JP2004506421A - 卵巣癌のための治療化合物 - Google Patents
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Abstract
本発明は、合成化合物、これらの化合物を認識する抗体、これらの化合物をコードするポリヌクレオチド、およびこれらのエピトープの提示に応答して産生される免疫エフェクター細胞を提供する。本発明はさらに、本発明の組成物を送達することによって、被験者に免疫応答を誘導し、免疫治療を施す方法を提供する。
Description
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2000年8月17日に提出された、米国仮特許出願第60/226,243号に対する、米国特許法第119項(e)の下で優先権を主張する。この出願の内容は参照として本開示に組み入れられる。
【0002】
技術分野
本発明は、ヒト卵巣癌に対して有用な治療化合物の分野に関する。
【0003】
発明の背景
主要組織適合抗原複合体(MHC)分子によって提示される抗原エピトープの認識は、哺乳類の免疫応答の確立、維持、および実行において中心的な役割を果たしている。体細胞および抗原提示白血球によって発現される細胞表面のMHC分子によって提示されるペプチド抗原のT細胞による探査および認識は、ウイルス、細菌、および寄生虫のような感染性微生物による侵入を制御するように機能する。さらに今では、抗原特異的細胞障害性Tリンパ球(CTL)は特定の癌細胞抗原を認識して、これらの抗原を発現する細胞を攻撃することができることが証明されている。このT細胞活性は、抗癌ワクチンの新しい戦略を開発するための基礎となる。さらに、不適当なT細胞活性化は、リウマチ性関節炎、多発性硬化症、および喘息のような特定の衰弱性の自己免疫疾患において中心的な役割を果たす。このように、MHC分子によって提示される抗原エピトープの提示および認識は、多数の病態における免疫応答の調節において中心的な役割を果たす。
【0004】
癌患者に由来する腫瘍特異的T細胞は、腫瘍細胞に結合して溶解する。この特異性は、MHCクラスIおよびいくつかの細胞種においてはクラスII分子が、腫瘍細胞表面に提示される短いアミノ酸配列(エピトープ)を認識できることに基づいている。これらのエピトープは、腫瘍または癌細胞において独自にまたは異常に発現されている遺伝子によってコードされる腫瘍抗原と呼ばれる細胞内タンパク質のタンパク質溶解による分解に由来する。
【0005】
特異的抗腫瘍T細胞を利用できれば、腫瘍抗原を同定することができ、それによって抗腫瘍免疫応答を誘発するように設計された癌ワクチンを産生することができる。抗腫瘍T細胞は、血液(そこで、細胞は末梢血単核球細胞分画に認められうる)、一次および二次リンパ様組織、例えば脾臓、卵巣癌患者における腹水(腫瘍関連リンパ球もしくはTALs)、または腫瘍そのものの内部(腫瘍浸潤リンパ球もしくはTIL)を含む、癌患者の体内に存在する。これらの中で、TILは、T細胞によって認識される腫瘍抗原および腫瘍抗原由来ペプチドの同定において最も有用であった。
【0006】
TILを作製する従来の方法は、腫瘍生検組織を細切して、T細胞増殖因子であるインターロイキン−2(IL−2)の存在下でインビトロで細胞浮遊液を培養することを含む。数日間のあいだに、腫瘍細胞とIL−2との混合物は、腫瘍細胞を犠牲にして腫瘍特異的T細胞の増殖を刺激することができる。このようにして、T細胞集団を増殖させる。初回増殖に由来するT細胞をその後、マイトマイシンC処理または放射線照射腫瘍細胞のいずれかと混合して、インビトロでIL−2と共に培養して、腫瘍反応性T細胞のさらなる増殖および濃縮を促進する。インビトロ増殖を数回行った後、強力な抗腫瘍T細胞集団を回収して、これを用いて従来の、しかし単調な発現クローニング技術によって腫瘍抗原を同定することができる。カワカニら(Kawakani, Y.、(1994)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91(9):3515〜3519)。
【0007】
腫瘍特異的T細胞をインビトロで産生するために現在用いられている方法論は、信頼性に乏しく、この方法によって同定された抗原は必ずしも抗腫瘍免疫応答を誘導しない。抗原が成熟T細胞に出合うと、無視、アネルギー、または物理的欠乏のためにしばしば免疫寛容が誘導されることが多数の実験によって証明されている。パードル(Pardoll、(1998)Nature Med. 4(5):525〜531)。
【0008】
特定のペプチドがT細胞エピトープとして機能するか否かは、それらがMHC分子の抗原提示ドメインに有効に結合すること、しかもT細胞受容体分子によって特異的に認識されうる適当なセットのアミノ酸を示す必要がある。抗原性ポリペプチドに由来する天然のT細胞エピトープを同定することは可能であるが、これらのペプチドは特定の免疫応答を誘導するために最適な抗原を必ずしも提示しない。実際に、その配列を変化させる一つまたは多数のアミノ酸置換体を導入することによって天然のエピトープの有効性を改善することが可能であることが示されている(バルモリ(Valmori)ら、(2000)、J. Immunol. 164(2):1125〜1131)。このように、注意深く最適にした合成ペプチドエピトープを送達すれば、有用な免疫応答を誘導するための改善された方法を提供する可能性がある。
【0009】
抗原を動物に導入することは、多様な目的のために、抗原に対する免疫応答またはその欠損を調節する目的のために、広く用いられている。これらには、病原体に対するワクチン接種、癌様細胞に対する免疫応答の誘導、アレルギー反応の減少、自己免疫障害の結果として起こる、自己抗原に対する免疫応答の減少、同種異系移植片拒絶の減少、および避妊目的の自己抗原に対する免疫応答の誘導が含まれる。
【0010】
癌の治療において、腫瘍細胞を特異的に認識して溶解する細胞障害性Tリンパ球集団を作製するために、多様な免疫治療的アプローチが用いられている。これらのアプローチの多くは、腫瘍特異的抗原の同定および特徴付けに一部依存している。
【0011】
近年、特定の病原体および腫瘍関連タンパク質が、そのアミノ酸配列が病原体または腫瘍関連タンパク質の抗原決定基ドメインのアミノ酸配列に対応する合成ペプチドによって免疫学的に模倣されている。これらの進歩にもかかわらず、天然の配列に基づくペプチド免疫原は、一般的に免疫応答の誘導に関して最適とは言えない。このように、免疫調節特性が増強した改変された合成ペプチドエピトープが必要である。本発明は、この必要性を満足して、関連する長所も同様に提供する。
【0012】
発明の開示
本発明は、新規合成治療化合物を提供する。これらの化合物は、MHC分子との結合を増強し、その天然での相対物と比較して免疫調節特性を増強するように設計される。本発明の合成化合物は、合成および天然の化合物に対する免疫応答を調節するために有用である。
【0013】
本発明の化合物をコードするポリヌクレオチド、これらのポリヌクレオチドを含む遺伝子送達媒体、およびこれらのポリヌクレオチドを含む宿主細胞がさらに提供される。
【0014】
さらに、本発明は、本発明の化合物および組成物を送達すること、ならびにこれらをMHC分子に結合させて送達することによって、被験者における免疫応答を誘導する方法を提供する。
【0015】
本発明の化合物はまた、これらの化合物を特異的に認識して結合する抗体を作製するためにも有用である。これらの抗体は、被験者に投与すると免疫治療にとってさらに有用である。
【0016】
本発明はまた、MHC分子に結合した本発明のペプチド組成物を提示する抗原提示細胞の存在下で、そして抗原提示細胞を犠牲にしてインビボまたはインビトロで産生した免疫エフェクター細胞を提供し、およびこれらの免疫エフェクター細胞の有効量を被験者に投与することを含む養子免疫治療の方法を提供する。
【0017】
本発明はさらに、免疫原性リガンドが天然の同じリガンドに対して免疫応答を誘発できることを個々に特徴とし、免疫原性リガンドが
からなる群より選択される、少なくとも二つの免疫原性リガンドを含む組成物を提供する。リガンドは薬学的に許容される担体のような担体中に存在しうる。
【0018】
同様に、本発明は、免疫原性リガンドが天然の同じリガンドに対して免疫応答を誘発できることを特徴とし、免疫原性リガンドが
からなる群より選択される、少なくとも二つの免疫原性リガンドを含む宿主細胞も提供する。一つの局面において、宿主細胞は、抗原提示細胞であり、免疫原性リガンドは細胞表面に提示される。さらなる局面において、抗原提示細胞は樹状細胞である。宿主細胞は、薬学的に許容される担体のような担体中に存在しうる。
【0019】
なお本発明はさらに、免疫原性リガンドのそれぞれが天然の同じリガンドに対して免疫応答を誘発できることを特徴として、免疫原性リガンドが
からなる群より選択される、二つまたはそれ以上の有効量の免疫原性リガンドを含む組成物を、被験者に送達することによって、被験者において免疫応答を誘導する方法を提供する。
【0020】
配列表の説明
配列番号:1
ヒト癌抗原プロテアーゼ活性型レセプター−3(PAR−3)をコードするcDNAの完全なヌクレオチド配列である。コード領域は、ヌクレオチド1位〜ヌクレオチド3801位に及ぶ。
配列番号:2
天然のヒト癌抗原PAR−3のアミノ酸配列である。本発明の化合物は、天然のペプチド700〜708に基づく変種である。
配列番号:3
化合物1のアミノ酸配列である。
配列番号:4
化合物1をコードするポリヌクレオチド配列である。
配列番号:5
化合物2のアミノ酸配列である。
配列番号:6
化合物2をコードするポリヌクレオチド配列である。
配列番号:7
化合物3のアミノ酸配列である。
配列番号:8
化合物3をコードするポリヌクレオチド配列である。
配列番号:9
化合物4のアミノ酸配列である。
配列番号:10
化合物4をコードするポリヌクレオチド配列である。
配列番号:11
ヒト癌抗原PAR−3の天然のエピトープ。
配列番号:12
該抗原PAR−3をコードするポリヌクレオチド配列である。
【0021】
本発明を実施する様式
本開示を通して、様々な刊行物、特許および公開された特許明細書は、識別する引用文によって参照される。これらの刊行物、特許および公開された特許明細書の開示は、本発明が属する技術分野の現状をより詳しく説明するために、本開示に参照として本明細書に組み入れられる。
【0022】
本発明の実施は、特に明記していなければ、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学および免疫学の従来の技術を用い、それらは当業者の範囲内である。そのような技術は文献に詳しく説明されている。これらの方法は、以下の刊行物に記述されている。例えば、サムブルック(Sambrook)ら、「分子のクローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)」第二版(1989);「分子生物学の現行プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」(アウスユベール(Ausubel)F.M. ら編、(1987));「酵素学実験法シリーズ(the series Methods in Enzymology)」、(アカデミック出版社);「PCR:実践アプローチ(PCR:A Practical Approach)」、(M. マクファーソン(MacPherson)ら、IRL出版、オックスフォード大学出版(1991));「PCR 2:実践アプローチ(PCR 2:A Practical Approach)」、(マクファーソン、ハームスおよびテイラー(M.J. MacPherson、 B.D. Hames、およびG.R. Taylor)編、(1995));「抗体:実験マニュアル(Antibodies, A Laboratory Manual)」、(ハーロウおよびレーン(HarlowおよびLane)編、(1988));および「動物細胞培養(Animal Cell Culture)」、R.I. フレッシュニー(Freshney)ら編、(1987))を参照のこと。
【0023】
定義
本明細書において用いられるように、特定の用語は以下に定義された意味を有する。
【0024】
本明細書および請求の範囲において用いられるように、単数形「一つの(a)」、「一つの(an)」、および「その」には、特に文脈で明らかに明記しない限り、複数形が含まれる。例えば、「細胞」という用語には、その混合物を含む複数の細胞が含まれる。
【0025】
本明細書において用いられるように、「含む」という用語は、組成物および方法に引用された要素が含まれるが、他の要素を除外しないことを意味すると解釈される。「本質的にからなる」とは、組成物および方法を定義するために用いる場合、組み合わせに対して本質的な重要性を有する、他の任意の要素を除外することを含むことを意味する。このように、本明細書に定義する要素から本質的になる組成物は、単離および精製方法からの微量の混入物およびリン酸緩衝生理食塩液、保存剤等のような薬学的に許容される担体を除外しないと考えられる。「からなる」とは、他の成分の微量以上の要素を除外して、本発明の組成物を投与するための実質的な方法段階を含むことを意味する。これらの移行用語のそれぞれによって定義される態様は本発明の範囲に含まれる。
【0026】
「天然の」または「自然の」抗原とは、自然の生物起源から単離され、被験者において抗原受容体、特にT細胞抗原受容体(TCR)に特異的に結合することができるエピトープを含むポリペプチド、タンパク質または断片である。
【0027】
「抗原」という用語は、当技術分野において十分に理解されており、これには免疫原性である物質、すなわち免疫原、および免疫学的無反応性、またはアネルギーを誘導する物質、すなわちアネルゲンが含まれる。
【0028】
「改変された抗原」とは、対応する野生型抗原とは異なる一次配列を有する抗原である。改変抗原は、合成または組換え法によって作製することができ、これには例えばリン酸化、グリコシル化、架橋、アシル化、タンパク質溶解的分解、抗体分子、膜分子または他のリガンドとの結合によって、翻訳時または翻訳後に異なるように改変される抗原性ペプチドが含まれるがこれらに限定されない。(ファーガソン(Ferguson)ら、(1988)、Ann. Rev. Biochem. 57:285〜320)。本発明の合成または改変抗原は、天然のエピトープと同じTCRに結合すると解釈される。
【0029】
本明細書において天然の抗原または野生型抗原とも呼ばれる「自己抗原」はまた、抗原に対する自己寛容により被験者において免疫応答をほとんど、または全く誘導しない抗原性ペプチドである。自己抗原の例は、黒色腫特異抗原gp100である。
【0030】
「腫瘍関連抗原」または「TAA」という用語は、腫瘍に関連するまたは腫瘍に特異的な抗原を意味する。既知のTAAの例には、gp100、MARTおよびMAGEが含まれる。
【0031】
「主要組織適合抗原複合体」または「MHC」という用語は、T細胞に抗原を提示するために必要な、および急性の移植片拒絶のために必要な細胞表面分子をコードする遺伝子の複合体を意味する。ヒトでは、MHCは「ヒト白血球抗原」または「HLA」複合体としても知られる。MHCによってコードされるタンパク質は、「MHC分子」として知られ、クラスIおよびクラスII MHC分子に分類される。クラスI MHC分子には、β2−ミクログロブリンと非共有結合したMHCにおいてコードされるα鎖で構成される膜ヘテロ二量体タンパク質が含まれる。クラスI MHC分子は、ほぼ全ての有核細胞によって発現され、CD8+ T細胞に対する抗原提示において機能することが示されている。クラスI分子には、ヒトにおけるHLA−A、B、およびCが含まれる。クラスII MHC分子には、非共有結合によって結合したαおよびβ鎖からなる膜ヘテロ二量体タンパク質が含まれる。クラスII MHC分子は、CD4+ T細胞において機能することが知られており、ヒトにおいて、HLA−DP、−DQ、およびDRが含まれる。好ましい態様において、本発明の組成物およびリガンドは、任意のHLA型のMHC分子と複合体を形成することができる。当業者は、HLAの血清型および遺伝子型を周知している。例えば、http://bimas.dcrt.nih.gov/cgi−bin/molbio/hlaの共通閲覧頁を参照のこと。ラメンシー、バックマン、およびステバノビッチ(Rammensee, H.G.、Bachman, J.、およびStevanovic, S.、「MHCリガンドとペプチドモチーフ(MHC Ligands and Peptide Motifs)」、(1997)、チャプマン・アンド・ホール出版社);シュリューダー(Schreuder)G.M.Thら、「HLA辞書(The HLA Dictionary)」、(1999)Tissue Antigens 54:409〜437)。
【0032】
「抗原提示マトリクス」という用語は、本明細書において用いられるように、抗原がT細胞表面上でT細胞抗原受容体に結合することができるように抗原を提示することができる分子または複数の分子を意味する。抗原提示マトリクスは、抗原提示細胞(APC)の表面、またはAPCの小胞調製物に存在することができ、またはビーズもしくはプレートのような固相支持体上の合成マトリクスの形となりうる。合成抗原提示マトリクスの例は、固相支持体に結合した、β2−ミクログロブリンと複合体を形成した精製MHCクラスI分子、そのような精製MHCクラスI分子の多量体、精製MHCクラスII分子、またはその機能的部分である。
【0033】
「抗原提示細胞(APC)」とは、免疫系の特異的エフェクター細胞によって認識可能な抗原MHC複合体の形で一つまたは複数の抗原を提示することができ、それによって提示される抗原または複数の抗原に対して有効な細胞免疫応答を誘導することができる細胞のクラスを意味する。多くの種類の細胞が、T細胞が認識できるようにその細胞表面上に抗原を提示できる可能性があるが、有効な量で抗原を提示でき、細胞障害性Tリンパ球(CTL)反応に関してT細胞をさらに活性化する能力を有するのは、専門的なAPCに限られる。APCは、マクロファージ、B−細胞および樹状細胞のような無傷の完全な細胞;またはβ2−ミクログロブリンと複合体を形成した精製MHCクラスI分子のような天然もしくは合成の他の分子となりうる。
【0034】
「樹状細胞(DC)」という用語は、多様なリンパ様および非リンパ様組織において認められた形態学的に類似の細胞型の多様な集団を意味する(スタインマン(Steinman)(1991)、Ann. Rev. Immunol. 9:271〜296)。樹状細胞は、生物において最も強力な好ましいAPCを構成する。樹状細胞の全てではないがサブセットは骨髄前駆細胞に由来して、少数が末梢血を循環して、未成熟なランゲルハンス島細胞または最終的に分化した成熟細胞のいずれかとして現れる。樹状細胞は単球から分化することができるが、それらは異なる表現型を有する。例えば、特定の分化マーカーであるCD14抗原は、樹状細胞には存在しないが単球には存在する。同様に、成熟樹状細胞は貪食性ではないが、単球は強力な貪食細胞である。DCは、T細胞活性化と増殖にとって必要な全てのシグナルを提供することが示されている。
【0035】
「抗原提示細胞動員因子」、または「APC動員因子」という用語には、無傷の細胞全体と共に、抗原提示細胞を動員することができる他の分子が含まれる。適したAPC動員因子の例には、インターロイキン4(IL−4)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、セプラゲルおよびマクロファージ炎症タンパク質3α(MIP3α)のような分子が含まれる。これらは、イムネックス社、シェリングプラウ社およびR&Dシステムズ社(ミネアポリス、ミネソタ州)から入手できる。それらはまた、「分子生物学の現行プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」F.M. アウスユベール(Ausubel)ら編、(1987)に開示される方法を用いて、組換えによって産生することができる。上記の因子と同じ生物活性を有するペプチド、タンパク質、および化合物は、本発明の範囲に含まれる。
【0036】
「免疫エフェクター細胞」という用語は、抗原に結合することができ、免疫応答を媒介する細胞を意味する。これらの細胞には、T細胞、B細胞、単球、マクロファージ、NK細胞、ならびに細胞障害性Tリンパ球(CTL)、例えばCTL細胞株、CTLクローン、および腫瘍、炎症、または他の浸潤物からのCTLが含まれるがこれらに限定されない。特定の疾患を有する組織は、特異的抗原を発現して、これらの抗原に対して特異的なCTLが同定されている。例えば、黒色腫の約80%がGP−100として知られる抗原を発現する。
【0037】
本明細書において用いられる「免疫エフェクター分子」という用語は、抗原特異的に結合することができる分子を意味し、これには抗体、T−細胞抗原受容体、ならびにMHCクラスIおよびクラスII分子が含まれる。
【0038】
「未経験の」免疫エフェクター細胞は、その細胞を活性化することができる抗原にこれまで曝露されていない免疫エフェクター細胞である。未経験の免疫エフェクター細胞の活性化には、増殖して抗原特異性を備えるエフェクターT細胞に分化するために、ペプチド:MHC複合体の認識および専門的APCによる共刺激シグナルの同時送達の双方を必要とする。
【0039】
「免疫応答」は、広い意味において、外来物質に対するリンパ球の抗原特異的反応を意味する。免疫応答を誘発することができる如何なる物質も「免疫原性」であり、「免疫原」であると呼ばれる。免疫原は全て抗原であるが、必ずしも全ての抗原が免疫原性であるわけではない。本発明の免疫応答は、液性(抗体活性を通して)または細胞性(T細胞活性化を通して)となりうる。
【0040】
本明細書において用いられるように、「リガンド」という用語は、もう一つの分子上の特異的部位に結合する如何なる分子も意味する。言い換えれば、リガンドは、免疫エフェクター細胞との反応においてタンパク質の特異性を付与する。免疫エフェクター細胞上の相補的結合部位と直接複合体を形成するのはタンパク質内のリガンド部位である。
【0041】
好ましい態様において、本発明のリガンドは、抗体またはT細胞受容体(TCR)のような免疫エフェクター細胞上の抗原決定基またはエピトープに結合する。リガンドは、本発明の抗原、ペプチド、タンパク質、またはエピトープであってもよい。
【0042】
本発明のリガンドは、抗体上の受容体に結合してもよい。一つの態様において、本発明のリガンドは長さがアミノ酸約4〜約8個である。
【0043】
本発明のリガンドはMHCクラスI分子上の受容体に結合してもよい。一つの態様において、本発明のリガンドは長さがアミノ酸約7〜約11個である。
【0044】
本発明のリガンドは、MHCクラスII分子上の受容体に結合してもよい。一つの態様において、本発明のリガンドは長さがアミノ酸約10〜約20個である。
【0045】
本明細書において用いられるように、「感作された(educated)抗原特異的免疫エフェクター細胞」という用語は、抗原にこれまでに出合ったことがある上記の免疫エフェクター細胞である。その未経験の相対物とは対照的に、感作された抗原特異的免疫エフェクター細胞の活性化は、共刺激シグナルを必要としない。ペプチド:MHC複合体の認識で十分である。
【0046】
T細胞に関して用いる場合、「活性化された」とは、細胞が、G0期を出て、一つまたは複数のサイトトキシン、サイトカイン、および細胞種(例えば、CD8+またはCD4+)に特徴的な他の関連する膜結合型タンパク質を産生し始め、その表面上に特定の抗原を示す任意の標的細胞を認識して結合することができ、そのエフェクター分子を放出することができることを意味する。
【0047】
本発明の意味において、「認識される」という用語は、一つまたは複数のリガンドを含む本発明の組成物が、そのような結合が有効な免疫応答を開始する、免疫エフェクター細胞によって認識および結合されることを意味する。リガンドが免疫エフェクター細胞によって認識されるか否かを決定するアッセイは、当技術分野で既知であり、本明細書に記載される。
【0048】
「選択的に認識される」という用語は、本発明の組成物またはリガンドの特異性が、天然のリガンドを認識して結合する免疫エフェクター細胞に限定されることを意味する。
【0049】
「交叉反応する」という用語は、機能的に重なり合う本発明の化合物を記載するために用いられる。より詳しく述べると、天然のリガンドおよび/またはそれによって活性化される免疫エフェクター細胞の免疫原性特性は、改変されたリガンドが天然のリガンドおよび/またはそれによって活性化される免疫エフェクター細胞と「交叉反応」するように、改変リガンドによってある程度共有される。本発明の目的に関して、交叉反応性は、多数のレベルで現れる:(i)リガンドレベルで、例えば、改変リガンドは天然のリガンドCTLのTCRに結合して天然のリガンドCTLを活性化することができる;(ii)T細胞レベルで、すなわち本発明の改変リガンドは、T細胞のTCRに結合して、天然のリガンドを示す細胞を有効に標的としてこれを溶解することができるT細胞のある集団(天然のリガンドCTLの集団とは異なる)を活性化する;および(iii)抗体レベルで、例えば、「抗」改変リガンド抗体は、天然のリガンドを検出、認識して、免疫応答においてエフェクター機構を開始させることができ、最終的に宿主から天然のリガンドが消失する。
【0050】
本明細書において記載されるように、「被験者において免疫応答を誘導する」という用語は、当技術分野において周知の用語であり、被験者に抗原(またはエピトープ)を導入する前の免疫応答(もしあれば)と比較して、被験者に抗原(またはエピトープ)を導入した後に、抗原(またはエピトープ)に対する免疫応答の少なくとも約2倍、より好ましくは少なくとも約5倍、より好ましくは少なくとも約10倍、より好ましくは少なくとも約100倍、さらにより好ましくは少なくとも約500倍、なおより好ましくは少なくとも約1000倍またはそれ以上の増加を、検出または測定することができることを意味する。抗原(またはエピトープ)に対する免疫応答には、抗原特異的(またはエピトープ特異的)抗体の産生、抗原(またはエピトープ)に特異的に結合する分子をその表面上に発現する免疫細胞の産生が含まれるがこれらに限定されない。所定の抗原(またはエピトープ)に対する免疫応答が誘導されるか否かを決定する方法は当技術分野で周知である。例えば、抗原特異的抗体は、固定された抗原(またはエピトープ)に対する試料中の抗体の結合が、検出可能に標識した第二抗体(例えば、酵素標識マウス抗ヒトIg抗体)によって検出される、ELISAを含むがこれらに限定されない当技術分野で既知の多様な任意のイムノアッセイを用いて検出することができる。
【0051】
「共刺激分子」は、抗原提示細胞とT細胞の表面上に発現される受容体−リガンド対の相互作用に関係している。過去数年間に蓄積された研究によって、休止期のT細胞が、サイトカイン遺伝子発現を誘導して増殖するために、少なくとも二つのシグナルを必要とすることが確実に証明されている(シュワルツ(Schwartz)R.H.(1990)、Science 248:1349〜1356;およびジェンキンス(Jenkins)M.K.(1992)、Immunol. Today 13:69〜73)。特異性を付与する一つのシグナルは、適当なMHC/ペプチド複合体とTCR/CD3複合体との相互作用によって産生することができる。第二のシグナルは抗原特異的ではなく、「共刺激」シグナルと呼ばれる。このシグナルは、マクロファージおよび樹状細胞、いわゆる「専門的」APCのような骨髄由来補助細胞によって提供される活性として当初定義された。いくつかの分子が共刺激活性を増強することが示されている。これらは熱安定抗原(HSA)(リウ(Liu)Y.ら(1992)、J. Exp. Med. 175:437〜445)、コンドロイチン硫酸改変MHC不変鎖(Ii−CS)(ノージョカス(Naujokas)M.F.ら、(1993)、Cell 74:257〜268)、細胞内接着分子1(ICAM−1)(ファンセベンター(Van Seventer)G.A.、(1990)、J. Immunol. 144:4579〜4586)、B7−1およびB7−2/B70(シュワルツ(Schwartz)R.H.(1992)、Cell 71:1065〜1068)である。これらの分子は、それぞれT細胞上でその同種のリガンドと相互作用することによって共刺激を補助すると考えられる。共刺激分子は、正常な生理的条件で、未経験のT細胞を十分に活性化するために必要な共刺激シグナルを媒介する。例としての受容体−リガンド対は、APC表面上のB7共刺激分子およびT細胞上のその相対物受容体CD28またはCTLA−4である(フリーマン(Freeman)ら、(1993)Science 262:909〜911;ヤング(Young)ら、(1992)、J. Clin. Invest. 90:229およびナバビ(Nabavi)ら、(1992)、Nature 360:266〜268)。その他の重要な共刺激分子は、CD40、CD54、CD80、およびCD86である。「共刺激分子」という用語は、T細胞表面上のTCRに結合したペプチド/MHC複合体と共に作用すると、ペプチドに結合するT細胞の活性化を得る共刺激作用を提供する、任意の単一分子または分子の組み合わせも含む。この用語はこのように、B7、またはペプチド/MHC複合体と共に、同種のリガンドに結合して、T細胞の表面上のTCRがペプチドに特異的に結合すればT細胞を活性化する、APC、その断片(単独、他の分子と複合体を形成して、もしくは融合タンパク質の一部として)のような抗原提示マトリクス上の他の共刺激分子を含む。共刺激分子は、例えば、ベックマンコールターインク(フュラートン、カリフォルニア州)を含む多様な販売元から市販されている。必ずしも明示されていないが、野生型と類似の生物活性を有する分子、または精製された共刺激分子(例えば、組換えによって産生されたまたはその変異タンパク質)は、本発明の趣旨および範囲において用いられると解釈される。
【0052】
本明細書において用いられるように、「固相支持体」または「固体支持体」は、互換的に用いられ、特定の種類の支持体に限定されない。むしろ多数の支持体が利用でき、当技術分野で既知である。固相支持体には、シリカゲル、樹脂、誘導体化プラスチックフィルム、ガラスビーズ、ワタ、プラスチックビーズ、アルミナゲルが含まれる。本明細書において用いられるように、「固相支持体」には、合成抗原提示マトリクス、細胞、およびリポソームが含まれる。適した固相支持体は、様々なプロトコールに関して所望の目的の用途および適切性に基づいて選択してもよい。例えば、ペプチド合成に関して、固相支持体はポリスチレン(例えば、バケム社、ペニンスララボラトリーズ社等から得られるPAM−樹脂)、ポリハイプ(登録商標)樹脂(アミノテック社、カナダから得られる)、ポリアミド樹脂(ペニンスララボラトリーズ社から得られる)、ポリスチレングリコールを接合したポリスチレン樹脂(テンタゲル(登録商標)、ラップポリマー、チュービンゲン、ドイツ)、またはポリジメチルアクリルアミドゲル(ミリゲン/バイオサーチ社、カリフォルニア州から得られる)のような樹脂を適用してもよい。
【0053】
本明細書において用いられるように「免疫調節物質」という用語は、分子、高分子複合体、または免疫応答を調節する細胞であり、単独または本明細書に記載の多様な処方の任意のものと組み合わせた本発明の合成抗原性ペプチド;本発明の合成抗原性ペプチドを含むポリペプチド;本発明のペプチドまたはポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;APC、および合成抗原提示マトリクス(共刺激分子の存在下または非存在下で)を含む抗原提示マトリクス上のクラスIまたはクラスII MHC分子に結合した本発明の合成抗原性ペプチド;もう一つの分子または高分子構造と共有結合または非共有結合によって複合体を形成した本発明の合成抗原性ペプチド;ならびに本発明のペプチドに対して特異的な感作された抗原特異的免疫エフェクター細胞を含む。
【0054】
「免疫応答を調節する」という用語には、免疫応答を誘導(増加、誘発)する、および免疫応答を減少(抑制)することが含まれる。免疫調節法(またはプロトコール)は、被験者における免疫応答を調節する方法である。
【0055】
本明細書において用いられるように、「サイトカイン」という用語は、細胞に多様な作用を及ぼす、例えば成長または増殖(proliferation)を誘導する多数の任意の要因の一つを意味する。本発明の実施において単独または組み合わせて用いてもよいサイトカインの非制限的な実施例には、インターロイキン−2(IL−2)、幹細胞因子(SCF)、インターロイキン−3(IL−3)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−12(IL−12)、G−CSF、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、インターロイキン−1α(IL−1α)、インターロイキン−11(IL−11)、MIP−11、白血球抑制因子(LIF)、c−kitリガンド、トロンボポエチン(TPO)、およびflt3リガンドが含まれる。本発明にはまた、一つまたは複数のサイトカインが培地から特異的に除外される培養条件が含まれる。サイトカインは、例えばゲンザイム社(フラミンガム、マサチューセッツ州)、ジェネンテック社(サウスサンフランシスコ、カリフォルニア州)、アムジェン社(サウザンドオークス、カリフォルニア州)、R&Dシステムズ(ミネアポリス、ミネソタ州)、およびイムネックス社(シアトル、ワシントン州)のようないくつかの発売元から市販されている。必ずしも明示されていないが、野生型と類似の生物活性を有するまたは精製サイトカイン(例えば、組換えによって産生されたまたはその変異体)は、本発明の精神および範囲内で用いられると解釈される。
【0056】
「ポリヌクレオチド」および「核酸分子」という用語は、任意の長さのヌクレオチドの重合型を互換的に意味するために用いられる。ポリヌクレオチドは、デオキシヌクレオチド、リボヌクレオチド、および/またはその類似体を含んでもよい。ヌクレオチドは、任意の三次元構造を有してもよく、既知または未知の任意の機能を行ってもよい。「ポリヌクレオチド」という用語には、例えば、一本鎖、二本鎖、および三重らせん分子、遺伝子または遺伝子断片、エキソン、イントロン、mRNA、tRNA、rRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離DNA、任意の配列の単離RNA、核酸プローブ、およびプライマーが含まれる。核酸分子は、また改変された核酸分子を含んでもよい。
【0057】
