されないが、KadonagaとTjianの方法(1986, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:5889−5893, 1986)、すなわちCNBr−セファロース4Bのような臭化シアン誘導体化基質への結合がある。必要であれば、スペーサーを使用して、基質による立体障害を低下させることができる。基質へのタンパク質の非共有結合には、限定されないが、荷電表面へのタンパク質の結合、特異的抗体を用いる結合、第3の無関係の相互作用タンパク質への結合が含まれる。
【0032】
特定の実施形態において、他のタンパク質成分への試薬の非特異的結合、プラスチック、固定化マトリックスなどへの試薬の吸収性喪失を阻害するブロッキング剤が、アッセイ混合物中に含まれる。ブロッキング剤としては、限定されないが、ウシ血清アルブミン、β−カゼイン、脱脂乾燥ミルク、Denhardt’s試薬、フィコール(Ficoll)、ポリビニルピロリジン(polyvinylpyrolidine)、非イオン性界面活性剤(NP40、Triton X−100、Tween 20、Tween 80など)、イオン性界面活性剤(例えば、SDS、LDSなど)、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。
【0033】
結合が行われた後、未結合の標識受容体は上清とともに除去され、結合した標識リガンドを有する固定化受容体は、充分に洗浄される。次に、結合した標識の量は、標識を検出するための当技術分野で公知の標準的方法を使用して定量される。
【0034】
5.2  優先的アクチベーターのスクリーニング
本発明はまた、α1−GABA 受容体またはα2−GABA 受容体に対する結合親和性とは無関係に、α1−GABA 受容体に比較してα2−GABA 受容体を選択的または優先的に活性化し、α1−GABA 受容体により介在される、かかる治療の好ましくない副作用を最小にする一方で、不安関連障害の治療を可能にする、選択的抗不安治療薬の同定法に関する。本方法は、候補分子(試験物質)にα2−GABA 受容体とα1−GABA 受容体とを接触させ、候補分子が、α1−GABA 受容体に比較してα2−GABA 受容体を選択的または優先的に活性化するかどうかを測定することを含む。1つの実施形態において、この物質は、α1−GABA 受容体より少なくとも10%大きくα2−GABA 受容体を活性化する。別の実施態様において、α2−GABA 受容体は、α1−GABA 受容体より少なくとも25%大きく活性化される。好適な実施態様において、α2−GABA 受容体は、α1−GABA 受容体より少なくとも10%大きく活性化される。より好適な実施形態において、α2−GABA 受容体は、α1−GABA 受容体より少なくとも50%大きく活性化される。
【0035】
前記を実施することができるスクリーニング法は、当技術分野で一般的に知られている。例えば、限定されるものではないが、特定の受容体を活性化する物質の能力は、受容体が発現される細胞を使用して試験することができる。例示すると、GABAによる活性化後にα2−GABA 受容体活性化が測定され、α2−GABA 受容体を発現する細胞をGABAと候補分子またはGABA単独と接触させ、α2−GABA 受容体活性化の量が、種々の方法により測定される。そのような方法には、限定されないが、膜電位または電流の電気生理学的変化の測定;放射活性塩化物イオンを使用するフロー塩化物イオンの生化学的変化の測定(塩化物フラックスアッセイ);細胞膜を使用する放射性リガンド結合による、GABAと受容体および/または候補分子との間のアロステリック相互作用の変化の測定(GABAシフトアッセイ)が含まれる。
【0036】
5.3  結合モジュレーターのスクリーニング
本発明はまた、α1−GABA 受容体に結合する非選択的ベンゾジアゼピンの能力を低下させるが、α2−GABA 受容体に結合する非選択的ベンゾジアゼピンの能力は実質的に低下させない分子の同定法に関する。そのような分子は、ベンゾジアゼピンを用いて、低下した副作用で不安関連障害の治療を可能にする。この方法は、α1−GABA 受容体とα2−GABA 受容体とに、ベンゾジアゼピンと候補分子(試験物質)とを接触させて、α1−GABA 受容体に結合するベンゾジアゼピンの能力を低下させるが、α2−GABA 受容体に結合するベンゾジアゼピンの能力を実質的に低下させない、候補分子の能力を検出することを含む。この実施形態の1つの態様において、α2−GABA 受容体への結合は、75%以下だけ低下し、α1−GABA 受容体への結合は少なくとも25%だけ低下する。この実施形態の好適な態様において、α2−GABA 受容体への結合は、50%以下だけ低下し、α1−GABA 受容体への結合は少なくとも50%だけ低下する。この実施形態の別の好適な態様において、α2−GABA 受容体への結合は、25%以下だけ低下し、α1−GABA 受容体への結合は少なくとも75%だけ低下する。
【0037】
本発明はまた、α1−GABA 受容体を活性化する非選択的ベンゾジアゼピンの能力を低下させるが、α2−GABA 受容体を活性化する非選択的ベンゾジアゼピンの能力を実質的に低下させない、分子の同定法に関する。そのような分子は、ベンゾジアゼピンを用いて、低下した副作用で不安関連障害の治療を可能にする。この方法は、α1−GABA 受容体とα2−GABA 受容体とに、ベンゾジアゼピンと候補分子(試験物質)とを接触させて、α1−GABA 受容体を活性化するベンゾジアゼピンの能力を低下させるが、α2−GABA 受容体を活性化するベンゾジアゼピンの能力を実質的に低下させない、候補分子の能力を検出することを含む。この実施形態の1つの態様において、α2−GABA 受容体の活性化は、75%以下だけ低下し、α1−GABA 受容体の活性化は少なくとも25%だけ低下する。この実施形態の好適な態様において、α2−GABA 受容体の活性化は、50%以下だけ低下し、α1−GABA 受容体の活性化は少なくとも50%だけ低下する。この実施形態の別の好適な態様において、α2−GABA 受容体の活性化は、25%以下だけ低下し、α1−GABA 受容体の活性化は少なくとも75%だけ低下する。
【0038】
そのような候補分子のスクリーニングを実施するのに使用することができる方法は、当技術分野で一般的に知られているか、および/または前記第5.1節と第5.2節および後述の第6節において使用する方法である。
【0039】
5.4  候補分子
当技術分野で公知の分子は、α2−GABA 受容体に優先的もしくは選択的に結合するかまたはこれを活性化する能力、あるいはα1−GABA 受容体に結合するベンゾジアゼピンまたはその化学的誘導体の能力をモジュレートする能力について、試験することができる。例えば、α2−GABA 受容体とα1−GABA 受容体への候補分子の結合を測定し、分子がα2−GABA 受容体に優先的または選択的に結合するかどうかを測定することにより、結合を検出することができる。さらに別の例において、α2−GABA 受容体とα1−GABA 受容体を活性化する候補分子の能力を測定し、分子がα2−GABA 受容体を優先的または選択的に活性化するかどうかを測定することにより、受容体活性化を検出することができる。ある特定の実施形態において候補分子は、α2−GABA 受容体およびα1−GABA 受容体を発現する細胞に直接提供することができるか、または核酸が組換え的に発現され、α2−GABA 受容体およびα1−GABA 受容体を発現する細胞内に候補タンパク質を産生する条件下で、そのコードする核酸を提供することにより、提供することができる。
