JP2004503589A - E−メタニコチンのジアシル酒石酸塩を含有する組成物 - Google Patents
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Abstract
治療を要する患者にE−メタニコチンの2,3−ジアシル酒石酸塩である組成物を投与することにより中枢神経系疾患等の病態及び疾患をもつか又はその恐れのある患者を治療する。
Description
【0001】
発明の背景
本発明は医薬組成物、特にニコチン様コリン作動性受容体に作用することが可能な化合物を含む医薬組成物に関する。より具体的には、本発明は例えば特定ニコチン受容体サブタイプのアゴニストとしてニコチン様コリン作動性受容体を活性化することが可能な化合物の塩に関する。本発明は多種多様の病態及び疾患、特に中枢及び自律神経系障害に関連する病態及び疾患の治療方法にも関する。
【0002】
ニコチンは多数の薬理効果をもつことが示されている。例えば、Pullanら,N.Engl.J.Med.330:811−815(1994)参照。これらの効果のうちには神経伝達物質放出に及ぼす効果に関連すると思われるものがある。例えば、Sjak−shieら,Brain Res.624:295(1993)にはニコチンの神経保護効果が示されている。ニコチンを投与するとニューロンによりアセチルコリンとドーパミンが放出されることはRowellら,J.Neurochem.43:1593(1984);Rapierら,J.Neurochem.50:1123(1988);Sandorら,Brain Res.567:313(1991)及びVizi,Br.J.Pharmacol.47:765(1973)により報告されている。ニコチンを投与するとニューロンによりノルエピネフリンが放出されることはHallら,Biochem.Pharmacol.21:1829(1972)により報告されている。ニコチンを投与するとニューロンによりセロトニンが放出されることはHeryら,Arch.Int.Pharmacodyn.Ther.296:91(1977)により報告されている。ニコチンを投与するとニューロンによりグルタミン酸塩が放出されることはTothら,Neurochem Res.17:265(1992)により報告されている。更に、ニコチンは所定疾患の治療に使用されている所定医薬組成物の薬理作用を増強することも報告されている。Sanbergら,Pharmacol.Biochem.& Behavior 46:303(1993);Harsingら,J.Neurochem.59:48(1993)及びHughes,Proceedings from Intl.Symp.Nic.S40(1994)参照。更に、ニコチンの種々の他の有益な薬理効果も示されている。Decinaら,Biol.Psychiatry 28:502(1990);Wagnerら,Pharmacopsychiatry 21:301(1988);Pomerleauら,Addictive Behaviors 9:265(1984);Onaiviら,Life Sci.54(3):193(1994);Tripathiら,JPET 221:91−96(1982)及びHamon,Trends in Pharmacol.Res.15:36参照。
【0003】
種々のニコチン化合物が多種多様の病態及び疾患の治療に有用であると報告されている。例えば、Williamsら,DN&P7(4):205−227(1994)、Arnericら,CNS Drug Rev.1(1):1−26(1995)、Arnericら,Exp.Opin.Invest.Drugs 5(1):79−100(1996)、Bencherifら,JPET 279:1413−1421(1996)、Lippielloら,JPET 279:1422−1429(1996)、Damajら,Neuroscience(1997)、Holladayら,J.Med.Chem 40(28):4169−4194(1997)、Bannonら,Science 279:77−80(1998)、PCT WO94/08992、PCT WO96/31475、PCT WO97/19059、ヨーロッパ特許出願第857,725号、並びに米国特許第5,278,176号(Lin)、5,583,140号(Bencherifら)、5,597,919号(Dullら)、5,604,231号(Smithら)、5,616,716号(Dullら)、5,811,442号(Bencherifら)及び5,852,041号(Cosfordら)参照。
【0004】
ニコチン化合物等の化合物は塩形態で利用及び投与することが通例である。代表的な医薬的に許容可能な塩とその特性はBergeら,J.Pharm.Sci.,66:1−19(1977)及びAndersonら,In:The Practice Medicinal Chemistry,Ch.34:739−754(1996)に記載されている。米国特許第3,952,050号(Price)及び5,326,782号(Barriereら)も参照されたい。ニコチン化合物の代表的な塩としては米国特許第5,663,356号(Ruecroftら)、5,861,423号(Caldwellら)及び5,986,100号(Bencherifら)に記載されている型の有機又は無機酸付加塩が挙げられる。
【0005】
CNS疾患は神経疾患の1種である。CNS疾患は薬物に誘発されるものや、遺伝素因、感染又は外傷に起因するものや、病因不明のものがある。CNS疾患は神経精神障害、神経障害及び精神障害を含み、神経変性疾患、行動障害、認知障害及び認知感情障害が挙げられる。数種のCNS疾患の臨床徴候はCNS障害に起因するとされている(即ち、不適切な神経伝達物質放出レベル、不適切な神経伝達物質受容体の性質及び/又は神経伝達物質と神経伝達物質受容体の不適切な相互作用に起因する疾患)。数種のCNS疾患はコリン作動欠損、ドーパミン作動欠損、アドレナリン作動欠損及び/又はセロトニン作動欠損に起因すると考えられる。比較的頻発するCNS疾患としては初老期痴呆(早発アルツハイマー病)、老人性痴呆(アルツハイマー型痴呆)、パーキンソン病をはじめとするパーキンソン症候群、不安、注意欠乏活動亢進障害、鬱病、読字障害、癲癇、ハンチントン舞踏病、多動、躁病、神経内分泌障害、精神分裂病、睡眠障害、遅発性ジスキネジー、トゥーレット症候群及び摂食調節障害が挙げられる。
【0006】
ある病態又は疾患をもつか又はその恐れのある患者にニコチン化合物を投与することによりこのような病態又は疾患を予防及び治療する有用な方法を提供することが望ましい。ニコチン薬理作用をもつ活性成分を含み、(例えばCNSの機能に対して)有益な効果があるが、副作用の少ない医薬組成物を投与することにより所定疾患(例えばCNS疾患)をもつ個体で前記疾患の症状を止めることができるならば極めて有益である。ニコチン受容体と相互作用する化合物(例えばCNSの機能を発現させることが可能な化合物)でありながら、CNSの機能を発現させるために十分な量で使用した場合に望ましくない副作用(例えば骨格筋部位の相当な活性)を誘発し得るニコチン受容体サブタイプを有意に発現させない化合物を含む医薬組成物を提供できるならば極めて望ましい。
【0007】
発明の要約
本発明はニコチン化合物、特にアリール置換アミン(例えばアリール置換オレフィンアミン)の特徴をもつニコチン化合物の2,3−ジアシル酒石酸塩である組成物に関する。好ましいニコチン化合物はメタニコチン型化合物の特徴をもつ。本発明は本発明の組成物のプロドラッグ誘導体にも関する。
【0008】
本発明は多種多様の病態又は疾患、特にドーパミン放出等の神経伝達物質放出の神経調節に関する疾患をはじめとするニコチンコリン作動性神経伝達の障害を特徴とする疾患の予防又は治療方法にも関する。本発明は正常神経伝達物質放出の変異を特徴とする中枢神経系(CNS)疾患等の疾患の予防又は治療方法にも関する。本発明は所定病態の治療方法(例えば疼痛緩和方法)にも関する。本方法は有効量の本発明の組成物を対象に投与する。
【0009】
本発明は別の側面ではニコチン化合物を含む有効量の塩組成物を含む医薬組成物に関する。このような医薬組成物は有効量で使用した場合に対象の該当ニコチン受容体部位と相互作用することが可能であり、従って、多種多様の症状及び疾患、特に正常神経伝達物質放出の変異を特徴とする疾患の予防又は治療において治療剤として作用することが可能な化合物を含む。好ましい医薬組成物は本発明の組成物を含む。
【0010】
本発明の医薬組成物は正常神経伝達物質放出の変異を特徴とするCNS疾患等の疾患の予防及び治療に有用である。前記医薬組成物はこのような疾患をもち、このような疾患の臨床徴候を示す個体に治療効果があり、即ち前記組成物内の化合物は有効量で使用した場合に(i)ニコチン薬理作用を示し、該当ニコチン受容体部位に作用する(例えば薬理アゴニストとして作用し、ニコチン受容体を活性化する)と共に、(ii)神経伝達物質分泌を促し、従ってこれらの疾患に関連する症状を予防及び抑制することができる。更に、前記化合物は(i)患者の脳のニコチンコリン作動性受容体数を増し、(ii)神経保護効果を示し、(iii)有効量で使用した場合に目立った副作用(例えば血圧及び心拍数の有意増加、消化管への有意なマイナス効果、並びに骨格筋への有意影響)を生じないと予想される。本発明の医薬組成物は多種多様の病態及び疾患の予防及び治療に関して安全且つ有効であると考えられる。
【0011】
本発明の上記及び他の側面を以下の詳細な説明と実施例に詳細に説明する。
【0012】
発明の詳細な説明
本発明の化合物はアリール置換アミンのジアシル酒石酸塩である。本発明のアリール置換アミン塩基は式:
【0013】
【化4】
の化合物を含む。式中、X、X’、X”、Y’及びY”は各々窒素、酸素に結合した窒素(例えばN−酸化物(N−O)官能基)又はHanschら,Chem.Rev.91:165(1991)に従って決定したσm値が0よりも大きく、多くの場合には0.1よりも大きく、一般に0.2よりも大きく、更には0.3より大きいか、0未満であり、一般に−0.1未満であるか、又は0であることを特徴とする置換基種に結合した炭素である。窒素又は酸素に結合した窒素はX、X’、X”、Y’及びY”の3種以下が好ましく、2種以下がより好ましく、1又は2種が最も好ましい。更に、酸素に結合した窒素はX、X’、X”、Y’及びY”の1種以下が非常に好ましく、これらの種の1種が酸素に結合した窒素である場合には、その種はX”であることが好ましい。一般に、X’はCR’、CBr、COR’、CSR’ 又はCNR’R”である。一般に、XはCHである。X”は窒素が最も好ましい。所定の好ましい場合には、X’とX”はいずれも窒素である。一般に、Y’とY”は各々置換基種に結合した炭素であり、Y’とY”はいずれも置換基種(例えば水素)に結合した炭素であることが好ましい。更に、mとnはmとnの和が1、2、3、4、5又は6、好ましくは1、2又は3、最も好ましくは2又は3となるような整数である。mは1であり、nは1であると非常に好ましい。X、X’、X”、Y’及びY”のいずれかが置換基種に結合した炭素であるとき、これらの置換基種のσm値は多くの場合には約−0.3〜約0.75であり、大抵は約−0.25〜約0.6であり、σm値は各々0でも0以外でもよい。
【0014】
B’は置換されていてもいなくてもよい2個の炭素原子を架橋する種であり、下記種:
【0015】
【化5】
から選択することができる。B’は(例えばR’とR”で)飽和していてもいなくてもよいし、置換又は非置換シクロアルキル環(例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル等)の一部でもよい。B’の置換基(例えばR’又はR”)とX又はY”の介在置換基種(即ち、各該当X及びY”が置換基種に結合した炭素原子である場合)は一緒になって5又は6員環構造(例えばシクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル)等の環構造を形成してもよい。一般にこのような場合には、芳香族環にすぐ隣接する架橋種の炭素原子の置換基種はX又はY”と共に一緒になってこのような環を形成する。更に、B’の置換基とE、E’、E”及びE”’の少なくとも1種と介在原子も一緒になって単環式環構造(例えば、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル又は置換ヘテロシクリル構造)又は二環式環構造を形成してもよい。
【0016】
E、E’、E”及びE”’は各々水素、アルキル(例えばC1−C8、好ましくはC1−C5直鎖又は分枝鎖アルキル、例えばメチル、エチル又はイソプロピル)、置換アルキル、ハロ置換アルキル(例えばC1−C8、好ましくはC1−C5直鎖又は分枝鎖アルキル、例えばトリフルオロメチル又はトリクロロメチル)、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、アリール、置換アリール、アルキルアリール、置換アルキルアリール、アリールアルキル又は置換アリールアルキルを表し、E、E’、E、E”’の全部が水素でもよいし、E、E’、E”、E”’の少なくとも1種が水素以外のもの(例えば、アルキル、置換アルキル、ハロ置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、アリール、置換アリール、アルキルアリール、置換アルキルアリール、アリールアルキル又は置換アリールアルキル)であり、E、E’、E”、E”’のその他のものが水素でもよいし、EとE’又はE”とE”’とその介在炭素原子が一緒になってシクロペンチル、シクロヘキシル又はシクロヘプチル等の環構造を形成してもよいし、EとE”又はE’とE”’ とその介在炭素原子が一緒になってシクロペンチル、シクロヘキシル又はシクロヘプチル等の環構造を形成してもよく、Z及びZ’は各々水素又はアルキル(例えばC1−C8、好ましくはC1−C5直鎖又は分枝鎖アルキル、例えばメチル、エチル又はイソプロピル)を表し、好ましくはZ及びZ’の少なくとも一方が水素であり、最も好ましくはZが水素であり、Z’がメチルであるか、あるいはZが水素であり、Z’がシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、アダマンチル、キヌクリジニル、ピリジニル、キノリニル、ピリミジニル、フェニル、ベンジル、チアゾリル又はオキサゾリル、メチルピリジン、エチルピリジン、メチルピラジン又はエチルピラジン(これらはいずれもアルキル、アルコキシル、ハロ又はアミノ置換基等の少なくとも1個の置換基で適切に置換することができる)等の環構造(シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール又はアルキルアリール)を表すか、あるいはZが水素であり、Z’がプロパルギルであるか、あるいはZ、Z’及び介在窒素原子が(場合により3−ピリジニル等のピリジニル又は5−ピリミジニル等のピリミジニルで置換された)アジリジニル、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、イミノチアゾリニル又はイミノオキサゾリニル等の環構造を形成してもよいし、Z’とE’と介在炭素及び窒素原子が一緒になってピラゾリル又はイソキサゾラミニル等の単環式環構造を形成してもよいし、Z’とE”’と介在炭素及び窒素原子が一緒になってアゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、チアゾリル、オキサゾリルもしくはピペラジニル等の単環式環構造又は3−([4.2.0]−2−アザビシクロオクチル)、3−([2.2.2]−2−アザビシクロオクチル)もしくは3−([2.2.1]−2−アザビシクロヘプチル)等の二環式環構造を形成してもよいし、Z、Z’及びE”’と介在炭素及び窒素原子が一緒になってキヌクリジニル、2−([2.2.1]−1−アザビシクロヘプチル)もしくは2−([3.3.0]−1−アザビシクロオクチル)等の二環式環構造又はアザアダマンチル等の三環式環構造を形成してもよいし、Z’、E”及びE”’と介在炭素及び窒素原子が一緒になって1−([2.2.1]−2−アザビシクロヘプチル)等の二環式環構造を形成してもよいし、Z、Z’、E”及びE”’と介在炭素及び窒素原子が一緒になって三環式環構造を形成してもよい。B’がオレフィンであり、その介在R’置換基がX又はY’と一緒になって5員芳香族複素環(例えばフラン、ピロール又はチオフェン)を形成する場合には、Z、Z’、E、E’、E”及びE”’は一緒になって環構造を形成しないことが最も好ましく、即ちこのような場合には、ZとZ’は独立して水素又はアルキルであることが最も好ましく、ZとZ’は介在窒素原子のみと一緒になって環構造を形成してもよいが、あまり好ましくない。より具体的は、X、X’、X”、Y’及びY”は各々N、N−O、以下の置換基種、即ちH、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アルキルアリール、置換アルキルアリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、F、Cl、Br、I、NR’R”、CF3、CN、NO2、C2R’、SH、SCH3、N3、SO2CH3、OR’、(CR’R”)qOR’、O−(CR’R”)qC2R’、SR’、C(=O)NR’R”、NR’C(=O)R”、C(=O)R’、C(=O)OR’、OC(=O)R’、(CR’R”)qOCH2C2R’、(CR’R”)qC(=O)R’、(CR’R”)qC(CHCH3)OR’、O (CR’R”)qC(=O)OR’、(CR’R”)qC(=O)NR’R”、(CR’R”)qNR’R”、CH=CHR’、OC(=O)NR’R”及びNR’C(=O)OR”[式中、qは1〜6の整数であり、R’及びR”は各々水素、アルキル(例えばC1−C10アルキル、好ましくはC1−C5アルキル、より好ましくはメチル、エチル、イソプロピル、第3ブチル又はイソブチル)又はシクロアルキル(例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びアダマンチル)である]の1種をもつ芳香族炭素原子、複素環部分のヘテロ原子が少なくとも2個の炭素原子により他の窒素、酸素又は硫黄原子から分離された非芳香族複素環(例えばキヌクリジニル、ピロリジニル及びピペリジニル)、芳香族基含有種(例えばピリジル、キノリニル、ピリミジニル、フラニル、フェニル及びベンジルであり、これらはいずれもアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、ハロ、又はアミノ置換基等の少なくとも1個の置換基で適切に置換することができる)を含む。他の代表的な芳香族環系はGibsonら,J.Med.Chem.39:4065(1996)に記載されている。R’及びR”は直鎖又は分枝鎖アルキルでもよいし、R’とR”と介在原子は一緒になって環構造(例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、アダマンチル又はキヌクリジニル)を形成してもよい。X、X’、X”、Y’及びY”について上述した芳香族炭素原子の置換基種はそれらが隣接する場合には一緒になって1個以上の飽和又は不飽和、置換又は非置換炭素環又は複素環を形成してもよく、前記環はエーテル、アセタール、ケタール、アミン、ケトン、ラクトン、ラクタム、カルバメート又は尿素官能基を含むが、これらに限定されない。更に、Y’は水素に結合した炭素であると非常に好ましく、XはC−Hであると好ましい。E、E’及びE”は水素が好ましい。1好適態様では、nは1であり、mは1又は2であり、E、E’及びE”は各々水素であり、E”’はアルキル(例えばメチル)である。別の好適態様では、nは1であり、mは1又は2であり、E、E’、E”、E”’は各々水素である。各E、E’、E”及びE”’の種類と配置によっては化合物が光学活性となることがある。更に、本発明の化合物のアリール置換アミン成分はキラル中心をもつことがある(例えば化合物はR又はS配置をとることがある)。E、E’、E”及びE”’に応じて本発明の化合物はキラル中心をもち、本発明はこのような化合物のラセミ混合物と個々のエナンチオマー化合物に関する。一般に、n、m、E、E’、E”及びE”’の選択はE、E’、E”及びE”’として示す置換基の約4種まで、大抵は3種まで、通常は0、1又は2種が水素以外の置換基(即ちアルキル又はハロ置換アルキル等の置換基)となるように行う。
【0017】
本明細書で使用する「アルキル」とはメチル、エチル又はイソプロピル等のC1−C8、好ましくはC1−C5直鎖又は分枝鎖アルキル基を意味し、「置換アルキル」とは更にヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アリール、ヘテロシクロ、ハロ、アミノ、カルボキシル、カルバミル、シアノ等の1個以上の置換基をもつアルキル基を意味し、「アルケニル」とは少なくとも1個の炭素−炭素二重結合をもつC1−C8、好ましくはC1−C5直鎖又は分枝鎖炭化水素基を意味し、「置換アルケニル」とは更に1個以上の上記置換基をもつアルケニル基を意味し、「アルコキシ」とはメトキシ、イソプロポキシ、シクロペンチルオキシ、フェノキシ等の有機オキシ部分を意味し、「シクロアルキル」とは炭素原子数3〜8、好ましくは3〜6の飽和又は不飽和環含有基を意味し、「置換シクロアルキル」とは更に1個以上の上記置換基をもつシクロアルキル基を意味し、「アリール」とはフェニル、ナフチル等の炭素原子数6〜10の芳香族基を意味し、「置換アリール」とは更に1個以上の上記置換基をもつアリール基を意味し、「アルキルアリール」とはアルキル置換アリール基を意味し、「置換アルキルアリール」とは更に1個以上の上記置換基をもつアルキルアリール基を意味し、「アリールアルキル」とはアリール置換アルキル基を意味し、「置換アリールアルキル」とは更に1個以上の上記置換基をもつアリールアルキルを意味し、「ヘテロシクリル」とは環構造の一部として1個以上のヘテロ原子(例えばO、N、S)を含み、環内に2〜7個の炭素原子をもつ飽和又は不飽和環状基(例えばピリジニル、イソアゾリル、テトラヒドロフラニル等)を意味し、「置換ヘテロシクリル」とは更に1個以上の上記置換基をもつヘテロシクリル基を意味する。
【0018】
式:
【0019】
【化6】
(式中、X、X’、X”、Y’、Y”、E、E’、Z、Z’m及びR’は上記に定義した通りである)のアリール置換アミン化合物が特に有利である。構造中の波線は化合物がシス(Z)又はトランス(E)形をとり得ることを示し、トランス(E)形が好ましい。R’はいずれも水素であるか、又はR’の一方もしくは両方がメチルであることが好ましい。Zは水素であり、Z’は水素又はメチルであることが好ましい。mは1又は2が好ましい。Eは各々水素であり、E’は各々水素又はメチルであることが好ましいが、EとE’が全て水素であることが最も好ましい。Y”は置換基種に結合した炭素が好ましく、置換基種は水素、ハロ、NR’R”又はOR”が最も好ましい。X”は窒素又はNR’R”、NO2もしくはOR”等の置換基種に結合した炭素が好ましいが、窒素が最も好ましい。X’は窒素が好ましいが、水素、R’、ハロ,OR’、NR’R”、CN、C2R’又はCHCHR’等の置換基種に結合した炭素も好ましい。Xは水素等の置換基種に結合した炭素が好ましい。
【0020】
アリール置換アミン化合物の典型種は米国特許第5,212,188号(Caldwellら)、5,604,231号(Smithら)、5,616,707号(Crooksら)、5,616,716号(Dullら)、5,663,356号(Ruecroftら)、5,726,316号(Crooksら)、5,811,442号(Bencherifら)及び5,861,423号(Caldwellら)、PCT WO97/40011、99/65876及び00/007600、並びに1999年9月8日付け米国特許出願シリアル番号09/391,747号に記載されているようなものである。上記文献は本発明の実施に有用な代表的化合物を開示する目的で参考資料としてその開示内容全体を本明細書に組込む。
【0021】
本発明により有用な典型的化合物としてはメタニコチン型化合物が挙げられる。代表的な好適化合物の1例は(E)−メタニコチンである。他の代表的な好適化合物としては(2S)−(4E)−N−メチル−5−[3−(5−イソプロポキシピリジン)イル]−4−ペンテン−2−アミン、(3E)−N−メチル−4−[3−(5−ニトロ−6−アミノピリジン)イル]−3−ブテン−1−アミン、(3E)−N−メチル−4−[3−(5−(N−ベンジルカルボキサミド)ピリジン)イル]−3−ブテン−1−アミン、(4E)−N−メチル−5−[5−(2−アミノピリミジン)イル]−4−ペンテン−2−アミン、(4E)−N−メチル−5−(3−(5−アミノピリジン)イル)−4−ペンテン−2−アミン、(2S)−(4E)−N−メチル−5−[3−(5−イソプロポキシ−1−オキソピリジン)イル]−4−ペンテン−2−アミン、(3E)−N−メチル−4−(3−(5−イソブトキシピリジン)イル)−3−ブテン−1−アミン、(3E)−N−メチル−4−(3−(1−オキソピリジン)イル)−3−ブテン−1−アミン、(4E)−N−メチル−5−(3−(1−オキソピリジン)イル)−4−ペンテン−2−アミン、(3E)−N−メチル−4−(3−(5−エチルチオピリジン)イル)−3−ブテン−1−アミン、(4E)−N−メチル−5−(3−(5−トリフルオロメチルピリジン)イル)−4−ペンテン−2−アミン、(4E)−N−メチル−5−(3−(5−((カルボキシメチル)オキシ)ピリジン)イル)−4−ペンテン−2−アミン、(4E)−5−(3−(5−イソプロポキシピリジン)イル)−4−ペンテン−2−アミン及び(4E)−N−メチル−5−(3−(5−ヒドロキシピリジン)イル)−4−ペンテン−2−アミンが挙げられる。
【0022】
本発明の組成物のアリール置換オレフィンアミン化合物は種々の方法で合成される。
【0023】
(E)−メタニコチン型化合物はLofflerら,Chem.Ber.,42,pp.3431−3438(1909)及びLaforge,J.A.C.S.,50,p.2477(1928)に記載の方法を使用して置換ニコチン型化合物から製造することができる。所定の6置換メタニコチン型化合物はAchesonら,J.Chem.Soc.,Perkin Trans.1,2,pp.579−585(1980)の一般方法を使用して対応する6置換ニコチン型化合物から製造することができる。このような化合物の必要な前駆体である6置換ニコチン型化合物はRondahl,Acta Pharm.Suec.,14,pp.113−118(1977)に開示されている一般方法を使用して6置換ニコチン酸エステルから合成することができる。所定の5置換メタニコチン型化合物の製造はAchesonら,J.Chem.Soc.,Perkin Trans.1,2,pp.579−585(1980)により教示されている一般方法を使用して対応する5置換ニコチン型化合物から行うことができる。5−ハロ置換ニコチン型化合物(例えばフルオロ及びブロモ置換ニコチン型化合物)及び5−アミノニコチン型化合物はRondahl,Acta Pharm.Suec.,14,pp.113−118(1977)に開示されている一般手順を使用して製造することができる。5−トリフルオロメチルニコチン型化合物はAshimoriら,Chem.Pharm.Bull.,38(9),pp.2446−2458(1990)及びRondahl,Acta Pharm.Suec.,14,pp.113−118(1977)に記載されている方法と材料を使用して製造することができる。
【0024】
