JP2004333434A - 車輪状態検出装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】新規な車輪状態の検出装置を提案する。
【解決手段】本発明による車輪状態検出装置は、車輪側通信機4と車体側通信機10の間で通信する通信信号をもとに、車輪角度すなわち舵角や、車輪3の異常状態を含む車輪状態を検出する。車輪3を操舵することにより両通信機間の距離が変動し、車輪位相に応じて通信時間が変動することを利用して、ECU20が車輪角度を検出する。またECU20は、車輪位相と通信時間との関係を示す波形の高周波成分すなわちノイズ成分を抽出することにより、車輪3の異常振動を検出する。またECU20は、基準波形との変位を求めることにより、車輪3のアライメントのずれを検出する。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明による車輪状態検出装置は、車輪側通信機4と車体側通信機10の間で通信する通信信号をもとに、車輪角度すなわち舵角や、車輪3の異常状態を含む車輪状態を検出する。車輪3を操舵することにより両通信機間の距離が変動し、車輪位相に応じて通信時間が変動することを利用して、ECU20が車輪角度を検出する。またECU20は、車輪位相と通信時間との関係を示す波形の高周波成分すなわちノイズ成分を抽出することにより、車輪3の異常振動を検出する。またECU20は、基準波形との変位を求めることにより、車輪3のアライメントのずれを検出する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車輪の状態を検出する装置に関し、特に車輪に設けた通信機を用いて車輪の状態を検出する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車輪角度、すなわち車輪の舵角を検知するセンサとして、ステアリングラックバーの表面を加熱して電磁気的特性が長手方向に漸次変化する信号パターンを形成し、これを非接触の信号検出器で読み取ることにより、車輪角度を検知する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特許第2504339号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1に開示される従来の車輪角度センサは、ギヤボックスに配置されるため、ギヤボックスのレイアウトに若干の制約が生じることがある。また従来の車輪角度センサは、各車輪を独立して操舵する機構を備える車両に対して適用することができない。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、車輪に通信機を設け、通信機からの通信信号を利用して車輪状態を検出する新規な技術を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明のある態様は、車体に操舵可能に設けた車輪と、車輪に設けた車輪側通信機と、車体側に設けた車体側通信機とを備え、両通信機間で通信する通信信号に基づいて車輪状態を検出する車輪状態検出装置に関する。この態様の車輪状態検出装置は、車輪側通信機から送信され車体側通信機が受信する通信信号に基づいて、車輪の車輪角度を算出する舵角検出手段を備える。例えば、舵角検出手段は、通信信号の通信時間や、通信信号の出力、通信信号の受信周期などに基づいて、車輪角度を算出してもよい。舵角検出手段の機能は、電子制御装置により実現されてもよい。
【0007】
この車輪状態検出装置によると、ギヤボックス等のレイアウト上の制約を受けることなく、車輪と車体間の通信信号に基づいて車輪角度を算出できる。また、例えばバイワイヤ方式により各車輪が独立に操舵される場合であっても、各車輪が通信機を備えることによって、車輪ごとの車輪角度を算出することが可能となる。また将来の動向として、海外または日本国内において、タイヤ空気圧が所定値を下回った場合は、その旨をドライバに告知する義務が法制化されることが予想されるが、その法規制に対応するべく、車輪にセンサ機能を有する通信機を搭載させる場合には、その通信機を有効に活用して、車輪角度を算出することが可能となる。
【0008】
舵角検出手段は、車輪側通信機が、車体側通信機から車輪側通信機に送信した通信信号に応答して車体側通信機に返信した通信信号に基づいて車輪角度を算出してもよい。このとき、車体側通信機は、通信信号に、該通信信号に関する情報を付与して車輪側通信機に送信してもよい。車輪側通信機は、返信する通信信号に、受信した通信信号に付与されている情報を含めることが好ましい。通信信号に関する情報とは、例えば通信信号の送信時刻などを含む。舵角検出手段は、付与された情報をもとに通信時間を精度よく検出し、車輪角度の算出精度を上げることができる。
【0009】
車輪側通信機はタイヤセンサを備え、通信信号に、タイヤセンサで検出したタイヤ空気圧、温度またはタイヤ接地力の情報を含ませて車体側通信機に送信してもよい。これにより車体側では、通信信号を利用して車輪角度を検出できるとともに、通信信号に含まれる情報を有効利用することが可能となる。車体側通信機のアンテナは、車輪近傍の車体側に配置されることが好ましい。車輪近傍に配置することにより、車輪と車体間での通信を安定化することができ、また電波出力を低く設定できることから、他の車輪の通信機に与える影響を低減することができる。
【0010】
この態様の車輪状態検出装置は、操舵部材による操舵情報を検出する操舵角センサと、操舵角センサの検出結果と舵角検出手段の算出結果の相関から、車輪の異常状態を判定する判定手段をさらに備えてもよい。これにより、ドライバによる操舵部材の操舵情報と、通信信号を用いて算出した車輪角度の相関から車輪の異常状態を判定することができる。例えば、ドライバの直進操作中に車輪角度が変化すれば、判定手段が車輪の異常を判定する。判定手段の機能は、電子制御装置により実現されてもよい。
【0011】
本発明の別の態様は、車体に操舵可能に設けた車輪と、車輪に設けた車輪側通信機と、車体側に設けた車体側通信機とを備え、両通信機間で通信する通信信号に基づいて車輪状態を検出する車輪状態検出装置に関する。この態様の車輪状態検出装置は、車輪側通信機から送信され車体側通信機が受信する通信信号に基づいて、車輪の異常状態を判定する判定手段を備える。
【0012】
この車輪状態検出装置によると、特別な振動センサなどを設ける必要なく、車輪と車体間の通信信号に基づいて車輪の異常状態を判定できる。また、各車輪が通信機を備えることによって、車輪ごとの異常判定を行うことも可能である。また上記したように、ドライバへの告知義務が法制化され、車輪に通信機が搭載される場合には、その通信機を有効に活用して、異常判定を行うことが可能となる。
【0013】
判定手段は、通信信号の通信時間と車輪位相の関係を示す波形を基準波形と比較し、その比較結果に応じて車輪の異常状態を判定してもよい。また、判定手段は、通信信号の通信時間と車輪位相の関係を示す波形の周波数成分に基づいて、車輪の異常状態を判定してもよく、特に高周波成分に基づいて車輪の異常振動を判定してもよい。
【0014】
本発明のさらに別の態様は、車体に操舵可能に設けた車輪と、車輪の車軸からそれぞれオフセットされた車輪側の所定位置と車体側の所定位置との距離を測定する距離測定手段と、車輪側の所定位置の車軸に対する位相と測定した距離とに基づいて、車輪の車輪角度を算出する舵角検出手段とを備える車輪状態検出装置に関する。この車輪状態検出装置によると、ギヤボックス等のレイアウト上の制約を受けることなく、車輪側の所定位置と車体側の所定位置との距離と、車輪側の所定位置の車軸に対する位相に基づいて、車輪角度を算出できる。車輪側および車体側の所定位置同士の間の距離は、それぞれの位置に通信機を設け、通信機間で通信する通信信号をもとに測定されてもよい。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施の形態に係る車両1の構成を示す。車両1は車体2と、左前輪である車輪3a、右前輪である車輪3b、左後輪である車輪3cおよび右後輪である車輪3d(以下、適宜「車輪3」と総称する)を備える。車輪3はホイールとゴムタイヤから構成される。それぞれの車輪3は車体2に操舵可能に設けられ、バイワイヤ方式により独立に車輪角度すなわち舵角を制御される。車輪角度は、例えば直進方向を基準として制御されてよい。バイワイヤ方式の操舵機構においては、ドライバがハンドルなどの操舵部材12を操作すると、操舵部材12に連結するコラムシャフト14が回転し、操舵角センサ13が、コラムシャフト14の回転量から各車輪3の車輪角度を算出する。操舵角センサ13の算出結果は、電子制御装置(以下、電子制御装置を「ECU」と表記する)20に伝達され、ECU20が、各車輪3の車輪角度を決定する。ECU20は、CPU、RAM、ROMを備えて構成される。ECU20は、それぞれの車輪3に外力を加えるアクチュエータを駆動し、車輪角度を制御する。この制御では、車輪3aに対してはアクチュエータ8a、車輪3bに対してはアクチュエータ8b、車輪3cに対してはアクチュエータ8c、車輪3dに対してはアクチュエータ8dがそれぞれ対応する。