【0040】
本発明のこの実施形態は、α1−GABA 受容体に比較してα2−GABA 受容体に優先的または選択的に結合する分子の化学ライブラリーをスクリーニングするのに、よく適している。化学ライブラリーは、ペプチドライブラリー、ペプチドミメティック(peptidomimetic)ライブラリー、化学合成ライブラリー、組換え(例えば、ファージディスプレイライブラリー、およびin vitroの翻訳に基づくライブラリー、他の非ペプチド合成有機ライブラリーなどでもよい。
【0041】
典型的なライブラリーは、いくつかの製造業者(ArQule, Tripos/PanLabs, ChemDesign, Pharmacopoeia)から市販されている。いくつかの場合には、これらの化学ライブラリーは、メンバー化合物が結合している基質上のライブラリーの各メンバーの本体をコードするコンビナトリアルストラテジーを使用して作製され、こうして有効なモジュレーターである分子の、直接的かつ即時同定を可能にする。すなわち、多くのコンビナトリアルアプローチにおいて、化合物のプレート上の位置が、その化合物の組成を特定する。また、1つの例において単一のプレート位置は、1〜20の化学物質を有し、これは、目的の相互作用を含有するウェルへの投与によりスクリーニングすることができる。すなわち、モジュレーションを検出する場合、相互作用対のより小さいプールを、モジュレーション活性についてアッセイすることができる。そのような方法により、多くの候補分子をスクリーニングすることができる。
【0042】
使用に好適な多くの多様性ライブラリーが当技術分野で公知であり、本発明に従って試験すべき化合物を提供するために使用できる。あるいは、標準的方法を使用してライブラリーを構築することができる。化学(合成)ライブラリー、組換え発現ライブラリー、またはポリソームに基づくライブラリーは、使用可能なライブラリーの典型的なタイプである。
【0043】
ライブラリーは、拘束されても、もしくは半剛性(ある程度の構造的剛性を有する)でも、または線状化でももしくは拘束されていなくてもよい。ライブラリーは、cDNAもしくはゲノム発現ライブラリー、ランダムペプチド発現ライブラリー、または化学合成ランダムペプチドライブラリー、または非ペプチドライブラリーでもよい。発現ライブラリーは細胞に導入され、ここで、アッセイが行われ、ライブラリーの核酸が発現されて、それらのコードタンパク質が産生される。
【0044】
1つの実施形態において、本発明で使用可能なペプチドライブラリーは、in vitroで化学合成されるライブラリーでもよい。そのようなライブラリーの例は、Houghtenら, 1991, Nature 354:84−86(これは、各ペプチド中の第1のまたは第2の残基が個々にかつ特異的に規定される、遊離のヘキサペプチドの混合物を記載する);Lamら, 1991, Nature 354:82−84(これは、「1ビーズ、1ペプチド」アプローチを記載し、ここでは、固相スプリット合成スキームがペプチドのライブラリーを生産し、このコレクション中の各ビーズは、その上にアミノ酸残基の単一のランダム配列を固定化している);Medynski, 1994, Bio/Technology 12:709−710(これは、スプリット合成とTバッグ(T−bag)合成法を記載する);およびGallopら, 1994, J. Medicinal Chemistry 37(9):1233−1251に記載されている。ただ他の例示のために述べると、コンビナトリアルライブラリーは、Ohlmeyerら, 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:10922−10926;Erbら, 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:11422−11426;Houghtenら, 1992, Biotechniques 13:412;Jayawickremeら, 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:1614−1618;またはSalmonら, 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:11708−11712の方法に従って、使用のために調製することができる。PCT公報第WO93/20242号ならびにBrennerおよびLerner, 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:5381−5383は、「コードされたコンビナトリアル化学ライブラリー(encoded combinatorial chemical libraries)」を記載し、これは、各化学ポリマーライブラリーのメンバーのためのオリゴヌクレオチド識別子を含有する。
【0045】
好適な実施形態において、スクリーニングされるライブラリーは、ランダムペプチドファージディスプレイライブラリーである生物学的発現ライブラリーであり、ここで、ランダムペプチドは拘束されている(例えば、ジスルフィド結合を有するため)。
【0046】
さらに、より一般的な、構造的に拘束された有機多様性(例えば、非ペプチド)ライブラリーも使用可能である。例えば、ベンゾジアゼピンライブラリー(例えば、Buninら, 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:4708−4712を参照)を使用できる。
【0047】
使用可能なコンフォメーション的に拘束されたライブラリーには、限定されないが、酸化環境で、ジスルフィド結合により架橋して、シスチン、修飾ペプチド(例えば、フッ素、金属、アイソトープ標識物を取り込んでいる、リン酸化されているなど)、1つ以上の天然に存在しないアミノ酸を含有するペプチド、非ペプチド構造、およびかなりの割合のγ−カルボキシグルタミン酸を含有するペプチドを形成する、不変のシステイン残基を含有するものが含まれる。
【0048】
非ペプチド、例えばペプチド誘導体(例えば、1つ以上の天然に存在しないアミノ酸を含有するもの)のライブラリーを使用することもできる。これらの1つの例は、ペプトイドライブラリーである(Simonら, 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:9367−9371)。ペプトイドは、天然に存在する側鎖がα炭素ではなく、骨格アミノ窒素に結合した非天然のアミノ酸のポリマーである。ペプトイドは、ヒトの消化酵素により容易に分解されないため、薬剤としての使用により容易に適応でき有利である。使用可能なライブラリーの他の例(ペプチド中のアミド官能基性が過メチル化されていて、化学的に変換されたコンビナトリアルライブラリーが作製される)が、Ostreshら, 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:11138−11142により記載されている。非ペプチドライブラリーの別の実例は、ベンゾジアゼピンライブラリーである。例えば、Buninら, 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:4708−4712を参照されたい。
【0049】