更に、所定のメタニコチン型化合物の製造は芳香族ハロゲン化物と保護アミン置換基を含む末端オレフィンのパラジウム触媒カップリング反応を使用し、保護基を除去して第1アミンを得、場合によりアルキル化して第2アミン又は第3アミンを得ることにより実施することができる。特に、所定のメタニコチン型化合物は保護アミン官能基をもつオレフィン(例えばフタルイミド塩と3−ハロ−1−プロペン、4−ハロ−1−ブテン、5−ハロ−1−ペンテン又は6−ハロ−1−ヘキセンの反応により得られるようなオレフィン)を使用して3−ハロ置換、5置換ピリジン化合物又は5−ハロ置換ピリミジン化合物をパラジウム触媒カップリング反応させることにより製造することができる。Frankら,J.Org.Chem.,43(15),pp.2947−2949(1978)及びMalekら,J.Org.Chem.,47,pp.5395−5397(1982)参照。あるいは、所定のメタニコチン型化合物は4−(N−メチル−N−tert−ブチルオキシカルボニル)アミノ酪酸メチルエステル等のN保護修飾アミノ酸残基を適切なハロゲン化アリールとブチルリチウムから誘導可能なアリールリチウム化合物とカップリングすることにより製造することができる。得られたN保護アリールケトンをその後、対応するアルコールに還元し、ハロゲン化アルキルに変換した後、脱ハロゲン化水素し、オレフィン官能基を導入する。その後、N保護基を除去すると、所望メタニコチン型化合物が得られる。
【0025】
(Z)−メタニコチン型化合物は多数の異なる方法で得られる。1方法では、E異性体とZ異性体の混合物としてのニコチン型化合物から(Z)−メタニコチン型化合物を合成した後、Sprouseら,Abstacts of Papers,p.32,Coresta/TCRC Joint Conference (1972)により開示されている型の方法を使用してクロマトグラィーにより(Z)−メタニコチン型化合物を分離することができる。別法では、対応するアセチレン化合物(例えばN−メチル−4−(3−ピリジニル)−3−ブチン−1−アミン型化合物)を制御下に水素化することによりメタニコチン型化合物を製造することができる。例えば、所定の5置換(Z)−メタニコチン型化合物と所定の6置換(Z)−メタンニコチン型化合物は夫々5置換−3−ピリジンカルボキサルデヒドと6置換−3−ピリジンカルボキサルデヒドから製造することができる。(Z)−メタニコチン型化合物の代表的な合成方法は参考資料としてその開示内容全体を本明細書に組込むDullらの米国特許第5,597,919号に記載されている。
【0026】
アリール置換オレフィンアミン化合物の(Z)−オレフィン異性体は多数の方法で合成することができる。1つのアプローチでは、アリール置換オレフィンアミン化合物の(Z)異性体はH.Lindlarら,Org.Syn.46:89(1966)に記載の方法を使用し、市販リンドラー触媒(Aldrich Chemical Company)を使用して対応するアルキニル化合物(例えばN−メチル−5−(3−ピルジル)−4−ブチン−2−アミン型化合物)を制御下に水素化することにより製造することができる。必要なアルキニル化合物は芳香族ハロゲン化物、好ましくは3−ブロモピリジン型又は3−ヨードピリジン型化合物をアルキニル側鎖化合物(例えばN−メチル−4−ペンチン−2−アミン型化合物)とパラジウム触媒カップリングすることにより製造することができる。一般に、L.Bleicherら,Synlett.1115(1995)に記載の方法を使用してヨウ化銅(I)とトリフェニルホスフィンと塩基として炭酸カリウムの存在下にハロゲン化アリールをモノ置換アルキンとパラジウム触媒カップリングする。N−メチル−4−ペンチン−2−アミン等のアルキニル化合物は市販4−ペンチン−2−オール(Aldrich Chemical Company)をピリジン中でp−トルエンスルホニルクロリドで処理した後、得られたp−トルエンスルホン酸4−ペンチン−2−オールを40%水溶液又は2.0Mテトラヒドロフラン溶液として過剰のメチルアミンと反応させることにより製造することができる。場合により、ジ−tert−ブチルジカーボネートで処理してtert−ブトキシカルボニル保護アミン型化合物とすることによりN−メチル−4−ペンチン−2−アミン型化合物のアミノ官能基を保護することが必要な場合がある。このような保護アミン化合物は未保護アミン化合物よりも容易にハロゲン化アリールとパラジウム触媒カップリングした後、得られたアルキニル化合物を制御下に水素化できる。tert−ブトキシカルボニル保護基はトリフルオロ酢酸等の強酸を使用して容易に除去し、アリール置換オレフィンアミン化合物の(Z)−オレフィン異性体を得ることができる。
【0027】
本発明のアリール置換オレフィンアミン化合物は種々の方法で合成することができる。4−ペンテン−2−オール等のオレフィンアルコールを3−ブロモピリジン又は3−ヨードピリジン等の芳香族ハロゲン化物と縮合する。一般に、オレフィンと芳香族ハロゲン化物のパラジウム触媒カップリングを伴うFrankら,J.Org.Chem.,43,pp.2947−2949(1978)及びMalekら,J.Org.Chem.,47,pp.5395−5397(1982)に記載の型の手順を使用する。場合によりカップリング前にオレフィンアルコールをt−ブチルジメチルシリルエーテルとして保護してもよい。その後、脱シリル化してオレフィンアルコールとする。その後、deCostaら,J.Org.Chem.,35,pp.4334−4343(1992)に記載の型の手順を使用してアルコール縮合物をアミンに変換する。一般に、メタンスルホニルクロリド又はp−トルエンスルホニルクロリドを使用してアルコールの活性化によりアルコール縮合物をアリール置換オレフィンアミンに変換した後、アンモニア又は第1もしくは第2アミンを使用してメシラート又はトシラートを置換する。従って、アミンがアンモニアである場合にはアリール置換オレフィン第1アミン化合物が得られ、アミンがメチルアミンやシクロブチルアミン等の第1アミンである場合にはアリール置換オレフィン第2アミン化合物が得られ、アミンがジメチルアミンやピロリジン等の第2アミンである場合にはアリール置換オレフィン第3アミン化合物が得られる。他の代表的なオレフィンアルコールとしては4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−2−オール、5−ヘキセン−3−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オール、2−メチル−3−ブテン−1−オール、4−メチル−4−ペンテン−1−オール、4−メチル−4−ペンテン−2−オール、1−オクテン−4−オール、5−メチル−1−ヘプテン−4−オール、4−メチル−5−ヘキセン−2−オール、5−メチル−5−ヘキセン−2−オール、5−ヘキセン−2−オール及び5−メチル−5−ヘキセン−3−オールが挙げられる。1,1,1−トリフルオロ−4−ペンテン−2−オール等のトリフルオロメチル置換オレフィンアルコールはKubotaら,Tetrahedron Letters,Vol.33(10),pp.1351−1354(1992)の手順を使用して1−エトキシ−2,2,2−トリフルオロエタノールとアリルトリメチルシランから製造するか、又はIshiharaら,Tetrahedron Letters,Vol.34(56),pp.5777−5780(1993)の手順を使用してトリフルオロ酢酸エチルエステルとアリルトリブチルスタンナンから製造することができる。所定のオレフィンアルコールは光学活性であり、アリール置換オレフィンアミン化合物の対応する光学活性形を提供するためにエナンチオマー混合物又は純エナンチオマーとして使用することができる。メタリルアルコール等のオレフィンアリルアルコールを芳香族ハロゲン化物と反応させるとアリール置換オレフィンアルデヒドが得られ、得られたアルデヒドを(例えばアルキルアミンとシアノホウ水素化ナトリウムを使用して処理することにより)還元アミノ化によりアリール置換オレフィンアミン化合物に変換することができる。好ましい芳香族ハロゲン化物は3−ブロモピリジン型化合物と3−ヨードピリジン型化合物である。一般に、このような3−ハロピリジン型化合物の置換基は薬品(例えばトシルクロリドやメチルアミン)との接触とアリール置換オレフィンアミン化合物の製造中に受ける反応条件に耐えられるように選択する。あるいは、−OH、−NH2及び−SH等の置換基を対応するアシル化合物として保護するか、−NH2等の置換基をフタルイミド官能基として保護してもよい。ジハロ芳香族の場合には、2種の異なるオレフィン側鎖に順次パラジウム触媒(ヘック型)カップリングすることができる。
【0028】
(4E)−N−メチル−5−(5−イソプロポキシ−3−ピリジル)−4−ペンテン−2−アミン等の分枝側鎖をもつ所定のアリール置換オレフィンアミン化合物は種々の方法で得られる。1合成アプローチを使用すると、側鎖N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ペンテン−2−アミンをヘック反応条件下に3置換5−ハロ置換ピリジンである5−ブロモ−3−イソプロポキシピリジンとカップリングした後、tert−ブトキシカルボニル保護基を除去することにより、前記化合物を集中的に合成することができる。一般に、オレフィンと芳香族ハロゲン化物のパラジウム触媒カップリングを伴うW.C.Frankら,J.Org.Chem.43,2947(1978)及びN.J.Malekら,J.Org.Chem.47,5395(1982)に記載の型の手順を使用する。必要なN−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ペンテン−2−アミンは次のように合成することができる。(i)市販4−ペンテン−2−オール(Aldrich Chemical Company,Lancaster Synthesis Inc.)をピリジン中、p−トルエンスルホニルクロリドで処理すると、T.Michelら,Liebigs Ann.11:1811(1996)により従来記載されているp−トルエンスルホン酸4−ペンテン−2−オールが得られる。(ii)得られたトシラートを40%水溶液としてのメチルアミン20モル当量と共に加熱すると、N−メチル−4−ペンテン−2−アミンが得られる。(iii)得られたアミンはA.Violaら,J.Chem.Soc.,Chem.Commun.(21):1429(1984)により従来記載されており、無水テトラヒドロフラン中、ジ−tert−ブチルジカーボネート1.2モル当量と反応させると、側鎖N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ペンテン−2−アミンが得られる。ハロ置換ピリジン(例えば5−ブロモ−3−イソプロポキシピリジン)は2種の異なる経路により合成することができる。第1の製法では、3,5−ジブロモピリジンを密閉ガラス管で銅粉末(3,5−ジブロモピリジンの5%w/w)の存在下に無水イソプロパノール中、カリウムイソプロポキシド2モル当量と共に140℃で14時間加熱すると、5−ブロモ−3−イソプロポキシピリジンが得られる。5−ブロモニコチン酸から5−ブロモ−3−イソプロポキシピリジンを製造する第2の製法は次のように実施することができる。(i)5−ブロモニコチン酸を塩化チオニルで処理した後に中間酸塩化物をアンモニア水と反応させて5−ブロモニコチンアミドに変換する。(ii)得られた5−ブロモニコチンアミドはC.V.Grecoら,J.Heterocyclic Chem.7(4):761(1970)により従来記載されており、水酸化ナトリウムと次亜塩素酸カルシウムの70%溶液で処理してホフマン分解させる。(iii)得られた3−アミノ−5−ブロモピリジンはC.V.Grecoら,J.Heterocyclic Chem.7(4):761(1970)により従来記載されており、酸性条件下に亜硝酸イソアミルでジアゾ化することにより5−ブロモ−3−イソプロポキシピリジンに変換することができ、その後、中間ジアゾニウム塩をイソプロパノールで処理すると5−ブロモ−3−イソプロポキシピリジンが得られる。5−ブロモ−3−イソプロポキシピリジンとN−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ペンテン−2−アミンのパラジウム触媒カップリングは酢酸パラジウム(II)1モル%とトリ−o−トリルホスフィン4モル%から構成される触媒を使用してアセトニトリル−トリエチルアミン(2:1,v,v)中で実施される。反応は成分を80℃で20時間加熱することにより実施することができ、(4E)−N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−5−(5−イソプロポキシ−3−ピリジル)−4−ペンテン−2−アミンが得られる。tert−ブトキシカルボニル保護基の除去は0℃のアニソール中、トリフルオロ酢酸30モル当量で処理することにより実施することができ、(4E)−N−メチル−5−(5−イソプロポキシ−3−ピリジル)−4−ペンテン−2−アミンが得られる。この種の方法(即ちナトリウム又はカリウムアルコキシド又はアリールオキシドで処理後、ヘックカップリングと脱保護)を使用すると、3,5−ジブロモピリジンから種々のN−メチル−5−(5−アルコキシ又は5−アリールオキシ−3−ピリジル)−4−ペンテン−2−アミンが得られる。
【0029】
分枝側鎖をもつ所定のアリール置換オレフィンアミン化合物は種々の方法で得られる。1合成アプローチを使用すると、(4E)−N−メチル−5−(5−メトキシ−3−ピリジル)−4−ペンテン−2−アミン等の化合物は第2アルコール官能基4−ペンテン−2−オールを含むオレフィンとハロ置換ピリジンである5−ブロモ−3−メトキシピリジンをヘック反応条件下にカップリングした後、得られたピリジルアルコール中間体をそのp−トルエンスルホン酸エステルに変換した後、メチルアミンで処理することにより合成することができる。一般に、オレフィンと芳香族ハロゲン化物のパラジウム触媒カップリングを伴うW.C.Frankら,J.Org.Chem.43,2947(1978)及びN.J.Malekら,J.Org.Chem.47,5395(1982)に記載の型の手順を使用する。必要なハロ置換ピリジンである5−ブロモ−3−メトキシピリジンはH.J.den Hertogら,Recl.Trav.Chim.Pays−Bas 67:377(1948)に記載の方法に類似の方法を使用して合成され、即ち密閉ガラス管で銅粉末(3,5−ジブロモピリジンの5%w/w)の存在下に無水メタノール中、ナトリウムメトキシド2.5モル当量と共に3,5−ジブロモピリジンを150℃で14時間加熱すると5−ブロモ−3−メトキシピリジンが得られる。得られた5−ブロモ−3−メトキシピリジンはD.L.Cominsら,J.Org.Chem.55:69(1990)により従来記載されており、酢酸パラジウム(II)1モル%とトリ−o−トリルホスフィン4モル%から構成される触媒を使用してアセトニトリル−トリエチルアミン(1:1:1,v/v)中で4−ペンテン−2−オールとカップリングすることができる。反応は密閉ガラス管で成分を140℃で14時間加熱することにより実施され、(4E)−N−メチル−5−(5−メトキシ−3−ピリジル)−4−ペンテン−2−オールが得られる。得られたアルコールを0℃の無水ピリジン中、p−トルエンスルホニルクロリド2モル当量で処理するとp−トルエンスルホン酸(4E)−N−メチル−5−(5−メトキシ−3−ピリジル)−4−ペンテン−2−オールが得られる。補助溶媒として少量のエタノールを含有する40%水溶液としてメチルアミン120モル当量でトシラート中間体を処理すると、(4E)−N−メチル−5−(5−メトキシ−3−ピリジル)−4−ペンテン−2−アミンが得られる。3,5−ジブロモピリジンを上記条件下にN−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ペンテン−2−アミンとヘックカップリングすると、N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−5−(5−ブロモ−3−ピリジル)−4−ペンテン−2−アミンが得られる。これを後続ヘック反応でスチレンとカップリングし、上述したように脱保護(tert−ブトキシカルボニル基を除去)すると、(4E)−N−メチル−5−[3−(5−トランス−β−スチリルピリジン)イル]−4−ペンテン−2−アミンが得られる。同様にエチニルベンゼンと第2のカップリング後に脱保護すると、(4E)−N−メチル−5−[3−(5−フェニルエチニルピリジン)イル]−4−ペンテン−2−アミンが得られる。
【0030】
(2S)−(4E)−N−メチル−5−(3−ピリジル)−4−ペンテン−2−アミン等の所定アリール置換オレフィンアミン化合物の光学活性形は種々の方法で得られる。1合成アプローチでは、前記型の化合物はキラル第2アルコール官能基(2R)−4−ペンテン−2−オールをもつオレフィンとハロ置換ピリジンである3−ブロモピリジンをヘック反応条件下にカップリングすることにより合成される。得られたキラルピリジルアルコール中間体(2R)−(4E)−5−(3−ピリジル)−4−ペンテン−2−オールをその対応するp−トルエンスルホン酸エステルに変換した後にメチルアミンで処理すると、トシラートが置換し、配置が逆転する。一般に、芳香族ハロゲン化物とオレフィンのパラジウム触媒カップリングを伴うW.C.Frankら,J.Org.Chem.43,2947(1978)及びN.J.Malekら,J.Org.Chem.47,5395(1982)に記載の型の手順を使用する。キラル側鎖(2R)−4−ペンテン−2−オールはA.Kalivretenos,J.K.Stille及びL.S.Hegedus,J.Org.Chem.56:2883(1991)の一般合成法を使用して低温(−25〜−10℃)のテトラヒドロフラン中、キラルエポキシド(R)−(+)−プロピレンオキシド(Fluka Chemical Companyから市販)を臭化ビニルマグネシウムで処理し、(2R)−4−ペンテン−2−オールを得ることにより製造することができる。得られたキラルアルコールを酢酸パラジウム(II)1モル%とトリ−o−トリルホスフィン4モル%から構成される触媒を使用してアセトニトリル−トリエチルアミン(1:1,v/v)中で3−ブロモピリジンとヘック反応させる。反応は密閉ガラス管で成分を140℃で14時間加熱することにより実施し、(2R)−(4E)−5−(3−ピリジル)−4−ペンテン−2−オールが得られる。得られたキラルピリジルアルコールを0℃の無水ピリジン中、p−トルエンスルホニルクロリド3モル当量で処理するとトシラート中間体が得られる。補助溶媒として少量のエタノールを含有する40%水溶液としてのメチルアミン82モル当量と共にp−トルエンスルホン酸エステルを加熱すると、(2S)−(4E)−N−メチル−5−(3−ピリジル)−4−ペンテン−2−アミンが得られる。
【0031】
同様に、(2R)−(4E)−N−メチル−5−(3−ピリジル)−4−ペンテン−2−アミン等の対応するアリール置換オレフィンアミンエナンチオマーは3−ブロモピリジンと(2S)−4−ペンテン−2−オールのヘックカップリングにより合成することができる。得られた中間体(2S)−(4E)−5−(3−ピリジル)−4−ペンテン−2−オールをそのp−トルエンスルホン酸塩に変換し、メチルアミンで置換する。キラルアルコール(2S)−4−ペンテン−2−オールはA.Kalivretenos,J.K.Stille及びL.S.Hegedus,J.Org.Chem.56:2883(1991)により報告されているような(R)−(+)−プロピレンオキシドからの(2R)−4−ペンテン−2−オールの合成について記載されている方法と同様の方法を使用して(S)−(−)−プロピレンオキシド(Aldrich Chemical Companyから市販)から製造される。
【0032】
本発明の化合物の別のアプローチでは、(3E)−N−メチル−4−(3−(6−アミノピリジン)イル)−3−ブテン−1−アミン等の化合物はN−メチル−N−(3−ブテン−1−イル)ベンズアミド等の保護アミン官能基をもつオレフィンと2−アミノ−5−ブロモピリジン(Aldrich Chemical Company)等の3−ハロ置換ピリジンをパラジウム触媒カップリング反応させることにより製造することができる。得られたヘック反応物を酸水溶液と共に加熱してベンゾイル保護基を除去すると、(3E)−N−メチル−4−(3−(6−アミノピリジン)イル)−3−ブテン−1−アミンが得られる。必要なオレフィンであるN−メチル−N−(3−ブテン−1−イル)ベンズアミドは4−ブロモ−1−ブテンを炭酸カリウムの存在下にN,N−ジメチルホルムアミド中で過剰の縮合メチルアミンと反応させてN−メチル−3−ブテン−1−アミンを得ることにより製造することができる。トリエチルアミンを加えたジクロロメタン中で前記化合物を塩化ベンゾイルで処理すると、オレフィン側鎖N−メチル−N−(3−ブテン−1−イル)ベンズアミドが得られる。
【0033】
本発明の化合物はピロリジン又はキヌクリジン等のアザ環状官能基を含む場合がある。このような化合物は種々の方法で合成される。1方法では、ヘック反応を使用してビニル置換又はアリル置換窒素複素環を3−ハロピリジンにカップリングすることができる。例えば、パラジウム触媒反応を伴うW.C.Frankら,J.Org.Chem.43,2947(1978)及びN.J.Malekら,J.Org.Chem.47,5395(1982)に記載の条件下にN−(tert−ブトキシカルボニル)−2−アリルピロリジンと3−ブロモピリジン(Aldrich Chemical Company)をカップリングすることができる。トリフルオロ酢酸を使用して保護基を除去すると、2−(3−(3−ピリジル)−(2E)−プロペン−1−イル)ピロリジンが得られる。必要なN−(tert−ブトキシカルボニル)−2−アリルピロリジンは市販2−ピロリジンメタノール(Aldrich Chemical Company)から製造することができる。2−ピロリジンメタノールをジ−tert−ブチルジカーボネートで処理すると、アミンがそのtert−ブトキシカルボニル誘導体として保護される。次いでピリジン中でp−トルエンスルホニルクロリドと反応させた後、アセトン中でヨウ化ナトリウムと反応させると、2−(ヨードメチル)−N−(tert−ブトキシカルボニル)ピロリジンが得られる。この化合物をヨウ化第1銅の存在下に臭化ビニルマグネシウムとカップリングすると、N−(tert−ブトキシカルボニル)−2−アリルピロリジンが得られる。エナンチオ的に純粋な2−ピロリジンメタノール(R及びS異性体はいずれもAldrich Chemical Companyから市販されている)を使用してN−(tert−ブトキシカルボニル)−2−アリルピロリジンの各エナンチオマーを製造する。次いで上記に要約したように反応させ、2−(3−(3−ピリジル)−(2E)−プロペン−1−イル)ピロリジンの各エナンチオマーを製造する。M.A.Abreoら,J.Med.Chem.39:817−825(1996)に記載の方法に類似の方法を使用してホルムアルデヒド水溶液とシアノホウ水素化ナトリウムを使用して第2アミノ化合物をN−メチル化すると、2−(3−(3−ピリジル)−(2E)−プロペン−1−イル)−1−メチルピロリジンの各エナンチオマーが得られる。
【0034】
同様に、2−アリルキヌクリジンをヘック条件下に3−ブロモピリジンとカップリングすると、2−(3−(3−ピリジル)−(2E)−プロペン−1−イル)キヌクリジンが得られる。必要な2−アリルキヌクリジンは3−キヌクリジノン(Aldrich Chemical Company)からアルキル化と脱酸素により製造することができる。例えば、イソプロピルアミンとモレキュラーシーブを用いて3−キヌクリジノンをそのイソプロピルイミンに変換することができる。イミンをリチウムジイソプロピルアミドと臭化アリルで処理した後、加水分解すると、2−アリル−3−キヌクリジノンが得られる。ケトンをそのp−トルエンスルホニルヒドラゾンに変換し、ホウ水素化ナトリウムで還元することにより脱酸素すると、2−アリルキヌクリジンが得られる。
【0035】
本発明の化合物はピラジン又はピリダジン環を含む場合がある。M.Hasegawaら(ヨーロッパ特許出願561409 A2 921202)により報告されている手順を使用すると、2−メチルピラジン又は3−メチルピリダジン(いずれもAldrich Chemical Companyから市販)をN−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−3−アミノブタナールと縮合すると、夫々(4E)−N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−5−(2−ピラジニル)−4−ペンテン−2−アミンと(4E)−N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−5−(3−ピリダジニル)−4−ペンテン−2−アミンが得られる。tert−ブトキシカルボニル基をトリフルオロ酢酸で除去すると、夫々(4E)−N−メチル−5−(2−ピラジニル)−4−ペンテン−2−アミンと(4E)−N−メチル−5−(3−ピリダジニル)−4−ペンテン−2−アミンが得られる。必要なN−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−3−アミノブタナールはM.AdamczykとY.Y.ChenによりPCT国際出願WO9212122に記載されている方法を使用して対応するアルコールから製造することができる。アルコールであるN−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−3−アミノ−1−ブタノールは(R.F.BorchによりOrg.Syn.52,124(1974)に報告されている化学反応を使用してメチルアミンとシアノホウ水素化ナトリウムで)順次還元アミノ化し、ジ−tert−ブチルジカーボネートで保護することにより市販4−ヒドロキシ−2−ブタノン(Lancaster Synthesis,Inc.)から製造することができる。
【0036】
本発明の所定化合物は種々の方法で製造することができる。例えば、所定縮合環複素環をもつ化合物はヘック反応により製造することができる。このような化合物は6−ブロモ−2−メチル−1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン等のブロモ複素環化合物を上記オレフィンアミン側鎖N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ペンテン−2−アミンとパラジウム触媒カップリングすることにより合成することができる。一般に、オレフィンと芳香族ハロゲン化物のパラジウム触媒カップリングを伴うW.C.Frankら,J.Org.Chem.43,2947(1978)及びN.J.Malekら,J.Org.Chem.47,5395(1982)に記載されている型の手順を使用する。得られたtert−ブトキシカルボニル保護(Boc保護)中間体をトリフルオロ酢酸等の強酸で処理すると、(4E)−N−メチル−5−(6−(2−メチル−1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン)イル)−4−ペンテン−2−アミンが得られる。必要なブロモイミダゾピリジンである6−ブロモ−2−メチル−1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジンはP.K.Dubeyら,Indian J.Chem.16B(6):531−533(1978)に記載の方法に従って2,3−ジアミノ−5−ブロモピリジンをポリリン酸中で酢酸と共に加熱することにより82%収率で製造することができる。2,3−ジアミノ−5−ブロモピリジンはS.X.Caiら,J.Med.Chem.40(22):3679−3686(1997)に記載の方法に従って2−アミノ−5−ブロモ−3−ニトロピリジン(Aldrich Chemical CompanyとLancaster Synthesis,Incから市販)を沸騰エタノール中で塩化錫(II)・2水和物と共に加熱することにより97%収率で製造することができる。
【0037】
