JP2004500357A - コントートロスタチン(cn)並びに転移及びその他の症状の予防におけるその使用法 - Google Patents

コントートロスタチン(cn)並びに転移及びその他の症状の予防におけるその使用法 Download PDF

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Abstract

ホモ二量体のディスインテグリンであるコントートロスタチンは、インテグリンを発現している腫瘍細胞の接着、運動性、及び浸潤性を調節する。薬学的に許容される組成物として調合される場合、該タンパク質は、αvβ3又はαvβ5インテグリンへのインテグリンの結合が関連する疾病過程を阻害又は崩壊することによって、患者を治療するために使用することができる。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
関連出願
本出願は、1999年12月10日に出願された米国特許出願第09/460,295号の一部継続出願であり、米国特許出願第09/460,295号は、1996年11月8日に出願された米国特許出願第08/745,603号(1998年9月29日に米国特許第5,814,609号が付与された)の一部継続出願である1998年9月29日に出願された米国特許出願第09/163,047号の一部継続出願である。前記米国特許出願第08/745,603号は、1993年10月22日に出願された特許出願第08/141,321号(既に放棄されている)の継続出願である1995日10月10日出願された特許出願第08/540,423号の分割出願である1996年4月15日に出願された米国出願第08/632,691号(1998年3月24日に米国特許第5,731,288号が付与された、既に放棄されている)の一部継続出願である。これらは全て、本明細書において参考文献として援用される。
【0002】
【発明の背景】
癌細胞上のインテグリン類は、腫瘍の浸潤及び伝播において重要な役割を果たしている。インテグリンは、多くの細胞種の細胞表面上に見出される、細胞間の相互作用及び細胞と細胞の周囲との相互作用を媒介するタンパク質ファミリーである。インテグリンはヘテロ二量体であり、細胞−細胞間の相互作用、及び細胞−基層間の相互作用に関与するαサブユニットとβサブユニットから構成される。インテグリンは、フィブロネクチン、フィブリノーゲン、ビトロネクチン、コラーゲン、及びラミニンなどの細胞外マトリックスタンパク質の受容体として機能する。これらの相互作用の中には、マトリックスタンパク質中に存在するArg−Gly−Asp(RGD)配列を介して媒介されるものがあることが示されている。フィブリノーゲンの結合には、αサブユニットとβサブユニットの両者が必要である。例えば、インテグリン細胞表面受容体スーパーファミリーの一員の一つとして、血小板凝集において血漿フィブリノーゲンと相互作用する血小板膜糖タンパク質(GP)IIb/IIIaがある。
【0003】
CNは、血液の血小板の表面上に存在する特異的なインテグリンに結合し、血小板の相互接着能(血小板凝集と称される過程)を妨げる。血小板は、血流中に見出される骨髄細胞の小断片である。血小板は、有益な作用と有害な作用を併有している。血小板の有用な作用は、血餅の形成を促進することによって、傷害後に出血を止めることである。しかしながら、ある種の条件下では、血小板は心臓に栄養素を供給する動脈を閉鎖する(心臓発作を誘発し得る作用である)ことに関与する。
【0004】
急性心筋梗塞の発症において血小板が冠状動脈の血栓症と再血栓症を媒介する役割に関して、インテグリン細胞表面受容体が研究されてきた[Zucker, M.B., Sci.American 242: 86 (1990)]。血小板の凝集に関しては、フィブリノーゲン中に存在するRGD配列が、(GP)IIb/IIIaと相互作用するために不可欠である[Ginsberg,M.H. et al.,Thrombos.Haemostas.59:1(1988)]。ヘビ毒は血小板凝集を阻害する故に、ヘビ毒は様々な研究の対象になってきた。
【0005】
Crotalidae及びViperidae科のヘビの毒から精製された多くのタンパク質は、糖タンパク質(GP)IIb/IIIaを介した血小板の凝集を阻害することが見出されている[例えば、Huang,T.F. et al.,J.Biol.Chem.262;16157(1987);Gan,Z.R. et al.,J.Biol.Chem.263:19827(1988);Yasuda,T.et al.,J.Am.Coll.Cardiol.16:714(1990);Trikha,M.et al.,Fibrinolysis 4(Suppl.1):105(1990);Trikha,M. et al.,Blood 76(Suppl.1):479a(1990);Holahan,M.A.et al.,Pharmacology 42:340(1991);Shebuski,R.J. et al.,Circulation 82:169(1990);Yasuda,T.et al.,Circulation 83:1038(1991)参照]。ディスインテグリンに分類されるこれらのタンパク質は、典型的には、ジスルフィドに富む。さらに、バルブリン(barbourin)[Scarborough,R.M. et al.,J.Biol.Chem.266:9359(1991)]を除くこれまでに単離された全てのディスインテグリンは、インテグリンによって媒介される相互作用の阻害に関与することが示されているRGD(Arg−Gly−Asp)配列を含有する。特に、ディスインテグリンのRGD配列は、血小板の膜上に存在するフィブリノーゲン結合部位と競合することによって、ADP又は他の媒介物によって誘導される血小板の凝集を阻害するかもしれない。
【0006】
それにもかかわらず、ディスインテグリンは、RGD部位のみに基づいた機序以外の機序によってインテグリンとの相互作用を促進するユニークな表面構造を有する可能性が存在するという証拠が増大しつつあるようである。例えば、(RGD配列中のアルギニンがアラニンに置換された)エキスタチンの化学的に合成された突然変異誘導体が、なお、幾らかの生物活性を保持しているという知見は、本タンパク質の他の領域が結合に関与している可能性があり、RGD結合部位中には幾らかの柔軟性が存在し得ることを示唆している[Connolly,T.M. et al.,Circulation 82(Suppl.III):660(1990)]。合成RGDペプチドは、一般的には、サイズが小さいためにディスインテグリンの分子構造的特徴を有していないので、ディスインテグリンの結合に関与していると思われる複数の機序を介して相互作用することができない。
【0007】
特に興味深いディスインテグリンの1つが、Agkistrodon contortrix contortrix(ミナミアメリカマムシ)の毒から単離されたCNである。最初に報告された精製操作は、セファデックスG−100 SF上での分子ふるいクロマトグラフィー、セファデックスG−25F上での脱塩、及び逆相HPLCを含むものであった。ヒト血小板に富む血漿を攪拌してADPで増強される凝集と、CNによるその阻害を37℃でモニターした。血小板が豊富な血漿(3×10/mm)を、5μLのセファデックスG−100 SFにかけた後の低分子量のピークとともに1分間プレインキュベートすると、10μMのADPによって誘導される血小板の凝集が76%阻害されることが見出された[Trikha et al.(1990)、上記]。
【0008】
その後の報告で、未精製の毒には血小板凝集活性が存在するために、阻害剤を容易に検出することができないが、精製の第1工程(疎水性相互作用HPLC)の後には、前記毒の中に存在する凝集活性とα鎖分解性繊維素溶解酵素の両者から阻害活性が分離されることが明らかとなった。HPLCの後に、阻害活性をプールして、ヒドロキシルアパタイトHPLCカラムにかけた。精製の最終工程では、C逆相HPLCクロマトグラフィーを使用した。均一なタンパク質の収量は、毒1g当たり3〜5mgであった。CNは、非還元条件下では18〜21kDaの分子量を有し、還元条件下では9kDaの分子量を有することが報告されている。このため、該分子は、ジスルフィド結合によって互いに固定された2つのサブユニットを有するホモダイマーであると考えられる。等電点電気泳動によって、該タンパク質が酸性のpIを有することが示された。CNは、繊維素溶解活性を示さず、分子サイズと血小板凝集阻害の速度論に基づいて、5’−ヌクレオチダーゼ又はホスホリパーゼではないことが報告された。約100nMのCNを1分間プレインキュベートすると、ADPによって誘導された血小板の凝集を完全に阻害することが報告された[Trikha et al.(1990)、上記]。
【0009】
さらに、CNは、5〜6個のジスルフィド架橋を持つ70アミノ酸を有し、CNの配列は、アプラジン(Agkistrodon piscivorus piscivorusの毒から得られる血小板凝集阻害剤)の10アミノ酸下流から始まるようであるということが報告されている。CNは、9つのアミノ酸の挿入及び/又はC末端の伸長を有するかもしれないと推測された。0.8μg/mLのCNによって、及びイヌの血小板の存在下におけるCN2.2μg/mLによって、血小板に富む血漿中のヒト血小板凝集の50%阻害(IC50)が観察されることがさらに報告された[Trikha,M.et al.,Journal of Cellular Biochem.16F:180(1992)]。
【0010】
ヒトの繊維肉腫(HT−1080)及びc−Ha−rasをトランスフェクトしたラットの胚(4R)細胞が、フィブロネクチンによってコートされたプレートに結合するのをCNが阻害するが、Matrigelがコートされたプレートに結合するのを阻害しないことが報告された。1μg/mLと5μg/mLのCNの存在下では、4R細胞のフィブロネクチンへの結合が、それぞれ、46%及び88%阻害され、HT1080細胞での阻害は、それぞれ、89%と85%であった[Trikha,M.et al.,Proceedings of the American Association for Cancer Research:33:34(1992)]。
【0011】
CNはインテグリンとそれらの受容体間の相互作用を阻害することができるようなので、ホモ二量体のディスインテグリンはこれらの相互作用が関連する疾病の治療に有用な可能性がある。このため、他のヘビ毒成分が実質的に存在しない精製されたコントートロスタチンを製造し、かつ使用するための改良法が必要とされている。
【0012】
【発明の概要】
本発明は、血小板凝集、細胞の増殖、接着、転移、及び新血管新生などの生体プロセスを阻害するために使用できるディスインテグリンの要求を充足する。とりわけ、インテグリンを発現している腫瘍細胞の接着、運動性、及び浸潤性を調節するコントートロスタチン等のホモ二量体のディスインテグリンが、方法及び組成物中で利用される。薬学的に許容される組成物として調合される場合には、該タンパク質は、αvβ3又はαvβ5インテグリンとリガンドとの結合が関連する疾病過程を阻害又は崩壊させることによって、患者を治療するために使用することができる。
【0013】
本発明は、αvβ3インテグリン発現細胞の運動性を減少させる方法であって、前記インテグリン発現細胞上に存在する少なくとも2つのαvβ3インテグリンを架橋することによって、前記細胞の運動性を阻害することを備えた方法を含む。一つの態様において、前記インテグリン類は、ホモ二量体のディスインテグリン、好ましくはコントートロスタチンによって架橋される。該架橋は、FAKシグナル伝達を破壊し、FAK及びCASのチロシンリン酸化を活性化させる。さらに、前記架橋は、細胞骨格又は局所的接着構造の変化を含む、細胞の形態の変化を誘導する。最も好ましい態様において、前記αvβ3インテグリン発現細胞は腫瘍細胞である。
【0014】
本発明は、インテグリン発現細胞をコントートロスタチンに暴露することによって、インテグリン発現細胞がビトロネクチンに接着することを阻害する方法も含む。コントートロスタチンは、インテグリン(特にαvβ3又はαvβ5)に結合することによって、接着を阻害する。
【0015】
本発明の別の態様は、配列番号2のアミノ酸番号419〜483と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有するホモ二量体のディスインテグリンである。コントートロスタチンのアミノ酸配列は、(i)インテグリンαvβ5に結合すること、及び(ii)腫瘍細胞中で、αvβ3によって媒介されるCAS及びFAKのチロシンリン酸化を誘導すること、によって特徴づけられる。好ましくは、既定の間隙(opening)及びギャップペナルティーと既定のスコアリングマトリックスを用いたFASTA又はBLASTによって決定した場合に、前記ホモ二量体のディスインテグリンは、配列番号2のアミノ酸番号419〜483と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する。
【0016】
本発明のさらに別の態様において、薬学的に許容される担体と、コントートロスタチン等のホモ二量体のディスインテグリンとを含む薬学的に許容される組成物である。
【0017】
本発明の方法及び組成物は、血小板凝集、腫瘍転移、血管新生、新血管新生(neovascularization)、細胞接着、浸潤性、又は増殖を阻害するために使用することができる。
【0018】
【発明の詳細な記述】
CNの性質決定、クローニング、及び発現
本発明者らは、ディスインテグリンの一種、すなわち、A.c.contortrixの毒から得られたコントートロスタチン(CN)を精製し、性質決定した。天然タンパク質の場合、CNは質量13,505のホモダイマーであり、還元されてピリジルエチル化されたタンパク質の場合、質量6,956である。血小板(GP)IIb/IIIa(フィブリノーゲン受容体)に対する結合親和性を調べるために、ヒト血小板が豊富な血漿(PRP)を用いて、(GP)IIb/IIIAに対して誘導された抗体である[125I]7E3とCNの競合を分析した。CNは、25nMのIC50を示した。従って、CNは強力なβ3インテグリンアンタゴニストである。
【0019】
さらなる態様において、本発明者らは、強力な抗腫瘍活性を有する南アメリカマムシ(southern copperhead snake)の毒から得られたタンパク質であるコントートロスタチンを提供する。南アメリカマムシの毒の中に存在するタンパク質の複雑な混合物から該タンパク質を精製するための洗練された技術を開発した。上述のように、最初、CNは血小板凝集の阻害剤として特徴づけられた。本発明者らは、ヘビ毒から幾つかのディスインテグリンを精製した。コントートロスタチン(CN)は、南アメリカマムシの毒から精製された。ディスインテグリン類は、主タンパク質コアから突出しているCys残基に隣接した約13アミノ酸残基の柔軟なペプチドループの端に、限定されたArg−Gly−Asp(RGD)配列を有している。例えば、配列番号1又は2のアミノ酸残基457〜469を参照されたい。この露出したRGD配列によって、ディスインテグリン類は高い親和性でインテグリン類に結合することが可能となる。
【0020】
λgt10中に構築されたA.c.contortrixの毒腺細胞のライブラリーから、CNのcDNAを増幅した。CNのアミノ酸組成とアミノ酸配列の一部をエドマン分解によって決定した。図1を参照。この情報を用いて、コントートロスタチン前駆体タンパク質をコードする2,027ヌクレオチドの完全長cDNA(配列番号1)をクローニングし、配列を決定した。
【0021】
ディスインテグリンスーパーファミリーのメンバーとして、CNは、ヌクレオチド配列が公知であったトリグラミンを含む他のディスインテグリンと高い類似性を有している。図1Aは、エドマン分解アッセイに基づくCNの部分アミノ酸配列を示している。また、部分配列を表記されている他のディスインテグリンと比較している。前記RGD配列は太字で示す。高度に保存されたPCCDAATCKL配列(これに対するPCRプライマーをデザインした)には下線が付した。ディスインテグリンファミリーの間で相同性が高い配列、並びにcDNAインサートに隣接する公知のλgt10配列に基づくプライマーを用いたPCRによって、CNのcDNAがどのようにクローニングされたかを図1Aおよび1Bに示す。前記PCRプライマー対は、配列番号5(λgt10フォワードプライマー)及び配列番号3(PCR−1)5’−GATTTACAGGTTGCAGCATCGC−3’、これは下線が付した保存された配列の一部をコードするトリグラミンcDNAのアンチセンスである(図1Aと1B)、並びにPCR−1と相補的な配列番号4(PCR−2)及び配列番号6(λgt10リバースプライマー)である。配列番号5と3は、下線を付した部分の上流に位置するアミノ酸をコードするDNAを増幅する。配列番号4と6は、CNの下流部分をコードするアミノ酸を増幅する。完全長のcDNAは、2つのPCR産物の重複伸張によって得られる(図1Cと2参照)。
【0022】
コントートロスタチン前駆体のcDNA配列と推定アミノ酸配列を図3に示す。完全長の配列は、2,029ヌクレオチドから構成される(配列番号1)。5’末端の86ヌクレオチド非翻訳領域、483アミノ酸をコードするオープンリーディングフレーム(配列番号2)、及び3’非コード領域から構成される。
【0023】
図4は、他の4つのヘビ毒出血性タンパク質であるトリグラミン、Cat(Crotalus atrox毒から得られたカトロコラスタチン(catrocollastatin))、ハラルハジン(Bothrops jararacaの毒から得られる)、及びHt−e(C.Atroxの毒から得られる)の構造と比較したコントートロスタチンのマルチドメイン構造を示している。ヘビ毒メタロプロテイナーゼの構造的な分類によれば、コントートロスタチンの前駆体は、プロタンパク質(配列番号1又は2のアミノ酸残基1〜190)、メタロプロテイナーゼ(配列番号1又は2の残基191〜410)、及びディスインテグリン(配列番号1又は2の残基419〜483)ドメインに分けることができる。天然のディスインテグリンの成熟したモノマーは、D419、すなわち419位のアスパラギン酸残基から始まる。図4の下線を付した部分は、コントートロスタチンとトリグラミンの両者のRGD配列と、各分子のメタロプロテイナーゼドメイン中の亜鉛結合モチーフにおいて保存されたHEMGHNLGIHH配列を示している。
【0024】
従って、本発明によれば、実質的に精製されたコントートロスタチン、又はディスインテグリンの特性を保持した精製されたコントートロスタチンの変種、又はプロタンパク質、メタロプロテイナーゼ、及びディスインテグリンドメインを有するコントートロスタチンの前駆体からなるタンパク質も提供される。このタンパク質は、ヘビ毒のような天然の採取源から精製することができ、又は本明細書の開示を参照して当業者が理解できるとであろう組換え技術によって作製することができる。
【0025】
さらに、本出願は、天然および合成のアミノ酸及びヌクレオチド配列の両者について権利を主張する。特に修正がなければ、本明細書で使用する「タンパク質」という語は、天然および合成のポリペプチド及びペプチドの両者を包含する。合成タンパク質には、組換えタンパク質および化学的に合成されたタンパク質が含まれる。特に明示されていなければ、「コントートロスタチン」という語は、天然および合成型のタンパク質の両者を含む。