本発明によりスクリーニングできるペプチドライブラリーのメンバーは、20個の天然に存在するアミノ酸を含有することに限定されない。特に、化学合成したライブラリーとポリソームに基づくライブラリーは、20個の天然に存在するアミノ酸以外のアミノ酸の使用を可能にする(ライブラリー生産で使用されるアミノ酸の前駆体プール中に含めることにより)。特定の実施形態ではライブラリーメンバーは、1つ以上の非天然のもしくは非古典的アミノ酸または環状ペプチドを含有する。非古典的アミノ酸には、限定されないが、通常のアミノ酸のD−異性体、α−アミノイソ酪酸、4−アミノ酪酸、Abu、2−アミノ酪酸;γ−Abu、ε−Ahx、6−アミノヘキサン酸;Aib、2−アミノイソ酪酸;3−アミノプロピオン酸;オルニチン;ノルロイシン;ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シトルリン、システイン酸、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、β−アラニン、デザイナー(designer)アミノ酸(例えば、β−メチルアミノ酸、Cα−メチルアミノ酸、Nα−メチルアミノ酸、フルオロアミノ酸)、および一般的なアミノ酸類似体が含まれる。さらにアミノ酸は、D(右旋性)またはL(左旋性)でもよい。
【0050】
特定の実施形態において、ベンゾジアゼピンの誘導体、断片および/または類似体、特にペプチドミメティックは、α2−GABA 受容体の活性優先的または選択的結合体(binder)についてスクリーニングされる。
【0051】
本発明の別の実施形態において、α2−GABA 受容体に優先的または選択的に結合する物質を同定するために、コンビナトリアル化学を使用することができる。コンビナトリアル化学は、数十万の化合物(その多くは構造的に類似しうる)を含有するライブラリーを作製することが可能である。ハイスループットスクリーニングプログラムは、既知の標的に対する親和性について、これらの大きなライブラリーをスクリーニングすることができるが、大きさはより小さいが最大の化学的多様性を提供するライブラリーを達成する新しいアプローチが開発されている(例えば、Matter, 1997, Journal of Medicinal Chemistry 40:1219−1229を参照)。
【0052】
コンビナトリアル化学の1つの方法である親和性フィンガープリンティングは、規定のタンパク質パネルに対する結合親和性について、小分子の別個のライブラリーを試験するのにすでに使用されている。スクリーンにより得られるフィンガープリントは、他のタンパク質または目的の受容体(本発明においては、α1−GABA 受容体またはα2−GABA 受容体)について個々のライブラリーメンバーの親和性を予測するのに使用される。このフィンガープリントは、ライブラリー化合物が同様に反応するかどうかを予測するために、目的のタンパク質と反応することが知られている他の化合物から得られるフィンガープリントと比較される。例えば、大きなライブラリー中のすべてのリガンドを、α1−GABA 受容体との相互作用について試験するより、その活性を有することが知られている他の化合物と類似のフィンガープリントを有するリガンドのみを試験することができる(例えば、Kauvarら, 1995, Chemistry and Biology 2:107−118;Kauvar, 1995, Affinity fingerprinting、Pharmaceutical Manufacturing International. 8:25−28;およびKauvar, Toxic−Chemical Detection by Pattern Recognition in New Frontiers in Agrochemical Immunoassay, D. Kurtz. L. StankerおよびJ.H. Skerritt.編集者, 1995, AOAC;Washington, D.C., 305−312を参照)。
【0053】
Kayら, 1993, Gene 128:59−65 (Kay) は、先行の従来のライブラリーの配列より長い完全にランダムな配列のペプチドをコードするペプチドライブラリーを構築する方法を開示する。Kayに開示されるライブラリーは、長さ約20アミノ酸より大きい完全に合成のランダムペプチドをコードする。そのようなライブラリーは、α1−GABA 受容体モジュレーターを同定するために有利にスクリーニングすることができる(また、1996年3月12日付けの米国特許第5,498,538号;および1994年8月18日付けのPCT公報第WO94/18318号を参照)。
【0054】
ペプチドライブラリーの種々のタイプの包括的総説は、Gallopら, 1994, J. Med. Chem. 37:1233−1251に見出すことができる。
【0055】
5.5 治療薬
本発明は、選択的抗不安物質またはα1−GABA 受容体結合のモジュレーターを含み、依存性障害のような好ましくない副作用が最小化されている本発明の治療薬を、有効量にて被験体に投与することによる、抗不安性障害の治療法を提供する。好適な態様において、治療薬は実質的に精製されたものである。被験体は、好ましくは動物であり、特に限定されないが、ウシ、ブタ、ウマ、ニワトリ、ネコ、イヌなどの動物を含み、好ましくは哺乳動物であり、最も好ましくはヒトである。特定の実施形態においては、非ヒト哺乳動物が被験体である。別の実施形態においては、本発明の治療薬は、プロドラッグであり、これはin vivoで代謝されて、選択的抗不安物質または結合のモジュレーターとなる。さらに治療薬は、プロドラッグの活性代謝物であるかまたはその機能性誘導体もしくは類似体である。
【0056】
治療用選択的薬剤は、GABA 受容体上の任意の結合部位(該受容体の神経ステロイド結合部位、バルビツレート結合部位、またはベンゾジアゼピン結合部位を含む)で、GABA 受容体に結合することができる。選択的抗不安物質が、α1−GABA 受容体、α3−GABA 受容体、またはα5−GABA 受容体に比較して、α2−GABA 受容体に選択的または優先的に結合するかまたはこれを活性化する限り、選択的薬剤が結合する受容体の結合部位は、本発明にとって重要ではない。
【0057】
種々の送達システムが公知であり、本発明の治療薬を投与するのに使用することができ、例えば、リポソーム、微粒子、マイクロカプセルへの封入、治療薬を発現することができる組換え細胞、受容体介在エンドサイトーシス(例えば、WuおよびWu, 1987, J. Biol. Chem. 262:4429−4432)、レトロウイルスまたは他のベクターの一部としての治療用核酸の構築などがある。導入法には、特に限定されないが、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻内、硬膜外、および経口経路がある。化合物は、任意の好都合な経路により、例えば注入またはボーラス注射により、上皮または皮膚粘膜内層(例えば、経口粘膜、直腸および小腸粘膜など)からの吸収により、投与すればよく、また他の生物活性物質とともに投与してもよい。投与は、全身性または局所的でもよい。さらに、本発明の医薬組成物を、任意の適当な経路(脳室内およびくも膜下注入;脳室内注入は、例えばOmmayaリザーバーなどのリザーバーに接続した、脳室内カテーテルにより促進される)により、中枢神経系に導入することが好ましい場合がある。肺投与もまた用いることができ、吸入器またはネブライザーの使用により、およびエアロゾル化剤とともに製剤化することにより、実施される。
【0058】