別例では、ヘック反応を使用して6−ブロモ−1,3−ジオキソ[4,5−b]ピリジン等のブロモ縮合環複素環を上記オレフィンアミン側鎖N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ペンテン−2−アミンとカップリングすることができる。得られたBoc保護中間体をトリフルオロ酢酸等の強酸で脱保護すると、(4E)−N−メチル−5−(6−(1,3−ジオキソ[4,5−b]ピリジン)イル)−4−ペンテン−2−アミンが得られる。必要なブロモ化合物である6−ブロモ−1,3−ジオキソ[4,5−b]ピリジンはF.Dallackerら,Z.Naturforsch.34b:1729−1736(1979)の方法に従って炭酸カリウムとN,N−ジメチルホルムアミドの存在下にブロモクロロメタンを使用するメチレン化法により5−ブロモ−2,3−ジヒドロキシピリジン(5−ブロモ−3−ヒドロキシ−2(1H)−ピリジノンとしても知られる)から合成することができる。5−ブロモ−2,3−ジヒドロキシピリジンはF.Dallackerら,Z.Naturforsch.34b:1729−1736(1979)に記載の方法を使用してフルフラール(2−フルアルデヒド、Aldrich Chemical CompanyとLancaster Synthesis,Incから市販)から製造することができる。あるいは、5−ブロモ−2,3−ジヒドロキシピリジンはD.RoseとN.MaakのEP0081745に記載の方法に従って製造することもできる。
【0038】
縮合環複素環をもつ化合物の別例では、ヘック反応を使用してブロモ化合物である7−ブロモ−2,3−ジヒドロ−1,4−ジオキシノ[2,3−b]ピリジン(7−ブロモ−5−アザ−4−オキサクロマンとしても知られる)を上記オレフィンアミン側鎖N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ペンテン−2−アミンと縮合することができる。得られたBoc保護化合物をトリフルオロ酢酸等の強酸で脱保護すると、(4E)−N−メチル−5−(7−(2,3−ジヒドロ−1,4−ジオキシノ[2,3−b]ピリジン)イル)−4−ペンテン−2−アミンが得られる。必要なブロモ化合物である7−ブロモ−2,3−ジヒドロ−1,4−ジオキシノ[2,3−b]ピリジンはF.Dallackerら,Z.Naturforsch.34b:1729−1736(1979)の方法に従って5−ブロモ−2,3−ジヒドロキシピリジンをN,N−ジメチルホルムアミド中で1,2−ジブロモエタンと炭酸カリウムで処理することにより製造することができる。5−ブロモ−2,3−ジヒドロキシピリジンは上述のようにフルフラールから製造することができる。
【0039】
本発明の他の多環式芳香族化合物はヘック反応により製造することができる。例えば、所定化合物は6−ブロモ−1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−チオール等のブロモ縮合環複素環を上記オレフィンアミン側鎖N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ペンテン−2−アミンとパラジウム触媒カップリングすることにより合成することができる。ヘック反応から得られたBoc保護中間体をトリフルオロ酢酸等の強酸で脱保護すると、(4E)−N−メチル−5−(6−(2−チオ−1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン)イル)−4−ペンテン−2−アミンが得られる。必要なブロモ化合物である6−ブロモ−1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−チオールはY.M.Yutilov,Khim.Geterotsikl Doedin,6:799−804(1988)に記載の方法に従って6−ブロモ−1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジンを230〜260℃で硫黄で処理することにより製造することができる。6−ブロモ−1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジンはSigma−Aldrich Chemical Companyから入手できる。あるいは、6−ブロモ−1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジンはP.K.Dubeyら,Indian J.Chem.16B(6):531−533(1978)に記載の方法と同様の方法を使用して2,3−ジアミノ−5−ブロモピリジンをポリリン酸中ギ酸で処理することにより製造することもできる。2,3−ジアミノ−5−ブロモピリジンはS.X.Caiら,J.Med.Chem.40(22):3679−3686(1997)に記載の方法に従って2−アミノ−5−ブロモ−3−ニトロピリジン(Aldrich Chemical CompanyとLancaster Synthesis,Incから市販)を沸騰エタノール中で塩化錫(II)・2水和物と共に加熱することにより97%収率で製造することができる。あるいは、6−ブロモ−1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−チオールはT.C.Kuhlerら,J.Med Chem.38(25):4906−4916(1995)に記載の方法に類似の方法を使用して2,3−ジアミノ−5−ブロモピリジンをエタノール水溶液中でK+SCSOEtと共に加熱することにより製造することもできる。2,3−ジアミノ−5−ブロモピリジンは上述のように2−アミノ−5−ブロモ−3−ニトロピリジンから製造することができる。
【0040】
関連例では、6−ブロモ−2−フェニルメチルチオ−1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジンをヘック反応により上記オレフィンアミン側鎖N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ペンテン−2−アミンとカップリングすることができる。得られたBoc保護中間体をトリフルオロ酢酸等の強酸で処理すると、(4E)−N−メチル−5−(6−(2−フェニルメチルチオ−1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン)イル)−4−ペンテン−2−アミンが得られる。必要なブロモ化合物である6−ブロモ−2−フェニルメチルチオ−1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジンは上記6−ブロモ−1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−チオールを炭酸カリウムとN,N−ジメチルホルムアミドの存在下に臭化ベンジルでアルキル化することにより製造することができる。
【0041】
別例では、6−ブロモオキサゾロ[4,5−b]ピリジンを順次N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ペンテン−2−アミンとパラジウム触媒カップリング及びトリフルオロ酢酸で脱保護すると、(4E)−N−メチル−5−(6−オキサゾロ[4,5−b]ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミンが得られる。必要な6−ブロモオキサゾロ[4,5−b]ピリジンはM−C.Viaudら,Heterocycles 41:2799−2809(1995)の方法に類似の方法を使用してギ酸又はオルトギ酸トリアルキルと縮合することにより2−アミノ−5−ブロモ−3−ピリジノールから製造することができる。他のカルボン酸を使用しても同様にヘック反応の基質である2置換−6−ブロモオキサゾロ[4,5−b]ピリジンが得られる。2−アミノ−5−ブロモ−3−ピリジノールはフルフリルアミン(Aldrich Chemical Company)から合成する。例えば、V.Kochら,Synthesis,499(1990)に記載の方法を使用して(米国特許第4,192,946号に従ってフルフリルアミンから製造した)5−ブロモ−3−ピリジノールを塩素化すると2−クロロ−5−ブロモ−3−ピリジノールが得られ、アンモニア処理により2−アミノ−5−ブロモ−3−ピリジノールに変換することができる。
【0042】
上記6−ブロモオキサゾロ[4,5−b]ピリジンに対して環縮合位置が異性の5−ブロモオキサゾロ[5,4−b]ピリジンをN−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ペンテン−2−アミンとのヘックカップリングで使用してもよい。その後、tert−ブトキシカルボニル保護基を除去すると、(4E)−N−メチル−5−(5−オキサゾロ[5,4−b]ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミンが得られる。必要な5−ブロモオキサゾロ[5,4−b]ピリジンは上述のようにギ酸(又はその誘導体)との縮合により3−アミノ−5−ブロモ−2−ピリジノール(3−アミノ−5−ブロモ−2−ピリドン)から合成される。3−アミノ−5−ブロモ−2−ピリジノールは市販3−ニトロ−2−ピリジノール(Aldrich Chemical Company)を(T.Batkowski,Rocz.Chem.41:729−741(1967)に記載の方法を使用して)臭素化後に(S.X.Caiら,J.Med.Chem.40(22):3679−3686(1997)に記載の方法に従って)塩化錫(II)還元することにより製造することができる。
【0043】
本発明の他の多環式芳香族化合物もヘック反応により製造することができる。例えば、5−ブロモフロ[2,3−b]ピリジンと5−ブロモ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジンを上記オレフィンアミン側鎖N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ペンテン−2−アミンとパラジウム触媒カップリングすると、夫々(4E)−N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−5−(5−フロ[2,3−b]ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミンと(4E)−N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−5−(5−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミンが得られる。その後、tert−ブトキシカルボニル基をトリフルオロ酢酸で除去すると、夫々(4E)−N−メチル−N−5−(5−フロ[2,3−b]ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミンと(4E)−N−メチル−N−5−(5−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミンが得られる。必要な5−ブロモフロ[2,3−b]ピリジンと5−ブロモ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジンはE.C.Taylorら,Tetrahedron 43:5145−5158(1987)に記載の化学反応を使用して臭素化(メタノール中の臭素と重炭酸ナトリウム)と脱水素(2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン)により夫々2,3−ジヒドロ[2,3−b]ピリジンと2,3−ジヒドロピロロ[2,3−b]ピリジンから製造することができる。2,3−ジヒドロフロ[2,3−b]ピリジンと2,3−ジヒドロピロロ[2,3−b]ピリジンはA.E.Frissenら,Tetrahedron 45:803−812(1989)に記載されているように(3−ブチン−1−オールのナトリウム塩又は4−アミノ−1−ブチンによる)塩化物の求核置換と後続分子内ディールス−アルダー反応により2−クロロピリミジン(Aldrich Chemical Company)から製造される。同様の化学反応を使用して、2,3−ジヒドロフロ[2,3−b]ピリジンと2,3−ジヒドロピロロ[2,3−b]ピリジンは3−メチルチオ−1,2,4−トリアゼンからも製造され(E.C.Taylorら,Tetrahedron 43:5145−5158(1987))、3−メチルチオ−1,2,4−トリアゼンはグリオキサールとS−メチルチオセミカルバジドから製造される(W.Paudlerら,J.Heterocyclic Chem.7:767−771(1970))。
【0044】
臭素化ジヒドロフロピリジン、ジヒドロピロロピリジン及びジヒドロピラノピリジンもパラジウム触媒カップリングの基質である。例えば、(上述のように2,3−ジヒドロフロ[2,3−b]ピリジンと2,3−ジヒドロピロロ[2,3−b]ピリジンの臭素化から得られた)5−ブロモ−2,3−ジヒドロフロ[2,3−b]ピリジンと5−ブロモ−2,3−ジヒドロピロロ[2,3−b]ピリジンをヘック法で上記オレフィンアミン側鎖とカップリングすることもできる。その後、脱保護すると、対応する(4E)−N−メチル−5−(5−(2,3−ジヒドロフロ[2,3−b]ピリジン)イル)−4−ペンテン−2−アミンと(4E)−N−メチル−5−(5−(2,3−ジヒドロピロロ[2,3−b]ピリジン)イル)−4−ペンテン−2−アミンが得られる。([2,3−b]系に対して環縮合位置が異性の)6−ブロモ−2,3−ジヒドロフロ[3,2−b]ピリジンを同様に処理すると、(4E)−N−メチル−5−(6−(2,3−ジヒドロフロ[3,2−b]ピリジン)イル)−4−ペンテン−2−アミンが得られる。必要な6−ブロモ−2,3−ジヒドロフロ[3,2−b]ピリジンはリチウムジイソプロピルアミド2当量(2−メチレニル、3−オキシジアニオンを生成)とジブロモメタン1当量で順次処理することにより5−ブロモ−2−メチル−3−ピリジノールから製造することができる。あるいは、M.U.Kollerら,Synth.Commun.25:2963−74(1995)に記載の化学反応に類似の化学反応を使用してシリル保護ピリジノール(5−ブロモ−2−メチル−3−トリメチルシリルオキシピリジン)をリチウムジイソプロピルアミド1当量とアルキル又はアリールアルデヒドで順次処理すると、2−(2−(1−アルキル又は1−アリール−1−ヒドロキシ)エチル)−5−ブロモ−3−(トリメチルシリルオキシ)ピリジンが得られる。このような物質は(酸触媒環化又はウィルアムソン合成等の)当業者に公知の方法により対応する環状エーテル(2−アルキル又は2−アリール−6−ブロモ−2,3−ジヒドロフロ[3,2−b]ピリジン)に変換することができる。同様の化学反応でピリジルメチルカルボアニオンとの反応に(アルデヒドの代わりに)エポキシドを使用すると、2−アルキル及び2−アリール−7−ブロモ−2,3−ジヒドロピラノ[3,2−b]ピリジンが得られる。これらの2置換臭素化ジヒドロフロ及びジヒドロピラノピリジンもヘック反応の基質である。例えば、6−ブロモ−2,3−ジヒドロ−2−フェニルフロ[3,2−b]ピリジンをパラジウム触媒法でN−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ペンテン−2−アミンとカップリングし、カップリング産物をトリフルオロ酢酸で処理(tert−ブトキシカルボニル基を除去)すると、(4E)−N−メチル−5−(6−(2,3−ジヒドロ−2−フェニルフロ[3,2−b]ピリジン)イル)−4−ペンテン−2−アミンが得られる。
【0045】
臭素化ジヒドロフロ及びジヒドロピラノピリジンの合成に必要な5−ブロモ−2−メチル−3−ピリジノールは市販材料の標準変換により製造される。例えば、塩化チオニル、臭素及びアンモニアで順次処理(C.V.Grecoら,J.Heterocyclic Chem.7(4):761−766(1970)に記載の方法)することにより2−メチルニコチン酸(Aldrich Chemical Company)を5−ブロモ−2−メチルニコチンアミドに変換することができる。5−ブロモ−2−メチルニコチンアミドを次亜塩素酸塩でホフマン転位させると、3−アミノ−5−ブロモ−2−メチルピリジンが得られ、硫酸水溶液中で亜硝酸ナトリウムでジアゾ化することにより5−ブロモ−2−メチル−3−ピリジノールに変換することができる。あるいは、(ギ酸エチルを使用して)アラニンエチルエステル(Aldrich Chemical Company)をそのN−ホルミル誘導体に変換した後、五酸化リンを使用して5−エトキシ−4−メチルオキサゾールに変換する(N.Takeoら,日本特許第45,012,732号)。5−エトキシ−4−メチルオキサゾールをアクリルニトリルとディールス−アルダー反応させると5−ヒドロキシ−6−メチルニコチノニトリルが得られ(T.Yoshikawaら,Chem.Pharm.Bull.13:873(1965))、水和(ニトリル⇒アミド)とホフマン転位により5−アミノ−2−メチル−3−ピリジノールに変換する(Y.Morisawaら,Agr.Biol.Chem.39:1275−1281(1975))。その後、5−アミノ−2−メチル−3−ピリジノールを臭化第1銅の存在下にジアゾ化すると、所望5−ブロモ−2−メチル−3−ピリジノールに変換することができる。
【0046】
あるいは、本発明のアリール置換オレフィンアミン化合物は4−(N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)アミノ)ペンタナール等のN保護アミノアルデヒドをアリールリチウムとカップリングすることにより製造することもできる。必要なアルデヒドはOtsukaら,J.Am Chem.Soc.112:838−845(1990)に記載の方法に従って市販1,5−ジメチル−2−ピロリジノン(Aldrich Chemical Company)から製造することができる。例えば、1,5−ジメチル−2−ピロリジノンを6N塩酸と共に加熱すると4−(メチルアミノ)ペンタン酸が形成され、容易に4−(メチルアミノ)ペンタン酸エチルにエステル化することができる。この化合物をジ−tert−ブチルジカーボネート1当量で処理すると、4−(N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)アミノ)ペンタン酸エチルが得られ、DIBAL−Hで還元すると、4−(N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)アミノ)ペンタナールが得られる。このアルデヒドをアリールリチウムと反応させてアルコールを生成し、更にアルコールを(例えば四塩化炭素とトリフェニルホスフィンで)ハロゲン化アルキルに変換した後に(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エンで)脱ハロゲン化水素することによりN保護オレフィンアミンに変換することができる。tert−ブトキシカルボニル保護基をトリフルオロ酢酸で除去すると、所望(E)−5−アリール−4−ペンテン−2−アミンが得られる。例えば、(3−ブロモ−5−イソプロポキシピリジンとn−ブチルリチウムから得られた)3−リチオ−5−イソプロポキシピリジンを4−(N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)アミノ)ペンタナールと縮合すると、1−(3−(5−イソプロポキシピリジン)イル)−4−(N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)アミノ)−ペンタナールが得られ、その後、(4E)−N−メチル−5−(3−(5−イソプロポキシピリジン)イル)−4−ペンテン−2−アミンに変換することができる。
【0047】
1,5−ジメチル−2−ピロリジノンのR及びSエナンチオマーは市販(R)−及び(S)−5−(ヒドロキシメチル)−2−ピロリジノン(Aldrich Chemical Company)から製造することができる。例えば、エナンチオ的に純粋なヒドロキシメチルピロリジノンをアセトニトリル中で四臭化炭素とトリフェニルホスフィンと反応させると、対応する5−(ブロモメチル)−2−ピロリジノンが得られ(Pfaltzら,Helv.Chim.Acta 79:961(1996))、トルエン中で水素化トリ−n−ブチル錫により5−メチルピロリジノンに還元する(Otsukaら,J.Amer.Chem.Soc.112:838(1990)。その後、テトラヒドロフラン中で水素化ナトリウムとヨウ化メチルを使用してメチル化すると、エナンチオ的に純粋な1,5−ジメチル−2−ピロリジノンが得られる。
【0048】
エナンチオ的に純粋な4−(N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)アミノ)ペンタナールは種々の方法で合成される。Schessingerら,Tetrahedron Lett.28:2083−2086(1987)により報告されている方法に類似の方法を使用すると、N−メチル−L−アラニン又はN−メチル−D−アラニン(Sigmaから市販)を水素化アルミニウムリチウム(対応するN−メチルアミノプロパノールを得る)、ジ−tert−ブチルジカーボネート(アミノ基を保護)及びp−トルエンスルホニルクロリド(アルコールをエステル化)と順次反応させることができる。得られた(S)−又は(R)−1−p−トルエンスルホニルオキシ−N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−2−プロパンアミンを使用してリチウムアセチリドをアルキル化すると、対応する(S)−又は(R)−N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ペンチン−2−アミンが得られる。これらをH.C.Brownら,J.Amer.Chem.Soc.97:5249(1975)に記載の方法によりヒドロホウ素化及び酸化すると、(S)−又は(R)−4(−N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)アミノ)ペンタナールが得られる。
【0049】
縮合環複素環をリチウム化して4(−N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)アミノ)ペンタナールと縮合させてもよい。例えば、6−クロロ−2−フェニルフロ[3,2−b]ピリジンをn−ブチルリチウムと4(−N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)アミノ)ペンタナールで順次処理すると、1−(6−(2−フェニルフロ[3,2−b]ピリジン)イル)−4−(N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)アミノ)−1−ペンタノールが得られる。アルコールをハロゲン化アルキルに変換した後、脱ハロゲン化水素及び脱保護すると、(4E)−N−メチル−5−(6−(2−フェニルフロ[3,2−b]ピリジン)イル)−4−ペンテン−2−アミンが得られる。必要な6−クロロ−2−フェニルフロ[3,2−b]ピリジンはA.Arcadiら,Synthesis,749(1986)に記載の方法に類似の方法を使用し、5−クロロ−2−ヨード−3−ピリジノールを酢酸パラジウム(II)とヨウ化第1銅の存在下にフェニルアセチレンと反応させることにより製造することができる。他方、5−クロロ−2−ヨード−3−ピリジノールはV.Kochら,Synthesis,497(1990)に記載の方法を使用して市販5−クロロ−3−ピリジノール(Aldrich Chemical Company)のヨウ化により製造することができる。
【0050】
本発明の組成物は2,3−ジアシル酒石酸から誘導されるアニオンをもつアリール置換アンモニウム塩組成物である。この種の酸は下記一般式:
【0051】
【化7】
(式中、R”’及びR””はアルキル(好ましくは低級アルキル)、置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロシクリル又は置換ヘテロシクリルである(用語の定義は上記の通りである))をもつ。2,3−ジアシル酒石酸型の酸は炭素2及び3の立体異性体として存在する。従って、R”’とR””が同一である場合には、DL対(エナンチオマー対)とメソ化合物が存在する。D異性体はS,S絶対配置をもち、L異性体はR,R絶対配置をもつ。メソ化合物はR,S絶対配置をもつ。R”’とR””が相互に異なる場合には、R,R/S,S対とR,S/S,R対の2種のエナンチオマー対が存在する。本発明は塩製造におけるこれらの立体異性酸の任意のものとアリール置換アミンの併用に関する。本発明の所定の好適態様では、R”’とR””は各々フェニルであり、酸のD又はL異性体を使用するが、R”’とR””が各々p−トリルであり、酸のD又はL異性体を使用することが最も好ましい。
【0052】
本発明の塩の化学量は種々の選択が可能である。一般に酸(2,3−ジアシル酒石酸型)と塩基(アリール置換アミン型)のモル比は1:2又は1:1であるが、他の比(例えば3:2や2:1)も可能である。酸と塩基のモル比は1:2が好ましい。本発明の塩の形成方法により、これらの塩は結晶構造をとり、塩形成中に存在する溶媒を吸蔵することがある。従って、本発明の塩はアリール置換アミンに対して種々の化学量の溶媒の水和物及び他の溶媒和物として存在することができる。
【0053】
多数のアシル酒石酸をアリール置換アミンと併用して本発明の塩化合物を形成することができる。これらのアシル酒石酸は市販品(例えばAldrich市販品であるジベンゾイル−L−酒石酸、ジベンゾイル−D−酒石酸、ジ−p−トルオイル−L−酒石酸、ジ−p−トルオイル−D−酒石酸、ジピバロイル−L−酒石酸及びジピバロイル−D−酒石酸)でもよいし、Furutaら,Org.Syn.Coll.Vol VII,722−727(1990)に記載の方法に従って容易に合成することもできる。例えば、アシル酒石酸を製造するにはまずD−又はL−酒石酸をベンジルアルコールでエステル化し、D−又はL−酒石酸ジベンジルとする。酒石酸ジベンジルを有機酸塩化物2当量で処理すると、対応する2,3−ジアシル酒石酸ジベンジルが得られる。次に水素と炭素に担持したパラジウムを使用してジベンジルエステルを水素化分解すると、2個のアシル基が同一である2,3−ジアシル酒石酸が得られる。酒石酸ジベンジルを酸塩化物1当量で処理すると、水素化分解後に2−アシル酒石酸が得られる。あるいは、酒石酸ジベンジルを2種の異なる酸塩化物各1当量で順次処理すると不斉2,3−ジアシル酒石酸ジベンジルが得られ、水素化分解後に不斉2,3−ジアシル酒石酸が得られる。これらの方法はD−、L−又はメソ酒石酸を出発材料として利用することができる。
【0054】
本発明の化合物は種々の方法で得られる。ジ−p−トルオイル−D−酒石酸塩形の(2S)−(4E)−N−メチル−5−[3−(5−イソプロポキシピリジン)イル]−4−ペンテン−2−アミンを製造するには、(i)ジ−p−トルオイル−L−酒石酸(0.5〜1当量)のエタノール溶液に適切な純度の化合物のエタノール溶液を加熱還流下に加えて沈澱を形成し、(ii)熱及び/又は水とエタノール(水は10%以下)を加えて沈澱を溶かし、(iii)必要に応じて形成された溶液を冷却して塩を沈澱させ、(iv)塩を濾過及び収集する。使用する化学量、溶媒混合物、溶質濃度及び温度は種々の選択が可能である。本発明で塩形成に使用するアシル化酒石酸としては、市販品(Aldrich Chemical Company)であるジベンゾイル−L−酒石酸、ジベンゾイル−D−酒石酸、ジ−p−トルオイル−L−酒石酸、ジ−p−トルオイル−D−酒石酸、ジピバロイル−L−酒石酸及びジピバロイル−D−酒石酸や、酒石酸ジベンジルと適当な酸塩化物2当量から合成後に水素化してベンジル保護基を除去することにより容易に合成されるジ−o−トルオイル−L−酒石酸、ジ−o−トルオイル−D−酒石酸、ジ−m−トルオイル−L−酒石酸、ジ−m−トルオイル−D−酒石酸、ジ−p−メトキシベンゾイル−L−酒石酸、ジ−p−メトキシベンゾイル−D−酒石酸、ジ−o−メトキシベンゾイル−L−酒石酸、ジ−o−メトキシベンゾイル−D−酒石酸、ジ−m−メトキシベンゾイル−L−酒石酸、ジ−m−メトキシベンゾイル−D−酒石酸、ジ−p−ブロモベンゾイル−L−酒石酸、ジ−p−ブロモベンゾイル−D−酒石酸、ジ−o−ブロモベンゾイル−D−酒石酸、ジ−o−ブロモベンゾイル−L−酒石酸、ジ−m−ブロモベンゾイル−D−酒石酸及びジ−m−ブロモベンゾイル−L−酒石酸が挙げられる。あるいは、Barriereらの米国特許第5,326,782号に記載されているような酒石酸ジ−t−ブチルアセチル、酒石酸ジブチリル及び酒石酸ジ−i−バレリルを対イオンとして使用してもよい。更に、米国特許第5,962,737号、4,803,207号(Whiteら)及び4,528,290号(Wongら)も参照されたい。