【0026】
「ヌクレオチド配列」という語は、DNAおよびRNA配列の両者を含む。例えば、コントートロスタチンタンパク質のヌクレオチド配列(「コントートロスタチンヌクレオチド配列」)は、天然の及び前駆体のタンパク質をコードする遺伝子(「コントートロスタチン遺伝子」)、その相補的DNA、並びに前記のものに対応するRNAを含み;また、コントートロスタチンタンパク質をコードするメッセンジャーRNA、その相補的RNA、及び前記のものに対応するDNAも含まれる。さらに、本出願で使用するヌクレオチド配列には、(1)コントートロスタチンタンパク質をコードするDNA配列、(2)上記配列と相補的なヌクレオチド配列(RNA又はDNAであり得る)、(3)DNA配列に対応するRNA配列であって、開示されたDNA配列中のチミジン(「T」)がウラシル(「U」)に置換された配列、(4)前記配列中のヌクレオチドが、ヌクレオチド類縁体のような本分野で公知の他のヌクレオチドに置換されたヌクレオチド配列、例えば、シトシンが5−メチルシトシンに置換されたヌクレオチド配列、及び(5)例えば、既定の間隙及びギャップペナルティーと既定のスコアリングマトリックスを用いたFASTA又はBLASTによって決定した場合に、少なくとも90%同一である、又はより好ましくは少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列が含まれる。
【0027】
ヌクレオチドコドンは縮重しているので、コントートロスタチンタンパク質、それらのタンパク質変種、機能的な均等物、もしくは誘導体をコードするか、又はそれらに翻訳され得るヌクレオチド配列を含む均等なヌクレオチド配列も本発明の範囲に属する。これらのヌクレオチド配列は、本発明を実施する際にも使用することができる。
【0028】
上記に加えて、コントートロスタチンヌクレオチド配列には、(1)ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、それぞれのヌクレオチド配列のコード配列にハイブリダイズできるヌクレオチド配列、及び(2)本明細書に開示されているもの(それぞれのコントートロスタチンタンパク質と実質的に同一の生物学的特性/活性、例えば、インテグリンアンタゴニスト、亜鉛結合、プロテイナーゼ、抗血管新生因子、並びにさらなる実施態様および実施例で本明細書に開示されているような活性をさらに有するタンパク質をコードするか、又はタンパク質に翻訳され得るもの)の断片又は変異したヌクレオチド配列も含まれる。
【0029】
タンパク質と関連して使用される「コントートロスタチンタンパク質」という語には、以下の実施例の部で記載されている各タンパク質、本発明の方法によって得ることができる前駆体タンパク質、最も好ましくは以下に記された実施例の部の単離法によって得ることができるディスインテグリンの特性を示すタンパク質が含まれる。当業者であれば理解できるように、前記コントートロスタチンタンパク質は、対立形質変異を受けてもよい。従って、コントートロスタチンタンパク質には、(1)これらのタンパク質のタンパク質変種(例えば、これらのタンパク質変種は、例えば、前記プロタンパク質の領域、メタロプロテイナーゼ領域、ディスインテグリン領域、及び/又は天然のコントートロスタチン領域の配列と、少なくとも90%同一であり、又はより好ましくは少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含有し得る)、(2)それぞれ、これらのタンパク質の機能的な均等物及びそれらの変種、並びに(3)それぞれ、コントートロスタチンタンパク質及びそれらの変種(断片を含む)の誘導体が含まれる。コントートロスタチンタンパク質のアミノ酸配列のパーセント同一性は、既定の間隙及びギャップペナルティーと既定のスコアリングマトリックスを用いたFASTA又はBLAST(国立生命工学情報センターのウェブサイトhttp://www.nlm.nih.gov/で使用できる)によって決定される。
【0030】
前記変種は、例えば、コントートロスタチンタンパク質のアミノ酸配列の置換、挿入、又は欠失から得ることができる。タンパク質及びそれらの変種の誘導体には、コントートロスタチンに対する抗体と特異的に結合するこれらのタンパク質及び免疫反応性ペプチドの断片が含まれる。
【0031】
インテグリン受容体に対する結合能などの実質的に同一の生物活性を有すれば、2つのアミノ酸配列は機能的に均等である。前記タンパク質は、他のタンパク質に融合させてもよく、例えばシグナル配列融合体は、組換えコントートロスタチンタンパク質の分泌をより迅速に誘導するために利用し得る。
【0032】
本明細書に開示されたタンパク質の置換変種は、開示された配列中の少なくとも1つの残基が除去され、その場所に異なる残基が挿入されたものである。好ましくは、アミノ酸の変化は保存的である。このように、コントートロスタチンタンパク質の一次アミノ酸配列の修飾には、保存的な変異も含む。本明細書で使用する「保存的な変異」という語は、生物学的に類似する別の残基によってアミノ酸残基が置換されることを示す。保存的な変異の例には、イソロイシン、バリン、ロイシン、又はメチオニンのようなある疎水性残基を別の疎水性残基に置換すること、又は、アルギニンをリシンに、グルタミン酸をアスパラギン酸に、又はグルタミンをアスパラギンに置換することなど、ある極性残基を別の極性残基に置換することが含まれる。また、「保存的な変異」という語は、置換されていない親アミノ酸に代えて置換されたアミノ酸を使用すること(但し、ポリペプチドはその生物活性を保持している)、例えば、置換されたポリペプチドに対して作成された、置換されていないポリペプチドとも免疫反応をする抗体を使用することも含む。
【0033】
さらに、全てのタンパク質と同様に、正確な化学構造は、多数の要素に依存する。分子中にはイオン化可能なアミノ基とカルボキシル基が存在するので、あるタンパク質は、酸性若しくは塩基性の塩、又は中性形態で得ることができる。適切な環境状態に置いたときに、その活性を保持しているような調製物は、全てこの定義の中に含まれる。さらに、一次アミノ酸配列は、糖部分を用いた誘導体化(グリコシル化)によって、又は脂質、リン酸、アセチル基などのような他の補充的な分子によって、より一般的には、糖の抱合(conjugation)によって拡張し得る。一次アミノ酸構造は、凝集して複合体(二量体の場合が最も多い)を形成し得る。このような拡張のある種の側面は、産生宿主の翻訳後修飾系を介して達成される。他のこのような修飾は、インビトロで導入され得る。何れにしても、このような修飾は、タンパク質の活性が破壊されない限り、定義に含まれる。様々なアッセイにおけるタンパク質の活性を増強し、又は減弱することによって、このような修飾が定量的に又は定性的に活性に影響を与え得ると予想される。
【0034】
鎖中の各アミノ酸残基は、酸化、還元、又は他の誘導体化によって修飾してもよく、活性を保持している断片を得るためにタンパク質を切断してもよい。活性を破壊しないこのような改変によって、前記定義から前記タンパク質配列が除外されるものではない。以下に、例示のためにさらに詳細に幾つかの修飾について論述する。
【0035】
このように、グリコシル化変種は、コントートロスタチンタンパク質の範囲に含まれる。それらには、グリコシル化を完全に欠く変種(非グリコシル化)と天然の型と比べて、グリコシル化された部位が少なくとも1つ少ない変種(脱グリコシル化)、及びグリコシル化が変化した変種を含む。
【0036】
実施例に示されているように、天然のCNは、比較的分かりやすい方法で、Agkistrodon contortrix contortrixの毒から単離され得る。あるいは、CNは、組換えDNA技術等の現在使用されている様々な生化学的な方法を利用することによって調製してもよい。さらに、本明細書において報告した配列情報は、CN及びその前駆体と実質的な相同性を有する変種、断片、保存されたドメイン、又はプロタンパク質を同定するためのプローブを作るために使用することができる。一旦同定した後には、遺伝子を単離し、さらに操作し、発現ベクターの中にクローニングすることができる。
【0037】
本明細書の開示を参照することによって当業者が理解できる技術に従って作られたコントートロスタチンタンパク質をコードするDNA分子を含有するベクターも提供される。本発明では、コントートロスタチンヌクレオチド配列は、組換え発現ベクター中に挿入され得る。「組換え発現ベクター」という語は、コントートロスタチンの遺伝配列を挿入又は取り込むことによって操作した本分野で公知のプラスミド、ウイルス、又は他の媒体(vehicle)を指す。このような発現ベクターは、宿主中での挿入された遺伝配列の効率的な転写を促進するプロモーター配列を含有する。発現ベクターは、典型的には、複製起点、プロモーター、及び形質転換された細胞の表現型による選択を可能とする特定の遺伝子を含有する。これらのベクターは、コンピテント宿主を形質転換して、ヘビ毒タンパク質を産生できる形質転換体を製造するために使用され得る。
【0038】
さらに、前記ベクターによって安定に形質転換又はトランスフェクトされた原核又は真核宿主細胞、コントートロスタチンタンパク質又はその生物学的変種を作製する方法を提供する。まず、該方法は、コントートロスタチンタンパク質をコードするDNAで形質転換した原核又は真核宿主細胞を培養する工程と、続いて、前記コントートロスタチンタンパク質を回収する工程とを含む。前記宿主細胞は、哺乳類細胞、植物細胞、昆虫細胞、酵母及び他の真菌又は細菌であり得る。
【0039】
前記タンパク質をコードするDNA配列の採取源には、適切な細胞又は細胞株から得られる単離されたDNA、ヘビ毒ゲノムライブラリーからクローン化されたDNA、又は相補的DNAライブラリーからクローン化されたDNAが含まれ、ここで全ての相補的DNAをDNAに逆転写して、クローン化する。目的のタンパク質をコードするDNA配列が一旦同定されると、塩基の配列は、公知の手段[例えば、Maxam and Gilbert,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 74:560(1977)]によって決定され得る。さらに、発現を得るために、ハイブリッドDNA技術を利用してもよい。前記DNA配列の制限地図を作成して、切断のための適切な部位を決定してもよい。このように、前記配列を切り出して、適切な制御シグナルを有するベクター中に導入してもよい。ディスインテグリン遺伝子の同定及び発現のための適切な技術についてのさらに詳細な考察は、例えば、Maraganoreらの米国特許第5,182,260号、及び第5,196,403号に記載されており、その開示全体は、本明細書において参照文献として援用される。
【0040】
さらに、続いて、1以上のアミノ酸の変化が導入された修飾タンパク質を得るために、天然のタンパク質をコードする配列を本分野で周知の方法で(例えば、単一又は複数の変異又は欠失により)処理してもよい。次に、本明細書に記載されている操作に従って、定型的な実験作業では、あるポリペプチドがCNに特徴的な活性プロフィールを示すかどうかを決定するであろう。従って、本発明は、本明細書に明記されている特徴的な活性プロフィールを示す天然のCNとその変異体の両者を想定している。さらに、CNは、適切な血栓溶解剤との融合タンパク質の形態で利用してもよい。この型の融合タンパク質は、Maraganoreらの上記米国特許第5,182,260号、及び第5,196,403号に、血小板凝集阻害剤/抗トロンビンポリペプチド融合タンパク質の形成について記載されている方法と類似の方法で調製し得る。
【0041】
コントートロスタチンは、他のディスインテグリン(図1Aに示されている)[Niewiarowski,S.,McLane,M.A.,Kloczewiak,M., and Stewart,G.J. Disintegrins and Other Naturally Occurring Antagonists of Platelet Fibrinogen Receptors, Seminars in Hematology. 31:289−300(1994)]との間に高い配列相同性が存在するにもかかわらず、約8アミノ酸の末端切断を有するユニークなアミノ末端配列を示す。他のディスインテグリンと比べて、コントートロスタチンのアミノ末端からは、2つのシステイン残基が失われている。モノマーのディスインテグリンが偶数のシステインを有することは十分に確立されており、それらの全ては、ジスルフィド結合の形成が関与している。コントートロスタチン前駆体中の喪失した2つのシステインは、ジスルフィド結合対の崩壊を生じせしめ得る。これによって、次々と2つの同じ鎖の間に2つの分子間ジスルフィド結合が形成されて、ホモ二量体構造のコントートロスタチンを形成させ得る。図5は、二量体ディスインテグリンの構造の仮定的モデルを、ジスルフィド結合の位置が公知のディスインテグリンであるキストリン[Adler,M.,Carter,P.,Lazarus,R.A., and Wagner,G. Cysteine pairing in the glycoprotein IIb/IIIa antagonist kistrin using NMR, chemical analysis, and structure calculations, Biochemistry 32:282−9(1993)]と比較して示している。図5Aには、2つのインテグリンの配列が比較されている。キストリンは、12の半シスチンが6つのジスルフィド結合を形成していることが容易に分かるであろう。比較すると、2つの対を成していないシステイン残基を有するコントートロスタチンは、図5Bに示されているホモ二量体の構造を形成することができる。本発明者らは、現段階では何れの配列が好ましいか確信を得ていないが、本発明者らは、天然及び還元されたコントートロスタチンの質量分析とSDS−PAGEに基づいて、示されている2つのうちの1つと同一である可能性が最も高いホモ二量体構造が形成されていると信じている。
【0042】
CNは、明らかにアプラジンとは全く異なっている。何故なら、後者は、間違いなくモノマーであると実証されている[Wencel−Drake et al.,(1993)、上記]からである。さらに、CNは、上記Maraganoreらの米国特許第5,182,260号、及び第5,196,403号でアプラジンに関して実証されているように、血小板放出反応を阻害しない。また、最後に、配列の類似性にもかかわらず、開始部位とその後に続く配列の何れについても配列間に有意な差が存在している。
【0043】
使用方法
インテグリンを発現している腫瘍細胞の接着、運動性、及び浸潤性を調節するために、本発明の方法及び組成物にはコントートロスタチンのようなホモ二量体のディスインテグリンが用いられる。薬学的に許容される組成物として調合される場合には、αvβ3又はαvβ5インテグリンとリガンドとの結合が関連する疾病過程を阻害又は崩壊させることによって患者を治療するために、該タンパク質を使用することができる。
【0044】
本発明は、αvβ3インテグリン発現細胞の運動性を減少させる方法であって、前記インテグリン発現細胞上に存在する少なくとも2つのαvβ3インテグリンを架橋することによって、前記細胞の運動性を阻害することを備えた方法を含む。ある態様では、前記インテグリン類は、ホモ二量体のディスインテグリン、好ましくはコントートロスタチンによって架橋される。該架橋は、FAKシグナル伝達を破壊し、FAK及びCASのチロシンリン酸化を活性化させる。さらに、前記架橋によって、細胞骨格又は局所的接着構造の変化を含む細胞の形態の変化が誘導される。最も好ましい態様では、前記αvβ3インテグリン発現細胞は腫瘍細胞である。
【0045】
本発明には、インテグリン発現細胞をコントートロスタチンに暴露することによって、インテグリン発現細胞のビトロネクチンへの接着を阻害する方法も含まれる。コントートロスタチンは、インテグリン(特にαvβ3又はαvβ5)に結合することによって接着を阻害する。
【0046】
CNは、ヒト、ウサギ、及びイヌのインビトロにおける血小板凝集の強力な阻害剤であることが明らかとなっている。しかしながら、アプラジンとは異なり、CNは血小板放出反応を阻害しない。血小板は、血小板が凝集したときにその内容物が放出される様々な複数の顆粒(α顆粒、及び密顆粒を含む)を含んでいる。CNが血小板による顆粒内容物(密顆粒からのATPを含む)の放出を阻害しないという発見は、凝集が阻害されても、血小板はそれらの内容物をなお放出し得ること(それ故、正常な生理活性の外見を幾つか維持していること)を意味している。対照的に、アプラジンで血小板の凝集を阻害すると(例えば、密顆粒からのセロトニンの放出を阻害することによって測定した場合)、血小板による放出も阻害する。このため、アプラジンを投与すると、正常な血小板の生理的プロセスが必然的にさらに擾乱される。
【0047】
CNが(GP)IIb/IIIaインテグリン受容体に特異的に結合することによって、血小板の凝集を阻害することを示す証拠が幾つか存在している。例えば、固定化されたフィブリノーゲンに対する精製(GP)IIb/IIIaの結合度を定量することができるフィブリノーゲン−(GP)IIb/IIIa ELISA[Dennis,M.S. et al., Proc.Natl.Acad.Sci.(USA) 87:2471(1990)]では、CNが(GP)IIb/IIIaの結合を効果的にブロックする。さらに、CNの部分アミノ酸配列は、(GP)IIb/IIIaに結合することが知られている他のディスインテグリンと、かなりの類似性を示している。最後に、CNは7E3の(GP)IIb/IIIaへの結合をブロックする。7E3は、(GP)IIb/IIIaと特異的に結合することによって、ヒト及びイヌの血小板凝集を阻害するマウスのモノクローナル抗体である[Coller,B.S. et al.,J.Clin.Invest. 72:325(1983)]。低濃度のCNの存在下では、7E3の血小板への結合は著しく阻害される。
【0048】
3つのヘビ毒ディスインテグリンである、キストリン[Yasuda et al.(1990)、上記]、エチスタチン[Holahan et al.(1991)、上記]、及びビチスタチン[Shebuski,R.J. et al.,(1990)、上記]は、組換え組織プラスミノーゲン活性因子と組み合わせて動脈の血栓溶解を増大し、かつ維持することによって、血栓溶解療法で使用するための抗血栓剤としての役割を有し得ることが実証されている。CNの低いIC50値に基づいて、抗血栓剤としてのそのインビボでの効力が調べられた。イヌの再閉塞頚動脈血栓症モデルを用いて、CNは、アニソイル化プラスミノーゲンストレプトキナーゼ活性化因子複合体(APSAC;anisoylated plasminogen streptokinase activator complex)と組み合わせると、頚動脈の開通を効果的に維持することが見出された。APSACのみでは、頚動脈の迅速な再閉塞を防止するには不十分であることが見出された。APSACと共にCNを投与した場合、開通を維持するためにヘパリンを必要としなかった。これは、冠状動脈の血栓症モデルで評価されている他のディスインテグリン(例えば、エチスタチン、ビチスタチン、及びキストリン)と比べて、有意な差である。