【0016】
本実施の形態において、車輪3は、車輪3の物理量を検出する機能と、検出した物理量などを車体2側に通信する機能とを備える。車輪3の物理量は、例えばタイヤの空気圧や温度、またタイヤの接地力などを含む。車輪3の通信機能に対応して、車体2は、車輪3に対して通信信号を送信し、また車輪3から送信される通信信号を受信する通信機能を備える。
【0017】
具体的に車輪3aは、物理量を検出するタイヤセンサ5a、および車体2との間で通信を行う送受信機6aを有する車輪側通信機4aを備える。車輪側通信機4aは一体として構成されてもよいが、タイヤセンサ5aおよび送受信機6aとが別構造として構成されてもよい。車輪側通信機4aは車輪3aのホイールに取り付けられてもよく、またタイヤに取り付けられてもよい。車体2側には、車輪側通信機4aとの間の通信を担う車体側通信機10aが設けられる。車輪側通信機4aおよび車体側通信機10aは、車軸からそれぞれオフセットされた所定位置に設けられる。車輪側通信機4aおよび車体側通信機10aはそれぞれアンテナを有し、両者の間で無線通信信号が授受される。通信信号には、車輪側通信機4aまたは車体側通信機10aを特定するための識別情報が付加され、受信側の通信機は、識別情報をもとに、対応する通信機からの通信信号であることを認識することができる。
【0018】
左前輪である車輪3aと同様に、右前輪である車輪3bにも、タイヤセンサ5bおよび送受信機6bを備えた車輪側通信機4bが設けられ、車体2には、車輪側通信機4bに対応する車体側通信機10bが設けられる。なお後輪についても、車輪3cには、タイヤセンサ5cおよび送受信機6cを備えた車輪側通信機4cが設けられ、車体2には車輪側通信機4cに対応する車体側通信機10cが設けられる。同様に、車輪3dには、タイヤセンサ5dおよび送受信機6dを備えた車輪側通信機4dが設けられ、車体2には車輪側通信機4dに対応する車体側通信機10dが設けられる。以下、各車輪側通信機4a、4b、4cおよび4dを総称する場合には、「車輪側通信機4」と呼び、各車体側通信機10a、10b、10cおよび10dを総称する場合には、「車体側通信機10」と呼ぶ。車体側通信機10のアンテナは、車輪3近傍の車体2側に配置されるのが好ましい。車輪3のそれぞれに車輪側通信機4を設け、また車体2においても、車輪側通信機4に対応した車体側通信機10を設けることにより、両通信機を近接させることができ、両者の間における無線信号の送受信を安定化させることができる。
【0019】
車輪3の回転速度は、車輪速センサにより検出される。具体的に、車輪速センサ9aが車輪3aの回転速度を検出し、車輪速センサ9bが車輪3bの回転速度を検出し、車輪速センサ9cが車輪3cの回転速度を検出し、車輪速センサ9dが車輪3dの回転速度を検出する。以下、各車輪速センサ9a、9b、9cおよび9dを総称する場合には、「車輪速センサ9」と呼ぶ。それぞれの車輪速センサ9の検出結果はECU20に伝達され、ECU20は、各車輪3の回転速度から車速を測定する。例えば、各車輪速センサ9の検出結果を平均化することにより、ECU20は正確な車速を求めることができる。
【0020】
本実施の形態における車両1の各構成は、車輪側通信機4と車体側通信機10との間で通信する通信信号に基づいて車輪状態を検出する車輪状態検出装置として機能する。本実施の形態において車輪状態とは、例えば車輪3の回転角度や、車輪3の変形により発生する振動などの状態を含み、また状態だけでなく振動量や回転角度量などの状態量も含む概念である。車輪3の回転角度については、操舵部材12の操作量によりドライバから要求される回転角度を操舵角センサ13で算出することができるが、本実施の形態では、操舵角センサ13による算出結果とは別に、通信信号に基づいて実際に車輪3が回転した角度量を検出する。以下では、左前輪である車輪3aの状態を検出する例について示す。なお、他の車輪3b、3cおよび3dの状態についても、以下と同様の手法を用いて検出することができる。
【0021】
図2(a)は、直進時における車体2および車輪3aの状態を平面的に示す。車体側通信機10aは車軸に沿って配置され、例えば車軸の上方に所定のオフセット量をもって設けられる。直進時、車輪3aは、車軸に対して垂直の角度をなす。
【0022】
図2(b)は、直進時における車輪3aの状態を斜視的に示す。既述のごとく、車体側通信機10aは、車軸の上方に配置される。図2(b)において、車輪3aの最上点を位相A、車軸と同一水平面上に位置する車輪3aの奥側の点を位相B、車輪3aの最下点を位相C、車軸と同一水平面上に位置する車輪3aの手前側の点を位相Dとして表現する。隣り合う位相A、位相B、位相C、位相Dの位相差は、それぞれπ/2となる。図示の例では、位相Aの地点に、車輪側通信機4aが存在している。なお前方走行時は、車輪側通信機4aが位相A、位相B、位相C、位相Dと変位し、車輪3aが一回転すると、位相Aに戻る。
【0023】
車体側通信機10aが車軸の上方に配置されているため、直進時は、位相Aの地点において、車輪側通信機4aと車体側通信機10aの間の距離は最短となる。一方、両通信機間の距離は、位相Cの地点で最長となる。なお、位相Bと位相Dの地点は同一水平面上であるため、直進時の位相Bの地点と位相Dの地点において、両通信機間の距離は等しい。この距離は、位相Aの地点における距離よりも長く、位相Cの地点における距離よりも短い。
【0024】
本実施の形態では、ECU20が、車輪側通信機4aと車体側通信機10aとの間で通信する通信信号に基づいて、車輪3aの回転にともない変動する位相に応じた両通信機間の距離を測定し、車輪角度を算出する。
【0025】
図3は、定速直進走行時における車輪3aの位相と通信時間の関係を示す。通信時間は、車輪側通信機4aと車体側通信機10aの間の距離と相関を有しており、図3に示す車輪位相と通信時間の関係は、車輪位相と両通信機間の距離としてとらえることも可能である。位相Aでは、車輪側通信機4aと車体側通信機10aとの距離が最短であり、通信時間が最小値T0を示す。一方、位相Cでは、車輪側通信機4aと車体側通信機10aとの距離が最長であり、通信時間が最大値T2を示す。位相Bおよび位相Dでは、通信時間が最小値T0と最大値T2の間の値T1を示す。車体側通信機10aは、車輪側通信機4aから送信された通信信号を受信し、ECU20が、この通信信号の通信時間を計測することにより、車輪3aの車輪角度を算出する。
【0026】
通信時間の計測は、車輪側通信機4aから車体側通信機10aへの一方向通信により送信される通信信号をもとに行われてもよく、また車体側通信機10aと車輪側通信機4aとの間での双方向通信により通信される通信信号をもとに行われてもよい。
【0027】
一方向通信の場合は、車輪側通信機4aが通信信号に送信時刻を示すタイムスタンプを記録して送信し、車体側通信機10aが通信信号を受信すると、通信信号に受信時刻を示すタイムスタンプを記録してECU20に送る。このように一方向通信の場合は、車輪側通信機4aおよび車体側通信機10aの双方が、同一のクロックを用いて動作する。ECU20は、記録された送信時刻と受信時刻とをもとに、車輪側通信機4aから車体側通信機10aまでの通信時間を計測することができる。これにより、異常振動等のない正常な状態であれば、車輪位相と通信時間との関係は、図3に示すように正弦波ないしは略正弦波の波形をもつようになる。
【0028】
双方向通信の場合は、車体側通信機10aが通信信号に送信時刻を示すタイムスタンプを記録して送信し、車輪側通信機4aが通信信号を受信すると、そのタイムスタンプを記録した通信信号を返信する。車体側通信機10aは、返信された通信信号に、受信時刻を示すタイムスタンプを記録してECU20に送る。このように双方向通信の場合は、車体側通信機10aのみが送信時刻と受信時刻のタイムスタンプを記録するため、車輪側通信機4aおよび車体側通信機10aが、同一のクロックを用いて動作する必要はない。ECU20は、記録された送信時刻と受信時刻をもとに、車輪側通信機4aと車体側通信機10aの間の通信時間を計測する。このとき、車輪側通信機4aにおける処理時間、すなわち車輪側通信機4aにおいて通信信号を受信し、返信するまでにかかる時間分を考慮して、通信時間を計測することが好ましい。具体的には、受信時刻と送信時刻との差時間から、車輪側通信機4aにおける処理時間を減算した時間を、車輪側通信機4aと車体側通信機10aの間の通信時間として計測する。これにより、車輪位相と通信時間との関係は、図3に示すように正弦波ないしは略正弦波の波形をもつようになる。