【0055】
本発明はある病態又は疾患の予防をその恐れのある対象に提供すると共に、このような病態又は疾患をもつ対象に治療を提供する方法に関する。例えば、本方法はCNS疾患の進行をある程度まで予防し(即ち保護効果を提供)、CNS疾患の症状を改善し、CNS疾患の再発を改善するために有効な量の化合物を患者に投与する。本方法は上記一般式から選択される有効量の化合物を投与する。本発明は上記一般式から選択される化合物を含む医薬組成物に関する。本発明は本発明の化合物のプロドラッグ誘導体にも関する。前記化合物は通常は非光学活性である。しかし、化合物によっては化合物が光学活性をもつような性質の置換基をもつ場合がある。光学活性化合物はラセミ混合物又はエナンチオマーとして利用することができる。
【0056】
アリール置換アミンと2,3−ジアシル酒石酸から誘導される本発明の塩はアリール置換アミンと他の酸(例えばフマル酸又はガラクタル酸)から誘導される他の塩に勝る多数の利点がある。一般に、アリール置換アミンの2,3−ジアシル酒石酸塩は水溶性物質であり、他の塩よりも結晶し易く、本質的に低吸湿性である。例えば、(2S)−(4E)−N−メチル−5−[3−(5−イソプロポキシピリジン)イル]−4−ペンテン−2−アミンのジ−p−トルオイル−D−酒石酸塩は水溶性で高度に結晶質で非多形であり、ガラクタル酸(粘液酸)から誘導される対応する塩よりも低吸湿性である。例えば、(2S)−(4E)−N−メチル−5−[3−(5−イソプロポキシピリジン)イル]−4−ペンテン−2−アミンの1/2ガラクタル酸塩の40℃、70%相対湿度における吸水量は11.8%であったが、対応する1/2(ジ−p−トルオイル−D−酒石酸塩)の室温、90%相対湿度における吸水量は3.2%であった。従って、(2S)−(4E)−N−メチル−5−[3−(5−イソプロポキシピリジン)イル]−4−ペンテン−2−アミンのジ−p−トルオイル−D−酒石酸塩はさらさらした結晶質粉末であり、このような性質は薬剤開発及び医薬製造に明白な利点である。必要に応じてこの塩を医薬加工に許容可能な粒度範囲まで粉砕してもよい。(2S)−(4E)−N−メチル−5−[3−(5−イソプロポキシピリジン)イル]−4−ペンテン−2−アミンのジ−p−トルオイル−D−酒石酸塩は融点が高く、物理化学的に安定であり、非反応性である。前記塩は固体経口剤形の製造に選択される広範な賦形剤に相溶性である。このような特徴は特に医薬用に精製された水和物である多糖誘導体等の賦形剤や、表面水が疎結合しているだけの賦形剤について顕著である。1例として、E−メタニコチン等の所定アリール置換アミンとフマル酸から誘導される塩は塩内部に不純物が形成し易い。例えば、E−メタニコチン中の第2アミンがフマル酸中のオレフィンにマイケル付加反応するのに伴って不純物が生じる。これらの不純物は塩の化学的純度を低下させ、長期保存後に塩の化学的完全性を悪化させる。上記塩の酸成分であるジ−p−トルオイル−D−酒石酸は光学純度の高い塩を生成する非ラセミアミンの分割剤として多用されている。上記非ラセミアミン(2S)−(4E)−N−メチル−5−[3−(5−イソプロポキシピリジン)イル]−4−ペンテン−2−アミンの場合には、対応するジ−p−トルオイル−D−酒石酸塩を形成すると、光学純度の高い塩が得られる。光学純度が高いと、より高純度のニコチンアゴニストが得られ、従って、所定ニコチン酸受容体に対する結合親和性を増加できる。
【0057】
本発明の化合物は他の型のニコチン化合物が治療薬として提案されているような病態及び疾患の治療に有用である。例えば、参考資料としてその開示内容全体を本明細書に組込むWilliamsら,DN&P 7(4):205−227(1994)、Arnericら,CNS Drug Rev.1(1):1−26(1995)、Arnericら,Exp.Opin.Invest,Drugs 5(1):79−100(1996)、Bencherifら,JPET 279:1413(1996)、Lippielloら,JPET 279:1422(1996)、Damajら,Neuroscience(1997)、Holladayら,J.Med.Chem 40(28):4169−4194(1997)、Bannonら,Science 279:77−80(1998)、PCT WO94/08992、PCT WO96/31475、並びに米国特許第5,583,140号(Bencherifら)、5,597,919号(Dullら)及び5,604,231号(Smithら)を参照されたい。本発明の化合物は潰瘍性大腸炎を治療するため、種々の神経変性病を治療するため及び癲癇症状等の痙攣を治療するために鎮痛薬として使用することができる。本発明により治療することができるCNS疾患としては、初老期痴呆(早発アルツハイマー病)、老人性痴呆(アルツハイマー型痴呆)、HIV痴呆、多発性脳梗塞、パーキンソン病をはじめとするパーキンソン症候群、ピック病、ハンチントン舞踏病、遅発性ジスキネジー、多動、躁病、注意欠乏障害、不安、鬱病、軽度認知障害、読字障害、精神分裂病及びトゥーレット症候群が挙げられる。本発明の化合物は梅毒やクロイツフェルト−ヤコブ病等の病態の治療にも使用できる。本化合物は公知方法を使用して投与する。本発明の組成物は診断用組成物の処方に有用な型の成分等の他の成分を加えた製剤組成物として投与することもできる。診断薬としての組成物は米国特許第5,853,696号(Elmalchら)及び5,969,144号(Londonら)に記載されているように使用する。本発明の塩は治療用途で有用であることが望ましい。例えば、Bergeら,J.Pharm.Sci.,66:1−19(1977)及びAndersonら,In:The Practice Medicinal Chemistry,Ch.34:739−754(1996)参照。
【0058】
上記組成物はプロドラッグ形態で投与することができる。「プロドラッグ」とは例えば血液中での加水分解により迅速にin vivo変換して親ペプチド化合物となる化合物を意味する。「医薬的に許容可能なプロドラッグ」とは妥当な医学的判断の範囲内で過度の毒性、刺激、アレルギー応答等を生じずに患者で医薬として使用するのに適しており、所期用途に有効な化合物を意味し、本発明のペプチド化合物の医薬的に許容可能なエステルや可能な場合には両性イオン形態を含む。本発明の医薬的に許容可能なプロドラッグはいずれも参考資料本明細書に組込むT.HiguchiとV.Stella,Pro−drugs as Novel Delivery Systems,Vol.14 of the A.C.S.Symposium Series及びEdward B.Roche編,Bioreversible Carriers in Drug Design,American Pharmaceutical Association and Pergamon Press,1987に記載されている。
【0059】
医薬組成物は添加剤又は補助剤として種々の他の成分を加えることができる。該当ケースで使用される典型的な医薬的に許容可能な成分又は補助剤としては酸化防止剤、フリーラジカル捕捉剤、ペプチド、成長因子、抗生物質、静菌剤、免疫抑制剤、抗凝血剤、緩衝剤、抗炎症剤、解熱剤、持効性結合剤、麻酔剤、ステロイド及びコルチコステロイドが挙げられる。このような成分は付加治療効果を提供したり、医薬組成物の治療作用を変えるように作用したり、医薬組成物の投与に付随する副作用の危険を防止するように作用することができる。場合により、特定疾患を予防又は治療することを目的とした他の化合物と共に医薬組成物の一部として本発明の化合物を利用することもできる。
【0060】
組成物の投与方法は種々の選択が可能である。化合物は(例えば参考資料としてその開示内容全体を本明細書に組込むBrooksらの米国特許第4,922,901号に記載されているような送達装置を使用するか又は鼻腔内にエアゾール形態で)吸入、(例えばローション形態で)局所、(例えば水性もしくは非水性液体等の溶媒又は固体キャリヤーに加えた液体形態で)経口、(例えばデキストロース又は塩類溶液に加えて)静脈内、(例えば医薬的に許容可能な液体又は液体混合物中の懸濁液又はエマルションとして)注入もしくは注射、髄腔内、脳室内、又は(例えば経皮パッチを使用して)経皮の各経路で投与することができる。バルク活性剤形態で組成物を投与することも可能であるが、効率的で有効な投与には各化合物を医薬組成物又は製剤形態に処方することが好ましい。このような化合物の典型的投与方法は当業者に自明である。例えば、組成物は錠剤、ハードゼラチンカプセル又は持効カプセル形態で投与することができる。別例として、Novartis and Alza Corportionから入手可能な型のパッチ技術を使用して化合物を経皮投与することもできる。本発明の医薬組成物の投与は断続的でもよいし、漸進、連続、一定又は制御速度で行ってもよく、温血動物(例えばマウス、ラット、ネコ、ウサギ、イヌ、ブタ、ウシ又はサル等の哺乳動物)に投与できるが、有利な態様ではヒトに投与することが好ましい。更に、医薬製剤を投与する時間と1日の回数も種々の選択が可能である。医薬製剤の活性成分がCNSの機能を発現する対象体内受容体部位と相互作用するように投与することが好ましい。より具体的には、CNS疾患を治療する場合には、筋肉型受容体サブタイプに及ぼす作用を最小にしながら、CNSの機能を発現する該当受容体サブタイプに及ぼす作用を最適化するように投与することが好ましい。本発明の組成物の他の適切な投与方法はSmithらの米国特許第5,604,231号に記載されている。
【0061】
化合物の適切な用量は疾患の症状の発生を予防するか又は患者が罹患している疾患の何らかの症状を治療するために有効な量である。「有効量」、「治療量」又は「有効用量」とは、所望薬理又は治療効果を導き、疾患の有効な予防又は治療をもたらすために十分な量を意味する。例えば、CNS疾患を治療する場合には、化合物の有効量は対象の血液脳関門を通過し、対象の脳内の該当受容体部位に結合し、該当ニコチン受容体サブタイプを活性化する(例えば神経伝達物質分泌を可能にし、疾患を有効に予防又は治療する)ために十分な量である。疾患の予防は疾患の症状の発病を遅延させることにより発現される。疾患の治療は疾患に関連する症状の減少又は疾患の症状の再発の改善により発現される。
【0062】
有効用量は患者の状態、疾患の症状の重度及び医薬組成物の投与方法等の因子に応じて種々の選択が可能である。ヒト患者の場合、典型的化合物の有効用量は一般に神経伝達物質(例えばドーパミン)放出を可能にするように該当受容体を活性化させるために十分な量の化合物を投与するが、骨格筋と神経節に及ぼす作用を有意程度まで誘導するには不十分な量とする。化合物の有効用量は当然のことながら患者毎に異なるが、一般にはCNS効果又は他の所望治療効果が生じる量以上で筋肉効果が観察される量以下とする。
【0063】
通常、化合物の有効用量は一般に5mg未満/kg患者体重の量の化合物を投与する必要がある。多くの場合には、本発明の化合物は約1mg未満/kg患者体重、通常は約100μg未満/kg患者体重であるが、大抵は約10μg〜100μg未満/kg患者体重の量を投与する。低濃度で筋肉型ニコチン受容体への作用を誘導しない本発明の化合物の場合、有効用量は5mg未満/kg患者体重であり、多くの場合にはこのような化合物を50μg〜5mg未満/kg患者体重の量で投与する。上記有効用量は通常は一度に投与するか又は24時間の間に1回以上に分けて投与する量である。
【0064】
ヒト患者の場合、典型的化合物の有効用量は一般に少なくとも約1、多くの場合には少なくとも約10、大抵は少なくとも約25μg/24時間/患者の化合物を投与する必要がある。ヒト患者の場合、典型的化合物の有効用量は一般に約500、多くの場合には約400、大抵は約300μg/24時間/患者を越えない化合物を投与する必要がある。更に、有効用量の投与は患者の血漿中の化合物の濃度が一般に500ng/ml、大抵は100ng/mlを越えないようにする。
【0065】
本発明の方法により有用な化合物は患者の血液脳関門を通過することができる。従って、このような化合物は患者の中枢神経系に侵入することができる。本発明の実施に有用な典型的化合物の対数P値は一般に約−0.5よりも大きく、多くの場合には約0よりも大きく、大抵は約0.5よりも大きい。このような典型的化合物の対数P値は一般に約3未満、多くの場合には約2未満、大抵は約1未満である。対数P値は化合物が生体膜等の拡散隔膜を通過する能力の尺度となる。Hanschら,J.Med.Chem.11:1(1968)参照。
【0066】
本発明の方法により有用な化合物は患者の脳のニコチンドーパミン作動性受容体に結合し、殆どの場合にはこれを活性化させることができる。従って、このような化合物はニコチン薬理作用を発現することができ、特にニコチンアゴニストとして作用することができる。本発明の実施に有用な典型的化合物の受容体結合定数は一般に約0.1nMを上回り、多くの場合には約1nMを上回り、大抵は約10nMを上回る。所定化合物の受容体結合定数は約100μM未満であり、多くの場合には約10μM未満であり、大抵は約5μM未満であり、好適化合物の受容体結合定数は一般に約1μM未満、多くの場合には約100nM未満、大抵は約50nM未満である。好ましくはないが、化合物によっては受容体結合定数が10μM未満、更には100μM未満のものもある。受容体結合定数は化合物が患者の所定脳細胞の該当受容体部位の2分の1に結合する能力の尺度となる。Chengら,Biochem.Pharmacol.22:3099(1973)参照。
【0067】
本発明の方法により有用な化合物は神経末端物質(即ちシナプトソーム)からの神経伝達物質分泌を有効に活性化することによりニコチン機能を示すことができる。従って、このような化合物は該当ニューロンを活性化してアセチルコリン、ドーパミン及び他の神経伝達物質を放出又は分泌させることができる。一般に、本発明の実施に有用な典型的化合物は筋肉型ニコチン受容体の活性化に必要な量の少なくとも3分の1、典型的には少なくとも約10分の1、大抵は少なくとも約100分の1、場合によっては少なくとも約1000分の1の量でドーパミン分泌を活性化することができる。本発明の所定の化合物は等モル量の(S)−(−)−ニコチンにより誘導されると同等の量のドーパミンを分泌させることができる。
【0068】
本発明の化合物は本発明の方法に従って有効量で使用した場合に所定該当ニコチン受容体に選択的であるが、少なくともドーパミン放出の活性化に必要な濃度よりも高い濃度で望ましくない副作用を伴う受容体の有意活性化を生じない。これは、CNS疾患の予防及び/又は治療をもたらす化合物の特定用量がドーパミン放出の活性化に必要な濃度の>5倍、好ましくは>100倍、より好ましくは>1000倍の濃度で所定の筋肉型ニコチン受容体の活性化を誘発するには基本的に無効であることを意味する。心血管副作用の原因となる神経節型受容体に対する本発明の所定化合物のこの選択性は、これらの化合物がドーパミン放出の活性化に必要な濃度よりも高い濃度で副腎クロム親和組織のニコチン機能を活性化できないことにより裏付けられる。
【0069】
本発明の化合物は本発明の方法に従って有効量で使用した場合にある程度までCNS疾患の進行を予防し、CNS疾患の症状を改善し、CNS疾患の再発を改善するために有効である。他方、前記化合物のこのような有効量は骨格筋に関する作用の増加により判断されるような目立った副作用を生じるには不十分である。従って、本発明の所定化合物を投与すると、所定副作用を避けながら所定CNS疾患の治療を提供する治療窓が得られる。即ち、本発明の化合物の有効用量はCNSに所望作用を生じるには十分であるが、望ましくない副作用を生じるには不十分である(即ち十分高いレベルにない)。CNS疾患の治療をもたらす本発明の化合物の有効な投与は、所定副作用を有意程度まで生じるために十分な量の1/5未満、多くの場合には1/10未満を投与した場合に得られることが好ましい。
【0070】
本発明の医薬組成物は所定の他の病態、疾病及び疾患を予防又は治療するためにも利用できる。このような疾病及び疾患の例としては炎症性腸疾患、急性胆管炎、アフタ性口内炎、関節炎(例えばリウマチ様関節炎や骨関節炎)、神経変性病、(例えばAIDS、AIDS関連症候群及び新形成で生じるような)感染続発性カヘキシー、及びPCT WO98/25619に記載されている適応症が挙げられる。本発明の医薬組成物はこれらの病態、疾病及び疾患に付随する可能性のある症状を改善するために利用することができる。例えば、本発明の医薬組成物は遺伝病及び障害の治療、狼瘡等の自己免役疾患の治療、(例えば細菌、真菌及びウイルス感染や、敗血症等の他の型の毒素の作用を治療するための)抗感染剤として、(例えば急性胆管炎、アフタ性口内炎、喘息及び潰瘍性大腸炎を治療するための)抗炎症剤として、及び(例えばカヘキシー、炎症、神経変性病、ウイルス感染及び新形成の治療に望ましい)サイトカイン放出阻害剤として使用することができる。本発明の化合物は上記型の疾病及び疾患の管理において既存療法と併用して補助療法として使用することもできる。このような場合には、医薬製剤の活性成分が筋肉及び神経節に関連するもの等の受容体サブタイプに及ぼす作用を最小限にしながら異常サイトカイン産生に及ぼす作用を最適にするように作用するように投与することが好ましい。サイトカイン産生に変化させるか又はサイトカイン産生を生じる領域と活性成分が相互作用するように投与することが好ましい。このような病態又は疾患の治療には、本発明の化合物は非常に強力であり(即ち非常に低濃度でサイトカイン産生及び/又は分泌に作用する)、非常に有効である(即ちサイトカイン産生及び/又は分泌を比較的高度まで有意に抑制する)。
【0071】
有効用量は最大効果の出現が認められる非常に低濃度であることが最も好ましい。該当組織容量当たりの化合物の量として測定した濃度は一般に化合物がサイトカイン産生にどの程度まで作用するかを表す尺度となる。通常、このような化合物の有効用量は一般に100μg/kg患者体重を大きく下回る量、更には10μg/kg患者体重よりも少量の化合物を投与する必要がある。上記有効用量は通常は一度に投与するか又は24時間の間に1回以上に分けて投与する量である。
【0072】
ヒト患者の場合、典型的化合物の有効用量は一般に少なくとも約1、多くの場合には少なくとも約10、大抵は少なくとも約25μg/24時間/患者の化合物を投与する必要がある。ヒト患者の場合、典型的化合物の有効用量は一般に約1、多くの場合には約0.75、大抵は約0.25mg/24時間/患者を越えない化合物を投与する必要がある。更に、有効用量の投与は患者の血漿中の化合物の濃度が一般に500pg、多くの場合には300pg/ml、大抵は100pg/mlを越えないようにする。このように使用すると、本発明の化合物は用量依存的であり、従って、低濃度で使用した場合にはサイトカイン産生及び/又は分泌を抑制するが、高濃度ではこれらの抑制効果を示さない。本発明の化合物は該当ニコチン受容体サブタイプの活性化を有意程度まで誘発するために必要な量よりも少量で使用した場合にサイトカイン産生及び/又は分泌抑制効果を示す。
【0073】
以下、実施例により本発明を説明するが、これらの実施例は発明を限定するものではない。これらの実施例において部及び百分率は特に指定しない限り、全て重量に基づく。
【0074】
実施例
実施例1
該当受容体部位に対する結合の測定
Dullらの米国特許第5,597,919号に記載の方法に従って該当受容体部位に対する化合物の結合を測定した。Chengら,Biochem,Pharmacol.22:3099(1973)の方法を使用してIC50値から阻害定数(Ki値)を計算し、nMとして報告した。結合定数が低いことから明らかなように、本発明の化合物は所定CNSニコチン受容体に対して良好な高親和性結合を示す。
【0075】
実施例2
試料番号1は(2S)−(4E)−N−メチル−5−[3−(5−イソプロポキシピリジン)イル]−4−ペンテン−2−アミン・1/2(ジ−p−トルオイル−L−酒石酸塩)であり、次のように製造する。
【0076】
(2S)−(4E)−N−メチル−5−[3−(5−イソプロポキシピリジン)イル]−4−ペンテン−2−アミンはCaldwellらのPCT WO99/65876に記載の手順に従って製造した。
【0077】
(2S)−(4E)−N−メチル−5−[3−(5−イソプロポキシピリジン)イル]−4−ペンテン−2−アミン・1/2(ジ−p−トルオイル−L−酒石酸塩)は以下の手順を使用して製造する。ジ−p−トルオイル−L−酒石酸(0.4066g,1.052mmol)の無水エタノール(5mL)溶液を還流温度付近に維持して撹拌しながら、これに(2S)−(4E)−N−メチル−5−[3−(5−イソプロポキシピリジン)イル]−4−ペンテン−2−アミン(0.2466g,1.052mmol)の無水エタノール(6mL)溶液を滴下した。得られた淡黄色溶液を周囲温度まで放冷させ、15時間放置した。固体は沈澱しなかった。従って、溶液をロータリー・エバポレーターにより濃縮した後、高減圧下に乾燥した。得られたオフホワイトフォームを還流温度付近まで加熱下にイソプロパノール(3mL)に溶かした。周囲温度まで冷却後、ジエチルエーテル(3mL)を滴下した。得られた混合物を5℃に16時間維持した。得られた固体を濾過し、ジエチルエーテルで洗浄し、40℃で減圧乾燥すると、白色粉末0.2383g(53.0%)が得られた。この材料0.167gを加熱下に最小量の酢酸エチルに溶かした。得られた溶液を周囲温度まで放冷させ、更に5℃まで冷却した。得られた固体を濾過し、酢酸エチルで洗浄し、40℃で減圧乾燥すると、白色粉末0.1393g(回収率83.4%)が得られた(mp159〜161℃)。
【0078】
試料番号1はKi=6nMを示した。結合定数が低いことから明らかなように、この化合物は所定CNSニコチン受容体に対して良好な結合親和性をもつ。
【0079】
実施例3
試料番号2は(2S)−(4E)−N−メチル−5−[3−(5−イソプロポキシピリジン)イル]−4−ペンテン−2−アミン・1/2(ジ−p−トルオイル−D−酒石酸塩)であり、次のように製造する。
【0080】
(2S)−(4E)−N−メチル−5−[3−(5−イソプロポキシピリジン)イル]−4−ペンテン−2−アミン・1/2(ジ−p−トルオイル−D−酒石酸塩)は次のように製造した。ジ−p−トルオイル−D−酒石酸(0.085g,0.219mmol)の無水エタノール(3mL)溶液を還流温度付近に維持して撹拌しながら、これに(上記のように製造した)(2S)−(4E)−N−メチル−5−[3−(5−イソプロポキシピリジン)イル]−4−ペンテン−2−アミン(0.1272g,0.54mmol)の無水エタノール(3mL)溶液を滴下した。黄色溶液を室温まで2時間放冷させ、0℃まで1時間冷却し、得られた固体を濾取した。固体を40℃で減圧乾燥すると、白色粉末0.1695g(73.0%)が得られた(mp197〜201℃)。
【0081】
試料番号2はKi=5nMを示した。結合定数が低いことから明らかなように、この化合物は所定CNSニコチン受容体に対して良好な結合親和性をもつ。
【0082】
実施例4
試料番号2の(2S)−(4E)−N−メチル−5−[3−(5−イソプロポキシピリジン)イル]−4−ペンテン−2−アミン・1/2(ジ−p−トルオイル−D−酒石酸塩)は以下の手順でも得られる。(上記のように製造した)(2S)−(4E)−N−メチル−5−[3−(5−イソプロポキシピリジン)イル]−4−ペンテン−2−アミンのt−ブチルメチルエーテル(TBME)溶液(遊離塩基19.4g(82.8mmol)を含む溶液165.5g)にメタノール(50mL)を加えた。混合物を加熱し、TBMEとメタノールを留去すると同時にメタノールを加えて容量を維持した。合計225mLを加えると同時に留去した。バッチを約40℃まで冷却し、ジ−p−トルオイル−D−酒石酸(19.2g)を加えて沈澱を形成した。混合物を計量し、存在するメタノールの量を測定した。更にメタノール(33mL)を加えて塩濃度を14%w/wに調節した。溶液が形成されるまで(約68℃)混合物を加熱した後、結晶点まで冷却した。メタノール(137mL)を減圧留去すると同時に等容量のイソプロパノールを加えた。スラリーを0〜5℃まで(45分間かけて)冷却した。得られた生成物を濾取し、冷イソプロパノール(25mL)で洗浄し、50℃で減圧乾燥すると、(2S)−(4E)−N−メチル−5−[3−(5−イソプロポキシピリジン)イル]−4−ペンテン−2−アミン・1/2(ジ−p−トルオイル−D−酒石酸塩)(32.6g;92.1%)が得られた。
【0083】
実施例5
試料番号3は(E)−メタニコチン・1(ジ−p−トルオイル−L−酒石酸塩)であり、次のように得られる。
【0084】
(E)−メタニコチンはRuecroftとWoodsの米国特許第5,663,356号に記載の手順に従ってニコチンから製造した。
【0085】
(E)−メタニコチン・1(ジ−p−トルオイル−L−酒石酸塩)は次のように製造した。(E)−メタニコチン(0.200g,1.233mmol)のテトラヒドロフラン(THF)(1mL)溶液を3分間かけて滴下しながら、THF(3.7mL)及びエタノール(0.8mL)中のジ−p−トルオイル−L−酒石酸(0.491g,1.233mmol)の溶液を撹拌下に窒素雰囲気下で加熱還流した。混合物を周囲温度まで放冷させた後、5℃で48時間保存した。沈澱を濾過し、冷THF−エタノール(9:1v/v)(2×1mL)、次いで冷THF(2×3mL)で洗浄した後、40℃で3時間減圧乾燥すると白色粉末0.642g(94.9%)が得られた。この材料を熱エタノール(5mL)に溶かし、熱溶液をグラスウールで濾過し、濾液を周囲温度まで冷却した後、5℃に24時間冷却することにより再結晶させた。得られた固体を濾過し、冷エタノール(2×2mL)で洗浄し、45℃で24時間減圧乾燥すると白色粉末0.575g(回収率91.0%、総収率85.1%)が得られた(mp157.5〜159.5℃)。
【0086】
試料番号3はKi=14nMを示した。結合定数が低いことから明らかなように、この化合物は所定CNSニコチン受容体に対して良好な結合親和性をもつ。
【0087】
以上、本発明を説明したが、これにより発明を限定するものではない。本発明は請求の範囲により定義され、請求の範囲の等価物も含むものとする。
発明の背景
本発明は医薬組成物、特にニコチン様コリン作動性受容体に作用することが可能な化合物を含む医薬組成物に関する。より具体的には、本発明は例えば特定ニコチン受容体サブタイプのアゴニストとしてニコチン様コリン作動性受容体を活性化することが可能な化合物の塩に関する。本発明は多種多様の病態及び疾患、特に中枢及び自律神経系障害に関連する病態及び疾患の治療方法にも関する。
【0002】