【0049】
本発明の組成物は、単独で、又は1以上の血栓溶解剤と組み合わせて、哺乳類の血栓症を治療するためにとりわけ有用である。特に、本発明の組成物は、動脈、静脈、及び毛細血管の血栓症及び血栓塞栓症を治療し、又は防止するのに有用である。このように、前記組成物は、発作、一過性の虚血性発作、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、肺塞栓症、動脈瘤、及び狭心症を治療するために有用である。とりわけ、前記組成物は、心筋梗塞を防止し、又は治療するために有用である。
【0050】
本発明の組成物は、メラノーマ、がん腫、及び肉腫患者の転移を阻害するためにも有用である。CNは、ヒトメラノーマM24met細胞上の少なくとも2つの部位(すなわち1.1(±0.7nM)の解離定数(Kd)と細胞当たり96,000(±39,000)部位を有する高親和性部位と、41(±13)nMのKdと細胞当たり480,000(±90,000)部位を有する、より低親和性の部位)に結合することが観察された。さらに、CNは、ヒトメラノーマM24met細胞がフィブロネクチン及びビトロネクチンに接着するのを阻害し、これらに比べて程度は低いが、コラーゲン及びラミニンに接着するのを阻害することが明らかとなった。従って、メラノーマ、がん腫、及び肉腫患者の転移を防止するための方法及び組成物も、本発明の範囲に含まれることが想定される。
【0051】
本発明に従えば、ディスインテグリンのユニークな特性は、がん腫、肉腫、及びメラノーマ患者の転移を防止するための方法及び組成物において利用される。ある態様では、乳癌患者の転移を防止するための位置(position)と方法が提供される。
【0052】
本発明者らは、マウス乳腺の脂肪パッド中にヒト乳癌細胞を移植することにより、転移性の乳癌モデルを開発した。本発明者らが使用するマウスは、その免疫系を欠損し、移植したヒトの癌細胞を拒絶できないように遺伝的操作を施されている。本発明者らは、癌細胞の移植から2週間後に、乳腺の脂肪パッド中に触診可能な腫瘍の塊が発育し、12週以内に未処置の動物の肺に腫瘍細胞が広がることを観察した。異なる数グループのマウスの腫瘍に、CN又はプラセボを毎日投与した。処置した後、本発明者らは、CN処置したマウスで腫瘍の塊のサイズがプラセボ処置したマウスのものと比べて有意に小さくなっていることを見出した。重要なことに、CN処置群では、プラセボ群と比べて身体の他の部位へ腫瘍が広がるの(転移)を>90%阻害することを示した。本発明者らの研究は、CNは、乳癌細胞が血管壁の必須成分であるタンパク質に接着するのをブロックすることを示している。CNは、絨毛尿膜と呼ばれるニワトリ胚の膜状呼吸器官上でインキュベートした後に乳癌細胞によって誘導される新しい血管の形成(新血管新生)も阻害したが、プラセボ処置では阻害しなかった。新血管新生は、増殖している腫瘍が増殖し続けるために極めて重要であるので、新しい血管の増殖を阻害する能力は、CNの重要な抗癌作用である。
【0053】
これらの研究に基づくと、ヘビ毒タンパク質コントートロスタチンのようなディスインテグリン類は、抗転移活性を有しているものと思われる。本発明者らの発見は、CNが転移における幾つかの重要な段階をブロックするために、単一の段階しか阻害しない他の物質より強力であることを示唆する。
【0054】
本発明のディスインテグリン含有組成物は、骨粗鬆症の治療にも有用である。破骨細胞は、脊椎動物の石化した組織を再吸収する直径400μmを超えない多核細胞である。骨の再吸収は、骨への接着、酸及びプロテアーゼの有極性分泌、並びに骨基質に沿った破骨細胞の活発な移動を含むプロセスの組合せによって進行するようであり、破骨細胞は骨の再吸収における必須のステップとして、RGD配列を介して骨に結合し、かつこのRGD結合性インテグリンが接着構造に存在する[Sato,M. et al.,J.Cell Biol.111:1713(1990)]。破骨細胞が骨に接着する分子的な機序はよく理解されていないが、他の細胞から類推することにより、二価の陽イオン依存性接着分子のインテグリンスーパーファミリーに属する一員が、この相互作用を媒介していると考えられている。エチスタチン[Sato,M. et al.,上記]と、おそらくはCNのようなディスインテグリンが、分離した破骨細胞による骨の再吸収を阻害する。作用機序は、おそらく接着構造を崩壊することによっている。従って、破骨細胞による骨の再吸収を阻害するために有効な量のCNを用いた骨粗鬆症の治療用組成物及び方法も、本発明の範囲に属すると想定される。
【0055】
最後に、CNは、創傷治癒の促進において有用である。創傷治癒に関与する事象には、インテグリンの発現又は機能的な活性の変化が含まれることが知られており、インテグリン受容体のモジュレーションが、創傷の回復および炎症において中心的な役割を果たしていることが示唆されている。フィブロネクチンも、創傷治癒プロセスにおいて多くの役割を果たすことが知られている。フィブロネクチンの機能は、効果的に創傷治癒するために重要であると考えられているが、その活性の少なくとも1つ(細菌の結合)が逆効果であり得るという報告があるため[Grinnell,F.,J.Cell.Biochem.26:107(1984);Clark,R.A.F.,Arch.Dermatol.124:201(1988)]、創床(wound bed)中にフィブロネクチンが存在すると、細菌の接着と感染を促進するかもしれない。フィブロネクチンは、ケロイドの形成に密接に関係しているようにも思われる。ケロイドは、かなりの割合の非白人患者を冒す創傷治癒の病的な結果である。ケロイドは、良性腫瘍であり、元の創傷の境界を超えて増殖し、フィブロネクチンおよびI型コラーゲンが豊富な結合組織である[Sible,J.C.& Oliver,N.,J.Cell.Biochem.Suppl.16F:170(1992)]。CNのようなディスインテグリンは、それらが細胞−細胞及び(フィブロネクチンとの相互作用を含む)細胞−細胞外マトリックス相互作用を阻害することによって、ケロイドの形成を含む創傷の回復に関わるプロセスに対して強い効果を有すると予想されるであろう。
【0056】
分娩及び婦人科手術後における主たる課題は、癒着の形成である。腹腔の創傷回復において観察されるこの広く見られる現象は、痛み(pain)、腸閉塞、及び不妊の主要な原因である。癒着の形成には、繊維素溶解性炎症反応と繊維素増殖性の炎症反応の不均衡が関わっているようであり、細胞−細胞又は細胞−細胞外マトリックス相互作用の調節も関わっているかもしれない。癒着の形成の初期段階でフィブリンが重要な役割を果たしているという強固な証拠が存在する[diZerega,G.S.,Prog.Clin.Biol.Res.381:1(1993)]。血小板を含む細胞要素が存在すると、さらにフィブリンの役割を悪化させる。癒着の形成における血小板とフィブリンの役割の点からみて、CNのようなディスインテグリンを治療剤として使用し得る可能性があることが、最も魅力的なことである。
【0057】
癒着形成のウサギのモデルにおける予備的研究では、ウサギの子宮角(uterine horn)の掻爬及び血管除去(devascularization)を使用して、非処置動物における創傷治癒の際に癒着の形成を誘導した[Rodgers,K. et al.,Int.J.Fertil.35:40(1990)]。10μL/時間(36μg/mL)の速度で、CNを継続的に送り込むためにアルゼット(alzet)ポンプを使用した。このモデル系では、対照に比べて、被処置動物において癒着の形成が減少することが観察された。したがって、このような治療を必要としている患者に、癒着の形成を防止するのに有効な量のCNを投与することによって、癒着の形成を防止するための組成物及び方法も、本発明の範囲に属するものと想定される。
【0058】
本発明の組成物には、所望の効果(すなわち、血栓形成を防止する、癌患者で転移を防止する、癒着の形成を防止するなど)を達成するのに有効な量のCNと、適切な担体又は賦形剤とを最小限含む。一般的に、これらの組成物には、約0.01mg/kg/日〜約50mg/kg/日、好ましくは約0.1mg/kg/日〜約5.0mg/kg/日、最も好ましくは約0.1mg/kg/日〜約0.5mg/kg/日を与えるのに十分な量のCNが存在する。このような組成物は、血栓形成の防止に特に有用である。
【0059】
あるいは、CNは、血栓溶解を達成するのに有効な量で存在する少なくとも1つの血栓溶解剤と組み合わせて投与される。適切な血栓溶解剤には、以下のもの:アニソイル化プラスミノーゲンストレプトキナーゼ活性化因子複合体(APSAC)、組織型プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)、Markland,Jrらの米国特許第4,610,879号に記載されているヘビ毒繊維素溶解剤フィブロラーゼが含まれるが、これらに限定されない。
【0060】
CNは、血流中に相当量のCNを送り込むのに適したこれまでに知られている様々な手段によって投与し得る。ここでは、適切な液体媒体又は賦形剤中のCNを静脈内に投与することが、好適な投与経路として想定されている。CNは、水に可溶性であり、それ故、適切な水溶液(例えば、リン酸緩衝化生理的食塩水)中で効果的に投与され得る。あるいは、CNは、(適切な結合剤若しくは賦形剤成分と調合した錠剤若しくはカプセルの形態で、又は水性若しくは油性の懸濁物、溶液、エマルジョン、シロップ、若しくはエリキシル剤の形態で)経口で、又は、非経口懸濁物として投与し得る。本分野で周知であるように、これらの調合物には何れも、局所麻酔、防腐剤、緩衝剤、潤滑剤、湿潤剤、着色剤、香料、賦形剤、及び希釈剤のようなアジュバントを適切に含有させてもよい。
【0061】
【実施例】
これらの更なる実施態様は、添付の例を参照することによって、よりよく理解されると思われるが、これらの例は、説明を目的とするものにすぎず、いかなる意味においても、本明細書に付された特許請求の範囲に明記された本発明の範囲を限定するように解釈してはならない。
【0062】
以下の例を実施する際には、Biotoxins社、St.Cloud,FLから、Agkistrodon contortrix contortrixから凍結乾燥した毒を入手した。全ての化学薬品は、入手可能な最高級のものであった。タンパク質濃度を決定するためには、ビシンコニン酸を用いたピアースのタンパク質アッセイキットを使用した[Smith,P.K.et al.,Anal.Biochem.150:76(1985)]。
【0063】
疎水性相互作用(HIC)HPLCのためには、LC−95UV/VIS検出器とともに、Perkin Elmer 410LCポンプを使用した。逆相HPLCのためには、SP8450UV/VIS検出器とともに、Spectra Physics LC8810ポンプを用いた。HIC−HPLCの吸光度は280nmでモニターし、RP−HPLCの吸光度は215nmでモニターした。疎水性相互作用HPLCには、ポリプロピルアスパルタミド(250×21mm)カラム(Poly LC,Columbia,MD)を使用した。逆相(RP)HPLC(Vydac,Hesperia,CA)には、C18(218TP54と218TP510)カラムを使用した。陽イオン交換クロマトグラフィーには、CM(カルボキシメチル)300カラム(SynChrom,Inc.,Lafayette,IN)を使用した。
【0064】
例1
CNの精製と性質決定
CNは、4工程のHPLC操作を用いて、Agkistrodon contortrix contortrix(ミナミアメリカマムシ)の毒から精製した。精製の第1段階では、1Mの硫酸アンモニウムpH6.8(緩衝液A)を含有する0.1Mのリン酸緩衝液の中に、未精製の毒(1g)を溶かして、ポリプロピルアスパルタミドHIC−HPLCカラムにかけた。溶出は、以下のように行った:100%の緩衝液Aで50分間イソクラティック、0.1Mリン酸pH6.8(緩衝液B)まで90分間の直線グラジエント、100%緩衝液Bで40分イソクラティック。5mL/分の流速を用いて、4℃で、Pharmacia Frac 100フラクションコレクター中に10mLの画分を採集した。血小板凝集阻害活性を含有する画分をプールし、YM3膜を備えたAmicon stir cellを用いた限外濾過によって濃縮した。タンパク質は、280nmで検出した。血小板凝集阻害活性は、フロースルー中に観察された。
【0065】
さらなる精製は、C18RP−HPLCによって達成された。この第2の工程のために、血小板凝集阻害活性を含有する画分をプールし、濃縮した。水中の0.1%TFA(溶媒A)95%と水中の0.1%TFA中の80%アセトニトリル(溶媒B)5%とでC18カラム(218TP510)を平衡化した。溶出は、以下のように行った:95%の溶媒Aと5%の溶媒Bで10分間イソクラティック、65分で40%の溶媒Bまで直線グラジエント、20分で100%の溶媒Bまで直線グラジエント、100%の溶媒Bで25分間イソクラティック。画分は、7mL/分の流速で、1分ごとに手で採集した。CNは、28%のアセトニトリル(66分)で溶出した。
【0066】
血小板凝集阻害活性を含有する画分をプールし、より緩やかなグラジエントを用いて、同じC18RP−HPLCカラムに再度かけた。溶出は、以下のように行った:80%の溶媒Aと20%の溶媒Bで20分間イソクラティック、90分以上、30%の溶媒Bになるよう直線グラジエント、25分で100%の溶媒Bまで直線グラジエント。CNは、22%のアセトニトリル(82分)の時点で、鋭いピークとして溶出した。CNの直前に溶出する小さなピークも血小板凝集阻害活性を含み、CNの分子量と同様の分子量を有していたが、低収率のために、このピークは、さらに性質決定しなかった。
【0067】
最後の精製工程は、前の工程で得たプールされた画分を用いて行った。陽イオン交換CM300HPLCカラムに、これらのプールされた画分をかけ、徐々に増加する塩化ナトリウムのグラジエントによって溶出を達成した。CNは、52.5分(160mM NaCl)で溶出する。この工程によって、CNのイソフォームが分離された。1gの未精製毒当たり1〜2mgの収量で、4工程によって精製されたCNが得られた。
【0068】
SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)のために、還元及び非還元条件下で、公表されたプロトコール[Schagger,H. & Von Jagow,G.,Anal.Biochem.166:368(1987)]に従って、Tris−Tricineの16.5%ゲルを用いた。BioRadミニゲルシステムを用いて、このゲルを展開し、銀[Morrisey,J.H.Anal.Biochem.117:307(1981)]又はクマシーブルーR250で染色した。
【0069】
CNのSDS−PAGE分析によって、CNは、非還元条件下で、約15,000ダルトンの分子量を有し、還元条件下で5,000〜7,000ダルトンの分子量を有することが明らかとなった。このことは、CNが2つのサブユニットから構成されることを強く示唆している。あり得にくいことであるが、別の可能性として、移動度の大きな差は、非還元条件と還元条件下で、SDSの取り込みが異なったことが考えられる。
【0070】
CNの分子量は、エレクトロスプレーイオン源を有する3重4極子装置を用いた質量分析によって確認した。天然状態のCNは、13,507ダルトンの質量であった。この分析も精製が高度であることを示した。還元され、ピリジルエチル化されたタンパク質の質量分析は、7,996ダルトンの質量を与えた。6つの還元されたジスルフィド結合中に取りこまれた12のピリジルエチル基の質量単位が1,248であることを考慮に入れると(公知のディスインテグリンとの相同性に基づけば、6つのジスルフィド結合が存在するはずである)、これは、この分子量のホモ二量体の各鎖について予想された値である。これらの発見は、二量体として存在する点で、これまでに報告された全てのディスインテグリンのうちCNを特異な位置に置くものである。活性化されていないヒト血小板へのCN結合に対してスキャッチャード分析を行うことによって、37nMの解離定数(K)を有する単一の結合部位と100,000に等しい結合部位の数(B)が明らかとなった。ジスルフィド結合を還元すると、IC50の10倍の濃度でも、血小板凝集阻害活性は完全に喪失するので、活性を維持するためには構造的なパラメーターが重要であることが示唆された。
【0071】
例2
ポリメラーゼ連鎖反応を用いたコントートロスタチンのcDNAクローニング
エドマン分解法を用いたコントートロスタチンの部分アミノ酸配列分析によって、コントートロスタチンは、サブユニットとRGD配列が、システイン残基を並列した他のディスインテグリンと相同である(図1A)ことが示唆された[Niewiarowski,S.,McLane,M.A.,Kloczewiak,M., and Stewart,G.J. Disintegrins and Other Naturally Occurring Antagonists of Platelet Fibrinogen Receptors, Seminars in Hematology 31:289−300(1994)]。PCRを用いたコントートロスタチンcDNAのクローニング戦略は、ディスインテグリンファミリー間の構造的な相同性に基づいている。PCRプライマーのデザインは、図1に図式的に示されている。図1A中の下線を付した配列は、ディスインテグリンファミリーの間で高度に保存されている。PCRプライマーは、この領域に基づいて合成した。プライマーPCR−1とPCR−2を合成するために、Trimeresurus gramineusから得られるトリグラミンのcDNA中に存在する該領域をコードするヌクレオチド配列を使用した(図1B)。PCR−1とPCR−2は、ディスインテグリン間のコンセンサス配列PCCDAATCKLのコーディング配列に相当する相補的なプライマーである。それらのヌクレオチド配列は、
PCR−1:5’−GTTTACAGGTTGCAGCATCGC−3’
(配列番号3)
PCR−2:5’−GCGATGCTGCAACCTGTAAAC−3’
(配列番号4)
である。
【0072】
PCRのために、ベクターのEcoRI部位に隣接するλgt10フォワード及びリバースプライマーを使用した。該プライマーのヌクレオチドを以下に記す。
【0073】
λgt10フォワードプライマー:5’−AGCAAGTTCAGCCTGGTTAAG−3’(配列番号5)
λgt10リバースプライマー:5’−CTTATGAGTATTTCTTCCAGGGTA−3’(配列番号6)
オリゴヌクレオチドプライマーは、南カリフォルニア大学総合癌センターの微量化学中殻施設によって合成された。プライマーは、脱保護された凍結乾燥形態で調製され、使用前に、水で再懸濁し、適当な濃度まで水で希釈した。
【0074】
例3
コントートロスタチンcDNAのPCR増幅