特定の実施形態においては、治療の必要な部位に本発明の医薬組成物を局所的に投与することが好ましい場合がある。これは例えば、特に限定されないが、手術の際の局所的注入、局所適用(例えば、手術後の創傷包帯と一緒に)により、注射により、カテーテルにより、坐剤により、またはインプラント(このインプラントは、多孔性、無孔性、またはゼラチン質材料であり、シラスティック(sialastic)膜等の膜、または繊維である)により、実施することができる。ある実施形態において、投与は、悪性腫瘍または新生物もしくは前新生物組織の部位(またはかつての対応部位)への直接注射によるものでもよい。
【0059】
別の実施形態において治療薬は、小胞中、特にリポソーム中に入れて送達される(Langer, 1990, Science 249:1527−1533、Treatら, 1989, 「Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer」、Lopez−BeresteinおよびFidler(編), Liss, ニューヨーク, 353−365頁、Lopez−Berestein, 前掲書, 317−327頁、全体として前掲書を参照)。
【0060】
さらに別の実施形態において、治療薬は、制御放出系に入れて送達される。ある実施形態において、ポンプが使用され得る(Langer, 前述、Sefton, 1987, CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14:201、Buchwaldら, 1980, Surgery 88:507、Saudekら, 1989, N. Engl. J. Med. 321:574を参照)。別の実施形態において、ポリマー材料を使用することができる(LangerおよびWise(編), 1979, Medical Applications of Controlled Release, CRC Pres., Boca Raton, フロリダ州、「Controlled Drug Bioavailabilty, Drug Product Design and Performance」, SmolenおよびBall(編), 1984, Wiley, ニューヨーク、RangerおよびPeppas, 1983, J. Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem. 23:61を参照、またLevyら, Science 228:190、Duringら, 1989, Ann. Neurol. 25:351、Howardら, 1989, J. Neurosurg. 71:105を参照)。さらに別の実施形態において、治療標的の近傍(すなわち、脳)に制御放出系を配置することができ、従って全身性用量のほんの一部しか必要ではない(例えば、Goodson, 1984, 「Medical Applications of Controlled Release」、前述、第2巻、115−138頁を参照)。他の制御放出系は、Langer, 1990, Science 249:1527−1533の総説で説明されている。
【0061】
治療薬が、タンパク質治療薬をコードする核酸である、特定の実施形態においては、その核酸をin vivoで投与してそれにコードされるタンパク質の発現を促進することができるが、これは、その核酸を適切な核酸発現ベクターの一部として構築しそれを投与して細胞内に導入することによって、例えば、レトロウイルスベクター(米国特許第4,980,286号)の使用により、または直接注入により、微粒子銃(例えば、遺伝子銃、Biolistic、Dupont)の使用により、または脂質または細胞表面受容体またはトランスフェクション剤で被覆することにより、あるいは、それを核に入ることが知られているホメオボックス様ペプチド(例えば、Joliotら、1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:1864−1868)に連結して投与することなどにより、実施することができる。あるいは、核酸治療薬を細胞内に導入し、相同的組換えにより発現用に宿主細胞DNA内に組み込むことができる。
【0062】
本発明はまた、医薬組成物を提供する。そのような組成物は、治療上有効量の治療薬と薬剤学的に許容される担体とを含む。特定の実施形態において用語「薬剤学的に許容される」とは、米連邦政府または州政府の規制当局により認可されているか、または米国薬局方、または動物および特にはヒトでの使用に対する他の一般的に認識されている薬局方に、収載されていることを意味する。用語「担体」は、治療薬が一緒に投与される希釈剤、補助剤、賦形剤、またはビヒクルを意味する。このような医薬担体は、水や油(ピーナッツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などの、石油、動物、植物または合成起源の油を含む)等の、無菌液体でもよい。医薬組成物が静脈内投与される場合は、水が好適な担体である。生理食塩水溶液およびブドウ糖水溶液およびグリセロール溶液もまた、液体担体として、特に注射溶液用のものとして、使用することができる。適当な医薬賦形剤には、デンプン、グルコース、乳糖、ショ糖、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、胡粉、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどがある。所望であれば、この組成物はまた、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤を含有してもよい。これらの組成物は、液剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、粉剤、除放性製剤などの形態を取ることができる。この組成物は、従来の結合剤および担体(例えば、トリグリセリド)を有する坐剤として製剤化することができる。経口製剤は、製薬等級のマンニトール、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準的担体を含有することができる。適当な医薬担体の例は、E.W. Martinの「レミントンの薬学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)」に記載されている。このような組成物は、治療上有効量の治療薬を、好ましくは精製形態で、適当量の担体とともに含有し、患者に適切な投与のための剤形を提供するものである。製剤は、投与方法に適合するものでなければならない。
【0063】
好適な実施形態において、本組成物は、ヒトへの静脈内投与用に適合させた医薬組成物として、ルーチン法に従って製剤化される。典型的には、静脈内投与用の組成物は、無菌等張緩衝水溶液中の溶液である。必要な場合、本組成物はまた、可溶化剤と、注射部位の疼痛緩和のための局所麻酔剤(例えば、リグノカイン)を含んでよい。一般にその成分は、別々に供給されるか、または混合されて単位剤形として(例えば、活性物質の量を表示した密封容器(例えば、アンプルまたはサッシェ)中に入れた、乾燥した凍結乾燥粉末としてまたは水分を含まない濃縮物として)、供給される。本組成物が注入により投与される場合、これは、無菌の製薬等級の水または生理食塩水を含有する注入ビンで投薬することができる。本組成物が注射により投与される場合、成分が投与前に混合されるように、注射用の無菌水または生理食塩水のアンプルを提供してもよい。
【0064】
