JP2004332972A - 微粉炭の燃焼方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】純酸素を用い微粉炭の燃焼方法であって、排ガス中の一酸化炭素の含有量が少なく、かつ燃焼灰分の中の未燃カーボンの含有量の少ない高効率の微粉炭の燃焼方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、酸素比が1.05以上の条件下で、微粉炭を混合した一次酸素を燃焼装置内の燃焼バーナーの中心部に噴霧し、二次酸素を燃焼バーナーの周辺部に旋回状態で導入する微粉炭の燃焼方法であって、旋回状態を表す無次元数のスワール数(Sn)が1.0から2.0の範囲にあり、かつ前記一次酸素と二次酸素の容積比(Ra)が0.1から0.4の範囲にある条件の下で微粉炭を噴霧状態で燃焼させることを特徴とする純酸素を用いた微粉炭の燃焼方法である。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明は、酸素比が1.05以上の条件下で、微粉炭を混合した一次酸素を燃焼装置内の燃焼バーナーの中心部に噴霧し、二次酸素を燃焼バーナーの周辺部に旋回状態で導入する微粉炭の燃焼方法であって、旋回状態を表す無次元数のスワール数(Sn)が1.0から2.0の範囲にあり、かつ前記一次酸素と二次酸素の容積比(Ra)が0.1から0.4の範囲にある条件の下で微粉炭を噴霧状態で燃焼させることを特徴とする純酸素を用いた微粉炭の燃焼方法である。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、純酸素または少量の炭酸ガスを含む酸素を用いた微粉炭の燃焼方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の世界的な人口の増加や経済の成長に伴って、世界のエネルギー消費量は現在も爆発的な増加を続けている。このような状況にあって、原子力エネルギーあるいは風力や太陽光などの環境負荷の少ないエネルギーも開発されてきているが、まだ石炭が40質量%、石油が25質量%、天然ガスが25質量%と、まだ全体の約90質量%(以下において、特に注記しない場合は「%」は質量基準である。)がいわゆる化石燃料によってまかなわれている。
この中で、特に石炭は、石油や天然ガスに比べて世界的に埋蔵されている賦存量が多く、今後採掘可能な年数が長く、また、石油のように特定の地域に偏在することなく世界的に広く分布して埋蔵されているという特徴を有し、現在でも中国や発展途上国を中心に重要なエネルギー源であり、今後も更に一層の有効活用が望まれるエネルギー源である。
しかし、このような石炭は産地や気候、土質の違いによってその性状に大きな幅があり、無煙炭、瀝青炭、亜瀝青炭、褐炭、亜炭、泥炭等に分類される。そして、無煙炭は主として鉄鋼産業に利用され、瀝青炭と一部の亜瀝青炭は石炭火力発電の燃料として利用されているが、より低品位の亜瀝青炭、褐炭、亜炭の利用の拡大も必要である。
【0003】
石炭の大きな用途の一つは上記のように火力発電であるが、石炭は石油や天然ガスに比べて発熱量が低く、炭酸ガスや硫黄酸化物、窒素酸化物等の排出量が多いことから、石炭の利用を推進する上からは燃焼効率の向上と環境負荷の低減を図ることが重要である。NOx、SOxや煤塵は排煙処理技術によりごく微量まで抑えることが可能になってきたが、CO2についてはその有効な対策は、燃焼効率を高めては排出ガス量を低減させることであり、発電効率を1%向上させるとCO2の排出量を2.5%削減できることから、石炭の高効率燃焼技術の確立が求められている。また、現在火力発電その他の産業で利用されているのは主として無煙炭と瀝青炭であるが、可採埋蔵量の47%を占める亜瀝青炭や褐炭がほとんど未利用であり、これらの有効利用も重要な技術課題である。
【0004】
特に、石炭火力発電では瀝青炭のような高品位の石炭を使用しているが、将来のエネルギーセキュリテイの面からも、灰分をより多く含んだ低品位炭を、より高い効率で燃焼させる、低品位炭の燃焼技術の開発が必要である。従来、火力発電の微粉炭燃焼ボイラーにおいては、空気を使用する空気燃焼システムが採用されているが、この空気燃焼システムでは、空気中に多量に含まれる窒素の影響のためエネルギー密度の低下や燃焼温度の低下、あるいは排ガスが有する顕熱損失の増大などがあり、エネルギーの利用効率の向上に限界がある。
酸素を用いた微粉炭の燃焼については、例えば、排ガスの再循環ガスを用いたO2/CO2燃焼の検討(例えば、非特許文献1、2参照)や、従来型の微粉炭空気燃焼バーナーを用いた検討(例えば、非特許文献3、4参照)等があるが、これらはいずれも研究段階のものであり、また酸素濃度も20%〜40%程度である。
【0005】
【非特許文献1】
K.Okazaki et al,”Energy” 22(2/3),(1997)207−215、
【非特許文献2】
E.Croiset, K.V.Thambimuthu,”Fuel” 80,(2001)2117−2121、
【非特許文献3】
Choi,G.M., Katsui,M.”Energy Conversion & Management”42, (2001) 639−652、
【非特許文献4】
Abbas,T.et al,”Combustion Science and Technology”,82,(1993) 73−90