本発明者らは、λgt10ベクターのEcoRI部位に構築したAgkistrodon contortrix contortrixの毒腺のcDNAライブラリーを使用した。該ライブラリーの概算の力価は、1010プラーク形成単位(pfu)/mlであり、複雑性は50,000であった。このcDNAライブラリーファージ溶液500μLを、エッペンドルフチューブ中の20%ポリエチレングリコール(PEG)/1M NaCl溶液500μLと混合した。エッペンドルフチューブを2回逆さにし、室温で30分間インキュベートした。続いて、14,000rpmで10分間、この溶液を遠心した。上清を捨て、100μLの滅菌水の中に沈降物を再懸濁した。50℃で1時間、10μLのプロテイナーゼK(10mg/mL)とともに、この懸濁物をインキュベートした。フェノール/クロロホルムを用いて、ファージ粒子懸濁物を2回抽出し、1/10容量の3M酢酸ナトリウムと2倍量の無水エタノールでDNAを沈殿した後、80%エタノールで洗浄した。PCRの準備のため、10μLの滅菌水の中にDNAを再懸濁した。
【0075】
PCR反応は、以下のようにセットアップした。1μLの25mM dNTP(Pharmacia)、各1μL(100ng/μL)のフォワード及びリバースPCRプライマー、並びに5μLの10×PCR緩衝液と5μLのDNA溶液を混合した。水で反応液の最終容量を50μLにした。混合した後、液体の上にミネラルオイルを一滴加えた。エッペンドルフチューブを98℃まで5分間、予め加熱した後、室温まで冷却する前に、70℃と60℃で、それぞれ1分間インキュベートした。2.5ユニットのTaq DNAポリメラーゼ(Pharmacia)を各混合物に加えた。サーマルサイクラーは、以下のようにプログラムした:96℃15秒間、55℃30秒間、72℃1分間。PCR増幅は、30サイクル行った。サンプルが30℃まで冷却する前に、最後のサイクルに続いて、7分間の最後の72℃での伸長工程を行った。アガロースゲル電気泳動によって分析する前に、クロロホルムでPCR産物を抽出した。直接DNA配列を決定するための製造者によるマニュアルに従って、Genecleanキット(Bio 101社)を用いて、電気泳動によって分離したバンドをアガロースゲルから回収した。
【0076】
接着部位の上流領域を増幅するために、λgt10フォワードプライマーとPCR−1プライマーを使用した(図1B)。同様に、cDNAの下流部分を増幅するために、PCR−2プライマーとλgt10リバースプライマーを対にした(図1B)。第1のプライマーの対により、約1300bpの主要なバンド(CN−Nと表記)が得られ(図2、レーン1)、後者のプライマー対を用いたPCRからは、約700bpの主要なバンド(CN−Cと表記)が得られた(図2、レーン2)。重複伸長の前に、CN−NとCN−Cは、ヌクレオチド配列決定分析にかけた。予想どおり、CN−Nは、そのN末端のシグナルペプチドをコードするトリグラミンのcDNAと高い類似性を示した。CN−Cヌクレオチドの推定アミノ酸配列は、RGD部位をコードするディスインテグリンのC末端の配列と非常に類似していた。
【0077】
PCR−1とPCR−2は相補的なので、CN−NとCN−Cは、この部位で重複し、それ故、完全長のcDNAに集合することができる。この目標を達成するために、本発明者らは、図1Cに示した重複伸長法を使用した。簡潔に述べれば、等モル量の二本鎖のPCR産物CN−NとCN−Cを、λgt10フォワード及びリバースプライマーと混合した。両二本鎖の変性後、続く再アニ−リングによって、2種類の分子が得られる。1つは、接着部位に、陥凹(recessive)末端を3’末端としてアニ−リングしたCN−NとCN−Cである。この分子は、PCRを用いて、自動的に、完全長の二本鎖に伸長させることができる。他方の分子は、同様にアニ−リングしているが、陥凹末端が5’末端である。これらの分子は、自己伸長しないが、λgt10プライマーによって各末端からプライミングすることによって、陥凹部を埋めることができる。図2のレーン3は、アガロースゲル電気泳動によって分離された重複伸長産物を示している。主要なバンドのサイズは、CN−NとCN−Cの合計に等しい2,000bpであると見積もられ、このため、「完全長」と表記される。完全長のバンドをゲルから回収し、EcoRIで処理した。続いて、プラスミドベクターpcDNA3.1(+)の中に、このDNA片をサブクローニングした。
【0078】
例4
プラスミドベクター中へのPCR産物のサブクローニング
EcoRI(Pharmacia)でプラスミドpcDNA3.1(+)を消化した後、T4ホスファターゼ(Boehringer−Mannheim)を用いて脱リン酸化した。PCR重複伸長産物も、EcoRIで消化した。16℃で1晩のT4リガーゼ(Pharmacia)を用いた連結反応によって、直鎖化したベクター中にPCR産物を挿入した。全ての反応は、標準的なプロトコールに従ってセットアップし、実施した。アンピシリンを含有するプレート上に形質転換したE.Coli(DH5α)を播種することによって、上手く連結したものを選択した。インサートを含有するプラスミドをE.Coli中で増幅した。精製したプラスミドDNAは、Qiagene DNA Miniprepカラムを用いて得た。
【0079】
例5
cDNAの配列決定
自動DNA配列決定は、微量化学中殻施設によって行われた。PCRプライマーは、PCR産物の直接配列決定用の配列決定プライマーとして使用した。プラスミドpcDNA3.1(+)中のインサートを配列分析するために、複クローニング部位(MCS;multiple cloning site)に隣接するT7プロモータープライマーとBGHリバースプライマーを用いてアッセイを開始した。典型的な反応は、400〜600bpの読み取り可能な配列を与えた。プラスミドDNAの場合には、配列決定反応は、二本鎖DNAに対して行った。新しい配列決定プライマーを合成して別の配列を取得し、DNAsisコンピュータープログラムを用いて、これらを重複する連続配列に集合させた。
【0080】
図3は、EcoRI部位の間に挿入された完全長のヌクレオチド配列を示している。それは、2,029ヌクレオチドから構成され、重複伸長の完全長バンドのサイズである(図2、レーン3)。86ヌクレオチドの5’末端非翻訳領域(5’−NTR)に続いて、ヌクレオチド番号87と1535の間には、オープンリーディングフレームが存在する。ヌクレオチド1536〜1538は終止コドンである。3’―NRTは、3’末端の非コード領域にAATAAA部位を有し、ポリ(A)テールで終結しており、重複伸長を用いて本発明者らが取得したcDNAが確かに完全なcDNAであったことを示唆している(図3)。前記オープンリーディングフレームは、483アミノ酸をコードする。cDNAから推定されるアミノ酸配列の構造は、3つのドメインに分けることができる。メチオニンから始まる最初の190アミノ酸は、多くのクローニングされたヘビ毒タンパク質のプロタンパク質と非常に類似している(図4に比較が示されている)。アミノ酸191〜418は、亜鉛結合モチーフHEMGHNLGISH(アミノ酸334〜344)を含むメタロプロテイナーゼドメインである。残りの65アミノ酸は、エドマン法によって決定されたコントートロスタチンの公知の部分アミノ酸配列と同一であるコントートロスタチン単量体に属する。この配列は、その配列が決定されている多くのディスインテグリンの配列と極めて似ている(図4及び1A)。計算された前記ディスインテグリンの分子量は6.77kDaであり、CNモノマーの分子量と等しい。RGD(アミノ酸461〜463)配列は、太字で記されている。3ドメイン構造は、Kiniら[Structural Domains in Venom Proteins:Evidence that Metalloproteinases and Nonenzymatic Platelet Aggregation Inhibitors(Disintegrins) from Snake Venoms are Derived by Proteolysis from a Common Precursor,Toxicon 30:265−296,(1992)]によって提案されたヘビ毒メタロプロテイナーゼ及びディスインテグリンの前駆体モデルと一致している。ディスインテグリンは、翻訳後タンパク質分解を受ける複ドメイン前駆体として、ヘビの毒腺細胞で合成され、折り畳まれて成熟したディスインテグリンを生じるという証拠が存在する。
【0081】
例6
CNは乳癌の接着及び浸潤に影響を与える
高い転移性を有するヒト乳癌細胞MDA−MB−435細胞株のECMタンパク質への結合に対してCNが与える影響について調べた。96ウェルのマイクロタイタープレートのウェルにヒトフィブロネクチンとビトロネクチンを固定化した。図3と4から明らかなように、CNは、MDA−MB−435の両ECMタンパク質への接着を用量依存的に阻害した。フィブロネクチンへの接着のIC50は18nMであり(図6)、ビトロネクチンのIC50は1.5nMであった(図7)。MDA−MB−435細胞によるヒトI型コラーゲンへの弱い接着、又はMDA細胞が比較的強い親和性を有するラットI型コラーゲンへの接着に対しては、CNは最小限の効果しか示さなかった。
【0082】
上記実験の変法では、CNを固定化した。CNは、MDA−MB−435細胞の結合を用量依存的に補助し得ることが見出された。固定化されたCNへのMDA−MB−435細胞の結合は、RGDペプチドGRGDSP(IC50=0.4mM)、及びEDTA(IC50=0.8mM)によってブロックされる。インテグリン受容体のサブユニットは非共有結合的に会合するために金属イオンを必要とするので、本発明者らの発見は、RGDによって媒介される機序を介してMDA−MR−435細胞の表面上に存在するインテグリン受容体にCNが結合することを示している。固定化されたCNがMDA−MB−435細胞の接着を補助し得るという発見は、この結合が腫瘍細胞上の細胞表面受容体を必要とすることを示唆している。図8及び9から明らかなように、ヒト乳癌細胞の固定化CNへの結合を阻害するために、様々な濃度のGRGDSP(図8)又はEDTA(図9)を使用した。CNは0.1μg/ウェルの濃度であった。各データの点に位置する縦線は、y軸誤差線を示している。全ての実験で各データ点について3つの測定を行い、これを3回繰り返した。MDA−MB−435細胞の固定化CNへの接着はGRGDSP及びEDTAによって完全にブロックされるので(図8及び9)、CNは、専らRGD依存性の機序を介してMDA−MB−435細胞のインテグリン受容体に結合する。
【0083】
例7
コントートロスタチンは、単量体のディスインテグリンよりも腫瘍細胞の運動性を強力に阻害する阻害剤である
インテグリンの封鎖が腫瘍細胞の運動性を阻害し得るという仮説を検証するために、ボイデンチャンバーアッセイ(Boyden chamber assay)を用いて、細胞の運動に対するディスインテグリンの効果を決定した。腫瘍細胞の運動性は、改変ボイデンチャンバーを用いて定量した(Repesh, L.A. A New in vitro Assay for Quantitating Tumor Cell Invasion, Invasion and Metastasis. 9: 192−208, 1989)。12μmの孔径を有するトランスウェルチャンバー(Corning Costar, Cambridge, MA)を、無血清培地で1:100に希釈したMatrigelでコートした。処理又は未処理のMDA−MB−435細胞を上方チャンバーに加え、下方チャンバーはHT1080馴化培地で満たした。37℃で10時間細胞をインキュベートし、移動していない細胞を取り除いた後、コートされた膜の底部の側に移動している細胞の数を固定し、染色し、デジタル画像分析(NIH Image)を用いて定量した。コントートロスタチンは、これらの条件下において、0.1μMの濃度で、細胞の移動を70%阻害するのが観察された(図10a及びb)。これに比べて、単量体のdリスインテグリンであるフラボリディンは、2倍の濃度(0.2μM)にしても、僅か45%しか移動を阻害しなかった。このように、コントートロスタチンは、単量体には存在しない別の阻害活性を保有しているようである。別の単量体ディスインテグリンであるエチスタチンを使用しても同様の結果が得られた(データは示さず)。コントートロスタチンが運動性を阻害する能力はMDA−MB−435細胞に限定されない。本発明者らは、T24膀胱癌、KSY−1カポジ肉腫、及び様々な神経膠腫細胞株を含む種々の腫瘍細胞で阻害的効果を観察した(未公開の観察)。
【0084】
運動性に対するコントートロスタチンの阻害活性は、基層からの剥離によるものではない。4℃で一晩インキュベートして、Matrigel(1:100に希釈)又はビトロネクチン(10μg/ml)を96ウェル培養プレートのウェル中に固定化することによって、固相基質への細胞の接着を測定した。PBSで洗浄して未結合のタンパク質を取り除き、1%BSA/PBSとともに、室温で1時間インキュベートすることによって残存する表面をブロックした。細胞を採集し、無血清培地で四回洗浄した。密度を5×10細胞/mlに調整した後、様々な濃度のコントートロスタチンで細胞を処理し、コートしたウェルに加える前に、室温で20分インキュベートした。細胞を30分間接着させた後、結合していない細胞をこの時点で除去した。CellTiter 96 Nonradioactive Cell Proliferation Kit (Promega, Madison, WI)を用いて、残存する細胞の数を比色定量し、Prism software (Graph Pad, La Jolla, CA)を用いてデータ処理を行った。図11は、コントートロスタチンはビトロネクチンへの細胞の接着を効果的に阻害できるが、T24細胞のMatrigelへの接着に対しては、該ディスインテグリンは効果がないことを示している。これは、検査した全ての細胞株で一貫して観察される。
【0085】
例8
CNは、ヌードマウス実験モデルで、MDA−MB−435乳癌の増殖と転移を阻害する
ヌードマウスの自発的な(同所)転移モデルは、乳腺の脂肪パッド(mfp;mammary fat pad)にMDA−MB−435細胞(0.1mL中5×10)を移植することによって確立した。移植から10日目に、触診可能な腫瘍が現れた。移植から14日目に開始して、各群の腫瘍塊中に毎日CNの投与を行う。移植から8週間後までに、腫瘍を除去した。動物は、CNを投与せずに、さらに2週間生存させた。その後、動物を屠殺し、肺の転移を注意深く調べた。
【0086】
図12から明らかなように、本発明者らの発見は、CNの局所投与が、腫瘍の増殖速度をかなり阻害したことを示している。対照(黒い棒)の腫瘍塊の体積(平均±S.D.)、低用量(0.5μg/日、灰色の棒)のCN処置群、及び高用量(5μg/日、灰色の棒)のCN処置群が示されている。左から右への7つの群の棒は、投与前(PI、移植から14日目)と投与の第1〜第6週のデータを表している。差の有意性を検定するために、スチューデントのt検定を利用した。**は、それぞれ、P<0.05とp<0.01を示している。高用量(5μg/日)のCNで処理した腫瘍の平均重量は、対照群と比べて有意に低い(P<0.05)。表1は、肉眼による検査と表面の小結節の計数に基づく肺転移の発生を示している。対照群での転移の広がりは、90%を超える転移の阻害を示した高用量のCN群に比べて、ずっと広範である。これらのデータは、ヒト乳癌の治療でCNが治療的役割を果たし得る可能性を実証している。
【0087】
【表1】
Figure 2004500357
例9
CNは、MDA−MB−435腫瘍によって誘導されたCAM中の血管新生を阻害する
腫瘍の増殖に対する阻害的な効果が、少なくとも部分的には、おそらくはCNによる血管新生の阻害から生じるという仮説は、ニワトリ胚絨毛尿膜(CAM)上に腫瘍が誘導した血管新生に対するCNの効果を観察することによって予備的に確認された。MDA−MB−435腫瘍塊を、10日齢のニワトリ胚のCAMに接種した。様々な用量のCNを、接種から2日後に、CAMの中に静脈内投与した。腫瘍によって誘導された血管新生と血管新生に対するCNの阻害的な効果は、インキュベーションから3日後に、容易にCAMに観察することができる。図13に示されているように、血管は、対照胚中の腫瘍塊を中心として、集中的に分布している。ニワトリの胚は免疫不全であり、このため、移植したMDA−MB−435腫瘍の増殖を可能とする。胚は、37℃、60%の湿度でインキュベートされる。接種から2日後に、様々な用量のCNをCAMの中に静脈内投与した。腫瘍によって誘導された血管新生の第3日目の写真が示されている。上図(図13A)が対照胚である。血管は、腫瘍塊を中心として、集中的に分布している。中央(図13B)は、20μgのCNで処置したCAMである。下図(図13C)は、150μgのCNで処置したCAMである。20μgのCNを処置した胚の血管は、対照と比べて、より薄く、密度が低い。対照のCAMと比べて、腫瘍塊はより小さい。150μgのCNで処置したCMAでは、血管はさらに薄く、集中的な分布パターンは完全に消失している。おそらくは、血液供給の欠如故に、対照及び低用量のCNと比べて有意に小さな体積の壊死した腫瘍塊が存在する(図13)。
【0088】
例10
CNはインビトロでのMDA−MB−435細胞の増殖に対して影響を与えない
MDA−MR−435細胞(0.3×10/ml)を、1/100希釈したMatrigelでコートした6ウェルの細胞培養プレーとの各ウェルに加えた。次いで、様々な濃度のCNで細胞を処理した。CNなし(丸)、100nMのCNの存在下(三角)、及び500nMのCNの存在下(菱形)における、MDA−MR−435細胞のインビトロでの増殖曲線が記されている。Matrigel(1/100希釈)でコートした6ウェルの細胞培養プレートに、3mlのMDA−MB−435細胞懸濁液(0.3×10/ml)を播種した。24時間毎に細胞密度を測定した。図14から明らかなように、CNの存在下でも、細胞は、対照細胞と同様に増殖する。本結果は、MDA−MB−435細胞のインビトロでの培養中に、CNが直接的な細胞毒性を有していないことを示している。
【0089】
例11
CNはインビボでも効果的であり、且つ十分使用に耐え得る
上述のヌードマウスを用いた慢性実験から、CNは有毒でないと結論付けることができる。コントートロスタチンは血小板凝集阻害活性を有しているにもかかわらず、実験の間、自然的な出血は観察されない。ただ、CN処理した動物の投与部位には幾らかの出血が認められた。
【0090】
CNは新規抗転移剤である。本発明者らは、癌の転移と進行における幾つかの重要な段階(例えば、接着、浸潤、血管新生)をCNが阻害するという仮説を立てている。従って、CNは、単一の段階を遮断する他の薬剤よりも強力である。
【0091】
例12
コントートロスタチンは、その抗悪性腫瘍活性の機序としてインテグリンαvβ5に結合する
序論:インテグリン機能の最も強力な公知の阻害剤であるディスインテグリンは、ヘビのViperidaeとCrotalidae科の毒から単離されたシステインが豊富なペプチド群である。ディスインテグリンは、血小板及びその他の細胞の表面上に存在するインテグリンに高い親和性で結合する。配列RGD(Arg−Gly−Asp)は、これらの全ペプチド中に保存されている。該配列は、血小板表面のフィブリノーゲン受容体αIIbβ3に結合し、フィブリノーゲン依存性の血小板凝集を阻害すると考えられている。(RGDの代わりに)KGDを含有するディスインテグリンであり、αIIbβ3に対する比較的特異的なアンタゴニストであるバルブリンを除いて、他のディスインテグリンはどちらかといえば非特異的であり、他のβ3のほかβ1インテグリンの機能を遮断することができる。