「ペプチド」という用語は、その最も広い意味において、二つまたはそれ以上のサブユニットのアミノ酸の化合物、アミノ酸類似体、またはペプチド模倣体を意味する。サブユニットはペプチド結合によって結合してもよい。もう一つの態様において、サブユニットは他の結合、例えば、エステル、エーテル等によって結合してもよい。本明細書において用いられるように、「アミノ酸」という用語は、グリシンおよびDまたはL光学異性体、アミノ酸類似体およびペプチド模倣体を含む天然および/または非天然または合成アミノ酸のいずれかを意味する。三つまたはそれ以上のアミノ酸を含むペプチドは、ペプチド鎖が短ければ一般的にオリゴペプチドと呼ばれる。ペプチド鎖が長ければペプチドは一般的にポリペプチドまたはタンパク質と呼ばれる。
【0058】
「遺伝子改変された」という用語は、外来遺伝子または核酸配列を含むおよび/または発現して、それによって細胞またはその子孫の遺伝子型または表現型を改変することを意味する。言い換えれば、これは細胞の内因性のヌクレオチドに対する任意の付加、欠失、または破壊を意味する。
【0059】
本明細書において用いられるように、「発現」とは、それによってポリヌクレオチドがmRNAに転写されて、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質に翻訳される過程を意味する。ポリヌクレオチドがゲノムDNAに由来する場合、適当な真核宿主を選択すれば、発現にはmRNAのスプライシングが含まれてもよい。発現のために必要な調節エレメントには、RNAポリメラーゼに結合するプロモーター配列およびリボソーム結合のための転写開始配列が含まれる。例えば、細菌の発現ベクターには、lacプロモーターのようなプロモーターおよび転写開始のためのシャイン・ダルガルノ配列および開始コドンAUG(サムブルック(Sambrook)ら、(1989)、上記)が含まれる。同様に、真核細胞発現ベクターには、RNAポリメラーゼIIのための異種または同種プロモーター、下流のポリアデニル化シグナル、開始コドンAUG、およびリボソームを脱離させるための停止コドンが含まれる。そのようなベクターは、市販されているか、または当技術分野で周知の方法に記載の配列、例えば一般的なベクターを構築するために下記に記載される方法に記載の配列によって構築することができる。
【0060】
「転写制御下」とは、当技術分野で十分に理解されている用語であり、ポリヌクレオチド配列、通常はDNA配列の転写が、転写の開始に関与するかまたは転写を促進するエレメントに、機能的に結合していることに依存することを示す。「機能的に結合した」とは、エレメントがそれらが機能するように配置されている近接位置を意味する。
【0061】
「遺伝子送達媒体」とは、宿主細胞に挿入されたポリヌクレオチドを運ぶことができる任意の分子として定義される。遺伝子送達媒体の例は、リポソーム;天然ポリマーおよび合成ポリマーを含む生体適合性ポリマー;リポタンパク質;ポリペプチド;多糖類;リポ多糖類;人工ウイルスエンベロープ;金属粒子、ならびに細菌、またはバキュロウイルス、アデノウイルス、およびレトロウイルスのようなウイルス、バクテリオファージ、コスミド、プラスミド、真菌ベクターならびに多様な真核および原核宿主において発現させるために記載されており、単にタンパク質発現のためのみならず、遺伝子治療のために用いてもよい、当技術分野で典型的に用いられる他の組換え媒体である。
【0062】
本明細書において用いられる「遺伝子送達」「遺伝子移入」等は、用いる導入方法にかかわらず、宿主細胞に外因性のポリヌクレオチド(時に、「導入遺伝子」と呼ばれる)を導入することを意味する用語である。そのような方法には、ベクター媒介遺伝子移入(例えば、ウイルス感染/トランスフェクション、または様々なタンパク質に基づくまたは脂質に基づく遺伝子送達複合体による)と共に「裸の」ポリヌクレオチドの送達を促進する技術(エレクトロポレーション、「遺伝子銃」送達およびポリヌクレオチドを導入するために用いられる様々な他の技術)のような、多様な周知の技術が含まれる。導入されたポリヌクレオチドは、宿主細胞において安定または一過性に維持されてもよい。安定な維持は典型的に、導入されたポリヌクレオチドが、宿主細胞と適合性の複製開始点を含むか、または染色体外レプリコン(例えば、プラスミド)または核もしくはミトコンドリア染色体のような宿主細胞のレプリコンに組み入れられることを必要とする。当技術分野で既知であり、本明細書に記載されるように、多くのウイルスベクターが哺乳類細胞への遺伝子の移入を媒介できることが知られている。
【0063】
「ウイルスベクター」は、インビボ、エキソビボ、またはインビトロのいずれかで宿主細胞に送達されるポリヌクレオチドを含む組換え的に産生されたウイルスまたはウイルス粒子として定義される。ウイルスベクターの例には、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、アルファウイルスベクター等が含まれる。セムリキ森林熱ウイルスに基づくベクター、およびシンドビスウイルスに基づくベクターのようなアルファウイルスベクターも同様に、遺伝子治療および免疫治療において用いるために開発されている。シュレジンガーおよびデュベンスキー(SchlesingerおよびDubensky)(1999)、Curr. Opin. Biotechnol. 5:434〜439、およびイング(Ying)ら(1999)、Nat. Med. 5(7):823〜827を参照のこと。遺伝子移入がレトロウイルスベクターによって媒介される局面において、ベクター構築物は、レトロウイルスゲノムまたはその一部と、治療遺伝子とを含むポリヌクレオチドを意味する。本明細書において用いられるように、「レトロウイルス媒介遺伝子移入」または「レトロウイルス形質導入」は、同じ意味を有し、ウイルスが細胞内に入り、そのゲノムを宿主細胞ゲノムに組み入れるために、それによって遺伝子または核酸配列が宿主細胞に安定に移入される過程を意味する。ウイルスは、その通常の感染機構によって宿主細胞に入ることができ、またはそれが異なる宿主細胞表面受容体もしくはリガンドに結合して細胞に入るように改変することができる。本明細書において用いられるように、レトロウイルスベクターは、ウイルスまたはウイルス様の侵入機構によって細胞に外因性の核酸を導入することができるウイルス粒子を意味する。
【0064】
レトロウイルスは、RNAの形で遺伝子情報を有する;しかし、ウイルスが細胞に感染すると、RNAをDNA型に逆転写させて、これが感染細胞のゲノムDNAに組み入れられる。組み入れられたDNA型をプロウイルスと呼ぶ。
【0065】
遺伝子移入がアデノウイルス(Ad)またはアデノ随伴ウイルス(AAV)のようなDNAウイルスベクターによって媒介される局面において、ベクター構築物は、ウイルスゲノムまたはその一部と導入遺伝子とを含むポリヌクレオチドを意味する。アデノウイルス(Ads)は、比較的十分に特徴が調べられ、50血清型以上を含む均一なウイルスの群である。例えば、国際公開公報第95/27071号を参照のこと。アデノウイルスは容易に増殖して宿主細胞ゲノムに組み入れられる必要がない。組換えアデノウイルス由来ベクター、特に野生型ウイルスの組換えおよび増殖能を低下させたベクターも同様に構築されている。国際公開公報第95/00655号および国際公開公報第95/11984号を参照のこと。野生型AAVは、宿主細胞ゲノムに組み入れられる高い感染性と特異性とを有する。ハーモナトおよびムジクツカ(HermonatおよびMuzyczka)(1984)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6466〜6470、ならびにレブコウスキ(Lebkowski)ら(1988)、Mol. Cell. Biol. 8:3988〜3996を参照のこと。
【0066】
ポリヌクレオチドが機能的に結合しているプロモーターとクローニング部位とをその中に含むベクターは、当技術分野で周知である。そのようなベクターは、インビトロまたはインビボでRNAを転写することができ、ストラタジーン社(ラホヤ、カリフォルニア州)およびプロメガバイオテック社(マディソン、ウィスコンシン州)から販売されている。発現および/またはインビトロ転写を最適にするために、余分のおそらく不適当なもう一つの翻訳開始コドン、または転写もしくは翻訳レベルで発現を妨害もしくは減少させる可能性がある他の配列を除去するために、クローンの5’および/または3’非翻訳部分を除去、付加、または変化させる必要がある可能性がある。または、発現を増強するために、コンセンサスリボソーム結合部位を開始コドンのすぐ5’に挿入することができる。
【0067】
遺伝子送達媒体にはまた、DNA/リポソーム複合体、標的化ウイルスタンパク質−DNA複合体を含むいくつかの非ウイルスベクターが含まれる。同様に標的指向抗体またはその断片も含むリポソームを本発明の方法において用いることができる。細胞への送達を増強するために、本発明の核酸またはタンパク質を細胞表面抗原、例えばTCR、CD3、またはCD4に結合する抗体またはその結合断片に結合させることができる。
【0068】
「ハイブリダイゼーション」とは、一つまたは複数のポリヌクレオチドがヌクレオチド残基の塩基間の水素結合によって安定化される複合体を形成するように反応する反応である。水素結合は、ワトソン−クリックの塩基対形成、フーグスティーン(Hoogstein)結合によって起こってもよく、または任意の他の配列特異的に起こってもよい。複合体は、二本鎖構造を形成する二つの鎖を含んでもよく、多重鎖複合体を形成する三つもしくはそれ以上の鎖、自己ハイブリダイズ鎖、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。ハイブリダイゼーション反応は、PCR反応の開始、またはリボザイムによるポリヌクレオチドの酵素的切断のようなより広範囲の過程における一段階を構成してもよい。
【0069】
ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例には:インキュベーション温度約25℃〜約37℃;ハイブリダイゼーション緩衝液濃度約6×SSC〜約10×SSC;ホルムアミド濃度約0%〜約25%;および洗浄溶液約6×SSCが含まれる。中等度のハイブリダイゼーション条件の例には:インキュベーション温度約40℃〜約50℃;緩衝液濃度約9×SSC〜約2×SSC;ホルムアミド濃度約30%〜約50%;および洗浄溶液約5×SSC〜約2×SSCが含まれる。高ストリンジェンシー条件の例には:インキュベーション温度約55℃〜約68℃;緩衝液濃度約1×SSC〜約0.1×SSC;ホルムアミド濃度約55%〜約75%;および洗浄溶液約1×SSC、約0.1×SSC、または脱イオン水が含まれる。一般的に、ハイブリダイゼーションインキュベーション時間は、5分〜24時間であり、1、2、またはそれ以上の洗浄段階を行い、洗浄インキュベーション時間は約1、2または15分である。SSCは0.15 M NaClおよび15 mMクエン酸緩衝液である。他の緩衝液系を用いるSSCの同等物を用いることができると理解される。
【0070】
ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド領域(またはポリペプチドもしくはポリペプチド領域)は、もう一つの配列と「配列同一性」に関して特定の百分率(例えば、80%、85%、90%、または95%)を有し、これは並置して二つの配列を比較する場合に塩基(またはアミノ酸)の百分率が同じであることを意味する。このアラインメントおよび相同性%または配列同一性は、例えば「分子生物学の現行プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」アウスユベール(F.M. Ausubel)ら編、(1987)、補則30、第7.7.18章、表7.7.1に記載されるプログラムのような、当技術分野で既知のソフトウェアプログラムを用いて決定することができる。好ましくは、アラインメントのためにデフォルトパラメータを用いる。好ましいアラインメントプログラムは、デフォルトパラメータを用いるBLASTである。特に、好ましいプログラムは、以下のデフォルトパラメータを用いるBLASTNおよびBLASTPである:遺伝子コード=標準;フィルター=なし;鎖=両方;カットオフ=60;予測値=10;行列=BLOSUM62;表示=50配列;選別=ハイスコア;データベース=非重複、GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS翻訳+スイスプロテイン+SPアップデート+PIR。これらのプログラムの詳細は以下のインターネットアドレスで見ることができる:http://www.ncbi/nih.gov/cgi−bin/BLAST。
【0071】
本明細書において用いられるように、「インビボ」遺伝子送達、遺伝子移入、遺伝子治療等は、ヒトまたはヒト以外の哺乳類のような生物の体内に直接外因性ポリヌクレオチドを含むベクターを導入して、それによって外因性のポリヌクレオチドがそのような生物の細胞にインビボで導入されることを意味する用語である。
【0072】
「単離された」という用語は、ポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、またはその断片が天然において通常結合する、構成成分、細胞およびその他から分離されることを意味する。例えば、ポリヌクレオチドに関して、単離されたポリヌクレオチドは、染色体において通常結合している5’および3’配列から分離されているポリヌクレオチドである。当業者に明らかであるように、天然に存在しないポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、またはその断片は、それを天然に存在するその相対物と区別するために「単離」を必要としない。さらに、「濃縮された」、「分離された」、または「希釈された」ポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、またはその断片は、容積あたりの分子の濃度または数が、その天然に存在する相対物より「大きく濃縮されている」または「あまり分離されていない」という点において、その天然に存在する相対物と識別することができる。その一次配列、または例えばそのグリコシル化パターンによって天然に存在する相対物とは異なるポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、またはその断片は、それがその一次配列によって、またはグリコシル化パターンのようなもう一つの特徴によって天然に存在する相対物とは区別できることから、単離型で存在する必要はない。本明細書に開示される本発明のそれぞれに関して明示していないが、下記に開示され、適当な条件での組成物のそれぞれに関する上記の態様の全てが本発明によって提供されると理解される。このように、天然に存在しないポリヌクレオチドは、単離された天然に存在するポリヌクレオチドとは異なる態様として提供される。細菌細胞において産生されたタンパク質は、本来産生される真核細胞から単離された天然に存在するタンパク質とは異なる態様として提供される。
【0073】
「宿主細胞」、「標的細胞」または「レシピエント細胞」は、ベクターのための、または外因性核酸分子、ポリヌクレオチド、および/またはタンパク質を組み入れるためのレシピエントとなりうる、またはレシピエントである任意の個々の細胞または細胞培養も含まれると解釈される。同様に、これには単一の細胞の子孫が含まれると解釈され、子孫は、天然、偶発的、または意図した変異のために、当初の親細胞と必ずしも完全に同一である(形態またはゲノムもしくは総DNA相補体において)必要はない。細胞は、原核細胞または真核細胞であってもよく、細菌細胞、酵母細胞、動物細胞、および哺乳類細胞、例えばマウス、ラット、サル、またはヒト細胞が含まれるがこれらに限定されない。
【0074】
「被験者」は脊椎動物、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトである。哺乳類には、マウス、サル、ヒト、家畜動物、競技動物、およびペットが含まれるがこれらに限定されない。
【0075】
「対照」は、比較目的のために実験において用いられるもう一つの被験者または試料である。対照は、「陽性」または「陰性」となりうる。例えば、実験の目的が特定の種類の癌と遺伝子の発現レベルの変化との相関を調べることである場合、陽性対照(そのような変化を有し、その疾患の特徴である症候群を示す被験者、または被験者からの試料)および陰性対照(発現の変化およびその疾患の臨床症状を示さない被験者または被験者からの試料)を用いることが一般的に好ましい。
【0076】
「癌」、「新生物」、および「腫瘍」という用語は互換的に用いられ、単数形または複数形で用いられ、それらが宿主細胞に対して病原性となるような悪性の形質転換を受ける細胞を意味する。原発性癌細胞(すなわち、悪性の形質転換部位の近傍から得られた細胞)は、十分に確立された技術、特に組織学的検査によって非癌細胞から容易に区別することができる。本明細書において用いられるように癌細胞の定義には、原発性癌細胞のみならず、癌細胞の祖先に由来する任意の細胞も含まれる。これには、転移癌細胞、ならびにインビトロ培養および癌細胞に由来する細胞株が含まれる。通常固形癌として認められる種類の癌について言及する場合、「臨床的に検出可能な」腫瘍は;例えば、CATスキャン、磁気共鳴造影(MRI)、X−線、超音波、または触診のような技法によって腫瘍塊に基づいて検出可能である。生化学または免疫学的知見のみでは、この定義を満たすには不十分である可能性がある。
【0077】
腫瘍の増殖の「抑制」は、本明細書に記載の感作された抗原特異的免疫エフェクター細胞と接触しない場合の増殖と比較して増殖が減少した状態を示す。腫瘍細胞の増殖は、腫瘍の大きさを測定すること、3H−チミジン取り込みアッセイを用いてまたは腫瘍細胞の計数によって腫瘍細胞が増殖するか否かを決定すること、を含むがこれらに限定されない、当技術分野で既知の任意の手段によって評価することができる。腫瘍細胞増殖の「抑制」は、以下の状態のいずれかまたは全てを意味する:腫瘍の増殖の遅れ、遅延、および「抑制」は、腫瘍の縮小と共に、腫瘍の増殖が停止した際に増殖が抑制された状態を示す。
【0078】
「培養」という用語は、様々な種類の培地における細胞または生物のインビトロ増殖を意味する。培養において増殖させた細胞の子孫は親細胞に対して完全に同一(形態学的、遺伝学的、または表現型として)ではなくてもよいと理解される。「細胞数の拡大」とは、細胞の任意の増殖または分裂を意味する。
【0079】
「組成物」とは、活性物質と、アジュバントのような不活性な(例えば検出物質または標識)または活性な、もう一つの化合物または組成物との組み合わせを意味すると解釈される。
【0080】
「薬学的組成物」は、組成物をインビトロ、インビボ、またはエキソビボで診断または治療的に用いるために適するようにする、活性物質と不活性なまたは活性な担体との組み合わせが含まれると解釈される。
【0081】
本明細書において用いられるように、「薬学的に許容される担体」という用語は、リン酸緩衝生理食塩液、水、油/水または水/油乳剤のような乳剤、および様々な種類の湿潤剤のような、標準的な任意の薬学的担体を含む。組成物はまた、安定化剤および保存剤を含みうる。担体、安定化剤、およびアジュバントの例として、マーチン(Martin)の「レミントンの製薬科学(Remington’s Parm. Sci.)」第15版(マックパブリッシング社、イーストン(1975))を参照のこと。
【0082】
「有効量」は、有用な、または所望の結果を得るために十分な量である。有効量は一つまたは複数の投与、適用、または用量において投与することができる。本発明は、以下の構造を有する化合物を提供する:
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【0083】
本発明はまた、MHC分子への結合の増強を示し、同種の天然のリガンドおよびその対応する天然のタンパク質に対する免疫応答を調節するために有用である、組成物も提供する。
【0084】
本発明はさらに、抗癌ワクチンの成分として有用な、およびヒト癌抗原パーティション(Partition)−3(PAR−3)の発現を特徴とする癌に対して、特異的な免疫エフェクター細胞を増殖させるために有用な組成物を提供する。この種類の癌の例は卵巣癌である。
【0085】
一つの態様において、本発明の改変リガンドは、天然のリガンドと同等のMHC結合親和性を有する。ペプチド:MHCクラスI結合特性は、免疫原性と相関することが証明されている(セッテ(Sette)A.ら(1994)Immunol. 153(12):5586−5592;ファンデルバーグ(van der Burg)S.H.ら(1996)、J. Immunol. 156:3308−3314)。好ましい態様において、本発明の改変リガンドは「自然の」リガンドより高い親和性でTCRに結合する。天然のリガンドと改変リガンドとがMHCクラスI分子に対して同等に結合するか否かは、当技術分野で既知の方法によって測定することができ、これには、アルゴリズムに基づく親和性の計算(例えば、パーカー(Parker)ら(1992)、J. Immunol. 149:3580〜3587)、および実験による結合親和性の計算(例えば、タン(Tan)ら、(1997)、J. Immunol. Meth. 209(1):25〜36)が含まれるが、これらに限定されない。例えば、クラスI分子に対するペプチドの相対的結合は、様々な濃度の被験ペプチド(例えば、100 mM〜1nMの範囲)を用いて、洗浄剤によって可溶化したMHC分子に対する放射標識標準ペプチドの結合に基づいて結合することができる。MHCクラスI重鎖およびβ2−ミクログロブリンは、固定濃度(例えば、5nM)の放射標識標準(対照)ペプチド、および様々な濃度の被験ペプチドと共に、室温でプロテアーゼ阻害剤混合物の存在下で適した期間(例えば、2時間〜72時間)、共インキュベートする。対照試験管は、標準ペプチドとMHC分子とを含むが、被験ペプチドを含まない。MHC結合放射活性%はゲル濾過によって決定する。IC50(対照ペプチド結合の50%阻害が起こる被験ペプチドの濃度)を、各ペプチドについて計算する。TCRに対する結合親和性を決定するさらなる方法は、当技術分野で既知であり、これらには、アルラマディ(al−Ramadi)ら(1992)、J. Immunol. 155(2):662〜673;およびズーゲル(Zuegel)ら(1998)、J. Immunol. 161(4):1705〜1709に記載される方法が含まれるが、これらに限定されない。
【0086】
もう一つの態様において、本発明の改変リガンドは、天然のリガンド相対物と同等の抗原特異的なT細胞の活性化を誘発する。好ましい態様において、本発明の改変リガンドは、天然のリガンド相対物と比較して、より強い抗原特異的なT細胞の活性化を誘発する。本発明のリガンドの免疫原性を決定する方法は当技術分野で既知であり、本明細書にさらに記載される。
【0087】
一つの態様において、本発明の組成物は、本発明の免疫原性リガンドを二つまたはそれ以上含む。一つの局面において、そのような組成物は、単一のリガンドの二つまたはそれ以上のコピーを含んでもよい。もう一つの局面において、そのような組成物は、上記の二つまたはそれ以上のリガンドのそれぞれのリガンドが、上記の組成物における他の全てのリガンドとは異なる、二つまたはそれ以上のリガンドを含んでもよい。一つの態様において、二つまたはそれ以上の免疫原性リガンドは共有結合している。
【0088】
本発明はまた、MHC分子に対する結合を増強するように設計され、合成ペプチドエピトープ、およびそれらが由来する対応する天然のペプチドに対する免疫応答を調節するために有用である、新規合成抗原性ペプチドを提供する。本発明の合成抗原性ペプチドエピトープ配列は、それらが、MHCクラスI結合ドメインにおいて、天然の配列と比較してMHCへのより強固な結合を付与するように設計される、アミノ酸配列の変化を含むという点において、その天然の相対物とは異なる。それらはさらに、推定のT細胞受容体結合ドメインにおいて、T細胞抗原受容体に対する親和性を増加するように設計された変異を含む。天然の配列とのこれらの差は、本発明の合成抗原性ペプチドエピトープが増強された免疫調節特性を有するという点において、天然の配列と比較して本発明の方法に長所を付与するように設計される。
【0089】
本発明は、抗癌ワクチンの成分として有用であり、かつヒト癌抗原PAR−3の発現を特徴とする癌に対して、特異的な免疫エフェクター細胞を増殖させるために有用である、新規合成抗原性ペプチド配列を提供する。ペプチドは、それらが推定のHLA−A2結合ドメイン(アミノ酸1、2、および9)およびT細胞受容体結合(TCR)ドメイン(アミノ酸残基3〜8)において変異を含み、それぞれMHCおよびTCRへのより強固な結合を付与するという点において、自然のエピトープとは異なる。本発明の合成抗原性ペプチドのMHCクラスI分子に対する結合は、当技術分野で既知の方法によって測定することができ、これらには、アルゴリズムに基づく親和性の計算(例えば、パーカー(Parker)ら(1992)、J. Immunol. 149:3580〜3587)、および実験による結合親和性の計算(例えば、タン(Tan)ら、(1997)、J. Immunol. Meth. 209(1):25〜36)が含まれるが、これらに限定されない。例えば、クラスI分子に対するペプチドの相対的結合は、洗浄剤によって可溶化したMHC分子に対する、放射標識標準ペプチドの結合に基づいて測定することができる。例えば、クラスI分子に対するペプチドの相対的結合は、様々な濃度の被験ペプチド(例えば、100 mM〜1nMの範囲)を用いて、洗浄剤で可溶化したMHC分子に対する放射標識標準ペプチドの結合に基づいて、測定することができる。MHCクラスI重鎖およびβ2−ミクログロブリンは、固定濃度(例えば、5nM)の放射標識標準(対照)ペプチド、および様々な濃度の被験ペプチドと共に、室温でプロテアーゼ阻害剤混合物の存在下で適した期間(例えば、2時間〜72時間)、共インキュベートする。対照試験管は、標準ペプチドとMHC分子とを含むが、被験ペプチドを含まない。MHC結合放射活性%はゲル濾過によって決定する。IC50(対照ペプチド結合の50%阻害が起こる被験ペプチドの濃度)を、各ペプチドについて計算する。
【0090】
本発明の合成ペプチドは、「自然の」配列のペプチドより高い親和性でTCRに結合するように設計される。TCRに対する結合親和性を決定するさらなる方法は、当技術分野で既知であり、これらにはアルラマディ(al−Ramadi)ら(1992)、J. Immunol. 155(2):662〜673;およびズーゲル(Zuegel)ら(1998)、J. Immunol. 161(4):1705〜1709に記載される方法が含まれるが、これらに限定されない。
【0091】
さらに「合成抗原性ペプチド」という用語には、選択的に、介在アミノ酸配列ならびにこの配列および配列番号:3,5,7,9,および11を有するポリペプチドを含む本発明の合成抗原性ペプチドの多量体(コンカテマー)が含まれる。本発明はまた、ポリペプチドがヒト癌抗原PAR−3細胞障害性Tリンパ球によって選択的に認識される、これらの配列を含むポリペプチドを提供する。
【0092】
本発明のペプチド配列を含むポリペプチドは、天然のヒト癌抗原PAR−3ポリペプチド配列をコードするポリヌクレオチドの配列を変化させることによって、調製することができる。これは、当技術分野で周知の組換えDNA技術を用いることによって行われる。例えば、改変ポリヌクレオチドが本発明のペプチドをコードするように、ポリヌクレオチド配列に変化を導入するために、天然のヒト癌抗原PAR−3配列をコードする組換えポリヌクレオチドに、部位特異的変異誘発を行ってもよい。
【0093】
本発明のタンパク質およびポリペプチドは、アメリカ、カリフォルニア州フォスターシティのパーキン・エルマー/アプライドバイオシステムズ・インクによって製造された、モデル430Aまたは431Aのような市販の自動ペプチド合成機を用いて、化学合成によって得ることができる。合成されたタンパク質またはポリペプチドを沈殿させて、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によってさらに精製することができる。したがって、本発明はまた、アミノ酸および酵素のようなタンパク質および試薬の配列を提供する段階、ならびにアミノ酸配列を適当な方向および直線的な配列に結合させる段階によって、本発明のタンパク質を化学合成するための過程を提供する。
【0094】
または、タンパク質およびポリペプチドは、下記の宿主系およびベクター系を用いて、本明細書に記載の周知の組換え法法を用いて得ることができる。
【0095】
ペプチド類似体
本発明のペプチドに変化した特性を提供するために、改変を行うことができることは当業者に周知である。本明細書に記載するように、「アミノ酸」という用語は、グリシンおよびDまたはL光学異性体の双方、ならびにアミノ酸類似体およびペプチド模倣体を含む、自然および/または人為的なまたは合成アミノ酸のいずれかを意味する。三つまたはそれ以上のアミノ酸からなるペプチドは一般的に、ペプチド鎖が短ければオリゴペプチドと呼ばれる。ペプチド鎖が長ければ、ペプチドは一般的に、ポリペプチドまたはタンパク質と呼ばれる。
【0096】
本発明のペプチドは、非天然アミノ酸を含むように改変することができる。このように、ペプチドはペプチドに特殊な特性を付与するように、D−アミノ酸、D−およびL−アミノ酸の複合体、ならびに様々な「デザイナー」アミノ酸(例えば、β−メチルアミノ酸、C−α−メチルアミノ酸、N−α−メチルアミノ酸等)を含んでもよい。さらに、特定のカップリング段階に特異的アミノ酸を割付することによって、α−ヘリックス、βターン、βシート、γ−ターン、および環状ペプチドを含むペプチドを作製することができる。一般的にα−ヘリックス二次構造またはランダム二次構造が好ましいと考えられている。
【0097】
さらなる態様において、有用な化学的および構造的特性を付与するペプチドのサブユニットを選択する。例えば、D−アミノ酸を含むペプチドは、インビボでL−アミノ酸特異的プロテアーゼに対して耐性であると考えられる。D−アミノ酸を有する改変化合物は、レトロ−インバーソ(retro−inverso)ペプチドとして本発明のペプチドを産生するために、逆の順序に配置したアミノ酸を用いて合成してもよい。さらに本発明は、新規特性を有するペプチドを調製するために、より明確な構造的特性を有するペプチドを調製する段階、ペプチド模倣体を用いる段階、およびエステル結合のようなペプチド模倣体結合を用いる段階を想定する。もう一つの態様において、還元されたペプチド結合、すなわちR1およびR2がアミノ酸残基または配列である、R1−CH2NH−R2を組み入れるペプチドを作製してもよい。還元型ペプチドは、ジペプチドサブユニットとして導入してもよい。そのような分子は、ペプチド結合の加水分解、例えばプロテアーゼ活性に対して耐性であると考えられる。そのような分子は、代謝的分解またはプロテアーゼ活性に対する耐性のために、インビボでの半減期の増加のような、固有の機能および活性を有するリガンドを提供すると考えられる。さらに、特定の系において束縛された(constrained)ペプチドが増強された機能的活性を示すことは周知である(ルビー(Hruby)(1982)、Life Sciences 31:189〜199およびルビー(Hruby)ら(1990)、Biochem. J. 268:249〜262);本発明は、他の全ての位置で無作為な配列を組み入れる、束縛されたペプチドを産生する方法を提供する。
【0098】
立体配座の束縛を誘導する非古典的アミノ酸
特定の立体配座モチーフを導入するために、以下の非古典的アミノ酸を本発明のペプチドに組み入れてもよい:1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−3−カルボキシレート(カズルニエルスキ(Kazrnierski)ら(1991)、J. Am. Chem. Soc. 113:2275〜2283);(2S,3S)−メチル−フェニルアラニン、(2S,3R)−メチルフェニルアラニン、(2R,3S)−メチル−フェニルアラニン、および(2R,3R)−メチル−フェニルアラニン(カズルニエルスキおよびルビー(KazrnierskiおよびHruby)、(1991)、Tetrahedron Lett. 32(41):5769〜5772);2−アミノテトラヒドロナフタレン−2−カルボン酸(ランディス(Landis)(1989)、アリゾナ大学博士論文);ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−3−カルボキシレート(ミヤケ(Miyake)ら(1989)、J. Takeda Res. Labs. 43:53〜76);ヒスチジンイソキノリンカルボン酸(ゼケル(Zechel)ら(1991)、Int. J. Pep. Protein Res. 38(2):131〜138);およびHIC(ヒスチジン環状尿素)、(ダラニプラガダ(Dharanipragada)ら(1993)、Int. J. Pep. Protein Res. 42(1):68〜77)および((1992)Acta Cryst. Crystal Struc. Comm. 48(IV):1239〜1241)。
【0099】
以下のアミノ酸類似体およびペプチド模倣体を、特定の二次構造を誘導するために、またはそれらにとって有利であるように組み入れてもよい:LL−Acp(LL−3−アミノ−2−プロペニドン−6−カルボン酸)、β−ターン誘導ジペプチド類似体(ケンプ(Kemp)ら(1985)、J. Org. Chem. 50:5834〜5838);β−シート誘導類似体(ケンプ(Kemp)ら(1988)、Tetrahedron Lett. 29:5081〜5082);β−ターン誘導類似体(ケンプ(Kemp)ら(1988)、Tetrahedron Lett. 29:5057〜5060);α−ヘリックス誘導類似体(ケンプ(Kemp)ら(1988)、Tetrahedron Lett. 29:4935〜4938);γ−ターン(ケンプ(Kemp)ら(1989)、J. Org. Chem. 54:109〜115);以下の参考文献によって提供される類似体:ナガイおよびサトウ(NagaiおよびSato)(1985)、Tetrahedron Lett. 26:647〜650;およびディメイオ(DiMaio)ら(1989)、J. Chem. Soc. Perkin Trans、p.1687;Gly−Alaターン類似体(カーン(Kahn)ら(1989)、Tetrahedron Lett. 30:2317);アミド結合同配体(クローンズ(Clones)ら(1985)、Tetrahedron Lett. 29:3853〜3856);テトラゾル(ザブロッキ(Zabrocki)ら(1988)、J. Am. Chem. Soc. 110:5875〜5880);DTC(サマネン(Samanen)ら、(1990)、Int. J. Protein Pep. Res. 35:501〜509);ならびにオルソン(Olson)ら(1990)、J. Am. Chem. Sci. 112:323〜333およびガーベイ(Garvey)ら(1990)J. Org. Chem. 55(3):436において教示される類似体。βターンおよびβバルジ(bulge)の立体配座束縛模倣体、ならびにそれらを含むペプチドは、1995年8月8日にカーン(Kahn)に発行された、米国特許第5,440,013号に記載されている。