本発明の治療薬は、中性形態または塩の形態で製剤化することができる。薬学的に許容される塩には、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などから得られるような、遊離アミノ基と形成される塩、および水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、水酸化第2鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどから得られるような遊離カルボキシル基と形成される塩が挙げられる。
【0065】
特定の障害または病的状態(すなわち、不安関連障害)の治療に有効な本発明の治療薬の量は、障害または病的状態の性質に依存し、標準的な臨床手法により決定することができる。さらに、最適な用量範囲を特定するのを助けるために、随時in vitroアッセイを使用してもよい。製剤中で使用される正確な用量はまた、投与経路、疾患または障害の重症度に依存し、医師の判断と各患者の状況に従って決定されるべきである。しかし、静脈内投与のための適当な用量範囲は一般に、体重1kg当たり活性化合物が約20〜500マイクログラムである。鼻内投与のための適当な用量は、一般に約0.01pg/kg体重〜約1mg/kg体重である。有効な用量は、in vitroまたは動物モデル試験系から得られる用量応答曲線から外挿される。
【0066】
坐剤は一般に、約0.5〜約10重量%の範囲の活性成分を含有し、経口製剤は、好ましくは約10〜約95重量%の活性成分を含有する。
【0067】
本発明はまた、本発明の医薬組成物の1つ以上の成分を充填した1つ以上の容器を含む医薬パックまたはキットを提供する。そのような容器には、場合により、医薬品もしくは生物製剤の製造、使用または販売を規制する政府機関により規定された書式の注意書を付記することがある。この注意書は、当該機関による、ヒトへの投与のための製造、使用または販売の認可を踏まえたものである。
【0068】
5.6 トランスジェニック動物
本発明はまた、α2−GABA 受容体に不活化突然変異を有するか、またはα1−GABA 受容体、α3−GABA 受容体またはα5−GABA 受容体に不活化突然変異を有する、非ヒトトランスジェニック動物モデルおよび非トランスジェニック動物モデルを提供する。ある実施形態においては、GABA 受容体のα2サブユニットが、アミノ酸101位で突然変異しており、HisがArgで置換されている。別の実施形態においては、GABA 受容体のα1サブユニットが、アミノ酸101位で突然変異しており、HisがArgで置換されている。別の実施形態においては、GABA 受容体のα3サブユニットが、アミノ酸126位で突然変異しており、HisがArgで置換されている。別の実施形態においては、GABA 受容体のα5サブユニットが、アミノ酸105位で突然変異しており、HisがArgで置換されている。さらに別の実施形態においては、GABA 受容体のα3サブユニットが、遺伝子ターゲティングにより不活化されている(「遺伝子ノックアウト」)。このような動物は、当該分野で一般的に公知の方法(後述のセクション6に記載の方法を含む)により作製することができる。他の方法は、米国特許第6,271,360号に記載の組換え作製オリゴヌクレオチドの使用を含む。
【0069】
以下の一連の実施例は、説明のために示すものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0070】
6. 実施例:不安の選択的緩和のための分子基質および神経基質の測定
過度のまたは不適切な不安は、臨床的に有効なベンゾジアゼピン薬剤を使用して、GABA作動性の抑制性神経伝達を増強することにより制御することができる(ShaderおよびGreenblatt, New Engl. J. Med. 328(19):1398−1405)。しかし、不安の緩和を仲介するGABA 受容体サブタイプを特定することは、今日まで実現していない。4つの型のジアゼパム感受性GABA 受容体を、α1、α2、α3、またはα5サブユニットの存在に基づいて区別することができる。以下の実験は、α2サブユニットを有する受容体が、不安の緩和を仲介することを立証するものである。
【0071】
6.1 材料と方法
6.1.1 α 2(H101R) とα 3(H126R) マウスの作製
ラムダファージライブラリーからGABA 受容体α2サブユニット遺伝子(GABRA2)のエキソン4と5を含有するゲノムクローンを得て、6.0 kbのゲノムPstI/Ncol断片を選択し、これを置換ターゲティングベクター中に相同DNAとして組み込んだ。このベクターは、エキソン4に所望の点突然変異を含有し、イントロン3にloxP隣接ネオマイシン耐性カセット(RNAポリメラーゼIIプロモーター、ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル)を含有している。このカセットは、イントロン3中に遺伝子工学的に作製したSalI部位中に挿入されたものである。アミノ酸FHN(100〜102位)をコードするエキソン4中の配列TTTCACAATは、アミノ酸FRNをコードするTTCCGGAATに変異していた。置換ベクターを胚幹細胞(E14株)中にエレクトロポレーション導入し、正しくターゲティングされたクローンをC57BL6/J胚盤胞中に注入した。突然変異対立遺伝子を有するマウスを、129/SvJバックグランドを有するElla−creマウスと交配して、cre/loxP介在切断により生殖細胞系からネオマイシン耐性カセットを除去した。Laksoら、1996, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:5860。次に、交配によりcre導入遺伝子を除去した。
【0072】
キメラから出発して、マウスを129/SvJバックグランドで6世代交配した。ヘテロ接合性交配種を作製して、ホモ接合性突然変異体マウス、ヘテロ接合性マウスおよび野生型マウスを得た。典型的には、ホモ接合性変異体マウスと野生型マウスの両方について20〜25の繁殖ペアにより、実験動物を作製し、これらは約8〜12週齢で使用した。各マウスに、1回のみジアゼパムを注入した。
【0073】
GABA 受容体α3サブユニット遺伝子(GABRA3)のエキソン3と4とを含む16.8 kbのインサートを含有するマウスゲノムクローンを、ラムダファージライブラリーから得た。エキソン4を含む4.3 kbのHincIII−BglII断片を、ターゲティングベクター用の相同DNAとして選択した。loxP−隣接ネオマイシン耐性(neo)マーカー(RNAポリメラーゼIIプロモーター、ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル)を、エキソン4の下流のNcoI部位に配置した。アミノ酸FHN(125〜127位)をコードするエキソン4中の配列TTCGAOAATを、アミノ酸FRNをコードするTTCCGGMTに変異させた。さらに、制限断片長多型分析で使用するためのサイレント変異を導入した:GGG(150位のスレオニン)を、GGTで置換して、新規Kpnl部位(GGTACC)を作製した。最終的なターゲティングベクターRK−1は、突然変異の5’側の約1.3 kbの相同性、突然変異とneoマーカーとの間の約0.2 lstの相同性、neoマーカーの3’側の約2.8 kbの相同性を有した。相同な5’側に、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(TK)カセットを、陰性選択のために含めた。フランキングプローブを用いるサザンブロッティングにより分析した数千のES細胞クローンのうち、胚幹細胞株mEMS32から得られた1つのクローンのみが、正しいターゲティングを示した。Simpsonら、1997, Nat Genet. 16:19。このクローンを、胚盤胞中に注入し、得られたマウスを、129/SvJバックグランドを有するElla−creマウスと交配して、ネオマイシン耐性カセットを排除した。Laksoら、1996, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:5860。次に、交配によりcre導入遺伝子を除去した。キメラから出発して、このマウスを129/SvJバックグランドで5世代交配した。繁殖および実験計画は、α2(H101R)マウスについて記載したものと同様であり、但し、α3サブユニットの遺伝子がX染色体上に位置することを考慮した。