【0092】
コントートロスタチンは、Agkstrodon contortrix contortrix(ミナミアメリカマムシ)の毒から得られるディスインテグリンである。他のディスインテグリンとは異なり、コントートロスタチンは、質量分析によって示されたところによると、非還元状態のタンパク質で質量が13,505のホモ二量体であり、還元され、ピリジルエチル化されたタンパク質の場合、6,956の質量である。αIIbβ3への結合による血小板凝集阻害活性に加えて、コントートロスタチンは新規抗血管新生剤でもある。本発明者らの最近の研究は、血管内皮細胞上に存在するαvβ3が、コントートロスタチンが結合する重要なインテグリンであることを示している。本発明者らは、コントートロスタチンが、癌の転移及び進行における細胞接着、浸潤、及び血管新生を含む幾つかの重要な段階を遮断することを観察した。以前の研究において、本発明者らは、コントートロスタチンがVEGFによって誘導される血管新生を阻害することを見出し、これは、αvβ5を解したシグナル伝達経路を介して調節されることが報告される。本例において、本発明者らは、コントートロスタチンがαvβ5に直接結合し、該インテグリンの機能を抑えることを証明する。
【0093】
意義:αvβ5の機能は、多くの研究によって示されている。Friedlanderと共同研究者らは、αvβ3の封鎖はbFGFによって誘導される血管新生に影響を与えるにすぎないのに対して、αvβ5の封鎖は専らVEGFによって誘導される血管新生を阻害することを見出しており、これらの増殖因子が、異なるインテグリンに依存する別個のシグナル伝達経路を利用することを示唆している。興味深いことに、コントートロスタチンは、雛の胚絨毛尿膜モデルにおいて、bFGFとVEGFの両者によって誘導される血管新生を阻害する。αvβ5は細胞のビトロネクチンへの接着の開始に関与しているが、細胞の遊走を恒常的に媒介するαvβ3とは異なり、αvβ5は、インシュリン様増殖因子−1(IGF−1)、上皮増殖因子(EGF)、及び形質転換増殖因子−α(TGF−α)等の増殖因子によって活性化されたときだけ遊走を媒介する。
【0094】
増殖因子とαvβ5依存性の遊走及びシグナル伝達の協調も明らかとなっている。局所的接着キナーゼ(FAK、focal adhesion kinase)は宿主細胞の接着時にαvβ5とともに局在しているが、FAKのチロシンリン酸化は、おそらくは、増殖因子受容体による上流のチロシンキナーゼの活性化が起こる結果、プロテインキナーゼC(PKC)が活性化されるまで増加しない。特異的なPKC阻害剤は、VEGFによって誘導される血管新生を妨害する。シグナル伝達経路の下流側では、Yebraらは、αvβ5によって媒介させる細胞の遊走には、NFκBによって誘導されるde novo遺伝子転写とタンパク質合成を含む後発の活性化現象が必要とされることを報告した。同研究者のグループによる最近の研究によって、PKCの活性化と、その結果起こるαvβ5依存性細胞の遊走の増加には、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子/ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子受容体(uPA/uPAR)複合体とuPA酵素活性のアップレギュレーションを必要とすることが示された。αvβ5依存性の細胞内シグナルカスケードは明らかにαvβ3のシグナルカスケードとは別個のものであり、ビトロネクチンへの遊走を特異的に調節し、他のECMタンパク質への遊走は調節しない。
【0095】
これらの知見は、血管新生と転移に際して、細胞の運動性を媒介する上でαvβ5が重要な役割を果たしているという見解を裏付ける。従って、コントートロスタチンは、αvβ5のアンタゴニストとして、抗血管新生及び抗転移治療において著しく有用であり得る。本発明者らは、コントートロスタチンの抗転移活性及び抗血管新生活性の新しい作用機序を発見した。これは、腫瘍の転移及び血管新生において重要なインテグリンであるαvβ5に、ディスインテグリンが結合するという初めての観察である。
【0096】
細胞接着アッセイ:ATCCからヒト膀胱癌T24細胞を購入し、5%のウシ胎児血清を含有するRPMI1640培地中で増殖させた。抗αvβ3モノクローナル抗体(mAb)LM609を用いた負のFACS選択を6回繰り返して、T24−β3neg.細胞を単離した。次いで、以下のように、FACS分析を行った。1×10/mlの密度で、細胞を1% BSA/PBS中に再懸濁した。室温で30分間、抗αvβ3 mAbである7E3又は抗αvβ5 mAbであるP1F6(最終濃度5μg/ml)とともに、100μlを分取してインキュベートした。前記細胞を二度洗浄し、1% BSA/PBS中に再懸濁した。1:200の最終力価となるように、FITCを抱合したヤギ抗マウスIgGを懸濁液に加えた。室温で暗所にて30分間インキュベートした後、未結合のFITC抱合IgGを洗浄除去し、フローサイトメトリー(FACScan、Becton Dickinson、Bedford、MA)を用いて、細胞の蛍光強度を分析した。試験は二度繰り返して行い、実験は三度繰り返した。T24細胞はインテグリンαvβ3(多量)とαvβ5(少量)を何れも発現しているが、T24−β3neg.細胞はαvβ5のみを発現していることを結果は明瞭に示している(図15)。
【0097】
4℃で一晩、100μlのビトロネクチン(1μg/ウェル)で96ウェルプレートの各ウェルをコートした。リン酸緩衝化生理的食塩水(PBS)で三度洗浄して、過剰なタンパク質を洗浄除去した後、PBS中の1%ウシ血清アルブミン(BSA)でブロックした。コートしたウェルに加える前に、一定分量(100μl)の細胞(5×10細胞/ml)を抗体又はコントートロスタチンとともに、室温で20分間インキュベートした。処理した細胞を、37℃で30分間ウェルに接着させた。無血清培地を用いて、結合していない細胞を洗浄除去した。CellTiter 96TM Aqueous Proliferation Assay kit(Promega、Madison、WI)の何れかによって、細胞接着を定量した。各阻害剤の濃度は三度繰り返して調べ、少なくとも三回アッセイを行ったが、同一の結果が得られた。
【0098】
コントートロスタチンは、ヒト乳房細胞(MDA−MB−435)がビトロネクチンでコートされたプレートに接着するのを阻害することが以前に実証された。インテグリンαvβ3は、該細胞株中のディスインテグリンの結合部位として同定された。同様に、本研究では、コントートロスタチンは、ヒト膀胱癌T24細胞が固定化されたビトロネクチンに接着するのを用量依存的に阻害し、10μg/ml未満の濃度で100%阻害した(図15−A)。既に示したように、T24細胞はαvβ3とαvβ5の両者を発現していることが、FACS分析によって示された。抗αvβ3(7E3)の最大効果は、100μg/mlまでの濃度では、40%にすぎなかったが(図16−A)、抗αvβ5(P1F6)の接着に対する効果は、1:100の希釈で40%を下回った(図16−B)。しかしながら、7E3(最大の阻害に達する10μg/mlに保った)に、徐々に増加する濃度のP1F6を合わせると、最終的に、ほぼ100%の接着の阻害がもたらされる。この結果は、αvβ3とαvβ5が何れも、T24細胞のビトロネクチンへの接着を媒介することを示唆している。細胞のビトロネクチンへの付着を完全に消失させるためには、両インテグリンに対する抗体を組み合わせることが必要である。一方、コントートロスタチンは、これらの細胞株のビトロネクチンへの接着を効果的に阻害する。この知見は、コントートロスタチンがαvβ5のみならずαvβ3にも結合するという本発明者らの仮説を強く裏付ける。
【0099】
コントートロスタチンによる、二つのインテグリンの機能的な封鎖をさらに区別するために、αvβ3陰性のT24突然変異細胞(T24−β3neg.)を接着アッセイに使用した。7E3による阻害は無視できるものであったが、コントートロスタチンは該細胞株の接着を完全に阻害した(図16−C)。T24細胞に対する阻害効果は40%を下回ったのに対して(図16−B)、P1F6の阻害効果は80%にも及んだので(図16―D)、T24−β3neg.細胞のビトロネクチンへの接着は、主として、αvβ5によって媒介された。P1F6の阻害曲線は、7E3の添加によって変化しなかった(図15−D)。該アッセイの結果によって、αvβ3陰性細胞株であるT24−β3の接着は、αvβ5によって媒介されることが示された。モノクローナル抗体によるαvβ5の封鎖は、接着を完全に阻害する。コントートロスタチンは、これらの細胞がビトロネクチンに接着するのを阻止し得ることが示された。このように、コントートロスタチンは、インテグリンαvβ5に結合することは間違いない。
【0100】
細胞浸潤アッセイ:コントートロスタチンがαvβ5に結合することによって、癌細胞の浸潤が阻害されるかどうかを調べるために、高い浸潤性を有するヒト卵巣癌細胞(OVCAR−5)(αvβ5を発現しているが、αvβ3は発現していない)を用いて浸潤アッセイを行った。OVCAR−5細胞株中でのインテグリンの発現パターンは、モノクローナル抗体抗αvβ3(7E3)と抗αvβ5(P1F6)を用いたFACSによって分析した。図17に示されているように、実線のピークはバックグラウンドであり、バックグラウンドと重なっている点線のピークは結合した7E3を表し、右側の点線のピークはP1F6を表している。このことは、OVCAR−5細胞がインテグリンαvβ5を有しているが、αvβ3は有していないことを決定的に示している。
【0101】
浸潤を測定するためには、改変されたボイデンチャンバーを用いた。無血清培地中で1:50希釈したMatrigelで、12μmの孔サイズを有する12mmのボイデンチャンバーのフィルター(Corning Costar、Cambridge、MA)をコートした。コントートロスタチンで前処理した細胞(200μlの培地中2.5×10細胞)、様々なインテグリンに対する抗体、又はビークル(対照)を上方のウェルに加えた。HT1080馴化培地を底部ウェルに加えた。37℃で8時間、細胞をインキュベートし、8時間の時点で、膜の上側に存在する細胞を濡れた綿棒で除去した。フィルター膜に浸潤した細胞を固定し、Diff−QuikTM染色キット(Dade Diagnostics P.R. Inc., Aguada,Puerto Rico)で染色した。膜をホルダーから取り外し、スライドの上に載せた。顕微鏡を用いて、5つのランダムに選択した高倍率の視野に存在する細胞の数を測定することによって、遊走を定量した。各阻害剤の濃度は二回繰り返して調べ、結果を確認するために実験は三回繰り返した。
【0102】
コントートロスタチン、抗体のみ、及び抗体の組合せは何れも、前記細胞のMatrigelへの付着及び広がりを阻害しなかった。従って、これらのビトロネクチン受容体アンタゴニストの抗浸潤活性は、それらの抗接着効果とは独立していた。図18は、コントートロスタチン(1000nM)によって、OVCAR−5細胞がMatrigelに浸潤するのをほぼ完全に阻害したことを示している。100nMのP1F6でも同等の阻害が得られた。しかしながら、同じモル濃度では、7E3は浸潤に対する影響を示さなかった。この結果は、Matrigel内へのOVCAR−5細胞の浸潤を、インテグリンαvβ5が媒介することを強く示唆した。コントートロスタチンは、αvβ5を封鎖することによって、これらの細胞の浸潤を効果的に阻害する。
【0103】
コントートロスタチンのαvβ5への結合の検出:精製されたαvβ5と改変ELISAを用いた固相結合アッセイによって、コントートロスタチンがαvβ5に結合するという直接的な証拠を集めた。96ウェルプレートのウェル上に、4℃で一晩、可溶性αvβ5(100ng)を固定化した。過剰なタンパク質を洗浄除去し、未結合部位を1%のBSA/PBSでブロックした。前記コートしたプレートに、室温で1時間、様々な濃度のコントートロスタチンを結合させた。PBSで三回洗浄した後、1:1,000の抗コントートロスタチン抗血清によって、結合したコントートロスタチン分子を検出した。アルカリホスファターゼを抱合させたヤギ抗ウサギ抗体を二次抗体として用いた。基質であるp−ニトロフェニルリン酸二ナトリウムを加え、色素産生反応開始から15分後に405nmの光吸光度を測定することによって、結合した抗体を定量した。抗ディスインテグリン抗血清の固定化αvβ5への結合をもって、バックグラウンドと定義する。総結合からバックグラウンドを差し引くことによって、特異的な結合を得る。各濃度のリガンドは三回分析した。図19は、用量依存性且つ飽和性の様式で、コントートロスタチンがαvβ5に結合することを示し、コントートロスタチンがαvβ5に特異的に結合することを示唆している。
【0104】
要約すれば、本発明者らは、ディスインテグリンであるコントートロスタチンの新規結合部位としてαvβ5を同定した。αvβ5の機能的な封鎖は、ビトロネクチンへの癌の接着を阻害するのみならず、人工基底膜であるMatrigelへの癌細胞の浸潤も遮断する。αvβ5へのコントートロスタチンの結合は、抗接着及び抗浸潤活性の一部である可能性が最も高い。
【0105】
例13
コントートロスタチンは、腫瘍細胞において、αvβ3を介したCAS及びFAKのチロシンリン酸化を誘導する
要約:コントートロスタチンは、インテグリンを封鎖することによって、血小板凝集、及び細胞の細胞外マトリックスタンパク質への接着を阻害するホモ二量体のディスインテグリンである。チロシンリン酸化現象及び特異的なシグナル伝達分子の活性化を調べることによって、腫瘍細胞中でのインテグリンを介したシグナル伝達に対するコントートロスタチンの影響を調査した。本発明者らは、1nMの低濃度で、可溶性コントートロスタチンがインテグリン信号を活性化して、FAK及びCASのチロシンリン酸化を増加させること、及びこれらのシグナルはSrc活性を阻害すると失われることを見出した。特定のインテグリンを発現している被トランスフェクト293細胞を用いて、本発明者らは、コントートロスタチンによって生じたシグナルが、専らαvβ3によって媒介されることを確定した。αvβ3を欠如するが、αvβ5及びα5β1を発現する細胞は、このように、コントートロスタチン処理に対して応答しないことを示すことによって、この観察は拡張された。αvβ3を発現する細胞では、αvβ3に対する抗体でコントートロスタチンの結合を遮断することによって、コントートロスタチンのシグナルは完全に消失する。単量体のディスインテグリンであるエチスタチンとフラボリディンは、単独では、チロシンをリン酸化させることはできなかったが、コントートロスタチンと同時に加えると、コントートロスタチンによって開始されるシグナルを完全に阻害した。本発明者らは、コントートロスタチンはホモ二量体であるが故に、αvβ3インテグリンを架橋することが可能であり、Srcの活性化とFAK及びCASの過剰リン酸化を引き起こすと提唱する。この活性は、腫瘍細胞の運動性を阻害し得る新規メカニズムに相当する可能性がある。
【0106】
序論:インテグリンは、細胞外マトリックスへの物理的な固着と細胞内部へのシグナル情報の両者を与える。これらの機能は何れも、細胞の運動過程にとって決定的なものであり、何れかを破壊すると運動性を減少させることができる(Aznavoorian, S., Stracke, M.L., Parsons, J., McClanahan, J., and Liotta, L.A. Integrin alphavbeta3 mediates chemotactic and haptotactic motility in human melanoma cells through different signaling pathways, J Biol. Chem. 271: 3247−54, 1996; Wong, N.C., Mueller, B.M., Barbas, C. F., Ruminski, P., Quaranta, V., Lin, E.C., and Smith, J. W. Alphav integrins; mediate adhesion and migration of breast carcinoma cell lines, Clinical Exp. Metastasis. 16: 50−61, 1998; and Garton, A.J. and Tonks, N.K. Regulation of Fibroblast Motility by the Protein Tyrosine Phosphatase PTP−PEST, J Biol. Chem. 2 74: 3 811−3 818, 1999)。運動性を駆動するために必要な機構は複雑であって、高度に制御されているが、分子成分の作用は完全に理解されているわけではない。タンパク質チロシンキナーゼは、インテグリン機能を媒介する際に関与する主たる分子であり、それらの基質は、詳しく研究されているインテグリンシグナル伝達経路の成分である(Giancotti, F. G. and Ruoslahti, E. Integrin Signaling, Science. 285: 1028−1032, 1999)。細胞内に存在する何千というタンパク質のうち、チロシンリン酸化をもたらすのは僅かである。局所的接着複合体中のインテグリン細胞質ドメインに、チロシンリン酸化されたタンパク質が多数会合していることが明らかとなっている(Burridge, K., Fath, K., Kelly, T., Nuckolls, G., and Turner, C. Focal adhesions: transmembrane junctions between the extracellular matrix and the cytoskeleton, A. Rev. Cell Biol. 4: 487−525, 1988)。局所的接合キナーゼ(FAK)は、インテグリン及び非インテグリン制御性の広範な細胞の工程に関与していると推測される非受容体チロシンキナーゼである(Rodriguez−Fernandez, J. L. Why do so many stimuli induce tyrosine phosphorylation of FAK?. [Review] [81 refs], Bioessays. 21 1069−75,1999)。FAKは、細胞膜の細胞質側の近傍でインテグリンβサブユニットと会合し、FAKは、インテグリンとクラスターを形成すると、ここで特定のチロシン残基にトランス自己リン酸化を引き起こすことができる(Schaller, M. D., Hildebrand, J.D., Shannon, J.D., Fox, J.W., Vines, R.R., and Parsons, J.T. Autophosphorylation of the focal adhesion kinase,pp125FAK, directs SH2−dependent binding of pp60src,Mol. Cell. Biol. 14:1680−1688, 1994)。