【0029】
なお、双方向通信であっても、車輪側通信機4aおよび車体側通信機10aが、同一のクロックを用いて動作する場合は、車体側通信機10aが通信信号に送信時刻を示すタイムスタンプを記録して送信し、車輪側通信機4aが通信信号を受信すると、記録された送信時刻と、車輪側通信機4aが受信した時刻とから、片道の通信時間を算出してもよい。車輪側通信機4aは、算出した通信時間を通信信号に含めて車体側通信機10aに送信し、車体側通信機10aは、その通信時間をECU20に送る。以上のような手法により、通信信号を利用して、通信時間を測定することが可能となる。
【0030】
車輪側通信機4aから送信される通信信号には、車輪3aの物理量、例えばタイヤの空気圧や温度、またタイヤの接地力などが含まれることが好ましい。これにより、ECU20は、車輪3aの物理量を取得しながら、後述する車輪3aの状態、例えば車輪角度や振動などを検出することが可能となる。
【0031】
図3に示す車輪位相と通信時間の関係は、ECU20の処理速度や、車輪側通信機4aと車体側通信機10aとの間の通信周期などに依存するサンプリング周期に応じて取得されることになる。具体的には、サンプリング周期が非常に高速であれば、車輪3aが1回転する間に多くのサンプリングを行うことができるため、サンプリング点をつなぎ合わせることで、図3に示すような正弦波形を取得することが可能となる。例えば、サンプリング周期がゼロコンマ数ミリ秒のオーダである場合には、車輪3aが1回転する間に、連続的な波形を取得できる。
【0032】
一方、サンプリング周期が高速でない場合は、車輪3aが複数回転する間にサンプリングを行い、車輪速センサ9により検出される車輪速から、サンプリング点の位相を決定し、サンプリング点をつなぎ合わせる。位相のずれを統計的に学習制御することで、複数回転時のサンプリング点を、車輪3aの1回転分の位相に変換することが可能となる。例えば、サンプリング周期が数ミリ秒以上のオーダの場合には、この学習制御が必要になると考えられる。
【0033】
ECU20は、直進走行した場合の車輪位相−通信時間特性を所定の速度ごとに比較基準として予めメモリに保持しておく。ECU20は、車体側通信機10aから通信信号に関する情報を受け取ると、車輪位相と通信時間との関係を算出する。また、ECU20は、車輪速センサ9の検出結果を受けて、車速を測定する。ECU20は、その算出結果と、測定した車速に対応する比較基準となる車輪位相−通信時間特性とを比較して、一致する場合には、車輪角度が直進方向に向いていること、すなわち車軸に対して垂直であることを検出する。
【0034】
比較基準となる車輪位相−通信時間特性は、所定の車速の領域ごとに予め設定しておくことが好ましい。車速領域を10km/h間隔で設定した場合、例えば35km/hや45km/hなどの車速領域の中心の速度において車輪位相−通信時間特性を予め設定しておいてもよい。車輪速センサ9により測定した車速が、比較基準として設定されている車速のいずれかに等しい場合、ECU20は、その速度における車輪位相−通信時間特性を用いて、車輪3aの角度を算出する。
【0035】
なお、車輪速センサ9により測定した車速が、比較基準として設定されている基準車速に等しくない場合、ECU20は、計測した位相と通信時間の関係が基準車速における関係となるように、基準車速と測定時の車速との差分を補正する。これにより、ECU20は、基準車速における車輪位相−通信時間特性を用いて、車輪3aの角度を算出できる。
【0036】
また、車輪速センサ9により測定した車速が定速ではなく、加減速している場合、ECU20は、計測した位相と通信時間の関係が基準車速における関係となるように、計測した位相と通信時間の関係に位相補正および係数補正を施す。これにより、ECU20は、基準車速における車輪位相−通信時間特性を用いて、車輪3aの角度を算出できる。
【0037】
図4(a)は、左折時における車体2および車輪3aの状態を平面的に示す。左折時には、左前輪である車輪3aの位相Bの地点が車体2から離れる方向に移動し、位相Dの地点は車体2に近づく方向に移動する。そのため、位相Bの地点と車体側通信機10aとの距離は、直進時よりも長くなり、また位相Dの地点と車体側通信機10aとの距離は、直進時よりも短くなる。
【0038】
図4(b)は、左折時における車輪3aの状態を斜視的に示す。図2(b)に示す直進時の車輪3aの状態と比較すると、位相Aおよび位相Cの地点における車輪側通信機4aと車体側通信機10aとの間の距離は、変化しない。一方、位相Bの地点における両通信機間の距離は長くなり、また位相Dの地点における両通信機間の距離は短くなっている。
【0039】
図5は、左折時における車輪3aの位相と通信時間の関係を実線で示す。なお点線は、比較のために、図3に示した直進時の車輪3aの位相と通信時間の関係を示す。位相Aでは、左折時と直進時の両通信機間の通信時間は等しくT0を示し、位相Cでは、左折時と直進時の両通信機間の通信時間は等しくT2を示す。一方、位相Bでは、左折時の通信時間が直進時の通信時間T1よりも長くなり、位相Dでは、左折時の通信時間が直進時の通信時間T1よりも短くなる。そのため、左折時には、車輪位相と通信時間との関係が、直進時の正弦波の波形にのらず、位相が進むとともに、振幅が大きくなった波形を示すことになる。
【0040】
ECU20は、基準となる車輪位相−通信時間特性をもとに、計測した車輪位相と通信時間の関係の位相変化および振幅変化を検出して、車輪角度を算出する。基準特性からのずれ、すなわち基準特性からの位相変化量および振幅変化量は、例えば車輪角度と対応付けて予めマップ化され、ECU20のメモリに記録されていてもよい。ECU20は、位相変化量および振幅変化量をもとにマップを参照して、車輪角度を算出する。通信時間から通信機間の距離を測定し、車輪側通信機4aの車軸に対する位相と、測定した通信機間の距離をもとに、車輪角度を算出してもよい。この場合、車輪位相と、通信機間の距離との対応を示したマップを予め用意し、このマップを用いて車輪角度を算出してもよい。なお、マップを用いずに、通信機間の距離と車輪位相の関係から、車輪角度を直接演算により求めてもよい。
【0041】
図6(a)は、右折時における車体2および車輪3aの状態を平面的に示す。右折時には、左前輪である車輪3aの位相Dの地点が車体2から離れる方向に移動し、位相Bの地点は車体2に近づく方向に移動する。そのため、位相Dの地点と車体側通信機10aとの距離は、直進時よりも長くなり、また位相Bの地点と車体側通信機10aとの距離は、直進時よりも短くなる。
【0042】
図6(b)は、右折時における車輪3aの状態を斜視的に示す。図2(b)に示す直進時の車輪3aの状態と比較すると、位相Aおよび位相Cの地点における車輪側通信機4aと車体側通信機10aとの間の距離は、変化しない。一方、位相Dの地点における両通信機間の距離は長くなり、また位相Bの地点における両通信機間の距離は短くなっている。
【0043】
図7は、右折時における車輪3aの位相と通信時間の関係を実線で示す。なお点線は、比較のために、図3に示した直進時の車輪3aの位相と通信時間の関係を示す。位相Aでは、右折時と直進時の両通信機間の通信時間は等しくT0を示し、位相Cでは、右折時と直進時の両通信機間の通信時間は等しくT2を示す。一方、位相Dでは、右折時の通信時間が直進時の通信時間T1よりも長くなり、位相Bでは、右折時の通信時間が直進時の通信時間T1よりも短くなる。そのため、右折時には、車輪位相と通信時間との関係が、直進時の正弦波の波形にのらず、位相が遅れるとともに、振幅が大きくなった波形を示すことになる。ECU20は、基準となる車輪位相−通信時間特性をもとに、計測した車輪位相と通信時間の関係の位相変化および振幅変化を検出して、車輪角度を算出する。通信時間から通信機間の距離を測定し、車輪側通信機4aの車軸に対する位相と、測定した通信機間の距離をもとに、車輪角度を算出してもよい。また、マップを用いずに、通信機間の距離と車輪位相の関係から、車輪角度を直接演算により求めてもよい。
【0044】
図8は、上記した車輪角度を算出するフローチャートを示す。まずECU20が、車輪側通信機4aと車体側通信機10aとの間の通信信号の通信時間を計測し、車輪位相と通信時間の関係を求める(S10)。またECU20は車輪速センサ9の検出結果をもとに、車速を測定する(S12)。測定した車速が、車輪位相−通信時間特性として用意されている所定の基準車速と異なる場合、ECU20は、基準車速との差分を吸収するべく、求めた車輪位相と通信時間の関係を補正する(S14)。なお測定した車速が、車輪位相−通信時間特性として用意されている基準車速と等しい場合には、ECU20は、S14のステップを省略する。車速の差分を補正した後、ECU20は、車輪位相−通信時間特性を参照して(S16)、補正した車輪位相と通信時間の関係と比較し、車輪角度を算出する(S18)。