【0074】
6.1.2 明/暗選択試験
相互に連結した暗い箱と照明(500ルクス)箱を有するチャンバー中で、暗いコンパートメントに最初に入れてから5分間の、野生型マウスと突然変異マウスの行動を試験した。試験の30分前に、マウスをビヒクルまたはジアゼパム(0.5、1および2mg/kg経口)で処理した。照明箱で過ごした時間を記録した。
【0075】
6.1.3. 高所+迷路
薄暗い間接照明の下で、壁で囲った2つのアームと2つの開放アームを備えた高所にある横木の上に、マウスを置いた。野生型マウスと突然変異マウスを、試験の30分前にビヒクルまたはジアゼパム(2mg/kg経口)で処理した。開放アームで過ごした時間と開放アームに入った回数を5分間記録した。
【0076】
6.1.4. 行動試験
メスの野生型マウスと突然変異マウスを試験室で飼育し、12時間の明/暗サイクルの暗い期間に行動を試験した。0.3% Tween80を含有する生理食塩水に懸濁したジアゼパムを経口投与し(4〜5mg/kg)、一方、ペンチレンテトラゾールを生理食塩水に溶解し、腹腔内投与した。
【0077】
6.1.5 統計
一元配置または二元配置ANOVA後に、それぞれダネット試験または多重t検定を用いる事後平均比較を使用して、データを解析した。分散の均一性についてのバートレット検定が有意であった場合には、各遺伝子型のデータを、クルスカル−ワリスとマンウィットニー検定を使用して、別々に解析した。二項変量を、カイ二乗検定とフィッシャーの正確確率検定により解析した。群内比較については、ウィルコクソンの符号付き順位検定を使用した。
【0078】
6.1.6. 自発運動
一般的な自動化2チャンバー装置内で30分間、ビヒクルまたはジアゼパム(3、10および30mg/kg経口)の投与の30分後の自発運動を記録した。
【0079】
6.l.7. ペンチレンテトラゾール試験
ペンチレンテトラゾール処理(120mg/kg 腹腔内)後に、強直発作の発生および/または潜伏を、野生型マウスと突然変異マウスで最大10分間記録した。ビヒクルまたはジアゼパム(3、10および30mg/kg 経口)による処理を、ペンチレンテトラゾールの30分前に行った。この試験は、依存性障害を評価するのに使用される。
【0080】
6.1.8 ロータロッド
運動障害を評価するために、マウスを、2rpmの固定速度で回転する回転棒の上に少なくとも120秒間とどまるように訓練した。Bonettiら、1988, Pharmacol. Biochem. Behav. 31:733。ビヒクルまたはジアゼパム(3、10および30mg/kg 経口)による処理の前の60秒までと、該処理の30分後に、棒から落ちるまでの持続時間を記録した。
【0081】
6.2 結果
α2とα3受容体サブタイプの薬理学を区別するために、α2サブユニット遺伝子[α2(H101R)](図1)とα3サブユニット遺伝子[α3(H126R)]の相同位置に点突然変異を導入して、各受容体をジアゼパム非感受性とした、2つのマウス株を作製した。変異体は、明らかで顕著な表現型を示さず、正常に繁殖し、試験したすべてのサブユニット(α1、α2、α3、β2/3、γ2)を正常レベル(図2A)で変化のない分布で発現した。ジアゼパム非感受性[H]Ro15−4513(NEN、ボストン、マサチューセッツ州)結合部位の数は、野生型マウスの5%からα2(H101R)マウスの17%まで上昇し、α3(H126R)マウスでは11%まで上昇した[α2野生型対照:Bmax=0.08±0.02pmol/mgタンパク質、K=4.3±0.8nM(n=3);α2(H101R)マウス:Bmax=0.26±0.01pmol/mgタンパク質、K=8.0±1.3nM(n=3);α3野生型対照:Bmax=0.06±0.01pmol/mgタンパク質、K=4.9±2.1nM(n=3);α3(H126R)マウス:Bmax=0.11±0.02pmol/mgタンパク質、K=6.5±1.6nM(n=3)]。α2サブユニットの既知の分布(FritschyおよびMoehler、1995, J. Comp. Neuro. 359:154)に一致して、ジアゼパム非感受性部位α2(H101R)マウスは、100μMジアゼパムの存在下で10nM[H]Ro15−4513を使用して、側矢状脳切片でオートラジオグラフィーにより証明されるように、α2−GABA 受容体を発現するすべての領域について視覚化された(図2B)。同様に、α3(H126R)マウスでは、新規なジアゼパム非感受性[H]Ro15−4513結合部位は、α3サブユニットの分布に対応する分布を示した(図2B)(FritschyおよびMoehler、1995, J. Comp. Neuro. 359:154)。α2またはα3サブユニット特異的抗血清を用いる免疫沈降後に、[H]Ro15−4513結合により、各突然変異マウスからα2およびα3サブユニットへの、ジアゼパムに対する親和性の1,000倍を超える低下が明らかになった。
【0082】
GABA(3μM)に対する電気生理学的応答は、野生型マウスとα2(H101R)マウスの培養海馬錐体細胞で区別できなかった(図2C)。しかし、ジアゼパム(1μM)による増強は、野生型マウスからの細胞と比較すると、α2(H101R)マウスからの細胞で低下し[17.6±4.5%(n=29)対 48.1±7.9%(n=18)、P=0.001](図2C)、残りの増強は、おそらくα2以外のGABA 受容体によるものと思われた。野生型細胞中のRo15−4513(1μM)の逆アゴニスト作用は、α2(H101R)マウスから得られた細胞中でアゴニスト応答に変換された[−39±5.2%(n=13)対 11.7±7.5%(n=23)、P=0.003](図2C)。これは、逆アゴニスト作用から、HEK−293細胞で発現される組換えα2(H101R)β3γ2受容体について証明されたアゴニスト作用への、Ro15−4513の作用の切り換えと一致する(Bensonら、1998, FEBS Lett. 431:400)。
【0083】
α2(H101R)マウスとα3(H126R)マウスのジアゼパム誘導行動を野生型マウスのそれと比較することにより、突然変異α2およびα3 GABA 受容体の薬理学的意義を評価した。用量依存的に試験すると、ジアゼパムの鎮静作用、運動障害および抗けいれん作用(Bonettiら、1988, Pharmacol. Biochem. Behav. 31:733)は、野生型マウスと比較してα2(H101R)マウスまたはα3(H126R)マウスで損なわれなかった(図3)。
【0084】