これによって、別のチロシンキナーゼであるSrcのSH2ドメインに対する結合部位が作出され、次いでSrcはFAKの他の部位のリン酸化を触媒することが可能となる(Cobb, B.S., Schaller, M.D., Leu, T.H., and Parsons, J.T. Stable association of pp60src and pp59fyn with the focal adhesion−associated protein tyrosine kinase, pp 125FAK, Molecular & Cellular Biology. 14: 147−55, 1994)。他のSrcの基質は、リン酸化され得る複数のチロシンを含有するアダプタータンパク質であるCASである(Vuori, K., Hirai, H., Aizawa, S., and Ruoslahti, E. Induction of p130cas Signaling Complex Formation upon Integrin−Mediated Cell Adhesion: a Role for Src Family Kinases, Mol. Cell. Biol. 16: 2606−2613, 1996)。その機能が完全に理解されているわけではないが、CASは運動性の制御に関与していることが示されている(Garton, A.J. et al.; Klemke, R.L., Leng, J., Molander, R., Brooks, P.C., Vuori, K., and Cheresh, D.A. CAS/Crk Coupling Serves as a ”Molecular Switch” for Induction of Cell Migration, J Cell Biol. 140: 961−972, 1998; and Cary, L.A., Han, D.C., Polte, T.R., Hanks, S.K., and Guan, J.−L. Identification of p130Cas as a Mediator of Focal Adhesion Kinase−promoted Cell Migration, J Cell Biol. 140: 211−221, 1998.)。インテグリンのシグナル伝達現象は、細胞がECMタンパク質に接着することによって開始され、細胞の接着は、形質膜中に存在するインテグリン受容体の二次元的な移転とアクチン細胞骨格の再編成とをもたらす(Burridge, K., Turner, C.E., and Romer, L. H. Tyrosine phosphorylation of paxillin and pp 125FAK accompanies cell adhesion to extracellular matrix: A role in cytoskeletal assembly, J Cell Biol. 119:893−903,1992)。これらの現象は、他の局所的接着タンパク質の動員を誘導するとともに、Grb2アダプタータンパク質を動員することによって、RAS/MAPK経路等の拡散性経路を開始させることもできる(Schlaepfer, D. D., Jones, K.C., and Hunter, T. Multiple Grb2−Mediated Integrin−Stimulated Signaling Pathways to ERK2/Mitogen−Activated Protein Kinase: Summation of Both c−Src− and Focal Adhesion Kinase−Initiated Tyrosine Phosphbrylation Events, Mol. Cell. Biol. 18: 2571−2585, 1998)。ECMによるインテグリンのクラスタリングは、抗インテグリンモノクローナル抗体で(Kornberg, L.J., Earp, H.S., Turner, C.E., Prockop, C., and Juliano, R.L. Signal transduction by integrins: Increased protein tyrosine phosphorylation caused by clustering of β1 integrins, Proc. Natl. Acad Sci. USA. 88:8392−8396, 1991)、又はビトロネクチンのような可溶性の多価インテグリンリガンドで(Bhattacharya, S., Fu, C., Bhattacharya, J., and Greenberg, S. Soluble Ligands of the αvβ3 Integrin Mediate Enhanced Tyrosine Phosphorylation of Multiple Proteins in Adherent Bovine Pulmonary Artery Endothelial Cells, J. Biol. Chem. 270: 16781−16787,1995)受容体を刺激することによって刺激された。これらの方法は何れも、FAKのリン酸化を含むチロシンリン酸化現象を誘導する。
【0107】
癌及び血管新生に関するインテグリンの生物現象に対する関心が増大するにつれて、これらの過程におけるインテグリンの拮抗効果を研究するためにディスインテグリンが使用されている(Trikha, M., et al.; Sheu, J.−R., Yen, M.−H., Kan, Y.C., Hung, W.−C., Chang, P.−T., and Luk, H.−N. Inhibition of angiogenesis in vitro and in vivo: comparison of the relative activities of triflavin, an Arg−Gly−Asp−containing peptide and anti−αvβ3 integrin monoclonal antibody, Biochim. Biophys. Acta. 1336: 445−454, 1997; Yeh, C.H., Peng, H.−C., and Huang, T.−F. Accutin, a New Disintegrin, Inhibits Angiogenesis In Vitro and In Vivo by Acting as Integrin αvβ3 Antagonist and Inducing Apoptosis, Blood 92: 3268−3276, 1998; Kang, I.C., Lee, Y.−D., and Kim, D.−S. A Novel Disintegrin Salmosin Inhibits Tumor Angiogenesis, Cancer Research. 59: 3754−3760, 1999; and Zhou, Q., Nakada, M., Arnold, C., Shieh, K.Y., and Markland, F.S. Contortrostatin, a Dimeric Disintegrin from Agkistrodon contortrix contortrix, Inhibits Angiogenesis, Angiogenesis. in press:, 2000)。インテグリンの一つであるαvβ3が、癌において果たす役割、特に血管新生において果たす役割が近年注目を集めている。このビトロネクチン受容体は、血管新生に必要であることが示されており、αvβ3を封鎖すると、新しく発生している血管中で内皮細胞のアポトーシスが誘導される(Brooks, P.C., Clark, R.A., and Cheresh, D.A. Requirement of Vascular Integrin αvβ3 for Angiogenesis, Science. 264: 569−571, 199; and Brooks, P. C., Montgomery, A.M.P., Rosenfeld, M., Reisfeld, R.A., Hu, T., Klier, G., and Cheresh, D.A. Integrin αvβ3 Antagonists Promote Tumor Regression by Inducing Apoptosis of Angiogenic Blood Vessels, Cell. 79: 1157−1164、1994)。αvβ3による血管新生と腫瘍の浸潤性の調節には、αvβ3が細胞外マトリックス分解性プロテアーゼMMP2に結合して、移動している細胞の最先端にその活性を局在化させ、マトリックス中への貫通を促進し得ることが寄与している(Brooks, P.C., Stromblad, S., Sanders, L.C., von Schalscha, T.L., Aimes, R.T., Stetler−Stevenson, W.G., Quigley, J.P., and Cheresh, D.A. Localization of Matrix Metalloproteinase MMP−2 to the Surface of Invasive Cells by Interaction with Integrin αvβ3, Cell 85:683−693, 1996)。αvβ3インテグリンは、腫瘍細胞の運動性と転移に関わっていることが示されており、この受容体のアンタゴニストはこれらのプロセスを阻害する(Aznavoorian, S., et al.; and Beviglia, L., Stewart, G. J., and Niewiarowski, S. Effect of four disintegrins on the adhesive and metastatic properties of B16F10 melanoma cells in a murine model, Oncology Research. 7: 7−20, 1995)。RGD配列を含有する小ペプチドが、一般的に使用されているインテグリンのアンタゴニストであるが、ディスインテグリンの10,000分の1程度の効力でしかない(Pfaff, M., McLane, M. A., Beviglia, L., Niewiarowski, S., and Timpl, R. Comparison of Disintegrins with Limited Variation in the RGD Loop in Their Binding to Purified Integrins αIIbβ3, αvβ3 and α5β1 and in Cell Adhesion Inhibition, Cell Adhesion Commun. 2: 491−5 01, 1994)。ディスインテグリンを血管新生の阻害剤として用いた報告では(Sheu, J.−R. et al.; Yeh, C.H., et al.; and Kang, I.−C., et al.)、これらのタンパク質は、αvβ3がECMに結合するのを阻止し、該インテグリンによって媒介される正常なシグナルを遮断する受動的なインテグリンアンタゴニストとして記載されている。
【0108】
コントートロスタチンは、血管新生の阻害剤でもあるαvβ3結合性ディスインテグリンであり(Zhou, Q., et al., in press)、該ファミリーの他のメンバーに比べて特異な構造を有している。該タンパク質は、増加しつつある二量体ディスインテグリン類のサブファミリーに属するが(Marcinkiewicz, C., Calvete, J.J., Marcinkiewicz, M. M., Raida, M., Vijay−Kumar, S., Huang, Z., Lobb, R.R., and Niewiarowski, S. EC3, a Novel Heterodimeric Disintegrin from Echis carinatus Venom, Inhibits α4 and α5 Integrins in an RGD−independent Manner, J Biol. Chem. 274: 12468−12473, 1999; and Marcinkiewicz, C., Calvete, J.J., Vijay−Kumar, S., Marcinkiewicz, M.M., Raida, M., Schick, P., Lobb, R.R., and Niewiarowski, S. Structural and functional characterization of EMF1O, a heterodimeric disintegrin from Eristocophis macmahoni venom that selectively inhibits alpha 5 beta I integrin, Biochemistry. 38:13302−9, 1999)、コントートロスタチンはホモ二量体なので、RGDモチーフを含有する各サブユニットとは区別される(Trikha, M., et al.; and Zhou, Q., Hu, P., Ritter, M.R., Swenson, S. D., Argounova, S., Epstein, A. L., and Markland, F.S. Molecular Cloning and Functional Expression of Contortrostatin, a Homodimeric Disintegrin from Southern Copperhead Snake Venom, Archs Biochem. Biophys. 375: 278−288, 2000)。本例において、本発明者らは、コントートロスタチンが腫瘍細胞の運動性の有効な阻害剤として作用することを実証し、コントートロスタチンの機序が細胞の運動性を阻害し得る新しい手段であることを示唆するデータを提示する。受動的なインテグリンの封鎖と能動的なαvβ3シグナル伝達の破壊とを組み合わせることによって、コントートロスタチンはこのような阻害を実現するが、これはアクチン細胞骨格と局所的接着構造中に大きな変化を引き起こすインテグリン架橋を介して行われるものと思われる。さらに、コントートロスタチンは、腫瘍細胞中に存在する重要なシグナル伝達分子のαvβ3を介したチロシンリン酸化を刺激することによって、インテグリンアゴニストとして作用する(単量体のディスインテグリンには見出されていない活性)という特有の能力を有する。
【0109】
実験の手順
材料−MDA−MB−435ヒト乳癌細胞はJanet Price(M.D. Anderson Cancer Center Houston, TX)から入手した。T24ヒト膀胱癌細胞は、ATCC(Manassas, VA)から購入した。β3及びβ5インテグリンサブユニットのcDNAをトランスフェクトした293ヒト胚性腎臓細胞及び親293細胞は、Jeffery Smith博士から頂いた(The Burnham Institute, La Jolla, CA)(Lin, E.C.K., Ratnikov, B.I., Tsai, P.M., Carron, C.P., Myers, D.M., Barbas, C.F., and Smith, J. (1997) J Biol. Chem. 272(38), 23912−23920)。OVCAR−5ヒト卵巣癌細胞は、Thomas Hamilton博士(Fox Chase Cancer Center, Philadelphia, PA)から頂いた。コントートロスタチンは、既述のとおり(Trikha et al., (1994) Thrombosis Research, supra; and Trikha et al., (1994) Cancer Research, supra)、南アメリカマムシ(Agkistrodon contortrix contortrix) の毒から精製した。単量体のディスインテグリンであるエチスタチンとフラボリディン、及び溶解緩衝液で使用した一般的なプロテアーゼ阻害剤のカクテルは、Sigma(St. Louis、MO)から入手した。ビトロネクチンは、Becton Dickinson(Bedford, MA)から購入した。PPI Src阻害剤は、Calbiochein(La Jolla, CA)から入手した。抗ホスホチロシンモノクローナル抗体(mAb)PY99は、Santa Cruz Biotechnology(Santa Cruz, CA)から入手した。抗FAK及び抗CAS mAbは、Transduction Laboratories(Lexington, KY)から購入し、7E3 mAbはCentocor(Malvern, PA)のものを用いた。
【0110】
細胞の培養、調製、及び刺激−T24細胞は、5%のウシ胎児血清を含有するRPMI 1640培地中に入れ、MDA−MB−435及び293細胞は、37℃5%CO下で、10%血清を有するDMEM中に入れた。リン酸緩衝化生理的食塩水(PBS)で細胞を洗浄し、適切な無血清培地中で、37℃で6時間、飢餓状態にした。PBS中の0.05%トリプシン/0.02%EDTAで短時間処理して細胞を剥離させ、遠心で採集して、大豆トリプシンインヒビター(無血清培地中に1mg/ml)中に再懸濁し、2%のウシ血清アルブミン/無血清培地中で洗浄した。逆さにして撹拌しながら、2%のウシ血清アルブミン/無血清培地中に37℃で1時間、細胞を懸濁状態に保った。懸濁状態のままで、又は処理の間、無血清培地で1:100に希釈したMatrigel(Becton Dickinson,Bedford,MA)に接着させて、静止状態の細胞(3×10/ml)をディスインテグリン又は他の試薬で処理した。
【0111】
ライセートの調製及び免疫沈降−冷たいPBSで、懸濁及び接着性細胞を二度洗浄し、冷たい溶解緩衝液(50mM Tris、pH 8.0、150mM NaCl、1% Nonidet P−40、0.5% デオキシコール酸塩 0.1% SDS、プロテアーゼ阻害剤カクテル、1mM ピロリン酸ナトリウム、1mM オルトバナジン酸ナトリウム 50 mM フッ化ナトリウム)中に溶解した。氷上で10〜15分間インキュベートした後、小遠心機の中で15分間、14,000RPMで遠心して、不溶性の物体を除去した。上清を集め、BCAタンパク質アッセイ(Pierce Rockford、IL)によって、総タンパク質濃度を標準化した。1.25μgの抗FAK又は抗CAS mAbとともに、4℃で4〜6時間、細胞全体のライセート(200μgの総タンパク質)をインキュベートした後、4℃で20μlのプロテインG−アガロースとともに一晩インキュベートして、免疫沈降を行った。阻害剤を加えない溶解緩衝液中で免疫沈降物を四回洗浄し、SDS−PAGEサンプル緩衝液を加えることによって解離させ、5分間煮沸した。7.5%のSDS−PAGEによって、細胞全体のライセート(30μgの総タンパク質)又は免疫沈降物を分離し、ニトロセルロース膜に転写した。
【0112】
イムノブロッティング