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、純酸素を用いた微粉炭の高い効率での燃焼方法を提供することを目的とするものである。また、排ガス中の一酸化炭素の含有量が少なく、かつ燃焼灰分の中の未燃カーボンの含有量の少ない高効率の微粉炭の燃焼方法を提供するものであり、更には、灰分の多い低品位の石炭にも使用しうる、純酸素を用いた微粉炭の高効率での燃焼方法を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、以上のような現状に鑑み、純酸素を用いて微粉炭を燃焼させることにより、燃焼排ガス量を空気燃焼に比べて約4分の1に低減できるため顕熱エネルギーの損失が低減できること、排ガス量の大幅な低減によりその中の二酸化炭素や窒素酸化物、硫黄酸化物の濃度が高くなり、二酸化炭素や窒素酸化物、硫黄酸化物の回収・除去が容易になること、排ガスが二酸化炭素と水だけになるため火炎温度が高くなり高効率の熱交換が可能となることなどの数多くのメリットがあることに着目し、純酸素を用いた微粉炭の燃焼方法について鋭意研究を重ねた結果本発明を完成した。
【0008】
即ち、本発明は、以下の内容をその要旨とするものである。
(1)酸素比が1.05以上の条件下で、微粉炭を混合した一次酸素を燃焼装置内の燃焼バーナーの中心部に噴霧し、二次酸素を燃焼バーナーの周辺部に旋回状態で導入する微粉炭の燃焼方法であって、旋回状態を表す無次元数のスワール数(Sn)が1.0から2.0の範囲にあり、かつ前記一次酸素と二次酸素の容積比(Ra)が0.1から0.4の範囲にある条件の下で微粉炭を噴霧状態で燃焼させることを特徴とする純酸素を用いた微粉炭の燃焼方法。
(2)スワール数(Sn)が1.2から1.5の範囲にあることを特徴とする、(1)記載の純酸素を用いた微粉炭の燃焼方法。
(3)一次酸素と二次酸素の容積比(Ra)が0.15から0.3の範囲にあることを特徴とする、(1)または(2)記載の純酸素を用いた微粉炭の燃焼方法。
(4)酸素の合計量に対して、10〜15容積%の二酸化炭素を一次酸素とともに燃焼装置内の導入することを特徴とする、(1)ないし(3)のいずれかに記載の純酸素を用いた微粉炭の燃焼方法。
このような本発明の方法で微粉炭を燃焼させることによって、97%以上、好ましくは99%以上、最も好ましくは99.7%以上という極めて高い燃焼効率で微粉炭を燃焼させることができ、同時に燃焼排ガス中の一酸化炭素の濃度を3容積%以下、好ましくは0.5容積%以下、最も好ましくは0.04容積%にまで低下させることができ、さらに燃焼灰分中の未燃炭素量も3%以下、好ましくは1.5%以下、最も好ましくは0.5%にまで低下させることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下において、本発明を更に詳しく説明する。
本発明は、燃焼用の酸素を一定の強さの旋回流動させた状態の中に微粉炭を一次酸素とともに噴霧し、特定の選択された範囲の燃焼条件の下で燃焼させる、純酸素を用いた微粉炭の燃焼方法である。
【0010】
本発明の方法では、燃焼ガスとして純酸素を使用し、この酸素を一次酸素と二次酸素に分けて使用する。一次酸素に燃料の微粉炭を混合し、これを燃焼装置内の燃焼バーナーの中心部へ旋回させることなく直接噴霧する。二次酸素は燃焼装置内の燃焼バーナーの周辺部の壁面付近に沿ってバーナーの軸方向に対して旋回させながら導入する。本発明の方法においては、この一次酸素と二次酸素の燃焼装置内への供給量の比率、即ち、一次酸素と二次酸素の供給量の容積比(Ra)を一定の範囲にすることが重要であり、高い燃焼効率と良好な燃焼状態を達成するためには、Raの値が0.1から0.4の範囲にあることが必要であり、0.15から0.3の範囲がより好ましい。
【0011】
本発明に燃料として使用する石炭は、瀝青炭等の高品位の石炭はもちろん、灰分を多く含んだ亜瀝青炭、褐炭等のより低品位の石炭も使用することができる。燃料の石炭は、これを10〜500ミクロン程度の微粉末に粉砕し、必要に応じて灰分その他の不純物を除去したものを使用する。この石炭の微粉末を一次酸素とともに燃焼装置内に噴霧する。
【0012】
燃焼に使用する酸素の量は石炭の可燃成分の量によって決まる理論酸素量と実際に使用する供給酸素量の容積比である「酸素比」をパラメーターとして決定される。空気燃焼の場合に燃焼用の空気が無制限に使用できるのと異なり、酸素燃焼の場合にはコストがかかることからできるだけその使用量を低下させる必要がある。そのような観点からは酸素比が1.0の場合が好ましいが、この状態では高い燃焼効率で良好な燃焼状態を維持することはできない。本発明の燃焼方法による場合には、この酸素比の値が少なくとも1.05であることが必要であり、酸素比の値が1.05以上であれば高い燃焼効率で、良好な燃焼状態で微粉炭を燃焼させることができる。しかし、この酸素比が1.05未満では条件によっては良好な燃焼効率とすることもできるが、排ガス中の一酸化炭素の濃度が増加することと、燃焼後の灰分中の未燃炭素の量が増大するため、好ましい燃焼とはいえない。
具体的には、できるだけ酸素の使用量の少ない状態で燃焼できることが好ましいわけであるから、実用的にはこの酸素比が1.05〜1.20程度の範囲で燃焼させることが好ましい。
【0013】