α2(H101R)マウスとα3(H126R)マウスのジアゼパムの抗不安様作用を、明/暗選択試験(Misslinら、1989, Behav. Proc. 18:119)と高所+迷路試験(Lister, 1987, Psychopharmacology 92:180)で試験した。明/暗選択試験において、α2(H101R)マウスは、ジアゼパムによる行動脱抑制を示さなかったが、この行動脱抑制は野生型マウスでは明らかであった。2mg/kgまでのジアゼパムは、照明領域で過ごした時間を、野生型マウスと比較してα2(H101R)マウスで増加させなかった(P<0.05 対 ビヒクル)(図4A)。ビヒクルまたはジアゼパム処理下で、野生型マウスとα2(H101R)マウスの間で、暗い場所で行動の差は観察されなかったため、この効果は、α2(H101R)マウスの運動欠陥が原因ではなかった。さらに、α2(H101R)マウスは、ベンゾジアゼピン部位ではなくGABA 受容体部位に作用するリガンドに対する抗不安様応答を示す能力を保持していた。フェノバルビタールナトリウム(15mg/kg 皮下)は、野生型マウスで見られたものと同様に、α2(H101R)マウスで明/暗選択試験で行動脱抑制を誘導した[照明領域での時間、野生型(wt)ビヒクル:70.5±10.5秒;wtフェノバルビタール;111.75±10.0秒;α2(H101R)ビヒクル:75.3±11.5秒、およびα2(H101R)フェノバルビタール:110.9±9.6秒;F(1,24)=13.44、P<0.02、n=6〜8]。α2(H101R)マウスでジアゼパムの抗不安様作用が存在しないことは、高所+迷路試験で確認された。野生型マウスでは、ジアゼパムは、開放アームで過ごした時間の長さ[P<0.01 対 ビヒクル]と開放アームに入った回数[P<0.05]の両方を増加させることにより、探索行動を促進した。これに対して、α2(H101R)マウスでは、ジアゼパムは探索行動の両方のパラメータを増加させなかった(図4B, C)。同様に、閉鎖アーム中での運動活性は、処理に無関係にα2(H101R)マウスと野生型マウスで同様であったため、この不成功の原因は、運動障害ではなかった。
【0085】
ジアゼパムの抗不安様活性に対するα3 GABA 受容体の寄与の可能性を、α3(H126R)マウスで調べた。α3(H126R)マウスと野生型マウスの両方とも、明/暗選択試験[P<0.01 対 ビヒクル](図4D)と高所+迷路[P<0.001 対 ビヒクル](図4E、F)とで、ジアゼパムに対して、同様の用量依存的抗不安様応答を示した。これらの結果は、野生型マウスでのジアゼパムの抗不安作用には、α3 GABA 受容体との相互作用が関与しないことを示す。
【0086】
ジアゼパムの抗不安様作用は、α2 GABA 受容体を発現するニューロン集団におけるGABA作動性伝達の増強により、選択的に仲介されるが、α2 GABA 受容体はすべてのジアゼパム感受性GABA 受容体のわずかに15%である(Marksitzerら、1993, J. Recept. Res. 13:467)。脳皮質と海馬中のα2 GABA 受容体発現細胞は、主要なニューロンの出力を制御すると考えられる軸索初期セグメント上の、α2 GABA 受容体を非常に高い密度で示す錐体細胞を含む(Nusserら、1998, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:11939;Fritschyら、1998, J. Camp. Neurol. 390:194)。
【0087】
長期の治療で観察される副作用が低下することに関しては、ジアゼパムで長期処置した野生型マウスは、フルマゼニル(ベンゾジアゼピンアンタゴニスト)を投与すると禁断症状を示した。ベンゾジアゼピンに非感受性の変異α1−GABA 受容体(H101R)を有するマウスを同じプロトコール(ジアゼパムによる長期処置とフルマゼニルの投与)に付すと、自発運動で測定される禁断症状は大幅に低下した。
【0088】
本発明は、本明細書に記載の特定の実施形態の範囲に限定されない。実際、前記説明と添付の図面から当業者には、本明細書に記載のもの以外に本発明の種々の改変が明らかであろう。そのような改変は、特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
【0089】
種々の刊行物および特許出願が本明細書で引用されているが、これらの開示内容は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1A〜D。α2サブユニットGABA 受容体遺伝子のターゲティング。図1A:野生型と変異対立遺伝子の構造。変異対立遺伝子1は、マウスES細胞中で遺伝子ターゲティング後に得られ、マウス生殖細胞系に導入される;これらのマウスをElla−creマウスに交配させると、ネオマイシン耐性カセット(変異対立遺伝子2)が切断される。ターゲティングベクターの両側に位置する5’と3’プローブを、実線の棒で示す。HisとArgは、それぞれエキソン4の101位のヒスチジンとアルギニンのコドンを示す。図1B:胚幹細胞中の野生型(wt)対立遺伝子と変異対立遺伝子1(Mut1)のサザンブロット解析。図1C:Ella−creトランス遺伝子にヘミ接合性のキメラとマウスの交配から得られる子孫の遺伝子タイピング。上のパネル:PCRプライマーP1、P2、P3は、各対立遺伝子の特異的な増幅産物を与える。下のパネル:PCRプライマーUR26とUR36は、creトランス遺伝子を増幅する。図1D:自動DNA配列決定によるα2(H101R)点突然変異の証明。
【図2】図2A〜C。α2(H101R)とα3(H126R)マウスのGABA 受容体の分子特性。図2A:α1、α2、α3、β2/3およびγ2サブユニットを認識する抗血清を使用する野生型マウスとα2(H101R)およびα3(H126R)マウスからの、脳膜全体のウェスタンブロット。図2B:野生型、α2(H101R)(上のパネル)およびα3(H126R)(下のパネル)脳中の、ジアゼパム非感受性部位の受容体オートラジオグラフィー。傍矢状切片を、100μMのジアゼパムの存在下で10nMの[H]Ro15−4513とインキュベートして、ジアゼパム非感受性[H]Ro15−4513結合部位を明らかにした。野生型マウスでは、ジアゼパム非感受性[H]Ro15−4513結合は、α4とα6GABA 受容体による。図2C:α2(H101R)マウスからの培養海馬錐体細胞のGABA応答。パッチ−クランプ分析の保持電位は−60mVであり、塩素濃度は対称であった。GABAを5秒間適用した。E16.5胚からの海馬ニューロンを、10〜14日間培養した。2重の星印は、P<0.001(スチューデントt検定)。
【図3】図3A〜F。野生型マウスと比較したα2(H101R)マウス(図3A〜C)とα3(H126R)マウス(図3D〜F)における、ジアゼパムの鎮静、運動障害、および抗けいれん性の行動評価。図3A:野生型マウスとα2(H101R)マウスにおける自発運動の用量依存性阻害[F(3, 71) 19.31, P<0.001, n=9〜10匹マウス/群]。図3B:野生型マウスとα2(H101R)マウスにおける回転棒(固定2rpm)から落ちるまでの持続時間の用量依存性低下[F(3, 153)=71.01, P<0.001, n=20〜21匹マウス/群]。図3C:野生型マウス[χ=32.28, P<0.001, n=10匹マウス/群]とα2(H101R)マウス[χ=28.13, P<0.001, n=10匹マウス/群]の、強直性けいれんを示すマウスの割合の用量依存性低下。図3D:野生型マウスとα3(H126R)マウスにおける自発運動の用量依存性阻害[F(3, 64)=14.70, P<0.001, 17=8〜10匹マウス/群]。図3E:野生型マウスとα3(H126R)マウスにおける回転棒(固定2rpm)から落ちるまでの持続時間の用量依存性低下[F(3, 64)=36.78, F<0.001, n 8〜10匹マウス/群]。図3F:野生型マウス[χ=32.38, P<0.001, n=10匹マウス/群]とα3(H126R)マウス[χ=28.60, P<0.001, n=10匹マウス/群]の、強直性けいれんを示すマウスの割合の用量依存性低下。結果は、平均±S.E.M.として示す。+ P<0.05、++ P<0.01、+++ P<0.001(ダネットの事後比較またはフィッシャーの正確度検定)。V、ビヒクル。ロタロッド(rotarod)とペンチレンテトラゾールケイレン試験を、Bonettiら、1988, Pharmacol. Biochem. Behav. 31:733に従って行った。自発運動を30分間自動的に記録した。試験前に30分間、マウスをビヒクルまたはジアゼパム(3、10および30mg/kg経口)で処理した。