ニコチンは多数の薬理効果をもつことが示されている。例えば、Pullanら,N.Engl.J.Med.330:811−815(1994)参照。これらの効果のうちには神経伝達物質放出に及ぼす効果に関連すると思われるものがある。例えば、Sjak−shieら,Brain Res.624:295(1993)にはニコチンの神経保護効果が示されている。ニコチンを投与するとニューロンによりアセチルコリンとドーパミンが放出されることはRowellら,J.Neurochem.43:1593(1984);Rapierら,J.Neurochem.50:1123(1988);Sandorら,Brain Res.567:313(1991)及びVizi,Br.J.Pharmacol.47:765(1973)により報告されている。ニコチンを投与するとニューロンによりノルエピネフリンが放出されることはHallら,Biochem.Pharmacol.21:1829(1972)により報告されている。ニコチンを投与するとニューロンによりセロトニンが放出されることはHeryら,Arch.Int.Pharmacodyn.Ther.296:91(1977)により報告されている。ニコチンを投与するとニューロンによりグルタミン酸塩が放出されることはTothら,Neurochem Res.17:265(1992)により報告されている。更に、ニコチンは所定疾患の治療に使用されている所定医薬組成物の薬理作用を増強することも報告されている。Sanbergら,Pharmacol.Biochem.& Behavior 46:303(1993);Harsingら,J.Neurochem.59:48(1993)及びHughes,Proceedings from Intl.Symp.Nic.S40(1994)参照。更に、ニコチンの種々の他の有益な薬理効果も示されている。Decinaら,Biol.Psychiatry 28:502(1990);Wagnerら,Pharmacopsychiatry 21:301(1988);Pomerleauら,Addictive Behaviors 9:265(1984);Onaiviら,Life Sci.54(3):193(1994);Tripathiら,JPET 221:91−96(1982)及びHamon,Trends in Pharmacol.Res.15:36参照。
【0003】
種々のニコチン化合物が多種多様の病態及び疾患の治療に有用であると報告されている。例えば、Williamsら,DN&P7(4):205−227(1994)、Arnericら,CNS Drug Rev.1(1):1−26(1995)、Arnericら,Exp.Opin.Invest.Drugs 5(1):79−100(1996)、Bencherifら,JPET 279:1413−1421(1996)、Lippielloら,JPET 279:1422−1429(1996)、Damajら,Neuroscience(1997)、Holladayら,J.Med.Chem 40(28):4169−4194(1997)、Bannonら,Science 279:77−80(1998)、PCT WO94/08992、PCT WO96/31475、PCT WO97/19059、ヨーロッパ特許出願第857,725号、並びに米国特許第5,278,176号(Lin)、5,583,140号(Bencherifら)、5,597,919号(Dullら)、5,604,231号(Smithら)、5,616,716号(Dullら)、5,811,442号(Bencherifら)及び5,852,041号(Cosfordら)参照。
【0004】
ニコチン化合物等の化合物は塩形態で利用及び投与することが通例である。代表的な医薬的に許容可能な塩とその特性はBergeら,J.Pharm.Sci.,66:1−19(1977)及びAndersonら,In:The Practice Medicinal Chemistry,Ch.34:739−754(1996)に記載されている。米国特許第3,952,050号(Price)及び5,326,782号(Barriereら)も参照されたい。ニコチン化合物の代表的な塩としては米国特許第5,663,356号(Ruecroftら)、5,861,423号(Caldwellら)及び5,986,100号(Bencherifら)に記載されている型の有機又は無機酸付加塩が挙げられる。
【0005】
CNS疾患は神経疾患の1種である。CNS疾患は薬物に誘発されるものや、遺伝素因、感染又は外傷に起因するものや、病因不明のものがある。CNS疾患は神経精神障害、神経障害及び精神障害を含み、神経変性疾患、行動障害、認知障害及び認知感情障害が挙げられる。数種のCNS疾患の臨床徴候はCNS障害に起因するとされている(即ち、不適切な神経伝達物質放出レベル、不適切な神経伝達物質受容体の性質及び/又は神経伝達物質と神経伝達物質受容体の不適切な相互作用に起因する疾患)。数種のCNS疾患はコリン作動欠損、ドーパミン作動欠損、アドレナリン作動欠損及び/又はセロトニン作動欠損に起因すると考えられる。比較的頻発するCNS疾患としては初老期痴呆(早発アルツハイマー病)、老人性痴呆(アルツハイマー型痴呆)、パーキンソン病をはじめとするパーキンソン症候群、不安、注意欠乏活動亢進障害、鬱病、読字障害、癲癇、ハンチントン舞踏病、多動、躁病、神経内分泌障害、精神分裂病、睡眠障害、遅発性ジスキネジー、トゥーレット症候群及び摂食調節障害が挙げられる。
【0006】
ある病態又は疾患をもつか又はその恐れのある患者にニコチン化合物を投与することによりこのような病態又は疾患を予防及び治療する有用な方法を提供することが望ましい。ニコチン薬理作用をもつ活性成分を含み、(例えばCNSの機能に対して)有益な効果があるが、副作用の少ない医薬組成物を投与することにより所定疾患(例えばCNS疾患)をもつ個体で前記疾患の症状を止めることができるならば極めて有益である。ニコチン受容体と相互作用する化合物(例えばCNSの機能を発現させることが可能な化合物)でありながら、CNSの機能を発現させるために十分な量で使用した場合に望ましくない副作用(例えば骨格筋部位の相当な活性)を誘発し得るニコチン受容体サブタイプを有意に発現させない化合物を含む医薬組成物を提供できるならば極めて望ましい。
【0007】
発明の要約
本発明はニコチン化合物、特にアリール置換アミン(例えばアリール置換オレフィンアミン)の特徴をもつニコチン化合物の2,3−ジアシル酒石酸塩である組成物に関する。好ましいニコチン化合物はメタニコチン型化合物の特徴をもつ。本発明は本発明の組成物のプロドラッグ誘導体にも関する。
【0008】
本発明は多種多様の病態又は疾患、特にドーパミン放出等の神経伝達物質放出の神経調節に関する疾患をはじめとするニコチンコリン作動性神経伝達の障害を特徴とする疾患の予防又は治療方法にも関する。本発明は正常神経伝達物質放出の変異を特徴とする中枢神経系(CNS)疾患等の疾患の予防又は治療方法にも関する。本発明は所定病態の治療方法(例えば疼痛緩和方法)にも関する。本方法は有効量の本発明の組成物を対象に投与する。
【0009】
本発明は別の側面ではニコチン化合物を含む有効量の塩組成物を含む医薬組成物に関する。このような医薬組成物は有効量で使用した場合に対象の該当ニコチン受容体部位と相互作用することが可能であり、従って、多種多様の症状及び疾患、特に正常神経伝達物質放出の変異を特徴とする疾患の予防又は治療において治療剤として作用することが可能な化合物を含む。好ましい医薬組成物は本発明の組成物を含む。
【0010】
本発明の医薬組成物は正常神経伝達物質放出の変異を特徴とするCNS疾患等の疾患の予防及び治療に有用である。前記医薬組成物はこのような疾患をもち、このような疾患の臨床徴候を示す個体に治療効果があり、即ち前記組成物内の化合物は有効量で使用した場合に(i)ニコチン薬理作用を示し、該当ニコチン受容体部位に作用する(例えば薬理アゴニストとして作用し、ニコチン受容体を活性化する)と共に、(ii)神経伝達物質分泌を促し、従ってこれらの疾患に関連する症状を予防及び抑制することができる。更に、前記化合物は(i)患者の脳のニコチンコリン作動性受容体数を増し、(ii)神経保護効果を示し、(iii)有効量で使用した場合に目立った副作用(例えば血圧及び心拍数の有意増加、消化管への有意なマイナス効果、並びに骨格筋への有意影響)を生じないと予想される。本発明の医薬組成物は多種多様の病態及び疾患の予防及び治療に関して安全且つ有効であると考えられる。
【0011】
本発明の上記及び他の側面を以下の詳細な説明と実施例に詳細に説明する。
【0012】
発明の詳細な説明
本発明の化合物はアリール置換アミンのジアシル酒石酸塩である。本発明のアリール置換アミン塩基は式:
【0013】
【化4】
の化合物を含む。式中、X、X’、X”、Y’及びY”は各々窒素、酸素に結合した窒素(例えばN−酸化物(N−O)官能基)又はHanschら,Chem.Rev.91:165(1991)に従って決定したσm値が0よりも大きく、多くの場合には0.1よりも大きく、一般に0.2よりも大きく、更には0.3より大きいか、0未満であり、一般に−0.1未満であるか、又は0であることを特徴とする置換基種に結合した炭素である。窒素又は酸素に結合した窒素はX、X’、X”、Y’及びY”の3種以下が好ましく、2種以下がより好ましく、1又は2種が最も好ましい。更に、酸素に結合した窒素はX、X’、X”、Y’及びY”の1種以下が非常に好ましく、これらの種の1種が酸素に結合した窒素である場合には、その種はX”であることが好ましい。一般に、X’はCR’、CBr、COR’、CSR’ 又はCNR’R”である。一般に、XはCHである。X”は窒素が最も好ましい。所定の好ましい場合には、X’とX”はいずれも窒素である。一般に、Y’とY”は各々置換基種に結合した炭素であり、Y’とY”はいずれも置換基種(例えば水素)に結合した炭素であることが好ましい。更に、mとnはmとnの和が1、2、3、4、5又は6、好ましくは1、2又は3、最も好ましくは2又は3となるような整数である。mは1であり、nは1であると非常に好ましい。X、X’、X”、Y’及びY”のいずれかが置換基種に結合した炭素であるとき、これらの置換基種のσm値は多くの場合には約−0.3〜約0.75であり、大抵は約−0.25〜約0.6であり、σm値は各々0でも0以外でもよい。
【0014】
B’は置換されていてもいなくてもよい2個の炭素原子を架橋する種であり、下記種:
【0015】
【化5】
から選択することができる。B’は(例えばR’とR”で)飽和していてもいなくてもよいし、置換又は非置換シクロアルキル環(例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル等)の一部でもよい。B’の置換基(例えばR’又はR”)とX又はY”の介在置換基種(即ち、各該当X及びY”が置換基種に結合した炭素原子である場合)は一緒になって5又は6員環構造(例えばシクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル)等の環構造を形成してもよい。一般にこのような場合には、芳香族環にすぐ隣接する架橋種の炭素原子の置換基種はX又はY”と共に一緒になってこのような環を形成する。更に、B’の置換基とE、E’、E”及びE”’の少なくとも1種と介在原子も一緒になって単環式環構造(例えば、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル又は置換ヘテロシクリル構造)又は二環式環構造を形成してもよい。
【0016】
E、E’、E”及びE”’は各々水素、アルキル(例えばC1−C8、好ましくはC1−C5直鎖又は分枝鎖アルキル、例えばメチル、エチル又はイソプロピル)、置換アルキル、ハロ置換アルキル(例えばC1−C8、好ましくはC1−C5直鎖又は分枝鎖アルキル、例えばトリフルオロメチル又はトリクロロメチル)、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、アリール、置換アリール、アルキルアリール、置換アルキルアリール、アリールアルキル又は置換アリールアルキルを表し、E、E’、E、E”’の全部が水素でもよいし、E、E’、E”、E”’の少なくとも1種が水素以外のもの(例えば、アルキル、置換アルキル、ハロ置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、アリール、置換アリール、アルキルアリール、置換アルキルアリール、アリールアルキル又は置換アリールアルキル)であり、E、E’、E”、E”’のその他のものが水素でもよいし、EとE’又はE”とE”’とその介在炭素原子が一緒になってシクロペンチル、シクロヘキシル又はシクロヘプチル等の環構造を形成してもよいし、EとE”又はE’とE”’ とその介在炭素原子が一緒になってシクロペンチル、シクロヘキシル又はシクロヘプチル等の環構造を形成してもよく、Z及びZ’は各々水素又はアルキル(例えばC1−C8、好ましくはC1−C5直鎖又は分枝鎖アルキル、例えばメチル、エチル又はイソプロピル)を表し、好ましくはZ及びZ’の少なくとも一方が水素であり、最も好ましくはZが水素であり、Z’がメチルであるか、あるいはZが水素であり、Z’がシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、アダマンチル、キヌクリジニル、ピリジニル、キノリニル、ピリミジニル、フェニル、ベンジル、チアゾリル又はオキサゾリル、メチルピリジン、エチルピリジン、メチルピラジン又はエチルピラジン(これらはいずれもアルキル、アルコキシル、ハロ又はアミノ置換基等の少なくとも1個の置換基で適切に置換することができる)等の環構造(シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール又はアルキルアリール)を表すか、あるいはZが水素であり、Z’がプロパルギルであるか、あるいはZ、Z’及び介在窒素原子が(場合により3−ピリジニル等のピリジニル又は5−ピリミジニル等のピリミジニルで置換された)アジリジニル、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、イミノチアゾリニル又はイミノオキサゾリニル等の環構造を形成してもよいし、Z’とE’と介在炭素及び窒素原子が一緒になってピラゾリル又はイソキサゾラミニル等の単環式環構造を形成してもよいし、Z’とE”’と介在炭素及び窒素原子が一緒になってアゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、チアゾリル、オキサゾリルもしくはピペラジニル等の単環式環構造又は3−([4.2.0]−2−アザビシクロオクチル)、3−([2.2.2]−2−アザビシクロオクチル)もしくは3−([2.2.1]−2−アザビシクロヘプチル)等の二環式環構造を形成してもよいし、Z、Z’及びE”’と介在炭素及び窒素原子が一緒になってキヌクリジニル、2−([2.2.1]−1−アザビシクロヘプチル)もしくは2−([3.3.0]−1−アザビシクロオクチル)等の二環式環構造又はアザアダマンチル等の三環式環構造を形成してもよいし、Z’、E”及びE”’と介在炭素及び窒素原子が一緒になって1−([2.2.1]−2−アザビシクロヘプチル)等の二環式環構造を形成してもよいし、Z、Z’、E”及びE”’と介在炭素及び窒素原子が一緒になって三環式環構造を形成してもよい。B’がオレフィンであり、その介在R’置換基がX又はY’と一緒になって5員芳香族複素環(例えばフラン、ピロール又はチオフェン)を形成する場合には、Z、Z’、E、E’、E”及びE”’は一緒になって環構造を形成しないことが最も好ましく、即ちこのような場合には、ZとZ’は独立して水素又はアルキルであることが最も好ましく、ZとZ’は介在窒素原子のみと一緒になって環構造を形成してもよいが、あまり好ましくない。より具体的は、X、X’、X”、Y’及びY”は各々N、N−O、以下の置換基種、即ちH、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アルキルアリール、置換アルキルアリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、F、Cl、Br、I、NR’R”、CF3、CN、NO2、C2R’、SH、SCH3、N3、SO2CH3、OR’、(CR’R”)qOR’、O−(CR’R”)qC2R’、SR’、C(=O)NR’R”、NR’C(=O)R”、C(=O)R’、C(=O)OR’、OC(=O)R’、(CR’R”)qOCH2C2R’、(CR’R”)qC(=O)R’、(CR’R”)qC(CHCH3)OR’、O (CR’R”)qC(=O)OR’、(CR’R”)qC(=O)NR’R”、(CR’R”)qNR’R”、CH=CHR’、OC(=O)NR’R”及びNR’C(=O)OR”[式中、qは1〜6の整数であり、R’及びR”は各々水素、アルキル(例えばC1−C10アルキル、好ましくはC1−C5アルキル、より好ましくはメチル、エチル、イソプロピル、第3ブチル又はイソブチル)又はシクロアルキル(例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びアダマンチル)である]の1種をもつ芳香族炭素原子、複素環部分のヘテロ原子が少なくとも2個の炭素原子により他の窒素、酸素又は硫黄原子から分離された非芳香族複素環(例えばキヌクリジニル、ピロリジニル及びピペリジニル)、芳香族基含有種(例えばピリジル、キノリニル、ピリミジニル、フラニル、フェニル及びベンジルであり、これらはいずれもアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、ハロ、又はアミノ置換基等の少なくとも1個の置換基で適切に置換することができる)を含む。他の代表的な芳香族環系はGibsonら,J.Med.Chem.39:4065(1996)に記載されている。R’及びR”は直鎖又は分枝鎖アルキルでもよいし、R’とR”と介在原子は一緒になって環構造(例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、アダマンチル又はキヌクリジニル)を形成してもよい。X、X’、X”、Y’及びY”について上述した芳香族炭素原子の置換基種はそれらが隣接する場合には一緒になって1個以上の飽和又は不飽和、置換又は非置換炭素環又は複素環を形成してもよく、前記環はエーテル、アセタール、ケタール、アミン、ケトン、ラクトン、ラクタム、カルバメート又は尿素官能基を含むが、これらに限定されない。更に、Y’は水素に結合した炭素であると非常に好ましく、XはC−Hであると好ましい。E、E’及びE”は水素が好ましい。1好適態様では、nは1であり、mは1又は2であり、E、E’及びE”は各々水素であり、E”’はアルキル(例えばメチル)である。別の好適態様では、nは1であり、mは1又は2であり、E、E’、E”、E”’は各々水素である。各E、E’、E”及びE”’の種類と配置によっては化合物が光学活性となることがある。更に、本発明の化合物のアリール置換アミン成分はキラル中心をもつことがある(例えば化合物はR又はS配置をとることがある)。E、E’、E”及びE”’に応じて本発明の化合物はキラル中心をもち、本発明はこのような化合物のラセミ混合物と個々のエナンチオマー化合物に関する。一般に、n、m、E、E’、E”及びE”’の選択はE、E’、E”及びE”’として示す置換基の約4種まで、大抵は3種まで、通常は0、1又は2種が水素以外の置換基(即ちアルキル又はハロ置換アルキル等の置換基)となるように行う。
【0017】
本明細書で使用する「アルキル」とはメチル、エチル又はイソプロピル等のC1−C8、好ましくはC1−C5直鎖又は分枝鎖アルキル基を意味し、「置換アルキル」とは更にヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アリール、ヘテロシクロ、ハロ、アミノ、カルボキシル、カルバミル、シアノ等の1個以上の置換基をもつアルキル基を意味し、「アルケニル」とは少なくとも1個の炭素−炭素二重結合をもつC1−C8、好ましくはC1−C5直鎖又は分枝鎖炭化水素基を意味し、「置換アルケニル」とは更に1個以上の上記置換基をもつアルケニル基を意味し、「アルコキシ」とはメトキシ、イソプロポキシ、シクロペンチルオキシ、フェノキシ等の有機オキシ部分を意味し、「シクロアルキル」とは炭素原子数3〜8、好ましくは3〜6の飽和又は不飽和環含有基を意味し、「置換シクロアルキル」とは更に1個以上の上記置換基をもつシクロアルキル基を意味し、「アリール」とはフェニル、ナフチル等の炭素原子数6〜10の芳香族基を意味し、「置換アリール」とは更に1個以上の上記置換基をもつアリール基を意味し、「アルキルアリール」とはアルキル置換アリール基を意味し、「置換アルキルアリール」とは更に1個以上の上記置換基をもつアルキルアリール基を意味し、「アリールアルキル」とはアリール置換アルキル基を意味し、「置換アリールアルキル」とは更に1個以上の上記置換基をもつアリールアルキルを意味し、「ヘテロシクリル」とは環構造の一部として1個以上のヘテロ原子(例えばO、N、S)を含み、環内に2〜7個の炭素原子をもつ飽和又は不飽和環状基(例えばピリジニル、イソアゾリル、テトラヒドロフラニル等)を意味し、「置換ヘテロシクリル」とは更に1個以上の上記置換基をもつヘテロシクリル基を意味する。
【0018】
式:
【0019】
【化6】
(式中、X、X’、X”、Y’、Y”、E、E’、Z、Z’m及びR’は上記に定義した通りである)のアリール置換アミン化合物が特に有利である。構造中の波線は化合物がシス(Z)又はトランス(E)形をとり得ることを示し、トランス(E)形が好ましい。R’はいずれも水素であるか、又はR’の一方もしくは両方がメチルであることが好ましい。Zは水素であり、Z’は水素又はメチルであることが好ましい。mは1又は2が好ましい。Eは各々水素であり、E’は各々水素又はメチルであることが好ましいが、EとE’が全て水素であることが最も好ましい。Y”は置換基種に結合した炭素が好ましく、置換基種は水素、ハロ、NR’R”又はOR”が最も好ましい。X”は窒素又はNR’R”、NO2もしくはOR”等の置換基種に結合した炭素が好ましいが、窒素が最も好ましい。X’は窒素が好ましいが、水素、R’、ハロ,OR’、NR’R”、CN、C2R’又はCHCHR’等の置換基種に結合した炭素も好ましい。Xは水素等の置換基種に結合した炭素が好ましい。
【0020】
アリール置換アミン化合物の典型種は米国特許第5,212,188号(Caldwellら)、5,604,231号(Smithら)、5,616,707号(Crooksら)、5,616,716号(Dullら)、5,663,356号(Ruecroftら)、5,726,316号(Crooksら)、5,811,442号(Bencherifら)及び5,861,423号(Caldwellら)、PCT WO97/40011、99/65876及び00/007600、並びに1999年9月8日付け米国特許出願シリアル番号09/391,747号に記載されているようなものである。上記文献は本発明の実施に有用な代表的化合物を開示する目的で参考資料としてその開示内容全体を本明細書に組込む。
【0021】
本発明により有用な典型的化合物としてはメタニコチン型化合物が挙げられる。代表的な好適化合物の1例は(E)−メタニコチンである。他の代表的な好適化合物としては(2S)−(4E)−N−メチル−5−[3−(5−イソプロポキシピリジン)イル]−4−ペンテン−2−アミン、(3E)−N−メチル−4−[3−(5−ニトロ−6−アミノピリジン)イル]−3−ブテン−1−アミン、(3E)−N−メチル−4−[3−(5−(N−ベンジルカルボキサミド)ピリジン)イル]−3−ブテン−1−アミン、(4E)−N−メチル−5−[5−(2−アミノピリミジン)イル]−4−ペンテン−2−アミン、(4E)−N−メチル−5−(3−(5−アミノピリジン)イル)−4−ペンテン−2−アミン、(2S)−(4E)−N−メチル−5−[3−(5−イソプロポキシ−1−オキソピリジン)イル]−4−ペンテン−2−アミン、(3E)−N−メチル−4−(3−(5−イソブトキシピリジン)イル)−3−ブテン−1−アミン、(3E)−N−メチル−4−(3−(1−オキソピリジン)イル)−3−ブテン−1−アミン、(4E)−N−メチル−5−(3−(1−オキソピリジン)イル)−4−ペンテン−2−アミン、(3E)−N−メチル−4−(3−(5−エチルチオピリジン)イル)−3−ブテン−1−アミン、(4E)−N−メチル−5−(3−(5−トリフルオロメチルピリジン)イル)−4−ペンテン−2−アミン、(4E)−N−メチル−5−(3−(5−((カルボキシメチル)オキシ)ピリジン)イル)−4−ペンテン−2−アミン、(4E)−5−(3−(5−イソプロポキシピリジン)イル)−4−ペンテン−2−アミン及び(4E)−N−メチル−5−(3−(5−ヒドロキシピリジン)イル)−4−ペンテン−2−アミンが挙げられる。
【0022】
本発明の組成物のアリール置換オレフィンアミン化合物は種々の方法で合成される。
【0023】
(E)−メタニコチン型化合物はLofflerら,Chem.Ber.,42,pp.3431−3438(1909)及びLaforge,J.A.C.S.,50,p.2477(1928)に記載の方法を使用して置換ニコチン型化合物から製造することができる。所定の6置換メタニコチン型化合物はAchesonら,J.Chem.Soc.,Perkin Trans.1,2,pp.579−585(1980)の一般方法を使用して対応する6置換ニコチン型化合物から製造することができる。このような化合物の必要な前駆体である6置換ニコチン型化合物はRondahl,Acta Pharm.Suec.,14,pp.113−118(1977)に開示されている一般方法を使用して6置換ニコチン酸エステルから合成することができる。所定の5置換メタニコチン型化合物の製造はAchesonら,J.Chem.Soc.,Perkin Trans.1,2,pp.579−585(1980)により教示されている一般方法を使用して対応する5置換ニコチン型化合物から行うことができる。5−ハロ置換ニコチン型化合物(例えばフルオロ及びブロモ置換ニコチン型化合物)及び5−アミノニコチン型化合物はRondahl,Acta Pharm.Suec.,14,pp.113−118(1977)に開示されている一般手順を使用して製造することができる。5−トリフルオロメチルニコチン型化合物はAshimoriら,Chem.Pharm.Bull.,38(9),pp.2446−2458(1990)及びRondahl,Acta Pharm.Suec.,14,pp.113−118(1977)に記載されている方法と材料を使用して製造することができる。
【0024】
更に、所定のメタニコチン型化合物の製造は芳香族ハロゲン化物と保護アミン置換基を含む末端オレフィンのパラジウム触媒カップリング反応を使用し、保護基を除去して第1アミンを得、場合によりアルキル化して第2アミン又は第3アミンを得ることにより実施することができる。特に、所定のメタニコチン型化合物は保護アミン官能基をもつオレフィン(例えばフタルイミド塩と3−ハロ−1−プロペン、4−ハロ−1−ブテン、5−ハロ−1−ペンテン又は6−ハロ−1−ヘキセンの反応により得られるようなオレフィン)を使用して3−ハロ置換、5置換ピリジン化合物又は5−ハロ置換ピリミジン化合物をパラジウム触媒カップリング反応させることにより製造することができる。Frankら,J.Org.Chem.,43(15),pp.2947−2949(1978)及びMalekら,J.Org.Chem.,47,pp.5395−5397(1982)参照。あるいは、所定のメタニコチン型化合物は4−(N−メチル−N−tert−ブチルオキシカルボニル)アミノ酪酸メチルエステル等のN保護修飾アミノ酸残基を適切なハロゲン化アリールとブチルリチウムから誘導可能なアリールリチウム化合物とカップリングすることにより製造することができる。得られたN保護アリールケトンをその後、対応するアルコールに還元し、ハロゲン化アルキルに変換した後、脱ハロゲン化水素し、オレフィン官能基を導入する。その後、N保護基を除去すると、所望メタニコチン型化合物が得られる。
【0025】
(Z)−メタニコチン型化合物は多数の異なる方法で得られる。1方法では、E異性体とZ異性体の混合物としてのニコチン型化合物から(Z)−メタニコチン型化合物を合成した後、Sprouseら,Abstacts of Papers,p.32,Coresta/TCRC Joint Conference (1972)により開示されている型の方法を使用してクロマトグラィーにより(Z)−メタニコチン型化合物を分離することができる。別法では、対応するアセチレン化合物(例えばN−メチル−4−(3−ピリジニル)−3−ブチン−1−アミン型化合物)を制御下に水素化することによりメタニコチン型化合物を製造することができる。例えば、所定の5置換(Z)−メタニコチン型化合物と所定の6置換(Z)−メタンニコチン型化合物は夫々5置換−3−ピリジンカルボキサルデヒドと6置換−3−ピリジンカルボキサルデヒドから製造することができる。(Z)−メタニコチン型化合物の代表的な合成方法は参考資料としてその開示内容全体を本明細書に組込むDullらの米国特許第5,597,919号に記載されている。