このように燃料に使用する石炭の送入量が決まれば、この値と酸素比から所要酸素量を決定し、前記した一次酸素と二次酸素の容積比(Ra)の値を好ましい値に選択して、燃焼に使用する一次酸素と二次酸素の量を決定する。
【0014】
図1に本発明の方法を実施する燃焼装置の一例の概略図を、図2にこの燃焼装置で使用する燃焼バーナーの一例の断面図を示す。燃焼バーナー11は同軸二重管構造であり、二重管部分に設けた旋回羽根12によって、導入された二次酸素ガスに旋回運動が付与される。
この燃焼装置は、燃焼装置の本体と燃焼排ガスの処理系統からなっている。燃料の石炭微粉末はコールフィーダー1から燃焼炉本体5の上部の一次酸素導入口2に、一次酸素とともに導入される。この燃焼炉5の上部に例えば図2に示すような燃焼バーナー11が取り付けられており、この燃焼バーナー11の二次酸素導入口3から二次酸素を導入する。スタート時は温度が低いため、予熱バーナー4からのメタンガスを燃焼させて予熱を行い、燃焼炉5の下部の温度が800℃以上に達したところで微粉炭燃焼に移行する。微粉炭は一次酸素とともに図2の燃焼バーナー11の中心部に噴霧され、二次酸素はこの燃焼バーナー11の側部から導入され、内部に設けられた旋回羽根12によって旋回運動を付与されて、燃焼炉5の内部に導入される。微粉炭の燃焼が行なわれると、燃焼炉5の上部で微粉炭の燃焼が完結して約2500〜3000℃となり、輻射伝熱の熱交換が行なわれ、燃焼炉5の下部では対流伝熱の熱交換が行なわれる。燃焼排ガスはサイクロン6、バッグフィルター7、充填層洗浄塔8、ガススクラバー9を通って、排気ブロワー10によって排出される。
【0015】
本発明の方法においては、微粉炭と一次酸素は無旋回で燃焼炉5に導入され、二次酸素は一定範囲の強さの旋回運動で燃焼炉5に導入される。
この旋回運動の強さはスワール数Snという無次元数によって表され、この分野において気流等の旋回の強さを表すために一般的に使用されているパラメーターである。
旋回運動がない場合はSnの値がゼロであり、Snが0.6を超えるとかなり強い旋回運動となる。本発明の方法においては、このSnの値が1.0から2.0の範囲の旋回状態であることが重要である。また、Snが1.2から1.5の範囲になる条件で燃焼を行なうことが更に好ましい。
【0016】
本発明の方法においては、燃焼炉本体5に取り付けた燃焼バーナー11の中心部に一次酸素と微粉炭が無旋回の状態で導入され、二次酸素が燃焼炉本体5に取り付けた燃焼バーナー11の周辺部に一定の旋回強さで導入されるため良好な燃焼状態が得られ、極めて高い燃焼効率を達成することが可能となった。これはこの一次酸素の流れと二次酸素の流れの運動状態が相違しており、二つの流れの間に一種のすべり現象が生ずるためと考えられる。従って、このような運動状態が生ずる条件でのみ良好な燃焼が可能となり、このSnの値が1.0未満の弱い旋回運動や旋回運動のない場合には、良好な燃焼状態が得られない。また、Snの値が2.0を超えると、旋回運動が強すぎて安定な火炎が形成されず、燃焼を継続することが困難となり、極端な場合には炉内中心部に強い循環流が発生し、溶融した微粉炭がバーナーノズルを閉塞することもある。
【0017】
本発明の方法においては、微粉炭と酸素とを直接混合することに伴う危険を避けるため、および純酸素燃焼では排ガスの主成分が二酸化炭素であり、この排ガスを再循環して使用することを可能にするため、一次酸素と一緒に一定量の二酸化炭素ガスを混合することが好ましい。この二酸化炭素の量は全酸素量に対して約10から15容積%が好ましい。
【0018】
以上に述べたような本発明の純酸素を用いた微粉炭の燃焼方法によれば、少なくとも97%以上、好ましい条件では99%以上、最も好ましい条件では99.7%もの極めて高い燃焼効率で、微粉炭を燃焼させることができる。
なお、本明細書でいう燃焼効率は、次の式によって求めた値である。
【0019】
【数1】
【0020】
従って、本明細書で用いる燃焼効率では未燃の水素による発熱量も差し引いた値として得られたものであるが、一般的に用いられている燃焼効率ではこの未燃の水素による発熱量は差し引いていない。従って、一般的に使用されている燃焼効率の基準に従えば、本発明の燃焼効率は更に若干改善された値となる。
【0021】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0022】
実施例1:
図1に示す微粉炭燃焼装置と図2に示す燃焼バーナーを使用して、微粉炭の純酸素燃焼を行なった。燃料の石炭にはインドネシア産の亜瀝青炭を用い、これを平均粒径63μmに粉砕したものを使用した。燃焼バーナー11の旋回羽根12の角度によって、二次酸素の旋回強度が設定できるが、本実施例では、一次ガスノズル径(d1)が24.5mm、バーナーノズル径(d2)が48.6mm、旋回羽根の角度が60°のものを用いた。
まず、燃焼炉5の上部に設けた予熱バーナー4によってメタン−空気燃焼を行い燃焼炉の予熱を行なった。燃焼炉の下部の温度が700℃以上になった後に燃焼炉の上部より酸素を少量吹き込み、酸素過剰状態で燃焼炉の下部にメタンを吹き込み、燃焼炉の下部の温度を上昇させた。炉内下部の温度が800℃を超えた時点で予熱終了とし、純酸素石炭燃焼へと移行した。微粉炭の着火には酸素温度が約250〜300℃必要であるので、電気ヒーターを用いて酸素をこの温度まで予熱した。微粉炭着火が安定した後、常温の酸素を用いた微粉炭燃焼に切り替えた。