【0100】
本発明の合成抗原性ペプチドエピトープは、意図する用途に応じて変更しうる、多様な製剤において用いることができる。
【0101】
本発明の合成抗原性ペプチドエピトープは、様々な他の分子に共有結合、または非共有結合(複合体を形成した)することができ、その本質は特定の目的に応じて変化する可能性がある。例えば、本発明のペプチドは、天然および合成ポリマー、タンパク質、多糖類、ポリペプチド(アミノ酸)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、および脂質を含むがこれらに限定されない高分子担体と共有結合または非共有結合によって複合体を形成することができる。ペプチドはリポソームに導入するために脂肪酸に結合することができる。米国特許第5,837,249号。本発明の合成ペプチドは、その多様なものが当技術分野で既知である、固相支持体と共有結合または非共有結合によって複合体を形成することができる。本発明の合成抗原性ペプチドエピトープは、下記により詳細に説明するように、共刺激分子の存在下または非存在下で、抗原提示マトリクスと結合することができる。
【0102】
タンパク質担体の例には、超抗原、血清アルブミン、破傷風毒素、卵白アルブミン、サイログロブリン、ミオグロブリン、および免疫グロブリンが含まれるがこれらに限定されない。
【0103】
ペプチドタンパク質担体ポリマーは、カルボジイミドのような従来の架橋剤を用いて形成してもい。カルボジイミドの例は、1−シクロヘキシル−3−(2−モルフォリニル−(4−エチル)カルボジイミド(CMC)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、および1−エチル−3−(4−アゾニア−44−ジメチルペンチル)カルボジイミドである。
【0104】
他の適した架橋剤の例は、臭化シアン、グルタルアルデヒドおよび無水コハク酸である。一般的に、ホモ二官能アルデヒド、ホモ二官能エポキシド、ホモ二官能イミドエステル、ホモ二官能N−ヒドロキシスクシニミドエステル、ホモ二官能マレイミド、ホモ二官能ハロゲン化アルキル、ホモ二官能二硫化ピリジル、ホモ二官能ハロゲン化アリール、ホモ二官能ヒドラジド、ホモ二官能ジアゾニウム誘導体、およびホモ二官能光反応性化合物を含む、多くのホモ二官能物質のいずれかを用いてもよい。同様に、ヘテロ二官能化合物、例えば、アミン反応基とスルフヒドリル反応基とを有する化合物、アミン反応基と光反応基とを有する化合物、およびカルボニル反応基とスルフヒドリル反応基とを有する化合物も含まれる。
【0105】
そのようなホモ二官能架橋剤の特定の例には、二官能N−ヒドロキシスクシニミドエステルジチオビス(スクシニミジルプロピオネート)、ジスクシニミジルスベレート、およびジスクシニミジルタータレート;二官能イミドエステルジメチルアジピミデート、ジメチルピメリミデート、およびジメチルスベリミデート;二官能スルフヒドリル反応性架橋剤1,4−ジ−[3’−(2’−ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ブタン、ビスマレイミドヘキサン、およびビス−N−マレイミド−1,8−オクタン;二官能ハロゲン化アリール1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼンおよび4,4’−ジフルオロ−3,3’−ジニトロフェニルスルホネート;ビス[b−(4−アジドサリチルアミド)エチル]ジスルフィドのような二官能光反応性物質;二官能アルデヒドホルムアルデヒド、マロンジアルデヒド、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、およびアジパルデヒド;1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルのような二官能エポキシド;二官能ヒドラジドアジピン酸ジヒドラジド、カルボヒドラジド、およびコハク酸ジヒドラジド;二官能ジアゾニウムo−トリジン、ジアゾ化およびビスジアゾ化ベンジジン;二官能ハロゲン化アルキルN1N’−エチレン−ビス(ヨードアセトアミド)、N1N’−ヘキサメチレン−ビス(ヨードアセトアミド)、N1N’−ウンデカメチレン−ビス(ヨードアセトアミド)と共に、a1a’−ジヨード−p−キシレンスルホン酸およびトリ(2−クロロエチル)アミンのような、ハロゲン化ベンジルおよびハロマスタードがそれぞれ含まれる。
【0106】
タンパク質をペプチドに結合させるために用いてもよい一般的なヘテロ二官能架橋剤の例には、SMCC(スクシニミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート)、MBS(m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシニミドエステル)、SIAB(N−スクシニミジル(4−ヨードアセチル)アミノベンゾエート)、SMPB(スクシニミジル−4−(p−マレイミドフェニル)ブチレート)、GMBS(N−(γ−マレイミドブチリルオキシ)スクシニミドエステル)、MPBH(4−(4−N−マレイミドフェニル)酪酸ヒドラジド)、M2C2H(4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシル−ヒドラジド)、SMPT(スクシニミジルオキシカルボニル−a−メチル−a−(2−ピリジルジチオ)トルエン)、およびSPDP(N−スクシニミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート)が含まれるが、これらに限定されない。
【0107】
架橋剤は、還元的アミノ化によって、アミン基またはヒドラジド基にカルボニル基をカップリングさせることによって行ってもよい。
【0108】
本発明のペプチドはまた、イオン性、吸着性、または生体特異性相互作用による、単量体の非共有結合として処方してもよい。高度に陽性または陰性に荷電した分子を有するペプチドの複合体は、脱イオン水のような低イオン強度の環境下での塩橋形成によって作製されうる。大きな複合体は、多数の陰性および陽性荷電をそれぞれ含むポリ−(L−グルタミン酸)またはポリ−(L−リジン)のような、荷電ポリマーを用いて作製することができる。ペプチドの吸着は、微粒子ラテックスビーズまたは他の疎水性ポリマーのような表面に対して行ってもよく、架橋した、または化学的に重合したタンパク質を有効に模倣する非共有結合によって結合した、ペプチド超抗原複合体を形成する。最後にペプチドは、他の分子間の生体特異的相互作用を用いて、非共有結合によって結合してもよい。例えば、アビジンまたはストレプトアビジンのようなタンパク質に対する、ビオチンの強い親和性を利用して、ペプチド複合体を形成することができる。これらのビオチン結合タンパク質は、溶液中でビオチンと相互作用することができるか、またはもう一つの分子と共有結合することができる四つの結合部位を含む。ウィルチェク(Wilchek)(1988)、Anal. Biochem. 171:1〜32。ペプチドは、タンパク質上で利用可能なアミン基と反応する、D−ビオチン(NHS−ビオチン)のN−ヒドロキシスクシニミジルエステルのような一般的なビオチン化試薬を用いて、ビオチン基を有するように改変することができる。次に、ビオチン結合ペプチドをアビジンまたはストレプトアビジンと共にインキュベートして、大きな複合体を形成することができる。そのようなポリマーの分子量は、アビジンまたはストレプトアビジンに対するビオチン結合ペプチドのモル比を注意深く制御することによって、調節することができる。
【0109】
同様に、診断方法において用いるために、検出可能な試薬と結合させた本明細書に開示のペプチドおよびポリペプチドが、本出願によって提供される。例えば、検出可能に標識したペプチドおよびポリペプチドをカラムに結合させて、抗体の検出および精製のために用いることができる。それらはまた、下記のように抗体を産生するための免疫原としても有用である。
【0110】
本発明のペプチドはまた、滅菌溶液または水溶液のような、様々な液相担体、薬学的に許容される担体、懸濁液、および乳液と組み合わせることができる。非水性溶媒の例には、プロピルエチレングリコール、ポリエチレングリコール、および植物油が含まれる。抗体を調製するために用いる場合、担体にはまた、特異的免疫応答を非特異的に増強するために有用であるアジュバントが含まれうる。当業者は、アジュバントが必要であるか否かを容易に決定して、それを選択することができる。しかし、説明する目的のみのために、適したアジュバントにはフロイントの完全および不完全アジュバント、無機塩、ならびにポリヌクレオチドが含まれるが、これらに限定されない。
【0111】
本発明はさらに、配列(配列番号:3,5,7,9または11)を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、およびこれらのポリヌクレオチドの相補物を提供する。本明細書において用いられるように、「ポリヌクレオチド」という用語は、DNA、RNA、および核酸模倣体を含む。上記の配列およびその相補体の他に、本発明はまたアンチセンスポリヌクレオチド鎖、例えばこれらの配列またはその相補鎖に対するアンチセンスRNAを提供する。配列番号:4、6、8、10、および12に提供される配列、およびファンデルクロール(van der Krol)ら(1988)、BioTechniques 6:958に記載された方法論を用いて、アンチセンスRNAを得ることが可能である。
【0112】
本発明のポリヌクレオチドは、PCRを用いて複製することができる。PCR技術は、米国特許第4,683,195号;第4,800,159号;第4,754,065号;および第4,683,202号の主題であり、「PCR:ポリメラーゼ連鎖反応(PCR:The Polymerase Chain Reaction)」、(マリス(Mullis)ら編、バークハウザー出版、ボストン(1994))およびそこに引用されている文献に記載されている。
【0113】
または当業者は、DNAを複製するために本明細書に記載の配列および市販のDNA合成機を用いることができる。したがって本発明は、ポリヌクレオチドの直線配列、適当なプライマー分子、酵素のような化学物質、および複製のための指示を提供する段階、ならびにヌクレオチドを化学的に複製または適当な方向に連結することによって、ポリヌクレオチドを得る段階により、本発明のポリヌクレオチドを得る方法を提供する。異なる態様において、これらのポリヌクレオチドはさらに単離される。なおさらに、当業者は適した複製ベクターにポリヌクレオチドを挿入して、複製および増幅のためにベクターを適した宿主細胞(原核細胞または真核細胞)に挿入することができる。そのように増幅されたDNAは、当業者に周知の方法によって細胞から単離することができる。この方法によってポリヌクレオチドを得る過程は、そのように得られたポリヌクレオチドと共に本明細書においてさらに提供される。
【0114】
RNAは、適した宿主細胞においてDNAポリヌクレオチドをまず挿入することによって得ることができる。DNAは、任意の適当な方法によって、例えば適当な遺伝子送達媒体(例えば、リポソーム、プラスミド、またはベクター)を用いることによって、またはエレクトロポレーションによって挿入することもできる。細胞が複製して、DNAがRNAに転写されると、RNAは例えば、上記のサムブルック(Sambrook)ら(1989)に記載されるように、当業者に周知の方法を用いて単離することができる。例えば、mRNAは上記のサムブルック(Sambrook)ら(1989)に記載される技法に従って様々な溶解性の酵素または化学溶液を用いて単離するか、または製造業者によって提供される添付の説明書に従って、核酸結合樹脂によって抽出することができる。
【0115】
少なくとも4個の連続するヌクレオチド、より好ましくは少なくとも5個または6個の連続するヌクレオチド、および最も好ましくは少なくとも10個の連続するヌクレオチドを有し、かつ配列番号:3、5、7、9、および11(例えば、配列番号:4、6、8、10、または12)に示すアミノ酸をコードする配列に、配列相補性または相同性を示すポリヌクレオチドは、ハイブリダイゼーションプローブとして有用性を有する。
【0116】
「完全にマッチした」プローブは、特異的ハイブリダイゼーションにとって必要ではないことは当技術分野において既知である。少数の塩基の置換、欠失、または挿入によって得られるプローブ配列におけるわずかな変化は、ハイブリダイゼーション特異性に影響を及ぼさない。一般的に、20%程度の塩基対ミスマッチ(選択的に整列した場合)が容認されうる。好ましくは、上記のmRNAを検出するために有用なプローブは、これまでに特徴づけされた遺伝子に対応するこれまでに同定された配列(上記のように同定された)、または配列番号:1、4、6、8、10、もしくは12に含まれる同等の大きさの相同性領域と少なくとも約80%同一である。より好ましくは、プローブは相同性領域のアラインメント後に、対応する遺伝子配列と85%同一である;さらにより好ましくは90%の同一性を示す。
【0117】
これらのプローブは、これらの細胞を含む様々な細胞または組織を検出またはモニターするためのラジオアッセイ(例えば、サザンおよびノザンブロット分析)において用いることができる。プローブはまた、本発明の一つまたは複数のポリヌクレオチドに対応する遺伝子の発現を検出するための高処理能スクリーニングアッセイにおいて用いられるチップのような固相支持体またはアレイに結合することができる。したがって、本発明は、高処理能スクリーニングにおいて用いるために固相支持体に結合した、配列番号:4、6、8、10、もしくは12、またはこれらの配列の一つの相補体として同定される少なくとも一つのプローブを提供する。
【0118】
本発明のポリヌクレオチドはまた、例えば、宿主細胞へのポリヌクレオチドの形質導入を確認するために、APCにおいて発現された遺伝子または遺伝子転写物を検出するためのプライマーとして役立ちうる。この文脈において、増幅は妥当な信頼性で標的配列を複製することができるプライマー依存的ポリメラーゼを用いる任意の方法を意味する。増幅は、T7 DNAポリメラーゼのような天然または組換えDNAポリメラーゼ、大腸菌DNAポリメラーゼのクレノウ断片、および逆転写酵素によって行ってもよい。プライマーの好ましい長さは、上記のプローブに関して同定されたものと同じである。
【0119】
本発明はさらに、RNA転写のプロモーターに機能的に結合した単離されたポリヌクレオチドと同様に、DNAまたはRNAの複製および/または一過性または安定な発現のための他の調節配列をさらに提供する。本明細書において用いられるように、「機能的に結合した」という用語は、プロモーターがDNA分子から離れて、RNAの転写を指示するように位置することを意味する。そのようなプロモーターの例は、SP6、T4およびT7である。特定の態様において、細胞特異的プロモーターは、挿入されたポリヌクレオチドの細胞特異的発現のために用いられる。停止コドンおよび選択マーカー配列を有し、プロモーターまたはプロモーター/エンハンサーと同様に、DNAの挿入片がそのプロモーターに機能的に結合することができるクローニング部位を含むベクターは、当技術分野で周知であり、市販されている。一般的な方法論およびクローニング戦略に関しては、様々な適したベクターに関するマップ、機能的特性、販売元およびGenEMBLアクセッション番号の参照を載せた、「遺伝子発現技術(Gene Expression Technology)」ゴエッデル(Goeddel)ら、アカデミック出版社(1991)、およびその中に含まれる引用文献、ならびに「ベクター:本質的なデータシリーズ(Vectors:Essential Data Series)」ガセサおよびラムジ(GacesaおよびRamji)、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ、ニューヨーク州(1994)を参照のこと。好ましくは、これらのベクターはインビトロまたはインビボでRNAを転写することができる。
【0120】
これらの核酸を含む発現ベクターは、タンパク質およびポリペプチドを産生するための宿主ベクター系を得るために有用である。これらの発現ベクターは、エピソームとしてまたは染色体DNAの一体化された一部として宿主細胞において複製可能でなければならないという意味である。適した発現ベクターには、プラスミド、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、コスミド等を含むウイルスベクターが含まれる。アデノウイルスベクターは、インビトロおよびインビボの双方でその高レベル発現および細胞の効率的な形質転換のために、インビボで組織に遺伝子を導入するために特に有用である。核酸を、適した宿主細胞、例えば原核細胞または真核細胞に挿入して、宿主細胞が複製すると、タンパク質を組換え的に産生することができる。適した宿主細胞には、ベクターに依存して、周知の方法を用いて構築された哺乳類細胞、動物細胞、ヒト細胞、サル細胞、昆虫細胞、酵母細胞、および細菌細胞が含まれうる。上記のサムブルック(Sambrook)ら(1989)を参照のこと。外因性の核酸を細胞に挿入するためにウイルスベクターを用いることの他に、細菌細胞の形質転換;哺乳類細胞の場合にはリン酸カルシウム沈殿を用いるトランスフェクション;DEAEデキストラン;エレクトロポレーション;またはマイクロインジェクションのような当技術分野で周知の方法によって、核酸を宿主細胞に挿入することができる。この方法論に関しては、上記のサムブルック(Sambrook)ら(1989)を参照のこと。このように、本発明は宿主細胞、例えば、タンパク質、ポリペプチド、または抗体をコードするポリヌクレオチドを含む哺乳類細胞、動物細胞(ラットまたはマウス)、ヒト細胞、または細菌細胞のような原核細胞も同様に提供する。
【0121】
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドを細胞に送達するために(インビボ、エキソビボ、またはインビトロ)適した送達媒体を提供する。本発明のポリヌクレオチドはクローニングまたは発現ベクター内に含まれうる。これらのベクター(特に発現ベクター)を次に、例えば細胞への送達を促進する、および/または細胞への流入を促進しうる、多くの任意の形態を想定して操作することができる。
【0122】
ベクターをインビボまたはエキソビボで遺伝子治療のために用いる場合、複製能のないレトロウイルスまたはアデノウイルスベクターのような薬学的に許容されるベクターが好ましい。本発明の核酸を含む薬学的に許容されるベクターは、挿入されたポリヌクレオチドの一過性または安定な発現のためにさらに改変することができる。本明細書において用いられるように、「薬学的に許容されるベクター」という用語には、分裂する細胞への核酸の選択的な標的指向能および核酸の導入能を有するベクターまたは送達媒体が含まれるがこれらに限定されない。そのようなベクターの例は、ウイルスタンパク質を産生できない点により定義され、感染宿主細胞でのベクターの核酸を妨げる、「複製能のない」ベクターである。複製能のないレトロウイルスベクターの例は、LNL6(ミラー(Miller, A.D.)ら(1989)、BioTechniques 7:980〜990)である。遺伝子マーカーのレトロウイルス媒介遺伝子移入のために複製能のないレトロウイルスを用いる方法論は、十分に確立されている(コレル(Correll)ら、(1989)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:8912;ボーディノン(Bordignon)(1989)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:6748〜6852;カルバー(Culver)K.(1991)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:3155;およびリル(Rill)D.R.(1992)、Blood 79(10):2694〜2700)。
【0123】
本発明のポリヌクレオチドを含むこれらの単離された宿主細胞は、ポリヌクレオチドの組換え的複製のために、かつペプチドの組換え的産生のために有用である。または、細胞は、本明細書に記載の方法において被験者における免疫応答を誘導するために用いてもよい。宿主細胞が抗原提示細胞である場合、それらは、腫瘍浸潤リンパ球のような免疫エフェクター細胞の集団を増殖させるために用いることができ、次に養子免疫治療において有用となる。
【0124】
本発明のポリペプチドと複合体を特異的に形成することができる抗体も同様に本発明によって提供される。「抗体」という用語には、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体が含まれる。抗体には、マウス、ラット、およびウサギ、またはヒト抗体が含まれるがこれらに限定されない。抗体は、ポリペプチドおよびポリペプチドを発現するAPCを同定および精製するために有用である。
【0125】
ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を産生する実験方法は、対応する核酸配列を推定する方法と共に、当技術分野で既知であり、ハーロウおよびレーン(HarlowおよびLane)、(1988)、上記、およびサムブルック(Sambrook)ら、(1989)上記を参照のこと。本発明のモノクローナル抗体は、動物、例えばマウスまたはウサギにタンパク質またはその断片を導入することによって生物学的に産生することができる。動物における抗体産生細胞を単離して骨髄腫細胞またはヘテロ骨髄腫細胞と融合させて、ハイブリッド細胞またはハイブリドーマを作製する。したがって、本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマも同様に提供される。
【0126】
このように、タンパク質またはその断片、および周知の方法を用いて、当業者は、本発明のハイブリドーマ細胞および抗体を産生して、タンパク質またはポリペプチドに対する結合能を有する抗体に関してスクリーニングすることができる。
【0127】
検査するモノクローナル抗体がタンパク質またはポリペプチドに結合すれば、検査する抗体と本発明のハイブリドーマによって提供された抗体とは同等である。同様に、過度の実験を行うことなく、それに対してモノクローナル抗体が正常に反応するタンパク質またはポリペプチドと本発明のモノクローナル抗体の結合を、検査する抗体が妨害するか否かの判定によって、その抗体が本発明のモノクローナル抗体と同じ特異性を有するか否かを判定することも可能である。検査する抗体が、本発明のモノクローナル抗体による結合の減少によって示されるように、本発明のモノクローナル抗体と競合すれば、二つの抗体は同じまたは密接に関連したエピトープに結合する可能性がある。または、それが正常に反応するタンパク質と共に本発明のモノクローナル抗体を予めインキュベートして、検査するモノクローナル抗体の抗原との結合能が阻害されているか否かを判定することができる。検査するモノクローナル抗体が阻害されれば、それはおそらく本発明のモノクローナル抗体と同じ、または密接に関連したエピトープ特異性を有する。
【0128】
「抗体」という用語にはまた、全てのイソ型の抗体が含まれると解釈される。モノクローナル抗体の特定のイソ型は、最初の融合体から直接選択することによって調製することができ、またはステプリュースキー(Steplewski)ら(1985)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:8653、もしくはスパイラ(Spira)ら(1984)、J. Immunol. Meth. 74:307に記載される方法を用いて、クラススイッチ変種を単離するための関連する選択技術を用いて、異なるイソ型のモノクローナル抗体を分泌する親ハイブリドーマから二次的に調製することもできる。
【0129】
本発明はまた、上記のポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の生物活性断片を提供する。これらの「抗体断片」は、その抗原または免疫原との何らかの選択的結合能を保持する。そのような抗体断片には以下が含まれるがこれらに限定されない:
(1)Fab、
(2)Fab’、
(3)F(ab’)2、
(4)Fv、および
(5)SCA。
【0130】
「生物活性抗体断片」の具体例は、抗体のCDR領域である。これらの断片を作製する方法は当技術分野で既知であり、例えばハーロウおよびレーン(HarlowおよびLane)(1988)上記を参照のこと。
【0131】
本発明の抗体はまた、キメラ抗体およびヒト化抗体を作製するために改変することができる(オイ(Oi)ら(1986)、BioTechniques 4(3):214)。キメラ抗体は、抗体の重鎖と軽鎖の様々なドメインが一つ以上の種からのDNAによってコードされる抗体である。
【0132】
本発明のモノクローナル抗体の特異性を有するモノクローナル抗体を分泌する他のハイブリドーマの単離もまた、抗イディオタイプ抗体を作製することによって、当業者は行うことができる(ヘイリン(Heylyn)ら、(1986)、Science 232:100)。抗イディオタイプ抗体は、関係するハイブリドーマによって産生されるモノクローナル抗体上に存在する独自の決定基を認識する抗体である。
【0133】
二つのハイブリドーマのモノクローナル抗体間のイディオタイプ同一性は、二つのモノクローナル抗体が同じエピトープ決定基の認識に関して同じであることを示す。このように、モノクローナル抗体上のエピトープ決定基に対する抗体を用いて、同じエピトープ特異性のモノクローナル抗体を発現する他のハイブリドーマを同定することが可能である。
【0134】
同様に、エピトープを模倣するモノクローナル抗体を産生するために抗イディオタイプ技術を用いることも可能である。例えば、第一のモノクローナル抗体に対して作製された抗イディオタイプモノクローナル抗体は、第一のモノクローナル抗体が結合するエピトープの鏡像である結合ドメインを、超可変領域に有すると考えられる。したがってこの場合、抗イディオタイプモノクローナル抗体は、これらの抗体を産生するための免疫に用いることができると考えられる。
【0135】
本発明において用いられるように、「エピトープ」という用語は、本発明のモノクローナル抗体に対する特異的親和性を有する任意の決定基が含まれることを意味する。エピトープ決定基は通常、アミノ酸または糖側鎖のような分子の化学活性表面群からなり、特異的荷電特徴と共に特定の三次元構造特徴を有する。
【0136】
本発明の抗体は、検出可能な物質または標識に結合することができる。当業者に既知の多くの異なる標識および標識方法がある。
【0137】
抗体を低分子量ハプテンにカップリングさせることは、アッセイの感度を増加させうる。次に、ハプテンを第二の反応によって特異的に検出することができる。例えば、ビオチンのような、特異的抗ハプテン抗体と反応することができるアビジン、ジニトロフェリル、ピリドキサル、およびフルオレセインに反応するハプテンを用いることが一般的である。ハーロウおよびレーン(HarlowおよびLane)(1988)上記を参照のこと。
【0138】
本発明のモノクローナル抗体はまた、多くの異なる担体に結合させることができる。このように、本発明はまた、抗体と活性または不活性なもう一つの物質とを含む組成物を提供する。周知の担体の例には、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然および改変セルロース、ポリアクリルアミド、アガロース、および磁鉄鉱が含まれる。担体の特性は本発明の目的にとって可溶性または不溶性となりうる。当業者は、モノクローナル抗体を結合するための他の適した担体を承知しており、または日常的な実験を行ってそれを確認することができると考えられる。
【0139】
抗体、その断片または抗体を産生する細胞株を含む組成物は、本発明に含まれる。これらの組成物を薬学的に用いる場合、それらは薬学的に許容される担体と組み合わせる。
【0140】
もう一つの態様において、本発明は、MHC分子に結合した本発明の化合物および組成物を送達することを含む免疫応答を誘導する方法を提供する。このように、本発明のポリペプチドは、本明細書に記載の方法を用いて抗原提示細胞にパルスすることができる。抗原提示細胞には、樹状細胞(DC)、単球/マクロファージ、Bリンパ球、または必要なMHC/共刺激分子を発現する他の細胞種が含まれるがこれらに限定されない。下記の方法は、最も強力であるDC、好ましくはAPCに対して主に重点を置いている。ポリペプチドまたはタンパク質を含むこれらの宿主細胞をさらに提供する。
【0141】
MHC分子に結合した本発明のポリペプチドを提示する単離された宿主細胞は、感作された抗原特異的免疫エフェクター細胞の集団を拡大および単離するためにさらに有用である。免疫エフェクター細胞、例えば、細胞障害性Tリンパ球は、APCの表面上のMHC分子に結合したポリペプチドを提示する抗原提示細胞と共に天然の免疫エフェクター細胞を培養することによって得られる。集団は当技術分野で既知の方法、例えばFACS分析またはフィコール勾配を用いて精製することができる。免疫エフェクター細胞と共にそれによって産生される集団を作製して培養する方法にも、同様に本発明者らが貢献しており、本発明である。細胞と薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物は、養子免疫治療において有用である。インビボで投与する前に、免疫エフェクター細胞を、ヒト癌抗原PAR−3を発現する腫瘍細胞、例えば卵巣癌の溶解能に関してインビトロでスクリーニングする。
【0142】
一つの態様において、免疫エフェクター細胞および/またはAPCは遺伝子改変される。標準的な遺伝子移入を用いて、共刺激分子および/または刺激性サイトカインをコードする遺伝子を、免疫エフェクター細胞を拡大する前、同時、または後に挿入することができる。
【0143】
本発明はまた、ポリペプチドに対する免疫応答を誘導する条件で、上記のポリペプチドの有効量を被験者に投与することを含む、被験者における免疫応答を誘導する方法を提供する。ポリペプチドは、組成物において、またはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとして投与することができる。ポリヌクレオチドは、遺伝子送達媒体において、または宿主細胞に挿入することによって投与することができ、次にコードされたポリペプチドを組み換え的に転写、翻訳およびプロセシングする。したがって、薬学的に許容される担体において本発明のポリヌクレオチドを含む単離された宿主細胞は、有効なワクチンレジメのためにアジュバント、サイトカイン、または共刺激分子の適当な有効量と共に組み合わせることができる。一つの態様において、宿主細胞は、樹状細胞のようなAPCである。宿主細胞は、サイトカインおよび/または共刺激分子のいずれかまたは双方の有効量をコードするポリヌクレオチドを挿入することによってさらに改変することができる。
【0144】
本発明の方法は、被験者にサイトカインまたは共刺激分子の有効量を同時投与することによってさらに改変することができる。
【0145】
本発明はまた、任意の上記のタンパク質、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、抗体、およびその断片と、許容される固体または液体担体とを含む組成物を提供する。組成物が薬学的に用いられる場合、それらは診断的および治療的用途のために「薬学的に許容される担体」と組み合わせる。これらの組成物はまた、癌のような疾患の診断および治療のための薬剤を調製するために用いることができる。
【0146】
以下の材料および方法は、本発明、上記の本発明を作製する方法および利用する方法を説明するためであって、これらに制限されない。
【0147】
材料および方法
本発明のポリペプチドの産生
最も好ましくは、本発明の単離されたペプチドは、適当な固相合成技法を用いて合成することができる。ステワードおよびヤング(StewardおよびYoung)「固相ペプチド合成(Solid Phase Peptide Synthesis)」、フリーマントル、サンフランシスコ、カリフォルニア州(1968)。好ましい方法は、メリフィールド法である。メリフィールド(Merrifield、(1967)、Recent Progress in Hormone Res. 23:451)を参照のこと。これらのペプチドの抗原性は、例えば、本明細書に記載のアッセイを用いて簡便に調べてもよい。
【0148】
本発明の単離されたペプチドが得られれば、これをクロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アフィニティ、およびサイズカラムクロマトグラフィー)、遠心、示差溶解度、またはタンパク質精製に関する他の任意の標準的な技術を含む標準的な方法によって精製してもよい。免疫アフィニティクロマトグラフィーの場合、本発明のペプチド、または関連するペプチドに対して作製して、静止相に固定した抗体を含むアフィニティカラムにそれを結合させることによって、エピトープを単離してもよい。
【0149】
または、ヘキサ−His(インビトロジェン社)、マルトース結合ドメイン(ニューイングランドバイオラブス社)、インフルエンザコート配列(コロジエジ(Kolodziej)ら、(1991)、Meth. Enzymol. 194:508〜509)およびグルタチオン−S−トランスフェラーゼのようなアフィニティタグを本発明のペプチドに結合させて、適当なアフィニティカラムを通過させることによって容易に精製することができる。単離したペプチドはまた、タンパク質溶解、核磁気共鳴、およびx線結晶学のような技術を用いて物理的に特徴を調べることができる。
【0150】