【0026】
アリール置換オレフィンアミン化合物の(Z)−オレフィン異性体は多数の方法で合成することができる。1つのアプローチでは、アリール置換オレフィンアミン化合物の(Z)異性体はH.Lindlarら,Org.Syn.46:89(1966)に記載の方法を使用し、市販リンドラー触媒(Aldrich Chemical Company)を使用して対応するアルキニル化合物(例えばN−メチル−5−(3−ピルジル)−4−ブチン−2−アミン型化合物)を制御下に水素化することにより製造することができる。必要なアルキニル化合物は芳香族ハロゲン化物、好ましくは3−ブロモピリジン型又は3−ヨードピリジン型化合物をアルキニル側鎖化合物(例えばN−メチル−4−ペンチン−2−アミン型化合物)とパラジウム触媒カップリングすることにより製造することができる。一般に、L.Bleicherら,Synlett.1115(1995)に記載の方法を使用してヨウ化銅(I)とトリフェニルホスフィンと塩基として炭酸カリウムの存在下にハロゲン化アリールをモノ置換アルキンとパラジウム触媒カップリングする。N−メチル−4−ペンチン−2−アミン等のアルキニル化合物は市販4−ペンチン−2−オール(Aldrich Chemical Company)をピリジン中でp−トルエンスルホニルクロリドで処理した後、得られたp−トルエンスルホン酸4−ペンチン−2−オールを40%水溶液又は2.0Mテトラヒドロフラン溶液として過剰のメチルアミンと反応させることにより製造することができる。場合により、ジ−tert−ブチルジカーボネートで処理してtert−ブトキシカルボニル保護アミン型化合物とすることによりN−メチル−4−ペンチン−2−アミン型化合物のアミノ官能基を保護することが必要な場合がある。このような保護アミン化合物は未保護アミン化合物よりも容易にハロゲン化アリールとパラジウム触媒カップリングした後、得られたアルキニル化合物を制御下に水素化できる。tert−ブトキシカルボニル保護基はトリフルオロ酢酸等の強酸を使用して容易に除去し、アリール置換オレフィンアミン化合物の(Z)−オレフィン異性体を得ることができる。
【0027】
本発明のアリール置換オレフィンアミン化合物は種々の方法で合成することができる。4−ペンテン−2−オール等のオレフィンアルコールを3−ブロモピリジン又は3−ヨードピリジン等の芳香族ハロゲン化物と縮合する。一般に、オレフィンと芳香族ハロゲン化物のパラジウム触媒カップリングを伴うFrankら,J.Org.Chem.,43,pp.2947−2949(1978)及びMalekら,J.Org.Chem.,47,pp.5395−5397(1982)に記載の型の手順を使用する。場合によりカップリング前にオレフィンアルコールをt−ブチルジメチルシリルエーテルとして保護してもよい。その後、脱シリル化してオレフィンアルコールとする。その後、deCostaら,J.Org.Chem.,35,pp.4334−4343(1992)に記載の型の手順を使用してアルコール縮合物をアミンに変換する。一般に、メタンスルホニルクロリド又はp−トルエンスルホニルクロリドを使用してアルコールの活性化によりアルコール縮合物をアリール置換オレフィンアミンに変換した後、アンモニア又は第1もしくは第2アミンを使用してメシラート又はトシラートを置換する。従って、アミンがアンモニアである場合にはアリール置換オレフィン第1アミン化合物が得られ、アミンがメチルアミンやシクロブチルアミン等の第1アミンである場合にはアリール置換オレフィン第2アミン化合物が得られ、アミンがジメチルアミンやピロリジン等の第2アミンである場合にはアリール置換オレフィン第3アミン化合物が得られる。他の代表的なオレフィンアルコールとしては4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−2−オール、5−ヘキセン−3−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オール、2−メチル−3−ブテン−1−オール、4−メチル−4−ペンテン−1−オール、4−メチル−4−ペンテン−2−オール、1−オクテン−4−オール、5−メチル−1−ヘプテン−4−オール、4−メチル−5−ヘキセン−2−オール、5−メチル−5−ヘキセン−2−オール、5−ヘキセン−2−オール及び5−メチル−5−ヘキセン−3−オールが挙げられる。1,1,1−トリフルオロ−4−ペンテン−2−オール等のトリフルオロメチル置換オレフィンアルコールはKubotaら,Tetrahedron Letters,Vol.33(10),pp.1351−1354(1992)の手順を使用して1−エトキシ−2,2,2−トリフルオロエタノールとアリルトリメチルシランから製造するか、又はIshiharaら,Tetrahedron Letters,Vol.34(56),pp.5777−5780(1993)の手順を使用してトリフルオロ酢酸エチルエステルとアリルトリブチルスタンナンから製造することができる。所定のオレフィンアルコールは光学活性であり、アリール置換オレフィンアミン化合物の対応する光学活性形を提供するためにエナンチオマー混合物又は純エナンチオマーとして使用することができる。メタリルアルコール等のオレフィンアリルアルコールを芳香族ハロゲン化物と反応させるとアリール置換オレフィンアルデヒドが得られ、得られたアルデヒドを(例えばアルキルアミンとシアノホウ水素化ナトリウムを使用して処理することにより)還元アミノ化によりアリール置換オレフィンアミン化合物に変換することができる。好ましい芳香族ハロゲン化物は3−ブロモピリジン型化合物と3−ヨードピリジン型化合物である。一般に、このような3−ハロピリジン型化合物の置換基は薬品(例えばトシルクロリドやメチルアミン)との接触とアリール置換オレフィンアミン化合物の製造中に受ける反応条件に耐えられるように選択する。あるいは、−OH、−NH2及び−SH等の置換基を対応するアシル化合物として保護するか、−NH2等の置換基をフタルイミド官能基として保護してもよい。ジハロ芳香族の場合には、2種の異なるオレフィン側鎖に順次パラジウム触媒(ヘック型)カップリングすることができる。
【0028】
(4E)−N−メチル−5−(5−イソプロポキシ−3−ピリジル)−4−ペンテン−2−アミン等の分枝側鎖をもつ所定のアリール置換オレフィンアミン化合物は種々の方法で得られる。1合成アプローチを使用すると、側鎖N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ペンテン−2−アミンをヘック反応条件下に3置換5−ハロ置換ピリジンである5−ブロモ−3−イソプロポキシピリジンとカップリングした後、tert−ブトキシカルボニル保護基を除去することにより、前記化合物を集中的に合成することができる。一般に、オレフィンと芳香族ハロゲン化物のパラジウム触媒カップリングを伴うW.C.Frankら,J.Org.Chem.43,2947(1978)及びN.J.Malekら,J.Org.Chem.47,5395(1982)に記載の型の手順を使用する。必要なN−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ペンテン−2−アミンは次のように合成することができる。(i)市販4−ペンテン−2−オール(Aldrich Chemical Company,Lancaster Synthesis Inc.)をピリジン中、p−トルエンスルホニルクロリドで処理すると、T.Michelら,Liebigs Ann.11:1811(1996)により従来記載されているp−トルエンスルホン酸4−ペンテン−2−オールが得られる。(ii)得られたトシラートを40%水溶液としてのメチルアミン20モル当量と共に加熱すると、N−メチル−4−ペンテン−2−アミンが得られる。(iii)得られたアミンはA.Violaら,J.Chem.Soc.,Chem.Commun.(21):1429(1984)により従来記載されており、無水テトラヒドロフラン中、ジ−tert−ブチルジカーボネート1.2モル当量と反応させると、側鎖N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ペンテン−2−アミンが得られる。ハロ置換ピリジン(例えば5−ブロモ−3−イソプロポキシピリジン)は2種の異なる経路により合成することができる。第1の製法では、3,5−ジブロモピリジンを密閉ガラス管で銅粉末(3,5−ジブロモピリジンの5%w/w)の存在下に無水イソプロパノール中、カリウムイソプロポキシド2モル当量と共に140℃で14時間加熱すると、5−ブロモ−3−イソプロポキシピリジンが得られる。5−ブロモニコチン酸から5−ブロモ−3−イソプロポキシピリジンを製造する第2の製法は次のように実施することができる。(i)5−ブロモニコチン酸を塩化チオニルで処理した後に中間酸塩化物をアンモニア水と反応させて5−ブロモニコチンアミドに変換する。(ii)得られた5−ブロモニコチンアミドはC.V.Grecoら,J.Heterocyclic Chem.7(4):761(1970)により従来記載されており、水酸化ナトリウムと次亜塩素酸カルシウムの70%溶液で処理してホフマン分解させる。(iii)得られた3−アミノ−5−ブロモピリジンはC.V.Grecoら,J.Heterocyclic Chem.7(4):761(1970)により従来記載されており、酸性条件下に亜硝酸イソアミルでジアゾ化することにより5−ブロモ−3−イソプロポキシピリジンに変換することができ、その後、中間ジアゾニウム塩をイソプロパノールで処理すると5−ブロモ−3−イソプロポキシピリジンが得られる。5−ブロモ−3−イソプロポキシピリジンとN−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ペンテン−2−アミンのパラジウム触媒カップリングは酢酸パラジウム(II)1モル%とトリ−o−トリルホスフィン4モル%から構成される触媒を使用してアセトニトリル−トリエチルアミン(2:1,v,v)中で実施される。反応は成分を80℃で20時間加熱することにより実施することができ、(4E)−N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−5−(5−イソプロポキシ−3−ピリジル)−4−ペンテン−2−アミンが得られる。tert−ブトキシカルボニル保護基の除去は0℃のアニソール中、トリフルオロ酢酸30モル当量で処理することにより実施することができ、(4E)−N−メチル−5−(5−イソプロポキシ−3−ピリジル)−4−ペンテン−2−アミンが得られる。この種の方法(即ちナトリウム又はカリウムアルコキシド又はアリールオキシドで処理後、ヘックカップリングと脱保護)を使用すると、3,5−ジブロモピリジンから種々のN−メチル−5−(5−アルコキシ又は5−アリールオキシ−3−ピリジル)−4−ペンテン−2−アミンが得られる。
【0029】
分枝側鎖をもつ所定のアリール置換オレフィンアミン化合物は種々の方法で得られる。1合成アプローチを使用すると、(4E)−N−メチル−5−(5−メトキシ−3−ピリジル)−4−ペンテン−2−アミン等の化合物は第2アルコール官能基4−ペンテン−2−オールを含むオレフィンとハロ置換ピリジンである5−ブロモ−3−メトキシピリジンをヘック反応条件下にカップリングした後、得られたピリジルアルコール中間体をそのp−トルエンスルホン酸エステルに変換した後、メチルアミンで処理することにより合成することができる。一般に、オレフィンと芳香族ハロゲン化物のパラジウム触媒カップリングを伴うW.C.Frankら,J.Org.Chem.43,2947(1978)及びN.J.Malekら,J.Org.Chem.47,5395(1982)に記載の型の手順を使用する。必要なハロ置換ピリジンである5−ブロモ−3−メトキシピリジンはH.J.den Hertogら,Recl.Trav.Chim.Pays−Bas 67:377(1948)に記載の方法に類似の方法を使用して合成され、即ち密閉ガラス管で銅粉末(3,5−ジブロモピリジンの5%w/w)の存在下に無水メタノール中、ナトリウムメトキシド2.5モル当量と共に3,5−ジブロモピリジンを150℃で14時間加熱すると5−ブロモ−3−メトキシピリジンが得られる。得られた5−ブロモ−3−メトキシピリジンはD.L.Cominsら,J.Org.Chem.55:69(1990)により従来記載されており、酢酸パラジウム(II)1モル%とトリ−o−トリルホスフィン4モル%から構成される触媒を使用してアセトニトリル−トリエチルアミン(1:1:1,v/v)中で4−ペンテン−2−オールとカップリングすることができる。反応は密閉ガラス管で成分を140℃で14時間加熱することにより実施され、(4E)−N−メチル−5−(5−メトキシ−3−ピリジル)−4−ペンテン−2−オールが得られる。得られたアルコールを0℃の無水ピリジン中、p−トルエンスルホニルクロリド2モル当量で処理するとp−トルエンスルホン酸(4E)−N−メチル−5−(5−メトキシ−3−ピリジル)−4−ペンテン−2−オールが得られる。補助溶媒として少量のエタノールを含有する40%水溶液としてメチルアミン120モル当量でトシラート中間体を処理すると、(4E)−N−メチル−5−(5−メトキシ−3−ピリジル)−4−ペンテン−2−アミンが得られる。3,5−ジブロモピリジンを上記条件下にN−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ペンテン−2−アミンとヘックカップリングすると、N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−5−(5−ブロモ−3−ピリジル)−4−ペンテン−2−アミンが得られる。これを後続ヘック反応でスチレンとカップリングし、上述したように脱保護(tert−ブトキシカルボニル基を除去)すると、(4E)−N−メチル−5−[3−(5−トランス−β−スチリルピリジン)イル]−4−ペンテン−2−アミンが得られる。同様にエチニルベンゼンと第2のカップリング後に脱保護すると、(4E)−N−メチル−5−[3−(5−フェニルエチニルピリジン)イル]−4−ペンテン−2−アミンが得られる。
【0030】
(2S)−(4E)−N−メチル−5−(3−ピリジル)−4−ペンテン−2−アミン等の所定アリール置換オレフィンアミン化合物の光学活性形は種々の方法で得られる。1合成アプローチでは、前記型の化合物はキラル第2アルコール官能基(2R)−4−ペンテン−2−オールをもつオレフィンとハロ置換ピリジンである3−ブロモピリジンをヘック反応条件下にカップリングすることにより合成される。得られたキラルピリジルアルコール中間体(2R)−(4E)−5−(3−ピリジル)−4−ペンテン−2−オールをその対応するp−トルエンスルホン酸エステルに変換した後にメチルアミンで処理すると、トシラートが置換し、配置が逆転する。一般に、芳香族ハロゲン化物とオレフィンのパラジウム触媒カップリングを伴うW.C.Frankら,J.Org.Chem.43,2947(1978)及びN.J.Malekら,J.Org.Chem.47,5395(1982)に記載の型の手順を使用する。キラル側鎖(2R)−4−ペンテン−2−オールはA.Kalivretenos,J.K.Stille及びL.S.Hegedus,J.Org.Chem.56:2883(1991)の一般合成法を使用して低温(−25〜−10℃)のテトラヒドロフラン中、キラルエポキシド(R)−(+)−プロピレンオキシド(Fluka Chemical Companyから市販)を臭化ビニルマグネシウムで処理し、(2R)−4−ペンテン−2−オールを得ることにより製造することができる。得られたキラルアルコールを酢酸パラジウム(II)1モル%とトリ−o−トリルホスフィン4モル%から構成される触媒を使用してアセトニトリル−トリエチルアミン(1:1,v/v)中で3−ブロモピリジンとヘック反応させる。反応は密閉ガラス管で成分を140℃で14時間加熱することにより実施し、(2R)−(4E)−5−(3−ピリジル)−4−ペンテン−2−オールが得られる。得られたキラルピリジルアルコールを0℃の無水ピリジン中、p−トルエンスルホニルクロリド3モル当量で処理するとトシラート中間体が得られる。補助溶媒として少量のエタノールを含有する40%水溶液としてのメチルアミン82モル当量と共にp−トルエンスルホン酸エステルを加熱すると、(2S)−(4E)−N−メチル−5−(3−ピリジル)−4−ペンテン−2−アミンが得られる。
【0031】
同様に、(2R)−(4E)−N−メチル−5−(3−ピリジル)−4−ペンテン−2−アミン等の対応するアリール置換オレフィンアミンエナンチオマーは3−ブロモピリジンと(2S)−4−ペンテン−2−オールのヘックカップリングにより合成することができる。得られた中間体(2S)−(4E)−5−(3−ピリジル)−4−ペンテン−2−オールをそのp−トルエンスルホン酸塩に変換し、メチルアミンで置換する。キラルアルコール(2S)−4−ペンテン−2−オールはA.Kalivretenos,J.K.Stille及びL.S.Hegedus,J.Org.Chem.56:2883(1991)により報告されているような(R)−(+)−プロピレンオキシドからの(2R)−4−ペンテン−2−オールの合成について記載されている方法と同様の方法を使用して(S)−(−)−プロピレンオキシド(Aldrich Chemical Companyから市販)から製造される。
【0032】
本発明の化合物の別のアプローチでは、(3E)−N−メチル−4−(3−(6−アミノピリジン)イル)−3−ブテン−1−アミン等の化合物はN−メチル−N−(3−ブテン−1−イル)ベンズアミド等の保護アミン官能基をもつオレフィンと2−アミノ−5−ブロモピリジン(Aldrich Chemical Company)等の3−ハロ置換ピリジンをパラジウム触媒カップリング反応させることにより製造することができる。得られたヘック反応物を酸水溶液と共に加熱してベンゾイル保護基を除去すると、(3E)−N−メチル−4−(3−(6−アミノピリジン)イル)−3−ブテン−1−アミンが得られる。必要なオレフィンであるN−メチル−N−(3−ブテン−1−イル)ベンズアミドは4−ブロモ−1−ブテンを炭酸カリウムの存在下にN,N−ジメチルホルムアミド中で過剰の縮合メチルアミンと反応させてN−メチル−3−ブテン−1−アミンを得ることにより製造することができる。トリエチルアミンを加えたジクロロメタン中で前記化合物を塩化ベンゾイルで処理すると、オレフィン側鎖N−メチル−N−(3−ブテン−1−イル)ベンズアミドが得られる。
【0033】
本発明の化合物はピロリジン又はキヌクリジン等のアザ環状官能基を含む場合がある。このような化合物は種々の方法で合成される。1方法では、ヘック反応を使用してビニル置換又はアリル置換窒素複素環を3−ハロピリジンにカップリングすることができる。例えば、パラジウム触媒反応を伴うW.C.Frankら,J.Org.Chem.43,2947(1978)及びN.J.Malekら,J.Org.Chem.47,5395(1982)に記載の条件下にN−(tert−ブトキシカルボニル)−2−アリルピロリジンと3−ブロモピリジン(Aldrich Chemical Company)をカップリングすることができる。トリフルオロ酢酸を使用して保護基を除去すると、2−(3−(3−ピリジル)−(2E)−プロペン−1−イル)ピロリジンが得られる。必要なN−(tert−ブトキシカルボニル)−2−アリルピロリジンは市販2−ピロリジンメタノール(Aldrich Chemical Company)から製造することができる。2−ピロリジンメタノールをジ−tert−ブチルジカーボネートで処理すると、アミンがそのtert−ブトキシカルボニル誘導体として保護される。次いでピリジン中でp−トルエンスルホニルクロリドと反応させた後、アセトン中でヨウ化ナトリウムと反応させると、2−(ヨードメチル)−N−(tert−ブトキシカルボニル)ピロリジンが得られる。この化合物をヨウ化第1銅の存在下に臭化ビニルマグネシウムとカップリングすると、N−(tert−ブトキシカルボニル)−2−アリルピロリジンが得られる。エナンチオ的に純粋な2−ピロリジンメタノール(R及びS異性体はいずれもAldrich Chemical Companyから市販されている)を使用してN−(tert−ブトキシカルボニル)−2−アリルピロリジンの各エナンチオマーを製造する。次いで上記に要約したように反応させ、2−(3−(3−ピリジル)−(2E)−プロペン−1−イル)ピロリジンの各エナンチオマーを製造する。M.A.Abreoら,J.Med.Chem.39:817−825(1996)に記載の方法に類似の方法を使用してホルムアルデヒド水溶液とシアノホウ水素化ナトリウムを使用して第2アミノ化合物をN−メチル化すると、2−(3−(3−ピリジル)−(2E)−プロペン−1−イル)−1−メチルピロリジンの各エナンチオマーが得られる。
【0034】
同様に、2−アリルキヌクリジンをヘック条件下に3−ブロモピリジンとカップリングすると、2−(3−(3−ピリジル)−(2E)−プロペン−1−イル)キヌクリジンが得られる。必要な2−アリルキヌクリジンは3−キヌクリジノン(Aldrich Chemical Company)からアルキル化と脱酸素により製造することができる。例えば、イソプロピルアミンとモレキュラーシーブを用いて3−キヌクリジノンをそのイソプロピルイミンに変換することができる。イミンをリチウムジイソプロピルアミドと臭化アリルで処理した後、加水分解すると、2−アリル−3−キヌクリジノンが得られる。ケトンをそのp−トルエンスルホニルヒドラゾンに変換し、ホウ水素化ナトリウムで還元することにより脱酸素すると、2−アリルキヌクリジンが得られる。
【0035】
本発明の化合物はピラジン又はピリダジン環を含む場合がある。M.Hasegawaら(ヨーロッパ特許出願561409 A2 921202)により報告されている手順を使用すると、2−メチルピラジン又は3−メチルピリダジン(いずれもAldrich Chemical Companyから市販)をN−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−3−アミノブタナールと縮合すると、夫々(4E)−N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−5−(2−ピラジニル)−4−ペンテン−2−アミンと(4E)−N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−5−(3−ピリダジニル)−4−ペンテン−2−アミンが得られる。tert−ブトキシカルボニル基をトリフルオロ酢酸で除去すると、夫々(4E)−N−メチル−5−(2−ピラジニル)−4−ペンテン−2−アミンと(4E)−N−メチル−5−(3−ピリダジニル)−4−ペンテン−2−アミンが得られる。必要なN−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−3−アミノブタナールはM.AdamczykとY.Y.ChenによりPCT国際出願WO9212122に記載されている方法を使用して対応するアルコールから製造することができる。アルコールであるN−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−3−アミノ−1−ブタノールは(R.F.BorchによりOrg.Syn.52,124(1974)に報告されている化学反応を使用してメチルアミンとシアノホウ水素化ナトリウムで)順次還元アミノ化し、ジ−tert−ブチルジカーボネートで保護することにより市販4−ヒドロキシ−2−ブタノン(Lancaster Synthesis,Inc.)から製造することができる。
【0036】
本発明の所定化合物は種々の方法で製造することができる。例えば、所定縮合環複素環をもつ化合物はヘック反応により製造することができる。このような化合物は6−ブロモ−2−メチル−1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン等のブロモ複素環化合物を上記オレフィンアミン側鎖N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ペンテン−2−アミンとパラジウム触媒カップリングすることにより合成することができる。一般に、オレフィンと芳香族ハロゲン化物のパラジウム触媒カップリングを伴うW.C.Frankら,J.Org.Chem.43,2947(1978)及びN.J.Malekら,J.Org.Chem.47,5395(1982)に記載されている型の手順を使用する。得られたtert−ブトキシカルボニル保護(Boc保護)中間体をトリフルオロ酢酸等の強酸で処理すると、(4E)−N−メチル−5−(6−(2−メチル−1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン)イル)−4−ペンテン−2−アミンが得られる。必要なブロモイミダゾピリジンである6−ブロモ−2−メチル−1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジンはP.K.Dubeyら,Indian J.Chem.16B(6):531−533(1978)に記載の方法に従って2,3−ジアミノ−5−ブロモピリジンをポリリン酸中で酢酸と共に加熱することにより82%収率で製造することができる。2,3−ジアミノ−5−ブロモピリジンはS.X.Caiら,J.Med.Chem.40(22):3679−3686(1997)に記載の方法に従って2−アミノ−5−ブロモ−3−ニトロピリジン(Aldrich Chemical CompanyとLancaster Synthesis,Incから市販)を沸騰エタノール中で塩化錫(II)・2水和物と共に加熱することにより97%収率で製造することができる。
【0037】
別例では、ヘック反応を使用して6−ブロモ−1,3−ジオキソ[4,5−b]ピリジン等のブロモ縮合環複素環を上記オレフィンアミン側鎖N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ペンテン−2−アミンとカップリングすることができる。得られたBoc保護中間体をトリフルオロ酢酸等の強酸で脱保護すると、(4E)−N−メチル−5−(6−(1,3−ジオキソ[4,5−b]ピリジン)イル)−4−ペンテン−2−アミンが得られる。必要なブロモ化合物である6−ブロモ−1,3−ジオキソ[4,5−b]ピリジンはF.Dallackerら,Z.Naturforsch.34b:1729−1736(1979)の方法に従って炭酸カリウムとN,N−ジメチルホルムアミドの存在下にブロモクロロメタンを使用するメチレン化法により5−ブロモ−2,3−ジヒドロキシピリジン(5−ブロモ−3−ヒドロキシ−2(1H)−ピリジノンとしても知られる)から合成することができる。5−ブロモ−2,3−ジヒドロキシピリジンはF.Dallackerら,Z.Naturforsch.34b:1729−1736(1979)に記載の方法を使用してフルフラール(2−フルアルデヒド、Aldrich Chemical CompanyとLancaster Synthesis,Incから市販)から製造することができる。あるいは、5−ブロモ−2,3−ジヒドロキシピリジンはD.RoseとN.MaakのEP0081745に記載の方法に従って製造することもできる。
【0038】
縮合環複素環をもつ化合物の別例では、ヘック反応を使用してブロモ化合物である7−ブロモ−2,3−ジヒドロ−1,4−ジオキシノ[2,3−b]ピリジン(7−ブロモ−5−アザ−4−オキサクロマンとしても知られる)を上記オレフィンアミン側鎖N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ペンテン−2−アミンと縮合することができる。得られたBoc保護化合物をトリフルオロ酢酸等の強酸で脱保護すると、(4E)−N−メチル−5−(7−(2,3−ジヒドロ−1,4−ジオキシノ[2,3−b]ピリジン)イル)−4−ペンテン−2−アミンが得られる。必要なブロモ化合物である7−ブロモ−2,3−ジヒドロ−1,4−ジオキシノ[2,3−b]ピリジンはF.Dallackerら,Z.Naturforsch.34b:1729−1736(1979)の方法に従って5−ブロモ−2,3−ジヒドロキシピリジンをN,N−ジメチルホルムアミド中で1,2−ジブロモエタンと炭酸カリウムで処理することにより製造することができる。5−ブロモ−2,3−ジヒドロキシピリジンは上述のようにフルフラールから製造することができる。