【0023】
純酸素微粉炭燃焼は、微粉炭供給量を5.2kg/hrと一定の供給量とし、一次酸素と二次酸素の供給量、酸素比を下記の表1に示すように種々変化させて、種々の条件での微粉炭燃焼を行なった。なお、本実施例では、キャリアガスとして一次酸素と一緒に一定量(1.2m3/hr)の二酸化炭素ガスを導入した。
【0024】
【表1】
【0025】
それぞれの運転条件について、2時間連続して純酸素による微粉炭燃焼を続けた後、炉内温度を測定し、燃焼灰を採取し、ガスアナライザー(島津製作所製、NOA−7000)によって連続的に排ガス中のCO2およびCO濃度を測定した。採取した燃焼灰は乾燥した後、CHNコーダ(ヤナコ製、CHNCORDER MT−6)によって燃焼灰中の未燃炭素と未燃水素の含有率を測定した。
それぞれの運転条件における燃焼効率は、上記の排ガス中のCOと燃焼灰中の未燃炭素と未燃水素の発熱量から、次式によって求めた。
【0026】
【数2】
【0027】
以上の本実施例の種々の運転条件によって得られた、排ガス中のCO2およびCO濃度、燃焼効率の値を表2に示す。また、本実施例では、旋回羽根の角度が60°の燃焼バーナーを用いており、酸素ガスの旋回強度を表すスワール数Snの値は1.5であった。
【0028】
【表2】
【0029】
この結果から、スワール数Snが1.5の場合には、酸素比が1.08と1.15の条件では、一次酸素と二次酸素の供給量の比Raが0.4以下であれば良好な燃焼状態を示し、燃焼効率が97%以上、CO濃度も3.5容積%以下を達成することができ、更にRaが0.3以下であれば燃焼効率が98%以上、CO濃度も1.0容積%以下となり、特にRaが2.5付近では燃焼効率が99.7%、CO濃度が0.04容積%という極めて良好な燃焼状態を実現することができた。
【0030】
実施例2:
石炭供給量を6.7Kg/hr、二酸化炭素ガスの供給量を1.5m3/hrの一定とし、酸素供給量を8.4〜10.8m3/hrの範囲で変化させ、燃焼バーナーとして、一次ガスノズル径(d1)が27.0mm、バーナーノズル径(d2)が48.6mm、旋回羽根の角度が60°のものを用いて、実施例1と同様の方法によって純酸素による微粉炭燃焼を行なった。また、この場合の酸素ガスの旋回強度を表すスワール数(Sn)の値は1.23であった。
実施例2の条件で行なった微粉炭燃焼によって得られた燃焼効率とCO濃度の測定結果を表したグラフを図3に示す。
この結果から、スワール数が1.23の場合も、酸素比が1.05以上であれば、燃焼効率が98%以上、CO濃度が1.5容積%以下となることが分かる。
【0031】
比較例1:
燃焼バーナーとして、一次ガスノズル径(d1)が24.5mm、バーナーノズル径(d2)が48.6mm、旋回羽根の角度が0°のもの、即ち酸素ガスに全く旋回流を付与しないバーナーを用いて、これ以外は実施例1と同様の条件と方法によって、微粉炭の純酸素燃焼を行なった。
この場合は、どの条件の場合も燃焼が非常に不安定で、良好な燃焼状態が得られず、燃焼効率は80%以下、CO濃度は5容積%程度となった。これは酸素雰囲気中で燃焼する石炭微粒子の表面近傍に、燃焼で生成した炭酸ガスや水の気体の層が形成され、酸素が石炭粒子の表面に拡散することが阻害されるためであると考えられる。
【0032】
比較例2:
石炭供給量を6.7Kg/hr、二酸化炭素ガスの供給量を1.5m3/hrの一定とし、酸素供給量を8.4〜10.8m3/hrの範囲で変化させ、燃焼バーナーとして、一次ガスノズル径(d1)が24.5mm、バーナーノズル径(d2)が48.6mm、旋回羽根の角度が75°のものを用いて、実施例1と同様の方法によって純酸素による微粉炭燃焼を行なった。この場合の酸素ガスの旋回強度を表すスワール数Snの値は3.24であった。
この場合は、旋回が強いため炉内中心部において燃焼ガスの強い循環流が発生し、溶融した微粉炭がバーナーに付着したりして、長時間安定して微粉炭の燃焼を続けることができなかった。
【0033】
【発明の効果】
本発明の方法によって、純酸素を用いて微粉炭を効率よく安定して燃焼させることができ、97%以上、好ましくは99%以上の高い燃焼効率を達成することができる。同時に、排ガス中の一酸化炭素の濃度も3.5容積%以下と低い値に抑えることができる。純酸素を用いた微粉炭燃焼において、このように高い燃焼効率が実現できたので、燃焼排ガス量を空気燃焼に比べて大幅に低減でき顕熱エネルギーの損失が低減できること、排ガス量の大幅な低減によりその中の二酸化炭素や窒素酸化物、硫黄酸化物の濃度が高くなり、これらの回収・除去が容易になること、排ガスが二酸化炭素と水だけになるため火炎温度が高くなり高効率の熱交換が可能となることなどの純酸素燃焼の数多くのメリットを生かした、高いエネルギー効率の微粉炭燃焼装置が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法を実施するための純酸素を用いた微粉炭燃焼装置の一例の概略図である。
【図2】本発明の方法に使用するための微粉炭燃焼装置の燃焼バーナーの一例の断面図である。
【図3】実施例2の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 コールフィーダー
2 一次酸素供給口
3 二次酸素供給口
4 予熱バーナー
5 燃焼炉