例えば、リン酸化、グリコシル化、架橋、アシル化、タンパク質溶解による切断、抗体分子、膜分子または他のリガンドとの結合によって、翻訳の際または翻訳後に異なるように改変された抗原性ペプチドも同様に本発明の範囲に含まれる(ファーガソン(Ferguson)ら(1988)、Ann. Rev. Biochem. 57:285〜320)。
【0151】
樹状細胞を含むAPCの単離、培養、および増殖
以下は、APCを単離するための二つの基本的なアプローチの簡単な説明である。これらのアプローチには、(1)血液から骨髄前駆細胞(CD34+)を単離して、それらを刺激してAPCに分化させること;または(2)末梢血からAPC前駆細胞を回収することを含む。第一のアプローチにおいて、末梢血における循環中のCD34+幹細胞の数を増加させるために、患者を、GM−CSFのようなサイトカインによって処置しなければならない。
【0152】
APCを単離する第二のアプローチは、血液中に既に循環している比較的多数のAPC前駆細胞を回収することである。ヒト末梢血からAPC前駆細胞を単離するこれまでの技法は、メトリザミド勾配および接着/非接着段階(フロイデンサール(Freudenthal, P.S.)ら(1990)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:7698〜7702);パーコール勾配分離(メータ−ダマニ(Mehta−Damani)ら(1994)、J. Immunol. 153:996〜1003);および蛍光活性化細胞選別技術(トーマス(Thomas, R.)ら(1993)、J. Immunol. 151:6840〜6852)のような物理的技法の組み合わせを含む。
【0153】
多数の細胞を互いに分離する技術の一つとして、対向流遠心エラトリエーション(CCE)が知られる。この技術では、細胞を同時に遠心して、絶えず流速が増加している緩衝液の洗浄の流れに置く。緩衝液による絶えず増加している対向流によって、ほぼ細胞の大きさに基づく細胞の分画が分離される。
【0154】
本発明の一つの局面において、APCはマウス、サル、またはヒトのような哺乳類の白血球細胞分画から単離することができる全委任(precommitted)樹状細胞または成熟樹状細胞である(例えば、国際公開公報第96/23060号を参照のこと)。白血球細胞分画は、哺乳類の末梢血から単離することができる。この方法には以下の段階が含まれる:(a)ロイコフォレーシスのような当技術分野で既知の方法によって哺乳類起源から得られた白血球細胞分画を提供する段階;(b)段階(a)の白血球分画を対向流遠心エラトリエーションによって四つまたはそれ以上の小分画に分離する段階;(c)細胞をカルシウムイオノフォア、GM−CSFとIL−13、またはGM−CSFとIL−4に接触させることによって、段階(b)からの一つまたは複数の分画における単球の樹状細胞への変換を刺激する段階、(d)段階(c)からの樹状細胞に富む分画を同定する段階;および(e)段階(d)の濃縮分画を好ましくは約4℃で回収する段階。樹状細胞濃縮分画を同定する一つの方法は、蛍光活性化細胞選別である。白血球分画を、組換え(rh)rhIL−12、rhGM−CSF、またはrhIL−4のような他のサイトカインの存在下でカルシウムイオノフォアによって処置することができる。白血球分画の細胞を緩衝液において洗浄して、Ca++/Mg++不含培地に浮遊させてから分離段階を行う。白血球分画はロイコフォレーシスによって得ることができる。樹状細胞は、以下のマーカー:HLA−DR、HLA−DQ、またはB7.2の少なくとも一つが存在することと、以下のマーカー:CD3、CD14、CD16、56、57、およびCD19、20が同時に存在しないことによって同定することができる。これらの細胞表面マーカーに対する特異的なモノクローナル抗体は市販されている。
【0155】
より具体的には、本方法では、ロイコフェレーシスから白血球と血小板に富む分画を回収して、これを対向流遠心エラトリエーション(CCE)によってさらに分画する必要がある(アブラハムセン(Abrahamsen)T.G.ら、(1991)、J. Clin. Apheresis. 6:48〜53)。細胞試料を特殊なエラトリエーションローターに入れる。次に、ローターを例えば3000 rpmの一定速度で遠心する。ローターが所望の速度に達すれば、加圧空気を用いて細胞の流速を制御する。エラトリエーターにおける細胞は、同時遠心と絶えず流速が増加する緩衝液の洗浄の流れとを受ける。これによって、細胞の大きさの差にほぼ基づく、しかしそれのみではない分画細胞分離が得られる。
【0156】
APCの質の制御、より詳しくはDC回収と培養におけるその活性化の成否の確認は、単球、および樹状細胞亜集団の双方のみならず可能性がある混入Tリンパ球をモニターする同時多色FACS分析技術に依存する。これは、DCが以下のマーカーを発現しないという事実に基づく:CD3(T細胞);CD14(単球);CD16、56、57(NK/LAK細胞);CD19、20(B細胞)。同時に、DCは血液中を循環する際に、大量のHLA−DR、有意なHLA−DQおよびB7.2(しかしB7.1はほとんどまたは全く発現しない)を発現する(それらは他にLeu M7およびM9、単球および好中球によっても同様に発現される骨髄マーカーを発現する)。
【0157】
死細胞を分析するための第三の発色試薬、ヨウ化プロピジウム(PI)と組み合わせると、全ての細胞亜集団の陽性同定が可能となる(表1を参照のこと)。
【0158】
【表1】新鮮な末梢細胞亜集団の FACS 分析
さらに分析するために追加のマーカーを代用することができる:
色#1:CD3のみ、CD14のみ等;Leu M7またはLeu M9;抗クラスI等。
色#2:HLA−DQ、B7.1、B7.2、CD25(IL2r)、ICAM、LFA−3等。
【0159】
回収時のFACS分析の目標は、DCが予想される分画中で濃縮されることを確認すること、好中球の混入をモニターすること、および適当なマーカーが発現されることを確認することである。ヒト末梢血から、臨床応用に適した濃縮DCをこのように迅速に大量に回収することは、品質管理に関して先に記述した分析的FACS技術に完全に依存する。必要であれば、成熟DCを「カクテル陰性」細胞に関する蛍光選別によって、この時点で単球から直ちに分離することができる。下記に詳細に説明するように、単球自身は培養においてDCまたは機能的DC様細胞になおも分化することができるために、DCを単球から日常的に分離する必要はない可能性がある。
【0160】
回収すれば、DC濃縮/単球APC分画(通常150〜190)をプールして、今後使用するために凍結保存することができるか、または直ちに短期間培養に入れることができる。
【0161】
または、樹状細胞を上方制御(活性化する)して、単球を活性化樹状細胞表現型に変換する方法が報告されている。この方法は、単球を活性化樹状細胞に変換するために、培養培地へのカルシウムイオノフォアの添加を伴う。カルシウムイオノフォアA23187を例えば24〜48時間の培養期間の最初に加えると、均一な活性化が起こり、プールされた「単球プラスDC」分画が樹状細胞表現型に変換された:特徴的に、活性化集団は、等しくCD14(Leu M3)陰性となり、HLA−DR、HLA−DQ、ICAM−1、B7.1およびB7.2を上方制御する。さらに、この活性化バルク集団は、さらに精製される少数の基礎としても機能する。
【0162】
サイトカインの特定の組み合わせは、カルシウムイオノフォアによって得られる活性化/変換を首尾よく増幅(または部分的に置換)するために用いられている:これらのサイトカインには、精製または組換え(「rh」)rhGM−CSF、rhIL−2、およびrhIL−4が含まれるがこれらに限定されない。それぞれのサイトカインは、単独で投与すると最適な上方制御には不適当である。
【0163】
APCに対する抗原の提示
免役する目的のために、抗原性ペプチド(3、5、7、9、および11)は、タンパク質/ペプチドとして、またはタンパク質/ペプチドをコードするcDNAの形で抗原提示細胞に送達することができる。抗原提示細胞(APC)は、樹状細胞(DC)、単球/マクロファージ、Bリンパ球、または必要なMHC/共刺激分子を発現する他の細胞種からなりうる。下記の方法は、最も強力なDC、好ましくはAPCに主に焦点を当てる。
【0164】
パルスは、APCを、本発明の抗原性タンパク質またはペプチドに曝露することによって、インビトロ/エキソビボで行われる。タンパク質またはペプチドは1〜10 μmの濃度で約3時間APCに加える。次に、パルスしたAPCを静脈内、皮下、鼻腔内、筋肉内、または腹腔内投与経路を通して宿主に投与することができる。
【0165】
タンパク質/ペプチド抗原はまた、静脈内、皮下、鼻腔内、筋肉内、または腹腔内投与経路を通してアジュバントと共にインビボで送達することができる。
【0166】
パグリア(Paglia)ら(1996、J. Exp. Med. 183:317〜322)は、インビトロでタンパク質全体と共にインキュベートしたAPCが、MHCクラスI拘束(restricted)CTLによって認識されること、およびこれらのAPCで動物を免疫すると、インビボで抗原特異的CTLが産生されることを示した。さらに、DCのようなAPCのサイトゾルにおいて抗原を発現させる、いくつかの異なる技術が説明されている。これらには、(1)腫瘍から単離されたRNAのAPCへの導入、(2)抗原の内因性発現を誘導するための組換えベクターによるAPCの感染、および(3)リポソームを用いた、腫瘍抗原のDCサイトゾルへの導入が含まれる。(ボクズコウスキー(Boczkowski, D.)ら、(1996)、J. Exp. Med. 184:465〜472;ロウス(Rouse)ら(1994)、J. Virol. 68:5685〜5689;およびネイア(Nair)ら(1992)、J. Exp. Med. 175:609〜612を参照のこと)。
【0167】
フォスター抗原提示細胞
フォスター抗原提示細胞は標的細胞として特に有用である。フォスターAPCは、細胞表面MHCクラスI分子と内因性ペプチドとの結合を制限する抗原プロセシング経路に変異を含む、T2と呼ばれるヒト細胞株174xCEM.T2に由来する(ツウェリンク(Zweerink)ら(1993)、J. Immunol. 150:1763〜1771)。これは、MHCクラスI拘束CD8+ CTLに抗原を提示するために必要な、遺伝子TAP1、TAP2、LMP1、およびLMP2を含む、MHCクラスII領域における大きなホモ接合欠失のためである。実質的に、「空の」MHCクラスI分子のみがこれらの細胞の表面に提示される。培養培地に加えられた外因性ペプチドは、ペプチドが対立遺伝子特異的結合モチーフを含むならば、これらのMHC分子に結合する。これらのT2細胞は、本明細書において「フォスター」APCと呼ぶ。それらは、抗原を提示するために本発明と組み合わせて用いることができる。
【0168】
T2細胞に特異的な組換えMHC対立遺伝子を形質導入すると、MHC拘束プロフィールの再指示が可能になる。組換え対立遺伝子に合わせて作製されたライブラリーは、結合残基が内因性対立遺伝子との有効な結合を妨げるため、それらによって選択的に提示されると考えられる。
【0169】
MHC分子の高レベル発現によって、APCはCTLに対してより目立つようになる。強力な転写プロモーターを用いたT2細胞における、関係するMHC対立遺伝子の発現によって、より反応性のAPCが得られる(細胞表面上でのより高い濃度の反応性MHC−ペプチド複合体による可能性が最も高い)。
【0170】
免疫原性アッセイ
本発明のリガンドの免疫原性は、下記に例示するものを含むがこれらに限定されない、周知の方法論によって決定することができる。一つの態様において、そのような方法論は、対応する天然のリガンドと本発明の改変リガンドとを比較するために用いてもよい。例えば改変リガンドは、以下のアッセイのいずれか一つにおいて天然のリガンドの活性と同程度であれば、「より活性である」と見なされると考えられる。いくつかの目的に関して、すなわち、治療および/または診断目的のために、当業者はもう一つの免疫原性リガンドより高い活性を示す、免疫原性リガンドを選択すると考えられる。しかし適応によっては、天然のリガンドと同等である免疫原性リガンドを用いることが適している。他の状況では、より活性が弱い免疫原性リガンドを利用することが望ましいかも知れない。そのような活性レベルは、免疫原性レベルと正の相関をすることが示唆されている。
【0171】
1. 51 Cr− 放出溶解アッセイ
ペプチドパルス51Cr−標識標的の抗原特異的T細胞による溶解を、天然のまたは改変リガンドのいずれかによってパルスした、標的細胞に関して比較することができる。機能的に増強されたリガンドは、時間の関数としてより大きな標的溶解を示すと考えられる。溶解の速度論と共に、固定時間(例えば、4時間)での全標的溶解を用いて、リガンドの性能を評価してもよい(ウェア(Ware)C.F.ら(1983)、J. Immunol. 131:1312)。
【0172】
2.サイトカイン放出アッセイ
リガンドパルス標的と接触させた場合にT細胞によって分泌されるサイトカインの種類および量の分析は、機能的活性の測定となりうる。サイトカインは、サイトカイン産生の速度および全量を決定するためにELISAまたはELISPOTアッセイによって測定することができる(フジハシ(Fujihashi)K.ら、(1993)、J. Immunol. Meth. 160:181;タンケイおよびキリオン(Tanquay, S.およびKillion, J.J.)、(1994)、Lymphokine Cytokine Res. 13:259)。
【0173】
3.インビトロ T 細胞学習
本発明のリガンドは、正常なドナーまたは患者に由来するPBMCからのリガンド反応性T細胞集団の誘発能に関して、対応する天然のリガンドと比較することができる。この系において、誘発されたT細胞は、溶解活性、サイトカイン放出、ポリクローン性、および天然のリガンドに対する交叉反応性に関して調べることができる(パークハースト(Parkhurst)M.R.ら、(1996)、J. Immunol. 157:2539)。
【0174】
4.トランスジェニック動物モデル
本発明のリガンドまたは天然のリガンドのいずれかをHLAトランスジェニックマウスにワクチン接種して、誘導された免疫応答の性質および程度を決定することによって、免疫原性をインビボで評価することができる。または、hu−PBL−SCIDマウスモデルは、ヒトPBLの養子移入によってマウスにおけるヒト免疫系の再構築を可能にする。これらの動物は、リガンドをワクチン接種して、先に述べたように免疫応答に関して分析してもよい(シライ(Shirai)M.ら(1995)、J. Immunol. 154:2733;モシエ(Mosier)D.E.ら(1993)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:2443)。
【0175】
5.増殖
T細胞は、反応性リガンドに反応して増殖すると考えられる。増殖は、例えば3H−チミジンの取り込みを測定することによって、定量的にモニターすることができる(カルソ(Caruso)A.ら、(1997)、Cytometry 27:71)。
【0176】
6.四量体染色
MHC四量体は、個々のリガンドをローディングして、適当なエフェクターT細胞集団との相対的結合能に関して調べることができる(アルトマン(Altman)J.D.ら(1996)、Science 274(5284):94−96。
【0177】
7.MHC 安定化
T2細胞のような特定の細胞株をHLA結合リガンドに曝露すると、細胞表面上のMHC複合体の安定化が起こる。細胞表面上のMHC複合体の定量は、安定化されるHLA対立遺伝子に関するリガンドの親和性と相関している。このように、この技術は、リガンドエピトープの相対的HLA親和性を決定することができる(スツバー(Stuber)G.ら、(1995)、Int. Immunol. 7:653)。
【0178】
8.MHC 競合
参照リガンドおよびその同種のT細胞エフェクターの機能的活性をリガンドが妨害する能力は、リガンドがどれほどMHC結合に関して競合できるかの尺度である。阻害の相対レベルの測定は、MHC親和性の指標である(フェルトカンプ(Feltkamp)M.C.ら(1995)、Immunol. Lett. 47:1)。
【0179】
9.霊長類モデル
最近記載されたヒト以外の霊長類(チンパンジー)モデル系は、HLA拘束リガンドのインビボ免疫原性をモニターするために利用することができる。チンパンジーは、ヒトMHC分子と重なり合うMHCリガンド特異性を共有し、このため相対的インビボ免疫原性に関して、HLA拘束リガンドを調べることができる(ベルトーニ(Bertoni)R.ら(1998)、J. Immunol. 161:4447)。
【0180】
10.TCR シグナル伝達事象のモニタリング
いくつかの細胞内シグナル伝達事象(例えば、リン酸化)は、MHCリガンド複合体によるTCR関与の成功に関係している。これらの事象の定量的および定性的分析は、リガンドがTCR関与を通してエフェクター細胞を活性化する相対的な能力に相関している(サラザー(Salazar)E.ら(2000)、Int. J. Cancer 85:829;イサコフ(Isakov)N.ら(1995)、J. Exp. Med. 181:375)。
【0181】
免疫エフェクター細胞の増殖
本発明は、これらのAPCを利用して抗原特異的免疫エフェクター細胞の濃縮集団の産生を刺激する。抗原特異的免疫エフェクター細胞は、APCを犠牲にして増殖し、APCは培養において死滅する。未経験の免疫エフェクター細胞が他の細胞によって感作される過程は、クーリー(Coulie)((1997)、Molec. Med. Today 3:261〜268)に本質的に記載されている。
【0182】
上記のように調製したAPCを未経験の免疫エフェクター細胞と混合する。好ましくは、細胞をサイトカイン、例えばIL−2の存在下で培養してもよい。樹状細胞はIL−12のような強力な免疫刺激サイトカインを分泌するため、増大の最初およびその後の回のあいだに追加のサイトカインを加える必要はないかも知れない。いずれにせよ、培養条件は、抗原特異的免疫エフェクター細胞が、APCよりかなり速い速度で増大する(すなわち増殖する)条件である。抗原特異的細胞の集団をさらに増殖させるために、APCと選択的サイトカインの多数回の注入を行うことができる。
【0183】
一つの態様において、免疫エフェクター細胞はT細胞である。異なる態様において、免疫エフェクター細胞は、例えば、IL−2、IL−11、またはIL−13をコードする導入遺伝子の形質導入によって遺伝子改変することができる。導入遺伝子をインビトロ、エキソビボ、およびインビボで導入する方法は、当技術分野で周知である。サムブルック(Sambrook)ら(1989)上記を参照のこと。
【0184】
遺伝子改変において有用なベクター
一般的に、本発明において用いられる細胞の遺伝子改変は、異種または改変抗原をコードする、ポリペプチドまたは導入遺伝子を含むベクターを導入することによって得られる。非ウイルス系と共にウイルス系を含む、多様な異なる遺伝子移入ベクターを用いることができる。本発明の遺伝子改変において有用なウイルスベクターには、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクターおよびアデノ−レトロウイルスキメラベクターが含まれるが、これらに限定されない。APCおよび免疫エフェクター細胞は、下記の方法を用いて、または当技術分野で既知の他の任意の適当な方法によって、改変することができる。
【0185】
組換えアデノウイルスベクターまたはアデノ随伴ウイルスベクターの構築
本発明の遺伝子改変において有用なアデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルスベクターは、当技術分野で既に教示された方法に従って産生してもよい。例えば、カールソンら(Karlsson)(1992)、EMBO J. 5:2377);カーター(Carter、(1992)、Curr. Op. Biotechnol. 3:533〜539;ムジズカ(Muzcyzka)(1992)、Current Top. Microbiol. Immunol. 158:97〜129;「遺伝子のターゲティング:実践アプローチ(Gene Targeting:A Practical Approach)」(1992)、A.L.ジョイナー(Joyner)編、オックスフォード大学出版、ニューヨーク州)を参照のこと。いくつかの異なるアプローチが実施可能である。ヘルパー非依存性複製欠損ヒトアデノウイルス系が好ましい。
【0186】
ヒトアデノウイルス5に基づく組換えアデノウイルスベクター(McGrory, W.T.ら、(1988)Virology 163:614〜617)は、アデノウイルスゲノムから必須の初期遺伝子(通常、E1A/E1B)が欠失しており、したがって、イントランスで欠失している遺伝子産物を提供する、許容性の細胞株において増殖させなければ複製することができない。欠失しているアデノウイルスゲノム配列の代わりに、関係する導入遺伝子を、複製欠損アデノウイルスに感染した細胞においてクローニングおよび発現することができる。アデノウイルスに基づく遺伝子移入では、宿主ゲノムへの導入遺伝子の組み込みが起こらず(宿主DNAに導入遺伝子が組み込まれるのは、アデノウイルス媒介トランスフェクションの0.1%未満である)、したがって、安定ではないが、アデノウイルスベクターはより高い力価で増殖して、非複製細胞をトランスフェクトすることができる。アデノウイルスE1A/E1B遺伝子によって形質転換した、ヒト胎児腎細胞であるヒト293細胞は、有用な許容性細胞株の典型である。しかし、複製欠損アデノウイルスベクターがその中で増殖することができる、HeLa細胞を含む他の細胞株を用いることができる。
【0187】
本発明の方法において用いることができるアデノウイルスベクターおよび他のウイルスベクターを記載するさらなる引用文献には、以下が含まれる:ホルビッツ(Horwitz, M.S.、「アデノウイルス科とその複製(Adenoviridae And Their Replication)」、フィールズ(Fields)B.ら編、Virology 第2巻、レイブン出版、ニューヨーク州、1679〜1721頁(1990);グラハム(Graham)B.ら、「分子生物学の方法(Methods in Molecular Biology)」、第7巻、「遺伝子移入と発現プロトコール(Gene Transfer and Expression Protocols)」、ミュレイ(Muray, E.)編、ヒュマナ出版、クリフトン、ニュージャージー州(1991)の109〜128頁;ミラー(Miller)N.ら、(1995)FASEB J. 9:190〜199);シュレイアー(Schreier, H.、(1994)、Pharmaceutica Acta Helvetiae 68:145〜159:シュナイダーおよびフレンチ(SchneiderおよびFrench、(1993)、Circulation 88:1937〜1942);キュリエル(Curiel)D.T.ら、(1992)、Hum. Gene Ther. 3:147〜154;グラハム(Graham)F.L.ら、国際公開公報第95/00655号(1995年1月5日);ファルク−ペダーセン(Falck−Pedersen)E.S.、国際公開公報第95/16772号(1995年6月22日);デネフル(Denefle)P.ら、国際公開公報第95/23867号(1995年9月8日);ハッダダ(Haddada)H.ら、国際公開公報第94/26914号(1994年11月24日);ペリカウデ(Perricaudet)M.ら、国際公開公報第95/02697号(1995年1月26日);ザン(Zhang)W.ら、国際公開公報第95/25071号(1995年10月12日)。多様なアデノウイルスプラスミドも同様に例えば、オンタリオ州トロントのマイクロビクスバイオシステムズ社(例えば、マイクロビクス製品情報シート:アデノウイルスベクター構築のためのプラスミド、1996年を参照のこと)を含む販売元から入手できる。同様に、遺伝子改変のために用いることができるアデノ−レトロウイルスキメラベクターの構築および使用に関して記述している、バイル(Vile)ら、(1997)、Nature Biotechnology 15:840〜841);およびフェングら(Feng、(1997)、Nature Biotechnology 15:866〜870)による論文を参照のこと。
【0188】
本発明の方法において用いることができるAAVベクターを記述するさらなる参考文献には、以下が含まれる:カーター(Carter)B.、「パルボウイルスハンドブック(Handbook Of Parvoviruses)」、第I巻169〜228頁、1990;バーンズ(Berns、「ウイルス学(Virology)」、1743〜1764頁(レイブン出版、1990);カーター(Carter)B.、(1992)、Current Opin. Biotechnol. 3:533〜539;ムジズカ(Muzcyzka)、(1992)、Current Topics in Micro. and Immunol. 158:92〜129;フロッテ(Flotte)T.R.ら、(1992)、Am. J. Respir. Cell Mol. Biol. 7:349〜356;チャタリー(Chatterjee)ら、(1995)、Ann. NY Acad. Sci. 770:79〜90;フロッテ(Flotte)T.R.ら、国際公開公報第95/13365号(1995年5月18日);トレンペ(Trempe)J.P.ら、国際公開公報第95/13392号(1995年5月18日);コチン(Kotin)R.、(1994)Hum. Gene Ther. 5:793〜801);フロッテ(Flotte)T.R.ら、(1995)、Gene Therapy 2:357〜362;アレン(Allen)J.M.、国際公開公報第96/17947号(1996年6月13日);およびデュ(Du)ら(1996)、Gene Therapy 3:254〜261。
【0189】
APCは、関連するポリペプチドをコードするウイルスベクターによって形質導入することができる。最も一般的なウイルスベクターには、ワクシニアおよび鶏痘ウイルス(ブロンテ(Bronte)ら、(1997)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:3183〜3188;キム(Kim)ら、(1997)、J. Immunother. 20:276〜286)のような組換えポックスウイルスが含まれ、好ましくはアデノウイルス(アーサー(Arthur)ら、(1997)、J. Immunol. 159:1393〜1403;ワン(Wang)ら(1997)、Human Gene Therapy 8:1355〜1363;ヒュアン(Huang)ら、(1995)、J. Virol. 69:2257〜2263)が含まれる。ヒトAPCの形質導入のためにレトロウイルスも同様に用いてもよい(マリン(Marin)ら(1996)、J. Virol. 70:2957〜2962)。
【0190】
インビトロ/エキソビボでヒトDCを、最少量の血清不含培地において感染多重度(MOI)500で、アデノウイルス(Ad)ベクターに16〜24時間曝露すると、DCの90〜100%でて導入遺伝子の発現を確実に生じる。DCまたは他のAPCの形質導入効率は、発現される腫瘍抗原に対して特異的な蛍光抗体を用いて、免疫蛍光によって評価することができる(キム(Kim)ら、(1997)、J. Immunother. 20:276〜286)。または抗体は、基質と反応すると着色産物を生じる酵素(例えば、HRP)と結合させることができる。APCによって発現される抗原性ポリペプチドの実際の量は、ELISAによって評価することができる。
【0191】
形質導入したAPCは、その後静脈内、皮下、鼻腔内、筋肉内、または腹腔内送達経路によって宿主に投与することができる。
【0192】
DCまたは他のAPCのインビボ形質導入は、静脈内、筋肉内、鼻腔内、腹腔内、または皮下送達を含む異なる経路によって、Ad(または他のウイルスベクター)の投与によって行うことができる。好ましい方法は、総量約1×1010〜1×1012 i.u.を用いる多数の部位でのAdベクターの皮下送達である。インビボ形質導入レベルは、発現されるAPCマーカーとTAAに対する抗体による共染色によっておおよそ評価することができる。染色技法は、投与部位からの生検試料、またはAPC(特にDC)が遊走している可能性がある、排液リンパ節もしくは他の臓器からの細胞について行うことができる(コンドン(Condon)ら(1996)、Nature Med. 2:1122〜1128およびワン(Wan)ら、(1997)、Hum. Gene Ther. 8:1355〜1363)。注射部位または形質導入されたAPCが遊走する可能性がある他の臓器において発現される抗原の量は、組織ホモジネートに対するELISAによって評価することができる。
【0193】
ウイルス遺伝子送達はより効率的であるが、DCはまた、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、または陽イオン脂質/プラスミドDNA複合体のような、非ウイルス遺伝子送達法によって、インビトロ/エキソビボで形質導入することができる(アーサー(Arthur)ら、(1997)、Cancer Gene Ther. 4:17〜25)。次に、形質導入されたAPCは、静脈内、皮下、鼻腔内、筋肉内、または腹腔内送達経路によって宿主に投与することができる。
【0194】
DCまたは他のAPCのインビボ形質転換は、静脈内、筋肉内、鼻腔内、腹腔内、または皮下投与経路によって送達される、陽イオン脂質/プラスミドDNA複合体の投与によって、おそらく行うことができる。遺伝子銃送達または裸のプラスミドDNAの皮膚への注入によっても、DCが形質転換される(コンドン(Condon)ら(1996)、Nature Med. 2:1122〜1128;ラズ(Raz)ら、(1994)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:9519〜9523)。プラスミドDNAの筋肉内送達はまた、免疫のために用いてもよい(ロサト(Rosato)ら、(1997)、Hum. Gene Ther. 8:1451〜1458)。
【0195】
形質転換効率および導入遺伝子発現レベルは、ウイルスベクターに関して上記のように評価することができる。
【0196】
養子免疫治療とワクチン
本発明の抗原特異的免疫エフェクター細胞の増殖集団も同様に、養子免疫治療法において、およびワクチンとして用いられる。
【0197】
養子免疫治療は、一つの局面において、未経験の免疫エフェクター細胞を上記のようにAPCと共に培養することによって、感作された抗原特異的免疫エフェクター細胞の実質的に純粋な集団を、被験者に投与する段階を含む。好ましくは、APCは樹状細胞である。
【0198】
一つの態様において、本明細書に記載の養子免疫治療方法は自己由来である。この場合、APCは一人の被験者から単離した親細胞を用いて作製する。増殖した集団はまた、その被験者から単離されたT細胞を用いる。最後に、抗原特異的細胞の増殖集団を同じ患者に投与する。
【0199】
さらなる態様において、APCまたは免疫エフェクター細胞は、IL−2または共刺激分子のような、刺激性サイトカインの有効量と共に投与する。
【0200】
本明細書において、その意図する目的に関して有効であると同定された作用物質は、ヒト癌腫瘍抗原PAR−3を発現する腫瘍を有する被験者と同様に、そのような腫瘍に感受性があるかまたは発症する危険性を有する個体に投与することができる。物質をマウス、ラット、またはヒト患者のような被験者に投与する場合、物質を薬学的に許容される担体に加えて、全身または局所的に被験者に投与することができる。治療から利益が得られうる患者を決定するために、腫瘍の退縮をアッセイすることができる。治療量は経験的に決定して、治療すべき病態、治療すべき被験者、ならびに治療の有効性および毒性に応じて変化すると考えられる。
【0201】
インビボでの投与は、1回の投与で、治療の過程を通して連続的に、または間欠的に行うことができる。最も有効な手段および投与用量を決定する方法は、当業者に周知であり、治療に用いられる組成物、治療の目的、治療される標的細胞、および治療される被験者に応じて変化すると考えられる。1回または多数回の投与を、治療する医師によって選択された用量レベルおよび様式で行うことができる。適した用量製剤および物質を投与する方法は下記に見出されうる。
【0202】
本発明の作用物質および組成物は、薬学的組成物における活性成分のように、従来の方法に従って投与することによって、医薬品の製造ならびにヒトおよび他の動物の治療のために用いることができる。
【0203】
より詳細には、本明細書において活性成分であると呼ばれる本発明の作用物質はまた、鼻腔内、局所(経皮、エアロゾル、口腔内、舌下を含む)、非経口(皮下、筋肉内、静脈内、および皮内を含む)ならびに肺内経路を含む、任意の適した経路によって治療のために投与してもよい。同様に、好ましい経路はレシピエントの状態および年齢、ならびに治療される疾患に応じて変化すると考えられる。
【0204】
先の説明および実施例は、当技術分野の単なる説明と解釈される。当業者に明らかであるように、様々な変更を上記に行ってもよく、それらも本発明の趣旨および範囲に含まれうる。
関連出願の相互参照
本出願は、2000年8月17日に提出された、米国仮特許出願第60/226,243号に対する、米国特許法第119項(e)の下で優先権を主張する。この出願の内容は参照として本開示に組み入れられる。
【0002】
技術分野
本発明は、ヒト卵巣癌に対して有用な治療化合物の分野に関する。
【0003】
発明の背景
主要組織適合抗原複合体(MHC)分子によって提示される抗原エピトープの認識は、哺乳類の免疫応答の確立、維持、および実行において中心的な役割を果たしている。体細胞および抗原提示白血球によって発現される細胞表面のMHC分子によって提示されるペプチド抗原のT細胞による探査および認識は、ウイルス、細菌、および寄生虫のような感染性微生物による侵入を制御するように機能する。さらに今では、抗原特異的細胞障害性Tリンパ球(CTL)は特定の癌細胞抗原を認識して、これらの抗原を発現する細胞を攻撃することができることが証明されている。このT細胞活性は、抗癌ワクチンの新しい戦略を開発するための基礎となる。さらに、不適当なT細胞活性化は、リウマチ性関節炎、多発性硬化症、および喘息のような特定の衰弱性の自己免疫疾患において中心的な役割を果たす。このように、MHC分子によって提示される抗原エピトープの提示および認識は、多数の病態における免疫応答の調節において中心的な役割を果たす。
【0004】