【0045】
以上は、車輪状態検出装置が、車輪側通信機4aと車体側通信機10aとの間で通信される通信信号に基づいて、車輪の車輪角度を算出する方法について説明した。本実施の形態における車輪状態検出装置は、両通信機間で通信される通信信号を利用して、さらに別の車輪状態、具体的には車輪3aの異常状態を検出することができる。車輪3aの異常状態は、ホイールを支持するベアリングやホイール自体の変形、サスペンションによる車輪3aのアライメントのずれや、タイヤの偏磨耗などにより発生する。車輪状態検出装置は、これらを要因とする異常状態を総合的に検出する。
【0046】
図9(a)は、異常振動が生じている場合の車輪3aの位相と通信時間の関係を示す。既述のごとく、正常な状態であれば車輪位相と通信時間との関係は、正弦波ないしは略正弦波の波形で表現されるが、この例は、車輪位相と通信時間の関係を示す波形に、異常振動による高周波ノイズがのっている状態を示している。
【0047】
ECU20は、図9(a)に示す波形の周波数成分に基づいて、車輪3aの異常状態を検出する。具体的に、ECU20は、図9(a)に示す波形にハイパスフィルタ処理を施して、車輪位相と通信信号の通信時間との関係を示す波形から高周波成分であるノイズ成分を抽出し、その振幅が所定の閾値を超えた場合に、異常振動と判定する。なお、縁石に乗り上げたときなどの偶発的な振動を除外するために、車輪位相と通信時間との関係を示す波形は、所定の期間におけるサンプリング結果を平均化して生成したものを用いることが好ましい。これにより、ECU20は、定常的に生じている振動を検出して、検出した振動が、車輪3a回りの変形などを原因とする異常振動であることを判定することができる。
【0048】
図9(b)は、アライメントにずれが生じている場合の車輪3aの位相と通信時間の関係を示す。この場合、車輪位相と通信時間との関係が、正弦波ないしは略正弦波の波形で表現されるが、正常な状態と比較して、波形が上下にオフセットされた状態となる。アライメントのずれにより、車輪3aと車体2とが正常な状態よりも近接している場合には、全体として波形が下がることになり、逆に離れている場合には、全体として波形が上がることになる。これは、車輪側通信機4aと車体側通信機10aとの間の距離に応じて通信時間が変動することに起因する。ECU20は、正常な状態における車輪位相−通信時間特性による基準波形を参照することで、計測した車輪位相と通信時間との関係を示す波形のオフセット量を算出し、アライメントのずれを検出する。すなわちECU20は、所定の位相における通信時間を比較することにより、車輪3aと車体2との位置関係を検出することが可能である。
【0049】
図10は、上記した異常状態を判定するフローチャートを示す。まずECU20が、車輪側通信機4aと車体側通信機10aとの間の通信信号の通信時間を計測し、車輪位相と通信時間の関係を求める(S30)。車輪位相と通信時間の関係を示す波形から高周波成分を抽出し、高周波成分の振幅が所定値以上であるかを判定する(S32)。所定値以上である場合(S32のY)、ECU20は、異常振動の発生を判定する(S42)。異常を判定すると、ECU20は、ドライバに対してインジケータなどを介してその旨を告知してもよい。一方、所定値以下の場合(S32のN)、ECU20は車輪速センサ9の検出結果をもとに、車速を測定する(S34)。測定した車速が、車輪位相−通信時間特性として用意されている所定の基準車速と異なる場合、ECU20は、基準車速との差分を吸収するべく、求めた車輪位相と通信時間の関係を補正する(S36)。なお測定した車速が、車輪位相−通信時間特性として用意されている基準車速と等しい場合には、ECU20は、S36のステップを省略する。車速の差分を補正した後、ECU20は、車輪位相−通信時間特性を参照して(S38)、補正した車輪位相と通信時間の関係を示す波形と比較し、補正した波形が基準特性の波形から上下方向に変位しているかを調べる(S40)。補正した波形が、基準特性の波形から変位している場合、変位量が所定値以上であれば(S40のY)、車輪3のアライメントにずれが生じていることを判定する(S42)。一方、変位量が所定値未満である場合は(S40のN)、車輪3aに異常がないことを判定し、フローを終了する。
【0050】
以上、実施の形態をもとに本発明を説明した。なお本発明はこの実施の形態に限定されることなく、そのさまざまな変形例もまた、本発明の態様として有効である。既述のごとく、実施の形態では車輪3aの状態量を検出する場合を例としたが、他の車輪3b、3cおよび3dの状態量についても、上記した手法を用いて検出することが可能である。
【0051】
例えば、ECU20が、操舵角センサ13による検出結果と、車輪状態検出装置が通信信号を利用して算出した車輪角度の算出結果とを比較することで、車輪3の異常状態を判定することも可能である。操舵角センサ13による検出結果と車輪状態検出装置による車輪角度の算出結果とが一致している場合は、ECU20は、車輪3が正常であることを判定する。一方、一致しない場合は、車輪3が異常状態にあることを判定する。このように、車輪状態検出装置は、操舵角センサ13の検出結果と、通信信号を用いて算出した車輪角度の算出結果の相関から、車輪3の異常状態を判定することも可能である。
【0052】
また実施の形態では、バイワイヤ方式により独立に車輪角度すなわち舵角を制御する例を説明したが、メカニカル方式で車輪角度を制御する場合であっても、当然に本発明を適用することは可能である。なお、メカニカル方式の場合、コラムシャフトと車輪とが機械的なリンク機構を介して連結されることになるが、通信信号を利用して車輪角度を算出することによって、操舵角センサ13を不要とすることができるため、ギヤボックス等のレイアウト設計を容易にすることができる。
【0053】
【発明の効果】
本発明によると、車輪に設けた通信機を利用して車輪状態を検出する車輪状態検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態に係る車両の構成を示す図である。
【図2】(a)は、直進時における車体および車輪の状態を平面的に示す図であり、(b)は、直進時における車輪の状態を斜視的に示す図である。
【図3】直進時における車輪の位相と通信時間の関係を示す図である。
【図4】(a)は、左折時における車体および車輪の状態を平面的に示す図であり、(b)は、左折時における車輪の状態を斜視的に示す図である。
【図5】左折時における車輪の位相と通信時間の関係を示す図である。
【図6】(a)は、右折時における車体および車輪の状態を平面的に示す図であり、(b)は、右折時における車輪の状態を斜視的に示す図である。
【図7】右折時における車輪の位相と通信時間の関係を示す図である。
【図8】車輪角度を算出するフローチャートである。
【図9】(a)は、異常振動が生じている場合の車輪の位相と通信時間の関係を示す図であり、(b)は、アライメントにずれが生じている場合の車輪の位相と通信時間の関係を示す図である。
【図10】異常状態を判定するフローチャートを示す図である。
【符号の説明】
1・・・車両、2・・・車体、3・・・車輪、4・・・車輪側通信機、5・・・タイヤセンサ、6・・・送受信機、8・・・アクチュエータ、9・・・車輪速センサ、10・・・車体側通信機、12・・・操舵部材、13・・・操舵角センサ、14・・・コラムシャフト、20・・・ECU。
【発明の属する技術分野】
本発明は、車輪の状態を検出する装置に関し、特に車輪に設けた通信機を用いて車輪の状態を検出する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車輪角度、すなわち車輪の舵角を検知するセンサとして、ステアリングラックバーの表面を加熱して電磁気的特性が長手方向に漸次変化する信号パターンを形成し、これを非接触の信号検出器で読み取ることにより、車輪角度を検知する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特許第2504339号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1に開示される従来の車輪角度センサは、ギヤボックスに配置されるため、ギヤボックスのレイアウトに若干の制約が生じることがある。また従来の車輪角度センサは、各車輪を独立して操舵する機構を備える車両に対して適用することができない。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、車輪に通信機を設け、通信機からの通信信号を利用して車輪状態を検出する新規な技術を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明のある態様は、車体に操舵可能に設けた車輪と、車輪に設けた車輪側通信機と、車体側に設けた車体側通信機とを備え、両通信機間で通信する通信信号に基づいて車輪状態を検出する車輪状態検出装置に関する。この態様の車輪状態検出装置は、車輪側通信機から送信され車体側通信機が受信する通信信号に基づいて、車輪の車輪角度を算出する舵角検出手段を備える。例えば、舵角検出手段は、通信信号の通信時間や、通信信号の出力、通信信号の受信周期などに基づいて、車輪角度を算出してもよい。舵角検出手段の機能は、電子制御装置により実現されてもよい。