6 サイクロン
7 バッグフィルター
8 充填層洗浄装置
9 ガススクラバー
10 排気ブロワー
11燃焼ノズル
12旋回羽根
【発明の属する技術分野】
本発明は、純酸素または少量の炭酸ガスを含む酸素を用いた微粉炭の燃焼方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の世界的な人口の増加や経済の成長に伴って、世界のエネルギー消費量は現在も爆発的な増加を続けている。このような状況にあって、原子力エネルギーあるいは風力や太陽光などの環境負荷の少ないエネルギーも開発されてきているが、まだ石炭が40質量%、石油が25質量%、天然ガスが25質量%と、まだ全体の約90質量%(以下において、特に注記しない場合は「%」は質量基準である。)がいわゆる化石燃料によってまかなわれている。
この中で、特に石炭は、石油や天然ガスに比べて世界的に埋蔵されている賦存量が多く、今後採掘可能な年数が長く、また、石油のように特定の地域に偏在することなく世界的に広く分布して埋蔵されているという特徴を有し、現在でも中国や発展途上国を中心に重要なエネルギー源であり、今後も更に一層の有効活用が望まれるエネルギー源である。
しかし、このような石炭は産地や気候、土質の違いによってその性状に大きな幅があり、無煙炭、瀝青炭、亜瀝青炭、褐炭、亜炭、泥炭等に分類される。そして、無煙炭は主として鉄鋼産業に利用され、瀝青炭と一部の亜瀝青炭は石炭火力発電の燃料として利用されているが、より低品位の亜瀝青炭、褐炭、亜炭の利用の拡大も必要である。
【0003】
石炭の大きな用途の一つは上記のように火力発電であるが、石炭は石油や天然ガスに比べて発熱量が低く、炭酸ガスや硫黄酸化物、窒素酸化物等の排出量が多いことから、石炭の利用を推進する上からは燃焼効率の向上と環境負荷の低減を図ることが重要である。NOx、SOxや煤塵は排煙処理技術によりごく微量まで抑えることが可能になってきたが、CO2についてはその有効な対策は、燃焼効率を高めては排出ガス量を低減させることであり、発電効率を1%向上させるとCO2の排出量を2.5%削減できることから、石炭の高効率燃焼技術の確立が求められている。また、現在火力発電その他の産業で利用されているのは主として無煙炭と瀝青炭であるが、可採埋蔵量の47%を占める亜瀝青炭や褐炭がほとんど未利用であり、これらの有効利用も重要な技術課題である。
【0004】
特に、石炭火力発電では瀝青炭のような高品位の石炭を使用しているが、将来のエネルギーセキュリテイの面からも、灰分をより多く含んだ低品位炭を、より高い効率で燃焼させる、低品位炭の燃焼技術の開発が必要である。従来、火力発電の微粉炭燃焼ボイラーにおいては、空気を使用する空気燃焼システムが採用されているが、この空気燃焼システムでは、空気中に多量に含まれる窒素の影響のためエネルギー密度の低下や燃焼温度の低下、あるいは排ガスが有する顕熱損失の増大などがあり、エネルギーの利用効率の向上に限界がある。
酸素を用いた微粉炭の燃焼については、例えば、排ガスの再循環ガスを用いたO2/CO2燃焼の検討(例えば、非特許文献1、2参照)や、従来型の微粉炭空気燃焼バーナーを用いた検討(例えば、非特許文献3、4参照)等があるが、これらはいずれも研究段階のものであり、また酸素濃度も20%〜40%程度である。
【0005】
【非特許文献1】
K.Okazaki et al,”Energy” 22(2/3),(1997)207−215、
【非特許文献2】
E.Croiset, K.V.Thambimuthu,”Fuel” 80,(2001)2117−2121、
【非特許文献3】
Choi,G.M., Katsui,M.”Energy Conversion & Management”42, (2001) 639−652、
【非特許文献4】
Abbas,T.et al,”Combustion Science and Technology”,82,(1993) 73−90
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、純酸素を用いた微粉炭の高い効率での燃焼方法を提供することを目的とするものである。また、排ガス中の一酸化炭素の含有量が少なく、かつ燃焼灰分の中の未燃カーボンの含有量の少ない高効率の微粉炭の燃焼方法を提供するものであり、更には、灰分の多い低品位の石炭にも使用しうる、純酸素を用いた微粉炭の高効率での燃焼方法を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、以上のような現状に鑑み、純酸素を用いて微粉炭を燃焼させることにより、燃焼排ガス量を空気燃焼に比べて約4分の1に低減できるため顕熱エネルギーの損失が低減できること、排ガス量の大幅な低減によりその中の二酸化炭素や窒素酸化物、硫黄酸化物の濃度が高くなり、二酸化炭素や窒素酸化物、硫黄酸化物の回収・除去が容易になること、排ガスが二酸化炭素と水だけになるため火炎温度が高くなり高効率の熱交換が可能となることなどの数多くのメリットがあることに着目し、純酸素を用いた微粉炭の燃焼方法について鋭意研究を重ねた結果本発明を完成した。
【0008】
即ち、本発明は、以下の内容をその要旨とするものである。