癌患者に由来する腫瘍特異的T細胞は、腫瘍細胞に結合して溶解する。この特異性は、MHCクラスIおよびいくつかの細胞種においてはクラスII分子が、腫瘍細胞表面に提示される短いアミノ酸配列(エピトープ)を認識できることに基づいている。これらのエピトープは、腫瘍または癌細胞において独自にまたは異常に発現されている遺伝子によってコードされる腫瘍抗原と呼ばれる細胞内タンパク質のタンパク質溶解による分解に由来する。
【0005】
特異的抗腫瘍T細胞を利用できれば、腫瘍抗原を同定することができ、それによって抗腫瘍免疫応答を誘発するように設計された癌ワクチンを産生することができる。抗腫瘍T細胞は、血液(そこで、細胞は末梢血単核球細胞分画に認められうる)、一次および二次リンパ様組織、例えば脾臓、卵巣癌患者における腹水(腫瘍関連リンパ球もしくはTALs)、または腫瘍そのものの内部(腫瘍浸潤リンパ球もしくはTIL)を含む、癌患者の体内に存在する。これらの中で、TILは、T細胞によって認識される腫瘍抗原および腫瘍抗原由来ペプチドの同定において最も有用であった。
【0006】
TILを作製する従来の方法は、腫瘍生検組織を細切して、T細胞増殖因子であるインターロイキン−2(IL−2)の存在下でインビトロで細胞浮遊液を培養することを含む。数日間のあいだに、腫瘍細胞とIL−2との混合物は、腫瘍細胞を犠牲にして腫瘍特異的T細胞の増殖を刺激することができる。このようにして、T細胞集団を増殖させる。初回増殖に由来するT細胞をその後、マイトマイシンC処理または放射線照射腫瘍細胞のいずれかと混合して、インビトロでIL−2と共に培養して、腫瘍反応性T細胞のさらなる増殖および濃縮を促進する。インビトロ増殖を数回行った後、強力な抗腫瘍T細胞集団を回収して、これを用いて従来の、しかし単調な発現クローニング技術によって腫瘍抗原を同定することができる。カワカニら(Kawakani, Y.、(1994)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91(9):3515〜3519)。
【0007】
腫瘍特異的T細胞をインビトロで産生するために現在用いられている方法論は、信頼性に乏しく、この方法によって同定された抗原は必ずしも抗腫瘍免疫応答を誘導しない。抗原が成熟T細胞に出合うと、無視、アネルギー、または物理的欠乏のためにしばしば免疫寛容が誘導されることが多数の実験によって証明されている。パードル(Pardoll、(1998)Nature Med. 4(5):525〜531)。
【0008】
特定のペプチドがT細胞エピトープとして機能するか否かは、それらがMHC分子の抗原提示ドメインに有効に結合すること、しかもT細胞受容体分子によって特異的に認識されうる適当なセットのアミノ酸を示す必要がある。抗原性ポリペプチドに由来する天然のT細胞エピトープを同定することは可能であるが、これらのペプチドは特定の免疫応答を誘導するために最適な抗原を必ずしも提示しない。実際に、その配列を変化させる一つまたは多数のアミノ酸置換体を導入することによって天然のエピトープの有効性を改善することが可能であることが示されている(バルモリ(Valmori)ら、(2000)、J. Immunol. 164(2):1125〜1131)。このように、注意深く最適にした合成ペプチドエピトープを送達すれば、有用な免疫応答を誘導するための改善された方法を提供する可能性がある。
【0009】
抗原を動物に導入することは、多様な目的のために、抗原に対する免疫応答またはその欠損を調節する目的のために、広く用いられている。これらには、病原体に対するワクチン接種、癌様細胞に対する免疫応答の誘導、アレルギー反応の減少、自己免疫障害の結果として起こる、自己抗原に対する免疫応答の減少、同種異系移植片拒絶の減少、および避妊目的の自己抗原に対する免疫応答の誘導が含まれる。
【0010】
癌の治療において、腫瘍細胞を特異的に認識して溶解する細胞障害性Tリンパ球集団を作製するために、多様な免疫治療的アプローチが用いられている。これらのアプローチの多くは、腫瘍特異的抗原の同定および特徴付けに一部依存している。
【0011】
近年、特定の病原体および腫瘍関連タンパク質が、そのアミノ酸配列が病原体または腫瘍関連タンパク質の抗原決定基ドメインのアミノ酸配列に対応する合成ペプチドによって免疫学的に模倣されている。これらの進歩にもかかわらず、天然の配列に基づくペプチド免疫原は、一般的に免疫応答の誘導に関して最適とは言えない。このように、免疫調節特性が増強した改変された合成ペプチドエピトープが必要である。本発明は、この必要性を満足して、関連する長所も同様に提供する。
【0012】
発明の開示
本発明は、新規合成治療化合物を提供する。これらの化合物は、MHC分子との結合を増強し、その天然での相対物と比較して免疫調節特性を増強するように設計される。本発明の合成化合物は、合成および天然の化合物に対する免疫応答を調節するために有用である。
【0013】
本発明の化合物をコードするポリヌクレオチド、これらのポリヌクレオチドを含む遺伝子送達媒体、およびこれらのポリヌクレオチドを含む宿主細胞がさらに提供される。
【0014】
さらに、本発明は、本発明の化合物および組成物を送達すること、ならびにこれらをMHC分子に結合させて送達することによって、被験者における免疫応答を誘導する方法を提供する。
【0015】
本発明の化合物はまた、これらの化合物を特異的に認識して結合する抗体を作製するためにも有用である。これらの抗体は、被験者に投与すると免疫治療にとってさらに有用である。
【0016】
本発明はまた、MHC分子に結合した本発明のペプチド組成物を提示する抗原提示細胞の存在下で、そして抗原提示細胞を犠牲にしてインビボまたはインビトロで産生した免疫エフェクター細胞を提供し、およびこれらの免疫エフェクター細胞の有効量を被験者に投与することを含む養子免疫治療の方法を提供する。
【0017】
本発明はさらに、免疫原性リガンドが天然の同じリガンドに対して免疫応答を誘発できることを個々に特徴とし、免疫原性リガンドが
からなる群より選択される、少なくとも二つの免疫原性リガンドを含む組成物を提供する。リガンドは薬学的に許容される担体のような担体中に存在しうる。
【0018】
同様に、本発明は、免疫原性リガンドが天然の同じリガンドに対して免疫応答を誘発できることを特徴とし、免疫原性リガンドが
からなる群より選択される、少なくとも二つの免疫原性リガンドを含む宿主細胞も提供する。一つの局面において、宿主細胞は、抗原提示細胞であり、免疫原性リガンドは細胞表面に提示される。さらなる局面において、抗原提示細胞は樹状細胞である。宿主細胞は、薬学的に許容される担体のような担体中に存在しうる。
【0019】
なお本発明はさらに、免疫原性リガンドのそれぞれが天然の同じリガンドに対して免疫応答を誘発できることを特徴として、免疫原性リガンドが
からなる群より選択される、二つまたはそれ以上の有効量の免疫原性リガンドを含む組成物を、被験者に送達することによって、被験者において免疫応答を誘導する方法を提供する。
【0020】
配列表の説明
配列番号:1
ヒト癌抗原プロテアーゼ活性型レセプター−3(PAR−3)をコードするcDNAの完全なヌクレオチド配列である。コード領域は、ヌクレオチド1位〜ヌクレオチド3801位に及ぶ。
配列番号:2
天然のヒト癌抗原PAR−3のアミノ酸配列である。本発明の化合物は、天然のペプチド700〜708に基づく変種である。
配列番号:3
化合物1のアミノ酸配列である。
配列番号:4
化合物1をコードするポリヌクレオチド配列である。
配列番号:5
化合物2のアミノ酸配列である。
配列番号:6
化合物2をコードするポリヌクレオチド配列である。
配列番号:7
化合物3のアミノ酸配列である。
配列番号:8
化合物3をコードするポリヌクレオチド配列である。
配列番号:9
化合物4のアミノ酸配列である。
配列番号:10
化合物4をコードするポリヌクレオチド配列である。
配列番号:11
ヒト癌抗原PAR−3の天然のエピトープ。
配列番号:12
該抗原PAR−3をコードするポリヌクレオチド配列である。
【0021】
本発明を実施する様式
本開示を通して、様々な刊行物、特許および公開された特許明細書は、識別する引用文によって参照される。これらの刊行物、特許および公開された特許明細書の開示は、本発明が属する技術分野の現状をより詳しく説明するために、本開示に参照として本明細書に組み入れられる。
【0022】
本発明の実施は、特に明記していなければ、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学および免疫学の従来の技術を用い、それらは当業者の範囲内である。そのような技術は文献に詳しく説明されている。これらの方法は、以下の刊行物に記述されている。例えば、サムブルック(Sambrook)ら、「分子のクローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)」第二版(1989);「分子生物学の現行プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」(アウスユベール(Ausubel)F.M. ら編、(1987));「酵素学実験法シリーズ(the series Methods in Enzymology)」、(アカデミック出版社);「PCR:実践アプローチ(PCR:A Practical Approach)」、(M. マクファーソン(MacPherson)ら、IRL出版、オックスフォード大学出版(1991));「PCR 2:実践アプローチ(PCR 2:A Practical Approach)」、(マクファーソン、ハームスおよびテイラー(M.J. MacPherson、 B.D. Hames、およびG.R. Taylor)編、(1995));「抗体:実験マニュアル(Antibodies, A Laboratory Manual)」、(ハーロウおよびレーン(HarlowおよびLane)編、(1988));および「動物細胞培養(Animal Cell Culture)」、R.I. フレッシュニー(Freshney)ら編、(1987))を参照のこと。
【0023】
定義
本明細書において用いられるように、特定の用語は以下に定義された意味を有する。
【0024】
本明細書および請求の範囲において用いられるように、単数形「一つの(a)」、「一つの(an)」、および「その」には、特に文脈で明らかに明記しない限り、複数形が含まれる。例えば、「細胞」という用語には、その混合物を含む複数の細胞が含まれる。
【0025】
本明細書において用いられるように、「含む」という用語は、組成物および方法に引用された要素が含まれるが、他の要素を除外しないことを意味すると解釈される。「本質的にからなる」とは、組成物および方法を定義するために用いる場合、組み合わせに対して本質的な重要性を有する、他の任意の要素を除外することを含むことを意味する。このように、本明細書に定義する要素から本質的になる組成物は、単離および精製方法からの微量の混入物およびリン酸緩衝生理食塩液、保存剤等のような薬学的に許容される担体を除外しないと考えられる。「からなる」とは、他の成分の微量以上の要素を除外して、本発明の組成物を投与するための実質的な方法段階を含むことを意味する。これらの移行用語のそれぞれによって定義される態様は本発明の範囲に含まれる。
【0026】
「天然の」または「自然の」抗原とは、自然の生物起源から単離され、被験者において抗原受容体、特にT細胞抗原受容体(TCR)に特異的に結合することができるエピトープを含むポリペプチド、タンパク質または断片である。
【0027】
「抗原」という用語は、当技術分野において十分に理解されており、これには免疫原性である物質、すなわち免疫原、および免疫学的無反応性、またはアネルギーを誘導する物質、すなわちアネルゲンが含まれる。
【0028】
「改変された抗原」とは、対応する野生型抗原とは異なる一次配列を有する抗原である。改変抗原は、合成または組換え法によって作製することができ、これには例えばリン酸化、グリコシル化、架橋、アシル化、タンパク質溶解的分解、抗体分子、膜分子または他のリガンドとの結合によって、翻訳時または翻訳後に異なるように改変される抗原性ペプチドが含まれるがこれらに限定されない。(ファーガソン(Ferguson)ら、(1988)、Ann. Rev. Biochem. 57:285〜320)。本発明の合成または改変抗原は、天然のエピトープと同じTCRに結合すると解釈される。
【0029】
本明細書において天然の抗原または野生型抗原とも呼ばれる「自己抗原」はまた、抗原に対する自己寛容により被験者において免疫応答をほとんど、または全く誘導しない抗原性ペプチドである。自己抗原の例は、黒色腫特異抗原gp100である。
【0030】
「腫瘍関連抗原」または「TAA」という用語は、腫瘍に関連するまたは腫瘍に特異的な抗原を意味する。既知のTAAの例には、gp100、MARTおよびMAGEが含まれる。
【0031】
「主要組織適合抗原複合体」または「MHC」という用語は、T細胞に抗原を提示するために必要な、および急性の移植片拒絶のために必要な細胞表面分子をコードする遺伝子の複合体を意味する。ヒトでは、MHCは「ヒト白血球抗原」または「HLA」複合体としても知られる。MHCによってコードされるタンパク質は、「MHC分子」として知られ、クラスIおよびクラスII MHC分子に分類される。クラスI MHC分子には、β2−ミクログロブリンと非共有結合したMHCにおいてコードされるα鎖で構成される膜ヘテロ二量体タンパク質が含まれる。クラスI MHC分子は、ほぼ全ての有核細胞によって発現され、CD8+ T細胞に対する抗原提示において機能することが示されている。クラスI分子には、ヒトにおけるHLA−A、B、およびCが含まれる。クラスII MHC分子には、非共有結合によって結合したαおよびβ鎖からなる膜ヘテロ二量体タンパク質が含まれる。クラスII MHC分子は、CD4+ T細胞において機能することが知られており、ヒトにおいて、HLA−DP、−DQ、およびDRが含まれる。好ましい態様において、本発明の組成物およびリガンドは、任意のHLA型のMHC分子と複合体を形成することができる。当業者は、HLAの血清型および遺伝子型を周知している。例えば、http://bimas.dcrt.nih.gov/cgi−bin/molbio/hlaの共通閲覧頁を参照のこと。ラメンシー、バックマン、およびステバノビッチ(Rammensee, H.G.、Bachman, J.、およびStevanovic, S.、「MHCリガンドとペプチドモチーフ(MHC Ligands and Peptide Motifs)」、(1997)、チャプマン・アンド・ホール出版社);シュリューダー(Schreuder)G.M.Thら、「HLA辞書(The HLA Dictionary)」、(1999)Tissue Antigens 54:409〜437)。
【0032】
「抗原提示マトリクス」という用語は、本明細書において用いられるように、抗原がT細胞表面上でT細胞抗原受容体に結合することができるように抗原を提示することができる分子または複数の分子を意味する。抗原提示マトリクスは、抗原提示細胞(APC)の表面、またはAPCの小胞調製物に存在することができ、またはビーズもしくはプレートのような固相支持体上の合成マトリクスの形となりうる。合成抗原提示マトリクスの例は、固相支持体に結合した、β2−ミクログロブリンと複合体を形成した精製MHCクラスI分子、そのような精製MHCクラスI分子の多量体、精製MHCクラスII分子、またはその機能的部分である。
【0033】
「抗原提示細胞(APC)」とは、免疫系の特異的エフェクター細胞によって認識可能な抗原MHC複合体の形で一つまたは複数の抗原を提示することができ、それによって提示される抗原または複数の抗原に対して有効な細胞免疫応答を誘導することができる細胞のクラスを意味する。多くの種類の細胞が、T細胞が認識できるようにその細胞表面上に抗原を提示できる可能性があるが、有効な量で抗原を提示でき、細胞障害性Tリンパ球(CTL)反応に関してT細胞をさらに活性化する能力を有するのは、専門的なAPCに限られる。APCは、マクロファージ、B−細胞および樹状細胞のような無傷の完全な細胞;またはβ2−ミクログロブリンと複合体を形成した精製MHCクラスI分子のような天然もしくは合成の他の分子となりうる。
【0034】
「樹状細胞(DC)」という用語は、多様なリンパ様および非リンパ様組織において認められた形態学的に類似の細胞型の多様な集団を意味する(スタインマン(Steinman)(1991)、Ann. Rev. Immunol. 9:271〜296)。樹状細胞は、生物において最も強力な好ましいAPCを構成する。樹状細胞の全てではないがサブセットは骨髄前駆細胞に由来して、少数が末梢血を循環して、未成熟なランゲルハンス島細胞または最終的に分化した成熟細胞のいずれかとして現れる。樹状細胞は単球から分化することができるが、それらは異なる表現型を有する。例えば、特定の分化マーカーであるCD14抗原は、樹状細胞には存在しないが単球には存在する。同様に、成熟樹状細胞は貪食性ではないが、単球は強力な貪食細胞である。DCは、T細胞活性化と増殖にとって必要な全てのシグナルを提供することが示されている。
【0035】
「抗原提示細胞動員因子」、または「APC動員因子」という用語には、無傷の細胞全体と共に、抗原提示細胞を動員することができる他の分子が含まれる。適したAPC動員因子の例には、インターロイキン4(IL−4)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、セプラゲルおよびマクロファージ炎症タンパク質3α(MIP3α)のような分子が含まれる。これらは、イムネックス社、シェリングプラウ社およびR&Dシステムズ社(ミネアポリス、ミネソタ州)から入手できる。それらはまた、「分子生物学の現行プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」F.M. アウスユベール(Ausubel)ら編、(1987)に開示される方法を用いて、組換えによって産生することができる。上記の因子と同じ生物活性を有するペプチド、タンパク質、および化合物は、本発明の範囲に含まれる。
【0036】
「免疫エフェクター細胞」という用語は、抗原に結合することができ、免疫応答を媒介する細胞を意味する。これらの細胞には、T細胞、B細胞、単球、マクロファージ、NK細胞、ならびに細胞障害性Tリンパ球(CTL)、例えばCTL細胞株、CTLクローン、および腫瘍、炎症、または他の浸潤物からのCTLが含まれるがこれらに限定されない。特定の疾患を有する組織は、特異的抗原を発現して、これらの抗原に対して特異的なCTLが同定されている。例えば、黒色腫の約80%がGP−100として知られる抗原を発現する。
【0037】
本明細書において用いられる「免疫エフェクター分子」という用語は、抗原特異的に結合することができる分子を意味し、これには抗体、T−細胞抗原受容体、ならびにMHCクラスIおよびクラスII分子が含まれる。
【0038】
「未経験の」免疫エフェクター細胞は、その細胞を活性化することができる抗原にこれまで曝露されていない免疫エフェクター細胞である。未経験の免疫エフェクター細胞の活性化には、増殖して抗原特異性を備えるエフェクターT細胞に分化するために、ペプチド:MHC複合体の認識および専門的APCによる共刺激シグナルの同時送達の双方を必要とする。
【0039】
「免疫応答」は、広い意味において、外来物質に対するリンパ球の抗原特異的反応を意味する。免疫応答を誘発することができる如何なる物質も「免疫原性」であり、「免疫原」であると呼ばれる。免疫原は全て抗原であるが、必ずしも全ての抗原が免疫原性であるわけではない。本発明の免疫応答は、液性(抗体活性を通して)または細胞性(T細胞活性化を通して)となりうる。
【0040】
本明細書において用いられるように、「リガンド」という用語は、もう一つの分子上の特異的部位に結合する如何なる分子も意味する。言い換えれば、リガンドは、免疫エフェクター細胞との反応においてタンパク質の特異性を付与する。免疫エフェクター細胞上の相補的結合部位と直接複合体を形成するのはタンパク質内のリガンド部位である。
【0041】
好ましい態様において、本発明のリガンドは、抗体またはT細胞受容体(TCR)のような免疫エフェクター細胞上の抗原決定基またはエピトープに結合する。リガンドは、本発明の抗原、ペプチド、タンパク質、またはエピトープであってもよい。
【0042】
本発明のリガンドは、抗体上の受容体に結合してもよい。一つの態様において、本発明のリガンドは長さがアミノ酸約4〜約8個である。
【0043】
本発明のリガンドはMHCクラスI分子上の受容体に結合してもよい。一つの態様において、本発明のリガンドは長さがアミノ酸約7〜約11個である。
【0044】
本発明のリガンドは、MHCクラスII分子上の受容体に結合してもよい。一つの態様において、本発明のリガンドは長さがアミノ酸約10〜約20個である。
【0045】
本明細書において用いられるように、「感作された(educated)抗原特異的免疫エフェクター細胞」という用語は、抗原にこれまでに出合ったことがある上記の免疫エフェクター細胞である。その未経験の相対物とは対照的に、感作された抗原特異的免疫エフェクター細胞の活性化は、共刺激シグナルを必要としない。ペプチド:MHC複合体の認識で十分である。
【0046】
T細胞に関して用いる場合、「活性化された」とは、細胞が、G0期を出て、一つまたは複数のサイトトキシン、サイトカイン、および細胞種(例えば、CD8+またはCD4+)に特徴的な他の関連する膜結合型タンパク質を産生し始め、その表面上に特定の抗原を示す任意の標的細胞を認識して結合することができ、そのエフェクター分子を放出することができることを意味する。
【0047】
本発明の意味において、「認識される」という用語は、一つまたは複数のリガンドを含む本発明の組成物が、そのような結合が有効な免疫応答を開始する、免疫エフェクター細胞によって認識および結合されることを意味する。リガンドが免疫エフェクター細胞によって認識されるか否かを決定するアッセイは、当技術分野で既知であり、本明細書に記載される。
【0048】
「選択的に認識される」という用語は、本発明の組成物またはリガンドの特異性が、天然のリガンドを認識して結合する免疫エフェクター細胞に限定されることを意味する。
【0049】
「交叉反応する」という用語は、機能的に重なり合う本発明の化合物を記載するために用いられる。より詳しく述べると、天然のリガンドおよび/またはそれによって活性化される免疫エフェクター細胞の免疫原性特性は、改変されたリガンドが天然のリガンドおよび/またはそれによって活性化される免疫エフェクター細胞と「交叉反応」するように、改変リガンドによってある程度共有される。本発明の目的に関して、交叉反応性は、多数のレベルで現れる:(i)リガンドレベルで、例えば、改変リガンドは天然のリガンドCTLのTCRに結合して天然のリガンドCTLを活性化することができる;(ii)T細胞レベルで、すなわち本発明の改変リガンドは、T細胞のTCRに結合して、天然のリガンドを示す細胞を有効に標的としてこれを溶解することができるT細胞のある集団(天然のリガンドCTLの集団とは異なる)を活性化する;および(iii)抗体レベルで、例えば、「抗」改変リガンド抗体は、天然のリガンドを検出、認識して、免疫応答においてエフェクター機構を開始させることができ、最終的に宿主から天然のリガンドが消失する。
【0050】
本明細書において記載されるように、「被験者において免疫応答を誘導する」という用語は、当技術分野において周知の用語であり、被験者に抗原(またはエピトープ)を導入する前の免疫応答(もしあれば)と比較して、被験者に抗原(またはエピトープ)を導入した後に、抗原(またはエピトープ)に対する免疫応答の少なくとも約2倍、より好ましくは少なくとも約5倍、より好ましくは少なくとも約10倍、より好ましくは少なくとも約100倍、さらにより好ましくは少なくとも約500倍、なおより好ましくは少なくとも約1000倍またはそれ以上の増加を、検出または測定することができることを意味する。抗原(またはエピトープ)に対する免疫応答には、抗原特異的(またはエピトープ特異的)抗体の産生、抗原(またはエピトープ)に特異的に結合する分子をその表面上に発現する免疫細胞の産生が含まれるがこれらに限定されない。所定の抗原(またはエピトープ)に対する免疫応答が誘導されるか否かを決定する方法は当技術分野で周知である。例えば、抗原特異的抗体は、固定された抗原(またはエピトープ)に対する試料中の抗体の結合が、検出可能に標識した第二抗体(例えば、酵素標識マウス抗ヒトIg抗体)によって検出される、ELISAを含むがこれらに限定されない当技術分野で既知の多様な任意のイムノアッセイを用いて検出することができる。
【0051】
「共刺激分子」は、抗原提示細胞とT細胞の表面上に発現される受容体−リガンド対の相互作用に関係している。過去数年間に蓄積された研究によって、休止期のT細胞が、サイトカイン遺伝子発現を誘導して増殖するために、少なくとも二つのシグナルを必要とすることが確実に証明されている(シュワルツ(Schwartz)R.H.(1990)、Science 248:1349〜1356;およびジェンキンス(Jenkins)M.K.(1992)、Immunol. Today 13:69〜73)。特異性を付与する一つのシグナルは、適当なMHC/ペプチド複合体とTCR/CD3複合体との相互作用によって産生することができる。第二のシグナルは抗原特異的ではなく、「共刺激」シグナルと呼ばれる。このシグナルは、マクロファージおよび樹状細胞、いわゆる「専門的」APCのような骨髄由来補助細胞によって提供される活性として当初定義された。いくつかの分子が共刺激活性を増強することが示されている。これらは熱安定抗原(HSA)(リウ(Liu)Y.ら(1992)、J. Exp. Med. 175:437〜445)、コンドロイチン硫酸改変MHC不変鎖(Ii−CS)(ノージョカス(Naujokas)M.F.ら、(1993)、Cell 74:257〜268)、細胞内接着分子1(ICAM−1)(ファンセベンター(Van Seventer)G.A.、(1990)、J. Immunol. 144:4579〜4586)、B7−1およびB7−2/B70(シュワルツ(Schwartz)R.H.(1992)、Cell 71:1065〜1068)である。これらの分子は、それぞれT細胞上でその同種のリガンドと相互作用することによって共刺激を補助すると考えられる。共刺激分子は、正常な生理的条件で、未経験のT細胞を十分に活性化するために必要な共刺激シグナルを媒介する。例としての受容体−リガンド対は、APC表面上のB7共刺激分子およびT細胞上のその相対物受容体CD28またはCTLA−4である(フリーマン(Freeman)ら、(1993)Science 262:909〜911;ヤング(Young)ら、(1992)、J. Clin. Invest. 90:229およびナバビ(Nabavi)ら、(1992)、Nature 360:266〜268)。その他の重要な共刺激分子は、CD40、CD54、CD80、およびCD86である。「共刺激分子」という用語は、T細胞表面上のTCRに結合したペプチド/MHC複合体と共に作用すると、ペプチドに結合するT細胞の活性化を得る共刺激作用を提供する、任意の単一分子または分子の組み合わせも含む。この用語はこのように、B7、またはペプチド/MHC複合体と共に、同種のリガンドに結合して、T細胞の表面上のTCRがペプチドに特異的に結合すればT細胞を活性化する、APC、その断片(単独、他の分子と複合体を形成して、もしくは融合タンパク質の一部として)のような抗原提示マトリクス上の他の共刺激分子を含む。共刺激分子は、例えば、ベックマンコールターインク(フュラートン、カリフォルニア州)を含む多様な販売元から市販されている。必ずしも明示されていないが、野生型と類似の生物活性を有する分子、または精製された共刺激分子(例えば、組換えによって産生されたまたはその変異タンパク質)は、本発明の趣旨および範囲において用いられると解釈される。
【0052】
本明細書において用いられるように、「固相支持体」または「固体支持体」は、互換的に用いられ、特定の種類の支持体に限定されない。むしろ多数の支持体が利用でき、当技術分野で既知である。固相支持体には、シリカゲル、樹脂、誘導体化プラスチックフィルム、ガラスビーズ、ワタ、プラスチックビーズ、アルミナゲルが含まれる。本明細書において用いられるように、「固相支持体」には、合成抗原提示マトリクス、細胞、およびリポソームが含まれる。適した固相支持体は、様々なプロトコールに関して所望の目的の用途および適切性に基づいて選択してもよい。例えば、ペプチド合成に関して、固相支持体はポリスチレン(例えば、バケム社、ペニンスララボラトリーズ社等から得られるPAM−樹脂)、ポリハイプ(登録商標)樹脂(アミノテック社、カナダから得られる)、ポリアミド樹脂(ペニンスララボラトリーズ社から得られる)、ポリスチレングリコールを接合したポリスチレン樹脂(テンタゲル(登録商標)、ラップポリマー、チュービンゲン、ドイツ)、またはポリジメチルアクリルアミドゲル(ミリゲン/バイオサーチ社、カリフォルニア州から得られる)のような樹脂を適用してもよい。
【0053】
本明細書において用いられるように「免疫調節物質」という用語は、分子、高分子複合体、または免疫応答を調節する細胞であり、単独または本明細書に記載の多様な処方の任意のものと組み合わせた本発明の合成抗原性ペプチド;本発明の合成抗原性ペプチドを含むポリペプチド;本発明のペプチドまたはポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;APC、および合成抗原提示マトリクス(共刺激分子の存在下または非存在下で)を含む抗原提示マトリクス上のクラスIまたはクラスII MHC分子に結合した本発明の合成抗原性ペプチド;もう一つの分子または高分子構造と共有結合または非共有結合によって複合体を形成した本発明の合成抗原性ペプチド;ならびに本発明のペプチドに対して特異的な感作された抗原特異的免疫エフェクター細胞を含む。
【0054】
「免疫応答を調節する」という用語には、免疫応答を誘導(増加、誘発)する、および免疫応答を減少(抑制)することが含まれる。免疫調節法(またはプロトコール)は、被験者における免疫応答を調節する方法である。
【0055】
本明細書において用いられるように、「サイトカイン」という用語は、細胞に多様な作用を及ぼす、例えば成長または増殖(proliferation)を誘導する多数の任意の要因の一つを意味する。本発明の実施において単独または組み合わせて用いてもよいサイトカインの非制限的な実施例には、インターロイキン−2(IL−2)、幹細胞因子(SCF)、インターロイキン−3(IL−3)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−12(IL−12)、G−CSF、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、インターロイキン−1α(IL−1α)、インターロイキン−11(IL−11)、MIP−11、白血球抑制因子(LIF)、c−kitリガンド、トロンボポエチン(TPO)、およびflt3リガンドが含まれる。本発明にはまた、一つまたは複数のサイトカインが培地から特異的に除外される培養条件が含まれる。サイトカインは、例えばゲンザイム社(フラミンガム、マサチューセッツ州)、ジェネンテック社(サウスサンフランシスコ、カリフォルニア州)、アムジェン社(サウザンドオークス、カリフォルニア州)、R&Dシステムズ(ミネアポリス、ミネソタ州)、およびイムネックス社(シアトル、ワシントン州)のようないくつかの発売元から市販されている。必ずしも明示されていないが、野生型と類似の生物活性を有するまたは精製サイトカイン(例えば、組換えによって産生されたまたはその変異体)は、本発明の精神および範囲内で用いられると解釈される。
【0056】
「ポリヌクレオチド」および「核酸分子」という用語は、任意の長さのヌクレオチドの重合型を互換的に意味するために用いられる。ポリヌクレオチドは、デオキシヌクレオチド、リボヌクレオチド、および/またはその類似体を含んでもよい。ヌクレオチドは、任意の三次元構造を有してもよく、既知または未知の任意の機能を行ってもよい。「ポリヌクレオチド」という用語には、例えば、一本鎖、二本鎖、および三重らせん分子、遺伝子または遺伝子断片、エキソン、イントロン、mRNA、tRNA、rRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離DNA、任意の配列の単離RNA、核酸プローブ、およびプライマーが含まれる。核酸分子は、また改変された核酸分子を含んでもよい。
【0057】
「ペプチド」という用語は、その最も広い意味において、二つまたはそれ以上のサブユニットのアミノ酸の化合物、アミノ酸類似体、またはペプチド模倣体を意味する。サブユニットはペプチド結合によって結合してもよい。もう一つの態様において、サブユニットは他の結合、例えば、エステル、エーテル等によって結合してもよい。本明細書において用いられるように、「アミノ酸」という用語は、グリシンおよびDまたはL光学異性体、アミノ酸類似体およびペプチド模倣体を含む天然および/または非天然または合成アミノ酸のいずれかを意味する。三つまたはそれ以上のアミノ酸を含むペプチドは、ペプチド鎖が短ければ一般的にオリゴペプチドと呼ばれる。ペプチド鎖が長ければペプチドは一般的にポリペプチドまたはタンパク質と呼ばれる。
【0058】
「遺伝子改変された」という用語は、外来遺伝子または核酸配列を含むおよび/または発現して、それによって細胞またはその子孫の遺伝子型または表現型を改変することを意味する。言い換えれば、これは細胞の内因性のヌクレオチドに対する任意の付加、欠失、または破壊を意味する。
【0059】
本明細書において用いられるように、「発現」とは、それによってポリヌクレオチドがmRNAに転写されて、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質に翻訳される過程を意味する。ポリヌクレオチドがゲノムDNAに由来する場合、適当な真核宿主を選択すれば、発現にはmRNAのスプライシングが含まれてもよい。発現のために必要な調節エレメントには、RNAポリメラーゼに結合するプロモーター配列およびリボソーム結合のための転写開始配列が含まれる。例えば、細菌の発現ベクターには、lacプロモーターのようなプロモーターおよび転写開始のためのシャイン・ダルガルノ配列および開始コドンAUG(サムブルック(Sambrook)ら、(1989)、上記)が含まれる。同様に、真核細胞発現ベクターには、RNAポリメラーゼIIのための異種または同種プロモーター、下流のポリアデニル化シグナル、開始コドンAUG、およびリボソームを脱離させるための停止コドンが含まれる。そのようなベクターは、市販されているか、または当技術分野で周知の方法に記載の配列、例えば一般的なベクターを構築するために下記に記載される方法に記載の配列によって構築することができる。