【0039】
本発明の他の多環式芳香族化合物はヘック反応により製造することができる。例えば、所定化合物は6−ブロモ−1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−チオール等のブロモ縮合環複素環を上記オレフィンアミン側鎖N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ペンテン−2−アミンとパラジウム触媒カップリングすることにより合成することができる。ヘック反応から得られたBoc保護中間体をトリフルオロ酢酸等の強酸で脱保護すると、(4E)−N−メチル−5−(6−(2−チオ−1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン)イル)−4−ペンテン−2−アミンが得られる。必要なブロモ化合物である6−ブロモ−1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−チオールはY.M.Yutilov,Khim.Geterotsikl Doedin,6:799−804(1988)に記載の方法に従って6−ブロモ−1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジンを230〜260℃で硫黄で処理することにより製造することができる。6−ブロモ−1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジンはSigma−Aldrich Chemical Companyから入手できる。あるいは、6−ブロモ−1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジンはP.K.Dubeyら,Indian J.Chem.16B(6):531−533(1978)に記載の方法と同様の方法を使用して2,3−ジアミノ−5−ブロモピリジンをポリリン酸中ギ酸で処理することにより製造することもできる。2,3−ジアミノ−5−ブロモピリジンはS.X.Caiら,J.Med.Chem.40(22):3679−3686(1997)に記載の方法に従って2−アミノ−5−ブロモ−3−ニトロピリジン(Aldrich Chemical CompanyとLancaster Synthesis,Incから市販)を沸騰エタノール中で塩化錫(II)・2水和物と共に加熱することにより97%収率で製造することができる。あるいは、6−ブロモ−1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−チオールはT.C.Kuhlerら,J.Med Chem.38(25):4906−4916(1995)に記載の方法に類似の方法を使用して2,3−ジアミノ−5−ブロモピリジンをエタノール水溶液中でK+SCSOEtと共に加熱することにより製造することもできる。2,3−ジアミノ−5−ブロモピリジンは上述のように2−アミノ−5−ブロモ−3−ニトロピリジンから製造することができる。
【0040】
関連例では、6−ブロモ−2−フェニルメチルチオ−1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジンをヘック反応により上記オレフィンアミン側鎖N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ペンテン−2−アミンとカップリングすることができる。得られたBoc保護中間体をトリフルオロ酢酸等の強酸で処理すると、(4E)−N−メチル−5−(6−(2−フェニルメチルチオ−1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン)イル)−4−ペンテン−2−アミンが得られる。必要なブロモ化合物である6−ブロモ−2−フェニルメチルチオ−1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジンは上記6−ブロモ−1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−チオールを炭酸カリウムとN,N−ジメチルホルムアミドの存在下に臭化ベンジルでアルキル化することにより製造することができる。
【0041】
別例では、6−ブロモオキサゾロ[4,5−b]ピリジンを順次N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ペンテン−2−アミンとパラジウム触媒カップリング及びトリフルオロ酢酸で脱保護すると、(4E)−N−メチル−5−(6−オキサゾロ[4,5−b]ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミンが得られる。必要な6−ブロモオキサゾロ[4,5−b]ピリジンはM−C.Viaudら,Heterocycles 41:2799−2809(1995)の方法に類似の方法を使用してギ酸又はオルトギ酸トリアルキルと縮合することにより2−アミノ−5−ブロモ−3−ピリジノールから製造することができる。他のカルボン酸を使用しても同様にヘック反応の基質である2置換−6−ブロモオキサゾロ[4,5−b]ピリジンが得られる。2−アミノ−5−ブロモ−3−ピリジノールはフルフリルアミン(Aldrich Chemical Company)から合成する。例えば、V.Kochら,Synthesis,499(1990)に記載の方法を使用して(米国特許第4,192,946号に従ってフルフリルアミンから製造した)5−ブロモ−3−ピリジノールを塩素化すると2−クロロ−5−ブロモ−3−ピリジノールが得られ、アンモニア処理により2−アミノ−5−ブロモ−3−ピリジノールに変換することができる。
【0042】
上記6−ブロモオキサゾロ[4,5−b]ピリジンに対して環縮合位置が異性の5−ブロモオキサゾロ[5,4−b]ピリジンをN−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ペンテン−2−アミンとのヘックカップリングで使用してもよい。その後、tert−ブトキシカルボニル保護基を除去すると、(4E)−N−メチル−5−(5−オキサゾロ[5,4−b]ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミンが得られる。必要な5−ブロモオキサゾロ[5,4−b]ピリジンは上述のようにギ酸(又はその誘導体)との縮合により3−アミノ−5−ブロモ−2−ピリジノール(3−アミノ−5−ブロモ−2−ピリドン)から合成される。3−アミノ−5−ブロモ−2−ピリジノールは市販3−ニトロ−2−ピリジノール(Aldrich Chemical Company)を(T.Batkowski,Rocz.Chem.41:729−741(1967)に記載の方法を使用して)臭素化後に(S.X.Caiら,J.Med.Chem.40(22):3679−3686(1997)に記載の方法に従って)塩化錫(II)還元することにより製造することができる。
【0043】
本発明の他の多環式芳香族化合物もヘック反応により製造することができる。例えば、5−ブロモフロ[2,3−b]ピリジンと5−ブロモ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジンを上記オレフィンアミン側鎖N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ペンテン−2−アミンとパラジウム触媒カップリングすると、夫々(4E)−N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−5−(5−フロ[2,3−b]ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミンと(4E)−N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−5−(5−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミンが得られる。その後、tert−ブトキシカルボニル基をトリフルオロ酢酸で除去すると、夫々(4E)−N−メチル−N−5−(5−フロ[2,3−b]ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミンと(4E)−N−メチル−N−5−(5−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミンが得られる。必要な5−ブロモフロ[2,3−b]ピリジンと5−ブロモ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジンはE.C.Taylorら,Tetrahedron 43:5145−5158(1987)に記載の化学反応を使用して臭素化(メタノール中の臭素と重炭酸ナトリウム)と脱水素(2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン)により夫々2,3−ジヒドロ[2,3−b]ピリジンと2,3−ジヒドロピロロ[2,3−b]ピリジンから製造することができる。2,3−ジヒドロフロ[2,3−b]ピリジンと2,3−ジヒドロピロロ[2,3−b]ピリジンはA.E.Frissenら,Tetrahedron 45:803−812(1989)に記載されているように(3−ブチン−1−オールのナトリウム塩又は4−アミノ−1−ブチンによる)塩化物の求核置換と後続分子内ディールス−アルダー反応により2−クロロピリミジン(Aldrich Chemical Company)から製造される。同様の化学反応を使用して、2,3−ジヒドロフロ[2,3−b]ピリジンと2,3−ジヒドロピロロ[2,3−b]ピリジンは3−メチルチオ−1,2,4−トリアゼンからも製造され(E.C.Taylorら,Tetrahedron 43:5145−5158(1987))、3−メチルチオ−1,2,4−トリアゼンはグリオキサールとS−メチルチオセミカルバジドから製造される(W.Paudlerら,J.Heterocyclic Chem.7:767−771(1970))。
【0044】
臭素化ジヒドロフロピリジン、ジヒドロピロロピリジン及びジヒドロピラノピリジンもパラジウム触媒カップリングの基質である。例えば、(上述のように2,3−ジヒドロフロ[2,3−b]ピリジンと2,3−ジヒドロピロロ[2,3−b]ピリジンの臭素化から得られた)5−ブロモ−2,3−ジヒドロフロ[2,3−b]ピリジンと5−ブロモ−2,3−ジヒドロピロロ[2,3−b]ピリジンをヘック法で上記オレフィンアミン側鎖とカップリングすることもできる。その後、脱保護すると、対応する(4E)−N−メチル−5−(5−(2,3−ジヒドロフロ[2,3−b]ピリジン)イル)−4−ペンテン−2−アミンと(4E)−N−メチル−5−(5−(2,3−ジヒドロピロロ[2,3−b]ピリジン)イル)−4−ペンテン−2−アミンが得られる。([2,3−b]系に対して環縮合位置が異性の)6−ブロモ−2,3−ジヒドロフロ[3,2−b]ピリジンを同様に処理すると、(4E)−N−メチル−5−(6−(2,3−ジヒドロフロ[3,2−b]ピリジン)イル)−4−ペンテン−2−アミンが得られる。必要な6−ブロモ−2,3−ジヒドロフロ[3,2−b]ピリジンはリチウムジイソプロピルアミド2当量(2−メチレニル、3−オキシジアニオンを生成)とジブロモメタン1当量で順次処理することにより5−ブロモ−2−メチル−3−ピリジノールから製造することができる。あるいは、M.U.Kollerら,Synth.Commun.25:2963−74(1995)に記載の化学反応に類似の化学反応を使用してシリル保護ピリジノール(5−ブロモ−2−メチル−3−トリメチルシリルオキシピリジン)をリチウムジイソプロピルアミド1当量とアルキル又はアリールアルデヒドで順次処理すると、2−(2−(1−アルキル又は1−アリール−1−ヒドロキシ)エチル)−5−ブロモ−3−(トリメチルシリルオキシ)ピリジンが得られる。このような物質は(酸触媒環化又はウィルアムソン合成等の)当業者に公知の方法により対応する環状エーテル(2−アルキル又は2−アリール−6−ブロモ−2,3−ジヒドロフロ[3,2−b]ピリジン)に変換することができる。同様の化学反応でピリジルメチルカルボアニオンとの反応に(アルデヒドの代わりに)エポキシドを使用すると、2−アルキル及び2−アリール−7−ブロモ−2,3−ジヒドロピラノ[3,2−b]ピリジンが得られる。これらの2置換臭素化ジヒドロフロ及びジヒドロピラノピリジンもヘック反応の基質である。例えば、6−ブロモ−2,3−ジヒドロ−2−フェニルフロ[3,2−b]ピリジンをパラジウム触媒法でN−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ペンテン−2−アミンとカップリングし、カップリング産物をトリフルオロ酢酸で処理(tert−ブトキシカルボニル基を除去)すると、(4E)−N−メチル−5−(6−(2,3−ジヒドロ−2−フェニルフロ[3,2−b]ピリジン)イル)−4−ペンテン−2−アミンが得られる。
【0045】
臭素化ジヒドロフロ及びジヒドロピラノピリジンの合成に必要な5−ブロモ−2−メチル−3−ピリジノールは市販材料の標準変換により製造される。例えば、塩化チオニル、臭素及びアンモニアで順次処理(C.V.Grecoら,J.Heterocyclic Chem.7(4):761−766(1970)に記載の方法)することにより2−メチルニコチン酸(Aldrich Chemical Company)を5−ブロモ−2−メチルニコチンアミドに変換することができる。5−ブロモ−2−メチルニコチンアミドを次亜塩素酸塩でホフマン転位させると、3−アミノ−5−ブロモ−2−メチルピリジンが得られ、硫酸水溶液中で亜硝酸ナトリウムでジアゾ化することにより5−ブロモ−2−メチル−3−ピリジノールに変換することができる。あるいは、(ギ酸エチルを使用して)アラニンエチルエステル(Aldrich Chemical Company)をそのN−ホルミル誘導体に変換した後、五酸化リンを使用して5−エトキシ−4−メチルオキサゾールに変換する(N.Takeoら,日本特許第45,012,732号)。5−エトキシ−4−メチルオキサゾールをアクリルニトリルとディールス−アルダー反応させると5−ヒドロキシ−6−メチルニコチノニトリルが得られ(T.Yoshikawaら,Chem.Pharm.Bull.13:873(1965))、水和(ニトリル⇒アミド)とホフマン転位により5−アミノ−2−メチル−3−ピリジノールに変換する(Y.Morisawaら,Agr.Biol.Chem.39:1275−1281(1975))。その後、5−アミノ−2−メチル−3−ピリジノールを臭化第1銅の存在下にジアゾ化すると、所望5−ブロモ−2−メチル−3−ピリジノールに変換することができる。
【0046】
あるいは、本発明のアリール置換オレフィンアミン化合物は4−(N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)アミノ)ペンタナール等のN保護アミノアルデヒドをアリールリチウムとカップリングすることにより製造することもできる。必要なアルデヒドはOtsukaら,J.Am Chem.Soc.112:838−845(1990)に記載の方法に従って市販1,5−ジメチル−2−ピロリジノン(Aldrich Chemical Company)から製造することができる。例えば、1,5−ジメチル−2−ピロリジノンを6N塩酸と共に加熱すると4−(メチルアミノ)ペンタン酸が形成され、容易に4−(メチルアミノ)ペンタン酸エチルにエステル化することができる。この化合物をジ−tert−ブチルジカーボネート1当量で処理すると、4−(N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)アミノ)ペンタン酸エチルが得られ、DIBAL−Hで還元すると、4−(N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)アミノ)ペンタナールが得られる。このアルデヒドをアリールリチウムと反応させてアルコールを生成し、更にアルコールを(例えば四塩化炭素とトリフェニルホスフィンで)ハロゲン化アルキルに変換した後に(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エンで)脱ハロゲン化水素することによりN保護オレフィンアミンに変換することができる。tert−ブトキシカルボニル保護基をトリフルオロ酢酸で除去すると、所望(E)−5−アリール−4−ペンテン−2−アミンが得られる。例えば、(3−ブロモ−5−イソプロポキシピリジンとn−ブチルリチウムから得られた)3−リチオ−5−イソプロポキシピリジンを4−(N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)アミノ)ペンタナールと縮合すると、1−(3−(5−イソプロポキシピリジン)イル)−4−(N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)アミノ)−ペンタナールが得られ、その後、(4E)−N−メチル−5−(3−(5−イソプロポキシピリジン)イル)−4−ペンテン−2−アミンに変換することができる。
【0047】
1,5−ジメチル−2−ピロリジノンのR及びSエナンチオマーは市販(R)−及び(S)−5−(ヒドロキシメチル)−2−ピロリジノン(Aldrich Chemical Company)から製造することができる。例えば、エナンチオ的に純粋なヒドロキシメチルピロリジノンをアセトニトリル中で四臭化炭素とトリフェニルホスフィンと反応させると、対応する5−(ブロモメチル)−2−ピロリジノンが得られ(Pfaltzら,Helv.Chim.Acta 79:961(1996))、トルエン中で水素化トリ−n−ブチル錫により5−メチルピロリジノンに還元する(Otsukaら,J.Amer.Chem.Soc.112:838(1990)。その後、テトラヒドロフラン中で水素化ナトリウムとヨウ化メチルを使用してメチル化すると、エナンチオ的に純粋な1,5−ジメチル−2−ピロリジノンが得られる。
【0048】
エナンチオ的に純粋な4−(N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)アミノ)ペンタナールは種々の方法で合成される。Schessingerら,Tetrahedron Lett.28:2083−2086(1987)により報告されている方法に類似の方法を使用すると、N−メチル−L−アラニン又はN−メチル−D−アラニン(Sigmaから市販)を水素化アルミニウムリチウム(対応するN−メチルアミノプロパノールを得る)、ジ−tert−ブチルジカーボネート(アミノ基を保護)及びp−トルエンスルホニルクロリド(アルコールをエステル化)と順次反応させることができる。得られた(S)−又は(R)−1−p−トルエンスルホニルオキシ−N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−2−プロパンアミンを使用してリチウムアセチリドをアルキル化すると、対応する(S)−又は(R)−N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ペンチン−2−アミンが得られる。これらをH.C.Brownら,J.Amer.Chem.Soc.97:5249(1975)に記載の方法によりヒドロホウ素化及び酸化すると、(S)−又は(R)−4(−N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)アミノ)ペンタナールが得られる。
【0049】
縮合環複素環をリチウム化して4(−N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)アミノ)ペンタナールと縮合させてもよい。例えば、6−クロロ−2−フェニルフロ[3,2−b]ピリジンをn−ブチルリチウムと4(−N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)アミノ)ペンタナールで順次処理すると、1−(6−(2−フェニルフロ[3,2−b]ピリジン)イル)−4−(N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)アミノ)−1−ペンタノールが得られる。アルコールをハロゲン化アルキルに変換した後、脱ハロゲン化水素及び脱保護すると、(4E)−N−メチル−5−(6−(2−フェニルフロ[3,2−b]ピリジン)イル)−4−ペンテン−2−アミンが得られる。必要な6−クロロ−2−フェニルフロ[3,2−b]ピリジンはA.Arcadiら,Synthesis,749(1986)に記載の方法に類似の方法を使用し、5−クロロ−2−ヨード−3−ピリジノールを酢酸パラジウム(II)とヨウ化第1銅の存在下にフェニルアセチレンと反応させることにより製造することができる。他方、5−クロロ−2−ヨード−3−ピリジノールはV.Kochら,Synthesis,497(1990)に記載の方法を使用して市販5−クロロ−3−ピリジノール(Aldrich Chemical Company)のヨウ化により製造することができる。
【0050】
本発明の組成物は2,3−ジアシル酒石酸から誘導されるアニオンをもつアリール置換アンモニウム塩組成物である。この種の酸は下記一般式:
【0051】
【化7】
(式中、R”’及びR””はアルキル(好ましくは低級アルキル)、置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロシクリル又は置換ヘテロシクリルである(用語の定義は上記の通りである))をもつ。2,3−ジアシル酒石酸型の酸は炭素2及び3の立体異性体として存在する。従って、R”’とR””が同一である場合には、DL対(エナンチオマー対)とメソ化合物が存在する。D異性体はS,S絶対配置をもち、L異性体はR,R絶対配置をもつ。メソ化合物はR,S絶対配置をもつ。R”’とR””が相互に異なる場合には、R,R/S,S対とR,S/S,R対の2種のエナンチオマー対が存在する。本発明は塩製造におけるこれらの立体異性酸の任意のものとアリール置換アミンの併用に関する。本発明の所定の好適態様では、R”’とR””は各々フェニルであり、酸のD又はL異性体を使用するが、R”’とR””が各々p−トリルであり、酸のD又はL異性体を使用することが最も好ましい。
【0052】
本発明の塩の化学量は種々の選択が可能である。一般に酸(2,3−ジアシル酒石酸型)と塩基(アリール置換アミン型)のモル比は1:2又は1:1であるが、他の比(例えば3:2や2:1)も可能である。酸と塩基のモル比は1:2が好ましい。本発明の塩の形成方法により、これらの塩は結晶構造をとり、塩形成中に存在する溶媒を吸蔵することがある。従って、本発明の塩はアリール置換アミンに対して種々の化学量の溶媒の水和物及び他の溶媒和物として存在することができる。
【0053】
多数のアシル酒石酸をアリール置換アミンと併用して本発明の塩化合物を形成することができる。これらのアシル酒石酸は市販品(例えばAldrich市販品であるジベンゾイル−L−酒石酸、ジベンゾイル−D−酒石酸、ジ−p−トルオイル−L−酒石酸、ジ−p−トルオイル−D−酒石酸、ジピバロイル−L−酒石酸及びジピバロイル−D−酒石酸)でもよいし、Furutaら,Org.Syn.Coll.Vol VII,722−727(1990)に記載の方法に従って容易に合成することもできる。例えば、アシル酒石酸を製造するにはまずD−又はL−酒石酸をベンジルアルコールでエステル化し、D−又はL−酒石酸ジベンジルとする。酒石酸ジベンジルを有機酸塩化物2当量で処理すると、対応する2,3−ジアシル酒石酸ジベンジルが得られる。次に水素と炭素に担持したパラジウムを使用してジベンジルエステルを水素化分解すると、2個のアシル基が同一である2,3−ジアシル酒石酸が得られる。酒石酸ジベンジルを酸塩化物1当量で処理すると、水素化分解後に2−アシル酒石酸が得られる。あるいは、酒石酸ジベンジルを2種の異なる酸塩化物各1当量で順次処理すると不斉2,3−ジアシル酒石酸ジベンジルが得られ、水素化分解後に不斉2,3−ジアシル酒石酸が得られる。これらの方法はD−、L−又はメソ酒石酸を出発材料として利用することができる。
【0054】
本発明の化合物は種々の方法で得られる。ジ−p−トルオイル−D−酒石酸塩形の(2S)−(4E)−N−メチル−5−[3−(5−イソプロポキシピリジン)イル]−4−ペンテン−2−アミンを製造するには、(i)ジ−p−トルオイル−L−酒石酸(0.5〜1当量)のエタノール溶液に適切な純度の化合物のエタノール溶液を加熱還流下に加えて沈澱を形成し、(ii)熱及び/又は水とエタノール(水は10%以下)を加えて沈澱を溶かし、(iii)必要に応じて形成された溶液を冷却して塩を沈澱させ、(iv)塩を濾過及び収集する。使用する化学量、溶媒混合物、溶質濃度及び温度は種々の選択が可能である。本発明で塩形成に使用するアシル化酒石酸としては、市販品(Aldrich Chemical Company)であるジベンゾイル−L−酒石酸、ジベンゾイル−D−酒石酸、ジ−p−トルオイル−L−酒石酸、ジ−p−トルオイル−D−酒石酸、ジピバロイル−L−酒石酸及びジピバロイル−D−酒石酸や、酒石酸ジベンジルと適当な酸塩化物2当量から合成後に水素化してベンジル保護基を除去することにより容易に合成されるジ−o−トルオイル−L−酒石酸、ジ−o−トルオイル−D−酒石酸、ジ−m−トルオイル−L−酒石酸、ジ−m−トルオイル−D−酒石酸、ジ−p−メトキシベンゾイル−L−酒石酸、ジ−p−メトキシベンゾイル−D−酒石酸、ジ−o−メトキシベンゾイル−L−酒石酸、ジ−o−メトキシベンゾイル−D−酒石酸、ジ−m−メトキシベンゾイル−L−酒石酸、ジ−m−メトキシベンゾイル−D−酒石酸、ジ−p−ブロモベンゾイル−L−酒石酸、ジ−p−ブロモベンゾイル−D−酒石酸、ジ−o−ブロモベンゾイル−D−酒石酸、ジ−o−ブロモベンゾイル−L−酒石酸、ジ−m−ブロモベンゾイル−D−酒石酸及びジ−m−ブロモベンゾイル−L−酒石酸が挙げられる。あるいは、Barriereらの米国特許第5,326,782号に記載されているような酒石酸ジ−t−ブチルアセチル、酒石酸ジブチリル及び酒石酸ジ−i−バレリルを対イオンとして使用してもよい。更に、米国特許第5,962,737号、4,803,207号(Whiteら)及び4,528,290号(Wongら)も参照されたい。
【0055】
本発明はある病態又は疾患の予防をその恐れのある対象に提供すると共に、このような病態又は疾患をもつ対象に治療を提供する方法に関する。例えば、本方法はCNS疾患の進行をある程度まで予防し(即ち保護効果を提供)、CNS疾患の症状を改善し、CNS疾患の再発を改善するために有効な量の化合物を患者に投与する。本方法は上記一般式から選択される有効量の化合物を投与する。本発明は上記一般式から選択される化合物を含む医薬組成物に関する。本発明は本発明の化合物のプロドラッグ誘導体にも関する。前記化合物は通常は非光学活性である。しかし、化合物によっては化合物が光学活性をもつような性質の置換基をもつ場合がある。光学活性化合物はラセミ混合物又はエナンチオマーとして利用することができる。
【0056】