(1)酸素比が1.05以上の条件下で、微粉炭を混合した一次酸素を燃焼装置内の燃焼バーナーの中心部に噴霧し、二次酸素を燃焼バーナーの周辺部に旋回状態で導入する微粉炭の燃焼方法であって、旋回状態を表す無次元数のスワール数(Sn)が1.0から2.0の範囲にあり、かつ前記一次酸素と二次酸素の容積比(Ra)が0.1から0.4の範囲にある条件の下で微粉炭を噴霧状態で燃焼させることを特徴とする純酸素を用いた微粉炭の燃焼方法。
(2)スワール数(Sn)が1.2から1.5の範囲にあることを特徴とする、(1)記載の純酸素を用いた微粉炭の燃焼方法。
(3)一次酸素と二次酸素の容積比(Ra)が0.15から0.3の範囲にあることを特徴とする、(1)または(2)記載の純酸素を用いた微粉炭の燃焼方法。
(4)酸素の合計量に対して、10〜15容積%の二酸化炭素を一次酸素とともに燃焼装置内の導入することを特徴とする、(1)ないし(3)のいずれかに記載の純酸素を用いた微粉炭の燃焼方法。
このような本発明の方法で微粉炭を燃焼させることによって、97%以上、好ましくは99%以上、最も好ましくは99.7%以上という極めて高い燃焼効率で微粉炭を燃焼させることができ、同時に燃焼排ガス中の一酸化炭素の濃度を3容積%以下、好ましくは0.5容積%以下、最も好ましくは0.04容積%にまで低下させることができ、さらに燃焼灰分中の未燃炭素量も3%以下、好ましくは1.5%以下、最も好ましくは0.5%にまで低下させることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下において、本発明を更に詳しく説明する。
本発明は、燃焼用の酸素を一定の強さの旋回流動させた状態の中に微粉炭を一次酸素とともに噴霧し、特定の選択された範囲の燃焼条件の下で燃焼させる、純酸素を用いた微粉炭の燃焼方法である。
【0010】
本発明の方法では、燃焼ガスとして純酸素を使用し、この酸素を一次酸素と二次酸素に分けて使用する。一次酸素に燃料の微粉炭を混合し、これを燃焼装置内の燃焼バーナーの中心部へ旋回させることなく直接噴霧する。二次酸素は燃焼装置内の燃焼バーナーの周辺部の壁面付近に沿ってバーナーの軸方向に対して旋回させながら導入する。本発明の方法においては、この一次酸素と二次酸素の燃焼装置内への供給量の比率、即ち、一次酸素と二次酸素の供給量の容積比(Ra)を一定の範囲にすることが重要であり、高い燃焼効率と良好な燃焼状態を達成するためには、Raの値が0.1から0.4の範囲にあることが必要であり、0.15から0.3の範囲がより好ましい。
【0011】
本発明に燃料として使用する石炭は、瀝青炭等の高品位の石炭はもちろん、灰分を多く含んだ亜瀝青炭、褐炭等のより低品位の石炭も使用することができる。燃料の石炭は、これを10〜500ミクロン程度の微粉末に粉砕し、必要に応じて灰分その他の不純物を除去したものを使用する。この石炭の微粉末を一次酸素とともに燃焼装置内に噴霧する。
【0012】
燃焼に使用する酸素の量は石炭の可燃成分の量によって決まる理論酸素量と実際に使用する供給酸素量の容積比である「酸素比」をパラメーターとして決定される。空気燃焼の場合に燃焼用の空気が無制限に使用できるのと異なり、酸素燃焼の場合にはコストがかかることからできるだけその使用量を低下させる必要がある。そのような観点からは酸素比が1.0の場合が好ましいが、この状態では高い燃焼効率で良好な燃焼状態を維持することはできない。本発明の燃焼方法による場合には、この酸素比の値が少なくとも1.05であることが必要であり、酸素比の値が1.05以上であれば高い燃焼効率で、良好な燃焼状態で微粉炭を燃焼させることができる。しかし、この酸素比が1.05未満では条件によっては良好な燃焼効率とすることもできるが、排ガス中の一酸化炭素の濃度が増加することと、燃焼後の灰分中の未燃炭素の量が増大するため、好ましい燃焼とはいえない。
具体的には、できるだけ酸素の使用量の少ない状態で燃焼できることが好ましいわけであるから、実用的にはこの酸素比が1.05〜1.20程度の範囲で燃焼させることが好ましい。
【0013】
このように燃料に使用する石炭の送入量が決まれば、この値と酸素比から所要酸素量を決定し、前記した一次酸素と二次酸素の容積比(Ra)の値を好ましい値に選択して、燃焼に使用する一次酸素と二次酸素の量を決定する。
【0014】
図1に本発明の方法を実施する燃焼装置の一例の概略図を、図2にこの燃焼装置で使用する燃焼バーナーの一例の断面図を示す。燃焼バーナー11は同軸二重管構造であり、二重管部分に設けた旋回羽根12によって、導入された二次酸素ガスに旋回運動が付与される。
この燃焼装置は、燃焼装置の本体と燃焼排ガスの処理系統からなっている。燃料の石炭微粉末はコールフィーダー1から燃焼炉本体5の上部の一次酸素導入口2に、一次酸素とともに導入される。この燃焼炉5の上部に例えば図2に示すような燃焼バーナー11が取り付けられており、この燃焼バーナー11の二次酸素導入口3から二次酸素を導入する。スタート時は温度が低いため、予熱バーナー4からのメタンガスを燃焼させて予熱を行い、燃焼炉5の下部の温度が800℃以上に達したところで微粉炭燃焼に移行する。微粉炭は一次酸素とともに図2の燃焼バーナー11の中心部に噴霧され、二次酸素はこの燃焼バーナー11の側部から導入され、内部に設けられた旋回羽根12によって旋回運動を付与されて、燃焼炉5の内部に導入される。微粉炭の燃焼が行なわれると、燃焼炉5の上部で微粉炭の燃焼が完結して約2500〜3000℃となり、輻射伝熱の熱交換が行なわれ、燃焼炉5の下部では対流伝熱の熱交換が行なわれる。燃焼排ガスはサイクロン6、バッグフィルター7、充填層洗浄塔8、ガススクラバー9を通って、排気ブロワー10によって排出される。