【0060】
「転写制御下」とは、当技術分野で十分に理解されている用語であり、ポリヌクレオチド配列、通常はDNA配列の転写が、転写の開始に関与するかまたは転写を促進するエレメントに、機能的に結合していることに依存することを示す。「機能的に結合した」とは、エレメントがそれらが機能するように配置されている近接位置を意味する。
【0061】
「遺伝子送達媒体」とは、宿主細胞に挿入されたポリヌクレオチドを運ぶことができる任意の分子として定義される。遺伝子送達媒体の例は、リポソーム;天然ポリマーおよび合成ポリマーを含む生体適合性ポリマー;リポタンパク質;ポリペプチド;多糖類;リポ多糖類;人工ウイルスエンベロープ;金属粒子、ならびに細菌、またはバキュロウイルス、アデノウイルス、およびレトロウイルスのようなウイルス、バクテリオファージ、コスミド、プラスミド、真菌ベクターならびに多様な真核および原核宿主において発現させるために記載されており、単にタンパク質発現のためのみならず、遺伝子治療のために用いてもよい、当技術分野で典型的に用いられる他の組換え媒体である。
【0062】
本明細書において用いられる「遺伝子送達」「遺伝子移入」等は、用いる導入方法にかかわらず、宿主細胞に外因性のポリヌクレオチド(時に、「導入遺伝子」と呼ばれる)を導入することを意味する用語である。そのような方法には、ベクター媒介遺伝子移入(例えば、ウイルス感染/トランスフェクション、または様々なタンパク質に基づくまたは脂質に基づく遺伝子送達複合体による)と共に「裸の」ポリヌクレオチドの送達を促進する技術(エレクトロポレーション、「遺伝子銃」送達およびポリヌクレオチドを導入するために用いられる様々な他の技術)のような、多様な周知の技術が含まれる。導入されたポリヌクレオチドは、宿主細胞において安定または一過性に維持されてもよい。安定な維持は典型的に、導入されたポリヌクレオチドが、宿主細胞と適合性の複製開始点を含むか、または染色体外レプリコン(例えば、プラスミド)または核もしくはミトコンドリア染色体のような宿主細胞のレプリコンに組み入れられることを必要とする。当技術分野で既知であり、本明細書に記載されるように、多くのウイルスベクターが哺乳類細胞への遺伝子の移入を媒介できることが知られている。
【0063】
「ウイルスベクター」は、インビボ、エキソビボ、またはインビトロのいずれかで宿主細胞に送達されるポリヌクレオチドを含む組換え的に産生されたウイルスまたはウイルス粒子として定義される。ウイルスベクターの例には、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、アルファウイルスベクター等が含まれる。セムリキ森林熱ウイルスに基づくベクター、およびシンドビスウイルスに基づくベクターのようなアルファウイルスベクターも同様に、遺伝子治療および免疫治療において用いるために開発されている。シュレジンガーおよびデュベンスキー(SchlesingerおよびDubensky)(1999)、Curr. Opin. Biotechnol. 5:434〜439、およびイング(Ying)ら(1999)、Nat. Med. 5(7):823〜827を参照のこと。遺伝子移入がレトロウイルスベクターによって媒介される局面において、ベクター構築物は、レトロウイルスゲノムまたはその一部と、治療遺伝子とを含むポリヌクレオチドを意味する。本明細書において用いられるように、「レトロウイルス媒介遺伝子移入」または「レトロウイルス形質導入」は、同じ意味を有し、ウイルスが細胞内に入り、そのゲノムを宿主細胞ゲノムに組み入れるために、それによって遺伝子または核酸配列が宿主細胞に安定に移入される過程を意味する。ウイルスは、その通常の感染機構によって宿主細胞に入ることができ、またはそれが異なる宿主細胞表面受容体もしくはリガンドに結合して細胞に入るように改変することができる。本明細書において用いられるように、レトロウイルスベクターは、ウイルスまたはウイルス様の侵入機構によって細胞に外因性の核酸を導入することができるウイルス粒子を意味する。
【0064】
レトロウイルスは、RNAの形で遺伝子情報を有する;しかし、ウイルスが細胞に感染すると、RNAをDNA型に逆転写させて、これが感染細胞のゲノムDNAに組み入れられる。組み入れられたDNA型をプロウイルスと呼ぶ。
【0065】
遺伝子移入がアデノウイルス(Ad)またはアデノ随伴ウイルス(AAV)のようなDNAウイルスベクターによって媒介される局面において、ベクター構築物は、ウイルスゲノムまたはその一部と導入遺伝子とを含むポリヌクレオチドを意味する。アデノウイルス(Ads)は、比較的十分に特徴が調べられ、50血清型以上を含む均一なウイルスの群である。例えば、国際公開公報第95/27071号を参照のこと。アデノウイルスは容易に増殖して宿主細胞ゲノムに組み入れられる必要がない。組換えアデノウイルス由来ベクター、特に野生型ウイルスの組換えおよび増殖能を低下させたベクターも同様に構築されている。国際公開公報第95/00655号および国際公開公報第95/11984号を参照のこと。野生型AAVは、宿主細胞ゲノムに組み入れられる高い感染性と特異性とを有する。ハーモナトおよびムジクツカ(HermonatおよびMuzyczka)(1984)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6466〜6470、ならびにレブコウスキ(Lebkowski)ら(1988)、Mol. Cell. Biol. 8:3988〜3996を参照のこと。
【0066】
ポリヌクレオチドが機能的に結合しているプロモーターとクローニング部位とをその中に含むベクターは、当技術分野で周知である。そのようなベクターは、インビトロまたはインビボでRNAを転写することができ、ストラタジーン社(ラホヤ、カリフォルニア州)およびプロメガバイオテック社(マディソン、ウィスコンシン州)から販売されている。発現および/またはインビトロ転写を最適にするために、余分のおそらく不適当なもう一つの翻訳開始コドン、または転写もしくは翻訳レベルで発現を妨害もしくは減少させる可能性がある他の配列を除去するために、クローンの5’および/または3’非翻訳部分を除去、付加、または変化させる必要がある可能性がある。または、発現を増強するために、コンセンサスリボソーム結合部位を開始コドンのすぐ5’に挿入することができる。
【0067】
遺伝子送達媒体にはまた、DNA/リポソーム複合体、標的化ウイルスタンパク質−DNA複合体を含むいくつかの非ウイルスベクターが含まれる。同様に標的指向抗体またはその断片も含むリポソームを本発明の方法において用いることができる。細胞への送達を増強するために、本発明の核酸またはタンパク質を細胞表面抗原、例えばTCR、CD3、またはCD4に結合する抗体またはその結合断片に結合させることができる。
【0068】
「ハイブリダイゼーション」とは、一つまたは複数のポリヌクレオチドがヌクレオチド残基の塩基間の水素結合によって安定化される複合体を形成するように反応する反応である。水素結合は、ワトソン−クリックの塩基対形成、フーグスティーン(Hoogstein)結合によって起こってもよく、または任意の他の配列特異的に起こってもよい。複合体は、二本鎖構造を形成する二つの鎖を含んでもよく、多重鎖複合体を形成する三つもしくはそれ以上の鎖、自己ハイブリダイズ鎖、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。ハイブリダイゼーション反応は、PCR反応の開始、またはリボザイムによるポリヌクレオチドの酵素的切断のようなより広範囲の過程における一段階を構成してもよい。
【0069】
ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例には:インキュベーション温度約25℃〜約37℃;ハイブリダイゼーション緩衝液濃度約6×SSC〜約10×SSC;ホルムアミド濃度約0%〜約25%;および洗浄溶液約6×SSCが含まれる。中等度のハイブリダイゼーション条件の例には:インキュベーション温度約40℃〜約50℃;緩衝液濃度約9×SSC〜約2×SSC;ホルムアミド濃度約30%〜約50%;および洗浄溶液約5×SSC〜約2×SSCが含まれる。高ストリンジェンシー条件の例には:インキュベーション温度約55℃〜約68℃;緩衝液濃度約1×SSC〜約0.1×SSC;ホルムアミド濃度約55%〜約75%;および洗浄溶液約1×SSC、約0.1×SSC、または脱イオン水が含まれる。一般的に、ハイブリダイゼーションインキュベーション時間は、5分〜24時間であり、1、2、またはそれ以上の洗浄段階を行い、洗浄インキュベーション時間は約1、2または15分である。SSCは0.15 M NaClおよび15 mMクエン酸緩衝液である。他の緩衝液系を用いるSSCの同等物を用いることができると理解される。
【0070】
ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド領域(またはポリペプチドもしくはポリペプチド領域)は、もう一つの配列と「配列同一性」に関して特定の百分率(例えば、80%、85%、90%、または95%)を有し、これは並置して二つの配列を比較する場合に塩基(またはアミノ酸)の百分率が同じであることを意味する。このアラインメントおよび相同性%または配列同一性は、例えば「分子生物学の現行プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」アウスユベール(F.M. Ausubel)ら編、(1987)、補則30、第7.7.18章、表7.7.1に記載されるプログラムのような、当技術分野で既知のソフトウェアプログラムを用いて決定することができる。好ましくは、アラインメントのためにデフォルトパラメータを用いる。好ましいアラインメントプログラムは、デフォルトパラメータを用いるBLASTである。特に、好ましいプログラムは、以下のデフォルトパラメータを用いるBLASTNおよびBLASTPである:遺伝子コード=標準;フィルター=なし;鎖=両方;カットオフ=60;予測値=10;行列=BLOSUM62;表示=50配列;選別=ハイスコア;データベース=非重複、GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS翻訳+スイスプロテイン+SPアップデート+PIR。これらのプログラムの詳細は以下のインターネットアドレスで見ることができる:http://www.ncbi/nih.gov/cgi−bin/BLAST。
【0071】
本明細書において用いられるように、「インビボ」遺伝子送達、遺伝子移入、遺伝子治療等は、ヒトまたはヒト以外の哺乳類のような生物の体内に直接外因性ポリヌクレオチドを含むベクターを導入して、それによって外因性のポリヌクレオチドがそのような生物の細胞にインビボで導入されることを意味する用語である。
【0072】
「単離された」という用語は、ポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、またはその断片が天然において通常結合する、構成成分、細胞およびその他から分離されることを意味する。例えば、ポリヌクレオチドに関して、単離されたポリヌクレオチドは、染色体において通常結合している5’および3’配列から分離されているポリヌクレオチドである。当業者に明らかであるように、天然に存在しないポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、またはその断片は、それを天然に存在するその相対物と区別するために「単離」を必要としない。さらに、「濃縮された」、「分離された」、または「希釈された」ポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、またはその断片は、容積あたりの分子の濃度または数が、その天然に存在する相対物より「大きく濃縮されている」または「あまり分離されていない」という点において、その天然に存在する相対物と識別することができる。その一次配列、または例えばそのグリコシル化パターンによって天然に存在する相対物とは異なるポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、またはその断片は、それがその一次配列によって、またはグリコシル化パターンのようなもう一つの特徴によって天然に存在する相対物とは区別できることから、単離型で存在する必要はない。本明細書に開示される本発明のそれぞれに関して明示していないが、下記に開示され、適当な条件での組成物のそれぞれに関する上記の態様の全てが本発明によって提供されると理解される。このように、天然に存在しないポリヌクレオチドは、単離された天然に存在するポリヌクレオチドとは異なる態様として提供される。細菌細胞において産生されたタンパク質は、本来産生される真核細胞から単離された天然に存在するタンパク質とは異なる態様として提供される。
【0073】
「宿主細胞」、「標的細胞」または「レシピエント細胞」は、ベクターのための、または外因性核酸分子、ポリヌクレオチド、および/またはタンパク質を組み入れるためのレシピエントとなりうる、またはレシピエントである任意の個々の細胞または細胞培養も含まれると解釈される。同様に、これには単一の細胞の子孫が含まれると解釈され、子孫は、天然、偶発的、または意図した変異のために、当初の親細胞と必ずしも完全に同一である(形態またはゲノムもしくは総DNA相補体において)必要はない。細胞は、原核細胞または真核細胞であってもよく、細菌細胞、酵母細胞、動物細胞、および哺乳類細胞、例えばマウス、ラット、サル、またはヒト細胞が含まれるがこれらに限定されない。
【0074】
「被験者」は脊椎動物、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトである。哺乳類には、マウス、サル、ヒト、家畜動物、競技動物、およびペットが含まれるがこれらに限定されない。
【0075】
「対照」は、比較目的のために実験において用いられるもう一つの被験者または試料である。対照は、「陽性」または「陰性」となりうる。例えば、実験の目的が特定の種類の癌と遺伝子の発現レベルの変化との相関を調べることである場合、陽性対照(そのような変化を有し、その疾患の特徴である症候群を示す被験者、または被験者からの試料)および陰性対照(発現の変化およびその疾患の臨床症状を示さない被験者または被験者からの試料)を用いることが一般的に好ましい。
【0076】
「癌」、「新生物」、および「腫瘍」という用語は互換的に用いられ、単数形または複数形で用いられ、それらが宿主細胞に対して病原性となるような悪性の形質転換を受ける細胞を意味する。原発性癌細胞(すなわち、悪性の形質転換部位の近傍から得られた細胞)は、十分に確立された技術、特に組織学的検査によって非癌細胞から容易に区別することができる。本明細書において用いられるように癌細胞の定義には、原発性癌細胞のみならず、癌細胞の祖先に由来する任意の細胞も含まれる。これには、転移癌細胞、ならびにインビトロ培養および癌細胞に由来する細胞株が含まれる。通常固形癌として認められる種類の癌について言及する場合、「臨床的に検出可能な」腫瘍は;例えば、CATスキャン、磁気共鳴造影(MRI)、X−線、超音波、または触診のような技法によって腫瘍塊に基づいて検出可能である。生化学または免疫学的知見のみでは、この定義を満たすには不十分である可能性がある。
【0077】
腫瘍の増殖の「抑制」は、本明細書に記載の感作された抗原特異的免疫エフェクター細胞と接触しない場合の増殖と比較して増殖が減少した状態を示す。腫瘍細胞の増殖は、腫瘍の大きさを測定すること、3H−チミジン取り込みアッセイを用いてまたは腫瘍細胞の計数によって腫瘍細胞が増殖するか否かを決定すること、を含むがこれらに限定されない、当技術分野で既知の任意の手段によって評価することができる。腫瘍細胞増殖の「抑制」は、以下の状態のいずれかまたは全てを意味する:腫瘍の増殖の遅れ、遅延、および「抑制」は、腫瘍の縮小と共に、腫瘍の増殖が停止した際に増殖が抑制された状態を示す。
【0078】
「培養」という用語は、様々な種類の培地における細胞または生物のインビトロ増殖を意味する。培養において増殖させた細胞の子孫は親細胞に対して完全に同一(形態学的、遺伝学的、または表現型として)ではなくてもよいと理解される。「細胞数の拡大」とは、細胞の任意の増殖または分裂を意味する。
【0079】
「組成物」とは、活性物質と、アジュバントのような不活性な(例えば検出物質または標識)または活性な、もう一つの化合物または組成物との組み合わせを意味すると解釈される。
【0080】
「薬学的組成物」は、組成物をインビトロ、インビボ、またはエキソビボで診断または治療的に用いるために適するようにする、活性物質と不活性なまたは活性な担体との組み合わせが含まれると解釈される。
【0081】
本明細書において用いられるように、「薬学的に許容される担体」という用語は、リン酸緩衝生理食塩液、水、油/水または水/油乳剤のような乳剤、および様々な種類の湿潤剤のような、標準的な任意の薬学的担体を含む。組成物はまた、安定化剤および保存剤を含みうる。担体、安定化剤、およびアジュバントの例として、マーチン(Martin)の「レミントンの製薬科学(Remington’s Parm. Sci.)」第15版(マックパブリッシング社、イーストン(1975))を参照のこと。
【0082】
「有効量」は、有用な、または所望の結果を得るために十分な量である。有効量は一つまたは複数の投与、適用、または用量において投与することができる。本発明は、以下の構造を有する化合物を提供する:
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【0083】
本発明はまた、MHC分子への結合の増強を示し、同種の天然のリガンドおよびその対応する天然のタンパク質に対する免疫応答を調節するために有用である、組成物も提供する。
【0084】
本発明はさらに、抗癌ワクチンの成分として有用な、およびヒト癌抗原パーティション(Partition)−3(PAR−3)の発現を特徴とする癌に対して、特異的な免疫エフェクター細胞を増殖させるために有用な組成物を提供する。この種類の癌の例は卵巣癌である。
【0085】
一つの態様において、本発明の改変リガンドは、天然のリガンドと同等のMHC結合親和性を有する。ペプチド:MHCクラスI結合特性は、免疫原性と相関することが証明されている(セッテ(Sette)A.ら(1994)Immunol. 153(12):5586−5592;ファンデルバーグ(van der Burg)S.H.ら(1996)、J. Immunol. 156:3308−3314)。好ましい態様において、本発明の改変リガンドは「自然の」リガンドより高い親和性でTCRに結合する。天然のリガンドと改変リガンドとがMHCクラスI分子に対して同等に結合するか否かは、当技術分野で既知の方法によって測定することができ、これには、アルゴリズムに基づく親和性の計算(例えば、パーカー(Parker)ら(1992)、J. Immunol. 149:3580〜3587)、および実験による結合親和性の計算(例えば、タン(Tan)ら、(1997)、J. Immunol. Meth. 209(1):25〜36)が含まれるが、これらに限定されない。例えば、クラスI分子に対するペプチドの相対的結合は、様々な濃度の被験ペプチド(例えば、100 mM〜1nMの範囲)を用いて、洗浄剤によって可溶化したMHC分子に対する放射標識標準ペプチドの結合に基づいて結合することができる。MHCクラスI重鎖およびβ2−ミクログロブリンは、固定濃度(例えば、5nM)の放射標識標準(対照)ペプチド、および様々な濃度の被験ペプチドと共に、室温でプロテアーゼ阻害剤混合物の存在下で適した期間(例えば、2時間〜72時間)、共インキュベートする。対照試験管は、標準ペプチドとMHC分子とを含むが、被験ペプチドを含まない。MHC結合放射活性%はゲル濾過によって決定する。IC50(対照ペプチド結合の50%阻害が起こる被験ペプチドの濃度)を、各ペプチドについて計算する。TCRに対する結合親和性を決定するさらなる方法は、当技術分野で既知であり、これらには、アルラマディ(al−Ramadi)ら(1992)、J. Immunol. 155(2):662〜673;およびズーゲル(Zuegel)ら(1998)、J. Immunol. 161(4):1705〜1709に記載される方法が含まれるが、これらに限定されない。
【0086】
もう一つの態様において、本発明の改変リガンドは、天然のリガンド相対物と同等の抗原特異的なT細胞の活性化を誘発する。好ましい態様において、本発明の改変リガンドは、天然のリガンド相対物と比較して、より強い抗原特異的なT細胞の活性化を誘発する。本発明のリガンドの免疫原性を決定する方法は当技術分野で既知であり、本明細書にさらに記載される。
【0087】
一つの態様において、本発明の組成物は、本発明の免疫原性リガンドを二つまたはそれ以上含む。一つの局面において、そのような組成物は、単一のリガンドの二つまたはそれ以上のコピーを含んでもよい。もう一つの局面において、そのような組成物は、上記の二つまたはそれ以上のリガンドのそれぞれのリガンドが、上記の組成物における他の全てのリガンドとは異なる、二つまたはそれ以上のリガンドを含んでもよい。一つの態様において、二つまたはそれ以上の免疫原性リガンドは共有結合している。
【0088】
本発明はまた、MHC分子に対する結合を増強するように設計され、合成ペプチドエピトープ、およびそれらが由来する対応する天然のペプチドに対する免疫応答を調節するために有用である、新規合成抗原性ペプチドを提供する。本発明の合成抗原性ペプチドエピトープ配列は、それらが、MHCクラスI結合ドメインにおいて、天然の配列と比較してMHCへのより強固な結合を付与するように設計される、アミノ酸配列の変化を含むという点において、その天然の相対物とは異なる。それらはさらに、推定のT細胞受容体結合ドメインにおいて、T細胞抗原受容体に対する親和性を増加するように設計された変異を含む。天然の配列とのこれらの差は、本発明の合成抗原性ペプチドエピトープが増強された免疫調節特性を有するという点において、天然の配列と比較して本発明の方法に長所を付与するように設計される。
【0089】
本発明は、抗癌ワクチンの成分として有用であり、かつヒト癌抗原PAR−3の発現を特徴とする癌に対して、特異的な免疫エフェクター細胞を増殖させるために有用である、新規合成抗原性ペプチド配列を提供する。ペプチドは、それらが推定のHLA−A2結合ドメイン(アミノ酸1、2、および9)およびT細胞受容体結合(TCR)ドメイン(アミノ酸残基3〜8)において変異を含み、それぞれMHCおよびTCRへのより強固な結合を付与するという点において、自然のエピトープとは異なる。本発明の合成抗原性ペプチドのMHCクラスI分子に対する結合は、当技術分野で既知の方法によって測定することができ、これらには、アルゴリズムに基づく親和性の計算(例えば、パーカー(Parker)ら(1992)、J. Immunol. 149:3580〜3587)、および実験による結合親和性の計算(例えば、タン(Tan)ら、(1997)、J. Immunol. Meth. 209(1):25〜36)が含まれるが、これらに限定されない。例えば、クラスI分子に対するペプチドの相対的結合は、洗浄剤によって可溶化したMHC分子に対する、放射標識標準ペプチドの結合に基づいて測定することができる。例えば、クラスI分子に対するペプチドの相対的結合は、様々な濃度の被験ペプチド(例えば、100 mM〜1nMの範囲)を用いて、洗浄剤で可溶化したMHC分子に対する放射標識標準ペプチドの結合に基づいて、測定することができる。MHCクラスI重鎖およびβ2−ミクログロブリンは、固定濃度(例えば、5nM)の放射標識標準(対照)ペプチド、および様々な濃度の被験ペプチドと共に、室温でプロテアーゼ阻害剤混合物の存在下で適した期間(例えば、2時間〜72時間)、共インキュベートする。対照試験管は、標準ペプチドとMHC分子とを含むが、被験ペプチドを含まない。MHC結合放射活性%はゲル濾過によって決定する。IC50(対照ペプチド結合の50%阻害が起こる被験ペプチドの濃度)を、各ペプチドについて計算する。
【0090】
本発明の合成ペプチドは、「自然の」配列のペプチドより高い親和性でTCRに結合するように設計される。TCRに対する結合親和性を決定するさらなる方法は、当技術分野で既知であり、これらにはアルラマディ(al−Ramadi)ら(1992)、J. Immunol. 155(2):662〜673;およびズーゲル(Zuegel)ら(1998)、J. Immunol. 161(4):1705〜1709に記載される方法が含まれるが、これらに限定されない。
【0091】
さらに「合成抗原性ペプチド」という用語には、選択的に、介在アミノ酸配列ならびにこの配列および配列番号:3,5,7,9,および11を有するポリペプチドを含む本発明の合成抗原性ペプチドの多量体(コンカテマー)が含まれる。本発明はまた、ポリペプチドがヒト癌抗原PAR−3細胞障害性Tリンパ球によって選択的に認識される、これらの配列を含むポリペプチドを提供する。
【0092】
本発明のペプチド配列を含むポリペプチドは、天然のヒト癌抗原PAR−3ポリペプチド配列をコードするポリヌクレオチドの配列を変化させることによって、調製することができる。これは、当技術分野で周知の組換えDNA技術を用いることによって行われる。例えば、改変ポリヌクレオチドが本発明のペプチドをコードするように、ポリヌクレオチド配列に変化を導入するために、天然のヒト癌抗原PAR−3配列をコードする組換えポリヌクレオチドに、部位特異的変異誘発を行ってもよい。
【0093】
本発明のタンパク質およびポリペプチドは、アメリカ、カリフォルニア州フォスターシティのパーキン・エルマー/アプライドバイオシステムズ・インクによって製造された、モデル430Aまたは431Aのような市販の自動ペプチド合成機を用いて、化学合成によって得ることができる。合成されたタンパク質またはポリペプチドを沈殿させて、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によってさらに精製することができる。したがって、本発明はまた、アミノ酸および酵素のようなタンパク質および試薬の配列を提供する段階、ならびにアミノ酸配列を適当な方向および直線的な配列に結合させる段階によって、本発明のタンパク質を化学合成するための過程を提供する。
【0094】
または、タンパク質およびポリペプチドは、下記の宿主系およびベクター系を用いて、本明細書に記載の周知の組換え法法を用いて得ることができる。
【0095】
ペプチド類似体
本発明のペプチドに変化した特性を提供するために、改変を行うことができることは当業者に周知である。本明細書に記載するように、「アミノ酸」という用語は、グリシンおよびDまたはL光学異性体の双方、ならびにアミノ酸類似体およびペプチド模倣体を含む、自然および/または人為的なまたは合成アミノ酸のいずれかを意味する。三つまたはそれ以上のアミノ酸からなるペプチドは一般的に、ペプチド鎖が短ければオリゴペプチドと呼ばれる。ペプチド鎖が長ければ、ペプチドは一般的に、ポリペプチドまたはタンパク質と呼ばれる。
【0096】
本発明のペプチドは、非天然アミノ酸を含むように改変することができる。このように、ペプチドはペプチドに特殊な特性を付与するように、D−アミノ酸、D−およびL−アミノ酸の複合体、ならびに様々な「デザイナー」アミノ酸(例えば、β−メチルアミノ酸、C−α−メチルアミノ酸、N−α−メチルアミノ酸等)を含んでもよい。さらに、特定のカップリング段階に特異的アミノ酸を割付することによって、α−ヘリックス、βターン、βシート、γ−ターン、および環状ペプチドを含むペプチドを作製することができる。一般的にα−ヘリックス二次構造またはランダム二次構造が好ましいと考えられている。
【0097】
さらなる態様において、有用な化学的および構造的特性を付与するペプチドのサブユニットを選択する。例えば、D−アミノ酸を含むペプチドは、インビボでL−アミノ酸特異的プロテアーゼに対して耐性であると考えられる。D−アミノ酸を有する改変化合物は、レトロ−インバーソ(retro−inverso)ペプチドとして本発明のペプチドを産生するために、逆の順序に配置したアミノ酸を用いて合成してもよい。さらに本発明は、新規特性を有するペプチドを調製するために、より明確な構造的特性を有するペプチドを調製する段階、ペプチド模倣体を用いる段階、およびエステル結合のようなペプチド模倣体結合を用いる段階を想定する。もう一つの態様において、還元されたペプチド結合、すなわちR1およびR2がアミノ酸残基または配列である、R1−CH2NH−R2を組み入れるペプチドを作製してもよい。還元型ペプチドは、ジペプチドサブユニットとして導入してもよい。そのような分子は、ペプチド結合の加水分解、例えばプロテアーゼ活性に対して耐性であると考えられる。そのような分子は、代謝的分解またはプロテアーゼ活性に対する耐性のために、インビボでの半減期の増加のような、固有の機能および活性を有するリガンドを提供すると考えられる。さらに、特定の系において束縛された(constrained)ペプチドが増強された機能的活性を示すことは周知である(ルビー(Hruby)(1982)、Life Sciences 31:189〜199およびルビー(Hruby)ら(1990)、Biochem. J. 268:249〜262);本発明は、他の全ての位置で無作為な配列を組み入れる、束縛されたペプチドを産生する方法を提供する。
【0098】
立体配座の束縛を誘導する非古典的アミノ酸
特定の立体配座モチーフを導入するために、以下の非古典的アミノ酸を本発明のペプチドに組み入れてもよい:1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−3−カルボキシレート(カズルニエルスキ(Kazrnierski)ら(1991)、J. Am. Chem. Soc. 113:2275〜2283);(2S,3S)−メチル−フェニルアラニン、(2S,3R)−メチルフェニルアラニン、(2R,3S)−メチル−フェニルアラニン、および(2R,3R)−メチル−フェニルアラニン(カズルニエルスキおよびルビー(KazrnierskiおよびHruby)、(1991)、Tetrahedron Lett. 32(41):5769〜5772);2−アミノテトラヒドロナフタレン−2−カルボン酸(ランディス(Landis)(1989)、アリゾナ大学博士論文);ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−3−カルボキシレート(ミヤケ(Miyake)ら(1989)、J. Takeda Res. Labs. 43:53〜76);ヒスチジンイソキノリンカルボン酸(ゼケル(Zechel)ら(1991)、Int. J. Pep. Protein Res. 38(2):131〜138);およびHIC(ヒスチジン環状尿素)、(ダラニプラガダ(Dharanipragada)ら(1993)、Int. J. Pep. Protein Res. 42(1):68〜77)および((1992)Acta Cryst. Crystal Struc. Comm. 48(IV):1239〜1241)。
【0099】
以下のアミノ酸類似体およびペプチド模倣体を、特定の二次構造を誘導するために、またはそれらにとって有利であるように組み入れてもよい:LL−Acp(LL−3−アミノ−2−プロペニドン−6−カルボン酸)、β−ターン誘導ジペプチド類似体(ケンプ(Kemp)ら(1985)、J. Org. Chem. 50:5834〜5838);β−シート誘導類似体(ケンプ(Kemp)ら(1988)、Tetrahedron Lett. 29:5081〜5082);β−ターン誘導類似体(ケンプ(Kemp)ら(1988)、Tetrahedron Lett. 29:5057〜5060);α−ヘリックス誘導類似体(ケンプ(Kemp)ら(1988)、Tetrahedron Lett. 29:4935〜4938);γ−ターン(ケンプ(Kemp)ら(1989)、J. Org. Chem. 54:109〜115);以下の参考文献によって提供される類似体:ナガイおよびサトウ(NagaiおよびSato)(1985)、Tetrahedron Lett. 26:647〜650;およびディメイオ(DiMaio)ら(1989)、J. Chem. Soc. Perkin Trans、p.1687;Gly−Alaターン類似体(カーン(Kahn)ら(1989)、Tetrahedron Lett. 30:2317);アミド結合同配体(クローンズ(Clones)ら(1985)、Tetrahedron Lett. 29:3853〜3856);テトラゾル(ザブロッキ(Zabrocki)ら(1988)、J. Am. Chem. Soc. 110:5875〜5880);DTC(サマネン(Samanen)ら、(1990)、Int. J. Protein Pep. Res. 35:501〜509);ならびにオルソン(Olson)ら(1990)、J. Am. Chem. Sci. 112:323〜333およびガーベイ(Garvey)ら(1990)J. Org. Chem. 55(3):436において教示される類似体。βターンおよびβバルジ(bulge)の立体配座束縛模倣体、ならびにそれらを含むペプチドは、1995年8月8日にカーン(Kahn)に発行された、米国特許第5,440,013号に記載されている。
【0100】
本発明の合成抗原性ペプチドエピトープは、意図する用途に応じて変更しうる、多様な製剤において用いることができる。
【0101】
本発明の合成抗原性ペプチドエピトープは、様々な他の分子に共有結合、または非共有結合(複合体を形成した)することができ、その本質は特定の目的に応じて変化する可能性がある。例えば、本発明のペプチドは、天然および合成ポリマー、タンパク質、多糖類、ポリペプチド(アミノ酸)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、および脂質を含むがこれらに限定されない高分子担体と共有結合または非共有結合によって複合体を形成することができる。ペプチドはリポソームに導入するために脂肪酸に結合することができる。米国特許第5,837,249号。本発明の合成ペプチドは、その多様なものが当技術分野で既知である、固相支持体と共有結合または非共有結合によって複合体を形成することができる。本発明の合成抗原性ペプチドエピトープは、下記により詳細に説明するように、共刺激分子の存在下または非存在下で、抗原提示マトリクスと結合することができる。
【0102】
タンパク質担体の例には、超抗原、血清アルブミン、破傷風毒素、卵白アルブミン、サイログロブリン、ミオグロブリン、および免疫グロブリンが含まれるがこれらに限定されない。