【0007】
この車輪状態検出装置によると、ギヤボックス等のレイアウト上の制約を受けることなく、車輪と車体間の通信信号に基づいて車輪角度を算出できる。また、例えばバイワイヤ方式により各車輪が独立に操舵される場合であっても、各車輪が通信機を備えることによって、車輪ごとの車輪角度を算出することが可能となる。また将来の動向として、海外または日本国内において、タイヤ空気圧が所定値を下回った場合は、その旨をドライバに告知する義務が法制化されることが予想されるが、その法規制に対応するべく、車輪にセンサ機能を有する通信機を搭載させる場合には、その通信機を有効に活用して、車輪角度を算出することが可能となる。
【0008】
舵角検出手段は、車輪側通信機が、車体側通信機から車輪側通信機に送信した通信信号に応答して車体側通信機に返信した通信信号に基づいて車輪角度を算出してもよい。このとき、車体側通信機は、通信信号に、該通信信号に関する情報を付与して車輪側通信機に送信してもよい。車輪側通信機は、返信する通信信号に、受信した通信信号に付与されている情報を含めることが好ましい。通信信号に関する情報とは、例えば通信信号の送信時刻などを含む。舵角検出手段は、付与された情報をもとに通信時間を精度よく検出し、車輪角度の算出精度を上げることができる。
【0009】
車輪側通信機はタイヤセンサを備え、通信信号に、タイヤセンサで検出したタイヤ空気圧、温度またはタイヤ接地力の情報を含ませて車体側通信機に送信してもよい。これにより車体側では、通信信号を利用して車輪角度を検出できるとともに、通信信号に含まれる情報を有効利用することが可能となる。車体側通信機のアンテナは、車輪近傍の車体側に配置されることが好ましい。車輪近傍に配置することにより、車輪と車体間での通信を安定化することができ、また電波出力を低く設定できることから、他の車輪の通信機に与える影響を低減することができる。
【0010】
この態様の車輪状態検出装置は、操舵部材による操舵情報を検出する操舵角センサと、操舵角センサの検出結果と舵角検出手段の算出結果の相関から、車輪の異常状態を判定する判定手段をさらに備えてもよい。これにより、ドライバによる操舵部材の操舵情報と、通信信号を用いて算出した車輪角度の相関から車輪の異常状態を判定することができる。例えば、ドライバの直進操作中に車輪角度が変化すれば、判定手段が車輪の異常を判定する。判定手段の機能は、電子制御装置により実現されてもよい。
【0011】
本発明の別の態様は、車体に操舵可能に設けた車輪と、車輪に設けた車輪側通信機と、車体側に設けた車体側通信機とを備え、両通信機間で通信する通信信号に基づいて車輪状態を検出する車輪状態検出装置に関する。この態様の車輪状態検出装置は、車輪側通信機から送信され車体側通信機が受信する通信信号に基づいて、車輪の異常状態を判定する判定手段を備える。
【0012】
この車輪状態検出装置によると、特別な振動センサなどを設ける必要なく、車輪と車体間の通信信号に基づいて車輪の異常状態を判定できる。また、各車輪が通信機を備えることによって、車輪ごとの異常判定を行うことも可能である。また上記したように、ドライバへの告知義務が法制化され、車輪に通信機が搭載される場合には、その通信機を有効に活用して、異常判定を行うことが可能となる。
【0013】
判定手段は、通信信号の通信時間と車輪位相の関係を示す波形を基準波形と比較し、その比較結果に応じて車輪の異常状態を判定してもよい。また、判定手段は、通信信号の通信時間と車輪位相の関係を示す波形の周波数成分に基づいて、車輪の異常状態を判定してもよく、特に高周波成分に基づいて車輪の異常振動を判定してもよい。
【0014】
本発明のさらに別の態様は、車体に操舵可能に設けた車輪と、車輪の車軸からそれぞれオフセットされた車輪側の所定位置と車体側の所定位置との距離を測定する距離測定手段と、車輪側の所定位置の車軸に対する位相と測定した距離とに基づいて、車輪の車輪角度を算出する舵角検出手段とを備える車輪状態検出装置に関する。この車輪状態検出装置によると、ギヤボックス等のレイアウト上の制約を受けることなく、車輪側の所定位置と車体側の所定位置との距離と、車輪側の所定位置の車軸に対する位相に基づいて、車輪角度を算出できる。車輪側および車体側の所定位置同士の間の距離は、それぞれの位置に通信機を設け、通信機間で通信する通信信号をもとに測定されてもよい。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施の形態に係る車両1の構成を示す。車両1は車体2と、左前輪である車輪3a、右前輪である車輪3b、左後輪である車輪3cおよび右後輪である車輪3d(以下、適宜「車輪3」と総称する)を備える。車輪3はホイールとゴムタイヤから構成される。それぞれの車輪3は車体2に操舵可能に設けられ、バイワイヤ方式により独立に車輪角度すなわち舵角を制御される。車輪角度は、例えば直進方向を基準として制御されてよい。バイワイヤ方式の操舵機構においては、ドライバがハンドルなどの操舵部材12を操作すると、操舵部材12に連結するコラムシャフト14が回転し、操舵角センサ13が、コラムシャフト14の回転量から各車輪3の車輪角度を算出する。操舵角センサ13の算出結果は、電子制御装置(以下、電子制御装置を「ECU」と表記する)20に伝達され、ECU20が、各車輪3の車輪角度を決定する。ECU20は、CPU、RAM、ROMを備えて構成される。ECU20は、それぞれの車輪3に外力を加えるアクチュエータを駆動し、車輪角度を制御する。この制御では、車輪3aに対してはアクチュエータ8a、車輪3bに対してはアクチュエータ8b、車輪3cに対してはアクチュエータ8c、車輪3dに対してはアクチュエータ8dがそれぞれ対応する。
【0016】
本実施の形態において、車輪3は、車輪3の物理量を検出する機能と、検出した物理量などを車体2側に通信する機能とを備える。車輪3の物理量は、例えばタイヤの空気圧や温度、またタイヤの接地力などを含む。車輪3の通信機能に対応して、車体2は、車輪3に対して通信信号を送信し、また車輪3から送信される通信信号を受信する通信機能を備える。
【0017】
具体的に車輪3aは、物理量を検出するタイヤセンサ5a、および車体2との間で通信を行う送受信機6aを有する車輪側通信機4aを備える。車輪側通信機4aは一体として構成されてもよいが、タイヤセンサ5aおよび送受信機6aとが別構造として構成されてもよい。車輪側通信機4aは車輪3aのホイールに取り付けられてもよく、またタイヤに取り付けられてもよい。車体2側には、車輪側通信機4aとの間の通信を担う車体側通信機10aが設けられる。車輪側通信機4aおよび車体側通信機10aは、車軸からそれぞれオフセットされた所定位置に設けられる。車輪側通信機4aおよび車体側通信機10aはそれぞれアンテナを有し、両者の間で無線通信信号が授受される。通信信号には、車輪側通信機4aまたは車体側通信機10aを特定するための識別情報が付加され、受信側の通信機は、識別情報をもとに、対応する通信機からの通信信号であることを認識することができる。
【0018】
左前輪である車輪3aと同様に、右前輪である車輪3bにも、タイヤセンサ5bおよび送受信機6bを備えた車輪側通信機4bが設けられ、車体2には、車輪側通信機4bに対応する車体側通信機10bが設けられる。なお後輪についても、車輪3cには、タイヤセンサ5cおよび送受信機6cを備えた車輪側通信機4cが設けられ、車体2には車輪側通信機4cに対応する車体側通信機10cが設けられる。同様に、車輪3dには、タイヤセンサ5dおよび送受信機6dを備えた車輪側通信機4dが設けられ、車体2には車輪側通信機4dに対応する車体側通信機10dが設けられる。以下、各車輪側通信機4a、4b、4cおよび4dを総称する場合には、「車輪側通信機4」と呼び、各車体側通信機10a、10b、10cおよび10dを総称する場合には、「車体側通信機10」と呼ぶ。車体側通信機10のアンテナは、車輪3近傍の車体2側に配置されるのが好ましい。車輪3のそれぞれに車輪側通信機4を設け、また車体2においても、車輪側通信機4に対応した車体側通信機10を設けることにより、両通信機を近接させることができ、両者の間における無線信号の送受信を安定化させることができる。
【0019】