【0015】
本発明の方法においては、微粉炭と一次酸素は無旋回で燃焼炉5に導入され、二次酸素は一定範囲の強さの旋回運動で燃焼炉5に導入される。
この旋回運動の強さはスワール数Snという無次元数によって表され、この分野において気流等の旋回の強さを表すために一般的に使用されているパラメーターである。
旋回運動がない場合はSnの値がゼロであり、Snが0.6を超えるとかなり強い旋回運動となる。本発明の方法においては、このSnの値が1.0から2.0の範囲の旋回状態であることが重要である。また、Snが1.2から1.5の範囲になる条件で燃焼を行なうことが更に好ましい。
【0016】
本発明の方法においては、燃焼炉本体5に取り付けた燃焼バーナー11の中心部に一次酸素と微粉炭が無旋回の状態で導入され、二次酸素が燃焼炉本体5に取り付けた燃焼バーナー11の周辺部に一定の旋回強さで導入されるため良好な燃焼状態が得られ、極めて高い燃焼効率を達成することが可能となった。これはこの一次酸素の流れと二次酸素の流れの運動状態が相違しており、二つの流れの間に一種のすべり現象が生ずるためと考えられる。従って、このような運動状態が生ずる条件でのみ良好な燃焼が可能となり、このSnの値が1.0未満の弱い旋回運動や旋回運動のない場合には、良好な燃焼状態が得られない。また、Snの値が2.0を超えると、旋回運動が強すぎて安定な火炎が形成されず、燃焼を継続することが困難となり、極端な場合には炉内中心部に強い循環流が発生し、溶融した微粉炭がバーナーノズルを閉塞することもある。
【0017】
本発明の方法においては、微粉炭と酸素とを直接混合することに伴う危険を避けるため、および純酸素燃焼では排ガスの主成分が二酸化炭素であり、この排ガスを再循環して使用することを可能にするため、一次酸素と一緒に一定量の二酸化炭素ガスを混合することが好ましい。この二酸化炭素の量は全酸素量に対して約10から15容積%が好ましい。
【0018】
以上に述べたような本発明の純酸素を用いた微粉炭の燃焼方法によれば、少なくとも97%以上、好ましい条件では99%以上、最も好ましい条件では99.7%もの極めて高い燃焼効率で、微粉炭を燃焼させることができる。
なお、本明細書でいう燃焼効率は、次の式によって求めた値である。
【0019】
【数1】
【0020】
従って、本明細書で用いる燃焼効率では未燃の水素による発熱量も差し引いた値として得られたものであるが、一般的に用いられている燃焼効率ではこの未燃の水素による発熱量は差し引いていない。従って、一般的に使用されている燃焼効率の基準に従えば、本発明の燃焼効率は更に若干改善された値となる。
【0021】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0022】
実施例1:
図1に示す微粉炭燃焼装置と図2に示す燃焼バーナーを使用して、微粉炭の純酸素燃焼を行なった。燃料の石炭にはインドネシア産の亜瀝青炭を用い、これを平均粒径63μmに粉砕したものを使用した。燃焼バーナー11の旋回羽根12の角度によって、二次酸素の旋回強度が設定できるが、本実施例では、一次ガスノズル径(d1)が24.5mm、バーナーノズル径(d2)が48.6mm、旋回羽根の角度が60°のものを用いた。
まず、燃焼炉5の上部に設けた予熱バーナー4によってメタン−空気燃焼を行い燃焼炉の予熱を行なった。燃焼炉の下部の温度が700℃以上になった後に燃焼炉の上部より酸素を少量吹き込み、酸素過剰状態で燃焼炉の下部にメタンを吹き込み、燃焼炉の下部の温度を上昇させた。炉内下部の温度が800℃を超えた時点で予熱終了とし、純酸素石炭燃焼へと移行した。微粉炭の着火には酸素温度が約250〜300℃必要であるので、電気ヒーターを用いて酸素をこの温度まで予熱した。微粉炭着火が安定した後、常温の酸素を用いた微粉炭燃焼に切り替えた。
【0023】
純酸素微粉炭燃焼は、微粉炭供給量を5.2kg/hrと一定の供給量とし、一次酸素と二次酸素の供給量、酸素比を下記の表1に示すように種々変化させて、種々の条件での微粉炭燃焼を行なった。なお、本実施例では、キャリアガスとして一次酸素と一緒に一定量(1.2m3/hr)の二酸化炭素ガスを導入した。
【0024】
【表1】
【0025】
それぞれの運転条件について、2時間連続して純酸素による微粉炭燃焼を続けた後、炉内温度を測定し、燃焼灰を採取し、ガスアナライザー(島津製作所製、NOA−7000)によって連続的に排ガス中のCO2およびCO濃度を測定した。採取した燃焼灰は乾燥した後、CHNコーダ(ヤナコ製、CHNCORDER MT−6)によって燃焼灰中の未燃炭素と未燃水素の含有率を測定した。
それぞれの運転条件における燃焼効率は、上記の排ガス中のCOと燃焼灰中の未燃炭素と未燃水素の発熱量から、次式によって求めた。
【0026】
【数2】
【0027】
以上の本実施例の種々の運転条件によって得られた、排ガス中のCO2およびCO濃度、燃焼効率の値を表2に示す。また、本実施例では、旋回羽根の角度が60°の燃焼バーナーを用いており、酸素ガスの旋回強度を表すスワール数Snの値は1.5であった。
【0028】
【表2】
【0029】