【図4】図4A〜F。野生型マウスと比較したα2(H101R)マウス(図4A〜C)とα3(H126R)マウス(図4D〜F)における、ジアゼパムの抗不安様作用の行動評価。図4A:明/暗選択試験。ジアゼパムは、野生型マウス[F(3, 36)=3.14, P<0.05]が明るい場所で費やした時間を用量依存性に増加させたが、α2(H101R)マウス[F(3, 36)=0.32, 有意差無し]では増加させなかった、n=10匹マウス/群。図4B〜C:高所+迷路(Elevated plus−maze)。ジアゼパム(2mg/kg)は、野生型マウスで、開放アームで費やした時間の割合とエントリーを上昇させた[P<0.01とP<0.05対ビヒクル]が、α2(H101R)マウスでは上昇させなかった[それぞれ、F(1, 32)=4.31とF(1, 32)=4.76, P<0.05, n=8〜10匹マウス/群]。図4D:明/暗選択試験。野生型マウスとα3(H126R)マウスにおける、明るい場所で費やした時間の用量依存性増加[それぞれ、F(1, 70)=14.74, P<0.001, n 9−10匹マウス/群]。図4E〜F:高所+迷路(Elevated plus−maze)。ジアゼパム(2mg/kg)は、開放アームで費やした時間の割合とエントリーを、野生型マウスとα3(H126R)マウスで同程度に上昇させた[それぞれ、F(1, 36)=26.52とF(1, 36)=37.31, P<0.001, n=10匹マウス/群]。結果は、平均±S.E.M.として示す。+ P<0.05、++ P<0.01、+++ P<0.001(ダネットまたはフィッシャーの対になった事後比較またはフィッシャーの正確度検定)。V、ビヒクル、Dz、ジアゼパム。明−暗選択試験は、後述のような、500 ルクスの照射で行った。マウスに、ビヒクルまたは増加する用量のジアゼパム(0.5、1および2mg/kg経口)を投与した。高所+迷路(elevated plus−maze)を、後述のように暗い光の照射(<10ルクス)下で行った。試験の30分前に、ビヒクルまたはジアゼパムを投与した。

Claims (18)

  1. 候補分子にα2−GABA 受容体とα1−GABA 受容体とを接触させ、候補分子が、α1−GABA 受容体に比較してα2−GABA 受容体に選択的または優先的に結合するかまたはこれを活性化するかどうかを測定することを含む、選択的抗不安物質を同定するためのスクリーニング方法であって、α1−GABA 受容体に比較してα2−GABA 受容体に選択的または優先的に結合するかまたはこれを活性化する分子は、選択的抗不安物質である、上記方法。
  2. 候補分子にα2−GABA 受容体とα3−GABA 受容体とを接触させ、候補分子が、α3−GABA 受容体に比較してα2−GABA 受容体に選択的または優先的に結合するかまたはこれを活性化するかどうかを測定することを含む、選択的抗不安物質を同定するためのスクリーニング方法であって、α3−GABA 受容体に比較してα2−GABA 受容体に選択的または優先的に結合するかまたはこれを活性化する分子は、選択的抗不安物質である、上記方法。
  3. 候補分子にα2−GABA 受容体とα5−GABA 受容体とを接触させ、候補分子が、α5−GABA 受容体に比較してα2−GABA 受容体に選択的または優先的に結合するかまたはこれを活性化するかどうかを測定することを含む、選択的抗不安物質を同定するためのスクリーニング方法であって、α5−GABA 受容体に比較してα2−GABA 受容体に選択的または優先的に結合するかまたはこれを活性化する分子は、選択的抗不安物質である、上記方法。
  4. α1−GABA 受容体に比較してα2−GABA 受容体に選択的または優先的に結合するかまたはこれを活性化する選択的抗不安物質。
  5. α3−GABA 受容体に比較してα2−GABA 受容体に選択的または優先的に結合するかまたはこれを活性化する選択的抗不安物質。
  6. α5−GABA 受容体に比較してα2−GABA 受容体に選択的または優先的に結合するかまたはこれを活性化する選択的抗不安物質。
  7. 受容体のベンゾジアゼピン結合部位に結合する、請求項4、5または6に記載の選択的抗不安物質。
  8. 受容体の神経ステロイド結合部位に結合する、請求項4、5または6に記載の選択的抗不安物質。
  9. 受容体のバルビツレート結合部位に結合する、請求項4、5または6の選択的抗不安物質。
  10. 治療の必要な患者に、治療上有効量の選択的抗不安物質と薬剤学的に許容される担体とを投与することを含む、不安関連障害の治療方法。
  11. 選択的抗不安物質は、請求項1、2または3の方法により同定される、請求項10の方法。
  12. 選択的抗不安物質は、受容体のベンゾジアゼピン結合部位に結合する、請求項10の方法。
  13. 選択的抗不安物質は、受容体の神経ステロイド結合部位に結合する、請求項10の方法。
  14. 選択的抗不安物質は、受容体のバルビツレート結合部位に結合する、請求項10の方法。
  15. 選択的抗不安物質はプロドラッグである、請求項10の方法。
  16. α1−GABA 受容体に結合する非選択的ベンゾジアゼピンの能力を低下させるが、α2−GABA 受容体に結合する非選択的ベンゾジアゼピンの能力を実質的に低下させない分子の同定法であって、α1−GABA 受容体とα2−GABA 受容体とに、ベンゾジアゼピンと候補分子とを接触させて、α1−GABA 受容体に結合するベンゾジアゼピンの能力を低下させるが、α2−GABA 受容体に結合するベンゾジアゼピンの能力を実質的に低下させない、候補分子の能力を検出することを含む、上記方法。
  17. α3−GABA 受容体に結合する非選択的ベンゾジアゼピンの能力を低下させるが、α2−GABA 受容体に結合する非選択的ベンゾジアゼピンの能力を実質的に低下させない分子の同定法であって、α3−GABA 受容体とα2−GABA 受容体とに、ベンゾジアゼピンと候補分子とを接触させて、α3−GABA 受容体に結合するベンゾジアゼピンの能力を低下させるが、α2−GABA 受容体に結合するベンゾジアゼピンの能力を実質的に低下させない、候補分子の能力を検出することを含む、上記方法。
  18. α5−GABA 受容体に結合する非選択的ベンゾジアゼピンの能力を低下させるが、α2−GABA 受容体に結合する非選択的ベンゾジアゼピンの能力を実質的に低下させない分子の同定法であって、α5−GABA 受容体とα2−GABA 受容体とに、ベンゾジアゼピンと候補分子とを接触させて、α5−GABA 受容体に結合するベンゾジアゼピンの能力を低下させるが、α2−GABA 受容体に結合するベンゾジアゼピンの能力を実質的に低下させない、候補分子の能力を検出することを含む、上記方法。
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