車輪3の回転速度は、車輪速センサにより検出される。具体的に、車輪速センサ9aが車輪3aの回転速度を検出し、車輪速センサ9bが車輪3bの回転速度を検出し、車輪速センサ9cが車輪3cの回転速度を検出し、車輪速センサ9dが車輪3dの回転速度を検出する。以下、各車輪速センサ9a、9b、9cおよび9dを総称する場合には、「車輪速センサ9」と呼ぶ。それぞれの車輪速センサ9の検出結果はECU20に伝達され、ECU20は、各車輪3の回転速度から車速を測定する。例えば、各車輪速センサ9の検出結果を平均化することにより、ECU20は正確な車速を求めることができる。
【0020】
本実施の形態における車両1の各構成は、車輪側通信機4と車体側通信機10との間で通信する通信信号に基づいて車輪状態を検出する車輪状態検出装置として機能する。本実施の形態において車輪状態とは、例えば車輪3の回転角度や、車輪3の変形により発生する振動などの状態を含み、また状態だけでなく振動量や回転角度量などの状態量も含む概念である。車輪3の回転角度については、操舵部材12の操作量によりドライバから要求される回転角度を操舵角センサ13で算出することができるが、本実施の形態では、操舵角センサ13による算出結果とは別に、通信信号に基づいて実際に車輪3が回転した角度量を検出する。以下では、左前輪である車輪3aの状態を検出する例について示す。なお、他の車輪3b、3cおよび3dの状態についても、以下と同様の手法を用いて検出することができる。
【0021】
図2(a)は、直進時における車体2および車輪3aの状態を平面的に示す。車体側通信機10aは車軸に沿って配置され、例えば車軸の上方に所定のオフセット量をもって設けられる。直進時、車輪3aは、車軸に対して垂直の角度をなす。
【0022】
図2(b)は、直進時における車輪3aの状態を斜視的に示す。既述のごとく、車体側通信機10aは、車軸の上方に配置される。図2(b)において、車輪3aの最上点を位相A、車軸と同一水平面上に位置する車輪3aの奥側の点を位相B、車輪3aの最下点を位相C、車軸と同一水平面上に位置する車輪3aの手前側の点を位相Dとして表現する。隣り合う位相A、位相B、位相C、位相Dの位相差は、それぞれπ/2となる。図示の例では、位相Aの地点に、車輪側通信機4aが存在している。なお前方走行時は、車輪側通信機4aが位相A、位相B、位相C、位相Dと変位し、車輪3aが一回転すると、位相Aに戻る。
【0023】
車体側通信機10aが車軸の上方に配置されているため、直進時は、位相Aの地点において、車輪側通信機4aと車体側通信機10aの間の距離は最短となる。一方、両通信機間の距離は、位相Cの地点で最長となる。なお、位相Bと位相Dの地点は同一水平面上であるため、直進時の位相Bの地点と位相Dの地点において、両通信機間の距離は等しい。この距離は、位相Aの地点における距離よりも長く、位相Cの地点における距離よりも短い。
【0024】
本実施の形態では、ECU20が、車輪側通信機4aと車体側通信機10aとの間で通信する通信信号に基づいて、車輪3aの回転にともない変動する位相に応じた両通信機間の距離を測定し、車輪角度を算出する。
【0025】
図3は、定速直進走行時における車輪3aの位相と通信時間の関係を示す。通信時間は、車輪側通信機4aと車体側通信機10aの間の距離と相関を有しており、図3に示す車輪位相と通信時間の関係は、車輪位相と両通信機間の距離としてとらえることも可能である。位相Aでは、車輪側通信機4aと車体側通信機10aとの距離が最短であり、通信時間が最小値T0を示す。一方、位相Cでは、車輪側通信機4aと車体側通信機10aとの距離が最長であり、通信時間が最大値T2を示す。位相Bおよび位相Dでは、通信時間が最小値T0と最大値T2の間の値T1を示す。車体側通信機10aは、車輪側通信機4aから送信された通信信号を受信し、ECU20が、この通信信号の通信時間を計測することにより、車輪3aの車輪角度を算出する。
【0026】
通信時間の計測は、車輪側通信機4aから車体側通信機10aへの一方向通信により送信される通信信号をもとに行われてもよく、また車体側通信機10aと車輪側通信機4aとの間での双方向通信により通信される通信信号をもとに行われてもよい。
【0027】
一方向通信の場合は、車輪側通信機4aが通信信号に送信時刻を示すタイムスタンプを記録して送信し、車体側通信機10aが通信信号を受信すると、通信信号に受信時刻を示すタイムスタンプを記録してECU20に送る。このように一方向通信の場合は、車輪側通信機4aおよび車体側通信機10aの双方が、同一のクロックを用いて動作する。ECU20は、記録された送信時刻と受信時刻とをもとに、車輪側通信機4aから車体側通信機10aまでの通信時間を計測することができる。これにより、異常振動等のない正常な状態であれば、車輪位相と通信時間との関係は、図3に示すように正弦波ないしは略正弦波の波形をもつようになる。
【0028】
双方向通信の場合は、車体側通信機10aが通信信号に送信時刻を示すタイムスタンプを記録して送信し、車輪側通信機4aが通信信号を受信すると、そのタイムスタンプを記録した通信信号を返信する。車体側通信機10aは、返信された通信信号に、受信時刻を示すタイムスタンプを記録してECU20に送る。このように双方向通信の場合は、車体側通信機10aのみが送信時刻と受信時刻のタイムスタンプを記録するため、車輪側通信機4aおよび車体側通信機10aが、同一のクロックを用いて動作する必要はない。ECU20は、記録された送信時刻と受信時刻をもとに、車輪側通信機4aと車体側通信機10aの間の通信時間を計測する。このとき、車輪側通信機4aにおける処理時間、すなわち車輪側通信機4aにおいて通信信号を受信し、返信するまでにかかる時間分を考慮して、通信時間を計測することが好ましい。具体的には、受信時刻と送信時刻との差時間から、車輪側通信機4aにおける処理時間を減算した時間を、車輪側通信機4aと車体側通信機10aの間の通信時間として計測する。これにより、車輪位相と通信時間との関係は、図3に示すように正弦波ないしは略正弦波の波形をもつようになる。
【0029】
なお、双方向通信であっても、車輪側通信機4aおよび車体側通信機10aが、同一のクロックを用いて動作する場合は、車体側通信機10aが通信信号に送信時刻を示すタイムスタンプを記録して送信し、車輪側通信機4aが通信信号を受信すると、記録された送信時刻と、車輪側通信機4aが受信した時刻とから、片道の通信時間を算出してもよい。車輪側通信機4aは、算出した通信時間を通信信号に含めて車体側通信機10aに送信し、車体側通信機10aは、その通信時間をECU20に送る。以上のような手法により、通信信号を利用して、通信時間を測定することが可能となる。
【0030】
車輪側通信機4aから送信される通信信号には、車輪3aの物理量、例えばタイヤの空気圧や温度、またタイヤの接地力などが含まれることが好ましい。これにより、ECU20は、車輪3aの物理量を取得しながら、後述する車輪3aの状態、例えば車輪角度や振動などを検出することが可能となる。
【0031】
図3に示す車輪位相と通信時間の関係は、ECU20の処理速度や、車輪側通信機4aと車体側通信機10aとの間の通信周期などに依存するサンプリング周期に応じて取得されることになる。具体的には、サンプリング周期が非常に高速であれば、車輪3aが1回転する間に多くのサンプリングを行うことができるため、サンプリング点をつなぎ合わせることで、図3に示すような正弦波形を取得することが可能となる。例えば、サンプリング周期がゼロコンマ数ミリ秒のオーダである場合には、車輪3aが1回転する間に、連続的な波形を取得できる。
【0032】
一方、サンプリング周期が高速でない場合は、車輪3aが複数回転する間にサンプリングを行い、車輪速センサ9により検出される車輪速から、サンプリング点の位相を決定し、サンプリング点をつなぎ合わせる。位相のずれを統計的に学習制御することで、複数回転時のサンプリング点を、車輪3aの1回転分の位相に変換することが可能となる。例えば、サンプリング周期が数ミリ秒以上のオーダの場合には、この学習制御が必要になると考えられる。
【0033】
ECU20は、直進走行した場合の車輪位相−通信時間特性を所定の速度ごとに比較基準として予めメモリに保持しておく。ECU20は、車体側通信機10aから通信信号に関する情報を受け取ると、車輪位相と通信時間との関係を算出する。また、ECU20は、車輪速センサ9の検出結果を受けて、車速を測定する。ECU20は、その算出結果と、測定した車速に対応する比較基準となる車輪位相−通信時間特性とを比較して、一致する場合には、車輪角度が直進方向に向いていること、すなわち車軸に対して垂直であることを検出する。
【0034】