【0103】
ペプチドタンパク質担体ポリマーは、カルボジイミドのような従来の架橋剤を用いて形成してもい。カルボジイミドの例は、1−シクロヘキシル−3−(2−モルフォリニル−(4−エチル)カルボジイミド(CMC)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、および1−エチル−3−(4−アゾニア−44−ジメチルペンチル)カルボジイミドである。
【0104】
他の適した架橋剤の例は、臭化シアン、グルタルアルデヒドおよび無水コハク酸である。一般的に、ホモ二官能アルデヒド、ホモ二官能エポキシド、ホモ二官能イミドエステル、ホモ二官能N−ヒドロキシスクシニミドエステル、ホモ二官能マレイミド、ホモ二官能ハロゲン化アルキル、ホモ二官能二硫化ピリジル、ホモ二官能ハロゲン化アリール、ホモ二官能ヒドラジド、ホモ二官能ジアゾニウム誘導体、およびホモ二官能光反応性化合物を含む、多くのホモ二官能物質のいずれかを用いてもよい。同様に、ヘテロ二官能化合物、例えば、アミン反応基とスルフヒドリル反応基とを有する化合物、アミン反応基と光反応基とを有する化合物、およびカルボニル反応基とスルフヒドリル反応基とを有する化合物も含まれる。
【0105】
そのようなホモ二官能架橋剤の特定の例には、二官能N−ヒドロキシスクシニミドエステルジチオビス(スクシニミジルプロピオネート)、ジスクシニミジルスベレート、およびジスクシニミジルタータレート;二官能イミドエステルジメチルアジピミデート、ジメチルピメリミデート、およびジメチルスベリミデート;二官能スルフヒドリル反応性架橋剤1,4−ジ−[3’−(2’−ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ブタン、ビスマレイミドヘキサン、およびビス−N−マレイミド−1,8−オクタン;二官能ハロゲン化アリール1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼンおよび4,4’−ジフルオロ−3,3’−ジニトロフェニルスルホネート;ビス[b−(4−アジドサリチルアミド)エチル]ジスルフィドのような二官能光反応性物質;二官能アルデヒドホルムアルデヒド、マロンジアルデヒド、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、およびアジパルデヒド;1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルのような二官能エポキシド;二官能ヒドラジドアジピン酸ジヒドラジド、カルボヒドラジド、およびコハク酸ジヒドラジド;二官能ジアゾニウムo−トリジン、ジアゾ化およびビスジアゾ化ベンジジン;二官能ハロゲン化アルキルN1N’−エチレン−ビス(ヨードアセトアミド)、N1N’−ヘキサメチレン−ビス(ヨードアセトアミド)、N1N’−ウンデカメチレン−ビス(ヨードアセトアミド)と共に、a1a’−ジヨード−p−キシレンスルホン酸およびトリ(2−クロロエチル)アミンのような、ハロゲン化ベンジルおよびハロマスタードがそれぞれ含まれる。
【0106】
タンパク質をペプチドに結合させるために用いてもよい一般的なヘテロ二官能架橋剤の例には、SMCC(スクシニミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート)、MBS(m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシニミドエステル)、SIAB(N−スクシニミジル(4−ヨードアセチル)アミノベンゾエート)、SMPB(スクシニミジル−4−(p−マレイミドフェニル)ブチレート)、GMBS(N−(γ−マレイミドブチリルオキシ)スクシニミドエステル)、MPBH(4−(4−N−マレイミドフェニル)酪酸ヒドラジド)、M2C2H(4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシル−ヒドラジド)、SMPT(スクシニミジルオキシカルボニル−a−メチル−a−(2−ピリジルジチオ)トルエン)、およびSPDP(N−スクシニミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート)が含まれるが、これらに限定されない。
【0107】
架橋剤は、還元的アミノ化によって、アミン基またはヒドラジド基にカルボニル基をカップリングさせることによって行ってもよい。
【0108】
本発明のペプチドはまた、イオン性、吸着性、または生体特異性相互作用による、単量体の非共有結合として処方してもよい。高度に陽性または陰性に荷電した分子を有するペプチドの複合体は、脱イオン水のような低イオン強度の環境下での塩橋形成によって作製されうる。大きな複合体は、多数の陰性および陽性荷電をそれぞれ含むポリ−(L−グルタミン酸)またはポリ−(L−リジン)のような、荷電ポリマーを用いて作製することができる。ペプチドの吸着は、微粒子ラテックスビーズまたは他の疎水性ポリマーのような表面に対して行ってもよく、架橋した、または化学的に重合したタンパク質を有効に模倣する非共有結合によって結合した、ペプチド超抗原複合体を形成する。最後にペプチドは、他の分子間の生体特異的相互作用を用いて、非共有結合によって結合してもよい。例えば、アビジンまたはストレプトアビジンのようなタンパク質に対する、ビオチンの強い親和性を利用して、ペプチド複合体を形成することができる。これらのビオチン結合タンパク質は、溶液中でビオチンと相互作用することができるか、またはもう一つの分子と共有結合することができる四つの結合部位を含む。ウィルチェク(Wilchek)(1988)、Anal. Biochem. 171:1〜32。ペプチドは、タンパク質上で利用可能なアミン基と反応する、D−ビオチン(NHS−ビオチン)のN−ヒドロキシスクシニミジルエステルのような一般的なビオチン化試薬を用いて、ビオチン基を有するように改変することができる。次に、ビオチン結合ペプチドをアビジンまたはストレプトアビジンと共にインキュベートして、大きな複合体を形成することができる。そのようなポリマーの分子量は、アビジンまたはストレプトアビジンに対するビオチン結合ペプチドのモル比を注意深く制御することによって、調節することができる。
【0109】
同様に、診断方法において用いるために、検出可能な試薬と結合させた本明細書に開示のペプチドおよびポリペプチドが、本出願によって提供される。例えば、検出可能に標識したペプチドおよびポリペプチドをカラムに結合させて、抗体の検出および精製のために用いることができる。それらはまた、下記のように抗体を産生するための免疫原としても有用である。
【0110】
本発明のペプチドはまた、滅菌溶液または水溶液のような、様々な液相担体、薬学的に許容される担体、懸濁液、および乳液と組み合わせることができる。非水性溶媒の例には、プロピルエチレングリコール、ポリエチレングリコール、および植物油が含まれる。抗体を調製するために用いる場合、担体にはまた、特異的免疫応答を非特異的に増強するために有用であるアジュバントが含まれうる。当業者は、アジュバントが必要であるか否かを容易に決定して、それを選択することができる。しかし、説明する目的のみのために、適したアジュバントにはフロイントの完全および不完全アジュバント、無機塩、ならびにポリヌクレオチドが含まれるが、これらに限定されない。
【0111】
本発明はさらに、配列(配列番号:3,5,7,9または11)を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、およびこれらのポリヌクレオチドの相補物を提供する。本明細書において用いられるように、「ポリヌクレオチド」という用語は、DNA、RNA、および核酸模倣体を含む。上記の配列およびその相補体の他に、本発明はまたアンチセンスポリヌクレオチド鎖、例えばこれらの配列またはその相補鎖に対するアンチセンスRNAを提供する。配列番号:4、6、8、10、および12に提供される配列、およびファンデルクロール(van der Krol)ら(1988)、BioTechniques 6:958に記載された方法論を用いて、アンチセンスRNAを得ることが可能である。
【0112】
本発明のポリヌクレオチドは、PCRを用いて複製することができる。PCR技術は、米国特許第4,683,195号;第4,800,159号;第4,754,065号;および第4,683,202号の主題であり、「PCR:ポリメラーゼ連鎖反応(PCR:The Polymerase Chain Reaction)」、(マリス(Mullis)ら編、バークハウザー出版、ボストン(1994))およびそこに引用されている文献に記載されている。
【0113】
または当業者は、DNAを複製するために本明細書に記載の配列および市販のDNA合成機を用いることができる。したがって本発明は、ポリヌクレオチドの直線配列、適当なプライマー分子、酵素のような化学物質、および複製のための指示を提供する段階、ならびにヌクレオチドを化学的に複製または適当な方向に連結することによって、ポリヌクレオチドを得る段階により、本発明のポリヌクレオチドを得る方法を提供する。異なる態様において、これらのポリヌクレオチドはさらに単離される。なおさらに、当業者は適した複製ベクターにポリヌクレオチドを挿入して、複製および増幅のためにベクターを適した宿主細胞(原核細胞または真核細胞)に挿入することができる。そのように増幅されたDNAは、当業者に周知の方法によって細胞から単離することができる。この方法によってポリヌクレオチドを得る過程は、そのように得られたポリヌクレオチドと共に本明細書においてさらに提供される。
【0114】
RNAは、適した宿主細胞においてDNAポリヌクレオチドをまず挿入することによって得ることができる。DNAは、任意の適当な方法によって、例えば適当な遺伝子送達媒体(例えば、リポソーム、プラスミド、またはベクター)を用いることによって、またはエレクトロポレーションによって挿入することもできる。細胞が複製して、DNAがRNAに転写されると、RNAは例えば、上記のサムブルック(Sambrook)ら(1989)に記載されるように、当業者に周知の方法を用いて単離することができる。例えば、mRNAは上記のサムブルック(Sambrook)ら(1989)に記載される技法に従って様々な溶解性の酵素または化学溶液を用いて単離するか、または製造業者によって提供される添付の説明書に従って、核酸結合樹脂によって抽出することができる。
【0115】
少なくとも4個の連続するヌクレオチド、より好ましくは少なくとも5個または6個の連続するヌクレオチド、および最も好ましくは少なくとも10個の連続するヌクレオチドを有し、かつ配列番号:3、5、7、9、および11(例えば、配列番号:4、6、8、10、または12)に示すアミノ酸をコードする配列に、配列相補性または相同性を示すポリヌクレオチドは、ハイブリダイゼーションプローブとして有用性を有する。
【0116】
「完全にマッチした」プローブは、特異的ハイブリダイゼーションにとって必要ではないことは当技術分野において既知である。少数の塩基の置換、欠失、または挿入によって得られるプローブ配列におけるわずかな変化は、ハイブリダイゼーション特異性に影響を及ぼさない。一般的に、20%程度の塩基対ミスマッチ(選択的に整列した場合)が容認されうる。好ましくは、上記のmRNAを検出するために有用なプローブは、これまでに特徴づけされた遺伝子に対応するこれまでに同定された配列(上記のように同定された)、または配列番号:1、4、6、8、10、もしくは12に含まれる同等の大きさの相同性領域と少なくとも約80%同一である。より好ましくは、プローブは相同性領域のアラインメント後に、対応する遺伝子配列と85%同一である;さらにより好ましくは90%の同一性を示す。
【0117】
これらのプローブは、これらの細胞を含む様々な細胞または組織を検出またはモニターするためのラジオアッセイ(例えば、サザンおよびノザンブロット分析)において用いることができる。プローブはまた、本発明の一つまたは複数のポリヌクレオチドに対応する遺伝子の発現を検出するための高処理能スクリーニングアッセイにおいて用いられるチップのような固相支持体またはアレイに結合することができる。したがって、本発明は、高処理能スクリーニングにおいて用いるために固相支持体に結合した、配列番号:4、6、8、10、もしくは12、またはこれらの配列の一つの相補体として同定される少なくとも一つのプローブを提供する。
【0118】
本発明のポリヌクレオチドはまた、例えば、宿主細胞へのポリヌクレオチドの形質導入を確認するために、APCにおいて発現された遺伝子または遺伝子転写物を検出するためのプライマーとして役立ちうる。この文脈において、増幅は妥当な信頼性で標的配列を複製することができるプライマー依存的ポリメラーゼを用いる任意の方法を意味する。増幅は、T7 DNAポリメラーゼのような天然または組換えDNAポリメラーゼ、大腸菌DNAポリメラーゼのクレノウ断片、および逆転写酵素によって行ってもよい。プライマーの好ましい長さは、上記のプローブに関して同定されたものと同じである。
【0119】
本発明はさらに、RNA転写のプロモーターに機能的に結合した単離されたポリヌクレオチドと同様に、DNAまたはRNAの複製および/または一過性または安定な発現のための他の調節配列をさらに提供する。本明細書において用いられるように、「機能的に結合した」という用語は、プロモーターがDNA分子から離れて、RNAの転写を指示するように位置することを意味する。そのようなプロモーターの例は、SP6、T4およびT7である。特定の態様において、細胞特異的プロモーターは、挿入されたポリヌクレオチドの細胞特異的発現のために用いられる。停止コドンおよび選択マーカー配列を有し、プロモーターまたはプロモーター/エンハンサーと同様に、DNAの挿入片がそのプロモーターに機能的に結合することができるクローニング部位を含むベクターは、当技術分野で周知であり、市販されている。一般的な方法論およびクローニング戦略に関しては、様々な適したベクターに関するマップ、機能的特性、販売元およびGenEMBLアクセッション番号の参照を載せた、「遺伝子発現技術(Gene Expression Technology)」ゴエッデル(Goeddel)ら、アカデミック出版社(1991)、およびその中に含まれる引用文献、ならびに「ベクター:本質的なデータシリーズ(Vectors:Essential Data Series)」ガセサおよびラムジ(GacesaおよびRamji)、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ、ニューヨーク州(1994)を参照のこと。好ましくは、これらのベクターはインビトロまたはインビボでRNAを転写することができる。
【0120】
これらの核酸を含む発現ベクターは、タンパク質およびポリペプチドを産生するための宿主ベクター系を得るために有用である。これらの発現ベクターは、エピソームとしてまたは染色体DNAの一体化された一部として宿主細胞において複製可能でなければならないという意味である。適した発現ベクターには、プラスミド、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、コスミド等を含むウイルスベクターが含まれる。アデノウイルスベクターは、インビトロおよびインビボの双方でその高レベル発現および細胞の効率的な形質転換のために、インビボで組織に遺伝子を導入するために特に有用である。核酸を、適した宿主細胞、例えば原核細胞または真核細胞に挿入して、宿主細胞が複製すると、タンパク質を組換え的に産生することができる。適した宿主細胞には、ベクターに依存して、周知の方法を用いて構築された哺乳類細胞、動物細胞、ヒト細胞、サル細胞、昆虫細胞、酵母細胞、および細菌細胞が含まれうる。上記のサムブルック(Sambrook)ら(1989)を参照のこと。外因性の核酸を細胞に挿入するためにウイルスベクターを用いることの他に、細菌細胞の形質転換;哺乳類細胞の場合にはリン酸カルシウム沈殿を用いるトランスフェクション;DEAEデキストラン;エレクトロポレーション;またはマイクロインジェクションのような当技術分野で周知の方法によって、核酸を宿主細胞に挿入することができる。この方法論に関しては、上記のサムブルック(Sambrook)ら(1989)を参照のこと。このように、本発明は宿主細胞、例えば、タンパク質、ポリペプチド、または抗体をコードするポリヌクレオチドを含む哺乳類細胞、動物細胞(ラットまたはマウス)、ヒト細胞、または細菌細胞のような原核細胞も同様に提供する。
【0121】
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドを細胞に送達するために(インビボ、エキソビボ、またはインビトロ)適した送達媒体を提供する。本発明のポリヌクレオチドはクローニングまたは発現ベクター内に含まれうる。これらのベクター(特に発現ベクター)を次に、例えば細胞への送達を促進する、および/または細胞への流入を促進しうる、多くの任意の形態を想定して操作することができる。
【0122】
ベクターをインビボまたはエキソビボで遺伝子治療のために用いる場合、複製能のないレトロウイルスまたはアデノウイルスベクターのような薬学的に許容されるベクターが好ましい。本発明の核酸を含む薬学的に許容されるベクターは、挿入されたポリヌクレオチドの一過性または安定な発現のためにさらに改変することができる。本明細書において用いられるように、「薬学的に許容されるベクター」という用語には、分裂する細胞への核酸の選択的な標的指向能および核酸の導入能を有するベクターまたは送達媒体が含まれるがこれらに限定されない。そのようなベクターの例は、ウイルスタンパク質を産生できない点により定義され、感染宿主細胞でのベクターの核酸を妨げる、「複製能のない」ベクターである。複製能のないレトロウイルスベクターの例は、LNL6(ミラー(Miller, A.D.)ら(1989)、BioTechniques 7:980〜990)である。遺伝子マーカーのレトロウイルス媒介遺伝子移入のために複製能のないレトロウイルスを用いる方法論は、十分に確立されている(コレル(Correll)ら、(1989)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:8912;ボーディノン(Bordignon)(1989)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:6748〜6852;カルバー(Culver)K.(1991)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:3155;およびリル(Rill)D.R.(1992)、Blood 79(10):2694〜2700)。
【0123】
本発明のポリヌクレオチドを含むこれらの単離された宿主細胞は、ポリヌクレオチドの組換え的複製のために、かつペプチドの組換え的産生のために有用である。または、細胞は、本明細書に記載の方法において被験者における免疫応答を誘導するために用いてもよい。宿主細胞が抗原提示細胞である場合、それらは、腫瘍浸潤リンパ球のような免疫エフェクター細胞の集団を増殖させるために用いることができ、次に養子免疫治療において有用となる。
【0124】
本発明のポリペプチドと複合体を特異的に形成することができる抗体も同様に本発明によって提供される。「抗体」という用語には、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体が含まれる。抗体には、マウス、ラット、およびウサギ、またはヒト抗体が含まれるがこれらに限定されない。抗体は、ポリペプチドおよびポリペプチドを発現するAPCを同定および精製するために有用である。
【0125】
ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を産生する実験方法は、対応する核酸配列を推定する方法と共に、当技術分野で既知であり、ハーロウおよびレーン(HarlowおよびLane)、(1988)、上記、およびサムブルック(Sambrook)ら、(1989)上記を参照のこと。本発明のモノクローナル抗体は、動物、例えばマウスまたはウサギにタンパク質またはその断片を導入することによって生物学的に産生することができる。動物における抗体産生細胞を単離して骨髄腫細胞またはヘテロ骨髄腫細胞と融合させて、ハイブリッド細胞またはハイブリドーマを作製する。したがって、本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマも同様に提供される。
【0126】
このように、タンパク質またはその断片、および周知の方法を用いて、当業者は、本発明のハイブリドーマ細胞および抗体を産生して、タンパク質またはポリペプチドに対する結合能を有する抗体に関してスクリーニングすることができる。
【0127】
検査するモノクローナル抗体がタンパク質またはポリペプチドに結合すれば、検査する抗体と本発明のハイブリドーマによって提供された抗体とは同等である。同様に、過度の実験を行うことなく、それに対してモノクローナル抗体が正常に反応するタンパク質またはポリペプチドと本発明のモノクローナル抗体の結合を、検査する抗体が妨害するか否かの判定によって、その抗体が本発明のモノクローナル抗体と同じ特異性を有するか否かを判定することも可能である。検査する抗体が、本発明のモノクローナル抗体による結合の減少によって示されるように、本発明のモノクローナル抗体と競合すれば、二つの抗体は同じまたは密接に関連したエピトープに結合する可能性がある。または、それが正常に反応するタンパク質と共に本発明のモノクローナル抗体を予めインキュベートして、検査するモノクローナル抗体の抗原との結合能が阻害されているか否かを判定することができる。検査するモノクローナル抗体が阻害されれば、それはおそらく本発明のモノクローナル抗体と同じ、または密接に関連したエピトープ特異性を有する。
【0128】
「抗体」という用語にはまた、全てのイソ型の抗体が含まれると解釈される。モノクローナル抗体の特定のイソ型は、最初の融合体から直接選択することによって調製することができ、またはステプリュースキー(Steplewski)ら(1985)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:8653、もしくはスパイラ(Spira)ら(1984)、J. Immunol. Meth. 74:307に記載される方法を用いて、クラススイッチ変種を単離するための関連する選択技術を用いて、異なるイソ型のモノクローナル抗体を分泌する親ハイブリドーマから二次的に調製することもできる。
【0129】
本発明はまた、上記のポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の生物活性断片を提供する。これらの「抗体断片」は、その抗原または免疫原との何らかの選択的結合能を保持する。そのような抗体断片には以下が含まれるがこれらに限定されない:
(1)Fab、
(2)Fab’、
(3)F(ab’)2、
(4)Fv、および
(5)SCA。
【0130】
「生物活性抗体断片」の具体例は、抗体のCDR領域である。これらの断片を作製する方法は当技術分野で既知であり、例えばハーロウおよびレーン(HarlowおよびLane)(1988)上記を参照のこと。
【0131】
本発明の抗体はまた、キメラ抗体およびヒト化抗体を作製するために改変することができる(オイ(Oi)ら(1986)、BioTechniques 4(3):214)。キメラ抗体は、抗体の重鎖と軽鎖の様々なドメインが一つ以上の種からのDNAによってコードされる抗体である。
【0132】
本発明のモノクローナル抗体の特異性を有するモノクローナル抗体を分泌する他のハイブリドーマの単離もまた、抗イディオタイプ抗体を作製することによって、当業者は行うことができる(ヘイリン(Heylyn)ら、(1986)、Science 232:100)。抗イディオタイプ抗体は、関係するハイブリドーマによって産生されるモノクローナル抗体上に存在する独自の決定基を認識する抗体である。
【0133】
二つのハイブリドーマのモノクローナル抗体間のイディオタイプ同一性は、二つのモノクローナル抗体が同じエピトープ決定基の認識に関して同じであることを示す。このように、モノクローナル抗体上のエピトープ決定基に対する抗体を用いて、同じエピトープ特異性のモノクローナル抗体を発現する他のハイブリドーマを同定することが可能である。
【0134】
同様に、エピトープを模倣するモノクローナル抗体を産生するために抗イディオタイプ技術を用いることも可能である。例えば、第一のモノクローナル抗体に対して作製された抗イディオタイプモノクローナル抗体は、第一のモノクローナル抗体が結合するエピトープの鏡像である結合ドメインを、超可変領域に有すると考えられる。したがってこの場合、抗イディオタイプモノクローナル抗体は、これらの抗体を産生するための免疫に用いることができると考えられる。
【0135】
本発明において用いられるように、「エピトープ」という用語は、本発明のモノクローナル抗体に対する特異的親和性を有する任意の決定基が含まれることを意味する。エピトープ決定基は通常、アミノ酸または糖側鎖のような分子の化学活性表面群からなり、特異的荷電特徴と共に特定の三次元構造特徴を有する。
【0136】
本発明の抗体は、検出可能な物質または標識に結合することができる。当業者に既知の多くの異なる標識および標識方法がある。
【0137】
抗体を低分子量ハプテンにカップリングさせることは、アッセイの感度を増加させうる。次に、ハプテンを第二の反応によって特異的に検出することができる。例えば、ビオチンのような、特異的抗ハプテン抗体と反応することができるアビジン、ジニトロフェリル、ピリドキサル、およびフルオレセインに反応するハプテンを用いることが一般的である。ハーロウおよびレーン(HarlowおよびLane)(1988)上記を参照のこと。
【0138】
本発明のモノクローナル抗体はまた、多くの異なる担体に結合させることができる。このように、本発明はまた、抗体と活性または不活性なもう一つの物質とを含む組成物を提供する。周知の担体の例には、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然および改変セルロース、ポリアクリルアミド、アガロース、および磁鉄鉱が含まれる。担体の特性は本発明の目的にとって可溶性または不溶性となりうる。当業者は、モノクローナル抗体を結合するための他の適した担体を承知しており、または日常的な実験を行ってそれを確認することができると考えられる。
【0139】
抗体、その断片または抗体を産生する細胞株を含む組成物は、本発明に含まれる。これらの組成物を薬学的に用いる場合、それらは薬学的に許容される担体と組み合わせる。
【0140】
もう一つの態様において、本発明は、MHC分子に結合した本発明の化合物および組成物を送達することを含む免疫応答を誘導する方法を提供する。このように、本発明のポリペプチドは、本明細書に記載の方法を用いて抗原提示細胞にパルスすることができる。抗原提示細胞には、樹状細胞(DC)、単球/マクロファージ、Bリンパ球、または必要なMHC/共刺激分子を発現する他の細胞種が含まれるがこれらに限定されない。下記の方法は、最も強力であるDC、好ましくはAPCに対して主に重点を置いている。ポリペプチドまたはタンパク質を含むこれらの宿主細胞をさらに提供する。
【0141】
MHC分子に結合した本発明のポリペプチドを提示する単離された宿主細胞は、感作された抗原特異的免疫エフェクター細胞の集団を拡大および単離するためにさらに有用である。免疫エフェクター細胞、例えば、細胞障害性Tリンパ球は、APCの表面上のMHC分子に結合したポリペプチドを提示する抗原提示細胞と共に天然の免疫エフェクター細胞を培養することによって得られる。集団は当技術分野で既知の方法、例えばFACS分析またはフィコール勾配を用いて精製することができる。免疫エフェクター細胞と共にそれによって産生される集団を作製して培養する方法にも、同様に本発明者らが貢献しており、本発明である。細胞と薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物は、養子免疫治療において有用である。インビボで投与する前に、免疫エフェクター細胞を、ヒト癌抗原PAR−3を発現する腫瘍細胞、例えば卵巣癌の溶解能に関してインビトロでスクリーニングする。
【0142】
一つの態様において、免疫エフェクター細胞および/またはAPCは遺伝子改変される。標準的な遺伝子移入を用いて、共刺激分子および/または刺激性サイトカインをコードする遺伝子を、免疫エフェクター細胞を拡大する前、同時、または後に挿入することができる。
【0143】
本発明はまた、ポリペプチドに対する免疫応答を誘導する条件で、上記のポリペプチドの有効量を被験者に投与することを含む、被験者における免疫応答を誘導する方法を提供する。ポリペプチドは、組成物において、またはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとして投与することができる。ポリヌクレオチドは、遺伝子送達媒体において、または宿主細胞に挿入することによって投与することができ、次にコードされたポリペプチドを組み換え的に転写、翻訳およびプロセシングする。したがって、薬学的に許容される担体において本発明のポリヌクレオチドを含む単離された宿主細胞は、有効なワクチンレジメのためにアジュバント、サイトカイン、または共刺激分子の適当な有効量と共に組み合わせることができる。一つの態様において、宿主細胞は、樹状細胞のようなAPCである。宿主細胞は、サイトカインおよび/または共刺激分子のいずれかまたは双方の有効量をコードするポリヌクレオチドを挿入することによってさらに改変することができる。
【0144】
本発明の方法は、被験者にサイトカインまたは共刺激分子の有効量を同時投与することによってさらに改変することができる。
【0145】
本発明はまた、任意の上記のタンパク質、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、抗体、およびその断片と、許容される固体または液体担体とを含む組成物を提供する。組成物が薬学的に用いられる場合、それらは診断的および治療的用途のために「薬学的に許容される担体」と組み合わせる。これらの組成物はまた、癌のような疾患の診断および治療のための薬剤を調製するために用いることができる。
【0146】
以下の材料および方法は、本発明、上記の本発明を作製する方法および利用する方法を説明するためであって、これらに制限されない。
【0147】
材料および方法
本発明のポリペプチドの産生
最も好ましくは、本発明の単離されたペプチドは、適当な固相合成技法を用いて合成することができる。ステワードおよびヤング(StewardおよびYoung)「固相ペプチド合成(Solid Phase Peptide Synthesis)」、フリーマントル、サンフランシスコ、カリフォルニア州(1968)。好ましい方法は、メリフィールド法である。メリフィールド(Merrifield、(1967)、Recent Progress in Hormone Res. 23:451)を参照のこと。これらのペプチドの抗原性は、例えば、本明細書に記載のアッセイを用いて簡便に調べてもよい。
【0148】
本発明の単離されたペプチドが得られれば、これをクロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アフィニティ、およびサイズカラムクロマトグラフィー)、遠心、示差溶解度、またはタンパク質精製に関する他の任意の標準的な技術を含む標準的な方法によって精製してもよい。免疫アフィニティクロマトグラフィーの場合、本発明のペプチド、または関連するペプチドに対して作製して、静止相に固定した抗体を含むアフィニティカラムにそれを結合させることによって、エピトープを単離してもよい。
【0149】
または、ヘキサ−His(インビトロジェン社)、マルトース結合ドメイン(ニューイングランドバイオラブス社)、インフルエンザコート配列(コロジエジ(Kolodziej)ら、(1991)、Meth. Enzymol. 194:508〜509)およびグルタチオン−S−トランスフェラーゼのようなアフィニティタグを本発明のペプチドに結合させて、適当なアフィニティカラムを通過させることによって容易に精製することができる。単離したペプチドはまた、タンパク質溶解、核磁気共鳴、およびx線結晶学のような技術を用いて物理的に特徴を調べることができる。
【0150】
例えば、リン酸化、グリコシル化、架橋、アシル化、タンパク質溶解による切断、抗体分子、膜分子または他のリガンドとの結合によって、翻訳の際または翻訳後に異なるように改変された抗原性ペプチドも同様に本発明の範囲に含まれる(ファーガソン(Ferguson)ら(1988)、Ann. Rev. Biochem. 57:285〜320)。
【0151】
樹状細胞を含むAPCの単離、培養、および増殖
以下は、APCを単離するための二つの基本的なアプローチの簡単な説明である。これらのアプローチには、(1)血液から骨髄前駆細胞(CD34+)を単離して、それらを刺激してAPCに分化させること;または(2)末梢血からAPC前駆細胞を回収することを含む。第一のアプローチにおいて、末梢血における循環中のCD34+幹細胞の数を増加させるために、患者を、GM−CSFのようなサイトカインによって処置しなければならない。
【0152】
APCを単離する第二のアプローチは、血液中に既に循環している比較的多数のAPC前駆細胞を回収することである。ヒト末梢血からAPC前駆細胞を単離するこれまでの技法は、メトリザミド勾配および接着/非接着段階(フロイデンサール(Freudenthal, P.S.)ら(1990)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:7698〜7702);パーコール勾配分離(メータ−ダマニ(Mehta−Damani)ら(1994)、J. Immunol. 153:996〜1003);および蛍光活性化細胞選別技術(トーマス(Thomas, R.)ら(1993)、J. Immunol. 151:6840〜6852)のような物理的技法の組み合わせを含む。
【0153】
多数の細胞を互いに分離する技術の一つとして、対向流遠心エラトリエーション(CCE)が知られる。この技術では、細胞を同時に遠心して、絶えず流速が増加している緩衝液の洗浄の流れに置く。緩衝液による絶えず増加している対向流によって、ほぼ細胞の大きさに基づく細胞の分画が分離される。
【0154】