この結果から、スワール数Snが1.5の場合には、酸素比が1.08と1.15の条件では、一次酸素と二次酸素の供給量の比Raが0.4以下であれば良好な燃焼状態を示し、燃焼効率が97%以上、CO濃度も3.5容積%以下を達成することができ、更にRaが0.3以下であれば燃焼効率が98%以上、CO濃度も1.0容積%以下となり、特にRaが2.5付近では燃焼効率が99.7%、CO濃度が0.04容積%という極めて良好な燃焼状態を実現することができた。
【0030】
実施例2:
石炭供給量を6.7Kg/hr、二酸化炭素ガスの供給量を1.5m3/hrの一定とし、酸素供給量を8.4〜10.8m3/hrの範囲で変化させ、燃焼バーナーとして、一次ガスノズル径(d1)が27.0mm、バーナーノズル径(d2)が48.6mm、旋回羽根の角度が60°のものを用いて、実施例1と同様の方法によって純酸素による微粉炭燃焼を行なった。また、この場合の酸素ガスの旋回強度を表すスワール数(Sn)の値は1.23であった。
実施例2の条件で行なった微粉炭燃焼によって得られた燃焼効率とCO濃度の測定結果を表したグラフを図3に示す。
この結果から、スワール数が1.23の場合も、酸素比が1.05以上であれば、燃焼効率が98%以上、CO濃度が1.5容積%以下となることが分かる。
【0031】
比較例1:
燃焼バーナーとして、一次ガスノズル径(d1)が24.5mm、バーナーノズル径(d2)が48.6mm、旋回羽根の角度が0°のもの、即ち酸素ガスに全く旋回流を付与しないバーナーを用いて、これ以外は実施例1と同様の条件と方法によって、微粉炭の純酸素燃焼を行なった。
この場合は、どの条件の場合も燃焼が非常に不安定で、良好な燃焼状態が得られず、燃焼効率は80%以下、CO濃度は5容積%程度となった。これは酸素雰囲気中で燃焼する石炭微粒子の表面近傍に、燃焼で生成した炭酸ガスや水の気体の層が形成され、酸素が石炭粒子の表面に拡散することが阻害されるためであると考えられる。
【0032】
比較例2:
石炭供給量を6.7Kg/hr、二酸化炭素ガスの供給量を1.5m3/hrの一定とし、酸素供給量を8.4〜10.8m3/hrの範囲で変化させ、燃焼バーナーとして、一次ガスノズル径(d1)が24.5mm、バーナーノズル径(d2)が48.6mm、旋回羽根の角度が75°のものを用いて、実施例1と同様の方法によって純酸素による微粉炭燃焼を行なった。この場合の酸素ガスの旋回強度を表すスワール数Snの値は3.24であった。
この場合は、旋回が強いため炉内中心部において燃焼ガスの強い循環流が発生し、溶融した微粉炭がバーナーに付着したりして、長時間安定して微粉炭の燃焼を続けることができなかった。
【0033】
【発明の効果】
本発明の方法によって、純酸素を用いて微粉炭を効率よく安定して燃焼させることができ、97%以上、好ましくは99%以上の高い燃焼効率を達成することができる。同時に、排ガス中の一酸化炭素の濃度も3.5容積%以下と低い値に抑えることができる。純酸素を用いた微粉炭燃焼において、このように高い燃焼効率が実現できたので、燃焼排ガス量を空気燃焼に比べて大幅に低減でき顕熱エネルギーの損失が低減できること、排ガス量の大幅な低減によりその中の二酸化炭素や窒素酸化物、硫黄酸化物の濃度が高くなり、これらの回収・除去が容易になること、排ガスが二酸化炭素と水だけになるため火炎温度が高くなり高効率の熱交換が可能となることなどの純酸素燃焼の数多くのメリットを生かした、高いエネルギー効率の微粉炭燃焼装置が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法を実施するための純酸素を用いた微粉炭燃焼装置の一例の概略図である。
【図2】本発明の方法に使用するための微粉炭燃焼装置の燃焼バーナーの一例の断面図である。
【図3】実施例2の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 コールフィーダー
2 一次酸素供給口
3 二次酸素供給口
4 予熱バーナー
5 燃焼炉
6 サイクロン
7 バッグフィルター
8 充填層洗浄装置
9 ガススクラバー
10 排気ブロワー
11燃焼ノズル
12旋回羽根
Claims (4)
- 酸素比が1.05以上の条件下で、微粉炭を混合した一次酸素を燃焼装置内の燃焼バーナーの中心部に噴霧し、二次酸素を燃焼バーナーの周辺部に旋回状態で導入する微粉炭の燃焼方法であって、旋回状態を表す無次元数のスワール数(Sn)が1.0から2.0の範囲にあり、かつ前記一次酸素と二次酸素の容積比(Ra)が0.1から0.4の範囲にある条件の下で微粉炭を噴霧状態で燃焼させることを特徴とする純酸素を用いた微粉炭の燃焼方法。
- スワール数(Sn)が1.2から1.5の範囲にあることを特徴とする、請求項1に記載の純酸素を用いた微粉炭の燃焼方法。
- 一次酸素と二次酸素の容積比(Ra)が0.15から0.3の範囲にあることを特徴とする、請求項1または2のいずれか記載の純酸素を用いた微粉炭の燃焼方法。
- 酸素の合計量に対して、10〜15容積%の二酸化炭素を一次酸素とともに燃焼装置内の導入することを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の純酸素を用いた微粉炭の燃焼方法。
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-
2003
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