5%の無脂肪乳/Tris緩衝化生理的食塩水/0.1% Tween 20(ブロッキング緩衝液)を用いて、室温で1時間又は4℃で一晩、膜のブロッキングを行った。室温で1時間、ブロッキング緩衝液中にて、一次抗体のインキュベーションを行った。Tris緩衝化生理的食塩水/0.1% Tween 20中で洗浄した後、室温で1時間、ブロッキング緩衝液の中で、西洋ワサビペルオキシダーゼ抱合二次抗体とともに膜をインキュベートした。膜は徹底的に洗浄した。PierceのSuper Signar West Pico Chemiluminescent Substrateを用いて、イムノブロットを展開した。UN−SCAN−ITTMソフトウェア(Silk Scientific, Orem, UT))を用いて、デンシトメトリーを行った。
【0113】
結果
コントートロスタチン処理は、腫瘍細胞中にタンパク質チロシンリン酸化を誘導する−腫瘍細胞中での包括的なチロシンリン酸化の制御においてコントートロスタチンが果たす役割を調べるために、懸濁した状態で、様々な濃度の可溶性コントートロスタチンともに、MDA−MB−435ヒト乳癌細胞を10分間処理した。コントートロスタチン処理後に、細胞は、120〜140kDaの分子量を有するタンパク質のチロシンリン酸化の劇的な増加を示した(図20)。最大レベルのチロシンリン酸化は、10nMのコントートロスタチンで観察された。同じ方法を用いたコントートロスタチン処理の後に、このサイズ範囲に含まれるタンパク質のチロシンリン酸化が、T24ヒト膀胱癌細胞(図20)及びKSY−1カポジ肉腫細胞でも観察された(データは示さず)ので、この現象が細胞種に特異的なものではないことを示している。
【0114】
コントートロスタチンによって誘導されるチロシンリン酸化は専らαvβ3インテグリンによって媒介される−複数の独立した実験によって、コントートロスタチンによって誘導されたシグナルを伝達するのに必要なインテグリン受容体を同定した。293ヒト胚性腎臓細胞は、無視し得るレベルのαvβ3を発現しているのに対して、比較的高レベルのαvインテグリンサブユニットを発現している(Lin, E.C.K., Ratnikov, B.I., Tsai, P.M., Carron, C.P., Myers, D.M., Barbas, C.F., and Smith, J. Identification of a Region in the Integrin β3 Subunit That Confers Ligand Binding Specificity, J Biol. Chem. 272: 23912−23920,1997)。親293細胞にβ3サブユニットをコードするcDNAをトランスフェクトすることによって(αvβ3ヘテロ二量体が多量に発現されることになる)(Lin,E.C.K., et al.)αvβ3の機能を調べる機会が得られる。コントートロスタチンがチロシンリン酸化現象を誘導する能力をこのβ3形質導入体で調べ、β5インテグリンサブユニットをトランスフェクトした細胞と比較した。これらの細胞中でインテグリンが発現されることは、本発明者らの研究室で確認された。チロシンリン酸化の刺激は、αvβ3を発現している細胞中のみで観察され、αvβ5発現細胞中では観察されなかった(図21a)。チロシンリン酸化の変化は、親細胞では全く観察されなかった(データは示さず)。同様に、αvβ3発現を欠くOVCAR−5細胞のホスホチロシンレベルは、コントートロスタチン処理によって変化しなかった(データは示さず)。さらに、mAb(7E3)でコントートロスタチンのαvβ3への結合を封鎖すると、コントートロスタチンによって誘導されたMDA−MB−435細胞中のチロシンリン酸化が完全に消失することが示された(図21b)。
【0115】
単量体のディスインテグリンは単独ではチロシンリン酸化に影響を与えないが、コントートロスタチンによって誘導されるリン酸化を完全に遮断する−生化学的なレベルでのコントートロスタチンのホモ二量体構造の重要性を調べるために、単量体のディスインテグリンであるフラボリディンのチロシンリン酸化能を研究した。1μMの濃度でも、フラボリディン単独では、MDA−MD−435細胞中のチロシンリン酸化に影響を与えないことが明らかとなった。しかしながら、2つのディスインテグリンで同時に細胞を処理すると、フラボリディンは、コントートロスタチンによって誘導されたチロシンリン酸化を完全に消滅させることができた(図22)。これらの知見は、別の単量体ディスインテグリンであるエチスタチンを用いて再現された(Ritter, M.R., Zhou, Q., and Markland, F.S. Contortrostatin, A Snake Venom Disintegrin, Induces αvβ3−mediated Tyrosine Phosphorylation of CAS and FAK in Tumor Cells, J Cell. Biochem. in press, 2000; and Ritter, M.R. and Markland, F.S. Differential Regulation of Tyrosine Phosphorylation in Tumor Cells by Contortrostatin, a Homodimeric Disintegrin, and Monomeric Disintegrins Echistatin and Flavoridin, Toxicon. in press, 2000)。このように、単量体のディスインテグリンは、コントートロスタチンのαvβ3への結合を拮抗的に阻害して、該受容体の架橋とチロシンリン酸化現象の開始とを阻止することができるので、ホモ二量体構造故に、コントートロスタチンは独特なインテグリンアゴニストとして機能し得ることが強く示唆される。
【0116】
コントートロスタチンがαvβ3に結合すると、CAS及びFAKのチロシンがリン酸化される−コントートロスタチン処理に応じて、チロシンがリン酸化されるタンパク質を特定するために、コントートロスタチン処理した細胞から調製したライセートを、CAS又はFAKモノクローナル抗体を用いた免疫沈降に供した後、抗ホスホチロシンイムノブロッティングにかけた。細胞全体のライセートを用いた抗ホスホチロシン免疫ブロットで観察された分子量と同様の分子量(それぞれ、130及び125kDa)を有していることに基づいて、可能性が高い候補としてCAS及びFAKを選択した。本発明者らは、コントートロスタチン処理に応じてCASとFAKのチロシンが何れもリン酸化され(図20)、免疫沈降したCASとFAKは、細胞全体のライセートを用いた抗ホスホチロシンイムノブロットの後に観察される主要なバンドと共に移動することを見出した。このことは、これらがコントートロスタチン処理によってリン酸化される主要なタンパク質であることを示している。
【0117】
コントートロスタチンによって誘導されるチロシンリン酸化現象にはSrc活性が必要である−Srcチロシンキナーゼは、インテグリンシグナル伝達において中心的な役割を果たしていることが知られている。コントートロスタチンによって誘導されたαvβ3からのシグナルの伝達にSrcが関与しているかどうかを決定するために、10nMのコントートロスタチンによる刺激に先立って、Srcファミリーの阻害剤であるPPIとともに(Hanke, J.H., Gardner, J.P., Dow, R.L., Changelian, P. S., Brisette, W.H., Weringer, E.J., Pollok, B.A., and Connelly, P.A.(1996) J Biol Chem. 271(2), 695−701)、懸濁状態のT24細胞を30分間前処理した。図24(上段)に示されているように、PPIは、用量依存的にチロシンのリン酸化を阻害し、100μMの濃度で、コントートロスタチンによって誘導されるシグナルは完全に消滅した。MDA−MB−435細胞のPP1処理後にも同様の結果が得られたが、10μMのPP1で完全に阻害された(図24、下段)。これらの発見は、コントートロスタチンによって刺激されるインテグリンシグナル伝達にSrcが関与していることを確認するものである。
【0118】
コントートロスタチンによって誘導されたチロシンリン酸化は細胞の接着には依存しない−接着性細胞(インテグリンの連結と細胞骨格構造とが存在する)中でのチロシンリン酸化にコントートロスタチンが影響を与え得るかどうかを決定するために、MatrigelでコートされたプレートにT24細胞を接着させる前に、T24細胞をコントートロスタチンで前処理した。コントートロスタチンは、細胞がラミニンに結合するのを有意には阻害しないことに注目されたい。このため、コントートロスタチンは、ラミニンが豊富なMatrigelへの細胞の結合を阻害しない。ホスホチロシンのイムノブロッティングによって、Matrigelへの接着後に、T24細胞はチロシンリン酸化の若干の増加を示すが、接着性細胞をコントートロスタチンで処理すると、CAS及びFAKを含有することが示された120〜140kDaのバンドを含むこれらのシグナルがさらに著しく増加することが明らかとなった(図25)。高濃度のコントートロスタチン(1000nM)がチロシンリン酸化のレベルを減少させることが再度観察された。同様の実験では、コントートロスタチンによる処理の前に、T24細胞を30分間Matrigelに接着させた。コントートロスタチンの存在下で、Matrigel上でさらに30分インキュベートすると、細胞は、同様に120〜140kDaのバンドのチロシンリン酸化の増加を示した。
【0119】
このように、コントートロスタチンによるチロシンリン酸化の誘導は、非接着性細胞中のみならず、ECMタンパク質からの刺激の存在下にある接着性細胞中でも起こり得る。
【0120】
コントートロスタチンは、形態的な変化とアクチン細胞骨格及び局所的接着構造の破壊を引き起こす−コントートロスタチンが細胞の形態と細胞骨格の構造に及ぼす影響を調べるために、本発明者らは、アクチン細胞骨格及び局所的接着構造に注目して、位相差顕微鏡下で腫瘍細胞を調べ、免疫化学的な分析を行った。細胞を採取し、無血清培地で1:100に希釈され、1%のウシ血清アルブミン(BSA)/リン酸緩衝化された生理的食塩水(PBS)でブロックしたMatrigelでコートされたカバーガラス上に置いた。37℃で一晩細胞をインキュベートした。続いて、血清含有培地中のディスインテグリンによって、又は血清含有培地のみによって、37℃で30分間、細胞を処理した。カバーガラスをPBSで洗浄し、4%のホルムアルデヒド/PBSによって37℃で10分間固定し、0.1%のTriton X−100/PBSで1分間、透過化させ、1%のBSA/PBSを用いて、37℃で30分間ブロックした。次いで、カバーガラスを一次抗体とともに、37℃で1時間インキュベートした後、フルオレセイン(FITC)抱合二次抗体+ローダミン標識したファロイディン(phalloidin)とともに1時間インキュベートした。PBSで洗浄した後、SPOTデジタルカメラを取り付けたオリンパスAX70蛍光顕微鏡の上にカバーガラスを載せて、画像を集めた。
【0121】
本発明者らは、Matrigelに接着しているコントートロスタチン処理したT24細胞では、細胞の形態に特有の変化を観察し(細胞の広がりが少なくなるのが観察される)、細胞は細胞体から鋭利な突起を示していた(図26a及びb)。本発明者らは、0.5μMのコントートロスタチンで30分間処理すると、細胞骨格の外観が劇的に破壊される(対照細胞中に存在するアクチン張力繊維が崩壊しているように見えた)ことも観察した(図26c、d、g、及びh)。細胞骨格の破壊には、ホスホチロシン染色によって示されるように、局所的接着のサイズと数の激減を伴う(図26e及びf)。局所的接着タンパク質FAKの細胞内の局在も調べた。対照細胞では、FAK染色は点状であり、ホスホチロシンに観察された分布と同様の分布を示した(図26i)。対照的に、コントートロスタチンで処理された細胞中のFAK染色は散在性であり、対照細胞が有する点状の外観を欠いていた(図26j)。
【0122】
インテグリンαvβ3は、コントートロスタチンが細胞骨格及び局所的接着を崩壊させるのに必要である−ディスインテグリンは、β1及びβ3インテグリンに結合することが知られている。コントートロスタチン処理後に観察される細胞骨格の崩壊にαvβ3が関与している可能性を調べるために、既述のように(Brooks, P. C., et al.)、FACSによって、該インテグリンの発現を欠如しているT24細胞を選択し、免疫細胞化学によって分析した。 室温で30分間、一次抗体とともに細胞をインキュベートして、インテグリンの発現を検出した。FITC抱合二次抗体とともに30分間、室温でインキュベートする前に、1%のBSA/PBSで細胞を二回洗浄した。FACScanフローサイトメーター(Becton Dickinson,Bedford,MA)で分析する前に、細胞を三回洗浄した。
【0123】
例11のように、免疫蛍光染色を行った。αvβ3を発現している集団とは異なり、該インテグリンの発現を欠如しているT24細胞は、0.5μMのコントートロスタチンで30分間処理した後に、アクチン細胞骨格の外観(図27a及びb)又は局所的接着(図27c及びd)に変化を示さなかった。これらの知見を敷衍するように、同じくαvβ3の発現を欠くOVCAR−5ヒト卵巣癌細胞は、コントートロスタチン処理の後、同様に細胞骨格(図27e及びf)又は局所的接着(図27g及びh)の変化を示さなかった。これらの知見は、コントートロスタチンが専らαvβ3インテグリンを介して構造的な破壊を引き起こすことを示している。
【0124】
単量体のディスインテグリンによる処理は、T24細胞中の細胞骨格又は局所的接着構造に対して影響を与えない−細胞破壊の誘導における、コントートロスタチンのホモ二量体構造の役割を決定するために、本発明者らは、単量体のディスインテグリンであるフラボリディンで処理した細胞を、コントートロスタチンで処理した細胞と直接比較した。例2に記載されている方法を用いて、1μMの単量体で処理したT24細胞(図28e及びf)は、対照細胞(図28a及びb)と同様の外見を有していたのに対して、コントートロスタチンで処理した細胞(0.5μM)は、予想通り、細胞骨格(図28c)と局所的接着(図28d)の崩壊を示した。これらの結果は、コントートロスタチンの2倍の濃度のフラボリディンを用いて得たものであるから、観察された崩壊は、コントートロスタチンのホホモ二量体構造に直接関連していることが強く示唆される。
【0125】
要約
本例は、コントートロスタチンが細胞骨格及び局所的接着構造に多大な崩壊を引き起こし、重要な局所的接着タンパク質のチロシンリン酸化を誘導することを実証している。近年、FAKの局所分布と機能の適切な制御には、リン酸化と脱リン酸化のサイクルが関与していることが示唆されている。このため、コントートロスタチンは、FAKが、時間的にも空間的にも不適切にリン酸化されている該サイクルの生理的なバランスを崩し(図29)、正常な局所的接着構造とは相容れない細胞内の局在をFAKに採らせる(図30)と想定し得る。アクチン細胞骨格も全体的に変化を受けることが観察されるので、明らかに、これらの崩壊は局所的な接着に止まらない。関連する分子の詳細は明らかとなっていないが、局所的接着複合体はアクチン細胞骨格と直接会合することが知られているので、これは不合理とはいえない。生化学的な分析によって、CASがコントートロスタチンで処理された細胞内でチロシンをリン酸化させることが示されている。CASは前進する運動性細胞の先頭に局在化し、この特異的な局在化の崩壊は運動能の減少をもたらす。免疫蛍光による観察下では細胞は運動性を有しないので、これらの実験中には、本発明者らはこれを実証することはできなかったが、コントートロスタチン処理した細胞ではCASの局在化が変化する可能性がある。  αvβ3インテグリンは両プロセスが起こるのに必要とされるので、本発明者らが得たチロシンリン酸化現象に関する生化学的な結果と、細胞骨格及び局所的接着に対するコントートロスタチンの効果との間には強い関連が確立される。さらに、αvβ3を結合する単量体のディスインテグリンであるフラボリディンは、アクチン細胞骨格又は局所的接着に対して有意な影響を与えなかった。これは、単量体のディスインテグリンはチロシンリン酸化を刺激することができないという生化学的な知見と非常によく相関する観察である。単量体のディスインテグリンが活性を欠いているということは、コントートロスタチンに特有の構造によって、チロシンリン酸化現象を刺激し、細胞の基礎構造を崩壊させることが可能となることを強く示唆している。チロシンリン酸化の活性化をもたらすインテグリンを架橋する方法を記載している文献報告が幾つか存在するが(14、15、38、39)、これらの報告は何れも、運動性に対するこれらの活性化の影響を調べていない。コントートロスタチンは、細胞表面上に位置するαvβ3インテグリンを架橋することによってチロシンのリン酸化を刺激するようであり、この活性は、単量体のディスインテグリン中には明瞭には見出されないであろう。
【0126】
これらのデータは、αvβ3発現細胞に対して大きな影響を与えることができる、インテグリンを介した新規機序を証明している。本発明者らは、コントートロスタチンは腫瘍細胞の運動性を著しく阻害し、一価のインテグリンアンタゴニストより強力にαvβ3発現細胞の運動性を阻害する阻害剤であることを示した。該プロセスはFAK及びアクチン細胞骨格の適切な制御にも依存しているので、コントートロスタチンは細胞分裂に対して負の影響を与える可能性もあるが、この可能性については調べなかった。αvβ3インテグリンは、血管新生能を有する内皮細胞上での発現を増加させ、該プロセスを制御するのに不可欠であることが示されているので、これらの知見は血管新生に対する重要性を有している。このため、αvβ3がその生理的なリガンドに結合するのを受動的に遮断することによって、及び細胞内の構造を大きく破壊させる不適切なシグナルを積極的に誘導することによって、コントートロスタチンは、血管新生の有効な阻害剤となると予想される。これらの知見は、腫瘍細胞の浸潤と転移を停止させるための代替的アプローチのみならず、シグナル伝達阻害剤を用いて阻害するのではなく、シグナル伝達経路を積極的に破壊することによって血管新生を停止させるための代替的アプローチをも示唆しており、コントートロスタチンが、このアプローチの可能性をさらに調べるための典型的な薬剤であることを明らかにしている。
【0127】
結論的には、本研究は、腫瘍細胞中のインテグリンのシグナル伝達を調節することができるディスインテグリンファミリーにとって新規な活性を明らかにする。他の3つのディスインテグリンは、チロシンリン酸化を刺激する能力を欠いていることが分かっていたので(Clark et al.,supra)、この活性はコントートロスタチンに特有のものであると思われる。最近、様々なヘビ毒から数多くの新しい二量体のディスインテグリンが精製された(Marcinkiewicz et al.,supra)。これらの分子はRGD配列を欠いており、αvβ3と相互作用しないようなので、これらの分子がコントートロスタチンと同様の活性を示す可能性は少ない。本発明者らの報告は、αvβ3の機能をさらに研究するたえに有用な試薬としてコントートロスタチンを同定し、腫瘍細胞の運動性に対しての負の効果を与え得る、インテグリンによって媒介される新規な機序を明らかにしている。αvβ5、αvβ1、及びαvβ3のECMへの結合をブロックするという複合的な効果と、重要なシグナル伝達分子の過剰リン酸化を引き起こす不適切なシグナルの開始とによって、本来的には運動性と浸潤性を有する腫瘍細胞を不動化させることができると本発明者らは提案する。この提案は、コントートロスタチンがインビトロで腫瘍細胞の浸潤性を阻害するという本発明者らの発見と合致している。CASとFAKの細胞内分布及びコントートロスタチン処理された細胞中のアクチン細胞骨格の構造をさらに研究することによって、運動能の減少と一致する擾乱を明らかにすると本発明者らは予測する。