比較基準となる車輪位相−通信時間特性は、所定の車速の領域ごとに予め設定しておくことが好ましい。車速領域を10km/h間隔で設定した場合、例えば35km/hや45km/hなどの車速領域の中心の速度において車輪位相−通信時間特性を予め設定しておいてもよい。車輪速センサ9により測定した車速が、比較基準として設定されている車速のいずれかに等しい場合、ECU20は、その速度における車輪位相−通信時間特性を用いて、車輪3aの角度を算出する。
【0035】
なお、車輪速センサ9により測定した車速が、比較基準として設定されている基準車速に等しくない場合、ECU20は、計測した位相と通信時間の関係が基準車速における関係となるように、基準車速と測定時の車速との差分を補正する。これにより、ECU20は、基準車速における車輪位相−通信時間特性を用いて、車輪3aの角度を算出できる。
【0036】
また、車輪速センサ9により測定した車速が定速ではなく、加減速している場合、ECU20は、計測した位相と通信時間の関係が基準車速における関係となるように、計測した位相と通信時間の関係に位相補正および係数補正を施す。これにより、ECU20は、基準車速における車輪位相−通信時間特性を用いて、車輪3aの角度を算出できる。
【0037】
図4(a)は、左折時における車体2および車輪3aの状態を平面的に示す。左折時には、左前輪である車輪3aの位相Bの地点が車体2から離れる方向に移動し、位相Dの地点は車体2に近づく方向に移動する。そのため、位相Bの地点と車体側通信機10aとの距離は、直進時よりも長くなり、また位相Dの地点と車体側通信機10aとの距離は、直進時よりも短くなる。
【0038】
図4(b)は、左折時における車輪3aの状態を斜視的に示す。図2(b)に示す直進時の車輪3aの状態と比較すると、位相Aおよび位相Cの地点における車輪側通信機4aと車体側通信機10aとの間の距離は、変化しない。一方、位相Bの地点における両通信機間の距離は長くなり、また位相Dの地点における両通信機間の距離は短くなっている。
【0039】
図5は、左折時における車輪3aの位相と通信時間の関係を実線で示す。なお点線は、比較のために、図3に示した直進時の車輪3aの位相と通信時間の関係を示す。位相Aでは、左折時と直進時の両通信機間の通信時間は等しくT0を示し、位相Cでは、左折時と直進時の両通信機間の通信時間は等しくT2を示す。一方、位相Bでは、左折時の通信時間が直進時の通信時間T1よりも長くなり、位相Dでは、左折時の通信時間が直進時の通信時間T1よりも短くなる。そのため、左折時には、車輪位相と通信時間との関係が、直進時の正弦波の波形にのらず、位相が進むとともに、振幅が大きくなった波形を示すことになる。
【0040】
ECU20は、基準となる車輪位相−通信時間特性をもとに、計測した車輪位相と通信時間の関係の位相変化および振幅変化を検出して、車輪角度を算出する。基準特性からのずれ、すなわち基準特性からの位相変化量および振幅変化量は、例えば車輪角度と対応付けて予めマップ化され、ECU20のメモリに記録されていてもよい。ECU20は、位相変化量および振幅変化量をもとにマップを参照して、車輪角度を算出する。通信時間から通信機間の距離を測定し、車輪側通信機4aの車軸に対する位相と、測定した通信機間の距離をもとに、車輪角度を算出してもよい。この場合、車輪位相と、通信機間の距離との対応を示したマップを予め用意し、このマップを用いて車輪角度を算出してもよい。なお、マップを用いずに、通信機間の距離と車輪位相の関係から、車輪角度を直接演算により求めてもよい。
【0041】
図6(a)は、右折時における車体2および車輪3aの状態を平面的に示す。右折時には、左前輪である車輪3aの位相Dの地点が車体2から離れる方向に移動し、位相Bの地点は車体2に近づく方向に移動する。そのため、位相Dの地点と車体側通信機10aとの距離は、直進時よりも長くなり、また位相Bの地点と車体側通信機10aとの距離は、直進時よりも短くなる。
【0042】
図6(b)は、右折時における車輪3aの状態を斜視的に示す。図2(b)に示す直進時の車輪3aの状態と比較すると、位相Aおよび位相Cの地点における車輪側通信機4aと車体側通信機10aとの間の距離は、変化しない。一方、位相Dの地点における両通信機間の距離は長くなり、また位相Bの地点における両通信機間の距離は短くなっている。
【0043】
図7は、右折時における車輪3aの位相と通信時間の関係を実線で示す。なお点線は、比較のために、図3に示した直進時の車輪3aの位相と通信時間の関係を示す。位相Aでは、右折時と直進時の両通信機間の通信時間は等しくT0を示し、位相Cでは、右折時と直進時の両通信機間の通信時間は等しくT2を示す。一方、位相Dでは、右折時の通信時間が直進時の通信時間T1よりも長くなり、位相Bでは、右折時の通信時間が直進時の通信時間T1よりも短くなる。そのため、右折時には、車輪位相と通信時間との関係が、直進時の正弦波の波形にのらず、位相が遅れるとともに、振幅が大きくなった波形を示すことになる。ECU20は、基準となる車輪位相−通信時間特性をもとに、計測した車輪位相と通信時間の関係の位相変化および振幅変化を検出して、車輪角度を算出する。通信時間から通信機間の距離を測定し、車輪側通信機4aの車軸に対する位相と、測定した通信機間の距離をもとに、車輪角度を算出してもよい。また、マップを用いずに、通信機間の距離と車輪位相の関係から、車輪角度を直接演算により求めてもよい。
【0044】
図8は、上記した車輪角度を算出するフローチャートを示す。まずECU20が、車輪側通信機4aと車体側通信機10aとの間の通信信号の通信時間を計測し、車輪位相と通信時間の関係を求める(S10)。またECU20は車輪速センサ9の検出結果をもとに、車速を測定する(S12)。測定した車速が、車輪位相−通信時間特性として用意されている所定の基準車速と異なる場合、ECU20は、基準車速との差分を吸収するべく、求めた車輪位相と通信時間の関係を補正する(S14)。なお測定した車速が、車輪位相−通信時間特性として用意されている基準車速と等しい場合には、ECU20は、S14のステップを省略する。車速の差分を補正した後、ECU20は、車輪位相−通信時間特性を参照して(S16)、補正した車輪位相と通信時間の関係と比較し、車輪角度を算出する(S18)。
【0045】
以上は、車輪状態検出装置が、車輪側通信機4aと車体側通信機10aとの間で通信される通信信号に基づいて、車輪の車輪角度を算出する方法について説明した。本実施の形態における車輪状態検出装置は、両通信機間で通信される通信信号を利用して、さらに別の車輪状態、具体的には車輪3aの異常状態を検出することができる。車輪3aの異常状態は、ホイールを支持するベアリングやホイール自体の変形、サスペンションによる車輪3aのアライメントのずれや、タイヤの偏磨耗などにより発生する。車輪状態検出装置は、これらを要因とする異常状態を総合的に検出する。
【0046】
図9(a)は、異常振動が生じている場合の車輪3aの位相と通信時間の関係を示す。既述のごとく、正常な状態であれば車輪位相と通信時間との関係は、正弦波ないしは略正弦波の波形で表現されるが、この例は、車輪位相と通信時間の関係を示す波形に、異常振動による高周波ノイズがのっている状態を示している。
【0047】
ECU20は、図9(a)に示す波形の周波数成分に基づいて、車輪3aの異常状態を検出する。具体的に、ECU20は、図9(a)に示す波形にハイパスフィルタ処理を施して、車輪位相と通信信号の通信時間との関係を示す波形から高周波成分であるノイズ成分を抽出し、その振幅が所定の閾値を超えた場合に、異常振動と判定する。なお、縁石に乗り上げたときなどの偶発的な振動を除外するために、車輪位相と通信時間との関係を示す波形は、所定の期間におけるサンプリング結果を平均化して生成したものを用いることが好ましい。これにより、ECU20は、定常的に生じている振動を検出して、検出した振動が、車輪3a回りの変形などを原因とする異常振動であることを判定することができる。
【0048】
図9(b)は、アライメントにずれが生じている場合の車輪3aの位相と通信時間の関係を示す。この場合、車輪位相と通信時間との関係が、正弦波ないしは略正弦波の波形で表現されるが、正常な状態と比較して、波形が上下にオフセットされた状態となる。アライメントのずれにより、車輪3aと車体2とが正常な状態よりも近接している場合には、全体として波形が下がることになり、逆に離れている場合には、全体として波形が上がることになる。これは、車輪側通信機4aと車体側通信機10aとの間の距離に応じて通信時間が変動することに起因する。ECU20は、正常な状態における車輪位相−通信時間特性による基準波形を参照することで、計測した車輪位相と通信時間との関係を示す波形のオフセット量を算出し、アライメントのずれを検出する。すなわちECU20は、所定の位相における通信時間を比較することにより、車輪3aと車体2との位置関係を検出することが可能である。
【0049】