アリール置換アミンと2,3−ジアシル酒石酸から誘導される本発明の塩はアリール置換アミンと他の酸(例えばフマル酸又はガラクタル酸)から誘導される他の塩に勝る多数の利点がある。一般に、アリール置換アミンの2,3−ジアシル酒石酸塩は水溶性物質であり、他の塩よりも結晶し易く、本質的に低吸湿性である。例えば、(2S)−(4E)−N−メチル−5−[3−(5−イソプロポキシピリジン)イル]−4−ペンテン−2−アミンのジ−p−トルオイル−D−酒石酸塩は水溶性で高度に結晶質で非多形であり、ガラクタル酸(粘液酸)から誘導される対応する塩よりも低吸湿性である。例えば、(2S)−(4E)−N−メチル−5−[3−(5−イソプロポキシピリジン)イル]−4−ペンテン−2−アミンの1/2ガラクタル酸塩の40℃、70%相対湿度における吸水量は11.8%であったが、対応する1/2(ジ−p−トルオイル−D−酒石酸塩)の室温、90%相対湿度における吸水量は3.2%であった。従って、(2S)−(4E)−N−メチル−5−[3−(5−イソプロポキシピリジン)イル]−4−ペンテン−2−アミンのジ−p−トルオイル−D−酒石酸塩はさらさらした結晶質粉末であり、このような性質は薬剤開発及び医薬製造に明白な利点である。必要に応じてこの塩を医薬加工に許容可能な粒度範囲まで粉砕してもよい。(2S)−(4E)−N−メチル−5−[3−(5−イソプロポキシピリジン)イル]−4−ペンテン−2−アミンのジ−p−トルオイル−D−酒石酸塩は融点が高く、物理化学的に安定であり、非反応性である。前記塩は固体経口剤形の製造に選択される広範な賦形剤に相溶性である。このような特徴は特に医薬用に精製された水和物である多糖誘導体等の賦形剤や、表面水が疎結合しているだけの賦形剤について顕著である。1例として、E−メタニコチン等の所定アリール置換アミンとフマル酸から誘導される塩は塩内部に不純物が形成し易い。例えば、E−メタニコチン中の第2アミンがフマル酸中のオレフィンにマイケル付加反応するのに伴って不純物が生じる。これらの不純物は塩の化学的純度を低下させ、長期保存後に塩の化学的完全性を悪化させる。上記塩の酸成分であるジ−p−トルオイル−D−酒石酸は光学純度の高い塩を生成する非ラセミアミンの分割剤として多用されている。上記非ラセミアミン(2S)−(4E)−N−メチル−5−[3−(5−イソプロポキシピリジン)イル]−4−ペンテン−2−アミンの場合には、対応するジ−p−トルオイル−D−酒石酸塩を形成すると、光学純度の高い塩が得られる。光学純度が高いと、より高純度のニコチンアゴニストが得られ、従って、所定ニコチン酸受容体に対する結合親和性を増加できる。
【0057】
本発明の化合物は他の型のニコチン化合物が治療薬として提案されているような病態及び疾患の治療に有用である。例えば、参考資料としてその開示内容全体を本明細書に組込むWilliamsら,DN&P 7(4):205−227(1994)、Arnericら,CNS Drug Rev.1(1):1−26(1995)、Arnericら,Exp.Opin.Invest,Drugs 5(1):79−100(1996)、Bencherifら,JPET 279:1413(1996)、Lippielloら,JPET 279:1422(1996)、Damajら,Neuroscience(1997)、Holladayら,J.Med.Chem 40(28):4169−4194(1997)、Bannonら,Science 279:77−80(1998)、PCT WO94/08992、PCT WO96/31475、並びに米国特許第5,583,140号(Bencherifら)、5,597,919号(Dullら)及び5,604,231号(Smithら)を参照されたい。本発明の化合物は潰瘍性大腸炎を治療するため、種々の神経変性病を治療するため及び癲癇症状等の痙攣を治療するために鎮痛薬として使用することができる。本発明により治療することができるCNS疾患としては、初老期痴呆(早発アルツハイマー病)、老人性痴呆(アルツハイマー型痴呆)、HIV痴呆、多発性脳梗塞、パーキンソン病をはじめとするパーキンソン症候群、ピック病、ハンチントン舞踏病、遅発性ジスキネジー、多動、躁病、注意欠乏障害、不安、鬱病、軽度認知障害、読字障害、精神分裂病及びトゥーレット症候群が挙げられる。本発明の化合物は梅毒やクロイツフェルト−ヤコブ病等の病態の治療にも使用できる。本化合物は公知方法を使用して投与する。本発明の組成物は診断用組成物の処方に有用な型の成分等の他の成分を加えた製剤組成物として投与することもできる。診断薬としての組成物は米国特許第5,853,696号(Elmalchら)及び5,969,144号(Londonら)に記載されているように使用する。本発明の塩は治療用途で有用であることが望ましい。例えば、Bergeら,J.Pharm.Sci.,66:1−19(1977)及びAndersonら,In:The Practice Medicinal Chemistry,Ch.34:739−754(1996)参照。
【0058】
上記組成物はプロドラッグ形態で投与することができる。「プロドラッグ」とは例えば血液中での加水分解により迅速にin vivo変換して親ペプチド化合物となる化合物を意味する。「医薬的に許容可能なプロドラッグ」とは妥当な医学的判断の範囲内で過度の毒性、刺激、アレルギー応答等を生じずに患者で医薬として使用するのに適しており、所期用途に有効な化合物を意味し、本発明のペプチド化合物の医薬的に許容可能なエステルや可能な場合には両性イオン形態を含む。本発明の医薬的に許容可能なプロドラッグはいずれも参考資料本明細書に組込むT.HiguchiとV.Stella,Pro−drugs as Novel Delivery Systems,Vol.14 of the A.C.S.Symposium Series及びEdward B.Roche編,Bioreversible Carriers in Drug Design,American Pharmaceutical Association and Pergamon Press,1987に記載されている。
【0059】
医薬組成物は添加剤又は補助剤として種々の他の成分を加えることができる。該当ケースで使用される典型的な医薬的に許容可能な成分又は補助剤としては酸化防止剤、フリーラジカル捕捉剤、ペプチド、成長因子、抗生物質、静菌剤、免疫抑制剤、抗凝血剤、緩衝剤、抗炎症剤、解熱剤、持効性結合剤、麻酔剤、ステロイド及びコルチコステロイドが挙げられる。このような成分は付加治療効果を提供したり、医薬組成物の治療作用を変えるように作用したり、医薬組成物の投与に付随する副作用の危険を防止するように作用することができる。場合により、特定疾患を予防又は治療することを目的とした他の化合物と共に医薬組成物の一部として本発明の化合物を利用することもできる。
【0060】
組成物の投与方法は種々の選択が可能である。化合物は(例えば参考資料としてその開示内容全体を本明細書に組込むBrooksらの米国特許第4,922,901号に記載されているような送達装置を使用するか又は鼻腔内にエアゾール形態で)吸入、(例えばローション形態で)局所、(例えば水性もしくは非水性液体等の溶媒又は固体キャリヤーに加えた液体形態で)経口、(例えばデキストロース又は塩類溶液に加えて)静脈内、(例えば医薬的に許容可能な液体又は液体混合物中の懸濁液又はエマルションとして)注入もしくは注射、髄腔内、脳室内、又は(例えば経皮パッチを使用して)経皮の各経路で投与することができる。バルク活性剤形態で組成物を投与することも可能であるが、効率的で有効な投与には各化合物を医薬組成物又は製剤形態に処方することが好ましい。このような化合物の典型的投与方法は当業者に自明である。例えば、組成物は錠剤、ハードゼラチンカプセル又は持効カプセル形態で投与することができる。別例として、Novartis and Alza Corportionから入手可能な型のパッチ技術を使用して化合物を経皮投与することもできる。本発明の医薬組成物の投与は断続的でもよいし、漸進、連続、一定又は制御速度で行ってもよく、温血動物(例えばマウス、ラット、ネコ、ウサギ、イヌ、ブタ、ウシ又はサル等の哺乳動物)に投与できるが、有利な態様ではヒトに投与することが好ましい。更に、医薬製剤を投与する時間と1日の回数も種々の選択が可能である。医薬製剤の活性成分がCNSの機能を発現する対象体内受容体部位と相互作用するように投与することが好ましい。より具体的には、CNS疾患を治療する場合には、筋肉型受容体サブタイプに及ぼす作用を最小にしながら、CNSの機能を発現する該当受容体サブタイプに及ぼす作用を最適化するように投与することが好ましい。本発明の組成物の他の適切な投与方法はSmithらの米国特許第5,604,231号に記載されている。
【0061】
化合物の適切な用量は疾患の症状の発生を予防するか又は患者が罹患している疾患の何らかの症状を治療するために有効な量である。「有効量」、「治療量」又は「有効用量」とは、所望薬理又は治療効果を導き、疾患の有効な予防又は治療をもたらすために十分な量を意味する。例えば、CNS疾患を治療する場合には、化合物の有効量は対象の血液脳関門を通過し、対象の脳内の該当受容体部位に結合し、該当ニコチン受容体サブタイプを活性化する(例えば神経伝達物質分泌を可能にし、疾患を有効に予防又は治療する)ために十分な量である。疾患の予防は疾患の症状の発病を遅延させることにより発現される。疾患の治療は疾患に関連する症状の減少又は疾患の症状の再発の改善により発現される。
【0062】
有効用量は患者の状態、疾患の症状の重度及び医薬組成物の投与方法等の因子に応じて種々の選択が可能である。ヒト患者の場合、典型的化合物の有効用量は一般に神経伝達物質(例えばドーパミン)放出を可能にするように該当受容体を活性化させるために十分な量の化合物を投与するが、骨格筋と神経節に及ぼす作用を有意程度まで誘導するには不十分な量とする。化合物の有効用量は当然のことながら患者毎に異なるが、一般にはCNS効果又は他の所望治療効果が生じる量以上で筋肉効果が観察される量以下とする。
【0063】
通常、化合物の有効用量は一般に5mg未満/kg患者体重の量の化合物を投与する必要がある。多くの場合には、本発明の化合物は約1mg未満/kg患者体重、通常は約100μg未満/kg患者体重であるが、大抵は約10μg〜100μg未満/kg患者体重の量を投与する。低濃度で筋肉型ニコチン受容体への作用を誘導しない本発明の化合物の場合、有効用量は5mg未満/kg患者体重であり、多くの場合にはこのような化合物を50μg〜5mg未満/kg患者体重の量で投与する。上記有効用量は通常は一度に投与するか又は24時間の間に1回以上に分けて投与する量である。
【0064】
ヒト患者の場合、典型的化合物の有効用量は一般に少なくとも約1、多くの場合には少なくとも約10、大抵は少なくとも約25μg/24時間/患者の化合物を投与する必要がある。ヒト患者の場合、典型的化合物の有効用量は一般に約500、多くの場合には約400、大抵は約300μg/24時間/患者を越えない化合物を投与する必要がある。更に、有効用量の投与は患者の血漿中の化合物の濃度が一般に500ng/ml、大抵は100ng/mlを越えないようにする。
【0065】
本発明の方法により有用な化合物は患者の血液脳関門を通過することができる。従って、このような化合物は患者の中枢神経系に侵入することができる。本発明の実施に有用な典型的化合物の対数P値は一般に約−0.5よりも大きく、多くの場合には約0よりも大きく、大抵は約0.5よりも大きい。このような典型的化合物の対数P値は一般に約3未満、多くの場合には約2未満、大抵は約1未満である。対数P値は化合物が生体膜等の拡散隔膜を通過する能力の尺度となる。Hanschら,J.Med.Chem.11:1(1968)参照。
【0066】
本発明の方法により有用な化合物は患者の脳のニコチンドーパミン作動性受容体に結合し、殆どの場合にはこれを活性化させることができる。従って、このような化合物はニコチン薬理作用を発現することができ、特にニコチンアゴニストとして作用することができる。本発明の実施に有用な典型的化合物の受容体結合定数は一般に約0.1nMを上回り、多くの場合には約1nMを上回り、大抵は約10nMを上回る。所定化合物の受容体結合定数は約100μM未満であり、多くの場合には約10μM未満であり、大抵は約5μM未満であり、好適化合物の受容体結合定数は一般に約1μM未満、多くの場合には約100nM未満、大抵は約50nM未満である。好ましくはないが、化合物によっては受容体結合定数が10μM未満、更には100μM未満のものもある。受容体結合定数は化合物が患者の所定脳細胞の該当受容体部位の2分の1に結合する能力の尺度となる。Chengら,Biochem.Pharmacol.22:3099(1973)参照。
【0067】
本発明の方法により有用な化合物は神経末端物質(即ちシナプトソーム)からの神経伝達物質分泌を有効に活性化することによりニコチン機能を示すことができる。従って、このような化合物は該当ニューロンを活性化してアセチルコリン、ドーパミン及び他の神経伝達物質を放出又は分泌させることができる。一般に、本発明の実施に有用な典型的化合物は筋肉型ニコチン受容体の活性化に必要な量の少なくとも3分の1、典型的には少なくとも約10分の1、大抵は少なくとも約100分の1、場合によっては少なくとも約1000分の1の量でドーパミン分泌を活性化することができる。本発明の所定の化合物は等モル量の(S)−(−)−ニコチンにより誘導されると同等の量のドーパミンを分泌させることができる。
【0068】
本発明の化合物は本発明の方法に従って有効量で使用した場合に所定該当ニコチン受容体に選択的であるが、少なくともドーパミン放出の活性化に必要な濃度よりも高い濃度で望ましくない副作用を伴う受容体の有意活性化を生じない。これは、CNS疾患の予防及び/又は治療をもたらす化合物の特定用量がドーパミン放出の活性化に必要な濃度の>5倍、好ましくは>100倍、より好ましくは>1000倍の濃度で所定の筋肉型ニコチン受容体の活性化を誘発するには基本的に無効であることを意味する。心血管副作用の原因となる神経節型受容体に対する本発明の所定化合物のこの選択性は、これらの化合物がドーパミン放出の活性化に必要な濃度よりも高い濃度で副腎クロム親和組織のニコチン機能を活性化できないことにより裏付けられる。
【0069】
本発明の化合物は本発明の方法に従って有効量で使用した場合にある程度までCNS疾患の進行を予防し、CNS疾患の症状を改善し、CNS疾患の再発を改善するために有効である。他方、前記化合物のこのような有効量は骨格筋に関する作用の増加により判断されるような目立った副作用を生じるには不十分である。従って、本発明の所定化合物を投与すると、所定副作用を避けながら所定CNS疾患の治療を提供する治療窓が得られる。即ち、本発明の化合物の有効用量はCNSに所望作用を生じるには十分であるが、望ましくない副作用を生じるには不十分である(即ち十分高いレベルにない)。CNS疾患の治療をもたらす本発明の化合物の有効な投与は、所定副作用を有意程度まで生じるために十分な量の1/5未満、多くの場合には1/10未満を投与した場合に得られることが好ましい。
【0070】
本発明の医薬組成物は所定の他の病態、疾病及び疾患を予防又は治療するためにも利用できる。このような疾病及び疾患の例としては炎症性腸疾患、急性胆管炎、アフタ性口内炎、関節炎(例えばリウマチ様関節炎や骨関節炎)、神経変性病、(例えばAIDS、AIDS関連症候群及び新形成で生じるような)感染続発性カヘキシー、及びPCT WO98/25619に記載されている適応症が挙げられる。本発明の医薬組成物はこれらの病態、疾病及び疾患に付随する可能性のある症状を改善するために利用することができる。例えば、本発明の医薬組成物は遺伝病及び障害の治療、狼瘡等の自己免役疾患の治療、(例えば細菌、真菌及びウイルス感染や、敗血症等の他の型の毒素の作用を治療するための)抗感染剤として、(例えば急性胆管炎、アフタ性口内炎、喘息及び潰瘍性大腸炎を治療するための)抗炎症剤として、及び(例えばカヘキシー、炎症、神経変性病、ウイルス感染及び新形成の治療に望ましい)サイトカイン放出阻害剤として使用することができる。本発明の化合物は上記型の疾病及び疾患の管理において既存療法と併用して補助療法として使用することもできる。このような場合には、医薬製剤の活性成分が筋肉及び神経節に関連するもの等の受容体サブタイプに及ぼす作用を最小限にしながら異常サイトカイン産生に及ぼす作用を最適にするように作用するように投与することが好ましい。サイトカイン産生に変化させるか又はサイトカイン産生を生じる領域と活性成分が相互作用するように投与することが好ましい。このような病態又は疾患の治療には、本発明の化合物は非常に強力であり(即ち非常に低濃度でサイトカイン産生及び/又は分泌に作用する)、非常に有効である(即ちサイトカイン産生及び/又は分泌を比較的高度まで有意に抑制する)。
【0071】
有効用量は最大効果の出現が認められる非常に低濃度であることが最も好ましい。該当組織容量当たりの化合物の量として測定した濃度は一般に化合物がサイトカイン産生にどの程度まで作用するかを表す尺度となる。通常、このような化合物の有効用量は一般に100μg/kg患者体重を大きく下回る量、更には10μg/kg患者体重よりも少量の化合物を投与する必要がある。上記有効用量は通常は一度に投与するか又は24時間の間に1回以上に分けて投与する量である。
【0072】
ヒト患者の場合、典型的化合物の有効用量は一般に少なくとも約1、多くの場合には少なくとも約10、大抵は少なくとも約25μg/24時間/患者の化合物を投与する必要がある。ヒト患者の場合、典型的化合物の有効用量は一般に約1、多くの場合には約0.75、大抵は約0.25mg/24時間/患者を越えない化合物を投与する必要がある。更に、有効用量の投与は患者の血漿中の化合物の濃度が一般に500pg、多くの場合には300pg/ml、大抵は100pg/mlを越えないようにする。このように使用すると、本発明の化合物は用量依存的であり、従って、低濃度で使用した場合にはサイトカイン産生及び/又は分泌を抑制するが、高濃度ではこれらの抑制効果を示さない。本発明の化合物は該当ニコチン受容体サブタイプの活性化を有意程度まで誘発するために必要な量よりも少量で使用した場合にサイトカイン産生及び/又は分泌抑制効果を示す。
【0073】
以下、実施例により本発明を説明するが、これらの実施例は発明を限定するものではない。これらの実施例において部及び百分率は特に指定しない限り、全て重量に基づく。
【0074】
実施例
実施例1
該当受容体部位に対する結合の測定
Dullらの米国特許第5,597,919号に記載の方法に従って該当受容体部位に対する化合物の結合を測定した。Chengら,Biochem,Pharmacol.22:3099(1973)の方法を使用してIC50値から阻害定数(Ki値)を計算し、nMとして報告した。結合定数が低いことから明らかなように、本発明の化合物は所定CNSニコチン受容体に対して良好な高親和性結合を示す。
【0075】
実施例2
試料番号1は(2S)−(4E)−N−メチル−5−[3−(5−イソプロポキシピリジン)イル]−4−ペンテン−2−アミン・1/2(ジ−p−トルオイル−L−酒石酸塩)であり、次のように製造する。
【0076】
(2S)−(4E)−N−メチル−5−[3−(5−イソプロポキシピリジン)イル]−4−ペンテン−2−アミンはCaldwellらのPCT WO99/65876に記載の手順に従って製造した。
【0077】
(2S)−(4E)−N−メチル−5−[3−(5−イソプロポキシピリジン)イル]−4−ペンテン−2−アミン・1/2(ジ−p−トルオイル−L−酒石酸塩)は以下の手順を使用して製造する。ジ−p−トルオイル−L−酒石酸(0.4066g,1.052mmol)の無水エタノール(5mL)溶液を還流温度付近に維持して撹拌しながら、これに(2S)−(4E)−N−メチル−5−[3−(5−イソプロポキシピリジン)イル]−4−ペンテン−2−アミン(0.2466g,1.052mmol)の無水エタノール(6mL)溶液を滴下した。得られた淡黄色溶液を周囲温度まで放冷させ、15時間放置した。固体は沈澱しなかった。従って、溶液をロータリー・エバポレーターにより濃縮した後、高減圧下に乾燥した。得られたオフホワイトフォームを還流温度付近まで加熱下にイソプロパノール(3mL)に溶かした。周囲温度まで冷却後、ジエチルエーテル(3mL)を滴下した。得られた混合物を5℃に16時間維持した。得られた固体を濾過し、ジエチルエーテルで洗浄し、40℃で減圧乾燥すると、白色粉末0.2383g(53.0%)が得られた。この材料0.167gを加熱下に最小量の酢酸エチルに溶かした。得られた溶液を周囲温度まで放冷させ、更に5℃まで冷却した。得られた固体を濾過し、酢酸エチルで洗浄し、40℃で減圧乾燥すると、白色粉末0.1393g(回収率83.4%)が得られた(mp159〜161℃)。
【0078】
試料番号1はKi=6nMを示した。結合定数が低いことから明らかなように、この化合物は所定CNSニコチン受容体に対して良好な結合親和性をもつ。
【0079】
実施例3
試料番号2は(2S)−(4E)−N−メチル−5−[3−(5−イソプロポキシピリジン)イル]−4−ペンテン−2−アミン・1/2(ジ−p−トルオイル−D−酒石酸塩)であり、次のように製造する。
【0080】
(2S)−(4E)−N−メチル−5−[3−(5−イソプロポキシピリジン)イル]−4−ペンテン−2−アミン・1/2(ジ−p−トルオイル−D−酒石酸塩)は次のように製造した。ジ−p−トルオイル−D−酒石酸(0.085g,0.219mmol)の無水エタノール(3mL)溶液を還流温度付近に維持して撹拌しながら、これに(上記のように製造した)(2S)−(4E)−N−メチル−5−[3−(5−イソプロポキシピリジン)イル]−4−ペンテン−2−アミン(0.1272g,0.54mmol)の無水エタノール(3mL)溶液を滴下した。黄色溶液を室温まで2時間放冷させ、0℃まで1時間冷却し、得られた固体を濾取した。固体を40℃で減圧乾燥すると、白色粉末0.1695g(73.0%)が得られた(mp197〜201℃)。
【0081】
試料番号2はKi=5nMを示した。結合定数が低いことから明らかなように、この化合物は所定CNSニコチン受容体に対して良好な結合親和性をもつ。
【0082】
実施例4
試料番号2の(2S)−(4E)−N−メチル−5−[3−(5−イソプロポキシピリジン)イル]−4−ペンテン−2−アミン・1/2(ジ−p−トルオイル−D−酒石酸塩)は以下の手順でも得られる。(上記のように製造した)(2S)−(4E)−N−メチル−5−[3−(5−イソプロポキシピリジン)イル]−4−ペンテン−2−アミンのt−ブチルメチルエーテル(TBME)溶液(遊離塩基19.4g(82.8mmol)を含む溶液165.5g)にメタノール(50mL)を加えた。混合物を加熱し、TBMEとメタノールを留去すると同時にメタノールを加えて容量を維持した。合計225mLを加えると同時に留去した。バッチを約40℃まで冷却し、ジ−p−トルオイル−D−酒石酸(19.2g)を加えて沈澱を形成した。混合物を計量し、存在するメタノールの量を測定した。更にメタノール(33mL)を加えて塩濃度を14%w/wに調節した。溶液が形成されるまで(約68℃)混合物を加熱した後、結晶点まで冷却した。メタノール(137mL)を減圧留去すると同時に等容量のイソプロパノールを加えた。スラリーを0〜5℃まで(45分間かけて)冷却した。得られた生成物を濾取し、冷イソプロパノール(25mL)で洗浄し、50℃で減圧乾燥すると、(2S)−(4E)−N−メチル−5−[3−(5−イソプロポキシピリジン)イル]−4−ペンテン−2−アミン・1/2(ジ−p−トルオイル−D−酒石酸塩)(32.6g;92.1%)が得られた。
【0083】
実施例5
試料番号3は(E)−メタニコチン・1(ジ−p−トルオイル−L−酒石酸塩)であり、次のように得られる。
【0084】
(E)−メタニコチンはRuecroftとWoodsの米国特許第5,663,356号に記載の手順に従ってニコチンから製造した。
【0085】
(E)−メタニコチン・1(ジ−p−トルオイル−L−酒石酸塩)は次のように製造した。(E)−メタニコチン(0.200g,1.233mmol)のテトラヒドロフラン(THF)(1mL)溶液を3分間かけて滴下しながら、THF(3.7mL)及びエタノール(0.8mL)中のジ−p−トルオイル−L−酒石酸(0.491g,1.233mmol)の溶液を撹拌下に窒素雰囲気下で加熱還流した。混合物を周囲温度まで放冷させた後、5℃で48時間保存した。沈澱を濾過し、冷THF−エタノール(9:1v/v)(2×1mL)、次いで冷THF(2×3mL)で洗浄した後、40℃で3時間減圧乾燥すると白色粉末0.642g(94.9%)が得られた。この材料を熱エタノール(5mL)に溶かし、熱溶液をグラスウールで濾過し、濾液を周囲温度まで冷却した後、5℃に24時間冷却することにより再結晶させた。得られた固体を濾過し、冷エタノール(2×2mL)で洗浄し、45℃で24時間減圧乾燥すると白色粉末0.575g(回収率91.0%、総収率85.1%)が得られた(mp157.5〜159.5℃)。
【0086】
試料番号3はKi=14nMを示した。結合定数が低いことから明らかなように、この化合物は所定CNSニコチン受容体に対して良好な結合親和性をもつ。
【0087】
以上、本発明を説明したが、これにより発明を限定するものではない。本発明は請求の範囲により定義され、請求の範囲の等価物も含むものとする。
Claims (9)
- E−メタニコチンと第2の化合物の化学量論的モル比が1:1である請求項1に記載の組成物。
- 第2の化合物がジベンゾイル−L−酒石酸、ジベンゾイル−D−酒石酸、ジ−p−トルオイル−L−酒石酸、ジ−p−トルオイル−D−酒石酸、ジピバロイル−L−酒石酸及びジピバロイル−D−酒石酸、ジ−o−トルオイル−L−酒石酸、ジ−o−トルオイル−D−酒石酸、ジ−m−トルオイル−L−酒石酸、ジ−m−トルオイル−D−酒石酸、ジ−p−メトキシベンゾイル−L−酒石酸、ジ−p−メトキシベンゾイル−D−酒石酸、ジ−o−メトキシベンゾイル−L−酒石酸、ジ−o−メトキシベンゾイル−D−酒石酸、ジ−m−メトキシベンゾイル−L−酒石酸、ジ−m−メトキシベンゾイル−D−酒石酸、ジ−p−ブロモベンゾイル−L−酒石酸、ジ−p−ブロモベンゾイル−D−酒石酸、ジ−o−ブロモベンゾイル−D−酒石酸、ジ−o−ブロモベンゾイル−L−酒石酸、ジ−m−ブロモベンゾイル−D−酒石酸及びジ−m−ブロモベンゾイル−L−酒石酸から構成される群から選択される化合物を含む請求項1に記載の組成物。
- E−メタニコチンと第2の化合物の化学量論的モル比が1:1である請求項4に記載の医薬組成物。
- 第2の化合物がジベンゾイル−L−酒石酸、ジベンゾイル−D−酒石酸、ジ−p−トルオイル−L−酒石酸、ジ−p−トルオイル−D−酒石酸、ジピバロイル−L−酒石酸及びジピバロイル−D−酒石酸、ジ−o−トルオイル−L−酒石酸、ジ−o−トルオイル−D−酒石酸、ジ−m−トルオイル−L−酒石酸、ジ−m−トルオイル−D−酒石酸、ジ−p−メトキシベンゾイル−L−酒石酸、ジ−p−メトキシベンゾイル−D−酒石酸、ジ−o−メトキシベンゾイル−L−酒石酸、ジ−o−メトキシベンゾイル−D−酒石酸、ジ−m−メトキシベンゾイル−L−酒石酸、ジ−m−メトキシベンゾイル−D−酒石酸、ジ−p−ブロモベンゾイル−L−酒石酸、ジ−p−ブロモベンゾイル−D−酒石酸、ジ−o−ブロモベンゾイル−D−酒石酸、ジ−o−ブロモベンゾイル−L−酒石酸、ジ−m−ブロモベンゾイル−D−酒石酸及びジ−m−ブロモベンゾイル−L−酒石酸から構成される群から選択される化合物を含む請求項4に記載の医薬組成物。
- E−メタニコチンと第2の化合物の化学量論的モル比が1:1である請求項7に記載の方法。
- 第2の化合物がジベンゾイル−L−酒石酸、ジベンゾイル−D−酒石酸、ジ−p−トルオイル−L−酒石酸、ジ−p−トルオイル−D−酒石酸、ジピバロイル−L−酒石酸及びジピバロイル−D−酒石酸、ジ−o−トルオイル−L−酒石酸、ジ−o−トルオイル−D−酒石酸、ジ−m−トルオイル−L−酒石酸、ジ−m−トルオイル−D−酒石酸、ジ−p−メトキシベンゾイル−L−酒石酸、ジ−p−メトキシベンゾイル−D−酒石酸、ジ−o−メトキシベンゾイル−L−酒石酸、ジ−o−メトキシベンゾイル−D−酒石酸、ジ−m−メトキシベンゾイル−L−酒石酸、ジ−m−メトキシベンゾイル−D−酒石酸、ジ−p−ブロモベンゾイル−L−酒石酸、ジ−p−ブロモベンゾイル−D−酒石酸、ジ−o−ブロモベンゾイル−D−酒石酸、ジ−o−ブロモベンゾイル−L−酒石酸、ジ−m−ブロモベンゾイル−D−酒石酸及びジ−m−ブロモベンゾイル−L−酒石酸から構成される群から選択される化合物を含む請求項7に記載の方法。
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