【0128】
上記の記述から、当業者であれば、本発明の本質的な特徴を容易に確知することができ、本発明の精神と範囲から逸脱せずに、様々な用途と条件に対して本発明を採用することができる。情況が適宜であることが示唆され、又は適宜であり得るのであれば、形式の変化や均等物の置換が想定される。本明細書では具体的な用語が用いられているが、それらは、説明的な意味を意図したものであり、限定を意図したものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明は、添付の図面を参照することにより、さらによく理解することができるであろう。図1は、コントートロスタチンcDNAをクローニングする戦略を示している。図1Aは、共通するRGD配列と高度に保存された配列を示しており、他のディスインテグリンと比較したエドマン分解アッセイに基づくCNの部分アミノ酸配列(CN)を示している。図1BはPCRプライマーを示し、図1Cは、コントートロスタチンの完全長cDNAを作製するために使用された重複伸張反応の原理を示している。
【図2】
図2は、PCR産物の電気泳動を示しており、約1300bpの主要なバンドは、λgt10フォワードとPCR−2によって開始されたPCRで増幅され(レーン1)、約700bpのバンドはPCR−2とλgt10リバースによって開始されたPCRから生じ(レーン2)、約2000bpの分子サイズを有する2つの断片の重複する産物はレーン3に示されている。
【図3A】
図3Aは、86ヌクレオチドの5’末端非翻訳領域(NTR)、ヌクレオチド87と1535の間のオープンリーディングフレーム、ヌクレオチド1536〜1538の終止コドン、及びAATAAA部位を含み、ポリAテールで終了する3’NTRを含むCN cDNAの完全長ヌクレオチド配列と推定アミノ酸を示している。
【図3B】
図3Aと同じオープンリーディングフレームの配列(続き)を示す。
【図3C】
図3Aと同じオープンリーディングフレームの配列(続き)を示す。
【図3D】
図3Aと同じオープンリーディングフレームの配列(続き)を示す。
【図4−1】
図4−1は、トリグラミン前駆体と他のヘビ毒の出血性タンパク質と比較したコントートロスタチン前駆体のマルチドメイン構造を示している。
【図4−2】
図4−2は、トリグラミン前駆体と他のヘビ毒の出血性タンパク質と比較したコントートロスタチン前駆体のマルチドメイン構造を示している。
【図5】
図5は、コントートロスタチンのホモダイマーの形成を示している。図5Aは、N末端に6アミノ酸の末端切断を有し、2つの不対システイン残基を与える2つの半シスチン残基を含むコントートロスタチンと比較したキストリン(ディスインテグリン)のアミノ酸配列とジスルフィド結合パターンを示している。図5Bは、不対システインが、2つの分子間ジスルフィド結合の形成に関与して、ユニークなホモダイマー構造を形成し得ることを示している。2つのモノマーは、平行又は非平行パターンで連結され得る。
【図6】
図6は、MDA−MB−435のフィブロネクチンへの接着をCNが阻害したことを示している。
【図7】
図7は、MDA−MB−435のビトロネクチンへの接着をCNが阻害したことを示している。
【図8】
図8は、GRG−DSPによって、ヒト乳癌細胞の固定化されたCNへの結合が阻害されることを示している。
【図9】
図9は、EDTAによって、ヒト乳癌細胞の固定化されたCNへの結合が阻害されることを示している。
【図10】
図10はコントートロスタチン及び単量体のディスインテグリンによって運動能が阻害されることを示している。(a)ホモ二量体のディスインテグリンである表記のμM濃度のコントートロスタチン(CN)は、MDA−MB−435細胞のMatrigel上での運動能を阻害し、その阻害は、単量体のディスインテグリンであるフラボリディン(Flav)をコントートロスタチンの2倍の濃度で用いた場合より有効である。図示されているデータは、平均値を表している。誤差線はSEMを表している。(b)Matrigelでコートされた膜の底部の方に移動した被染色細胞の像。これらの実験は、結果を確認するために4回行った。
【図11】
コントートロスタチンは、T24細胞のMatrigel(白四角)への接着に対して何ら影響を与えないが、ビトロネクチン(黒四角)への接着は完全に遮断する。同様に、αvβ3インテグリンを発現していないT24細胞を選択した場合、コントートロスタチン(白丸)によって、Matrigelへの結合は影響を受けないが、ビトロネクチン(黒丸)に対しては有効に阻害される。MDA−MB−435細胞を用いた接着アッセイでも同様の結果が得られた。
【図12】
図12は、実験用ヌードマウスでのMDA−MB−435腫瘍の増殖に対するCNの影響を示している。
【図13】
図13は、対照ニワトリ胚絨毛尿膜(CAM;chorioallantoic membrane)(図13A)、20μgのCNで処理したCAM(図13B)、及び150μgのCNで処理したCAM(図13B)中で、腫瘍によって誘導された血管新生を示す写真である。
【図14】
図14は、インビトロでのMDA−MB−435細胞の増殖に対するCNの影響を示す。
【図15】
T24及びT24−β3neg.細胞株におけるインテグリンαvβ3及びαvβ5の発現パターン。本図は、抗体7E3(抗αvβ3)及びP1F6(抗αvβ5)が前記細胞に結合することを示している。抗体の結合は、フローサイトメトリーを使用し、FITCに抱合された二次抗体を用いて検出した。各アッセイ中のバックグラウンドピークは、破線の矢印によって記されている。特異抗体で処理した細胞を表すピークは、実線の矢印によって記されている。7E3(10μg/ml)はT24細胞に結合して、ピークの右方へのシフトを引き起こし(A)、P1F6(10μg/ml)もT24細胞に結合して右方への僅かなシフトを引き起こすので(B)、T24はαvβ3(多量)とαvβ5(少量)をともに発現していることが示唆される。ピークが重複することによって示されるように、T24−β3neg.細胞には、7E3の結合は見られない(C)。しかしながらP1F6は該細胞に結合するので(D)、該細胞はαvβ5のみを発現していることを示す。ここに示されたデータは、3つの同じ実験のうちの代表的なものである。
【図16】ビトロネクチン受容体の様々なアンタゴニストによって、T24及びT24−β3neg.細胞のビトロネクチンへの接着が阻害される。(A)コントートロスタチンは、T24の接着を完全に阻害する(四角)のに対して、7E3は接着を部分的に阻害するにすぎない(三角)。(B)P1F6だけは(黒丸)、T24の接着を部分的に阻害するにすぎなかったが、7E3(10μg/ml)と組み合わせると、P1F6(菱形)も接着を完全に阻害することができる。(C)コントートロスタチンは、T24−β3neg.の接着を完全に阻害する(四角)のに対して、7E3は接着に対して影響を有しない(三角)。(D)P1F6(黒丸)だけが、T24−β3neg.の接着を有意に阻害する。7E3(10μg/ml)の存在はP1F6の阻害能を増大しない(菱形)。各データの点は、3つの各繰り返しの平均±標準偏差を表しており、非線形回帰曲線によって結ばれている。実験は3回繰り返されたが、結果は同じであった。
【図17】
OVCAR−5細胞株中でのインテグリンの発現パターン。モノクローナル抗体抗αvβ3(7E3)と抗αvβ5(P1F6)を用いたFACSによって、OVCAR−5細胞株中でのインテグリンの発現パターンを分析した。実線のピークはバックグラウンドであり、バックグラウンドと重なっている点線のピークは結合した7E3を表し、右側の点線のピークはP1F6を表している。このことは、OVCAR−5細胞がインテグリンαvβ5を有しているが、αvβ3は有していないことを決定的に示している。
【図18】
CN及びαvβ5の他のアンタゴニストは、OVCAR−5細胞のビトロネクチンへの接着を阻害する。マトリックスへの癌細胞の接着は、癌細胞の広がりと転移にとって決定的な段階の一つである。インテグリンαvβ5が細胞のビトロネクチンへの接着を媒介することは十分に確定されている。接着アッセイにおいて、本発明者らは、ビトロネクチンをコートしたプレートへのOVCAR−5細胞の接着は、CNとαvβ5に対するmAb(P1F6)の両者によって阻害されることを実証することができた。しかしながら、抗体αvβ3(7E3)は細胞接着には影響を与えなかった。本データは、インテグリンαvβ5を遮断することによって、CNが癌細胞のビトロネクチンへの接着を破壊することを示唆している。
【図19】
精製されたαvβ5(すなわち、マイクロタイタープレートの各ウェル中に固定化された精製αvβ5(100ng))へのコントートロスタチンの直接結合。様々な濃度のコントートロスタチンをインテグリンに結合させた。ディスインテグリンに対する抗血清を用いて、結合したコントートロスタチンを総結合(黒丸)として定量した。ウシ血清アルブミンに結合したコントートロスタチン(白四角)を非特異的結合と定義する。総結合から非特異的結合を差し引くことによって、特異的な結合(三角)を算出する。各点は、3回の繰り返し分析から得られた405nmの吸光度の平均±SDを表している。結果を確認するために該実験を繰り返した。
【図20】
コントートロスタチンは、腫瘍細胞の中でチロシンのリン酸化現象を誘導する。懸濁したT24細胞(a)又はMDA−MB−435細胞(b)を用いて、10分間の処理後に、コントートロスタチンが表記の濃度で、120〜140kDaのタンパク質のチロシンリン酸化を刺激することが示されている。特異的な免疫沈降とホスホチロシン免疫ブロッティングによって、FAKとCASは、コントートロスタチン処理に応じて、MDA−MB−435細胞中でチロシンリン酸化をもたらすことが示されている(c及びe)。等量のタンパク質が加えられたことを実証するために、免疫沈降に使用した抗体を免疫ブロッティングに使用した(d及びf)。
【図21】
αvβ3インテグリンは、専ら、コントートロスタチンによって刺激されたチロシンのリン酸化現象を媒介する。αvβ3を発現する293細胞(β3)は、表記の濃度のコントートロスタチンによる処理に応答し、10分後に120〜140kDaのタンパク質のチロシンリン酸化を増大させるが、αvβ5を発現している対照細胞(β5)は応答を示していない(a)。表記の濃度の7E3(抗αvβ3 mAb)によってT24細胞を処理すると、0.01μMのコントートロスタチンによる10分間の処理によって誘導された120〜140kDaタンパク質のチロシンリン酸化を消失せしめる(b)。
【図22】
腫瘍細胞におけるチロシンリン酸化に対する単量体ディスインテグリンの影響。表記のように10分間、表記の濃度のエチスタチン(上段)若しくはフラボリディン(下段)でMDA−MB−435細胞を処理するか、又は単量体のディスインテグリンと10nMのコントートロスタチンで同時にMDA−MB−435細胞を処理した。実験の手順に記載されているように、イムノブロットによって、ライセートのホスホチロシン含量を分析した。
【図23】
コントートロスタチンによって誘導されたチロシンリン酸化は、αvβ3インテグリンによって媒介される。A、αvβ5(αvβ5 293)又はαvβ3(αvβ3 293)の何れかを発現する懸濁293細胞を、表記の濃度のコントートロスタチン(CN)で10分間処理した。β3 293細胞はコントートロスタチン処理に応答して、チロシンのリン酸化を増大させたが、β3 293細胞は何ら応答を示さなかった。実験の手順に記載されているように、イムノブロットによって、ライセートのホスホチロシン含量を分析した。B、コントートロスタチン(CN)と表記の濃度の抗αvβ3 mAb 7E3によって、T24細胞(上段)又はMDA−MB−435細胞(下段)を10分間同時に処理した。細胞全体のライセートはホスホチロシンイムノブロットによって分析した。
【図24】
コントートロスタチンによって誘導されるチロシンリン酸化におけるSrcの関与。10nMのコントートロスタチン(CN)による刺激の前に、表記の濃度のSrc阻害剤PPIによって30分間、T24細胞(上段)又はMDA−MB−435細胞(下段)を前処理した。ライセートを調製し、抗ホスホチロシンイムノブロットによって分析した。PPIの原液はDMSO中に調製したが、DMSO単独では、コントートロスタチンによって誘導されたチロシンのリン酸化に対して何ら影響を与えなかった(上段)。
【図25】
コントートロスタチンによって誘導されるチロシンのリン酸化は、細胞接着に依存しない。Matrigelでコートしたプレートに加える前に、表記の濃度のコントートロスタチン(CN)によって5分間、T24細胞を前処理した。対照細胞は懸濁液の中に維持した。Matrigel上で細胞を20分間インキュベートした後にライセートを調製し、抗ホスホチロシンイムノブロットによって分析した(上段)。下段は、デンシトメトリーで決定した対応するバンドの相対強度を示している。
【図26】
コントートロスタチンは、Matrigelに接着しているT24細胞中で細胞の形態の変化、アクチン張力繊維の崩壊、及び局所的接着の分解を引き起こす。0.5μMのコントートロスタチンで30分間処理した細胞の位相差顕微鏡(b)は、対照細胞(a)に比べて、形態が変化し、細胞の分散が減少していることを示している。対照細胞のFアクチン染色(c及びg)は大きな張力繊維を示しているのに対して、コントートロスタチンで処理した細胞中のアクチン(d及びh)は、無定形の凝集物へと崩壊しているように見える。ホスホチロシン染色は、多数の極めて明瞭な局所的接着構造を示している(e)。これに対して、コントートロスタチンで処理した細胞中には、局所的な接着がほぼ完全に欠如している(f)。対照細胞中でFAKに対する特異的染色を行うと、ホスホチロシンで観察されたパターンと同様のパターンが得られたが(i)、コントートロスタチンで処理した細胞におけるFAK染色(j)は、散在性で間隙の多い斑状の外観であった。
【図27】
αvβ3インテグリンの存在は、コントートロスタチンが構造的な崩壊を引き起こすのに必要である。αvβ3の不存在について選択したT24細胞(a〜d)、及びOVCAR−5ヒト卵巣癌細胞(e〜h)の部分集団のFアクチンとホスホチロシンを、免疫蛍光顕微鏡によって調べた。αvβ3を発現している細胞(図3)とは対照的に、これらの細胞は、0.5μMのコントートロスタチン(b、d、f、h)で30分間処理した後でも、対照細胞(a、c、e、g)と比べて、形態、細胞骨格、又は局所的接着構造に変化を示さなかった。
【図28】
単量体のディスインテグリンであるフラボリディンは、アクチン細胞骨格又は局所的接着構造に対して有意な影響を与えない。コントートロスタチンが細胞内構造に対して影響を与える能力を、単量体のディスインテグリンであるフラボリディンと直接比較した。存在するインテグリン結合性RGDモチーフの数を等しくするために、コントートロスタチンの二倍の濃度のフラボリディンで細胞を処理した。コントートロスタチン処理の後には、Fアクチン(c)とホスホチロシン(d)染色の崩壊が見られるのに対して、フラボリディン処理した細胞(e及びf)は対照細胞と同じような外観を有している(a及びb)。
【図29】
コントートロスタチンで誘導したチロシンリン酸化現象に対して仮定される機序の模式図。コントートロスタチンのホモ二量体(CN)は、細胞表面上に位置する2つの各αvβ3に結合する。これによって、インテグリン関連FAK分子は近くに引き寄せられ、トランス自己リン酸化を可能とし、Srcの結合部位を作出する。次いで、SrcはCASをリン酸化することが可能となり、FAKをさらにリン酸化する。Srcキナーゼ阻害剤であるPP1は、Srcによって媒介されるFAKとCASのリン酸化を遮断することができる。
【図30】
コントートロスタチン処理後の細胞骨格及び局所的接着に対する仮定的な効果の模式図。(上)未処理の細胞は、整ったアクチン細胞骨格と明瞭な局所的接着を有しつつ十分に広がっている。簡単のために、局所的接着中には、FAKとインテグリンのみが示されている。(下)コントートロスタチンで処理した細胞では、FAKの局在化は崩壊し、局所的な接着は分解しており、アクチン細胞骨格は崩壊しているため、形態が変化している。これらの現象は、細胞が接着性を保っている間に起こる。

Claims (14)

  1. αvβ3インテグリン発現細胞の運動性を減少させる方法であって、前記インテグリン発現細胞上に存在する少なくとも2つのαvβ3インテグリンを架橋することによって、前記細胞の運動性を阻害することを備えた方法。
  2. 前記インテグリンがホモ二量体のディスインテグリンによって架橋される請求項1の方法。
  3. 前記ホモ二量体のディスインテグリンがコントートロスタチンである請求項2の方法。
  4. 前記架橋がFAKシグナル伝達を破壊する請求項1の方法。
  5. 前記架橋がFAKのチロシンリン酸化を活性化させる請求項1の方法。
  6. 前記架橋がCASのチロシンリン酸化を活性化させる請求項1の方法。
  7. 前記架橋が細胞形態の変化を誘導する請求項1の方法。
  8. 前記変化が細胞骨格又は局所的接着構造を変化させる請求項7の方法。
  9. 前記αvβ3インテグリン発現細胞が腫瘍細胞である請求項の方法。
  10. インテグリン発現細胞のビトロネクチンへの接着を阻害する方法であって、コントートロスタチンがインテグリンに結合するように、前記細胞をコントートロスタチンに暴露することを備えた方法。
  11. 前記インテグリンがαvβ3又はαvβ5である請求項10の方法。
  12. 配列番号2のアミノ酸番号419〜483と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有するホモ二量体のディスインテグリンであって、前記コントートロスタチンのアミノ酸配列は、
    (i)インテグリンαvβ5に結合する、及び
    (ii)腫瘍細胞中で、αvβ3によって媒介されるCAS及びFAKのチロシンリン酸化を誘導する、
    ディスインテグリン。
  13. (a)配列番号2のアミノ酸番号419〜483、及び
    (b)既定の間隙及びギャップペナルティーと既定のスコアリングマトリックスを用いたFASTA又はBLASTによって決定した場合に、(a)と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列、
    からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する請求項12のホモ二量体のディスインテグリン。
  14. 薬学的に許容される担体と請求項12に記載されたホモ二量体のディスインテグリンとを含む薬学的に許容される組成物。
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