図10は、上記した異常状態を判定するフローチャートを示す。まずECU20が、車輪側通信機4aと車体側通信機10aとの間の通信信号の通信時間を計測し、車輪位相と通信時間の関係を求める(S30)。車輪位相と通信時間の関係を示す波形から高周波成分を抽出し、高周波成分の振幅が所定値以上であるかを判定する(S32)。所定値以上である場合(S32のY)、ECU20は、異常振動の発生を判定する(S42)。異常を判定すると、ECU20は、ドライバに対してインジケータなどを介してその旨を告知してもよい。一方、所定値以下の場合(S32のN)、ECU20は車輪速センサ9の検出結果をもとに、車速を測定する(S34)。測定した車速が、車輪位相−通信時間特性として用意されている所定の基準車速と異なる場合、ECU20は、基準車速との差分を吸収するべく、求めた車輪位相と通信時間の関係を補正する(S36)。なお測定した車速が、車輪位相−通信時間特性として用意されている基準車速と等しい場合には、ECU20は、S36のステップを省略する。車速の差分を補正した後、ECU20は、車輪位相−通信時間特性を参照して(S38)、補正した車輪位相と通信時間の関係を示す波形と比較し、補正した波形が基準特性の波形から上下方向に変位しているかを調べる(S40)。補正した波形が、基準特性の波形から変位している場合、変位量が所定値以上であれば(S40のY)、車輪3のアライメントにずれが生じていることを判定する(S42)。一方、変位量が所定値未満である場合は(S40のN)、車輪3aに異常がないことを判定し、フローを終了する。
【0050】
以上、実施の形態をもとに本発明を説明した。なお本発明はこの実施の形態に限定されることなく、そのさまざまな変形例もまた、本発明の態様として有効である。既述のごとく、実施の形態では車輪3aの状態量を検出する場合を例としたが、他の車輪3b、3cおよび3dの状態量についても、上記した手法を用いて検出することが可能である。
【0051】
例えば、ECU20が、操舵角センサ13による検出結果と、車輪状態検出装置が通信信号を利用して算出した車輪角度の算出結果とを比較することで、車輪3の異常状態を判定することも可能である。操舵角センサ13による検出結果と車輪状態検出装置による車輪角度の算出結果とが一致している場合は、ECU20は、車輪3が正常であることを判定する。一方、一致しない場合は、車輪3が異常状態にあることを判定する。このように、車輪状態検出装置は、操舵角センサ13の検出結果と、通信信号を用いて算出した車輪角度の算出結果の相関から、車輪3の異常状態を判定することも可能である。
【0052】
また実施の形態では、バイワイヤ方式により独立に車輪角度すなわち舵角を制御する例を説明したが、メカニカル方式で車輪角度を制御する場合であっても、当然に本発明を適用することは可能である。なお、メカニカル方式の場合、コラムシャフトと車輪とが機械的なリンク機構を介して連結されることになるが、通信信号を利用して車輪角度を算出することによって、操舵角センサ13を不要とすることができるため、ギヤボックス等のレイアウト設計を容易にすることができる。
【0053】
【発明の効果】
本発明によると、車輪に設けた通信機を利用して車輪状態を検出する車輪状態検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態に係る車両の構成を示す図である。
【図2】(a)は、直進時における車体および車輪の状態を平面的に示す図であり、(b)は、直進時における車輪の状態を斜視的に示す図である。
【図3】直進時における車輪の位相と通信時間の関係を示す図である。
【図4】(a)は、左折時における車体および車輪の状態を平面的に示す図であり、(b)は、左折時における車輪の状態を斜視的に示す図である。
【図5】左折時における車輪の位相と通信時間の関係を示す図である。
【図6】(a)は、右折時における車体および車輪の状態を平面的に示す図であり、(b)は、右折時における車輪の状態を斜視的に示す図である。
【図7】右折時における車輪の位相と通信時間の関係を示す図である。
【図8】車輪角度を算出するフローチャートである。
【図9】(a)は、異常振動が生じている場合の車輪の位相と通信時間の関係を示す図であり、(b)は、アライメントにずれが生じている場合の車輪の位相と通信時間の関係を示す図である。
【図10】異常状態を判定するフローチャートを示す図である。
【符号の説明】
1・・・車両、2・・・車体、3・・・車輪、4・・・車輪側通信機、5・・・タイヤセンサ、6・・・送受信機、8・・・アクチュエータ、9・・・車輪速センサ、10・・・車体側通信機、12・・・操舵部材、13・・・操舵角センサ、14・・・コラムシャフト、20・・・ECU。
Claims (10)
- 車体に操舵可能に設けた車輪と、前記車輪に設けた車輪側通信機と、前記車体側に設けた車体側通信機とを備え、両通信機間で通信する通信信号に基づいて車輪状態を検出する車輪状態検出装置において、
前記車輪側通信機から送信され前記車体側通信機が受信する通信信号に基づいて、車輪の車輪角度を算出する舵角検出手段を備えることを特徴とする車輪状態検出装置。 - 前記舵角検出手段は、前記車輪側通信機が、前記車体側通信機から前記車輪側通信機に送信した通信信号に応答して前記車体側通信機に返信した通信信号に基づいて車輪角度を算出することを特徴とする請求項1に記載の車輪状態検出装置。
- 前記車体側通信機は、通信信号に、該通信信号に関する情報を付与して前記車輪側通信機に送信することを特徴とする請求項2に記載の車輪状態検出装置。
- 前記車輪側通信機はタイヤセンサを備え、通信信号に、前記タイヤセンサで検出したタイヤ空気圧、温度またはタイヤ接地力の情報を含ませて前記車体側通信機に送信することを特徴とする請求項1に記載の車輪状態検出装置。
- 前記車体側通信機のアンテナは、車輪近傍の車体側に配置されることを特徴とする請求項1に記載の車輪状態検出装置。
- 操舵部材による操舵情報を検出する操舵角センサと、
前記操舵角センサの検出結果と、前記舵角検出手段の算出結果の相関から、前記車輪の異常状態を判定する判定手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の車輪状態検出装置。 - 車体に操舵可能に設けた車輪と、前記車輪に設けた車輪側通信機と、前記車体側に設けた車体側通信機とを備え、両通信機間で通信する通信信号に基づいて車輪状態を検出する車輪状態検出装置において、
前記車輪側通信機から送信され前記車体側通信機が受信する通信信号に基づいて、前記車輪の異常状態を判定する判定手段を備えることを特徴とする車輪状態検出装置。 - 前記判定手段は、通信信号の通信時間と車輪位相の関係を示す波形を基準波形と比較し、その比較結果に応じて前記車輪の異常状態を判定することを特徴とする請求項7に記載の車輪状態検出装置。
- 前記判定手段は、通信信号の通信時間と車輪位相の関係を示す波形の周波数成分に基づいて、前記車輪の異常状態を判定することを特徴とする請求項7または8に記載の車輪状態検出装置。
- 車体に操舵可能に設けた車輪と、車輪の車軸からそれぞれオフセットされた車輪側の所定位置と車体側の所定位置との距離を測定する距離測定手段と、車輪側の所定位置の車軸に対する位相と測定した前記距離とに基づいて、車輪の車輪角度を算出する舵角検出手段とを備えることを特徴とする車輪状態検出装置。
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Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007170872A (ja) * | 2005-12-19 | 2007-07-05 | Toyota Motor Corp | 車両状態推定装置および車両状態推定方法 |
JP2012218489A (ja) * | 2011-04-05 | 2012-11-12 | Denso Corp | 段差乗り上げ検出装置 |
JP2012531360A (ja) * | 2009-12-21 | 2012-12-10 | コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング | ホイールエレクトロニクスユニット、車両ホイール及び車両 |
KR101365366B1 (ko) | 2012-10-15 | 2014-02-25 | 금호타이어 주식회사 | 타이어 핸들링 성능 측정장치 및 측정방법 |
CN110823163A (zh) * | 2019-10-12 | 2020-02-21 | 哈尔滨飞机工业集团有限责任公司 | 一种测量方向舵转动角度的装置 |
-
2003
- 2003-05-12 JP JP2003133208A patent/JP2004333434A/ja active Pending
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