本発明の一つの局面において、APCはマウス、サル、またはヒトのような哺乳類の白血球細胞分画から単離することができる全委任(precommitted)樹状細胞または成熟樹状細胞である(例えば、国際公開公報第96/23060号を参照のこと)。白血球細胞分画は、哺乳類の末梢血から単離することができる。この方法には以下の段階が含まれる:(a)ロイコフォレーシスのような当技術分野で既知の方法によって哺乳類起源から得られた白血球細胞分画を提供する段階;(b)段階(a)の白血球分画を対向流遠心エラトリエーションによって四つまたはそれ以上の小分画に分離する段階;(c)細胞をカルシウムイオノフォア、GM−CSFとIL−13、またはGM−CSFとIL−4に接触させることによって、段階(b)からの一つまたは複数の分画における単球の樹状細胞への変換を刺激する段階、(d)段階(c)からの樹状細胞に富む分画を同定する段階;および(e)段階(d)の濃縮分画を好ましくは約4℃で回収する段階。樹状細胞濃縮分画を同定する一つの方法は、蛍光活性化細胞選別である。白血球分画を、組換え(rh)rhIL−12、rhGM−CSF、またはrhIL−4のような他のサイトカインの存在下でカルシウムイオノフォアによって処置することができる。白血球分画の細胞を緩衝液において洗浄して、Ca++/Mg++不含培地に浮遊させてから分離段階を行う。白血球分画はロイコフォレーシスによって得ることができる。樹状細胞は、以下のマーカー:HLA−DR、HLA−DQ、またはB7.2の少なくとも一つが存在することと、以下のマーカー:CD3、CD14、CD16、56、57、およびCD19、20が同時に存在しないことによって同定することができる。これらの細胞表面マーカーに対する特異的なモノクローナル抗体は市販されている。
【0155】
より具体的には、本方法では、ロイコフェレーシスから白血球と血小板に富む分画を回収して、これを対向流遠心エラトリエーション(CCE)によってさらに分画する必要がある(アブラハムセン(Abrahamsen)T.G.ら、(1991)、J. Clin. Apheresis. 6:48〜53)。細胞試料を特殊なエラトリエーションローターに入れる。次に、ローターを例えば3000 rpmの一定速度で遠心する。ローターが所望の速度に達すれば、加圧空気を用いて細胞の流速を制御する。エラトリエーターにおける細胞は、同時遠心と絶えず流速が増加する緩衝液の洗浄の流れとを受ける。これによって、細胞の大きさの差にほぼ基づく、しかしそれのみではない分画細胞分離が得られる。
【0156】
APCの質の制御、より詳しくはDC回収と培養におけるその活性化の成否の確認は、単球、および樹状細胞亜集団の双方のみならず可能性がある混入Tリンパ球をモニターする同時多色FACS分析技術に依存する。これは、DCが以下のマーカーを発現しないという事実に基づく:CD3(T細胞);CD14(単球);CD16、56、57(NK/LAK細胞);CD19、20(B細胞)。同時に、DCは血液中を循環する際に、大量のHLA−DR、有意なHLA−DQおよびB7.2(しかしB7.1はほとんどまたは全く発現しない)を発現する(それらは他にLeu M7およびM9、単球および好中球によっても同様に発現される骨髄マーカーを発現する)。
【0157】
死細胞を分析するための第三の発色試薬、ヨウ化プロピジウム(PI)と組み合わせると、全ての細胞亜集団の陽性同定が可能となる(表1を参照のこと)。
【0158】
【表1】新鮮な末梢細胞亜集団の FACS 分析
さらに分析するために追加のマーカーを代用することができる:
色#1:CD3のみ、CD14のみ等;Leu M7またはLeu M9;抗クラスI等。
色#2:HLA−DQ、B7.1、B7.2、CD25(IL2r)、ICAM、LFA−3等。
【0159】
回収時のFACS分析の目標は、DCが予想される分画中で濃縮されることを確認すること、好中球の混入をモニターすること、および適当なマーカーが発現されることを確認することである。ヒト末梢血から、臨床応用に適した濃縮DCをこのように迅速に大量に回収することは、品質管理に関して先に記述した分析的FACS技術に完全に依存する。必要であれば、成熟DCを「カクテル陰性」細胞に関する蛍光選別によって、この時点で単球から直ちに分離することができる。下記に詳細に説明するように、単球自身は培養においてDCまたは機能的DC様細胞になおも分化することができるために、DCを単球から日常的に分離する必要はない可能性がある。
【0160】
回収すれば、DC濃縮/単球APC分画(通常150〜190)をプールして、今後使用するために凍結保存することができるか、または直ちに短期間培養に入れることができる。
【0161】
または、樹状細胞を上方制御(活性化する)して、単球を活性化樹状細胞表現型に変換する方法が報告されている。この方法は、単球を活性化樹状細胞に変換するために、培養培地へのカルシウムイオノフォアの添加を伴う。カルシウムイオノフォアA23187を例えば24〜48時間の培養期間の最初に加えると、均一な活性化が起こり、プールされた「単球プラスDC」分画が樹状細胞表現型に変換された:特徴的に、活性化集団は、等しくCD14(Leu M3)陰性となり、HLA−DR、HLA−DQ、ICAM−1、B7.1およびB7.2を上方制御する。さらに、この活性化バルク集団は、さらに精製される少数の基礎としても機能する。
【0162】
サイトカインの特定の組み合わせは、カルシウムイオノフォアによって得られる活性化/変換を首尾よく増幅(または部分的に置換)するために用いられている:これらのサイトカインには、精製または組換え(「rh」)rhGM−CSF、rhIL−2、およびrhIL−4が含まれるがこれらに限定されない。それぞれのサイトカインは、単独で投与すると最適な上方制御には不適当である。
【0163】
APCに対する抗原の提示
免役する目的のために、抗原性ペプチド(3、5、7、9、および11)は、タンパク質/ペプチドとして、またはタンパク質/ペプチドをコードするcDNAの形で抗原提示細胞に送達することができる。抗原提示細胞(APC)は、樹状細胞(DC)、単球/マクロファージ、Bリンパ球、または必要なMHC/共刺激分子を発現する他の細胞種からなりうる。下記の方法は、最も強力なDC、好ましくはAPCに主に焦点を当てる。
【0164】
パルスは、APCを、本発明の抗原性タンパク質またはペプチドに曝露することによって、インビトロ/エキソビボで行われる。タンパク質またはペプチドは1〜10 μmの濃度で約3時間APCに加える。次に、パルスしたAPCを静脈内、皮下、鼻腔内、筋肉内、または腹腔内投与経路を通して宿主に投与することができる。
【0165】
タンパク質/ペプチド抗原はまた、静脈内、皮下、鼻腔内、筋肉内、または腹腔内投与経路を通してアジュバントと共にインビボで送達することができる。
【0166】
パグリア(Paglia)ら(1996、J. Exp. Med. 183:317〜322)は、インビトロでタンパク質全体と共にインキュベートしたAPCが、MHCクラスI拘束(restricted)CTLによって認識されること、およびこれらのAPCで動物を免疫すると、インビボで抗原特異的CTLが産生されることを示した。さらに、DCのようなAPCのサイトゾルにおいて抗原を発現させる、いくつかの異なる技術が説明されている。これらには、(1)腫瘍から単離されたRNAのAPCへの導入、(2)抗原の内因性発現を誘導するための組換えベクターによるAPCの感染、および(3)リポソームを用いた、腫瘍抗原のDCサイトゾルへの導入が含まれる。(ボクズコウスキー(Boczkowski, D.)ら、(1996)、J. Exp. Med. 184:465〜472;ロウス(Rouse)ら(1994)、J. Virol. 68:5685〜5689;およびネイア(Nair)ら(1992)、J. Exp. Med. 175:609〜612を参照のこと)。
【0167】
フォスター抗原提示細胞
フォスター抗原提示細胞は標的細胞として特に有用である。フォスターAPCは、細胞表面MHCクラスI分子と内因性ペプチドとの結合を制限する抗原プロセシング経路に変異を含む、T2と呼ばれるヒト細胞株174xCEM.T2に由来する(ツウェリンク(Zweerink)ら(1993)、J. Immunol. 150:1763〜1771)。これは、MHCクラスI拘束CD8+ CTLに抗原を提示するために必要な、遺伝子TAP1、TAP2、LMP1、およびLMP2を含む、MHCクラスII領域における大きなホモ接合欠失のためである。実質的に、「空の」MHCクラスI分子のみがこれらの細胞の表面に提示される。培養培地に加えられた外因性ペプチドは、ペプチドが対立遺伝子特異的結合モチーフを含むならば、これらのMHC分子に結合する。これらのT2細胞は、本明細書において「フォスター」APCと呼ぶ。それらは、抗原を提示するために本発明と組み合わせて用いることができる。
【0168】
T2細胞に特異的な組換えMHC対立遺伝子を形質導入すると、MHC拘束プロフィールの再指示が可能になる。組換え対立遺伝子に合わせて作製されたライブラリーは、結合残基が内因性対立遺伝子との有効な結合を妨げるため、それらによって選択的に提示されると考えられる。
【0169】
MHC分子の高レベル発現によって、APCはCTLに対してより目立つようになる。強力な転写プロモーターを用いたT2細胞における、関係するMHC対立遺伝子の発現によって、より反応性のAPCが得られる(細胞表面上でのより高い濃度の反応性MHC−ペプチド複合体による可能性が最も高い)。
【0170】
免疫原性アッセイ
本発明のリガンドの免疫原性は、下記に例示するものを含むがこれらに限定されない、周知の方法論によって決定することができる。一つの態様において、そのような方法論は、対応する天然のリガンドと本発明の改変リガンドとを比較するために用いてもよい。例えば改変リガンドは、以下のアッセイのいずれか一つにおいて天然のリガンドの活性と同程度であれば、「より活性である」と見なされると考えられる。いくつかの目的に関して、すなわち、治療および/または診断目的のために、当業者はもう一つの免疫原性リガンドより高い活性を示す、免疫原性リガンドを選択すると考えられる。しかし適応によっては、天然のリガンドと同等である免疫原性リガンドを用いることが適している。他の状況では、より活性が弱い免疫原性リガンドを利用することが望ましいかも知れない。そのような活性レベルは、免疫原性レベルと正の相関をすることが示唆されている。
【0171】
1. 51 Cr− 放出溶解アッセイ
ペプチドパルス51Cr−標識標的の抗原特異的T細胞による溶解を、天然のまたは改変リガンドのいずれかによってパルスした、標的細胞に関して比較することができる。機能的に増強されたリガンドは、時間の関数としてより大きな標的溶解を示すと考えられる。溶解の速度論と共に、固定時間(例えば、4時間)での全標的溶解を用いて、リガンドの性能を評価してもよい(ウェア(Ware)C.F.ら(1983)、J. Immunol. 131:1312)。
【0172】
2.サイトカイン放出アッセイ
リガンドパルス標的と接触させた場合にT細胞によって分泌されるサイトカインの種類および量の分析は、機能的活性の測定となりうる。サイトカインは、サイトカイン産生の速度および全量を決定するためにELISAまたはELISPOTアッセイによって測定することができる(フジハシ(Fujihashi)K.ら、(1993)、J. Immunol. Meth. 160:181;タンケイおよびキリオン(Tanquay, S.およびKillion, J.J.)、(1994)、Lymphokine Cytokine Res. 13:259)。
【0173】
3.インビトロ T 細胞学習
本発明のリガンドは、正常なドナーまたは患者に由来するPBMCからのリガンド反応性T細胞集団の誘発能に関して、対応する天然のリガンドと比較することができる。この系において、誘発されたT細胞は、溶解活性、サイトカイン放出、ポリクローン性、および天然のリガンドに対する交叉反応性に関して調べることができる(パークハースト(Parkhurst)M.R.ら、(1996)、J. Immunol. 157:2539)。
【0174】
4.トランスジェニック動物モデル
本発明のリガンドまたは天然のリガンドのいずれかをHLAトランスジェニックマウスにワクチン接種して、誘導された免疫応答の性質および程度を決定することによって、免疫原性をインビボで評価することができる。または、hu−PBL−SCIDマウスモデルは、ヒトPBLの養子移入によってマウスにおけるヒト免疫系の再構築を可能にする。これらの動物は、リガンドをワクチン接種して、先に述べたように免疫応答に関して分析してもよい(シライ(Shirai)M.ら(1995)、J. Immunol. 154:2733;モシエ(Mosier)D.E.ら(1993)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:2443)。
【0175】
5.増殖
T細胞は、反応性リガンドに反応して増殖すると考えられる。増殖は、例えば3H−チミジンの取り込みを測定することによって、定量的にモニターすることができる(カルソ(Caruso)A.ら、(1997)、Cytometry 27:71)。
【0176】
6.四量体染色
MHC四量体は、個々のリガンドをローディングして、適当なエフェクターT細胞集団との相対的結合能に関して調べることができる(アルトマン(Altman)J.D.ら(1996)、Science 274(5284):94−96。
【0177】
7.MHC 安定化
T2細胞のような特定の細胞株をHLA結合リガンドに曝露すると、細胞表面上のMHC複合体の安定化が起こる。細胞表面上のMHC複合体の定量は、安定化されるHLA対立遺伝子に関するリガンドの親和性と相関している。このように、この技術は、リガンドエピトープの相対的HLA親和性を決定することができる(スツバー(Stuber)G.ら、(1995)、Int. Immunol. 7:653)。
【0178】
8.MHC 競合
参照リガンドおよびその同種のT細胞エフェクターの機能的活性をリガンドが妨害する能力は、リガンドがどれほどMHC結合に関して競合できるかの尺度である。阻害の相対レベルの測定は、MHC親和性の指標である(フェルトカンプ(Feltkamp)M.C.ら(1995)、Immunol. Lett. 47:1)。
【0179】
9.霊長類モデル
最近記載されたヒト以外の霊長類(チンパンジー)モデル系は、HLA拘束リガンドのインビボ免疫原性をモニターするために利用することができる。チンパンジーは、ヒトMHC分子と重なり合うMHCリガンド特異性を共有し、このため相対的インビボ免疫原性に関して、HLA拘束リガンドを調べることができる(ベルトーニ(Bertoni)R.ら(1998)、J. Immunol. 161:4447)。
【0180】
10.TCR シグナル伝達事象のモニタリング
いくつかの細胞内シグナル伝達事象(例えば、リン酸化)は、MHCリガンド複合体によるTCR関与の成功に関係している。これらの事象の定量的および定性的分析は、リガンドがTCR関与を通してエフェクター細胞を活性化する相対的な能力に相関している(サラザー(Salazar)E.ら(2000)、Int. J. Cancer 85:829;イサコフ(Isakov)N.ら(1995)、J. Exp. Med. 181:375)。
【0181】
免疫エフェクター細胞の増殖
本発明は、これらのAPCを利用して抗原特異的免疫エフェクター細胞の濃縮集団の産生を刺激する。抗原特異的免疫エフェクター細胞は、APCを犠牲にして増殖し、APCは培養において死滅する。未経験の免疫エフェクター細胞が他の細胞によって感作される過程は、クーリー(Coulie)((1997)、Molec. Med. Today 3:261〜268)に本質的に記載されている。
【0182】
上記のように調製したAPCを未経験の免疫エフェクター細胞と混合する。好ましくは、細胞をサイトカイン、例えばIL−2の存在下で培養してもよい。樹状細胞はIL−12のような強力な免疫刺激サイトカインを分泌するため、増大の最初およびその後の回のあいだに追加のサイトカインを加える必要はないかも知れない。いずれにせよ、培養条件は、抗原特異的免疫エフェクター細胞が、APCよりかなり速い速度で増大する(すなわち増殖する)条件である。抗原特異的細胞の集団をさらに増殖させるために、APCと選択的サイトカインの多数回の注入を行うことができる。
【0183】
一つの態様において、免疫エフェクター細胞はT細胞である。異なる態様において、免疫エフェクター細胞は、例えば、IL−2、IL−11、またはIL−13をコードする導入遺伝子の形質導入によって遺伝子改変することができる。導入遺伝子をインビトロ、エキソビボ、およびインビボで導入する方法は、当技術分野で周知である。サムブルック(Sambrook)ら(1989)上記を参照のこと。
【0184】
遺伝子改変において有用なベクター
一般的に、本発明において用いられる細胞の遺伝子改変は、異種または改変抗原をコードする、ポリペプチドまたは導入遺伝子を含むベクターを導入することによって得られる。非ウイルス系と共にウイルス系を含む、多様な異なる遺伝子移入ベクターを用いることができる。本発明の遺伝子改変において有用なウイルスベクターには、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクターおよびアデノ−レトロウイルスキメラベクターが含まれるが、これらに限定されない。APCおよび免疫エフェクター細胞は、下記の方法を用いて、または当技術分野で既知の他の任意の適当な方法によって、改変することができる。
【0185】
組換えアデノウイルスベクターまたはアデノ随伴ウイルスベクターの構築
本発明の遺伝子改変において有用なアデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルスベクターは、当技術分野で既に教示された方法に従って産生してもよい。例えば、カールソンら(Karlsson)(1992)、EMBO J. 5:2377);カーター(Carter、(1992)、Curr. Op. Biotechnol. 3:533〜539;ムジズカ(Muzcyzka)(1992)、Current Top. Microbiol. Immunol. 158:97〜129;「遺伝子のターゲティング:実践アプローチ(Gene Targeting:A Practical Approach)」(1992)、A.L.ジョイナー(Joyner)編、オックスフォード大学出版、ニューヨーク州)を参照のこと。いくつかの異なるアプローチが実施可能である。ヘルパー非依存性複製欠損ヒトアデノウイルス系が好ましい。
【0186】
ヒトアデノウイルス5に基づく組換えアデノウイルスベクター(McGrory, W.T.ら、(1988)Virology 163:614〜617)は、アデノウイルスゲノムから必須の初期遺伝子(通常、E1A/E1B)が欠失しており、したがって、イントランスで欠失している遺伝子産物を提供する、許容性の細胞株において増殖させなければ複製することができない。欠失しているアデノウイルスゲノム配列の代わりに、関係する導入遺伝子を、複製欠損アデノウイルスに感染した細胞においてクローニングおよび発現することができる。アデノウイルスに基づく遺伝子移入では、宿主ゲノムへの導入遺伝子の組み込みが起こらず(宿主DNAに導入遺伝子が組み込まれるのは、アデノウイルス媒介トランスフェクションの0.1%未満である)、したがって、安定ではないが、アデノウイルスベクターはより高い力価で増殖して、非複製細胞をトランスフェクトすることができる。アデノウイルスE1A/E1B遺伝子によって形質転換した、ヒト胎児腎細胞であるヒト293細胞は、有用な許容性細胞株の典型である。しかし、複製欠損アデノウイルスベクターがその中で増殖することができる、HeLa細胞を含む他の細胞株を用いることができる。
【0187】
本発明の方法において用いることができるアデノウイルスベクターおよび他のウイルスベクターを記載するさらなる引用文献には、以下が含まれる:ホルビッツ(Horwitz, M.S.、「アデノウイルス科とその複製(Adenoviridae And Their Replication)」、フィールズ(Fields)B.ら編、Virology 第2巻、レイブン出版、ニューヨーク州、1679〜1721頁(1990);グラハム(Graham)B.ら、「分子生物学の方法(Methods in Molecular Biology)」、第7巻、「遺伝子移入と発現プロトコール(Gene Transfer and Expression Protocols)」、ミュレイ(Muray, E.)編、ヒュマナ出版、クリフトン、ニュージャージー州(1991)の109〜128頁;ミラー(Miller)N.ら、(1995)FASEB J. 9:190〜199);シュレイアー(Schreier, H.、(1994)、Pharmaceutica Acta Helvetiae 68:145〜159:シュナイダーおよびフレンチ(SchneiderおよびFrench、(1993)、Circulation 88:1937〜1942);キュリエル(Curiel)D.T.ら、(1992)、Hum. Gene Ther. 3:147〜154;グラハム(Graham)F.L.ら、国際公開公報第95/00655号(1995年1月5日);ファルク−ペダーセン(Falck−Pedersen)E.S.、国際公開公報第95/16772号(1995年6月22日);デネフル(Denefle)P.ら、国際公開公報第95/23867号(1995年9月8日);ハッダダ(Haddada)H.ら、国際公開公報第94/26914号(1994年11月24日);ペリカウデ(Perricaudet)M.ら、国際公開公報第95/02697号(1995年1月26日);ザン(Zhang)W.ら、国際公開公報第95/25071号(1995年10月12日)。多様なアデノウイルスプラスミドも同様に例えば、オンタリオ州トロントのマイクロビクスバイオシステムズ社(例えば、マイクロビクス製品情報シート:アデノウイルスベクター構築のためのプラスミド、1996年を参照のこと)を含む販売元から入手できる。同様に、遺伝子改変のために用いることができるアデノ−レトロウイルスキメラベクターの構築および使用に関して記述している、バイル(Vile)ら、(1997)、Nature Biotechnology 15:840〜841);およびフェングら(Feng、(1997)、Nature Biotechnology 15:866〜870)による論文を参照のこと。
【0188】
本発明の方法において用いることができるAAVベクターを記述するさらなる参考文献には、以下が含まれる:カーター(Carter)B.、「パルボウイルスハンドブック(Handbook Of Parvoviruses)」、第I巻169〜228頁、1990;バーンズ(Berns、「ウイルス学(Virology)」、1743〜1764頁(レイブン出版、1990);カーター(Carter)B.、(1992)、Current Opin. Biotechnol. 3:533〜539;ムジズカ(Muzcyzka)、(1992)、Current Topics in Micro. and Immunol. 158:92〜129;フロッテ(Flotte)T.R.ら、(1992)、Am. J. Respir. Cell Mol. Biol. 7:349〜356;チャタリー(Chatterjee)ら、(1995)、Ann. NY Acad. Sci. 770:79〜90;フロッテ(Flotte)T.R.ら、国際公開公報第95/13365号(1995年5月18日);トレンペ(Trempe)J.P.ら、国際公開公報第95/13392号(1995年5月18日);コチン(Kotin)R.、(1994)Hum. Gene Ther. 5:793〜801);フロッテ(Flotte)T.R.ら、(1995)、Gene Therapy 2:357〜362;アレン(Allen)J.M.、国際公開公報第96/17947号(1996年6月13日);およびデュ(Du)ら(1996)、Gene Therapy 3:254〜261。
【0189】
APCは、関連するポリペプチドをコードするウイルスベクターによって形質導入することができる。最も一般的なウイルスベクターには、ワクシニアおよび鶏痘ウイルス(ブロンテ(Bronte)ら、(1997)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:3183〜3188;キム(Kim)ら、(1997)、J. Immunother. 20:276〜286)のような組換えポックスウイルスが含まれ、好ましくはアデノウイルス(アーサー(Arthur)ら、(1997)、J. Immunol. 159:1393〜1403;ワン(Wang)ら(1997)、Human Gene Therapy 8:1355〜1363;ヒュアン(Huang)ら、(1995)、J. Virol. 69:2257〜2263)が含まれる。ヒトAPCの形質導入のためにレトロウイルスも同様に用いてもよい(マリン(Marin)ら(1996)、J. Virol. 70:2957〜2962)。
【0190】
インビトロ/エキソビボでヒトDCを、最少量の血清不含培地において感染多重度(MOI)500で、アデノウイルス(Ad)ベクターに16〜24時間曝露すると、DCの90〜100%でて導入遺伝子の発現を確実に生じる。DCまたは他のAPCの形質導入効率は、発現される腫瘍抗原に対して特異的な蛍光抗体を用いて、免疫蛍光によって評価することができる(キム(Kim)ら、(1997)、J. Immunother. 20:276〜286)。または抗体は、基質と反応すると着色産物を生じる酵素(例えば、HRP)と結合させることができる。APCによって発現される抗原性ポリペプチドの実際の量は、ELISAによって評価することができる。
【0191】
形質導入したAPCは、その後静脈内、皮下、鼻腔内、筋肉内、または腹腔内送達経路によって宿主に投与することができる。
【0192】
DCまたは他のAPCのインビボ形質導入は、静脈内、筋肉内、鼻腔内、腹腔内、または皮下送達を含む異なる経路によって、Ad(または他のウイルスベクター)の投与によって行うことができる。好ましい方法は、総量約1×1010〜1×1012 i.u.を用いる多数の部位でのAdベクターの皮下送達である。インビボ形質導入レベルは、発現されるAPCマーカーとTAAに対する抗体による共染色によっておおよそ評価することができる。染色技法は、投与部位からの生検試料、またはAPC(特にDC)が遊走している可能性がある、排液リンパ節もしくは他の臓器からの細胞について行うことができる(コンドン(Condon)ら(1996)、Nature Med. 2:1122〜1128およびワン(Wan)ら、(1997)、Hum. Gene Ther. 8:1355〜1363)。注射部位または形質導入されたAPCが遊走する可能性がある他の臓器において発現される抗原の量は、組織ホモジネートに対するELISAによって評価することができる。
【0193】
ウイルス遺伝子送達はより効率的であるが、DCはまた、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、または陽イオン脂質/プラスミドDNA複合体のような、非ウイルス遺伝子送達法によって、インビトロ/エキソビボで形質導入することができる(アーサー(Arthur)ら、(1997)、Cancer Gene Ther. 4:17〜25)。次に、形質導入されたAPCは、静脈内、皮下、鼻腔内、筋肉内、または腹腔内送達経路によって宿主に投与することができる。
【0194】
DCまたは他のAPCのインビボ形質転換は、静脈内、筋肉内、鼻腔内、腹腔内、または皮下投与経路によって送達される、陽イオン脂質/プラスミドDNA複合体の投与によって、おそらく行うことができる。遺伝子銃送達または裸のプラスミドDNAの皮膚への注入によっても、DCが形質転換される(コンドン(Condon)ら(1996)、Nature Med. 2:1122〜1128;ラズ(Raz)ら、(1994)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:9519〜9523)。プラスミドDNAの筋肉内送達はまた、免疫のために用いてもよい(ロサト(Rosato)ら、(1997)、Hum. Gene Ther. 8:1451〜1458)。
【0195】
形質転換効率および導入遺伝子発現レベルは、ウイルスベクターに関して上記のように評価することができる。
【0196】
養子免疫治療とワクチン
本発明の抗原特異的免疫エフェクター細胞の増殖集団も同様に、養子免疫治療法において、およびワクチンとして用いられる。
【0197】
養子免疫治療は、一つの局面において、未経験の免疫エフェクター細胞を上記のようにAPCと共に培養することによって、感作された抗原特異的免疫エフェクター細胞の実質的に純粋な集団を、被験者に投与する段階を含む。好ましくは、APCは樹状細胞である。
【0198】
一つの態様において、本明細書に記載の養子免疫治療方法は自己由来である。この場合、APCは一人の被験者から単離した親細胞を用いて作製する。増殖した集団はまた、その被験者から単離されたT細胞を用いる。最後に、抗原特異的細胞の増殖集団を同じ患者に投与する。
【0199】
さらなる態様において、APCまたは免疫エフェクター細胞は、IL−2または共刺激分子のような、刺激性サイトカインの有効量と共に投与する。
【0200】
本明細書において、その意図する目的に関して有効であると同定された作用物質は、ヒト癌腫瘍抗原PAR−3を発現する腫瘍を有する被験者と同様に、そのような腫瘍に感受性があるかまたは発症する危険性を有する個体に投与することができる。物質をマウス、ラット、またはヒト患者のような被験者に投与する場合、物質を薬学的に許容される担体に加えて、全身または局所的に被験者に投与することができる。治療から利益が得られうる患者を決定するために、腫瘍の退縮をアッセイすることができる。治療量は経験的に決定して、治療すべき病態、治療すべき被験者、ならびに治療の有効性および毒性に応じて変化すると考えられる。
【0201】
インビボでの投与は、1回の投与で、治療の過程を通して連続的に、または間欠的に行うことができる。最も有効な手段および投与用量を決定する方法は、当業者に周知であり、治療に用いられる組成物、治療の目的、治療される標的細胞、および治療される被験者に応じて変化すると考えられる。1回または多数回の投与を、治療する医師によって選択された用量レベルおよび様式で行うことができる。適した用量製剤および物質を投与する方法は下記に見出されうる。
【0202】
本発明の作用物質および組成物は、薬学的組成物における活性成分のように、従来の方法に従って投与することによって、医薬品の製造ならびにヒトおよび他の動物の治療のために用いることができる。
【0203】
より詳細には、本明細書において活性成分であると呼ばれる本発明の作用物質はまた、鼻腔内、局所(経皮、エアロゾル、口腔内、舌下を含む)、非経口(皮下、筋肉内、静脈内、および皮内を含む)ならびに肺内経路を含む、任意の適した経路によって治療のために投与してもよい。同様に、好ましい経路はレシピエントの状態および年齢、ならびに治療される疾患に応じて変化すると考えられる。
【0204】
先の説明および実施例は、当技術分野の単なる説明と解釈される。当業者に明らかであるように、様々な変更を上記に行ってもよく、それらも本発明の趣旨および範囲に含まれうる。
Claims (38)
- アミノ酸の700、701、702、704、および706位が、それぞれF、L、T、EおよびMである、配列番号:2のアミノ酸配列を含むペプチド。
- アミノ酸の700、701、702、704、705、および706位が、それぞれF、L、T、E、A、RおよびSである、配列番号:2のアミノ酸配列を含むペプチド。
- アミノ酸の700、701、702、704、705、および706位が、それぞれF、L、D、E、I、MおよびRである、配列番号:2のアミノ酸配列を含むペプチド。
- アミノ酸の700、701、702、704、705、706および707位が、それぞれF、L、T、E、I、TおよびFである、配列番号:2のアミノ酸配列を含むペプチド。
- 配列番号:3のアミノ酸を含むアミノ酸配列をコードする、ポリヌクレオチド。
- 配列番号:5のアミノ酸を含むアミノ酸配列をコードする、ポリヌクレオチド。
- 配列番号:7のアミノ酸を含むアミノ酸配列をコードする、ポリヌクレオチド。
- 配列番号:9のアミノ酸を含むアミノ酸配列をコードする、ポリヌクレオチド。
- 配列番号:11のアミノ酸を含むアミノ酸配列をコードする、ポリヌクレオチド。
- 請求項6〜9のいずれか一項記載のペプチドをコードする、ポリヌクレオチド。
- 請求項1〜5のいずれか一項記載の化合物を特異的に認識し、かつ結合する抗体。
- 請求項1〜5のいずれか一項記載の化合物の有効量を、被験者に送達する段階を含む、被験者における免疫応答を誘導する方法。
- 化合物がMHC分子と共に(in the context of an MHC molecule)送達される、請求項17記載の方法。
- MHC分子が抗原提示細胞の表面上に化合物を提示する、請求項17記載の方法。
- 化合物が該化合物をコードするポリヌクレオチドとして送達される、請求項17記載の方法。
- 請求項16記載の抗体の有効量を、被験者に投与する段階を含む、免疫治療方法。
- MHC分子と共に請求項1〜5のいずれか一項記載の化合物を提示する抗原提示細胞の存在下で、該抗原提示細胞を犠牲にして、インビトロまたはインビボで産生される、免疫エフェクター細胞。
- 請求項22記載の免疫エフェクター細胞の有効量を投与する段階を含む、養子免疫治療の方法。
- 免疫原性リガンドに結合した生物活性免疫グロブリンの可変ドメインをさらに含む、請求項24記載の組成物。
- 免疫原性リガンドに結合したMHC分子をさらに含む、請求項24記載の組成物。
- 免疫原性リガンドが共有結合する、請求項24記載の組成物。
- 免疫原性リガンドに共有結合した作用物質をさらに含み、該作用物質が抗原提示細胞に該免疫原性リガンドを標的指向させることができる、請求項24記載の組成物。
- 抗原提示細胞が樹状細胞である、請求項28記載の組成物。
- MHCクラスII結合ヘルパーペプチドをさらに含む、請求項24記載の組成物。
- 担体をさらに含む、請求項24〜30のいずれか一項記載の組成物。
- 担体が薬学的に許容される担体である、請求項31記載の組成物。
- 宿主細胞が抗原提示細胞であって、かつ免疫原性リガンドが該細胞の表面に提示される、請求項33記載の宿主細胞。
- 抗原提示細胞が樹状細胞である、請求項34記載の宿主細胞。
- 請求項33〜35のいずれか一項記載の宿主細胞を含む、組成物。
- 担体が薬学的に許容される担体である、請求項36記載の組成物。
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